説明

駆動装置

【課題】モータの動作可能領域のうち非昇圧領域が狭くなるのを抑制する。
【解決手段】コンデンサの電荷を放電させる所定放電処理を実行したときの電流積算値Icと放電開始前電圧VHstartと放電終了後電圧VHendとを用いてコンデンサの容量Cvhを計算し、計算したコンデンサの容量Cvhに応じて共振領域の下限回転数Nrfminおよび上限回転数Nrfmaxを設定し、設定した共振領域の下限回転数Nrfminおよび上限回転数Nrfmaxを用いて共振領域が昇圧領域に含まれるよう昇圧領域と非昇圧領域とを区分する昇圧/非昇圧ラインを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関し、詳しくは、モータと、モータを駆動するためのインバータと、バッテリと、リアクトルを有しインバータが接続された駆動電圧系の電圧をバッテリが接続された電池電圧系の電圧に対して昇圧可能な昇圧コンバータと、駆動電圧系に取り付けられたコンデンサと、を備える駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の駆動装置としては、モータと、モータを駆動するためのインバータと、バッテリと、リアクトルを有しバッテリからの電力を昇圧してインバータに供給可能な昇圧コンバータと、昇圧コンバータよりインバータ側に取り付けられたコンデンサと、を備え、モータの目標動作点が昇圧コンバータで共振が発生するときのモータの動作点を含む領域として予め実験や解析などによって特定した共振域に含まれるときに、インバータ側の電圧がバッテリ側の電圧より高い所定電圧となるよう昇圧コンバータを制御すると共に正弦波PWM制御方式を用いてインバータを制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この駆動装置では、上述の制御により、昇圧コンバータやコンデンサに過大な電圧が作用したり過大な電流が流れたりしないようにインバータをより適正に制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−225634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした駆動装置では、昇圧コンバータによる損失を抑制する(エネルギ効率の向上を図る)ためには、モータの動作領域のうちインバータ側の電圧をバッテリ側の電圧より高くしない非昇圧領域を広くするのが好ましい。共振域となるモータの回転数範囲は、リアクトルのインダクタンスやコンデンサの容量に応じて定まることが分かっているが、上述の駆動装置では、予め実験や解析などによって共振域を定めるため、コンデンサの製造バラツキや電荷の入出力による劣化(経年変化)などを考慮してある程度広めに共振域となるモータの回転数範囲を設定しておく必要があり、共振域を比較的広く設定しなければならず、非昇圧領域が比較的狭くなってしまう、という課題があった。
【0005】
本発明の駆動装置は、モータの動作可能領域のうち非昇圧領域が狭くなるのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の駆動装置は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の駆動装置は、
モータと、該モータを駆動するためのインバータと、バッテリと、リアクトルを有し前記バッテリが接続された電池電圧系の電力を昇圧してまたは昇圧せずに前記インバータが接続された駆動電圧系に供給可能な昇圧コンバータと、前記駆動電圧系に取り付けられたコンデンサと、前記モータの目標駆動点と前記駆動電圧系の目標電圧との駆動点電圧関係に該モータの目標駆動点を適用して前記駆動電圧系の電圧が調節されるよう前記昇圧コンバータを制御すると共に、前記モータの目標駆動点と前記インバータの制御方式との駆動点制御方式関係に該モータの目標駆動点を適用してPWM制御方式または矩形波制御方式で前記インバータを制御する制御手段と、を備える駆動装置であって、
前記コンデンサの電荷を放電させたときの前記コンデンサからの放電電流の積算値を用いて前記コンデンサの容量を算出し、該算出したコンデンサの容量を用いて、前記リアクトルと前記コンデンサとを含む回路の共振領域が昇圧領域に含まれるよう前記モータの動作可能領域を該昇圧領域と非昇圧領域とに区分して前記駆動点電圧関係を設定すると共に、前記共振領域がPWM制御方式領域に含まれるよう前記モータの動作可能領域を該PWM制御方式領域と矩形波制御方式領域とに区分して前記駆動点制御方式関係を設定する対応関係設定手段、
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の駆動装置では、モータの目標駆動点と駆動電圧系の目標電圧との駆動点電圧関係にモータの目標駆動点を適用して駆動電圧系の電圧が調節されるよう昇圧コンバータを制御すると共に、モータの目標駆動点とインバータの制御方式との駆動点制御方式関係にモータの目標駆動点を適用してPWM制御方式または矩形波制御方式でインバータを制御するものにおいて、コンデンサの電荷を放電させたときのコンデンサからの放電電流の積算値を用いてコンデンサの容量を算出し、算出したコンデンサの容量を用いて、リアクトルとコンデンサとを含む回路の共振領域が昇圧領域に含まれるようモータの動作可能領域を昇圧領域と非昇圧領域とに区分して駆動点電圧関係を設定すると共に、共振領域がPWM制御方式領域に含まれるようモータの動作可能領域をPWM制御方式領域と矩形波制御方式領域とに区分して駆動点制御方式関係を設定する。これにより、コンデンサの製造バラツキや電荷の入出力による劣化(経年変化)などを踏まえて(コンデンサの現在の容量に応じて)共振領域をより適正に定めることができ、駆動点電圧関係や駆動点制御方式関係をより適正に設定することができる。即ち、共振領域をより小さく定めることができるから、非昇圧領域が狭くなるのを抑制することができ、駆動電圧系の電圧を電池電圧系の電圧に対して昇圧しないことによって昇圧コンバータによる損失を低減する(エネルギ効率の向上を図る)ことが可能な領域をより広くすることができる。
【0009】
ここで、「モータの目標駆動点」は、モータの目標トルクと回転数とによって示される駆動点である。また、「PWM制御方式」は、擬似的三相交流電圧をモータに供給する正弦波制御方式や過変調三相交流電圧をモータに供給する過変調制御方式であり、「矩形波制御方式」は、矩形波電圧をモータに供給する制御である。さらに「昇圧領域」は、モータの動作可能領域のうち駆動電圧系の電圧を電池電圧系の電圧に対して昇圧する領域であり、「非昇圧領域」は、モータの動作可能領域のうち駆動電圧系の電圧を電池電圧系の電圧に対して昇圧しない領域である。加えて、「PWM制御方式領域」は、モータの動作可能領域のうちPWM(パルス幅変調)制御によってインバータを制御する領域であり、「矩形波制御方式領域」は、モータの動作可能領域のうち矩形波制御方式でインバータを制御する領域である。「共振領域」は、駆動電圧系の電圧を電池電圧系の電圧に対して昇圧せず且つ矩形波制御方式でインバータを制御するとリアクトルとコンデンサとを含む回路で共振を生じる可能性がある領域である。
【0010】
こうした本発明の駆動装置において、前記対応関係設定手段は、前記コンデンサの容量と前記共振領域の回転数範囲との容量共振関係に前記算出したコンデンサの容量を適用して前記共振領域の回転数範囲を設定し、前記モータの動作可能領域を前記昇圧領域と前記非昇圧領域とに仮区分する基本昇圧/非昇圧ラインのうち前記共振領域の回転数範囲外の部分と、前記モータの動作可能領域を前記PWM制御方式と前記矩形波制御方式とに仮区分するPWM/矩形波ラインのうち前記共振領域の回転数範囲内の部分と、を用いて前記モータの動作可能領域を該昇圧領域と非昇圧領域とに区分して前記駆動点電圧関係を設定する手段である、ものとすることもできる。
【0011】
また、本発明の駆動装置において、前記対応関係設定手段は、前記コンデンサの容量と前記共振領域の回転数範囲との容量共振関係に前記算出したコンデンサの容量を適用して前記共振領域の回転数範囲を設定し、該設定した共振領域の回転数範囲と、前記モータの動作可能領域を前記昇圧領域と前記非昇圧領域とに仮区分する基本昇圧/非昇圧ラインと、前記モータの動作可能領域を前記PWM制御方式と前記矩形波制御方式とに仮区分するPWM/矩形波ラインと、に囲まれた領域を前記共振領域として前記駆動点電圧関係と前記駆動点制御方式関係とを設定する手段である、ものとすることもできる。
【0012】
さらに、本発明の駆動装置において、前記対応関係設定手段は、搭載される自動車のイグニッションオフ時に前記駆動電圧系の電圧が所定電圧以下に至るまで前記モータにd軸電流が流れるよう前記インバータを制御する所定放電処理を実行したときの、前記コンデンサからの放電電流の積算値を用いて前記コンデンサの容量を算出する手段である、ものとすることもできる。
【0013】
あるいは、本発明の駆動装置において、前記所定放電処理の実行開始前の電圧と該所定放電処理の実行終了後の電圧との差を該所定放電処理を実行したときの前記コンデンサからの放電電流の積算値で除することによって前記コンデンサの容量を算出する手段である、ものとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例としての駆動装置を搭載する電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。
【図3】モータ32のトルク指令Tm*および回転数Nmと駆動電圧系電力ライン42の目標電圧VHtagとの関係の一例を示す説明図である。
【図4】モータ32のトルク指令Tm*および回転数Nmとインバータ34の制御方式との関係の一例を示す説明図である。
【図5】昇圧/非昇圧ラインの設定方法について示す説明図である。
【図6】イグニッションオフ時に電子制御ユニット50により実行されるイグニッションオフ時処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図7】イグニッションオン時に電子制御ユニット50により実行されるイグニッションオン時に電子制御ユニット50により実行されるイグニッションオン時処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図8】コンデンサ46の容量Cvhと共振領域の下限回転数Nrfminおよび上限回転数Nrfmaxとの関係の一例を示す説明図である。
【図9】昇圧/非昇圧ラインを設定する様子について示す説明図である。
【図10】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図11】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【図12】変形例のハイブリッド自動車320の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例としての駆動装置を搭載する電気自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、図1に示すように、駆動輪26a,26bにデファレンシャルギヤ24を介して接続された駆動軸22に動力を入出力可能なモータ32と、モータ32を駆動するためのインバータ34と、例えばリチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ36と、インバータ34が接続された電力ライン(以下、駆動電圧系電力ラインという)42とバッテリ36が接続された電力ライン(以下、電池電圧系電力ラインという)44とに接続されて駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを調節すると共に駆動電圧系電力ライン42と電池電圧系電力ライン44との間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータ40と、駆動電圧系電力ライン42に設けられたシステムメインリレー45と、車両全体をコントロールする電子制御ユニット50と、を備える。
【0017】
モータ32は、永久磁石が埋め込まれたロータと三相コイルが巻回されたステータとを備える周知の同期発電電動機として構成されている。インバータ34は、図2に示すように、6つのスイッチング素子としてのトランジスタT11〜T16と、トランジスタT11〜T16に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16と、により構成されている。トランジスタT11〜T16は、駆動電圧系電力ライン42の正極母線と負極母線とに対してソース側とシンク側となるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータ32の三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。したがって、インバータ34に電圧が作用している状態でトランジスタT11〜T16のオン時間の割合を調節することにより、三相コイルに回転磁界を形成でき、モータ32を回転駆動することができる。駆動電圧系電力ライン42の正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ46が接続されている。以下、インバータ34のトランジスタT11〜T13を「上アーム」、インバータ34のトランジスタT14〜T16を「下アーム」と称することがある。
【0018】
昇圧コンバータ40は、図2に示すように、2つのトランジスタT31,T32とトランジスタT31,T32に逆方向に並列接続された2つのダイオードD31,D32とリアクトルLとからなる昇圧コンバータとして構成されている。2つのトランジスタT31,T32は、それぞれ駆動電圧系電力ライン42の正極母線,駆動電圧系電力ライン42および電池電圧系電力ライン44の負極母線に接続されており、トランジスタT31,T32同士の接続点と電池電圧系電力ライン44の正極母線とにはリアクトルLが接続されている。したがって、トランジスタT31,T32をオンオフすることにより、電池電圧系電力ライン44の電力を昇圧して駆動電圧系電力ライン42に供給したり、駆動電圧系電力ライン42の電力を降圧して電池電圧系電力ライン44に供給したりすることができる。電池電圧系電力ライン44におけるシステムメインリレー45より昇圧コンバータ40側の正極母線と負極母線とには平滑用のコンデンサ48が接続されている。
【0019】
電子制御ユニット50は、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU52の他に処理プログラムを記憶するROM54と、データを一時的に記憶するRAM56と、図示しない入出力ポートと、を備える。電子制御ユニット50には、モータ32のロータの回転位置を検出する回転位置検出センサ32aからのモータ32のロータの回転位置θmや、モータ32の三相コイルのV相,W相に流れる相電流を検出する電流センサ33V,33Wからの相電流Iv,Iw(インバータ34側からモータ32側に流れるときを正とする),バッテリ36の端子間に取り付けられた電圧センサ37aからの端子間電圧Vb,バッテリ36の出力端子に取り付けられた電流センサ37bからの充放電電流Ib,バッテリ36に取り付けられた温度センサ37cからの電池温度Tb,昇圧コンバータ30のトランジスタT31,T32同士の接続点とリアクトルLとの間に取り付けられた電流センサ41aからのリアクトル電流IL(リアクトルL側から接続点側に流れるときを正とする),コンデンサ46の端子間に取り付けられた電圧センサ46aからのコンデンサ46の電圧(駆動電圧系電力ライン42の電圧)VH,コンデンサ48の端子間に取り付けられた電圧センサ48aからのコンデンサ48の電圧(電池電圧系電力ライン44の電圧)VL,イグニッションスイッチ60からのイグニッション信号,シフトレバー61の操作位置を検出するシフトポジションセンサ62からのシフトポジションSP,アクセルペダル63の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ64からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル65の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ66からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ68からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。電子制御ユニット50からは、インバータ34のトランジスタT11〜T16へのスイッチング制御信号や昇圧コンバータ40のトランジスタT31,T32へのスイッチング制御信号,システムメインリレー45への駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。なお、電子制御ユニット50は、回転位置検出センサ32aにより検出されたモータ32のロータの回転位置θmに基づいてモータ32のロータの電気角θeや回転角速度ωm,回転数Nmを演算したり、電流センサ37bにより検出されたバッテリ36の充放電電流Ibに基づいてそのときのバッテリ36から放電可能な電力量の全容量に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ36を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。
【0020】
こうして構成された実施例の電気自動車20では、電子制御ユニット50は、アクセル開度Accと車速Vとに応じて駆動軸22に出力すべき要求トルクTr*を設定し、バッテリ36の入出力制限Win,Woutをモータ32の回転数Nmで除してモータ32から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを設定し、要求トルクTr*をトルク制限Tmin,Tmaxで制限してモータ32から出力すべきトルクとしてのトルク指令Tm*を設定し、設定したトルク指令Tm*でモータ32が駆動されるようインバータ34を制御すると共に、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHがモータ32のトルク指令Tm*および回転数Nmに基づく目標電圧VHtagとなるよう昇圧コンバータ40を制御する。
【0021】
ここで、インバータ34は、実施例では、正弦波制御方式,過変調制御方式,矩形波制御方式のいずれかによって制御するものとした。正弦波制御方式は、モータ32の電圧指令と三角波(搬送波)電圧との比較によってトランジスタT11〜T16のオン時間の割合を調節するパルス幅変調(PWM)制御において、三角波電圧の振幅以下の振幅の正弦波状の電圧指令を変換して得られる擬似的三相交流電圧をモータ32に供給する制御である。また、過変調制御方式は、パルス幅変調(PWM)制御において、三角波電圧の振幅より大きな振幅の正弦波状の電圧指令を変換して得られる過変調電圧をモータ32に供給する制御である。さらに、矩形波制御方式は、矩形波電圧をモータ32に供給する制御である。なお、正弦波制御方式では、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHに対する正弦波状の電圧指令の振幅の割合としての変調率(電圧利用率)Rmが値0〜値Rref1(約0.61)の範囲となり、過変調制御方式では、変調率Rmが値Rref1(約0.61)〜値Rref2(約0.78)の範囲となり、矩形波制御方式では、変調率Rmが値Rref2(約0.78)で一定となる。
【0022】
次に、インバータ34や昇圧コンバータ40の制御について具体的に説明する。電子制御ユニット50は、まず、モータ32の目標駆動点(トルク指令Tm*および回転数Nm)に基づいて駆動電圧系電力ライン42の目標電圧VHtagを設定すると共にインバータ34の制御方式(正弦波制御方式,過変調制御方式,矩形波制御方式)を設定する。図3は、モータ32のトルク指令Tm*および回転数Nmと駆動電圧系電力ライン42の目標電圧VHtagとの関係の一例を示す説明図であり、図4は、モータ32のトルク指令Tm*および回転数Nmとインバータ34の制御方式との関係の一例を示す説明図である。ここで、図3や図4では、モータ32のトルク指令Tm*および回転数Nmが正の領域(第1象限)を例示した。また、図3および図4中、「昇圧/非昇圧ライン」は、モータ32の駆動可能領域を、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを電池電圧系電力ライン44の電圧VLに対して昇圧しない非昇圧領域と昇圧する昇圧領域とに区分するためのラインである。さらに、図3中、「V1」〜「V3」は、昇圧領域において、電池電圧系電力ライン44の電圧VLより高電圧となる範囲で順に高くなる(例えば50V毎や100V毎などで高くなる)傾向の等電圧ラインである。さらに、図4中、「非昇圧,正弦波」や「昇圧,矩形波」などは、非昇圧領域か昇圧領域かおよびインバータ34の制御方式(正弦波制御方式,過変調制御方式,矩形波制御方式)であり、「PWM/矩形波ライン」は、モータ32の駆動可能領域を、PWM制御方式(正弦波制御方式または過変調制御方式)でインバータ34を制御するPWM制御方式領域と矩形波制御方式でインバータ34を制御する矩形波制御方式領域とに区分するためのラインである。図3および図4中、共振領域(ハッチングを付した領域)は、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを電池電圧系電力ライン44の電圧VLに対して昇圧せずに矩形波制御方式でインバータ34を制御すると、昇圧コンバータ40のリアクトルLとコンデンサ46とを含む回路で(昇圧コンバータ40のリアクトルLとコンデンサ46とによって)LC共振を生じる可能性がある領域である。なお、共振領域の詳細については後述する。
【0023】
図3のモータ32のトルク指令Tm*および回転数Nmと駆動電圧系電力ライン42の目標電圧VHtagとの関係では、昇圧/非昇圧ラインよりモータ32のトルク指令Tm*や回転数Nmの絶対値が小さい側が非昇圧領域となると共に昇圧/非昇圧ラインよりモータ32のトルク指令Tm*や回転数Nmの絶対値が大きい側が昇圧領域となるよう定められており、非昇圧領域では電池電圧系電力ライン44の電圧VLやバッテリ36の端子間電圧Vbが駆動電圧系電力ライン42の目標電圧VHtagに設定され、昇圧領域ではモータ32のトルク指令Tm*および回転数Nmに応じた電圧(図3では電圧V1〜V3)が駆動電圧系電力ライン42の目標電圧VHtagに設定されるようになっている。また、図4のモータ32のトルク指令Tm*および回転数Nmとインバータ34の制御方式との関係では、非昇圧領域と昇圧領域とのそれぞれにおいて、モータ32のトルク指令Tm*や回転数Nmが小さい側から順に、正弦波制御方式,過変調制御方式,矩形波制御方式となるよう定められている。なお、図3や図4から分かるように、共振領域については、昇圧領域に含まれ、且つ、インバータ34の制御方式が正弦波制御方式となるように設定されている。実施例では、図3のマップに対してモータ32のトルク指令Tm*および回転数Nmを適用することによって駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを設定すると共に図4のマップに対してモータ32のトルク指令Tm*および回転数Nmを適用することによってインバータ34の制御方式を設定するものとした。
【0024】
ここで、昇圧/非昇圧ラインの設定方法について説明する。図5は、昇圧/非昇圧ラインの設定方法について示す説明図である。昇圧/非昇圧ライン(図3や図4の太実線参照)は、図5に示すように、まず、非昇圧領域と昇圧領域とを仮区分するラインとしての基本昇圧/非昇圧ライン(図5の一点鎖線参照)を設定し、その基本昇圧/非昇圧ラインより非昇圧領域側のうち共振領域が昇圧領域に含まれるように基本昇圧/非昇圧ラインを補正することによって設定することができる。
【0025】
基本昇圧/非昇圧ラインは、例えば、モータ32の駆動可能領域が、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを電池電圧系電力ライン44の電圧VLに対して昇圧しなくてもモータ32を目標駆動点で駆動可能な昇圧不要領域と、モータ32の駆動可能領域のうち昇圧不要領域を除いた残余の領域(昇圧必要領域)と、に仮区分されるよう定めるものとしたり、モータ32の駆動可能領域が、昇圧不要領域のうち駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを電池電圧系電力ライン44の電圧VLに対して昇圧したときに昇圧しないときに比してモータ32やインバータ34,バッテリ36,昇圧コンバータ40などを含む電機駆動系における効率が高くなる昇圧時高効率領域を昇圧不要領域から除いた領域と、昇圧必要領域に昇圧時高効率領域を加えた領域と、に仮区分されるよう定めるものとしたりすることができる。
【0026】
共振領域が昇圧領域に含まれるように昇圧/非昇圧ラインを定めるのは以下の理由による。矩形波制御方式でインバータ34を制御するときには、パルス幅変調制御(正弦波制御方式や過変調制御方式)によってインバータ34を制御するときに比して、トランジスタT11〜T16のスイッチング回数の減少によってスイッチング損失などの低減を図ることができるものの、矩形波電圧をモータ32に供給することになるため、モータ32に供給する電力には特定の高調波が含まれることになると考えられる。そして、この高調波の周波数と昇圧コンバータ40のリアクトル41のインダクタンスLやコンデンサ46の容量Cvhによって定まる固有周波数とが同期すると、共振現象が生じて、昇圧コンバータ40に過電圧が作用したり過電流が流れたりするおそれがある。したがって、実施例では、この共振領域については、昇圧領域とし(図3参照)、インバータ34の制御方式を正弦波制御方式とする(図4参照)ものとした。
【0027】
こうして駆動電圧系電力ライン42の電圧指令VH*やインバータ34の制御方式を設定すると、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを電池電圧系電力ライン44に対して昇圧すべきとき(モータ32の目標駆動点が昇圧領域のとき)には、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHが電池電圧系電力ライン44の電圧VLより高い目標電圧VHtagとなるよう昇圧コンバータ40を制御すると共に、モータ32からトルク指令Tm*に応じたトルクが出力されるよう、正弦波制御方式,過変調制御方式,矩形波制御方式のうち設定した制御方式でインバータ34を制御する。
【0028】
一方、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを電池電圧系電力ライン44に対して昇圧する必要がないとき(モータ32の目標駆動点が非昇圧領域のとき)には、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHが電池電圧系電力ライン44の電圧VLに対して昇圧されないよう昇圧コンバータ40を制御すると共に、モータ32からトルク指令Tm*に応じたトルクが出力されるよう、正弦波制御方式,過変調制御方式,矩形波制御方式のうち設定した制御方式でインバータ34を制御する。
【0029】
次に、こうして構成された実施例の電気自動車20の動作、特に、イグニッションオフ時やイグニッションオン時の動作について説明する。図6は、イグニッションオフ時に電子制御ユニット50により実行されるイグニッションオフ時処理ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図7は、その後のイグニッションオン時に電子制御ユニット50により実行されるイグニッションオン時に電子制御ユニット50により実行されるイグニッションオン時処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。以下、順に説明する。
【0030】
まず、図6のイグニッションオフ時処理ルーチンについて説明する。なお、本ルーチンの実行時において、昇圧コンバータ40については、駆動停止するものとした。図6のイグニッションオフ時処理ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50は、まず、システムメインリレー45をオフとしてバッテリ36と電池電圧系電力ライン44(昇圧コンバータ40)との接続を解除する(ステップS100)。
【0031】
続いて、電圧センサ46aから駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを入力すると共に(ステップS110)、入力した駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを、コンデンサ46の電荷を放電させる所定放電処理を開始する前の駆動電圧系電力ライン42の電圧VHとしての放電開始前電圧VHstartに設定し(ステップS120)、所定放電処理を開始する(ステップS130)。ここで、所定放電処理は、実施例では、モータ32にd軸電流が流れるようインバータ34のトランジスタT11〜T16をスイッチング制御することによって行なうものとした。
【0032】
こうして所定放電処理を開始すると、電流センサ41aからのリアクトル電流IL(リアクトルL側から接続点側に流れるときを正とする)や電流センサ33V,33Wからのモータ32のV相,W相の相電流Iv,Iw(インバータ34側からモータ32側に流れるときを正とする)を入力すると共に(ステップS140)、入力したモータ32のV相,W相の相電流Iv,Iwを用いて次式(1)により32のU相の相電流Iuを計算し(ステップS150)、相電流Iu,Iv,Iwを用いて式(2)により駆動電圧系電力ライン42からインバータ34側に流れる電流としてのインバータ供給電流Idcを計算する(ステップS150)。ここで、式(1)は、モータ32のU相,V相,W相に流れる相電流Iu,Iv,Iwの総和が値0となることに基づく。また、式(2)は、駆動電圧系電力ライン42からインバータ34側に流れる電流、即ち、駆動電圧系電力ライン42の正極母線側からインバータ34を介してモータ32側に流れる電流を求めており、モータ32側からインバータ34を介して駆動電圧系電力ライン42の負極母線側に流れる電流を求めていないことに基づく。
【0033】
Iu=-Iv-Iw (1)
Idc=max(Iu,0)+max(Iv,0)+max(Iw,0) (2)
【0034】
続いて、リアクトル電流ILをインバータ供給電流Idcから減じることによってコンデンサ46からの放電電流Icを計算する(ステップS170)。いま、システムメインリレー45をオフとした後を考えているから、リアクトル電流ILは、コンデンサ48から放電されて昇圧コンバータ40のダイオードD31を介して駆動電圧系電力ライン42に流れる電流に相当する。したがって、リアクトル電流ILをインバータ供給電流Idcから減じることによってコンデンサ放電電流Icを求めることができる。なお、昇圧コンバータ40を駆動停止(トランジスタT31,T32を共にオフ)していることを考慮すると、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHが電池電圧系電力ライン44の電圧VL以上の間は、リアクトル電流ILは略値0となり、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHが電池電圧系電力ライン44の電圧VLに略等しくなった後は、コンデンサ48の放電が完了するまでリアクトル電流ILは正の値となると考えられる。
【0035】
そして、所定放電処理の実行開始時に値0が設定される電流積算値Icsumの前回値(前回Icsum)にステップS170で計算したコンデンサ46からの放電電流Icを加えることによって電流積算値Icを計算する(ステップS180)。
【0036】
続いて、電圧センサ46aから駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを入力すると共に(ステップS190)、入力した駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを所定放電処理を終了してよい駆動電圧系電力ライン42の電圧VHとしての閾値VHref(例えば、数十Vなど)と比較し(ステップS200)、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHが閾値VHrefより高いときには、所定放電処理を継続すると判断し、ステップS140に戻る。
【0037】
こうしてステップS140〜S200の処理を繰り返し実行している最中に駆動電圧系電力ライン42の電圧VHが閾値VHref以下に至ると、所定放電処理を終了し(ステップS210)、そのときの駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを所定放電処理を終了した後の駆動電圧系電力ライン42の電圧VHとしての放電終了後電圧VHendに設定し(ステップS220)、上述の放電開始前電圧VHstartとこの放電終了後電圧VHendと電流積算値Icsumとを用いて次式(3)によりコンデンサ46の容量Cvhを計算して(ステップS230)、本ルーチンを終了する。
【0038】
Cvh=(VHstart-VHend)/Icsum (3)
【0039】
以上、図6のイグニッションオフ時処理ルーチンについて説明した。次に、図7のイグニッションオン時処理ルーチンについて説明する。図7のイグニッションオン時処理ルーチンが実行されると、電子制御ユニット50は、上述の図6のイグニッションオフ時処理ルーチンのステップS230で設定したコンデンサ46の容量Cvhを入力すると共に(ステップS300)、入力したコンデンサ46の容量Cvhに基づいて共振領域の下限回転数Nrfminおよび上限回転数Nrfmaxを設定する(ステップS310)。
【0040】
図8は、コンデンサ46の容量Cvhと共振領域の下限回転数Nrfminおよび上限回転数Nrfmaxとの関係の一例を示す説明図である。図示するように、共振領域の下限回転数Nrfminおよび上限回転数Nrfmaxは、コンデンサの容量が大きいほど小さくなっている。このようにイグニッションオフ時に演算したコンデンサ46の容量Cvhを用いて共振領域の下限回転数Nrfおよび上限回転数Nrfを設定することにより、共振領域の下限回転数Nrfおよび上限回転数Nrfを製造時などに予め設定しておくものに比して、コンデンサの製造バラツキや電荷の入出力による劣化(経年変化)などを踏まえて、共振領域の下限回転数Nrfminおよび上限回転数Nrfmaxをより適正に設定することができる。即ち、共振領域の下限回転数Nrfminと上限回転数Nrfmaxとの差をより小さくすることができる。
【0041】
続いて、上述の基本昇圧/非昇圧ラインと、過変調制御方式領域(PWM制御方式領域)と矩形波制御方式領域との境界としてのPWM/矩形波ラインと、を取得し(ステップS320)、共振領域の下限回転数Nrfminおよび上限回転数Nrfmaxと、基本昇圧/非昇圧ラインと、PWM/矩形波ラインと、を用いて昇圧/非昇圧ラインを設定して(ステップS330)、本ルーチンを終了する。
【0042】
昇圧/非昇圧ラインの設定は、図9に示すように、基本昇圧/非昇圧ラインのうち共振領域の下限回転数Nrfmin未満や上限回転数Nrfmaxより大きい部分と、PWM/矩形波ラインのうち共振領域の下限回転数Nrfmin以上で上限回転数Nrfmax以下の部分と、を用いて設定することができる。即ち、昇圧/非昇圧ラインの設定は、基本昇圧/非昇圧ラインとPWM/矩形波ラインと下限回転数Nrfminおよび上限回転数Nrfmaxとによって囲まれた領域(図中、ハッチングを付した領域)を共振領域として定めて、その共振領域が昇圧領域(且つPWM制御方式領域)に含まれるように基本昇圧/非昇圧ラインを補正することによって設定することができる。製造時などに予め実験や解析などによって共振領域を定める場合、コンデンサの製造バラツキや電荷の入出力による劣化(経年変化)などを考慮して共振領域をある程度広めに定めておく必要がある。このため、非昇圧領域が狭くなることにより、昇圧コンバータによる損失を抑制可能な領域を十分に広くすることができない、という課題があった。これに対して、実施例では、イグニッションオフ時に演算したコンデンサ46の容量Cvhを用いてイグニッションオン時に共振領域の下限回転数Nrfおよび上限回転数Nrfを設定し、この共振領域の下限回転数Nrfおよび上限回転数Nrfと基本昇圧/非昇圧ラインとPWM/矩形波ラインとを用いて昇圧/非昇圧ラインを設定することにより、基本昇圧/非昇圧ラインより非昇圧領域側において、回路での共振を回避するために駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを電池電圧系電力ライン44の電圧VLに対して昇圧すべき領域をより小さくすることができる。この結果、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを電池電圧系電力ライン44の電圧VLに対して昇圧しないことによって昇圧コンバータ40による損失を低減することが可能な領域(非昇圧領域)をより広くすることができる。
【0043】
以上説明した実施例の駆動装置を搭載する電気自動車20によれば、コンデンサ46の電荷を放電させる所定放電処理を実行したときのコンデンサ46からの放電電流Icの積算値(電流積算値Ic)と所定放電処理を開始する前の駆動電圧系電力ライン42の電圧VH(放電開始前電圧VHstart)と所定放電処理を終了した後の駆動電圧系電力ライン42の電圧VH(放電終了後電圧VHend)とを用いてコンデンサ46の容量Cvhを計算し、計算したコンデンサ46の容量Cvhに応じて共振領域の下限回転数Nrfminおよび上限回転数Nrfmaxを設定するから、共振領域の下限回転数Nrfminおよび上限回転数Nrfmaxをより適正に設定することができる。そして、設定した共振領域の下限回転数Nrfminおよび上限回転数Nrfmaxを用いて共振領域が昇圧領域に含まれるよう昇圧領域と非昇圧領域とを区分する昇圧/非昇圧ラインを設定するから、昇圧/非昇圧ラインをより適正に設定することができる。これらの結果、基本昇圧/非昇圧ラインより非昇圧領域側において、回路での共振を回避するために駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを電池電圧系電力ライン44の電圧VLに対して昇圧すべき領域をより小さくすることができ、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHを電池電圧系電力ライン44の電圧VLに対して昇圧しないことによって昇圧コンバータ40による損失を低減することが可能な領域(非昇圧領域)をより広くすることができる。
【0044】
実施例の電気自動車20では、イグニッションオフ時に、所定放電処理を実行するものとしたが、これ以外のとき、例えば、シフトポジションSPが駐車ポジションのときなどに実行するものとしてもよい。
【0045】
実施例の電気自動車20では、イグニッションオフ時にコンデンサ46の容量Cvhを計算すると共に、イグニッションオン時にコンデンサ46の容量Cvhを用いて昇圧/非昇圧ラインを設定するものとしたが、イグニッションオフ時に、コンデンサ46の容量Cvhを計算すると共に計算したコンデンサ46の容量Cvhを用いて昇圧/非昇圧ラインを設定するものなどとしてもよい。
【0046】
実施例の電気自動車20では、昇圧コンバータ40を駆動停止しながら所定放電処理を実行するものとしたが、昇圧コンバータ40のトランジスタT31をオンで保持しながら所定放電処理を実行するものとしてもよい。なお、この場合、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHが電池電圧系電力ライン44の電圧VLより高い間は昇圧コンバータ40のトランジスタT31を介して駆動電圧系電力ライン42から電池電圧系電力ライン44に電力が供給され、駆動電圧系電力ライン42の電圧VHが電池電圧系電力ライン44の電圧VLに略等しくなった後は昇圧コンバータ40のダイオードD31を介して電池電圧系電力ライン44から駆動電圧系電力ライン42に電力が供給される。
【0047】
実施例では、駆動輪26a,26bに接続された駆動軸22に動力を入出力可能なモータ32を備える電気自動車20に適用するものしたが、例えば、図10の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、遊星歯車機構126を介して駆動軸22に接続されたエンジン122およびモータ124と、駆動軸22に動力を入出力可能なモータ32と、を備えるハイブリッド自動車120に適用するものとしてもよい。また、図11の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン122のクランクシャフトに接続されたインナーロータ232と駆動輪26a,26bに連結された駆動軸22に接続されたアウターロータ234とを有しエンジン122からの動力の一部を駆動軸22に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。さらに、図12の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、駆動軸22に変速機330を介してモータ32を取り付けると共に、モータ32の回転軸にクラッチ329を介してエンジン122を接続する構成とし、エンジン122からの動力をモータ32の回転軸と変速機330とを介して駆動軸22に出力すると共にモータ32からの動力を変速機330を介して駆動軸22に出力するハイブリッド自動車320に適用するものとしてもよい。
【0048】
実施例では、電気自動車20に適用するものとしたが、電気自動車20などに搭載される駆動装置に適用するものとしてもよい。
【0049】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、モータ32が「モータ」に相当し、インバータ34が「インバータ」に相当し、バッテリ36が「バッテリ」に相当し、昇圧コンバータ40が「昇圧コンバータ」に相当し、コンデンサ46が「コンデンサ」に相当し、電子制御ユニット50が「制御手段」や「対応関係設定手段」に相当する。
【0050】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0051】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、駆動装置の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
20 電気自動車、22 駆動軸、24 デファレンシャルギヤ、26a,26b 駆動輪、32 モータ、32a 回転位置検出センサ、33V,33W 電流センサ、34 インバータ、36 バッテリ、37a 電圧センサ、37b 電流センサ、37c 温度センサ、40 昇圧コンバータ、41 リアクトル、41a 電流センサ、42 駆動電圧系電力ライン、44 電池電圧系電力ライン、46,48 コンデンサ、46a,48a 電圧センサ、50 電子制御ユニット、52 CPU、54 ROM、56 RAM、60 イグニッションスイッチ、61 シフトレバー、62 シフトポジションセンサ、63 アクセルペダル、64 アクセルペダルポジションセンサ、65 ブレーキペダル、66 ブレーキペダルポジションセンサ、68 車速センサ、120,220,320 ハイブリッド自動車、122 エンジン、124 モータ、126 遊星歯車機構、329 クラッチ、330 変速機、D11〜D16,D31,D32 ダイオード、、T11〜T16,T31,T32 トランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、該モータを駆動するためのインバータと、バッテリと、リアクトルを有し前記バッテリが接続された電池電圧系の電力を昇圧してまたは昇圧せずに前記インバータが接続された駆動電圧系に供給可能な昇圧コンバータと、前記駆動電圧系に取り付けられたコンデンサと、前記モータの目標駆動点と前記駆動電圧系の目標電圧との駆動点電圧関係に該モータの目標駆動点を適用して前記駆動電圧系の電圧が調節されるよう前記昇圧コンバータを制御すると共に、前記モータの目標駆動点と前記インバータの制御方式との駆動点制御方式関係に該モータの目標駆動点を適用してPWM制御方式または矩形波制御方式で前記インバータを制御する制御手段と、を備える駆動装置であって、
前記コンデンサの電荷を放電させたときの前記コンデンサからの放電電流の積算値を用いて前記コンデンサの容量を算出し、該算出したコンデンサの容量を用いて、前記リアクトルと前記コンデンサとを含む回路の共振領域が昇圧領域に含まれるよう前記モータの動作可能領域を該昇圧領域と非昇圧領域とに区分して前記駆動点電圧関係を設定すると共に、前記共振領域がPWM制御方式領域に含まれるよう前記モータの動作可能領域を該PWM制御方式領域と矩形波制御方式領域とに区分して前記駆動点制御方式関係を設定する対応関係設定手段、
を備える駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の駆動装置であって、
前記対応関係設定手段は、前記コンデンサの容量と前記共振領域の回転数範囲との容量共振関係に前記算出したコンデンサの容量を適用して前記共振領域の回転数範囲を設定し、前記モータの動作可能領域を前記昇圧領域と前記非昇圧領域とに仮区分する基本昇圧/非昇圧ラインのうち前記共振領域の回転数範囲外の部分と、前記モータの動作可能領域を前記PWM制御方式と前記矩形波制御方式とに仮区分するPWM/矩形波ラインのうち前記共振領域の回転数範囲内の部分と、を用いて前記モータの動作可能領域を該昇圧領域と非昇圧領域とに区分して前記駆動点電圧関係を設定する手段である、
駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2013−90347(P2013−90347A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225482(P2011−225482)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】