説明

駐車場監視システム

【課題】 駐車場に入庫する車両の個々に搭載した監視手段からのデータ収集をコスト安に行え、しかも遠隔地の車両所有者にも通報可能な駐車場監視システムを提供する。
【解決手段】 駐車場1に入庫する車両10には車載監視ユニット20が搭載される。車載監視ユニット20は車両10に異変が生じたときは無線で警告信号を発信する。この警告信号を携帯ユニット21が受信し、人間の感知できる形の警報表示に変換する。携帯ユニット21は、車載監視ユニット20の通信可能領域内に設置された保管庫30の保管セル31に収納される。保管セル31には収納した携帯ユニット21の警報表示を検知する音センサ32、光センサ33、振動センサ34などが設けられる。制御装置40はセンサの検知内容を公衆通信網用通信内容の警報に変換し、公衆通信網を通じて所定の通信端末に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駐車場、特に、多数の車両を受け入れるタイプの駐車場において、車両が盗難などに遭わないように監視する駐車場監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の自動車には、ロック状態のドアを所有者以外の者が開けようとすると警報を発するものや、正規のキー以外ではエンジンを始動できないイモビライザーを備えたものが多くなっている。また「車両異常監視警報器」や「自動車盗難警報器」といった名称で市販されている後付け装置もある。これらの警報器では、自動車に搭載された本体装置が各種センサで次のような行為を監視する。
A.自動車そのものの窃盗
B.タイヤホイールやナンバープレートの窃盗
C.車内やトランク内の金品・電装品などの窃盗(車上荒らし)
そして窃盗行為や破壊行為を検知すると、本体装置やその付属品が警報音を発したり、警告灯を点灯したりして、行為者を威嚇・撃退する。
【0003】
上記のような警報器に「アンサバックリモコン」を組み合わせたものもある。異変を検知したとき、本体装置はその旨を自動車の所有者が携行するアンサバックリモコンに無線で送信する。これにより所有者は自己の自動車に異変が生じたことを知り、本体装置に対し威嚇・撃退行動、あるいは周囲への報知行動を遂行するよう指示したり、警備会社や警察に通報するなど、必要な措置をとることができる。
【0004】
駐車場内の多数の車両を監視し、いずれかの車両に異変が生じたときは所有者、駐車場管理者、警備会社などに通報するシステムも数多く提案されている。例えば特許文献1には、車両への侵入あるいは車両の移動があったときは、車両に搭載した車載用センサ型送信機が異常検出信号を送信し、この異常検出信号をセキュリティコントローラで受信して異常を知らせるセキュリティシステムが記載されている。特許文献2には、車載器と管理ステーションとの間で狭域無線通信手段により相互通信を行って互いの状態を監視する車両盗難防止システムが記載されている。
【特許文献1】特開2004−185124号公報(第4頁−第15頁、図1−図11)
【特許文献2】特開2004−227145号公報(第9頁−第19頁、図1−図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駐車場全体をカメラで監視する駐車場監視システムもあるが、カメラの死角に巧みに隠れて行動されると監視は無力となり、犯罪の成立を許してしまう。その点駐車場に入庫する車両の個々に監視手段を搭載させる監視システムは、振動や音をセンサで検知して異変を知ることができるので、カメラの死角を排除し、犯罪活動を効果的に封じ込めることができる。また、車両が駐車場外に移動させられたとき、監視手段に現在位置を報知させたり、あるいは車両を駐車場に入庫するとき、監視手段を入庫許可証として用いるといったことも可能になる。
【0006】
さて、個々の車両に監視手段を搭載させて駐車場の監視を行う場合、次のような問題が発生する。市販のアンサバックリモコン方式警報装置を用い、本体を車両に搭載し、アンサバックリモコンを車両所有者に携行させることとすれば、最も簡便にシステムを構築できる。また、犯罪行為が行われようとしている時、どのように対処するかを車両の所有者自身の意思決定に委ねることができるので、常駐の駐車場管理者を省くことも可能となる。しかしながら本体とアンサバックリモコンとの通信可能距離が数百メートルでしかないため、車両所有者がそれ以上離れたときは非監視状態となってしまう。
【0007】
専用の車載監視手段を車両に搭載させ、そこからの電波を専用無線局で受信したうえで、電話回線網やインターネットを通じて車両所有者に報知するようにすれば、車両所有者が遠隔地にいても監視状態を維持できる。しかしながらこの方式は専用車載監視手段の開発や開発後の機能メンテナンスにコストがかかる。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、駐車場に入庫する車両の個々に監視手段を搭載させる方式の駐車場監視システムにおいて、監視手段からのデータ収集をコスト安に行え、しかも遠隔地にいる車両所有者にも通報可能なシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために本発明の駐車場監視システムは、駐車場に入庫した車両に搭載され、車両に異変が生じたときは無線で警告信号を発信する車載監視ユニットと、前記車載監視ユニットより発信された警告信号を受信し、人間の感知できる形の警報表示に変換する携帯ユニットと、前記車載監視ユニットの通信可能領域内に設置されるものであって、前記駐車場内の車両に属する前記携帯ユニットを個別に保管セルに収納する保管庫と、前記保管庫の個々の保管セルに設けられ、収納した前記携帯ユニットの警報表示を検知するセンサと、前記センサの検知内容を公衆通信網用通信内容に変換し、所定の通信端末に送信する送信手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
この構成によると、車載監視ユニットより発信された警告信号を受信する携帯ユニットを、車載監視ユニットの通信可能領域内に設置した保管庫の保管セルに保管し、保管セル内のセンサが検知した携帯ユニットの警報表示を公衆通信網用通信内容に変換したうえで所定の通信端末に送信するものであるから、車両の所有者がどこにいようと車両に生じた異変を通報することができる。また車載監視ユニットと携帯ユニットの組み合わせは市販のアンサバックリモコン方式警報装置をそのまま利用することができるから、開発コストが不要である。従って全体としてコスト安の駐車場監視システムを構築できる。
【0011】
(2)また本発明は、上記構成の駐車場監視システムにおいて、前記送信手段は、前記車載監視ユニットが車両の異変を検知していないときは、その旨を所定タイミングで前記通信端末に送信することを特徴としている。
【0012】
この構成によると、車両に異変が生じていないことを所有者に積極的に通報するから、所有者は車両から離れた場所で安心して活動することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、入手しやすいアンサバックリモコン方式警報装置を主体としつつ、その通信可能領域をはるかに超えて所有者に警告信号を送ることのできる駐車場監視システムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図に基づき説明する。図1は駐車場監視システムの概要図である。
【0015】
図において、1は駐車場、10はその中に入庫した車両を示す。「車両」には自動二輪車なども含まれるものとする。各車両10には車載監視ユニット20が搭載されている。車載監視ユニット20は車両10に生じる異変を各種センサで検知し、警告信号を無線で携帯ユニット21に送信する。車載監視ユニット20と携帯ユニット21には市販のアンサバックリモコン方式車両異常監視警報器あるいは車両盗難警報器を用いる。機種選択は車両10の所有者に委ねられる。
【0016】
車載監視ユニット20の備えるセンサとして代表的なものは、音圧センサ、ドップラーセンサ、傾斜振動センサなどである。音圧センサは車両10のドアが開けられる音、窓ガラスが破壊される音、車体に強い衝撃が加わった時の音などを検知する。ドップラーセンサは人が車両10に接近したり、周囲を徘徊したり、車内に侵入したりすることを検知する。傾斜振動センサは車両10がレッカーで移動させられることを検知する。車載監視ユニット20は、機種毎の仕様に従い上記3種類のセンサのすべて又はいずれかを備え、機種によってはそれ以外のセンサも備える。
【0017】
携帯ユニット21はいわゆるアンサバックリモコンである。携帯ユニット21は、ペアを組む車載監視ユニット20から警告信号を受信すると、それを音、光、振動など、人間の感知できる形の警報表示に変換する。アンサバックリモコンは追加購入が可能なので、元々備わっているものと合わせて2個用意し、一方は車両の所有者が携行し、もう一方を本駐車場監視システムの管理対象とする。管理対象の携帯ユニット21はロッカー型の保管庫30に収納する。
【0018】
保管庫30は必ずしも駐車場1内に設置する必要はない。携帯ユニット21が車載監視ユニット20からの電波を受信できる範囲であればどこに置いてもよい。安全性を考慮すれば、駐車場1よりもセキュリティの整った建物内に設置する方が好ましい。
【0019】
保管庫30は多数のセル31を有し、その中に携帯ユニット21が1個ずつ収納される。個々のセル31には、その中の携帯ユニット21の発する警報表示を検知するセンサが設けられる。図において、32は音センサであり、これは例えばマイクロフォンをもって構成することができる。33は光センサであり、これは例えばフォトトランジスタなどの光電変換素子をもって構成することができる。34は振動センサであり、携帯ユニット21に密着するように設ける。
【0020】
携帯ユニット21の発する警報表示が他のセル31のセンサに影響を与えないよう、セル31相互間には適切な遮蔽処置を施す。セル31同士を隔離してもよい。また、万一攻撃を受けても内部の携帯ユニット21が保護されるよう、保管庫30の外殻やセル31の扉、そのロック装置などには十分な強度を持たせる。ただし携帯ユニット21に電波を届かせる手立ては施す。また各セル31の内部にはその中に収納される携帯ユニット21に電力を供給する電源を用意する。これにより、携帯ユニット21に内蔵された電池の消耗を気にする必要がなくなる。
【0021】
音センサ32、光センサ33、及び振動センサ34は携帯ユニット21の警報表示を検知するとそれを独自の信号に変換し、制御装置40に伝達する。制御装置40は送信手段として機能するものであり、センサの検知内容を公衆通信網用の通信内容に変換し、車両10の所有者が予め登録しておいた通信端末に送信する。通信端末として用いることができるのはパーソナルコンピュータ50や携帯電話51などである。パーソナルコンピュータ50に対しては、場内LAN52からさらにインターネット53を介して情報を伝達する。携帯電話51に対してはインターネット53から携帯電話網54を介して情報を伝達する。なおインターネット53や携帯電話網54は公衆通信網の一例として提示したものであり、それ以外の公衆通信網を用いることに何ら制約はない。
【0022】
駐車場1の所定箇所には、制御装置40に情報を伝え、また制御装置40によって動作せしめられる次の機器が配置される。人感センサ41、投光器42、スピーカ43、及び監視カメラ44がそれである。人感センサ41は車載監視ユニット20の検知領域外となる箇所、例えば駐車場1の出入り口や通路中央を検知領域とするように設置される。投光器42、スピーカ43、及び監視カメラ44は、駐車場1のあらゆる箇所に光を浴びせ、音を聞かせ、また撮影することができるよう、駐車場1内の適切な箇所に必要な個数だけ設置される。投光器42と監視カメラ44は遠隔操作で向きを自由に変えられるものであることが望ましい。監視カメラ44には画像蓄積処理装置45が付属している。
【0023】
駐車場1の出入り口2には開閉式のゲート3が設置される。ゲート3も制御装置40の制御対象となる。
【0024】
次に駐車場監視システムの運用について説明する。本実施形態の駐車場1はいわゆる契約駐車場であり、契約した車両10だけが入庫を許される。契約にあたっては、市販のアンサバックリモコン方式車両異常監視警報器あるいは車両盗難警報器を購入し、その車載監視ユニット20を車両10に搭載するとともに、携帯ユニット21を1個預けることが求められる。車載監視ユニット20と携帯ユニット21の機種は制御装置40に登録される。また契約者が連絡を受け取る通信端末を制御装置40に登録する。通信端末としてパーソナルコンピュータ50を選択したときはメールアドレス、携帯電話51を選択したときは電話番号及び/又はメールアドレスを登録する。
【0025】
契約成立後、契約者が希望すれば管理者は無線ICタグを発行する。無線ICタグを身に付けておけば駐車場1内の監視対象から除外され、無用な警報を招くことはなくなる。無線ICタグはキーホルダの形にして忘れず携行させるようにすることができる。
【0026】
駐車場1の契約に伴い、駐車場1内の駐車場所が指定される。保管庫30の各セル31は各駐車場所に1対1で対応しており、指定された駐車場所に対応するセル31に、車両10の所有者から預かった携帯ユニット21を収納する。保管庫30には契約台数分の携帯ユニット21が収納されることになる。
【0027】
契約者は車両10を駐車場1の所定の駐車場所に入庫した後、車載監視ユニット20を機能ON状態にし、エンジンキーを抜く、ドアをロックするなどの駐車態勢を整えたうえで車両10から離れる。ここから車両10の監視が開始される。
【0028】
入庫した車両10に対し窃盗が企てられると、その車両10に搭載された車載監視ユニット20が異変を検知する。検知態様は車載監視ユニット20により様々であるが、どのような検知態様にせよ、車両10に異変が生じようとしている、あるいは異変が生じたことを検知すると、車載監視ユニット20は警告信号を無線で送信する。車載監視ユニット20とペアをなす携帯ユニット21は警告信号を受信し、警報表示を行う。警報表示は音センサ32、光センサ33、及び振動センサ34などによりそれぞれの信号に変換され、制御装置40に伝達される。制御装置40は、信号がどのセル31から到来したかをもって異変の生じた駐車場所と、そこに駐車している車両10を特定する。
【0029】
制御装置40はセンサから伝えられた検知内容を公衆通信網用通信内容(メール又は音声)の警報に変換する。その警報を場内LAN52からインターネット53、さらには携帯電話網54を通じて、異変が生じている車両10の持ち主である契約者が契約時に登録した通信端末(パーソナルコンピュータ50や携帯電話51)に送信する。受信した通信端末ではメールや音声による報知が行われる。これにより契約者は遠隔地にあっても車両10に異変が生じたことを知ることができる。
【0030】
制御装置40は異変の通報と同時に犯罪阻止行動を開始する。すなわち異変が生じている車両10あるいはその周辺に投光器42の光を当て、スピーカ43からは警告あるいは威嚇の音声を出し、監視カメラ44には犯行現場の撮影を行わせる。撮影した画像は、後日の犯罪捜査に役立てるため、画像蓄積処理装置45に蓄積する。制御装置40は、場合によっては契約警備会社あるいは警察に通報する。契約者が通信端末からアンサバックしてこれらの動作をコントロールするようにすることもできる。
【0031】
制御装置40は、異変だけでなく、車両10が無事であることのチェック(ヘルスチェック)を行い、契約者に通報する。すなわち車載監視ユニット20が車両10の異変を検知していないときは、制御装置40はその旨を所定タイミングで通信端末に送信する。これにより契約者は、車両10から離れた場所で安心して活動することができる。このような通報を煩わしく感じる契約者は、通報不要と登録しておけばよい。
【0032】
契約者が車両10を出庫するときは、携行している携帯ユニット21で車載監視ユニット20を機能解除し、警報の発生を止めてから車両10に乗車する。契約者用に渡された無線ICタグを着用していれば警報は生じないようにすることもできる。
【0033】
車載監視ユニット20の搭載又は無線ICタグの着用をゲート3の開門条件とすることができる。すなわち登録済みの車載監視ユニット20を搭載しているか、乗員が無線ICタグを着用している車両10のみに対しゲート3が開かれるようにする。これにより、契約車両以外の車両が駐車場1に進入することを防ぐことができる。
【0034】
制御装置40はウェブサーバ機能を内蔵し、ホームページを提供する。契約者はインターネット53でホームページを開き、警報を受信する電話番号やメールアドレスを随時変更できる。
【0035】
車載監視ユニット20が警告信号を発信したときだけ監視カメラ44を活動させるのでなく、監視カメラ44を常時監視態勢に置くこともできる。この場合、監視カメラ44は受持領域を常時撮像する。その画像を画像蓄積処理装置45が処理し、不審な動きが見られたときには所定の犯罪阻止行動、すなわち投光器42やスピーカ43による警告又は威嚇、また契約者への通報、さらには契約警備会社や警察への通報へと結びつけるようにすることができる。これにより、万一車載監視ユニット20が故障したとしても、監視に穴が生じない。
【0036】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は駐車場管理に広く利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】駐車場監視システムの概要図
【符号の説明】
【0039】
1 駐車場
10 車両
20 車載監視ユニット
21 携帯ユニット
30 保管庫
31 保管セル
32 音センサ
33 光センサ
34 振動センサ
40 制御装置(送信手段)
41 人感センサ
42 投光器
43 スピーカ
44 監視カメラ
45 画像蓄積処理装置
50 パーソナルコンピュータ
51 携帯電話
52 場内LAN
53 インターネット
54 携帯電話網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場に入庫した車両に搭載され、車両に異変が生じたときは無線で警告信号を発信する車載監視ユニットと、前記車載監視ユニットより発信された警告信号を受信し、人間の感知できる形の警報表示に変換する携帯ユニットと、前記車載監視ユニットの通信可能領域内に設置されるものであって、前記駐車場内の車両に属する前記携帯ユニットを個別に保管セルに収納する保管庫と、前記保管庫の個々の保管セルに設けられ、収納した前記携帯ユニットの警報表示を検知するセンサと、前記センサの検知内容を公衆通信網用通信内容に変換し、所定の通信端末に送信する送信手段とを備えることを特徴とする駐車場監視システム。
【請求項2】
前記送信手段は、前記車載監視ユニットが車両の異変を検知していないときは、その旨を所定タイミングで前記通信端末に送信することを特徴とする請求項1に記載の駐車場監視システム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−330915(P2006−330915A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151061(P2005−151061)
【出願日】平成17年5月24日(2005.5.24)
【出願人】(594197894)アイ電気通信株式会社 (4)
【Fターム(参考)】