説明

騒音減衰装置

【課題】「騒音発生スペース」が隣接した「騒音拒否スペース」に快適な作業スペースを提供でき、かつ騒音発生源の操作やメンテナンスなどを容易にする。
【解決手段】騒音発生スペースA(騒音源1はサーバー群)を囲う2辺に遮音壁4、他の2面側に境界線2を挟んで騒音拒否スペースBが位置する(a)。分割吸音板10、分割遮音板12を縦型ブラインドタイプで構成し、境界線2に沿って、天井面6から騒音源1側に分割吸音板10、騒音拒否スペースB側に分割遮音板12を吊って、間に幅Lの空気層14を挟んで配置する。分割吸音板10及び分割遮音板12の下縁と床面8との間には、隙間23cと隙間24c、分割吸音板10及び分割遮音板12の上縁と天井面6との間にも、隙間23bと24bを形成し(b)、騒音減衰装置30とする。全閉状態でも騒音発生スペースA側に冷気の流れ維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、室内に置かれたコンピュータサーバー、各種工作機械など騒音発生源を囲い、その騒音を減衰させるための騒音減衰装置に関する。特に、騒音発生源が同時に熱発生源である場合に有効である。
【背景技術】
【0002】
従来、騒音源に対して、防音シートを天井から巻き取り可能に取り付けた発明が提案されている(特許文献1)。この文献で、騒音源としてNC制御されるタレットパンチプレスを想定して、タレットパンチプレスを使用時は防音シートで覆い、金型及び材料の段取り換えの際には、防音シートを巻き取って収納する構造である。
【0003】
また、床に置いて使用する吸音パネルで、吸音板と遮音板とを空気層を挟んで構成した発明も提案がされていた(特許文献2)。この発明は、例えば騒音源として人の話声などを想定しており、会議スペースや病院の病室で使用して、有効な吸音効果を発揮できる提案をしている。
【0004】
また、コンピュータサーバーを使用する場合、昨今では、1台のラックに多数の単位コンピュータサーバーなどの電子機器を収納して電子機器収容箱としてサーバー群を構成していた。この電子機器収容箱内の単位コンピュータサーバーなどは、基板に組み込まれた半導体素子が発熱をするので、電子機器収容箱全体に冷却ファンを取り付け、さらに(あるいは)、個々の単位コンピュータサーバーの筐体に冷却ファンが組み込まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願平4−13997
【特許文献2】特開2009−264029
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1の発明では、防音シートの材質などに記載されていないが、容易に巻き取り可能な薄い材料を想定しており、防音シートの材質に応じた多少の遮音効果は期待できるものの、現実的には、騒音源のからの騒音を減衰させることは期待できない。また、防音シートの効果は単なる遮音であるので、防音シートを隙間無くボックス状に配置することが必須であり、防音シートと天井との間に隙間を設けることはできない。また、防音シートは設置状態と収納状態との2つの状態しか想定していない。
【0007】
また、特許文献2の発明では、騒音源に対する期待する騒音減衰効果を期待できるものの、床において使用するものであり、キャスターを設ければ移動は可能であるが、床面である程度の使用スペース、保管スペースを要する問題点があった。また、この吸音パネルを、特許文献1のような工作機械の周りに配置した場合には、地震時の不慮の転倒などの場合には、騒音源が精密機械の場合には、これを傷つけるおそれもあった。
【0008】
したがって、騒音源を含む騒音発生スペースと騒音拒否スペースとが区画される室内で、区画が開放される場合、例えば、騒音源を精密機械でありかつ発熱するコンピュタサーバーとして、コンピュータサーバーの周囲に事務作業スペース(騒音拒否スペース)を必要とする場合に、有効に適用できなかった。
【0009】
また、とりわけ騒音源として、コンピュータサーバーを多数収容した電子機器収容箱から構成したサーバー群を想定した場合、電子機器収容箱などに冷却ファンが組み込まれているために、サーバー群から騒音(サーバー自体の作動音、冷却ファンの音など)が発生していた。このため、このようなサーバー群を設置する場所によっては、サーバー群の周りで、日常の業務に支障をきたすこともあった。また、発熱もサーバー群の外へ放出する必要があった。また、サーバー群は精密機械の集合体であり、地震や不測の事態が生じたときに、特許文献2での吸音パネルでは、配置した吸音パネルが倒れ、サーバー群が破損するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこでこの発明では、室内を騒音発生スペースと騒音拒否スペースとに区画して境界線に沿って、所定距離を離した分割遮音板と分割吸音板からなる遮音部材を天井から吊って配置したので、前記問題点を解決した。
【0011】
すなわちこの発明は、平面視で、騒音発生源を含む「騒音発生スペース」と「騒音拒否スペース」が近接する室内空間において、以下のように構成したことを特徴とする騒音減衰装置である。
(1) 前記「騒音発生スペース」の外周で「騒音拒否スペース」とを隔てる境目を境界線とする。
(2) 少なくとも前記境界線に沿って、天井から下げた吸音遮音部材を配置する。
(3) 前記吸音遮音部材は、前記「騒音拒否スペース」側の天井から下げた分割遮音板と、前記騒音発生源側の天井から下げた分割吸音板と、前記分割遮音板と分割吸音板との間の10〜400mmの空気層とを含む構成とした。
(4) 前記分割遮音板は、水平方向又は垂直方向に分割された分割遮音板片からなり、前記分割遮音板は、隣接する分割遮音板片が重なるように変形可能とした。
(5) 前記分割吸音板は、水平方向又は垂直方向に分割された分割吸音板片からなり、前記分割吸音板は、隣接する分割吸音板片が重なるように変形可能とした。
(6) 前記分割遮音板と前記分割吸音板とは、それぞれ又は一体に、前記境界線に沿って移動可能に配置した。
(7)「前記吸音遮音部材の上縁と天井面との間」及び/又は「前記吸音遮音部材の下縁と床面との間」に空気が流れる隙間を形成する。
【0012】
また、他の発明は、平面視で、騒音発生源を含む「騒音発生スペース」と「騒音拒否スペース」が近接する室内空間において、以下のように構成したことを特徴とする騒音減衰装置である。
(1) 前記「騒音発生スペース」の外周で、「騒音拒否スペース」とを隔てる境目を境界線とする。前記「騒音発生スペース」の外周で、前記境界線以外の外周の一部又は全部に遮音壁の壁面が臨んでいる。
(2) 少なくとも前記境界線に沿って、天井から下げた吸音遮音部材を配置する。
(3) 前記吸音遮音部材は、前記騒音拒否スペース側の天井から下げた分割遮音板と、前記騒音発生源側の天井から下げた分割吸音板と、前記分割遮音板と分割吸音板との間の10〜400mmの空気層とを含む構成とした。
(4) 前記分割遮音板は、水平方向又は垂直方向に分割された分割遮音板片からなり、前記分割遮音板は、隣接する分割遮音板片が重なるように変形可能とした。
(5) 前記分割吸音板は、水平方向又は垂直方向に分割された分割吸音板片からなり、前記分割吸音板は、隣接する分割吸音板片が重なるように収納変形可能とした。
(6) 前記分割遮音板と前記分割吸音板とは、それぞれ又は一体に、前記境界線に沿って移動可能に配置した。
(8) 前記騒音発生スペースの外周で、遮音壁の壁面が臨む部分では、前記遮音壁の壁面と前記騒音発生源との空間に、固定吸音板又は分割吸音板を配置する。
(9) 前記固定吸音板又は分割吸音板と前記遮音壁の壁面との間に10〜400mmの空気層を形成した。
(9) 「前記吸音遮音部材の上縁と天井面との間」及び/又は「前記吸音遮音部材の下縁と床面との間」に空気が流れる隙間を形成する。
【0013】
また、前記各発明において、以下のように構成したことを特徴とする騒音減衰装置である。
(1) 騒音発生スペースの上方に、遮音面であるコンクリート天井面との間に所定間隙を空けて、略水平に吸音板を配置する。
(2) 前記天井の吸音板の下面と吸音遮音部材の上縁との間に空気が流れる隙間を形成する。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、「騒音拒否スペース」側の分割遮音板と、「騒音発生スペース」側の分割吸音板とを10〜400mmの空気層と設けて配置した吸音遮音部材を、両スペースの境界線に沿って配置したので、騒音発生源からの騒音が、事務作業スペースなどの「騒音拒否スペース」側に至ることを防止して、「騒音拒否スペース」に快適な作業スペースを提供できる。
【0015】
また、吸音遮音部材は、天井から吊った分割遮音板と分割吸音板とから構成したので、床に障害物が存在しないので、騒音発生源の操作やメンテナンスなどに支障が無い。また、吸音遮音部材を折り畳むことにより、境界線に沿って、水平方向又は垂直方向に必要なスペースを、容易に設けることができる。また、吸音遮音部材が不慮に落下した場合でも、分割吸音板を構成する分割吸音板片や、分割遮音板を構成する分割遮音板片が床で重なるので、騒音発生源を傷つけるおそれがない。
【0016】
また、吸音遮音部材の上縁と天井面との間」及び/又は「前記吸音遮音部材の下縁と床面との間」に空気が流れる隙間を形成したので、特に騒音源が熱を発する場合には、両スペースをまとめて空調した場合であっても、騒音源に熱がこもるおそれがなく、騒音源の機械装置が問題なく作動をすることができる。とりわけ、騒音源がコンピュータサーバーの場合などに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1(a)〜(d)はこの発明の実施態様の騒音発生スペースと騒音拒否スペースの配置を表す平面図である。
【図2】図2(a)は、図1(c)の場合に適用した実施形態の平面図、(b)はC−C線における断面図である。
【図3】図3は分割遮音版、分割吸音板の実施態様で、(a)は縦型ブラインドタイプの正面図、(b)はD−D線における一部拡大断面図、(c)は他のD−D線における一部拡大断面図、(d)は横型ブラインドタイプの正面図、をそれぞれ表す。
【図4】図4同じく分割遮音版、分割吸音板の実施形態で、(a)はカーテンタイプの正面図、(b)はE−E線における一部拡大断面図、(c)はロールカーテンタイプの正面図、をそれぞれ表す。
【図5】図5は、図1(c)の場合に適用した他の実施形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.適用する室内空間
【0019】
この発明を適用する室内空間は、騒音発生源1を持つ騒音発生スペースAと、例えば事務作業をする騒音拒否スペースBとが、近接している。騒音発生スペースAと騒音拒否スペースBとを隔てる境目を境界線2、2とする。
【0020】
(1) 室内空間のほぼ中央に四角形の騒音発生スペースAが位置して、騒音発生スペースAを囲うように、騒音拒否スペースB、Bが配置される場合で、騒音発生スペースAの四周に境界線2、2が位置する(図1(a))。
【0021】
(2) 室内空間の1面に遮音壁(コンクリート壁面)4を有し、その遮音壁4に寄って、騒音発生スペースAが位置する。したがって、略長方形の騒音発生スペースAの1面に遮音壁4が位置し、他の3面に、境界線2、2を介して騒音拒否スペースB、Bが位置する(図1(b))。
【0022】
(3) 室内空間の2面に遮音壁4、4を有し、交わった遮音壁4、4の角部に寄って、騒音発生スペースAが位置する。したがって、略長方形の騒音発生スペースAの2辺(2面)に遮音壁4、4が位置し、他の2辺(2面)に、境界線2、2を介して騒音拒否スペースB、Bが位置する(図1(c))。
【0023】
(4) 室内空間の3面に遮音壁4、4を有し、その遮音壁4、4に寄って、騒音発生スペースAが位置する。したがって、略長方形の騒音発生スペースAの3辺(3面)は遮音壁4、4が位置し、他の1辺(面)に、境界線2を介して騒音拒否スペースBが位置する(図1(d))。
【0024】
(5) 騒音発生スペースAの各辺で、境界線2に沿った位置に、分割吸音板10及び分割遮音版12を適用して、遮音壁4に沿った位置に分割吸音板10を適用する(図1(b)〜(d))。したがって、境界線2、2のみがあり遮音壁4がない場合(図1(a)の場合には、境界線2に沿った位置に、分割吸音板10及び分割遮音版12を適用する。
【0025】
2.吸音遮音部材
【0026】
(1) この発明の実施に適用する分割吸音板10は、例えば、繊維材料を圧縮して板状に形成した材料を短冊状に形成した分割吸音板片10a、10aを使用し、例えば、以下のように形成する。
【0027】
(a) 短冊状の分割吸音板片10aの1枚(縦長に配置)を縦型ブラインドのスラットとして、スラブの天井面6にレールを取り付け、このレール11から吊る構造とすることができる(図3(a))。この場合、縦型ブラインドと同様に、個々のスラット(分割吸音板片10a)を回転させれば、その場でスラット(分割吸音板片10a)の間にスペースを確保できる。よって、上のスラットの上方、下のスラットの下方にそれぞれ、必要量の空気を通す隙間を形成でき、騒音源からの騒音を減衰させつつ両スペースA、B間に空気の流れをつくることができる。空気を流すことにより、騒音発生スペースAと騒音拒否スペースBとの間を換気し、騒音発生スペースAの熱を逃がし、騒音拒否スペースB側の冷気を騒音発生スペースA側に取り入れることができる。
また、縦型ブラインドと同様に、スラット(分割吸音板片10a)をレールの一方の側に束ねれば、分割吸音板片10aであるスラットを重ねて、境界線2の一部に床面8から天井面6までの空いたスペースを確保できる。
この場合、個々の分割吸音板片10aをカーテン用などの生地21で包み(図3(b))、あるいは、並べた状態の分割吸音板片10a、10aの全体をカーテン用などの生地21で包んで連結した状態で(図3(c))、分割吸音板10とすることもできる。
【0028】
(b) 短冊状の分割吸音板片10aの1枚(横長に配置)を横型ブラインド(ベネチアブラインド)のスラットとして、天井面6のレール11から吊る構造とすることができる(図3(d))。この場合、通常の横型ブラインドと同様に、個々のスラット(分割吸音板片10a)を回転させれば、その場でスラット(分割吸音板片10a)の間にスペースを確保できる。よって、上下のスラットの間に、必要量の空気を通す隙間を形成でき、騒音源からの騒音を減衰させつつ両スペースA、B間に空気の流れをつくることができる。
また、横型ブラインドと同様に、スラット(分割吸音板片10a)を上に上げて束ねれば、分割吸音板片10aであるスラットを重ねて、境界線2で床面8から天井面6まで一部の高さに空いたスペースを確保できる。
この場合、個々の分割吸音板片10aをカーテン用などの生地21で包み(図3(b)参照)、あるいは、並べた状態の分割吸音板片10aの全体を生地21で包むこともできる(図3(c)参照)。
【0029】
(c) 短冊状の分割吸音板片10a、10aを縦長に置いて横方向に並べて、両側から全体をカーテン用の生地21で挟んで、通常のカーテンと同様の構成として分割吸音板10とする(図4(a)、(b))。カーテン同様に、分割吸音板10を水平方向に引けば、分割吸音板片10a、10aを束ねて、境界線2でカーテンのあったスペースを開放できる。
【0030】
(d) 短冊状の分割吸音板片10a、10aを横長に置いて縦方向に並べて、両側から全体をカーテン用の生地21で挟んで、通常のロールカーテンと同様の構成として分割吸音板10とする(図4(c))。ロールカーテン同様に、下端から丸めれば、分割吸音板片10a、10aを束ねて、境界線2で下方のスペースを開放できる。
【0031】
(e) また、前記において、分割吸音板10は、例えば、以下のようにして製造した材料を使用する。天然繊維と化学繊維とからなるリサイクル繊維原料を解繊し、バインダー樹脂として、これにPET樹脂繊維を混合して原反を作り、この原反を50℃〜150℃程度に加熱し冷熱ロールを使用して、面重量0.5〜1.0kg/m、空気流れ抵抗値1000〜4000N・s/mの繊維硬質板を形成して、この繊維硬質板から吸音板1を構成する。
【0032】
(3) 分割吸音板片10aは、上記繊維材料を圧縮した構造以外に他の構造とすることもできる。また、分割吸音板片10aは短冊状としたが、(c)(d)の場合には、棒状やパイプ状に形成することもできる(図示していない)。
【0033】
(4) この発明の実施に適用する分割遮音板12は、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)などの比較的固い樹脂材料を短冊状(板状)に形成した分割遮音版片12a、12aを多数並べて構成する。また、分割遮音版片12aは以下のように構成することもできる(図示していない)。
即ち、比較的固くかつ軽量な板状のその他の樹脂材料(例えば、ポリカーボネート(PC))、アルミニウムなどの金属材料などを使用することが望ましい。ただし、騒音発生機器が比較的頑丈な場合には、分割遮音版片12aとして鋼板やコンクリート系の板材などある程度重量が有る材料を使用することもできる(図示していない)。また、シート状で空気を通さない材料であれば、ある程度の遮音性能は発揮できるので、高い遮音性性能を要求しない場合には、シート状の材料や柔軟な樹脂材料や紙や木材などを使用することもできる(図示していない)。
(a)短冊状の分割遮音板片12aの1枚を縦型ブラインドのスラットとして、天井面6のレール13から吊る構造として分割遮音板12を構成することができる(図3(a))。
(b)短冊状の分割遮音板片12aの1枚を横型ブラインド(ベネチアブラインド)のスラットとして、天井面6のレール13から吊る構造として分割遮音板12を構成することができる(図3(d))。
【0034】
3.騒音減衰装置の構成(縦型ブラインドタイプ)
【0035】
(1) 分割吸音板10、分割遮音板12を、縦型ブラインドタイプで構成する(図3(a))。
【0036】
(2) コンクリート製の遮音壁が直角に2面が交わった隅部に騒音発生スペースがある実施例(図1(c))について適用する(図2)。
騒音発生スペースAの中心に騒音発生源1が位置する。騒音発生源1は、多数のコンピュータサーバーからなるサーバー群とする。
平面長方形の騒音発生スペースAで、2辺にコンクリート壁(遮音壁4)が位置し、他の2面側に騒音拒否スペースBが位置し、境目を境界線2、2とする。
【0037】
(3) 境界線2に沿って、天井面6にレール11、13を取り付け、境界線2に沿って、騒音源1側に分割吸音板10、10、騒音拒否スペースB側に分割遮音板12、12を配置する。分割吸音板10と分割遮音版11とを距離Lを空けてあり、幅Lの空気層14が形成される。
分割吸音板10は、分割吸音板片10a、10aを縦型ブラインドのスラットとして使用して、天井面6に形成したレール11から吊ってある。また、分割吸音板片10a(分割吸音板10)の下縁10cと床面8との間には、距離H11(空調の空気の流れを作ることができる程度)の隙間23cを形成する。また、分割吸音板片10a(分割吸音板10)の上縁10bと天井面6との間にも、空調の空気の流れをつくることができる程度の隙間23bを形成する(図2(b))。
また、分割遮音板12は、分割遮音板片12a、12aを縦型ブラインドのスラットとして使用して、天井面6に形成したレール13から吊ってある。また、分割遮音板片12a(分割遮音板12)の下縁12cと床面8との間には、距離H12の隙間24cを形成する。また、分割遮音板片12a(分割遮音板12)の上縁12bと天井面6との間にも、空調の空気の流れをつくることができる程度の隙間24bを形成する(図2(b))。
隙間23b、23c、24b、24c、は、騒音拒否スペースBでの作業者の頭(耳)の位置から充分に低く、あるいは充分に高いので騒音減衰の効果よりも空気の流れを作って、騒音発生源1であるサーバー群の加熱を防止することができる。
【0038】
(4) 騒音発生スペースAの遮音壁4、4側の2辺では、遮音壁4から距離Lを空けて、分割吸音板10を配置する。
分割吸音板10は、境界線2に配置した分割吸音板10と同じ構成で、分割吸音板片10aを縦型ブラインドのスラットとして使用して、天井面6に形成したレール11から吊ってある。また、分割吸音板片10a(分割吸音板10)の下縁と床面8との間には、距離Hの隙間を形成する。なお、空気の流れを作るという視点からは距離Hは省略することもできる(図示していない)。
【0039】
(5) 前記における、幅L、L、Lの空気層は、50mm〜200mmの範囲で設定することが望ましい。ここで、50mm以下では、分割吸音板10を透過した音波、さらに遮音板又は分割遮音板12で反射した音波を減衰させる効果が十分ではない。また、200mm以上では、スペースの増加の割に、上記音波の減衰の効果の増加が少なく、効率的でない。
なお、距離L、L、Lは、上記値が望ましいが、10〜400mmとすることもできる。大きな減衰効果を望まない場合には10〜50mmとし、また、騒音発生スペースA又は騒音拒否スペースBで十分な利用スペースがある場合には、200〜400mmとすることが有効な場合もある。
【0040】
(6) 以上のようにして、この発明の騒音減衰装置30を構成する(図2(a)(b))。
【0041】
4.騒音減衰装置30の使用
【0042】
(1) 通常は、分割吸音板10、10、分割遮音板12、12を全閉状態で、騒音発生スペースAを覆えば、騒音源1から発生する騒音は、分割吸音板10で吸音され、空気層14、16で減衰して遮音壁4の表面、分割遮音板12の表面で反射して、再度空気層14、16で減衰して分割吸音板10、10に吸音される。また、騒音源1の上方でも、吸音板18で吸音され、空気層19で減衰して天井面6の下面で反射して、再度空気層19で減衰して吸音板180に吸音される。したがって、騒音拒否スペースB側に漏れる音を極めて小さく減衰させることができる。
また、騒音源1であるサーバー群は通常発熱するので、冷却を伴うが、境界線2に沿って分割遮音板12、分割吸音板10が配置されているので、熱的にも(発熱した空気や冷却した空気)、騒音発生スペースAと騒音拒否スペースBとが区画されるので、騒音拒否スペースBでの事務作業に影響を極めて少なくできる。
【0043】
(2) 前記のように、境界線2を跨いでより空気の流れを多くする場合には、分割吸音板10の分割吸音板片10a、10a、分割遮音板12の分割遮音版片12a、12aをブラインドのスラットと同様に、その位置で回転させれば、分割吸音板片10a、10a同士、分割遮音版片12a、12a同士の間に隙間を形成することできる。
【0044】
(3) また、騒音源1であるサーバー群をメンテナンスする場合には、分割吸音板10の分割吸音板片10a、10a、分割遮音板12の分割遮音版片12a、12aを、通常のスラットと同様に、レール11、13に沿って一側(例えば図2(a)で遮音壁4a側)に寄せれば、境界線2に沿って開放でき、効率よくメンテナンスができる。
【0045】
5.他の実施形態
【0046】
(1) 前記実施形態において、境界線2は直線状に形成したが、曲線状(円弧状)に形成することもできる(図5)。この場合にも、円弧状の境界線2に沿って、吸音遮音部材(分割吸音板10、空気層14、分割吸音材12)を配置して、天井面6から吊る。
【0047】
(2) また、前記実施形態において、騒音発生スペースAの天井面6には、天井面6(コンクリートスラブ下面)から距離Lを空けて、分割吸音板片10aと同一材料の吸音板18を配置することもできる(図2(b)鎖線図示18)。この場合、天井面6と吸音板18の上面18aとの間に幅Lの空気層19が形成される。また、この場合には、吸音板18の下面18bより下方に、隙間23b、24b(即ち、分割吸音板片12aの上縁12b、分割遮音板片12aの上縁12b)が位置するようにすれば、空調空気の流れができるので望ましい(図示していない)。
【符号の説明】
【0048】
1 騒音源
2 境界線
4 遮音壁(コンクリート壁面)
6 天井面(コンクリートスラブ下面)
8 床面(コンクリートスラブ上面)
10 分割吸音板
10a 分割吸音板片
10b 分割吸音板片の上縁
10c 分割吸音板片の下縁
11 分割吸音板のレール
12 分割遮音板
12a 分割遮音板片
12b 分割遮音板片の上縁
12c 分割遮音板片の下縁
13 分割遮音板のレール
14 空気層(分割吸音板と分割遮音板の間)
16 空気層(分割吸音板と遮音壁の間)
18 吸音板
19 空気層(吸音板と天井面の間)
21 布地
23a、23b、24b、24c 間隙
30 騒音減衰装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で、騒音発生源を含む「騒音発生スペース」と「騒音拒否スペース」が近接する室内空間において、以下のように構成したことを特徴とする騒音減衰装置。
(1) 前記「騒音発生スペース」の外周で「騒音拒否スペース」とを隔てる境目を境界線とする。
(2) 少なくとも前記境界線に沿って、天井から下げた吸音遮音部材を配置する。
(3) 前記吸音遮音部材は、前記「騒音拒否スペース」側の天井から下げた分割遮音板と、前記騒音発生源側の天井から下げた分割吸音板と、前記分割遮音板と分割吸音板との間の10〜400mmの空気層とを含む構成とした。
(4) 前記分割遮音板は、水平方向又は垂直方向に分割された分割遮音板片からなり、前記分割遮音板は、隣接する分割遮音板片が重なるように変形可能とした。
(5) 前記分割吸音板は、水平方向又は垂直方向に分割された分割吸音板片からなり、前記分割吸音板は、隣接する分割吸音板片が重なるように変形可能とした。
(6) 前記分割遮音板と前記分割吸音板とは、それぞれ又は一体に、前記境界線に沿って移動可能に配置した。
(7) 「前記吸音遮音部材の上縁と天井面との間」及び/又は「前記吸音遮音部材の下縁と床面との間」に空気が流れる隙間を形成する。
【請求項2】
平面視で、騒音発生源を含む「騒音発生スペース」と「騒音拒否スペース」が近接する室内空間において、以下のように構成したことを特徴とする騒音減衰装置。
(1) 前記「騒音発生スペース」の外周で、「騒音拒否スペース」とを隔てる境目を境界線とする。前記「騒音発生スペース」の外周で、前記境界線以外の外周の一部又は全部に遮音壁の壁面が臨んでいる。
(2) 少なくとも前記境界線に沿って、天井から下げた吸音遮音部材を配置する。
(3) 前記吸音遮音部材は、前記騒音拒否スペース側の天井から下げた分割遮音板と、前記騒音発生源側の天井から下げた分割吸音板と、前記分割遮音板と分割吸音板との間の10〜400mmの空気層とを含む構成とした。
(4) 前記分割遮音板は、水平方向又は垂直方向に分割された分割遮音板片からなり、前記分割遮音板は、隣接する分割遮音板片が重なるように変形可能とした。
(5) 前記分割吸音板は、水平方向又は垂直方向に分割された分割吸音板片からなり、前記分割吸音板は、隣接する分割吸音板片が重なるように収納変形可能とした。
(6) 前記分割遮音板と前記分割吸音板とは、それぞれ又は一体に、前記境界線に沿って移動可能に配置した。
(8) 前記騒音発生スペースの外周で、遮音壁の壁面が臨む部分では、前記遮音壁の壁面と前記騒音発生源との空間に、固定吸音板又は分割吸音板を配置する。
(9) 前記固定吸音板又は分割吸音板と前記遮音壁の壁面との間に10〜400mmの空気層を形成した。
(9) 「前記吸音遮音部材の上縁と天井面との間」及び/又は「前記吸音遮音部材の下縁と床面との間」に空気が流れる隙間を形成する。
【請求項3】
以下のように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の騒音減衰装置。
(1) 騒音発生スペースの上方に、遮音面であるコンクリート天井面との間に所定間隙を空けて、略水平に吸音板を配置する。
(2) 前記天井の吸音板の下面と吸音遮音部材の上縁との間に空気が流れる隙間を形成する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−80110(P2013−80110A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220106(P2011−220106)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000220169)東京ブラインド工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】