骨に付着させる方法及び装置
【課題】インプラントに骨を付着させることを目的とする方法及び装置を開示する。
【解決手段】いくつかの態様は、インプラントの部分であり得る、石灰化コラーゲン性の足場などの、改質された基材を目的とする。この基材は、コラーゲン系材料及びリン酸カルシウム系材料を含む多孔質構造体を有することができる。場合によっては、コラーゲンは、コラーゲン原線維として処理され、ヒドロキシアパタイトは、この原線維及び多孔質構造体の上にコーティングすることができる。多孔質構造体は三次元であることができ、それへの骨の内方成長を促進することができる。1つ以上の生理活性剤を改質された基材に結合することができ、これは更に骨成長を促進することができる。このような改質された基材、並びにこのような材料を製造及び利用するための技術に関する更なる詳細もまた開示される。
【解決手段】いくつかの態様は、インプラントの部分であり得る、石灰化コラーゲン性の足場などの、改質された基材を目的とする。この基材は、コラーゲン系材料及びリン酸カルシウム系材料を含む多孔質構造体を有することができる。場合によっては、コラーゲンは、コラーゲン原線維として処理され、ヒドロキシアパタイトは、この原線維及び多孔質構造体の上にコーティングすることができる。多孔質構造体は三次元であることができ、それへの骨の内方成長を促進することができる。1つ以上の生理活性剤を改質された基材に結合することができ、これは更に骨成長を促進することができる。このような改質された基材、並びにこのような材料を製造及び利用するための技術に関する更なる詳細もまた開示される。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、全て同日に申請された以下の3つの出願に関する:(i)表題が「マイクロ及びナノスケールの表面非平滑化チタンを含有する物品及びその製造方法(Micro and Nano Scale Surface Textured Titanium-Containing Articles and Methods of Producing Same)」であり、発明者がウェイドン・トン(Weidong Tong)及びラリー・サルバティ(Larry Salvati)であり、代理人整理番号JJDO−0028(DEP 6160)により指定される米国特許出願、(ii)表題が「高湿潤性を有するナノ非平滑化コバルト−クロム合金物品及びその製造方法(Nanotextured Cobalt-Chromium Alloy Articles having High Wettability and Method of Producing Same)」であり、発明者がウェイドン・トン及びラリー・サルバティであり、代理人整理番号JJDO−0017(DEP 6015)により指定される米国特許出願、並びに(iii)表題が「リン酸カルシウムを用いるインプラントのための方法及び装置(Methods and Devices for Implants with Calcium Phosphate)」であり、発明者がウェイドン・トン、ラリー・サルバティ及びプージャ・カダムビ(Pooja Kadambi)であり、代理人整理番号102737−17(DEP 6090)により指定される米国特許出願。これにより、これら3つの出願全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔発明の分野〕
本出願の産業上の利用分野は、一般に、加工された基材、特に医療用インプラントの部分としての使用のためにこのような基材の特性を改良するのにこのような基材を改質することを目的とする
【0003】
〔背景技術〕
患者における置換構造体として使用するための医療用インプラントは、広く応用されている。特に、関節又は他の構造体を置換するための整形外科用インプラントは、非常に大きな商業的及び科学的関心を受けている。多くの場合、整形外科用インプラントは、骨に近接して位置付けられる多孔質金属性表面を有する。セメント又は他の接着剤の代わりにインプラントを長期間、機械的に固定することは、近接する骨の、インプラントの表面上への成長及び/又はインプラントの表面上の多孔質構造体の中への内方成長によって達成することができる。
【0004】
長期間の固定を促進するためには、早期のインプラント定着が重要な要因である。固定は、宿主骨からインプラント表面へ向かう骨成長により進行し、これは典型的にはインプラントが被移植者に挿入された約3週間後に開始され得る。インプラントの進行性安定化がいったん達成されると、新しい骨がインプラント表面とオリジナルの近接する骨の表面との間の間隙を架橋する。それゆえに、インプラント固定を改善するためには、例えば、新しい骨の成長を促進することにより、セメント固定されていないインプラントに骨が付着することの促進を助けることができる新たな方法及び材料を開発することが、有利であり得る。
【0005】
〔発明の概要〕
骨への固定を促進するためのインプラントについて、いくつかの例示的な実施形態が記載される。このインプラントは、多孔質網状組織を有し得る改質された部分を持つ基材を含む。いくつかの実施形態では、多孔質網状組織は三次元性であり得、かつ/又は、非平滑化表面を含み得る。多孔質網状組織は、金属性材料(例えば、金属性多孔質網状組織)を含むことができ、この金属性材料はコバルト、クロム及びチタンのうちの1つ以上を含むことができる。多孔質網状組織は、基材の一体部分として形成することができ、又は基材本体に付着した複数の要素を含むことができる。
【0006】
コラーゲン系材料をこの網状組織の少なくとも一部に分布させることができる。コラーゲン系材料の一例はI型コラーゲンであるが、コラーゲンの他の型及び混合物もまた利用することができる。コラーゲン系材料はコラーゲン原線維を含むことができ、コラーゲン原線維は所望により架橋することができる。場合によっては、コラーゲン系材料自体が多孔質構造体を形成する。同様に、アパタイトなどのリン酸カルシウム系材料をこの基材の改質された部分の少なくとも一部の上に分布させることができる。例えば、リン酸カルシウム系材料を多孔質網状組織及び/又はコラーゲン系材料上に分布させることができる。改質された部分及びリン酸カルシウム系材料は、骨へのインプラントの固定を促進する石灰化コラーゲン性の足場の少なくとも一部を形成することができる。
【0007】
インプラントはまた、展延された構造体を含むことができる。このような構造体は、多孔質網状組織と接触することができ、多孔質構造体を有することができ、この多孔質構造体は骨と面するように向かわせることができる。場合によっては、展延された多孔質構造体はコラーゲンを含むことができ、コラーゲンはインプラントの中への骨の内方成長の促進を助けることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の生理活性剤を基材の改質された部分及び/又は展延された構造体に結合させることができる。生理活性剤の例には、骨髄細胞、骨前駆細胞、薬理学的作用剤、抗生物質、血漿、血小板、形質転換成長因子、血小板由来成長因子、血管新生成長因子、副甲状腺ホルモン関連たんぱく質、細胞接着調節ペプチド、フィブロネクチン類似ペプチド、抗菌剤、鎮痛剤、及び抗炎症薬のうちの1つ以上が挙げられる。
【0008】
他の例示的な実施形態は、石灰化コラーゲン性の足場を調製するための方法を目的とし、この足場はインプラント内での骨固定を促進することができる。コラーゲン系材料は、基材の多孔質網状組織に曝露することができる。リン酸カルシウム系材料は、コラーゲン系材料、多孔質網状組織、又はこれらの両方の上に堆積して、インプラントの石灰化コラーゲン性の足場を形成することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、多孔質網状組織は、金属を含むことができ、多孔質金属性網状組織を形成することができる。場合によっては、非平滑化表面が、例えば、網状組織が他の材料に曝露される前に、多孔質網状組織の少なくとも一部の上に形成される。コラーゲン系材料の曝露は、コラーゲン含有混合物に多孔質網状組織の少なくとも一部を曝露することにより、行うことができる。コラーゲン原線維は、多孔質網状組織内の混合物から形成することができ、所望により架橋させることができる。場合によっては、酸性コラーゲン含有混合物を使用することができ、これは溶液の形態であり得る。コラーゲン含有混合物よりも酸性度の低い混合物への多孔質網状組織の曝露(例えば、浸漬)は、コラーゲン原線維を生じさせることができる。多孔質網状組織内における混合物の移送を促進するために、真空を使用することができる(例えば、網状組織を真空に曝露して、それを通してコラーゲン含有混合物及び/又はより酸性度の低い混合物を移送する)。真空技術はまた、流体含有状態で処理されるとき、リン酸カルシウム系材料を移送するためにも使用することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、コラーゲン系材料と混合するために、1つ以上の生理活性剤を適用することができる。生理活性剤は、前述の作用剤について任意の1つ以上を含むことができる。生理活性剤の移送を推進するために、真空又は圧力差を使用することができる。
【0011】
被験者内のインプラントの骨の固定を促進するための方法について、他の例示的な実施形態が記載される。本明細書に開示される実施形態のいずれかに一致するインプラントを提供することができる。例えば、インプラントの表面の少なくとも一部を形成する改質された部分を含む基材を提供することができる。改質された部分は、多孔質網状組織(例えば、金属性多孔質網状組織)を含むことができる。コラーゲン系材料(例えば、I型コラーゲン原線維又は本明細書に記載されるコラーゲンの任意の他の処置)を多孔質網状組織の少なくとも一部に分布させることができる。同様に、リン酸カルシウム系材料をインプラントの改質された部分の少なくとも一部の上に分布させることができる。骨固定を促進するために、基材/インプラントを被験者の骨に近接して植え込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の態様は、以下の詳細な説明を添付の図面(必ずしも等尺で描図されていない)と併せて解釈することにより、より完全に理解されるであろう。
【図1】本発明のいくつかの実施形態に従う、多孔質構造体を有し、その中にコラーゲン系材料が処理されている改質された基材の概略断面側面図。
【図2】本発明のいくつかの実施形態に従う、骨の部分に近接して配置された図1の改質された基材の概略断面側面図。
【図3】本発明のいくつかの実施形態に従う、多孔質構造体を有し、その中にコラーゲン系材料及び生理活性剤が位置する改質された基材の概略断面側面図。
【図4】本発明のいくつかの実施形態に従う、骨の部分に近接して配置された図3の改質された基材の概略断面側面図。
【図5】本発明のいくつかの実施形態に従う、多孔質構造体が骨部分に向かって間隙を超えて展延する、改質された基材の概略断面側面図。
【図6】本発明のいくつかの実施形態に従う、生理活性剤が装填された図5の改質された基材の概略断面側面図。
【図7A】本発明のいくつかの実施形態に従って使用できる非平滑化ビーズの概略断面側面図。
【図7B】本発明のいくつかの実施形態に従う、コラーゲン系材料を含有する混合物中に浸漬されたビーズの概略断面側面図。
【図7C】本発明のいくつかの実施形態に従う、コラーゲン原線維がビーズ間のスペースに存在するビーズの概略断面側面図。
【図7D】本発明のいくつかの実施形態に従う、コラーゲン原線維がビーズ間のスペースに存在し、リン酸カルシウム系材料が原線維とビーズに粘着しているビーズの概略断面側面図。
【図8】本発明のいくつかの実施形態に従う、改質された基材の部分を加工するために使用できる装置の概略断面側面図。
【図9】本発明のいくつかの実施形態に従う、I型コラーゲンがビーズに粘着しており、2つのビーズの間に架橋を形成しているポロコート(Porocoat)ビーズを示す顕微鏡写真の複写。
【図10A】本発明のいくつかの実施形態に従う、表面上でマイクロ非平滑化され、ビーズの上及び間にコラーゲン原線維を有するポロコートビーズを示す顕微鏡写真の複写。
【図10B】図10Aに描写された構造体を示す高倍率を有する顕微鏡写真の複写。
【図10C】図10A及び図10Bに示されたビーズのマイクロ非平滑化表面を示す顕微鏡写真の複写。
【図11】本発明のいくつかの実施形態に従う、エッチングされていないポロコートディスクに粘着しているコラーゲンの量に対して、エッチングされたポロコートディスクに粘着しているコラーゲンの量を比較する棒グラフ。
【図12A】本発明のいくつかの実施形態に従う、表面上でナノ非平滑化され、ビーズの上及び間にコラーゲン原線維を有するポロコートビーズを示す顕微鏡写真の複写。
【図12B】図12Aに描写された構造体を示す高倍率を有する顕微鏡写真の複写。
【図12C】図12A及び図12Bに示されたビーズのナノ非平滑化表面を示す顕微鏡写真の複写。
【図13A】本発明のいくつかの実施形態に従う、ヒドロキシアパタイトがビーズ及びコラーゲン原線維の一部をコーティングする図12Aに描写されたポロコートビーズ及びコラーゲン原線維試料を示す顕微鏡写真の複写。
【図13B】図13Aに描写された構造体を示す高倍率を有する顕微鏡写真の複写である。
【図13C】ヒドロキシアパタイトの補助によりポロコートビーズに付着したコラーゲン原線維を示す図13Bの部分の更に拡大された顕微鏡写真の複写。
【0013】
〔実施形態の詳細な説明〕
本明細書に開示される装置の構造、機能、製造及び使用並びに方法の原理について全体的な理解を提供するために、特定の例示的な実施形態について以下に説明する。これらの実施形態の1つ以上の例を添付の図面に示す。当業者は、本明細書で明確に記載され、添付の図面に示される装置及び方法が、非限定の例示的な実施形態であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみにより定義されることを認識するであろう。1つの代表的な実施形態に関連して図示又は説明する特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることも可能である。こうした改変及び変形は本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態は、骨の固定を促進できる基材及び処置を目的とする。場合によっては、基材は表面を有し、この表面は多孔質金属性構造体を伴って含むことができ、多孔質金属性構造体はその上及び/又は中にコラーゲン系材料(例えば、I型コラーゲン原線維)を分布させている。ヒドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム系材料もまた、基材及び/又はコラーゲン系材料の上/中に分布させることもできる。このような基材は、石灰化コラーゲン性の足場を形成することができ、この足場は骨伝導性であることができ、例えば、基材への骨の固定を促進する。このような基材は、骨芽細胞などの生理活性剤と組み合わせて、基材が医療用インプラントの一部として使用されるときに骨の成長及び付着の促進を助けることができる。このような基材に関する更なる詳細及び変形並びにこのような材料を製造するための方法を、以下に詳細に明らかにする。
【0015】
本明細書における多くの実施形態では、記載される構造体及び/又は方法は、被験者に供されるためのインプラントに関して利用することができる。いくつかの実施形態では、インプラントは、体の任意の好適な部分、例えば、体の中の関節の構成要素、のための人工装具として使用することができる。したがって、いくつかの実施形態に従うインプラントは、例えば、整形外科用臀部インプラントの構成要素、整形外科用膝インプラントの構成要素、整形外科用肩インプラントの構成要素、整形外科用肘インプラントの構成要素、整形外科用足首インプラントの構成要素、整形外科用指インプラントの構成要素、整形外科用脊椎ディスクインプラントの構成要素、整形外科用顎関節(顎)インプラントの構成要素及び他の人工装具などの整形外科用インプラントの構成要素としての使用を見出すことができる。
【0016】
改質された基材
本発明のいくつかの例示的な実施形態が、図1に示される人工装具などのインプラントの概略図を参照して、記載される。インプラントの部分は、改質された基材及びそれが対応する表面を含み、その表面は骨部分に面するように構成することができる。改質された基材はまた、多孔質網状組織を含むことができる。図1に対応する特定の実施形態に関して、基材100は、複数の要素130が本体の表面150上に分布された本体部分110を含み、要素130は多孔質網状組織120を形成する。コラーゲン系材料は、多孔質網状組織120の孔の中に分布させることができる。図1に対応する例では、コラーゲン系材料はコラーゲン原線維であることができ、多孔質スペースが網状組織120内に依然として維持されるように、コラーゲン原線維を要素130上及び/又は要素の間に分布させることができる。リン酸カルシウム材料はまた、多孔質網状組織120内に分布させることもできる。
【0017】
図1に関して明確に述べられた実施形態に従う構造体は、本発明のいくつかの実施形態を示すのみであることが理解される。実際、図1及び本出願における他の図における特徴の任意の置換と組み合わせを、本発明のいくつかの態様に従う実施形態を実践するために組み合わせることができる。他の実施形態は、他の特徴を含むこと、又は図1の実施形態の特徴に修正及び/若しくは変形を加えることができる。図1の実施形態のいくつかの態様は、本明細書に更に詳細に記される。要素に関して論じられる任意の数の態様は、本発明の範囲に従って、他の要素と組み合わせること、又は個々に実践することができる。
【0018】
基材の多孔質網状組織は一般に、種々のサイズ及び形状に実体化することができる。いくつかの実施形態では、多孔質網状組織は、三次元の網状組織を含み、すなわち、網状組織の孔は任意の寸法で方向を有することができる。このような網状組織は、種々の構造体(例えば、開放及び/又は閉鎖セル)を有することができ、化学的及び/又は機械的技術での基材表面のエッチングなどの種々の方法により形成することができる。いくつかの実施形態では、例えば、図1及び2に示されるように、複数の要素を使用して、基材表面上に多孔質網状組織を形成することができる。複数の要素は、粒子、メッシュ、ワイヤ、他の基本的構造体及びこのような要素の組み合わせなどの種々の物体であり得る。いくつかの実施形態では、要素の少なくとも1つの寸法で約0.1μm〜約10mmの範囲の平均サイズを有するように、要素をサイズ決めする。例えば、ビーズ又は不規則形状粒子などの粒子は、約250μmの平均有効直径で利用することができる。不規則形状粒子の平均有効直径は、各粒子の正確なサイズを測定せずに値を得る方法(例えば、吸着等温式)などの当業者に既知の任意の方法のいずれかを使用して測定することができる。他の実施形態では、網状組織を含む要素の平均最小寸法の少なくとも約2倍の深さを多孔質網状組織が有するように、要素を準備する。例えば、ビーズを基材上に分布させて、ビーズの深さが平均ビーズ直径の約3倍である多孔質表面を形成することができる。
【0019】
多孔質網状組織の固体部分及び/又は基材の組成物は、本明細書に記載される実施形態に好適に従う任意のものであり得る。金属、セラミックス、ポリマーなどの材料及び他の材料を、材料の複合体を含めて、利用することができる。いくつかの実施形態では、多孔質網状組織の固体部分は金属性であり得る。広くは、用語「金属性」は、少なくともいくらかのバルク金属質を有する物体を記述するために使用される。したがって、金属性多孔質網状組織及び金属性基材は、バルク金属の特性と同様な少なくとも1つの特性を呈する。例えば、金属不純物の微量混入物を有する非金属性材料は、金属性材料の説明から除外することができる。例示的な金属性材料には、チタン系材料、チタン系合金及びクロム系合金(例えば、コバルト−クロム合金又はコバルト−クロム−モリブデン合金)などの被験者内の医療用移植に好適なものが挙げられる。1つの特定例には、多孔質網状組織を形成するための、コバルト−クロム合金製のポロコート(Porocoat)(登録商標)多孔質コーティング(Porous Coating)ビーズの使用が挙げられる。多孔質網状組織はまた、例えば、骨梁化金属の部分であるといったように、基材と一体形成することもできる。
【0020】
いくつかの実施形態では、基材及び/又は多孔質網状組織の表面は、その表面への1つ以上の構成要素の結合を増強するために処理することができる。例えば、処理が作用して、表面をより親水性にすることができ、これは潜在的にはコラーゲンの分布及び/又は付着において強力な補助となることができる。例えば、プラズマ処理、又は酸/塩基溶液及び/若しくは界面活性剤での処理は、表面の親水性を変えることができる。別の例では、表面を非平滑化して、平滑な表面と比較してその相対表面積を増加することができる。粗化表面は、その表面へのコラーゲン系材料の付着を増強するのを助けることができる。化学エッチング、グリットブラスティング並びに他の化学的及び/又は機械的技術などの当業者に既知のものを含む任意の数の技術を使用して、粗化を達成することができる。中でも、クロム含有合金に対しての化学エッチング技術のいくつかの例が、表題が「非平滑化表面を有するインプラント及びその製造方法(Implants with Textured Surface and Methods for Producing the Same)」である米国特許第7,368,065号に記載されており、これによりその全体が参照により本明細書に組み込まれる。クロム含有合金上のナノエッチングは、同時に申請された、表題が「高湿潤性を有するナノ非平滑化コバルト−クロム合金物品及びその製造方法(Nanotextured Cobalt-Chromium Alloy Articles having High Wettability and Method of Producing Same)」であり、発明者がウェイドン・トン(Weidong Tong)及びラリー・サルバティ(Larry Salvati)であり、代理人整理番号JJDO−0017(DEP 6015)により指定される米国特許出願に記載されているものなどの種々の技術を使用して行うことができる。
【0021】
非平滑化は、使用される技術に依存して種々の形状及びサイズを有することができる。非平滑化表面の「サイズ」とは、当業者により理解されるように、非平滑構造体のサイズ特徴を示す固有の長さスケールを指す。状況によっては、グリットブラスティングを使用して、マクロスケール、例えば、約数百マイクロメートル以上のスケールで、非平滑化構造体を提供することができる。いくつかの実施形態では、非平滑化は、約1nm〜約500μmのサイズスケールを有する。場合によっては、非平滑化構造体は、マイクロ非平滑化、すなわち、約1μm〜約500μmとして、又はナノ非平滑化、すなわち、約1nm〜約1μmとして、又はこれら両方の組み合わせとして、特徴付けることができる。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態で利用されるように、コラーゲン系材料は、ある形態でコラーゲンを有する種々の物質を含むことができる。種々の型のコラーゲンを使用することができるが、いくつかの実施形態は、コラーゲンが原線維として構造体化されている型(例えば、I型コラーゲン)を利用する。コラーゲン系材料は、天然産の原線維/線維(例えば、細胞外基質から)、溶液若しくは他の化学的供給源から再構成された原線維、又はこれら両方であり得る。場合によっては、コラーゲン系材料は、構造体(例えば、原線維)の一体性の維持を助けるために作用剤を含むことができる。例えば、コラーゲン系材料は、架橋剤(例えば、グルデルアルデヒド(gluderaldehyde)又はグルタルアルデヒド)を含むことができる。
【0023】
コラーゲン系材料は、種々のやり方で多孔質マトリックス内に分布させることができる。例えば、コラーゲン系材料は実質的に、多孔質スペース全体又は特定の部分のみを浸透することができる(例えば、選択された深さまで浸透する)。いくつかの実施形態では、コラーゲン系材料は、多孔質スペース中に分布した原線維として、処理される。原線維はまた固体構造体に付着させることができ、この固体構造体は孔スペースの枠を形成することができる(例えば、原線維は、多孔質構造体を形成するビーズなどの要素と接触することができる)。このような付着は、固体に対するコラーゲン系材料の親和性によるもの、又はいくつかの中間手段の使用(本明細書により詳細に記載されるリン酸カルシウムの使用)を介するものであり得る。多くの実施形態では、かなりの孔スペースが他の材料での含浸を依然として許容するように、原線維は、多孔質スペース中に分布させることができる。
【0024】
いくつかの実施形態で使用されるリン酸カルシウム系材料は、生体内移植に好適な種々の形態のリン酸カルシウムを含むことができる。いくつかの実施形態では、リン酸カルシウム系材料はアパタイトを含むことができる。例えば、アパタイトは、式:Ca5(PO4)3(OH、F、Cl又はCO3)の化合物を含むことができる。他の好適な生体適合性リン酸カルシウム系材料の他の非限定例には、ヒドロキシアパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、ブルシャイト及び他の水素添加リン酸カルシウム、リン酸カルシウムの多形体、並びにこのような材料の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態に従って、リン酸カルシウム系材料はヒドロキシアパタイトを含む。いくつかの実施形態では、リン酸カルシウム系材料は、多孔質マトリックスの孔スペース内に分布する。リン酸カルシウム系材料は、多孔質スペースの固体構造体(例えば、孔スペースを形成する要素)、基材、コラーゲン系材料又はこの3つの任意の組み合わせに粘着することができる。コラーゲン系材料のように、リン酸カルシウム材料は、いくつかの実施形態では、孔スペースの中への他の材料の移動を可能にするやり方で孔スペースを占めることができる。いくつかの実施形態では、リン酸カルシウム材料は、コラーゲン系材料(例えば、コラーゲン原線維)と多孔質構造体との間の付着を補助するように作用することができる。例えば、ヒドロキシアパタイトは、コラーゲン原線維及び固体多孔質構造体の上にコーティングされて、原線維と多孔質固体構造体との間の付着の更なる力を提供することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、コラーゲン系材料及びリン酸カルシウム系材料を含む多孔質網状組織を有する(例えば、三次元多孔質構造体を有する)インプラントは、セメント又は他の接着剤を使用せずに、インプラントへの骨の付着を改善することができる。このような特徴は、インプラントの被験者の体への同化を補助することができる。例えば、図2に描写されているように、多孔質スペースは、網状組織120に近接する骨210が220方向に移動して網状組織の中に入るようにし、インプラントの安定化を助けることができる。特に、コラーゲン、リン酸カルシウム及び多孔質構造体の組み合わせは、孔スペースの中への骨の内方成長を促進する環境を提供することができ、及び/又はそこへの骨細胞の付着を増強することができる。
【0026】
対照的に、金属性表面上でI型コラーゲンを利用するのみのインプラントは、数人の研究者により、骨内方成長にいかなる有意の増強も呈さないことが見出されている(スベーラ(Svehla)ら、「セメント非使用型インプラント固定におけるI型コラーゲンゲルコーティングの無効(No Effect of a Type I Collagen Gel Coating in Uncemented Implant Fixation)」、ジャーナル・オブ・バイオメディカル・マテリアルズ・リサーチ・パートB:アプライド・バイオマテリアルズ(J Biomed Mater Res B Appl Biomater.)、2005年7月、74巻(1号)、423〜28頁;並びに、ベッカー(Becker)ら、「I型コラーゲンでコーティングされたチタン合金上でのラット頭蓋冠骨芽細胞の増殖及び分化(Proliferation and Differentiation of Rat Calvarial Osteoblasts on Type I Collagen-Coated Titanium Alloy)」、ジャーナル・オブ・バイオメディカル・マテリアルズ・リサーチ(J Biomed Mater Res.)、2002年3月5日、59巻(3号)、516〜27頁を参照されたい)。コラーゲン系材料の非存在下でのインプラント表面上のプラズマ溶射済みヒドロキシアパタイトもまた問題を呈することが、数人の研究者により示されている。例えば、プラズマ溶射により細片及び捕捉粒子が生じることがあり、次にこれらはインプラントの被移植者の中に残って悪影響を及ぼす恐れがある。プラズマ溶射はまた、これを使用して多孔質構造体を作るとき、ビーズの上部コーティングを損傷する傾向を有し得、したがって、骨と接触し得るインプラント表面に強力に影響する可能性がある。また、金属性インプラント表面とヒドロキシアパタイトコーティングとの間の比較的弱い付着に起因して、ヒドロキシアパタイトが離層する傾向は問題である。
【0027】
いくつかの実施形態では、コラーゲン系材料及びリン酸カルシウム系材料を含む多孔質構造体は、生理活性剤などの他の材料を選択的に装填することができる。生理活性剤は一般に、被験者に移植されると、改質された基材と共に選択された生物学的反応を促進することができる材料である。場合によっては、生理活性剤は、多孔質構造体内への骨の内方成長を促進するために選択される。生理活性剤の非限定例には、骨髄細胞、骨前駆細胞、薬理学的作用剤、抗生物質、血漿、血小板、形質転換成長因子、血小板由来成長因子、血管新生成長因子、副甲状腺ホルモン関連たんぱく質、細胞付着調節ペプチド、フィブロネクチン類似ペプチド、抗菌剤、鎮痛剤、及び抗炎症薬が挙げられる。このような生理活性剤は、基材の加工中に、又は被験者内への移植の直前に(例えば、多孔質スペース内で生細胞を使用するとき)、多孔質構造体の中に挿入することができる。
【0028】
生理活性剤の使用のいくつかの例示的な実施形態は、図3及び4を参照しながら論じられる。図3に示されるように、生理活性剤360、例えば、吸引された骨髄細胞、は多孔質網状組織の中に搭載することができ、作用剤360は所望により、網状組織120内の任意の構造体に接触及び/又は粘着することができる。特定の理論に必ずしも束縛されるものではないが、生理活性剤が骨髄細胞及び/又は骨前駆細胞であるとき、改質された基材は、例えば、2方向で骨成長を促進することにより、骨の内方成長及び/又はインプラント固定を増強することができる。図4に示されるように、近接する骨セグメント210は、420方向の改質された基材400に向かって成長することができ、一方で、改質された基材400中の骨前駆細胞360は、潜在的には、430方向の骨セグメント210に向かって骨細胞を強力に増殖させることができる。あるいは又は更に、改質された基材400中の骨前駆細胞360又は他の生理活性剤の存在は、細胞増殖及び固定をもたらす環境を提供することにより、細胞が骨の側部210から多孔質スペースの中へ増殖するにつれて、骨固定の促進を助けることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、改質された基材は、改質された基材の多孔質網状組織と接触する展延された構造体を含むことができる。このような展延された構造体は典型的には、コラーゲンを含む多孔質構造体を有する(例えば、基材の改質された物質の中で使用されるものと同様のコラーゲン系材料を有する)。展延された多孔質構造体は、骨伝導性であることができ、これは骨の内方成長を補助することができる。いくつかの例示的な実施形態を、図5の概略図により提示することができる。描写されているように、コラーゲン系材料510を含む多孔質構造体は、コラーゲン系材料、ビーズ及びリン酸カルシウム系材料で形成された多孔質網状組織120から展延することができる。場合によっては、多孔質構造体510は、インプラントが被験者に挿入されるときに、骨に面するように構成される。構造体510は、コラーゲン原線維を含むことができ、及び/又は三次元多孔質構造体を形成することができる。リン酸カルシウム系材料は所望により、多孔質構造体510の中に及び/又はその上に組み込むことができ、これは、骨伝導性である環境の提供を助けることができる。展延された多孔質構造体510の厚さは、インプラントと骨表面210との間の全間隙スペースの少なくとも一部の長さに及ぶように選択することができる。場合によっては、この厚さは、約100マイクロメートル〜約1cm、又は約0.5mm〜約5mmであり得る。
【0030】
展延された多孔質構造体510は、骨210とインプラント構造体120との間の組織成長促進を助けることができる。例えば、展延された構造体510は、骨の内方成長に好適な環境を作製する足場を提供する。展延された多孔質構造体510はまた、インプラント構造体120と骨210との間の架橋として作用して、インプラントの適合において潜在的な外科手術の不正確さを補正することもでき、これは例えば、生物学的マトリックスの弾性から生ずることができる。図6に示されるように、1つ以上の生理活性剤660を多孔質展延構造体610に添加することができ、これはインプラントに対する内方成長を更に促進することができる。例えば、他の骨髄及び/又は骨の成長促進要素(例えば、インプラント被験者からの血小板に富む血漿)を更に含むことができる骨髄細胞が、構造体610の中に播種されると、骨成長は拡大して1つを超える方向で、すなわち、骨から単に進むのを超えて、形成することができる。
【0031】
場合によっては、展延された構造体は、基材の多孔質網状組織に一体結合される。例えば、図6に関して、展延された構造体610及びインプラントの残部620は、一体多孔質マトリックスとして結合することができる(例えば、展延された構造体は、基材の多孔質金属網状組織中のコラーゲンから展延するコラーゲン網状組織である)。他の例では、展延された構造体は、基材の多孔質網状組織とは別個の構造体であり得る。例えば、図6に関して、展延された構造体610は、インプラントの残部620とは別個のピースとして構成することができる。それゆえに、展延された部分610は、移植処置の直前に1つ以上の生理活性剤を装填する(又は事前に予め加工する)ことができ、残部インプラント部分620と骨部分210との間に挿入することができる。
【0032】
改質された基材の加工方法
本発明のいくつかの実施形態は、骨固定を促進できる材料を調製する方法について記載される。インプラント表面上に処理することができる材料は、改質された基材、例えば、石灰化コラーゲン性の足場、を含むことができる。いくつかの実施形態では、コラーゲン系材料を基材の多孔質網状組織内に堆積させる。リン酸カルシウム系材料は、コラーゲン系材料、多孔質網状組織の表面、又はこれらの両方の上に堆積して、足場を形成することができる。多くの実施形態では、形成された足場は、本出願に記載されている改質された基材の種々の他の実施形態と両立することができるが、他の実施形態がこのような材料にぴったり一致する必要はない。
【0033】
このような材料を形成するいくつかの例示的な実施形態は、図7A〜7Dの描写を参照しながら説明することができる。図7Aに示される非平坦化ビーズ710などの複数の要素を使用して、基材の多孔質網状組織を形成することができる。この要素は、本明細書で上述しているように、種々の形状及びサイズを有することができ、当業者により理解されるものなどの種々の技術を使用して、表面上に付着して多孔質網状組織(例えば、三次元多孔質網状組織)を形成することができる。同様に、化学的及び/又は機械的エッチングなどの他の技術も利用して、適切な基材の多孔質網状組織(例えば、金属性多孔質網状組織)を形成して、表面からの材料除去を生じさせ、多孔質網状組織に所望の特性を得ることができる。
【0034】
多孔質網状組織内のコラーゲン系材料の堆積は、多くの技術を使用して行うことができる。いくつかの実施形態では、多孔質網状組織はコラーゲン含有混合物に曝露することができ、その後この混合物は網状組織内にコラーゲン原線維を形成することができる。例えば、図7Bに示されるように、溶解したコラーゲン分子(例えば、ナノメートル範囲720のサイズを有するI型)は、酸性溶液中に置かれて混合物を形成することができ、この混合物は要素715により形成される網状組織に曝露される。この混合物は、所望により、いくらかのコラーゲン原線維(例えば、ウシ供給源由来で数マイクロメートル〜数十マイクロメートルの範囲のサイズを有する原線維)を含んで、加工の後期で原線維の成長を促進することができる。他の実施形態では、コラーゲン含有溶液は、その主要なコラーゲン構成成分として、マイクロメートルサイズ範囲以上のコラーゲン原線維のピースを有することができる。
【0035】
混合物の曝露は、種々のやり方で、例えば、混合物中に多孔質網状組織を浸漬することにより、行うことができる。いくつかの実施形態では、真空を基材に適用することができ、これは多孔質スペース中の空気を除去して混合物の浸透を促進することができる。他の実施形態では、圧力源を適用して、多孔質網状組織がさらされている周囲気圧よりも高い圧力を供給することによって、流体を推進することができる。圧力源には、ガス供給源又は当業者に既知のものを含む他の供給源を挙げることができる。
【0036】
次に、図7Cに示されるように、コラーゲン材料は、多孔質網状組織内の環境のpHを上げて、すなわち、酸性度を下げて、網状組織の中にコラーゲンを沈殿させることにより、多孔質網状組織内の溶液から形成することができる(例えば、コラーゲン原線維が形成される)。溶液中でコラーゲン材料を可溶化するため及び原線維生成物を沈殿させるための条件には、当業者に既知のものが挙げられる。例えば、約2よりも低いpHを有する溶液中でコラーゲンを処理して、溶液中にコラーゲンを保持することができる。次に、この溶液のpHを、例えば約5を超える値に上げて、原線維形成を生じさせることができる。特定の実施例では、コラーゲン装填多孔質網状組織を生理的温度(例えば、37℃)で中性緩衝液に曝露して、コラーゲン原線維730を多孔質網状組織内で自己組織化させることができる。
【0037】
場合によっては、混合物から再構成されるコラーゲン系材料(例えば、原線維網状組織)の一体性を増強することは、有益であり得る。これは、架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド及び/又はグルデルアルデヒド(gluderaldehyde))などの任意の数の作用剤を使用して達成することができる。別の流動媒体中に分散できる作用剤は、コラーゲン網状組織に曝露することができる(例えば、作用剤含有媒体の中にコラーゲン網状組織を浸漬する)。作用剤は、原線維網状組織に浸透し、コラーゲン分子を架橋するやり方で相互作用し、コラーゲン網状組織の一体性を増強することができる。コラーゲン含有溶液がかなりの量のマイクロメートルサイズのコラーゲンピース(例えば、ウシ供給源から抽出)を利用するとき、溶解したコラーゲン分子からコラーゲン原線維を形成することと比較して、より少ない作用剤を利用することができ、又は作用剤の使用を場合によっては完全に回避することができる。いくつかの実施形態では、多孔質網状組織は、コラーゲン分子を含有する溶液、並びに溶液中のカルシウム及びリン酸塩系材料に曝露することができる。条件の変化により、コラーゲン原線維の形成及びコラーゲン原線維上へのリン酸カルシウム系材料の堆積が、本質的に1工程で得ることができる。例えば、溶液は、構成要素が中で溶解している場合、酸性環境にあることができる。次に、pHを上げる(例えば、酸性度を下げる)と、原線維形成及びリン酸カルシウム系堆積を得ることができる。
【0038】
リン酸カルシウム系材料の堆積は種々のやり方で行うことができる。いくつかの実施形態では、これは、コラーゲン系材料を有する多孔質網状組織をリン酸カルシウム溶液に曝露することによって行うことができ、これは例えば、準安定状態にあり得る。これは、図7Dに示されるように、多孔質網状組織内でのリン酸カルシウム系固体(例えば、ヒドロキシアパタイト740)の堆積を生じさせることができる。リン酸カルシウム系材料堆積技術のいくつかの例は、表題が「生理活性セラミックコーティング及び方法(Bioactive Ceramic Coating and Method)」である米国特許第6,569,489号に記載されている。他の有力なリン酸カルシウム系材料形成技術は、表題が「インプラント材料(Implant Material)」である米国特許第6,069,295号、表題が「インプラント材料及びその使用プロセス(Implant Material and Process for Using It)」である米国特許第6,146,686号、並びに表題が「生物学的活性剤の組み込みと放出(Device for Incorporation and Release of Biologically Active Agents)」である米国特許第6,344,061号に記載されている。この段落に列挙した特許はそれぞれ、これによって、それらの全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0039】
他の化学又は堆積技術もまた使用してリン酸カルシウム系材料及び/又はコラーゲン系材料を堆積させることができる。例えば、電気化学的な方法を堆積に利用することができる。いくつかの実施形態では、電極と多孔質構造体(例えば、金属性)との間に電位を印加することができ、両方の構造体は電気を伝導することが可能な溶液と接触する。この電位は、溶液から多孔性構造体上へリン酸カルシウム系材料の堆積を推進することができる。いくつかの実施形態では、電気化学的堆積を利用して、リン酸カルシウム系材料及びコラーゲン系材料を実質的に同時に堆積させることができる。当業者に既知の変形などの、この技術の他の変形もまた適用できる。
【0040】
改質された基材の形成後、生成物をフリーズドライして、過剰の水を除去し、使用まで材料の状態を維持することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、1つ以上の生理活性剤を使用して、コラーゲン系材料及び/又はリン酸カルシウム系材料と混合することができ、生理活性剤の型は本出願の別の箇所に記載している。種々の技術を利用して、生理活性剤を適用することができ、これは、作用剤が改質された基材内に配置されるときに依存することができる。例えば、基材の加工中に、いくつかの生理活性剤を改質された基材と統合することができる。1つの例では、骨形態形成タンパク質又は改質された基材に容易に収容できる他の作用剤などの生理活性剤は、溶解したコラーゲンを有する酸性溶液中に溶解することができる。例えば、より高いpHへの曝露時に、コラーゲンの沈殿はまたそれと共に生理活性剤の混合も生じさせることができる。別の例では、生理活性剤は、多孔質スペース内へのリン酸カルシウム系材料の堆積と共に装填することができる。更に別の例では、生理活性剤は、コラーゲン系材料及びリン酸カルシウム系材料が装填された後で、装填することができる(例えば、生理活性剤含有水溶液中での改質された基材の浸漬により)。生理活性剤と共に、又はその後順番に他の材料を装填して、マトリックスとの生理活性剤の付着を促進することができる。
【0042】
他の実施形態では、基材の使用時間付近で、例えば、基材を植え込むための操作手順の間又はケア時点付近で、1つ以上の生理活性剤を改質された基材に装填することができる。このような生理活性剤の例には、骨髄吸引液などの腐敗性である作用剤、又は骨前駆細胞などの細胞、又は血小板に富む血漿が挙げられる。しかしながら、非腐敗性作用剤又はかなりの耐用寿命を有する作用剤もまた所望によりこの段階で装填できることが理解される。真空又はウィックパッチ(wick patch)の使用などの種々の機構を利用して、マトリックスの中に生理活性剤を装填することもできる。生理活性剤を保持する流体、例えば、骨髄吸引液、を、多孔質スペースを通して吸引するように向けられた真空は、例えば、そのスペース内に生理活性剤を堆積させることができる。ウィックパッチは、親和性を有する基材であり、流体はその基材を通して吸引される。例えば、骨髄吸引液は、ウィックパッチを多孔質スペースの一部分に、骨髄吸引液の供給源を別の部分に接触させることにより、基材を通して吸引することができる。ウィックパッチが流体を吸収する傾向は、毛管現象により多孔質網状組織を通して流体の流れを推進し、その流れは骨髄吸引液を供給源から多孔質網状組織の中に吸引する。明らかに、中に分布した微粒子又は他の固体又は他の溶質を有する流体などの、他の流体も利用することができる。当業者により理解されるものなどの、他の技術もまた利用できる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態に従う改質された基材を加工するための例示的な方法は、図8に示される概略図を参照しながら、説明される。流体保持容器800を組み立てて、コラーゲン系材料及び/又はリン酸カルシウム系材料の堆積を促進することができる。例えば、多孔質マトリックス815を有するインプラント810を容器800内に挿入することができる。容器800は、小さな間隙815が多孔質構造体の上部816と容器の上部805との間に存在するように、構成することができる。半透膜830は、容器の上部にわたる封止の一部として使用することができる。
【0044】
この構成で、容器800を使用して、多孔質マトリックス815内に材料を堆積させることができる。例えば、コラーゲン分子及び/又は小コラーゲンピースを溶解したコラーゲン含有混合物をインプラントの多孔質部分815に曝露することができ、この混合物は酸性である。コラーゲン含有混合物を同伴したインプラントは、中性pHを有する流体と共に流体保持領域820内に配置することができる。流体領域820を生理学的温度にさらすことにより、コラーゲン原線維形成を誘導することができる。流体は、保持領域820と膜830の反対側840との間に適切な圧力差を与える(例えば、環境840を真空にさらす)ことにより、流体保持領域820から引き出すことができる。膜830は、コラーゲン系材料に実質的に不透過性であり得る(例えば、約3.32×10−19g(約200Kダルトン)のコラーゲン分子の分子量と比較して、約1.66×10−20g(約10Kダルトン)の分子量カットオフを有する)。したがって、コラーゲン原線維を多孔質マトリックス815内に形成することができる。更に、コラーゲン原線維を間隙領域825内に形成することもでき、これは本明細書のいくつかの実施形態に従う多孔質マトリックスの展延された部分を形成することができる。間隙距離は、所望の展延された部分の厚さに対応する距離を有するように、特定的に選択することができる。
【0045】
容器を引き続き使用して、他の堆積を行うことができる。例えば、いったんコラーゲン原線維が形成されてから、リン酸カルシウム系材料を含有する流体を流体保持スペース820内に配置することができる。半透膜830を通して流体を吸引することにより、リン酸カルシウム材料を多孔質領域815及び展延されたコラーゲン網状組織内に吸引することができる。1つ以上の生理活性剤を含有する流体を使用してこの工程を繰り返し、このような作用剤も同様に堆積させることができる。
【0046】
容器800及びその使用に関するいくつかの変形が可能である。例えば、前に開示した手順に従って、間隙825を実質的に削除して、展延された領域を有さない改質された基材を形成することができる。同様に、流体は、流体保持スペース820と連通した圧力供給源を配置して、そこに外部スペース840と比較して高い圧力を提供することにより、推進することができる。容器はまた、反応を推進する平衡(例えば、孔スペース内におけるコラーゲン原線維の形成)に依存して、流体推進力を利用しないことも可能である。別の変形では、本明細書の他の実施形態に従って記述されているように、膜830をウィックパッチに置き換え、毛細管現象を使用して流体の流れを推進することができる。当業者の知識内の他の変形もまた本発明の実施形態の範囲内である。
【0047】
〔実施例〕
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明するために提供される。実施例は、利用される任意の特定の実施形態の範囲を制限することを目的としない。
【0048】
実施例1:エッチングされていないポロコートビーズ及びI型コラーゲン
コバルト−クロム−モリブデン合金製で、約200μmの直径を有するポロコートビーズをそのままI型コラーゲンを有する溶液に曝露した。ビーズはエッチングされた表面を有さなかった。50μLのI型コラーゲン(6.4mg/mL、pH2、ニュートラゲン(Nutragen)(商標)、イナメッド社(Inamed Corporation))を複数の液滴でポロコートビーズの表面上に加えて、表面適用範囲を最大化した。この液滴をポロコートビーズに5分間にわたって曝露し、その結果コラーゲンは吸収された。引き続いて、このポロコートビーズを50mLのPBS(100mMのNa2HPO4、9%のNaCl、25℃でpH=6.8)溶液中に37℃で24時間にわたって浸し、その後、すすぎ、−80℃で2時間にわたって凍結させた。凍結したポロコートビーズをバルクトレイ乾燥機に移し、フリーズドライシステム内で一晩凍結乾燥させた。このコラーゲンは、図9に示されるように、ポロコートビーズ間の接続を形成した。
【0049】
実施例2:マイクロエッチングされたポロコートビーズ及びI型コラーゲン
コバルト−クロム−モリブデン合金製のポロコートビーズをコバルト−クロム−モリブデンディスク(直径約1.9cm(約3/4”)及び厚さ約0.0076cm(約0.003”))上に分布させた。この集合体を6.4NのHCl及び0.15Mの(NH4)2S2O8中で1時間にわたってエッチングした。表面は、図10Cに示されるように、マイクロ非平滑化を呈した。孔は約1マイクロメートルのスケールでのおよそのサイズを有する。次に、50μLのI型コラーゲン(6.4mg/mL、pH2、ニュートラゲン(Nutragen)(商標)、イナメッド社(Inamed Corporation))を複数の液滴で、マイクロエッチングされたポロコートコートディスク上に加えて、表面適用範囲を最大化した。この液滴をポロコートディスクに5分間にわたって曝露し、その結果コラーゲンはポロコートコートディスク内に吸収された。引き続いて、このポロコートディスクを50mLのPBS(100mMのNa2HPO4、9%のNaCl、25℃でpH=6.8)溶液中に37℃で24時間にわたって浸した。このポロコートディスクをすすぎ、−80℃で2時間にわたって凍結させた。凍結したポロコートビーズをバルクトレイ乾燥機に移し、フリーズドライシステム内で一晩凍結乾燥させた。コラーゲン(有機)マトリックスは金属表面とうまく一体化し、図10A及び10Bの顕微鏡写真により描写されているように、ビーズ間に三次元網状組織を形成した。特に、図10Bは、コラーゲン原線維とエッチングされた表面との間の付着を示す。
【0050】
実施例3:ポロコート表面へのコラーゲンの付着
ポロコートディスク(直径約1.9cm(約3/4”)及び厚さ約0.0076cm(約0.003”)は、酸エッチングされるか又はエッチングされずに使用されるかのいずれかであった。70μLのI型コラーゲン(6.4mg/mL、pH2、ニュートラゲン(Nutragen)(商標)、イナメッド社(Inamed Corporation))を複数の液滴で、ポロコートコートディスク上に加えて、表面適用範囲を最大化した。この液滴をポロコートディスク表面に5分間にわたって曝露し、その結果コラーゲンはポロコートコートディスク内に吸収された。ポロコートコートディスク上部に濾紙を穏やかに押し当てることにより、ディスク表面上の過剰のコラーゲン溶液を除去した。コラーゲン溶液添加前とポロコートコートディスク表面上の過剰のコラーゲン溶液の除去後との重量差によって、エッチング済み及び非エッチングのポロコートコートディスクの重量増加を測定した。図11に示されるように、エッチングされたポロコート表面は、エッチングされていないポロコート表面の約14倍のコラーゲンを保有した。
【0051】
実施例4:ナノエッチングされたポロコートビーズ及びI型コラーゲン
以下の技術を使用して、ポロコートビーズをナノエッチングした:1.9cm(3/4”)(直径)のポロコートディスクそれぞれを室内条件下で24時間にわたって8NのHCl 50mL中に完全に浸漬した。図12Cは、多孔質表面の顕微鏡写真を提示し、孔が約10nmのオーダーでのサイズを有することを示す。以下の技術を使用して、ナノエッチングされたビーズをコラーゲンでコーティングした。ナノエッチングされたポロコートビーズに50μLのI型コラーゲン(6.4mg/mL、pH2、ニュートラゲン(Nutragen)(商標)、イナメッド社(Inamed Corporation))を複数の液滴で加え、表面適用範囲を最大化した。この液滴をポロコートビーズに5分間にわたって曝露し、その結果コラーゲンはポロコートコートビーズ内に吸収された。引き続いて、このポロコートビーズを50mLのPBS(100mMのNa2HPO4、9%のNaCl、25℃でpH=6.8)溶液中に37℃で24時間にわたって浸した。このポロコートビーズをすすぎ、−80℃で2時間にわたって凍結させた。凍結したポロコートビーズをバルクトレイ乾燥機に移し、フリーズドライシステム内で一晩凍結乾燥させた。図12A及び12Bに形成された三次元構造体を示す。
【0052】
以下の技術を使用して、コラーゲンが装填された多孔質マトリックスをヒドロキシアパタイトで石灰化した。指定された濃度で以下の化学物質を混合することにより、石灰化溶液を調製した:NaCl(150.2mM)、K2HPO4(2.4mM)、MgCl2(2.5mM)、CaCl2(6mM)及び(HOCH2)3CNH2(トリス緩衝剤、17.5mM)。1NのHCl 18mLを最終体積1Lの溶液中に加え、その後、NaHCO3(8mM)を加えた。石灰化中の温度を37±1℃に維持した。封止した容器内において、コラーゲン装填ポロコートディスクを石灰化溶液中で12時間を超えるが24時間未満にわたってインキュベートした。石灰化した最終生成物を水中で数回にわたって十分すすぎ、空気中で乾燥させた。ヒドロキシアパタイトコーティングされた原線維及びビーズの種々の倍率の顕微鏡写真を図13A〜13Bに提示する。図13Cの顕微鏡写真により示されるように、ヒドロキシアパタイトを使用して、ビーズ表面にコラーゲン原線維を固定するのを補助することができる。
【0053】
等価物
本発明は、特定の方法、構造体及び装置に関して記述されてきたが、本発明を考慮して当業者において変形及び修正が生じ得ることが理解される。例えば、本明細書で議論された方法及び組成物は、いくつかの実施形態でのインプラントのための金属表面の調製以外に利用することができる。同様に、1つの実施形態に関して図示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることも可能である。こうした改変及び変形は本発明の範囲内に含まれるものとする。当業者であれば、ルーチンの実験だけを使用して、上述した実施形態に基づく本発明の更なる特性及び利点を認識するであろう又は確定することができるであろう。したがって、本発明は、付属の特許請求の範囲において示される場合は例外として、具体的に図示、記載されたものに限定されるものではない。
【0054】
全ての出版物及び引用は、本明細書ではそれらの全体が参照により明示的に組み込まれる。用語「1つの(「a」及び「an」)」は、本出願内で利用されているように、語句「1つ以上の」と互換的に使用することができ、等価である。用語「含む」、「有する」、「挙げる」及び「含有する」は、特に注記しない限り、包含的な用語(すなわち、「含むが、これらに限定されない」)として解釈されるべきである。本明細書における数値範囲の詳細説明は、特に示さない限り、単に、範囲内に入るそれぞれ別個の数値を個別に指すことの省略表記法として働くことを意図するものであり、それぞれ別個の数値は、本明細書に個別に引用されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書で特に示唆されないか又はそうでなければ文脈により明確に矛盾していない限り、任意の好適な順番で行うことができる。本明細書で提供される任意の及び全ての例又は例示的な言葉(例えば、「などの」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図し、請求しない限り、本発明の範囲に制限を提示するものではない。本明細書における全ての言葉は、本発明の実施に不可欠であるような請求されていない任意の要素を示すものとして解釈すべきではない。
【0055】
〔実施の態様〕
(1) 骨への固定を促進するためのインプラントにおいて、
多孔質網状組織を含む改質された部分を有する基材と、
前記多孔質網状組織の少なくとも一部に分布したコラーゲン系材料と、
前記改質された部分の少なくとも一部上に分布したリン酸カルシウム系材料と、を含み、前記改質された部分及び前記リン酸カルシウム系材料が、骨への固定を促進するための石灰化コラーゲン性の足場の少なくとも一部を形成する、インプラント。
(2) 前記リン酸カルシウム系材料が前記多孔質網状組織及び前記コラーゲン系材料上に分布する、実施態様1に記載のインプラント。
(3) 前記コラーゲン系材料が多孔質構造体を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(4) 前記多孔質網状組織が、前記基材の本体に付着した複数の要素を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(5) 前記多孔質網状組織が三次元多孔質網状組織を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(6) 前記多孔質網状組織に接触する展延された構造体を更に含み、前記展延された構造体が、コラーゲンを含む多孔質構造体を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(7) 前記リン酸カルシウム系材料がアパタイトを含む、実施態様1に記載のインプラント。
(8) 前記多孔質網状組織が金属性材料を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(9) 前記金属性材料が、チタン、クロム、及びコバルトのうちの少なくとも1つを含む、実施態様8に記載のインプラント。
(10) 前記多孔質網状組織が非平滑化表面を含む、実施態様1に記載のインプラント。
【0056】
(11) 前記コラーゲン系材料がI型コラーゲンを含む、実施態様1に記載のインプラント。
(12) 前記基材の前記改質された部分に結合した生理活性剤を更に含む、実施態様1に記載のインプラント。
(13) 前記生理活性剤が、骨髄細胞、骨前駆細胞、薬理学的作用剤、抗生物質、血漿、血小板、形質転換成長因子、血小板由来成長因子、血管新生成長因子、副甲状腺ホルモン関連たんぱく質、細胞付着調節ペプチド、フィブロネクチン類似ペプチド、抗菌剤、鎮痛剤、及び抗炎症薬のうちの少なくとも1つを含む、実施態様12に記載のインプラント。
(14) インプラントでの骨固定を促進するための石灰化コラーゲン性の足場を調製するための方法において、
コラーゲン系材料を基材の多孔質網状組織に曝露することと、
リン酸カルシウム系材料を前記コラーゲン系材料及び前記多孔質網状組織のうちの少なくとも1つの上に堆積させて、前記インプラントの前記石灰化コラーゲン性の足場を形成することと、を含む、方法。
(15) 前記多孔質網状組織が金属性材料を含む、実施態様14に記載の方法。
(16) 前記コラーゲン系材料を前記多孔質網状組織に堆積させることが、
前記多孔質網状組織の前記少なくとも一部をコラーゲン含有混合物に曝露することと、
前記混合物から前記多孔質網状組織内にコラーゲン原線維を形成することと、を含む、実施態様14に記載の方法。
(17) 曝露することが酸性コラーゲン含有混合物を使用することを含み、コラーゲン原線維を形成することが、前記多孔質網状組織を前記酸性コラーゲン含有混合物よりも酸性度の低い混合物に曝露して、コラーゲン原線維を形成することを含む、実施態様14に記載の方法。
(18) 前記酸性コラーゲン含有混合物を使用することが、前記コラーゲン原線維を形成する前に、前記多孔質網状組織を真空に曝露することを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記コラーゲン系材料を前記多孔質網状組織に付着させる前に、前記多孔質網状組織の少なくとも一部上に非平滑化表面を形成することを更に含む、実施態様14に記載の方法。
(20) コラーゲン系材料と混合するために、生理活性剤を適用することを更に含む、実施態様14に記載の方法。
【0057】
(21) 前記生理活性剤を適用することが、前記生理活性剤の適用を推進するために真空を適用することを含む、実施態様20に記載の方法。
(22) 前記コラーゲン系材料を架橋することを更に含む、実施態様14に記載の方法。
(23) 被験者内でのインプラントの骨固定を促進するための方法において、
基材を提供することであって、前記基材が、
(i)前記インプラントの表面の少なくとも一部を形成する改質された部分であって、前記改質された部分が多孔質網状組織を含む、改質された部分と、
(ii)前記インプラントの前記改質された部分の前記多孔質網状組織の少なくとも一部に分布するコラーゲン系材料と、
(iii)前記改質された部分の少なくとも一部上に分布するリン酸カルシウム系材料と、
を含む、提供することと、
前記インプラントの骨固定を促進するために、前記基材を前記被験者の骨に近接して植え込むことと、を含む、方法。
【開示の内容】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、全て同日に申請された以下の3つの出願に関する:(i)表題が「マイクロ及びナノスケールの表面非平滑化チタンを含有する物品及びその製造方法(Micro and Nano Scale Surface Textured Titanium-Containing Articles and Methods of Producing Same)」であり、発明者がウェイドン・トン(Weidong Tong)及びラリー・サルバティ(Larry Salvati)であり、代理人整理番号JJDO−0028(DEP 6160)により指定される米国特許出願、(ii)表題が「高湿潤性を有するナノ非平滑化コバルト−クロム合金物品及びその製造方法(Nanotextured Cobalt-Chromium Alloy Articles having High Wettability and Method of Producing Same)」であり、発明者がウェイドン・トン及びラリー・サルバティであり、代理人整理番号JJDO−0017(DEP 6015)により指定される米国特許出願、並びに(iii)表題が「リン酸カルシウムを用いるインプラントのための方法及び装置(Methods and Devices for Implants with Calcium Phosphate)」であり、発明者がウェイドン・トン、ラリー・サルバティ及びプージャ・カダムビ(Pooja Kadambi)であり、代理人整理番号102737−17(DEP 6090)により指定される米国特許出願。これにより、これら3つの出願全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔発明の分野〕
本出願の産業上の利用分野は、一般に、加工された基材、特に医療用インプラントの部分としての使用のためにこのような基材の特性を改良するのにこのような基材を改質することを目的とする
【0003】
〔背景技術〕
患者における置換構造体として使用するための医療用インプラントは、広く応用されている。特に、関節又は他の構造体を置換するための整形外科用インプラントは、非常に大きな商業的及び科学的関心を受けている。多くの場合、整形外科用インプラントは、骨に近接して位置付けられる多孔質金属性表面を有する。セメント又は他の接着剤の代わりにインプラントを長期間、機械的に固定することは、近接する骨の、インプラントの表面上への成長及び/又はインプラントの表面上の多孔質構造体の中への内方成長によって達成することができる。
【0004】
長期間の固定を促進するためには、早期のインプラント定着が重要な要因である。固定は、宿主骨からインプラント表面へ向かう骨成長により進行し、これは典型的にはインプラントが被移植者に挿入された約3週間後に開始され得る。インプラントの進行性安定化がいったん達成されると、新しい骨がインプラント表面とオリジナルの近接する骨の表面との間の間隙を架橋する。それゆえに、インプラント固定を改善するためには、例えば、新しい骨の成長を促進することにより、セメント固定されていないインプラントに骨が付着することの促進を助けることができる新たな方法及び材料を開発することが、有利であり得る。
【0005】
〔発明の概要〕
骨への固定を促進するためのインプラントについて、いくつかの例示的な実施形態が記載される。このインプラントは、多孔質網状組織を有し得る改質された部分を持つ基材を含む。いくつかの実施形態では、多孔質網状組織は三次元性であり得、かつ/又は、非平滑化表面を含み得る。多孔質網状組織は、金属性材料(例えば、金属性多孔質網状組織)を含むことができ、この金属性材料はコバルト、クロム及びチタンのうちの1つ以上を含むことができる。多孔質網状組織は、基材の一体部分として形成することができ、又は基材本体に付着した複数の要素を含むことができる。
【0006】
コラーゲン系材料をこの網状組織の少なくとも一部に分布させることができる。コラーゲン系材料の一例はI型コラーゲンであるが、コラーゲンの他の型及び混合物もまた利用することができる。コラーゲン系材料はコラーゲン原線維を含むことができ、コラーゲン原線維は所望により架橋することができる。場合によっては、コラーゲン系材料自体が多孔質構造体を形成する。同様に、アパタイトなどのリン酸カルシウム系材料をこの基材の改質された部分の少なくとも一部の上に分布させることができる。例えば、リン酸カルシウム系材料を多孔質網状組織及び/又はコラーゲン系材料上に分布させることができる。改質された部分及びリン酸カルシウム系材料は、骨へのインプラントの固定を促進する石灰化コラーゲン性の足場の少なくとも一部を形成することができる。
【0007】
インプラントはまた、展延された構造体を含むことができる。このような構造体は、多孔質網状組織と接触することができ、多孔質構造体を有することができ、この多孔質構造体は骨と面するように向かわせることができる。場合によっては、展延された多孔質構造体はコラーゲンを含むことができ、コラーゲンはインプラントの中への骨の内方成長の促進を助けることができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の生理活性剤を基材の改質された部分及び/又は展延された構造体に結合させることができる。生理活性剤の例には、骨髄細胞、骨前駆細胞、薬理学的作用剤、抗生物質、血漿、血小板、形質転換成長因子、血小板由来成長因子、血管新生成長因子、副甲状腺ホルモン関連たんぱく質、細胞接着調節ペプチド、フィブロネクチン類似ペプチド、抗菌剤、鎮痛剤、及び抗炎症薬のうちの1つ以上が挙げられる。
【0008】
他の例示的な実施形態は、石灰化コラーゲン性の足場を調製するための方法を目的とし、この足場はインプラント内での骨固定を促進することができる。コラーゲン系材料は、基材の多孔質網状組織に曝露することができる。リン酸カルシウム系材料は、コラーゲン系材料、多孔質網状組織、又はこれらの両方の上に堆積して、インプラントの石灰化コラーゲン性の足場を形成することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、多孔質網状組織は、金属を含むことができ、多孔質金属性網状組織を形成することができる。場合によっては、非平滑化表面が、例えば、網状組織が他の材料に曝露される前に、多孔質網状組織の少なくとも一部の上に形成される。コラーゲン系材料の曝露は、コラーゲン含有混合物に多孔質網状組織の少なくとも一部を曝露することにより、行うことができる。コラーゲン原線維は、多孔質網状組織内の混合物から形成することができ、所望により架橋させることができる。場合によっては、酸性コラーゲン含有混合物を使用することができ、これは溶液の形態であり得る。コラーゲン含有混合物よりも酸性度の低い混合物への多孔質網状組織の曝露(例えば、浸漬)は、コラーゲン原線維を生じさせることができる。多孔質網状組織内における混合物の移送を促進するために、真空を使用することができる(例えば、網状組織を真空に曝露して、それを通してコラーゲン含有混合物及び/又はより酸性度の低い混合物を移送する)。真空技術はまた、流体含有状態で処理されるとき、リン酸カルシウム系材料を移送するためにも使用することができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、コラーゲン系材料と混合するために、1つ以上の生理活性剤を適用することができる。生理活性剤は、前述の作用剤について任意の1つ以上を含むことができる。生理活性剤の移送を推進するために、真空又は圧力差を使用することができる。
【0011】
被験者内のインプラントの骨の固定を促進するための方法について、他の例示的な実施形態が記載される。本明細書に開示される実施形態のいずれかに一致するインプラントを提供することができる。例えば、インプラントの表面の少なくとも一部を形成する改質された部分を含む基材を提供することができる。改質された部分は、多孔質網状組織(例えば、金属性多孔質網状組織)を含むことができる。コラーゲン系材料(例えば、I型コラーゲン原線維又は本明細書に記載されるコラーゲンの任意の他の処置)を多孔質網状組織の少なくとも一部に分布させることができる。同様に、リン酸カルシウム系材料をインプラントの改質された部分の少なくとも一部の上に分布させることができる。骨固定を促進するために、基材/インプラントを被験者の骨に近接して植え込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の態様は、以下の詳細な説明を添付の図面(必ずしも等尺で描図されていない)と併せて解釈することにより、より完全に理解されるであろう。
【図1】本発明のいくつかの実施形態に従う、多孔質構造体を有し、その中にコラーゲン系材料が処理されている改質された基材の概略断面側面図。
【図2】本発明のいくつかの実施形態に従う、骨の部分に近接して配置された図1の改質された基材の概略断面側面図。
【図3】本発明のいくつかの実施形態に従う、多孔質構造体を有し、その中にコラーゲン系材料及び生理活性剤が位置する改質された基材の概略断面側面図。
【図4】本発明のいくつかの実施形態に従う、骨の部分に近接して配置された図3の改質された基材の概略断面側面図。
【図5】本発明のいくつかの実施形態に従う、多孔質構造体が骨部分に向かって間隙を超えて展延する、改質された基材の概略断面側面図。
【図6】本発明のいくつかの実施形態に従う、生理活性剤が装填された図5の改質された基材の概略断面側面図。
【図7A】本発明のいくつかの実施形態に従って使用できる非平滑化ビーズの概略断面側面図。
【図7B】本発明のいくつかの実施形態に従う、コラーゲン系材料を含有する混合物中に浸漬されたビーズの概略断面側面図。
【図7C】本発明のいくつかの実施形態に従う、コラーゲン原線維がビーズ間のスペースに存在するビーズの概略断面側面図。
【図7D】本発明のいくつかの実施形態に従う、コラーゲン原線維がビーズ間のスペースに存在し、リン酸カルシウム系材料が原線維とビーズに粘着しているビーズの概略断面側面図。
【図8】本発明のいくつかの実施形態に従う、改質された基材の部分を加工するために使用できる装置の概略断面側面図。
【図9】本発明のいくつかの実施形態に従う、I型コラーゲンがビーズに粘着しており、2つのビーズの間に架橋を形成しているポロコート(Porocoat)ビーズを示す顕微鏡写真の複写。
【図10A】本発明のいくつかの実施形態に従う、表面上でマイクロ非平滑化され、ビーズの上及び間にコラーゲン原線維を有するポロコートビーズを示す顕微鏡写真の複写。
【図10B】図10Aに描写された構造体を示す高倍率を有する顕微鏡写真の複写。
【図10C】図10A及び図10Bに示されたビーズのマイクロ非平滑化表面を示す顕微鏡写真の複写。
【図11】本発明のいくつかの実施形態に従う、エッチングされていないポロコートディスクに粘着しているコラーゲンの量に対して、エッチングされたポロコートディスクに粘着しているコラーゲンの量を比較する棒グラフ。
【図12A】本発明のいくつかの実施形態に従う、表面上でナノ非平滑化され、ビーズの上及び間にコラーゲン原線維を有するポロコートビーズを示す顕微鏡写真の複写。
【図12B】図12Aに描写された構造体を示す高倍率を有する顕微鏡写真の複写。
【図12C】図12A及び図12Bに示されたビーズのナノ非平滑化表面を示す顕微鏡写真の複写。
【図13A】本発明のいくつかの実施形態に従う、ヒドロキシアパタイトがビーズ及びコラーゲン原線維の一部をコーティングする図12Aに描写されたポロコートビーズ及びコラーゲン原線維試料を示す顕微鏡写真の複写。
【図13B】図13Aに描写された構造体を示す高倍率を有する顕微鏡写真の複写である。
【図13C】ヒドロキシアパタイトの補助によりポロコートビーズに付着したコラーゲン原線維を示す図13Bの部分の更に拡大された顕微鏡写真の複写。
【0013】
〔実施形態の詳細な説明〕
本明細書に開示される装置の構造、機能、製造及び使用並びに方法の原理について全体的な理解を提供するために、特定の例示的な実施形態について以下に説明する。これらの実施形態の1つ以上の例を添付の図面に示す。当業者は、本明細書で明確に記載され、添付の図面に示される装置及び方法が、非限定の例示的な実施形態であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲のみにより定義されることを認識するであろう。1つの代表的な実施形態に関連して図示又は説明する特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることも可能である。こうした改変及び変形は本発明の範囲内に含まれるものとする。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態は、骨の固定を促進できる基材及び処置を目的とする。場合によっては、基材は表面を有し、この表面は多孔質金属性構造体を伴って含むことができ、多孔質金属性構造体はその上及び/又は中にコラーゲン系材料(例えば、I型コラーゲン原線維)を分布させている。ヒドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム系材料もまた、基材及び/又はコラーゲン系材料の上/中に分布させることもできる。このような基材は、石灰化コラーゲン性の足場を形成することができ、この足場は骨伝導性であることができ、例えば、基材への骨の固定を促進する。このような基材は、骨芽細胞などの生理活性剤と組み合わせて、基材が医療用インプラントの一部として使用されるときに骨の成長及び付着の促進を助けることができる。このような基材に関する更なる詳細及び変形並びにこのような材料を製造するための方法を、以下に詳細に明らかにする。
【0015】
本明細書における多くの実施形態では、記載される構造体及び/又は方法は、被験者に供されるためのインプラントに関して利用することができる。いくつかの実施形態では、インプラントは、体の任意の好適な部分、例えば、体の中の関節の構成要素、のための人工装具として使用することができる。したがって、いくつかの実施形態に従うインプラントは、例えば、整形外科用臀部インプラントの構成要素、整形外科用膝インプラントの構成要素、整形外科用肩インプラントの構成要素、整形外科用肘インプラントの構成要素、整形外科用足首インプラントの構成要素、整形外科用指インプラントの構成要素、整形外科用脊椎ディスクインプラントの構成要素、整形外科用顎関節(顎)インプラントの構成要素及び他の人工装具などの整形外科用インプラントの構成要素としての使用を見出すことができる。
【0016】
改質された基材
本発明のいくつかの例示的な実施形態が、図1に示される人工装具などのインプラントの概略図を参照して、記載される。インプラントの部分は、改質された基材及びそれが対応する表面を含み、その表面は骨部分に面するように構成することができる。改質された基材はまた、多孔質網状組織を含むことができる。図1に対応する特定の実施形態に関して、基材100は、複数の要素130が本体の表面150上に分布された本体部分110を含み、要素130は多孔質網状組織120を形成する。コラーゲン系材料は、多孔質網状組織120の孔の中に分布させることができる。図1に対応する例では、コラーゲン系材料はコラーゲン原線維であることができ、多孔質スペースが網状組織120内に依然として維持されるように、コラーゲン原線維を要素130上及び/又は要素の間に分布させることができる。リン酸カルシウム材料はまた、多孔質網状組織120内に分布させることもできる。
【0017】
図1に関して明確に述べられた実施形態に従う構造体は、本発明のいくつかの実施形態を示すのみであることが理解される。実際、図1及び本出願における他の図における特徴の任意の置換と組み合わせを、本発明のいくつかの態様に従う実施形態を実践するために組み合わせることができる。他の実施形態は、他の特徴を含むこと、又は図1の実施形態の特徴に修正及び/若しくは変形を加えることができる。図1の実施形態のいくつかの態様は、本明細書に更に詳細に記される。要素に関して論じられる任意の数の態様は、本発明の範囲に従って、他の要素と組み合わせること、又は個々に実践することができる。
【0018】
基材の多孔質網状組織は一般に、種々のサイズ及び形状に実体化することができる。いくつかの実施形態では、多孔質網状組織は、三次元の網状組織を含み、すなわち、網状組織の孔は任意の寸法で方向を有することができる。このような網状組織は、種々の構造体(例えば、開放及び/又は閉鎖セル)を有することができ、化学的及び/又は機械的技術での基材表面のエッチングなどの種々の方法により形成することができる。いくつかの実施形態では、例えば、図1及び2に示されるように、複数の要素を使用して、基材表面上に多孔質網状組織を形成することができる。複数の要素は、粒子、メッシュ、ワイヤ、他の基本的構造体及びこのような要素の組み合わせなどの種々の物体であり得る。いくつかの実施形態では、要素の少なくとも1つの寸法で約0.1μm〜約10mmの範囲の平均サイズを有するように、要素をサイズ決めする。例えば、ビーズ又は不規則形状粒子などの粒子は、約250μmの平均有効直径で利用することができる。不規則形状粒子の平均有効直径は、各粒子の正確なサイズを測定せずに値を得る方法(例えば、吸着等温式)などの当業者に既知の任意の方法のいずれかを使用して測定することができる。他の実施形態では、網状組織を含む要素の平均最小寸法の少なくとも約2倍の深さを多孔質網状組織が有するように、要素を準備する。例えば、ビーズを基材上に分布させて、ビーズの深さが平均ビーズ直径の約3倍である多孔質表面を形成することができる。
【0019】
多孔質網状組織の固体部分及び/又は基材の組成物は、本明細書に記載される実施形態に好適に従う任意のものであり得る。金属、セラミックス、ポリマーなどの材料及び他の材料を、材料の複合体を含めて、利用することができる。いくつかの実施形態では、多孔質網状組織の固体部分は金属性であり得る。広くは、用語「金属性」は、少なくともいくらかのバルク金属質を有する物体を記述するために使用される。したがって、金属性多孔質網状組織及び金属性基材は、バルク金属の特性と同様な少なくとも1つの特性を呈する。例えば、金属不純物の微量混入物を有する非金属性材料は、金属性材料の説明から除外することができる。例示的な金属性材料には、チタン系材料、チタン系合金及びクロム系合金(例えば、コバルト−クロム合金又はコバルト−クロム−モリブデン合金)などの被験者内の医療用移植に好適なものが挙げられる。1つの特定例には、多孔質網状組織を形成するための、コバルト−クロム合金製のポロコート(Porocoat)(登録商標)多孔質コーティング(Porous Coating)ビーズの使用が挙げられる。多孔質網状組織はまた、例えば、骨梁化金属の部分であるといったように、基材と一体形成することもできる。
【0020】
いくつかの実施形態では、基材及び/又は多孔質網状組織の表面は、その表面への1つ以上の構成要素の結合を増強するために処理することができる。例えば、処理が作用して、表面をより親水性にすることができ、これは潜在的にはコラーゲンの分布及び/又は付着において強力な補助となることができる。例えば、プラズマ処理、又は酸/塩基溶液及び/若しくは界面活性剤での処理は、表面の親水性を変えることができる。別の例では、表面を非平滑化して、平滑な表面と比較してその相対表面積を増加することができる。粗化表面は、その表面へのコラーゲン系材料の付着を増強するのを助けることができる。化学エッチング、グリットブラスティング並びに他の化学的及び/又は機械的技術などの当業者に既知のものを含む任意の数の技術を使用して、粗化を達成することができる。中でも、クロム含有合金に対しての化学エッチング技術のいくつかの例が、表題が「非平滑化表面を有するインプラント及びその製造方法(Implants with Textured Surface and Methods for Producing the Same)」である米国特許第7,368,065号に記載されており、これによりその全体が参照により本明細書に組み込まれる。クロム含有合金上のナノエッチングは、同時に申請された、表題が「高湿潤性を有するナノ非平滑化コバルト−クロム合金物品及びその製造方法(Nanotextured Cobalt-Chromium Alloy Articles having High Wettability and Method of Producing Same)」であり、発明者がウェイドン・トン(Weidong Tong)及びラリー・サルバティ(Larry Salvati)であり、代理人整理番号JJDO−0017(DEP 6015)により指定される米国特許出願に記載されているものなどの種々の技術を使用して行うことができる。
【0021】
非平滑化は、使用される技術に依存して種々の形状及びサイズを有することができる。非平滑化表面の「サイズ」とは、当業者により理解されるように、非平滑構造体のサイズ特徴を示す固有の長さスケールを指す。状況によっては、グリットブラスティングを使用して、マクロスケール、例えば、約数百マイクロメートル以上のスケールで、非平滑化構造体を提供することができる。いくつかの実施形態では、非平滑化は、約1nm〜約500μmのサイズスケールを有する。場合によっては、非平滑化構造体は、マイクロ非平滑化、すなわち、約1μm〜約500μmとして、又はナノ非平滑化、すなわち、約1nm〜約1μmとして、又はこれら両方の組み合わせとして、特徴付けることができる。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態で利用されるように、コラーゲン系材料は、ある形態でコラーゲンを有する種々の物質を含むことができる。種々の型のコラーゲンを使用することができるが、いくつかの実施形態は、コラーゲンが原線維として構造体化されている型(例えば、I型コラーゲン)を利用する。コラーゲン系材料は、天然産の原線維/線維(例えば、細胞外基質から)、溶液若しくは他の化学的供給源から再構成された原線維、又はこれら両方であり得る。場合によっては、コラーゲン系材料は、構造体(例えば、原線維)の一体性の維持を助けるために作用剤を含むことができる。例えば、コラーゲン系材料は、架橋剤(例えば、グルデルアルデヒド(gluderaldehyde)又はグルタルアルデヒド)を含むことができる。
【0023】
コラーゲン系材料は、種々のやり方で多孔質マトリックス内に分布させることができる。例えば、コラーゲン系材料は実質的に、多孔質スペース全体又は特定の部分のみを浸透することができる(例えば、選択された深さまで浸透する)。いくつかの実施形態では、コラーゲン系材料は、多孔質スペース中に分布した原線維として、処理される。原線維はまた固体構造体に付着させることができ、この固体構造体は孔スペースの枠を形成することができる(例えば、原線維は、多孔質構造体を形成するビーズなどの要素と接触することができる)。このような付着は、固体に対するコラーゲン系材料の親和性によるもの、又はいくつかの中間手段の使用(本明細書により詳細に記載されるリン酸カルシウムの使用)を介するものであり得る。多くの実施形態では、かなりの孔スペースが他の材料での含浸を依然として許容するように、原線維は、多孔質スペース中に分布させることができる。
【0024】
いくつかの実施形態で使用されるリン酸カルシウム系材料は、生体内移植に好適な種々の形態のリン酸カルシウムを含むことができる。いくつかの実施形態では、リン酸カルシウム系材料はアパタイトを含むことができる。例えば、アパタイトは、式:Ca5(PO4)3(OH、F、Cl又はCO3)の化合物を含むことができる。他の好適な生体適合性リン酸カルシウム系材料の他の非限定例には、ヒドロキシアパタイト、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、ブルシャイト及び他の水素添加リン酸カルシウム、リン酸カルシウムの多形体、並びにこのような材料の組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態に従って、リン酸カルシウム系材料はヒドロキシアパタイトを含む。いくつかの実施形態では、リン酸カルシウム系材料は、多孔質マトリックスの孔スペース内に分布する。リン酸カルシウム系材料は、多孔質スペースの固体構造体(例えば、孔スペースを形成する要素)、基材、コラーゲン系材料又はこの3つの任意の組み合わせに粘着することができる。コラーゲン系材料のように、リン酸カルシウム材料は、いくつかの実施形態では、孔スペースの中への他の材料の移動を可能にするやり方で孔スペースを占めることができる。いくつかの実施形態では、リン酸カルシウム材料は、コラーゲン系材料(例えば、コラーゲン原線維)と多孔質構造体との間の付着を補助するように作用することができる。例えば、ヒドロキシアパタイトは、コラーゲン原線維及び固体多孔質構造体の上にコーティングされて、原線維と多孔質固体構造体との間の付着の更なる力を提供することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、コラーゲン系材料及びリン酸カルシウム系材料を含む多孔質網状組織を有する(例えば、三次元多孔質構造体を有する)インプラントは、セメント又は他の接着剤を使用せずに、インプラントへの骨の付着を改善することができる。このような特徴は、インプラントの被験者の体への同化を補助することができる。例えば、図2に描写されているように、多孔質スペースは、網状組織120に近接する骨210が220方向に移動して網状組織の中に入るようにし、インプラントの安定化を助けることができる。特に、コラーゲン、リン酸カルシウム及び多孔質構造体の組み合わせは、孔スペースの中への骨の内方成長を促進する環境を提供することができ、及び/又はそこへの骨細胞の付着を増強することができる。
【0026】
対照的に、金属性表面上でI型コラーゲンを利用するのみのインプラントは、数人の研究者により、骨内方成長にいかなる有意の増強も呈さないことが見出されている(スベーラ(Svehla)ら、「セメント非使用型インプラント固定におけるI型コラーゲンゲルコーティングの無効(No Effect of a Type I Collagen Gel Coating in Uncemented Implant Fixation)」、ジャーナル・オブ・バイオメディカル・マテリアルズ・リサーチ・パートB:アプライド・バイオマテリアルズ(J Biomed Mater Res B Appl Biomater.)、2005年7月、74巻(1号)、423〜28頁;並びに、ベッカー(Becker)ら、「I型コラーゲンでコーティングされたチタン合金上でのラット頭蓋冠骨芽細胞の増殖及び分化(Proliferation and Differentiation of Rat Calvarial Osteoblasts on Type I Collagen-Coated Titanium Alloy)」、ジャーナル・オブ・バイオメディカル・マテリアルズ・リサーチ(J Biomed Mater Res.)、2002年3月5日、59巻(3号)、516〜27頁を参照されたい)。コラーゲン系材料の非存在下でのインプラント表面上のプラズマ溶射済みヒドロキシアパタイトもまた問題を呈することが、数人の研究者により示されている。例えば、プラズマ溶射により細片及び捕捉粒子が生じることがあり、次にこれらはインプラントの被移植者の中に残って悪影響を及ぼす恐れがある。プラズマ溶射はまた、これを使用して多孔質構造体を作るとき、ビーズの上部コーティングを損傷する傾向を有し得、したがって、骨と接触し得るインプラント表面に強力に影響する可能性がある。また、金属性インプラント表面とヒドロキシアパタイトコーティングとの間の比較的弱い付着に起因して、ヒドロキシアパタイトが離層する傾向は問題である。
【0027】
いくつかの実施形態では、コラーゲン系材料及びリン酸カルシウム系材料を含む多孔質構造体は、生理活性剤などの他の材料を選択的に装填することができる。生理活性剤は一般に、被験者に移植されると、改質された基材と共に選択された生物学的反応を促進することができる材料である。場合によっては、生理活性剤は、多孔質構造体内への骨の内方成長を促進するために選択される。生理活性剤の非限定例には、骨髄細胞、骨前駆細胞、薬理学的作用剤、抗生物質、血漿、血小板、形質転換成長因子、血小板由来成長因子、血管新生成長因子、副甲状腺ホルモン関連たんぱく質、細胞付着調節ペプチド、フィブロネクチン類似ペプチド、抗菌剤、鎮痛剤、及び抗炎症薬が挙げられる。このような生理活性剤は、基材の加工中に、又は被験者内への移植の直前に(例えば、多孔質スペース内で生細胞を使用するとき)、多孔質構造体の中に挿入することができる。
【0028】
生理活性剤の使用のいくつかの例示的な実施形態は、図3及び4を参照しながら論じられる。図3に示されるように、生理活性剤360、例えば、吸引された骨髄細胞、は多孔質網状組織の中に搭載することができ、作用剤360は所望により、網状組織120内の任意の構造体に接触及び/又は粘着することができる。特定の理論に必ずしも束縛されるものではないが、生理活性剤が骨髄細胞及び/又は骨前駆細胞であるとき、改質された基材は、例えば、2方向で骨成長を促進することにより、骨の内方成長及び/又はインプラント固定を増強することができる。図4に示されるように、近接する骨セグメント210は、420方向の改質された基材400に向かって成長することができ、一方で、改質された基材400中の骨前駆細胞360は、潜在的には、430方向の骨セグメント210に向かって骨細胞を強力に増殖させることができる。あるいは又は更に、改質された基材400中の骨前駆細胞360又は他の生理活性剤の存在は、細胞増殖及び固定をもたらす環境を提供することにより、細胞が骨の側部210から多孔質スペースの中へ増殖するにつれて、骨固定の促進を助けることができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、改質された基材は、改質された基材の多孔質網状組織と接触する展延された構造体を含むことができる。このような展延された構造体は典型的には、コラーゲンを含む多孔質構造体を有する(例えば、基材の改質された物質の中で使用されるものと同様のコラーゲン系材料を有する)。展延された多孔質構造体は、骨伝導性であることができ、これは骨の内方成長を補助することができる。いくつかの例示的な実施形態を、図5の概略図により提示することができる。描写されているように、コラーゲン系材料510を含む多孔質構造体は、コラーゲン系材料、ビーズ及びリン酸カルシウム系材料で形成された多孔質網状組織120から展延することができる。場合によっては、多孔質構造体510は、インプラントが被験者に挿入されるときに、骨に面するように構成される。構造体510は、コラーゲン原線維を含むことができ、及び/又は三次元多孔質構造体を形成することができる。リン酸カルシウム系材料は所望により、多孔質構造体510の中に及び/又はその上に組み込むことができ、これは、骨伝導性である環境の提供を助けることができる。展延された多孔質構造体510の厚さは、インプラントと骨表面210との間の全間隙スペースの少なくとも一部の長さに及ぶように選択することができる。場合によっては、この厚さは、約100マイクロメートル〜約1cm、又は約0.5mm〜約5mmであり得る。
【0030】
展延された多孔質構造体510は、骨210とインプラント構造体120との間の組織成長促進を助けることができる。例えば、展延された構造体510は、骨の内方成長に好適な環境を作製する足場を提供する。展延された多孔質構造体510はまた、インプラント構造体120と骨210との間の架橋として作用して、インプラントの適合において潜在的な外科手術の不正確さを補正することもでき、これは例えば、生物学的マトリックスの弾性から生ずることができる。図6に示されるように、1つ以上の生理活性剤660を多孔質展延構造体610に添加することができ、これはインプラントに対する内方成長を更に促進することができる。例えば、他の骨髄及び/又は骨の成長促進要素(例えば、インプラント被験者からの血小板に富む血漿)を更に含むことができる骨髄細胞が、構造体610の中に播種されると、骨成長は拡大して1つを超える方向で、すなわち、骨から単に進むのを超えて、形成することができる。
【0031】
場合によっては、展延された構造体は、基材の多孔質網状組織に一体結合される。例えば、図6に関して、展延された構造体610及びインプラントの残部620は、一体多孔質マトリックスとして結合することができる(例えば、展延された構造体は、基材の多孔質金属網状組織中のコラーゲンから展延するコラーゲン網状組織である)。他の例では、展延された構造体は、基材の多孔質網状組織とは別個の構造体であり得る。例えば、図6に関して、展延された構造体610は、インプラントの残部620とは別個のピースとして構成することができる。それゆえに、展延された部分610は、移植処置の直前に1つ以上の生理活性剤を装填する(又は事前に予め加工する)ことができ、残部インプラント部分620と骨部分210との間に挿入することができる。
【0032】
改質された基材の加工方法
本発明のいくつかの実施形態は、骨固定を促進できる材料を調製する方法について記載される。インプラント表面上に処理することができる材料は、改質された基材、例えば、石灰化コラーゲン性の足場、を含むことができる。いくつかの実施形態では、コラーゲン系材料を基材の多孔質網状組織内に堆積させる。リン酸カルシウム系材料は、コラーゲン系材料、多孔質網状組織の表面、又はこれらの両方の上に堆積して、足場を形成することができる。多くの実施形態では、形成された足場は、本出願に記載されている改質された基材の種々の他の実施形態と両立することができるが、他の実施形態がこのような材料にぴったり一致する必要はない。
【0033】
このような材料を形成するいくつかの例示的な実施形態は、図7A〜7Dの描写を参照しながら説明することができる。図7Aに示される非平坦化ビーズ710などの複数の要素を使用して、基材の多孔質網状組織を形成することができる。この要素は、本明細書で上述しているように、種々の形状及びサイズを有することができ、当業者により理解されるものなどの種々の技術を使用して、表面上に付着して多孔質網状組織(例えば、三次元多孔質網状組織)を形成することができる。同様に、化学的及び/又は機械的エッチングなどの他の技術も利用して、適切な基材の多孔質網状組織(例えば、金属性多孔質網状組織)を形成して、表面からの材料除去を生じさせ、多孔質網状組織に所望の特性を得ることができる。
【0034】
多孔質網状組織内のコラーゲン系材料の堆積は、多くの技術を使用して行うことができる。いくつかの実施形態では、多孔質網状組織はコラーゲン含有混合物に曝露することができ、その後この混合物は網状組織内にコラーゲン原線維を形成することができる。例えば、図7Bに示されるように、溶解したコラーゲン分子(例えば、ナノメートル範囲720のサイズを有するI型)は、酸性溶液中に置かれて混合物を形成することができ、この混合物は要素715により形成される網状組織に曝露される。この混合物は、所望により、いくらかのコラーゲン原線維(例えば、ウシ供給源由来で数マイクロメートル〜数十マイクロメートルの範囲のサイズを有する原線維)を含んで、加工の後期で原線維の成長を促進することができる。他の実施形態では、コラーゲン含有溶液は、その主要なコラーゲン構成成分として、マイクロメートルサイズ範囲以上のコラーゲン原線維のピースを有することができる。
【0035】
混合物の曝露は、種々のやり方で、例えば、混合物中に多孔質網状組織を浸漬することにより、行うことができる。いくつかの実施形態では、真空を基材に適用することができ、これは多孔質スペース中の空気を除去して混合物の浸透を促進することができる。他の実施形態では、圧力源を適用して、多孔質網状組織がさらされている周囲気圧よりも高い圧力を供給することによって、流体を推進することができる。圧力源には、ガス供給源又は当業者に既知のものを含む他の供給源を挙げることができる。
【0036】
次に、図7Cに示されるように、コラーゲン材料は、多孔質網状組織内の環境のpHを上げて、すなわち、酸性度を下げて、網状組織の中にコラーゲンを沈殿させることにより、多孔質網状組織内の溶液から形成することができる(例えば、コラーゲン原線維が形成される)。溶液中でコラーゲン材料を可溶化するため及び原線維生成物を沈殿させるための条件には、当業者に既知のものが挙げられる。例えば、約2よりも低いpHを有する溶液中でコラーゲンを処理して、溶液中にコラーゲンを保持することができる。次に、この溶液のpHを、例えば約5を超える値に上げて、原線維形成を生じさせることができる。特定の実施例では、コラーゲン装填多孔質網状組織を生理的温度(例えば、37℃)で中性緩衝液に曝露して、コラーゲン原線維730を多孔質網状組織内で自己組織化させることができる。
【0037】
場合によっては、混合物から再構成されるコラーゲン系材料(例えば、原線維網状組織)の一体性を増強することは、有益であり得る。これは、架橋剤(例えば、グルタルアルデヒド及び/又はグルデルアルデヒド(gluderaldehyde))などの任意の数の作用剤を使用して達成することができる。別の流動媒体中に分散できる作用剤は、コラーゲン網状組織に曝露することができる(例えば、作用剤含有媒体の中にコラーゲン網状組織を浸漬する)。作用剤は、原線維網状組織に浸透し、コラーゲン分子を架橋するやり方で相互作用し、コラーゲン網状組織の一体性を増強することができる。コラーゲン含有溶液がかなりの量のマイクロメートルサイズのコラーゲンピース(例えば、ウシ供給源から抽出)を利用するとき、溶解したコラーゲン分子からコラーゲン原線維を形成することと比較して、より少ない作用剤を利用することができ、又は作用剤の使用を場合によっては完全に回避することができる。いくつかの実施形態では、多孔質網状組織は、コラーゲン分子を含有する溶液、並びに溶液中のカルシウム及びリン酸塩系材料に曝露することができる。条件の変化により、コラーゲン原線維の形成及びコラーゲン原線維上へのリン酸カルシウム系材料の堆積が、本質的に1工程で得ることができる。例えば、溶液は、構成要素が中で溶解している場合、酸性環境にあることができる。次に、pHを上げる(例えば、酸性度を下げる)と、原線維形成及びリン酸カルシウム系堆積を得ることができる。
【0038】
リン酸カルシウム系材料の堆積は種々のやり方で行うことができる。いくつかの実施形態では、これは、コラーゲン系材料を有する多孔質網状組織をリン酸カルシウム溶液に曝露することによって行うことができ、これは例えば、準安定状態にあり得る。これは、図7Dに示されるように、多孔質網状組織内でのリン酸カルシウム系固体(例えば、ヒドロキシアパタイト740)の堆積を生じさせることができる。リン酸カルシウム系材料堆積技術のいくつかの例は、表題が「生理活性セラミックコーティング及び方法(Bioactive Ceramic Coating and Method)」である米国特許第6,569,489号に記載されている。他の有力なリン酸カルシウム系材料形成技術は、表題が「インプラント材料(Implant Material)」である米国特許第6,069,295号、表題が「インプラント材料及びその使用プロセス(Implant Material and Process for Using It)」である米国特許第6,146,686号、並びに表題が「生物学的活性剤の組み込みと放出(Device for Incorporation and Release of Biologically Active Agents)」である米国特許第6,344,061号に記載されている。この段落に列挙した特許はそれぞれ、これによって、それらの全体が本明細書に参照により組み込まれる。
【0039】
他の化学又は堆積技術もまた使用してリン酸カルシウム系材料及び/又はコラーゲン系材料を堆積させることができる。例えば、電気化学的な方法を堆積に利用することができる。いくつかの実施形態では、電極と多孔質構造体(例えば、金属性)との間に電位を印加することができ、両方の構造体は電気を伝導することが可能な溶液と接触する。この電位は、溶液から多孔性構造体上へリン酸カルシウム系材料の堆積を推進することができる。いくつかの実施形態では、電気化学的堆積を利用して、リン酸カルシウム系材料及びコラーゲン系材料を実質的に同時に堆積させることができる。当業者に既知の変形などの、この技術の他の変形もまた適用できる。
【0040】
改質された基材の形成後、生成物をフリーズドライして、過剰の水を除去し、使用まで材料の状態を維持することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、1つ以上の生理活性剤を使用して、コラーゲン系材料及び/又はリン酸カルシウム系材料と混合することができ、生理活性剤の型は本出願の別の箇所に記載している。種々の技術を利用して、生理活性剤を適用することができ、これは、作用剤が改質された基材内に配置されるときに依存することができる。例えば、基材の加工中に、いくつかの生理活性剤を改質された基材と統合することができる。1つの例では、骨形態形成タンパク質又は改質された基材に容易に収容できる他の作用剤などの生理活性剤は、溶解したコラーゲンを有する酸性溶液中に溶解することができる。例えば、より高いpHへの曝露時に、コラーゲンの沈殿はまたそれと共に生理活性剤の混合も生じさせることができる。別の例では、生理活性剤は、多孔質スペース内へのリン酸カルシウム系材料の堆積と共に装填することができる。更に別の例では、生理活性剤は、コラーゲン系材料及びリン酸カルシウム系材料が装填された後で、装填することができる(例えば、生理活性剤含有水溶液中での改質された基材の浸漬により)。生理活性剤と共に、又はその後順番に他の材料を装填して、マトリックスとの生理活性剤の付着を促進することができる。
【0042】
他の実施形態では、基材の使用時間付近で、例えば、基材を植え込むための操作手順の間又はケア時点付近で、1つ以上の生理活性剤を改質された基材に装填することができる。このような生理活性剤の例には、骨髄吸引液などの腐敗性である作用剤、又は骨前駆細胞などの細胞、又は血小板に富む血漿が挙げられる。しかしながら、非腐敗性作用剤又はかなりの耐用寿命を有する作用剤もまた所望によりこの段階で装填できることが理解される。真空又はウィックパッチ(wick patch)の使用などの種々の機構を利用して、マトリックスの中に生理活性剤を装填することもできる。生理活性剤を保持する流体、例えば、骨髄吸引液、を、多孔質スペースを通して吸引するように向けられた真空は、例えば、そのスペース内に生理活性剤を堆積させることができる。ウィックパッチは、親和性を有する基材であり、流体はその基材を通して吸引される。例えば、骨髄吸引液は、ウィックパッチを多孔質スペースの一部分に、骨髄吸引液の供給源を別の部分に接触させることにより、基材を通して吸引することができる。ウィックパッチが流体を吸収する傾向は、毛管現象により多孔質網状組織を通して流体の流れを推進し、その流れは骨髄吸引液を供給源から多孔質網状組織の中に吸引する。明らかに、中に分布した微粒子又は他の固体又は他の溶質を有する流体などの、他の流体も利用することができる。当業者により理解されるものなどの、他の技術もまた利用できる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態に従う改質された基材を加工するための例示的な方法は、図8に示される概略図を参照しながら、説明される。流体保持容器800を組み立てて、コラーゲン系材料及び/又はリン酸カルシウム系材料の堆積を促進することができる。例えば、多孔質マトリックス815を有するインプラント810を容器800内に挿入することができる。容器800は、小さな間隙815が多孔質構造体の上部816と容器の上部805との間に存在するように、構成することができる。半透膜830は、容器の上部にわたる封止の一部として使用することができる。
【0044】
この構成で、容器800を使用して、多孔質マトリックス815内に材料を堆積させることができる。例えば、コラーゲン分子及び/又は小コラーゲンピースを溶解したコラーゲン含有混合物をインプラントの多孔質部分815に曝露することができ、この混合物は酸性である。コラーゲン含有混合物を同伴したインプラントは、中性pHを有する流体と共に流体保持領域820内に配置することができる。流体領域820を生理学的温度にさらすことにより、コラーゲン原線維形成を誘導することができる。流体は、保持領域820と膜830の反対側840との間に適切な圧力差を与える(例えば、環境840を真空にさらす)ことにより、流体保持領域820から引き出すことができる。膜830は、コラーゲン系材料に実質的に不透過性であり得る(例えば、約3.32×10−19g(約200Kダルトン)のコラーゲン分子の分子量と比較して、約1.66×10−20g(約10Kダルトン)の分子量カットオフを有する)。したがって、コラーゲン原線維を多孔質マトリックス815内に形成することができる。更に、コラーゲン原線維を間隙領域825内に形成することもでき、これは本明細書のいくつかの実施形態に従う多孔質マトリックスの展延された部分を形成することができる。間隙距離は、所望の展延された部分の厚さに対応する距離を有するように、特定的に選択することができる。
【0045】
容器を引き続き使用して、他の堆積を行うことができる。例えば、いったんコラーゲン原線維が形成されてから、リン酸カルシウム系材料を含有する流体を流体保持スペース820内に配置することができる。半透膜830を通して流体を吸引することにより、リン酸カルシウム材料を多孔質領域815及び展延されたコラーゲン網状組織内に吸引することができる。1つ以上の生理活性剤を含有する流体を使用してこの工程を繰り返し、このような作用剤も同様に堆積させることができる。
【0046】
容器800及びその使用に関するいくつかの変形が可能である。例えば、前に開示した手順に従って、間隙825を実質的に削除して、展延された領域を有さない改質された基材を形成することができる。同様に、流体は、流体保持スペース820と連通した圧力供給源を配置して、そこに外部スペース840と比較して高い圧力を提供することにより、推進することができる。容器はまた、反応を推進する平衡(例えば、孔スペース内におけるコラーゲン原線維の形成)に依存して、流体推進力を利用しないことも可能である。別の変形では、本明細書の他の実施形態に従って記述されているように、膜830をウィックパッチに置き換え、毛細管現象を使用して流体の流れを推進することができる。当業者の知識内の他の変形もまた本発明の実施形態の範囲内である。
【0047】
〔実施例〕
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を説明するために提供される。実施例は、利用される任意の特定の実施形態の範囲を制限することを目的としない。
【0048】
実施例1:エッチングされていないポロコートビーズ及びI型コラーゲン
コバルト−クロム−モリブデン合金製で、約200μmの直径を有するポロコートビーズをそのままI型コラーゲンを有する溶液に曝露した。ビーズはエッチングされた表面を有さなかった。50μLのI型コラーゲン(6.4mg/mL、pH2、ニュートラゲン(Nutragen)(商標)、イナメッド社(Inamed Corporation))を複数の液滴でポロコートビーズの表面上に加えて、表面適用範囲を最大化した。この液滴をポロコートビーズに5分間にわたって曝露し、その結果コラーゲンは吸収された。引き続いて、このポロコートビーズを50mLのPBS(100mMのNa2HPO4、9%のNaCl、25℃でpH=6.8)溶液中に37℃で24時間にわたって浸し、その後、すすぎ、−80℃で2時間にわたって凍結させた。凍結したポロコートビーズをバルクトレイ乾燥機に移し、フリーズドライシステム内で一晩凍結乾燥させた。このコラーゲンは、図9に示されるように、ポロコートビーズ間の接続を形成した。
【0049】
実施例2:マイクロエッチングされたポロコートビーズ及びI型コラーゲン
コバルト−クロム−モリブデン合金製のポロコートビーズをコバルト−クロム−モリブデンディスク(直径約1.9cm(約3/4”)及び厚さ約0.0076cm(約0.003”))上に分布させた。この集合体を6.4NのHCl及び0.15Mの(NH4)2S2O8中で1時間にわたってエッチングした。表面は、図10Cに示されるように、マイクロ非平滑化を呈した。孔は約1マイクロメートルのスケールでのおよそのサイズを有する。次に、50μLのI型コラーゲン(6.4mg/mL、pH2、ニュートラゲン(Nutragen)(商標)、イナメッド社(Inamed Corporation))を複数の液滴で、マイクロエッチングされたポロコートコートディスク上に加えて、表面適用範囲を最大化した。この液滴をポロコートディスクに5分間にわたって曝露し、その結果コラーゲンはポロコートコートディスク内に吸収された。引き続いて、このポロコートディスクを50mLのPBS(100mMのNa2HPO4、9%のNaCl、25℃でpH=6.8)溶液中に37℃で24時間にわたって浸した。このポロコートディスクをすすぎ、−80℃で2時間にわたって凍結させた。凍結したポロコートビーズをバルクトレイ乾燥機に移し、フリーズドライシステム内で一晩凍結乾燥させた。コラーゲン(有機)マトリックスは金属表面とうまく一体化し、図10A及び10Bの顕微鏡写真により描写されているように、ビーズ間に三次元網状組織を形成した。特に、図10Bは、コラーゲン原線維とエッチングされた表面との間の付着を示す。
【0050】
実施例3:ポロコート表面へのコラーゲンの付着
ポロコートディスク(直径約1.9cm(約3/4”)及び厚さ約0.0076cm(約0.003”)は、酸エッチングされるか又はエッチングされずに使用されるかのいずれかであった。70μLのI型コラーゲン(6.4mg/mL、pH2、ニュートラゲン(Nutragen)(商標)、イナメッド社(Inamed Corporation))を複数の液滴で、ポロコートコートディスク上に加えて、表面適用範囲を最大化した。この液滴をポロコートディスク表面に5分間にわたって曝露し、その結果コラーゲンはポロコートコートディスク内に吸収された。ポロコートコートディスク上部に濾紙を穏やかに押し当てることにより、ディスク表面上の過剰のコラーゲン溶液を除去した。コラーゲン溶液添加前とポロコートコートディスク表面上の過剰のコラーゲン溶液の除去後との重量差によって、エッチング済み及び非エッチングのポロコートコートディスクの重量増加を測定した。図11に示されるように、エッチングされたポロコート表面は、エッチングされていないポロコート表面の約14倍のコラーゲンを保有した。
【0051】
実施例4:ナノエッチングされたポロコートビーズ及びI型コラーゲン
以下の技術を使用して、ポロコートビーズをナノエッチングした:1.9cm(3/4”)(直径)のポロコートディスクそれぞれを室内条件下で24時間にわたって8NのHCl 50mL中に完全に浸漬した。図12Cは、多孔質表面の顕微鏡写真を提示し、孔が約10nmのオーダーでのサイズを有することを示す。以下の技術を使用して、ナノエッチングされたビーズをコラーゲンでコーティングした。ナノエッチングされたポロコートビーズに50μLのI型コラーゲン(6.4mg/mL、pH2、ニュートラゲン(Nutragen)(商標)、イナメッド社(Inamed Corporation))を複数の液滴で加え、表面適用範囲を最大化した。この液滴をポロコートビーズに5分間にわたって曝露し、その結果コラーゲンはポロコートコートビーズ内に吸収された。引き続いて、このポロコートビーズを50mLのPBS(100mMのNa2HPO4、9%のNaCl、25℃でpH=6.8)溶液中に37℃で24時間にわたって浸した。このポロコートビーズをすすぎ、−80℃で2時間にわたって凍結させた。凍結したポロコートビーズをバルクトレイ乾燥機に移し、フリーズドライシステム内で一晩凍結乾燥させた。図12A及び12Bに形成された三次元構造体を示す。
【0052】
以下の技術を使用して、コラーゲンが装填された多孔質マトリックスをヒドロキシアパタイトで石灰化した。指定された濃度で以下の化学物質を混合することにより、石灰化溶液を調製した:NaCl(150.2mM)、K2HPO4(2.4mM)、MgCl2(2.5mM)、CaCl2(6mM)及び(HOCH2)3CNH2(トリス緩衝剤、17.5mM)。1NのHCl 18mLを最終体積1Lの溶液中に加え、その後、NaHCO3(8mM)を加えた。石灰化中の温度を37±1℃に維持した。封止した容器内において、コラーゲン装填ポロコートディスクを石灰化溶液中で12時間を超えるが24時間未満にわたってインキュベートした。石灰化した最終生成物を水中で数回にわたって十分すすぎ、空気中で乾燥させた。ヒドロキシアパタイトコーティングされた原線維及びビーズの種々の倍率の顕微鏡写真を図13A〜13Bに提示する。図13Cの顕微鏡写真により示されるように、ヒドロキシアパタイトを使用して、ビーズ表面にコラーゲン原線維を固定するのを補助することができる。
【0053】
等価物
本発明は、特定の方法、構造体及び装置に関して記述されてきたが、本発明を考慮して当業者において変形及び修正が生じ得ることが理解される。例えば、本明細書で議論された方法及び組成物は、いくつかの実施形態でのインプラントのための金属表面の調製以外に利用することができる。同様に、1つの実施形態に関して図示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることも可能である。こうした改変及び変形は本発明の範囲内に含まれるものとする。当業者であれば、ルーチンの実験だけを使用して、上述した実施形態に基づく本発明の更なる特性及び利点を認識するであろう又は確定することができるであろう。したがって、本発明は、付属の特許請求の範囲において示される場合は例外として、具体的に図示、記載されたものに限定されるものではない。
【0054】
全ての出版物及び引用は、本明細書ではそれらの全体が参照により明示的に組み込まれる。用語「1つの(「a」及び「an」)」は、本出願内で利用されているように、語句「1つ以上の」と互換的に使用することができ、等価である。用語「含む」、「有する」、「挙げる」及び「含有する」は、特に注記しない限り、包含的な用語(すなわち、「含むが、これらに限定されない」)として解釈されるべきである。本明細書における数値範囲の詳細説明は、特に示さない限り、単に、範囲内に入るそれぞれ別個の数値を個別に指すことの省略表記法として働くことを意図するものであり、それぞれ別個の数値は、本明細書に個別に引用されているかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されている全ての方法は、本明細書で特に示唆されないか又はそうでなければ文脈により明確に矛盾していない限り、任意の好適な順番で行うことができる。本明細書で提供される任意の及び全ての例又は例示的な言葉(例えば、「などの」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図し、請求しない限り、本発明の範囲に制限を提示するものではない。本明細書における全ての言葉は、本発明の実施に不可欠であるような請求されていない任意の要素を示すものとして解釈すべきではない。
【0055】
〔実施の態様〕
(1) 骨への固定を促進するためのインプラントにおいて、
多孔質網状組織を含む改質された部分を有する基材と、
前記多孔質網状組織の少なくとも一部に分布したコラーゲン系材料と、
前記改質された部分の少なくとも一部上に分布したリン酸カルシウム系材料と、を含み、前記改質された部分及び前記リン酸カルシウム系材料が、骨への固定を促進するための石灰化コラーゲン性の足場の少なくとも一部を形成する、インプラント。
(2) 前記リン酸カルシウム系材料が前記多孔質網状組織及び前記コラーゲン系材料上に分布する、実施態様1に記載のインプラント。
(3) 前記コラーゲン系材料が多孔質構造体を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(4) 前記多孔質網状組織が、前記基材の本体に付着した複数の要素を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(5) 前記多孔質網状組織が三次元多孔質網状組織を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(6) 前記多孔質網状組織に接触する展延された構造体を更に含み、前記展延された構造体が、コラーゲンを含む多孔質構造体を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(7) 前記リン酸カルシウム系材料がアパタイトを含む、実施態様1に記載のインプラント。
(8) 前記多孔質網状組織が金属性材料を含む、実施態様1に記載のインプラント。
(9) 前記金属性材料が、チタン、クロム、及びコバルトのうちの少なくとも1つを含む、実施態様8に記載のインプラント。
(10) 前記多孔質網状組織が非平滑化表面を含む、実施態様1に記載のインプラント。
【0056】
(11) 前記コラーゲン系材料がI型コラーゲンを含む、実施態様1に記載のインプラント。
(12) 前記基材の前記改質された部分に結合した生理活性剤を更に含む、実施態様1に記載のインプラント。
(13) 前記生理活性剤が、骨髄細胞、骨前駆細胞、薬理学的作用剤、抗生物質、血漿、血小板、形質転換成長因子、血小板由来成長因子、血管新生成長因子、副甲状腺ホルモン関連たんぱく質、細胞付着調節ペプチド、フィブロネクチン類似ペプチド、抗菌剤、鎮痛剤、及び抗炎症薬のうちの少なくとも1つを含む、実施態様12に記載のインプラント。
(14) インプラントでの骨固定を促進するための石灰化コラーゲン性の足場を調製するための方法において、
コラーゲン系材料を基材の多孔質網状組織に曝露することと、
リン酸カルシウム系材料を前記コラーゲン系材料及び前記多孔質網状組織のうちの少なくとも1つの上に堆積させて、前記インプラントの前記石灰化コラーゲン性の足場を形成することと、を含む、方法。
(15) 前記多孔質網状組織が金属性材料を含む、実施態様14に記載の方法。
(16) 前記コラーゲン系材料を前記多孔質網状組織に堆積させることが、
前記多孔質網状組織の前記少なくとも一部をコラーゲン含有混合物に曝露することと、
前記混合物から前記多孔質網状組織内にコラーゲン原線維を形成することと、を含む、実施態様14に記載の方法。
(17) 曝露することが酸性コラーゲン含有混合物を使用することを含み、コラーゲン原線維を形成することが、前記多孔質網状組織を前記酸性コラーゲン含有混合物よりも酸性度の低い混合物に曝露して、コラーゲン原線維を形成することを含む、実施態様14に記載の方法。
(18) 前記酸性コラーゲン含有混合物を使用することが、前記コラーゲン原線維を形成する前に、前記多孔質網状組織を真空に曝露することを含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記コラーゲン系材料を前記多孔質網状組織に付着させる前に、前記多孔質網状組織の少なくとも一部上に非平滑化表面を形成することを更に含む、実施態様14に記載の方法。
(20) コラーゲン系材料と混合するために、生理活性剤を適用することを更に含む、実施態様14に記載の方法。
【0057】
(21) 前記生理活性剤を適用することが、前記生理活性剤の適用を推進するために真空を適用することを含む、実施態様20に記載の方法。
(22) 前記コラーゲン系材料を架橋することを更に含む、実施態様14に記載の方法。
(23) 被験者内でのインプラントの骨固定を促進するための方法において、
基材を提供することであって、前記基材が、
(i)前記インプラントの表面の少なくとも一部を形成する改質された部分であって、前記改質された部分が多孔質網状組織を含む、改質された部分と、
(ii)前記インプラントの前記改質された部分の前記多孔質網状組織の少なくとも一部に分布するコラーゲン系材料と、
(iii)前記改質された部分の少なくとも一部上に分布するリン酸カルシウム系材料と、
を含む、提供することと、
前記インプラントの骨固定を促進するために、前記基材を前記被験者の骨に近接して植え込むことと、を含む、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨への固定を促進するためのインプラントにおいて、
多孔質網状組織を含む改質された部分を有する基材と、
前記多孔質網状組織の少なくとも一部に分布したコラーゲン系材料と、
前記改質された部分の少なくとも一部上に分布したリン酸カルシウム系材料と、を含み、前記改質された部分及び前記リン酸カルシウム系材料が、骨への固定を促進するための石灰化コラーゲン性の足場の少なくとも一部を形成する、インプラント。
【請求項2】
前記リン酸カルシウム系材料が前記多孔質網状組織及び前記コラーゲン系材料上に分布する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記コラーゲン系材料が多孔質構造体を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記多孔質網状組織に接触する展延された構造体を更に含み、前記展延された構造体が、コラーゲンを含む多孔質構造体を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記リン酸カルシウム系材料がアパタイトを含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記多孔質網状組織が金属性材料を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記金属性材料が、チタン、クロム、及びコバルトのうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
前記多孔質網状組織が非平滑化表面を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
インプラントでの骨固定を促進するための石灰化コラーゲン性の足場を調製するための方法において、
コラーゲン系材料を基材の多孔質網状組織に曝露することと、
リン酸カルシウム系材料を前記コラーゲン系材料及び前記多孔質網状組織のうちの少なくとも1つの上に堆積させて、前記インプラントの前記石灰化コラーゲン性の足場を形成することと、を含む、方法。
【請求項1】
骨への固定を促進するためのインプラントにおいて、
多孔質網状組織を含む改質された部分を有する基材と、
前記多孔質網状組織の少なくとも一部に分布したコラーゲン系材料と、
前記改質された部分の少なくとも一部上に分布したリン酸カルシウム系材料と、を含み、前記改質された部分及び前記リン酸カルシウム系材料が、骨への固定を促進するための石灰化コラーゲン性の足場の少なくとも一部を形成する、インプラント。
【請求項2】
前記リン酸カルシウム系材料が前記多孔質網状組織及び前記コラーゲン系材料上に分布する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
前記コラーゲン系材料が多孔質構造体を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
前記多孔質網状組織に接触する展延された構造体を更に含み、前記展延された構造体が、コラーゲンを含む多孔質構造体を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
前記リン酸カルシウム系材料がアパタイトを含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
前記多孔質網状組織が金属性材料を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
前記金属性材料が、チタン、クロム、及びコバルトのうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載のインプラント。
【請求項8】
前記多孔質網状組織が非平滑化表面を含む、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
インプラントでの骨固定を促進するための石灰化コラーゲン性の足場を調製するための方法において、
コラーゲン系材料を基材の多孔質網状組織に曝露することと、
リン酸カルシウム系材料を前記コラーゲン系材料及び前記多孔質網状組織のうちの少なくとも1つの上に堆積させて、前記インプラントの前記石灰化コラーゲン性の足場を形成することと、を含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図12C】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【公開番号】特開2010−246926(P2010−246926A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−92836(P2010−92836)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(501384115)デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド (216)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92836(P2010−92836)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(501384115)デピュイ・プロダクツ・インコーポレイテッド (216)
【Fターム(参考)】
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