説明

骨密度画像提供装置

【課題】骨の部分ごとの骨密度の経時変化の情報を、骨密度分布画像上に付与して提供する。
【解決手段】被検骨の骨密度分布を示す情報と、この骨密度分布を測定した測定日と、被検者とを記憶部26に記憶する。制御部24にて、ある被検者に関し、測定日の異なる骨密度分布を記憶部26より読み出し、これらの骨密度分布を測定点ごとに比較し、測定点ごとに骨密度の変化量を算出する。表示部28により、被検骨の骨画像上に、測定点ごとの骨密度の変化量の情報を表した経時変化骨密度画像を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定された骨密度の情報を画像にて提供する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
骨の疾病診断やその予防のために、骨密度、すなわち骨に含まれるミネラル(骨塩)の量を測定することが行われている。例えば、下記特許文献1には、X線画像に基づき、骨密度分布に関するデータを得て、これを表示する装置が記載されている。
【0003】
骨は、骨の表面を覆っている皮質骨と呼ばれる部分と、皮質骨の内側にあるスポンジの様な形状の海綿骨と呼ばれる部分を有する。骨密度は疾病等の病態により減少する場合があるが、病態の種類により、骨密度の減少する部位が異なる。例えば、カルシウム不足が続いた場合や骨粗鬆症の場合においては、早期において、海綿骨の骨密度の低下が見られる。また、血液透析を行っている患者の場合や副甲状腺機能亢進症などの場合は、皮質骨の骨密度の低下が見られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−34539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
疾病診断や予防においては、測定値の絶対値よりも、被検者個人の測定値の経時的な変化が重要な場合がある。また、治療においては、治療効果の確認のために経時的な変化を把握することが重要となる。さらに、骨のどの部分において、骨密度が変化しているかを把握したいという要望がある。
【0006】
本発明は、骨の部分ごとに骨密度の経時的な変化を容易に把握することができる情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の骨密度画像提供装置は、被検骨の骨密度分布を示す情報、この骨密度分布を測定した測定日および被検者を記憶する記憶手段と、ある被検者に関し、測定日の異なる骨密度分布を前記記憶手段より取得し、これらの骨密度分布を測定点ごとに比較し、測定点ごとに骨密度の変化量を取得する変化量取得手段と、被検骨の骨画像上に、測定点ごとの骨密度の変化量の情報を表した経時変化骨密度画像を提供する経時変化骨密度画像提供手段と、を有する。
【0008】
また、経時変化骨密度画像提供手段は、測定点ごとの骨密度の変化量を表示の色により表すものとできる。
【発明の効果】
【0009】
骨の部分ごとの骨密度の経時変化を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態の骨密度測定装置の概略構成ブロック図である。
【図2】X線写真による踵部分の骨密度分布画像の一例を示す図である。
【図3】骨密度の経時変化を表示するための制御フローを示す図である。
【図4】X線写真による骨密度分布画像に経時変化の情報を付与した表示例を示す図である。
【図5】骨密度の経時変化の程度を、測定点の数で示した図である。
【図6】骨密度分布画像の位置合わせ処理に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、本発明に係る骨密度測定装置10の概略を示す構成ブロック図である。骨密度測定装置10は、X線測定装置の構成を有し、X線が骨を透過する際の減衰量に基づき骨密度(骨塩量)を算出している。骨は、筋肉や脂肪等の軟組織に覆われており、この軟組織の影響を排除するために、骨密度測定装置10は、2種類のエネルギのX線を用いたDXA法により骨密度の測定を行っている。
【0012】
骨密度測定装置10は、腕、大腿、胴等の被検体12を載置するためのベッド14を有する。被検体12の測定対象となる骨16は、軟組織18に覆われている。ベッド14の下側には扇状のX線ビーム19を出射するX線発生装置20が配置されている。X線発生装置20は、必要に応じて高エネルギX線、低エネルギX線を発生することができる。X線検出装置22は、線状または帯状の検出領域を有し、被検体12を透過したX線を検出する装置である。X線発生装置20およびX線検出装置22は、扇状X線ビーム19が形成する面に交差する、好ましくは直交する方向に移動され、これにより2次元画像を得ることができる。X線発生装置を、X線を円錐状に照射する装置とし、X線検出装置を2次元検出装置とすれば、前記装置の移動は不要であり、直接的に2次元画像を得ることができる。
【0013】
制御部24は、本装置の動作制御およびデータ処理、その管理を行うものである。検出されたX線の情報に基づく骨密度の算出についても、ここで実行される。検出されたX線の情報に基づき、例えば図2に示すような、骨画像が得られる。X線は、骨密度に応じて減衰量が変化するため、前記の骨画像の輝度は、骨密度に対応している。よって、前記骨画像は、その輝度により骨密度分布を示す画像となっている。図2は、踵の部分が表示された画像であり、骨の各部の骨密度が各画素の輝度に対応付けられて表示されている。輝度の高い部分が骨密度の高い部分であり、暗い部分が骨密度の低い部分である。記憶部26は、算出された骨密度を骨密度分布画像にて、被検者、対象部位および測定日等の情報と共に記憶する。表示部28は、検出されたX線データ、骨密度等の情報を表示して提供する。これらの情報を印刷して提供するプリンタを設けることも可能である。
【0014】
図3は、骨密度の測定から骨密度の経時変化を示す画像を表示するまでの流れを示す図である。図1に示す骨密度測定装置10により骨密度分布の測定を行う(S100)。このとき、測定者により、測定日、被検者を特定するための情報、測定部位(踵、大腿、前腕など)の情報も骨密度分布の情報と共に入力され、これらの情報が組になって記憶部26に記憶される(S102)。被検者を特定するための情報は、被検者の氏名でもよく、また被検者に一意に対応している番号、記号でもよい。
【0015】
次に、今回測定対象となった被検者に関し、今回の測定部位と同じ部位の過去の測定データが記憶部26に記憶されているか検索を行う(S104)。検索でヒットしたデータがなければ終了する。検索でヒットしたデータがあれば、ヒットしたデータのリストを表示等により提供する。このリストは、少なくとも測定日を提供するものである。測定者は、このリストから、今回測定された骨密度分布の比較対象とするデータを一つ選択する(S106)。選択された過去の骨密度分布データと今回のデータに基づき、これらのデータ間で対応する測定点の骨密度の変化量を求める(S108)。変化量は、過去の骨密度値に対する今回の増加分または減少分の割合として求めてもよく、また増加分または減少分を変化量としてもよい。この変化量に基づき、今回または過去の骨密度分布の画像の各測定点に色情報を付与して、骨密度分布画像を表示部28等を用いて提供する(S110)。色表示は、例えば骨密度の変化が±3%未満であれば、色情報を付与する前の骨密度分布画像の輝度情報に基づきそのまま表示する。したがって、この部分はグレースケールの表示となる。また、骨密度画像が3%以上5%未満増加した測定点には水色、5%以上増加した測定点には青色、逆に3%以上5%未満減少した測定点には橙色、5%以上減少した測定点には赤色の表示を行う。変化の程度を示す値、前記の例では3%、5%は例示であり、適切な値が設定されるべきである。また、測定者がその都度変更するようにしてもよい。また、水色、青色、無色、橙色、赤色の5段階に限らず、段階を増減させてもよい。また、骨密度の増加側を青色、減少側を赤色等とし、その程度を色調、彩度、明度で表してもよい。
【0016】
図4には、骨密度分布の画像に、骨密度の経時変化を示す情報を重畳した画像表示の例が示されている。図4はグレースケール画像であるが、実際には、図示された細かい四角の中に上記の水色、青色、橙色、赤色の付与されている。また、図4の場合は、比較を行う測定点が、全ての測定点ではなく、間引かれており、その測定点の周囲の所定の四角形の領域に上記の色が付されている。変化量が3%未満の測定点については、元の骨密度分布画像をそのまま用いる。
【0017】
また、図5のように、骨密度の変化の範囲ごとに測定点の数を計数し、それをグラフ化して表示してもよい。
【0018】
測定時期の異なる骨密度分布画像を比較するために、これらの画像、特に評価対象となる骨の位置を合わせる必要がある。この位置合わせに関する説明を、図6を用いて行う。図6(a)は、人の踵部分の骨密度分布画像の、骨と軟部組織部分の境界と、軟部組織部分と空気の境界を示した図である。骨と軟部組織部分の境界が太い実線で示され、軟部組織部分と空気の境界が細い実線で示されている。図において、右下方向がアキレス腱側、左下方向がつま先側になる。踵骨30と距骨32の輪郭の境界点Aでは、骨輪郭の接線の傾き(Y/X)が急激に変化する。この境界点Aの位置と、踵(かかと)付近の軟部組織部分と空気の境界線の傾きBを基準に、二つの骨密度分布画像の位置合わせを行う。
【0019】
まず、骨密度分布画像において、骨部分の画素のうち最もY座標が大きい画素P1(X1,
MAX)を求める。画素P1から、骨と軟部組織の境界の傾きを各画素ごとに求める。傾きは、注目画素と、境界線上において、注目がその前後2画素ずつの5点の回帰直線の傾きとする。図6(b)は、この各画素ごとの傾きを、各画素のY座標ごとに示した図である。画素P1からX座標が最大となる画素P2まで傾きは負の値で、その後、点Aまでは、正である。点Aにおいて、骨の境界線は、大きく屈曲しており、ここで傾きは再び負となる。この傾きが正から負に変わる境界の点を点A(XA,YA)と定める。次に、踵部分の軟部組織の傾きBを求める。X軸上の区間[X1,XA]において、軟部組織と空気の境界線の回帰直線を求め、この傾きをBとする。
【0020】
比較対象となる二つの骨密度分布画像の境界点A、傾きBをそれぞれ求める。過去の画像の境界点をA1、傾きをB1とし、今回の画像の境界点をA2、傾きをB2とする。二つの画像の境界点A1、A2を一致させ、この状態で一方の画像を回転させ、傾きB1、B2を一致させる。つまり、軟部組織と空気の境界線の回帰直線が一致するように、または平行となるように、画像を回転移動させる。この状態で、二つの骨密度分布画像の対応する画素の骨密度の差を求める。
【0021】
上記実施形態によれば、骨密度分布画像上で、骨密度の変化を示すことができ、骨のどの部分で、どのくらい骨密度が変化したかを容易に把握することができるようになる。骨密度は、表示装置により提供する他、印刷等の保存可能な状態で提供することもできる。
【符号の説明】
【0022】
10 骨密度測定装置、12 被検体、16 骨、20 X線発生装置、22 X線検出装置、24 制御部、26 記憶部、28 表示部、30 踵骨(しょうこつ)、32 距骨(きょこつ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検骨の骨密度分布を示す情報と、この骨密度分布を測定した測定日と、被検者とを記憶する記憶手段と、
ある被検者に関し、測定日の異なる骨密度分布を前記記憶手段より取得し、これらの骨密度分布を測定点ごとに比較し、測定点ごとに骨密度の変化量を取得する変化量取得手段と、
被検骨の骨画像上に、測定点ごとの骨密度の変化量の情報を表した経時変化骨密度画像を提供する経時変化骨密度画像提供手段と、
を有する、骨密度画像提供装置。
【請求項2】
請求項1に記載の骨密度画像提供装置であって、経時変化骨密度画像提供手段は、測定点ごとの骨密度の変化量を表示の色により表すものである、骨密度画像提供装置。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−167388(P2011−167388A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34806(P2010−34806)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】