説明

骨形態形成蛋白質−7の高分子共役体

修飾された骨形態形成蛋白質(骨形態形成蛋白質とも称するBMP)組成物が記載されている。骨形態形成蛋白質は、1つの態様では、例えばポリ(エチレングリコール)の如き親水性重合体で化学的に修飾されたBMP−7である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
ここに記載されている主題は骨形態形成蛋白質の修飾に関する。より具体的には、主題は1つもしくはそれ以上の親水性重合体連鎖で修飾された修飾された骨形態形成蛋白質に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
細胞異化は、胚において開始しそして成体組織修復および再生機構における有機体の寿命全体にわたり種々の程度で持続する形態形成の中心的な特徴である。形質転換成長因子−ベータ(TGF−ベータ)上科における蛋白質は、成長中および/または成体寿命中の細胞異化に関与する高度に関係のある遺伝子の亜科を包含する。これらの亜科の1つは、骨形態形成蛋白質または骨形成蛋白質とも称する骨形態形成蛋白質である。これらの蛋白質は最初に骨マトリックスから単離されておりそして骨−誘発活性を有する。ヒトcDNAライブラリーからのこれらの蛋白質をコードする遺伝子のその後の単離が、BMP−2〜BMP−6およびBMP−7とも称する骨形成蛋白質−1(OP−1)を包含する蛋白質の科を同定した(非特許文献1)。
【0003】
単離された骨形態形成蛋白質7(BMP−7)はヒトに投与された時に軟骨および/または骨形成を誘発することを示した。それは外傷治癒および組織修復を助けることも信じられている。さらに最近では、BMP−7は疾病状態または損傷された腎臓の処置における使用が提案されている。体外から供給されるBMP−7蛋白質は腎臓濾過速度を高める傾向があり、そして疾病状態の腎臓ではそれは腎臓機能の劣化速度を低下させる傾向がある(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)。成熟蛋白質を用いる処置は、尿管閉塞症におけるように、虚血および/または再灌流損傷に関与する腎臓線維発生を減少させることも示された(非特許文献6)。
【0004】
しかしながら、治療用蛋白質としてBMP−7の送達は多くの問題を被る。例えば、注射部位において骨を形成する蛋白質の性質は、外傷治癒、組織修復、および腎不全の処置におけるように、骨形成が望まれない場合には治療に関して問題となる。別の欠点は中性pHにおけるその低い溶解度である。BMP−7はpH<6.0において可溶性であるが、酸性溶液の注射は本質的には生理的pHにある溶液より痛みが強く且つ患者にとって刺激性である。BMP−7も比較的速いインビボ浄化速度
【0005】
【数1】

【0006】
の注射により投与される時には多くの蛋白質に共通の問題を被る。
【0007】
【非特許文献1】Sampath T.K.et al.,J.Biol.Chem.,267(28):20352(1992)
【非特許文献2】Morrissey,J.et al.,J.Am Soc Nephrol.,13:S14−S21(2002)
【非特許文献3】Simon,M.Am.J.Physiol Renal Physiol.,F382−F389(1999)
【非特許文献4】Zeisburg,M.et al.,J.Biol Chem.,280(9):8094(2005)
【非特許文献5】Zeisburg,M.et al.,Nat.Med.,9(7):964(2003)
【非特許文献6】Hruska,K.A.et al.,Am.J.Physiol Renal Physiol.,280:F130(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
それ故、治療剤としてBMP蛋白質を使用する際のこれらの欠点を処理するための修飾されたBMP蛋白質、そして特に、修飾されたBMP−7蛋白質が所望される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
関連技術の前記の例およびそれらに関連する限定は説明用でありそして排他的でない。関連技術の他の制限は明細書の読解および図面の検討で当業者に明らかになるであろう。
【0010】
簡単な要旨
一面では、親水性重合体に共有結合された単離された骨形態形成蛋白質から構成される組成物が提供される。
【0011】
1つの態様では、骨形態形成蛋白質は骨形態形成蛋白質−7である。別の態様では、骨形態形成蛋白質−7はヒト組み換え骨形態形成蛋白質−7である。ヒト骨形態形成蛋白質−7の例示アミノ酸配列はここではSEQ ID NO:3として示される。
【0012】
別の態様では、蛋白質に結合される親水性重合体はポリ(エチレングリコール)である。ポリ(エチレングリコール)はいずれの分子量を有していてもよく、そして1つの態様では約10〜55kダルトンの間の分子量を有する。
【0013】
さらに別の態様では、骨形態形成蛋白質は2個もしくはそれ以上のアミノ酸残基を介して該親水性重合体に共役結合される。
【0014】
別の面では、上記の組成物および製薬学的に許容可能な賦形剤から構成される製薬学的調剤が記載される。
【0015】
別の面では、上記の製薬学的調剤または組成物が注射により対象に投与される処置方法が記載される。
【0016】
別の面では、骨形態形成蛋白質−7を活性化剤の存在下において官能化された親水性重合体と反応させる工程に従い製造される共役体の組成物である、親水性重合体で修飾された骨形態形成蛋白質−7から構成される共役体の組成物が記載される。例示の活性化剤は、N−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、およびヒドロキシル−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)を包含する。
【0017】
1つの態様では、官能化された親水性重合体はポリ(エチレングリコール)の活性化された誘導体である。例示のポリ(エチレングリコール)の活性化された誘導体は、ニトロフェニルカルボネート誘導化されたメトキシ−ポリエチレングリコールである。
【0018】
ここに記載された方法により製造される組成物は、1つの態様では、1:1、2:1および3:1のPEG:骨形態形成蛋白質−7の比を有する共役体の不均質組成物を与える。1つの態様では、組成物約50%より多いPEG:骨形態形成蛋白質−7の1:1比を有する共役体を含んでなる。
【0019】
上記の例示面および態様の他に、別の面および態様は図面の参照および以下の記述の検討により明らかになるであろう。
【0020】
図面の簡単な記述
図1はここでは「PEG30k−BMP−7」と称するポリ(エチレングリコール)−BMP−7共役体の製造用の合成反応スキームを示し、ここでBMP−7はN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)の存在下でニトロフェニルカルボネート誘導化されたメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG−NPC)に共有結合されており、
図2A−2Bは図1に示された反応に従い製造された精製前のPEG30k−BMP−7共役体(図2A)および成熟BMP−7(図2B)のHPLC−SEC記録であり、
図3は図1に示された反応に従い製造された精製されたPEG30k−BMP−7共役体のHPLC−SEC記録を示し、
図4A−4Bは蛋白質検出用にクーマッシー(Coomassie)ブルーで(図4A)そしてPEG検出用にヨウ素で(図4B)染色された図1に示された反応に従い製造された精製されたPEG30k−BMP−7共役体のSDS−PAGEゲルであり、レーン:1、成熟BMP−7;2、PEG30k−BMP−7共役体;3、純粋な1:1PEG30k−BMP−7を含有する画分;4、左側のゲル上の蛋白質分子量標準および右側にあるPEG標準;5、6、および7はチオール分解後の1、2、および3と同じ試料を含有し、
図5はここでは「PEG20k−Hz−BMP−7」と称するポリ(エチレングリコール)−BMP−7共役体の製造用の合成反応スキームを示し、ここでBMP−7の糖部分は酸化されそして次にmPEG−ヒドラジドと反応し、
図6A−6CはmPEG20k−Hz−BMP−7共役体(図6A)、酸化されたBMP−7(図6B)、および成熟BMP−7(図6C)に関するHPLC−SEC記録であり、
図7は図5に示された反応に従い製造された精製されたPEG20k−Hz−BMP−7共役体のHPLC−SEC記録を示し、
図8は種々の濃度、ng/mL、のPEG30k−BMP−7共役体に対する露呈時のインビトロでのラットの骨芽(ROS)細胞中へのアルカリ性ホスファターゼの導入を示すプロットであり、
図9A−9Cは、ヒト腎臓細胞がインビトロで成熟BMP−7(四角形)、PEG20k−Hz−BMP−7(逆三角形)またはPEG30k−BMP−7(三角形)に露呈された時のBMP−7濃度、ng/mL、の関数としてのインターロイキン−6(IL−6)濃度、ng/mL、のプロットであり、BMP−7の濃度は50ng/mL〜400ng/mLの範囲であり、
図10A−10Cは、ヒト腎臓細胞がインビトロで成熟BMP−7(四角形、対照)、PEG20k−Hz−BMP−7(逆三角形)またはPEG30k−BMP−7(三角形)に露呈された時の、BMP−7濃度、ng/mL、の関数としてのインターロイキン−8(IL−8)濃度、ng/mL、のプロットであり、BMP−7の濃度は50ng/mL〜400ng/mLの範囲であり、
図11は、成熟BMP−7(三角形)、PEG30k−BMP−7(逆三角形)、または食塩水賦形剤(四角形)の静脈注射後の、時間数、時間、の関数としてのBMP−7血清濃度、ng/mL、のグラフであり、そして
図12A−12Bは、片側性尿管閉塞症および成熟BMP−7(点のある棒)、可溶性BMP−7(斜行平行線のある棒)、PEG30k−BMP−7(点のある棒)を用いる処置後の、マウスにおけるアルファ−平滑筋アクチン(図12A)およびコラーゲンアルファ1(1)(図12B)の対照標準化レベルを示す棒グラフである。
【0021】
詳細な記述
1.定義
「BMP−7」は骨形態形成蛋白質−7をさす。ヒト(Homo sapiens)(GenBank受託番号AAG43508;NP 001710)、ニワトリ(Gallus gallus)(ニワトリ、GenBank受託番号AAF34758)、イヌ(Canis familiaris)(イヌ、GenBank受託番号P34819およびAAF89752)、ブタ(Sus scrofa)(ブタ、GenBank受託番号AAV38111)、ウサギ(Oryctolagus cuniculus)(ウサギ、GenBank受託番号AAL24500)、ラット(Rattus norvegicus)(ラット、GenBank受託番号XP 342592)、マウス(Mus musculus)(イエネズミ、GenBank受託番号P23359およびNP 031583)、並びにヒツジ(Ovaris aries)(ヒツジ、GenBank受託番号AAM46923)を包含するがそれらに限定されない種々の種に関するアミノ酸配列は既知である。それ故、用語「BMP−7」はいずれかの種からのBMP−7のアミノ酸配列並びに成熟蛋白質の所望する治療活性を保有するこれらの蛋白質の断片および変種をさす。当業者は、選択されたアミノ酸残基の省略および/または選択されたアミノ酸残基の置換を可能にする蛋白質のある部分が治療活性のために要求されていることを認識している。蛋白質内の個々のアミノ酸残基を酸化、還元、または他の誘導化により修飾することができ、そして蛋白質を分解して活性を保有する断片が得られることも認識されるであろう。生物学的活性を損なわないそのような変更は定義からの蛋白質配列を除かない。より一般的には、用語BMP−7は上記のGenBank配列の少なくとも1つまたは下記の他の配列との少なくとも約70%、より好ましくは75%、さらにより好ましくは80%、さらにより好ましくは85%、さらにより好ましくは90%、そしてさらにより好ましくは95%の配列同一性を有するいずれかの蛋白質配列も意図する。配列「同一性」は、整列時にポリペプチド類のアミノ酸配列を比べて配列隙間を最少にしながら重複および同一性を最大にすることにより、測定される。2種のアミノ酸または2種の核酸配列の同一率は視覚的観察および/もしくは数学的計算により測定することができ、またはより好ましくは、コンピュータープログラムを用いて配列情報を比較することにより比較が行われる。例示の好ましい配列プログラムは、Genetics Computer Group(GCG;マジソン、ウィスコンシン州)Wisconsin package version 10.0 program,‘GAP’(Devereux et al.,Nucl.Acids Res.,12:387(1984))である。配列比較技術者により使用される他のプログラム、例えば、National Library of Medicine website http://www.ncbi.nim.nih.gov/BLASTを介する使用が利用可能なBLAST(BLASTP)およびBLASTINプログラムを使用することもできる。好ましい態様では、視覚的検査からまたは上記のコンピュータープログラムの1つから測定した時に、それらのアミノ酸配列が少なくとも約60%の同一性、より好ましくは少なくとも70%の同一性、さらにより好ましくは少なくとも80%の同一性である場合に同族性または同一性であると考えられる。
【0022】
ここで使用される「親水性重合体」は、室温において重合体をある程度の水溶性にさせる水中に可溶性である部分を有する重合体をさす。例示の親水性重合体は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリメチルオキサゾリン、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピルオキサゾリン、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリジメチル−アクリルアミド、ポリヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアスパルタミド、上記重合体の共重合体、およびポリエチレンオキシド−ポリプロピレンオキシド共重合体を包含する。これらの重合体の多くに関する性質および反応は米国特許第5,395,619号明細書および第5,631,018号明細書に記載されている。
【0023】
「PEG処理」は、骨形態形成蛋白質、例えばBMP−7に対する1つもしくはそれ以上のポリエチレングリコール(PEG)置換基または誘導体の結合をさす。好ましい態様では、この用語は生理的条件下で逆転可能または不安定でない結合による1つもしくはそれ以上のPEG置換基または誘導体の共有結合をさす。それ故、「共有」結合された重合体は、生理的条件下で逆転可能または不安定であると一般的に考えられていない結合をさす。
【0024】
II.組成物
一面では、親水性重合体に対する共有結合により修飾されたBMP−7から構成される組成物が提供される。好ましい態様では、BMP−7はヒトBMP−7であり、それはチャイニーズ・ハムスター卵巣(CHO)細胞中で組み換え製造されうる。上記のように、ヒトBMP−7はインビボで骨形成を誘発しそしてインビトロで骨芽細胞の細胞増殖およびコラーゲン合成を増加させる(Sampath T.K.et al.,J.Biol.Chem.,267(28):20352(1992))。組み換えヒトBMP−7はここではSEQ ID NO:1として同定される34−38kDa二硫化物結合されたホモ二量体よりなる。還元で、ホモ二量体はSEQ ID NO:1のアミノ酸残基293−431を含有する23、19、または27kDa単量体として泳動し、ここではプレ−プロBMP−7のアミノ末端Met基は基1として定義される(Ozkaynak,E.,EMBO J.,:2085(1990))。基29−292(SEQ ID NO:2)はプロ−領域(pro−domain)と称する(Johes,W.K.et al.,Growth Factors,11:215(1994))。N−グリカナーゼを用いる単量体の温浸(digestion)が23、19、および17kDa単量体を単一の14kDa種に還元し、明らかな分子量の差は特異的なグリコシル化によることを示している(Jones,同上)。精製されたBMP−7ホモ二量体は生理的緩衝液、例えば燐酸塩緩衝食塩水または細胞培養培地、の中に微溶性であり、そして溶液を保持するためには変性剤を必要とする。組み換えBMP−7の成熟領域はSEQ ID NO:1の基293−431に相当しそしてここでは「成熟」BMP−7と称しそしてここではSEQ ID NO:3として同定される。
【0025】
好ましい態様では、ここではSEQ ID NO:3と同定された配列を有するヒトBMP−7が組成物中で使用される。1つの態様では、組成物はSEQ ID NO:3に対する少なくとも約70%の配列同一性を有するヒトBMP−7を包含し、ここで配列同一性は上記の通りにして測定される。他の態様では、組成物はSEQ ID NO:3として同定された蛋白質配列に対する少なくとも80%の、好ましくは85%の、より好ましくは90%の、さらにより好ましくは95%の配列同一性を有するヒトBMP−7を包含する。
【0026】
BMP−7は1つもしくはそれ以上の親水性重合体連鎖で化学的に修飾される。蛋白質に対する親水性重合体の化学的結合、すなわち共役結合、は当該技術では親水性重合体であるポリ(エチレングリコール)(PEG)で例示されるが、例えば以上で挙げられたもののような他の親水性重合体も同等に適することは認識されるであろう。蛋白質、例えばBMP−7、に対するPEG連鎖の共役結合は、典型的にはPEGの「活性化された誘導体」、すなわち、例えば蛋白質上のアミノ基との反応のための1個もしくはそれ以上の末端に官能基を有するPEGを用いるものである。ピリジルジチオプロピオニル−PEG、tert−ブチルオキシカルボニル−HN−PEG、スクシンイミジルカーボネート−PEG、ニトロフェニルカーボネート−PEG、およびZalispky,S.et al.,Methods in Enzymology,387:50(2004)に示された他のものを包含するPEGの多くの活性化された誘導体が当該技術で既知である。蛋白質のアミノ基に結合するPEG上の官能部分、または蛋白質のグリカン部分、または蛋白
質のN−末端が適しており、アミノ基のアシル化が普遍的な方法である。
【0027】
BMP−7およびPEGの共役体は補助試験において実施例1および2に詳細記述されている2つの例示反応スキームにより製造された。実施例1に関すると、ヒト成熟BMP−7(SEQ ID NO:3)をN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)により例示される活性化剤の存在下でニトロフェニルカーボネート誘導化されたメトキシ−PEG(mPEG−NPC)と混合した。BMP−7のアミン−指向PEG処理を示す図1に見られるように、6−7.5の範囲内の中性pHにおけるBMP−7とアシル化剤mPEG−NPCとの反応はゆっくり進行する。PEG−NPCは塩基性条件下で反応性がより大きいため、PEG−NPCを用いる蛋白質のPEG処理は7.5より高いpHにおいてより急速に進行する。上記のように、BMP−7は中性および塩基性pHにおいて水中に微溶性であり、mPEG−NPCを用いて蛋白質を効果的に化学的に修飾することを難しくする。しかしながら、1つの態様では、これも図1で説明されているように、BMP−7を活性化剤の存在下でmPEG−NPCのようなアシル化剤と反応させることによりPEGで化学的に修飾されたBMP−7の共役体が製造される。反応混合物に対する活性化剤の添加が反応効率を高めそして中性pH値(例えば6−7.5の間)および7.0より低いpH値における蛋白質修飾を容易にする。
【0028】
図1および実施例1における活性化剤はHOSuにより例示される。しかしながら、PEG処理剤にN−またはO−結合されたプロトンを供与する性質を有する中酸性度のいずれの水溶性の非−カルボン酸性のブロンステッド酸でも活性化剤としての使用に適することは認識されよう。一般例は、酸性アルコール類、フェノール類、イミダゾール類、トリアゾール類およびテトラゾール類をとりわけ包含する。使用に適する酸性酸類の例はN−ヒドロキシジカルボキシイミド類、特に芳香族環上にニトロおよび他の電子吸引置換基を有するN−ヒドロキシフタルイミド類、N−ヒドロキシテトラヒドロフタルイミド、N−ヒドロキシグルタルイミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、およびN−ヒドロキシ−7−オキサビシクロ[2.21]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミドを包含するが、それらに限定されない。1−N−ヒドロキシベンゾトリアゾールおよび芳香族環上に電子吸引基を有する誘導体、例えばニトロ、クロロ、3−ヒドロキシ−1,2,3−ベンゾトリアジン−4(3H)−オン。N−ヒドロキシスルホスクシンイミドナトリウム塩は水中に非常に可溶性であり、そのことはそれが水性緩衝液中ではHOSuより高い濃度でも使用できることを意味する。例示のヒドロキシアミン類は、HOSuの他に、HOSuのスルホネート誘導体、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、およびヒドロキシル−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)を包含する。これらの化合物は約4〜約7.5のpH範囲において、それらのpKaを基準として、有効な緩衝液成分として作用する。例えば、pKa=6の弱酸であるHOSuは約5〜約7のpH範囲において有効な緩衝液成分として作用する。活性化剤を緩衝液に加えることができ、または緩衝液を他の塩類を用いてまたは用いずに含んでなることができる。さらに、HOSuは水溶液中で非常に可溶性であるため、それを緩衝液に比較的高い濃度で加えてPEG処理反応をさらに増強することができる。
【0029】
活性化剤として適する他の化合物はフェノール類、例えばジニトロフェノール、トリニトロフェノール、トリフルオロフェノール、ペンタフルオロフェノール、およびペンタクロロフェノールを包含し、4−もしくは2−ヒドロキシピリジンおよび誘導体、例えばヒドロキシ−2−ニトロピリジン、並びに酸性N−H官能性を有する化合物、例えば電子吸引基を有するイミダゾール誘導体(イミダゾール、pKa=7)、例えば4−もしくは2−ニトロイミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、およびある種の誘導体、例えば2−ニトロ−1,2,4−トリアゾールも適する。
【0030】
実施例1に記載されるように、成熟蛋白質を活性化剤としてのHOSuの存在下で官能
化されたPEGであるmPEG−NPC(30kDのmPEG分子量)と反応させることによりPEG−修飾されたBMP−7が製造された。ここではmPEG30kDa−BMP−7と称する生じたPEG−BMP−7共役体は精製前にHPLCサイズ排除クロマトグラフィーにより同定された。図2Aで見られるように、BMP−7の約58%がPEG処理され、モノ−およびジ−PEG処理されたBMP−7の生成が好ましい。約35分で溶離する成熟BMP−7(図2B)は合計ピーク面積の42%であった。PEG30k−BMP−7組成物は1:1PEG−BMP−7共役体(38%)、2:1PEG−BMP−7共役体(16%)、および3:1PEG−BMP−7共役体(4%)から構成された。
【0031】
組成物を透析およびイオン交換クロマトグラフィーを用いて精製して未反応の蛋白質を除去しそしてHPLC−SECおよびゲル電気泳動により再び同定した。図3は精製後のHPLC−SEC記録PEG30k−BMP−7を示す。精製後に、共役体組成物の61%は1:1PEG−BMP−7共役体であった。2:1PEG−BMP−7共役体および3:1PEG−BMP−7共役体は組成物の33%および5%を構成した。
【0032】
図4A−4Bは蛋白質の検出用にクーマッシブルーで(図4A)そしてPEGの検出用にヨウ素で(図4B)染色された電子泳動ゲルの写真である。両方のゲルにおいて、レーン1は成熟BMP−7であり;レーン2は、PEG30k−BMP7の精製された調剤であり、レーン3は純粋なPEG30k−BMP7の1:1共役体である。レーン4は、パネルAでは蛋白質に関する分子量(MN)マーカーでありそしてパネルBではPEGに関するマーカーである。レーン5、6、および7は、メルカプトエタノールを用いる還元後の、それぞれ、レーン1、2、および3の蛋白質に相当する。ゲルはHPLC−SECからの結果を確認して、1:1PEG−BMP−7共役体の生成が好ましいことを示した。
【0033】
実施例2に記載されそして図5で説明されているように、炭水化物−指向結合反応を用いて修飾されたBMP−7が製造される他の試験を行った。この方式では、BMP−7を過ヨウ素酸ナトリウムを用いて酸化しそして次に20kDaの分子量を有するPEGであるmPEG−ヒドラジド(mPEG−Hz)と反応させた。図6A−6Bに示されているように、生じた組成物を精製前に同定した。成熟BMP−7に関する記録は図6Cに示され、蛋白質は約36分で溶離する。酸化された蛋白質は図6Bに示され、そして約35分で溶離する。mPEG−Hzとの反応後に、少量(8%)の成熟蛋白質が保持され、残りの92%は1つもしくはそれ以上のPEG連鎖で修飾された。共役体の大部分は3:1PEG−蛋白質(51%)であり、2:1および1:1PEG−蛋白質共役体は合計の23%および18%を含んでなった。
【0034】
PEG20k−Hz−BMP−7組成物を透析およびイオン交換クロマトグラフィーにより精製しそしてHPLC−SECにより再び分析した。精製後の組成物の記録は図7に示されている。精製された調剤は95%のPEG処理されたBMP−7および約5%の遊離蛋白質を含有しており、PEG処理された蛋白質画分は図面で示された通りである。
【0035】
PEG−修飾されたBMP−7は成熟蛋白質と比べて改良された水溶性を示した。成熟BMP−7は酸性pH(pH5.0)において水溶性であるが、中和で蛋白質が沈殿する。対照的に、PEG−BMP−7はpH7以上でも水中に可溶性のままでありそして一般的な緩衝塩を用いる中和で沈殿しない。
【0036】
修飾されたBMP−7であるPEG30kDa−BMP−7をインビトロで試験して共役体が生物学的活性を保有しているかどうかを測定した。実施例3に記載されているように、共役体がラットの骨芽(ROS)細胞内でのアルカリ性ホスファターゼ特異的活性を誘発する能力を評価した。ROS細胞を種々の濃度の成熟BMP−7およびPEG30k
Da−BMP−7と共に40−56時間にわたりインキュベートした。細胞を分解しそしてアルカリ性ホスファターゼの存在に関して吸光度により分析することによりアルカリ性ホスファターゼの誘発を評価した。結果は図8に示されている。
【0037】
図8は、BMP−7濃度、ng/mL、の関数としての成熟BMP−7(四角形)およびPEG30k−BMP−7共役体(三角形)の吸光度(O.D.405nm)を示す。PEG30K−BMP−7共役体は成熟BMP−7と同様な活性を示した。蛋白質、そして特に受容体−結合蛋白質、はそれらのインビトロ生物学的活性の実質的な部分をPEG処理で失うため、この結果は予測されていなかった。
【0038】
PEG−修飾されたBMP−7共役体の生物学的活性はヒト腎臓(HK−2)細胞系統を用いてインビトロでも試験された。成熟(peg処理されていない)BMP−7はサイトカイン類であるインターロイキン−6(IL−6)およびインターロイキン−8(IL−8)の生成を示した。実施例1および2に記載されている通りにして製造された共役体であるPEG30k−BMP−7およびPEG20k−Hz−BMP−7を実施例4に記載されている工程に従い試験して、PEGを用いる化学的修飾後に蛋白質がHK−細胞内でIL−6およびIL−8生成を示すその能力を保持したかどうかを測定した。
【0039】
図9A−9Cは、PEG−BMP−7共役体がIL−6生成を阻害する能力により証明される生物学的活性を保有することを示している。図9Aは、共役結合された蛋白質が、50ng/mL〜1.75ng/mLの蛋白質濃度範囲にわたり、本質的に同じ阻害活性を有する成熟、成熟BMP−7(対照、四角形)およびPEG30k−BMP−7(三角形)では阻害することを示している。図9Bおよび9Cはより広い蛋白質濃度範囲にわたる同様なプロットであり、そしてPEG30k−BMP−7共役体がより高い蛋白質濃度において幾らか減じられた活性を有するPEG−20k−Hz−BMP−7共役体では成熟、成熟蛋白質のものとほぼ近い活性を保有することを示している。
【0040】
図10A−10Cはインターロイキン−8(IL−8)に関する結果を示しており、ここで成熟BMP−7(四角形)およびPEG−BMP−7共役体(三角形)は低濃度においてIL−8の生成を阻害する(図10A)。蛋白質のより高い濃度においては(図10B、10C)、PEG−20k−Hz−BMP−7共役体は成熟BMP−7と比べて幾らか減じられた活性(逆三角形)を有するが、依然としてIL−8生成を阻害する能力を示した。PEG30k−BMP−7共役体(三角形)は成熟蛋白質と本質的に同等なIL−8阻害活性を保有した。
【0041】
上記のように、腎不全および骨形成異常症の処置のための成熟BMP−7の全身投与に関係する問題は注射部位における骨形成である。3種の試験をインビボで行って共役体PEG30k−BMP−7の送達後の注射部位における骨形成を評価した。これらの試験は実施例5−7に記載されている。実施例5に詳細記述された試験では、ラットを成熟BMP−7またはPEG処理された蛋白質で皮下または筋肉内注射により処置した。注射後約2週間にわたり、注射部位をX−線により分析した。各動物の右腹からの組織を回収しそして骨小節の可視的徴候に関して評価した。組織を定量的3DミクロCT分析用にも処理した。成熟BMP−7の筋肉内注射を受けた動物の約95%の筋肉組織内で骨小節が生成した。対照的に、PEG−BMP−7共役体で処置した動物の筋肉内注射部位では骨は観察されなかった。
【0042】
実施例6および7に記載された試験は実施例5の試験で観察された結果のさらなる確認を与える。BMP−7のpeg処理は筋肉および皮膚内で注射部位の骨形成を防止し、この共役体は骨形成性がより少なく、すなわち、より可溶性であり、そして注射後の急速な分散が可能であることを示した。実施例5および6に記載された試験の結果は表1にまと
められている。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例8に記載されているように、蛋白質をラット内に静脈内注射することにより、PEG処理されたBMP−7の薬物動力学を評価した。この共役体および成熟BMP−7の血液循環寿命が図11に示されている。成熟BMP−7(三角形)と比べて増加したPEG30k−BMP−7共役体(逆三角形)の血液循環寿命は明らかである。
【0045】
III.使用方法
別の面では、親水性重合体、例えばポリ(エチレングリコール)、に共有結合されたBMP−7から構成される共役体を投与することを含んでなる処置方法が提供される。例えば、BMP−7は急性もしくは慢性の腎臓損傷に罹っている患者における腎臓構造および機能に対する有益な効果を有する。PEG処理された共役体の形態でのBMP−7の投与は糸球体濾過速度および腎臓血液流を高めることができ、血清クレアチンおよび血液ウレア窒素における低下を伴う。BMP−7は血管平滑筋細胞の一体性の保有およびアルファ−平滑細胞におけるアクチン発現の維持においても有益な効果を有する。それ故、この共役体は腎臓線維症、腎臓虚血および/または再灌流損傷並びに当業者に明白な他の症状を包含するがそれらに限定されない腎臓症状の予防および処置における特別な用途を見出す。
【0046】
PEG処理されたBMP−7共役体を用いる例示処置は実施例9に示されている。この試験では、マウスの片側性尿管閉塞症(UUO)モデルを使用してPEG処理されたBMP−7共役体の効果を評価した。マウスの尿管を結紮して尿管流を遮断した。PEG30k−BMP−7が尿管閉塞の4日間の期間中に腎臓線維症の進行を抑制する能力を評価した。実時間逆トランスクリプターゼポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いて、α−平滑筋アクチン発現の相対的レベルを測定した。賦形剤処置動物における発現のレベルを簡便な比較のために1単位に設定した。結果は図12Aに示されている。4日間の閉塞された腎臓内でのα−平滑筋アクチンの相対的レベルは、成熟BMP−7で処置された4匹のマウスの中の3匹で、可溶性BMP−7で処置された4匹のマウスの中の2匹で、そしてPEG BMP−7で処置された3匹のマウスの中の2匹で低下した。
【0047】
実時間RT−PCRにより、動物におけるコラーゲンα1(1)発現の相対的レベルも測定された。結果は図12Bに示されている。賦形剤処置された動物における発現のレベルを1単位に設定した。4日間の閉塞された腎臓内でのコラーゲンα1(1)の相対的レベルは、成熟BMP−7で処置された4匹のマウスの中の3匹で、可溶性BMP−7で処
置された4匹のマウスの中の3匹で、そしてPEG BMP−7で処置された3匹のマウスの中の2匹で低下した。
【0048】
そのような処置方法における使用のためには、上記の共役体組成物を当該技術で既知である方法に従い非経口的送達用に調合することができる。典型的には、蛋白質を適当な担体賦形剤、例えば食塩水または製薬学的に認可されている他の賦形剤と調合する。
【0049】
PEG−BMP−7共役体を他の治療剤と組み合わせて投与できることも認識されるであろう。具体例はPEG−BMP−7とエナラプリル(enalapril)との同時処置を包含する。
【実施例】
【0050】
IV.実施例
以下の実施例はここに記載された主題をさらに説明するものでありそしてその範囲を何ら制限する意図はない。
【0051】
実施例1
ポリ(エチレングリコール)−BMP−7共役体(mPEG30k−BMP−7)の製造
この反応スキームは図1に示されている。
【0052】
A.共役結合反応および精製
組み換えヒト骨形態形成蛋白質−7(BMP−7;SEQ ID NO:3)は凍結乾燥粉末として得られそして−70℃に保たれた。1.4mg/mLのBMP7貯蔵溶液を25mMのN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、pH6、の中で製造した。
【0053】
30,000ダルトンの分子量のニトロフェニルカーボネート誘導されたメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG30k−NPC)はNOF・コーポレーション(NOF
Corporation)(東京、日本)から購入した。mPEG30k−NPCの10mM貯蔵溶液をアセトニトリルの中で製造した。
【0054】
12.86mLのBMP−7(18mg)を4.24mLのHOSu緩衝液、pH6、に混合することにより、反応(図1)を開始した。その後に、0.9mLのmPEG30k−NPCを混合物に、静かに撹拌しながら、滴下した。反応を16時間にわたり室温(21−22℃)においてロッキング・ミキサー上でそのまま進めた。最終的な反応容量は、1mg/mL(0.028mM)のBMP−7、0.5mMのmPEG30k−NPC、5%のアセトニトリル、および18のモル比のPEG/BMP−7を含有する18mLであった。最終的なHOSu濃度は24mMであり、それはmPEG30k−NPCに対して約48モル過剰である。反応を10mMのグリシンを用いて1時間にわたり室温においてクエンチした。
【0055】
共役結合反応からの生成物を、Superose6 10/300GL,1x30cmカラム(GE・ヘルスケア(GE Healthcare)、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)、および25mMのトリス(Tris)、300mMのNaCl、6Mのウレア、pH6.5、移動相を用いるHPLC−SECにより分析した。試料を移動相の中で1/20に希釈し、そして50μLをカラムに注入した。流速を0.5mL/分に設定し、そしてカラムからの溶離を295nmの励起波長および360nmの発光波長(帯幅15nm)に設定された蛍光検知器により監視した。共役体およびBMP−7対照に関する結果は、それぞれ、図2A−2Bに示されている。
【0056】
精製のために、共役結合反応試料を10mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH5の中で、6
000−8000の分子量カットオフを有するSPECTRS/POR1膜管(スペクトラム・メディカル・インダストリーズ・インコーポレーテッド(Spectrum Medical Industries Inc.)、ロスアンジェルス、カリフォルニア州)を用いて透析した。透析は4℃において行われた。透析の終了時に、試料を0.45μmのAcrodisc HT Tuffryn膜注射器フィルター(パル・ライフ・サイエンセス(PALL Life Sciences)、アン・アルボル、ミネソタ州)を通して濾過した。
【0057】
次に、1.7mLの合計容量のスルホプロピルカチオン交換体カラムであるSource 15S PE 4.6x100mm(GE・ヘルスケア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を20カラム容量の10mM酢酸ナトリウムpH5緩衝液で平衡化した。次に、20mLの透析された共役結合試料をカラム上に充填した。溶離は、10mMの酢酸ナトリウムを含有するpH5の移動相A、1MのNaClを10mMの酢酸Na中に含有するpH5の移動相B1、および6Mのウレア、1MのNaCl、10mMの酢酸Naを含有するpH5の移動相B2を用いる、1ml/分の流速における、勾配溶離により行われた。カラムに結合されなかった物質は40mLの移動相Aで洗浄除去された。移動相B1を50分間にわたり10%から60%へ、次に10分間にわたり100%B2(1MのNaCl、6Mのウレア)へ、2mL/分で増加させることにより、勾配溶離を開始した。画分は溶離段階全体にわたり1mL/画分で集められた。未反応のPEGはカラムに結合せずそしてフロー−スルー物質と共に出ていった。PEG処理されたBMP7は約150mMのNaClで溶離を開始しそして約400mMのNaClで溶離を終了した。遊離BMP7を最後に6Mのウレアを含有する1MのNaClで溶離した。
【0058】
イオン交換分離中に集められた画分の含有量を同定するために、画分からのアリコートを上記のSuperose6 10/300GL,1x30cmカラムを用いるHPLC−SECにより分析した(結果は示されていない)。PEG処理された蛋白質を含有するイオン交換分離からの画分を貯蔵し、濃縮し、そして20mMの酢酸ナトリウム、5%のマンニトール、pH4.5の緩衝液の中で、窒素下で20psiにおいて、10mLのAmicon限外濾過撹拌セル(ミリポア・コーポレーション(Millipore Corp.)、ビレリカ、マサチュセッツ州)の中で、3000の分子量カットオフを有するOMEGA限外濾過膜ディスクフィルター(パル・ライフ・サイエンセス、アン・アルボル、ミネソタ州)を用いて透析した。試料を約3.5mLの最終容量にした。
【0059】
濃縮した試料を0.22μmのAcrodisc HT Tuffryn膜注射器フィルターを通して殺菌濾過し、そしてオートクレーブ処理したガラス瓶に殺菌充填した。全ての瓶は4℃で貯蔵された。下記の蛋白質検定により測定して、合計で約1.2mgのPEG30k−BMP−7が精製から得られた。
【0060】
B.蛋白質測定検定
蛋白質測定検定は蛋白質の固有トリプトファンの蛍光同定に基づいた。BMP−7が標準として使用され、そして20mMの酢酸ナトリウム、5%のマンニトール、pH4.5緩衝液の中で順次希釈が6.25、12.5、25、50、100、および200μg/mLで行われた。mPEG30k−BMP−7試料を同じ緩衝液の中で1:10および1:20に希釈した。標準および試験試料を黒色マイクロタイタープレートに、200μL/ウエルで、三回重複で移した。プレートを295nmの励起波長(2nmスリット)および360nmの発光波長(10nmスリット)に設定された蛍光計の中で読み取った。結果は表Aに示されている。
【0061】
【表2】

【0062】
B.同定
B1.HPLC−SEC分析
精製されたmPEG30k−BMP7試料を上記のSuperose6 10/300GLカラムを用いるサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。試料を移動相の中で50μg/mLに希釈し、そして50μLをカラムに注入した。流速は0.5mL/分に設定され、そしてカラムからの溶離を295nmの励起波長および360nmの発光波長(帯幅15nm)に設定された蛍光検知器により監視した。成熟蛋白質および共役体に関する結果は図3に示されている。
【0063】
B2.SDS−PAGE分析
mPEG30k−BMP7試料を、NuPAGE(R)Bis−Tris4−12%勾配ゲルおよびMOPS−SDS流動緩衝液(インビトロゲン・ライフ・テクノロジー(Invitrogen Life Technology)、カールスバッド、カリフォルニア州)を用いる変性条件下でのゲル電気泳動により、分析した。試料および対照を1.5〜5μgの蛋白質を含有する2つのゲル上に10μL/ウエルで充填した。ゲルを200ボルトの一定電圧で55分間にわたり流した。それぞれ、図4A−4Bに示されているように、1つのゲルは蛋白質検定用にクーマッシーブルーでそしてPEG検出用にヨウ素で染色された。
【0064】
実施例2
ポリ(エチレングリコール)−BMP−7共役体(mPEG20k−Hz−BMP−7)の製造
この反応スキームは図5に示されている。
【0065】
A.共役結合反応
酸化および共役結合の二段階反応は組み換えヒトBMP−7を用いて行われた。2.8mg/mLのBMP7貯蔵溶液を25mMの酢酸ナトリウムpH5緩衝液の中で製造した(合計15.6mgのBMP−7)。BMP−7酸化反応は1mMの過ヨウ素酸ナトリウムの中で20分間にわたり4℃において行われ、次に2mMのN−アセチル−メチオニンでクエンチされた。
【0066】
次に、メトキシ−ポリエチレングリコール20000−ヒドラジド(mPEG20k−Hz)の5mM貯蔵溶液を25mMの酢酸ナトリウム緩衝液pH5の中で製造した。酸化したBMP−7(14mg)をmPEG20k−Hzと1.4mg/mLのBMP−7(0.039mM)および2.9mMのmPEG20k−Hzと16時間にわたり室温(21−22℃)においてロッキング・ミキサー上で反応させて、75/1のPEG対蛋白質のモル比を生じた。
【0067】
共役結合反応からの生成物を、Superose6 10/300GL,1x30cmカラム(GE・ヘルスケア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)、および25mMのトリス、300mMのNaCl、6Mのウレア、pH6.5、移動相を用いるHPLC−SECにより分析した。試料を移動相の中で1/20に希釈し、そして50μLをカラムに注入した。流速を0.5mL/分に設定し、そしてカラムの溶離を295nmの励起波長および360nmの発光波長(帯幅15nm)に設定された蛍光検知器により監視した。mPEG20k−Hz−BMP−7共役体、酸化されたBMP−7、および成熟BMP−7に関するHPLC−SEC記録は、それぞれ、図6A−6Cに示されている。
【0068】
精製のために、共役体を5mMの燐酸ナトリウム緩衝液pH7の中で、6000−8000の分子量カットオフを有するSPECTRS/POR1膜管(スペクトラム・メディカル・インダストリーズ・インコーポレーテッド、ロスアンジェルス、カリフォルニア州)を用いて透析した。透析は4℃において行われた。透析の終了時に、試料を0.45μmのAcrodisc HT Tuffryn膜注射器フィルター(パル・ライフ・サイエンセス、アン・アルボル、ミネソタ州)を通して濾過した。
【0069】
次に、2つのスルホプロピルカチオン交換体カラムであるそれぞれ5mlのHiTrap SP HP(GE・ヘルスケア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を順次連結して10mLの合計床容量にした。カラムを5カラム容量の5mM燐酸ナトリウムpH7緩衝液で平衡化した。次に、25mLの透析された共役結合試料をカラムの上に1mL/分の流速で5mMの燐酸ナトリウムpH7の下で充填した。カラムに結合されなかった物質を集めそして上記と同じ条件下でカラムに2回再充填した。3つの移動相を溶離工程で使用した:5mMの燐酸ナトリウムpH7緩衝液を含有する移動相A、1MのNaClを20mMの燐酸ナトリウムpH7中に含有する移動相B1、および6Mのウレア、1MのNaCl、20mMの燐酸ナトリウムpH7を含有する移動相B2。移動相B1を30分間にわたり2mL/分で30%へ、次に4分間にわたり4mL/分で100%B2に増加させることにより、勾配溶離が開始した。画分が溶離段階全体にわたり5mL/画分で集められた。未反応のPEGはカラムに結合せず、そしてフロー−スルー物質と共に出ていった。しかしながら、PEG処理されたBMP7および共役結合されなかったBMP7は両方とも30%の移動相B1(30mMのNaCl)で溶離した。
【0070】
イオン交換クロマトグラフィー分離からのPEG処理されたBMP7および共役結合されなかったBMP7を含有する画分を貯蔵しそしてPEG処理されたBMP7を共役結合されなかったBMP7から分離するために疎水性相互作用クロマトグラフィーによるさらなる精製にかけた。3つのフェニル疎水性相互作用カラムであるそれぞれ5mlのHiTrap SP HP(GE・ヘルスケア、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を順次連結しそして1Mの硫酸アンモニウム、6Mのウレア、および20mMの燐酸ナトリウムpH7緩衝液を含有する100mLの結合移動相Aで平衡化した。貯蔵試料を次にカラムに1mL/分の流速で注入した。ピークを通る流れを5mL画分で集めそしてカラムに対する最大結合を得るために再注入した。勾配を次に70%Aおよび30%B(6Mのウレア、20mMの燐酸Na、pH7)に変え、そして70分間にわたり100%Bに増加させ、引き続き100%Bにおける20分間とした。画分を溶離段階全体にわたり1mL/画分で集めた。疎水性相互作用クロマトグラフィー分離中に集められた画分の含有量を同定するために、画分からのアリコートを上記のSuperos6 10/300 GLカラムを用いるHPLC−SECにより分析した。
【0071】
PEG処理された蛋白質を含有する疎水性相互作用分離からの画分を濃縮貯蔵しそしてPBSpH7.2の中で窒素下で20psiにおいて10mLのAmicon限外濾過撹拌セル(ミリポア・コーポレーション、ビレリカ、マサチュセッツ州)の中で、3000の分子量カットオフを有するOMEGA限外濾過膜ディスクフィルター(パル・ライフ・
サイエンセス、アン・アルボル、ミネソタ州)を用いて透析した。試料を約4mLの最終容量にした。
【0072】
濃縮した試料を0.22μmのAcrodisc HT Tuffryn膜注射器フィルターを通して殺菌濾過し、そしてオートクレーブ処理したガラス瓶に殺菌充填した。全ての瓶は4℃で貯蔵された。以上の実施例1に記載された蛋白質検定により測定して、約3.4mgのPEG20k−Hz−BMP−7が精製から得られ、それはPEG20k−Hz−BMP−7試料内の蛋白質濃度が0.95mg/mLであったことを判定した。
【0073】
B.同定
精製されたmPEG20k−Hz−BMP−7試料を上記のSuperose6 10/300GLカラムを用いるサイズ排除クロマトグラフィーにより分析した。試料を移動相の中で1/10に希釈し、そして50μLをカラムに注入した。流速は0.5mL/分に設定され、そしてカラムからの溶離を295nmの励起波長および360nmの発光波長(帯幅15nm)に設定された蛍光検知器により監視した。
【0074】
実施例3
PEG30k−BMP−7共役体のインビトロ活性
活性の定量化はラットの骨芽(ROS)細胞の中へのアルカリ性ホスファターゼ特異的活性の導入に基づく。30,000個の細胞/ウエル(200μL)を平底プレートに加えそして一晩にわたり37℃においてインキュベートした。BMP−7をアセテート/マンニトール緩衝液pH4.5の中で0.5mg/mLの濃度に希釈した。PEG30k−BMP−7(実施例1に記載されている通りにして製造された)および成熟BMP−7の両者の4μg/mLの反応貯蔵溶液をアセテート/マンニトール緩衝液の中で製造した。両者の順次希釈はF12培地の中で2mg/mLのBSAを用いて行われた。
【0075】
50μLの共役体または成熟蛋白質の試料をプレートに三回重複で加えた。試料の最終濃度は以下の通りである:800、400、200、100、50、25、12.5、6.25、3.125および0ng/mL。プレートを40〜56時間にわたりインキュベートした。
【0076】
次に、150μLのならし培地を除去しそして廃棄した。100μLの暖めた2%Triton−X100溶液を各ウエルに加えた。プレートをインキュベーターの中に60分間にわたり戻して細胞を分解しそしてアルカリ性ホスファターゼ分子を放出させた。プレートを4℃において一晩にわたりインキュベートして抽出工程を確実に完了させた。
【0077】
次に、1個の40mgのp−ニトロフェニルホスフェート(PNPP)錠剤を40mLの0.1Mグリシン、pH9.6に加え、そして溶液を30分間にわたり水浴の中で温めた。プレートを4℃から除去しそして10分間にわたり2600rpmで遠心した。各ウエルからの20μLの上澄み液を空のDynatech Immulon 2プレートの各ウエルに移した。100μLのPNPP溶液をImmulon 2プレートの各ウエルに加え、プレートを密封し、そして20分間にわたりインキュベートした。75μLの0.2N NaOHを各ウエルに加えることにより反応を停止した。プレートを次にプレートリーダー上で405nmにおいて読み取った。結果は図8に示されている。
【0078】
実施例4
PEG30k−BMP−7共役体のインビトロ分析
成熟BMP−7は入手されそしてPEG処理されたBMP−7共役体は実施例1に記載された通りにして30,000ダルトンのPEG分子量で製造された。
【0079】
ヒト腎臓(HK−2細胞系統)細胞を、5ng/mLの組み換えヒト表皮政調因子(rHuEGF)および0.05mg/mLのウシ下垂体抽出物(完全K−SFM)が補充された角化細胞無血清培地の中で〜80%集密度となるまでT25または150mm皿の中で培養した。細胞を補充物質なしのK−SFKですすぎそして次に6時間にわたりK−SFK(補充物質なし)だけでまたは100ng/mLのBMP−7、2ng/mLのTNF−α、または100ng/mLのBMP−7および2ng/mLのTNF−αを添加して処理した。RNAをQiagen RNAeasyキットを用いて単離しそしてRT−PCRを行った。BMP−7の存在下ではIL−6レベルは減じられた。
【0080】
細胞を完全K−SFMの中で1個のウエル当たり100,000個の細胞で24ウエルプレート内で一晩にわたり培養した。培地を除去しそしてBMP−7(0、25、50、100、200、400ng/mL)、TGF−β1(0、0.31、0.625、1.25、2.5もしくは5ng/mL)またはTNF−α(2ng/mL)およびBMP−7もしくはTGF−β1を含有する補充物質なしのK−SFMで24時間にわたり交換した。上澄み液を無菌的に殺菌性ミクロフュージ(microfuge)管の中に集め、2000rpmでミクロ遠心機の中で回転させて細胞屑を除去し、そして新しい管に移した。上澄み液をELISAによる分析まで凍結(−20℃)貯蔵した。IL−6およびIL−8を製造業者の指示によりELISA検査(R&D・システムズ(R&D Systems)により定量化した。
【0081】
結果は図9A−9Cおよび10A−10Cに示されている。
【0082】
実施例5
PEG30k−BMP−7共役体の注射後の注射部位のインビボ評価
成熟BMP−7は入手されそしてPEG処理されたBMP−7共役体は実施例1に記載された通りにして30,000ダルトンのPEG分子量で製造された。
【0083】
20匹の雄のラットが入手されそして処置用に4群に無作為分割された。各動物はそれ自体の対照として成熟蛋白質またはPEG処理された蛋白質を左腹にそして対照賦形剤を右腹に送達することにより処置された。処置群は以下の通りであった:
【0084】
【表3】

【0085】
100μg/kgの服用量でのそして酢酸マンニトール緩衝液担体賦形剤中の蛋白質の注射が左腹になされた。各動物の右腹には右腹に与えられた蛋白質と同じ送達方式により酢酸マンニトール緩衝液賦形剤が注射された。1回の注射がなされそして動物は注射後2週間にわたり観察された。この2週間の観察期間中に明白なまたは触診可能な小節の徴候は形成されなかった。
【0086】
注射後15日に、ラットを安楽死させそしてx−線検査した。全ての群からのx−線では目に見える明白な骨小節はなかった。しかしながら、解剖では、i.m投与された成熟BMP−7で処置された群3では4/5の動物の筋肉内で骨小節が見られた。PEG30k−BMP−7(i.mおよびs.c)でまたは対照賦形剤で処置された動物(群2、4)では骨小節は観察されなかった。
【0087】
組織試料を動物から取り出しそして5%PVAの中に入れた。それらをヘキサン冷凍浴を用いて冷凍しそして−80℃の冷凍機の中に入れた。これらの塊の大部分をその後に70%アルコール中で解凍しそしてミクロCT分析のために処理した。骨はi.m.BMP−7を摂取した動物(群3)の4/5の筋肉内でそしてs.c.BMP−7を摂取した動物(群1)の5/5の筋肉内で観察された。結果は表Bにまとめられている。
【0088】
【表4】

【0089】
実施例6
PEG30k−BMP−7共役体のI.M.注射後の注射部位のインビボ評価
成熟BMP−7は商業的に入手されそしてPEG処理されたBMP−7共役体は実施例1に記載された通りにして30,000ダルトンのPEG分子量で製造された。
【0090】
10匹の雄のラットが入手されそして処置用に2群に無作為分割された。各動物はそれ自体の対照として成熟蛋白質またはPEG処理された蛋白質を左腹にそして対照賦形剤を右腹に送達することにより処理された。処置群は以下の通りであった:
【0091】
【表5】

【0092】
100μg/kgの服用量でのそして酢酸マンニトール緩衝液担体賦形剤中の蛋白質の注射が左腹に筋肉内になされた。各動物の右腹には右腹に与えられた蛋白質と同じ送達方式により酢酸マンニトール緩衝液賦形剤が注射された。注射がなされた時に、ラットにCO/Oの70/30混合物で麻酔をかけた。動物の骨が針により衝突しないことまたは骨が注射部位に近すぎないことを確保するために注意を払った。1回の注射がなされそして動物を注射後2週間で安楽死させた。
【0093】
注射部位のx−線分析は、成熟BMP−7で処置された動物の全てにおいて骨小節を示した。PEG30k−BMP−7で処置された動物(群2)は骨小節を発現させなかった。解剖時に、成熟BMP−7で処置された群1動物における小節は触診可能でありそして
解剖では骨小節がこの群における動物の筋肉内で目に見えた。群2における動物の解剖では、骨小節は見られなかった。このデータはミクロCT分析により確認された(5匹の中の4匹で骨あり)。各動物の右腹になされた賦形剤注射は骨形成を生じなかった。結果は表Cにまとめられている。
【0094】
【表6】

【0095】
実施例7
PEG20k−Hz−BMP−7共役体の注射後の注射部位のインビボ評価
成熟BMP−7は入手されそしてPEG処理されたBMP−7共役体は実施例2に記載された通りにして20,000ダルトンのPEG分子量で製造された。
【0096】
10匹の雄のラットが入手されそして処置用に2群に無作為分割された。各動物はそれ自体の対照として成熟蛋白質またはPEG処理された蛋白質を左腹にそして対照賦形剤を右腹に送達することにより処置された。処置群は以下の通りであった:
【0097】
【表7】

【0098】
100μg/kgの服用量でのそして酢酸マンニトール緩衝液担体賦形剤中の蛋白質の注射が左腹に筋肉内になされた。各動物の右腹には右腹に与えられた蛋白質と同じ送達方式により酢酸マンニトール緩衝液賦形剤が注射された。1回の注射がなされそして動物を注射後2週間で安楽死させた。
【0099】
注射部位のx−線分析はいずれの動物においても骨小節を示さなかったが、動物の解剖は成熟BMP−7で処置されたラットにおいて骨小節を示した。解剖はPEG処理されたBMP−7で処置した動物に関してはいずれの注射部位にも存在する小節を示さなかった。賦形剤注射部位のいずれも骨形成を生じなかった。
【0100】
実施例8
PEG30k−BMP−7共役体の薬物動力学
雄のスプラーク−ダウレイ(Spraque−Dawley)ラットに250μg/kgのPEG30k−BMP−7、250μg/kgの成熟BMP−7、または食塩水を注射した。血清を眼窩採血により時間0並びに投薬後15分、30分、1時間、2時間、3時間、および6時間に集めた。血清中のBMP−7の濃度を以下の処方に従いELISAにより分析した。
【0101】
プレート(Nunc Immuno Plate II F96 MAXISORP)をBMP−7モノクローン抗体1B12でコーティングした。BMP−7対照標準を50mMのトリス−緩衝された食塩水(TBS)+1%ウシ血清アルブミン(BSA)の中で10μg/kgの濃度に希釈することにより標準を製造した。標準をアリコートにしそして−80℃において貯蔵した。
【0102】
血清、血漿、または検定洗剤希釈剤/試料緩衝液(50mMのトリス、150mMのNaCl、0.1%のSDS、1%のNP−40、0.5%のDOC、pH8.0)の中の10μg/mL対照標準の800ng/mLの第一希釈物を製造した。
【0103】
次に、血清、血漿、または検定洗剤希釈剤/試料緩衝液中での一連の1:2希釈を行うことにより標準曲線を決定した。標準濃度(最終)は、800、400、200、100、50、25、12.5、6.25、3.125、1.56、0.78、0.39、0.195、0.097、0.048、および0ng/mLであった。
【0104】
50μLの標準対照および試験試料を割り当てられたウエルに加えた。50μLの検定洗剤希釈剤/試料緩衝液を全てのウエルに加えた。プレートをプレートシーラーで保護被覆しそして2時間にわたり室温(20−25℃)においてシェーカー(速度4)上でインキュベートした。
【0105】
プレートをBMP−7洗浄緩衝液(1×ホウ酸塩緩衝食塩水、0.1%のTween 20、pH8.0)を用いて2サイクルにわたり洗浄しそしてプレートを乾燥除去した。Creative BioMolecules Rabbit 5086(BMP−7ポリクローン抗体)をBMP−7共役体希釈剤(50mMのトリス、150mMのNaCl、1%のBSA、pH7.2)の中で1:2500に希釈しそして50μLを全てのウエルに加えた。プレートをプレートシーラーで保護被覆しそして1時間にわたり室温(20−25℃)においてシェーカー上でインキュベートした。次に、プレートをプレート洗浄機の上で上記のように2サイクルで洗浄した。プレートを乾燥除去しそして次に1個のウエル当たり50μLのヤギ−抗−ウサギHRP共役体(Zymed Cat # 81−6120)の1:25,000希釈物(1×PBS、0.05%Tween 20、pH7.4中)を加えた。プレートを再び被覆しそして室温(20−25℃)においてシェーカー上でインキュベートしそして次に再び洗浄した。
【0106】
1個のウエル当たり100μLのTMB Single Solution Substrate(Zymed Cat # 00−2023)を5−10分間にわたり室温において加えた。1個のウエル当たり100μLの停止溶液(0.18MのHSO)を加えることにより反応を停止させた。450nmにおいて吸光度を読み取った。結果は図11に示されている。
【0107】
実施例9
PEG30k−BMP−7共役体のインビボ効果
片側性尿管閉塞症(UUO)モデルを使用してPEG処理されたBMP−7共役体の効果を評価した。マウスの尿管を結紮して尿管流を遮断した。成熟BMP−7(SEQ ID NO:3)、可溶性BMP−7(SEQ ID NO:1の基30−431;成熟BMP−7と非共有的に会合した蛋白質のアミノ末端プロ領域(prodomain)を有する成熟領域)、およびPEG30k−BMP−7共役体(上記の通りにして製造された)が腎臓線維症のマーカーの発現を抑制する能力を、腎臓線維症の進行を抑制する能力として、4日間の尿管閉塞期間の間に測定した。
【0108】
マウスを、賦形剤単独(n=3)、成熟BMP−7(n=4)、可溶性BMP−7(n
=4)、またはPEG30k−BMP−7共役体(n=4)を用いる処置のために4つの処置群に無作為分割した。全ての形態のBMP−7を1日1回1kgの齧歯動物体重当たり300μgの濃度で投与した。
【0109】
ベータアクチン、アルファ平滑筋、およびコラーゲンのレベルを各動物から採取された腎臓組織試料から4日間の期間の終了時に実時間RT−PCRを用いて測定した。ベータアクチンcDNAを対照として棘波することによりベータアクチンを測定した。賦形剤処置した動物内での発現のレベルを簡便な比較のために1単位に設定した。結果は図12A−12Bに示されている。
【0110】
実施例10
PEG30k−BMP−7共役体の免疫原性
雄のBalb/CマウスにPEG30k−BMP−7または成熟BMP−7を注射した。14日後に、マウスは同じ試験化合物の第二回目の注射を受けた。血液試料を0日から35日まで毎週採取し、血清を分離しそして抗−PEG−BMP−7抗体の存在をELISAを用いて検査する。
【0111】
多くの例示面および態様は以上で論じられたが、当業者はそれらのある種の改変、置換、追加および細分−組み合わせを認識するであろう。従って、添付された請求の範囲およびその後に導入される請求項は全ての改変、置換、追加および副組み合わせをそれらの真の精神および範囲内にある如く包含すると解釈されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1はここでは「PEG30k−BMP−7」と称するポリ(エチレングリコール)−BMP−7共役体の製造用の合成反応スキームを示し、ここでBMP−7はN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)の存在下でニトロフェニルカルボネート誘導化されたメトキシ−ポリエチレングリコール(mPEG−NPC)に共有結合されている。
【図2】図2A−2Bは図1に示された反応に従い製造された精製前のPEG30k−BMP−7共役体(図2A)および成熟BMP−7(図2B)のHPLC−SEC記録である。
【図3】図3は図1に示された反応に従い製造された精製されたPEG30k−BMP−7共役体のHPLC−SEC記録を示す。
【図4】図4A−4Bは蛋白質検出用にクーマッシーブルーで(図4A)そしてPEG検出用にヨウ素で(図4B)染色された図1に示された反応に従い製造された精製されたPEG30k−BMP−7共役体のSDS−PAGEゲルであり、レーン:1、成熟BMP−7;2、PEG30k−BMP−7共役体;3、純粋な1:1PEG30k−BMP−7を含有する画分;4、左側のゲル上の蛋白質分子量標準および右側にあるPEG標準;5、6、および7はチオール分解後の1、2、および3と同じ試料を含有する。
【図5】図5はここでは「PEG20k−Hz−BMP−7」と称するポリ(エチレングリコール)−BMP−7共役体の製造用の合成反応スキームを示し、ここでBMP−7の糖部分は酸化されそして次にmPEG−ヒドラジドと反応する。
【図6】図6A−6CはmPEG20k−Hz−BMP−7共役体(図6A)、酸化されたBMP−7(図6B)、および成熟BMP−7(図6C)に関するHPLC−SEC記録である。
【図7】図7は図5に示された反応に従い製造された精製されたPEG20k−Hz−BMP−7共役体のHPLC−SEC記録を示す。
【図8】図8は種々の濃度、ng/mL、のPEG30k−BMP−7共役体に対する露呈時のインビトロでのラットの骨芽(ROS)細胞中へのアルカリ性ホスファターゼの導入を示すプロットである。
【図9】図9A−9Cは、ヒト腎臓細胞がインビトロで成熟BMP−7(四角形)、PEG20k−Hz−BMP−7(逆三角形)またはPEG30k−BMP−7(三角形)に露呈された時のBMP−7濃度、ng/mL、の関数としてのインターロイキン−6(IL−6)濃度、ng/mL、のプロットであり、BMP−7の濃度は50ng/mL〜400ng/mLの範囲である。
【図10】図10A−10Cは、ヒト腎臓細胞がインビトロで成熟BMP−7(四角形、対照)、PEG20k−Hz−BMP−7(逆三角形)またはPEG30k−BMP−7(三角形)に露呈された時の、BMP−7濃度、ng/mL、の関数としてのインターロイキン−8(IL−8)濃度、ng/mL、のプロットであり、BMP−7の濃度は50ng/mL〜400ng/mLの範囲である。
【図11】図11は、成熟BMP−7(三角形)、PEG30k−BMP−7(逆三角形)、または食塩水賦形剤(四角形)の静脈注射後の、時間数、時間、の関数としてのBMP−7血清濃度、ng/mL、のグラフである。
【図12】図12A−12Bは、片側性尿管閉塞症および成熟BMP−7(点のある棒)、可溶性BMP−7(斜行平行線のある棒)、PEG30k−BMP−7(点のある棒)を用いる処置後の、マウスにおけるアルファ−平滑筋アクチン(図12A)およびコラーゲンアルファ1(1)(図12B)の対照標準化レベルを示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性重合体に共有結合された単離された骨形態形成蛋白質から構成される組成物。
【請求項2】
該骨形態形成蛋白質が骨形態形成蛋白質−7である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
該骨形態形成蛋白質−7がヒト組み換え骨形態形成蛋白質−7である請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
該ヒト骨形態形成蛋白質−7がここでSEQ ID NO:3として同定される配列を有する請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
該親水性重合体がポリ(エチレングリコール)である前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
該ポリ(エチレングリコール)が約10〜55kダルトンの間の分子量を有する請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
該骨形態形成蛋白質が2個もしくはそれ以上のアミノ酸残基を介して該親水性重合体に共役結合される請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記請求項のいずれかに記載の組成物および製薬学的に許容可能な賦形剤から構成される製薬学的調剤。
【請求項9】
腎臓疾患の予防または処置用の注射のために調合された薬品の製造における使用のための請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
該骨形態形成蛋白質−7を活性化剤の存在下において官能化された親水性重合体と反応させる工程に従い製造される共役体の組成物である、共有結合された親水性重合体で修飾された骨形態形成蛋白質−7から構成される共役体の組成物。
【請求項11】
該活性化剤がN−ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、およびヒドロキシル−7−アザベンゾトリアゾール(HOAt)よりなる群から選択される請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
該官能化された親水性重合体がポリ(エチレングリコール)の活性化された誘導体である請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
ポリ(エチレングリコール)の該活性化された誘導体がニトロフェニルカルボネート誘導化されたメトキシ−ポリエチレングリコールである請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
該骨形態形成蛋白質−7がヒト骨形態形成蛋白質−7である請求項10−13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
該共役体が1:1、2:1および3:1のPEG:骨形態形成蛋白質−7の比を有する共役体の不均質組成物を形成する請求項10〜13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
該組成物が約50%より多い1:1比のPEG:骨形態形成蛋白質−7を有する共役体を含んでなる請求項10〜13のいずれか1項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−542388(P2008−542388A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514832(P2008−514832)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/021215
【国際公開番号】WO2006/130745
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(503073787)アルザ・コーポレーシヨン (113)
【Fターム(参考)】