説明

骨形成タンパク質活性調節剤

【課題】骨組織や軟骨組織の形成に関与する骨形成タンパク質の作用を調節することができる組成物を提供する。
【解決手段】構成単糖当たり平均0.6個以上のエステル硫酸基を含有する硫酸化ガラクトサミノグリカン又はそれらの塩を有効成分として含有する骨形成タンパク質活性調節剤及び、構成単糖当たり平均0.6個以上のエステル硫酸基を含有する硫酸化ガラクトサミノグリカン又はそれらの塩と、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、及び/又はBMP-15を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨形成タンパク(BMP)の活性を調節する薬剤に関する。
【背景技術】
【0002】
BMPはTGF-βスーパーファミリーに属する一群の成長因子で、TGF-βスーパーファミリーのなかで最も大きなサブファミリーを形成している。その構造はTGF-βスーパーファミリーの特徴を反映しており、400〜500アミノ酸からなる大きな前駆体として生合成され、二量体となったのち、酵素によるプロセッシングを受け、110〜150あまりのアミノ酸からなる二量体が生成される。これが活性型のBMPとなる。
【0003】
BMPは骨や軟骨の形成に深く関与しているだけでなく、骨軟骨以外の組織形成、修復にも関与している。例えば、毛根の形成に関与し(非特許文献1)、また、メラニン産生抑制作用(特許文献1)を有している。これらの作用に基づく、BMPの養毛剤としての効果や、皮膚、毛髪の色素沈着抑制剤としての効果も知られている。また、腎組織の形成、再生にもBMPは関与しており、BMPの投与により腎障害の修復が認められている(非特許文献2)。
【0004】
上記のように、BMPの作用は多岐にわたり、単独でその効果を発現するが、種々の因子によりその活性は制御されている。例えば、Chordin、Noggin、Follistatinなどのタンパク質はBMPに直接結合し、BMPの作用を阻害するため、生体内ではBMPの活性はこれらのタンパク質により負の制御を受けている可能性がある(非特許文献3)。一方、グリコサミノグリカンの一種であるヘパリンやヘパラン硫酸はBMPの活性を増強することが知られている(非特許文献4)。
【0005】
BMPは、その増殖因子、または分化誘導因子としての作用が強力であるため、単独で医薬品や化粧品としての応用が期待されるが、その開発ははかばかしくなく、現時点では、ある種の骨折整復手術にインプラントとしてコラーゲンと共に使用されているBMP-7のみである。BMPの実用化が困難な理由は種々、挙げられるが、期待された効果が得られない点が最大である。In vitroにおいて明瞭に確認できるBMPの効果を臨床においても発揮させる手段の一つとして、BMPの活性を調節している物質との併用が考えられる。また、BMPは種々の細胞が産生しているため、BMPの活性調節剤は、内因性のBMPの活性を調節することにより、医薬品や化粧品として要求される効果を示す可能性がある。
【0006】
【特許文献1】特表2006-508026号公報
【非特許文献1】Botchkarev VA., J Invest Dermatol 120(1):36-47 2003
【非特許文献2】Dube PH., et al, Toxicol Pathol 32(4):384-392 2004
【非特許文献3】Brunet L., et al.:Science, 280:1455-1457 1998
【非特許文献4】Zhao B., et al, J Biol Chem 281(32):23246-53 2006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、BMPは様々な医薬品としての可能性を有している。その活性を調節することができる物質はBMPの骨折、骨軟骨組織損傷、腎疾患、脱毛症、メラニン色素沈着症等に対する医薬品としての機能をより充実させることができるとして、その発見が期待されていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するガラクトサミノグリカンが、BMPによる形態形成、組織修復を調節する優れた因子であること見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 構成単糖当たり平均0.6個以上のエステル硫酸基を含有する硫酸化ガラクトサミノグリカン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有するBMP活性調節剤。
(2) 硫酸化ガラクトサミノグリカンが、N−アセチルコンドロシン又はN−アセチルデルモシン構造を含む硫酸化ガラクトサミノグリカンである(1)記載のBMP活性調節剤。
(3) 硫酸化ガラクトサミノグリカンが式1乃至4記載の構造を含む(1)又は(2)記載のBMP活性調節剤。
【0010】
【化1】

【0011】
【化2】

【0012】
【化3】

【0013】
【化4】

【0014】
(式中Cは炭素原子を、Oは酸素原子を、Hは水素原子を、Nは窒素原子を、Sは硫黄原子をそれぞれ示し、Rは水素原子又はその置換基を示す。)
(4) 硫酸化ガラクトサミノグリカンの分子量が1000Da以上である(1)乃至(3)いずれかに記載のBMP活性調節剤。
(5) 式1乃至4の構造の含有率が20モル%以上である(1)乃至(4)いずれか記載のBMP活性調節剤。
【0015】
【化5】

【0016】
【化6】

【0017】
【化7】

【0018】
【化8】

【0019】
(式中Cは炭素原子を、Oは酸素原子を、Hは水素原子を、Nは窒素原子を、Sは硫黄原子をそれぞれ示し、Rは水素原子又はその置換基を示す。)
(6) 頭足類又は軟骨魚類の軟骨、又は無顎類の脊索由来の硫酸化ガラクトサミノグリカンを有効成分として含有する(1)乃至(5)いずれか記載のBMP活性調節剤。
(7)構成単糖当たり平均0.6個以上のエステル硫酸基を含有する硫酸化ガラクトサミノグリカン又はその薬理学的に許容される塩とBMPとの組成物。
(8)BMPがBMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15のいずれかのホモ2量体、ヘテロ2量体あるいは活性断片である(1)乃至(6)いずれか記載のBMP活性調節剤。
(9)構成単糖当たり平均0.6個以上のエステル硫酸基を含有する硫酸化ガラクトサミノグリカン又はその薬理学的に許容される塩のBMP活性調節のための使用。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、硫酸化ガラクトサミノグリカンを有効成分とする新たなBMP活性調節剤が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、発明を実施するための最良の形態により本発明を詳説する。
1.本発明調節剤
本発明調節剤は、構成単糖当たり平均0.6個以上のエステル硫酸基を含有する硫酸化ガラクトサミノグリカン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する。
【0022】
本発明薬剤における、ガラクトサミノグリカンとは、ガラクトサミンを含む酸性多糖のことで、通常、ガラクトサミンとウロン酸の繰り返し構造(N-アセチルガラクトサミンとグルクロン酸がβ1-3結合した二糖構造をn-アセチルコンドロシン構造といい、N-アセチルガラクトサミンとイズロン酸がα1-3結合した二糖構造をN-アセチルデルモシン構造といい、これらがβ1-4結合で繰り返される構造)を基本骨格とする。ウロン酸は通常、グルクロン酸あるいはイズロン酸である。天然に存在するガラクトサミノグリカンの多くは、N-アセチルガラクトサミンの4位に硫酸基が結合したコンドロイチン硫酸A(以下CS-Aと記載する)あるいはコンドロイチン硫酸B(以下CS-Bと記載する、別名:デルマタン硫酸)、N-アセチルガラクトサミンの6位に硫酸基が結合したコンドロイチン硫酸C(以下CS-Cと記載する)である。
【0023】
本発明調節剤の有効成分は、グルクロン酸とN-アセチルガラクトサミンの二糖構造において、グルクロン酸の2位および3位とN-アセチルガラクトサミンの4位および6位に硫酸基が結合した合成多硫酸化コンドロイチン硫酸(以下CPSと記載する:下記式1)、グルクロン酸の2位およびN-アセチルガラクトサミンの6位に硫酸基が結合したコンドロイチン硫酸D(以下CS-Dと記載する:下記式2)や、N-アセチルガラクトサミンの4位および6位に硫酸基が結合したコンドロイチン硫酸E(以下CS-Eと記載する:下記式3)、イズロン酸とN-アセチルガラクトサミンの二糖構造において、N-アセチルガラクトサミンの4位および6位に硫酸基が結合したコンドロイチン硫酸H(以下CS-Hと記載する:下記式4)などの、繰り返し二糖単位に硫酸基を2個以上有する構造を含む硫酸化ガラクトサミノグリカンである。
【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】
【化11】

【0027】
【化12】

【0028】
天然資源から得られる硫酸化ガラクトサミノグリカンは、ガラクトサミノグリカンを含む生物体(例えば動物組織)から、通常用いられている方法(物理的抽出法、酵素抽出法、有機溶媒分画法、イオン交換樹脂などを用いるクロマトグラフィー分画法などの簡単な組み合わせ)により抽出、精製して得られるものであれば特に限定されない。硫酸化ガラクトサミノグリカンを生体から抽出、精製する場合、生物種、組織の種類に関して特に限定されないが、例えば、サメ、イカ、タコ、サケ、ヌタウナギ、ウシ、ブタ等の組織(軟骨、骨、脊索、脳、腸、骨髄等)から抽出、精製された硫酸化ガラクトサミノグリカンを用いることができる。
【0029】
これらの組織からの抽出法としては、組織を食塩水や希酢酸でホモジネートしたのち、または、タンパク分解酵素で消化したのち、遠心分離し、上清中に粗硫酸化ガラクトサミノグリカンを得る方法がある。夾雑タンパクを除くためには、パパイン、プロナーゼ、またはアクチナーゼなどのタンパク分解酵素で組織を消化する方法が望ましい。粗抽出液からの精製方法として、一般的な方法は次のようである。粗抽出液に酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、または塩化ナトリウムを溶解させたのち、攪拌しながら抽出液と当量から3倍量のエタノールを加え、粗硫酸化ガラクトサミノグリカンを沈殿させる。粗抽出液に塩化ベンザルコニウム(オスバン)や塩化セチルピリジニウム(CPC)のような第四級アンモニウム塩を加え、硫酸化ガラクトサミノグリカンを沈殿させる方法も単独で、またはエタノールによる沈殿と併せて用いることができる。沈殿をエタノールで洗浄したのち、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ性水溶液を用いて沈殿を処理し、硫酸化ガラクトサミノグリカンの還元端に結合しているペプチドを除く。アルカリ性水溶液による処理は、還元端に結合しているペプチドが問題とならない場合は実施する必要がないが、ペプチドによる免疫原性を回避するためには、実施することが望ましい。アルカリ性水溶液による処理を行った場合は、希塩酸溶液などで中和し、陰イオン交換体カラムに負荷後、クロマトグラフィーを実施する。陰イオン交換体は特に限定されないが、ダウエックス陰イオン交換樹脂(ザ・ダウ・ケミカル社)、アンバーライト陰イオン交換樹脂(ローム アンド ハス社)、AG陰イオン交換樹脂(バイオラッド社)、ジエチルアミノエチル(DEAE)セファロース(GEヘルスケアバイオサイエンス社)、などが挙げられる。ナトリウム塩の水溶液によるグラジェント法、またはステップワイズ法により硫酸化ガラクトサミノグリカンを溶出し、溶出液をフラクションコレクターで分画する。硫酸化ガラクトサミノグリカンをカルバゾール硫酸法(Bitter T., et al, Anal Biochem 4 330-334 1962)などで検出し、目的の画分を回収する。透析、ゲルろ過などにより塩を除き、精製された硫酸化ガラクトサミノグリカンのナトリウム塩を得る。溶出をナトリウム以外の塩で行えば、対応する硫酸化ガラクトサミノグリカンの塩を得ることができる。陰イオン交換クロマトグラフィーは精製に有効であるが、第四級アンモニウム塩による沈殿とエタノールによる沈殿の条件を最適化すれば、クロマトグラフィーを実施しなくても高純度の硫酸化ガラクトサミノグリカンを得ることができる。
【0030】
硫酸化ガラクトサミノグリカンのうちCS-Dに関しては、サメ軟骨から抽出されたものが望ましい。CS-Eは軟体動物の軟骨組織から抽出されたものが望ましく、イカ軟骨から抽出されたものがより好ましい。CS-Hはヌタメウナギ等の、下等動物の脊索由来のものが望ましい。CS-A、CS-Cから酵素的または化学的に硫酸化するなど化学修飾することによって硫酸化ガラクトサミノグリカンを合成することもできる。例えば、CS-AにN-アセチルガラクトサミン残基の6位に選択的に硫酸基を転移する酵素であるコンドロイチン6-スルフォトランスフェラーゼを用い、CS-Eを合成することが可能である。
【0031】
硫酸化ガラクトサミノグリカンの重量平均分子量は、特に限定されないが、1,000Da〜150,000Daが好ましく、10,000Da〜150,000Daがより好ましい。しかし、グリコサミノグリカンの平均分子量は、同一試料でも測定法、測定条件等によって多少異なることが一般的に知られており、本発明においても上記平均分子量の範囲に厳密に限定されるべきものではない。
【0032】
本発明調節剤の有効成分である硫酸化ガラクトサミノグリカンの硫酸化構造は、二糖分析により同定、定量が可能である。例えば、硫酸化多糖に作用して不飽和二糖を生成させる酵素で処理し、該硫酸化多糖の構成二糖を反映して生成する不飽和二糖を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析する。例えば、CS-Dからは2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(2−O−スルフォ−β−D−グルコ−4−エノピラノシルウロン酸)−6−O−スルフォ−D−ガラクトース(ΔDi-SD)が、CS-EとCS-Hからは2−アセトアミド−2−デオキシ−3−O−(β−D−グルコ−4−エノピラノシルウロン酸)−4、6−ジ−O−スルフォ−D−ガラクトース(ΔDi-SE)が生成し、これらはHPLCで分析することができる(Yoshida K., et al,: Anal Biochem 177 327-332 1989)。なお、△は不飽和二糖を示す。
【0033】
二糖分析で用いる酵素は、不飽和二糖にまで分解できるものである限り限定はされない。分析する硫酸化多糖の種類に応じて適宜選択できる。例えば、コンドロイチナーゼ、ヒアルロニダーゼ等が挙げられる。
【0034】
上記のHPLCによる方法は、硫酸化多糖を酵素処理して得た不飽和二糖の溶出位置を、標準不飽和二糖の溶出位置と比較することにより行う。この二糖分析により、硫酸化構造の種類、含有率が分析可能である。本発明調節剤の有効成分である硫酸化ガラクトザミノグリカンは、二糖分析によりD構造あるいはE構造またはH構造の含有率が、20モル%〜100モル%が好ましく、30モル%〜100モル%がより好ましく、50モル%〜100モル%が特に好ましい。
【0035】
ナトリウム塩の場合、硫酸化ガラクトサミノグリカン中の硫黄含量は、7%以上が好ましく、8%以上がより好ましい。硫酸化ガラクトサミノグリカン中の全ての硫酸基およびカルボキシル基がナトリウム塩として存在している場合、構成単糖当たり平均0.6個のエステル硫酸基は、7.33%の硫黄含量となる。N-アセチルコンドロシンまたはN-アセチルデルモシンの基本構造の分子量は、ナトリウム塩の場合、401となる。硫酸基のナトリウム塩の分子量は103で、硫黄の原子量は32である。構成単糖当たり平均0.6個のエステル硫酸基は構成二糖当たり平均1.2個のエステル硫酸基に相当するので、構成単糖当たり平均0.6個のエステル硫酸基を持つ硫酸化ガラクトサミノグリカンの場合、硫黄含量は以下の式で算出される。
【0036】
硫黄含量(重量%)=32(硫黄の原子量)×1.2(構成二糖当たりのエステル硫酸基数)/(401(基本構造のナトリウム塩の分子量)+(103(エステル硫酸のナトリウム塩の分子量)×1.2(構成二糖当たりのエステル硫酸基数)−1(エステル結合の際に失われる水素の原子量))×100
【0037】
本発明調節剤に使用する硫酸化ガラクトサミノグリカンは、直鎖のものに限定されず、分枝していても良い。
【0038】
硫酸化ガラクトサミノグリカンの薬理学的に許容される塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩等の金属塩やアミノ酸塩、アミノ糖塩が挙げられ、中でも、ナトリウム塩が好ましい。
【0039】
本発明調節剤は有効成分として硫酸化ガラクトサミノグリカンを含有していることが重要であり、異なる種類の硫酸化ガラクトサミノグリカンの混合物であっても構わない。また、硫酸化ガラクトサミノグリカンを有効量(本発明調節剤1g当たり0.1μg以上、好ましくは1μg以上、最も好ましくは10μg以上)含有している限りにおいて、他のグリコサミノグリカン(ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸等)を含んでいてもよい。
【0040】
本発明調節剤は、BMPの活性を調節することで、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、サル、ウシ、ブタ等哺乳動物に対し顕著な組織修復促進作用を有し、骨折、骨欠損、腱・靱帯断裂、骨粗鬆症、変形性関節症、外傷性軟骨疾患、骨粗鬆症、骨減少症、骨再建術後の骨損傷、代謝性骨疾患、関節リウマチ、半月板損傷、肩関節周囲炎、顎関節症、軟骨変形等の骨軟骨疾患や、脱毛症、メラニン色素沈着症に対する治療や予防、美白などの化粧品としても使用可能である。
【0041】
本発明調節剤は、BMPの作用を調節するものである。かかるBMPの調節作用とは、BMPの働きを促進する作用、抑制する作用の他、BMPの作用の低下を防ぎ維持する作用が含まれるが、特に促進する作用及び/又は維持する作用を有している。
【0042】
本発明調節剤の使用態様は、BMPと別々に投与して使用する方法、BMPと同時に投与して使用する方法、または、BMPを産生している細胞、組織、器官、個体へ単独で投与し、その細胞、組織、器官、個体由来のBMPの活性を調節する使用方法も選択することができる。
【0043】
本発明調節剤の生体への投与方法に関しては、本発明調節剤が有するBMP活性調節作用が損なわれない限り特に限定されない。対象となる疾患の性質や重篤度に応じて適宜選択可能であり、損傷部位に投与可能な剤型であることが好ましい。
【0044】
例えば、骨折、骨欠損に対しては、外科手術の際などに患部に接触させて投与することが好ましい。骨補填剤との混合物として投与することで、それらの効果をさらに促進させる効果が期待できる。患部近傍への直接注入や皮下注入、スプレー剤や軟膏、クリームのような外用剤としても有効である。
【0045】
損傷、欠損部が大きい場合、生体適合性の高いハイドロキシアパタイトや自家骨、生体内吸収および骨置換能を有するリン酸β-トリカルシウムやリン酸オクタカルシウム等のリン酸カルシウム類や、脱灰骨、コラーゲン等を本発明調節剤の担体として使用することが望ましい。これらを本発明調節剤に混合することで、BMPおよび硫酸化ガラクトサミノグリカンの有する骨軟骨形成効果が促進される。
【0046】
混合物の作製法は、BMPと硫酸化ガラクトサミノグリカン及び上記の因子を水溶液中あるいはゲル中で混合する方法が簡単で望ましい。また、両者の混合液を凍結乾燥することで、固形物として利用可能である。凍結乾燥によるスポンジ状の混合物を作製する場合、硫酸化ガラクトサミノグリカンを架橋等により不溶化し、投与部位からの消失を遅らせることができる。また、コラーゲンとの混合物の場合、抗原性の低いアテロコラーゲンを熱処理、紫外線照射、あるいは化学的に架橋することで、スポンジ状の担体を作製できる。
【0047】
骨補填剤とBMPと硫酸化ガラクトサミノグリカンの混合法は、骨補填剤に硫酸化ガラクトサミノグリカン及びBMP溶液を浸しておこなうことができる。ハイドロキシアパタイト、リン酸カルシウム類の場合、それらのカルシウムに、硫酸化ガラクトサミノグリカンの硫酸基やカルボキシル基をイオン結合により固定できる。さらに、硫酸化ガラクトサミノグリカンにBMPをイオン結合で固定することも可能である。また、骨補填剤と硫酸化ガラクトサミノグリカン及びBMPの混合物を凍結乾燥することで、より多くの硫酸化ガラクトサミノグリカン及びBMPを固定できる。用いる骨補填剤は、公知の顆粒体、多孔体、緻密体などいずれの形態でもよく、使用目的、使用部位によって選択できる。顆粒状の骨補填剤と硫酸化ガラクトサミノグリカンの注入剤としても使用できる。
【0048】
BMPはもともと形態形成において骨形成、軟骨形成を促進する増殖因子として発見され、これまでに多くのBMPが単離されている。また、BMPは骨形成、軟骨形成以外の組織形成、修復にも関与している。BMPは発毛促進作用、メラニン産生抑制作用を有し、養毛剤や皮膚、毛髪のメラニン色素沈着抑制剤としての効果も知られている。また、腎組織の形成、再生にもBMPは関与しており、BMPの投与により腎障害の修復が認められている。本発明調節剤の使用により、生体の内在性あるいは投与されたBMPの作用を調節することが可能となる。
【0049】
本発明調節剤が調節するBMPは、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15のホモ2量体あるいは、例えばBMP-2/BMP-7のようなヘテロ2量体やペプチド断片であってもBMPの活性が存在すれば問題ない。
【0050】
グリコサミノグリカンの一種であるヘパリンあるいは、硫酸化多糖であるデキストラン硫酸はBMPの作用を調節することが既に報告されているが、これらの多糖は強い抗凝固活性を有し、生体内に投与した場合に出血の危険性があげられる。本発明調節剤の有効成分である硫酸化ガラクトサミノグリカンは、抗凝固活性がヘパリン等と比して弱く、出血の危険性も低く、より安全である。
2.本発明組成物
本発明組成物は、構成単糖当たり平均0.6個以上のエステル硫酸基を含有する硫酸化ガラクトサミノグリカン又はその薬理学的に許容される塩とBMPとを含む。
【0051】
本発明組成物における硫酸化ガラクトサミノグリカンは、本発明調節剤で説明した硫酸化ガラクトサミノグリカンと同じである。
【0052】
本発明組成物におけるBMPは、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15のホモ2量体あるいは、例えばBMP-2/BMP-7のようなヘテロ2量体やペプチド断片であってもBMPの活性が存在すれば何れか単独又は複数の組み合わせであってもよい。
【0053】
本発明組成物中における硫酸化ガラクトサミノグリカンとBMPの重量比は、特に限定はされないが、たとえば1:100〜100:1、好ましくは1:100〜10:1、最も好ましくは1:100〜1:1が例示される。
【0054】
また、上記本発明組成物として本発明調節剤を使用する場合には、さらに、骨形成促進物質を含ませることが可能である。骨形成促進物質としては、骨の成長、再生、修復を促進する因子であれば、いずれも使用することが可能であり、例えばホルモン類(副甲状腺ホルモン(PTH)、カルシトニン、エストロゲンなど)、ビタミン類(ビタミンA類(レチノイン酸、レチノールなど)、活性型ビタミンD(カルシフェロール、エルゴカルシフェロ−ル等)、ビタミンC(アスコルビン酸等))、成長因子類(繊維芽細胞増殖因子(aFGF、bFGF等)、上皮増殖因子(EGF、TGF-α等)、インシュリン様成長因子(IGF)、形質転換増殖因子(TGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、エナメルマトリックス由来タンパク質(エナメルマトリックスタンパク質であるアメロゲニン、エナメリンなど:特開平2−4202
2号)等)等が挙げられる。骨形成促進物質としてエナメルマトリックス由来タンパク質を使用した場合には、歯科領域での歯槽骨の維持・再生などに適用できる。上述の例示以外にも例えばプロスタグランジン類、サイトカイン類なども骨形成を間接的に促進する作用が知られており、そのような物質を使用することも可能である。また、必要に応じて、骨形成促進物質として適量の骨基質成分(例えばコラーゲン、フィブロネクチン、オステ
オネクチン、オステオカルシン、トロンボスポンジン等)を本発明組成物に添加しても良い。上述の各骨形成促進物質は組織などから抽出することによって得られる天然物でも、遺伝子工学的、合成的に調製される人工物でもいずれであっても使用することができる。本発明組成物中に上記物質等を0.001mg/g組成物〜10mg/g組成物程度存在させ、本発明組成物を調製することが可能である。
【0055】
また、必要に応じて破骨細胞、骨芽細胞、軟骨細胞など骨形成に関わる細胞を本発明組成物に含ませることもできる。更には、感染防止を目的として本発明組成物に各種抗生物質(カナマイシン、ベカナマイシン、アミカシン、ゲンタマイシン、ミクロノマイシン、クロラムフェニコール、コリスチン、ポリミキシンB等)、抗ウイルス剤(アシクロビル、イドクスウリジン、5-ブロモビニルアラビノフラノシルウラシル、アデニンアラビノシド、ポリIC等)や抗炎症剤などの薬剤を含ませても良い。
【0056】
上記本発明組成物は、錠剤、カプセル剤、液剤、注射剤、顆粒剤、散剤、リポ化剤、吸入散剤等、経口投与、注射等の投与ルート、目的、対象等に応じて製剤化することができる。本発明組成物中における有効成分である硫酸化ガラクトサミノグリカンの濃度は特に限定はされないが、0.0001〜5%とするのが好ましい。例えば本発明組成物を体内留置用の散剤とする場合には、0.005%(W/V)以上とするのが好ましく、0.03%〜0.2%(W/V)とするのが最も好ましい。また、筋注又は静注用の注射剤とする場合には0.01%(W/V)以上とするのが好ましく、0.03%(W/V)以上とするのが最も好ましい。
【0057】
本発明組成物の医薬製剤化に際しては、本発明組成物が有するBMP活性調節作用を本発明組成物との相互作用等により損なわず、適用対象に対し許容を越える悪影響を示さない限り、通常の製剤化に用いられる保存剤、等張化剤( 電解質を除く)、安定化剤、賦形剤、溶解化剤などの公知の製剤補助剤や種々の薬効成分を配合することも可能である。
【0058】
かかる本発明組成物は、BMPの活性を調節することで、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、サル、ウシ、ブタ等哺乳動物に対し顕著な組織修復促進作用を有し、骨折、骨欠損、腱・靱帯断裂、骨粗鬆症、変形性関節症、外傷性軟骨疾患、骨粗鬆症、骨減少症、骨再建術後の骨損傷、代謝性骨疾患、関節リウマチ、半月板損傷、肩関節周囲炎、顎関節症、軟骨変形等の骨軟骨疾患や、脱毛症、メラニン色素沈着症に対する治療や予防、美白などの化粧品としても使用可能である。
【実施例1】
【0059】
本発明調節剤の有効成分である硫酸化ガラクトサミノグリカンとして、コンドロイチン硫酸E(CS-E、イカ軟骨由来、E構造62.95%、硫黄含量8.5%、ハイドロックス(株)を使用した。CS-Eをリン酸緩衝化生理食塩液(PBS(-))に1mg/mlで溶解して培地に添加した(最終濃度は4または20μg/ml)。また、BMPはCHO細胞由来のrh-BMP-2(R&D Systems社、100ng/ml)あるいは、E. Coli由来のrh-BMP-2(Kamiya Biotech社、200ng/ml)を使用した。
【0060】
マウス頭蓋骨由来の骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1を用い、骨芽細胞分化への作用を検討した。MC3T3-E1細胞は、5%ウシ胎児血清(FBS)、10μg/mL ゲンタマイシンを含むα-MEM(増殖培地)にて培養した。細胞がコンフルエントになった時点で、0.25%トリプシン溶液で細胞を回集し、1x104/0.5mL/wellで48wellプレートに増殖培地で播種した。培養24時間後に、培地を50μg/mLアスコルビン酸、10mmol/L β-グリセロリン酸、10nmol/Lデキサメタゾンを含む増殖培地(分化培地)に交換した。また、同時にCS-EおよびBMPを添加した。分化培地に交換して5日後に、培養上清を除き、PBS(-)で細胞を洗浄した後、1%Nonidet P-40(NP-40:商標名)で細胞を溶解し、細胞溶解液を回収した。プレート上の細胞を15%ホルマリンで固定後、40mmol/Lアリザリンレッド染色(pH4.2)液で石灰化マトリックスを染色し、純水で洗浄した。プレート内のアリザリンレッド色素を、10%ギ酸で溶解し、波長415nmの吸光を測定した。
【0061】
培養骨芽細胞MC3T3-E1は分化培地で培養することで、骨芽細胞に分化し、アリザリンレッドで染色される石灰化マトリックスを形成する。CHO由来BMP-2およびE.Coli由来BMP-2は石灰化を促進し、添加培養5日目でアリザリンレッドにより染色されるようになる。硫酸化ガラクトサミノグリカンであるCS-Eは、これらのBMP2の効果をさらに促進した(図1)。硫酸化ガラクトサミノグリカンであるCS-Eは、BMP2の骨芽細胞に対する作用を促進することが明らかとなった。
【実施例2】
【0062】
本発明調節剤の有効成分である硫酸化ガラクトサミノグリカンとして、コンドロイチン硫酸E(CS-E、イカ軟骨由来、E構造62.95%、硫黄含量8.5%、ハイドロックス(株))を使用した。CS-Eをリン酸緩衝化生理食塩液(PBS(-))に1mg/mlで溶解して培地に添加した(最終濃度は0.8、4または20μg/ml)。また、BMPはCHO細胞由来のrh-BMP-4(R&D Systems社、100ng/ml)rh-BMP-6(R&D Systems社、100ng/ml)rh-BMP-7(R&D Systems社、200ng/ml)を培地で希釈して使用した。
【0063】
マウス頭蓋骨由来の骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1を用い、骨芽細胞分化への作用を検討した。MC3T3-E1細胞は、5%ウシ胎児血清(FBS)、10μg/mL ゲンタマイシンを含むα-MEM(増殖培地)にて培養した。細胞がコンフルエントになった時点で、0.25%トリプシン溶液で細胞を回集し、1x104/0.5mL/wellで48wellプレートに増殖培地で播種した。培養24時間後に、培地を50μg/mLアスコルビン酸、10mmol/L β-グリセロリン酸、10nmol/Lデキサメタゾンを含む増殖培地(分化培地)に交換した。また、同時にCS-EおよびBMPを添加した。分化培地に交換して7日目に、培養上清を除き、PBS(-)で細胞を洗浄した後、1%Nonidet P-40(NP-40:商標名)で細胞を溶解し、細胞溶解液を回収した。プレート上の細胞を15%ホルマリンで固定後、40mmol/Lアリザリンレッド染色(pH4.2)液で石灰化マトリックスを染色し、純水で洗浄した。プレート内のアリザリンレッド色素を、10%ギ酸で溶解し、波長415nmの吸光を測定した。
【0064】
培養骨芽細胞MC3T3-E1は分化培地で培養することで、骨芽細胞に分化し、アリザリンレッドで染色される石灰化マトリックスを形成する。BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7は石灰化を促進し、添加培養7日目でアリザリンレッドにより染色されるようになる。硫酸化ガラクトサミノグリカンであるCS-Eは、これらのBMPの効果をさらに促進した(図2)。硫酸化ガラクトサミノグリカンであるCS-Eは、BMPの骨芽細胞に対する作用を促進することが明らかとなった。
【実施例3】
【0065】
本発明調節剤の有効成分である硫酸化ガラクトサミノグリカンとして、コンドロイチン硫酸H(CS-H、ヌタウナギ脊索由来、(株)PGリサーチ)を使用した。CS-Hをリン酸緩衝化生理食塩液(PBS(-))に1mg/mlで溶解して培地に添加した(最終濃度は20μg/ml)。また、BMPはCHO細胞由来のrh-BMP-2(R&D Systems社、100ng/ml)、rh-BMP-4(R&D Systems社、100ng/ml)rh-BMP-6(R&D Systems社、100ng/ml)rh-BMP-7(R&D Systems社、200ng/ml)を培地で希釈して使用した。
【0066】
マウス頭蓋骨由来の骨芽細胞様細胞株MC3T3-E1を用い、骨芽細胞分化への作用を検討した。MC3T3-E1細胞は、5%ウシ胎児血清(FBS)、10μg/mL ゲンタマイシンを含むα-MEM(増殖培地)にて培養した。細胞がコンフルエントになった時点で、0.25%トリプシン溶液で細胞を回集し、1x104/0.5mL/wellで48wellプレートに増殖培地で播種した。培養24時間後に、培地を50μg/mLアスコルビン酸、10mmol/L β-グリセロリン酸、10nmol/Lデキサメタゾンを含む増殖培地(分化培地)に交換した。また、同時にCS-HおよびBMPを添加した。分化培地に交換して5日目に、培養上清を除き、PBS(-)で細胞を洗浄した後、1%Nonidet P-40(NP-40:商標名)で細胞を溶解し、細胞溶解液を回収した。プレート上の細胞を15%ホルマリンで固定後、40mmol/Lアリザリンレッド染色(pH4.2)液で石灰化マトリックスを染色し、純水で洗浄した。プレート内のアリザリンレッド色素を、10%ギ酸で溶解し、波長415nmの吸光を測定した。
【0067】
培養骨芽細胞MC3T3-E1は分化培地で培養することで、骨芽細胞に分化し、アリザリンレッドで染色される石灰化マトリックスを形成する。BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7は石灰化を促進し、添加培養5日目でアリザリンレッドにより染色されるようになる。硫酸化ガラクトサミノグリカンであるCS-Hは、これらのBMPの効果をさらに促進した(図3)。硫酸化ガラクトサミノグリカンであるCS-Hは、BMPの骨芽細胞に対する作用を促進することが明らかとなった。
【実施例4】
【0068】
製剤例(1)
塩化ナトリウム900mg、パラオキシ安息香酸メチル26mg及びパラオキシ安息香酸プロピル14mgに滅菌精製水80mlを加え、加熱溶解し、当該溶液を室温に戻した後に、コンドロイチン硫酸E(CS-E、イカ軟骨由来、E構造62.95%、硫黄含量8.5%、ハイドロックス(株))3,000mgとrh-BMP-2(R&D Systems社、1μg/ml)10ml、rh-BMP-4(R&D Systems社、1μg/ml)10ml、rh-BMP-6(R&D Systems社、1μg/ml)10ml、rh-BMP-7(R&D Systems社、2μg/ml)10mlを加え、滅菌精製水を加えて全量を100mlの溶液とした。これを10mlずつ容器に分注して注射剤を製造した。
【0069】
製剤例(2)
上記の注射剤のCS-E量を500mgとして注射剤を製造した。
【0070】
製剤例(3)
上記(1)の注射剤のCS-E量を100mgとして注射剤を製造した。
【0071】
製剤例(4)
上記(1)の注射剤のCS-Eをコンドロイチン硫酸H(CS-H、ヌタウナギ脊索由来、(株)PGリサーチ)に代え、BMPはrh-BMP-2とrh-BMP-4のみを添加して注射剤を製造した。
【0072】
製剤例(5)
精製ラノリン10g及び黄色ワセリン80gを併せて加熱融解し、流動パラフィン滴量を添加して100gとし、熱混合物を保温漏斗を用いて濾紙で濾過し、150℃で1時間滅菌した。当該混合物を室温に戻した後、CS-E3,000mg及びrh-BMP-2(R&D Systems社、5μg/ml)10ml、rh-BMP-4(R&D Systems社、5μg/ml)10ml、rh-BMP-6(R&D Systems社、5μg/ml)10ml、rh-BMP-7(R&D Systems社、10μg/ml)10mlを加え、さらに保存剤としてパラオキシ安息香酸メチル100mgを添加して均一になるように混合した。当該混合物を10gずつ容器に充填して軟膏剤を製造した。
【0073】
製剤例(6)
上記(5)の軟膏剤のCS-E量を500mgとして軟膏剤を製造した。
【0074】
製剤例(7)
上記(5)の軟膏剤のCS-E量を200mgとして軟膏剤を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、BMP活性調節剤に関するものであり、医薬品、化粧品、研究用試薬として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】BMPで刺激した培養骨芽細胞MC3T3-E1の石灰化に対する硫酸化ガラクトサミノグリカン(CS-E)の石灰化促進作用を示す図である。縦軸は415nmにおける吸光を示し、BMP-2(-)は対照群を、BMP-2(CHO)はCHO由来のBMP-2を添加した群を、BMP-2(E.Coli)はE.Coli由来BMP-2を添加した群を示す。横軸数値はコンドロイチン硫酸Eの添加量(μg/ml)を示す。表中のバーは標準誤差を示す。
【図2】BMPで刺激した培養骨芽細胞MC3T3-E1の石灰化に対する硫酸化ガラクトサミノグリカン(CS-E)の石灰化促進作用を示す図である。縦軸は415nmにおける吸光を示し、BMP(-)は対照群を、BMP-4、BMP-6、BMP-7はそれぞれのBMPを添加した実験群を示す。横軸数値はコンドロイチン硫酸Eの添加量(μg/ml)を示す。表中のバーは標準誤差を示す。
【図3】BMPで刺激した培養骨芽細胞MC3T3-E1の石灰化に対する硫酸化ガラクトサミノグリカン(CS-H)の石灰化促進作用を示す図である。縦軸は415nmにおける吸光を示し、BMP(-)は対照群を、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7はそれぞれのBMPを添加した実験群を示す。横軸数値はコンドロイチン硫酸Hの添加量(μg/ml)を示す。表中のバーは標準誤差を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単糖当たり平均0.6個以上のエステル硫酸基を含有する硫酸化ガラクトサミノグリカン又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含有する骨形成タンパク質活性調節剤。
【請求項2】
硫酸化ガラクトサミノグリカンが、N−アセチルコンドロシン又はN−アセチルデルモシン構造を含む硫酸化ガラクトサミノグリカンである請求項1記載の骨形成タンパク質活性調節剤。
【請求項3】
硫酸化ガラクトサミノグリカンが式1乃至4記載の構造を含む請求項1又は2記載の骨形成タンパク質活性調節剤。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

(式中Cは炭素原子を、Oは酸素原子を、Hは水素原子を、Nは窒素原子を、Sは硫黄原子をそれぞれ示し、Rは水素原子又はその置換基を示す。)
【請求項4】
硫酸化ガラクトサミノグリカンの分子量が1000Da以上である請求項1乃至3いずれか一項記載の骨形成タンパク質活性調節剤。
【請求項5】
式1乃至4の構造の含有率が20モル%以上である請求項1乃至4いずれか一項記載の骨形成タンパク質活性調節剤。
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

(式中Cは炭素原子を、Oは酸素原子を、Hは水素原子を、Nは窒素原子を、Sは硫黄原子をそれぞれ示し、Rは水素原子又はその置換基を示す。)
【請求項6】
頭足類又は軟骨魚類の軟骨、又は無顎類の脊索由来の硫酸化ガラクトサミノグリカンを有効成分として含有する請求項1乃至5いずれか一項記載の骨形成タンパク質活性調節剤。
【請求項7】
構成単糖当たり平均0.6個以上のエステル硫酸基を含有する硫酸化ガラクトサミノグリカン又はその薬理学的に許容される塩と骨形成タンパク質との組成物。
【請求項8】
骨形成タンパク質がBMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15のいずれかのホモ2量体、ヘテロ2量体あるいは活性断片である請求項1乃至6いずれか一項記載の骨形成タンパク質活性調節剤。
【請求項9】
構成単糖当たり平均0.6個以上のエステル硫酸基を含有する硫酸化ガラクトサミノグリカン又はその薬理学的に許容される塩の骨形成タンパク質活性調節のための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−215508(P2010−215508A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−166116(P2007−166116)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【出願人】(505291941)株式会社PGリサーチ (4)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】