説明

骨置換用のカスタマイズされたインプラント

本発明は、ポリ(エーテルケトンケトン)又はPEKKから調製される骨置換用のカスタマイズされたインプラント、並びにこれらのカスタマイズされたインプラントの設計と製造のためのコンピュータベースの画像化並びにラピッドプロトタイピング(RP)ベースの製造方法に関する。ラピッドプロトタイピングを用いて作製されたPEKKカスタマイズインプラントは、カーボンブラック及びアルミニウム粉末などの加工助剤を使用せずに調製した場合でも、自然骨と(同一ではないにしても)類似の生体力学的性質を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、ポリ(エーテルケトンケトン)又はPEKKから調製される骨置換用のカスタマイズされたインプラント、並びにこれらのカスタマイズされたインプラントの設計と製造のためのコンピュータベースの画像化及びラピッドプロトタイピング(RP)ベースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨は、二種類の組織、すなわち高密度テクスチュア(緻密組織)である外部組織、並びに一緒になって格子型の構造(海綿状組織)を形成する細長い線維及びラメラからなる内部組織から構成されている。骨の損失又は欠損は、外傷、先天性異常、病的状態(例えば、リウマチ様関節炎、強皮症、肢端巨大症及びゴーシェ病)、及び外科手術操作に起因し得る。
【0003】
骨欠損に対する従来の処置では、形態及び機能を復元するために、骨由来の、又は合成の生体材料が用いられる。これらの生体材料は、インプラントの下層(substratum)にわたって相互連結した多孔性空間を有する多孔性インプラント構造の形態であることが好ましい。これによって、インプラントの多孔性空間内部への骨の成長が可能になり、インプラントの組み込み、並びに骨欠損辺縁部の周囲、又は隣接の生存骨との一体化が確実になる。
【0004】
多孔性のインプラント構造は、多数の製造経路によって製造することができる。標準化された様式(すなわち、特定の個体用にカスタマイズされていない)によって製造されたインプラントでは、キャスティング(例えば、セラミックモールドキャスティング、遠心キャスティング、ダイキャスティング、インベストメントキャスティング、ロストフォームキャスティング、パーマネントモールドキャスティング、石膏モールドキャスティング、圧力キャスティング、砂型キャスティング、シェルモールドキャスティング、スリップキャスティング、スクイーズキャスティング、スラッシュキャスティング、減圧キャスティング)、押出し成形、レーザーカッティング、機械加工(例えば、電解加工、ウォータージェット加工)、成形(例えば、ブロー成形、圧縮成形、射出成形、粉末射出成形)、熱成形など、多数の慣例的な製造技法を使用することができる。
【0005】
インプラントはまた、一般的な医療用画像をカスタマイズされた3D表現又はコンピュータ援用設計(CAD)モデルへと変換するためのコンピュータベースの画像化法、処理法及びモデル化法を用いてカスタム設計することができ、次いでこれらを用い、任意の数のコンピュータ駆動製造技法を使用してインプラントを作製することができる。CADモデルは、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴映像法(MRI)、ポジトロン放出断層撮影法(PET)、及びX線走査法などの多数の医療診断用画像化システムから誘導し得る。コンピュータ駆動製造技法の例としては、融合沈着モデリング(FDM)、選択的レーザー焼結法(SLS)、及び選択的マスク焼結法(SMS)が挙げられる。
【0006】
製造経路に関わりなく、得られるインプラントは、次に強固な固定を助けるプリタブホール及び他の特徴を含ませるためのインプラントの改変など、1以上の処理後の工程に供することができる。
【0007】
多孔性インプラント構造の製造に用いられる合成生体材料の例としては、セラミックス、並びにポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)などのポリマー類が挙げられる。
【0008】
1990年代後期までに、PEEKは、インプラント用の先端的生体材料として現われ、1998年4月に、インプラント用の生体材料として初めて市販された。市場におけるPEEKの安定的供給の存在に支えられ、PEEK生体材料についての研究が盛んな時期が続いている。
【0009】
CAD並びにラピッドプロトタイピング(RP)技法を用いて作製されるカスタマイズされたPEEKスカフォールドは、M.W.Naingら、FABRICATION OF CUSTOMISED SCAFFOLDS USING COMPUTER-AIDED DESIGN AND RAPID PROTOTYPING TECHNIQUES、Rapid Prototyping Journal、第11巻、249−259頁(2005年)に記載されている。この出版物で、PEEK−ヒドロキシアパタイト(HAP)生体複合材料ブレンドがSLSにおいて焼結されるが、HAP補強PEEK複合材料の強さと剛性が確認され、報告によれば骨の強さと剛性に適合性であるという利点を有していた。これらの層状スカフォールドの作製には、PEEK150XF(商標)微細粉砕PEEK粉末が用いられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】M.W.Naingら、FABRICATION OF CUSTOMISED SCAFFOLDS USING COMPUTER-AIDED DESIGN AND RAPID PROTOTYPING TECHNIQUES、Rapid Prototyping Journal、第11巻、249−259頁(2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
残念ながら、PEEKの処理温度はかなり高い。また、これらのカスタマイズされたPEEKスカフォールドには、PEEK材料によって示される比較的高い固化速度に起因する好適とは言えない圧縮残留応力プロファイルが見られた。更に、粉末ブレンド内におけるHAP粒子クラスターの形成の原因となる均一性が欠如しており、PEEK−HAP粉末ブレンドの均一性の達成と維持が困難である。これらのHAP粒子クラスターの局在化した加熱が見られ、結果として、PEEKの部分的分解及び/又は得られるスカフォールドにおけるマイクロスケールでの熱的応力の形成が生じる。
【0012】
本発明によって、ラピッドプロトタイピングを用いて骨置換用のカスタマイズされたインプラントの製造に、ポリ(エーテルケトンケトン)又はPEKKを使用できることが見出された。PEKKは、より低い固化速度の利益を提供し、またいくつかの実施形態においては、処理温度がかなり低いというさらなる利益を提供することができる。
【0013】
また、ラピッドプロトタイピングを用いてPEKKから調製される骨置換用のカスタマイズされたインプラントは、カーボンブラック及びアルミニウム粉末などの加工助剤を使用せずに調製した場合でも、自然骨の生体力学的性質と(同一ではないにしても)類似の性質を示すことも見出された。言い換えると、これらのインプラントは、一般的には幾何学的なサイズ並びに形状、最小の壁厚及び最小の耐荷力によって表される所望の形状及び強さの要件を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は特に、レーザー焼結可能なPEKK粉末製品を提供する。レーザー焼結可能な粉末は、半結晶質及び/又は準非晶質PEKK樹脂から調製されるPEKK複合樹脂、並びにガラス、カーボン及び無機質充填剤から選択される1以上の充填剤又は添加剤から構成される。「半結晶質」又は「実質的に結晶質」とは、DSCで測定した場合に、少なくとも10%、好ましくは、約15%〜90%、最も好ましくは、約15%〜35%の結晶度を有する樹脂を意味する。「準非晶質」とは、DSCで測定した場合に、最大2%の結晶度を有する樹脂を意味する。レーザー焼結可能な粉末は、約10ミクロンから約150ミクロン(好ましくは、約20ミクロンから約100ミクロン、より好ましくは、約50ミクロンから約70ミクロン)の範囲の平均粒径を有する。
【0015】
本発明はまた、ラピッドプロトタイピングを用いてPEKKから調製される骨置換用のカスタマイズされたインプラントを提供する。本明細書に用いられる用語「ラピッドプロトタイピング」とは、固体自由形状製造を用いるインプラントなどの物理的対象物の自動構築を意味する。
【0016】
本発明の第一の実施形態において、カスタマイズされたインプラントは、内部コアと外部層を有し、内部コアは約10%未満の比較的低い気孔率を有して、脊椎、長骨及び寛骨などの耐荷適用における骨置換に好適なインプラントとなる硬質のインプラントである。本発明の硬質インプラントは、約100メガパスカル(MPa)から約200メガパスカルを超える範囲の圧縮強度(ASTM番号D695)又は耐荷力を示す。
【0017】
孔の少なくとも95%は、約1ミクロンから約500ミクロンの範囲の直径を有することが好ましい。個々の孔は、互いに連結していても連結していなくてもよい。
【0018】
インプラントの外層及び内部コアは、骨が健常である場合、置換される骨の対応する領域に適合することが好ましい。言い換えれば、外層は、同様の健常骨の表層中の緻密組織の形態学的特質に近く、一方、同様の健常骨の柱状コア中の海綿骨組織の形態学的特質に近くなるであろう。
【0019】
本発明の第二の実施形態において、カスタマイズされたインプラントは、約35パーセントを超えるより高い気孔率を有する実質的に均一な断面形態を有する硬質性のより低いインプラントである。このようなインプラントは、組織の付着成長/内部成長(ongrowth/ingrowth)のためのスカフォールド設置、幹細胞媒体などの支持のような部分的耐荷力適用における骨置換に好適である。
【0020】
好ましくは、この硬質性の低いインプラントにおける個々の孔は互いに連結しており、孔は、約50ミクロンから約250ミクロンの範囲の直径を有する。
【0021】
本発明はまた、これらカスタマイズされたインプラントの設計及び製造のためにCADベースのRP方法を提供し、この方法は、
(a)断層撮影情報を得るために骨修復又は骨置換を必要とする患者の部位を走査するステップと;
(b)患者から得られた断層撮影情報を用いてCAD端末で骨インプラントモデルを設計するステップと;
(c)任意で、例えば、縫合アンカー、ネジ穴、表面とテクスチュアとの接合、スカフォールド設定用開放セル領域、抗生物質を担持する表面孔を加えること、及び/又は剛性又は硬性を変えるために密度又は気孔率を変えることにより骨インプラントモデルを改変するステップと;
(d)SLSなどの固体の自由形態製造方法を用いて、骨インプラントモデル、生体適合性PEKKの連続層を含有する骨インプラント、から骨インプラントを形成するステップと、を含む。
【0022】
好ましい実施形態において、骨インプラントを形成するためにPEKK複合樹脂粉末が用いられ、このPEKK粉末は、好ましくは約20ミクロンから約100ミクロン(より好ましくは約50ミクロンから約70ミクロン)の範囲の平均粒径を有する。
【0023】
より好ましい実施形態において、骨インプラントを形成するためにSLS製造方法が用いられ、このSLS製造方法は、パートベッドを約280℃から約350℃の範囲の温度に加熱すること、及びパートベッドに含まれたPEKK粉末層の選択された位置に0.015ワット秒/ミリメートル(mm)2から1.5ワット秒/ミリメートル(mm)2のレーザースポットを走査することを含む。
【0024】
本発明の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明から当業者に明らかとなろう。別に定義されない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明に属する通常の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。記述された刊行物、特許出願、特許及び他の参考文献は全て、参照としてそれらの全体が本明細書に援用されている。矛盾する場合、定義を含む本明細書が規制する。更に、材料、方法及び実施例は、例示のみを目的としており、限定する意図はない。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明を実施するための最良のモード:
画像ベースのモデリングは、3つの基本的ステップ、すなわち、画像獲得、画像処理、及び更により高度のモデリング、及び引き続く製造における使用のために3D形状のモデルを描写するボクセル(コンピュータ断層撮影再構築の基本単位)を形成するための三次元再構築(3DR)を含む。
【0026】
上記のとおり、疾患骨又は損傷骨を包含する部位の非侵襲的画像形態における患者の生データは、CT、MRI、PET、及びx線走査など、任意の数の医学的診断用画像診断システムから獲得することができる。
【0027】
画像処理及び3DRは、Materialise N.V.社、Technologielaan 15、B−3001、Leuven、ベルギー国から入手できる医学及び外科適用を目的とした画像処理及び編集のためのMIMICS(商標)ソフトウェアプログラム、及びGeomagic社、米国、3200 East Hwy 54、Cape Fear Building,Suite 300, Research Triangle Park、NC、27709から入手できるデジタル化モデルを作出するためのGEOMAGIC STUDIO(商標)コンピュータソフトウェアなど、任意の好適な医療用再構築及びリバースエンジニアリングソフトウェアを用いて達成することができる。
【0028】
ソフトウェアにロードしたら、非侵襲的画像形態(一般にスライス画像の形態である)での患者の生データを適切に登録し、位置合わせする。次に対象の部位(すなわち、疾患骨又は損傷骨)を識別し、3D描画又はモデルを作製する。第一に考慮された実施形態において、セグメント化情報の形態である3Dモデルを、更にカスタマイズしてから、例えば、MIMICS(商標)ソフトウェアプログラム又はGEOMAGIC STUDIOコンピュータソフトウェア及び報告されている任意の種類のRPシステムとインターフェースするRP Slice Module(商標)を用いてRP機械装置にエクスポートする。RP Slice Moduleは、Materialise N.V社から入手できる。第二に考慮された実施形態において、このセグメント化したものを、RP機械装置に直接転送する。
【0029】
例えば、モデルの3D形状を記述する3Dボクセルデータセットを点データ形態に変換すること、点のクリーニング(すなわち、ノイズ点の除去)、ファセットモデルを形成するために点を三角形化すること、密度又は孔度を変えること、スカフォールド設置用開放セル領域を加えること、自由形状表面又はNURBSパッチを用いて骨表面をモデル化すること、この表面を更に洗練し、強化すること(例えば、抗生物質を担持させるために表面孔を加えること、縫合アンカー及び/又はネジ穴を加えること、表面とテクスチュアとを接合させること)などにより、3D描画又はモデルを強化し、更にカスタマイズすることができる。3D描画又はモデルを強化し、更にカスタマイズするのに好適な設計ソフトウェアとしては、SOLIDWORKSコンピュータソフトウェアの商標名でSolidWorks Corporation、300 Baker Avenue、Concord MA 01742から入手することができるソフトウェアが挙げられる。
【0030】
このようにして作出したCADモデルを、異種システム間での3D描画又はCADモデルの転送を可能にするニュートラルデータフォーマットであるIGES又はSTEP/STLフォーマットに保存してから、RP機械装置にエクスポートする。
【0031】
好ましい実施形態において、RP機械装置は、粉末ベースのSLSシステムである。両面粉末カートリッジ、高さが変えられるプラットフォーム、ヒーター及びレーザー源を含む一般的システムは、粉末材料を用いてスライスされた3D CADモデルから3D対象体を作製し、レーザーにより熱を発生させる。
【0032】
これらカスタマイズされたインプラントの設計及び製造のためのCADベースのRP法を、主としてSLSに関連させて本明細書に記載するが、本発明はそれに限定されない。融合沈着モデリング(FDM)及び選択的マスク焼結法(SMS)などの他のRPベースの製造方法を用いて本発明のインプラントを製造することができる。
【0033】
本発明の使用に好適なSLSシステムは:
(a)高さが変えられるパートベッド又はプラットフォーム上で標的表面にPEKK粉末の連続層を適用するための粉末送達システム;
(b)レーザービームを発生させるためのレーザー;
(c)レーザービームを、粉末層の最上面における標的平面に制御可能に方向付けるための走査システム;及び
(d)CADモデルからのデータを読取ること、PEKK粉末の連続層を設置するために粉末送達システムを方向付けすること、及び走査システムを、このような各連続PEKK層をレーザー走査するように方向付けすることを含み、粉末送達システム及び走査システムに連結され、複数の操作を実施するためにプログラム化されたコンピュータ、を含む。
【0034】
SLSシステムにおいてレーザービームを発生させるためのレーザーは、二酸化炭素(CO2)レーザー源であることが好ましい。このようなSLSシステムは、EOS of North America Inc.、28970 Cabot Drive、Novi、MI48377−2978、及び3D Systems、333 Three D Systems Circle、Rock Hill、SC 29730から入手できる。
【0035】
PEKKは、その純粋形態で使用されるか、又は、限定はしないが、表面生理活性(bioactive)セラミックス(例えば、ヒドロキシアパタイト(HAp)、BIOGLASS(商標)生理活性ガラス)、再吸収性生理活性セラミックス(例えば、α−トリカルシウムホスフェート(α−TCP)、β−TCP)、及びインプラント又はスカフォールドを放射線不透過性にする固体(例えば、硫酸バリウム(BaSO4))などの群から選択される充填剤又は添加物と共に使用される。カーボンブラック及びアルミニウム粉末などの加工助剤は、本発明には使用されない。
【0036】
第一の好ましい実施形態において、約10ミクロンから約150ミクロンの範囲の平均粒径を有するPEKK粉末は、その純粋形態で使用される。このような粉末は、OXPEKK−IG PEKK粉末の製品名で、Oxford Performance Materials,Inc.、120 Post Rd.、Enfield、CT 06082(Oxford Performance Materials社)から入手することができる。
【0037】
第二の好ましい実施形態において、約10ミクロンから約150ミクロンの範囲の平均粒径を有する複合樹脂粉末形態のPEKK粉末を使用し、この複合樹脂粉末は、従来の溶融混合技法を用いて、PEKK樹脂と、約10重量%から約40重量%の1以上の充填剤又は添加物(例えば、HAp,BIOGLASS(商標)生理活性ガラス、α−TCP、β−TCP、BaSO4)との混合物を溶融混合し、次にこの混合生成物を粉砕して粉末を形成することによって調製する。
【0038】
操作中、SLSシステムに用いられるプラットフォームを、約280℃から約350℃(好ましくは、約280℃から約295℃(準非晶質PEKKに関して)又は約335℃から約350℃(半結晶質PEKKに関して))の範囲の温度に加熱し、約10ミクロンから約150ミクロン(好ましくは、約20ミクロンから約100ミクロン)の範囲の平均粒径を有するPEKK粉末の薄層を、加熱されたプラットフォーム上にローラー装置により均等に塗布する。次いで、約0.015ワット秒/mm2から約1.5ワット秒/mm2(好ましくは、約0.1ワット秒/mm2から約0.25ワット秒/mm2)の範囲のCO2レーザービーム(出力密度(面積及び時間1単位当りのエネルギー))で、この粉末をラスタ走査すると照射される粉末のみが融合する。次にPEKK粉末の連続層を沈着させ、インプラント又はスカフォールドが完成するまで上層を互いにラスタ走査する。各層を十分に深く焼結して、下位層又は前層へ接着させる。
【0039】
本発明のカスタマイズされたインプラントは、(同一ではないにしても)天然骨と同様の生体力学的性質を示す。より具体的には、本発明のインプラントは、約10メガパスカル(Mpa)から約200メガパスカルを超える範囲の圧縮強度(ASTM番号D695)又は耐力能力を有する。この圧縮強度は、一般的な海綿骨を超えて一般的な表層骨までの耐力能力を提供する。本発明のインプラントはまた、約0.5ギガパスカル(GPa)から約4.5GPaを超える範囲の曲げ弾性率(ASTM番号D570)を有する。
【0040】
脊椎、長骨及び寛骨などの耐荷力適用における骨置換に用いられるインプラントに関しては、低孔度(すなわち、約10%未満)のインプラントが形成されるであろう。これらのインプラントは、約100Mpaから約200Mpaを超える範囲の圧縮強度(ASTM番号D695)又は耐力能力及び約3.5GPaから約4.5GPaを超える範囲の曲げ弾性率(ASTM番号D570)を示す。
【0041】
考慮された一実施形態において、低孔度インプラントの表面トポグラフィーを変化させ、及び/又は1以上の完全な開口を付加して、骨、血管及び神経の内部への成長(in-growth)を促進する。当業者により容易に認識されるであろうが、このような変更又は付加は、CADモデルに設計することもできるし、ドリル加工、切断、パンチング、又は他の手段により製造後に形成することもできる。
【0042】
組織の付着成長/内部成長のためのスカフォールド設置、幹細胞媒体用支持体などの部分的耐荷力適用における骨置換に用いられるインプラントに関しては、より高い孔度のインプラント(すなわち、開放セル−3D相互連結された孔)が形成されてもよい。これらのインプラントは、約10MPaから約200MPaの範囲の圧縮強度(ASTM番号D695)又は耐荷力能力及び約0.5GPaから約4.5GPaの範囲の曲げ弾性率(ASTM番号D570)を示す。
【0043】
本発明の一実施形態において、より高い孔度のインプラントは、三次元格子構造の形態である。骨、血管及び神経の内部への成長にとって最適である格子構造は、複数のゾーン内で互いに交差する複数のバーを有し、これらのバーは、これらのゾーンの各々に融合されている。隣接バー間に提供された孔空間が、格子構造内の複数の相互連結した孔又はチャネルを特定する。
【0044】
本発明のインプラントは、1以上の多孔性リザーバを含有することができ、このリザーバは、限定はしないが、抗生物質、抗凝血剤、抗炎症剤、代謝拮抗剤、抗ウィルス剤、骨形成タンパク質、細胞接着分子、成長因子、治癒促進剤、免疫抑制剤、血管新生化剤、局所麻酔剤/鎮痛剤などの1種以上の治療薬を保持する。これらの治療薬は、急速放出を防ぐ担体(例えば、ポリマー、マイクロカプセル化送達系又は生体接着性ゲルなどの徐放性媒体)と共に調製することができる。考慮された一実施形態において、治療薬は、限定はしないが、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)などのポリヒドロキシ酸、及びそれらのコポリマー類(PLGA)などの生体適合性、生分解性ポリマーによりカプセル化される。これらのポリマーは、加水分解により代謝及び排泄可能な産物に分解される。
【0045】
本発明のインプラントは、隣接する骨構造に対してこのインプラントを固定するための手段を含むように改変することもできる。例えば、カスタム化合せネジ及びファスナーなどの境界面固着装置を、CADモデルへ盛り込んで設計してもよいし、製造後に形成/固定させてもよい。
【0046】
本発明の種々の実施形態を、上に記載したが、当然のことながら、それらは、実施例として提供されたのであって、限定するものではない。したがって、本発明の広がりと範囲は、代表的な実施例のいずれによっても限定されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)を含有する、骨置換のためのカスタマイズされたインプラント又はスカフォールド。
【請求項2】
a)骨、血管及び神経の内部成長を促進するための開放、b)治療薬を保持するための表面孔を加えること、及びc)表面アンカー及び/又はネジ穴を加えることからなる群から選択される少なくとも1つの特徴を加えるために改変される請求項1に記載のカスタマイズされたインプラント又はスカフォールド。
【請求項3】
前記表面孔が、抗生物質、抗凝血剤、抗炎症剤、代謝拮抗剤、抗ウィルス剤、骨形成タンパク質、細胞接着分子、成長因子、治癒促進剤、免疫抑制剤、血管新生化剤、及び局所麻酔剤/鎮痛剤からなる群から選択される1種以上の治療薬を保持し;前記治療薬が、任意で徐放性担体内又は担体上に存在する請求項2に記載のカスタマイズされたインプラント又はスカフォールド。
【請求項4】
前記担体が、生体適合性もしくは生分解性ポリマー内、又は生体接着性ゲル内にカプセル化される請求項3に記載のカスタマイズされたインプラント又はスカフォールド。
【請求項5】
10パーセント以下の低気孔率の孔を有する内部コア、及び外層を有する硬質インプラントを含み、前記インプラントが、100メガパスカル(Mpa)から200メガパスカルを超える圧縮強度(ASTM番号D695)及び3.5GPaを超える曲げ弾性率(ASTM番号D570)を有する請求項1に記載のカスタマイズされたインプラント又はスカフォールド。
【請求項6】
前記インプラントが、耐荷重性の骨と置換する請求項5に記載のカスタマイズされたインプラント又はスカフォールド。
【請求項7】
前記耐荷重性の骨が、脊椎、腕又は脚の長骨、及び寛骨から選択される請求項6に記載のカスタマイズされたインプラント又はスカフォールド。
【請求項8】
孔の少なくとも95パーセントが、1〜500ミクロンの直径を有し、連結していても連結していなくてもよい請求項7に記載のカスタマイズされたインプラント又はスカフォールド。
【請求項9】
約35パーセントを超える気孔率を有する実質的に均一な断面形態を有し、前記孔が、相互連結しており、50〜250ミクロンの平均直径を有し、前記インプラント又はスカフォールドが、10メガパスカル(Mpa)から200メガパスカルの圧縮強度(ASTM番号D695)並びに0.5GPaから4.5GPaを超える曲げ弾性率(ASTM番号D570)を有する請求項1に記載のカスタマイズされたインプラント又はスカフォールド。
【請求項10】
組織の付着成長/内部成長のための骨置換スカフォールドか、又は幹細胞用支持体としての骨置換スカフォールドを含む請求項9に記載のカスタマイズされたインプラント又はスカフォールド。
【請求項11】
複数のゾーンにおいて互いに交差する複数のバーを有する三次元格子構造を含み、前記バーが、これら各々のゾーンに融合されており、隣接したバー間の孔空間が、格子構造内の複数の相互連結孔又はチャネルを特定する請求項9に記載のカスタマイズされたインプラント又はスカフォールド。
【請求項12】
ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)粉末を含むレーザー焼結可能な組成物であって、前記粉末が、10ミクロンから150ミクロンの平均粒径を有し、a)DSCにより測定した場合に少なくとも10重量%の結晶度を有する半結晶質であるか、又は前記粉末が、b)DSCにより測定した場合に最大2%の結晶度の準非晶質であるレーザー焼結可能な組成物。
【請求項13】
前記組成物が、ガラス、カーボン、無機質充填剤、表面生理活性セラミックス、ヒドロキシアパタイト(HAp)、生理活性ガラス、再吸収性生理活性セラミックス、α−トリカルシウムホスフェート(α−TCP)、β−TCP、前記インプラント又はスカフォールドを放射線不透過性にする固体、及び硫酸バリウム(BaSO4)からなる群から選択される1以上の充填剤を更に含む請求項12に記載のレーザー焼結可能な組成物。
【請求項14】
20ミクロンから100ミクロンの平均粒径を有する請求項12に記載のレーザー焼結可能な組成物。
【請求項15】
前記半結晶質粉末が、DSCにより測定した場合に15〜90%の結晶度を有する請求項12に記載のレーザー焼結可能な組成物。
【請求項16】
50ミクロンから70ミクロンの平均粒径を有する請求項12に記載のレーザー焼結可能な組成物。
【請求項17】
前記半結晶質粉末が、DSCにより測定した場合に15〜35%の結晶度を有する請求項12に記載のレーザー焼結可能な組成物。
【請求項18】
骨置換のためのカスタマイズされたインプラント又はスカフォールドを製造する方法であって、
(a)断層撮影情報を得るために骨修復又は骨置換を必要とする患者の部位を走査するステップと;
(b)患者から得られた断層撮影情報からコンピュータ援用設計を用いて骨インプラントモデルを設計するステップと;
(c)任意で、1以上の以下のステップ:縫合アンカー、ネジ穴、表面とテクスチュアとの接合、スカフォールド設置のための開放セル領域、抗生物質を担持する表面孔、を加えること、及び/又は剛性又は硬性を変えるために密度又は気孔率を変えること、によって骨インプラントモデルを改変するステップと;
(d)固体の自由形態製造方法を用いて、骨インプラントモデル、生体適合性ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)粉末の連続層を含む骨インプラント、から骨インプラント又はスカフォールドを形成するステップと、
を含む方法。
【請求項19】
前記ステップ(d)における製造方法が、選択的レーザー焼結(SLS)、融合沈着モデリング(FDM)又は選択的マスク焼結(SMS)によるものである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記PEKK粉末が、10ミクロンから150ミクロンの平均粒径を有する請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記PEKK粉末が、PEKK重量を基準にして5重量%から40重量%の添加物を更に含む請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記添加物が、表面生理活性セラミックス、再吸収性生理活性セラミックス、前記インプラント又はスカフォールドを放射線不透過性にする固体からなる群から選択される請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2011−530387(P2011−530387A)
【公表日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−523055(P2011−523055)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/053104
【国際公開番号】WO2010/019463
【国際公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(500307340)アーケマ・インコーポレイテッド (119)
【住所又は居所原語表記】900 First Avenue,King of Prussia,Pennsylvania 19406 U.S.A.
【Fターム(参考)】