説明

骨芽細胞分化誘導因子遺伝子及びその利用

【課 題】骨芽細胞の分化を誘導又は成熟を促進する新たな因子、及びそれを利用した医薬を提供する。
【解決手段】 以下の(1)又は(2)のタンパク質を含む医薬。この骨芽細胞分化誘導因子は、骨粗鬆症や骨折の治療剤などの有効成分として有用である。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な骨芽細胞分化誘導因子、それをコードするポリヌクレオチド、それらを利用した医薬、及び医薬のスクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨芽細胞は、骨形成に重要な役割を果たす細胞である。
骨芽細胞は、未分化な間葉系幹細胞から分化する。先ず、間葉系幹細胞は、アルカリ性ホスファターゼ陽性かつオステオポンチンやI型コラーゲンの産生能を示す前骨芽細胞へと分化する。
さらに、骨基質上に存在し、骨基質合成を行うまで分化したものは、アルカリ性ホスファターゼ活性が顕著になる。このような骨芽細胞は、コラーゲン線維やオステオカルシン、オステオポンチンなどの骨基質を合成しながら、同時に強いアルカリ性ホスファターゼ活性と高濃度の酸性リン脂質を有する基質小胞を分泌し、リン酸とカルシウムを濃縮したヒドロキシアパタイト結晶を最初に形成する。
ヒドロキシアパタイト結晶が基質小胞の膜を破って小胞外へ伸び出し、近接するコラーゲン細繊維へと波及して一層連続した石灰化骨基質が作られると、それ以降は、骨芽細胞による骨基質形成と石灰化が続く。これにより骨が形成される。
【0003】
骨芽細胞が由来する間葉系幹細胞は、骨芽細胞の他に、脂肪細胞、筋肉細胞、軟骨細胞などの細胞に分化する。この中で、骨芽細胞への分化を促すホルモンやサイトカインは多数知られているが、代表的なものとして、骨形成促進因子(BMP-2:Bone Morphogenetic Protein-2)が挙げられる。また、BMP-2による間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化促進には、Runx2と呼ばれる転写因子が関与することも知られている。
間葉系幹細胞から骨芽細胞への分化には、その他にも多くの因子が関与していると考えられるが、このような因子を見つけることができれば、その因子自体やその機能を促進する物質は骨粗鬆症や骨折の治療に有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、骨芽細胞の分化を誘導又は成熟を促進する新たな因子、及びそれを利用した医薬を提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明者は研究を重ね、以下の知見を得た。
(i) 配列番号1、3、5、7、9及び11で示す各タンパク質は、前骨芽細胞における骨芽細胞への分化のマーカーであるアルカリフォスファターゼ活性を促進し、またカルシウム沈着量を増大させる。
(ii) これらのタンパク質のアミノ酸配列には疎水性領域が一つ存在することから、これらのタンパク質は、細胞膜に局在する1回膜貫通型の膜貫通タンパク質である。
(iii) このタンパク質及びこれをコードするポリヌクレオチドは、骨形成促進し、骨粗鬆症、骨量の減少を伴う骨系統疾患、及び骨折の治療剤などの医薬として有用である。
(iv) このタンパク質に対する抗体及びこのタンパク質をコードするmRNAに対するsiRNAは、骨形成抑制し、異所性骨化及び異所性石灰化の治療剤などの医薬として有用である。
【0006】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の医薬及び医薬のスクリーニング方法を提供する。
項1. 以下の(1)又は(2)のタンパク質を含む医薬。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
項2. (2)のタンパク質が、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、又は配列番号13のアミノ酸配列からなるものである項1に記載の医薬。
項3. 医薬が、骨形成促進剤である項1又は2に記載の医薬。
項4. 医薬が、骨粗鬆症、骨量の減少を伴う骨系統疾患、又は骨折の治療剤である項1又は2に記載の医薬。
【0007】
項5. 以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドを含む医薬。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
項6. (4)のポリヌクレオチドが、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、又は配列番号14の塩基配列からなるものである項5に記載の医薬。
項7. 医薬が、骨形成促進剤である項5又は6に記載の医薬。
項8. 医薬が、骨粗鬆症、骨量の減少を伴う骨系統疾患、又は骨折の治療剤である項5又は6に記載の医薬。
項9. 以下の(1)若しくは(2)のタンパク質、又は(5)若しくは(6)の部分タンパク質に対する抗体を含む医薬。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
【0008】
項10. (2)のタンパク質が、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、又は配列番号13のアミノ酸配列からなるものであり、
(6)のタンパク質が、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である項9に記載の医薬。
項11. 医薬が、骨形成抑制剤である項9又は10に記載の医薬。
項12. 医薬が、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の治療剤である項9又は10に記載の医薬。
項13. 以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドの15〜30塩基と相補的な塩基配列を含み、全長30塩基以下のsiRNAを含む医薬。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
項14. (4)のポリヌクレオチドが、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、又は配列番号14の塩基酸配列からなるものである項13に記載の医薬。
【0009】
項15. 医薬が、骨形成抑制剤である項13又は14に記載の医薬。
項16. 医薬が、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の治療剤である項13又は14に記載の医薬。
項17. 試験細胞と被験物質とを混合する工程と、被験物質と混合した試験細胞と被験物質と混合していない試験細胞との間で、以下の(1)又は(2)のタンパク質の発現量を比較し、このタンパク質の発現量を増大させる被験物質を選択する工程とを含む、骨形成促進剤、骨粗鬆症治療剤、骨量の減少を伴う骨系統疾患の治療剤、又は骨折治療剤のスクリーニング方法。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
項18. 試験細胞と被験物質とを混合する工程と、被験物質と混合した試験細胞と被験物質と混合していない試験細胞との間で、以下の(1)又は(2)のタンパク質の発現量を比較し、このタンパク質の発現量を減少させる被験物質を選択する工程とを含む、骨形成抑制剤、異所性骨化の治療剤、異所性石灰化の治療剤、又は、異所性骨化若しくは異所性石灰化に起因する疾病の治療剤のスクリーニング方法。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
項19. 以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドを含むベクターが導入された骨芽細胞に分化する試験細胞と被験物質とを混合する工程と、被験物質と混合した試験細胞と被験物質と混合していない試験細胞との間で骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、試験細胞の骨芽細胞分化又は成熟を促進する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成促進剤、骨粗鬆症治療剤、骨量の減少を伴う骨系統疾患の治療剤、又は骨折治療剤のスクリーニング方法。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【0010】
項20. 以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドを含むベクターが導入された骨芽細胞に分化する試験細胞と被験物質とを混合する工程と、被験物質と混合した試験細胞と被験物質と混合していない試験細胞との間で骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、試験細胞の骨芽細胞分化又は成熟を抑制する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成抑制剤、異所性骨化の治療剤、異所性石灰化の治療剤、又は、異所性骨化若しくは異所性石灰化に起因する疾病の治療剤のスクリーニング方法。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
項21. 被験物質の存在下又は非存在下で、以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドを含むベクターが導入された試験細胞と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を促進する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成促進剤、骨粗鬆症治療剤、骨量の減少を伴う骨系統疾患の治療剤、又は骨折の治療剤のスクリーニング方法。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
項22. 被験物質の存在下又は非存在下で、以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドを含むベクターが導入された試験細胞と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を抑制する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成抑制剤、異所性骨化の治療剤、異所性石灰化の治療剤、又は、異所性骨化若しくは異所性石灰化に起因する疾病の治療剤のスクリーニング方法。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
項23. 被験物質の存在下又は非存在下で、以下の(1)又は(2)のタンパク質と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を促進する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成促進剤、骨粗鬆症治療剤、骨量の減少を伴う骨系統疾患の治療剤、又は骨折の治療剤のスクリーニング方法。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
項24. 被験物質の存在下又は非存在下で、以下の(1)又は(2)のタンパク質と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を抑制する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成抑制剤、異所性骨化の治療剤、異所性石灰化の治療剤、又は、異所性骨化若しくは異所性石灰化に起因する疾病の治療剤のスクリーニング方法。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
【0011】
項25. 以下の(5)又は(6)の部分タンパク質を含む医薬。
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
項26. (6)のタンパク質が、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である項25に記載の医薬。
項27. 医薬が、骨形成促進剤である項25又は26に記載の医薬。
項28. 医薬が、骨粗鬆症、骨量の減少を伴う骨系統疾患、又は骨折の治療剤である項25又は26に記載の医薬。
項29. 以下の(5)又は(6’)の部分タンパク質を含む医薬。
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6’) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟を抑制する活性を有する部分タンパク質
【0012】
項30. (6’)のタンパク質が、
(6’-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6’-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6’-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6’-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6’-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6’-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である項29に記載の医薬。
項31. 医薬が、骨形成抑制剤である項29又は30に記載の医薬。
項32. 医薬が、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の治療剤である項29又は30に記載の医薬。
項33. 以下の(7)又は(8)のポリヌクレオチドを含む医薬。
(7) 配列番号2の塩基番号76〜282を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下の部分タンパク質をコードする、配列番号2の部分配列からなるポリヌクレオチド
(8) 前記(7)に記載の配列番号2の部分配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質をコードするポリヌクレオチド
項34. (8)のポリヌクレオチドが、
(8-1) 配列番号4の塩基番号76〜282を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下の部分タンパク質をコードする、配列番号4の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8-2) 配列番号6の塩基番号55〜267を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下の部分タンパク質をコードする、配列番号6の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8-3) 配列番号8の塩基番号46〜267を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下の部分タンパク質をコードする、配列番号8の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8-4) 配列番号10の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号10の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8-5) 配列番号12の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号12の部分配列からなるポリヌクレオチド、又は
(8-6) 配列番号14の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号4の部分配列からなるポリヌクレオチド
である項33に記載の医薬。
【0013】
項35. 医薬が、骨形成促進剤である項33又は34に記載の医薬。
項36. 医薬が、骨粗鬆症、骨量の減少を伴う骨系統疾患、又は骨折の治療剤である項33又は34に記載の医薬。
項37. 以下の(7)又は(8’)のポリヌクレオチドを含む医薬。
(7) 配列番号2の塩基番号76〜282を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下の部分タンパク質をコードする、配列番号2の部分配列からなるポリヌクレオチド
(8’) 前記(7)に記載の配列番号2の部分配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟を抑制する活性を有する部分タンパク質をコードするポリヌクレオチド
項38. (8’)のポリヌクレオチドが、
(8’-1) 配列番号4の塩基番号76〜282を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下の部分タンパク質をコードする、配列番号4の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8’-2) 配列番号6の塩基番号55〜267を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下の部分タンパク質をコードする、配列番号6の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8’-3) 配列番号8の塩基番号46〜267を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下の部分タンパク質をコードする、配列番号8の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8’-4) 配列番号10の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号10の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8’-5) 配列番号12の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号12の部分配列からなるポリヌクレオチド、又は
(8’-6) 配列番号14の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号4の部分配列からなるポリヌクレオチド
である項37に記載の医薬。
項39. 医薬が、骨形成抑制剤である項37又は38に記載の医薬。
【0014】
項40. 医薬が、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の治療剤である項37又は38に記載の医薬。
項41. 被験物質の存在下又は非存在下で、以下の(5)又は(6)の部分タンパク質と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を促進する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成促進剤、骨粗鬆症治療剤、骨量の減少を伴う骨系統疾患の治療剤、又は骨折の治療剤のスクリーニング方法。
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
項42. (6)のタンパク質が、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である項41に記載の方法。
項43. 被験物質の存在下又は非存在下で、以下の(5)又は(6)の部分タンパク質と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を抑制する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成抑制剤、異所性骨化の治療剤、異所性石灰化の治療剤、又は、異所性骨化若しくは異所性石灰化に起因する疾病の治療剤のスクリーニング方法。
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
項44. (6)のタンパク質が、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である項43に記載の方法。
【0015】
項45. 以下の(1)若しくは(2)のタンパク質、又は(5)若しくは(6)の部分タンパク質と特異的に結合する抗体を含む診断薬。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
項46. (2)のタンパク質が、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、又は配列番号13のアミノ酸配列からなるものであり、
(6)のタンパク質が、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である項45に記載の診断薬。
項47. 異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の診断に用いられる項45又は46に記載の診断薬。
項48. 以下の(1)若しくは(2)のタンパク質、又は(5)若しくは(6)の部分タンパク質と被験物質とを接触させる工程と、前記タンパク質又は前記部分タンパク質と特異的に結合する被験物質を選択する工程とを含む、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の診断薬のスクリーニング方法。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
項49. (2)のタンパク質が、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、又は配列番号13のアミノ酸配列からなるものであり、
(6)のタンパク質が、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である項48に記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、新たなヒト骨芽細胞分化誘導因子が提供された。本タンパク質は、間葉系未分化細胞やそれが分化した前骨芽細胞の骨芽細胞への分化を誘導又は成熟を促進する。
従って、本タンパク質は、骨形成促進剤、具体的には、若年性骨粗鬆症 (OMIM259750)、骨粗鬆症を伴う偽神経膠腫症候群 (OMIM259770)のような骨粗鬆症;メンケス症候群 (OMIM309400)、ホモシスチン尿症 (OMIM236200)、コール-カーペンター骨異形成症 (OMIM112240) 、ブラック骨異形成症(OMIM259450)、骨異形成性老人様皮膚症 (OMIM231070)、骨減少症を伴う高IgE症候群 (OMIM147060)、顎骨骨幹異形成症 (OMIM166260)のような骨量の減少を伴う骨系統疾患;骨折などの治療剤として有用である。なお、上記の括弧内の番号はOMIM (Online Mendelian Inheritance in Man)番号である。
【0017】
また、本タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、例えば、それを含むベクターやリポソームの形態で同様の医薬として使用できる。さらに、本タンパク質に対する抗体及び本タンパク質をコードするmRNAに対するsiRNAは、骨形成抑制剤、具体的には異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の治療剤などとして有用である。
また、本発明のヒト骨芽細胞誘導因子は、細胞膜に局在する膜貫通タンパク質であると考えられる。従って、本タンパク質は、生体内の何らのリガンドが結合することにより骨芽細胞分化を誘導又は成熟を促進するレセプターであるか、又はそれ自体又はそれの細胞外領域が、生体内の他の因子に作用することより、若しくは生体内の何らかのレセプターに結合することにより骨芽細胞分化を誘導又は成熟を促進していると考えられる。
【0018】
本発明のスクリーニング方法によれば、本タンパク質の発現量を増加させることにより骨芽細胞の分化を誘導又は成熟を促進する物質や、本タンパク質に直接的又は間接的に作用して骨芽細胞分化誘導又は成熟を促進する物質などを得ることができる。これらの物質は、骨形成促進剤として有用である。
【0019】
また、本発明の他のスクリーニング方法によれば、本タンパク質の発現量を低下させることにより骨芽細胞分化誘導又は成熟を阻害又は抑制する物質や、本タンパク質に直接的又は間接的に作用して骨芽細胞分化誘導又は成熟を阻害又は抑制する物質などを得ることができる。これらの物質は、骨形成抑制剤、具体的には異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の治療剤などとして有用である。
【0020】
本発明の骨芽細胞誘導因子は、前骨芽細胞における骨芽細胞への分化のマーカーであるアルカリフォスファターゼ活性を促進し、またカルシウム沈着量を増大させることから、骨芽細胞誘導因子を検出することにより異所性骨化又は異所性石灰化の存在を予測することができる。したがって、骨芽細胞誘導因子タンパク質、又はその部分タンパク質と特異的に結合する抗体は、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の診断薬として有用である。また、骨芽細胞誘導因子タンパク質、又は部分タンパクと特異的に結合する物質をスクリーニングすれば、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の診断薬として有用な物質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を詳細に説明する。
骨芽細胞分化誘導因子をコードするポリヌクレオチド
本発明で新たに見出されたヒト骨芽細胞分化誘導因子をコードするポリヌクレオチドは、以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドである。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
本発明において、ポリヌクレオチド(オリゴヌクレオチドを含む)には、当該塩基配列を有するポリヌクレオチド及びそれに相補的なポリヌクレオチドが含まれる。また、ポリヌクレオチドには、特に言及しない限り、DNA及びRNAの双方が含まれる。また、ポリヌクレオチドには、その塩基配列を有する1本鎖DNAの他に、それに相補的な1本鎖ポリヌクレオチド、及び2本鎖ポリヌクレオチドが含まれる。
【0022】
(3)のポリヌクレオチドは、ヒト骨芽細胞分化誘導因子をコードするものである。(3)のポリヌクレオチドは、例えば、配列番号2に基づき設計したプライマーを用い、ヒトcDNAライブラリブラリーを鋳型としたPCRを行うか、配列番号2に基づき設計したプローブを用いたハイブリダイゼーションによりヒトcDNAライブラリブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる。また、化学合成によっても得られる。
本発明において「ストリンジェントな条件」は、一般的な条件、例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Second Edition,1989,Vol2,p11.45等に記載された条件を指す。具体的には、完全ハイブリッドの融解温度(Tm)より5〜10℃低い温度でハイブリダイゼーションが起こる場合を指す。
【0023】
(3)のポリヌクレオチドに基づき (4)のポリヌクレオチドを得る方法について述べれば、生物学的機能を喪失しない改変は、例えば、翻訳後に得られるタンパク質の構造保持の観点から、極性、電荷、可溶性、親水性/疎水性等の点で、置換前のアミノ酸と類似した性質を有するアミノ酸に置換することができる。例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリンは非極性アミノ酸に分類され;セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミンは極性アミノ酸に分類され;フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンは芳香族側鎖を有するアミノ酸に分類され;リジン、アルギニン、ヒスチジンは塩基性アミノ酸に分類され;アスパラギン酸、グルタミン酸は酸性アミノ酸に分類される。従って、同じ群のアミノ酸から選択して置換することができる。
また、一つのアミノ酸が数個の翻訳コドンを有する場合、この翻訳コドン内での塩基の置換も勿論可能である。例えば、アラニンは、GCA、GCC、GCG、GCTの4つの翻訳コドンを有するところ、当該コドンの3番目の塩基はATGC間で相互に置換可能である。
【0024】
(4)のポリヌクレオチドには、例えばヒトのポリヌクレオチドに対応する他の生物種のポリヌクレオチドが含まれる。このようなポリヌクレオチドは、例えばNCBIのblastサーチ(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)により選抜することができる。具体的には、例えば配列番号2の塩基配列をNCBIのblastサーチにかけて、他の生物種の塩基配列データベース及びESTデータベースより相同性の高い配列を検索する。検索により選択された塩基配列の相同性が例えば90%以上の塩基配列を選抜することにより、対応する他の生物種の対応遺伝子を選抜することができる。また、(3)のポリヌクレオチドの全長又は一部を用いた他生物種の遺伝子ライブラリーのスクリーニングや5’−RACE等により同定することもできる。
(4)のポリヌクレオチドの具体例としては、配列番号4の塩基配列を有するサル骨芽細胞分化誘導因子をコードするポリヌクレオチド、配列番号6の塩基配列を有するマウス骨芽細胞分化誘導因子をコードするポリヌクレオチド、配列番号8の塩基配列を有するラット骨芽細胞分化誘導因子をコードするポリヌクレオチド、配列番号10の塩基配列を有するイヌ骨芽細胞分化誘導因子をコードするポリヌクレオチド、配列番号12の塩基配列を有するウマ骨芽細胞分化誘導因子をコードするポリヌクレオチド、配列番号14の塩基配列を有するウシ骨芽細胞分化誘導因子をコードするポリヌクレオチドなどが挙げられる。
(4)のタンパク質が骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有することは、実施例に記載のアルカリフォスファターゼ活性の増大やカルシウム沈着量の増大を指標に確認することができる。
【0025】
骨芽細胞分化誘導因子
本発明で新たに見出されたヒト骨芽細胞分化誘導因子は、以下の(1)又は(2)のタンパク質である。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
(1)のタンパク質はヒト骨芽細胞分化誘導因子である。(1)のタンパク質は、ヒトの細胞又は組織から公知のタンパク質単離法により得ることができる。また、配列番号2の塩基配列からなるDNAを導入した形質転換体を培養し、培養物から回収することもできる。さらに、化学合成も行える。(1)のタンパク質から(2)のタンパク質を得る方法は、ポリヌクレオチドについて説明した通りである。
【0026】
(2)のタンパク質において、「数個」は、例えば5個、好ましくは3個、より好ましくは2個を指す。
(2)のタンパク質の具体例としては、配列番号3のアミノ酸配列を有するサル骨芽細胞分化誘導因子、配列番号5のアミノ酸配列を有するマウス骨芽細胞分化誘導因子、配列番号7のアミノ酸配列を有するラット骨芽細胞分化誘導因子、配列番号9のアミノ酸配列を有するイヌ骨芽細胞分化誘導因子、配列番号11のアミノ酸配列を有するウマ骨芽細胞分化誘導因子、配列番号14のアミノ酸配列を有するウシ骨芽細胞分化誘導因子などが挙げられる。
細胞内局在部位を予想するウェブツールPSORT II を用いて、配列番号1のヒト骨芽細胞分化誘導因子のアミノ酸配列を解析したところ、アミノ酸番号の1〜25の領域がシグナルペプチドであり、アミノ酸番号97〜113の領域が膜貫通領域であり、アミノ酸番号26〜96の領域が膜外領域であり、N末端が細胞外に位置するタイプ1a の一回膜貫通型タンパク質であると考えられる。また、免疫染色の結果から、細胞膜に局在する膜タンパク質であると考えられる。
【0027】
同様に、配列番号3のサル骨芽細胞分化誘導因子のアミノ酸配列において、アミノ酸番号1〜25の領域がシグナルペプチドであり、アミノ酸番号97〜113の領域が膜貫通領域であり、アミノ酸番号26〜96の領域が膜外領域であると考えられる。
また、配列番号5のマウス骨芽細胞分化誘導因子のアミノ酸配列において、アミノ酸番号1〜18の領域がシグナルペプチドであり、アミノ酸番号92〜108の領域が膜貫通領域であり、アミノ酸番号18〜91の領域が膜外領域であると考えられる。
また、配列番号7のラット骨芽細胞分化誘導因子のアミノ酸配列において、アミノ酸番号1〜15の領域がシグナルペプチドであり、アミノ酸番号92〜108の領域が膜貫通領域であり、アミノ酸番号16〜91の領域が膜外領域であると考えられる。
【0028】
また、配列番号9のイヌ骨芽細胞分化誘導因子のアミノ酸配列において、アミノ酸番号1〜26の領域がシグナルペプチドであり、アミノ酸番号96〜112の領域が膜貫通領域であり、アミノ酸番号27〜95の領域が膜外領域であると考えられる。
また、配列番号11のウマ骨芽細胞分化誘導因子のアミノ酸配列において、アミノ酸番号1〜26の領域がシグナルペプチドであり、アミノ酸番号96〜112の領域が膜貫通領域であり、アミノ酸番号27〜95の領域が膜外領域であると考えられる。
また、配列番号13のウシ骨芽細胞分化誘導因子のアミノ酸配列において、アミノ酸番号1〜26の領域がシグナルペプチドであり、アミノ酸番号96〜112の領域が膜貫通領域であり、アミノ酸番号27〜95の領域が膜外領域であると考えられる。
【0029】
医薬
<骨芽細胞分化誘導因子タンパク質>
上記説明した(1)又は(2)の骨芽細胞分化誘導因子は、骨形成促進剤、具体的には、若年性骨粗鬆症 (OMIM259750)、骨粗鬆症を伴う偽神経膠腫症候群 (OMIM259770)のような骨粗鬆症;メンケス症候群 (OMIM309400)、ホモシスチン尿症 (OMIM236200)、コール-カーペンター骨異形成症 (OMIM112240) 、ブラック骨異形成症(OMIM259450)、骨異形成性老人様皮膚症 (OMIM231070)、骨減少症を伴う高IgE症候群 (OMIM147060)、顎骨骨幹異形成症 (OMIM166260)のような骨量の減少を伴う骨系統疾患;骨折などの有効成分として有用である。本発明において、「治療」には、症状を緩和すること、症状の進展を抑制すること、症状を回復させることなどが含まれる。
【0030】
医薬の有効成分として使用する場合、上記の骨芽細胞分化誘導因子タンパク質は、薬学的に許容される非毒性の塩であってもよい。このような塩として、例えばナトリウム塩、カリウム塩のようなアルカリ金属塩;アルカリ土類金属塩;酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸のような有機酸との塩などが挙げられる。
本タンパク質の剤型は特に限定されず、経口投与剤又は非経口投与剤の何れであってもよい。局所投与のための注射剤、マイクロカプセル、ペレットなどの剤型が好ましく挙げられる。注射剤には、本タンパク質の他に、溶剤、安定剤、溶解補助剤、懸濁化剤、界面活性剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤又は保存剤等などの慣用の添加剤が含まれていてよい。ペレットは、本タンパク質を、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤又は湿潤剤などと混合し、成型することにより得られる。マイクロカプセルとしては、本タンパク質を賦形剤などと共に生分解性のカプセルに充填したものなどが挙げられる。
【0031】
注射剤である場合は、静脈内に投与するか、骨、中でも損傷を受けている箇所に局所投与すればよい。マイクロカプセルやペレットである場合は、骨内に埋設すればよい。注射剤である場合の本タンパク質の投与量は、成人1日当たり1ng〜1000mg程度、好ましくは0.1μg〜10mg程度 、より好ましくは10μg〜10mg程度とすればよい。この用量で骨形成されるまで投与すればよい。また、局所に埋設するマイクロカプセルやペレットである場合の本タンパク質の投与量は、成人に対して、骨損傷部位の1カ所当たり1ng〜1000mg程度、好ましくは0.1μg〜10mg程度 、より好ましくは10μg〜10mg程度とすればよい。
【0032】
<骨芽細胞分化誘導因子をコードするポリヌクレオチド>
上記説明した(3)又は(4)の骨芽細胞分化誘導因子をコードするポリヌクレオチドも骨形成促進剤、具体的には、骨粗鬆症、骨折、先天性骨形成不全症の治療剤の有効成分として有用である。ポリヌクレオチドも非毒性の塩であってよい。この場合のポリヌクレオチドは通常DNAである。このDNAは修飾されたDNAであってもよい。
ポリヌクレオチドは、レトロウィルス、アデノウィルス、ワクシニアウィルス等の遺伝子治療に使用される公知のウイルスベクターに挿入した状態で、注射剤やマイクロカプセル、ペレットの形態に製剤化すればよい。また、ウイルスベクターや、一般的な発現ベクター(例えば、SV4プロモーター、CMVプロモーター、エロンゲーションプロモーターなどを有する発現ベクター)に挿入した上記ポリヌクレオチドをリポソームに封入したものを注射剤、マイクロカプセル、ペレットなどの形態で製剤化することもできる。
注射剤である場合は、静脈内に投与するか、骨、中でも損傷を受けている箇所に局所投与すればよい。マイクロカプセルやペレットである場合は、骨内に埋設すればよい。注射剤である場合の本ポリヌクレオチドの投与量は、成人1日当たり1ng〜1000mg程度、好ましくは0.1μg〜10mg程度 、より好ましくは10μg〜10mg程度とすればよい。この用量で骨形成されるまで投与すればよい。また、局所に埋設するマイクロカプセルやペレットである場合の本ポリヌクレオチドの投与量は、成人に対して、骨損傷部位の1カ所当たり1ng〜1000mg程度、好ましくは0.1μg〜10mg程度 、より好ましくは10μg〜10mg程度とすればよい。
【0033】
<抗体>
上記説明した(1)又は(2)の骨芽細胞分化誘導因子タンパク質に対する抗体は、骨形成抑制剤、具体的には、異所性骨化又は異所性石灰化の治療剤の有効成分として有用である。さらに、これらに起因する疾病、例えば血管石灰化による動脈硬化や、動脈硬化が原因となる虚血性心疾患(例えば心筋梗塞、狭心症)、脳血管疾患(例えば脳梗塞)などの治療剤の有効成分として有用である。なお、動脈硬化の中に血管壁の石灰化を伴う型が存在し、石灰化が動脈機能の低下を引き起こすことは種々の教科書(例えば、(i)中島康秀・監修「動脈硬化 最新の基礎と臨床」永井書店、2006年3月10日発行、8ページ、(ii) Eugene Braunwald 著「ハリソン内科学」16th. part8 section4 血管病)に記載されており、当業者の技術常識である。また、(1)又は(2)の骨芽細胞分化誘導因子タンパク質の部分タンパク質である下記(5)又は(6)の部分タンパク質に対する抗体も骨形成抑制剤の有効成分として有用である。(6)の部分タンパク質については後述する。
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
抗体は、薬学的に許容される非毒性の塩であってもよい。
【0034】
抗体は、ポリクローナル抗体でもよく、モノクローナル抗体でもよい。さらに、これらの抗体の誘導体(キメラ抗体等)であってもよい。これらの抗体は、周知の製造方法(例えばCurrent protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al.(1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.12〜11.13)により製造することができる。具体的には、本発明の抗体がポリクローナル抗体である場合には、本タンパク質を用いて家兎等の非ヒト動物を免疫し、この免疫動物の血清から常法に従って得ることができる。モノクローナル抗体である場合には、例えば、本タンパク質又はその部分配列を有するポリペプチドを用いてマウス等の非ヒト動物を免疫し、この免疫動物の脾臓細胞と骨髄腫細胞とを細胞融合させることにより得られたハイブリドーマから得ることができる(Current protocols in Molecular Biology edit. Ausubel et al.(1987) Publish. John Wiley and Sons. Section 11.4〜11.11)。
【0035】
抗体の剤型、及び投与経路は、本発明の骨芽細胞分化誘導因子タンパク質について説明した通りである。注射剤である場合の抗体の投与量は、成人1日当たり1ng〜1000mg程度、好ましくは0.1μg〜10mg程度 、より好ましくは10μg〜10mg程度とすればよい。この用量で骨形成されるまで投与すればよい。また、局所に埋設するマイクロカプセルやペレットである場合の抗体の投与量は、成人に対して、骨損傷部位の1カ所当たり1ng〜1000mg程度、好ましくは0.1μg〜10mg程度 、より好ましくは10μg〜10mg程度とすればよい。
【0036】
<siRNA>
上記説明した(3)又は(4)のポリヌクレオチドの15〜30塩基、好ましくは18〜25塩基と相補的な塩基配列を含み全長30塩基以下、好ましくは25塩基以下のsiRNAは、骨形成抑制剤、具体的には、異所性骨化又は異所性石灰化の治療剤の有効成分として有用である。さらに、これらに起因する疾病、例えば血管石灰化による動脈硬化や、動脈硬化が原因となる虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)や、脳血管疾患(脳梗塞など)の治療剤の有効成分として有用である。siRNAの設計方法は、周知であり、例えばGuidelines for the selection of highly effective siRNA sequences for mammalian and chick RNA interference. Ui-Tei K, Naito Y, Takahashi F, Haraguchi T, Ohki-Hamazaki H, Juni A, Ueda R, Saigo K. Nucleic Acids Res. 2004 Feb 9;32(3):936-48. Print 2004. PMID: 14769950に記載されている。
【0037】
siRNAは、そのまま、又はリポソームに封入したものを、注射剤やマイクロカプセル、ペレットの形態に製剤化すればよい。投与経路は、ポリヌクレオチドの場合と同様である。注射剤である場合のsiRNAの投与量は、成人1日当たり1ng〜1000mg程度、好ましくは0.1μg〜10mg程度 、より好ましくは10μg〜10mg程度とすればよい。この用量で骨形成されるまで投与すればよい。また、局所に埋設するマイクロカプセルやペレットである場合のsiRNAの投与量は、成人に対して、骨損傷部位の1カ所当たり1ng〜1000mg程度、好ましくは0.1μg〜10mg程度 、より好ましくは10μg〜10mg程度とすればよい。
【0038】
<骨芽細胞分化誘導因子の部分タンパク質>
本発明の骨芽細胞分化誘導因子が細胞膜に局在し、リガンドとして機能するものである場合は、以下の(5)又は(6)の骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質は、骨形成促進剤、具体的には骨量減少を伴う骨系統疾患、又は骨折の治療剤の有効成分として有用である。
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
(6)のタンパク質としては、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質(サル)、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質(マウス)、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質(ラット)、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質(イヌ)、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質(ウマ)、
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質(ウシ)
が挙げられる。
【0039】
本発明の骨芽細胞分化誘導因子が細胞膜に局在し、レセプターとして機能するものである場合は、以下の(5)又は(6’)の骨芽細胞分化誘導又は成熟を抑制する活性を有する部分タンパク質は、全長タンパク質と競合するため、骨形成抑制剤、具体的には、異所性骨化又は異所性石灰化の治療剤の有効成分として有用である。さらに、これらに起因する疾病、例えば血管石灰化による動脈硬化や、動脈硬化が原因となる虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)や、脳血管疾患(脳梗塞など)の治療剤の有効成分として有用である。
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6’) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟を抑制する活性を有する部分タンパク質
(6’)のタンパク質としても、
(6’-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質(サル)、
(6’-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質(マウス)、
(6’-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質(ラット)、
(6’-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質(イヌ)、
(6’-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質(ウマ)、
(6’-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質(ウシ)
が挙げられる。
部分タンパク質は、上記各アミノ酸配列に基づき化学合成することができる。また、その部分タンパク質をコードするDNAを導入した形質転換体の培養によっても得られる。
部分タンパク質の剤型、投与経路、投与量などは全長タンパク質と同様である。
【0040】
<骨芽細胞分化誘導因子の部分タンパク質をコードするポリヌクレオチド>
本発明の骨芽細胞分化誘導因子が細胞膜に局在し、リガンドとして機能するものである場合は、以下の(7)又は(8)の骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、骨形成促進剤、具体的には骨量減少を伴う骨系統疾患、又は骨折の治療剤の有効成分として有用である。
(7) 配列番号2の塩基番号76〜282を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下の部分タンパク質をコードする、配列番号2の部分配列からなるポリヌクレオチド
(8) 前記(7)に記載の配列番号2の部分配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質をコードするポリヌクレオチド
(8)のポリヌクレオチドとしては、
(8-1) 配列番号4の塩基番号76〜282を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下の部分タンパク質をコードする、配列番号4の部分配列からなるポリヌクレオチド(サル)、
(8-2) 配列番号6の塩基番号55〜267を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下の部分タンパク質をコードする、配列番号6の部分配列からなるポリヌクレオチド(マウス)、
(8-3) 配列番号8の塩基番号46〜267を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下の部分タンパク質をコードする、配列番号8の部分配列からなるポリヌクレオチド(ラット)、
(8-4) 配列番号10の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号10の部分配列からなるポリヌクレオチド(イヌ)、
(8-5) 配列番号12の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号12の部分配列からなるポリヌクレオチド(ウマ)、
(8-6) 配列番号14の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号4の部分配列からなるポリヌクレオチド(ウシ)
が挙げられる。
【0041】
本発明の骨芽細胞分化誘導因子が細胞膜に局在し、レセプターとして機能するものである場合は、以下の(7)又は(8’)の骨芽細胞分化誘導又は成熟を抑制する活性を有する部分タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、骨形成抑制剤、具体的には、異所性骨化又は異所性石灰化の治療剤の有効成分として有用である。さらに、これらに起因する疾病、例えば血管石灰化による動脈硬化や、動脈硬化が原因となる虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)や、脳血管疾患(脳梗塞など)の治療剤の有効成分として有用である。
(7) 配列番号2の塩基番号76〜282を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下の部分タンパク質をコードする、配列番号2の部分配列からなるポリヌクレオチド
(8’) 前記(7)に記載の配列番号2の部分配列からなるポリヌクレオチドと、ストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質をコードするポリヌクレオチド
(8’)のポリヌクレオチドとしては、
(8’-1) 配列番号4の塩基番号76〜282を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下の部分タンパク質をコードする、配列番号4の部分配列からなるポリヌクレオチド(サル)、
(8’-2) 配列番号6の塩基番号55〜267を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下の部分タンパク質をコードする、配列番号6の部分配列からなるポリヌクレオチド(マウス)、
(8’-3) 配列番号8の塩基番号46〜267を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下の部分タンパク質をコードする、配列番号8の部分配列からなるポリヌクレオチド(ラット)、
(8’-4) 配列番号10の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号10の部分配列からなるポリヌクレオチド(イヌ)、
(8’-5) 配列番号12の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号12の部分配列からなるポリヌクレオチド(ウマ)、
(8’-6) 配列番号14の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号4の部分配列からなるポリヌクレオチド(ウシ)
が挙げられる。
部分タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、例えば、当該塩基配列に基づき設計したプライマーを用いて各種生物のcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより得られる。
部分タンパク質をコードするポリヌクレオチドの剤型、投与経路、投与量は、全長ポリヌクレオチドと同様である。
【0042】
医薬のスクリーニング方法
<第1のスクリーニング方法>
本発明の医薬の第1のスクリーニング方法は、試験細胞と被験物質とを混合する工程と、被験物質と混合した試験細胞と被験物質と混合していない試験細胞との間で、上記の(1)又は(2)のタンパク質の発現量を比較し、このタンパク質の発現量を増大、又は減少させる被験物質を選択する工程とを含む方法である。
上記タンパク質発現量を増大させる被験物質を選択する場合は、骨形成促進剤、具体的には、骨粗鬆症、骨量減少を伴う骨系統疾患の治療剤、骨折治療剤をスクリーニングすることができる。上記タンパク質発現量を減少させる被験物質を選択する場合は、骨形成抑制剤、具体的には異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の治療剤をスクリーニングすることができる。第1のスクリーニング方法は、本発明の骨芽細胞分化誘導因子がリガンドである場合もレセプターである場合も、使用できる方法である。
【0043】
試験細胞は、いずれの生物由来のものであってもよいが、ヒト細胞を用いることにより、ヒトの治療薬を効率よく得ることができる。試験細胞は骨芽細胞に分化する細胞であればよく、例えば、ヒトやマウスの初代培養骨芽細胞;MG-63、HS-Os-1、Saos-2のようなヒト骨芽細胞性細胞;MC3T3-E1のようなマウス前骨芽細胞などが挙げられる。
被験物質の種類は特に限定されない。タンパク質、ペプチド、これらをコードするDNA、低分子化合物、細胞抽出液、細胞の核抽出液、植物抽出液、微生物の培養上清などが挙げられる。医薬としたときの吸収や組織移行性を考慮すれば、低分子化合物が好ましい。
試験細胞は、その細胞に適した培地を用いて継代し、対数増殖期の状態になるように培養しておく。被験物質を接触させる際には、細胞を50〜70%程度コンフルエントになるように播き、12時間〜14日間程度培養する。次いで、被験物質を、その種類によって異なるが例えば1nM〜10μM程度の濃度になるように細胞培養に添加する。次いで、20〜37℃程度で、1時間〜2ヶ月程度インキュベートする。
【0044】
この後、被験物質と混合した試験細胞における(1)又は(2)のタンパク質(骨芽細胞誘導因子)の発現量と被験物質と混合していない試験細胞における同タンパク質の発現量とを比較すればよい。発現量は、RT-PCRやウェスタンブロッティングなどにより検出すればよい。比較は、各場合の発現量を測定した上で行ってもよいが、目視などにより直接比較してもよい。
被験物質を用いることにより、骨芽細胞誘導因子タンパク質の発現量が被験物質を接触させない対照の例えば80%以下、好ましくは50%以下になる場合には、発現が抑制されたと判定すればよい。また、骨芽細胞誘導因子タンパク質の発現量が対照の例えば120%以上、好ましくは150%以上になる場合には、発現が促進されたと判定すればよい。
【0045】
<第2のスクリーニング方法>
本発明の骨芽細胞誘導因子がレセプターである場合は、本発明のポリヌクレオチドは、以下に示す医薬の第2のスクリーニング方法に使用することができる。
即ち、本発明の医薬の第2のスクリーニング方法は、上記の(3)又は(4)のポリヌクレオチドを含むベクターが導入された、骨芽細胞に分化する試験細胞と被験物質とを混合する工程と、被験物質と混合した試験細胞と被験物質と混合していない試験細胞との間で、骨芽細胞への分化又は成熟の程度を比較し、試験細胞の骨芽細胞への分化又は成熟を促進又は抑制する被験物質を選択する工程とを含む方法である。
【0046】
試験細胞の骨芽細胞への分化又は成熟を促進する被験物質を選択する場合は、骨形成促進剤をスクリーニングすることができ、試験細胞の骨芽細胞への分化又は成熟を抑制する被験物質を選択する場合は、骨形成抑制剤をスクリーニングすることができる。
試験細胞は骨芽細胞に分化する細胞であればよく、例えば、第1のスクリーニング方法の項目で説明したものを使用できる。被験物質の種類は前述した通りである。
試験細胞は、その細胞に適した培地を用いて継代し、対数増殖期の状態になるように培養しておく。被験物質を接触させる際には、細胞を50〜70%程度コンフルエントになるように播き、24時間〜2ヶ月間程度培養する。次いで、被験物質を、その種類によって異なるが、例えば1nM〜10μM程度の濃度になるように細胞培養に添加する。次いで、20〜37℃程度で、1時間〜2ヶ月程度インキュベートする。
【0047】
この後、被験物質と混合した試験細胞と被験物質と混合していない試験細胞との間で骨芽細胞への分化又は成熟の程度を比較すればよい。即ち、試験細胞の骨芽細胞としての成熟度を比較すればよい。成熟度は、試験細胞における、骨シアロプロテイン(BSP:Bone sialoprotein)、オステオカルシン(OCN:Osteocalcin)のような分化マーカーの発現量(転写量、タンパク量)、アルカリフォスファターゼ活性、カルシウム沈着量などを指標として比較することができる。この比較は、被験物質と混合する場合としない場合との双方における値を測定した上で行ってもよいが、目視などにより直接比較してもよい。
分化マーカーの発現量は、例えば、RT-PCTやウェスタン−ブロッティングなどにより検出することができる。アルカリフォスファターゼ活性は、例えば、パラニトロフェニルリン酸を基質とし、生成したパラニトロフェノールの420nm付近における吸光度を測定することにより検出できる。また、染色による青紫色の発色の強さを目視で検出することもできる。カルシウム沈着量は、例えば、キレート発色法(オルトフレゾールフタレインコンプレキソン(OCPC)法)により検出することができる。また、アリザリンレッド染色による赤褐色の発色の強さを目視で検出することもできる。
被験物質を用いることにより、骨芽細胞分化誘導活性が被験物質を接触させない対照の例えば80%以下、好ましくは50%以下になる場合には、骨芽細胞分化誘導又は成熟が抑制されたと判定すればよい。また、骨芽細胞分化誘導活性が対照の例えば120%以上、好ましくは150%以上になる場合には、骨芽細胞分化誘導又は成熟が促進されたと判定すればよい。
【0048】
<第3のスクリーニング方法>
本発明の骨芽細胞誘導因子がリガンドである場合は、本発明のポリヌクレオチドは、以下に示す医薬の第3のスクリーニング方法に使用することができる。
即ち、本発明の医薬の第3のスクリーニング方法は、被験物質の存在下又は非存在下で、上記の(3)又は(4)のポリヌクレオチドを含むベクターが導入された試験細胞と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞への分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞への分化又は成熟を促進又は抑制する被験物質を選択する工程とを含む方法である。
骨芽細胞に分化する細胞の骨芽細胞への分化又は成熟を促進する被験物質を選択する場合は、骨形成促進剤をスクリーニングすることができ、骨芽細胞に分化する細胞の骨芽細胞への分化又は成熟を抑制する被験物質を選択する場合は、骨形成抑制剤をスクリーニングすることができる。
【0049】
試験細胞の種類は特に限定されない。試験細胞として骨芽細胞に分化する細胞を用いることもできる。また、骨芽細胞に分化する細胞の種類も限定されず、例えば、第1のスクリーニング方法で例示したものを使用できる。これらの細胞の生物種は限定されないが、ヒト細胞が好ましい。
試験細胞及び骨芽細胞に分化する細胞は、各細胞に適した培地を用いて継代し、対数増殖期の状態になるように培養しておく。両者の混合比は、通常は、同数程度とすればよい。また、被験物質を接触させる際には、両細胞を合わせて50〜70%程度コンフルエントになるように播き、24時間〜2ヶ月間程度培養する。次いで、被験物質を、その種類によって異なるが例えば1nM〜10μM程度の濃度になるように細胞培養に添加する。次いで、20〜37℃程度で、1時間〜2ヶ月程度インキュベートする。
この後、被験物質と混合した場合と被験物質と混合していない場合との間で、骨芽細胞に分化する細胞の骨芽細胞への分化又は成熟の程度、即ち骨芽細胞としての成熟度を比較すればよい。成熟度の比較方法は前述した通りである。
被験物質を用いることにより、骨芽細胞分化誘導活性が被験物質を接触させない対照の例えば80%以下、好ましくは50%以下になる場合には、骨芽細胞分化誘導又は成熟が抑制されたと判定すればよい。また、骨芽細胞分化誘導活性が対照の例えば120%以上、好ましくは150%以上になる場合には、骨芽細胞分化誘導又は成熟が促進されたと判定すればよい。
【0050】
<第4のスクリーニング方法>
本発明の骨芽細胞誘導因子は、リガンド及びレセプターの何れである場合も、以下に示す医薬の第4のスクリーニング方法に使用することができる。
即ち、本発明の医薬の第4のスクリーニング方法は、被験物質の存在下又は非存在下で、上記の(1)又は(2)のタンパク質と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を促進又は抑制する被験物質を選択する工程とを含む方法である。
また、上記(1)又は(2)の骨芽細胞分化誘導因子に代えて、上記(5)又は(6)の部分タンパク質を用いることもできる。(6)の部分タンパク質としては、前述したサル、マウス、ラット、イヌ、ウマ、ウシの部分タンパク質を例示できる。
骨芽細胞分化又は成熟を促進する被験物質を選択する場合は、骨形成促進剤をスクリーニングすることができ、骨芽細胞分化又は成熟を抑制する被験物質を選択する場合は、骨形成抑制剤をスクリーニングすることができる。
【0051】
骨芽細胞に分化する細胞は、その細胞に適した培地を用いて継代し、対数増殖期の状態になるように培養しておく。(1)又は(2)のタンパク質、及び被験物質を接触させる際には、細胞を50〜70%程度コンフルエントになるように播き、12時間〜14日間程度培養する。次いで、この細胞培養に、(1)又は(2)のタンパク質を、1×10-6〜10mg/ml程度の濃度になるように懸濁又は溶解させる。それと同時又はその後に、被験物質を、その種類によって異なるが、例えば1nM〜10μM程度の濃度になるように細胞培養に添加する。次いで、20〜37℃程度で、1時間〜2ヶ月程度インキュベートする。
この後、被験物質を添加した場合と添加しない場合との間で、骨芽細胞に分化する細胞の骨芽細胞への分化又は成熟の程度、即ち骨芽細胞としての成熟度を比較すればよい。成熟度の比較方法は前述した通りである。
被験物質を用いることにより、骨芽細胞の成熟度が、被験物質を用いない対照の例えば80%以下、好ましくは50%以下になる場合には、骨芽細胞分化又は成熟が抑制されたと判定すればよい。また、骨芽細胞分化又は成熟が対照の例えば120%以上、好ましくは150%以上になる場合には、骨芽細胞分化又は成熟が促進されたと判定すればよい。
【0052】
診断薬
本発明の骨芽細胞誘導因子は、前骨芽細胞における骨芽細胞への分化のマーカーであるアルカリフォスファターゼ活性を促進し、またカルシウム沈着量を増大させることから、骨以外の組織で骨芽細胞誘導因子が検出された場合、異所性骨化又は異所性石灰化の存在を予測することができる。したがって、骨芽細胞誘導因子を特異的に検出可能な物質は、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の診断薬として有用である。
【0053】
<抗体>
上記(1)又は(2)の骨芽細胞分化誘導因子タンパク質と特異的に結合する抗体、及び(1)又は(2)の骨芽細胞分化誘導因子タンパク質の部分タンパク質である上記(5)又は(6)の部分タンパク質と特異的に結合する抗体は、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の診断薬として有用である。抗体を用いてタンパク質検出する公知の方法としては、例えばラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISA法(固相酵素免疫検定法)、ウスタンブロット法、免疫沈降法、免疫組織化学法などが挙げられる。また、抗体を含む診断薬を生体に投与し、当該診断薬の所在を検出することで、骨芽細胞分化誘導因子の発現部位を特定することが可能である。
【0054】
<診断薬のスクリーニング方法>
本発明の診断薬のスクリーニング方法は、上記(1)若しくは(2)のタンパク質、又は(5)若しくは(6)の部分タンパク質と被験物質とを接触させる工程と、これらのタンパク質又は部分タンパク質と特異的に結合する被験物質を選択する工程とを含む方法である。接触させる工程では、例えば、(1)若しくは(2)のタンパク質、又は(5)若しくは(6)の部分タンパク質を発現している細胞を含む試料(培養液、体液、組織、細胞破砕液、組織破砕液など)に被験物質を添加して適当な時間インキュベーションする方法を用いることができる。特異的に結合する被験物質であるか否かは、例えば、特異的に結合する抗体と接触させた場合と比較することで、判定することができる。
得られた物質は、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の診断薬として有用である。得られた物質を診断薬とする場合、公知の標識体(放射線標識体、酵素標識体、蛍光標識体等)とすることができる。
【0055】
実施例
以下、本発明を実施例を挙げて、より詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1(アミノ酸配列、塩基配列の決定)
各生物種の骨芽細胞分化誘導因子のアミノ酸配列及び塩基配列は、NCBI(アメリカ合衆国立バイオテクノロジー情報センター) データベースより得た。アクセッション番号は、ヒト:AAH96825.1 / BC096825、サル : XP_001164009 / XM_001164009、マウス : NP_666274 / NM_146162、ラット : XP_222278 / XM_222278、イヌ : XP_854479 / XM_849386、ウマ : XP_001497070 / XM_001497020、ウシ : NP_001077133 / NM_001083664である。
ヒト、サル、マウス、ラット、イヌ、ウマ、ウシの骨芽細胞分化誘導因子タンパク質のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号1、3、5、7、9、11、13に示す。また、それらをコードするDNAの塩基配列を、それぞれ配列番号2、4、6、8、10、12、14に示す。
【0056】
図1は、ヒト、マウス、ラット、イヌ、ウマ、ウシ、サルの各骨芽細胞分化誘導因子タンパク質のアミノ酸配列のアラインメント図である。アラインメント図の作製及びコンセンサス配列の同定は、遺伝子配列情報解析ソフトウェア MacVector (MacVector社) を用いて行った。高等脊椎動物間で、骨芽細胞分化誘導因子のアミノ酸配列は、高度に保存されており、この蛋白質の重要性が示唆される。
【0057】
実施例2(マウス前骨芽細胞株MC3T3-E1内でのヒト骨芽細胞分化誘導因子タンパク質の局在)
(1)前骨芽細胞株 MC3T3-E1 の培養
理化学研究所細胞銀行より入手した細胞株(RCB1126) を10%ウシ胎児血清を含むαMEM 培地(sigma-aldrich, USA, M8042) に維持し、5%のCO2 を含む湿潤大気中で培養した。
(2)ヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質発現プラスミドの作製
ヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質をコードするDNA断片を、PCR法によって得た。PCR の鋳型としては、ヒト胎児脳トータルRNA (Clontech Laboratories, USA, 636526)よりSuperScriptII逆転写酵素 (Invitrogen, USA, 18064-014) を用いて作製した cDNA を使用した。ヒト骨芽細胞分化誘導因子の塩基配列(NCBI accession number : BC096825)に基づき、二つのオリゴヌクレオチド(5'GGTACCATGGTTTCGGCGGCAGCCCCCAGCCTC3'(配列番号15) および5'GGATCCGACACTGGGGTGGACACTGCTGC3'(配列番号16))を合成し(Gene Design, Japan)、プライマーとして用いた。得られたDNA 断片を pGEM-T Easy ベクター (Promega, USA, A1360)にクローニングし、DYEnamic ET Terminator Cycle Sequencing Kit (Amersham Biosciences, USA, US81050) を用いて、ABI PRISM 310 Genetic Analyzer で塩基配列を確認した。
【0058】
次いで、C末端にFLAG タグを付加する用途でpBluescript II KSベクター(Stratagene, USA)を改変したベクターにサブクローニングした。この改変ベクターは、マルチクローニングサイトのBamHI-NotI間にgGATCC(=BamHI)-GATTACAAGGATGACGACGATAAG(配列番号17) (=DYKDDDDK(配列番号18):FLAGタグ)-TAA-GCggccgc (=TAA stop codon-NotI) を挿入したものである。制限酵素KpnIおよびNotI にてヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質のC末端にFLAGタグが付加された蛋白をコードするDNA断片を切り出し、pcDNA3ベクター(invitrogen, USA, A-150228)へサブクローニングした。このプラスミドから制限酵素HindIIIおよびNotI で切り出したDNA 断片をNolan-GFPウイルスベクター(Dr. Gary Nolan 研究室(スタンフォード大学)より分与)のBamHI-NotIサイトへBamHI-HindIII リンカーを用いて挿入することにより、目的の発現プラスミドを得た。
【0059】
(3)ヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質発現ウイルスの作製
(2)で得られた発現プラスミドとヘルパープラスミドpGag-PolをHEK293細胞由来のパッケージング細胞へ一時的に遺伝子導入した。具体的には、細胞を前日に10cmプレートに3×106 cells播種したものに発現プラスミド20μgおよびヘルパープラスミド10μgをリン酸カルシウム法を用いて行った。10mlのメディウムで24時間、37℃で培養した後に、GFPの発現によって遺伝子導入が十分であることを確認し、メディウムを6mlに交換し、その後24時間置きにウイルスを含んだメディウムの回収及び新しいメディウムの添加を繰り返し、3日で合計18mlのウイルス溶液を得た。ウイルス溶液はPVDFメンブレンフィルター(0.45μm孔)でろ過後、液体窒素で急凍し、使用するまで-80℃で保存した。
【0060】
(4)ヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質安定発現細胞株の樹立(感染)
6cmプレートへ1×105 cell のMC3T3-E1細胞を播種する。翌日、メディウム2mlと解凍したウイルス溶液2mlにポリブレン32μgを加えたものを混合し、メディウム交換時に添加した。24時間後に維持メディウムに交換して培養を続け、感染後3日後にほぼすべての細胞がGFPを発現していることを確認した。これらをヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質安定発現細胞株として、実験に用いた。
【0061】
(5)免疫染色法による蛋白質局在の確認
カバーガラス(MATSUNAMI,Japan,24×24mm Thickness NO.1)を35mmプレート内に設置し、ゼラチンコートを施す。(3)で得られた安定発現細胞 1×105 cellを播種し、2日間培養した後、免疫染色を施行した。実験操作はいずれも室温で行った。
(5-1)固定・透過処理・ブロッキング
1×PBSで2回洗浄後、4%パラホルムアルデヒド/PBSにて15分間固定し、1×PBSで二回洗浄後、0.1%TritonX-100(Wako, Japan, 168-11805)/PBSにて15分間の透過処理、1×PBSで二回洗浄後、2%ウシ血清アルブミン(Sigma-Aldrich, USA, A2153)/PBSにてブロッキングした。
(5-2)抗体抗原反応・可視化
一次抗体として、Monoclonal ANTI-FLAG M2 Antibody (SIGMA, USA, F1804) を2%ウシ血清アルブミン/PBSへ 1:1000の希釈濃度となるように添加して使用した。60分間のインキュベート後、0.1%ウシ血清アルブミン/PBSで二回洗浄、二次抗体として、Cy3-conjugated AffiniPure Donkey Anti-Mouse IgG(H+L) (Jackson ImmunoReseach LABORSTORIES, USA, 715-165-150) を0.1%ウシ血清アルブミン/PBSへ1:400 の希釈となるように調整し、使用。同時に核染色を目的として、4’,6’-diamidino-2-phenylindole(DAPI)(SIGMA, USA, D8417) を1:1000の希釈となるように添加した。二次抗体の反応を行った後、0.1%ウシ血清アルブミン/PBSで二回洗浄し、水溶性マウント剤を用いてスライドグラスへ封入した。
(5-3)観察・画像処理
免疫染色を施した切片組織は、共焦点顕微鏡LSM510(Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)にて観察及び撮影を行い、画像処理ソフトZeuss LSM Image Browser で画像処理を行った。
【0062】
(6)試薬・溶液
実施例2で用いた試薬及び溶液は以下のものである。
20×PBS : NaCl 160g, KCl 4g, Na2HPO4・7H2O 43.4g, KH2PO4 4g / 精製水で1Lに調整した。
4%パラホルムアルデヒド/PBS : paraformaldehyde (MERCK, Germany 104005 )4g / 精製水94ml、20×PBS 5ml / 合計100ml
(7)結果
染色画像を図2に示す。赤色の蛍光色素で染色されている不定形の部分が骨芽細胞分化誘導因子蛋白質であり、この不定形部分の内外に存在する円形部分(青色蛍光色素部分)は細胞核を示す。不定形の部分(赤色蛍光色素部分)は小胞体及び細胞膜を表出するパターンを示し、これは、骨芽細胞分化誘導因子蛋白質が、配列より予想される膜蛋白質であり、細胞膜に局在することから、細胞間相互作用に関連した機能を持つ可能性を示唆する。
【0063】
実施例3(骨芽細胞分化誘導因子のマウス発生段階における発現様式)
動物実験に関しては、大阪バイオサイエンス研究所動物実験委員会の許可したプロトコールに準じて行った。
(1)DIG プローブの作製
DIG RNA Labeling Mix (Roche, Switzerland, 1 277 073)、T3/T7RNAポリメラーゼ(Roche, Switzerland, 1 031 171 / 0 881 775)を用いてDIGプローブを作製した。鋳型として用いたDNA領域はそれぞれ、マウス骨芽細胞分化誘導因子 : AK078473 (1-2093)、マウスコラーゲン1: AK086730 (1-1712)、オステオポンチン:NM_009263 (310-1296)、マウスオステオカルシン: NM_009263 (1-470)である。11μgの鋳型DNA から作製した50μl のRNAプローブを、ハイブリダイゼーション溶液中に5%の濃度となるように加えて使用した。
【0064】
(2)ホールマウントin situ ハイブリダイゼーション
(2-1)サンプルの作製
エーテルによって深麻酔を施した妊娠マウスよりマウス胎児を採取し、4%パラホルムアルデヒド/PBSにて4℃で一晩固定、室温にもどし、1×PBTでの洗浄後、70%メタノール(ナカライテスク21915-35)、80%メタノール、90%メタノール、100%メタノールと順に濃度を高めたメタノールに浸すことによって脱水を施す。ついで100%→70%とメタノールの濃度を下げていき、1×PBTにもどし、この再水和後のマウス胎児を実験操作に用いた。
(2-2)前処置・ハイブリダイゼーション
サンプルを6%過酸化水素水(Wako, Japan, 081-04215)/PBTに浸し、漂白した。1×PBTで洗浄し、10μg/ml proteinase K(Sigma-Aldrich, USA, P2308)/PBT で15分処理した後に2mg/ml グリシン(Sigma-Aldrich, USA, G7403)に10分間浸すことで反応をとめた。1×PBTで洗浄後、4%パラホルムアルデヒド/PBSで20分間固定した。1×PBTで洗浄し(ここまでは室温操作)、プレハイブリダイゼーション溶液中70℃に1時間浸した後に、DIG プローブを加えたハイブリダイゼーション溶液に交換し、70℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。
(2-3)洗浄・抗体のハイブリダイゼーション
洗浄用溶液1(70℃)で30分×3回、洗浄用溶液3(65℃)で30分×3回の洗浄、1×TBST(室温)で3分×5回の洗浄を順に行った。10%ヒツジ血清/1×TBSTで2.5時間のブロッキング(室温)後、Ab mix 溶液に浸して抗体のハイブリダイゼーション(4℃)を一晩行った。
(2-4)洗浄
1×TBSTで3分×5回、1.5時間×5回の洗浄を順に行い(室温)、次いで4℃で一晩の洗浄を行った。
(2-5)発色・撮影(いずれも室温)
1×NTMTで10分×3回洗浄後、Reaction mix溶液を加えて、遮光の上、発色反応を行った。シグナルが観察されてから、1×NTMTで10分×2回洗浄し、1×PBT(pH5.5)に10分浸した。4%パラホルムアルデヒド/PBSで1時間固定後、1×PBTへ移し、実体顕微鏡StemiSV11(Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)で、撮影を行った。
【0065】
(3)パラフィン切片in situ ハイブリダイゼーション
(3-1)サンプルの作製
エーテルによって深麻酔を施した妊娠マウスよりマウス胎児を採取し、4%パラホルムアルデヒド/PBSにて4℃で一晩固定、そのまま4℃で1×PBSで洗浄後、エタノール(ナカライテスク、日本、14713-95)で脱水及び二次固定を行った。(70→80→90→100%エタノールに順次浸した)。室温にもどしたサンプルを100%キシレン(Wako, Japan, 244-00081)で透徹し、続いて60℃のパラフィン(サクラファインテックジャパン、日本、No.7810)へ浸した。エタノールでの脱水には4日、キシレン・パラフィンの工程には9時間をかけた。サンプルをプラスティックモールドの中にパラフィン包埋し、完成したブロックは4℃で保存した。
(3-2)切片の作製
ブロックをロータリーミクロトームHM340E(Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)により薄切、スライドグラス上に乗せて、48℃の伸展板上で30分の伸展後、70℃の乾燥機内で10分間乾燥させスライドグラスに完全に密着させた。完成したサンプルは、使用するまで4℃で保存。
(3-3)脱パラフィン・前処置・ハイブリダイゼーション
サンプルをキシレン、エタノール(100→90→80→70→50%)、1×PBSの順に浸し、脱パラフィン・再水和を行った。クエン酸バッファー(100℃)中で20分間加熱処理、0.2規定HCl溶液での10分間の処理後、4μg/ml proteinase K /PBS で2分処理した後に2mg/ml グリシンに10分間浸すことで反応をとめた。1×PBSで3回洗浄後、4%パラホルムアルデヒド/PBSで15分間固定した。1×PBSで洗浄し(ここまでは室温操作)、プレハイブリダイゼーション溶液中60℃に1時間浸した後にDIG プローブを加えたハイブリダイゼーション溶液に交換し、60℃で一晩ハイブリダイゼーションを行った。
【0066】
(3-4)洗浄・抗体のハイブリダイゼーション
洗浄用溶液1(60℃)で15分×3回、洗浄用溶液3(55℃)で15分×3回の洗浄、1×TBST(室温)で10分×3回の洗浄を順に行った。5%ヒツジ血清/1×TBSTで1時間のブロッキング(室温)後、Ab mix 溶液に浸して抗体のハイブリダイゼーション(4℃)を2時間行った。
(3-5)発色・撮影(いずれも室温)
1×TBSTで15分×4回、1×NTMTで10分×3回洗浄後、Reaction mix溶液を加えて遮光の上、発色反応を行った。シグナルが観察されてから、1×NTMTで5分×2回洗浄し、1×PBT(pH5.5)に1分浸した。4%パラホルムアルデヒド/PBSで10分間固定後、1×PBTへ移し、水溶性マウント剤を用いてカバーグラスで封入した。光学顕微鏡Axioskop2 plus(Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)で、撮影を行った。
【0067】
(4)試薬・溶液
実施例3で用いた試薬及び溶液は以下のものである。
1×PBT : 0.1%Tween-20/ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(ナカライテスク、日本、356-24 )/PBS
プレハイブリダイゼーション/ハイブリダイゼーション溶液 : 50% Formamide, 5×SCC(pH4.5), 50μg/ml yeast RNA(Roche, Switzerland, 109233)
洗浄用溶液1 : 50% formamide, 5×SCC(pH4.5), 1%SDS
洗浄用溶液3 : 50% formamide, 2×SCC(pH4.5)
10×TBS : NaCl 8g, KCl 0.2g, 1M Tris-HCl(pH7.5) 25ml / 精製水75ml
1×TBST : 0.1%Tween-20/TBS
Ab mix溶液 : Anti-Digoxigenin-AP Fab fragments (Roche, Switzerland, 1 093 274) を1×TBST へ 1 : 2000 で希釈し使用した。
1×NTMT : 100mM NaCl, 100mM Tris-HCl(pH9.5), 50mM MgCl2, 0.1%Tween-20, 2mM Levamisole (Sigma-Aldrich, USA, L9756)
Reaction mix溶液 : 75mg/ml Nitrotetrazolium blue (Sigma-Aldrich, USA, N6876) 6.75μl、50mg/ml 5-Bromo-4-chloro-3-indolylphosphate disodium salt (Sigma-Aldrich, USA, B6149) 5.25μl を1×NTMT へ加えて作製した。
クエン酸バッファー : 0.1Mクエン酸水溶液 9.5ml + 0.1M クエン酸ナトリウム水溶液 41.5ml / 精製水 449ml
【0068】
(5)結果
画像を図3に示す。図3(A)に示すように、骨芽細胞分化誘導因子は、マウスの発生過程において、まず肢芽に発現し(胎生9.5及び10.5日胚)、その後、指の軟骨原基を囲む間葉細胞に発現を示した(胎生12.5日胚)。胎生後期になると、四肢では骨芽細胞特異的な発現が観察された。
図3(B)は、骨芽細胞における骨芽細胞分化誘導因子と他の各種マーカーとの比較である。コラーゲン1は比較的早期の骨芽細胞から分泌される蛋白質であり、オステオカルシンは成熟の進んだ骨芽細胞から分泌される蛋白質である。オステオポンチンは石灰化組織(石灰化軟骨を含む)のマーカーとして用いた。
図3(A)及び(B)の結果から、骨芽細胞分化誘導因子が、骨芽細胞の未熟な段階から成熟した段階を通じて発現していることがわかる。このことは、本骨芽細胞分化誘導因子の分化誘導又は成熟促進活性が強いことを示唆する。
【0069】
実施例4(骨芽細胞分化誘導因子による前骨芽細胞株の分化・成熟促進)
骨芽細胞分化誘導因子が前骨芽細胞株の分化又は成熟に対する機能をもつかどうかを調べる目的で行った。使用した細胞は、実施例2の(4)で作製したヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質安定発現細胞株、および同様の手法で作製したコントロール細胞株(実施例2の(3)(4)でヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質発現プラスミドの代りに空のNolan-GFPウイルスベクターを使用して作製したもの)の二種類である。
【0070】
(1)前骨芽細胞株 MC3T3-E1 の分化誘導
MC3T3-E1の分化誘導のため、実施例2(1)の維持メディウムに、10 mM β-glycerol phosphate (Sigma-Aldrich, USA,50020 ) および 50 g/ml. L-ascorbic acid (Sigma-Aldrich, USA, A9659)を加えた分化メディウムを用いた。12穴プレートに、細胞を3×104/well播種し、維持メディウムで2日間培養、コンフルエントな状態から分化メディウムでの培養をスタートした。
(2)アルカリフォスファターゼ活性
骨芽細胞の早期分化マーカーとして、アルカリフォスファターゼ(ALP)が用いられる。今回は、細胞のアルカリフォスファターゼ染色およびLabAssayTMALP キット(Wako, Japan, 291-58601)による活性の評価を行った。
(2-1)アルカリフォスファターゼ染色 (室温での反応)
維持メディウムでの培養2日目(分化開始0日)、および分化メディウムでの培養2日目(分化開始2日)の細胞(ヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質安定発現細胞株およびコントロール株)を1×PBSでの洗浄後、4%パラホルムアルデヒド/PBSで10分間固定、1×PBSでの洗浄し、ALPバッファーに交換し、次いでALP発色液に交換、遮光にて15分の反応後、実体顕微鏡SteREO Lumar.V12(Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)にて撮影した。
(2-2)LabAssayTMALP キットによるALP活性測定
分化メディウムでの培養2日目(分化開始2日)及び5日目(分化開始5日)の細胞(ヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質安定発現細胞株およびコントロール株)を1×PBSでの洗浄後、ALP溶解液に交換し、セルスクレイパーにて細胞を回収。この細胞溶解液をソニケーション・遠心、上清をLabAssayTMALP キットによるALP活性測定に用いた。ALP活性は、上記キットの添付マニュアルに従いタンパク質重量当たりの活性として算出した。即ち、pH9.8、37℃の条件下で1分間に生成されるパラニトロフェノールのモル数を蛋白質量で除した値を酵素活性とした。
【0071】
(3)カルシウム沈着(石灰化)
骨芽細胞の後期分化の指標として、各種マーカー(BSP、OCNなど)とともに、カルシウムの沈着が用いられる。今回は、アリザリンレッド染色およびカルシウムC-テストワコー(Wako, Japan, 272-21801)による沈着カルシウムの定量を行った。
(3-1)アリザリンレッド染色
分化メディウムでの培養18日目(分化開始18日)の細胞を1×PBSでの洗浄後、70%エタノールで10分間固定、アリザリンレッド染色液に交換して1時間静置。精製水にて洗浄後、実体顕微鏡SteREO Lumar.V12(Carl Zeiss, Oberkochen, Germany)にて撮影。
(3-2)カルシウムC-テストワコー(Wako, Japan, 272-21801)による沈着カルシウムの定量
分化メディウムでの培養18日目(分化開始18日)・24日目(分化開始24日)の細胞を1×PBSでの洗浄後、0.6規定HCl溶液に交換してセルスクレイパーにて細胞を回収。回収細胞を0.6規定HCl溶液内で室温24時間ロッキングした。遠心後、上清をカルシウムC-テストワコーによるカルシウムの定量に用いた。カルシウム沈着量は、上記キットの添付マニュアルに従いウェル当たりの重量として算出した。
【0072】
(4)試薬・溶液
実施例4で用いた試薬及び溶液は以下のものである。
ALPバッファー : 100mM Tris(pH9.5), 100mM NaCl, 50mM MgCl
アリザリンレッド染色液 : 1% Arizarin Red S (Sigma-Aldrich, USA, 01-2180-2) / 精製水 (HCl溶液でpH4.2に調整)
【0073】
(5)結果
本実施例では、ヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質安定発現細胞株とコントロール細胞株間で分化能を比較した。骨芽細胞の早期分化マーカーとして、アルカリフォスファターゼを、後期分化の指標として、沈着カルシウム量を用いた。
図4は、アルカリフォスファターゼ染色及びアリザリンレッド染色の結果を示し、図5は、アルカリフォスファターゼ活性及びカルシウム沈着量を示すグラフである。
アルカリフォスファターゼ染色(青紫色)では、分化誘導前には差異は見られないが、分化誘導2日目ではヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質安定発現細胞株がコントロール細胞株に比較して強い染色を示した。また、アルカリフォスファターゼ活性は、ヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質安定発現細胞株がコントロール細胞株に比較して、誘導2日目・5日目ともに高い活性を示した。
また、着色性(赤褐色)のカルシウムラックを形成する色素であるアリザリンレッドによる染色では、分化誘導18日目でヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質安定発現細胞株がコントロール細胞株に比較して強い染色を示した。また、キットによるカルシウム定量では、誘導18日目・24日目でともにヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質安定発現細胞株がコントロール細胞株に比較して高値を示した。これらのデータは、骨芽細胞分化誘導因子が骨芽細胞の分化・成熟を促進する効果を有することを示す。
【0074】
実施例5(マウス前骨芽細胞株MC3T3-E1におけるヒトおよびマウス骨芽細胞分化誘導因子の部分蛋白質による分化誘導)
ヒトおよびマウス骨芽細胞分化誘導因子の全長蛋白質、ならびに2種類の部分蛋白質(細胞外領域のみ、細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部)を安定発現するマウス前骨芽細胞株MC3T3-E1を用いて、骨芽細胞分化誘導因子の部分蛋白質が前骨芽細胞株の分化又は成熟に対する機能を持つかどうかを調べた。
図6は、マウス(ヒト)骨芽細胞分化誘導因子のコーディング全長、細胞外領域のみ、および細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部を示す模式図である。発現させた蛋白質はそれぞれ、ヒト骨芽細胞分化誘導因子全長:配列番号1のアミノ酸番号1〜283、ヒト骨芽細胞分化誘導因子細胞外領域:配列番号1のアミノ酸番号1〜94、ヒト骨芽細胞分化誘導因子細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部:配列番号1のアミノ酸番号1〜117、マウス骨芽細胞分化誘導因子全長:配列番号5のアミノ酸番号1〜280、マウス骨芽細胞分化誘導因子細胞外領域:配列番号5のアミノ酸番号1〜89、マウス骨芽細胞分化誘導因子細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部:配列番号5のアミノ酸番号1〜112にあたる。ここで、細胞内領域の一部と記載した部分は、ヒト・マウスのいずれも4アミノ酸残基であり、データベースUniProtKB/Swiss-Prot上では、膜貫通領域に含まれている。
なお、ヒト骨芽細胞分化誘導因子全長を発現するMC3T3-E1細胞は、実施例2で樹立したものを、本実施例で使用した。
【0075】
(1)前骨芽細胞株 MC3T3-E1 の培養
実施例2(1)の記載に従い培養した。
(2)ヒト骨芽細胞分化誘導因子の部分蛋白質発現細胞株の樹立
実施例2(2)で作製したヒト骨芽細胞分化誘導因子蛋白質(全長)発現プラスミドを鋳型として部分蛋白質をコードするDNA断片をPCR法にて増幅した。使用したプライマーは、ヒト骨芽細胞分化誘導因子の細胞外領域:5'GGATCCATGGTTTCGGCGGCAGCCCCCAGCCTC3'(配列19)、5'GGATCCGTACTGGCGGAAGAAGTCCACTATC3'(配列20)、ヒト骨芽細胞分化誘導因子の細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部:5'GGATCCATGGTTTCGGCGGCAGCCCCCAGCCTC3'(配列19)、5'GGATCCGATGACCGCGGCACAGACGATG3'(配列21)である。得られたDNA断片を用いて、実施例2(2)〜(4)の方法に従い、ヒト骨芽細胞分化誘導因子の細胞外領域を発現する細胞株、および、ヒト骨芽細胞分化誘導因子の細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部を発現する細胞株を樹立した。
【0076】
(3)マウス骨芽細胞分化誘導因子の全長および部分蛋白質発現細胞株の樹立
実施例2(2)の方法に従い、マウスの12.5日胎児から調製したトータルRNAを逆転写して得たcDNAを鋳型としてPCRを行い、マウス骨芽細胞分化誘導因子の全長蛋白質、ならびに2種類の部分蛋白質(細胞外領域のみ、細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部)をコードするDNA断片を増幅した。トータルRNAは、TRIzol試薬(Invitrogen, USA, 15596-018)を用い、プロトコールに従って作製した。使用したプライマーは、マウス骨芽細胞分化誘導因子全長:5'GGTACCATGGTCCCCTGGTTCCTCCTGTCTC3'(配列22)、5'GGATCCGACACTGGGGGAGACTCTGTTGCAG3'(配列23)、マウス骨芽細胞分化誘導因子細胞外領域:5'GGATCCATGGTCCCCTGGTTCCTCCTGTCTC3'(配列24)、5'GGATCCGTACTGCCGGAAGAAATCCATGATC3'(配列25)、マウス骨芽細胞分化誘導因子細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部:5'GGATCCATGGTCCCCTGGTTCCTCCTGTCTC3'(配列24)、5'GGATCCGATGAGGGCGGCGCAGACTATGAAC3'(配列26)である。得られたDNA断片を用いて、実施例2(2)〜(4)の方法に従い、マウス骨芽細胞分化誘導因子の全長を発現する細胞株、マウス骨芽細胞分化誘導因子の細胞外領域を発現する細胞株、および、マウス骨芽細胞分化誘導因子の細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部を発現する細胞株を樹立した。
【0077】
(4)マウス骨芽細胞分化誘導因子の部分蛋白質による前骨芽細胞株の分化誘導
上記(3)で樹立したマウス骨芽細胞分化誘導因子の全長又は部分蛋白質を発現する3種類の細胞株、およびコントロール細胞株(実施例4参照)を分化メディウムで培養し、アルカリフォスファターゼ活性およびカルシウム沈着量の測定を行った。具体的には、12穴プレートに、細胞を3×104/well播種し、実施例2(1)の維持メディウムで2日間培養、コンフルエントな状態から分化メディウム(維持メディウムに、10 mM β-glycerol phosphate (Sigma-Aldrich, USA,50020 ) および 50 g/ml. L-ascorbic acid (Sigma-Aldrich, USA, A9659)を加えたもの)での培養をスタートした。
【0078】
アルカリフォスファターゼ活性の測定には、LabAssayTMALP キット(Wako, Japan, 291-58601)を用いた。分化メディウムでの培養1.5日目(分化開始1.5日)、3日目(分化開始3日)及び6.5日目(分化開始6.5日)の各細胞を1×PBSでの洗浄後、ALP溶解液に交換し、セルスクレイパーにて細胞を回収。この細胞溶解液をソニケーション・遠心、上清をLabAssayTMALP キットによるALP活性測定に用いた。ALP活性は、上記キットの添付マニュアルに従いタンパク質重量当たりの活性として算出した。即ち、pH9.8、37℃の条件下で1分間に生成されるパラニトロフェノールのモル数を蛋白質量で除した値を酵素活性とした。
【0079】
沈着カルシウムの定量には、カルシウムC-テストワコー(Wako, Japan, 272-21801)を用いた。分化メディウムでの培養28日目(分化開始28日)・42日目(分化開始42日)の細胞を1×PBSでの洗浄後、0.6規定HCl溶液に交換してセルスクレイパーにて細胞を回収。回収細胞を0.6規定HCl溶液内で室温24時間ロッキングした。遠心後、上清をカルシウムC-テストワコーによるカルシウムの定量に用いた。カルシウム沈着量は、上記キットの添付マニュアルに従いウェル当たりの重量として算出した。
【0080】
(5)ヒト骨芽細胞分化誘導因子の部分蛋白質による前骨芽細胞株の分化誘導
上記(2)で樹立したヒト骨芽細胞分化誘導因子の部分蛋白質を発現する2種類の細胞株、実施例2で樹立したヒト骨芽細胞分化誘導因子の全長を発現する細胞株およびコントロール細胞株(実施例4参照)を分化メディウムで培養し、カルシウム沈着量の測定を行った。具体的には、12穴プレートに、細胞を3×104/well播種し、実施例2(1)の維持メディウムで2日間培養、コンフルエントな状態から分化メディウム(維持メディウムに、10 mM β-glycerol phosphate (Sigma-Aldrich, USA,50020 ) および 50 g/ml. L-ascorbic acid (Sigma-Aldrich, USA, A9659)を加えたもの)での培養をスタートした。
【0081】
沈着カルシウムの定量には、カルシウムC-テストワコー(Wako, Japan, 272-21801)を用いた。分化メディウムでの培養33日目(分化開始33日)の細胞を1×PBSでの洗浄後、0.6規定HCl溶液に交換してセルスクレイパーにて細胞を回収。回収細胞を0.6規定HCl溶液内で室温24時間ロッキングした。遠心後、上清をカルシウムC-テストワコーによるカルシウムの定量に用いた。カルシウム沈着量は、上記キットの添付マニュアルに従いウェル当たりの重量として算出した。
【0082】
(5)結果
結果を図7〜9に示した。なお、図7〜9においては、全長発現細胞株を「全長」、コントロール細胞株を「コントロール」、細胞外領域のみからなる部分蛋白質を発現する細胞株を「細胞外領域」、細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部からなる部分蛋白質を発現する細胞株を「細胞外+膜貫通領域」と表示した。
【0083】
図7は、マウス骨芽細胞分化誘導因子の全長又は部分蛋白質を発現する細胞株におけるアルカリフォスファターゼ活性を示すグラフである。図7から明らかなように、細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部からなる部分蛋白質を発現する細胞株は、いずれの分化誘導時間においてもコントロール細胞株より高く、全長発現細胞株と同等のアルカリフォスファターゼ活性を示した。また、細胞外領域のみからなる部分蛋白質を発現する細胞株は、全長発現細胞株より顕著に高いアルカリフォスファターゼ活性を示した。
【0084】
図8は、マウス骨芽細胞分化誘導因子の全長又は部分蛋白質を発現する細胞株におけるカルシウム沈着量を示すグラフである。図8から明らかなように、細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部からなる部分蛋白質を発現する細胞株は、いずれの分化誘導時間においてもコントロール細胞株より高く、全長発現細胞株と同等以上のカルシウム沈着量を示した。また、細胞外領域のみからなる部分蛋白質を発現する細胞株は、全長発現細胞株より顕著に高いカルシウム沈着量を示した。
【0085】
図9は、ヒト骨芽細胞分化誘導因子の全長又は部分蛋白質を発現する細胞株におけるカルシウム沈着量を示すグラフである。図8から明らかなように、細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部からなる部分蛋白質を発現する細胞株は、分化誘導33日目においてコントロール細胞株および全長発現細胞株より高いカルシウム沈着量を示した。また、細胞外領域のみからなる部分蛋白質を発現する細胞株は、全長発現細胞株より顕著に高いカルシウム沈着量を示した。
【0086】
以上の結果から、細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部からなる部分蛋白質は、骨芽細胞の分化促進効果を有することが示され、細胞外領域のみからなる部分蛋白質は、非常に強い骨芽細胞の分化促進効果を有することが示された。すなわち、骨芽細胞分化誘導因子の生理活性である骨芽細胞分化促進効果(アルカリフォスファターゼ活性誘導、カルシウム沈着亢進など)が、その部分蛋白質によっても得られることが明らかになった。部分蛋白質としては、細胞外領域のみの場合、又は細胞外領域と膜貫通領域を含む場合のいずれでも促進効果が得られており、その効果は全長蛋白質によるものよりも顕著であった。さらに、細胞外領域のみの場合に促進効果は最も強く見られた。これらの結果は、骨芽細胞誘導因子が細胞間相互作用の観点からは、リガンドとして活性を持つことを示唆するものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】骨芽細胞分化誘導因子蛋白質のアミノ酸配列を脊椎動物間で比較した図である。
【図2】ヒト骨芽細胞分化誘導因子のマウス前骨芽細胞内での局在を示す写真である。
【図3】(A)は、マウス骨芽細胞分化誘導因子のマウス発生段階における発現様式を示す写真である。(B)は、マウス骨芽細胞分化誘導因子の発現を、他のマウス分化マーカーの発現と比較した写真である。
【図4】ヒト骨芽細胞分化誘導因子を安定発現したマウス前骨芽細胞のアルカリフォスファターゼ染色及びアリザリンレッド染色の結果を示す写真である。
【図5】ヒト骨芽細胞分化誘導因子を安定発現したマウス前骨芽細胞のアルカリフォスファターゼ活性及びカルシウム沈着量を示すグラフである。
【図6】マウス(ヒト)骨芽細胞分化誘導因子のコーディング全長、細胞外領域のみ、及び細胞外領域+膜貫通領域+細胞内領域の一部を示す模式図である。
【図7】マウス骨芽細胞分化誘導因子の全長又は部分蛋白質を発現する細胞株におけるアルカリフォスファターゼ活性を示すグラフである。
【図8】マウス骨芽細胞分化誘導因子の全長又は部分蛋白質を発現する細胞株におけるカルシウム沈着量を示すグラフである。
【図9】ヒト骨芽細胞分化誘導因子の全長又は部分蛋白質を発現する細胞株におけるカルシウム沈着量を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)又は(2)のタンパク質を含む医薬。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
【請求項2】
(2)のタンパク質が、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、又は配列番号13のアミノ酸配列からなるものである請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
医薬が、骨形成促進剤である請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項4】
医薬が、骨粗鬆症、骨量の減少を伴う骨系統疾患、又は骨折の治療剤である請求項1又は2に記載の医薬。
【請求項5】
以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドを含む医薬。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【請求項6】
(4)のポリヌクレオチドが、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、又は配列番号14の塩基配列からなるものである請求項5に記載の医薬。
【請求項7】
医薬が、骨形成促進剤である請求項5又は6に記載の医薬。
【請求項8】
医薬が、骨粗鬆症、骨量の減少を伴う骨系統疾患、又は骨折の治療剤である請求項5又は6に記載の医薬。
【請求項9】
以下の(1)若しくは(2)のタンパク質、又は(5)若しくは(6)の部分タンパク質に対する抗体を含む医薬。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
【請求項10】
(2)のタンパク質が、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、又は配列番号13のアミノ酸配列からなるものであり、
(6)の部分タンパク質が、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である請求項9に記載の医薬。
【請求項11】
医薬が、骨形成抑制剤である請求項9又は10に記載の医薬。
【請求項12】
医薬が、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の治療剤である請求項9又は10に記載の医薬。
【請求項13】
以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドの15〜30塩基と相補的な塩基配列を含み、全長30塩基以下のsiRNAを含む医薬。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【請求項14】
(4)のポリヌクレオチドが、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、又は配列番号14の塩基酸配列からなるものである請求項13に記載の医薬。
【請求項15】
医薬が、骨形成抑制剤である請求項13又は14に記載の医薬。
【請求項16】
医薬が、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の治療剤である請求項13又は14に記載の医薬。
【請求項17】
試験細胞と被験物質とを混合する工程と、被験物質と混合した試験細胞と被験物質と混合していない試験細胞との間で、以下の(1)又は(2)のタンパク質の発現量を比較し、このタンパク質の発現量を増大させる被験物質を選択する工程とを含む、骨形成促進剤、骨粗鬆症治療剤、骨量の減少を伴う骨系統疾患の治療剤、又は骨折治療剤のスクリーニング方法。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
【請求項18】
試験細胞と被験物質とを混合する工程と、被験物質と混合した試験細胞と被験物質と混合していない試験細胞との間で、以下の(1)又は(2)のタンパク質の発現量を比較し、このタンパク質の発現量を減少させる被験物質を選択する工程とを含む、骨形成抑制剤、異所性骨化の治療剤、異所性石灰化の治療剤、又は、異所性骨化若しくは異所性石灰化に起因する疾病の治療剤のスクリーニング方法。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
【請求項19】
以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドを含むベクターが導入された骨芽細胞に分化する試験細胞と被験物質とを混合する工程と、被験物質と混合した試験細胞と被験物質と混合していない試験細胞との間で骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、試験細胞の骨芽細胞分化又は成熟を促進する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成促進剤、骨粗鬆症治療剤、骨量の減少を伴う骨系統疾患の治療剤、又は骨折治療剤のスクリーニング方法。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【請求項20】
以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドを含むベクターが導入された骨芽細胞に分化する試験細胞と被験物質とを混合する工程と、被験物質と混合した試験細胞と被験物質と混合していない試験細胞との間で骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、試験細胞の骨芽細胞分化又は成熟を抑制する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成抑制剤、異所性骨化の治療剤、異所性石灰化の治療剤、又は、異所性骨化若しくは異所性石灰化に起因する疾病の治療剤のスクリーニング方法。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【請求項21】
被験物質の存在下又は非存在下で、以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドを含むベクターが導入された試験細胞と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を促進する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成促進剤、骨粗鬆症治療剤、骨量の減少を伴う骨系統疾患の治療剤、又は骨折の治療剤のスクリーニング方法。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【請求項22】
被験物質の存在下又は非存在下で、以下の(3)又は(4)のポリヌクレオチドを含むベクターが導入された試験細胞と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を抑制する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成抑制剤、異所性骨化の治療剤、異所性石灰化の治療剤、又は、異所性骨化若しくは異所性石灰化に起因する疾病の治療剤のスクリーニング方法。
(3) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチド
(4) 配列番号2の塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド
【請求項23】
被験物質の存在下又は非存在下で、以下の(1)又は(2)のタンパク質と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を促進する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成促進剤、骨粗鬆症治療剤、骨量の減少を伴う骨系統疾患の治療剤、又は骨折の治療剤のスクリーニング方法。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
【請求項24】
被験物質の存在下又は非存在下で、以下の(1)又は(2)のタンパク質と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を抑制する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成抑制剤、異所性骨化の治療剤、異所性石灰化の治療剤、又は、異所性骨化若しくは異所性石灰化に起因する疾病の治療剤のスクリーニング方法。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
【請求項25】
以下の(5)又は(6)の部分タンパク質を含む医薬。
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
【請求項26】
(6)のタンパク質が、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である請求項25に記載の医薬。
【請求項27】
医薬が、骨形成促進剤である請求項25又は26に記載の医薬。
【請求項28】
医薬が、骨粗鬆症、骨量の減少を伴う骨系統疾患、又は骨折の治療剤である請求項25又は26に記載の医薬。
【請求項29】
以下の(5)又は(6’)の部分タンパク質を含む医薬。
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6’) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟を抑制する活性を有する部分タンパク質
【請求項30】
(6’)のタンパク質が、
(6’-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6’-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6’-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6’-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6’-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6’-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である請求項29に記載の医薬。
【請求項31】
医薬が、骨形成抑制剤である請求項29又は30に記載の医薬。
【請求項32】
医薬が、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の治療剤である請求項29又は30に記載の医薬。
【請求項33】
以下の(7)又は(8)のポリヌクレオチドを含む医薬。
(7) 配列番号2の塩基番号76〜282を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下の部分タンパク質をコードする、配列番号2の部分配列からなるポリヌクレオチド
(8) 前記(7)に記載の配列番号2の部分配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質をコードするポリヌクレオチド
【請求項34】
(8)のポリヌクレオチドが、
(8-1) 配列番号4の塩基番号76〜282を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下の部分タンパク質をコードする、配列番号4の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8-2) 配列番号6の塩基番号55〜267を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下の部分タンパク質をコードする、配列番号6の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8-3) 配列番号8の塩基番号46〜267を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下の部分タンパク質をコードする、配列番号8の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8-4) 配列番号10の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号10の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8-5) 配列番号12の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号12の部分配列からなるポリヌクレオチド、又は
(8-6) 配列番号14の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号4の部分配列からなるポリヌクレオチド
である請求項33に記載の医薬。
【請求項35】
医薬が、骨形成促進剤である請求項33又は34に記載の医薬。
【請求項36】
医薬が、骨粗鬆症、骨量の減少を伴う骨系統疾患、又は骨折の治療剤である請求項33又は34に記載の医薬。
【請求項37】
以下の(7)又は(8’)のポリヌクレオチドを含む医薬。
(7) 配列番号2の塩基番号76〜282を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下の部分タンパク質をコードする、配列番号2の部分配列からなるポリヌクレオチド
(8’) 前記(7)に記載の配列番号2の部分配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟を抑制する活性を有する部分タンパク質をコードするポリヌクレオチド
【請求項38】
(8’)のポリヌクレオチドが、
(8’-1) 配列番号4の塩基番号76〜282を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下の部分タンパク質をコードする、配列番号4の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8’-2) 配列番号6の塩基番号55〜267を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下の部分タンパク質をコードする、配列番号6の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8’-3) 配列番号8の塩基番号46〜267を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下の部分タンパク質をコードする、配列番号8の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8’-4) 配列番号10の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号10の部分配列からなるポリヌクレオチド、
(8’-5) 配列番号12の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号12の部分配列からなるポリヌクレオチド、又は
(8’-6) 配列番号14の塩基番号79〜279を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下の部分タンパク質をコードする、配列番号4の部分配列からなるポリヌクレオチド
である請求項37に記載の医薬。
【請求項39】
医薬が、骨形成抑制剤である請求項37又は38に記載の医薬。
【請求項40】
医薬が、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の治療剤である請求項37又は38に記載の医薬。
【請求項41】
被験物質の存在下又は非存在下で、以下の(5)又は(6)の部分タンパク質と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を促進する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成促進剤、骨粗鬆症治療剤、骨量の減少を伴う骨系統疾患の治療剤、又は骨折の治療剤のスクリーニング方法。
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
【請求項42】
(6)のタンパク質が、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である請求項41に記載の方法。
【請求項43】
被験物質の存在下又は非存在下で、以下の(5)又は(6)の部分タンパク質と骨芽細胞に分化する細胞とを混合する工程と、被験物質が存在する場合と存在しない場合とで、骨芽細胞に分化する細胞における骨芽細胞分化又は成熟の程度を比較し、骨芽細胞分化又は成熟を抑制する被験物質を選択する工程とを含む、骨形成抑制剤、異所性骨化の治療剤、異所性石灰化の治療剤、又は、異所性骨化若しくは異所性石灰化に起因する疾病の治療剤のスクリーニング方法。
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
【請求項44】
(6)のタンパク質が、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である請求項43に記載の方法。
【請求項45】
以下の(1)若しくは(2)のタンパク質、又は(5)若しくは(6)の部分タンパク質と特異的に結合する抗体を含む診断薬。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
【請求項46】
(2)のタンパク質が、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、又は配列番号13のアミノ酸配列からなるものであり、
(6)のタンパク質が、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である請求項45に記載の診断薬。
【請求項47】
異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の診断に用いられる請求項45又は46に記載の診断薬。
【請求項48】
以下の(1)若しくは(2)のタンパク質、又は(5)若しくは(6)の部分タンパク質と被験物質とを接触させる工程と、前記タンパク質又は前記部分タンパク質と特異的に結合する被験物質を選択する工程とを含む、異所性骨化、異所性石灰化、又はこれらに起因する疾病の診断薬のスクリーニング方法。
(1) 配列番号1のアミノ酸配列からなるタンパク質
(2) 配列番号1において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有するタンパク質
(5) 配列番号1のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号1の部分配列からなる部分タンパク質
(6) 前記(5)に記載の配列番号1の部分配列において、1又は数個のアミノ酸が付加、欠失、又は置換されたアミノ酸配列からなり、かつ骨芽細胞分化誘導又は成熟促進活性を有する部分タンパク質
【請求項49】
(2)のタンパク質が、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、又は配列番号13のアミノ酸配列からなるものであり、
(6)のタンパク質が、
(6-1) 配列番号3のアミノ酸番号26〜94を少なくとも含み、アミノ酸数が117以下である、配列番号3の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-2) 配列番号5のアミノ酸番号19〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号5の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-3) 配列番号7のアミノ酸番号16〜89を少なくとも含み、アミノ酸数が112以下である、配列番号7の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-4) 配列番号9のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号9の部分配列からなる部分タンパク質、
(6-5) 配列番号11のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号11の部分配列からなる部分タンパク質、又は
(6-6) 配列番号13のアミノ酸番号27〜93を少なくとも含み、アミノ酸数が116以下である、配列番号13の部分配列からなる部分タンパク質
である請求項48に記載の方法。

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−79033(P2009−79033A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133591(P2008−133591)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(390000745)財団法人大阪バイオサイエンス研究所 (32)
【Fターム(参考)】