説明

骨領域特定方法、骨領域特定プログラム、及び骨領域特定装置

【課題】測定者の操作に依存しないような客観的な測定データを容易に得ること。
【解決手段】このX線画像検査装置1は、画像データに対して少なくとも1回の平滑化処理を施して平滑化画像データを得る平滑化部5と、平滑化画像データを第1の閾値で二値化処理した第1の二値化データを得る第1の二値化部7と、平滑化画像データを第1の閾値とは異なる第2の閾値で二値化処理した第2の二値化データを得る第2の二値化部9と、2つの指股部の位置を、第1の二値化データから特定する外形抽出部11と、2つの骨股部の位置を、第2の二値化データから特定する骨部抽出部13と、2つの指股部の位置と、2つの骨股部の位置とにより囲まれる特定領域を設定する軸出し処理部15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像データを対象に骨領域を特定する骨領域特定方法、骨領域特定プログラム、及び骨領域特定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、X線画像を用いて第2中手骨の中点の骨塩量測定を行うMD法が広く用いられている。これは、手の甲を対象に標準物質と共にX線撮影を行い、第2中手骨の中点を通る横断パターン濃度を標準物質の濃度と比較して標準物質の厚みに変換した後、骨密度に関する指標を計算する方法である。また、下記特許文献1には、計測値の再現性を向上させるために被検骨の骨管の方向を定量的に計測する骨計測装置が開示されている。この骨計測装置によれば、放射線撮影により得られた影像を対象に、外部入力デバイスを通じて第2中手骨中央の骨管部中央付近に基準点が手動指定され、その基準点を通過する補助線が自動生成される。そして、その基準点上部に補助線を基準にして観測領域が設定され、その観測領域内の投影プロファイルの対称度が最も大きくなるように補助線の角度が自動調整される。さらに、この調整された補助線を基に、外部入力デバイスを通じて第2中手骨の骨底部および骨頭部が手動計測される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−151609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の骨計測装置では、第2中手骨中央の基準点が測定者によって手動で指定され、その基準点に基づいて測定対象範囲が設定されているため、測定操作が煩雑になるとともに、客観的な測定データを得ることが困難である。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、測定者の操作に依存しないような客観的な測定データを容易に得ることが可能な骨領域特定方法、骨領域特定プログラム、及び骨領域特定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の骨領域特定方法は、放射線画像を基に得られた画像データを用いて中手骨を含む領域を特定する骨領域特定方法であって、画像データに対して少なくとも1回の平滑化処理を施して、少なくとも1つの平滑化画像データを得る平滑化工程と、平滑化画像データを第1の閾値で二値化処理した第1の二値化データを得る第1の二値化工程と、平滑化画像データを第1の閾値とは異なる第2の閾値で二値化処理した第2の二値化データを得る第2の二値化工程と、第1の指と第2の指との間にある第1の指股部の位置、及び第1の指と第3の指との間にある第2の指股部の位置を、第1の二値化データから特定する外形抽出工程と、第1の中手骨底と第2の中手骨底との間にある第1の骨股部の位置、及び第1の中手骨底と第3の中手骨底との間にある第2の骨股部の位置を、第2の二値化データから特定する骨部抽出工程と、第1の指股部及び第2の指股部の位置と、第1の骨股部及び第2の骨股部の位置とにより囲まれる特定領域を設定する領域設定工程と、を備える。
【0007】
或いは、本発明の骨領域特定プログラムは、放射線画像を基に得られた画像データを用いて中手骨を含む領域を特定する骨領域特定プログラムであって、コンピュータを、画像データに対して少なくとも1回の平滑化処理を施して、少なくとも1つの平滑化画像データを得る平滑化手段、平滑化画像データを第1の閾値で二値化処理した第1の二値化データを得る第1の二値化手段、平滑化画像データを第1の閾値とは異なる第2の閾値で二値化処理した第2の二値化データを得る第2の二値化手段、第1の指と第2の指との間にある第1の指股部の位置、及び第1の指と第3の指との間にある第2の指股部の位置を、第1の二値化データから特定する外形抽出手段、第1の中手骨底と第2の中手骨底との間にある第1の骨股部の位置、及び第1の中手骨底と第3の中手骨底との間にある第2の骨股部の位置を、第2の二値化データから特定する骨部抽出手段、及び第1の指股部及び第2の指股部の位置と、第1の骨股部及び第2の骨股部の位置とにより囲まれる特定領域を設定する領域設定手段、として機能させる。
【0008】
或いは、本発明の骨領域特定装置は、放射線画像を基に得られた画像データを用いて中手骨を含む領域を特定する骨領域特定装置であって、画像データに対して少なくとも1回の平滑化処理を施して、少なくとも1つの平滑化画像データを得る平滑化手段と、平滑化画像データを第1の閾値で二値化処理した第1の二値化データを得る第1の二値化手段と、平滑化画像データを第1の閾値とは異なる第2の閾値で二値化処理した第2の二値化データを得る第2の二値化手段と、第1の指と第2の指との間にある第1の指股部の位置、及び第1の指と第3の指との間にある第2の指股部の位置を、第1の二値化データから特定する外形抽出手段と、第1の中手骨底と第2の中手骨底との間にある第1の骨股部の位置、及び第1の中手骨底と第3の中手骨底との間にある第2の骨股部の位置を、第2の二値化データから特定する骨部抽出手段と、第1の指股部及び第2の指股部の位置と、第1の骨股部及び第2の骨股部の位置とにより囲まれる特定領域を設定する領域設定手段と、を備える。
【0009】
このような骨領域特定方法、骨領域特定プログラム、或いは骨領域特定装置によれば、画像データを平滑化した平滑化画像データが異なる2つの閾値を用いて二値化されることによって第1及び第2の二値化データが生成され、第1の二値化データを基に第1及び第2の指股部の位置が特定され、第2の二値化データを基に第1及び第2の骨股部の位置が特定され、特定された4つの位置により囲まれる特定領域が設定される。これにより、第1の指の中手骨を含む領域が安定して自動的に設定され、その領域を基にして骨塩量測定等の放射線画像を対象にした各種検査に関する測定データが得られる。その結果、客観的な測定データを煩雑な操作を要することなく簡易に取得することができる。
【0010】
平滑化工程では、画像データに対して1回の平滑化処理をした第1平滑化画像データと、第1平滑化画像データに対してさらに1回の平滑化処理をした第2平滑化画像データとを得て、第1の二値化工程では、第1平滑化画像データを二値化処理することにより第1の二値化データを得て、第2の二値化工程では、第2平滑化画像データを二値化処理することにより第2の二値化データを得る、ことが好適である。こうすれば、皮膚の輪郭から指股部の位置が確実に検出されると共に、骨の輪郭から骨股部の位置が確実に検出されるので、第1の指の中手骨を含む領域がより安定して設定される。
【0011】
また、平滑化工程では、画像データに対して1回の平滑化処理をした第3平滑化画像データと、画像データに対して2回の平滑化処理をした第4平滑化画像データとを得て、第1の二値化工程では、第3平滑化画像データを二値化処理することにより第1の二値化データを得て、第2の二値化工程では、第4平滑化画像データを二値化処理することにより第2の二値化データを得る、ことも好適である。この場合、皮膚の輪郭から指股部の位置が確実に検出されると共に、骨の輪郭から骨股部の位置が確実に検出されるので、第1の指の中手骨を含む領域がより安定して設定される。
【0012】
さらに、平滑化工程では、画像データに対して2回の平滑化処理をした第5平滑化画像データを得て、第1の二値化工程では、第5平滑化画像データを二値化処理することにより第1の二値化データを得て、第2の二値化工程では、第5平滑化画像データを二値化処理することにより第2の二値化データを得る、ことも好適である。こうすれば、1つの平滑化画像データを基に指股部の位置及び骨股部の位置が検出されるので、処理が単純化されて演算量が削減される。
【0013】
またさらに、外形抽出工程は、第1の二値化データを対象にして、固定領域において同一値の画素群の所定座標軸方向に最も突出する画素位置を特定する工程と、第1の二値化データを対象にして、画素位置から画素群の境界の位置を追跡する工程と、境界の位置の中から、所定座標軸方向に対して逆方向の極大値となる位置を追跡順に2つ抽出し、当該抽出した2つの位置を第1の指股部と第2の指股部の位置として決定する工程と、を含むことも好適である。かかる構成を採れば、第1の二値化データを基にして中指の先端位置が特定され、その先端位置から指の輪郭が追跡され、その追跡結果から第1及び第2の指股部の位置が決定されるので、安定した指股部の検出が可能にされる。
【0014】
さらにまた、骨部抽出工程は、第2の二値化データにおける周縁画素の画素値を全て第1の値に設定する工程と、第2の二値化データが有する画素値が第2の値である画素のうち、周縁画素の隅部に最も近い始点画素を特定し、該画素に隣接する終点画素の画素値を第2の値に設定する工程と、第2の二値化データを対象にして、第2の値を有する画素群の境界を始点画素から終点画素まで追跡する工程と、追跡の結果より所定座標軸方向で極大値となる位置を抽出する工程と、当該抽出された位置のうち追跡の順番を基に選び出された2つを第1の骨股部及び第2の骨股部の位置として決定する工程と、を含むことも好適である。この場合、第2の二値化データ中の手骨を含む画素群の端部に始点画素及び終点画素が設定され、それらの画素を用いて画素群の輪郭が追跡され、その追跡結果から第1及び第2の骨股部の位置が決定されるので、安定した骨股部の検出が可能にされる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、測定者の操作に依存しないような客観的な測定データを容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係るX線画像検査装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】(a)は図1の平滑化部によって生成された第1平滑化画像データのイメージを示す図、(b)は図1の平滑化部によって生成された第2平滑化画像データのイメージを示す図である。
【図3】図2(a)に示した第1平滑化画像データを対象に生成された第1の二値化データのイメージを示す図である。
【図4】図2(b)に示した第2平滑化画像データを対象に生成された第2の二値化データのイメージを示す図である。
【図5】図1のX線画像検査装置によって実行される骨塩量測定処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】図1の外形抽出部によって実行される外形抽出処理の詳細手順を示すフローチャートである。
【図7】図1の外形抽出部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図8】図1の外形抽出部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図9】図1の骨部抽出部によって実行される骨部抽出処理の詳細手順を示すフローチャートである。
【図10】図1の骨部抽出部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図11】図1の骨部抽出部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図12】図1の軸出し処理部によって実行される軸出し処理の詳細手順を示すフローチャートである。
【図13】図1の軸出し処理部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図14】図1の軸出し処理部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図15】図1の軸出し処理部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図16】図1の軸出し処理部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図17】図1の軸出し処理部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図18】図1の軸出し処理部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図19】図1の中手骨位置推定部によって実行される中手骨位置推定処理の詳細手順を示すフローチャートである。
【図20】中手骨位置推定処理で用いられるフィルタのカーネルの一例を示す図である。
【図21】図1の中手骨位置推定部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図22】図1の中手骨位置推定部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図23】図1の中手骨位置推定部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図24】図1の中手骨位置推定部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図25】図1の中手骨位置推定部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図26】図1の中手骨位置推定部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図27】図1の中手骨位置推定部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図28】図1の中手骨位置推定部の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【図29】記録媒体に記録されたプログラムを実行するためのコンピュータのハードウェア構成を示す図である。
【図30】記録媒体に記憶されたプログラムを実行するためのコンピュータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る骨領域特定方法および骨領域特定装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る骨領域特定装置であるX線画像検査装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。同図に示すX線画像検査装置1は、X線透過画像を基に得られた画像データを取得し、その画像データを参照して骨塩量を測定するための情報処理装置である。この画像データは、厚さが一方向に変化するように形成されたアルミニウム製の標準物質と検査対象者の手とを同時にX線撮影したX線透過画像をビットマップ形式やJPEG形式等のデジタルデータに変換したものである。画像データは、通信ネットワークやCD−ROM、DVD、半導体メモリ等の記録媒体を介してX線画像検査装置1に入力される。ここで、画像データは、X線透過画像が写されたX線フィルムをデジタルカメラで撮影したり、専用の読取装置(図示せず)を用いて、X線透過画像が記録されたイメージングプレートにレーザ照射をして輝尽性蛍光像を得ることによって生成される。
【0019】
このX線画像検査装置1は、図1に示すように、機能的構成要素として、シェーディング補正部3、平滑化部(平滑化手段)5、第1の二値化部(第1の二値化手段)7、第2の二値化部(第2の二値化手段)9、外形抽出部(外形抽出手段)11、骨部抽出部(骨部抽出手段)13、軸出し処理部(領域設定手段)15、中手骨位置推定部17、及び計測値計算部19を備える。以下、各構成要素の機能について説明する。
【0020】
シェーディング補正部3は、入力された画像データを対象にシェーディング補正を施し、画像データの輝度ムラを補正する。具体的には、シェーディング補正部3は、画像データに9×9メディアンフィルタを適用することにより画素データを平滑化し、平滑化した画像データのフレーム内の左右の固定領域内での平均輝度値をそれぞれ算出する。さらに、シェーディング補正部3は、算出した2つの平均輝度値間の差を用いて補正カーブを算出し、平滑化された画像データ全体を対象に、その補正カーブによって1回目のシェーディング補正を施す。そして、シェーディング補正部3は、上記のようにしてシェーディング補正された画像データ中における手と標準物質の領域を除くバックグラウンド領域を、水平ライン及び垂直ラインに沿ってサンプリングし、サンプリング値を基に水平方向及び垂直方向の補正カーブを2次の最小2乗法を用いて算出し、算出した補正カーブを用いてシェーディング補正用画像を生成する。シェーディング補正部3は、1回目のシェーディング補正が行われた画像データに対して、シェーディング補正用画像を差し引くことで2回目のシェーディング補正が施された画像データを得る。
【0021】
平滑化部5は、シェーディング補正部3からシェーディング補正後の画像データが入力され、その画像データに対して平滑化処理を施す。すなわち、平滑化部5は、画像データに9×9メディアンフィルタを適用することでノイズ除去を行った後、その画像データに対して、9×9平均値フィルタを1回適用することで1回平滑化処理が施された第1平滑化画像データを生成する。さらに、平滑化部5は、第1平滑化画像データに9×9平均値フィルタをもう1回適用することで計2回平滑化処理が施された第2平滑化画像データを生成する。図2(a)には、平滑化部5によって生成された第1平滑化画像データの例、図2(b)には、平滑化部5によって生成された第2平滑化画像データの例を示している。このように、2つの平滑化画像データには、そのフレームに沿った座標軸X,Yによって決まる座標毎に画素値が設定されており、フレームの中央においてY軸方向に沿って配置された標準物質の像Sと、その標準物質を挟んで指先を−Y軸方向に向けるように配置された左右の手の像H,Hが表されている。また、2つの平滑化画像データを比較して分かるように、第1平滑化画像データでは左右の手の像H,Hの皮膚の部分とバックグラウンド画像との境界が明瞭に現れている。これに対して、第2平滑化画像データでは左右の手の像H,Hの皮膚の部分とバックグラウンド画像との境界がさらなる平滑化処理によりぼやけ、左右の手の像H,Hの手骨と皮膚の部分との境界がより明瞭に現れている。これは、平滑化部5による平滑化処理の回数によって画像データの解像度の低下する度合いが変化するためである。したがって、左右の手の像H,Hの皮膚の部分とバックグラウンド画像との境界から指と指との間の指股部の位置を特定する場合、少なくとも1回の平滑化処理を施した平滑化画像データを基にし、また、左右の手の像H,Hの手骨と皮膚の部分との境界から中手骨底と中手骨底との間の骨股部の位置を特定する場合、少なくとも2回の平滑化処理を施した平滑化画像データを基にしたほうがよい。この場合、指股部の位置や骨股部の位置を正確に特定できる。
【0022】
第1の二値化部7は、平滑化部5から出力された第1平滑化画像データを対象に、予め設定された第1の閾値VTH1を用いて、各座標の画素値を第1の閾値VTH1との比較結果に応じて二値化データ(第1の二値化データ)に置き換えることによって二値化する。このような第1の閾値VTH1としては、画像データにおける左右の手の像H,Hの皮膚部分をバックグラウンド画像から浮き彫りにできるような適切な値が予め選択されて設定されている。図3には、図2(a)に示した第1平滑化画像データを対象に生成された第1の二値化データの例を示している。この場合は、バックグラウンド画像の領域Aを画素値“0”、左右の手の像の領域AHL1,AHR1を画素値“1“に置き換えている。
【0023】
第2の二値化部9は、平滑化部5から出力された第2平滑化画像データを対象に、予め設定された第1の閾値VTH1とは異なる第2の閾値VTH2を用いて、各座標の画素値を第2の閾値VTH2との比較結果に応じて二値化データ(第2の二値化データ)に置き換えることによって二値化する。このような第2の閾値VTH2としては、画像データにおける左右の手の像H,Hの手骨部分を皮膚部分から浮き彫りにできるような適切な値が予め選択されて設定されている。例えば、バックグラウンド領域、皮膚部分、及び手骨部分の順で画素値が大きくなるネガ画像を対象とする場合には、第2の閾値VTH2は第1の閾値VTH1より大きい値に設定される。逆に、バックグラウンド領域、皮膚部分、及び手骨部分の順で画素値が小さくなるポジ画像を対象とする場合には、第2の閾値VTH2は第1の閾値VTH1より小さい値に設定される。図4には、図2(b)に示した第2平滑化画像データを対象に生成された第2の二値化データの例を示している。この場合は、バックグラウンド画像及び左右の手の手骨を除く領域Aを画素値“0”、左右の手の手骨部分の領域AHL2,AHR2を画素値“1”に置き換えている。
【0024】
外形抽出部11は、第1の二値化部7から出力された第1の二値化データを対象にして、左手の第2指(人差し指)と左手の第3指(中指)との間にある第1の指股部の位置PF1と、左手の第2指(人差し指)と左手の第1指(親指)との間にある第2の指股部の位置PF2とを特定する。また、骨部抽出部13は、第2の二値化部9から出力された第2の二値化データを対象にして、左手の第2中手骨底と左手の第3中手骨底との間にある第1の骨股部の位置PF3と、左手の第2中手骨底と左手の第1中手骨底との間にある第2の骨股部の位置PF4とを特定する。
【0025】
軸出し処理部15は、外形抽出部11によって特定された2点の位置PF1,PF2と、骨部抽出部13によって特定された2点の位置PF3,PF4とで囲まれる領域を設定する。さらに、軸出し処理部15は、シェーディング補正部3によってシェーディング補正された画像データ中の設定した領域を対象にして、左手の第2中手骨の軸出しを行う。
【0026】
中手骨位置推定部17は、軸出し処理部15によって軸出しされた軸を基準にして、シェーディング補正部3によってシェーディング補正された画像データを参照して、第2中手骨のトップ位置とボトム位置を推定する。この第2中手骨のトップ位置とは、第2中手骨の先端(骨頭部)の位置を意味し、第2中手骨のボトム位置とは、第2中手骨の基端(骨底部)の位置を意味する。
【0027】
計測値計算部19は、中手骨位置推定部17によって推定されたトップ位置とボトム位置との間の中間点が決定され、その中間点を中心にした矩形の解析領域を設定する。さらに、計測値計算部19は、シェーディング補正部3によってシェーディング補正された画像データ中から、解析領域の骨長手方向と交差する投影プロファイルを数本(30〜40本)読み出す。そして、計測値計算部19は、投影プロファイル中の両端のエッジ点間の画素値のバックグラウンドからのオフセット分Gを検出し、この検出値Gの積分値ΣGをエッジ点間距離Dで除算した後、この値ΣG/Dをさらに標準物質であるアルミニウムの厚さに換算して骨塩量評価に用いる骨密度パラメータとして算出する。計測値計算部19は、算出した値ΣG/Dをディスプレイやプリンタ等の外部出力デバイスや外部データに出力する。
【0028】
次に、本実施形態のX線画像検査装置1によって実行される骨塩量測定方法を説明するとともに、本実施形態の骨領域特定方法について詳細に説明する。
【0029】
図5は、X線画像検査装置1によって実行される骨塩量測定処理の手順を示すフローチャートである。まず、X線画像検査装置1に外部から画像データが入力されると、シェーディング補正部3によって画像データにシェーディング補正が施される(ステップS01)。シェーディング補正された画像データは、平滑化部5によって平滑化処理が施されて、第1平滑化画像データ及び第2平滑化画像データが生成される(ステップS02)。その後、第1の二値化部7によって第1平滑化画像データが二値化されることによって、第1の二値化データが生成される(ステップS03)。さらに、第2の二値化部9によって第2平滑化画像データが二値化されることによって、第2の二値化データが生成される(ステップS04)。
【0030】
次に、外形抽出部11によって、第1の二値化データを対象にして外形抽出処理が実行されることにより、第1及び第2の指股部の位置PF1,PF2が特定される(ステップS05)。さらに、骨部抽出部13によって、第2の二値化データを対象にして骨部抽出処理が実行されることにより、第1及び第2の骨股部の位置PF3,PF4が特定される(ステップS06)。その後、軸出し処理部15によって、シェーディング補正された画像データ中に、4点の位置PF1,PF2,PF3,PF4で囲まれた領域が設定され、その領域を対象にして第2中手骨の軸を計算する軸出し処理が実行される(ステップS07)。
【0031】
そして、中手骨位置推定部17によって、軸出しされた軸を基準にしてシェーディング補正された画像データが参照されることによって、第2中手骨のトップ位置及びボトム位置が推定される(ステップS08、中手骨位置推定処理)。その後、計測値計算部19によって、シェーディング補正された画像データ中にトップ位置とボトム位置の中間点を基準にした解析領域が設定され、その解析領域の画素値を読み出すことによって、骨密度パラメータが算出される(ステップS09)。最後に、計測値計算部19によって算出された骨密度パラメータが外部に出力される(ステップS10)。
【0032】
また、図6は、外形抽出部11によって実行される外形抽出処理の詳細手順を示すフローチャート、図7〜8は、外形抽出部11の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【0033】
この外形抽出処理においては、まず、第1の二値化データにおいて左上(以下、+X軸方向を右方向、+Y軸方向を下方向とする。)の矩形状の固定領域Aが設定され(ステップS101)、その固定領域Aにおいて、画素値が“1”となる最も上方の画素位置の座標が、第3指(中指)の先端位置Pとして探索される(ステップS102、図7)。すなわち、この位置Pは、同一の画素値“1”の画素群である領域AHL1の−Y軸方向に最も突出する画素位置として探索される。
【0034】
次に、第1の二値化データにおける左手像の領域AHL1の境界の画素位置が、第3指の先端位置Pから時計回りに追跡され、追跡された位置が追跡された順番のインデックス情報と共に一時記憶される(ステップS103、図8)。その後、追跡された境界位置の中から、Y軸方向の極大値となる位置が追跡順に抽出され、抽出された位置のうち最も若番のものが第1の指股部の位置PF1として決定される(ステップS104)。さらに、抽出された位置のうち2番目に若番のものが第2の指股部の位置PF2として決定される(ステップS105)。
【0035】
また、図9は、骨部抽出部13によって実行される骨部抽出処理の詳細手順を示すフローチャート、図10〜11は、骨部抽出部13の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【0036】
この骨部抽出処理においては、まず、第2の二値化データにおけるフレームに沿った周縁画素が全て画素値“0”に設定される(ステップS201)。次に、第2の二値化データ中で最も左下に位置する画素値“1”の座標が、始点画素の位置Pとして特定される。この位置Pは、画素値“1”の画素のうち、フレームの左下隅部に位置する周縁画素に最も近い位置を探索することにより特定される。さらに、その始点画素の下方に隣接する画素の座標が終点画素の位置Pとして特定され、その終点画素の画素値が“1”に設定される(ステップS202、図10)。これらの位置P,Pは、手骨部分の領域AHL2の境界追跡処理時の始点及び終点として利用される。
【0037】
次に、第2の二値化データにおける画素値“1”を有する左手手骨像の領域AHL2の境界の画素位置が、始点画素の位置Pから時計回りに終点画素の位置Pまで追跡され、第5中手骨、第4中手骨、第3中手骨、第2中手骨、及び第1中手骨の順番で追跡された境界線の位置が、追跡された順番のインデックス情報と共に一時記憶される(ステップS203、図11(a))。その後、追跡された境界位置が、Y軸方向の座標値で平滑化される(図11(b))。この平滑化は、移動平均により実行され、その窓サイズは固定値である。
【0038】
さらに、平滑化された境界線の位置の中から、Y軸方向で極大値となる4点の位置が抽出される(ステップS204)。次に、抽出された位置のうち追跡の順番で3番目のものが選び出されて、第1の骨股部の位置PF3として決定されるとともに、追跡の順番で4番目のものが選び出されて、第2の骨股部の位置PF4として決定される(ステップS205)。ここで、ステップS205で骨股部の位置決定に失敗した場合には、図5のステップS04の処理に戻って、第2の閾値VTH2を変更して再度第2の二値化処理を繰り返す。この場合、第2の閾値VTH2が所定の変更幅で変更され、所定の上限回数まで二値化データを生成しても骨股部の位置決定に失敗した場合には、エラー処理として処理が中断される。
【0039】
また、図12は、軸出し処理部15によって実行される軸出し処理の詳細手順を示すフローチャート、図13〜18は、軸出し処理部15の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【0040】
この軸出し処理では、まず、シェーディング補正された画像データに対して、9×9メディアンフィルタが適用されることで平滑化処理が施される(ステップS301)。次に、この画像データに対して固定の閾値を用いた7×7の動的二値化処理が実行される(ステップS302、図13(a))。次に、動的二値化された画像データに5×5メディアンフィルタが3回適用されることで、その画像データに平滑化処理が施される(ステップS303、図13(b))。
【0041】
さらに、平滑化された画像データ中に、外部抽出処理(図5のステップS05)及び骨部抽出処理(ステップS06)で特定された4点の位置PF1,PF2,PF3,PF4が設定される(ステップS304、図14)。そして、2点の位置PF2,PF4の間、及び2点の位置PF1,PF3の間をそれぞれ一定比(固定比)で分割した位置が算出された後、算出された2つの位置からその2つの位置を結ぶ線に沿ってフレーム内側へ向かって画素が参照され、画素値“0”から“1”に変化する位置P,Pが追跡開始点として探索される(ステップS305、図14)。このときの画素の探索方向はX軸に対して斜めに傾いている。そこで、追跡開始点が4連結の境界探索の始点として適用できるように、最初に探索された位置からX軸に沿って外側に向かって画素値が“1”から“0”に変化する位置を再度探索し、その位置を追跡開始点として決定することが好ましい。
【0042】
その後、平滑化された画像データ中の第2中手骨の左右のエッジ部分の画像AE1,AE2の境界線が、それぞれ、追跡開始点から追跡される(ステップS306、図15)。このとき、左エッジの画像AE1は時計回りに追跡され、右エッジの画像AE2は反時計回りに追跡される。さらに、追跡された左エッジの境界線の点列が追跡順の末尾から追跡順に対して逆順に再追跡され、Y座標が極小となるトップ位置の点Pから追跡開始点までの点列Lが特定される(図16(a))。加えて、追跡された左エッジの境界線の点列が追跡順の先頭から追跡され、Y座標が極大となるボトム位置の点Pが探索された後、境界線の点列の末尾から逆順に再追跡され、末尾からボトム位置の点Pまでの点列Lが特定される(図16(b))。そして、特定された点列L,Lが結合された後に上下端の一画素ずつの画素データが削除されることによって、第2中手骨の左エッジ部分の外側のラインが抽出される。同様に、追跡する方向を逆回転として、第2中手骨の右エッジ部分の外側のラインが抽出される。
【0043】
次に、抽出された左右のエッジ部分のラインL,Lが整形される(ステップS307)。すなわち、両ラインL,Lが、互いにY軸方向に共通の長さとなるように切り詰めるために、Y軸方向の共通範囲Wを残して上下端の部分L,Lが削除される(図17(a))。さらに、両ラインL,Lを構成する点列を対象にして、同一のY座標の点のうち最も外側の点だけ残して残余の点は削除するように整形処理される(図17(b))。
【0044】
さらに、整形された左右のエッジ部分のラインL,Lを基にして、第2中手骨の軸出しが行われる(ステップS308、図18)。詳細には、エッジ部分のラインL,L間の中点が各Y座標で算出され、それらの中点で構成される点列が構成される。その後、その点列データを基に1次のカーブフィッティングによって係数a,bが算出され、その点列を近似する一次関数y=ax+bが導出される。なお、画像データの座標系はY軸の下方がY座標の増加する方向となっているので、傾き(係数a)が無限となることを防ぐためにX軸とY軸を転置して係数a,bの計算が行われる。
【0045】
また、図19は、中手骨位置推定部17によって実行される中手骨位置推定処理の詳細手順を示すフローチャート、図20は、中手骨位置推定処理で用いられるフィルタのフィルタリング係数の行列であるカーネルの一例を示す図、図21〜28は、中手骨位置推定部17の処理対象の画像データのイメージを示す図である。
【0046】
この中手骨位置推定処理では、まず、シェーディング補正された画像データに対して、9×5エッジ強調フィルタが適用されることで画像データの上側エッジが強調される(ステップS401、図21)。図20には、このとき使用される9×5エッジ強調フィルタのフィルタリング係数の行列であるカーネルの一例を示している。さらに、シェーディング補正された画像データに対して、9×5エッジ強調フィルタが適用されることで画像データの下側エッジが強調される(ステップS401、図22)。このとき、9×5エッジ強調フィルタのカーネルとしては、図20に示すカーネル中の各係数の符号を反転させたものが使用される。
【0047】
次に、エッジ強調処理された2つの画像データに対して、適切な閾値(固定値)によって9×9の動的二値化処理が施される(ステップS402)。そして、動的二値化処理が施された2つの画像データ中において、ステップS307で検出された共通範囲W内の画素値が“0”に置き換えられることにより、画像データ中の共通範囲Wがクリアされる(ステップS403)。さらに、動的二値化された2つの画像データに対して、3×3メディアンフィルタが適用されることによって平滑化処理が施される(ステップS404、図23(a),(b))。ここでは、上側エッジ強調された二値化画像データ(トップ位置検出用画像データ)に対しては1回メディアンフィルタが適用され、下側エッジ強調された二値化画像データ(ボトム位置検出用画像データ)に対しては2回メディアンフィルタが適用される。
【0048】
その後、平滑化されたトップ位置検出用画像データを対象にして、第2中手骨のトップ位置が探索される(ステップS405)。具体的には、共通範囲W1の中間の線L上に探索開始点が設定され、軸出し処理で軸出しされた軸Lの左側に固定画素数の窓範囲Wが設定される(図24)。次に、窓範囲Wを軸Lに沿って上方に画素が探索され、画素値が“1”から“0”に変化する位置が探索される。このとき、共通範囲Wの上半分に共通範囲Wと同じ幅を有する範囲Wを加えた範囲Wが探索範囲とされ、探索範囲の端に到達した場合には、探索された画素がその後の処理から除外される。画素値が“1”から“0”に変化する位置は、その位置のリストを示す射影リストARに記憶され、記憶された射影リストARが参照されて水平方向の連結画素数が算出される(図25)。この場合、Y座標値の差が一定値以下でX軸方向に隣り合う画素値“1”の画素の連続数が連結画素数として算出される。
【0049】
次に、算出された連結画素数のうちで連結数の大きな連結画素が軸Lから左側方向に探索され、最初に見つかった連結画素ARが選択される。そして、その連結画素AR中に軸L上の画素があれば、その位置Pが第2中手骨のトップ位置として決定される。一方、連結画素AR中に軸L上の画素が無く、かつ、Y座標値が同値の画素が一定個数以下の場合は、最も軸Lに近い画素と同じY座標値を持つ軸L上の位置Pが、第2中手骨のトップ位置として決定される(図26)。この場合は、連結画素のサンプル点数がカーブフィッティング処理のためには不十分であるからである。さらに、連結画素AR中に軸L上の画素が無く、かつ、Y座標値が同値の画素が一定個数を超えている場合は、連結画素の集合が2次式でカーブフィッティングされ、算出された近似曲線C1と軸Lとの交点の位置P10が、第2中手骨のトップ位置として決定される(図27)。
【0050】
また、上記手順とほぼ同様にして、平滑化されたボトム位置検出用画像データを対象にして、第2中手骨のボトム位置が探索される(ステップS406)。具体的には、共通範囲W1の中間の線L上に探索開始点が設定され、軸出し処理で軸出しされた軸Lの左側に固定画素数の窓範囲Wが設定される(図28)。次に、窓範囲Wを軸Lに沿って下方に画素が探索され、画素値が“1”から“0”に変化する位置が探索される。このとき、共通範囲Wの下半分に共通範囲Wと同じ幅を有する範囲Wを加えた範囲Wが探索範囲とされ、探索範囲の端に到達した場合には、探索された画素がその後の処理から除外される。画素値が“1”から“0”に変化する位置は、その位置のリストを示す射影リストARに記憶され、記憶された射影リストARが参照されて水平方向の連結画素数が算出される。
【0051】
次に、算出された連結画素数のうちで連結数の大きな連結画素が軸Lから左側方向に探索され、最初に見つかった連結画素が選択される。そして、その連結画素AR中に軸L上の画素があれば、その位置Pが第2中手骨のボトム位置として決定される。一方、連結画素AR中に軸L上の画素が無い場合には、連結画素の集合が1次式でカーブフィッティングされ、算出された近似直線と軸Lとの交点の位置P11が、第2中手骨のボトム位置として決定される。このとき、算出された1次式の係数が正の場合には、射影リストのX座標の先頭側と末尾側を入れ替えて1次式のカーブフィッティングが再実行される。これにより、1次式の係数が負とされる。
【0052】
以下、コンピュータをX線画像検査装置1として動作させる骨領域特定プログラムについて説明する。
【0053】
本発明の実施形態に係る骨領域特定プログラムは、記録媒体に格納されて提供される。記録媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD、あるいはROM等の記録媒体、あるいは半導体メモリ等が例示される。
【0054】
図29は、記録媒体に記録されたプログラムを実行するためのコンピュータのハードウェア構成を示す図であり、図30は、記録媒体に記憶されたプログラムを実行するためのコンピュータの斜視図である。コンピュータとして、CPUを具備しソフトウエアによる処理や制御を行なうサーバ装置、パーソナルコンピュータ等の各種データ処理装置を含む。
【0055】
図29に示すように、コンピュータ30は、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ装置、CD−ROMドライブ装置、DVDドライブ装置等の読取装置12と、オペレーティングシステムを常駐させた作業用メモリ(RAM)14と、記録媒体10に記憶されたプログラムを記憶するメモリ16と、ディスプレイといった表示装置18と、入力装置であるマウス20及びキーボード22と、データ等の送受を行うための通信装置24と、プログラムの実行を制御するCPU26とを備えている。コンピュータ30は、記録媒体10が読取装置12に挿入されると、読取装置12から記録媒体10に格納された骨領域特定プログラムにアクセス可能になり、当該骨領域特定プログラムによって、本実施形態のX線画像検査装置1として動作することが可能になる。
【0056】
図30に示すように、骨領域特定プログラムは、搬送波に重畳されたコンピュータデータ信号41としてネットワークを介して提供されるものであってもよい。この場合、コンピュータ30は、通信装置24によって受信した骨領域特定プログラムをメモリ16に格納し、当該骨領域特定プログラムを実行することができる。
【0057】
以上説明したX線画像検査装置1及びこれを用いた骨領域特定方法によれば、第2中手骨を含む領域が安定して自動的に設定され、その領域を基にして骨塩量測定等の放射線画像を対象にした各種検査に関する測定データが得られる。その結果、客観的な測定データを基準点の手動設定等の煩雑な操作を要することなく簡易に取得することができる。特に、本実施形態では、第1平滑化画像データから生成された第1の二値化データを基に、皮膚の輪郭から2つの指股部の位置PF1,PF2が確実に検出されると共に、第2平滑化画像データから生成された第2の二値化データを基に、骨の輪郭から骨股部の位置PF3,PF4が確実に検出されるので、第2中手骨を含む領域がより安定して設定される。
【0058】
また、外形抽出部11による外形抽出処理によれば、第1の二値化データを基にして中指の先端位置が特定され、その先端位置から指の輪郭が追跡され、その追跡結果から2つの指股部の位置が決定されるので、安定した指股部の検出が可能にされる。
【0059】
さらに、骨部抽出部13による骨部抽出処理により、第2の二値化データ中の手骨を含む画素群の端部に始点画素及び終点画素が設定され、それらの画素を用いて画素群の輪郭が追跡され、その追跡結果から2つの骨股部の位置が決定されるので、安定した骨股部の検出が可能にされる。
【0060】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。すなわち、上記実施形態の平滑化処理(図5のステップS02)においては、第1及び第2平滑化画素データを直列に処理して生成する代わりに、画像データに対して1回平滑化処理を施した第3平滑化画像データ(第1平滑化画像データにあたる平滑化画像データ)を生成し、それと並列に画像データに対して2回平滑化処理を施した第4平滑化画像データ(第2平滑化画像データにあたる平滑化画像データ)を生成してもよい。この場合は、第1二値化処理(ステップS03)では、第3平滑化画像データが二値化され、第2二値化処理(ステップS04)では、第4平滑化画像データが二値化される。このようにしても、少なくとも2回の平滑化処理を施した平滑化画像データを基にして骨部抽出を行うので、第1の骨股部および第2の骨股部の正確な特定ができ、第2中手骨を含む領域が安定して設定される。
【0061】
さらに、上記実施形態の平滑化処理(図5のステップS02)においては、第1及び第2平滑化画素データを直列に処理して生成する代わりに、画像データに対して2回平滑化処理を施した第5平滑化画像データ(第2平滑化画像データならびに第4平滑化画像データにあたる平滑化画像データ)のみを生成してもよい。この場合は、第1二値化処理(ステップS03)では、第5平滑化画像データが二値化され、第2二値化処理(ステップS04)でも、第5平滑化画像データが二値化される。このようにすれば、1つの平滑化画像データを基に指股部の位置及び骨股部の位置が検出されるので、処理が単純化されて演算量が削減される。また、少なくとも2回の平滑化処理を施した平滑化画像データを基にして骨部抽出を行うので、第1の骨股部および第2の骨股部の正確な特定ができ、第2中手骨を含む領域が安定して設定される。
【0062】
また、本実施形態のX線画像検査装置1及びこれを用いた骨領域特定方法では、第2中手骨を含む領域が自動検出されているが、この領域に限らず、第3中手骨(第3指の中手骨)や第4中手骨(第4指の中手骨)等の他の領域を自動検出してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1…X線画像検査装置、5…平滑化部(平滑化手段)、7…第1の二値化部(第1の二値化手段)、9…第2の二値化部(第2の二値化手段)、11…外形抽出部(外形抽出手段)、13…骨部抽出部(骨部抽出部)、15…軸出し処理部(領域設定手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線画像を基に得られた画像データを用いて中手骨を含む領域を特定する骨領域特定方法であって、
平滑化手段が、前記画像データに対して少なくとも1回の平滑化処理を施して、少なくとも1つの平滑化画像データを得る平滑化工程と、
第1の二値化手段が、前記平滑化画像データを第1の閾値で二値化処理した第1の二値化データを得る第1の二値化工程と、
第2の二値化手段が、前記平滑化画像データを前記第1の閾値とは異なる第2の閾値で二値化処理した第2の二値化データを得る第2の二値化工程と、
外形抽出手段が、第1の指と第2の指との間にある第1の指股部の位置、及び第1の指と第3の指との間にある第2の指股部の位置を、前記第1の二値化データから特定する外形抽出工程と、
骨部抽出手段が、第1の中手骨底と第2の中手骨底との間にある第1の骨股部の位置、及び第1の中手骨底と第3の中手骨底との間にある第2の骨股部の位置を、前記第2の二値化データから特定する骨部抽出工程と、
領域設定手段が、前記第1の指股部及び前記第2の指股部の位置と、前記第1の骨股部及び前記第2の骨股部の位置とにより囲まれる特定領域を設定する領域設定工程と、
を備えることを特徴とする骨領域特定方法。
【請求項2】
前記平滑化工程では、前記画像データに対して1回の平滑化処理をした第1平滑化画像データと、前記第1平滑化画像データに対してさらに1回の平滑化処理をした第2平滑化画像データとを得て、
前記第1の二値化工程では、前記第1平滑化画像データを二値化処理することにより前記第1の二値化データを得て、
前記第2の二値化工程では、前記第2平滑化画像データを二値化処理することにより前記第2の二値化データを得る、
ことを特徴とする請求項1記載の骨領域特定方法。
【請求項3】
前記平滑化工程では、前記画像データに対して1回の平滑化処理をした第3平滑化画像データと、前記画像データに対して2回の平滑化処理をした第4平滑化画像データとを得て、
前記第1の二値化工程では、前記第3平滑化画像データを二値化処理することにより前記第1の二値化データを得て、
前記第2の二値化工程では、前記第4平滑化画像データを二値化処理することにより前記第2の二値化データを得る、
ことを特徴とする請求項1記載の骨領域特定方法。
【請求項4】
前記平滑化工程では、前記画像データに対して2回の平滑化処理をした第5平滑化画像データを得て、
前記第1の二値化工程では、前記第5平滑化画像データを二値化処理することにより前記第1の二値化データを得て、
前記第2の二値化工程では、前記第5平滑化画像データを二値化処理することにより前記第2の二値化データを得る、
ことを特徴とする請求項1記載の骨領域特定方法。
【請求項5】
前記外形抽出工程は、
前記第1の二値化データを対象にして、固定領域において同一値の画素群の所定座標軸方向に最も突出する画素位置を特定する工程と、
前記第1の二値化データを対象にして、前記画素位置から前記画素群の境界の位置を追跡する工程と、
前記境界の位置の中から、前記所定座標軸方向に対して逆方向の極大値となる位置を前記追跡順に2つ抽出し、当該抽出した2つの位置を前記第1の指股部と前記第2の指股部の位置として決定する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の骨領域特定方法。
【請求項6】
前記骨部抽出工程は、
前記第2の二値化データにおける周縁画素の画素値を全て第1の値に設定する工程と、
前記第2の二値化データが有する画素値が第2の値である画素のうち、前記周縁画素の隅部に最も近い始点画素を特定し、該画素に隣接する終点画素の画素値を第2の値に設定する工程と、
前記第2の二値化データを対象にして、前記第2の値を有する画素群の境界を前記始点画素から前記終点画素まで追跡する工程と、
前記追跡の結果より所定座標軸方向で極大値となる位置を抽出する工程と、
当該抽出された位置のうち前記追跡の順番を基に選び出された2つを前記第1の骨股部及び前記第2の骨股部の位置として決定する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の骨領域特定方法。
【請求項7】
放射線画像を基に得られた画像データを用いて中手骨を含む領域を特定する骨領域特定プログラムであって、
コンピュータを、
前記画像データに対して少なくとも1回の平滑化処理を施して、少なくとも1つの平滑化画像データを得る平滑化手段、
前記平滑化画像データを第1の閾値で二値化処理した第1の二値化データを得る第1の二値化手段、
前記平滑化画像データを前記第1の閾値とは異なる第2の閾値で二値化処理した第2の二値化データを得る第2の二値化手段、
第1の指と第2の指との間にある第1の指股部の位置、及び第1の指と第3の指との間にある第2の指股部の位置を、前記第1の二値化データから特定する外形抽出手段、
第1の中手骨底と第2の中手骨底との間にある第1の骨股部の位置、及び第1の中手骨底と第3の中手骨底との間にある第2の骨股部の位置を、前記第2の二値化データから特定する骨部抽出手段、及び
前記第1の指股部及び前記第2の指股部の位置と、前記第1の骨股部及び前記第2の骨股部の位置とにより囲まれる特定領域を設定する領域設定手段、
として機能させることを特徴とする骨領域特定プログラム。
【請求項8】
放射線画像を基に得られた画像データを用いて中手骨を含む領域を特定する骨領域特定装置であって、
前記画像データに対して少なくとも1回の平滑化処理を施して、少なくとも1つの平滑化画像データを得る平滑化手段と、
前記平滑化画像データを第1の閾値で二値化処理した第1の二値化データを得る第1の二値化手段と、
前記平滑化画像データを前記第1の閾値とは異なる第2の閾値で二値化処理した第2の二値化データを得る第2の二値化手段と、
第1の指と第2の指との間にある第1の指股部の位置、及び第1の指と第3の指との間にある第2の指股部の位置を、前記第1の二値化データから特定する外形抽出手段と、
第1の中手骨底と第2の中手骨底との間にある第1の骨股部の位置、及び第1の中手骨底と第3の中手骨底との間にある第2の骨股部の位置を、前記第2の二値化データから特定する骨部抽出手段と、
前記第1の指股部及び前記第2の指股部の位置と、前記第1の骨股部及び前記第2の骨股部の位置とにより囲まれる特定領域を設定する領域設定手段と、
を備えることを特徴とする骨領域特定装置。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−232061(P2012−232061A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104327(P2011−104327)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】