説明

高い初期強度を有する2成分形ポリウレタン組成物

本発明は2成分形ポリウレタン組成物に関する。この2成分形ポリウレタン組成物においては、第1成分Aが、少なくとも1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つのポリオールから調製される少なくとも1つのイソシアネート末端基含有ポリウレタンプレポリマーA1を含み、かつ、第2成分Bが、水と、脂肪族の第1級アミノ基を有する少なくとも1つのポリアミンPAおよび式(I)または(II)による少なくとも1つのアルデヒドALDから調製し得る少なくとも1つのポリアルジミンB1とを含む。この組成物は、長い加工時間および高い初期強度を有し、急速に硬化し、それにも拘らず気泡の形成がなく、かつ、特に、硬化の前においても又硬化中および硬化後においても臭気が全くないかあるいは僅かしかない、という点で優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長い加工時間、高い初期強度、急速かつ無発泡の硬化、良好な接着性、および硬化時の低臭気発生という特性を備え、ペースト状の接着剤、シーリング材、被覆材として適した2成分のポリウレタン組成物であって、イソシアネート基を有する第1成分Aと、水および少なくとも1つのポリアルジミン(polyaldimine)を含む第2成分Bとからなる2成分形ポリウレタン組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン組成物は、特に、種々の接着、シーリングおよび被覆用として用いられる。この組成物は、接着接合部の弾性が要求される接着またはシーリングに特に適している。弾性接着用のポリウレタン組成物は、通常ペースト状の物質であり、1成分形(1成分系)または2成分形(2成分系)として用いられる。
【0003】
実際に有用な接着剤は、いくつかの特殊な性質を具備していなければならない。接着剤は、一方では、使用者が、接着剤を所要の場所に塗布し、次いで被接着部品を取り付けてこれを正しく位置決めするための十分な時間を持ち得るように、十分に長い加工時間(ポットライフおよびオープンタイム)を保証しなければならない。他方では、接着剤の強度は急速に形成されるべきである。それは、例えば、被接着構造部品を他の場所に搬送しなければならない、あるいは、生起し得る固着を避けねばならない等の理由によって、塗布後短時間に、接着接合に機械的負荷をかけてもよい状況が、ある用途の場合には必要だからである。このような接着接合への早期の負荷を可能にするためには、接着剤が高い初期強度を有していなければならない。すなわち、接着接合が、完全に硬化してしまう前に、ある程度まで負荷可能にならなければならない。これは、接着剤が急速な強度形成と共に被接着構造部品への良好な接着効果をも同様に急速に発現することを要求する。この場合にのみ接着接合への負荷が可能になるからである。接着剤は、引き続いて、急速にかつ気泡を形成することなく、最終硬度まで硬化しなければならない。その結果、可能な限り速やかに、弾性接着接合に完全に負荷がかけられ得るようになる。さらに、実際に有用な接着剤は、強い臭気源または悪臭源になってはならない。特に、閉鎖空間の内部、例えば建物または自動車の内部における接着用途の場合は、強すぎる臭気発生があると、製作済みの物品の使用が合理的な時間内では難しくなるか場合によっては不可能になるので、せいぜいでも、使用される材料の少ない方の臭気が許容されるだけである。
【0004】
1成分形のポリウレタン接着剤は、一般的に、接着接合の高い初期強度を前提とする用途には適していない。空気中の水分を用いた硬化過程によって制限をうけるので、1成分接着剤の硬化、従って強度形成は遅くなりすぎるのである。これは、硬化反応に必要な水分が、硬化した材料の層―この層はますます厚くなる―を通り抜けて外から拡散してこなければならないからである。さらに、速く硬化する1成分形ポリウレタン接着剤は、硬化中に気泡の形成を伴う傾向がよくある。これは、接着接合に負荷をかけられる可能性を著しく阻害する。
【0005】
本質的に短い硬化時間は、2成分形ポリウレタン接着剤によって実現される。しかし、この場合は、両成分の混合後にまず第1に比較的長い加工時間を有するが、同時に高い初期強度をも形成しかつ急速に硬化するような組成物を見出すことに難しさがある。急速な硬化は、イソシアネート含有成分をポリアミン含有成分で硬化させることによって達成することができる。しかし、この反応は、通常速過ぎるので、手操作による加工時間では実現が難しい。ポリアミンのイソシアネート基との高い反応性を幾分でも抑えるためには、さまざまな手掛かりがある。例として、例えば芳香族アミノ基および/または立体障害化されたアミノ基および/または第2級アミノ基を有する特殊なアミンを使用することができる。しかし、このような特殊なアミンには欠点がある。例えば、芳香族アミンは毒物学的に危惧すべき点があり、立体障害化されたアミンまたは第2級アミノ基を有するアミンは一般的に高価であり、部分的に機械的性質が低下した生成物をもたらし、しかもなお、特に反応性の芳香族イソシアネート基と組み合わせた場合に反応性が強すぎる。
【0006】
反応減速化のもう1つ別の可能性は、硬化成分中のポリアミンへのポリアルジミン(polyaldimine)の添加である。これは、(特許文献1)または(特許文献2)に開示されているような方法である。
【0007】
(特許文献3)は、硬化成分としてジアルジミンを用いることによるさらに別の反応減速化を記載している。
【0008】
最後に、(特許文献4)には、ポリイソシアネートおよびビスアルジミンを含み、かつ、水によって硬化されるポリウレタンが説明されている。
【0009】
これらすべての特許文献において主としてアルデヒドが使用されるが、アルデヒドは各系を塗布する際に強い臭気の原因になる。
【0010】
長い加工時間、高い初期強度、急速かつ無発泡の硬化、良好な接着性、および硬化時の低臭気発生という特性を備えたポリウレタン組成物で、イソシアネート基を有する第1成分Aと、水および少なくとも1つのポリアルジミンを含む第2成分Bとからなる2成分形ポリウレタン組成物は、これまでに知られていない。
【特許文献1】米国特許第4,108,842号明細書
【特許文献2】米国特許第4,895,883号明細書
【特許文献3】米国特許第3,932,357号明細書
【特許文献4】米国特許第3,420,800号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、長い加工時間、高い初期強度、急速かつ無発泡の硬化、良好な接着性、および硬化時の低臭気発生という特性を備えた2成分形ポリウレタン組成物を自由に使用し得るように提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
意外なことに、これが、次のような2成分形ポリウレタン組成物によって達成されることが判明した。すなわち、第1成分Aが、少なくとも1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つのポリオールから調製される少なくとも1つのイソシアネート末端基含有ポリウレタンプレポリマーを含み、第2成分Bが、水と、脂肪族の第1級アミノ基を有する少なくとも1つのポリアミンおよび少なくとも1つのアルデヒドから調製し得る少なくとも1つのポリアルジミンとを含む2成分系のポリウレタン組成物である。この場合、このアルデヒドは低臭気のものとする。
【0013】
この2成分形ポリウレタン組成物によって、例えば弾性接着およびシーリング用のペースト状接着剤を形成することができる。この接着剤は、長い加工時間、高い初期強度、急速かつ無発泡の硬化、良好な接着性、および硬化時の低臭気発生という特性を備えている。
【0014】
この2成分形ポリウレタン組成物はさらに別の興味深い性質を備えている。同じ第1成分Aを用いて、第2成分Bを僅かな費用で変更するだけで、すなわち、第2成分Bのポリアルジミンの調製に用いたポリアミンをそれぞれの必要性に適合させることによって、異なる機械的性質を有する接着剤を得ることができる。この利点は、接着剤の製造者にとっては決定的な意味を有している。異なる機械的性質を有する種々の接着剤に対して第1成分Aを同一のままにすることによって、多種の第1成分Aを製造、包装する多額の費用が不要になる。第1成分Aの手操作は、水分に対する高度な鋭敏性のために、第2成分Bの場合よりも遥かに注意を要し、煩雑である。上記のポリウレタン組成物を使用すれば、硬化速度、引張強度、破断伸びおよび弾性率に関する異なったあるいは新しい要求に対して、既にある第1成分Aを、新しい要求に適合させた第2成分Bと組み合わせることによって、少ない費用で対応することができるのである。
【0015】
第2成分Bにおいて、脂肪族の第1級アミノ基を有する少なくとも1つのポリアミンと少なくとも1つの低臭気アルデヒドとから得られる特殊なポリアルジミンを用いることによって、硬化中および硬化後の臭気発生が少ないポリウレタン組成物が得られる。これによって、上記のポリウレタン組成物は、例えば建物または自動車の内部のような閉鎖空間における使用にも適している。
【0016】
第2成分Bにおいてポリアルジミンと水とを組み合わせることによって、第1成分Aとの最適の反応挙動が実現される。この方式で、長い加工時間、高い初期強度および急速かつ無発泡の硬化の点で特に優れたポリウレタン組成物が得られる。
【0017】
本発明によって、1つの共通の第1成分Aと、多様な種々の第2成分Bとから成るユニットタイプ(モジュール方式)に構成された2成分形の製品システムを構成することが、付加的に可能になる。このシステムによって、異なる長さの加工時間、異なる初期強度、異なる硬化速度、硬化時の異なる臭気発生特性、および異なる機械的性質を備えたポリウレタン組成物を簡単に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は次のような2成分形ポリウレタン組成物に関する。すなわち、少なくとも1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つのポリオールから調製される少なくとも1つのイソシアネート末端基含有ポリウレタンプレポリマーA1を含む第1成分A、並びに、水と、脂肪族の第1級アミノ基を有する少なくとも1つのポリアミンPAおよび少なくとも1つの低臭気アルデヒドALDから調製し得る少なくとも1つのポリアルジミンB1とを含む第2成分Bから成る2成分形ポリウレタン組成物である。この場合、少なくとも1つの低臭気アルデヒドALDは、次の式(I)または(II)による。
【0019】
【化1】

式中、YおよびYは、ここでは、互いに独立して、水素原子、ヒドロキシル基または有機残基を表すか、あるいは、一緒になって、原子数5〜8個、好ましくは6個の環の大きさを有する炭素環式または複素環式の1つの環を形成する。
は、少なくとも1つのへテロ原子を有する置換または非置換のアルキル基を表すか、あるいは、
少なくとも10個のC原子を有する枝分かれまたは非枝分かれのアルキル基またはアルキレン基を表すか、あるいは、
置換または非置換のアリール基またはアリールアルキル基を表すか、あるいは、
O−R、または、
【0020】
【化2】

または、
【0021】
【化3】

または、
【0022】
【化4】

[式中、Rは、それ自体、少なくとも3個のC原子を有するアリール基、アリールアルキル基またはアルキル基を表し、それぞれ、置換基または非置換基である]を表す。
は、原子数5〜8個、好ましくは6個の環の大きさを有する置換または非置換のアリール基またはヘテロアリール基を表すか、あるいは、
【0023】
【化5】

[式中、R=アルキル基、ヒドロキシル基またはアルコキシ基]を表すか、あるいは、
少なくとも6個のC原子を有する置換または非置換のアルケニル基またはアリールアルケニル基を表す。
【0024】
本明細書においては、「ポリアルジミン」、「ポリオール」、「ポリイソシアネート」および「ポリアミン」における「ポリ」という用語を、形態的に2個以上のそれぞれの官能基を有する分子を意味するものと解釈する。
【0025】
本明細書において、「ポリウレタン」という概念は、ジイソシアネート重付加法に従って製造されるすべてのポリマーを含む。これは、ポリエーテル−ポリウレタン、ポリエステル−ポリウレタン、ポリエーテル−ポリ尿素、ポリ尿素、ポリエステル−ポリ尿素、ポリイソシアヌル酸エステル、ポリカルボジイミド等のような、ウレタン基をほとんどあるいは全く含まないポリマーをも包含している。
【0026】
本明細書において、「脂肪族の第1級アミノ基を有するポリアミン」という概念は、脂肪族残基、脂環族残基またはアリール脂肪族残基に結合されたNH−基を形態的に2個以上含む化合物を常に指すものとする。従って、それは、例えばアニリンまたは2−アミノピリジンの場合のようにアミノ基が芳香族の残基に直接結合された芳香族アミンとは異なる。
【0027】
「低臭気」物質および「臭気発生が少ない」物質というのは、その臭気が低い程度にしか個々の人間によって知覚され得ないような臭いを有する物質を区別なく意味するものとする。従って、このような物質は、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、イソブチルアルデヒド、または、アセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンの如き溶剤のような強い臭気を有しておらず、この僅かな臭気はほとんどの個人にとって不快で反発を覚えるようには感じられない。
【0028】
「臭気のない」物質というのは、ほとんどの個人にとって臭いが感じられない物質、従って知覚し得る臭気を全く有しない物質を意味すると解釈する。
【0029】
本発明に関わる2成分形ポリウレタン組成物は、第1成分Aにおいて、少なくとも1つのポリイソシアネートおよび少なくとも1つのポリオールから調製される少なくとも1つのイソシアネート末端基含有ポリウレタンプレポリマーA1を含んでいる。
【0030】
この転換反応は、ポリオールおよびポリイソシアネートを、通常の方法で、例えば温度50〜100℃とし、場合によっては適切な触媒を併用して反応させることにより起させることができる。その場合、ポリイソシアネートを、そのイソシアネート基が、ポリオールのヒドロキシル基に対する比率において化学量論的過剰に存在するように添加する。ポリイソシアネートの過剰率は、結果として得られるポリウレタンプレポリマーA1において、ポリオールのヒドロキシル基が全量反応した後に、全ポリウレタンプレポリマーA1に関して、0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜5重量%の遊離イソシアネート基含有量が残留するように選択する。場合によっては、ポリウレタンプレポリマーA1を、可塑剤を併用して調製することができる。この場合、使用する可塑剤は、イソシアネートに対する反応基を有していないものとする。
【0031】
ポリウレタンプレポリマーA1調製用のポリオールとしては、例えば次のような市販されているポリオールまたはその任意の混合物を使用することができる。すなわち、
− ポリエーテルポリオールとも呼称されるポリオキシアルキレンポリオールであって、これは、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−または2,3−ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、またはこれらの混合物の重合生成物であり、場合によっては、例えば水、アンモニア、または複数のOH−基またはNH−基を有する化合物のような、2個以上の活性水素原子を有する出発分子の助けを利用して重合される。この複数のOH−基またはNH−基を有する化合物の例としては、例えば1,2−エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールの異性体類、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールおよびウンデカンジオールの異性体類、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、1,1,1,−トリメチロールエタン、1,1,1,−トリメチロールプロパン、グリセリン、アニリン、並びにこれらの化合物の混合物がある。不飽和度(ASTM D−2849−69によって測定され、ポリオール1グラム当りのミリ当量不飽和度(mEq/g)で表示される)が低いポリオキシアルキレンポリオールは、例えば、いわゆる複合金属シアン化物錯体触媒(Double Metal Cyanide Complex Catalyst:DMC触媒)を用いて調製されるが、この低不飽和度のポリオキシアルキレンポリオールと共に、例えば、NaOH、KOH、またはアルカリアルコラートのようなアニオン性触媒を用いて調製される不飽和度の高いポリオキシアルキレンポリオールも使用することができる。
【0032】
ポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオール、特にポリオキシプロピレンジオールまたはポリオキシプロピレントリオールが特に適している。
【0033】
又、0.02mEq/gより低い不飽和度と、1,000〜30,000g/molの範囲の分子量を有するポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオール、並びに、400〜8,000g/molの分子量を有するポリオキシプロピレンジオールまたはポリオキシプロピレントリオールが特別に適している。「分子量」または「モル重量」は、本明細書では常に分子量の平均値Mと解釈する。
【0034】
同様に、いわゆる「EO−エンドキャップ型」(エチレンオキシド−エンドキャップ型)のポリオキシプロピレンジオールまたはポリオキシプロピレントリオールも特に適している。後者は、例えば、ポリプロポキシ化完了後の純粋のポリオキシプロピレンポリオールを、エチレンオキシドでアルコキシ化し、それによって第1ヒドロキシル基を有するようにすることによって得られる特殊なポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールである。
− ヒドロキシル官能基を有するポリブタジエン。
− 例えば2価〜3価のアルコールと有機ジカルボン酸またはその酸無水物またはエステルとから調製されるポリエステルポリオール、並びに、例えばε−カプロラクトンのようなラクトンから作られるポリエステルポリオール。この多価アルコールの例としては、例えば、1,2−エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン、またはこれらのアルコールの混合物があり、又、有機ジカルボン酸の例としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、コルク酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびヘキサヒドロフタル酸、あるいはこれらの酸の混合物がある。
− ポリカーボネートポリオール。これは、上記の―ポリエステルポリオール生成に使用した―アルコールを、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、またはホスゲンと反応させることによって得られる、
− ポリアクリレートポリオールおよびポリメタクリレートポリオール。
【0035】
以上列挙したポリオールは、250〜30,000g/molの平均分子量、および1.6〜3個の範囲の平均OH−官能基を有している。
【0036】
ポリウレタンプレポリマーA1の調製には、上記に列挙したポリオールに加えて、低分子の2価または3価のアルコールを併用することもできる。このような低分子アルコールの例としては、例えば1,2−エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコールおよびトリプロピレングリコールの異性体類、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールおよびウンデカンジオールの異性体類、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、脂肪アルコールの二量体、1,1,1,−トリメチロールエタン、1,1,1,−トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリトリット、糖アルコールおよび他の高級アルコール、以上の2価および多価アルコールの低分子アルコキシ化生成物、並びにこれらのアルコールの混合物がある。
【0037】
ポリウレタンプレポリマーA1の調製には、市販のポリイソシアネートが用いられる。この例として、ポリウレタン化学で非常によく知られている次のポリイソシアネートを挙げておきたい。すなわち、
2,4−および2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)およびこれらの異性体の任意の混合物、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネートの位置異性体、1,3−および1,4−フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ジイソシアネートベンゼン、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2−メチルペンタメチレン−1,5−ジイソシアネート、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,12−ドデカンメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−および1,4−ジイソシアネートおよびこれらの異性体の任意の混合物、1−イソシアネート−3,3,5−トリメチル−5−イソシアネートメチル−シクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、ペルヒドロ−2,4’−および4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4−ジイソシアネート−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、m−およびp−キシレンジイソシアネート(XDI)、1,3−および1,4−テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,3−および1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、および、以上のイソシアネートのオリゴマーおよびポリマー、並びに、以上のイソシアネートの任意の混合物である。MDI、TDI、HDIおよびIPDIが特に好ましい。
【0038】
第1成分Aは、単独でも、従って第2成分Bとの接触なしでも、硬化する能力を有している。第1成分Aのイソシアネート基は例えば空気中の水分と反応するので、1成分形水分硬化型ポリウレタン組成物と同様に、そのポリマーが硬化し得る。所要の場合は、イソシアネート基と水との反応を、第1成分Aに対して僅少の触媒を添加することによって付加的に加速することができる。触媒としては、例えば、ジブチルジラウリン酸スズ、ジブチル二塩化スズ、ジブチルスズアセチルアセトナートのような有機スズ化合物、有機ビスマス化合物またはビスマス錯体、あるいは、例えば2,2’−ジモルホリノジエチルエーテルのようなアミン基含有化合物が適している。
【0039】
本発明による2成分形ポリウレタン組成物は、第2成分Bにおいて、水と、少なくとも1つのポリアルジミンB1とを含んでいる。
【0040】
このポリアルジミンB1は、脂肪族の第1級アミノ基を有する少なくとも1つのポリアミンPAおよび少なくとも1つのアルデヒドALDから、水を分離する縮合反応によって調製することができる。このような縮合反応はよく知られており、例えば、フーベン−ヴァイル(Houben−Weyl)著、「有機化学の方法(Methoden der oraganischen Chemie)」、第XI/2巻、p73以下、に説明されている。この場合、平衡反応が行われることになるが、平衡はポリアルジミン側に優勢である。すなわち、脂肪族の第1級アミノ基を有するポリアミンを、少なくとも化学量論量のアルデヒドと混合すると、反応に際して分離される水が反応混合物から除去されるか否かには関係なく、対応するポリアルジミンが自発的に形成される。
【0041】
ポリアルジミンB1を調製するための、脂肪族の第1級アミノ基を有するポリアミンPAとしては、ポリウレタン化学において周知のポリアミンで、とりわけ2成分形ポリウレタン用として使用されるポリアミンが考慮の対象になる。例として以下のものを挙げておきたい。すなわち、エチレンジアミン、1,2−および1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,2−プロパンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,3−および1,4−ブタンジアミン、1,3−および1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよびその混合物、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、メチル−ビス−(3−アミノプロピル)−アミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン(MPMD)、1,3−ジアミノペンタン(DAMP)、2,5−ジメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,2−、1,3−および1,4−ジアミノシクロヘキサンのような脂環式ポリアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、ビス(4−アミノ−3−エチルシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3、5−ジメチルシクロヘキシル)−メタン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジアミンまたはIPDA)、2−および4−メチル−1,3−ジアミノシクロヘキサンおよびその混合物、1,3−および1,4−ビス−(アミノメチル)−シクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、2,5(2,6)−ビス−(アミノメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(NBDA、三井化学によって製造されている)、3(4),8(9)−ビス−(アミノメチル)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,4−ジアミノ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン(TMCDA)、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3−および1,4−キシレンジアミン、ビス−(2−アミノエチル)エーテルのようなエーテル基含有脂肪族ポリアミン、4,7−ジオキサデカン−1,10−ジアミン、4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミンおよびその高次オリゴマー、例えば商品名ジェファミン(Jeffamine(登録商標)、フンツマン化学(Huntsman Chemicals)によって製造されている)として入手できる理論的に2個または3個のアミノ基を有するポリオキシアルキレン−ポリアミン、並びに、以上挙げたポリアミンの混合物である。
【0042】
好ましいポリアミンPAは、1,6−ヘキサメチレンジアミン、MPMD、DAMP、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、IPDA、1,3−および1,4−キシレンジアミン、1,3−および1,4−ビス−(アミノメチル)−シクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、3(4),8(9)−ビス−(アミノメチル)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,2−、1,3−および1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン、理論的に2個または3個のアミノ基を有するポリオキシアルキレン−ポリアミン、特にJeffamine(登録商標)EDR−148、Jeffamine(登録商標)D−230、Jeffamine(登録商標)D−400およびJeffamine(登録商標)T−403、並びに、特に、これらのポリアミンの2種以上の混合物である。
【0043】
本発明に関わる組成物に含まれるポリアルジミンB1は、脂肪族の第1級アミノ基を有する少なくとも1つのポリアミンPAおよび少なくとも1つのアルデヒドALDから調製することができるが、このアルデヒドは低臭気のものとする。使用するアルデヒドが低臭気のものであるという点が、本発明の1つの本質的な特徴である。
【0044】
第1の実施形態においては、次の式(I)のアルデヒドALDが用いられる。
【0045】
【化6】

式中、YおよびYは、一方では、互いに独立して、水素原子、ヒドロキシル基または有機残基を表す。
もう一方では、YおよびYは、互いに結合して、原子数5〜8個、好ましくは6個の環の大きさを有する炭素環式または複素環式の1つの環を形成することができる。
については4つの可能性がある。すなわち、
は、少なくとも1つのへテロ原子を有する置換または非置換のアルキル基、特に、エーテル酸素、カロボキシル基、エステル基、またはヒドロキシル基の形の基を表すことができる。
しかし、Yは、又、少なくとも10個のC原子を有する枝分かれまたは非枝分かれのアルキル基またはアルキレン基を表すことができる。
さらに、Yは、又、置換または非置換のアリール基またはアリールアルキル基を表すことができる。
最後に、Yは、式O−R、または、
【0046】
【化7】

または、
【0047】
【化8】

または、
【0048】
【化9】

[式中、Rは、それ自体、少なくとも3個のC原子を有するアリール基、アリールアルキル基またはアルキル基を表し、それぞれ、置換基または非置換基である]の残基をも表すことができる。
【0049】
式(I)の化合物に対する例としては、
デカナール、ドデカナール;2−ヒドロキシ−2−メチルプロパナールと、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよび2−エチルヘキサノールのようなアルコールとから得られるエーテル;2−ホルミル−2−メチルプロピオン酸と、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールおよび2−エチルヘキサノールのようなアルコールとから得られるエステル;2−ヒドロキシ−2−メチルプロパナールと、酪酸、イソ酪酸および2−エチルヘキサン酸のようなカルボン酸とから得られるエステル;例えばグリセリンアルデヒド、エリトロースまたはグルコースのようなアルドース;2−フェニルアセトアルデヒド、2−フェニルプロピオンアルデヒド(ヒドロアトロパアルデヒド);並びに、以下に特に適していると提示されるアルデヒドがある。
【0050】
一方では、次の式(III)による化合物が特に適している。
【0051】
【化10】

式中、RおよびYは、互いに独立して、水素原子またはアルキル基またはアリールアルキル基を表し、YおよびYは既に説明した意味を表す。
【0052】
式(III)の化合物に対する例として挙げるべき物質は、3−ヒドロキシピバルアルデヒド、3−ヒドロキシ−2−メチルプロピオンアルデヒド、3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド、3−ヒドロキシブチルアルデヒド、3−ヒドロキシバレルアルデヒド;ホルムアルデヒドと、2−メチルブチルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、2−メチルバレルアルデヒド、2−エチルカプロンアルデヒド、シクロペンタンカルボキシアルデヒド、シクロヘキサンカルボキシアルデヒド、1,2,3,6−テトラヒドロベンズアルデヒド、2−メチル−3−フェニルプロピオンアルデヒド、2−フェニルプロピオンアルデヒド(ヒドロアトロパアルデヒド)、ジフェニルアセトアルデヒドのようなアルデヒドとから、交差アルドール反応によって生成されるようなβ−ヒドロキシアルデヒド;並びに、このようなβ−ヒドロキシアルデヒドと、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、または例えば3−メトキシ−および3−エトキシ−および3−プロポキシ−および3−イソプロポキシ−および3−ブトキシ−並びに3−(2−エチルヘキソキシ)−2,2−ジメチルプロパノールのような脂肪アルコール、のようなアルコールとから得られるエーテル、がある。
【0053】
他方、次の式(IV)による化合物も特に適している。
【0054】
【化11】

式中、Y、YおよびRは既に説明した意味を有しており、
は、水素原子か、あるいは、アルキル基またはアリールアルキル基またはアリール基であって、場合によっては少なくとも1つのへテロ原子を有し、特に少なくとも1つのエーテル酸素を有し、又、場合によっては少なくとも1つのカルボキシル基を有し、又、場合によっては少なくとも1つのエステル基を有するアルキル基またはアリールアルキル基またはアリール基か、あるいは、一または複数の不飽和結合を有する直鎖または枝分かれした炭化水素鎖を表す。
【0055】
式(IV)の好ましいアルデヒドに対する例としては、上記に述べたβ−ヒドロキシアルデヒドをカルボン酸でエステル化して得られる生成物がある。このβ−ヒドロキシアルデヒドは、例えば、3−ヒドロキシピバルアルデヒド、3−ヒドロキシイソブチルアルデヒド、3−ヒドロキシプロピオンアルデヒド、3−ヒドロキシブチルアルデヒド、3−ヒドロキシバレルアルデヒド、2−ヒドロキシメチル−2−メチルブチルアルデヒド、2−ヒドロキシメチル−2−エチルブチルアルデヒド、2−ヒドロキシメチル−2−メチルバレルアルデヒド、2−ヒドロキシメチル−2−エチルヘキサナール、1−ヒドロキシメチルシクロペンタンカルバルデヒド、1−ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルバルデヒド、1−ヒドロキシメチルシクロヘキセン−3−カルバルデヒド、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−3−フェニルプロピオンアルデヒド、3−ヒドロキシ−2−メチル−2−フェニルプロピオンアルデヒド、および3−ヒドロキシ−2,2−ジフェニルプロピオンアルデヒド、である。又、上記のカルボン酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、2−エチルカプロン酸、および安息香酸がある。式(IV)の好ましいアルデヒドとしては、以下に特に適していると提示するアルデヒドもある。
【0056】
特に好ましい実施形態においては、式(IV)のアルデヒドALDとして、臭気がなく、かつ、その残基RおよびYが次のように限定されるアルデヒドALDが用いられる。すなわち、
が水素原子を表し、
が、11〜30個の炭素原子を有する直鎖または枝分かれしたアルキル鎖であって、場合によっては少なくとも1つのへテロ原子、特に少なくとも1つのエーテル酸素を有するアルキル鎖を表すか、あるいは、
11〜30個の炭素原子を有する、一または複数の不飽和結合を有する直鎖または枝分かれした炭化水素鎖を表すか、あるいは、
次の式(V)または(VI)の残基を表すアルデヒドALDである。
【0057】
【化12】

式(V)および(VI)においては、Rは、2〜16個の炭素原子を有する直鎖または枝分かれしたまたは環状のアルキレン鎖であって、場合によっては少なくとも1つのへテロ原子、特に少なくとも1つのエーテル酸素を有するアルキレン鎖を表すか、あるいは、2〜16個の炭素原子を有する、一または複数の不飽和結合を有する直鎖または枝分かれしたまたは環状の炭化水素鎖を表し、かつ、
は、1〜8個の炭素原子を有する、直鎖または枝分かれしたアルキル鎖を表し、かつ、
およびYは、既に説明した意味を有している。
式(V)および(VI)における破線は、それぞれ結合位置を示す。
【0058】
本発明のこの実施形態は、臭気発生が少ないポリウレタン組成物のみでなく、知覚し得る臭気が全くないポリウレタン組成物をも製造可能にする。これは、建物および自動車の内部に使用する場合に特に有利である。
【0059】
ポリウレタン組成物において知覚し得る臭気を全く発生しないような式(IV)の特に好ましい無臭気のアルデヒドの例は、上記のβ−ヒドロキシアルデヒドをカルボン酸でエステル化した生成物である。このβ−ヒドロキシアルデヒドは、例えば、3−ヒドロキシピバルアルデヒド、3−ヒドロキシイソブチルアルデヒド、3−ヒドロキシプロパナール、3−ヒドロキシブチルアルデヒド、3−ヒドロキシバレルアルデヒド、2−ヒドロキシメチル−2−メチルブチルアルデヒド、2−ヒドロキシメチル−2−エチルブチルアルデヒド、2−ヒドロキシメチル−2−メチルバレルアルデヒド、2−ヒドロキシメチル−2−エチルヘキサナール、1−ヒドロキシメチルシクロペンタンカルバルデヒド、1−ヒドロキシメチルシクロヘキサンカルバルデヒド、1−ヒドロキシメチルシクロヘキセン−3−カルバルデヒド、2−ヒドロキシメチル−2−メチル−3−フェニルプロピオンアルデヒド、3−ヒドロキシ−2−メチル−2−フェニルプロピオンアルデヒド、および3−ヒドロキシ−2,2−ジフェニルプロピオンアルデヒド、である。又、上記のカルボン酸の例としては、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、リノレン酸、エリオステアリン酸、アラキドン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、3,6,9−トリオキサウンデカン二酸およびポリエチレングリコールからの類似の誘導体、脱水素リシノール酸、並びに、例えば菜種油、ひまわり油、亜麻仁油、オリーブ油、やし油、パーム核油およびパーム油のような天然の油脂を工業的に鹸化して得られる脂肪酸、がある。
【0060】
好ましいカルボン酸は、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸、並びに、これらの酸を含む脂肪酸の混合物である。
【0061】
上記のβ−ヒドロキシアルデヒドは、3−ヒドロキシピバルアルデヒドのように、例えばホルムアルデヒド(またはパラホルムアルデヒド)およびイソブチルアルデヒドから場合によってはその場で調製することができるが、式(IV)のアルデヒドALDの1つの好ましい調製法においては、例えばこのようなβ−ヒドロキシアルデヒドの1つが、カルボン酸、特に長鎖の脂肪酸によって対応するエステルに転化される。すなわち、カルボン酸Y−COOHによって、対応する例えば3−ヒドロキシピバルアルデヒドのカルボン酸エステルに転化され、かつ/または、ジカルボン酸モノアルキルエステルHOOC−R−COORによって、式(VI)の残基Yを有する式(IV)のアルデヒドに転化され、かつ/または、ジカルボン酸HOOC−R−COOHによって、式(V)の残基Yを有する式(IV)のアルデヒド、但しこの場合はジアルデヒドに転化される。この場合、式(V)および(VI)と、Y、RおよびRとは、既に述べた意味のものである。このエステル化は、溶剤を使用することなく周知の方法で行うことができる。この方法は、例えば、フーベン−ヴァイル(Houben−Weyl)著、「有機化学の方法(Methoden der oraganischen Chemie)」、第VIII巻、p516−528に説明されている。
【0062】
ジカルボン酸を使用する場合は、例えば、最初に、カルボン酸基の一部が、例えば3−ヒドロキシピバルアルデヒドのβ−ヒドロキシアルデヒドによってエステル化され、続いて残りのカルボン酸基がアルキルアルコール(R−OH)によってエステル化されるとすれば、式(V)および式(VI)の残基Yを有する式(IV)のアルデヒドの混合物が得られる。この混合物は、ポリアルジミンB1の調製に直接使用することができる。
【0063】
β−ヒドロキシアルデヒド、例えば3−ヒドロキシピバルアルデヒドによるエステル化に適するカルボン酸は、例として既に列挙した短鎖および長鎖のカルボン酸である。
【0064】
別の実施形態においては、次の式(II)のアルデヒドALDを使用する。
【0065】
【化13】

式中、Yは、一方では、原子数5〜8個、好ましくは6個の環の大きさを有する置換または非置換のアリール基またはヘテロアリール基を表すことができる。
他方、Yは、式
【0066】
【化14】

[式中、Rは、それ自体、アルキル基、ヒドロキシル基またはアルコキシ基を示す]の残基を表すことができる。
最後に、Yは、少なくとも6個のC原子を有する置換または非置換のアルケニル基またはアリールアルケニル基を表すことができる。
【0067】
式(II)のアルデヒドに対する例としては、ベンズアルデヒド、2−および3−および4−トルアルデヒド、4−エチルおよび4−プロピルおよび4−イソプロピルおよび4−ブチルベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、4−アセトキシベンズアルデヒド、4−アニスアルデヒド、4−エトキシベンズアルデヒド、ジアルコキシおよびトリアルコキシベンズアルデヒドの異性体類、バニリン、o−バニリン、2−,3−および4−カルボキシベンズアルデヒド、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、2−,3−および4−ニトロベンズアルデヒド、2−および3−および4−ホルミルピリジン、2−フルフルアルデヒド、2−チオフェンカルバルデヒド、1−および2−ナフチルアルデヒド、3−および4−フェニルオキシベンズアルデヒド;キノリン−2-カルバルデヒドおよびその3−,4−,5−,6−,7−および8−位置異性体、アントラセン−9−カルバルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、並びに、グリオキサール酸、グリオキサール酸メチルエステルおよび桂皮アルデヒド、がある。
【0068】
好ましいのは、ベンズアルデヒド、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、3−および4−フェニルオキシベンズアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、グリオキサール酸、および、桂皮アルデヒド、である。
【0069】
脂肪族の第1級アミノ基を有する少なくとも1つのポリアミンPAを、式(I)または式(II)の少なくとも1つのアルデヒドALDと反応させることによって、例えば、次の構造式(VII)、(VIII)および(IX)のポリアルジミンB1が生成する。
【0070】
【化15】

式中、nは、2、3または4であり、Qは、すべての第1級アミノ基を除去した後の、脂肪族の第1級アミノ基を有するポリアミンの残基を表す。かつ又、
【0071】
【化16】

式中、mは、0〜10の整数を表し、Qは、同じ分子内で同一であるかあるいは異なっており、それぞれ、すべての第1級アミノ基を除去した後の、脂肪族の第1級アミノ基を有するポリアミンの残基を表すものとする。さらに、式(VII)、(VIII)および(IX)における残基Y、Y、Y、Y、YおよびRは、既に説明した意味を表す。
【0072】
ポリアルジミンB1の調製に、式(V)の残基Yを有する式(IV)のジアルデヒドを用いる場合は、これを、式(IV)のモノアルデヒドとの混合物として入れること、しかも、式(IX)のポリアルジミンB1についてmとして平均値で1〜10の範囲の値が得られるような量的比率で混合物の中に入れることが有利である。あるいは又、式(IV)のジアルデヒドを、ポリアルジミンB1の調製時のアミノ基に対する比率においてアルデヒド基の過剰が存在するように添加し、その際、アルデヒド基の過剰を、式(IX)のポリアルジミンB1についてmとして同様に平均値で1〜10の範囲の値が得られるように選択して、添加することが有利である。この2つの方法で、良好に手操作し得る粘度のオリゴマー様ポリアルジミンの混合物が得られる。
【0073】
ポリアルジミンB1として異なるポリアルジミンの混合物、特に異なるポリアルジミンの混合物、特に式(I)または(II)の異なるまたは同一のアルデヒドALDで置換された脂肪族第一アミノ基を有するポリアミンPAによって製造された異なるポリアルジミンの混合も使用されうる。異なる数の脂肪族第一アミノ基を有するポリアミンPAの混合物を使用することによって、ポリアルジミンB1の混合物を製造することもきわめて有利でもありうる。
【0074】
ポリアルジミンB1の製造のためには、アルデヒドALDのアルデヒド基がポリアミンPAの第一アミノ基に関して化学量論的または化学量論的過剰で使用される。
【0075】
通常、第2の成分BのポリアルジミンB1は、第1の成分AのプレポリマーA1のイソシアネート基に関して過少化学量論的量、すなわち、当量のイソシアネート基当たり0.1〜0.99当量のアルジミン基の量で、特に当量のイソシアネート基当たり0.4〜0.8当量のアルジミン基の量で使用される。
【0076】
さらに、第2の成分Bには水が存在する。ポリウレタン組成物の完全な硬化のために必要である水の量は、次式(X)によって計算されうる。すなわち、
(モル水)=(Eqアルジミン)+[(EqNCO)−(Eqアルジミン)]/2(X)
[式中、「Eq」は「当量」、「アルジミン」は「アルジミン基」、および「NCO」は「イソシアネート基」を表す。]。
【0077】
第2の成分Bは、第1の成分Aの完全な硬化のために必要な式(X)による水量を正確に含有する必要はない。これは例えば、より高い水分量、例えば、2倍の量もしくはそれ以上を含有し、または第2の成分Bにおいて式(X)によって計算されるよりも少ない水が存在しうる。この場合には、硬化に必要な残りの水は空気湿度から吸収されなければならない。少なくともポリアルジミンのポリアミンへの完全な転換に必要な量の水が第2の成分Bに存在していると有利である。すなわち、第2の成分Bは、好ましくは、少なくとも当量のアルジミン基が存在するのと同程度のモル水を含有し、もしくは言い換えれば、第2の成分Bは、好ましくは、アルジミン基当たり少なくとも1つの分子の水を有する。
【0078】
水は第2の成分Bにおいて自由水として存在し、または担体材料に結合されうる。ただし、結合は可逆性である必要があり、すなわち、水は両方の成分AとBの混合後、アルジミン基およびイソシアネート基との反応のために自由に利用できる必要がある。
【0079】
成分Bの適切な担体材料は水和物またはアコ錯体、特に、水を配位により、または結晶水として結合した無機化合物でありうる。かかる水和物の例が、NaSO・10HO、CaSO・2HO、CaSOO、Na・10HO、MgSO・7HOである。
【0080】
別の適切な担体材料は、水を空洞に含む多孔性材料である。特に、これは特殊なケイ酸塩およびゼオライトである。特に適しているのは、珪藻土およびモレキュラーシーブスである。空洞の大きさは、この場合、水の吸収に最適であるように選択される。したがって、4Åの孔径を有するモレキュラーシーブスが特に適していることがわかる。
【0081】
別の適切な担体材料は、水を非化学量論的量で吸収し、糊のような稠度を有し、またはゲルを形成するものである。これらの担体材料は無機質または有機質でありうる。これに対する例は、シリカゲル、モンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライトなどの粘土、またはセルロースおよびデンプンなどの多糖類、または「高吸収性ポリマー」の概念でも周知であり、例えば衛生用品で使用されるポリアクリル酸およびポリアクリロニトリルである。さらに、イオン基を有する担体材料が適している。担体材料として特に好ましいのは、それぞれその塩、特にそのアンモニウム塩を側鎖としてカルボキシル基またはスルホン酸基を有するポリウレタンポリマーである。これらの担体材料は、水吸収能が使い果たされるまで水を吸収し、結合しうる。
【0082】
それぞれその塩を側鎖としてカルボキシル基またはスルホン酸基を有する特に好ましいポリウレタンポリマーは、例えば、カルボン酸またはスルホン酸基を含有するポリイソシアネートおよびポリオールから得られる。次いで、これらの酸基は、例えば反応し終わった状態で、塩基、特に第3アミンで中和されうる。担体材料の特徴は、使用される機能的ポリオールおよびポリイソシアネートに強く左右される。特に、選択されるイソシアネートおよびポリオールの親水性もしくは疎水性に留意すべきである。特に短鎖ポリオールが結果としてきわめて適切な担体をもたらすことがわかっている。
【0083】
上述したポリウレタン組成物においては、さらに、とりわけ以下の、ポリウレタン産業において公知の助剤および添加剤が存在しうる。
【0084】
可塑剤、例えば、有機カルボン酸のエステルまたはその無水物、フタル酸塩、例えばジオクチルフタル酸塩またはジイソデシルフタル酸塩、アジビン酸塩、例えばジオクチルアジビン酸塩、セバシン酸塩、有機リン酸エステルおよびスルホン酸エステル、ポリブテン、および他のイソシアネートと反応しない化合物、反応希釈剤および架橋剤、例えば多価アルコール、ポリアミン、ポリアルジミン、ポリケチミンまたは脂肪族イソシアネート、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−および2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−および1,4−ジイソシアネートおよびこれら異性体の任意の混合物、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチル−シクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、ペルヒドロ−2,4’−および−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−および1,4−テトラメチルキシレン−ジイソシアネート、これらイシシアネートのイソシアヌレート、これらイソシアネートのオリゴマーおよびポリマーならびにそのポリオールとの付加化合物、無機および有機充填剤、例えば、場合によりステアリン酸塩でコーティングされている粉砕または沈降性炭酸カルシウム、特に細粒コーティング炭酸カルシウム、煤、カオリン、酸化アルミニウム、ケイ酸およびPVC粉末または中空球、例えばポリエチレン製の繊維、顔料、例えばジラウリン酸ジブチルスズ、二塩化ジブチルスズ、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ビスマス有機化合物、またはビスマス錯体など有機スズ化合物、または、例えば2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、もしくはポリウレタン化学において慣用のイソシアネート基の反応のための他の触媒、さらに、例えば安息香酸またはサリチル酸などの有機カルボン酸、シリルエステル有機カルボン酸におけるフタル酸無水物またはヘキサヒドロフタル酸無水物などの有機カルボン酸無水物、p−トルオールスルホン酸または4−ドデシルベンゾルスルホン酸などの有機スルホン酸、または他の有機もしくは無機酸、または前記酸の混合物などポリアルジミンの加水分解のための触媒、例えば増粘剤、例えば尿素化合物、ポリアミドワックス、ベントナイト、または熱分解法シリカなどのレオロジー・モディファイヤ、プライマー、特にエポキシシラン、ビニルシラン、イソシアナートシラン、およびアルデヒドでアルジミノシランに変換されるアミノシランなどのシラン、およびこれらシランのオリゴマー形態、例えばp−トシルイソシアネートおよび他の反応性イソシアネート、オルトギ酸エステル、酸化カルシウム、またはモレジュラーシーブスなどの乾燥剤、熱、光、およびUV放射に対する安定剤、難燃性物質、例えば湿潤剤、平滑化剤、換気剤、または消泡剤などの界面活性剤、殺菌剤または菌増殖抑制剤、およびポリウレタン産業において通常使用される別の物質であり、ここで当業者には、これら追加の物質が両方の成分AおよびBの両方またはその各々の添加剤として適切であるかどうか明らかである。
【0085】
本発明による2成分形ポリウレタン組成物は、特に迅速にかつ気泡の形成なしに硬化する白色化合物の形成も可能にする。水で硬化する白色系はしばしば強い気泡形成を示すが、それはこの系が黒色系において気泡の形成を部分的に抑制しうるカーボンブラックを含有しないからである。
【0086】
2つの成分、特に、第1の成分Aの製造および貯蔵は、湿度の排除下で行われる。両方の成分は互いに貯蔵安定に分離され、すなわち、適切な包装または配置、例えば樽、袋、またはカートリッジに使用前の数か月ないし1年以上の間、保存されうるが、それらがその利用可能性を失うことはない。一実施形態において、第2の成分は、さらに下記の、注入キャップ(Dosieraufsatz)に組入れられている容器において保存されうる。
【0087】
第2の成分は互いに隔壁を介して分離された容器に充填され、貯蔵されることも可能である。かかる容器の例は、同軸カートリッジまたはツインカートリッジである。
【0088】
両方の成分AおよびBの稠度を互いに調節することが有利でありうるが、それはペースト状のものは同様の稠度で容易に混合されるからである。
【0089】
本発明は、有機溶媒(VOC)を完全に含んでいない2成分形ポリウレタン組成物を形成することを可能にする。これは環境的および労働衛生的理由により特に有利である。
【0090】
両成分AおよびBの混合は、好ましくは、使用中に連続的に行われる。可能な実施形態において、両成分AおよびBの混合は2つの相互連結する注入ロータを含有する注入キャップによって行われる。かかる好ましい注入キャップは、欧州特許第0749530号明細書に詳細に記載されている。注入キャップは、好ましくは、第1の成分Aを含有すると同時に、第2の成分は、注入キャップに組入れられている容器に存在する市販のカートリッジへのより小さな用途に装着される。注入および混合は、カートリッジの加圧によって、例えば市販のカートリッジプレスによって受動的に駆動されるこの注入キャップにおける使用に際して行われる。より良い完全な混合のために、さらにこの注入キャップの排気口に静的ミキサーを取付けることができる。
【0091】
両成分AとBを混合する別の可能性が、市販のいわゆるツインカートリッジまたはいわゆる同軸カートリッジであり、それぞれ排気口に取付けられたスタティックミキサーを有する。ツインカートリッジの使用に際しては、両成分AとBは、共通の排気口に通じる並んで固定された別個のカートリッジ中にある。適用は、両方のカートリッジを平行に絞出す適切な絞出し装置によって行われる。同軸カートリッジの使用に際しては、両方の成分の1つがカートリッジの中心にある。もう1つの成分はこれを取囲み、ここでこれらの成分は同軸の壁によって分離されている。両成分は、適用に際しても適切な絞出し装置によって同時に絞出され、共通の排出口に至る。
【0092】
それに対して産業用途には、両成分AとBの樽または輸送容器からの供給が使用されることが有利である。このようにして、両成分AとBは有利に注入キャップで混合されるが、これは第2の成分Bのための管接続部を自由に使用する点によって上述した注入キャップと実質的に区別される。
【0093】
ポリウレタン組成物の両成分AとBの混合は、実質的に均一に、または実質的に層状に行われる。好ましくは実質的に均一の混合である。両成分AとBが、例えば、少ない数の混合要素を有するスタティックミキサーで作業されることによって、実質的に層状に混合されると、完全な硬化の後、それにもかかわらず均一の完全に硬化された製品が生じ、この場合には元の層はもはや肉眼で見ることはできない。この状態は当業者には意外であるが、ポリアルジミンの層状の混合に際して層境界域にイソシアネート含有ポリウレタン組成物が生じ、そこではポリアルジミン基のイソシアネート基との比率が明らかに化学量論的過剰であるため、この化合物は適切に硬化されておらず、軟らかいままであることが予想されるであろう。すなわち、通常、イソシアネート含有ポリウレタン組成物は、化学量論的過剰のポリアミン硬化剤と接触すると適切に硬化しない。実質的に均一の混合過程に際してもつねに小さな不均一性が生じうるため、成分AとBが実質的に層状の混合に際しても均一の製品に硬化するという状態は実際には大きな利点である。
【0094】
第1の成分Aと第2の成分Bとの混合比は基本的に自由に選択可能であるが、好ましくは、混合比A:Bが体積部で200:1〜5:1の範囲となる。
【0095】
一般的な適用は、最初にポリウレタン組成物の両成分AとBが上記のように混合され、次いで混合ポリウレタン組成物が少なくとも1つの固体と接触され、硬化することによって行われる。固体表面の接触は、通常、表面へのビードの塗布として行われる。
【0096】
両成分AとBの混合に際しては、ポリアルジミンB1の加水分解形態がイソシアネート基と反応するが、ここで正式にはアミノ基とイソシアネート基との間の反応が行われ、その後にポリウレタン組成物は、少なくとも部分的に硬化する。既述されているように、一方ではアルジミン基と水、他方ではアミノ基とアルデヒドとの間の第2の成分Bにおける平衡が、アルジミン基と水との側に強く位置している。しかし、第2の成分Bが第1の成分Aと接触されると、正式にはアミノ基はイソシアネート基と反応して尿素基となり、それによって平衡は持続的にアミノ基の方向へずらされる。それによって、第2の成分BのポリアルジミンB1と第1の成分Aのイソシアネート基との正式な反応が完全に進行する。過剰なイソシアネート基は、第2の成分Bに追加的に存在する水、または空気か吸収される水(空気湿度)のいずれかと反応し、これにより最終的にポリウレタン組成物の完全な硬化に至る。
【0097】
イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーA1の加水分解するポリアルジミンB1との反応は、必ずしもポリアミンを介して行われる必要はない。もちろん、ポリアルジミンのポリアミンへの加水分解の中間段階との反応も可能である。例えば、加水分解するポリアルジミンはヘミアミナール(hemiaminal)の形態でイソシアネート含有ポリウレタンポリマーA1と直接反応することが考えられうる。
【0098】
上述した反応結果として、ポリウレタン組成物は硬化する。
【0099】
ポリアルジミンB1の製造に使用されるアルデヒドは、硬化に際して放出される。この場合、式(I)または式(II)による特殊なアルデヒドALDの使用によって、わずかな臭気しか知覚できない。特に好ましい実施形態においては、使用されるアルデヒドALDは、その低い蒸気圧に基づき硬化されたポリウレタン組成物に残り、かつその場合に知覚できる臭気の原因とはならないことによって特徴づけられる。長鎖脂肪酸を使用する場合、疎水性脂肪酸残基は硬化されたポリウレタン組成物のわずかな水吸収しかもたらさず、これによりポリウレタン材料の加水分解に対する安定性が高まる。さらに、長時間の水との接触がある場合、疎水性脂肪酸残基が、硬化されたポリウレタン組成物からのアルデヒドの侵食に対する優れた保護を提供する。これらのポリウレタン組成物は、また、優れた光安定性を有する。
【0100】
上述のポリウレタン組成物は、長い処理時間、高い初期強度、迅速かつ気泡を含まない硬化によって、かつ硬化の前、その最中、およびその後の僅少の臭気形成によって特徴づけられる。これらはさまざまな固体表面上にきわめて優れた粘着性を有するが、これは、迅速に硬化するポリウレタン組成物は経験上、粘着性の発現が弱化する傾向があるため、きわめて迅速な硬化のせいであることは全く自明の事実ではない。硬化された2成分形ポリウレタン組成物は、高い伸びおよび高い引張強度を有する。例えば、イソシアネート基に関するポリアルジミンB1の量と種類、および水の量の変動によって、作業時間は変動されうるとともに、初期強度の増加および硬化速度が影響をうける。
【0101】
上述のポリウレタン組成物により、普遍的な第1の成分Aおよび多種多様の異なる第2の成分Bから成るユニット状(モジュラー式)に構成された2成分形製品系を作製することが可能である。適用の要件に応じて、最も適切な成分Bは―つねに不変に保持された―成分Aと組合せられる。かかる系により、簡単なやり方で、異なる長さの処理時間、初期強度、硬化速度、硬化に際してのさまざまに特徴的な臭気形成、および異なる機械的特徴を有するポリウレタン組成物を得ることができるが、成分Aを新たに作製する必要はない。これは、例えば接着剤メーカーにとって大いに有利であるが、それは湿度に敏感な第1の成分Aが一定の処方で大量に製造されうるからである。
【0102】
上述のポリウレタン組成物は、さまざまな物質の結合および密封用、例えば、自動車、鉄道車両、船舶、または他の工業品の結合用の接着剤として、例えば、建造における継ぎ目の密封のためのあらゆる種類のシーリング材として、およびさまざまな物品もしくは不定の固体表面用のコーティングもしくは被膜として適している。
【0103】
コーティングとして好ましいのは、保護膜、シーリング、保護コーティング、およびプライマーコーティングである。被膜として特に有利に挙げられるのは、床の被覆である。かかる被膜は、一般的には、反応性化合物を基材に注ぎ、均等にし、そこでフロアコーティングに硬化することによって製造される。例えば、かかる床の被覆は、事務所、居住範囲、病院、学校、倉庫、駐車ガレージ、および他の個人的または産業上の用途に使用される。これらの使用は大きな平面で行われるため、屋外範囲における使用であっても、被膜からの物質のわずかな放出が労働衛生上の問題および/または臭気の煩わしさをもたらしうる。ただし、床張りの大部分は屋内範囲で適用され、そのため僅少の臭気形成がこの場合には特に重要視される。
【0104】
ポリウレタン組成物は、任意の基材の表面と少なくとも部分的に接触される。好ましいのは、シーリング材または接着剤、コーティングまたは被覆の形での、すなわち、その使用のために結合または密封の形で結合を必要とするが、その基材は覆われなければならない範囲での均一の接触である。基材もしくは接触すべき物品が、物理的および/または化学的前処理の接触に先立って、例えば、研磨、サンドブラスティング、ブラッシングなどによって、または洗剤、溶剤、結合剤、結合剤溶液もしくはプライマー、または結合架橋もしくはシーラーの適用によって処理されることが非常に必要でありうる。
【0105】
[実施例]
すべてのパーセント表示は、別に表示されていなければ、重量パーセントを示す。
【0106】
〔使用したポリアミン〕
アルファ、オメガ−ポリオキシプロピレンジアミン(ジェファミン(Jeffamine(登録商標)D−230、ハンツマン(Huntsman):第一アミンの総含量≧97%、アミン含量=8.22mmol NH/g。
【0107】
1,3−キシリレンジアミン(MXDA、三菱ガス化学(Mitsubishi Gas Chemical)、含量MXDA≧99%、アミン含量=14.56mmol NH/g。
【0108】
〔使用したポリオール〕
アクレイム(Acclaim)(登録商標)4200N(バイエル(Bayer))、理論OH官能基2、平均分子量約4000、OH価約28mgKOH/g、不飽和度約0.005mEq/gを有する直鎖ポリプロピレンオキシド−ポリオール。
【0109】
カラドール(Caradol)(登録商標)MD34−02(シェル(Shell):理論OH官能基3、平均分子量約4900、OH価約35mgKOH/g、不飽和度約0.008mEq/gを有する、エチレンオキシド末端、非直鎖ポリプロピレンオキシドポリエチレンオキシド−ポリオール。
【0110】
〔試験法の説明〕
オープンタイム、すなわち、接着剤をその適用後にもなお―例えば結合すべき固体表面または物品上で広げ、または押付けることによって処理されうる最大可能時間は、2つの基準、すなわち稠度および接着によって、すなわち以下のように測定された。接着剤を幅約1cmの三角ビードの形でLDPEフォイル上に塗布し、次いでビードを規則的な時間間隔で、使用前にシーカ(Sika(登録商標))活性化剤(シカ・シュヴァイツ(Sika Schweiz)AGで入手可能)で前処理され、10分間空気乾燥されたそれぞれ1枚の小さなガラス板で覆った。次いで、ガラス板を引張試験機(ツヴィック(Zwick))によって直ちに5mmの接着厚さに押圧し、ビード適用とガラス板の押圧との間に経過した時間を記した。圧縮に必要な力を記録した。圧縮力が3Nを超え次第、オープンタイムが終了したと考えた。さらに、オープンタイム内に圧縮された試験体について、試験体を1日間、23℃および50%相対空気湿度で硬化させ、その後に接着剤をガラスから引き剥がすことによって接着剤ビードの接着を検査した。依然として完全な凝集接着を示した最後のガラス板がオープンタイムを与えた。それぞれの場合で、2つの測定されたオープンタイムの短い方が示されている。
【0111】
初期強度を以下のように測定した。試験ごとに寸法40×100×6mmの2枚の小さなガラス板の接着すべき面を、シーカ(Sika)活性化剤(シカ・シュヴァイツ(Sika Schweiz)AGで入手可能)により前処理した。10分の空気乾燥時間後、接着剤を三角ビードの形で長手方向縁に対して平行にガラス板上に塗布した。約1分後、適用接着剤を第2のガラスの板を使用して引張試験機(ツヴィック(Zwick))によって5mmの接着厚さに圧縮し(約1cmの接着範囲に対応)、次いで23℃および50%相対空気湿度で保存した。このようにして5回3つの試験体を製造し、ここで化合物の硬化速度に応じて異なる時間間隔後、結合したガラス板のそれぞれ3枚を200mm/分の引張速度で引張り、これに対する最大の力を、N/mmビード長さ、で記録し、3つの試験体の平均を取った。各組成物について複数の硬化時間後にも初期強度を測定した。
【0112】
1MPaの引張強度の達成までの時間も初期強度の尺度である。これは前述した引張試験によって測定された。そのために引張強度対硬化時間のグラフを作製し、それによって100N/cmの引張強度(1cmの接着範囲での1MPaの強度に対応)の達成までの時間を測定した。
【0113】
引張強度および破断点伸びを7日間に23℃および50%相対空気湿度で硬化された2mmの層厚さを有するフィルムでDIN EN53504に従って測定した(引張速度:200mm/分)。
【0114】
ショアA硬度をDIN53505に従って測定した。
【0115】
機械的試験(引張強度および破断点伸び)に使用されたフィルムの硬化中に発生した気泡の量によって気泡形成を定性的に判定した。
【0116】
機械的試験(引張強度および破断点伸び)に使用されたフィルムについて、23℃および50%相対空気湿度でのその適用後1時間に、10cmの間隔をおいて鼻で嗅ぐことによって化合物の臭気を判定した。
【0117】
ハーク社(Fa.Haake)の円錐板(Kegel−Platten)粘度計(PK100/VT−500)において20℃で粘度を測定した。
【0118】
a)ポリアルジミンの製造
〔ポリアルジミンPA1〕
還流冷却器および脱水装置(ディーン・スターク(Dean Stark)を備えた丸底フラスコにホルムアルデヒド(水中37%、メタノール非含有)40.5g、イソブチルアルデヒド36.0g、ラウリン酸100.0g、および4−トルエンスルホン酸1.0gを注ぎ、窒素雰囲気下に配置した。混合物を湯浴中で強く攪拌しながら加熱し、次いで脱水を開始した。4時間後、水ジェット真空下で装置を脱揮した。全部で約35mLの蒸留液が脱水装置に集められた。反応混合物を冷却し、分液漏斗からジェファミン(Jeffamine)(登録商標)D−230を48.6g添加した。その後、揮発性成分を真空下で完全に留去した。こうして得られた、室温で液体の反応生成物は、2.17mmol NH/gのアミン含量として測定されるアルジミン含量、20℃で700mPa・sの粘度を有し、知覚できる臭気は示さなかった。
【0119】
〔ポリアルジミンPA2〕
ポリアルジミンPA1について述べたように、ホルムアルデヒド(水中37%、メタノール非含有)40.5g、イソブチルアルデヒド36.0g、ラウリン酸100.0g、および4−トルエンスルホン酸1.0gを水35mLの脱水下で反応させ、それによって得られた反応混合物をMXDA26.0gと混合した。真空下で揮発性の成分を除去後、2.33mmol NH/gのアミン含量として測定されるアルジミン含量を有し、知覚できる臭気は示さない反応生成物(室温で液体)が得られた。
【0120】
〔ポリアルジミンPA3〕
丸底フラスコ中で、微粉末3−ヒドロキシピバルアルデヒド(ダイマー形態)50.0gを水100mL中に懸濁し、窒素雰囲気下に配置し、湯浴中で60℃に加熱した。分液漏斗から30分かけてジェファミン(Jeffamine)(登録商標)D−230を59.6g添加し、次いで透明の淡黄色溶液を得た。その後、揮発性の成分を真空下で完全に留去した。こうして得られた淡黄色の、室温で液体の反応生成物は、4.86mmol NH/gのアミン含量として測定されるアルジミン含量を有し、かつ弱いアミン臭を有した。
【0121】
〔ポリアルジミンPA4〕
丸底フラスコ中で、グルコース一水和物16.3gを水50mL中に溶解し、p−トルエンスルホン酸0.05gと混合し、窒素雰囲気下に配置した。分液漏斗からジェファミン(Jeffamine)(登録商標)D−230を10.0g添加し、次いで透明の淡黄色溶液を得た。その後、揮発性の成分を真空下で完全に留去した。こうして得られた黄褐色の、室温で半液状の反応生成物は、3.52mmol NH/gのアミン含量として測定されるアルジミン含量を有し、知覚できる臭気は示さなかった。
【0122】
〔ポリアルジミンPA5〕
丸底フラスコに中で、微粉砕4−ジメチルアミノベンズアルデヒド25.0gをエタノール100mL中に懸濁し、窒素雰囲気下に配置した。分液漏斗からジェファミン(Jeffamine)(登録商標)D−230を19.4gゆっくり添加し、次いで透明な黄色溶液を得た。その後、揮発性の成分を真空下に完全に留去した。こうして得られた暗黄色の、室温で半液状の反応生成物は、3.84mmol NH/gのアミン含量として測定されるアルジミン含量を有し、かつ弱い芳香臭を有した。
【0123】
〔ポリアルジミンPA6〕
ポリアルジミンPA5について述べたように、3,4,5−トリメトキシベンズアルデヒド25.0gをジェファミン(Jeffamine)(登録商標)D−230 14.8gを反応させた。真空下で揮発性の成分の除去後、黄色の、室温で半液状の反応生成物を得たが、これは3.23mmol NH/gのアミン含量として測定されるアルジミン含量を有し、かつ弱い芳香臭を有した。
【0124】
〔ポリアルジミンPA7(比較)〕
丸底フラスコにジェファミン(Jeffamine)(登録商標)D−230 50.0gを入れ、窒素雰囲気下に配置した。十分に冷却し、強く攪拌しながら分液漏斗からイソブチルアルデヒド32.6gを添加した。その後、揮発性の成分を真空下で完全に留去した。こうして得られた、室温で液体の反応生成物は、5.81mmol NH/gのアミン含量として測定されるアルジミン含量を有し、かつ強いアルデヒド臭を有した。
【0125】
b)第1の成分Aの製造
〔実施例1(成分A)〕
真空ミキサー中で、その製造が以下に記載されているポリウレタンプレポリマーA1の3400g、ジイソデシルフタル酸(DIDP)1402g、p−トリルスルホニルイソシアネート(添加剤TI(登録商標)、バイエル(Bayer))14g、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(シルクエスト(Silquest)(登録商標)A−187、OSiクロンプトン(Crompton)21g、焼成カオリン1052g、カーボンブラック1052g、およびジ−n−ブチル−スズ−ジクロリド(DIDP中1.8%)7gを除湿下に塊を含まない均一のペースト状に処理し、除湿下に保存した。材料は、0.241mmol NCO/gのイソシアネート基の含量、および1.23g/cmの密度を有していた。
【0126】
第1の成分Aの完全な硬化後、単に23℃および50%相対空気湿度によって、これは
ショアA硬度47、
引張強度7.4MPa、および
破断点伸び310%を有した。
【0127】
ポリウレタンプレポリマーA1を以下のように製造した。
ポリオールアクレイム(Polyol Acclaim)(登録商標)4200N 1290g、ポリオールカラドール(Polyol Caradol)(登録商標)MD34−02 2580g、4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI、デスモジュール(Desmodur)(登録商標)44MC L、バイエル(Bayer))630g、およびDIDP 500gを周知の方法に従い80℃でNCO末端ポリウレタンプレポリマーに転化した。反応産物は、2.07重量%の遊離イソシアネート基の滴定測定含量、および20℃で56Pa・sの粘度を有した。
【0128】
c)第2の成分Bの製造
〔実施例2〜17(成分B)〕
真空ミキサー中で、表2aおよび2bに示した成分を除湿下に混合し、塊を含まない均一のペースト状に処理し、これを除湿下に保存した。
【0129】
実施例2〜17による成分Bの密度は、実施例5および14を除き、実施例1による成分の密度に対応する。
【0130】
表2aおよび2bにおいて「DIDP」はジイソデシルフタレートを表し、「ODA」はジオクチルアジピン酸塩を表し、および「カオリン」は焼成カオリンを表す。「スズ触媒」は、DIPP中1.8%ジ−n−ブチル−スズ−ジクロリドの溶液を表す。
【0131】
表2bおよび表7における「ケチミン」は、3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキシルアミン(IPDA)およびメチルエチルケトンによるポリケチミンを表す。これは米国特許第4,108,842号明細書において「硬化剤1」として記載されているように製造された。これは、3.37mmol NH/gのアミン含量として測定されるケチミン含量を有するとともに、強い刺すような溶剤臭を有した。
【0132】
【表1】

【0133】
【表2】

【0134】
d)硬化性組成物の製造および試験
硬化性組成物を製造するために実施例1による第1の成分Aをそれぞれ第2の成分Bと10:1の比で混合した。
【0135】
両成分AとBの混合は、装填されたスタティックミキサー、24の混合要素を有するタイプ・スルザー・クアドロ(Typ Sulzer Quadro)、を備えたミックスパック社(Firma Mixpak)の2成分ポリエチレン−同軸カートリッジ1:10により両成分を適用することによって、適用中に連続的に行われた。実施例19(実施例5による第2の成分B)には36の混合要素を使用したが、それは実施例5による第2の成分Bは充填剤を含有せず、したがって第1の成分Aに混合することは困難だからである。
【0136】
【表3】

【0137】
実施例18〜21は、異なる量のポリアルジミンPA1を有する。NH/NCO比(すなわち、第1の成分Aの当量のイソシアネート基当たりの第2の成分Bの当量のアルジミン基)は、0.4/1〜0.7/1のばらつきがある。HO/NCO(すなわち、当量のイソシアネート基当たりのモル水)として示されるこれら混合物における水の量はそれぞれ、ポリアルジミンを完全に加水分解し、かつポリウレタンプレポリマーの残りのイソシアネート基を硬化するために水が正確に十分であるように配合される。
【0138】
ポリアルジミンの含量の上昇とともに初期強度も大きく上昇するが、引張強度1MPaの達成までの時間はそれに応じて減少する。オープンタイムも減少する。硬化性組成物の機械的特徴、引張強度および破断点伸びは、ポリアルジミンの異なる含量にもかかわらずわずかな差異を示すのみである。4つの実施例すべての硬化に際しては気泡も知覚できる臭気も発生しない。
【0139】
【表4】

【0140】
実施例20、22、および23は、ポリアルジミンPA1の含量は一定であるが、異なる量の水を有する。この点で、水の含量の上昇が、オープンタイムと同時に、初期強度および引張強度1MPaの達成までの時間における加速をもたらすことが明らかである。引張強度および破断点伸びはほとんど差異を示さない。3つの実施例すべての硬化に際しては気泡も知覚できる臭気も発生しない。
【0141】
【表5】

【0142】
実施例24は、使用されたポリアルジミンにおいて実施例20と異なるが、この場合、それぞれ同じアルデヒドが2つの異なるポリアミンと反応させられた。異なるアミンは、最終生成物の機械的特徴に対する大きな影響を示さなかったが、初期強度の進展に対してはなおさらである。すなわち、オープンタイムが同様である場合、実施例24における初期強度は、実施例20におけるよりも実質的に速く発現する。両方の実施例は硬化に際しては気泡も知覚できる臭気も発生しない。
【0143】
【表6】

【0144】
実施例25〜28は、使用されたポリアルジミンにおいて実施例20と異なるが、この場合、それぞれ同じポリアミンが異なるアルデヒドと反応させられた。オープンタイムおよび初期強度はきわめて異なっている。実施例25はきわめて速いシステムである。アルデヒド化合物上のOH基のために、硬化材料は実施例20におけるよりも軟らかいが、これはイソシアネート基の一部が空気湿度では架橋されず、これらのOH基と反応するからである。実施例26は、50分の長いオープンタイムを有するが、初期強度の発現については実施例20よりも明らかに速い。これは実践のために興味深い組合せである。脱離されたアルデヒドは複数のOH基を有し、イソシアネート基の一部とも反応し、こうして硬化に寄与する。実施例29は、PA1に加えてさらにジプロピレングリコールを含有し、特徴は実施例20における場合と同様である。
【0145】
すべての実施例は、硬化に際して気泡を形成しなかった。実施例25、27、および28はわずかな臭気を有すが、その他の実施例は知覚できる臭気を有さない。
【0146】
実施例20〜29は、処理時間に関して、初期強度、硬化速度、臭気、および機械的特徴が明らかに異なり、したがって異なる使用の要件に適合されうる、成分Aおよび異なる成分Bから成るモジュール系を得ることが可能であることの証拠である。
【0147】
比較例30(イソブチルアルデヒドを脱離)および31(メチルエチルケトンを脱離)は両方ともきわめて高い反応性を有し、これが望ましくない短いオープンタイムをもたらす。硬化に際してのそれぞれの臭気は、上述した使用には許容されない。
【0148】
成分Bにおける水によってのみ硬化する比較例32は、許容される反応性を有し、知覚できる臭気を示さないが、硬化に際しては多くの気泡を形成し、これは上述した使用には許容されない。
【0149】
ポリオールによって硬化する実施例33は、許容される反応性を有し、臭気および気泡も有さないが、硬化された化合物の表面は依然としてきわめて粘着性であり、これは空気湿度からの水およびジプロピレングリコールのイソシアネート基に対する類似した反応性によって、表面上のポリマー鎖の一部が適切に硬化しないからである(鎖終止)。
【0150】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリイソシアネートおよび少なくとも1種のポリオールから調製されるイソシアネート末端基含有ポリウレタンプレポリマーA1の少なくとも1種を含む第1成分A、並びに
水と、
脂肪族の第1級アミノ基を有する少なくとも1種のポリアミンPAおよび少なくとも1種の低臭気アルデヒドALDから調製し得る少なくとも1種のポリアルジミンB1と、
を含む第2成分B
から成る2成分形ポリウレタン組成物であって、前記少なくとも1種の低臭気アルデヒドALDは、次の式(I)または(II)
【化1】

[式中、YおよびYは、
互いに独立して、水素原子、ヒドロキシル基または有機残基を表すか、あるいは、
一緒になって、原子数5〜8個、好ましくは6個の環の大きさを有する炭素環式または複素環式の1つの環を表し;かつ、
は、
少なくとも1つのへテロ原子を有する置換または非置換のアルキル基を表すか、あるいは、
少なくとも10個のC原子を有する枝分かれまたは非枝分かれのアルキル基またはアルキレン基を表すか、あるいは、
置換または非置換のアリール基またはアリールアルキル基を表すか、あるいは、
O−R、または、
【化2】

、または、
【化3】

、または、
【化4】

{式中、Rは、少なくとも3個のC原子を有するアリール基、アリールアルキル基またはアルキル基を表し、それぞれ、置換または非置換である}を表し;かつ、
は、原子数5〜8個、好ましくは6個の環の大きさを有する置換または非置換のアリール基またはヘテロアリール基を表すか、あるいは、
【化5】

{式中、R=アルキル基、ヒドロキシル基またはアルコキシ基}を表すか、あるいは、
少なくとも6個のC原子を有する置換または非置換のアルケニル基またはアリールアルケニル基を表す]
である、2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項2】
前記Yにおけるヘテロ原子が、エーテル酸素、カルボキシル基、エステル基、またはヒドロキシル基の形で存在することを特徴とする請求項1に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項3】
前記アルデヒドALDが、次の式(III)
【化6】

[式中、RおよびYは、互いに独立して、水素原子またはアルキル基またはアリールアルキル基を表す]
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項4】
前記アルデヒドALDが、次の式(IV)
【化7】

[式中、Rは水素原子またはアルキル基またはアリールアルキル基を表し、かつ、
は、
水素原子を表すか、あるいは、
アルキル基またはアリールアルキル基またはアリール基であって、任意選択で少なくとも1つのへテロ原子を有してもよく、任意選択で少なくとも1つのカルボキシル基を含んでもよく、任意選択で少なくとも1つのエステル基を含んでもよいアルキル基またはアリールアルキル基またはアリール基を表すか、あるいは、
一または複数の不飽和結合を有する直鎖または枝分かれした炭化水素鎖を表す]
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項5】
が水素原子を表し、かつ、
が、
11〜30個の炭素原子を有する直鎖または枝分かれしたアルキル鎖であって、任意選択で少なくとも1つのへテロ原子、特に少なくとも1つのエーテル酸素を有してもよいアルキル鎖を表すか、あるいは、
11〜30個の炭素原子を有する、一または複数の不飽和結合を有する直鎖または枝分かれした炭化水素鎖を表すか、あるいは、
次の式(V)または(VI)
【化8】

[式中、Rは、
2〜16個の炭素原子を有する直鎖または枝分かれしたまたは環状のアルキレン鎖であって、任意選択で少なくとも1つのへテロ原子、特に少なくとも1つのエーテル酸素を有してもよいアルキレン鎖を表すか、あるいは、
2〜16個の炭素原子を有する、一または複数の不飽和結合を有する直鎖または枝分かれしたまたは環状の炭化水素鎖を表し;かつ、
は、1〜8個の炭素原子を有する、直鎖または枝分かれしたアルキル鎖を表す]
の残基を表すことを特徴とする請求項4に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項6】
前記ポリアルジミンの調製に使用するアルデヒドALDが、β−ヒドロキシアルデヒドをカルボン酸でエステル化する反応によって、特に溶剤を使用することなく得られ、その場合、このβ−ヒドロキシアルデヒドが、場合によっては、ホルムアルデヒド好ましくはパラホルムアルデヒドと第2のアルデヒドとからその場で調製されることを特徴とする請求項4または5に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項7】
前記ポリアルジミンの調製に使用するアルデヒドALDが、3−ヒドロキシピバルアルデヒドをカルボン酸でエステル化する反応によって、特に溶剤を使用することなく得られ、その場合、3−ヒドロキシピバルアルデヒドが、場合によっては、ホルムアルデヒド好ましくはパラホルムアルデヒドとイソブチルアルデヒドとからその場で調製されることを特徴とする請求項6に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項8】
前記アルデヒドALDの調製に使用するカルボン酸が、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、および、これらの混合物、並びに、脂肪酸とこれらとの工業的混合物を含む群から選択されることを特徴とする請求項6または7に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項9】
=Y=メチルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項10】
前記アルデヒドALDが前記式(I)を有し、かつ、Yはヒドロキシル基を表し、Yは水素原子を表し、Yは、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するアルキル基、特に2つ以上のヒドロキシル基を有するアルキル基を表すことを特徴とする請求項1または2に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項11】
脂肪族の第1級アミノ基を有する前記ポリアミンPAが、1,6−ヘキサメチレンジアミン、MPMD、DAMP、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、4−アミノメチル−1,8−オクタンジアミン、IPDA、1,3−および1,4−キシリレンジアミン、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)−メタン、ビス−(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)−メタン、3(4),8(9)−ビス−(アミノメチル)−トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、1,2−、1,3−および1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノ−2,2,6−トリメチルシクロヘキサン、理論的に2個または3個のアミノ基を有するポリオキシアルキレン−ポリアミン、特にJeffamine(登録商標)EDR−148、Jeffamine(登録商標)D−230、Jeffamine(登録商標)D−400およびJeffamine(登録商標)T−403、並びに、これらのポリアミンの2種以上の混合物からなる群の中から選択されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項12】
前記ポリアルジミンB1の調製において、前記アルデヒドALDを、前記ポリアミンPAの第1級アミノ基に対して、化学量論量だけ使用するか、あるいは、化学量論的過剰で使用することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項13】
前記第2成分Bにおける水が、自由水として存在するか、あるいは、担体材料に可逆的に結合されて存在することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項14】
前記第2成分Bが、アルジミン基当たり少なくとも1個の水分子を有することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項15】
前記第1成分AのポリウレタンプレポリマーA1調製用のポリオールが、1.6〜3個の平均OH−官能基を有していることを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項16】
前記ポリオールが、ポリオキシアルキレンポリオール、特にポリオキシアルキレンジオールまたはポリオキシアルキレントリオール、特にポリオキシプロピレンジオールまたはポリオキシプロピレントリオール、あるいは、EO−エンドキャップ型のポリオキシプロピレンジオールまたはポリオキシプロピレントリオールであることを特徴とする請求項15に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項17】
前記ポリオールが、<0.02mEq/gの不飽和度と、1,000〜30,000g/molの範囲の分子量Mとを有するポリオキシアルキレンポリオールであることを特徴とする請求項15または16に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項18】
前記ポリオールがDMC触媒を用いて調製されるポリオールであることを特徴とする請求項17に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項19】
前記第1成分AにおけるポリウレタンプレポリマーA1と前記第2成分BにおけるポリアルジミンB1とが、イソシアネート基1当量に対して、アルジミン基0.1〜0.99当量、特に0.4〜0.8当量の比率で存在することを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の2成分形ポリウレタン組成物。
【請求項20】
前記第1成分Aおよび前記第2成分Bを、ほぼ均質に混合することを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の2成分形ポリウレタン組成物の混合方法。
【請求項21】
前記第1成分Aおよび前記第2成分Bを、ほぼ層状に重ねて混合することを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の2成分形ポリウレタン組成物の混合方法。
【請求項22】
前記2つの成分A、Bの混合が、互いに入り込んでいる2つの注入ロータを含む注入容器によって、並びに、場合によってはこの注入容器の出口に装着されたスタティックミキサーによって行われることを特徴とする請求項20または21に記載の混合方法。
【請求項23】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の2成分形ポリウレタン組成物を適用する方法において、
次のステップ、すなわち、
− 2つの成分AおよびBを混合するステップと、
− 少なくとも1つの固体表面を前記混合したポリウレタン組成物と接触させるステップと、
− 前記混合したポリウレタン組成物を硬化させるステップと、
を含むことを特徴とする2成分形ポリウレタン組成物の塗布方法。
【請求項24】
前記固体表面との接触が、前記表面のビードを適用して行われることを特徴とする請求項23に記載の適用方法。
【請求項25】
接着剤、シーリング材、または被覆材として、特に接着剤またはシーリング材としての請求項1〜19のいずれか一項に記載の2成分形ポリウレタン組成物の使用。
【請求項26】
混合されかつ硬化された請求項1〜19のいずれか一項に記載の2成分形ポリウレタン組成物によって接合された物品。

【公表番号】特表2007−509200(P2007−509200A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534765(P2006−534765)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052555
【国際公開番号】WO2005/037885
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】