説明

高い触媒活性を有する活性炭を製造する方法

炭素質材料を窒素化合物に接触させる、高い触媒活性を有する活性炭の製造方法であって、炭素質材料を、多段流動層中、800℃を超える温度で蒸気、窒素及び二酸化炭素の混合物と共に、それ自体公知の方法で部分的にガス化し、炉及び/又は多段流動層の少なくとも1段階で、窒素化合物を供給することを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載の、高い触媒活性を有する活性炭の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、窒素化合物を用いて処理することにより、活性炭の触媒活性を増加できることが知られている。そこには、二つの基本的な方法が開示されている。
【0003】
第1の方法は、窒素を含む化合物を用いた活性炭の処理を含む。
【0004】
第2の方法は、炭素質材料を、炭素質材料が炭化又は活性化される前に、窒素化合物と接触させることからなる。
【0005】
これらの方法の欠点は、窒素化合物中に含まれる窒素の供給量の比較的少ない部分だけを炭素骨格中に挿入して、触媒活性を高める。いかなる場合でも、高い触媒活性を有する活性炭の製造には、付加的な処理工程が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】EP1200342B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、付加的な処理工程が不必要な、高い触媒活性を有する活性炭の製造のための簡単で経済的な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、炭素質材料(つまり、炭素を含む材料)を、蒸気(すなわち水蒸気)、窒素及び二酸化炭素の混合物を用い、800℃を超える温度にて、それ自体公知の方法で、多段流動層で部分的にガス化し、炉(すなわち燃焼室)及び/又は多段流動層の少なくとも1段に、窒素化合物(すなわち窒素を含む化合物)を供給することにより解決される。
【0009】
さらなる発展は、従属項の特徴により特徴付けられる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、窒素を含む化合物を、多段流動層における活性炭の従来の製造工程中に送り込むという基本的考えに基づいている。多段流動層は、少なくとも2つから最大で8つの流動層段階を有する流動層と理解されるべきである。
【0011】
驚くべきことに、実験は、このようにして製造された活性炭の活性が、炉中又は各流動層段階で窒素化合物を添加することによって特定的にコントロールできること、及び活性炭を簡単な方法で製造できることを示した。
【0012】
炭素を含有する全ての既知の物質、例えば、ココナツの殻、石炭、亜炭コークス、泥炭コークス又はポリマー等は、活性炭の製造に適している。
【0013】
窒素化合物としては、尿素が主に用いられる。ヘキサメチレンテトラミン、ポリアクリロニトリル又はメラミンを使用することも可能である。
【0014】
好ましい実施形態では、窒素化合物として尿素水溶液を多段流動層に加える。尿素溶液の濃度は45%である。炭素質材料100kgに対して、2〜10kgの量の尿素を用いる。炭素質材料100kgに対して、5〜6kgの量の尿素が理想的であることが証明されている。
【0015】
製造された活性炭の触媒活性は、一酸化窒素の変換率を測定することによって決定できる。一酸化窒素の変換率の観点から高い触媒活性を有する活性炭は、二酸化硫黄の酸化、クロロアミン類の除去、過酸化物の分解、硫化水素の酸化及び多数の他の化学反応においても高い触媒活性を有することが知られている。
【0016】
一酸化窒素変換率の測定
一酸化窒素の変換率は、温度120℃で、モデル燃焼排ガス(一酸化窒素400ppm、アンモニア400ppm、酸素22体積%及び水17体積%、残部は窒素)を用いて測定する。
【0017】
乾燥させた活性炭1.06リットルを反応器に充填し、モデル燃焼排ガスを反応温度120℃で通過させる。接触時間は10秒とする。一酸化窒素の通過後の濃度(NO penetration concentration)を、測定の間記録し、一酸化窒素の初期濃度に対する変換率を、20時間後の純ガス中の一酸化窒素濃度から算出する。
【0018】
実施例に基づいて、下記に本発明をより詳細に説明する。
【0019】
実施例1(比較例)
8段階流動層反応器中で活性炭の製造を行う。炉の温度は800〜940℃である。天然ガスを燃焼させて流動ガスを生成させる。さらに、300kg/時間で蒸気を供給する。
【0020】
600kg/時間で炭素質材料を8段階流動層反応器に加える。最終生成物の排出は400kg/時間である。尿素溶液は添加しない。製造された活性炭の活性は、一酸化窒素の変換率を測定することによって決定する。製造された活性炭の窒素含有量は0.4重量%である。上記の試験による触媒活性は、一酸化窒素変換率45%である。
【0021】
実施例2
45%の尿素溶液を、50リットル/時間で8段階流動層反応器の炉に供給する。活性炭製造のその他の条件は変更しない。炭素含有物質に対する尿素の割合は、尿素4.2kg/炭素含有物質100kgである。
【0022】
このようにして製造された活性炭の窒素含有量は1.0重量%である。一酸化窒素試験で測定された、一酸化窒素変換率は87%であった。
【0023】
実施例3
45%の尿素溶液50リットルを8段階流動層反応器の炉に添加するのに加え、尿素溶液10リットルを3段目の流動層に添加する。このようにして製造された活性炭の窒素含有量は1.26重量%である。一酸化窒素変換率は89%であった。炭素含有物質100kg当たりの尿素の割合は5.0kgである。
【0024】
実施例4
8段階流動層反応器の炉に尿素溶液を50リットル/時間で添加するのに加え、3段目の流動層に尿素溶液を30リットル/時間で供給する。このようにして製造された活性炭の窒素含有量は、1.41重量%である。この試験装置における一酸化窒素変換率は91%である。炭素質材料100kg当たりの窒素の割合は5.9kgである。
【0025】
実施例5
8段階流動層反応器の炉に60リットル/時間で尿素溶液を添加するのに加え、2段目の流動層に20リットルの尿素溶液を供給し、さらに3段目の流動層に20リットルの尿素を供給する。このようにして製造された活性炭の窒素含有量は1.5重量%である。一酸化窒素変換率は92%である。炭素質材料に対する尿素の割合は、炭素質材料100kgに対して尿素8.3kgである。
【0026】
実施例は、炉又は多段流動層の各流動層段階で窒素化合物を供給することによる活性炭の製造方法は、一酸化窒素変換率の観点で高い触媒活性を有する活性炭を製造するために簡単に修正できることを証明している。
【0027】
実施例では、窒素化合物として尿素を選択した。尿素濃度は、炭素質材料100kgに対して4.2〜8.3kgの間で変動させた。この試験は、技術的及び経済的観点から、尿素を含有する化合物100kg当たり5〜6kgの量の尿素が理想的な量であることを強調している。炭素質材料100kg当たりの尿素量を5.9〜8.3kgにさらに増加させても、触媒活性は僅かに改善されるだけである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質材料を窒素化合物に接触させる、高い触媒活性を有する活性炭の製造方法であって、炭素質材料を、多段流動層中、800℃を超える温度で蒸気、窒素及び二酸化炭素の混合物と共に、それ自体公知の方法で部分的にガス化すること、及び、炉及び/又は多段流動層の少なくとも1段階で、窒素化合物を供給することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記炭素質材料が、ココナツの殻、石炭、亜炭コークス、泥炭コークス及びポリマーからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記窒素化合物が、尿素水溶液の形態で添加されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記尿素が、炭素質材料100kgに対して2〜10kg、好ましくは炭素質材料100kgに対して5〜6kgの量で供給されることを特徴とする請求項3に記載の方法。


【公表番号】特表2010−505606(P2010−505606A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530771(P2009−530771)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/007960
【国際公開番号】WO2008/040438
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(509089797)カルボテック アーツェー ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】