説明

高アドレス指定能力を有する電子写真プリンタにおける、ハーフトーンに依存しない時間的色ずれ補正のためのシステム及び方法

【課題】高アドレス指定能力を有する電子写真プリンタにおけるハーフトーンに依存しない時間的色ずれ補正のためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの解像度を有しハーフトーン・スクリーンに依存しない基本バイナリ・パターンから成るパッチを含む基本パッチの目標セットを印刷し、目標セットからのプリンタ応答を計測し、計測された応答を用いて、数学的変換によりプリンタのハーフトーンに依存しない特性化をモデル化し、数学的変換によりプリンタの第1のハーフトーン依存の特性化をモデル化してハーフトーン・スクリーンを用いる第1の予測結果を生成し、ハーフトーン・スクリーンを用いて計測されたプリンタの応答を予測結果と比較してハーフトーン・スクリーンに対応する補正因子を定め、基本バイナリ・パターンの予測応答と補正因子を用いてプリンタの第2のハーフトーン依存の特性化をモデル化する、ステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハーフトーンに依存しない時間的色ずれ補正に関連し、より具体的には、高アドレス指定能力を有する電子写真プリンタにおけるそのような補正のためのシステム及び方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
今日の実業及び科学の世界では、色は伝達の構成要素として必須である。色は、知識の共有を促進し、その結果、デジタル・カラー印刷エンジンの開発に関わる企業は、そのような製品の画質の改善を模索し続けている。画質に影響を及ぼす要素の1つは、長期にわたり、プリンタ上で同じ画質を一貫して生成する能力である。プリンタ上の色は、インク/トナーの変化、温度変動、使用される媒体のタイプ、環境などによってずれ易い。印刷色の予測精度を有効に維持することに対しては、特に印刷媒体は印刷及び表示媒体における商品の正確な表現により大きな重点を置くので、長きにわたる切実な商用ニーズがある。
【0003】
ほとんど全てのカラー・プリンタは、印刷エンジンなどの性質にかかわらず、若干量の時間的色ずれを示す。一定の色再現を維持するためには、一般的にはプリンタ性能をモニタして、ときどきプリンタに対応する色調整を適用することが必要である。例えばR.Balaによる非特許文献1に記述されているように、フルカラー特性化は、確かに時間的色ずれを補正することができるが、個々のチャネルの各々に対する1−D色調応答曲線(TRC)較正に基づく、幾つかのより簡単な色補正法が、通常は十分であり、実施するのが遥かに容易である。この1−D手法はまた、例えばL.Mestha他による特許文献1に説明されているように、色計測のためのインライン・センサの使用にも容易に役立つ。この問題に対して多くの異なった装置及び方法が提案されており、そのほとんどは、大多数の色較正及び色特性化法(上のR.Balaによる非特許文献1を参照されたい)と同様に、ハーフトーンに依存する。
【0004】
プリンタの特性変換を確立する最も一般的な技術は、色見本の大きなセット、即ちCMY(K)パッチを印刷し計測することと共に、CMY(K)→Labマッピングを導くための数学的フィッティング及び補間を含む。特性変換の正確さは、明らかに印刷及び計測されるパッチの数(N)に依存する。重要なことであるが、これらパッチは連続色調CMYのデジタル値に対応すること、即ちそれらのバイナリ表現がハーフトーンに依存することに留意されたい。従って、複数のハーフトーン・スクリーンを装備したカラー・プリンタ又はハーフトーン法に対しては、計測及び補正は、ハーフトーンの数と同じ回数だけ繰り返す必要がある。例えば、5つの異なるハーフトーン・スクリーンを装備したCMYKカラー・プリンタに対しては、4つのチャネルTRCをモニタするには、合計4×5×N個のパッチを必要とし、ここでNは、各チャネル及び各ハーフトーン・スクリーンを印刷及び計測するのに選択されるデジタル・レベルの数である。経験により、ハーフトーンTRCは通常は滑らかな曲線ではないので、各ハーフトーンに対するパッチの数Nは、あまり小さくすることはできないことが示されている。TRCの形状は、デジタル・ハーフトーン・スクリーンの設計に依存するだけでなく、プリンタからの物理的出力のドット重複及び他の微視的形状にも依存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,744,531号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】R.Bala、“Device Characterization”、Digital Color Imaging Handbook、第5章(CRCプレス、著作権2003)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
例えば、図1は、200ライン毎インチ(lpi)のハーフトーン・スクリーンに対して計測されたTRCを示す。実線及び破線はそれぞれ、2つの異なる紙基材上のプリントアウトからの結果を表す。どちらのTRCもあまり滑らかではなく、むしろ、区分的性質を有することに留意されたい。十分なレベルで印刷及び計測されなければ、全域(即ち、デジタルレベル0−225)に対する真のTRCの正確な推定値は、高度なサンプリング及び補完法を用いても導くことができない。従って、N=16個のパッチ(各着色剤チャネルに対して)でも良好なTRC推定には十分でないことが分かることは珍しくない。従って、既存の色補正法は、複数のハーフトーン・スクリーンにわたって適用されるとき、時間及び計測集中的となり易いことが分かり、特にインライン補正に対しては望ましくない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様により、プリンタの時間的色ずれは、かなり頻繁に個々のチャネルの色調応答曲線(TRC)を計測及び取得することによるカラー・プリンタの再較正によって、補正することができる。複数のハーフトーン・スクリーンを装備したプリンタ又はハーフトーン法に対しては、色較正プロセスは、各ハーフトーンの選択に対して繰り返す必要がある。さらに、ドット重複及び他の内在的な微視構造のため、ハーフトーン・スクリーンの本来の色調応答は、めったに滑らかな関数にならない。ハーフトーン・スクリーンの正確な較正を得るためには、印刷するパッチの必要数又はデジタル・レベルの数はあまり少なくすることはできない。従って、ハーフトーンに依存しない色ずれ補正法を開発することが有益であると考えられる。
【0009】
上の参照文献に開示されたハーフトーンに依存しない色補正法は、600dpiまでの同形解像度を有するプリンタに対する2×2バイナリ・プリンタ・モデルに基づく。2×2プリンタ・モデルの基本的仮定は、レンダリングされた物理的スポットが、2つの論理画像ピクセル幅よりも大きくないことである。しかしながら、600dpiより遥かに高い印刷解像度を有する高アドレス指定能力の電子写真プリンタは、この仮定に反する。ハーフトーンに依存しない色補正スキームは、様々な解像度の目標に対して、2×2プリンタ・モデルを用いてなされる合成色予測に基づいて開発された。2つの異なる4800×600の高アドレス指定能力のプリンタを用いて実施された実験は、提案される色補正が非常に優れており、計測及び計算集中型ハーフトーン依存の方法に匹敵することを確認している。さらに別の利点は、提案されるスキームの計算の簡単さ、及び比色分析装置又は一般のデスクトップ・スキャナによって取得できるパッチ計測値に在る。
【0010】
本明細書の実施形態において開示されるのは、複数のハーフトーン・スクリーンを装備した高アドレス指定能力のプリンタを特性化するための、モデルベースのハーフトーンに依存しない方法であり、少なくとも2つの解像度を有し且つハーフトーン・スクリーンに依存しない基本的バイナリ・パターンから成るパッチを含んだ基本パッチの目標セットを印刷し、目標セットからのプリンタ応答を計測し、計測された応答を用いる数学的変換により、プリンタのハーフトーンに依存しない特性化をモデル化し、数学的変換によりプリンタの第1のハーフトーン依存の特性化をモデル化してハーフトーン・スクリーンを用いた第1の予測結果を生成し、このハーフトーン・スクリーンを用いたプリンタの計測応答を予測結果と比較して、ハーフトーン・スクリーンに対応する補正因子を定め、基本的バイナリ・パターンの予測された応答と補正因子を用いて、プリンタの第2のハーフトーン依存の特性化をモデル化する、ステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ハーフトーン・スクリーンに対して計測された例示的なTRCのグラフによる説明である。
【図2】本明細書で開示される方法を実行するための、開示されるシステムの可能な実施形態の例証的な実施例である。
【図3】理想的な非重複プリンタ・モデルの表現である。
【図4】例示的な円形ドットのプリンタ・モデルの表現である。
【図5】開示される方法の態様による、2×2プリンタ・モデルの例示的な表現である。
【図6A】「ベタの」グレー・レベルを表す2×2較正パッチを示す。
【図6B】「ベタの」グレー・レベルを表す2×2較正パッチを示す。
【図6C】「ベタの」グレー・レベルを表す2×2較正パッチを示す。
【図6D】「ベタの」グレー・レベルを表す2×2較正パッチを示す。
【図6E】「ベタの」グレー・レベルを表す2×2較正パッチを示す。
【図6F】「ベタの」グレー・レベルを表す2×2較正パッチを示す。
【図6G】「ベタの」グレー・レベルを表す2×2較正パッチを示す。
【図7】開示される方法による、単一の着色剤プリンタ(例えば、シアン)に対する7つの「ベタの」レベルを定める、7つの2×2バイナリ・パターンを示す。
【図8A】本明細書で説明される典型的な8Xの高アドレス指定能力のプリンタに対する、「低解像度」の2×2パッチの代表的な説明図である。
【図8B】本明細書で説明される典型的な8Xの高アドレス指定能力のプリンタに対する、「低解像度」の2×2パッチの代表的な説明図である。
【図8C】本明細書で説明される典型的な8Xの高アドレス指定能力のプリンタに対する、「低解像度」の2×2パッチの代表的な説明図である。
【図9】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図10】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図11】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図12】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図13】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図14】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図15】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図16】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図17】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図18】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図19】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図20】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図21】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【図22】開示される実施形態の態様に対する、様々なTRC曲線のグラフによる説明である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
改良型色補正を適正に特性化するために、2×2プリンタ・モデルを簡単に概説する。以前に、S.Wang他は、上記のように白黒及びカラー・プリンタを較正するための、ハーフトーンに依存しないプリンタ・モデル、2×2モデルを提案した。本開示に関して、白黒又は単色用途に対する2×2の概念を簡単に特徴付ける。
【0013】
理想的な非重複プリンタ・モデルを表す図3に示すような正方形の非重複出力ピクセル100を生成するハードコピー装置はほとんどない。その代りに、隣接するスポット間の重複は、ほとんどのプリンタに共通であるだけでなく非常に著しい。紙又は基材内での幾何学的重複及び光散乱の組合せは、簡単な白黒プリンタのモデル化にも多くの困難を引き起こす。ドット重複を考慮した最も一般的なプリンタ・モデル(例えば110)は、円形ドットのプリンタ・モデルであり、その例を図4に示す。
【0014】
図5に示す2×2プリンタ・モデルと、図4に示す従来の手法との間の違いは、出力ピクセルの定義である。図5において、長方形100で表される各出力ピクセルは、円形スポットと一致した中心を有し、プリンタによる物理的出力を表す。出力ピクセルを定義するグリッドは、モデル化の目的のための概念的座標にすぎないことは明白である。グリッド又は座標の何らかの変更は、プリンタの実際の物理的出力には全く影響を及ぼさないことになる。従って、グリッドを図5に示す位置にずらして、物理的出力を表す各スポット200が、グリッド210の1つの交差点に中心をもつようにすることが可能である。
【0015】
図5のドット・パターンは図4のものと全く同じであるが、図5の新しいグリッドで定義された出力ピクセル内の重複の細部は、図4に示す従来の座標で定義された出力ピクセルとは完全に異なる。従来の円形ドット・モデルにおける29=512個の異なる重複パターンの代りに、2×2プリンタ・モデルにおいては24=16個だけの異なる重複パターンが存在することを証明するのは難しくない。16個の異なる重複パターンは、図6A乃至図6Gに示す7つのパッチによって表される7つのカテゴリG0乃至G6に、さらに分類することができる。パッチG0及びG6は、それぞれベタ白及びベタ黒である。パッチG1は、互いに鏡像である4つの異なる重複パターンのうちの1つである。同様に、パッチG5もまた4つの重複パターンで形成される。パッチG2、G3及びG4の各々は、やはり互いに鏡像である2つの異なる重複パターンの1つである。従って、「インク」カバレージ又はグレー・レベルに関しては、7つのパッチの各々の全ピクセルは同一である。言い換えると、各パッチは、ベタ白又はベタ黒のように、ピクセル・レベルでは1つのグレー・レベルのみから成り、このグレー・レベルは、任意のベタ色と同じく正確に計測することができる。
【0016】
7つの2×2パッチ(T0−T6)の理想的なバイナリ表現を図7に示す。ひとたび7つの2×2パッチが印刷され、対応する7つの「ベタ」グレー・レベルが計測されると、2×2プリンタ・モデルは、任意のバイナリ・パターンのグレー出力を予測するのに使用することができる。例えば、図3のバイナリ・パターンの出力は、2×2プリンタ・モデルを用いて図5に示し、表1に記載することができ、ここでG0乃至G6はそれぞれ、対応する7つの2×2パッチT0乃至T6の1つからの計測されたグレー・レベルである(即ち、図3に示すバイナリ出力は、表中の各セルに対する7つの2×2パターンの1つとして表される)。
表1

【0017】
任意のバイナリ・パターンの平均グレー出力を推定するのに、2×2プリンタ・モデルは、以下の様に、ユール・ニールセン(Yule−Nielsen)修正を加えたノイゲバウア(Neugebauer)方程式を用いる。
【数1】

式1
式中、Gi(i=0から6まで)は7つの2×2パッチの各々の計測されたグレー・レベルであり、niは所与のバイナリ・パターン内の対応する2×2パッチのピクセルの数であり、γはフィッティング・パラメータとして選択されることが多いユール・ニールセン因子である。さらに別の実施例として、図2に示すバイナリ・パターンの平均グレー・レベルは、次式により推定することができる。
【数2】

式2
【0018】
カラーの2×2プリンタ・モデルは、同様に説明することができ、前に記した参照文献に見出すことができる。2×2プリンタ・モデルは、所与のカラー・プリンタに対する任意のバイナリ・パターンの色出現を予測することができ、2×2モデルによる予測の色の正確さは、例えばインクジェット・プリンタのような比較的均一なスポット形状を有するプリンタに対しては、非常に高い。
【0019】
色補正又は較正アルゴリズムは、典型的には、その着色剤チャネルの各々(例えばC、M、Y、K)に沿ったプリンタの応答を用いる。その場合、単色の2×2モデルは、個々の着色剤チャネルに沿ったプリンタの色応答を予測するのに首尾よく用いることができる。しかしながら電子写真プリンタは、通常、孤立した単一ピクセルの均一な円形スポットを生成せず、そのドット重複はインクジェット出力よりも複雑である。電子写真プリンタに適用される2×2プリンタ・モデルは、より大きな予測誤差を生じる可能性がある。しかしながら、これら系統誤差のモデル化は、開示される色補正スキームの態様につながる。例えば、時間とともに、各着色剤及びハーフトーン化アルゴリズムに対して、2×2予測応答は、真のプリンタ応答から一様に外れる。
【0020】
このことは、数学的には以下のように表される。
【数3】

式3
式中、Rtrue(t,i,H)は、時刻tでの、i番目の着色剤の真応答/計測応答に等しく、R2x2(t,i,H)は、時刻tでの、i番目の着色剤の2x2予測応答に等しく、Hは使用されたハーフトーン化法を表し、i=C,M,Y,Kである。
【0021】
具体的には、この一様な関係は、次式で与えることができる。
【数4】

式4
式中、Rtrue(t,i,H)は、紙からのdeltaEにおける時刻tでの、i番目の着 色剤の真応答/計測応答に等しく、
2x2(t,i,H)は、紙からのdeltaEにおける時刻tでの、i番目の着色 剤の2×2の予測応答に等しく、
Hは、使用されたハーフトーン化法を表し、i=C,M,Y,Kである。
これらの説明された関係は、デフォルト又は基準のプリンタ状態t1における、2x2及び真/計測のプリンタ応答の知見が与えられると、ずれた状態t2における真の応答を以下のように推定することができることを表す。
【数5】

式5
【0022】
或いは、上式はつぎのように書き換えることができる。
【数6】

式6
【0023】
図2を参照すると、ハーフトーンに依存しない84、86の基本バイナリ・パターンと、以前にオフラインで導かれ、選択されたハーフトーン・スクリーン82に対応してストアされた補正因子(例えば、少なくとも2つの解像度の重み係数の合計)とによってオフラインで決定された開示モデルを用いることにより、特定のハーフトーン・スクリーンのパターン82に関する減少した数のCMY試験目標色値80により、特定のプリンタ装置を特性化できることが分かる。印刷装置の真の色値が計測され90、誤差計量計算において、ΔEab92が計算されて、印刷システム動作を特性化するための変換に用いられる。印刷は、90に示すように、少なくとも2つの解像度を有し且つハーフトーン・スクリーンに依存しない基本バイナリ・パターンから成る、パッチを含んだパッチの目標セットを印刷するためのマーキング・システムによって実行することができる。90において参照される計測は、目標セットからのプリンタの応答を計測する比色分析装置によって完了することができ、ここで、色バランス・コントローラが計測された応答を用いて、数学的変換により、プリンタのハーフトーンに依存しない特性化をモデル化する。
【0024】
基準プリンタ状態t1における、真のプリンタ応答及び2×2プリンタ応答の事前計算されストアされた知見に基づいて、ずれたプリンタ状態t2における真のプリンタ応答の推定値は、ハーフトーンに依存しない2×2パッチ(白パッチの反復計測値を無視して、各着色剤に対して7個、及び4色プリンタに対して25個)のみを印刷及び計測することによって、正確に定めることができる。上の方程式の重要な仮定は、2×2予測応答からの機能的マッピングが時間に依存しないことである。物理的に、そのようなモデル化は、2×2プリンタ・モデルと真の計測応答と間の差異が、モデルにより作られるジオメトリの仮定に帰されるという事実に動機を与えられたものである。それゆえに、2×2によって仮定されたドット重複ジオメトリの、真のドット重複ジオメトリに対する差異は、平均すると、時間に関わりなく同じになるはず、即ち具体的には2×2応答と真の応答の間の関係は数学的には時間の全域で不変であるはずと仮定することは合理的である。この仮定は、前に記したように、S.Wang他による以前の研究で実験的に立証された。
【0025】
しかしながら、特に600dpiより遥かに高い解像度を有する高アドレス指定能力の電子写真プリンタに関しては、2×2プリンタ・モデルによって有意な色応答予測を得ることは困難であり、その理由は2×2プリンタ・モデルに対する前提の基本原理が、レンダリングされた物理的スポットは2つのデジタル・ピクセル幅よりも広くてはならないということであるためである。この前定は、高アドレス指定能力のプリンタに関しては破られる。この困難を考慮して、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック(それぞれC、M、Y、K)の着色剤チャネルの各々に沿ったプリンタの、低解像度」の2×2予測と真の高解像度応答との間の関係を研究した。その結果、同様の不変性が持続し得るが、幾つかの異なる低い解像度からの2×2予測を組み合わせる必要があると判断された。本開示は従って、高アドレス指定能力の電子写真プリンタのための、新規のハーフトーンに依存しない色補正に関連する。
【0026】
図8A乃至図8Cはそれぞれ、実験的に用いられた典型的な8X高アドレス指定能力のプリンタ(例えば、一方向の解像度が、それに垂直の方向の解像度の8倍)に対する、「低解像度」の2×2パッチを表し、それぞれ、シアン・チャネルを600、1200及び2400×600の解像度で示す。図8A乃至図8Cから明らかなように、デジタル・ファイル内の2×2バイナリ・パターンのピクセル複製により、低解像度の2×2予測を取得すること、及び続いて印刷されたパッチの巨視的計測値を取得することが可能となる。一例として、解像度4800×600の8Xの高アドレス指定能力のプリンタに対しては、「低解像度1X」の2×2予測は、適切な方向への因子8によるピクセル複製により、600×600において2×2パッチを印刷し計測することによって取得される。2×2プリンタ・モデルの仮定がこれらの低解像度において近似的に成り立つので、1つの目的は、低解像度の2×2予測が真の高アドレス指定能力応答からずれる仕方に一定のパターンがあるかどうかを調査することであった。以前に明らかにしたのと類似の不変性が持続するが、幾つかの異なる低解像度からの2×2予測を組み合わせる必要があることが見出された。
【0027】
具体的には、時刻t2における真の高解像度プリンタ応答の推定値は次式により与えられる。
【数7】

式7
式中、i、Hは前と同じであり、jは2×2予測の解像度を示し、一例として8Xの高アドレス指定能力のプリンタに対してはj=1X,2X,4Xなどである。
【0028】
図9及び図10は、それぞれデフォルト(t1)及びずれた(t2)プリンタ状態における、マゼンタ・チャネルに対する2×2予測応答(実線)及び真のプリンタ応答(破線)を示す。175lpi集合ドットのハーフトーン・スクリーンを用いた。両方の応答は、紙からdeltaE(ΔE)において、例えば電子写真プリンタの4800×600(即ち、8X高アドレス指定能力)に対するものである。図9及び図10の2×2予測は、2×2パッチを1Xの解像度で(即ち、600×600バイナリ及び因子8で縮尺)印刷及び計測することにより取得される。解像度2X及び4Xに対する同様のプロットを、それぞれ図11及び図12、並びに図13乃至図14に示す。
【0029】
次に図15を参照すると、方程式7を用いて推定された2×2応答(実線)が、高アドレス指定能力の真の計測応答(破線)に対比して示される。図15から明白なように、真(破線)の応答と推定された(実線)応答とは、ほぼ完全に重なっている。
【0030】
別の電子写真高アドレス指定能力のプリンタのシアン・チャネルに対する同様のプロット及び対応する補正を、図16乃至図22に示す。200lpi集合ドットのスクリーンをハーフトーン用に用いた。よりに具体的には、図16は、デフォルト状態t1における真の高アドレス指定能力のプリンタ応答を0.5Xの2×2予測に対比して示し、そして図17はずれた状態t2における同じものを示す。図18は、デフォルト状態t1における真の高アドレス指定能力のプリンタ応答を1Xの2×2予測に対比して示し、図19は、ずれた状態t2における同じものを示す。図20及び図21は、それぞれデフォルト状態(t1)及びずれた状態(t2)における真の高アドレス指定能力のプリンタ応答を2Xの2×2予測に対比して示し、図22は、ずれた状態t2に対する、真の高アドレス指定能力のプリンタ応答を推定応答に対比して示す。
【0031】
方程式7における提案された補正の顕著な特徴(方程式7は、1つの解像度のみが用いられて対応する重みが1に等しい方程式6の一般化であることに留意されたい)は、以下の様に要約できる。
【0032】
A)最低解像度に最大重みを付ける。具体的には、最低解像度は最も堅牢(即ち、計測ノイズなどの影響を受けない)であるが、粗い近似を与え、一方、解像度が高くなるほど、細部をより良く捕捉する。これは、図16乃至図22に容易に見ることができる。
【0033】
B)実験に使用した重みは、第1の試験プリンタに対してはw1=0.45、w2=0.3、w3=0.25であり、第2の試験プリンタに対してはw1=0.48、w2=0.29、w3=0.23である。これらの重みは一般に、複数のプリンタ状態からのデータに基づいて最適化されるが、この最適化は、1度だけ実行する必要があり(オフラインで)、ひとたび重みが決定されると、それらはそのままリアルタイム較正経路で使用することができる。そのような重みは、例えば、プリンタのそばに表される色バランス・コントローラに関連するメモリにストアできる(図2;90)ことが企図される。
【0034】
上の開示を考慮すると、4色プリンタ用の色補正法は、以下のように列挙される。その方法は、例えば、予めプログラムされた命令に従って、又は印刷システムに関連する他の計算プラットフォームにより、図2A、図2Bの実施形態に示されるシステム上で実行することができる。
I.時刻t1(デフォルト又は基準プリンタ状態)において、及び
各着色剤チャネルに対して:
A.必要な数の解像度(少なくとも2つ)において、図7に示す複数(例えば7個) の2×2パッチを印刷し計測する;
B.各ハーフトーン・スクリーン又は方法に対して:
1.2×2のTRC推定を得るため、各一定の入力デジタル・レベルに対して:
a.出力バイナリ・パターンを導く;
b.2×2プリンタ・モデルを用いてバイナリ・パターンを7レベルのグレー 画像として解釈する;
c.方程式1及び7つの2×2パッチの計測値を用いて平均出力を得る;
2.t1においてそして各解像度に対して、2×2TRC予測値をメモリにストア する;
3.異なるレベルの出力を印刷し計測することにより真のTRCを取得し、この真 のTRCをメモリにストアする。
II.後に、時刻t2(ずれたプリンタ状態)において、及び
各着色剤チャネルに対して:
A.必要な数の解像度において、図7に示す7つの2×2パッチを印刷し計測する;
B.各ハーフトーン・スクリーン又は方法に対して:
1.2×2TRC推定を得るため、各一定の入力レベルに対して:
a.出力バイナリ・パターンを導く;
b.2×2プリンタ・モデルを用いてバイナリ・パターンを7レベルのグレー画 像として解釈する;
c.方程式1及びステップ2aからの計測結果を用いて平均出力を得る;
2.t2における2×2TRC推定及び初期時間t1においてストアされた2× 2推定を用いることにより、方程式7(各デジタル・レベルに対する)における大角 括弧内の補正因子(例えば少なくとも2つの解像度の重み係数の合計)を計算する;
3.上で取得された補正をt1(I.3.)にストアされた真のTRCに施して 、新しい時刻t2における真のTRCを予測する。
4.予測された真のTRCに基づいて、入力画像に対応する調整を行って色ずれ を補正する。
【0035】
前述のステップはまた、より一般的な形態に特性化することができ、その場合、少なくとも2つの解像度パッチの目標がハーフトーンに依存しないパターンで印刷され、次いで計測されて目標に対するプリンタ応答が特定される。別々の計測を分光光度計測装置の従来の手段によって実施する。次いで、装置のハーフトーンに依存しない特性化を、計測された応答を含む数学的変換によりオフラインでモデル化することができる。「オフライン」は、普通の作業環境においてプリンタがユーザ/顧客指定のタスクを実行しているとき以外に、特性化プロセスが実行されることを意味することを意図したもので、これに対して「オンライン」はそのような顧客環境である。次に、ハーフトーン・スクリーンに依存する特性化が数学的変換によりモデル化されて予測結果が生成される。予測結果は、真の色計測応答と比較されて、用いたハーフトーン・スクリーン印刷のための補正因子が取得される。次に、プリンタの第2のハーフトーンに依存する特性化は、数学的変換及び補正因子を用いてモデル化することができる。
【符号の説明】
【0036】
100:出力ピクセル
110:プリンタ・モデル
200:物理的出力
210:グリッドの交差点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のハーフトーン・スクリーンを装備した高アドレス指定能力のプリンタを特性化するための、モデルベースの、ハーフトーンに依存しない方法であって、
少なくとも2つの解像度を有し、ハーフトーン・スクリーンに依存しない基本バイナリ・パターンから成るパッチを含む、基本パッチの目標セットを印刷し、
前記目標セットからのプリンタ応答を計測し、
前記計測された応答を用いて、数学的変換により、前記プリンタのハーフトーンに依存しない特性化をモデル化し、
前記数学的変換により前記プリンタの第1のハーフトーン依存の特性化をモデル化して、ハーフトーン・スクリーンを用いる第1の予測結果を生成し、
前記ハーフトーン・スクリーンを用いて計測された前記プリンタの応答を前記予測結果と比較して前記ハーフトーン・スクリーンに対応する補正因子を定め、
前記基本バイナリ・パターンの予測応答と前記補正因子を用いて、前記プリンタの第2のハーフトーン依存の特性化をモデル化する、
ステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ハーフトーンに依存しない特性化の前記モデル化は、時間的に不変であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モデルは、少なくとも第1の重み係数と第2の重み係数を含み、
前記第1の重み係数は、前記第2の重み係数よりも大きく、そして前記少なくとも2つの解像度のうちの低い解像度の色を計測するのに適用されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図6E】
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【図6F】
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【図6G】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−166563(P2010−166563A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−3788(P2010−3788)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】