説明

高信頼性及び画質を有するスナックのインクジェット印刷

上面を有する基材を形成する工程;少なくとも1つのインクジェットプリンタを提供する工程;インクジェットプリンタを用いて基材上に画像を印刷して、印刷された基材を形成する工程;及び印刷された基材を調理する工程を含む、食用基材を製造するためのプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その上に配置された画像を有する食用基材に関し、特に食用基材上に画像を配置することの信頼性を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品は、単なる肉体の維持を超えるものを提供する。食品の味及び見掛けはまた喜びも提供する。クッキー、ケーキ、及びキャンディなど、多くの人気のある食品は、その食品を、より視覚的に魅力的なものにする、何らかの飾りを含む。スナックなどの食用品目の上に印刷をすることで、スナックを食べること自体を超える追加レベルの興奮を提供することができる。印刷される内容は、図柄、文章、又は組み合わせの形態であることができ、並びに例えばゲーム、物語、ジョーク、及び教育的な事実を伝えるために用いることができる。デジタル印刷システムは、多くの多様な画像をチップ又はクッキーのような連続的食用基材にわたって連続して印刷し、消費者の興味を維持する方策を提供する。しかしながらデジタル印刷システムは、食料品が典型的に製造される環境において損傷又は誤動作をしやすい精密機器である。こうした機器の信頼性は多くの場合、全体の生産プロセスの信頼性に影響を与えることになり、並びに大量の食料品印刷の商業的及び経済的実行可能性を決定する場合がある。
【0003】
例えば、油で揚げるなど更に処理される食料品上への印刷は、追加的課題を生じる。例えば、過剰のインクは、食用基材表面から離れて揚げ油の中に滲み出す可能性があるか、又はそれは処理機器の表面を覆う可能性がある。油の中に滲み出すインクは油の色を変える可能性があり、これは時間と共に全体の製品に薄く色を付ける場合がある。これは、否定的な審美的問題を生み出すことになるか、又は揚げ油の劣化安定性に影響を与えることになる。特開平第10−166545号公報は、回転式スクリーン印刷機を採用し、印刷された水性インクの乾燥を加速するため、及び過剰のインクがその後のプロセス工程の揚げ油に滲出することを防ぐために、過剰のインクを印刷された食料品から取り除く、該食料品を油でコーティングされたローラーにかける、油で揚げる前に食料品上に印刷するための印刷装置及び方法を記載している。しかし、この除去プロセスは、追加の処理工程及び追加の機器を加える。これらの両方が、生産プロセスの費用及び故障の可能性を増やす。その上、油でコーティングされたローラーは、長期の実行時間中に重合する傾向があり、長期の生産工程にとって望ましくない。
【0004】
回転式スクリーン印刷はまた、多様性の限定など他の重大な不利点を有する。印刷できる画像の数は、プリンタロールの限定された表面積上に納まることができるものに限定される。これは、消費者に供給できる印刷画像の多様性を限定する。更に、より多数の画像が所望される場合には、ロールを変えなくてはならない。これは、新しいロールの追加費用に加えて、費用のかかる生産中止を結果としてもたらす。別の不利点は、プリンタロールは食用基材に接触する必要があることであり、それは衛生に対する否定的な影響を有する可能性があり、これは緩和するのが難しい。
【0005】
それ故に、追加的処理工程なしに、はっきりした明瞭な画像を有する、食用基材に印刷する方法への要求が存在する。即ち、過剰のインクの除去などの二次処理工程を排除することが望まれる。そうすることで、機器及び製品の不良、並びに生産の運転停止の間隔の時間の長さが伸びる可能性がある。機器停止時間を最小にすることは、いずれの産業プロセスについても経済的実行可能性を高める。また、衛生を向上し及び生産プロセスを停止せずに印刷できる異なる画像の量について柔軟性があるこうした方法を有することは有利である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の製品及びプロセスは、既存の製品及びプロセスを超えるこれらの及び他の利点を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様では、印刷された食用基材を製造するためのプロセスが提供される。このプロセスは次の工程:上面を有する基材を形成する工程;少なくとも1つのインクジェットプリンタを提供する工程;インクジェットプリンタを用いて基材上に画像を印刷して、印刷された基材を形成する工程;印刷された基材を調理する工程を含む。好ましくは、インクジェットプリンタは、少なくとも1つのノズルを有する、ドロップオンデマンド(DOD)の圧電方式のインクジェットプリンタである。好ましい実施形態では、インクジェットプリンタは、画像を生地シート上に配置し、それは個々の片に切断され、次に油で揚げられて、加工スナックチップを形成する。
【0008】
本発明の別の態様では、基材の上面からノズルの最下面までの距離は、約0ミリメートル(mm)〜約10mm、好ましくは約0.2mm〜約8mm、更により好ましくは約0.5〜約5mm、及びなお最も好ましくは約1mm〜約3mmである。
【0009】
本発明の別の態様では、インクジェットプリンタは、インクを制御可能に分配することにより基材上に画像を印刷し、及びその際インクは約40℃を超える温度で分配される。インクがノズルに隣接する空気の露点を超える温度で分配されることは好ましい。本発明の更に別の態様では、適用温度におけるインクの粘度は、約0.03Pa.s(30センチポアズ)未満である。
【0010】
本発明の更に別の態様では、少なくとも2つのインクジェットプリンタが互いに支援し合うために使用され、及び両方のプリンタが使用可能であるとき、それらの両方共が、ノズルを準備された状態に及びそれらの動作温度近くに保つために十分なほど頻繁に印刷するために使用される。
【0011】
本発明のプロセス及び製品は、食用基材上への印刷動作の高められた信頼性を提供する。1つの実施形態では、印刷動作の信頼性は、印刷の仕事量を分かち合う二元的な印刷装置(dual printing units)に頼ることにより高められており、こうすることにより、単一印刷装置が誤動作する場合に予備の印刷装置を準備及び用意する必要を排除する。即ち、仕事量を分かち合う2以上の印刷装置を用いることにより、装置のすべてが準備された状態及び実際の動作状態にあり、並びにそれらのどちらもが、他方が誤動作する場合には、生産フローを停止することなく直ちに印刷の仕事量のすべてを引き継ぐことができる。その上、印刷動作の信頼性は検出システムにより高められ、これは、食用基材中の異常(例えば、厚みのある食用基材、ごみの粒子、基材中のしわ)がプリンタヘッド装置に影響を与え、損傷及び修理のための休止時間を生じる可能性があることをこうした検出システムが検出した場合には、警告し、自動的に印刷装置を印刷位置から取り除く。更に別の実施形態では、プリンタヘッドを損傷する可能性、画質の問題又は衛生の問題を生み出す可能性のある水分の凝縮を避けるために、プリンタヘッドを、それらが動作する環境の露点を超える温度に保つことによって、プリンタヘッド上の凝縮を避けることにより、印刷動作の信頼性は高められる。当業者は、上記のプロセスの組み合わせが、食用基材上の印刷動作の信頼性を更に高めるために使用できることをよく理解するであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書で引用されるすべての文献は、その全体を参考として組み込まれる。いずれの文献の引用も、それが本発明に関する先行技術であることを承認するものとして解釈されるべきでない。
【0013】
本明細書では、本発明は、生地シートの上に印刷することに関して一般に記載されることになるが、いずれの好適な食用基材シートも本発明の範囲内であることは理解されるべきである。
【0014】
本明細書で使用するとき、「シート」は、基材上に扁平な表面を提供するようなやり方で、成形された、押し出された、又はロール製粉された基材を包含することができる。
【0015】
本明細書で使用するとき、「流れ」は、基材の連続的な供給源を意味する。例えば、基材の流れとしては、コンベアベルトにより、又は連続プロセス、半連続プロセス、若しくはバッチプロセスからの送りとして提供されるもののような複数個の基材を包含することができる。
【0016】
本明細書で使用するとき、「食用基材」又は「基材」は、その上に配置された画像を有することができる、消費に好適ないずれの材料も包含する。いずれの好適な食用基材も、本明細書の本発明に関して使用することができる。好適な食用基材の例には、生地シートを挙げることができるが、これに限定されない。更に、好適な食用基材には、スナックチップ、加工スナック(例えば、トルティーヤチップ、ポテトチップ、ポテトクリスプなどの加工チップ)、押し出しスナック、クッキー、ケーキ、チューインガム、キャンディ、パン、果物、乾燥果物、ビーフジャーキー、クラッカー、パスタ、肉のシート、チーズのシート、パンケーキ、ワッフル、乾燥果物フィルム、朝食用シリアル、及びトースターペストリーを挙げることができる。
【0017】
本明細書で使用するとき、「加工スナック片」又は「スナック片」は、生地からまだ分離(例えば、切断)されていないスナック片を包含するほど十分に意味が広い。例えば、1つの実施形態では、生地シート上に画像が配置され、その後に生地シートが個々の片に切断される。更に、「加工スナック片」又は「スナック片」は、調理済み(例えば、揚げられた)基材及び未調理(例えば、生地)の基材の両方を包含するほど十分に意味が広い。
【0018】
A.食用基材の提供
本発明によって、食用基材シートが提供される。食用基材シートは、後に分割されて多くの個々の片を結果として生じる、食用材料から構成される連続シート又は流れの形態であることができる。1つの実施形態では、食用基材シートは生地シートである。
【0019】
好ましい実施形態では、食用基材は、加工スナック片、好ましくは加工スナックチップ、及びより好ましくは加工ポテトクリスプを作り出すために使用される生地シートを含む。好適なスナック片には、米国特許第3,520,248号「チップ揚げ機(Chip Frying Machine)」(マッケンドリック(MacKendrick)、1970年7月14日発行);米国特許第3,576,647号「チップタイプ製品の調製(Preparation of Chip-Type Products)」(リーパ(Liepa)、1971年4月27日発行);米国特許第3,608,474号「チップタイプ製品を調製する装置(Apparatus for Preparing Chip-Type Products)」(リーパ(Liepa)、1971年9月28日発行);及び米国特許第3,626,466号「チップタイプ製品を調製する成形装置(Molding Device for Preparing Chip-Type Products)」(リーパ(Liepa)、1971年12月7日発行);米国特許第5,464,643号(ロッジ(Lodge));並びに米国特許第6,066,353号及び米国特許第5,464,642号(ビラグラン(Villagran)ら)に記載されるものが挙げられる。1つの実施形態では、加工スナックチップは、米国特許第5,464,643号(ロッジ(Lodge))、並びに米国特許第6,066,353号及び米国特許第5,464,642号(ビラグラン(Villagran)ら)に記載されるもののような加工ポテトクリスプである。本明細書で使用できる他のスナックチップには、米国特許第4,645,679号「ポテトチップの歯ごたえを有するコーンチップを製造するプロセス(Process for Making a Corn Chip with Potato Chip Texture)」(リー(Lee)III世ら、1987年2月24日発行)に記載されるものが挙げられる。
【0020】
加えて、食用基材は、これらに限定されないが犬用ビスケット及び犬用おやつのようなペットフードを包含することができる。
【0021】
食用基材は、いずれの好適な形態であることもできる。例えば、基材は、消費できる状態の最終食品、消費前に更なる調製が必要な食品(例えば、スナックチップの生地、乾燥パスタ)、又はこれらの組み合わせであることができる。更に、基材は堅いことも(例えば、加工スナックチップ)、又は堅くないことも(例えば、乾燥果物フィルム)できる。1つの実施形態では、食用基材は互いにつながっている(例えば、個々の片に切断する前の生地シートの形態で)。
【0022】
B.画像源の提供
本明細書で使用するとき、「画像源」は、1以上の画像のいずれの集合も包含する。例えば、画像源は、電子的(例えば、コンピューターに基づく)データベース、複数個のデータベース、又はハードコピー画像の集合であることができる。画像は、単色又は多色であることができる。画像は、染料、色素、他の天然若しくは合成物質、風味剤、又はこれらの組み合わせを含むことができる。画像は、調理プロセスの前又は後(例えば、生地シートが焼かれる又は揚げられる前又は後)に、食用基材上に配置することができる。更に、画像は、食用基材が個々の片に切断される前又は後(例えば、生地シートが個々のクッキー又はスナックチップ片に切断される前又は後)に、食用基材上に配置することができる。好ましい実施形態では、インクジェット画像が加工スナックチップの上に印刷される。食用基材の1超過の表面が、その上に配置された画像を有することができる。複数個の画像配置装置を採用することができ、各自が食用基材の異なる側(例えば、上、下、及び/又は側面)の上に画像を配置する。
【0023】
画像配置装置は、インクジェットプリンタを含む。好ましくは、画像は、国際特許公開WO01/94116(ウィルコックス(Willcocks)ら、2001年12月13日公開)に記載されるもののようなインクジェット印刷システム(例えば、連続ジェット、ドロップオンデマンド)などのデジタル印刷により配置される。スナックに印刷するためのインクジェットプリンタヘッドの使用は、多くの異なる画像を複数の連続的食用製品にわたって連続して印刷して、これらの食料品の消費者の興味を引き起こす可能性を提供する。また、実現される非接触印刷は、機器をきれいにするために生産を停止する必要なしに、長期間の実行にわたって衛生基準を満たす能力を高める。インクジェットプリンタを使用することはまた、経済的実行可能性のために必要である、信頼性のある動作を可能にするために解決すべき新しい課題を生み出す。
【0024】
画像は、いずれの好適な形態であることもできるが、好ましくは、コンピューターソフトウェアを使用して生成され、コンピューター、コンピューターディスク、RAM、若しくはROM、又はビジュアルディスプレイなどの電子記憶装置に記憶されるような電子媒体であることができる。当該技術分野において既知であるような、いずれの好適なコンピュータシステムを使用することもできる。
【0025】
前記画像源からの画像は、画像配置装置によって、いずれかの好適な順序、例えば繰り返し順序、無作為、又はいずれかの予め定められた順番により使用することができる。
【0026】
好ましくは、画像源内のすべての画像が互いに異なる。しかしながら、1つの実施形態では、画像源内の画像の少なくとも2つが同一である。
【0027】
いずれの好適な画像を使用することもできる。画像は、1以上の図柄の要素、1以上の文章の要素、又はこれらの組合せを含むことができる。本明細書で使用するとき、「文章」とは、1以上の英数字記号を意味する。文章は、文字、数字、言葉、及びこれらの組み合わせを包含することができる。
【0028】
本明細書で使用するとき、「図柄」とは、図的表現を意味する。例えば、図柄は、物体、記号、景色、人物、動物、おもちゃ、又はキャラクターを包含することができる。好適なキャラクターには、漫画のキャラクター及び許諾を得たキャラクター、並びにメディア、広告、又は特定の文化で周知の人気タレントに関連付けられたキャラクターを挙げることができる。
【0029】
好適な画像の非限定例として、文字、数字、言葉、動物、漫画のキャラクター、メディアの人気者、風刺画、歴史出来事、及び写真が挙げられる。
【0030】
更に、画像は、言葉、数字、手がかり、ヒント、ジョーク、啓示、雑学クイズ、写真、画像、パズル、物語、ゲーム、又は一続きの出来事(例えば、アニメーション)の全体又は一部の形態であることができる。例えば、画像は、雑学クイズの問題の部分を含むことができる。1つの実施形態では、画像は、ジグソーパズルの1ピースを図示する。
【0031】
複数の画像を食用基材上に印刷するときには、各画像の印刷を開始する時をプリンタに指示する必要がある。それらの指示を提供する1つのこうしたやり方は、トリガーパルス信号を介することである。トリガーパルス信号印刷は、同時係属米国特許出願60/669,094(2005年4月7日出願)に詳細に記載されており、その全体の開示は参考として組み込まれる。当業者は、本発明のプロセスと共に使用するのに好適な画像レジストレーションには、当該技術分野において既知の他の方法があることをよく理解するであろう。
【0032】
C.重複して、常に準備されたプリンタヘッドの使用
インクジェットプリンタヘッドは、100%のノズル噴出を持続するために、通常はインクのパージ又は一般洗浄の形態での定期的な保守整備が必要である。この保守整備は、プリンタヘッドを操作から外し、生産の損失及び休止時間を生じる。予備の、重複するプリンタヘッドを有することにより、オペレーターはこの保守整備を、予備のヘッドを使用して製品の生産を継続しながら行うことができる。
【0033】
しかし、使用中でないインクジェットプリンタヘッドは、調子を整えるための時間が必要であり、及びそれらが使用可能になる前に準備されていなければならない。生産の動作可能時間を最大にするために、重複するヘッドに素早く切り替えることは有利である。これは、予備ヘッドを準備された状態にし、及び印刷に適切な温度にしておくことを必要とする。予備ヘッドを、基材から適当な距離で動作位置に有すること、及び基材上の適当な点を目標とするように較正しておくこともまた重要である。しかしながら、プリンタヘッド中にインクを設定されたメニスカスにより維持し及びすぐに噴出できるようにすることは、DODインクジェットシステムにとって問題である可能性がある。
【0034】
これを実現する1つの方法は、生産中に両方のプリンタヘッドを「トグル」モードで使用することであり、それによってプリンタヘッドは印刷の仕事量を分かち合う。トグルモードの1つの例では、第1プリンタヘッドが、1つおきに食用基材に印刷し、その一方で第2プリンタヘッドが残りの食用基材に印刷する。別の実施形態では、第1プリンタヘッドが一定時間の間(例えば、30秒)印刷し、及び第1プリンタヘッドが印刷を終えた後で第2プリンタヘッドが同じ時間の間印刷し、次いで第1プリンタヘッドが再び印刷を開始するというように続く。更に別の実施形態では、第1プリンタヘッドが所与の時間中、その時間の約50%の間印刷し、及び第2プリンタヘッドがその時間の残りの約50%の間印刷する。トグリングは、予備のプリンタヘッドを使用できる状態に保つだけでなく、また各プリンタヘッドに要求される負荷を減らすことにより、平均故障間隔(MTBF)を長くする。即ち、各ヘッドがデプライミング前に平均で1千万の液滴を生成できる場合、ここで合計2千万の液滴が、ヘッドが故障する前に生産され得る。また、全体の印刷システムについてのMTBFは、両方の装置が同時に誤動作するときには、二千万の液滴より著しくはるかに高い。前述の記載はプリンタヘッドの数が1から2へと増えることに基づいているが、当業者はトグルモードで動作する3以上のプリンタヘッドを有することの利益をよく理解するであろう。
【0035】
2つのプリンタヘッド間、例えば図3に示され及び以下に非常に詳細に記載されるプリンタヘッド42及び142間のトグリングを達成する簡単なやり方は、画像情報ファイルの設計、及びどのように複数の画像情報ファイルが順に並んでいるかによる。1つの実施形態では、画像情報ファイル10は、動作モードに応じて(即ち、トグルモード対全画像を印刷する専用装置)プリンタヘッドが独立してアドレス指定できる4つの異なる部分を含み、その際、この部分の各々は異なる目的に役立つ。図1及び図2は、4つの部分又はバンク1、2、3及び4を含む画像情報ファイル10及び20の表現を示す。バンク1及びバンク2は、動作がトグルモードに設定されるときに使用され、バンク3及びバンク4は専用プリンタヘッドが選択されるときに使用される。トグルモードのときには、第1プリンタヘッド42はバンク1を常にアドレス指定し、第2プリンタヘッド142はバンク2を常にアドレス指定する。専用プリンタヘッド(第1プリンタヘッド42又は第2プリンタヘッド142のいずれか)が選択されるときには、専用プリンタヘッドはバンク3を常にアドレス指定し、及び活動していないプリンタヘッドはバンク4をアドレス指定する。したがって、プリンタヘッドに送信される画像は、トグルモード及び専用モードで印刷するためのすべての必要な情報を含有する。この方法により、トグルされているプリンタヘッド及び1つの専用プリンタヘッド間の切り替えは画像プログラムに何の変化も必要としない。
【0036】
より具体的には、所与の画像情報ファイルについて、バンク1又はバンク2のいずれかが画像を有することになり、及び他方、それぞれバンク2又はバンク1はブランクのままになる。また、バンク3は、バンク1又はバンク2のいずれかの画像と同じ画像を有することになり、及びバンク4は常にブランクのままになる。この手法を仮定すると、われわれはここで画像情報ファイルを、第1画像情報ファイル10の中で、画像11を持っているのはバンク1であり、一方バンク2はブランクのままであるように、及び第2連続画像情報ファイル20の中で、画像21を持っているのはバンク2であり、一方バンク1はブランクのままであるように順序付けてもよい。画像情報ファイルの順序において、バンク1及びバンク2の間でどちらのバンクが画像を持っているかを交互にすることによって、第1プリンタヘッド42及び第2プリンタヘッド142が、印刷仕事量を時間と共に切り替える又は分かち合うことを可能にする。この手法では、画像情報ファイルは、印刷されることを指定されたすべての食用基材に使用されるが、画像情報を実際に印刷するためにどのプリンタヘッドが使用されるかは、どのバンクが実際に画像を有するかを指定することにより選択されることに注意されたい。仮にバンク1及びバンク2の両方が、同じであるか違うかにかかわらず画像を持っているという場合には、第1プリンタヘッド42及び第2プリンタヘッド142の両方は、モードがトグルに設定されていてバンク1及びバンク2がアドレス指定されるバンクであるという場合には、それらのそれぞれのバンク中の対応する画像を印刷することになるということにもまた注意されたい。
【0037】
オペレーターは、トグルにするか否かを、自分の判断で選択することができる。専用のプリンタヘッドを使用することに対して、トグルにすることを選択するときには、複数の食用基材にわたって印刷するために使用される画像情報ファイルの順序は、所与の食用基材についてインクが特定のプリンタヘッドから噴出されるかどうかを決定する。
【0038】
別の実施形態では、印刷される画像の第1の部分は、画像情報ファイルのバンク1の中に位置しており、一方、第2の部分は画像情報ファイルのバンク2の中に位置している。このようにして、両方のプリンタヘッドは、単一画像の印刷を分かち合う。この場合、バンク3は、それぞれバンク1及び2の中に位置する第1及び第2部分の合成物を含み、一方、バンク4はブランクのままであり、そのためプリンタヘッドは、モードが専用プリンタヘッド印刷に設定されているときに全体の画像を印刷することができる。
【0039】
D.異常の検出及び回避
インクジェット技術を用いて作業するとき、重要な課題はプリンタヘッドのオリフィスを閉塞しないようにきれいに保つことである。この課題は、生地シートのような事実上粘弾性又は粘着性である基材を用いて作業するときには、プリンタヘッドが印刷される基材から短い距離のところに存在しなければならないために難しくなる。DODインクジェットプリンタヘッド(42又は142のいずれか)のノズル38の最下面36と生地シート上面64、即ち印刷される基材との間の図3の好ましい距離「d」は、約0〜約10ミリメートル(mm)、好ましくは約0.2〜約8mm、より好ましくは約0.5〜約5mm、及び最も好ましくは約1〜3mmである。この短い距離「d」は、プリンタヘッドのオリフィスから印刷される基材の方に向かう液滴軌道の変動の効果を最小にするが、この液滴軌道の変動の効果はより長い距離の間に大きくなり及び結果として悪い画質をもたらす可能性がある。しかしながらこの短い距離は、生地シートの生産では一般的であり及びプリンタヘッドに影響を与える可能性がある、例えば62のような変動及び異常に、プリンタヘッドのオリフィスを曝す。代表的な異常には、生地シートの厚さの変動、生地シートのしわ、生地シートの裂け目又は折り込み、及び生地シートの上に重なる生地粒子が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本発明による生地印刷プロセス30を描写する図3に戻ると、第1プリンタヘッド42の方に向かい、次いで、第2プリンタヘッド142の方に向かう矢印の方向に進んでいる生地シート60の上に、1つのこうした異常62が示されている。生地シート60の異常62がプリンタヘッド42又は142のいずれかに影響を与える場合には、噴出の短期的妨害並びに機器への長期的損傷の可能性があり得る。これは、短期の画質変動から、問題を修正する又はプリンタヘッドを交換するために休止時間を必要とするプリンタヘッドの故障にまで及ぶ可能性があり、それらの両方が生産時間費用及び機器費用に関して高くつく可能性がある。この問題を避けるために、表面形状読取機52は、例えば62のような異常を探すために形状センサー54を生地シート上面64の上に送る。形状センサー54は、生地シート上面64に好ましくは平行であり、図3の距離「d」より高くない距離に位置し、及び少なくともプリンタヘッドが対象とする位置に相当する生地シートの幅全体に及ぶ。形状読取機は、何かがレーザー光路を横切り、異常がプリンタヘッド42又は142に影響を与える場合があることを示すと検出する、レーザーに基づく検出器であることができる。あるいは、形状センサー54は、例えば、生地シート上面64の高さを固定した定常点に対して測定するなどのその他の既知の方法により異常を検出することができる。形状読取機は、プリンタヘッドの前に、即ち生地シート60が印刷される前に、必ず設置されなければならない。
【0041】
表面形状読取機52は、信号プロセッサ48と通信する表面形状信号50を介してインクジェットプリンタヘッド42及び142と通信する。信号プロセッサは、多様な既知の処理装置のいずれであることもでき、例えば簡単なラップトップ又はデスクトップコンピュータで十分である。信号プロセッサ48は、プリンタヘッド信号46及び146をプリンタヘッド42及び142に送信する。同様に、信号プロセッサ48は、画像信号58を受信し、及びそれをプリンタヘッド42及び142にプリンタヘッド信号46及び146を介して伝送することができる。1つの信号プロセッサが示されているが、複数のプロセッサを使用してもよいことを、当業者はよく理解するであろう。
【0042】
プリンタヘッド42及び142は、表面形状読取機52により発信された表面形状信号50に応答して、生地シート上面64から離れたり又はそれに向かって動いたりすることができなければならない。好ましくはプリンタヘッド42及び142は、生地シート60に垂直な方向に動く。表面形状読取機52及び第1プリンタヘッド42との間の距離「S」は、プリンタヘッド42及び142に、異常62に接触する前に動くための十分な時間を与えるように、十分でなければならないことは理解される。距離「S」は、当業者によって容易に決定されることができ、及び生地シート60が進む速度、並びにプリンタヘッド42及び142を持ち上げることができる速度に基づくことになる。
【0043】
異常62は、第1プリンタヘッド42に接触する場合がある生地シート60からの突出として示されているが、異常は生地シート60の中の陥没である場合もあることは理解される。最適印刷は、距離「d」が一定値に維持されるときに実現されるため、プリンタヘッド42及び142は好ましくは生地シート60に向かって及び離れて動くことができるべきである。しかしながら、プリンタヘッド42及び142が、62のような突出する異常との衝突を避けるために、生地シート60から離れて動くことは最も重要である。ノズル38及び138は、インクジェットプリンタを動かすこと、ノズルを引っ込めること、ノズルを伸ばすこと、又はこれらの組み合わせにより、生地シート60から離れる方向に、好ましくは垂直な方向に動かすことができることもまた理解される。
【0044】
プリンタヘッド42及び142を衝突を避けるために安全な距離まで基材の上に持ち上げる、いずれかの持ち上げ機構(図示されず)を、本明細書において使用することができる。例えば、プリンタヘッド42及び142は、プリンタヘッド信号46及び146が受信されたときに作動するサーボモーターにより制御されるラック上に取り付けることができる。プリンタヘッド42及び142の移動速度は、プリンタヘッドの移動の急速な加速によって、特にこうした加速が約10m/s2を超える場合に起こることがあるような、ノズル38及び138のデプライミングを避けるように考慮しなければならない。これは、異常がなくなったらすぐに印刷できるようにプリンタヘッドを維持するために重要である。
【0045】
別の実施形態では(図示されず)、プリンタヘッドと基材との間の距離は、異常のための余裕を設けるために、基材コンベヤーベルトをプリンタヘッドの下に下げることにより、増やすことができる。この場合は、プリンタヘッドは静止していることができ、及びプリンタヘッドの急速な加速は解消される。更に別の実施形態では、表面形状信号50は、更なる生産の前に異常62を取り去ることができるように、生地シート60がプリンタヘッド60の下で動くのを停止するために使用されてもよい。上記の実施形態のいずれにおいても、生産システムは、異常に対処する結果として印刷されなかったいずれの食料品も廃棄するように、任意に設定することができる。
【0046】
生地の異常に対処する別の手法は、均一な基材がプリンタヘッドに提示されることを確実にするために印刷前に操作を行うことである。1つのこうした例は、基材中のいずれかの凹凸を平らにするために基材上に設置されたローラーである。あるいは、基材中のいずれかの大きい粒子を取り除く又はいずれかの折り目を修正するために、気流を基材に向けることができる。
【0047】
E.凝縮の防止
暑くて湿度の高い環境に対する、並びに食用基材を生産するために使用されるもののような高速製造プロセスに対するインクジェット印刷機器の感受性は、印刷機器にストレスを与える。以下に印刷機器の信頼性を高めるためのプロセスを記載するが、これは信頼性を更に高めるために個々に又は組み合わせて使用されてもよい。
【0048】
食用基材は典型的には幾らかの量の水を含有する。生地シートは特に高濃度の水を含有する場合があり、及び生地シートの温度に応じて、著しい量のこの水分が生地シート60の表面から蒸気56の形態で発生する場合がある。これは、この基材上でインクジェットプリンタを使用することに対して追加的課題を生み出す。具体的には、蒸気56は、プリンタヘッド42及び142の外面32及び132上のどこかで凝縮する場合がある(40及び140)。プリンタヘッド42及び142上の凝縮40及び140は、画質の問題、衛生の問題、及び信頼性の問題が挙げられる幾つかの問題を生じることになる。凝縮がプリンタヘッドノズルのオリフィス37及び137を塞ぐとき、インク液滴34の噴出は否定的な影響を受ける。噴出は完全に停止される場合があるか、又はインク液滴の軌道が変えられる場合があり、それらの両方が画質に否定的に影響することになる。また、水が蓄積する又は長期にわたって流れないまま残るとき、プリンタヘッドの外面32及び132上に微生物が繁殖する可能性がある。これらの問題のいずれもが、次には状況を修正するために休止時間を必要とすることになる。
【0049】
プリンタヘッド42及び142上の水分凝縮を避けるために、プリンタヘッドの温度は、プリンタヘッド42及び142に隣接する空気の露点より高く上げられる。いずれかの一般的な加熱要素41及び141が、プリンタヘッドの外面32及び132の温度を上げるために使用できる。加熱要素41若しくは141は、外面32若しくは132上に位置してもよいし、又はインクジェット機構42若しくは142内に位置してもよいし、又はその両方であってもよい。プリンタヘッド42及び142の中に使用されるインク34は、この高いプリンタヘッド温度で働くように処方されている。食用基材の上に印刷するために好ましいプリンタヘッド温度は、約40℃〜約90℃、好ましくは約50℃〜約80℃、最も好ましくは約55℃〜約70℃である。凝縮の低減は、基材の温度を低下させることによって、及び例えば周囲空気の温度を低下させることにより又は生地の中により少ない水を使用することにより前記基材からの蒸気発生量を制御することによって更に実現することができる。しかし以下に論じられるように、これはインクに対して、及び具体的にはインクの乾燥/硬化時間に対して否定的な影響を有する。このように、周囲温度を低下させることは1つの問題については役に立つ場合があるが、それは別の問題を生み出す。その上、当業者は、高い動作温度は印刷機器中の電気部品の寿命を、10℃の温度の増加ごとに約50%短くすることをよく理解するであろう。したがって、以下に記載されるように良好なインク流量を維持しながら、基材の上の環境の露点をできるだけ低く保つことが望ましい。
【0050】
F.食用基材の印刷、切断、及び調理
画像信号58が圧電方式のプリンタヘッド42及び142によって受信されるとき、これはプリンタヘッドのオリフィス37及び137を通るインクの噴出を作動し、インク34は生地シート上面64の上に定期的に噴出される。これは次には、印刷された画像35を印刷された生地シート66の上に作り出す。印刷された生地シート66は次に、加工スナック片(図示されず)に切断されることができる。以上に論じたように、切断は印刷の前に起こってもよい。いずれの好適なカッターも使用することができる。例えば、回転又はスタンプカッターを使用することができる。同様に、各加工スナック片上に印刷された1以上の画像が存在してもよい。加工スナック片は次に、例えばオーブンで焼くこと、揚げること、煮ること、直火で焼くこと、又は同様なことにより調理される。好ましくは、加工スナック片は油の中で揚げられてスナックチップを生産する。
【0051】
G.食用基材のための急速硬化インク
以上で言及された課題に加えて、生地シートのような食用基材上に高い信頼性を持って印刷するとき、インクは異なる一連の問題を提示する。必然的に、インクは食用に適し及び毒性のないものでなければならず、これは食用基材上で使用できるインク製剤に対して著しい制限を設定する。インクは主として、着色剤、例えば染料又は色素、及び担体又は溶媒といった2構成成分系である。両方の構成成分は、食用に適し及び毒性のないものでなければならない。インクの1つの重要なパラメータは、その硬化時間である。食用基材は典型的には、高速連続プロセスにおいて、生産され、印刷され、次いで調理される。インクは、それが完全に乾燥する前に調理される、例えば油の中で揚げられる場合には、画質が悪くなることになる。その上、インクはそれが乾くときに広がる傾向があり、画像を不鮮明にする。したがって、乾燥時間が減るにつれて、広がりが減り、画質は良くなる。そのため、食用基材上に設置されるときにできるだけ素早く乾くインクを有することは有利である。
【0052】
画質を維持することに加えて、インクの急速硬化は、インクが印刷された食用基材に接触している機器表面に付着することを防ぐために、又はインクが生地シートのその後の揚げる工程の揚げ油の中に最終的に入ることを避けるために重要である。インクが接触の際に他の機器表面に移り得る場合、これはまたインクの望ましくない染み又は滲みを結果としてもたらす可能性があり、及びまた機器をきれいにするために休止時間を結果としてもたらす場合がある。硬化時間が遅い場合には、それはまた、他の機器表面へのインクの望ましくない移りを避けるために、プリンタヘッドと、生地シートの印刷された側に接触する場合があるその後の単位操作との間に、より長い距離を必要とする。プリントヘッドとその後の単位操作との間のより長い距離は、前記単位操作が、生地シート上の印刷部分と見当が合わなければならない生地シート切断操作である場合には、また問題である可能性がある。同時係属出願第60/669,094号(2005年4月7日出願)、「食用基材上の画像レジストレーション(Image Registration On Edible Substrates)」は、印刷された画像がその後の生地切断工程のカッターの型と一致するように、生地シート上に印刷することによって画像レジストレーションを達成する方法を記載する。プリンタヘッドと生地シートカッターとの間の距離が増える場合には、画像を生地シートの切断部分と位置合わせする際に追加のばらつきがもたらされ、これは望ましくない場合がある。
【0053】
これらの問題に対処するため、われわれは食用インクの急速硬化を可能にする要因を特定し、及びその中で役に立つ最適なパラメータを発見した。これらの急速乾燥要因には:着色剤の性質;着色剤のために使用される溶媒又は担体の種類;基材に適用されるときのインクの粘度;並びに食用基材の状態、具体的にはその含水率及び温度が挙げられる。これらの要因は次に以下で論じられ、及び代表的なインク組成物は以下の実施例に記載される。
【0054】
着色剤の性質:染料及び色素は、インクの中に使用される一般的な着色剤である。これらの中で染料は、生地シートのような食用基材の印刷に使用するのに好ましい着色剤である。染料は、典型的なインク溶媒に可溶化し、及び溶液のまま留まり、プリントヘッドノズルの目詰まりを最小にする。また、染料は適用の際に溶液のまま留まり、及びインクの残りと共に生地シートの中に浸透して生地シートによく付着することができる。色素は非可溶性であり、並びに分散されて及び懸濁液に保たれなくてはならない。色素粒子の塊又は大きい粒子のサイズは、画質及びプロセスの信頼性に影響を与えるノズルの目詰まりをもたらす可能性がある。また、生地シートへの適用の際に、色素は、インクの残りが生地のマトリックスの中に吸収される場合でさえも、基材の表面上に留まる場合がある。これは、印刷された基材と接触するようになる機器の表面を汚すことにつながる可能性がある。
【0055】
着色剤のための溶媒又は担体:インクの大部分は着色剤のための溶媒又は担体を含む。われわれは、急速硬化時間を実現するためには、印刷がなされる基材と適合性のある溶媒又は担体を使用することが重要であることを見出した。著しい量の水を典型的に有する生地シートの場合には、溶媒又は担体が極性の特徴を示すことは重要である。プロピレングリコールのようなグリコール系溶媒又はグリセリンのような吸湿性構成成分は、生地シートのような食用基材上に印刷するのに好適な極性溶媒の例である。生地シートに接触する際に、それらは生地の中の水の幾らかを吸収し、及び生地シートと強い結合を生み出すことになり、これにより乾燥前でさえ染料が生地にしっかりと結合されるようになる。
【0056】
生地シートの状態:生地シートの温度及び含水率は、前記生地シートの表面上のインクの硬化時間、及び起こる場合がある滲みの量に影響を与える可能性がある。基材温度は、表面上のインクの粘度に影響する。具体的には、基材上面の温度が上昇するのにしたがって、インクの粘度は低下し、それが表面により素早く入るのを可能にする。約30℃〜約75℃、好ましくは約40℃〜約70℃、より好ましくは約45℃〜約65℃、及び最も好ましくは約50℃〜約60℃の生地シートの温度は、インクの硬化を実質的に改善することになる。しかしながら生地の状態は、以上に論じたように、プリンタヘッドノズル上の凝縮の可能性に顕著な影響を有することは理解される。
【実施例】
【0057】
インク組成物
本発明に使用するのに好適な代表的なインク組成物が以下の表1に与えられる。この組成物は、積み重ねられるポテトチップを製造するために使用されるとき、DOD圧電方式のプリントヘッドを用いて約52℃で成功裏に放出されてポテト系生地シート上に印刷する。
【0058】
【表1】

【0059】
インクの硬化/乾燥時間
表1に定義されるインクは、ポテト系生地シートに、約27℃の温度で適用され、及び以下に与えられる方法にしたがって測定される硬化時間は約15秒である。別の場合では、同様な生地シートが同じインクを用いて印刷されるが、その際生地シートの温度は60℃であり、及び硬化時間は約3秒であり、これは、生地シートの温度が27℃であったときより実質的に短い。
【0060】
いずれかの1つの理論に束縛されることを望まないが、より高温では、デンプン粒は膨張し及び追加のヒドロキシル結合部位を生成すると考えられている。これらの結合部位は、生地とインクの極性構成成分、特にプロピレングリコール及び染料との付着を高める場合がある。また、より高温の生地では、インクは、毛管現象により生地のマトリックス中へのその流動性を促進する粘度の低下を経験する場合があると考えられている。更に、より高温で生地シートを形成することは、生地シートの表面からの遊離水の蒸発速度を加速するために役立つ。これは、湿った表面は、インクの滲み並びに遅い硬化及び乾燥を結果としてもたらす場合があるために重要である。
【0061】
インクの硬化/乾燥時間を測定するための分析方法
この方法は、印刷されたインクが基材上で硬化したかどうかを決定する。
【0062】
生地基材が印刷され、次いで予め定められた時間の後で機器表面材料により接触される。機器表面材料は次に、ペーパータオルと接触させられて、いずれかのインクが移動したかどうかを視認検査により決定する。ペーパータオルの重量もまた前後に測定されることができ、及びその差は移動されたインクの重量を示す。
【0063】
材料:
1.ハンドスタンプ上に取り付けられた、1枚のテフロン(Teflon)で表面を仕上げた材料。材料の表面積は、試験中の印刷された画像の面積を覆うために十分なほど大きい。テフロン(Teflon)で表面を仕上げた材料を有するハンドスタンプにより表面全体に発揮された力は、その自重に基づいて0.68kPa(平方インチ当たり45g)である。
2.目的の食用基材の上に印刷するために、及び印刷された基材が生産プロセスの様々な時間で試験のために利用できるように設定されたDODインクジェットプリンター。
3.食用基材。
4.印刷される及び印刷されない矩形からの、2.54cm(インチ)当たり203ドットのインク密度を有し、約3.18cm(1.25インチ)の辺の寸法の正方形のチェッカーボード様の画像が使用されて、インクのない区域に隣接する濃くインクを付けられた区域を提供する。画像は、その幅に矩形の8縦列を、及びその高さに矩形の5横列を含有する。
【0064】
オペレーターによる較正:オペレーターは、記載された数を再現できるまで、ハンドスタンプをグラム単位デジタルスケール上に押下しなければならない。自動押印器の圧力は次のように指定された
a.重力(〜約0.68kPa(45g/インチ2)):オペレータから追加される力のない自動押印器の重量。
b.軽い圧力(〜約1.06kPa(70g/インチ2)):自動押印器の重量及びオペレータの手。
c.重い圧力(〜約6.84kPa(450g/インチ2)−13.68kPa(900g/インチ2)):手及び腕により強く押下。
【0065】
基材要件:連続速度でプリントヘッドの下を動く一貫性のある基材の連続的流れを生み出す。
基材の上へのプリントヘッド装置の配置:プリンターは、動いている基材の速度において、サンプリングが、基材上へのインク付着後1、5、及び15秒で行なわれてもよいように十分に長いベルト長が必ず存在するように、配置されなくてはならない。
【0066】
印刷から1、5、及び15秒での試験:
1.インク付着から1秒でのプリントヘッドから下流の位置を定める。基材速度が1分当たりXフィート(1フィートは約30センチ)である場合、これはプリントヘッドからX/60フィートの距離に相当する。
2.きれいな及び乾いた自動押印器を使用して、印刷された画像上に1回接触し、及び直ちに自動押印器を横移動又は染みなしにペーパータオルの上に押下する。
3.インク付着から5秒でのプリントヘッドから下流の位置を定める。基材速度が1分当たりXフィートである場合、これはプリントヘッドからX/12フィートの距離に相当する。
4.きれいな及び乾いた自動押印器を使用して、印刷された画像上に1回接触し、及び直ちに自動押印器をペーパータオルの上に前のように押下する。
5.インク付着から15秒でのプリントヘッドから下流の位置を定める。基材速度が1分当たりXフィートである場合、これはプリントヘッドからX/4フィートの距離に相当する。
6.きれいな及び乾いた自動押印器を使用して、印刷された画像に1回接触し、及び直ちに自動押印器をペーパータオルの上に前のように押下する。
7.ペーパータオル上へのインクの移りを、様々な時点について、並びにまた他の生地基材及び状態に対して比較する。試験は、基材から自動押印器へ次いでペーパータオルへとインクの移りが起こらない時点をより正確に決定するために、指定されたもの以外の他の時点について繰り返されてもよい。また、自動押印器の圧力は、特定のプロセス条件についての影響を理解するために、重力、軽い圧力及び重い圧力の間で変更されてもよい。目に見えるインクのいずれもペーパータオルに移動されないとき、インクは「硬化」している。
【0067】
本発明の特定の実施形態を説明及び記載してきたが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行えることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にあるこうしたすべての変更及び修正を、添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【0068】
この明細書は、本発明の説明を包含し、本発明を定義する特許請求の範囲をもって結論とするが、両方が、本明細書の図面を参照することによって、より良く理解されることになると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に使用するのに好適な画像ファイルの略図。
【図2】本発明に使用するのに好適な画像ファイルの略図。
【図3】本発明による基材印刷プロセスの一部分の略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)上面を有する基材を形成する工程;
b)少なくとも1つのインクジェットプリンタを提供する工程;
c)前記インクジェットプリンタを用いて前記基材上に画像を印刷して、印刷された基材を形成する工程;及び
d)前記印刷された基材を調理する工程を含む、食用基材を製造するためのプロセス。
【請求項2】
前記インクジェットプリンタが、ドロップオンデマンド(DOD)の圧電方式のインクジェットプリンタである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記インクジェットプリンタが、最下面を有する少なくとも1つのノズルを含み、その場合、前記基材の前記上面から前記ノズルの前記最下面までの距離が、約0ミリメートル〜約10ミリメートル、好ましくは約0.2ミリメートル〜約8ミリメートル、更により好ましくは約0.5ミリメートル〜約5ミリメートル、及びなお最も好ましくは約1ミリメートル〜約3ミリメートルである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記インクジェットプリンタが、インクを制御可能に分配することにより前記基材上に前記画像を印刷し、その際、前記インクが約40℃を超える温度で分配され、好ましくは、前記インクが前記ノズルに隣接する空気の露点を超える温度で分配される請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記インクジェットプリンタが、インクを制御可能に分配することにより前記基材上に前記画像を印刷し、その際、適用温度における前記インクの粘度が30センチポアズ未満である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記上面の理論上の高さが前記プリンタヘッドノズルから離れる予め定めされた距離であるときに、前記基材の前記上面の実際の高さがそれと異なるかどうかを決定する表面形状読取機が更に提供され、好ましくは、前記表面形状読取機が、前記インクジェットプリンタの前記ノズルを動かす手段と通信し、並びに前記ノズルが、前記表面形状読取機によって検出されるときの前記基材の前記上面の高さのいずれかの変化に応答して前記基材から離れる方向及び好ましくは垂直な方向に動くことができる、請求項3に記載のプロセス。
【請求項7】
前記表面形状読取機が、前記基材の前記上面の前記高さの変化を検出し、及び前記インクジェットプリンタの前記ノズルを動かす前記手段に信号を送信するときに、それに応じて前記ノズルの前記高さを調節するために十分な時間があるほど、前記表面形状読取機が十分に遠く離れており、好ましくは、前記インクジェットプリンタを動かすこと、前記ノズルを引っ込めること、前記ノズルを伸ばすこと、又はこれらの組み合わせにより、前記ノズルが前記基材に垂直な方向に動かされる、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
少なくとも2つのインクジェットプリンタがあり、及び両方のプリンタが使用可能であるとき、それらの両方共が、前記ノズルを準備された状態に及びそれらの動作温度近くに保つために十分なほど頻繁に印刷に使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
生地が調理される前に、前記基材が、個々の加工スナック片に切断され、及び更にその際各加工スナック片が、その上に印刷された少なくとも1つの画像を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記個々の加工スナック片が、油の中でそれらを揚げることにより調理されてスナックチップを生産する、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項10に記載のプロセスにより製造されるスナックチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−541702(P2008−541702A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510276(P2008−510276)
【出願日】平成18年5月5日(2006.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/017470
【国際公開番号】WO2006/124339
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】