説明

高分子ミセルクラスタ及びそれらの薬剤への使用

両親媒性炭水化物ポリマ(amphiphilic carbohydrate polymers)から生成した高分子ミセルクラスタ及び薬剤におけるそれらの使用であって、特に、両親媒性炭水化物重合体は、ミセルクラスタを形成するように自己集合可能で、すなわち、炭水化物の両親媒性凝集体が個別凝集体の組織化ミセルクラスタに階層的に凝集することを発見。薬物、特に、水溶解度が低い疎水性薬物によってミセルクラスタを安定ナノ粒子に転換可能で、生物学的障壁を超えて、疎水性薬物の転換を改善できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両親媒性炭水化物重合体(amphiphilic carbohydrate polymers)から形成される高分子ミセルクラスタと、それらの薬剤への使用、特に、溶解性の低い薬剤への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1個の分子において極性セグメントと無極性セグメント双方を組み合わせると、環境浄化活動から食品の加工まで、非混和液を多様なプロセスに活用できるようになる。医薬品産業では、賦形剤として認可された両親媒性化合物が利用できるにもかかわらず(文献3)、水と混ざらない薬剤の調製でしばしば不具合(文献1,2)が生じている。しかし、水溶解度の低い薬剤、すなわち、疎水性薬物から十分な生体利用効率を確保するのは医薬品の開発にとって、極めて重要である。英国薬局方によれば、水溶解度の低い薬剤は、"ごく僅かな溶解性"として定義され、こうした薬剤は、1ミリリットルの溶剤につき1mg未満の水溶解度を有する(英国医薬品委員会、英国薬局方、定置省:Medicines Commission, British Pharmacopoeia, The Stationary Office、ロンドン、2002年)。
【0003】
従来、ブロック共重合体を添加することで、疎水性薬物の生体利用効率を改善してきた(文献14−18)。ブロック共重合体とグラフト高分子両親媒性物質は、両方とも、高分子ミセル(文献5,22)、小胞(文献23,24)、及び濃厚非晶質ナノ粒子(文献22,25,26)に自己集合することが知られている。ブロック共重合体ミセルは、好都合に、直径が12−36nmの単一ミセル成分である(文献29,30)。
【0004】
水媒体において薬物の溶解度を高めるのにミセル相を利用してきた。相分離モデルによれば、ミセルコアを溶解する薬物の安定性は、その臨界ミセル濃度関数(CMC、式1)、すなわち、ミセル凝集体の形成が始まる濃度である。
△Gmicelle=RTlnXcmc
式中、△Gmicelleは、ミセル形成の標準自由エネルギーであり、Rは気体定数であり、Tは温度であり、Xcmcはモル分数単位の臨界ミセル濃度である。従って、臨界ミセル濃度が低いほど、ミセル形成に有利である。
【0005】
医薬的に認可された低分子量界面活性剤(文献4)とブロック共重合体(文献5−7)は、典型的に、mM濃度域にあるCMC値を有し、モル両親媒性物質/薬物の割合は、典型的に、10:1を超え、しばしば、1000:1を超えるため、疎水性薬物のデリバリには非効率的である(文献4、8−10)。ミセルを溶解する固定モルにおけるミセルコア内の薬物の可溶度は、溶解物質(solubilisate)のlog p(文献11)、溶解物質のモル体積(文献11)および会合コロイドによって形成される疎水性ナノドメインの相対的なサイズによって決まる(文献12,13)。log P/モル体積の割合が高いと、ミセルへの分割を促進し、ミセル内の疎水性体積が大きいと、ミセル内の薬物の不溶化を促進する。
【0006】
より多くの粒子生成のために、個別モノマーの集合体の数を増やすことで粒子の疎水性体積を増加させるのは、従って、コロイド凝集体の内部で溶解可能な薬物のレベルを上昇させる可能性がある。しかし、過度の凝集は分子と薬物を形成するコロイドの沈殿を生じさせるため、注意が必要である。
【0007】
先の出願で、炭水化物重合体の可溶化を開示し、これを用いて可溶性炭水化物重合体が存在する水相に添加する疎水性薬物を生成できることを示した(WO2004/026912)。この出願に記載した両親媒性重合体の例では、パルミトイル基のモルの割合は3.0%と8.2%の間で、第四アンモニウム基のモルの割合は7.9%と19.0%の間であった。
【0008】
しかし、当該分野では、投与の改善を目指した薬物調製の手法について、特に、疎水性薬物の生体利用効率の増加に関して、さらなる継続的な需要がある。
【発明の概要】
【0009】
広い意味で、本発明は、両親媒性炭水化物重合体が、自己集合してミセルクラスタを形成することができ、そこでは、炭水化物両親媒性物質(carbohydrate amphiphiles)が、階層的に組織化したミセルクラスタに凝集しているという予期しない発見に基づいている。個別のミセル集合体で形成したこれらのミセルクラスタを、WO2004/026912に記載された重合体および条件を使って生成した個別ミセルと対比させても構わない。本発明は、薬物、特に、水溶解度が低い疎水性薬物によって、これらのミセルクラスタを安定ナノ粒子に転換できることを示す。好ましい実施態様では、これが、プルロニック・ブロック共重合体(pluronic block copolymers)を使用する従来技術で得られる比率よりも、重合体/薬物のモル比を高めることに貢献する。さらに、本発明は、ミセルクラスタから形成した薬剤の生物学的障壁を越える移動が、10進法で一桁(an order of magnitude)改善できることを明らかにする。
【0010】
従って、本発明の第1の実施態様によれば、平均粒径が20nmから500nmである両親媒性炭水化物重合体から形成される高分子ミセル凝集体が提供され、当該両親媒性炭水化物重合体は、複数個の結合モノマーユニットを含む誘導体化キトサンであり、(i)前記モノマーユニットの第1部分であるアミノ基は、疎水基で誘導体化され、(ii)前記モノマーユニットの第2部分であるアミノ基は、−N+1(ここで、各Rは、水素又は以下に記載する官能基である)で示されるような第四アンモニウム基を所有する基を提供するように誘導体化されている。前記の誘導体化キトサン重合体が、モノマーユニットの第3部分を含むことは随意であって、その場合、アミンは、第1部分又は第2部分とは異なる手法で誘導体化されるか、或いは誘導体化されない。付加的に又は二者択一的に、モノマーユニットの第1部分及び/又は第2部分及び/又は第3部分のC6原子に存在する−CH−OH基は、例えば、キトサンモノマーユニットのヒドロキシル基の一つ又はそれ以上と反応させて、エーテルのような酸素結合基を形成させることで誘導体化させることもできる。
【0011】
より具体的には、本発明は、以下の一般式で表される両親媒性炭水化物重合体から形成される平均粒径が20nmから500nmの高分子ミセル凝集体を提供する。


式中、a+b+c=1.000であり、aは0.010から0.990の値、bは0.000から0.980の値、cは0.010から0.990の値であって、置換基RからRとXは、以下に定義する。
【0012】
上記の一般式において、a、b及びcのユニットは、任意の順番に配置されて差し支えなく、また、特定の順番あるいはランダムな順番に配置されて差し支えない。式中の*マークは、連続重合鎖を示す。好ましい実施態様では、本発明が採用する誘導体化炭水化物重合体は、従来技術が開示するポリマに比べて、疎水基の割合が高い。本発明の実施例において、cユニットのモル比は0.100より大きく、好ましくは0.110より大きく、より好ましくは0.120より大きく、さらに好ましくは、少なくとも0.150で、より好ましくは少なくとも0.180で、さらに好ましくは、少なくとも0.200で、別の実施例では少なくとも0.250である。
一般的に、cユニット(単位)のモル比は、0.400以下で、より好ましくは0.350以下である。
【0013】
aユニット(単位)のモル比は、好ましくは0.050と0.800の間にあり、より好ましくは、0.100と0.400の間にある。
【0014】
bユニットのモル比は、好ましくは0.200と0.850の間にあり、より好ましくは、0.200と0.750の間にある。
【0015】
上記の式から明らかなように、b単位は任意に欠落させることができる。c単位は疎水基で誘導体化させるモノマーユニット(単位)の第1部分を提供し、a単位は第四アンモニウム基で誘導体化させるモノマー単位の第2部分を提供する。b単位が存在する場合、b単位はモノマー単位の第3部分を提供し、そこでのアミノ基は第1部分又は第2部分とは違う方法で誘導体化させるか、さもなければ誘導体化されない。
【0016】
本発明において、疎水基Xは、好ましくは、C4−30アルキル基のようなアルキル基、C4−30アルケニル基などのアルケニル基、C4−30アルキニル基ようなのアルキニル基、C5−20アリール基のようなアリール基、ステロール(例えばコレステロール)のような2個以上のC4−8リング構造を持つ多環疎水基、2個以上のC4−8ヘテロ原子リング構造を持つ多環疎水基、ポリオクサブチレン重合体(polyoxa butylene polymer)のようなポリオクサC1−4アルキレン基、又は、ポリ(乳酸)基、ポリ(ラクチド・コ・グリコリド)(poly(lactide‐co‐glycolide)基あるいはポリ(グリコール酸)基のような疎水性ポリマ基又はこれらの置換基から選択される。置換基Xは、直鎖状でも、分岐状でも、環状でも構わない。置換基Xは、c単位(すなわち、C3で)に直接結合することができ、また、アミン基、アシル基、又はアミド基のような官能基を介してc単位と結合し、X'−環、X'−CO−環、X'−CONH−環などで表せる連鎖を形成する。ここで、X'は上に示す疎水基である。
【0017】
置換基Xの好ましい具体例には、CH(CH)−CO−NH、CH(CH)−NH−あるいはCH(CH)−CH=CH−(CH)−CO−NH−などが包含される。ここで、nは4と30の間の数、より好ましくは、6と20の間の数であり、pとqは同じでも違っていても構わず、3と15の間の数、より好ましくは、5と10の間の数である。置換基Xの特に好ましい一群は、例えば、CH(CH)CO−NH−で表せるアミド基を介してキトサン・モノマー単位と結合する。ここで、nは4と30の間の数である。アミド基の具体例は、カルボン酸をキトサンのアミン基と結合させて生成される。好ましい具体例は、ラウリン酸(n=10)、ミリスチン酸(n=12)、パルミチン酸(n=14)、ステアリン酸(n=16)又はアラキジン酸(n=18)などに基づく脂肪酸誘導体である。
【0018】
上記の式において、R、R及びRは、好ましくは個別に、水素又はC1−10アルキル基から選択され、そのアルキル基は置換されていて構わない。R、R及び/又はRがアルキル基の場合、これらは直鎖状でも分岐鎖状でもよい。R、R及びRは、個別に、水素、メチル基、エチル基又はプロピル基から選ばれる。
【0019】
上記の式において、糖ユニットのC6に存在するR、R及びRは、個別に、水素、置換の又は非置換のアルキル基、置換の又は非置換のエーテル基、もしくは置換の又は非置換のアルケン基から選択される。好ましいR、R及びRは、1個又はそれ以上のヒドロキシ基もしくは別の非イオン性親水基で置換されている。R、R及びRの具体例は、−(CH)−OH(pは1と10の間の数、より好ましくは、2と4の間の数)、−(CH)−CH(CH−OH)r(pは1と10の間の数、qは0と3の間の数、rは1と3の間の数、q+r=3)、−(CH)−C(CH−OH)(pは1と10の間の数、r=3)、−(CHCHOH)(pは1と300の間の数)である。
【0020】
上記一般式において、置換基Rは存在しても不在でも構わない。不在の場合、第四アンモニウム官能基がモノマー単位のキトサン環と直かに結合する。Rが存在する場合、このものは、非置換の又は置換されたアルキル基(例えば、C1−10アルキル基)、−NH−(CH)−で表示されるようなアミン基、−NH−CO−(CH)−で表示されるようなアミド基のいずれかである。ここで、nは1から10、好ましくは、1から4の数である。置換基R−Nの好ましい具体例は、例えば、ベタイン(−OOC−CH2−N(CH3)3をアミン置換基と結合させること得ることができ、これによりベタイン内に−NH−CO−CH2−Nのようなアミド基を形成することができる。
【0021】
上述したように、本明細書に記載した置換基のいくつかは、当業者にとって周知の1個又はそれ以上の付加的置換基で置換されてよく、置換されなくてもよい。そうした付加的置換基には、一般イ、ハロ基;ヒドロキシ基;エーテル基(例えば、C1−7アルコシキル基);ホルミル基;アシル基(例えば、C1−7アルキルアシル基、C5−20アリールアシル基);ハロゲン化アシル基;カルボキシ基;エステル基;アシルオキシ基;アミド基;アシルアミド基;チオアミド基;テトラゾリル基;アミノ基;ニトロ基;ニトロソ基;アジド基;シアノ基;イソシアン基;シアナト基;イソシアナト基;チオシアナト基;イソチオシアナト基;スルフヒドリル基;チオエーテル基(例えば、C1−7アルキルチオ基);スルホン酸(sulfonic acid);スルホン酸エステル;スルホン基;スルホニルオキシ(sulfonyloxy)基;スルフィニルオキシ(sulfinyloxy)基;スルフアミノ(sulfamino)基;スルホンアミノ(sulfonamino)基;スルフィンアミノ(sulfinamino)基;スルファミル(sulfamyl)基;スルホナミド(sulfonamido)基;C1−7アルキル基(例えば、非置換のC1−7アルキル基、C1−7ハロアルキル基、C1−7ヒドロキシルアルキル基、C1−7カルボキシルアルキル基、C1−7ヒドロキシルアルキル基、C1−7アミノアルキル基、C5−20アリール−C1−7アルキル基などを含む);C3−20ヘテロアリール基、さらにはC5−20アリール基(例えば、C5−20カルボアリール、C5−20ヘテロアリール基、C5−20アリール−C1−7アルキル基およびC5−20ハロアリール基などを含む)が含まれる。
【0022】
本明細書中で使用する用語"リング構造"は、3個から10個の共有結合した原子の閉環構造に関係し、共有結合原子の数は、好ましくは3個から8個、より好ましくは5個から6個である。リングは、脂環式環、芳香環のいずれでも構わない。本明細書で言う"脂環式環"は、芳香環でないリングを意味する。
【0023】
本明細書中で使用する用語"炭素環"は、環原子がすべて炭素原子であるリングを指す。
【0024】
本明細書中で使用する用語"炭素芳香環"は、環原子がすべて炭素原子である芳香環を指す。
【0025】
本明細書中で使用する用語"複素環"は、リングを構成する原子の少なくとも一つが、多原子価のへテロ原子であるリングを意味し、へテロ原子は、例えば、窒素、リン、シリコン、酸素、硫黄などであって、典型的には、窒素、酸素または硫黄である。複素環は、1個から4個のヘテロ原子を有することが好ましい。
【0026】
上記のリングは、"多環基(multicyclic group)"の一部であって構わない。
【0027】
上述したように、本発明の高分子ミセル凝集体は個別ミセルの集合体から形成され、平均粒径は20nmから500nmである。平均粒径は、顕微鏡または光子相関分光法を使って簡単に測定でき、ろ過前の水溶液で好都合に判断できる。好ましくは、高分子ミセル凝集体の最小平均粒径は少なくとも100nm、より好ましくは、少なくとも175nmで、最大平均粒径は少なくとも400nm以下である。ろ過後の平均粒径は、典型的に、約100nmから250nmの範囲に好ましく減少する。詳細は表1の実施例を参照されたい。
【0028】
実施例の説明で記載するように、使用した炭水化物重合体は、解重合されてポリマを生成するが、このポリマは爾後の誘導体化で、例えば、疎水基と第四アンモニウム基を含有するようなポリマである。好ましくは、炭水化物重合体は、約1.5kDaから250kDaの分子量を有し、より好ましくは、約1.5kDaから100kDa、さらに好ましくは、約2kDaから25kDaの分子量を有する。
【0029】
別の実施態様では、本発明の高分子ミセル凝集体は、約0.5から6の、より好ましくは、約0.8から4.4の疎水性指標(HI)を有している。この疎水性指標(HI)は、炭水化物について疎水性置換基のモルレベルと親水性置換基(第四アンモニウム)のモルレベルを、H核磁気共鳴(NMR)分析法を使って計測することで測定され、HI=Q/Lで与えられる。ここで、Qは、単量体あたりの第四アンモニウム基のモル分率であり、Lは、単量体あたりの疎水基のモル分率である。
【0030】
当業者であれば、ポリマ合成と誘導体化反応が精密ではないという事実を理解されよう。結果として、ポリマの任意の試料においては、ポリマに存在するa、b、cモノマー単位のモル比と、試料内の各ポリマのa、b、cモノマー単位の配列について、その大きさに変異がある。従って、上述した範囲と数値はポリマ試料全体としての平均を表す。また、ポリマのモノマー単位の異なる型の順位付けは、規則的なパターンでも、ブロック共重合体としての順位でも、ランダムでも構わない。
【0031】
さらに、変化したポリマは、1個又は複数の対イオンを含む。典型的に、これはポリマに存在する第四アンモニウム基によるもので、対イオンは、塩化物イオン、ヨウ化物イオン、酢酸イオン、グルタミン酸イオンなどの負の電荷を帯びたイオンである。本書に記載するポリマと化合物は、薬剤として許容可能な塩などの形態であっても構わない。
【0032】
本発明の別の実施例によれば、前述した高分子ミセル凝集体から成る化合物を提供する。好ましい化合物は、本書に記載した高分子ミセル凝集体と薬剤、より好ましくは、疎水性製剤、とから成る医薬組成物を含む。好ましい実施例による医薬組成物においては、高分子ミセル凝集体は、薬物分子と共にナノ粒子を形成し、このナノ粒子は、約20nmから2μmの、より好ましくは、約20nmから200nmの平均粒径を有する。
【0033】
本発明の実施例によれば、従来技術のものと比較して、少なくとも1:10、好ましくは、1:20、さらに好ましくは、1:40のポリマ/薬物のモル比を有利に提供する。超音波処理や混合などのホモジナイズ法または高圧均質化を使ってナノ粒子の形成を行うのに、好都合に薬物を添加しても構わない。
【0034】
疎水性薬物の例は、プレドニゾロン、プロポフォール、シクロスポリン、エストラジオール、テストステロン、パクリタキセルなどの極性基が欠けた多環リング構造の薬物、エトポシド、アンフォテリシンB、ステロイド、およびその他の多環化合物などの薬物を含む。
【0035】
別の実施態様では、本発明は治療で使用するための医薬組成物を提供する。
【0036】
さらに別の実施態様では、患者に薬物を供給するための薬剤を調製するための高分子ミセル凝集体と薬物の使用を提供する。好ましい具体例では、薬物は水中での溶解度が低い。
【0037】
図を参照しながら本発明の実施例を説明するが、実施例は本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第四アンモニウム・パルミトイル・グリコールキトサンの構造
【図2a】メチルオレンジ溶液内の浅色移動を測定することで立証されたポリマ疎水性と分子量の高分子凝集体への影響を示す。無極環境下では、メチルオレンジは浅色移動を起こす。第1変曲点(矢印A1)で高分子CMCを測定する。ポリマの詳細については、表1の疎水性指標(HI)、近似疎水性親油性バランス(HLB)およびCMCの数値を参照
【図2b】水中におけるE5の凍結割断電子顕微鏡写真(5.0mg mL−1
【図2c】水中におけるC5の負染色透過電子顕微鏡写真(5.0mg mL−1
【図2d】自己集合高分子ミセルクラスタの略図
【図3a】プロポフォールカプセル化へのパルミトイル化レベルの影響。初期薬物濃度=10mg mL−1 、初期ポリマ濃度=5mg mL−1、*=統計的有意差(p<0.05、n=4)、データ表示平均±s.d.
【図3b】プロポフォールカプセル化へのパルミトイルの影響(初期ポリマ濃度=5mg mL−1、初期薬物濃度=10mg mL−1 、●=G19+プロポフォール、◆=GE1+プロポフォール。HIについては、表1の近似HLBおよびCMC数値を参照(利用可能な場合)。G19の1モルがプロポフォールの48モルをカプセル化。試料は室温で保存
【図3c】薬物カプセル化へのポリマ分子量の影響。ろ過後にHPLCで薬物濃度を測定(0.45μm)。■=G19(5mg mL−1)、□=G19(2.5mg mL−1)、●=G4(5mg mL−1)、○=G4(2.5mg mL−1)、▲=水中のプロポフォール、*=濃度が5mg mL−1のときのポリマ間の統計的有意差、#=濃度が2.5mg mL−1(p<0.05)のときのポリマ間の統計的有意差
【図4】プレドニゾロン・フォルテ(Prednisolone Forte)(白いバー、酢酸プレドニゾロン懸濁液、10mg mL−1、35μL、アラガン、米国)またはプレドニゾロンのGCPQ(第四アンモニウム・パルミトイル・グリコール・キトサン)製剤(黒いバー、G2−1mg mL−1、NaHCO−0.01M、プレドニゾロン−1mg mL−1、35μL)を投与されたウサギの房水、*=統計的有意差(p<0.05、n=4)。 プレドニゾロン製剤の負染色透過電子顕微鏡写真
【図5】雄のマウスMF1への尾静脈投薬後のプロポフォール製剤の薬理学的活動(睡眠時間、平均±s.d.、n?4)。マウスへは以下のように投与:(i)0.2mg:リン酸緩衝食塩水(PBS、pH=7.4)で2mg mL−1に希釈したプロポフォール乳剤(10mg mL−1、フレゼニウス、ドイツ)あるいはろ過GCPQ製剤(pH=7.4のPBS中、G19−5mg mL−1、プロポフォール1.9mg mL−1)として、容積100μLに対して0.2mgのプロポフォールをマウスへ投与(ii)0.4mg:4mg mL−1濃度にグリセロール(図5bに記載した製剤0.24M−TEM)で希釈したディプリバンあるいはプロポフォールのろ過GCPQ製剤(図5cに記載した製剤0.24M−TEMのグリセロール中、G41−5mg mL−1、プロポフォール4.2mg mL−1、レシチン2mg mL−1)として、容積100μLに対して0.4mgのプロポフォールをマウスへ投与(iii)0.5mg:ディプリバン(10mg mL−1)あるいはプロポフォール乳剤(フレゼニウス、10mg mL−1)として、容積50μLに対して0.5mgのプロポフォールをマウスへ投与。 正向反射の消失時間は低用量の市販乳剤を投与されたマウスにのみ観察された(0.2フレゼニウス、マウスにおいて、0.37±0.19分)。ポリマのみを投与されたマウスに睡眠時間は記録されなかった。*=統計的有意差(p<0.05)
【図6a】炭水化物製剤の経口投与後のシクロスポリンA(CsA)の血中濃度。マウスに7.5mg kg−1のCsAと薬物を投与。ポリマ比=6.7:1。*=水中のCsAとの統計的有意差(p<0.05)
【図6b】炭水化物製剤の経口投与後のCsAの血中濃度。マウスに7.5mg kg−1のCsAと薬物を投与。ポリマ比=10:1。*=水中のCsAとの統計的有意差(p<0.05)
【図6c】炭水化物製剤の経口投与後のCsAの血中濃度。マウスに7.5mg kg−1のCsAと薬物を投与。ポリマ比=13.3:1
【図7】GCPQ−CsA製剤からのCsA回復率。平均値に統計的有意差は認められない(p>0.05)
【図8】多様なGCPQ−CsA錠剤からのCsA放出特性(n=3、平均±SD)
【発明を実施するための形態】
【0039】
[疎水性薬物]
本発明のミセルポリマ凝集体は薬物、特に、疎水性薬物を溶解するのに使用できる。本明細書で使用する用語"疎水性薬物"は、水中でごく僅かにしか溶解しない薬物を含む。英国薬局方が使用する定義によれば、"ごく僅かな溶解性"は、1gの物質を溶解するのに1000ミリリットルを超える溶媒(例えば水)を必要とするか、または、1.0mg mL−1未満の水溶解度を有する物質を示す。
【0040】
疎水性薬物の例としては、プレドニゾロン、プロポフォール、シクロスポリン、エストラジオール、テストステロン、パクリタキセルなどの極性基が欠けた多環リング構造の薬物、エトポシド、アンフォテリシンB、ステロイド、およびその他の多環化合物などの薬物が挙げられる。好ましい疎水性薬物は、プレドニゾロン、プロポフォール、シクロスポリンを含む。プレドニゾロンは、合成副腎コルチコステロイドで、例えば、眼の抗炎症薬として使用される。プロポフォールは、成人及び三歳以上の小児患者の全身麻酔の導入;成人及び生後2ヶ月を超えた小児患者の全身麻酔の維持;および集中治療室で挿管された人工呼吸器装着患者の鎮静作用に使用される短時間作用型の静脈麻酔薬である。シクロスポリンは、免疫抑制剤である。これは、同種臓器移植後に患者の免疫システムの活動を抑え、すなわち、臓器拒絶反応のリスクを減少させることが広く知られている。皮膚、心臓、腎臓、肺、膵臓、骨髄及び小腸の移植分野で研究されている。シクロスポリンは、真菌ヒポクラジアム・インフラタムガムス(fungus Hypocladium inflatum gams)から生成される11個のアミノ酸の環状非リボソームペプチド(11角形ペプチド)である。
【0041】
[投与経路と製剤処方]
医薬組成物の投与経路は、経口及び直腸経由を含む胃腸投与;注射、パッチ、クリームなどを含む非経口投与;鼻、吸入、ペッサリー経由を含む粘膜投与を含むが、これに限定されるものではない。好ましい実施例では、非経口投与、経口投与、局所性投与で医薬組成物を投与する。
【0042】
上述した高分子ミセル凝集体及び薬物に加えて、医薬的に許容される賦形剤、担体、希釈剤、緩衝液、安定剤、又は、当業者に公知のその他の成分を医薬製組成物に含んでも構わない。こうした成分は毒性がなく、医薬組成物の効果を妨げないものとすべきである。担体およびその他の成分の特徴を非経口、経口または局所性などの投与経路によって決定できる。
【0043】
経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液状とすることができる。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバンドなどの固体担体を含んでも構わない。液状の医薬組成物は、一般的に、水、石油、動物油、植物油、鉱油、合成潤滑油などの液体キャリアを含む。生理食塩水、デキストロース又はその他のサッカリド溶液、エチレングリコール、プロピレングリコール、またはポリエチレン・グリコールなどのグリコールを含んでも構わない。
【0044】
静脈注射、皮膚注射、皮下注射や痛みのある場所への注射の有効成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を備えた非経口的に許容される水溶液の形態とする。当業者であれば、例えば、注射用塩化ナトリウムなどの等張賦形剤を使って適当な溶液を調製することができよう。必要に応じて、防腐剤、安定剤、緩衝液、抗酸化剤、及び/又はその他の添加剤を含んでも構わない。
【実験】
【0045】
[序論]
本発明は、炭水化物凝集体が個別凝集体の組織化ミセルクラスタに階層的に凝集し、これらのミセルクラスタがモル重合体/疎水性薬物比が1:67(薬物/ポリマ重量比は0.8:1)という安定ナノ粒子に転換可能で、この比率は、プルロニック・トリブロック・ブロック共重合体(Pluronic triblock block copolymers)で得られるレベルの20倍という予期しない発見に基づいている。
【0046】
また、これらのミセルクラスタは、指標によって、生物学的障壁を超えて、疎水性薬物の転換を10進法で一桁(an order of magnitude)改善する。
【0047】
両親媒性炭水化物重合体で形成されたミセルクラスタは、ミセル(文献5,22)、ベシクル(文献23,24)、およびブロック共重合体やグラフト両親媒性高分子のところで記載した濃厚非晶質ナノ粒子(文献22,25,26)とは区別される。これは、例えば、ろ過前のミセルクラスタのサイズが100−400nmで、ろ過後(45μm)は100−300nmになるという事実から推定できる。対照的に、ブロック共重合体で形成した従来の単一ミセル物質の直径は、例えば、12−36nm(文献29,30)であり、直径25nmの単一ミセルとしてコレステリル・プルランも存在すると考えられている(文献31)。
【0048】
より小型の10−30nm程度の凝集体と疎水性ドメインのナノ粒子から成るミセルクラスタと薬物の結合能力は、脂質誘導体化の程度と炭水化物の分子量を変えることで調整できる。
【0049】
炭水化物プロポフォール製剤の静脈注射では、モデル薬物の薬理作用を、市販の粗い乳剤と比べて10進法で一桁高めることができる。炭水化物プレドニゾロン製剤の眼球への局所使用では、房水で見つけた薬物の初期レベルが10倍量のプレドニゾロン懸濁液を使用したときのものと類似していた。従って、これらの新規な高分子ミセルクラスタは疎水性薬物の生体利用効率を高めるのに使用できる。
【0050】
水溶解度が限られた、または、皆無の薬物は、水溶解度の高い薬物と比べて大量に投与する必要がある。従って、限られた水溶解度または非水溶性の薬物の生体利用効率を高める担体化合物の提供が製薬業界では極めて重要である。こうした担体化合物の利点は、任意の病状治療を目的とする、限られた水溶解度または非水溶性の薬物の動物への投与量を削減できることにある。
【0051】
[原料と方法]
[第四アンモニウム・パルミトイル・グリコールキトサン]
後述の従来技術による方法(文献20)を修正して第四アンモニウム・パルミトイル・グリコールキトサン(GCPQ)試料を合成した。特に断らない限り、全ての試薬は、英国のシグマアルドリッチ社(Sigma Aldrich Co.)から供給されたものをそのまま使用した。有機溶媒は、ストラスクライド・ユニバーシティ(University of Strathclyde)の純正応用化学学部から提供を受けた。H NMR(2ppmでシグナル)を用いた検出レベルを下回るアセチル化度を有するグリコール・キトサン(GC−Mw−250kDa)を50℃の塩酸溶液中(4M)で48時間加熱することで分解し(文献23)、10−15kDaのGC試料を得た。択一的に、従来技術に記載された方法によるGC分解(文献47)を応用して4kDaのGC試料を調製した。GC(Mw−250kDa、1g)は酢酸(2.5%V/V、50mL)中で分解させた。溶液を介して5分間N2ガスを泡立てることで溶存酸素を溶解した。0−4℃に冷却後、新しく調製したNaNO2(9.5mg mL−1、2mL)溶液を加え、暗闇の中で攪拌せずに、15時間、4℃で化学反応を進行させた。生成物を濃縮アンモニア水で中和した。こうして得た混合物にNaBH4(20mg)を加えて分割し、反応混合物を攪拌しながら室温で一晩放置した。その後、アセトン(150mL)を加えて、室温で生成物を慎重に沈殿させた。こうして得た沈殿物を遠心分離(9000g×10分間)し、メタノール(50mL)で3回洗浄し、水中で再び溶かし、後述するように完全に透析し、透析物を凍結乾燥させた。収量は400mgであった。
【0052】
分解したGC(300mg)を重炭酸ナトリウム溶液(0.057M)中で溶解し、表1に記載したレベルでパルチミン酸N−ヒドロキシスクシンイミド(N-hydroxysuccinimide)(120mL)を添加し、混合物を72時間攪拌した。減圧下蒸発でエタノールを除去し、反応混合物をジエチルエーテル(3×100mL)で抽出した。粗製パルミトイル・グリコールキトサン(PGC)をヨウ化ナトリウムのN−メチルピロリドン溶液中(0.011M、90mL)で攪拌しながら一晩溶かし、この溶液に水酸化ナトリウムのエタノール溶液(0.25M、18mL)と表1に記載したレベルのヨウ化メチルを加えた。窒素ガス下のもと、36℃で4時間混合物を攪拌し、ジエチルエーテル中(400mL)で生成物を沈殿させ、ジエチルエーテル中(2×300mL)で2回洗浄した。こうして得た生成物を水中(100mL)で溶かし、含水塩化ナトリウム水溶液(0.1M、5L)で完全に透析し、プロトン化した重合体(キトサンpKa〜7)または重炭酸ナトリウム(0.01M)と塩化ナトリウム(0.1M)を含む水溶液(5L)を得た。後者から脱プロトン化ポリマが得られる。前記の透析媒質を3回交換し(4.5時間)、水(5L)を6回交換しながら、さらに透析を行った(24時間)。全ポリマの合成収量は最大120mgであった。G19については、プロトン化したものと脱プロトン化したものを調製した。その他の全ポリマを、水(5Lを6回交換、合計24時間)で透析し、塩化物イオン(IRA93 Cl−1)で平衡化させたイオン交換カラムを通過させた(文献20)後に、凍結乾燥した。
【0053】
分解したGCの分子量をマルチアングル・レーザー光散乱を利用したゲル浸透グラマトグラフィ(文献23)で測定した。パルミトイルメチルプロトン(0.8ppm、パルミトイル)および第四アンモニウムメチルプロトン(3.35ppm、第四アンモニウム・グリコール・キトサン)をそれぞれ糖メチンプロトン(3.1及び3.5−5.5ppm)と比較すること(文献20)でH NMRによりパルミトイル化とメチル化を測定した。式2を使って、疎水性指標を計算した:
HI=Q/L 2
式中、Q=単量体あたりの第四アンモニウム基のモル分率、L=単量体あたりのパルミトイル基のモル分率を示し、HLB(4,48)の近似値を式3を使って求めた:


式中、M1=第四アンモニウム糖単量体の分子量、M2=アミノ糖単量体の分子量、M3=CHCO-アミノ糖単量体の分子量、M4=テトラデシル部分の分子量をそれぞれ示す。
【0054】
[ポリマ凝集および薬物カプセル化]
メチル・オレンジは、ポリマ凝集から得るのと同じような(文献22)、極性領域から無極性領域への長い波長域の浅色移動を経ることでソルバトクロミック・プローブとしての役目を果たす(文献22,27)。メチル・オレンジのアルカリ溶液を使用して、ポリマ水溶液濃度を上昇させながら浅色移動の度合いを測定すること(文献22)により、ポリマ凝集を証明した。最大吸収−濃度曲線のメチル・オレンジ波長における第1変曲点をCMCとした。モルCMCデータを取得するために、GCPQ NMRおよびGC GPC−MALLSデータを使ってポリマ分子量を計算した。光子相関分光法を使ってろ過(0.45μm)前後の凝集体サイズを記録した(文献25)。凍結割断電子顕微鏡法(文献49)と負染色透過電子顕微鏡法(文献23)を両方使って、凝集体の画像を記録した。
【0055】
薬物と水媒体中のポリマの混合物を超音波分解(文献25)するプローブによって、凝集体へ薬物を取り込んだ。凝集体に含まれる薬物レベルを、凝集体のろ過(0.45
μm)後に測定し、高速液体クロマトグラフ(HPLC)で分析した。プレドニゾロンについては、ポリマ/薬物試料をろ過し、移動相(水/アセトニトリル 640mL:360mL)で希釈し、移動相の流動速度が1mL min−1の3.5μmC18カラム対称性の逆相(4.6×75mm、英国、ウォーター・インスツルメンツ:Waters Instruments)を経てクロマトグラフ化した。ウォーター515等張ポンプ(waters 515 isocratic pump)とウォーター717自動サンプラー(waters 717 autosampler)を使ってクロマトグラフを得、試料検出には、ウォーター486可変波長紫外線波長検出器(waters 486 variable wavelength ultraviolet wavelength detector)(λ=243nm)を用いた。内部標準は6α−メチルプレドニゾロン(50ng mL−1)で、検出限界は5ng mL−1であった。10−250ng mL−1領域の線形ピーク面積における比率−濃度曲線の相関係数は0.9991であった。プロポフォールについては、ポリマ/薬物試料をろ過し(0.45μm)、移動相(水/アセトニトリル 200mL:800mL)で希釈し、1mL min−1の移動相流動速度を有する5μmのODS2カラム(ODS2 5μm column)(4.6×250mm、英国、ウォーター・インスツルメンツ:Waters Instruments)を経てクロマトグラフ化した。波長を229nmに設定した以外は前記のものと同じ器具を使用した。検出限界は0.25μg mL−1であった。1−250μg mL−1領域の線形ピーク面積における比率−濃度曲線の相関係数は0.9997であった。
【0056】
[統計]
スチューデントt−検定を使って統計分析を行った。有意差は、p値が0.05を下回るかどうかで判断した。
【結果】
【0057】
[炭水化物両親媒性物質の合成]
酸による分解で得た3つの分子量を備えるグリコールキトサン(GC)試料(表1)を使って両親媒性重合体を調製した。第四アンモニウム・パルミトイル・グリコールキトサン(GCPQ)試料の合成(図1)は、H NMR(文献20)(0.90ppm=CH3−パルミトイル、1.25ppm=CH2−パルミトイル、1.60ppm=CH2−パルミトイルβからカルボニル、2.25ppm=CH2−パルミトイルαからカルボニル、3.02ppm=CH3−モノメチルおよびジメチルアミノ、3.12ppm=CH−C2非置換グリコールキトサン、3.35ppm=CH3−トリメチルアミノ、3.5−5.5ppm=CHグリコールキトサン)で確認した。多様なレベルのパルミトイル化および四級化で13個の異なる両親媒性物質を調製した(表1)。
【0058】
ヨウ化メチル/GCの重量比を14.14又はそれ以下に保つ限り、メチル第四アンモニウムレベルの大半も同程度に維持する一方、パルミチン酸N−ヒドロキシスクシンイミド(PNS)の供給率を制御することでパルミトイル化レベルを粗調整した。
【0059】
[自己集合]
メチル・オレンジ(文献22,27)を使って、ポリマ凝集を証明した(図2a)。疎水性ポリマ(疎水性指標[HI]=1−2、疎水性親油性バランス[HLB]=17−18)が増えるほど、安定した凝集が生じることが低CMCsで証明された(<10μM、図2a、表1)。疎水性ポリマが増えると、より多数の無極性疎水性コアが生成されることも、ミセル形成後のメチル・オレンジの浅色移動の度合いから明らかである(最大λ<430nm、表1)。ポリマ凝集体は、直径が100−300nm(表1)で、先のの文献(文献28)が開示する単分子凝集のサイズとは一致しない。凍結割断および負染色透過電子顕微鏡はいずれも、理論の制限を受けることなく、直径10−30nmのより小さな集合体クラスタがより大きな集合体に階層的かつ組織的に凝集(図2b、2c)することを示す。こうした構造は図2dで記載するモデルと一致する。このクラスタ配置は、通常の両親媒性重合体の凝集とは異なる。ブロック共重合体ミセルにおいては、例えば、単一ミセルの集合体の直径は、通常、12−36nm(文献29,30)で、コレステリルプルランから調製されるミセルも、直径25nmの単一ミセルとして存在すると考えられている(文献31)。
【0060】
より低いHLBsを備えるその他の両親媒性物質で記録されたCMC値と比較しても、本発明によるポリマのモルCMCsは、例えばF127のように、その他の両親媒性凝集体より本発明の凝集体の方がより安定性が高いことを示す(表1および2)。本発明によるポリマのCMCsは、プルロニックブロック共重合体F127(HLB=14、CMC=550μ(文献6))およびポリソルベート(HLB=16.7、CMC=53μM(文献4))で記録されたものと比べて10進法の指標で1桁から3桁異なる。
【0061】
理論の制限を受けることなく、発明者は、このより好ましい凝集現象が図2dで提案したモデルと一致すると考えた。これは、ミセル形成に伴う水構造の喪失に加えて、多数のポリマ間およびポリマ内の疎水結合及び水素結合を形成するポリマの能力が凝集に関連するエントロピー利得に貢献しているであろうと考えたためである。さらに、分子量の増加が凝集に有利に働く(図2a)。改めて、この観察結果は、多数の分子間および分子内の接触がミセルクラスタを安定させるという仮説と矛盾しない。
【0062】
[薬物の取り込み]
より多くの無極性領域の形成は、疎水性薬物のカプセル化に有利に働く。従って、疎水性ポリマが増えると、より大量の薬物をカプセル化できる(図3aと3b)。カプセル化のレベルが高い:5mg mL−1G42(表1)と、4.43±0.12mg mL−1のプロポフォールをカプセル化できる。プロポフォールのようにログPの高い薬物の結合(incorporation)では、ミセルクラスタをナノ粒子製剤に変換(transformed)した。プロポフォール(ログP=4.1)を用いると、電子顕微鏡写真で密度の高い粒径50−150nmと見られる粒子のミセルクラスタからより粒径の大きい粒子を得た(図5c)。一方、膨張した粒子薬物とミセルクラスタの混合物から成るプレドニゾロン(ログP=1.4)を用いると、粒径が10−100nmの等方性液体が得られた。(差し込み図4b)。
【0063】
我々は、コレステロールなど疎水性分子(文献22)の存在下では、ポリ(エチレンイミン)両親媒性凝集体の数が上昇することを発見した。我々は、理論の制限を受けることなく、より多くの疎水性薬物が存在すると、ポリマ集合は、ミセルクラスタからより濃度の高いナノ粒子に移行すると仮定した。炭水化物製剤のプロポフォールレベルを少なくとも30日間、初期値の75%以上に維持する(図3b)。アルカリ媒体でポリマを透析することでアミン基のイオン化を抑えると、薬物のカプセル化レベルが高まることを表3は示す。凝集工程の初期段階の中心となる静電反発力の克服に伴う作業を除去することで、薬物カプセル化レベルが高まる。
【0064】
ポリマ疎水性の上昇に伴う薬物カプセル化の上昇は、ブロック共重合体で観察されてきた(文献32、33)。しかし、疎水性薬物の存在下で、ブロック共重合体からナノ粒子が形成されることは、我々が知る限り、報告されていない。従って、本発明による両親媒性物質の新規な特長とみなされる。例えば、プロポフォールとF127(1.78mg mL−1プロポフォール及び40mg mL−1F127)は、直径が20−40nmのミセルを形成する(文献33)。
【0065】
ポリマHLB/HI(表1、図2a)に加えて、ポリマの分子量もミセルの安定性に影響を及ぼす。分子量が増えると、ミセルの安定性が増し(図2a)、この安定性の改善は、薬物カプセル化の分子量の影響力に反映される(図3c)。分子量が2.5倍高まると、薬物/ポリマのモル比が10倍になる(表2)。従来の理論に囚われることなく、この観察結果は、多数の疎水性分子間および分子内の接触は長いポリマ鎖があって初めて可能になるため、図2dで提案するモデルと矛盾がない。
【0066】
これらの炭水化物薬物ナノ粒子は、ブロック重合体を超える主要な利点がある。すなわち、モル薬物カプセル化レベルは、少なくとも従来のものより10進法で一桁高い(表2、図3)。従来の理論に囚われることなく、これらの優れた薬物カプセル化レベルは凝集の本質によるものであると我々は提案する。ちなみに、ミセルクラスタの形成は、単一ミセルの形成とは異なる。
【0067】
疎水性物質を水媒体と結合させるときの両親媒性物質の効率だけでなく、水媒体と結合できる薬物の最大レベル、すなわち、臨床的関連パラメータを検討することも重要である。後者についてもブロック共重合体システムと比較した(表2)。これらの炭水化物両親媒性物質で得た薬物の取り込みは、有利に、45%w/wに達し、疎水性薬物で取り込んだ他のポリマ粒子で得られたものより高かった(文献19,34,35)。
【0068】
疎水性炭水化物に関する過去の研究は、その粘性強化特性(文献36−38)、ゲル形成能力(文献20,39)、非水溶性集合(aqueous insoluble aggregates)(21,23,31,40−43)に焦点を当ててきた。水溶性炭水化物両親媒性凝集体(文献20,21,28)に関し、超微細構造及び/又は生体利用効率の増強効果という特長は何ら報告されていない。我々は、ここに初めて、動的光散乱を根拠として裏付けられる顕微鏡写真によって、凝集挙動がミセルの階層的組織体への自己忌避コロイドクラスタ化(self repellent colloidal clusters)を伴うことを証明する。
【0069】
[炭水化物薬物担体による生体利用効率の増強]
図4と5は、新規な炭水化物粒子が生物学的障壁を克服して、薬物をデリバリするデータを示す。これらの炭水化物製剤を使用すると薬物の生体利用効率が極めて有意に高まることが分かる。眼の抗炎症薬プレドニゾロンと静脈麻酔薬プロポフォールの2つのモデル薬物を選択した。眼への局所使用では、炭水化物両親媒性で調整したプレドニゾロン0.35mgを含む房水と3.5mgのプレドニゾロンを含むプレドニゾロンフォルト(r)(Prednisolone Forte(r))を使って調製した薬物とでは初期の時点で統計的に区別できない。製剤の安定性を損なわないために、プレドニゾロンフォルトの希釈は行わなかった。硝子体液内のいずれのプレドニゾロン製剤でも薬物を検出しなかった。これらの炭水化物ナノ粒子は、角膜を越えて房水までの薬物吸収を促進するが、眼底への薬物のデリバリはできない。しかし、局所投与であることと薬物の特長を鑑みれば、驚くに当たらない(文献44)。
【0070】
炭水化物プロポフォール製剤で得られる睡眠時間は市販のフレゼニウス(Fresenius)またはディプリバン製剤(r)(Diprivan(r))がもたらす睡眠時間の最大で10倍である。動物が注射投与時間の終了までに眠ってしまったため、GCPQ製剤による復元反射時間の喪失は記録できなかった(図4b参照)。血液脳関門を越えての中枢作用薬のデリバリは迅速で効率的であることを示している。製剤を比較するために、睡眠時間を1分増やすのに必要なプロポフォールの用量を比較した。プロフォール0.2mgの場合、フレゼニウスとG19製剤を使ったときのマウス当たりの数値は、それぞれ、0.426mg mL−1と0.032mg mL−1(0.1mL用量当たり)で;プロフォール0.4mgの場合、ディプリバンとG41製剤を使ったときのマウス当たりの数値は、それぞれ、0.134mg mL−1と0.023mg mL−1(0.1mL用量当たり)で;プロフォール0.5mgの場合、希釈していない(10mg mL−1)フレゼニウスとディプリバン製剤を使ったときのマウス当たりの数値は、それぞれ、152mg mL−1と111mg mL−1(0.05mL用量当たり)であった。速やかな導入が望ましいため(文献45)、この戦略は麻酔誘発のメリットをプロポフォールにもたらす一方、これらの実験は、本質的に、この技術が行動変容療法または特定の脳疾患治療のための中枢神経系デリバリに好都合であることを示す。
【0071】
目下の研究は、これらの炭水化物両親媒性物質が中枢神経系への、または、角膜を超えての薬物デリバリを改善するメカニズムを完全には解明していない。しかし、中枢神経系については、製剤の物理的特性を分析することで明らかになるかもしれない。ディプリバンを使った(図5b)市販のプロポフォール製剤の粒径および粒度分布は、炭水化物製剤のものと比べて、大きかった(図5c)。図5cに記載の製剤はろ過してあるが、市販の乳剤と比較して、ろ過していない炭水化物製剤の生体利用能に効率向上は見られない(データ省略)。高分子凝集体のろ過は粒径を減少させるため(表1)、既知の理論に囚われることなく、我々は、減少した粒径がこれらの炭水化物ナノ粒子の薬物デリバリ活動に多少とも関係があるとの仮説を立てた。
【0072】
さらに、プロポフォールの遊離脂質製剤が効率の上昇を伴うことが報告されている(文献46)が、これは、脳への分割に役立つ血中の脂質貯蔵の欠落によるものと見なされる。炭水化物製剤による血中の脂質貯蔵の欠落がここで観察された本製剤の効率上昇をもたらしている可能性がある。
【0073】
結論として、炭水化物両親媒性物質を合成すると、ミセルクラスタへと自己集合し、これが疎水性薬物分子のデリバリ能力を高め、生物学的障壁を越えて薬物分子をデリバリ、すなわち、生体利用効率を高めることを見出した。本発明の技術は、疎水性薬物の製剤処方の課題を解決する。
【0074】
[ベタイン基により両親媒性炭水化物の合成]
単位当たりの第四アンモニウム基と置換した四級化ベタイン基で炭水化物両親媒性物質の変異体を合成した。後述する誘導体化炭水化物の一部はa単位とc単位から成り、本発明の実施例の一部に存在するb単位は除外した。
【0075】
[オレイルベタイン・グリコールキトサン及びパルミトイルべタイン・グリコールキトサンの合成と特性解析]
〈グリコールキトサンの分解〉
グリコールキトサン(GC)1.5gを110ml4M HCL中で分解し、振とう水槽内で48時間、50℃に保持した。5Lの水で透析(6回交換)し、透析物を凍結乾燥させて、白色の繊維状固体(523mg)を得た。
【0076】
〈ベタインのグリコールキトサンへの接合〉
0.129gのベタインを10mlの水で溶解した。 これに1.0gN−エチル−N'−(3−ジエチル・アミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDAC)を加え、反応物を15分間攪拌した。次に、40mlの蒸留水にGC0.36g(MW〜15−21kDa)を加え、反応物をさらに24時間、25℃で攪拌した。水溶液にHClを加え、最終濃度を0.1Mとし、反応物をさらに30分間攪拌した。 反応液を5Lの水で透析(6回交換)した。透析物を凍結乾燥させて、白色の繊維状固体を得た。収量は391mgであった。
【0077】
〈オレイル基のベタイン・グリコールキトサンへの接合〉
ベタイン・グリコールキトサン(GCB、180mg)を20mlの水に溶かし、重炭酸ナトリウム液(水20ml中、150mg)と混合し、無水エタノール(30ml)を加えた。オレイン酸N−ヒドロキシ・スクシンイミドのエタノール溶液(ONS、5mg mL−1、30ml)をこの水溶液に滴下(added drop wise)し、混合液を72時間室温で攪拌した。減圧下でエタノールを蒸発させ、ジエチルエーテルで抽出(3回、各60ml)し、5Lの水で透析(6回交換)し、凍結乾燥させて、オレイルベタイン・グリコールキトサン(GCBO)を得た。収量は72mgであった。
【0078】
〈パルミトイル基のベタイン・グリコールキトサンへの接合〉
GCB(180mg)を20mlの水に溶かし、重炭酸ナトリウム液(水20ml中、150mg)と混合し、無水エタノール(30ml)を加えた。パルミチン酸N−ヒドロキシ・スクシンイミドのエタノール溶液(PNS、5.28mg mL−1、30ml)をこの水溶液に滴下し、混合液を72時間室温で攪拌した。減圧下でエタノールを蒸発させ、ジエチルエーテルで抽出(3回、各60ml)し、5Lの水で透析(6回交換)し、凍結乾燥させて、パルミトイルベタイン・グリコールキトサン(GCBP)を得た。収量は76mgであった。
【0079】
[オレイルベタイン・グリコールキトサン及びパルミトイルべタイン・グリコールキトサンの特性解析]
緩衝酢酸溶液を移動相として利用し、マルチアングル・レーザー光散乱およびゲル浸透グラマトグラフィ(GPC/MALLS、MiniDawn、Wyatt、米国)によって分解グリコールキトサンの分子量を測定した(文献23)。
ブルーカー(Bruker)AMX400MHz分光計を使ってH NMRスペクトルを記録した(Bruker Instruments、英国)。解重合グリコールキトサンの溶剤としてD2Oを用い、誘導体化ポリマとしてCD3ODを使った。
【0080】
〈UV可視分光光度法〉
メチル・オレンジ溶液(25μM)をホウ酸塩緩衝剤(0.02M、pH9.4)で調整し、プローブ超音波処理で高濃度GCBOおよびGCBP(15mg mL−1)を調整するための希釈剤として用いた。これらのGCBOとGCBP製剤を引き続きメチル・オレンジ溶液で希釈し、希釈物を室温で1時間培養した後、UV分光光度計(UNICAM UV300、Thermo Spectronic、英国)を使って紫外線吸収スペクトルを記録した(300−600nm)。
【0081】
〈等温滴定熱量計〉
水中のGCBO製剤(2mg/ml)とGCBP製剤(1.92mg/ml)をプローブ超音波処理で調整し、マイクロ等温滴定熱量計(MICROCALTM VP−ITC、英国)を使って非ミセル化エンタルポグラムス(demicellisation enthalpograms)を記録した。
【0082】
〈動的光散乱〉
粒径と表面電荷を、ゼタサイザー(Zetasizer)3000HS(Malvern Insturments, Worcs., 英国)を使って、25℃で測定した。散乱光を90℃の角度で検出した。全ての試料は、ろ過前に薄膜フィルタ(細孔径:450nm、ミリポア)を通過させた。
【0083】
〈グリコールキトサンの分解〉
4M HClを使って、48時間、グリコールキトサンを分解した。ゲル浸透クロマトグラフィで測定した分解GCの分子量は15k−21kDaであった。
【0084】
〈ベタインのグリコールキトサンへの接合〉
ポリマのベタインレベルをH NMRを使って測定し、四級化ベタインCH基(?3.1、9H)の糖類(H−2からH−11、?3.5−4.5、10H)に対する比率を計算した。ベタインに接合したモノマー単位のモル比が0.122であることを見出した。
【0085】
〈ベタイン・グリコールキトサンへのオレイル基またはパルミトイル基の接合〉
パルミトイルまたはオレイル鎖CH基(?0.880、3H)の糖類(H−2からH−11、?3.5−4.5、10H)に対する比率を計算することにより、H NMRを使ってベタイン・グリコールキトサンへ接合したオレイルまたはパルミトイル基のレベルを測定した。オレイルベタイン・グリコールキトサンのオレイル基に接合するモノマー単位のモル比が0.198であることを見出した。また、パルミトイルべタイン・グリコールキトサンのパルミトイル基に接合するモノマー単位のモル比が0.296であることも見出した。
【0086】
〈GCBO及びGCBPの臨界ミセル濃度(CMC)〉
等温滴定熱量計(ITC)およびUV/VIS分光光度法{しがい ぶんこう こうど ほう}によって、GCBO及びGCBPの臨界ミセル濃度(CMC)を測定した。後者はプローブとしてオレンジ・メチルを使っている。ITCを使って測定したGCBOとGCBPのCMCsは、それぞれ、2.4mg mL−1と0.78mg mL−1であった。この差は、異なる方法を使用したことに起因する。全CMCデータを表5に記載する。
【0087】

【0088】
〈GCBOとGCBP凝集体の大きさの測定〉
GCBOとGCBP凝集体の粒径と表面電荷を表6に記載する。GCBO試料では2つのピークを検出し、これは、このポリマについて2つのタイプの凝集体が形成されたことを示す。GCBP試料では1つの広範なピークだけを検出した。どちらのポリマ試料も、ホウ酸塩緩衝液より水中の方がより大きな凝集体を形成した。これは、pH値の低い正電荷ポリマの電荷反発と、全粒子が僅かに正のゼータ電位を有するためと考えられる。
【0089】

【0090】
[第四アンモニウム・オレイル・グリコールキトサンと第四アンモニウム・パルミトイル・グリコールキトサン合成の代替方法]
〈GCの四級化〉
4M HCL(48時間の代わりに15時間とした以外は上記と同じ)で分解したGC0.75gを2mg mL−1のヨウ化ナトリウムを含むN−メチルピロリドン225ml中で2時間攪拌した。エタノール水酸化ナトリウム45mL(10mg mL−1)と、ヨウ化メチル4.6mLを加えた。36℃の窒素下で混合液を4時間攪拌した後、過剰ジエチルエーテルを使って沈殿させた。ジエチルエーテルで沈殿物を洗浄し、続けて、エタノールで洗浄し、水で再溶解し、5L 0.1M NaCl(3回交換)と水5L(6回交換)で透析した。透析物を凍結乾燥させて、白色の繊維状固体としてGCQを得た。収量は282mgであった。
【0091】
〈オレイル基またはパルミトイル基の第四アンモニウム・グリコールキトサンへの接合〉
GCQへのオレイル及びパルミトイル接合を調製するのに、GCQ(134mg)を使用した。ベタイン・グリコールキトサンのオレイル及びパルミトイル誘導体の調製に利用した方法と類似の手法を用いた。第四アンモニウム・オレイル・グリコールキトサン(GCQO)の収量は165mgで、第四アンモニウム・パルミトイル・グリコールキトサン(GCQP)の収量は87mgであった。
【0092】
〈GCQOとGCQPの特性解析〉
グリコールキトサンの分子量と置換レベルを測定するのに、マルチアングル・レーザー光散乱とH NMR分光分析をそれぞれ利用したゲル浸透グラマトグラフィを使って、前記と同様にGCQO及びGCQPの特性解析を行った。
【0093】
[結果]
〈グリコールキトサンの分解〉
グリコールキトサンの分子量は、17−21kDaであった。
【0094】
〈グリコールキトサンの四級化〉
第四アンモニウムメチルプロトン(CH、δ3.31、3H)と糖メチンプロトン(H2からH11、δ3.5−4.5、10H)レベルとの比率を計算するために、HNMRを使ってポリマの四級化レベルを測定した。モノマー単位当たりの第四アンモニウム基のモル比は0.097であった。
【0095】
〈第四アンモニウム・オレイル・グリコールキトサン及び第四アンモニウム・パルミトイル・グリコールキトサン中のオレイルレベルとパルミトイルレベル〉
オレイル置換基のCH=CH基(?5.3、2H)の糖類(H−2からH−11、?3.5−4.5、10H)に対する割合を計算することにより、H NMRを使ってポリマのオレイルレベルを決定した。第四アンモニウム・オレイル・グリコールキトサンにおけるモノマー当たりのオレイル基のモル比は0.319であった。
パルミトイル鎖のメチルプロトン基(?0.88、3H)の糖類(H−2からH−11、?3.5−4.5、10H)のメチン/メチレンプロトンに対する割合を計算することにより、H NMRを使って第四アンモニウム・パルミトイル・グリコールキトサン中のパルミトイルレベルを決定した。第四アンモニウム・パルミトイル・グリコールキトサンにおけるモノマー当たりのパルミトイル基のモル比は0.381であった。
【0096】
[生物的評価]
〈プレドニゾロンの眼への局所投与〉
排気ピペットを使って、オスのニュージーランド白ウサギ(n=4、Harlan、英国)の両眼の下方盲管(lower cul de sac)にプレドニゾロン製剤(35μL)を投与した。投与後1時間、2時間、4時間後に被験体を殺し、注射器で房水の標本採取を行った。硝子体液を採取し、すべての生体試料を液体窒素で直ちに凍結させた。房水試料を解凍し、50μLの房水を内部標準を含む150μLの移動相で希釈し、分析を行った。これらの希釈試料は上述のHPLCで分析した。硝子体液(0.5mL)も解凍し、分析前に酢酸エチル(文献50)で抽出した。
【0097】
〈プロポフォールの静脈中枢神経系デリバリ〉
生後6週間のオスMFIマウスに尾静脈から各種のプロポフォールを静脈注射し、正向反射を消失するまでの時間と睡眠時間を記録した。正向反射の喪失は投与後、背中を下にして置かれた被験体が立ち直りに失敗したことで、即座に確認された。眠らなかった被験体は睡眠時間ゼロと記録した。{せいこう はんしゃ}
【0098】
〈炭水化物両親媒性物質の経口吸収の可能性〉
炭水化物両親媒性物質の経口吸収ポテンシャルを評価した。分子量が15−30kDaでモノマー当たりの第四アンモニウム基のモル比が0.169、モノマー当たりのパルミトイル基のモル比が0.155の炭水化物両親媒性物質を使って、炭水化物ミセル製剤であるシクロスポリンA(CsA)を上記と同様に調製した。
【0099】
成熟オスウイスターラット(Harlan Olac 英国、体重240−280g、n=4)を12時間絶食させた後、CsA(2mg mL−1、−1mL、7.5mg kg−1)を胃内投与し、さらに4時間絶食させた。薬剤を水に分散させるか(超音波処理プローブにより分散)、ポリマ製剤または市販の液体製剤Neoral(r)(100mg mL−1)を蒸留水で希釈し2mg mL−1の水溶液を調製して、CsAを投与した。様々な時間間隔で麻酔状態のラットの尾静脈から血液を標本採取し、製造者の指示に従いながら、モノクローナル抗体ラジオイムノアッセイ{こうたい}(Cyclo-Trac SP-Whole Blood Radioimmunoassay Kit, Diasorin、英国)を使用してCsAの血中レベルを分析した。
【0100】
これらの実験の結果を図6aから6cにまとめた。実験結果は、100から350%血中レベルが上昇したことから、第四アンモニウム・パルミトイル・グリコールキトサンが、CsAの経口吸収を高めることを示す。
【0101】
〈GCPQ製剤の安定性と溶出試験〉
GCPQを上記と同様に合成し、ポリマ特性を表4に記載した。
【0102】

【0103】
GCPQ(20mg mL−1)とシクロスポリンA(CsA、5mg mL−1)を超音波処理プローブ(器具を最大出力の75%にセットして、10分間、氷上で超音波処理)によって分散させて製剤を調製した。液体製剤および凍結乾燥製剤をどちらも8−10℃で6ヶ月間保存した。1ヶ月の時間間隔をおいて、凍結乾燥試料を再構成(蒸留水で復元)し、液体試料をろ過(0.45μm)してHPLCで分析した。
【0104】
〈HPLC分析〉
Waters515HPLCポンプ、Waters717プラス自動サンプラ、及びWaters468回転式吸光度検出器を使って、高速液体クロマトグラフ分析を行った。ジョーンズクロマトグラフィカラムヒーターモデル7971(Jones Chromatography Column Heater model 7971)で80℃に維持した逆相カラム(Waters Assymetry Spherisorb ODS2、粒径5μm、250×4.6mm)で試料をクロマトグラフ分析した。移動相は、水、tert-ブチル・メチル・エーテルおよびリン酸(600:350:50:1)で、流量は1.2mL min−1であった。CsAピークは210nmで検出された。Waters Empowerソフトウエアを使ってデータを分析した。結果は図7に記載する。{こうそく えきたい}
【0105】
〈錠剤調製〉
直接圧縮で様々なGCPQ−CsA錠剤を調製した。粉末はすべて、篩過(35メッシュ)して、直径5mmの錠剤に圧縮した(EKOモデル、シングル・パンチ錠剤機、Erweka、ドイツ)。各薬剤ごとに個別に圧縮力を調整したため、錠剤の破砕強度は最大レベルであった。{しか}
【0106】
〈溶出試験〉
上記の各錠剤それぞれ3個づつについて、修正USP24−NF19法を使って溶出試験を行った。USP装置2(Erweka DT6R Dissolution Tester)、攪拌速度30rpm、溶出溶媒として1000mLの蒸留水を用いた。ろ過(0.45μm)後、5分、10分、20分、40分、60分、80分、120分後に試料を採取し、上記と同様に、HPLCで分析した。結果を図8に記載する。
【0107】

【0108】

【0109】

【0110】

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【0111】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式で表される両親媒性炭水化物重合体又はその塩から生成される平均粒径が20nmから500nmの高分子ミセル凝集体。


式中、a+b+c=1.000であり、aは0.010から0.990の値、bは0.000から0.980の値、cは0.010から0.990の値であり、
Xは疎水基であり、R、R及びRは、個別に水素、置換アルキル基又は非置換アルキル基から選ばれ、R、R及びRは、個別に水素、置換アルキル基又は非置換アルキル基、置換エーテル基又は非置換エーテル基、置換アルケン基又は非置換アルケン基から選ばれ、Rは存在しても不在でも構わず、存在する場合、Rは、非置換アルキル基又は置換アルキル基、非置換アミン基又は置換アミン基、アミド基である。
【請求項2】
炭水化物重合体のcユニットのモル比が0.100より大きく、0.400より小さい請求項1に記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項3】
炭水化物重合体のaユニットのモル比が0.050と0.800の間である請求項1または2に記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項4】
炭水化物重合体のbユニットのモル比が0.200と0.850の間である請求項1から3の何れかに記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項5】
炭水化物重合体のbユニットが存在しない請求項1に記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項6】
疎水基Xが、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ポリオクサ(polyoxa)C1−4アルキレン基又は疎水性ポリマ置換基から選ばれる請求項1〜5の何れかに記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項7】
疎水性ポリマ置換基が、ポリ(乳酸)基、ポリ(ラクチド・コ・グリコリド)[poly(lactide‐co‐glycolide]基又はポリ(グリコール酸)基から選ばれる請求項6に記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項8】
疎水基Xが、炭水化物重合体のcユニットと直接結合している請求項6または7に記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項9】
疎水基Xが、アミン基、アシル基又はアミド基を介して炭水化物重合体のcユニットと結合している請求項6に記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項10】
疎水基Xが、CH(CH)−CO−、CH(CH)−、CH
(CH)−CH=CH−(CH)−CONH−、又はCH(CH)−CONH−(但し、nは4と30の間の値、pとqは同一でも異なってもよく、3と15の間の値である)である前記請求項1〜9の何れかに記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項11】
疎水基Xが、カルボン酸をキトサンのアミン基に結合させることで形成されている請求項1〜6の何れかに記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項12】
カルボン酸が脂肪酸である請求項11に記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項13】
疎水基Xが、ラウリン酸(n=10)、ミリスチン酸(n=12)、パルミチン酸(n=14)、ステアリン酸(n=16)又はアラキジン酸(n=18)を、炭水化物重合体に結合させることで形成されている請求項11又は12に記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項14】
、R及びRが、一つ又はそれ以上のヒドロキシ基又は別の非イオン性親水置換基で置換されている前記請求項1〜13の何れかに記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項15】
、R及びRが個別に、−(CH)−OH(但し、pは1から10の値である)又は−(CH)−CH(CH−OH)(但し、pは1から10の値、qは0から3の値、rは1から3の値であって、q+r=3である)から選ばれる請求項1〜14の何れかに記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項16】
が存在しない請求項1〜15の何れかに記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項17】
が存在し、且つそのRが、−(CH)−で表せるアルキル基、−NH−(CH2)−で表せるアミン基、又は−NH−CO−(CH)−で表せるアミド基(式中、nは1から10の値である)から選ばれる請求項1〜15の何れかに記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項18】
がベタイン基(−NH−CO−CH−N)の一部であり、Rは−NH−CO−CH−である請求項1〜15又は請求項17の何れかに記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項19】
最小平均粒径が少なくとも100nmであり、最大平均粒径が400nm以下である前記請求項1〜18の何れかに記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項20】
炭水化物重合体の分子量が、約1.5kDaから250kDaである請求項1〜19の何れかに記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項21】
凝集体が塩である請求項1〜20の何れかに記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項22】
塩が、塩化物アニオン、ヨウ化物アニオン、酢酸アニオン、グルタミン酸アニオンから選ばれたイオンで形成されている請求項21に記載の高分子ミセル凝集体。
【請求項23】
請求項1〜22の何れかに記載した高分子ミセル凝集体を含有する組成物。
【請求項24】
高分子ミセル凝集体と薬物とで調製された請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
薬物が疎水性薬物である請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
疎水性薬物が、プレドニゾロン、プロポフォール、シクロスポリン、エストラジオール、テストステロンのいずれかであるか、パクリタキセルのような極性基を欠く多環リング構造の薬物であるか、エトポシド、アンフォテリシンB、ステロイド、又は多環化合物である請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
高分子ミセル凝集体が、薬物と共にナノ粒子を形成し、そのナノ粒子の平均粒径が、約20nmから2μmである請求項24から26の何れかに記載の組成物。
【請求項28】
高分子ミセル凝集体/薬物の比が、少なくとも1:10である請求項24から26の何れかに記載の組成物。
【請求項29】
請求項1〜22の何れかに記載された高分子ミセル凝集体と薬物を混合して均質化することを包含するナノ粒子製剤の製造方法。
【請求項30】
治療に用いる請求項24〜28の何れかに記載の医薬組成物。
【請求項31】
請求項1〜22の何れかに記載した高分子ミセル凝集体と、患者投与用薬物との薬剤調製への使用。
【請求項32】
薬物が疎水性薬物である請求項31に記載の使用。
【請求項33】
疎水性薬物が、プレドニゾロン、プロポフォール、シクロスポリン、エストラジオール、テストステロンのいずれかであるか、パクリタキセルの如き極性基を欠く多環リング構造の薬物であるか、エトポシド、アンフォテリシンB、ステロイド又は他の多環化合物である請求項32に記載の使用。
【請求項34】
薬物がプロポフォール、プレドニゾロン又はシクロスポリンである請求項33に記載の使用。
【請求項35】
薬剤が経口投与用の薬剤である請求項31から34の何れかに記載の使用。
【請求項36】
高分子ミセル凝集体が薬物のバイオアベイラビリティーを高める請求項35に記載の使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−506827(P2010−506827A)
【公表日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523342(P2009−523342)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【国際出願番号】PCT/GB2007/003016
【国際公開番号】WO2008/017839
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(309042174)ザ スクール オブ ファーマシー,ユニバーシティ オブ ロンドン (1)
【Fターム(参考)】