説明

高分子光学フィルムの製造方法

光学フィルムの作製方法は、第1の方向にポリオレフィンフィルムを延伸するステップと、第1の方向と異なる第2の方向にポリオレフィンフィルムを延伸して二軸延伸ポリオレフィンフィルムを形成するステップと、を含む。第2の方向にポリオレフィンフィルムを延伸するステップの少なくとも一部分は、第1の方向にポリオレフィンフィルムを延伸するステップと同時に行われる。二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、長さと幅を有し、そして少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性を有する。二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、x、y、およびz直交方向屈折率を有し、これらの直交方向屈折率の少なくとも2つは等しくなく、面内リターダンスは100nm以下であり、そして面外リターダンスは50nm以上である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ツイステッドネマティック(TN)液晶ディスプレイ、シングルドメイン垂直配向(VA)液晶ディスプレイ、光学補償複屈折(OCB)液晶ディスプレイなどのような液晶ディスプレイは、本質的に狭く不均一な目視角特性を有する。そのような目視角特性により、少なくとも部分的にディスプレイの光学的性能を記述することができる。コントラスト、カラー、およびグレースケールの強度プロファイルのような特性は、非補償ディスプレイでは異なる目視角に対して実質的に変化しうる。目視者が水平方向、垂直方向、またはその両方に位置を変化させたときおよび目視者がさまざまな水平方向位置および垂直方向位置にいるとき、所望の一連の特性が提供されるように、非補償ディスプレイが呈するこれらの特性を変更したいという要望が存在する。たとえば、いくつかの用途では、ある範囲の水平方向位置または垂直方向位置にわたり目視特性がより均一になるようにしたいという要望が存在しうる。
【0002】
重要な目視角範囲は、液晶ディスプレイの用途に依存しうる。たとえば、いくつかの用途では、広範囲の水平方向位置が望まれうるが、比較的狭い範囲の垂直方向位置で十分なこともある。他の用途では、狭範囲の水平角もしくは垂直角(またはその両方)から目視することが望ましいこともある。したがって、不均一な目視角特性に対する所望の光学補償は、目視位置の所望の範囲に依存しうる。
【0003】
目視角特性の1つは、液晶ディスプレイの明状態と暗状態との間のコントラスト比である。コントラスト比は、さまざまな因子の影響を受ける可能性がある。
【0004】
他の目視角特性は、目視角の変化に伴うディスプレイのカラーシフトである。カラーシフトとは、ディスプレイからの光の色座標(たとえば、CIE1931標準に基づく色座標)が目視角の変化に伴って変化することを意味する。カラーシフトは、スクリーンを含む平面に垂直な角度のときの色度座標と任意の垂直でない目視角または一連の目視角のときの色度座標との差(たとえば、ΔxまたはΔy)をとることにより、測定することができる。許容カラーシフトの定義は、用途により決められるが、ΔxまたはΔyの絶対値がある規定値を超えた場合(たとえば、0.05または0.10を超えた場合)として規定することができる。たとえば、所望の一連の目視角に対してカラーシフトが許容しうるかを決定することができる。カラーシフトは任意のピクセルまたは一連のピクセルに印加される電圧に依存しうるので、カラーシフトは理想的には1つ以上のピクセル駆動電圧で測定される。
【0005】
観測可能なさらに他の目視角特性は、グレースケール変化の実質的不均一挙動さらにはグレースケール反転の発生である。液晶層の角度依存透過率が層に印加された電圧に単調に従わない場合、不均一挙動を生じる。任意の2つの隣接したグレイレベルの強度比が1の値に近づいたときに、グレースケール反転を生じ、その際、グレイレベルが区別できなくなるかまたは反転することさえも起こる。典型的には、グレースケール反転は、ある目視角でのみ生じる。
【0006】
これらの問題に対処するために補償子が提案されている。1つの構想には、ディスコティック分子で作製される補償子フィルムが含まれる。現用のディスコティック補償子の欠点の1つは、比較的大きいカラーシフトが一般に発生することである。他の構想には、特定の組合せの複屈折層が含まれる。改善された目視角特性または所望の目視角特性を提供する新しい補償子構造体が必要とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的には、本発明は、ディスプレイ(たとえば液晶ディスプレイ)用の光学補償子さらには光学補償子を含有するディスプレイおよび他のデバイスなどをはじめとするさまざまな用途に有用である高分子光学フィルムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、光学フィルムの作製方法は、第1の方向にポリオレフィンフィルムを延伸するステップと、第1の方向と異なる第2の方向にポリオレフィンフィルムを延伸して二軸延伸ポリオレフィンフィルムを形成するステップと、を含む。第2の方向にポリオレフィンフィルムを延伸するステップの少なくとも一部分は、第1の方向にポリオレフィンフィルムを延伸するステップと同時に行われる。二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、長さと幅を有し、そして少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性を有する。二軸延伸ポリオレフィンフィルムは、x、y、およびz直交方向屈折率を有し、これらの直交方向屈折率の少なくとも2つは等しくなく、面内リターダンスは100nm以下であり、そして面外リターダンス(retardance)は50nm以上である。
【0009】
さらなる実施形態では、光学フィルムの作製方法は、第1の方向に高分子フィルムを延伸するステップと、第1の方向と異なる第2の方向に高分子フィルムを延伸して二軸延伸高分子フィルムを形成するステップと、を含む。第2の方向に高分子フィルムを延伸するステップの少なくとも一部分は、第1の方向に高分子フィルムを延伸するステップと同時に行われる。二軸延伸高分子フィルムは、少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性である。二軸延伸高分子フィルムは、x、y、およびz直交方向屈折率(ここで、これらの直交方向屈折率の少なくとも2つは等しくなく、面内リターダンスは100nm以下であり、そして面外リターダンスは50nm以上である)ならびに少なくとも0.65メートルの長さおよび幅を有し、そして面内および面外リターダンスは長さおよび幅を横切って実質的に均一である。
【0010】
他の実施形態では、光学フィルムの作製方法は、第1の方向に高分子フィルムを延伸するステップと、第1の方向と異なる第2の方向に高分子フィルムを延伸して二軸延伸高分子フィルムを形成するステップと、を含む。第2の方向に高分子フィルムを延伸するステップの少なくとも一部分は、第1の方向に高分子フィルムを延伸するステップと同時に行われる。二軸延伸高分子フィルムは、長さと幅を有し、そして少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性である。二軸延伸高分子フィルムは、x、y、およびz直交方向屈折率(ここで、これらの直交方向屈折率の少なくとも2つは等しくなく、面内リターダンスは100nm以下であり、そして面外リターダンスは50nm以上である)ならびに5ミクロン〜200ミクロンの厚さを有する。
【0011】
上記の発明の概要は、本発明のそれぞれの開示された実施形態またはすべての実施態様について記載することを意図したものではない。以下に記載の図面、詳細な説明、および実施例により、これらの実施形態についてより具体的に説明する。
【0012】
本発明に係る種々の実施形態に関する以下の詳細な説明を添付の図面に関連させて検討すれば、本発明についてより完全な理解が得られるであろう。
【0013】
本発明は種々の変更形態および代替形態に適用しうるが、図面ではそれらの特定例を例示的に示した。これらの特定例について詳細に説明する。しかしながら、当然のことではあるが、本発明を記載の特定の実施形態に限定しようとするものではない。そうではなく、本発明の精神および範囲に含まれる変更形態、等価形態、および代替形態はすべて、本発明に包含されるものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係る光学フィルムの作製方法は、ディスプレイ(たとえば液晶ディスプレイ)用の光学補償子などをはじめとする高分子光学フィルムさらには光学補償子を含有するディスプレイおよび他のデバイスを必要とするさまざまな用途に適用可能であると考えられる。本発明はそのように限定されるものではないが、本発明の種々の態様の理解は、以下に提供されている実施例を検討することにより得られるであろう。
【0015】
以下に定義されている用語に関して、特許請求の範囲または本明細書中の他のどこかに異なる定義が与えられていないかぎり、これらの定義が適用されるものとする。
【0016】
「cプレート」とは、光学素子の選択された表面に実質的に垂直な主光軸(「異常軸」と呼ばれることも多い)を有する複屈折光学素子(たとえば、複屈折光学プレートまたは複屈折光学フィルムなど)を表す。主光軸は、複屈折光学素子が主光軸に垂直な方向に沿った実質的に均一な屈折率と異なる屈折率を有する軸に対応する。cプレートの一例としては、図1に示される軸系を用いて、nx=ny≠nzが挙げられる。ここで、nx、ny、およびnzは、それぞれ、x軸、y軸、およびz軸に沿った屈折率である。光学異方性は、Δnzx=nz−nxとして定義される。
【0017】
「oプレート」とは、光学素子の表面に対して傾斜した主光軸を有する複屈折光学素子(たとえば、複屈折光学プレートまたは複屈折光学フィルム)を表す。
【0018】
「aプレート」とは、光学素子のx−y平面内に主光軸を有する複屈折光学素子(たとえば、複屈折光学プレートまたは複屈折光学フィルム)を表す。正複屈折aプレートは、たとえば、ポリビニルアルコールなどのようなポリマーの一軸延伸フィルムまたはネマティック正光学異方性LCP材料の一軸アラインドフィルムを用いて作製することができる。負複屈折aプレートは、ディスコティック化合物などを含む負光学異方性ネマティックLCP材料の一軸アラインドフィルムを用いて形成することができる。
【0019】
「二軸リターダー」とは、3つのすべての軸に沿って異なる屈折率(すなわち、nx≠ny≠nz)を有する複屈折光学素子(たとえば、複屈折光学プレートまたは複屈折光学フィルム)を表す。二軸リターダーは、たとえば、プラスチックフィルムを二軸配向させることにより作製することができる。二軸リターダーの例は、米国特許第5,245,456号明細書(参照により本明細書に組み入れられるものとする)中で論じられている。好適なフィルムの例としては、日本国大阪の住友化学株式会社および日本国大阪の日東電工株式会社から入手可能なフィルムが挙げられる。面内リターデーションおよび面外リターデーションは、二軸リターダーを記述するために用いられるパラメーターである。面内リターデーションがゼロに近づくにつれて、二軸リターダー素子は、cプレートに類似した挙動を示すようになる。一般的には、本明細書中に定義されるような二軸リターダーは、550nmの光に対して少なくとも3nmの面内リターデーションを有する。より小さい面内リターデーションを有するリターダーは、cプレートであると考えられる。
【0020】
「ポリマー」という用語は、ポリマー、コポリマー(たとえば、2種以上の異なるモノマーを用いて形成されるポリマー)、オリゴマー、およびそれらの組合せ、さらには、たとえば共押出または反応(エステル交換など)により混和性ブレンドの状態で形成されうるポリマー、オリゴマー、またはコポリマーを包含するものとする。ブロックコポリマーおよびランダムコポリマーは、いずれも、とくに明示されていないかぎり、包含される。
【0021】
「偏光」という用語は、光線の電気ベクトルがランダムに方向を変えることなく一定方向に保持されるかまたは規則的に変化する平面偏光、円偏光、楕円偏光、または任意の他の非ランダム偏光の状態を意味する。平面偏光では、電気ベクトルは単一平面内に保持されるが、円偏光または楕円偏光では、光線の電気ベクトルは規則的に回転する。
【0022】
「二軸延伸」という用語は、フィルムの平面内で第1の方向および第2の方向の2つの異なる方向にフィルムが延伸されたことを意味する。
【0023】
「同時二軸延伸」という用語は、二方向のそれぞれでフィルムの延伸の少なくとも一部分が同時に行われることを意味する。
【0024】
「配向する」、「伸長する」、および「延伸する」という用語は、本開示全体を通して同義的に用いられ、「配向された」、「伸長された」、および「延伸された」という用語、ならびに「配向すること」、「伸長すること」、および「延伸すること」という用語についても同様である。
【0025】
「リターデーションまたはリターダンス」という用語は、光学素子の2つの直交方向屈折率の差×厚さを意味する。
【0026】
「面内リターデーション」という用語は、光学素子の2つの直交方向面内屈折率の差と厚さとの積を意味する。
【0027】
「面外リターデーション」という用語は、光学素子の厚さ方向(z方向)に沿った屈折率−1つの面内屈折率の差と光学素子の厚さとの積を意味する。他の選択肢として、この用語は、光学素子の厚さ方向(z方向)に沿った屈折率−面内屈折率の平均の差と光学素子の厚さとの積を意味する。
【0028】
「実質的に非吸収性」という用語は、光学素子の透過レベルが少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して少なくとも80パーセントの透過性であることを意味する。ただし、透過パーセントは、入射光(場合により入射偏光光)の強度で規格化される。
【0029】
「実質的に非散乱性」という用語は、光学素子を透過する平行入射光または略平行入射光のレベルが30度未満の円錐角の範囲内の少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して少なくとも80パーセントの透過性であることを意味する。
【0030】
「J−リターダー」という用語は、少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性であるフィルムまたはシートを意味する。ただし、3つの直交方向屈折率の少なくとも2つは等しくなく、面内リターデーションは100nm以下であり、そして面外リターデーションは少なくとも50nmである。
【0031】
数値はすべて、本明細書中では、明示されているかいないかにかかわらず「約」という用語で修飾されているものと仮定する。「約」という用語は、一般に、当業者により記載値と等価である(すなわち、同一の機能または結果を有する)と考えられる数の範囲を意味する。多くの場合、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数字を包含しうる。
【0032】
重量百分率、重量パーセント、重量%などは、その物質の重量を組成の重量で割って100を掛けた値として表される物質の濃度を意味する同義語である。
【0033】
終点により数値範囲が記載されている場合、その範囲内に含まれるすべての数字が包含される(たとえば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を包含する)。
【0034】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、内容上明らかに異なる場合を除いて、単数形の「a」、「an」、および「the」は、複数形の指示対象を包含する。したがって、たとえば、「化合物」を含有する組成物が言及されている場合、2種以上の化合物の混合物が包含される。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、「または」という用語は、内容上明らかに異なる場合を除いて、その意味に「および/または」を含めて一般に利用される。
【0035】
図1は、光学素子を記述する際に使用される軸系を示している。一般的には、ディスプレイデバイスでは、x軸およびy軸はディスプレイの幅および長さに対応し、z軸は典型的にはディスプレイの厚さ方向に沿う。別段の記載がないかぎり、この条件を全体にわたって使用する。図1の軸系では、x軸およびy軸は、光学素子100の主要表面102に平行になるように定義され、正方形または長方形の表面の幅および長さの方向に対応しうる。z軸は、その主要表面に垂直であり、典型的には、光学素子の厚さ方向に沿う。
【0036】
さまざまな材料および方法を用いて、本発明に係る光学フィルム素子を作製することができる。たとえば、光学フィルムは、同時二軸延伸高分子フィルムの層を備えうる。この層は、少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性であり;さらにx、y、およびz直交方向屈折率を有し、これらの直交方向屈折率の少なくとも2つは等しくなく、面内リターダンスは100nm以下であり、そして面外リターダンスは50nm以上である。
【0037】
二軸延伸が可能でありかつ本明細書に記載の光学的特性を有する任意の高分子材料を利用しうると考えられる。これらのポリマーを部分的に列挙すると、たとえば、ポリオレフィン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリカーボネート、フルオロポリマーなどが挙げられる。1種以上のポリマーを組み合わせて高分子光学フィルムを形成することができる。
【0038】
ポリオレフィンとしては、たとえば、環状オレフィンポリマー(たとえば、ポリスチレン、ノルボルネンなど);ポリプロピレン;ポリエチレン;ポリブチレン;ポリペンチレン;などが挙げられる。特定のポリブチレンはポリ(1−ブテン)である。特定のポリペンチレンはポリ(4−メチル−1−ペンテン)である。
【0039】
ポリアクリレートとしては、たとえば、アクリレート、メタクリレートなどが挙げられる。特定のポリアクリレートの例としては、ポリ(メチルメタクリレート)およびポリ(ブチルメタクリレート)が挙げられる。
【0040】
フルオロポリマーとしては、とくに、ポリ(ビニリデンフルオリド)が挙げられるが、これ限定されるものではない。
【0041】
高分子光学フィルムの面内リターダンスは100nm以下または0nm〜100nmでありうる。高分子光学フィルムの面内リターダンスは20nm以下または0nm〜20nmでありうる。高分子光学フィルムの面内リターダンスは20nm〜50nmでありうる。高分子光学フィルムの面内リターダンスは50nm〜100nmでありうる。
【0042】
高分子光学フィルムの面外リターダンスは50nm以上1000nmまででありうる。高分子光学フィルムの面外リターダンスは75nm以上または75nm〜1000nmでありうる。高分子光学フィルムの面外リターダンスは100nm以上または100nm〜1000nmでありうる。高分子光学フィルムの面外リターダンスは150nm以上または150nm〜1000nmでありうる。
【0043】
高分子光学フィルムは5マイクロメートル以上の厚さ(z方向)を有しうる。高分子光学フィルムは5マイクロメートル〜200マイクロメートルまたは5マイクロメートル〜100マイクロメートルの厚さ(z方向)を有しうる。高分子光学フィルムは7マイクロメートル〜75マイクロメートルの厚さ(z方向)を有しうる。高分子光学フィルムは10マイクロメートル〜50マイクロメートルの厚さ(z方向)を有しうる。
【0044】
高分子光学フィルムは少なくとも0.65メートルの長さおよび幅を有しうる。高分子光学フィルムは少なくとも1.3メートルの長さおよび幅を有しうる。高分子光学フィルムは少なくとも1.5メートルの長さおよび幅を有しうる。面内および面外リターダンスは、高分子光学フィルムの長さおよび幅を横切って実質的に均一である。「リターダンスが高分子光学フィルムの長さおよび幅を横切って実質的に均一である」という表現は、リターダンス(面内および面外の両方)が二軸延伸ポリマーフィルムの層の幅および/または長さおよび幅に沿って4nm/cm未満または2nm/cm未満または1nm/cm未満変化することを意味する。均一性の定量的尺度の1つは、
【数1】

として定義される。式中、フィルムの幅wにわたって、
【数2】

は最大面内リターデーションであり、
【数3】

は最小面内リターデーションである。場合により、光学フィルムを形成するポリマーに任意の数の追加の添加剤を添加してもよい。添加剤を部分的に列挙すると、たとえば、安定化剤、プロセス助剤、結晶化調整剤、粘着付与剤、剛化剤、ナノ粒子などが挙げられる。
【0045】
安定化剤としては、たとえば、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、帯電防止作用剤、UV吸収剤、および光安定化剤が挙げられる。プロセス助剤としては、たとえば、滑剤、押出助剤、ブロック化剤、および静電ピニング助剤が挙げられる。
【0046】
結晶化調整剤としては、たとえば、透明化剤および核剤が挙げられる。結晶化調整剤は、二軸延伸高分子光学フィルムの「ヘイズ」の減少を促進する。結晶化調整剤は、「ヘイズ」を減少させるのに有効な任意の量、たとえば、10ppm〜500000ppm、100ppm〜400000ppm、100ppm〜350000ppm、または250ppm〜300000ppmのような量で存在させうる。
【0047】
所望の目視角の範囲または立体円錐は、用途の正確な特質に応じて操作可能である。たとえば、いくつかの実施形態では、許容される目視の立体角は大きいことが望ましい。他の実施形態では、許容される目視の範囲を非補償ディスプレイで通常用いられるよりも狭い角度範囲に厳密に制御することが望ましい(たとえば、プライバシー保護のため)。
【0048】
本発明に係る高分子光学フィルムは、現用の多くの光学体中に存在するセルローストリアセテート(TAC)層と代替しうる。TACは富士写真フィルム株式会社(日本国)から市販品として入手可能である。TACフィルムは約40マイクロメートルから120マイクロメートル超に及ぶ範囲の厚さで利用可能である。TACは溶媒キャスティング法に作製され、略等方性の面内リターダンスを呈する。TACは30nm〜120nmの面外リターダンスを呈する。
【0049】
本発明に係る同時二軸延伸高分子光学フィルムを用いれば、TACとは異なる広範囲の特性を提供しうる。たとえば、屈折率のばらつきの減少;本発明に係る高分子光学フィルムの任意の所与の厚さにおいてTACよりも高レベルの面外リターデーション;湿分バリヤーの耐性の改善;より低い製造コスト;環境にやさしい製造;実質的にcプレートの光学特性から二軸リターダーの光学特性まで容易にカスタマイズする能力を提供しうる。本発明の高分子光学フィルムは、類似のさらにはより小さい負のcプレートリターダンスを有するTACフィルムよりも薄くすることが可能であり、以下に記載の新規な一体化フィルムスタックの全厚さをより薄くすることができる。
【0050】
高分子光学フィルムの新しい製造方法を開発した。これらの方法は、第1の方向にポリマーフィルムを延伸するステップと、第1の方向と異なる第2の方向にポリマーフィルムを延伸して二軸延伸高分子フィルムを形成するステップと、を含む。第2の方向の延伸の少なくとも一部分は、第1の方向の延伸と同時に行われる。この方法により、先に記載した特性および属性を有する高分子光学フィルムが形成される。
【0051】
高分子フィルムを逐次的に二軸延伸してみたが、先に記載した特性および属性を有する理想的な高分子光学フィルムを得ることはできなかった。高分子光学フィルムを逐次的に二軸延伸すると(すなわち、第1の機械方向(MD)にフィルムを延伸してから第2の横方向(TD)にフィルムを延伸すると)、多くの場合、「ばらつきの大きい」光学特性および属性を有する高分子光学フィルムが得られる可能性がある。最終延伸方向が二軸延伸高分子光学フィルムの光学特性および属性により大きな影響を及ぼすことが観察された。しかしながら、この方法を最適化しようと試みたが、本発明の特性および属性を有する高分子光学フィルムを得ることはできなかった。
【0052】
同時二軸延伸高分子光学フィルムは、同時二軸延伸高分子光学フィルムに特有の問題点に加えて、依然として逐次二軸延伸高分子光学フィルムが抱える問題点のいくつかを有する。高分子光学フィルムを同時二軸延伸した場合、「ばらつきの大きい」光学特性および属性を有する高分子光学フィルムが得られることはない。このほか、同時二軸延伸法を利用することにより、逐次二軸延伸法のときよりもフィルムの寸法安定性が改善され、厚さ変動が低減される。本明細書に記載の方法を用いれば、本発明に係る特性および属性を有する高分子光学フィルムが得られる。
【0053】
図2は、本発明に係る方法を実施するためのテンター装置の上面概略図を示している。テンターは、米国特許第5,051,225号明細書に開示されているタイプのものであってよい。テンター装置10は、駆動クリップ22およびアイドラークリップ24が運ばれる第1のサイドレール12および第2のサイドレール14を備える。駆動クリップ22は「X」印の付されたボックスとして模式的に示され、一方、アイドラークリップ24は白地のボックスとして模式的に示されている。所与のレール上の駆動クリップ対22間に、1つ以上のアイドラークリップ24が存在する。図示されるように、所与のレール上の各クリップ対22間に2つのアイドラークリップ24が存在していてもよい。1セットのクリップ22、24は、レールの端部の矢印により示された方向に第1のレール12の周りで閉じたループを形成して移動する。同様に、他のセットのクリップ22、24は、レールの端部の矢印により示された方向に第2のレール14の周りで閉じたループを形成して移動する。クリップ22、24は、フィルムの縁部を保持し、フィルムの中央に矢印により示された方向にフィルム26を前進させる。レール12、14の端部で、クリップ22および24はフィルム26を開放する。次に、クリップは、テンターのレールの外側に沿って入口に戻り、キャストウェブを掴持してテンターに通し前進させる(図を簡潔にするために、レールの外側で入口に戻るクリップは、図2から省かられている)。テンターから送出される延伸フィルム26は、後続の加工または使用に供すように巻き取ってもよいし、またはさらなる加工に付してもよい。
【0054】
ポリマーをシートの形態にキャストして延伸に好適なウェブを作製することにより、先に記載した光学フィルムを得ることができる。ポリマーは、安定な均一溶融体を生成するように温度調整される押出機バレルを備えた一軸スクリュー押出システム、二軸スクリュー押出システム、カスケード押出システム、または他の押出システムの供給ホッパーにポリマー樹脂を供給することにより、キャスト可能である。ポリマーをシートダイに通して回転冷却金属キャスティングホイール上に押し出すことができる。次に、本明細書に記載の方法に従ってウェブを二軸延伸する。押出ウェブを急冷し、再加熱し、そして第1および第2のレール12、14上のクリップ22、24に供給し、テンター装置10に通して前進させることが可能である。オプションの加熱およびクリップ22、24による掴持は、任意の順序でまたは同時に行うことが可能である。
【0055】
レール12、14は、3つの領域、前加熱領域16;延伸領域18;および延伸後処理領域20を通過する。前加熱領域16では、破壊せずに有意量の延伸が行えるように適切な温度範囲内にフィルムを加熱する。3つの機能領域16、18、および20をさらにゾーンに分割することが可能である。たとえば、テンターの一実施形態では、前加熱領域16は、ゾーンZ1、Z2、およびZ3を備え、延伸領域18は、ゾーンZ4、Z5、およびZ6を備え、そして延伸後領域20は、ゾーンZ7、Z8、およびZ9を備えうる。当然のことながら、前加熱領域、延伸領域、および後処理領域は、それぞれ、示されているよりも少ないゾーンまたは多いゾーンを備えうる。さらに、延伸領域18内において、TD(横方向)成分の延伸またはMD(機械方向)成分の延伸を同一ゾーン内または異なるゾーン内で行うことが可能である。たとえば、MD方向およびTD方向の延伸を、それぞれ、ゾーンZ4、Z5、およびZ6のうちのいずれか1つ、2つ、または3つで行うことが可能である。さらに、一方の成分の延伸を行った後で他方の成分の延伸を行ってもよいし、または一方の成分の延伸を開始した後で他方の成分の延伸を開始してオーバーラップさせてもよい。さらにまた、いずれの成分の延伸についても、2工程以上の個別の工程で行うことも可能である。たとえば、Z5ではMD方向の延伸をまったく行わずに、Z4およびZ6でMD方向の延伸を行うことが可能である。
【0056】
また、MD方向および/またはTD方向の延伸の一部分を前加熱領域または延伸後処理領域で行うことも可能である。たとえば、図示されている実施形態において、ゾーンZ3で延伸を開始してもよい。ゾーンZ7またはそれより先のゾーンまで延伸を継続させてもよい。ゾーンZ3、Z5、またはZ6の後のゾーンのいずれにおいても、延伸の再開が可能である。
【0057】
MD方向の延伸量はTD方向の延伸量と異なっていてもよい。MD方向の延伸量は、TD方向の延伸量よりも10%までまたは25%までまたは50%まで多くてもよい。TD方向の延伸量は、MD方向の延伸量よりも10%までまたは25%までまたは50%まで多くてもよい。驚くべきことに、この「アンバランスな」延伸は、実質的に均一な面内リターダンスを有する光学フィルムを提供するのに役立つ。
【0058】
フィルムを後処理領域20に通して前進させることが可能である。この領域では、有意な延伸を行うことなくフィルム26を所望の温度に保持することが可能である。この処理は、ヒートセットまたはアニールと呼ぶことができる。また、この処理は、寸法安定性のような最終フィルムの特性を改善するように行うことが可能である。さらに、後処理領域20において、TD方向およびMD方向の一方または両方で少量の緩和を行うことも可能である。緩和とは、本明細書中では、レールのTD方向の収斂および/もしくは各レール上の駆動クリップのMD方向の収斂、または単にフィルムに加わるTD方向および/またはMD方向の応力の減少を意味する。
【0059】
フィルムの二軸延伸は、たとえば、限定されるものではないが、ポリマーまたは樹脂の組成、フィルムのキャスティングおよびクエンチングのパラメーター、延伸前にフィルムを前加熱する間の時間−温度履歴、使用される延伸温度、使用される延伸プロファイル、および延伸速度などの多くのプロセス条件に敏感である。本明細書に記載の教示の助けを得て、当業者であれば、これらのパラメーターのいずれかまたはすべてを調整して、所望の光学特性および特徴を備えたフィルムを得ることができよう。
【0060】
二軸延伸光学フィルムの冷却は、延伸領域18で延伸を開始する前または開始した後で開始することが可能である。冷却は「ゾーン」冷却であってもよい。「ゾーン」冷却とは、フィルムの縁部28からフィルムの中央部30を通る実質的に全幅すなわちウェブのTD方向を冷却することを意味する。驚くべきことに、延伸ゾーンの直後でゾーン冷却を行うと、有効量で適用した場合、高分子光学フィルムの面内リターダンスの均一性が改善されることが判明した。冷却は、強制空気対流により提供しうる。
【0061】
このほか、有効量のゾーン冷却を適用すると、面内リターデーションの横方向(TD)の変動が改善される。以下の実施例に示されるように、延伸ゾーンの直後でゾーン冷却を利用することにより、先に示したような面内リターデーションの横方向(TD)変動、すなわち、
【数4】

は、低減される。かなり広い幅(すなわち、0.65メートルまたは1.3メートルまたは1.5メートル)で高分子光学フィルムを製造するという実用面を考慮した場合および規模の経済性および歩留りに関して得られる利点を考慮した場合、面内リターデーションの横方向(TD)の変動を能動制御する能力は有用である。以下の実施例には、本発明の高分子光学フィルムを得るためのさまざまなプロセスパラメーターが示されている。
【0062】
多種多様な光学素子を用いて光学補償子を形成することができる。これらの光学素子の中には、oプレート、cプレート、aプレート、二軸リターダー、ツイステッドoプレート、ツイステッドaプレート、および他のリターダーが包含される。oプレート、cプレート、およびaプレートに関する情報は、イェー(Yeh)ら、液晶ディスプレイの光学素子(Optics of Liquid Crystal Displays)、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ(John Wiley&Sons)、ニューヨーク(New York)(1999年)、米国特許第5,504,603号明細書、同第5,557,434号明細書、同第5,612,801号明細書、同第5,619,352号明細書、同第5,638,197号明細書、同第5,986,733号明細書、および同第5,986,734号明細書、ならびにPCT特許出願公開国際公開第01/20393号パンフレットおよび国際公開第01/20394号パンフレット(いずれも参照により本明細書に組み入れられるものとする)の各明細書中に見いだすことができる。
【0063】
以下に記載されているように光学素子を組み合わせて構成することにより、光学体または光学補償子スタックを形成する。先に記載した新規な高分子光学フィルム上に偏光子層またはコレステリック液晶材料を配設することにより、光学体または光学補償子スタックを形成することができる。
【0064】
図3は、第1の液晶層320上に配設されたJ−リターダー310を含む光学補償子スタック300を示している。J−リターダー310は、少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性の同時二軸延伸高分子フィルムの層を含む。J−リターダー310は、x、y、およびz直交方向屈折率を有し、これらの直交方向屈折率の少なくとも2つは等しくなく、面内リターダンスは100nm以下であり、そして面外リターダンスは50nm以上である。
【0065】
第1の液晶層320は液晶材料を含む。第1の液晶層320は、oプレート、aプレートなどでありうる。
【0066】
図3は、光学補償子スタック300がJ−リターダー310上に配設された第2の液晶層325を含みうるかまたはJ−リターダー310が第1の液晶層320と第2の液晶層325との間に配設されうることを示している。第2の液晶層325は、oプレート、aプレートなどでありうる。光学補償子スタック300は、第1の液晶層320上に配設された偏光子層330をさらに含みうるか、または第1の液晶層320は、偏光子層330とJ−リターダー310との間に配設されうる。偏光子層330は、吸収偏光子であっても反射偏光子であってもよい。反射偏光子層340は、吸収偏光層330上に配設可能であるか、または吸収偏光層330は、反射偏光層340と第1の液晶層320との間に配設可能である。
【0067】
図4は、偏光子層430上に配設されたJ−リターダー410を含む光学補償子スタック400を示している。J−リターダー410は、少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性の同時二軸延伸高分子フィルムの層を含む。J−リターダー410は、x、y、およびz直交方向屈折率を有し、これらの直交方向屈折率の少なくとも2つは等しくなく、面内リターダンスは100nm以下であり、そして面外リターダンスは50nm以上である。
【0068】
光学補償子スタック400は、第1の偏光層430上に配設された第2の偏光子層440をさらに含みうるか、または第1の偏光層430は、第2の偏光層440とJ−リターダー410との間に配設されうる。偏光子層430は、吸収偏光子であっても反射偏光子であってもよい。第1の偏光層430が吸収偏光子である場合、第2の偏光層440は反射偏光子層でありうる。
【0069】
先に記載した光学補償スタック層にまたはその層間に追加層を付加することができる。追加の任意層としては、たとえば、アライメント層、oプレート、aプレート、および/またはcプレートなどが挙げられる。
【0070】
従来の二色性偏光子をラミネートするときと同様な方法で、1つ以上の光学補償スタックをLCDパネルの第1の主要面および第2の主要面にラミネートすることができる。以上に記載した光学補償スタックは、より広範にわたるリターダー(たとえば、二軸リターダーまたはcプレート)を提供し、偏光子の厚さを劇的に増加させることなく光学補償スタックを作製するように複屈折を形成することができる。本明細書に記載の本発明の教示により、従来の偏光子よりも薄い偏光子を備えかつ追加の補償フィルムを含有しない光学補償スタックを作製することが可能性である。
【0071】
以上に記載した光学体または光学補償子は、透過型(たとえば、背面照射型)、反射型、および透過反射型のディスプレイをはじめとするさまざまな光学ディスプレイおよび他の用途で使用することができる。たとえば、図5は、第1の液晶層520上に配設されたJ−リターダー510を含む光学補償子スタック501上に配設された光変調子550を含む1つの例示的ディスプレイシステム500の概略断面図を示している。J−リターダー510は、少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性の同時二軸延伸高分子フィルムの層を含む。J−リターダー510は、x、y、およびz直交方向屈折率を有し、これらの直交方向屈折率の少なくとも2つは等しくなく、面内リターダンスは100nm以下であり、そして面外リターダンスは50nm以上である。第1の液晶層520は液晶材料を含む。第1の液晶層520は、oプレート、aプレートなどでありうる。
【0072】
光学補償子スタック501は、J−リターダー510上に配設された第2の液晶層525を含みうるか、またはJ−リターダー510は、第2の液晶層525と第1の液晶層520との間に配設されうる。第2の液晶層525は、oプレート、aプレートなどでありうる。光学補償子スタック501は、第1の液晶層520上に配設された偏光子層530をさらに含みうるか、または第1の液晶層520は、偏光子層530とJ−リターダー510との間に配設されうる。偏光子層530は、吸収偏光子であっても反射偏光子であってもよい。反射偏光子層540は、偏光層530上に配設可能であるか、または偏光層530は、反射偏光層540と第1の液晶層520との間に配設可能である。
【0073】
図6は、偏光子層630上に配設されたJ−リターダー610を含む光学補償子スタック601上に配設された光変調子650を含む1つの例示的ディスプレイシステム600の概略断面図を示している。J−リターダー610は、少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性の同時二軸延伸高分子フィルムの層を含む。J−リターダー610は、x、y、およびz直交方向屈折率を有し、これらの直交方向屈折率の少なくとも2つは等しくなく、面内リターダンスは100nm以下であり、そして面外リターダンスは50nm以上である。
【0074】
光学補償子スタック601は、第1の偏光層630上に配設された第2の偏光子層640をさらに含みうる、または第1の偏光層630は、第2の偏光子層640とJ−リターダー610との間に配設されうる。反射偏光子層640は、偏光層630上に配設可能であるか、または第1の偏光層630は、第2の偏光層640とJ−リターダー610との間に配設可能である。偏光子層630は、吸収偏光子であっても反射偏光子であってもよい。第1の偏光層630が吸収偏光子である場合、第2の偏光層640は反射偏光子層でありうる。
【0075】
ディスプレイシステム500、600を目視するために使用される光を供給する光変調子550、650は、たとえば、光源および光導波路を含むが、他の照明システムを使用することもできる。図5および図6に示された光変調子550、650は略長方形の断面を有するが、任意の好適な形状を有する光導波路を光変調子550、650に使用することができる。たとえば、光導波路は、楔形導波路、チャネル形導波路、擬似楔形導波路などであってよい。主要な要件は、光導波路が光源からの光を受け取ってその光を放出できるということである。その結果、光導波路(light)は、所望の機能を達成するために、バックリフレクター(たとえば、オプションのリフレクター)、抽出機構、および他の素子を含みうる。
【0076】
表面反射を最小限に抑えるために、フロン(登録商標)ト表面の洗浄ができるように、引掻傷を防止するために、さらにはいくつかの他の特性が容易に得られるように、異なる層または材料の組合せを光学補償スタック501、601上に配設することができる。追加のフィルムにはタッチ素子も包含されうる。
【0077】
得られるディスプレイの明るさを改善するために、いくつかの異なるタイプのフィルムをディスプレイの背面にまたはバックライトキャビティー中に付加することも可能である。これらのフィルムには、ディフューザー、保護シールド、EMIシールド、反射防止フィルム、プリズム構造化フィルム(3Mにより販売されているBEF)、または反射偏光子(3Mにより販売されているDBEFまたは日東電工により販売されているニポックス(Nipocs))が包含されうる。反射偏光子がニポックス(Nipocs)のように円偏光光を透過および反射することにより動作する場合、1/4波長板などのような追加のリターダーフィルムが必要である。
【0078】
図5および図6は、光変調子上に配設された1つの光学補償スタックを示しているが、先に述べたように、従来の二色性偏光子をラミネートするときと同様な方法で、2つの光学補償スタックをLCDパネルの第1の主要面および第2の主要面にラミネートすることができる。したがって、先に記載したような類似のまたは異なる光学補償スタック間にLCDパネルを配設することが可能である。
【0079】
光学フィルムの表面処理を行うとLCDに通常使用される他の光学フィルムへのこれらのフィルムの接着性が改善されることが判明した。表面処理としては、たとえば、コロナ処理、火炎処理、またはプラズマ処理が挙げられる。これらの表面処理に使用したガスには、酸素、窒素、希ガス(たとえば、アルゴンおよびヘリウム)、塩素、アンモニア、メタン、プロパン、およびブタンが含まれていた。光学フィルムの接着性を向上させるために、コーティング(たとえば、塩素化ポリオレフィン(すなわちPVDC))、化学エッチング、および加水分解処理を使用することもできる。
【0080】
液晶ディスプレイでは、ディスプレイを構成する層のスタック中でさまざまな光学フィルムが利用される。ディスプレイに使用される光学フィルムの特質およびこれらのフィルムの表面処理がいかに性能および取扱いを改善するかについての説明に役立つように、2つの例を提供する。
【0081】
第1の例では、偏光子は配向PVAフィルムを含む。このフィルムは、少なくともいくつかの実施形態では、光を効果的に偏光させるのに必要な二色性が得られるようにヨウ素で染色される。配向され染色されたPVAは、2つのバリヤーフィルム間にそれを封入することにより環境から保護される。これらのバリヤーフィルムは、多くの場合、セルローストリアセテート(TAC)であり、配向され染色されたPVAの2つの主要面にTACフィルムを接着させるために使用される材料は、水とPVAを含む溶液であり、場合により、メタノールを含有する。TACフィルムは水溶液で湿潤されないので、典型的には、ラミネーションプロセス前に苛性アルカリ溶液でTACフィルムを処理して表面を加水分解させる。
【0082】
他の例では、液晶ディスプレイの目視角特性を改善するのに有用な補償フィルム(日本国の富士写真から入手可能なWVF(登録商標)など)は、基材、アライメント層、LCP層、偏光子(場合により封入層を有する)、オプションのプライマーコーティング、および接着剤などのいくつかの異なる層を含む。TACフィルムは、多くの場合、配向され染色されたPVAの封入層としてもアライメント層の基材としても使用される。適切なレベルの接着性を提供すべく、多くの場合、先に記載したのと類似の方法でTACフィルムを加水分解させる。接着破壊を生じたとしても、接着剤:ガラス境界面でも破壊を生じるようにして、場合により行われる再加工プロセス時に高価で時間のかかるフィルム除去が回避されるように、特定レベルの接着性が必要とされる。
【0083】
本発明では、複雑で費用のかかるおそれのあるプライマーコーティングまたは加水分解処理を行うことなく本明細書に記載の光学フィルムの接着性が改善されることを書面で実証する。一連の光学フィルムに対するさまざまな表面処理により該フィルムの接着性が改善されることが判明した。新規な表面処理としては、たとえば、コロナ処理、火炎処理、またはプラズマ処理が挙げられる。これらの表面処理に使用したガスには、酸素、窒素、希ガス(たとえば、アルゴンおよびヘリウム)、塩素、アンモニア、メタン、プロパン、およびブタンが含まれていた。
【0084】
本明細書に記載されている高分子光学フィルムは、液晶ディスプレイの機能を強化したりまたは液晶ディスプレイに他の特性を付与したりするさまざまな他の素子およびフィルムと共に使用することができる。そのような素子およびフィルムとしては、たとえば、輝度増強フィルム、リターデーションプレート(1/4波長板や1/4波長フィルムなど)、多層または連続相/分散相反射偏光子、金属化バックリフレクター、プリズムバックリフレクター、拡散反射バックリフレクター、多層誘電体バックリフレクター、およびホログラフィックバックリフレクターが挙げられる。
【実施例】
【0085】
実施例A
この実施例では、等しい二軸配向を有する同時二軸配向ポリプロピレンフィルムの作製方法について具体的に説明する。
【0086】
従来の溶融押出装置およびキャスティング装置を用いて、ホモポリマーのポリプロピレン(テキサス州デアーパークのアトフィナ(Atofina,Deer Park,TX)から市販品として入手可能であるフィナ3376(Fina 3376))を溶融押出しキャストした。2250マイクロメートルの厚さにフィルムをキャストした。ファン速度を80%に設定して摂氏178度でフィルムを前加熱した。摂氏160度の温度でMD方向に7.0倍およびTD方向に7.0倍に同時配向させた。配向後、フィルムを摂氏135度の温度に冷却させた。最終フィルム厚さは、25マイクロメートルであった。
【0087】
パーキン・エルマー・ラムダ900分光光度計(Perkin Elmer Lambda 900 spectophotometer)を用いて直交偏光子間の透過率を測定したところ、透過率の読みは0.015%であった。次に、透過率が最小になるまでフィルムの部片を回転させて、フィルムの部片を検光子に並置した。所定の位置にあるサンプルの最小透過率は、0.15%であった。これ以降では、直交偏光子間にサンプルフィルムを入れたときの最小透過率を偏光解消と記す。次に、偏光子の透過軸を検光子の透過軸に平行にアライメントした状態で偏光子を90度回転させた。平行偏光子の強度と直交偏光子の強度との比(これ以降では、コントラスト比(CR)と称する)は、500:1であった。
【0088】
摂氏85度のオーブン中でフィルムを1000時間懸垂させることにより、MD方向およびTD方向の両方の収縮率値を測定した。実施例Aの結果は、MD方向で3%、TD方向で1%であった。
【0089】
1ポンド/線インチ(180gm/線cm)の負荷をかけて摂氏100度で1分間にわたり、TD方向およびMD方向の両方の耐クリープ性を測定した。MD方向およびTD方向のクリープはいずれも、3.6%であった。
【0090】
ナショナル・インストラメンツRPA2000(National Instruments RPA2000)を用いて面内リターダンスを測定した。面内リターダンス(Δin)は、20nmであった。メトリコン・モデル2010プリズム・カプラー(Metricon Model 2010 Prisim Coupler)を用いて面内屈折率および面外屈折率を測定した。面外リターダンス(Δout)は、厚さと、厚さ方向(z方向)の平均屈折率とフィルムの平面内の平均屈折率との差と、の積である。実施例Aは、265nmの|Δout|を有していた。
【0091】
実施例1
実施例1では、不均等な二軸配向を有しかつ改善された熱安定性および低減されたΔinを示すアンバランスな同時二軸配向ポリプロピレンフィルムの作製方法について具体的に説明する。
【0092】
キャストウェブが1000マイクロメートルの厚さであったこと以外は実施例Aに記載したのと類似した方法で、フィルムを作製した。最終フィルム厚さは、15マイクロメートルであった。MD方向およびTD方向の延伸比と共にテンターの種々の領域内の温度を以下の表1に列挙する。
【0093】
【表1】

【0094】
他の特性を表2に示す。
【0095】
【表2】

【0096】
|Δin|および|Δout|は、TD方向に沿ってウェブの少なくとも150cmにわたり平均したものである。
【0097】
実施例2および3
表1に列挙されているプロセス条件以外は実施例1と類似した方法で、実施例2および3を作製した。両実施例の最終フィルム厚さは、16マイクロメートルであった。
【0098】
実施例2および3では、テンター温度が
【数5】

および偏光解消に影響を及ぼすことが実証される。実施例2および3はまた、より大きい面外リターダンスおよび著しく低い面内リターダンスを呈する。
【0099】
実施例4
実施例4では、透明化剤を添加する効果について具体的に説明する。透明化剤または核剤を含有する樹脂(アトフィナ3289MZ(Atofina 3289MZ))を25%の濃度で添加したこと以外は実施例3と類似した方法で、この実施例を作製した。実施例4で得られた透明化剤または核剤の濃度は、1000ppmであった。
【0100】
透明化剤の添加により、偏光解消は、実施例3ときの0.05%から0.03%に減少した。
【0101】
実施例5
実施例5では、テンターの前加熱領域内の温度低下の効果について具体的に説明する。ファン速度を55%に減少させて前加熱温度を低下させたこと以外は実施例3と類似した方法で、この実施例を作製した。実施例5では、偏光解消は実施例3のときの0.05%から0.03%に減少した。
【0102】
実施例6
実施例6では、耐クリープ性を改善する手段について具体的に説明する。冷却およびアニーリングの温度をわずかに低下させたことおよび配向がアンバランスであったこと以外は実施例1と類似した方法で、この実施例を作製した。追加のプロセスステップを実施例6に付加することにより、延伸後ゾーンでフィルムをMD方向にさらに5%配向させた。実施例6では、MD方向の耐クリープ性は、実施例Aを基準にして50%の減少を呈した。
【0103】
実施例7
実施例7〜16では、光学フィルムの表面処理により光学フィルムの接着性が改善されることについて説明する。表面処理としては、たとえば、コロナ処理、火炎処理、および/またはプラズマ処理が挙げられる。これらの表面処理に使用されるガスとしては、酸素、窒素、希ガス、塩素、アンモニア、メタン、プロパン、およびブタンが挙げられる。コーティング、化学エッチング、および加水分解処理を用いて、光学フィルムの接着性を向上させることも可能である。
【0104】
実施例7は、実施例3と類似した方法で作製された16マイクロメートルポリプロピレンフィルムであり、以下のようなさまざまなガス表面化学過程、
(a)約25%の相対湿度(RH)で0.15J/cm2の空気コロナ;
(b)リボンバーナーに支持された層流予備混合天然ガス:空気火炎を0.95の当量比(10.1:1の空気:燃料比)、5300Btu/hr・インチ(611W/cm)の火炎パワー、および10mmのバーナー/フィルムギャップで用いる火炎処理;
(c)1.0J/cm2のN2コロナ(ここで、実施例の全体にわたり窒素コロナ処理はすべて、10ppm未満のコロナ中酸素濃度を有する);
(d)対照(無処理);
を用いて処理されたものである。
【0105】
実施例8
実施例8では、代替的表面処理化学過程を用いるフィルムについて説明する。実施例7と類似した方法で、16マイクロメートルフィルムを異なる化学過程により処理した。実施例8(a)および8(b)は、ミルウォーキーのエネルコン・インダストリーズ(Enercon Industries of Milwaukee)により開発されたPlasma3ブランドハードウェアを用いて行われた大気圧プラズマ処理として記述される。実施例8(c)では、異なる化学過程による標準的コロナタイプ処理を使用する。
(a)0.5J/cm2の88%/12%He/N2
(b)1.0J/cm2の88%/12%He/N2
(c)2.6J/cm2の99%/1%N2/NH3
【0106】
実施例9
実施例9では、LCPコーティングを有する表面処理されたフィルムについて説明する。溶媒としてMEKを用いてスターアライン2110(Staralign 2110)(スイス国バーゼルのバンティコ・アーゲー(Vantico AG,Basel,Switzerland)から入手可能)を実施例のフィルム7a、7b、7c、および7dにコーティングすることにより、実施例9a、9b、9c、および9dを形成した。乾燥スターアライン(Staralign)層の厚さは、50nmであった。次に、オプトアライン(OptoAlign)(デラウェア州ニューアークのエルシコン・インコーポレーテッド(Elsicon,Inc.,Newark,Delaware)から入手可能)を用いて45度の入射角で15mJ/cm2の照射量を提供するようにスターアライン(Staralign)材料に偏光UV光を照射した。
【0107】
次に、レザーを用いてスターアライン(Staralign)コーティングしたフィルムに切込みを入れてから接着テープとラミネートし、その後、接着テープを除去した。ASTM D3359に準拠して接着テープ試験を行った。ポリプロピレンフィルムへのスターアライン(Staralign)コーティングの接着不良が存在するのであれば、テープによりアライメント材料は除去される。続いてコーティングされた液晶ポリマー層は、ランダムなアライメントを呈するであろう。
【0108】
次に、パリオカラーLC242(Paliocolor LC242)(これ以降では単にLCPと記す。独国ルートヴィヒスハーフェンのバスフ・アーゲー(BASF AG,Ludwigshafen,Germany)から入手可能)と1.26重量パーセントのダロキュア1173(Darocur 1173)(スイス国バーゼルのチバ(Ciba,Basel,Switzerland)から入手可能)とを有するMEK中の固形分18重量パーセントの混合物をサンプルにコーティングした。次に、摂氏80度でコーティングを乾燥させ、そして嫌気的雰囲気中で100パーセントのパワーでUVランプを用いてキュアさせた。
【0109】
コーティングしたサンプルを直交偏光子下で目視し、とくに、接着テープ試験によりアライメント材料が除去された領域を評価した。品質の低下する順に、表面処理の相対的性能は、9c、9b、および9aの順であった。対照フィルム(実施例のフィルム9d)は、全基材中で最悪の性能を呈した。
【0110】
LCPコーティングしたポリプロピレンフィルムをガラスにラミネートし、次に、摂氏80度および摂氏60度/90%RHにそれぞれ設定された温度を有する2つのオーブン中にガラスを配置することにより、環境安定性についても評価した。温度および湿度への暴露後、フィルムが離層したときに損傷を生じた。性能の相対的順序は、低下する順に、9c、9b、9a、および9dの順であった。
【0111】
実施例10
実施例10では、LCPコーティングを有するコロナ処理されたポリプロピレンフィルムについて説明する。実施例9と類似した方法で実施例のフィルム8a、8b、および8cにスターアライン2110(Staralign 2110)をコーティングし、光アライメントし、続いてLCPをコーティングすることにより、それぞれ、実施例10a、10b、および10cを形成した。実施例10a、10b、および10cについて、ポリプロピレンフィルムとLCPとの間の剥離力は、それぞれ、ASTM D3330に準拠した方法で試験したとき、約50オンス/インチ(560g/cm)であった。
【0112】
実施例11
実施例11では、表面処理されたポリプロピレンフィルムと配向PVAとのラミネートについて説明する。表面処理されたフィルムの実施例7a、7b、7c、および7dを、配向されヨウ素染色されたPVAフィルムにラミネートすることにより、それぞれ、実施例11a、11b、11c、および11dを形成した。
【0113】
いずれの場合においても、配向され染色されたPVAは、実際には、2つのフィルム、すなわち、66.5%/27.9%/5.6%のMeOH/水/エアボルPVAグレード205(AIRVOL PVA Grade 205)(米国ペンシルバニア州アレンタウンのエア・プロダクツ・アンド・ケミカル・インコーポレーテッド(Air Products and Chemicals Inc.,Allentown,PA,USA)から入手可能)を含む溶液を用いて接着されたPVA層と加水分解TAC層とを含んでいた。「配向され染色されたPVA」という表現は、追加のラミネーションが行われる主要面を明確にするのに役立つように意図されたものである。
【0114】
配向され染色されたPVAに実施例7a、7b、7c、および7dをラミネートするために使用した接着剤は、66.5%/27.9%/5.6%のMeOH/水/エアボルPVAグレード205(AIRVOL PVA Grade 205)を含有する溶液を含んでいた。ラミネーション後、摂氏60度、1時間、1気圧の圧力、空気雰囲気中の条件で、すべてのサンプルをオートクレーブ処理に付した。
【0115】
次に、ASTM D3330に準拠した方法により、ラミネートフィルムを摂氏65度/90%RHの環境エージングに付し、剥離力を試験した。剥離力は次のとおりであった。実施例のフィルム11dでは<0.4オンス/インチ(2.9g/cm)、実施例のフィルム11aでは15オンス/インチ(170g/cm)、実施例のフィルム11bでは20オンス/インチ(225g/cm)、実施例のフィルム11cでは22オンス/インチ(250g/cm)。
【0116】
実施例12
実施例12では、表面処理されたポリプロピレンと配向PVAとのラミネートについて説明する。実施例11と類似した方法で、表面処理されたフィルム実施例8a、8b、8c、および8dを、配向されヨウ素染色されたPVAフィルムにラミネートした。実施例12のフィルムはすべて、剥離力が実施例のフィルム11cに類似していることが判明した。
【0117】
実施例13
実施例13では、ガラスにラミネートされた表面処理ポリプロピレン:配向PVAについて説明する。実施例のフィルム11cのポリプロピレンフィルムを含む対向主要面にN2コロナ処理(1.0J/cm2)を施した。次に、得られた表面処理フィルム(13aと記す)を光学用転写接着剤ソウケン2263(Soken 2263)(日本国の綜研化学株式会社から入手可能)にラミネートすることにより、実施例のフィルム13bを形成し、その後、これをガラス部片に接着させることにより、実施例のフィルム13cを形成した。
【0118】
実施例のフィルム13cのソウケン2263(Soken 2263)接着剤/ガラス境界面の剥離力を測定したところ、22オンス/インチ(250g/cm)であった。
【0119】
実施例14
実施例14では、LCPコーティングしたポリプロピレンのコロナ処理について説明する。LCPを含む実施例のフィルム9cの主要面に表面処理を施すことにより、実施例のフィルム14a、14b、および14cを形成した。種々の表面処理は次のとおりであった。
a. 0.5J/cm2のN2コロナ;
b. 1.0J/cm2のN2コロナ;
c. 2.0J/cm2のN2コロナ;
d. 対照(実施例のフィルム11cと同一)。
【0120】
実施例15
実施例15では、PVAにラミネートされたコロナ処理「LCPコーティングしたポリプロピレン」について説明する。実施例11に記載したのと類似した方法で、実施例のフィルム14を、配向されヨウ素染色されたPVAにラミネートすることにより、実施例のフィルム15a、15b、15c、および15dを形成した。剥離力を測定した。結果は、実施例のフィルム15dでは<0.9オンス/インチ幅(9.8g/cm)ならびに実施例のフィルム15a、15b、および15cでは19オンス/インチ幅(220g/cm)であった。
【0121】
実施例16
実施例16では、ガラスに接着された「コロナ処理LCPコーティングしたポリプロピレン」:PVAラミネートについて説明する。その際、実施例13に記載したのと類似した方法で、ソウケン2263(Soken 2263)接着剤を用いて、実施例のフィルム15a、15b、および15cをガラスにラミネートした。接着剤/ガラス境界面の剥離力は、いずれの場合においても、ポリプロピレン/PVA境界面よりも大きかった。
【0122】
DBEF(米国ミネソタ州セントポールのスリーエム(3M,St.Paul,MN USA)から入手可能)およびニポックス(Nipocs)(日本国の日東電工から入手可能)のような他の光学フィルムを同様に表面処理し、配向され染色されたPVAに接着できると想定される。
【0123】
本発明は、上記の特定の実施例に限定されるとみなされるべきものではなく、添付の特許請求の範囲に公正に記載されている本発明のすべての態様を包含するものであると理解しなければならない。本発明の適用対象となりうる種々の変更、等価な方法、および多数の構成は、本発明が関係する技術分野の当業者であれば、本明細書を調べることにより自明なものとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】光学フィルム素子に関連する座標系の概略図である。
【図2】光学フィルム素子の形成に用いられるテンター装置の上面概略図である。
【図3】本発明に係る光学補償子スタックの概略断面図である。
【図4】本発明に係る光学補償子スタックの概略断面図である。
【図5】本発明に係る液晶ディスプレイの概略断面図である。
【図6】本発明に係る液晶ディスプレイの概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)第1の方向にポリオレフィンフィルムを延伸するステップと;
b)該第1の方向と異なる第2の方向に該ポリオレフィンフィルムを延伸して二軸延伸ポリオレフィンフィルムを形成するステップであって、該第2の方向に該ポリオレフィンフィルムを延伸するステップの少なくとも一部分は、該第1の方向に該ポリオレフィンフィルムを延伸するステップと同時に行われるステップと;
を含む、光学フィルムの作製方法であって、
該二軸延伸ポリオレフィンフィルムが、長さと幅を有し、少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性であり;さらにx、y、およびz直交方向屈折率を有し、該直交方向屈折率の少なくとも2つが等しくなく、面内リターダンスが100nm以下であり、そして面外リターダンスが50nm以上である方法。
【請求項2】
前記ポリオレフィンフィルムが核剤または透明化剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリオレフィンフィルムが粘着付与剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムの長さおよび幅を横切って面内リターダンスの実質的均一性を提供するのに有効な量で前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムの全幅を冷却するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記面内リターダンスが前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムの層の幅および長さに沿って4nm/cm未満変化する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記二軸延伸ポリオレフィンフィルムの長さおよび幅が少なくとも0.65メートルである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の方向の延伸が前記第2の方向の延伸に等しくない、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の方向の延伸が前記第2の方向の延伸よりも50%まで大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の方向の延伸が前記第1の方向の延伸よりも50%まで大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
a)第1の方向に高分子フィルムを延伸するステップと;
b)該第1の方向と異なる第2の方向に該高分子フィルムを延伸して二軸延伸高分子フィルムを形成するステップであって、該第2の方向に該高分子フィルムを延伸するステップの少なくとも一部分は、該第1の方向に該高分子フィルムを延伸するステップと同時に行われるステップと;
を含む、光学フィルムの作製方法であって、
該二軸延伸高分子フィルムが、少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性であり;さらに、x、y、およびz直交方向屈折率(ここで、該直交方向屈折率の少なくとも2つは等しくなく、面内リターダンスは100nm以下であり、そして面外リターダンスは50nm以上である)ならびに少なくとも0.65メートルの長さおよび幅を有し、そして該面内リターダンスおよび該面外リターダンスが、該長さおよび該幅を横切って実質的に均一である方法。
【請求項11】
前記高分子フィルムが透明化剤または核剤をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリオレフィンフィルムが粘着付与剤をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記二軸延伸高分子フィルムの長さおよび幅を横切って面内リターダンスの実質的均一性を提供するのに有効な量で前記二軸延伸高分子フィルムの全幅を冷却するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記面内リターダンスが二軸延伸高分子フィルムの層の長さおよび幅に沿って4nm/cm未満変化する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の方向の延伸が前記第2の方向の延伸に等しくない、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記第1の方向の延伸が前記第2の方向の延伸よりも50%まで大きい、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の方向の延伸が前記第1の方向の延伸よりも50%まで大きい、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記高分子がポリオレフィンを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
a)第1の方向に高分子フィルムを延伸するステップと;
b)該第1の方向と異なる第2の方向に該高分子フィルムを延伸して二軸延伸高分子フィルムを形成するステップであって、該第2の方向に該高分子フィルムを延伸するステップの少なくとも一部分は、該第1の方向に該高分子フィルムを延伸するステップと同時に行われるステップと;
を含む、光学フィルムの作製方法であって、
該二軸延伸高分子フィルムが、長さと幅を有し、少なくとも1つの偏光状態の可視光に対して実質的に非吸収性かつ非散乱性であり;さらに、x、y、およびz直交方向屈折率(ここで、該直交方向屈折率の少なくとも2つは等しくなく、面内リターダンスは100nm以下であり、そして面外リターダンスは50nm以上である)ならびに5ミクロン〜200ミクロンの厚さを有する方法。
【請求項20】
前記高分子フィルムが核剤または透明化剤をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリオレフィンフィルムが粘着付与剤をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記二軸延伸高分子フィルムの長さおよび幅を横切って面内リターダンスの実質的均一性を提供するのに有効な量で前記二軸延伸高分子フィルムの全幅を冷却するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記面内リターダンスが二軸延伸高分子フィルムの層の幅および長さに沿って4nm/cm未満変化する、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記二軸延伸高分子フィルムの長さおよび幅が少なくとも0.65メートルである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の方向の延伸が前記第2の方向の延伸に等しくない、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の方向の延伸が前記第2の方向の延伸よりも50%まで大きい、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記第2の方向の延伸が前記第1の方向の延伸よりも50%まで大きい、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記高分子がポリオレフィンを含む、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−517486(P2006−517486A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503138(P2006−503138)
【出願日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2004/002505
【国際公開番号】WO2004/072712
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】