説明

高分子光導波路および高分子光導波路の製造方法

【課題】高分子材料を鋳型に注入して製造する方法において、コアが直線状に形成されないので、コアの長さが鋳型の大きさによって制限されずに、長尺のコアを形成できる。
【解決手段】高分子材料からなるコアと、当該コアの少なくとも一面に接して設けられたクラッドフィルムとを有する高分子光導波路において、前記コアは、前記クラッドフィルムの表面に対して45°の角度で傾斜する反射ミラー面を有するとともに、前記コアは、少なくともその一部が、螺旋状に配置されており、前記螺旋状に配置されたコアの間で、クラッドフィルムが分離可能とされていることを特徴とする高分子光導波路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッドフィルムに高分子材料からなるコアが一体に形成された高分子光導波路の構造とその製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の高分子光導波路は、図6に示すように、クラッドフィルム104上に、高分子材料を鋳型110に注入し、コア102が形成されており、コア102両端部の反射ミラー面102Aおよび反射ミラー面102Bは、補助鋳型120を用いて、形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−075288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の高分子光導波路は、高分子材料を鋳型110に注入し、コア102が直線状に形成されていたため、コア102の長さが鋳型110の大きさによって、制限されていた。このことにより、長尺のコア102が形成できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の高分子光導波路は、高分子材料からなるコアと、当該コアの少なくとも一面に接して設けられたクラッドフィルムとを有し、前記コアは、前記クラッドフィルムの表面に対して45°の角度で傾斜する反射ミラー面を有するとともに、前記コアは少なくともその一部が、螺旋状に配置されており、前記螺旋状に配置されたコアの間で、クラッドフィルムが分離可能とされていることを特徴とする。このことにより、本発明の高分子光導波路は、コアの少なくともその一部が螺旋状に配置されているため、鋳型の大きさにより、コアの長さが制限されることなく、長尺のコアも形成可能である。
【0006】
また、本発明の高分子光導波路は、前記コアが、同一方向に巻回された2つの螺旋状の導光部と前記導光部の螺旋状の内側の端部同士をつなぐ連結部とを有することを特徴とする。このことにより、コアが2つの螺旋状の導光部を有しているため、鋳型の大きさにより、コアの長さが制限されることなく、より長尺のコアも形成可能であり、かつコアの2つの螺旋状の導光部が、同一方向に巻回されているため、クラッドフィルムを分離して、展開しても捩れにくい。
【0007】
さらに、本発明の高分子光導波路は、前記コアが点対象形状になっていることを特徴とすることにより、より長尺なコアを作成し、クラッドフィルムを分離して、展開しても捩れにくい。
【0008】
また、本発明の高分子光導波路は、前記コアは複数本並列配置されており、複数本並列配置されたコア群間で、クラッドフィルムが分離可能とされていることを特徴とすることにより、複数の長尺なコアも同時に形成可能である。
【0009】
また、本発明の高分子光導波路は、それぞれの前記コアの端部に配置された前記反射ミラー面が、千鳥状に配置されていることを特徴とすることにより、高分子光導波路の高密度配置ができる。
【0010】
また、本発明の高分子光導波路は、前記クラッドフィルムの分離可能とされた部分において、分離して、展開されたことを特徴とすることにより、長尺なコアを延ばして使用することができる。
【0011】
さらに、本発明の高分子光導波路の製造方法は、クラッドフィルムに、少なくとも一部が螺旋状のコアを形成する工程と、螺旋状のコアにおける隣接するコア間で、クラッドフィルムを分離可能とする工程とを有することを特徴とすることによって、長尺なコアを形成することができる。
【0012】
また、本発明の高分子光導波路の製造方法は、クラッドフィルムには、前記高分子材料を注入するための孔部が形成されていることを特徴とすることによって、長尺なコアを確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高分子光導波路および高分子光導波路の製造方法は、コアの少なくともその一部が螺旋状に配置されているため、鋳型の大きさにより、コアの長さが制限されることなく、長尺のコアも形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施形態の高分子光導波路の平面を示す図である。
【図2】図1のA部の拡大を示す図である。
【図3】図1のB部の拡大を示す図である。
【図4】図3のC−C線断面を説明する図である。
【図5】第1の実施形態の高分子光導波路の製造方法を示すプロセス図である。
【図6】従来の高分子光導波路の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態の例について図を参照しながら詳細に説明をする。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態を説明するための高分子光導波路の平面を示す図である。図2は、図1のA部の拡大を示す図であり、図3は、図1のB部の拡大を示す図である。さらに図4は、図3のC−C線断面を説明する図である。図5は本実施形態に係る高分子光導波路の製造方法を示すプロセス図である。
【0017】
図1は、本実施形態の高分子光導波路の平面を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る高分子光導波路1の円形状のクラッドフィルム4の下には、高分子材料からなる複数本のコアが並列配置されたコア群6がある。コア群6は、高分子光導波路1を平面視して、同一方向に巻回された2つの螺旋状の導光部と前記導光部の螺旋状の内側の端部同士をつなぐ連結部とを有している。
【0018】
図2は、図1のA部の拡大を示す図であり、A部は、図1におけるコア群6における点対称となる中心点である。図2に示されるように、A部には、4本の高分子材料からなるコア2と、当該コア2に対応した高分子材料を注入するための孔部7が形成されている。また、コア群6の外側のクラッドフィルム4には、コア群6に沿って、クラッドフィルム4が分離可能とされる切込み10が形成されている。
【0019】
図3は、図1のB部の拡大を示す図であり、B部は、図1におけるコア群6における端部である。図3に示されるように、B部には、4本の高分子材料からなるコア2と、当該コア2に対応した反射ミラー面8と高分子材料を注入する際、高分子材料をオーバーフローさせるための孔部9が形成されている。
【0020】
また、コア群6および反射ミラー面8の外側のクラッドフィルム4には、コア群6に沿って、クラッドフィルム4が分離可能とされる切込み10が形成されている。また、本実施形態では、一方のコア群6における端部のみを例示しているが、点対象となっているもう一方のコア群6における端部(図示しない)も同様の構造になっている。尚、反射ミラー面8は、高分子光導波路1を平面視して、千鳥状になっており、複数のコア2を並列配置して、かつ高密度配置ができる。
【0021】
また、クラッドフィルム4は、高分子光導波路1を備えた光学装置の用途に応じ、屈折率などの光学的特性、機械的強度、耐熱性、コア2との密着性、フレキシビリティ及び吸水性等を考慮して材料が選択される。具体的には、コア2との屈折率差を確保するため、屈折率が1.55よりも小さく、厚みが100μm程度の脂環式アクリル樹脂フィルムや脂環式オレフィン樹脂フィルムなどを用いることができる。
【0022】
一方、コア2は、クラッドフィルム4の屈折率より大きな屈折率を有するアクリル系またはエポキシ系の高分子材料である。コア2の光の伝搬方向に垂直な断面形状は矩形であり、その幅及び高さは、高分子光導波路1を備えた光学装置の用途に応じて、100μm程度に形成される。図4は図3のC−C線断面を説明する図である。図4に示されるように、コア2の端部には、クラッドフィルム4の表面に対して45°の角度で傾斜する反射ミラー面8が形成されており、入射光に対して、反射ミラー面8は、大気との屈折率差によって、全反射条件を満たしている。本実施形態では、コア群6および反射ミラー面8の外側のクラッドフィルム4には、コア群6に沿って、クラッドフィルム4が分離可能とされる切込み10が形成されているため、コア群6を形成する鋳型の大きさによって、コア群6の長さが制限されることなく、分離して、展開して、長尺なコア群6を延ばして使用することができる。さらに、コア群6が点対象形状になっていることによって、より長尺なコア群6を作成し、クラッドフィルム4を分離し、展開しても捩れにくい。尚、本実施形態では、コア群6のコア2が複数本ある場合を例示したが、1本であってもかまわない。
【0023】
次に、本実施形態に係る高分子光導波路の製造方法について説明する。
【0024】
図5は本実施形態に係る高分子光導波路の製造方法を示すプロセス図である。図5(a)は、孔部形成工程を示す。はじめに、図5(a)に示されるように、クラッドフィルム4に貫通した孔部9および図2に示された孔部7を形成する。
【0025】
図5(b)は、高分子材料を注入する工程を示す。次に、図5(b)に示されるように、クラッドフィルム4の下面より鋳型11を押し当てる。鋳型11には、コアおよび反射ミラー面を形成する凹部が設けられている。次に、図示はしないが、孔部7から、凹部に高分子材料を注入し、孔部9から高分子材料がオーバーフローするまで、高分子材料の注入を継続する。高分子材料の注入後は、図示はしないが、注入した高分子材料に紫外線を照射して、高分子材料を硬化させる。尚、本実施形態では、高分子材料が紫外線硬化性樹脂である場合を例示したが、高分子材料が熱硬化性樹脂であってもかまわず、この場合は、高分子材料を加熱し、高分子材料を硬化させる。
【0026】
図5(c)は、鋳型の離型工程を示す。次に、高分子材料を硬化後に、クラッドフィルム4から鋳型11を離型する。上述したこれらの工程を経ることで、高分子材料からなるコア2および反射ミラー面8が形成され、図1に示されるような、少なくとも一部が螺旋状のコア群6が形成される。さらに図2および図3に示されるように、コア群6および反射ミラー面8の外側のクラッドフィルム4にレーザーカット等により、螺旋状のコア群6における隣接するコア群6間で、切込み10を形成すれば、分離して、展開して、長尺なコア群6を有する高分子光導波路1が完成する。尚、本実施形態では、全てのコア群6および反射ミラー面8の外側のクラッドフィルム4にレーザーカットをする場合を例示したが、高分子光導波路1の取扱いを容易にするため、部分的にクラッドフィルム4をハーフカットしてもかまわない。
【0027】
また、本実施形態では、図1に示されるコア群6における点対称となる中心点すなわちA部にある孔部7より、高分子材料の注入を行った場合を例示したが、B部とは異なるもう一方のコア群6の端部に設けた孔部より、高分子材料の注入を行ってもかまわない。さらに、本実施形態では、コア群6が点対称で2つの螺旋状の導光部を有する場合を例示したが、コア群6が1つの螺旋状の導光部を有する場合であってもかまわず、長尺なコア群6を有する高分子光導波路を形成することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 高分子光導波路
2 コア
4 クラッドフィルム
6 コア群
7、9 孔部
8 反射ミラー面
10 切込み
11 鋳型


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料からなるコアと、当該コアの少なくとも一面に接して設けられたクラッドフィルムとを有する高分子光導波路において、前記コアは、前記クラッドフィルムの表面に対して45°の角度で傾斜する反射ミラー面を有するとともに、前記コアは少なくともその一部が、螺旋状に配置されており、前記螺旋状に配置されたコアの間で、クラッドフィルムが分離可能とされていることを特徴とする高分子光導波路。
【請求項2】
請求項1に記載の高分子光導波路において、前記コアは、同一方向に巻回された2つの螺旋状の導光部と前記導光部の螺旋状の内側の端部同士をつなぐ連結部とを有することを特徴とする高分子光導波路。
【請求項3】
請求項2に記載の高分子光導波路において、前記コアが点対象形状になっていることを特徴とする高分子光導波路。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の高分子光導波路において、前記コアは複数本並列配置されており、複数本並列配置されたコア群間で、クラッドフィルムが分離可能とされていることを特徴とする高分子光導波路。
【請求項5】
請求項4に記載の高分子光導波路において、それぞれの前記コアの端部に配置された前記反射ミラー面が、千鳥状に配置されていることを特徴とする高分子光導波路。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の高分子光導波路を、前記クラッドフィルムの分離可能とされた部分において、分離して、展開されたことを特徴とする高分子光導波路。
【請求項7】
クラッドフィルムに、少なくとも一部が螺旋状のコアを形成する工程と、螺旋状のコアにおける隣接するコア間で、クラッドフィルムを分離可能とする工程と、を有することを特徴とする高分子光導波路の製造方法
【請求項8】
請求項7に記載の高分子光導波路の製造方法において、前記クラッドフィルムには、前記高分子材料を注入するための孔部が形成されていることを特徴とする高分子光導波路の製造方法


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−98484(P2012−98484A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245804(P2010−245804)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】