説明

高分子複合圧電体およびその製造方法

【課題】大面積でも絶縁破壊や剥離することなく高い製造歩留まりを実現可能な高分子複合圧電体の製造方法および高分子複合圧電体を提供する。
【解決手段】本発明の高分子複合圧電体は、シアノエチル化ポリビニルアルコールからなる高分子マトリックス中に圧電体粒子が均一に分散混合された複合体が分極処理されてなるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子、センサ、超音波探触子、発電素子、振動発電器等に好適な高分子複合圧電体およびその製造方法に関し、特に、シアノエチル化ポリビニルアルコールからなる高分子マトリックスに圧電体粒子が均一に分散混合された高分子複合圧電体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、高分子圧電材料は、可撓性、耐衝撃性、易加工性、大面積化が可能等の高分子材料特有の特性を備えた圧電材料であり、無機圧電材料に比して電力出力定数(圧電g定数)が高く、また、音響インピーダンスが人体または水に近いため、各種センサ、または超音波探触子もしくはハイドロホン等の超音波トランスデューサ、制振材(ダンパー)、または振動発電への応用が期待されている。これらの応用分野においては、単位電界あたりの歪量(発信能)の指標である圧電歪み定数(d定数)および単位応力あたりの発生電界強度(受信能)の指標であるg定数の双方の大きさ、またはそのバランスの優れた圧電材料が求められている。
【0003】
高分子圧電材料としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)に代表される高分子物質自身に圧電性を有する圧電高分子が知られているが、無機圧電材料に比してd定数が低いため、高分子圧電材料を上記用途に用いる場合には充分な性能が得られない。
【0004】
一方、高分子材料をマトリックスとして、この高分子マトリックス中に無機圧電体を複合化して圧電性を付与する高分子複合圧電体は、上記高分子材料特有の長所と、無機圧電体の優れた圧電性能(d定数)が活かされた圧電体である。高分子複合圧電体は、マトリックスとなる高分子の種類、無機圧電体の種類もしくは組成、コネクティビティ、または形状、そして配合比を変化させることによって、様々な用途に応じた材料設計が可能な圧電体として注目されている。このため、高分子複合圧電体については、種々のものが提案されている(例えば、特許文献1)。
なお、高分子複合圧電体に用いる圧電体としては、言うまでもなく高い圧電性能を有するものを用いることが好ましく、d定数の格段に高い、チタン酸ジルコン酸鉛(Pb(Zr,Ti)O:PZT)をはじめとする鉛系圧電材料が主に用いられている。
【0005】
特許文献1には、シアノエチル化セルロースおよび/又はシアノエチル化プルランからなる誘電性バインダーに、ぺロブスカイト型結晶構造を有するセラミックス粒子からなる強誘電性物質を均一に分散混合して形成した複合物に所定電圧を印加してなる良好な高誘電性、焦電性、圧電性を有する電子部品材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−157413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された電子部品材料において、シアノエチル化プルランと圧電体粒子を組み合わせた複合物を基板上にキャスト法で作製した後、この複合物にポーリング(分極処理)を施すと、複合物における厚みムラ、または粒子分散の不均一性によって生じる耐圧の低い箇所で絶縁破壊し易く、大面積での製造が困難であるという問題があった。更には、シアノエチル化プルランは異種材料との密着性に乏しく、キャスト後の乾燥工程時にクラックや剥離等のトラブルが起き易く、やはり大面積での製造が困難であるといった問題があった。
【0008】
本発明の目的は、前記従来技術における問題点を解消し、大面積でも絶縁破壊や剥離することなく高い製造歩留まりを実現可能な高分子複合圧電体の製造方法および高分子複合圧電体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、シアノエチル化ポリビニルアルコール(シアノエチル化PVA)からなる高分子マトリックス中に圧電体粒子が均一に分散混合された複合体がポーリングされてなることを特徴とする高分子複合圧電体を提供するものである。
なお、高分子マトリックス中に圧電体粒子が均一に分散混合された複合体がポーリングされる前のもの、および複合体が分極処理(ポーリング)されてなる高分子複合圧電体のいずれについても、圧電コンポジットという。
【0010】
本発明においては、前記高分子マトリックスは、シアノエチル化ポリビニルアルコールに対して高誘電性或は強誘電性ポリマーであるポリ弗化ビニリデン、弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、弗化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、ポリ弗化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体及びポリ弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体等の弗素系高分子、又は、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシサッカロース、シアノエチルヒドロキシセルロース、シアノエチルヒドロキシプルラン、シアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルアミロース、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルジヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルヒドロキシプロピルアミロース、シアノエチルポリアクリルアミド、シアノエチルポリアクリレート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリヒドロキシメチレン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルサッカロース及びシアノエチルソルビトール等のシアノ基或はシアノエチル基を有するポリマー、又は、ニトリルゴム及びクロロプレンゴム等の合成ゴムの内の少なくとも1つが添加されたものであることが好ましい。
【0011】
また、本発明においては、前記圧電体粒子は、ペロブスカイト型結晶構造を有するセラミックス粒子からなることが好ましい。この場合、前記セラミックス粒子は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン酸鉛、チタン酸バリウム、またはチタン酸バリウムとビスマスフェライトの固溶体により構成される。
【0012】
また、本発明は、支持基板上にシアノエチル化ポリビニルアルコールからなる高分子マトリックス中に圧電体粒子が均一に分散混合された複合体を形成する工程と、前記複合体にポーリングを施す工程とを有することを特徴とする高分子複合圧電体の製造方法を提供するものである。
前記複合体を形成する工程は、前記シアノエチル化ポリビニルアルコールからなる誘電性バインダーを溶解した有機溶媒中に前記圧電体粒子を分散することで得た圧電体粒子含有塗布液を前記支持基板上にキャスティングした後、前記有機溶媒を蒸発させることにより被膜形成させるものであることが好ましい。
前記支持基板としては各種金属板、或は、少なくとも一方の面に下部電極となるアルミニウムや銅のような金属膜/金属箔を付与した高分子フィルムが好ましい。また、有機高分子と導電性粒子からなる複合物を支持基板に用いても良い。この場合、有機高分子を熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、および加硫ゴムの少なくとも1種から構成することが好ましい。前記導電性粒子には、C、Pd、Fe、Sn、Al、Ni、Pt、Au、Ag、Cu、Cr、Moまたはこれらの合金が用いられる。
前記支持基板上に前記塗布液をキャスティングする方法としては、ドクターコーティング法やブレードコーティング法等の従来公知のいずれのキャスティング法も使用することが出来る。この様にして形成される複合体の厚みは、通常約50〜100μm程度である。
【0013】
一方、前記ポーリングを施す工程は、前記複合体において前記支持基板と接する面と対向する表面に上部電極を設け、更に前記複合体を所定の温度に加熱し、前記支持基板(下部電極)と前記上部電極との間に直流電界を所定時間印加するものであることが好ましい。
また、前記ポーリングを施す工程は、前記複合体を所定の温度に加熱保持した状態で、前記支持基板(下部電極)と、前記複合体において前記支持基板と接する面と対向する表面と所定の間隔をあけて配置され、前記複合体の表面に沿って移動可能な棒状或はワイヤー状のコロナ電極との間に所定の直流電界を印加してコロナ放電を生じさせつつ、前記コロナ電極を前記複合体の表面に沿って相対的に移動させる工程を備えるものであってもよい。
なお、前記ポーリングの工程における前記複合体の加熱温度は、60℃〜120℃であることが好ましい。
【0014】
前記圧電体粒子は、ペロブスカイト型結晶構造を有するセラミックス粒子からなることが好ましい。この場合、前記セラミックス粒子は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン酸鉛、チタン酸バリウム、またはチタン酸バリウムとビスマスフェライトの固溶体により構成される。
前記誘電性バインダーは、シアノエチル化ポリビニルアルコールに対して高誘電性或は強誘電性ポリマーであるポリ弗化ビニリデン、弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、弗化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、ポリ弗化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体及びポリ弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体等の弗素系高分子、又は、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシサッカロース、シアノエチルヒドロキシセルロース、シアノエチルヒドロキシプルラン、シアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルアミロース、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルジヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルヒドロキシプロピルアミロース、シアノエチルポリアクリルアミド、シアノエチルポリアクリレート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリヒドロキシメチレン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルサッカロース及びシアノエチルソルビトール等のシアノ基或はシアノエチル基を有するポリマー、又は、ニトリルゴム及びクロロプレンゴム等の合成ゴムの内の少なくとも1つが添加されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、軟化温度が室温付近にあるシアノエチル化PVAを高分子マトリックスに用いることにより、比較的低い加熱温度で、リーク電流の増大を招くことなく、圧電体粒子への機械的拘束を低減することが可能になる。このため、ポーリングに必要な電界強度が大幅に下がり、複合体に、厚みムラまたは圧電体粒子の粒子分散の不均一性によって生じる耐圧の低い箇所があっても絶縁破壊を抑制できる。さらに、異種材料との密着性に優れたシアノエチル化PVAをバインダーとして用いることで、キャスト後の乾燥工程時のクラックや剥離等のトラブルを抑制できる。
以上のように、シアノエチル化PVAを高分子マトリックスに用いることで、大面積でも絶縁破壊や剥離することなく高い製造歩留まりを実現可能な高分子複合圧電体の製造方法および高分子複合圧電体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の高分子複合圧電体を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態の高分子複合圧電体の製造に用いられるポーリング方法の一例を示す模式図である。
【図3】(a)は、本発明の実施形態の高分子複合圧電体の製造に用いられるポーリング方法の他の例を示す模式図であり、(b)は、ポーリング方法の他の例を示す模式的斜視図である。
【図4】誘電性バインダーにシアノエチル化PVAを用いて作製した高分子複合圧電体におけるポーリング条件とd33の関係を示すグラフである。
【図5】誘電性バインダーにシアノエチル化プルランを用いて作製した高分子複合圧電体におけるポーリング条件とd33の関係を示すグラフである。
【図6】誘電性バインダーにシアノエチル化PVAを用いて作製した高分子複合圧電体におけるポーリング温度とd33の関係を示すグラフである。
【図7】誘電性バインダーにシアノエチル化プルランを用いて作製した高分子複合圧電体におけるポーリング温度とd33の関係を示すグラフである。
【図8】各種バインダーの電気特性(誘電率)の温度依存性を示すグラフである。
【図9】各種バインダーの機械特性(硬さ)の温度依存性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の高分子複合圧電体およびその製造方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態の高分子複合圧電体を示す模式図である。
【0018】
図1に示す高分子複合圧電体(圧電コンポジット)10は、シアノエチル化ポリビニルアルコール(以下、シアノエチル化PVAともいう。)からなる高分子マトリックス12中に強誘電体材料からなる圧電体粒子14が均一に分散されている複合体16がポーリングされてなるものである。例えば、高分子複合圧電体10において、複合体16の下面16bに下部電極20が設けられ、上面16aに上部電極22が設けられている。
【0019】
高分子マトリックス12は、シアノエチル化PVA単体に限定されるものではなく、シアノエチル化PVAに、更に高誘電性或は強誘電性ポリマーであるポリ弗化ビニリデン、弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、弗化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、ポリ弗化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体及びポリ弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体等の弗素系高分子、又は、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシサッカロース、シアノエチルヒドロキシセルロース、シアノエチルヒドロキシプルラン、シアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルアミロース、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルジヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルヒドロキシプロピルアミロース、シアノエチルポリアクリルアミド、シアノエチルポリアクリレート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリヒドロキシメチレン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルサッカロース及びシアノエチルソルビトール等のシアノ基或はシアノエチル基を有するポリマー、又は、ニトリルゴム及びクロロプレンゴム等の合成ゴムの内の少なくとも1つが添加されたものであってもよい。
【0020】
圧電体粒子14は、ペロブスカイト型結晶構造を有するセラミックス粒子からなるものである。圧電体粒子14を構成するセラミックス粒子は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン酸鉛(PLZT)、チタン酸バリウム(BaTiO)、またはチタン酸バリウムとビスマスフェライト(BiFe)の固溶体(BFBT)により構成される。
【0021】
高分子複合圧電体10は、高分子マトリックス12を用いているため、可撓性に優れたものとなる。
高分子複合圧電体10においては、例えば、複合体16の上面16aおよび下面16bのうち、少なくとも一方に、導電性または非導電性の支持基板を設けてもよい。この支持基板は、可撓性を有するものであることが好ましい。
【0022】
次に、高分子複合圧電体10の製造方法について、図2に基づいて説明する。
まず、導電性の下部電極20を用意する。この下部電極20は、別の支持基板(図示せず)上に、スパッタリング法等により形成した導電性を有する膜であってもよい。
【0023】
次に、下部電極20の表面20aに複合体16を形成する。
複合体16の形成方法としては、高分子マトリックス12となるシアノエチル化PVAからなる誘電性バインダーを溶解したメチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ジメチルホルムアミド(DMF)等の有機溶媒中に圧電体粒子14を所定量、均一に分散することで得た圧電体粒子含有塗布液を下部電極20の表面20aにキャストした後、有機溶媒を蒸発させることにより複合体16を形成する。
複合体16は、上述のキャスト法以外にも、溶融した誘電性バインダーに圧電体粒子を分散させたものを用いることで押出成型法で形成することも可能である。
また、本実施形態においては、シアノエチル化PVA単体を誘電性バインダーに用いることに限定されるものではなく、シアノエチル化PVAに対して、更に高誘電性或は強誘電性ポリマーであるポリ弗化ビニリデン、弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、弗化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、ポリ弗化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体及びポリ弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体等の弗素系高分子、又は、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシサッカロース、シアノエチルヒドロキシセルロース、シアノエチルヒドロキシプルラン、シアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルアミロース、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルジヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルヒドロキシプロピルアミロース、シアノエチルポリアクリルアミド、シアノエチルポリアクリレート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリヒドロキシメチレン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルサッカロース及びシアノエチルソルビトール等のシアノ基或はシアノエチル基を有するポリマー、又は、ニトリルゴム及びクロロプレンゴム等の合成ゴムの内の少なくとも1つが添加されたものを用いることもできる。
【0024】
次に、複合体16の上面16aに上部電極22を、例えば、スパッタリング法を用いて形成する。
次に、下部電極20と上部電極22とを直流の電源24に接続する。さらに、複合体16を加熱保持する加熱手段、例えば、ホットプレートを用意する。そして、複合体16を、例えば、温度100℃に加熱保持しつつ、電源24から下部電極20と上部電極22との間に、数十〜数百kV/cmの直流電界、例えば50kV/cmを所定時間印加し、ポーリングする。
このポーリングでは、圧電体粒子14に対して、下部電極20と上部電極22が向き合う複合体16の厚さ方向の直流電界がかけられてポーリングされ、これにより、高分子複合圧電体10が得られる。
【0025】
下部電極20および上部電極22は、ポーリングの際に複合体16に所定の電圧を印加することができる導電性のものであり、例えば、C、Pd、Fe、Sn、Al、Ni、Pt、Au、Ag、Cu、Cr、Mo等またはこれらの合金により構成することができる。
下部電極20および上部電極22は、例えば、真空蒸着法およびスパッタリング法等の気相成膜法、ならびにスクリーン印刷およびインクジェット法等の印刷法により形成することができる。また、下部電極20および上部電極22は、上述のC、Pd、Fe、Sn、Al、Ni、Pt、Au、Ag、Cu、Cr、Mo等またはこれらの合金からなる箔状のものであってもよい。
さらには、下部電極20および上部電極22には有機高分子と導電性粒子からなる複合物を用いることもできる。この場合、有機高分子には熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、加硫ゴムの少なくとも1種を、導電性粒子には上述のC、Pd、Fe、Sn、Al、Ni、Pt、Au、Ag、Cu、Cr、Mo等またはこれらの合金を用いることができる。
【0026】
なお、本実施形態においては、図3(a)、(b)に示すようにしてポーリングをすることもできる。この場合、図3(a)、(b)に示すように、下部電極20の表面20aに複合体16を形成した後、この複合体16の上面16aから、間隔δを数mm、例えば、1mmあけて複合体16の上面16a上に、この上面16aに沿って移動可能な棒状或はワイヤー状のコロナ電極26を設ける。そして、このコロナ電極26と下部電極20とを直流電源24に接続する。さらに、複合体16を加熱保持する加熱手段、例えば、ホットプレートを用意する。
そして、複合体16を、例えば、温度100℃に加熱保持した状態で、電源24から下部電極20とコロナ電極26との間に、数kV、例えば、6kVの直流電圧を印加してコロナ放電を生じさせ、コロナ電極26を複合体16の上面16aの上を、その上面16aに沿って移動させてポーリングをする。なお、以下、コロナ放電を用いたポーリングをコロナポーリング処理ともいう。
【0027】
この場合、コロナ電極26の移動は、公知の移動手段を用いることができる。また、コロナ電極26が移動するものに限定されるものではなく、複合体16を移動させる移動機構を設け、この複合体16を移動させてポーリングをしてもよい。このように、コロナ電極26の移動手段は、コロナ電極26を複合体16に対して相対的に移動させることができるものであれば、特に限定されるものではない。
なお、下部電極20は、ポーリング後、高分子複合圧電体10を用いる態様等に応じて、下部電極20を除去することも可能である。また、コロナ電極26の数は、1本に限定されるものではなく、複数本であってもよい。
【0028】
また、図3(a)、(b)に示すポーリング方法のようにコロナ電極26を用いる場合、ロールトゥロール方式を用い、複合体16の搬送路において、その上面16aに対向してコロナ電極26を複数設け、複合体16を長手方向に搬送しつつポーリングをすることもできる。これにより、大面積の高分子複合圧電体10を製造することもできる。
【0029】
本実施形態の高分子複合圧電体は、例えば、超音波センサ,圧力センサ,触覚センサ,歪みセンサ等の各種センサ、マイクロフォン、ピックアップ、スピーカー等の音響デバイス、超音波探触子、ハイドロホン等の超音波トランスデューサ、乗り物や建物又はスキーやラケット等のスポーツ用具に用いる制振材(ダンパー)、更には、発電素子として用いることもできる。この場合、床、靴、タイヤ等に適用して用いる振動発電装置として好適に使用することができる。
【0030】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の高分子複合圧電体および製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の高分子複合圧電体の効果について詳細に説明する。
本実施例においては、以下に示すように、誘電性バインダーにシアノエチル化PVAを用いて高分子複合圧電体を作製し、各ポーリング条件におけるd33を測定した。なお、本発明の高分子複合圧電体の効果を確認するため、比較用に誘電性バインダーにシアノエチル化プルランを用いて高分子複合圧電体を作製し、同様に各ポーリング条件におけるd33を測定した。
【0032】
サンプルは、先ず、PZT粒子とバインダーとしてシアノエチル化PVA(CR−V 信越化学工業社製)を下記の組成比でジメチルホルムアミド(DMF)からなる有機溶媒中に添加し、プロペラミキサー(回転数2000rpm)で分散させて圧電体粒子含有塗布液を調製した。
・PZT粒子・・・・・・・・・・・300質量部
・シアノエチル化PVA・・・・・・・30質量部
なお、PZT粒子としては、市販のPZT原料粉を1000〜1200℃で焼結した後、これを平均粒径5μmになるように解砕および分級処理したものを用いた。
次に、アルミニウム基板(厚み300μm)上に、スライドコーターを用いて圧電体粒子含有塗布液を乾燥塗膜の膜厚が70μmになるようにA4サイズ(30cm×21cm)の塗布面積で塗布した後、120℃のホットプレート上で加熱乾燥することでDMFを蒸発させた。これにより、厚さが70μmでA4サイズの複合体がアルミニウム基板上に形成された。
【0033】
次に、複合体及びアルミニウム基板を一括して20mm角の大きさに分割した後、真空蒸着法にて直径15mm、厚さが0.5μmのアルミニウムからなる上部電極を各複合体上に形成した。
次に、上部電極−アルミニウム基板(下部電極)間に所定の直流電界を印加してポーリングを行った。ポーリング条件は以下の通りである。
・温度:20℃〜160℃
・電界強度:5kV/cm〜200kV/cm
・時間:3分
【0034】
このようにして各ポーリング条件で作製された高分子複合圧電体サンプルの圧電定数d33をd33メーター(PIEZO TEST社製 PM−300)を用いて、周波数110Hz、クランピングフォース10N、ダイナミックフォース0.25Nで測定した。
図4に、本実施例で作製したシアノエチル化PVAをバインダーに用いた高分子複合圧電体におけるポーリング条件とd33の関係を示す。図5に、比較のため作製したシアノエチル化プルランをバインダーに用いた高分子複合圧電体におけるポーリング条件とd33の関係を示す。
図4及び図5を見ると、シアノエチル化PVA、シアノエチル化プルランのいずれをバインダーに用いた場合も、温度上昇と共にd33の電界に対する立ち上がりが向上していることが分かる。
【0035】
図6は図4における電界強度50kV/cmおよび100kV/cmにおけるd33の値をプロットしたものである。同様に、図7は図5における電界強度50kV/cmおよび100kV/cmにおけるd33の値をプロットしたものである。
図6を見ると、シアノエチル化PVAを用いた場合、ポーリング温度40℃以上でd33が向上していることが分かる。電界強度50kV/cmの条件では100℃〜120℃の温度範囲で、電界強度100kV/cmの条件では60℃〜120℃の温度範囲で、d33は55pC/N以上の高い値を示した。
一方、図7を見ると、シアノエチル化プルランを用いた場合、ポーリング温度100℃以上でd33が向上していることが分かる。但し、電界強度50kV/cmの条件ではいずれの温度でもd33は50pC/Nを上回ることはなく、電界強度100kV/cmの条件では唯一、温度を120℃にした場合にのみd33は55pC/Nを上回った。
【0036】
なお、シアノエチル化PVA、シアノエチル化プルランのいずれをバインダーに用いた場合も、ポーリング温度が120℃を上回るとd33が低下する傾向が見られるが、これはポーリング時のリーク電流が非常に大きくなり、圧電粒子に十分な電界が印加されないためである。
以上のように、バインダーにシアノエチル化PVAを用いることで、シアノエチル化プルランを用いた場合に比べて、ポーリング時の温度および電界強度を大幅に下げることが可能になるわけであるが、この理由について以下に述べる。
【0037】
一般にPZTに代表されるペロブスカイト型結晶構造を有する圧電セラミックスは、キュリー点より低温側では結晶構造が対称中心を持たず、イオンが変位して分極を生じるわけであるが、このイオン変位が大きいほどポーリングには大きなエネルギー(電界強度)が必要となるため、ポーリング時に絶縁破壊し易くなる。また、イオン変位が大きいほどポーリングに伴う変形量も大きくなるため、セラミックスにクラックが発生し易くなる。このため、圧電セラミックスをポーリングする際の工夫として、試料をキュリー点以下の温度に加熱し、結晶対称性を高めることでポーリングに必要な電界強度やポーリングに伴う変形量を低減する手法が通常用いられている。
ところで、本実施例においては、同じ圧電セラミックス粒子を用いているにも関わらず、バインダーにシアノエチル化PVAを用いた場合とシアノエチル化プルランを用いた場合とでd33が最大となるポーリングの温度範囲が異なっている。このことは、高分子マトリックスと圧電セラミックスからなる高分子複合圧電体をポーリングする場合、試料を加熱することで上述した圧電セラミックスの結晶対称性を高める以外にもポーリングに必要な電界強度を下げる何らかのメカニズムが働くことを示唆している。
そこで、本実施例で用いたシアノエチル化PVAおよびシアノエチル化プルランの各種バインダー単体での、電気特性(誘電率)および機械特性(硬さ)の温度依存性を調査した。なお、電気特性および機械特性の評価用試料は、以下のように作製した。
【0038】
先ず、メチルホルムアミド(DMF)からなる有機溶媒中にシアノエチル化PVAおよびシアノエチル化プルランの各種バインダーを溶解し、これをアルミニウム基板(厚み300μm)上に、乾燥塗膜の膜厚が30μmになるようにA4サイズ(30cm×21cm)の塗布面積で塗布した後、120℃のホットプレート上で加熱乾燥することでDMFを蒸発させた。これにより、厚さが30μmでA4サイズのシート状バインダーがアルミニウム基板上に形成された。次に、バインダー及びアルミニウム基板を一括して20mm角の大きさに分割した後、真空蒸着法にて直径15mm、厚さが0.5μmのアルミニウムからなる上部電極を各バインダー上に形成した。
このようにして作製されたシート状の各種バインダーの誘電率をインピーダンスアナライザ(アジレント社製 4294A)を用いて、温度範囲20℃〜120℃、周波数1kHzで測定した。一方、各種バインダーの硬さを熱機械分析装置(島津製作所製 TMA−60)を用いて、昇温速度10℃/min、荷重10gで測定した。
【0039】
図8は各種バインダーにおける比誘電率の温度依存性を示したものである。図8において、実線はシアノエチル化PVAを示し、点線はシアノエチル化プルランを示している。図8を見ると、シアノエチル化PVAの誘電率は温度上昇と共に急激に上昇し、60℃付近で最大となった後、再び低下している。高分子バインダー中の圧電セラミックスに印加される電界強度は、バインダーの誘電率が高いほど大きくなるわけであるが、誘電率の観点だけで議論するならば60℃付近が最もポーリングに適した温度と予想される。しかしながら、ポーリング温度とd33の関係(図6)を見ると、電界強度50kV/cmの条件下では、d33は40℃付近から上昇し、100℃付近で最大となっている。一方、シアノエチル化プルランの誘電率は温度上昇に伴ってほぼ直線的に上昇している。しかしながら、ポーリング温度とd33の関係(図7)を見ると、電界強度50kV/cmの条件下では、d33は20℃から100℃の範囲で変化が見られず、120℃付近からようやく上昇し始めている。以上のように、バインダーにシアノエチル化PVAを用いた場合とシアノエチル化プルランを用いた場合とでd33が最大となるポーリングの温度範囲が異なる理由をバインダーの誘電率だけで説明することは困難である。
【0040】
一方、図9は各種バインダーにおける針入深さの温度依存性を示したものである。図9において、実線はシアノエチル化PVAを示し、点線はシアノエチル化プルランを示している。図9を見ると、シアノエチル化PVAの軟化点は30℃〜40℃付近、シアノエチル化プルランの軟化点は100℃〜120℃付近であることが分かる。そして、これら各種バインダーの軟化点が、上述したポーリング温度とd33の関係(図6、図7)におけるd33が上昇し始める温度と一致していることは明らかである。すなわち、バインダーにシアノエチル化PVAを用いた場合とシアノエチル化プルランを用いた場合とでd33が最大となるポーリングの温度範囲が異なるのはバインダーの硬さの違いに起因するものであり、試料を加熱してバインダーを柔らかくすることでポーリングに必要な電界強度を下げることが可能であると考えられる。
【0041】
ところで、圧電セラミックスをポーリングする物理的意味は、各結晶粒内の180°ドメイン壁を動かすことで分極方向を揃えることに他ならない。但し、本実施例の高分子複合圧電体のように高分子マトリックス中に分散された圧電セラミックスの場合、多くの180°ドメイン壁はバインダーに拘束された状態であるため、180°ドメイン壁を動かすにはその拘束に打ち勝たなければならない。また、180°ドメイン壁の移動に伴って非180°ドメイン壁が移動することも知られている。この場合、セラミックス粒子は大きな変形を伴うため、やはりバインダーからの抵抗に打ち勝たなければならない。すなわち、高分子複合圧電体における180°および非180°ドメイン壁を移動させるのに必要なエネルギーはバインダーからの拘束力に強く影響されるわけであるから、試料をバインダーの軟化点以上に加熱することで圧電体粒子への機械的拘束を低減することがポーリングに必要な電界強度を下げるうえで非常に有効であると考えられる。
【0042】
以上のように、本発明者らは、高分子マトリックスと圧電セラミックスからなる高分子複合圧電体におけるポーリング条件を詳細に調査した結果、ポーリング温度を高分子バインダーの軟化温度以上にすることが、ポーリングに必要な電界強度を下げるうえで非常に有効であるということを見出した。これは、圧電セラミックスの結晶対称性を高めることでポーリングに必要な電界強度を下げようとする従来アプローチとは異なるものである。そして、誘電性バインダーの中でもとりわけ軟化温度の低いシアノエチル化PVAを用いることにより、比較的低い加熱温度で、リーク電流の増大を招くことなく、圧電体粒子への機械的拘束を低減することが可能になる。これにより、ポーリングに必要な電界強度が大幅に下がり、複合体に厚みムラまたは圧電体粒子の粒子分散の不均一性によって生じる耐圧の低い箇所があっても絶縁破壊を抑制することが可能になった。さらに、異種材料との密着性に優れたシアノエチル化PVAをバインダーとして用いることで、キャスト後の乾燥工程時のクラックや剥離等のトラブルを抑制することも可能になった。すなわち、シアノエチル化PVAを高分子マトリックスに用いることで、大面積でも絶縁破壊や剥離することなく高い製造歩留まりを実現可能な高分子複合圧電体の製造方法および高分子複合圧電体を得ることができる。
【符号の説明】
【0043】
10 高分子複合圧電体
12 高分子マトリックス
14 圧電体粒子
16 複合体
20 下部電極
22 上部電極
24 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアノエチル化ポリビニルアルコールからなる高分子マトリックス中に圧電体粒子が均一に分散混合されたことを特徴とする高分子複合圧電体。
【請求項2】
シアノエチル化ポリビニルアルコールからなる高分子マトリックス中に圧電体粒子が均一に分散混合された複合体が分極処理されてなることを特徴とする高分子複合圧電体。
【請求項3】
前記高分子マトリックスは、シアノエチル化ポリビニルアルコールに対して誘電性バインダーが添加されたものである請求項1または2に記載の高分子複合圧電体。
【請求項4】
前記高分子マトリックスは、シアノエチル化ポリビニルアルコールに対して高誘電性或は強誘電性ポリマーであるポリ弗化ビニリデン、弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、弗化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、ポリ弗化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体及びポリ弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体の弗素系高分子、又はシアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシサッカロース、シアノエチルヒドロキシセルロース、シアノエチルヒドロキシプルラン、シアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルアミロース、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルジヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルヒドロキシプロピルアミロース、シアノエチルポリアクリルアミド、シアノエチルポリアクリレート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリヒドロキシメチレン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルサッカロース及びシアノエチルソルビトールのシアノ基或はシアノエチル基を有するポリマー、又はニトリルゴム及びクロロプレンゴムの合成ゴムの内の少なくとも1つが添加されたものである請求項1または2に記載の高分子複合圧電体。
【請求項5】
前記圧電体粒子は、ペロブスカイト型結晶構造を有するセラミックス粒子からなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子複合圧電体。
【請求項6】
前記セラミックス粒子は、チタン酸ジルコン酸鉛、チタン酸ジルコン酸ランタン酸鉛、チタン酸バリウム、またはチタン酸バリウムとビスマスフェライトの固溶体により構成される請求項5に記載の高分子複合圧電体。
【請求項7】
支持基板上にシアノエチル化ポリビニルアルコールからなる高分子マトリックス中に圧電体粒子が均一に分散混合された複合体を形成する工程と、
前記複合体に分極処理を施す工程とを有することを特徴とする高分子複合圧電体の製造方法。
【請求項8】
前記複合体を形成する工程は、前記シアノエチル化ポリビニルアルコールからなる誘電性バインダーを溶解した有機溶媒中に前記圧電体粒子を分散することで得た圧電体粒子含有塗布液を前記支持基板上にキャスティングした後、前記有機溶媒を蒸発させることにより被膜形成させる工程を有する請求項7に記載の高分子複合圧電体の製造方法。
【請求項9】
前記分極処理を施す工程は、前記複合体において前記前記支持基板と接する面と対向する表面に上部電極を設け、更に前記複合体を所定の温度に加熱し、前記支持基板と前記上部電極との間に直流電界を所定時間印加するものである請求項7または8に記載の高分子複合圧電体の製造方法。
【請求項10】
前記分極処理を施す工程は、前記複合体を所定の温度に加熱保持した状態で、前記基板と、前記複合体において前記前記支持基板と接する面と対向する表面と所定の間隔をあけて配置され、前記複合体の表面に沿って移動可能な棒状或はワイヤー状のコロナ電極との間に所定の直流電界を印加してコロナ放電を生じさせつつ、前記コロナ電極を前記複合体の表面に沿って相対的に移動させる工程を備える請求項7または8に記載の高分子複合圧電体の製造方法。
【請求項11】
前記圧電体粒子は、ペロブスカイト型結晶構造を有するセラミックス粒子からなる請求項7〜10のいずれか1項に記載の高分子複合圧電体の製造方法。
【請求項12】
前記誘電性バインダーは、シアノエチル化ポリビニルアルコールに対して高誘電性或は強誘電性ポリマーであるポリ弗化ビニリデン、弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、弗化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、ポリ弗化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体及びポリ弗化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体の弗素系高分子、又はシアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、シアノエチルセルロース、シアノエチルヒドロキシサッカロース、シアノエチルヒドロキシセルロース、シアノエチルヒドロキシプルラン、シアノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレート、シアノエチルヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルアミロース、シアノエチルヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルジヒドロキシプロピルセルロース、シアノエチルヒドロキシプロピルアミロース、シアノエチルポリアクリルアミド、シアノエチルポリアクリレート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリヒドロキシメチレン、シアノエチルグリシドールプルラン、シアノエチルサッカロース及びシアノエチルソルビトールのシアノ基或はシアノエチル基を有するポリマー、又はニトリルゴム及びクロロプレンゴムの合成ゴムの内の少なくとも1つが添加されている請求項7〜11のいずれか1項に記載の高分子複合圧電体の製造方法。
【請求項13】
前記分極処理を施す工程における前記複合体の加熱温度は、60℃〜120℃である請求項9または10に記載の高分子複合圧電体の製造方法。
【請求項14】
前記支持基板は、高分子フィルムに金属膜或は金属箔が付与されたものである請求項7〜13のいずれか1項に記載の高分子複合圧電体の製造方法。
【請求項15】
前記支持基板は有機高分子と導電性粒子からなる複合物で構成される請求項7〜13のいずれか1項に記載の高分子複合圧電体の製造方法。
【請求項16】
前記有機高分子には、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、および加硫ゴムの少なくとも1種が用いられる請求項15に記載の高分子複合圧電体の製造方法。
【請求項17】
前記導電性粒子には、C、Pd、Fe、Sn、Al、Ni、Pt、Au、Ag、Cu、Cr、Moまたはこれらの合金が用いられる請求項15に記載の高分子複合圧電体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−142546(P2012−142546A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153022(P2011−153022)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】