説明

高分子量のポリマーを基剤とするプロドラッグ

【課題】生物活性成分のプロドラッグの提供。
【解決手段】式(I)で示されるプロドラッグ。式中、Dは生物活性成分の残基、R1はアリール基等を表し、R3は実質的に非抗原性のポリマー、好ましくは少なくとも約20,000の分子量を有するポリエチレングリコール残基を表す。Dは、好ましくはパクリタキセルおよびタキソテル残基、カンプトテシン誘導体残基等を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水溶性プロドラッグに関する。特に、本発明は比較的高分子量の非抗原性のポリマーをプロドラッグの製造に利用することに関する。
【背景技術】
【0002】
長年にわたり、生物学的に効果のある物質を哺乳類に投与するいくつかの方法が提案されてきた。多くの医薬は水溶性の塩として利用可能であり、比較的容易に薬物製剤に含有させることができる。目的の医薬が水性の液体に不溶性である場合、または生体内で速やかに分解される場合に問題が生じる。アルカロイドは特に可溶化が困難であることが多い。
【0003】
例えば、水に溶けないパクリタキセル(paclitaxel)(タキソール(Taxol),(登録商標) としても知られているBristol-Myers Squibb Co. NY, NY)の投与に関する問題を克服するためにいくつかの方法が提案されてきた。最近では、パクリタキセルは非水系賦形剤のクレモファー(cremophor)-ELとの物理的混合物の形で投与される。けれども、この製剤にはいくつかの欠点がある。この賦形剤は過敏症反応を伴い、また、この賦形剤を用いた薬剤の静脈内投与は速度が遅く、患者に苦痛を与える。
【0004】
パクリタキセルの水溶性を増加させるためのいくつかの方法が提案されてきた。例えば、PCT WO 93/24476、米国特許第5,362,831号、およびNicolaou, et al. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. (1994) 33, No.15/16,1583-1587ページを参照されたい。水溶性のプロドラッグの製造に関しても検討が行われている。
【0005】
プロドラッグは、生物活性な親化合物の化学的な誘導体を含み、投与されると、生体内で生物活性な親化合物を遊離する。プロドラッグを用いると生体内での作用の開始および/または持続時間を修正することができる。これに加えて、プロドラッグを用いると、体内における薬物の輸送、分布または溶解性を変えることができる。さらに、プロドラッグにより毒性を減少させたり、その他薬物製剤を投与する際に生じる困難を克服することができると考えられる。
【0006】
プロドラッグの製法の典型的な例としては、アルコールまたはチオアルコールの有機リン酸エステルまたはエステルへの変換が挙げられる。Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Ed., A. Osol, Ed. (1980)中の記載を参照により本明細書に組み込む。
【0007】
プロドラッグは、親化合物または活性な化合物の、生物学的に不活性または実質的に不活性な形であることが多い。活性な薬物の放出速度は、変換したエステルまたは他の官能基の加水分解速度を含むいくつかのファクターに影響される。
【0008】
最近、ポリエチレングリコール(PEG)および関連するポリアルキレンオキシド(PAO)が、パクリタキセルのプロドラッグの製造のための添加物として使用できることが提案された。例えば、上記PCT WO 93/24476を参照されたい。水溶性および生体内での血液中の寿命を増加させ、抗原性を減少させるために、PEGはタンパク質、ペプチドおよび酵素とも接合された。例えば、米国特許第5,298,643号および第5,321,095号、いずれも、Greenwaldらを参照されたい。これらの後者の二つの参照文献は、とりわけ、ポリアルキレンオキシドと標的基の間に実質的に加水分解抵抗性の結合を有する生物活性なコンジュゲートについて開示している。このように、プロドラッグそのものよりも、長寿命のコンジュゲートが製造された。多くの場合、コンジュゲートに含まれるポリマーの平均分子量は好ましくは約5,000ダルトンであった。
【0009】
PCT WO 93/24476には、プロドラッグを作るために、パクリタキセルと水溶性のポリエチレングリコールを結合する共有結合としてエステル結合を用いることが記載されている。ところが、出願人は、そこに記載されたエステル結合は、水性の環境において加水分解に対するT1/2が4日よりも大きいことを発見した。このように、ほとんどのコンジュゲートは生体内で加水分解が行われる前に排泄される。生体内でポリマー‐薬物結合がより速く加水分解して、親薬物化合物をより速く生成するようなエステル結合を提供することが望ましい。
【0010】
驚くべきことに、分子量10,000未満の一つまたは二つのポリマーのみがアルカロイドおよび/または有機化合物と結合した場合には、その結果得られるコンジュゲートは生体内において速やかに排泄されることが見いだされた。実際、このようなコンジュゲートは非常に速やかに体内から除去されるので、たとえ加水分解しやすいエステル結合を用いた場合でも、十分な親分子が生体内において再生成しないため、PAO-薬物コンジュゲートはプロドラッグとしての価値を持ち得ない。
【0011】
Ohya, et al., J. Bioactive and Compatible Polymers Vol.10 Jan.,1995, 51-66には、二つの置換基をエステルを含むさまざまな結合基によって結合することにより製造したドキソルビシン(doxorubicin)-PEGコンジュゲートについて記載されている。しかし、用いられたPEGの分子量は、せいぜい約5,000のみである。これでは、結合が十分に加水分解して親分子を生成する前にコンジュゲートが実質的に排出されるので、生体内における本当の利益は実現されない。
【0012】
Yamaoka, et al. J. Pharmaceutical Sciences, Vol. 83, No.4, April1994, 601-606ページには、修飾されていないPEGのIV投与後のマウスの血液中の半減期が、分子量を6,000から190,000に増加させると、18分から1日に延びることが記載されている。しかしながら、Yamaokaらはポリマーを薬物に結合する効果は薬物の側にあるかもしれない点を考慮しなかった。また、Yamaokaらは、高分子量のポリマーの水性溶液は、非常に粘性が高く、薬物製剤の投与に用いられる狭い管を有する装置を通して施すのが困難であることを考慮しなかった。
【0013】
米国特許第4,943,579号は、水溶性プロドラッグとして、あるアミノ酸エステルを塩の形で使用することを開示している。しかし、この参考文献は比較的高分子量のポリマーを結合させてプロドラッグを形成するような結合基の一部としてアミノ酸を使用することを開示していない。この米国特許第4,943,579号の表2に挙げられたデータが立証するように、加水分解速度は速い。生理学的pHでは、注射後に不溶性の塩基が急速に生成され、タンパク質に結合し、治療効果があらわれる前に体内から速やかに排泄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】WO 93/24476、
【特許文献2】米国特許第5,362,831号、
【特許文献3】米国特許第5,298,643号
【特許文献4】米国特許第5,321,095号
【特許文献5】米国特許第4,943,579号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Nicolaou, et al. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. (1994) 33, No.15/16,1583-1587ページ
【非特許文献2】Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Ed., A. Osol, Ed. (1980)
【非特許文献3】Ohya, et al., J. Bioactive and Compatible Polymers Vol.10 Jan.,1995, 51-66
【非特許文献4】Yamaoka, et al. J. Pharmaceutical Sciences, Vol. 83, No.4, April1994, 601-606ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
要約すると、親薬物化合物と水溶性のポリマーとのコンジュゲートに基づく従来のプロドラッグは、親薬物からのポリマーの極端に遅い加水分解及び体内からのプロドラッグの極端に速い除去を含む様々な理由により、成功していたとはいえない。更に、生理学的pHでの親化合物の迅速な再生成を克服するために、単純なアミノ酸エステルに基づくプロドラッグの改良が模索されてきた。
【0017】
本発明は、上に記載した欠点を克服することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一つの態様は、一般式(I)の組成物を提供する。
【化1】

式中、
Dは、生物活性成分の残基であり、
Xは、電子求引性基であり、
YおよびY'は、独立にOまたはSであり、
(n)はゼロ(0)又は正の整数、好ましくは1〜約12であり、
R及びRは、H、C1-6アルキル、アリール、置換アリール、アルアルキル、ヘテロアルキル、置換へテロアルキル及び置換C1-6アルキルからなる群から独立に選択され、
Rは実質的に非抗原性のポリマー、C1-12の直鎖もしくは分岐アルキルまたは置換アルキル、C5-8のシクロアルキル又は置換シクロアルキル、カルボキシアルキル、カルボアルコキシアルキル、ジアルキルアミノアルキル、フェニルアルキル、フェニルアリール、または
【化2】

であり、
並びにR4及びR5は、H、C1-6アルキル、アリール、置換アリール、アルアルキル、ヘテロアルキル、置換へテロアルキル及び置換C1-6アルキルからなる群から独立に選択されるか、または一緒になって環式C5〜C7環を形成する、
但し、nが1で、R3が実質的に非抗原性のポリマーであるとき、R1及びR2の両方がHであることはない。
【0019】
R3が実質的に非抗原性のポリマーである場合の本発明のこれらの態様において、本発明は、式(I)の化合物の、治療薬として許容可能な塩を含む。更に、R3
【化3】

であるとき、
(n)は0(ゼロ)または2以上の整数であることが好ましい。
【0020】
本発明の幾つかの好適な実施態様において、2当量の生理活性成分又はドラッグ(本明細書中においてD及び/又はD’で示す)を送達することができるように、R3はα及びωの結合基を両方含む。各D(又はD’)は、加水分解可能なエステル結合を介してポリマーに結合される。このように、ポリマーを基剤とするモノ-及びビス-プロドラッグが考えられる。
【0021】
プロドラッグは、好ましくはR3として水溶性のポリアルキレンオキシドポリマーを含む。より好ましくは、R3はポリエチレングリコールであり、少なくとも約20,000の分子量を持つ。
【0022】
本発明のある好ましい態様においては、ポリマーに結合した生物活性なまたは親化合物(ここではD又はD’で示す)は、パクリタキセルまたはタキソテル(taxotere)のようなタキサンである。本発明の他の態様においては、活性なまたは親化合物は、カンプトテシン、エトポシド、OH基を含むシス-プラチン(cis-platin)誘導体、フロクスリジン(floxuridine)またはポドフィロトキシンである。さらに別の実施態様においては、他の腫瘍崩壊性薬、ステロイド化合物をはじめとする抗炎症薬のような非腫瘍崩壊性薬、並びにインスリンのような治療用の低分子量ペプチドであってもよい。
【0023】
本発明の目的のために、用語「アルキル」は、直鎖状、分岐状、もしくは置換されたC1−12アルキル、C5−8シクロアルキル又は置換されたシクロアルキルなどを含むものとして理解されたい。
【0024】
本発明の化合物の主な利点の一つは、プロドラッグが、親薬物‐ポリマー間の結合の加水分解速度とプロドラッグの体内からの除去速度との間の適正なバランスを達成したことである。ポリマーと、ここで生物活性な求核試薬とも呼ぶ親化合物の間の結合は、プロドラッグが血漿または体内から除去される前に、生体内において十分な量の親分子を放出することができるような速度で加水分解する。
【0025】
本発明の他の利点は、ある好適な実施態様において、プロドラッグ組成物が、(d)体と(l)体の両方のプロドラッグ結合を介して、生理活性物質を高分子量ポリマーに結合させるリンカー部分のラセミ混合物を含むことである。このユニークなブレンドにより、当業者であれば、制御された放出特性をもつ新規なプロドラッグ複合体を設計することができる。この場合、(l)体のアミノ酸リンカー部分の比較的速い酵素的切断により、初めは比較的速い速度でプロドラッグの形態からドラッグが放出され、次に(d)体のアミノ酸リンカー部分が加水分解される結果、相対的に遅い速度でプロドラッグからドラッグが放出される。
【0026】
あるいは、(d)体及び(l)体のアミノ酸を別々に使用して、それぞれの異性体に特有の加水分解特性(即ち(l)体−比較的速い速度、(d)体−比較的遅い加水分解速度)を用いることができる。また、ドラッグを排泄する前に、必要な量の加水分解(及びこれにより生体内での治療量のドラッグの再生成)を可能にするのに十分なプロドラッグの血液中の寿命を確保するために、適度な分子量のポリマーを含むように本発明の化合物を設計することもできる。言い換えると、本発明の化合物は、血液中の寿命T1/2が加水分解T1/2より大きくなるように設計することが好ましい。
【0027】
本明細書中に記載される組成物の製造法および使用法もまた提供される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、実施例1〜5に記載された反応を表す反応式である。
【図2】図2は、実施例6〜17に記載された反応を表す反応式である。
【図3】図3は、実施例18に記載された反応を表す反応式である。
【図4】図4は、実施例19に記載された反応を表す反応式である。
【図5】図5は、実施例20に記載された反応を表す反応式である。
【図6】図6は、実施例21〜28に記載された反応を表す反応式である。
【図7】図7は、実施例21〜28に記載された反応を表す反応式である。
【図8】図8は、実施例29に記載された反応を表す反応式である。
【図9】図9は、実施例30に記載された反応を表す反応式である。
【図10】図10は、実施例31に記載された反応を表す反応式である。
【図11】図11は、実施例32〜39に記載された反応を表す反応式である。
【図12】図12は、実施例32〜39に記載された反応を表す反応式である。
【図13】図13は、実施例12b及び15bに記載された反応を表す反応式である。
【図14】図14は、実施例21及び22IIbに記載された反応を表す反応式である。
【図15】図15は、実施例22の方法AのステップIVに記載された反応を表す反応式である。
【図16】図16は、実施例29b及び29cに記載された反応を表す反応式である。
【図17】図17は、実施例47〜53に記載された反応を表す反応式である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
A. プロドラッグ
本発明の多くの態様において、本発明のプロドラッグ組成物は、ポリマー部分と、生物活性な成分又は求核試薬、すなわち天然のまたは修飾していない薬物から誘導された生物活性基との間の加水分解可能な結合を含む。この結合は、体内から排出される前に又は生体により不活性化される前に治療的レベルの1以上の親治療成分が供給されるように、適当な時間内に十分な量の生物活性親化合物を生成する速度で加水分解するようにデザインされたエステル結合とすることが好ましい。本発明の目的のためには「十分な量」という用語は、当業者により効果が認められるような治療効果を奏する量を意味する。
【0030】
本発明の一つの好適な実施態様において、本発明のプロドラッグは下に記載する一般式(I)で表されるものである。
【化4】

式中、
Dは、生物活性成分の残基であり、
Xは、電子求引性基であり、
YおよびY'は、独立にOまたはSであり、
(n)はゼロ(0)又は正の整数、好ましくは1〜約12であり、
R及びRは、H、C1-6アルキル、アリール、置換アリール、アルアルキル、ヘテロアルキル、置換へテロアルキル及び置換C1-6アルキルからなる群から独立して選択され、
Rは実質的に非抗原性のポリマー、C1-12の直鎖もしくは分岐アルキル又は置換アルキル、C5-8シクロアルキル又は置換シクロアルキル、カルボキシアルキル、カルボアルコキシアルキル、ジアルキルアミノアルキル、フェニルアルキル、フェニルアリール又は
【化5】

であり、
並びにR4及びR5は、H、C1-6アルキル、アリール、置換アリール、アルアルキル、ヘテロアルキル、置換へテロアルキル及び置換C1-6アルキルからなる群から独立に選択されるか、または一緒になって環式C5〜C7環を形成する、
但し、nが1で、R3が実質的に非抗原性のポリマーであるとき、R1及びR2は両方がHであることはない。
【0031】
好ましくは、ポリマー部分(本明細書中R3で示される)は、Dをポリマーに結合させる主なリンケージ(linkage)の遠位にある末端キャップ形成基(Z)で更に置換される。好適なキャップ形成基には、OH、C1−4アルキル基、生物活性および不活性基、または
【化6】

(式中D’はDと同じであるか、異なる生物活性基、ジアルキル尿素、C1−4アルキル、カルボン酸、又は他のキャップ形成基であり、及び、
Y、Y’、R1、R2、X及び(n)は上記のように定義される。)
などが含まれるが、これらに限定されない。
【0032】
式(I)の中、Y及びY’は好ましくは酸素であり、(n)は好ましくは1である。
【0033】
本発明の好適な態様において、Dをポリマーに結合するリンケージには、アラニンなどのアミノ酸エステルスペーサーが含まれる。従って、R1及びR2は、好ましくはH、メチル又はエチルのうちの1つである。あるいは、R1及びR2のうちの一方がHであり他方が置換C1−6アルキルである場合、これは、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキル及びメルカプトアルキルから選択することができる。本発明の更に他の態様において、R1およびR2のうちの一方はHであり、他方はフェニルなどのアリール又はベンジルや置換ベンジルなどのアルアルキルである。
【0034】
他の実施態様において、(n)が1でありR3がポリアルキレンオキシドである場合、R1およびR2は両方がHであることはない。
【0035】
B. プロドラッグのリンケージ
1. 電子求引性基X
上記の式(I)において、Xは電子求引性基として示される。特に、XはO、NR1(ここでR1は上記のように定義される)、S、SO及びSO2などの基から選択される。しかし好ましくは、Xの一部として含まれる場合、R1はH、C1−6アルキル又は置換C1−6アルキルである。本発明の目的のため、式(I)及び(II)の中の(n)が1であるとき、Xは、好ましくはプロドラッグエステルの加水分解時にpKaが約4.0未満である置換された酢酸を生成するような基である。式中のXとして選択される基は、生成する置換された酢酸のpKaが低いため、比較的速い加水分解を促進する。
【0036】
一方、(n)がゼロ(0)、Xが酸素、Y及びY’が酸素又は硫黄である場合、カーボネート又はチオカーボネートリンケージが形成される。カーボネートリンケージは、血漿中に存在する、また固形腫瘍では浸透及び保持効果が増大すると仮定すると腫瘍領域の近くまたはその内部にも存在する、エステラーゼなどのような酵素により切断され得る。Greenwald, R.B. Exp. Opin. Ther. Patens (1997)7(6):601-609を参照されたい。カーボネートの誘導体の代表的な例は、実施例47、48、49、51a、51b、52及び53に記載されている。
【0037】
同様に、(n)がゼロ(0)であり、XがNR1であり、且つY及びY’が酸素又は硫黄であるとき、カルバメート又はチオカルバメートが形成される。このリンケージは、カーボネートつまりエステルのリンケージよりも安定であるにもかかわらず、主に腫瘍領域において、プロテアーゼやペプチダーゼなどの様々な酵素によりやはり切断され得る。次に、上記のカルバメートやチオカルバメートリンケージと同様に、ドラッグがターゲッティングされる。代表的な例が、実施例50a及び50bに記載される。
【0038】
2.リンカーのアミノ酸部分
セクションAで先に記載したように、本発明の1つの態様は、ポリマーR2を生物活性基Dに結合するリンケージ(linkage)中のアラニンなどのアミノ酸エステルスペーサーの使用を含む。リンケージのこの部分は、t-Boc-l(またはdもしくはラセミ)-アラニンを用いて図6に示すように直接、又は例えば図7に示すようにl-もしくはd-アラニン-t-ブチルエステルを用いてPEG酸もしくは二酸を変換することにより、D部分に結合することができる。
【0039】
3. 加水分解及び親薬物の再生成
本発明のプロドラッグ化合物は、血漿中において血中寿命のT1/2が加水分解のT1/2より大きく、加水分解のT1/2が排泄のT1/2より大きくなるように、即ち、
T1/2血中寿命>T1/2加水分解>T1/2排泄
となるように、設計される。
【0040】
従来技術には、ポリマーを基剤としたプロドラッグを提供するアプローチに関して、幾つかの欠点があった。例えば、幾つかのケースでは、親薬物をポリマーに結合するのに使用するリンケージにかかわらず、ポリマーの分子量が不充分である、即ち、10,000ダルトン以下であった。他のケースでは、十分な分子量のポリマーが提案されたが、親分子の生体内における十分な加水分解及び放出を可能にするようにリンケージが設計されていなかった。本発明の化合物は、十分な分子量のポリマーだけでなく、上記基準に見合うリンケージを含有することにより、これらの欠点を克服する。
【0041】
上記B1に記載した実施態様で好適なものとして、(n)が1であるかどうかにかかわらず、化合物に含まれるエステルに基づくリンケージは、治療対象となる哺乳動物の血漿中において、親薬物が排泄される前に放出されるよう十分に長いT1/2加水分解を有する。本発明の幾つかの好適な化合物は、約30分〜約12時間の範囲の血漿T1/2加水分解速度を有する。好ましくは、この組成物は約1〜8時間、最も好ましくは約2.5〜約5.5時間の血漿T1/2加水分解を有する。このように該化合物は、米国特許第4,943,579号に記載されるもののような速く加水分解される従来のプロドラッグ(全て約45分以内であり、実際値が限られる)に比べて顕著な利点を提供する。親薬物は生体内で速やかに再生成されて、血流中から速やかに排泄されるように思われる。本出願人は理論にとらわれるわけではないが、プロドラッグを形成する本発明のこれらの態様において、プロドラッグが血流中に残っている間に十分な量の親化合物を再生成することが、有効なプロドラッグ組成物を提供するカギであると考えられる。
【0042】
C. 実質的に非抗原性のポリマー
本発明のプロドラッグ組成物は、水溶性ポリマーであるR3を含む。このようなポリマーの好適な例には、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレンオキシドが含まれ、これらも好ましくは実質的に非抗原性である。PEG及びその誘導体の一般式は、即ちR’’−(CH2CH2O)x−(CH2y−R’(ここで(x)は重合度すなわちポリマー鎖中の反復単位の数を表すものであってポリマーの分子量に依存し、(y)は正の整数を表し、R’は(CHR1)であり、R’’は本明細書中に記載したようなキャップ形成基又はR’である)である。水溶性ポリマーは、本明細書中Xで示されるリンケージに結合するために官能基化されることが理解されよう。一例として、PEGは、限定するわけではないが、以下のように官能基化することができる。
【化7】

【0043】
(式中、Y、R’’、R1、R2、(n)及び(x)は、上記のように定義される。)
特に、一置換ポリマーが望まれる場合には、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメチル末端ポリエチレングリコール(mPEG)のような活性基が一つで末端がC1-4アルキルであるPAOが好ましい。二置換のプロドラッグが望まれる場合には、活性基が二つあるポリエチレンオキシドが好ましい。所望の加水分解可能な結合を得るために、PEG酸またはPEG二酸のような一または二酸活性化ポリマーを用いる。適したPAO酸は、mPEG-OHをエチルエステルに変換することにより合成することができる。Gehrhardt, H., et al. Polymer Bulletin 18:487(1987)およびVeronese, F.M., et al., J. Controlled Release 10:145(1989)をも参照されたい。別の方法としては、PAO-酸はmPEG-OHをt-ブチルエステルに変換することによっても合成できる。例えば、米国特許出願番号08/440,732、1995年5月15日出願を参照されたい。前記のそれぞれの文献の記載を参照により本明細書に組み込む。
【0044】
PAOおよびPEGにはさまざまな分子量を持つものがあるが、最低でも20,000の分子量域を持つポリマーが好ましい。本発明の目的のためには、通常、約20,000から約80,000の範囲のポリマーが選択される。約25,000から約45,000の分子量が好ましく、30,000から約42,000までが特に好ましい。プロドラッグに含有させるために選択されるポリマーの分子量は、リンカーが加水分解する間、プロドラッグが十分に血流中を循環するように十分なものでなくてはならない。
【0045】
本明細書中に含まれるポリマー物質は室温で水溶性であることが好ましい。このようなポリマーの非限定的なリストには、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコールのようなポリアルキレンオキシドホモポリマー、ポリオキシエチレン化ポリオール、それらの共重合体およびそれらのブロック共重合体で、ブロック共重合体の水溶性が保持されているものが含まれる。
【0046】
PEGのようなPAOについてここに記載したものと同じタイプのエステル活性化、すなわち、アルコールの2-アルコキシ酸への変換が用いられるならば、PAOを基礎とするポリマーの代わりに、効果的に非抗原性である物質、例えば、デキストラン、ポリビニルアルコール、炭水化物を基礎とするポリマー、及びHPMA等を用いることができる。上記のリストは例証的なものでありここに記載された品質を有するポリマー素材ならばどれでも用いることができることは、当業者に理解されるであろう。本発明の目的のためには、「効果的に非抗原性」とは、当該技術分野において、哺乳類に毒性がなく、容易に感知できる免疫反応を引き起こさないことが知られているすべてのポリマー素材を意味する。
【0047】
上述のように、本発明のプロドラッグは、R3(即ちポリマー)1当量に対して1または2当量のドラッグを含む。このように好適なポリマーは、十分な量の親化合物と反応させたとき、ビス-プロドラッグを形成するように官能基化することができる。ポリマーとリンケージの1つの好適な組み合わせは、式(III)で以下のように表される。
【化8】

(式中、
R1−3、X及びnは先に(I)で記載したものと同じであり、
Z1及びZ2は独立して、CO2H、CO2R6、OR7、CONR1R8、H、C1−4アルキル又は
【化9】

であり、ここでR4及びR5は、H、C1−6アルキル、アリール、置換アリール、アルアルキル、ヘテロアルキル、置換へテロアルキル、及び置換C1−6アルキルからなる群から独立して選択されるか、または一緒になって環式C5〜C7環を形成し、
R6は、R4又はN‐ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-アシルチアゾリジン、イミダゾール又は酸活性化基であり、
R7は、R4又はC(O)-ハロゲン、パラニトロフェニルカーボネート、イミダゾリルカーボネート又はN-ヒドロキシスクシンイミジルカーボネートであり、そして、
R8は、R4又はCR1R2CO2Hである。)
本発明のある態様では、R3は約20,000以上の分子量を有する。本発明のプロドラッグは本明細書中に記載される実質的に非抗原性のポリマーのなかのいずれかを用いて形成することができるが、プロドラッグの形成に使用するには、以下のポリアルキレンオキシド誘導体、即ちPEGジアミン、PEG酸及びPEG二酸が特に好ましい。
【0048】
【化10】

(式中R1、R2及び(n)は、式(I)で先に記載したものと同じである。)
これまでの記述から、前述のものの他のポリアルキレンオキシド誘導体(例えばポリプロピレングリコール酸やPOG酸など)、並びに他の二官能性結合基を使用してもよいことは明らかである。
【0049】
D. プロドラッグの候補
1. タキサンおよびタキサン誘導体
本発明のプロドラッグ組成物に含まれる化合物の一つのクラスは、タキサンである。本発明の目的のためには、「タキサン」の用語は、テルペンのタキサン群に属する化合物をすべて含むものとする。したがって、タキソール(パクリタキセル)、3'-置換tert-ブトキシ-カルボニル-アミン誘導体(タキソテル)等、ならびに例えば、ミズーリ州セントルイスのSigma Chemicalから入手可能な他の類似物は、本発明の範囲に入る。代表的なタキサンを下に示す。
【0050】
【化11】

これらの化合物は抗ガン剤として効果を有することが見いだされている。数多くの研究により、この薬はいくつかの悪性のものに対する活性を有することが示されている。現在まで、これらの使用は、とりわけ、その供給が少ない点、水溶性が小さい点および過敏症のために、きわめて限られていた。また、共通に譲渡された米国特許第5,622,986及び第5,547,981号に開示される7-アリール-カルバメート及び7-カルバゼート(carbazate)を含む他のタキサンも、本発明のプロドラッグのなかに含めることができることを理解されたい。先述の米国特許の内容は、本明細書中に参考として組み込まれる。
【0051】
例証的な目的から、実施例ではとりわけパクリタキセルについて記載するが、ここに記載される方法はすべてのタキサンおよび関連する分子に適していると理解されるべきである。ここで限定されるのは、2'位においてここに記載されるような修飾を受けることができるようなタキサンを選択しなければならないという点のみである。しかし、パクリタキセルは好ましいタキサンである。
【0052】
本発明のタキサンを基剤とするプロドラッグの合成については、下記のセクションEおよび実施例に記載する。しかし一般的に、2'位が置換可能なタキサンは、適当に活性化されたPEG酸のようなポリマーと、二つの置換基の間で2'エステル結合を形成させるのに十分な条件下で反応させる。相当するジエステルは、ポリマー二酸に対して少なくとも約2当量のタキサンを反応させることにより製造できる。2当量のタキサンをポリマー二酸と反応させた場合であっても、得られるコンジュゲートにはポリマーに対して少量(すなわち、重量で25%まで)の、ポリマー-タキサン結合の遠位の末端にアシル尿素又はカルボン酸を含むモノエステル種を含む。これらの化合物は、生理学的効果を果たすこともできる。このポリマー酸は、少なくとも約20,000の分子量を有することが好ましい。例として図5及び図8を参照されたい。
【0053】
2. カンプトテシンおよび関連したトポイソメラーゼ I 阻害剤
カンプトテシンは、中国原産の木camptoteca accuminataおよびインド原産の木nothapodytes foetidaにより作られる水不溶性の細胞毒性アルカロイドである。カンプトテシンおよび関連する化合物およびその類似体は、抗ガンまたは抗腫瘍剤としての可能性があることも知られており、in vitroおよびin vivoでこれらの活性を示すことが明らかにされている。カンプトテシンおよび関連する化合物もまた、本発明のプロドラッグに変換する化合物の候補である。たとえば、米国特許第5,004,758号およびHawkins, Oncology, December 1992, 17-23ページを参照されたい。カンプトテシンおよび関連する類似物は次のような構造を持つ。
【化12】

【0054】
更なるカンプトテシン類似体には、10-ヒドロキシカンプトテシン、11-ヒドロキシカンプトテシン及び/又は10,11-ジヒドロキシカンプトテシン、7-及び/又は9-アルキル、置換アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、アルケニル、アミノアルキル、カンプトテシンなどを含む該文献中に報告されたもの、米国特許第5,646,159号(その内容は、本明細書中に参考として組み込まれる)に記載されたもののような10,11‐アルキレンジオキシカンプトテシンなどのA環置換カンプトテシンなどが含まれる。
【0055】
モノエステルカンプトテシンプロドラッグは、1当量またはそれ以上の適当に(酸)活性化されたポリマーと1当量のカンプトテシン誘導体を、20-OHをエステル結合したポリマーを基剤とするプロドラッグに有効に変換するのに十分な条件下で反応させることにより形成される。カンプトテシンジエステルは、少なくとも約2当量、好ましくはそれ以上のカンプトテシンを適当に製造したPAO二酸と反応させることにより同様に製造する。反応の順序および条件に関する詳細は下記のセクションE、図1、2、4等、及び実施例に記載する。
【0056】
上記のカンプトテシン類似物に加えて、適切な化学量論的量でもって、あるカルボジイミド縮合剤と共にPEG二酸を用いたときに、新しい20(S)カンプトテシン‐モノ-PEGエステル化合物が形成されることが見いだされた。例えば、コンジュゲート化を行うために使用したジアルキルカルボジイミドに応じて、ポリマーのα末端はカンプトテシン-PEGエステルに変換され、PEG二酸のω末端は酸からアシルジアルキル尿素に変換される。これらの誘導体は生体内で抗腫瘍活性を示し、NMRで分析した結果、架橋は無視できる量であることが分かった。しかし、最も好適な態様において、ビス-プロドラッグカンプトテシン組成物は、縮合剤としてカルボジイミドを使用した場合、Y’を介してカンプトテシンの20S位置にポリマーのα末端及びω末端の各々を結合させることにより、形成される。他の態様では、ムカイヤマ(Mukaiyama)試薬、即ちヨウ化2-クロロ-l-メチルピリジニウムを使用することにより、ジエステルを更に多量に得ることができる。
【0057】
3. その他の生物活性成分
上記の分子に加えて、本発明のプロドラッグ製剤は、他の多くの化合物を用いて製造することができる。例えば、OH基を含むシス-プラチン誘導体、即ち
【化13】

以下に示すフロクスウリジン(floxuridine)から誘導されるモノ-及びビス-PEGエステル
【化14】

以下に示すポドフィロトキシン
【化15】

および関連する化合物のような生物活性化合物を含むことができる。プロドラッグエステルは、“A”シス-プラチン誘導体では2‐ヒドロキシ位置で、“B”シス-プラチン誘導体では2‐ヒドロキシエチル位置で、フロクスリジン(floxuridine)では3’及び5’ヒドロキシ位置で、及びポドフィロトキシンではC-4ヒドロキシで、形成することができる。これらのプロドラッグ組成物は、例えば実施例31に記載された化合物32を調製するための技術を使用して調製することができる。
【0058】
プロドラッグ形態のために選択される親化合物は実質的に水不溶性である必要はないが、本発明のポリマーを基剤とするプロドラッグは、このような水不溶性の化合物を送達するのに特に適している。他の有用な親化合物としては、例えばある種の低分子量生物活性タンパク質、酵素、およびペプチドグリカンを含むペプチドが挙げられる。また、他の抗腫瘍薬、フォルスコリン(forskolin)などの心血管薬、コンブレタスタチン(combretastatin)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ドキソルビシン、AraC、マイタンシン(maytansin)などの抗新生物薬、バンコマイシンやエリスロマイシンなどの抗感染薬、ナイスタチンやアンフォテラシン(amphoteracin)Bなどの抗真菌剤、抗不安薬、胃腸薬、中枢神経系‐活性化薬、鎮痛薬、排卵誘発剤、避妊薬、抗炎症薬、ステロイド剤、抗尿毒症薬、心血管薬、血管拡張薬及び血管収縮薬なども含まれる。
【0059】
上の記載は、本発明のプロドラッグに適した生物活性成分の例示である。これらの生物活性物質について特定的に述べたものではなく、適当なエステル形成基、即ちヒドロキシル基を持つものは、本発明の意図するところであり、これらもまた本発明の範囲に含まれるものと理解されたい。また、本発明のプロドラッグコンジュゲートは1当量の薬物とポリマーのみでなく、生体内で生物活性効果を示さない成分をも含んでいてよいと理解されたい。たとえば、いくつかの例においては、一つの結合点を持つ薬物分子と二酸を反応させているにも関わらず、反応条件によってはポリマーに対して2当量の薬物を持ったプロドラッグが得られないことが見いだされている。それどころか、このプロドラッグはポリマーに対して1当量の薬物しか含まない。アシル尿素のような反応物の副生成物が形成されることがある。さらに、二活性化ポリマーとの反応にも関わらず、注目すべきことにプロドラッグには架橋された種がないことも見いだされている。
【0060】
本発明に適した分子のタイプに関して限定されるのは、分子上に少なくとも一か所の加水分解可能なリンケージができる位置があり、プロドラッグを投与した後にプロドラッグが生体内で十分な量の親化合物を再生成できるものでなければならない点のみである。
【0061】
E. プロドラッグの合成
一般に、本発明のプロドラッグは、
1)PEG-酸またはPEG-二酸のような活性化されたポリマー、および分子上に加水分解可能なリンケージを形成することができるような位置を有する親化合物を用意し、そして、
2)塩化メチレン、クロロホルム、トルエンまたはDMFのような不活性な溶媒中で、1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1,(3‐ジメチルアミノプロピル)3‐エチルカルボジイミド(EDC)、任意の好適なジアルキルカルボジイミド、ムカイヤマ(Mukaiyama)試薬(例えばハロゲン化2‐ハロ-1‐アルキル-ピリジニウム)または例えばSigma Chemicalなどから市販されているあるいは公知の技術を用いて合成されるプロパンホスホン酸環状無水物(PPACA)等のようなカップリング試薬、および、ジメチルアミノピリジン(好ましい)、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、トリエチルアミン等のような塩基の存在下で、0℃から22℃(室温)までの温度で、二つの置換基を反応させる、
ことにより、製造される。
【0062】
本発明の他の好適な態様において、合成方法は、血中寿命の半減期が生体内での加水分解の半減期より大きいポリマーを基剤とするプロドラッグを提供する。この方法は、
第一カップリング剤の存在下で、有効ヒドロキシル基を含む生物活性成分を有効カルボン酸基を含む二官能性スペーサー成分と反応させて、生物活性成分-スペーサープロドラッグ中間体を形成し、
この生物活性成分-スペーサープロドラッグ中間体を、第二カップリング剤の存在下で、カルボン酸末端基又はアミン若しくはヒドロキシ末端基を含む実質的に非抗原性のポリマーと反応させて、ポリマーを基剤とするプロドラッグを回収する、
ことを含む。
【0063】
これらの第一及び第二カップリング剤は、同じでものあっても異なるものであってもよい。
【0064】
適切な二官能性スペーサー成分の例としては、ジグリコール酸、チオジグリコール酸、l-アラニン及びd-アラニン、ヒドロキシ酢酸、ブロモ酢酸などが挙げられる。
【0065】
プロトタイプの生物活性求核試薬としてカンプトテシン誘導体を用いてコンジュゲートを調製する方法の1つの例は、
DIPCやPPACなどのカップリング剤の存在下で、tBoc-d-又はl-アラニンなどの二官能性スペーサー含有成分にカンプトテシン誘導体を接触させることにより、二官能性スペーサー含有成分を含むカンプトテシン誘導体を形成する工程と、
トリフルオロ酢酸塩などの二官能性スペーサー含有成分を含むカンプトテシン誘導体のトリハロ酢酸誘導体を形成する工程と、
二官能性スペーサー含有成分を含むカンプトテシン誘導体のトリハロ酢酸誘導体を、PEG二酸などの実質的に非抗原性のポリマーの二酸誘導体と反応させる工程と、
を含む。得られた化合物を、公知技術により回収する。
【0066】
他の特定の合成方法は、実施例の中に記載される。しかし、他の1つの特定の方法は、結合したい位置において生物活性成分を誘導体化し、その後でこの誘導体を活性化ポリマーと反応させることを含む。
【0067】
F. 非ポリマー性誘導体
本発明の他のある態様において、式(I)の化合物は非ポリマー性誘導体である。即ち、R3は実質的に非抗原性のポリマー以外のものである。代わりに、R3はC1−12の直鎖もしくは分岐アルキル又は置換アルキル、C5−8シクロアルキルもしくは置換シクロアルキル、カルボキシアルキル、カルボアルコキシアルキル、ジアルキルアミノアルキル、フェニルアルキル、フェニルアリール又は
【化16】

(式中R4及びR5は、H、C1−6アルキル、アリール、置換アリール、アルアルキル、ヘテロアルキル、置換へテロアルキル、及び置換C1−6アルキルからなる群から独立に選択されるか、或いは一緒になって環式C5‐C7環を形成する。)である。R3
【化17】

であるとき、(n)は0(ゼロ)又は2以上の整数であることが好ましい。
【0068】
従って、本発明のこの態様の化合物は、単純なカーボネートや単純なカルバメート誘導体などであり、治療用としてそのまま、或いはナトリウム塩などの医薬として許容される塩として使用することができる。このような塩の調製方法は、当業者であれば過度の実験を行わなくても自明であろう。また、これらの化合物は、プロドラッグへと更に処理することができる中間体としても有用である。例えば、R3が置換されたアルキル若しくはシクロアルキル、置換されたアリール若しくはヘテロアリール、又は置換されたアルアルキルであるとき、これらの中間体化合物は、本明細書中に記載される活性化ポリマーと反応させてプロドラッグを生成することができる。特に、R3がアミノプロピル、アミノブチル、又はアミノエチルなどのアミノアルキルである場合、縮合剤を用いて、スクシンイミジルカーボネート活性化された、環式イミドチオン活性化されたポリマーを含む非抗原性ポリマーと、又は該ポリマーの酸誘導体と、この中間体を反応させることができる。同様に、R3がカルボキシプロピル、カルボキシブチル、又はカルボキシエチルなどのカルボキシアルキルである場合は、PEG‐アミンなどの、アミンで活性化された実質的に非抗原性のポリマーとこの中間体を反応させる。
【0069】
或いは、R3がヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル又はヒドロキシエチルなどのヒドロキシアルキルである場合は、PEG-NCO又はPEG-NCSなどの、イソシアネート若しくはイソチオシアネートで活性化された実質的に非抗原性のポリマーと、この中間体を反応させる。本発明の非ポリマー性誘導体の単純なアミノ酸エステルも使用される得る。
【0070】
G. 治療の方法
本発明の別の態様は、哺乳類のさまざまな医学的な状態に対する治療の方法を提供する。この方法は、有効な量の、ここに記載されたとおりに製造されたパクリタキセル2'-PEGエステルのようなプロドラッグを治療の必要に応じて哺乳類に投与することを含む。この組成物は、とりわけ、哺乳類における腫瘍性疾病の治療、腫瘍の負担の軽減、腫瘍の転移の防止および腫瘍の成長の再発の防止に有効である。
【0071】
投与するプロドラッグの量はそこに含まれる親分子に依存する。一般的に、治療方法において使用されるプロドラッグの量は、哺乳類に対して目的とする治療結果を効果的に達成するような量である。当然、さまざまなプロドラッグ化合物の用量は、親化合物、生体内での加水分解速度、ポリマーの分子量等によって変化する。しかしながら、一般的にタキサンプロドラッグは、タキサン成分の量に基づいて1日あたり約5から約500mg/mの範囲の量を投与する。カンプトテシンおよびポドフィロトキシンプロドラッグもまた、1日あたり約5から約500mg/mの範囲の量を投与する。上記の範囲は例として記載したもので、選択したプロドラッグの最適の用量は、当業者が臨床上の経験と治療の指示に基づいて決定できる。
【0072】
本発明のプロドラッグは、哺乳類への投与にあたって、一またはそれ以上の適当な医薬組成物中に含ませることができる。医薬組成物は溶液、懸濁液、錠剤、カプセル等の形であってよく、当技術分野において公知の方法にしたがって調製される。このような組成物の投与は、当業者の必要に応じて、経口および/または非経口の経路も考えられる。しかし、本発明の好ましい態様においては、プロドラッグはそれを必要とする哺乳類に非経口投与される。
【0073】
H. 実施例
以下の実施例は、発明の理解を高めるために記載するものであって、発明の有効な範囲を限定することを目的とするものではない。実施例では、図に記載した反応式中の化合物に対応した数字を括弧の中に記載した。
【0074】
実施例1
ベンジルオキシ酢酸のカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(2):
図1を参照し、塩化ベンジルオキシアセチル(Aldrich)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC、1.9ml、12.06mmol)及びジメチルアミノピリジン(DMAP、982mg、8.04mmol)の加水分解物により調製したベンジルオキシ酢酸(1)(2g、12.06mmol)を、0℃でカンプトテシン(1.4g、4.02mmol)のCH2Cl2(500ml)懸濁液に加えた。3時間攪拌し続けた。得られた黄色い溶液を約100mlまで濃縮し、1Nの塩酸(10ml×2)、次いで1%の重炭酸ナトリウム水溶液(10ml×2)で洗浄した。有機層を乾燥し(無水MgSO4)、減圧下で蒸発させて黄色い固体を得て、これをエチルアセテートから再結晶した。次にこの生成物をメタノール(10ml)ですりつぶし、スラリーを濾過して(2)(1.3g、65%)を得た。
【化18】

【0075】
実施例2
ヒドロキシ酢酸のカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(3):
引き続き図1を参照し、(2)(1g、2.01mmol)及び10%Pd/C(500mg)のエタノール(100mL)懸濁液を窒素でパージして脱気したあと、シクロヘキサン(5mL)を加えた。この反応混合物を20時間還流加熱し、触媒を濾過した。減圧下で溶媒を除去した後、アセトニトリルから再結晶化して、(3)(500mg、50%)を得た。
【化19】

【0076】
実施例3
2-イミダゾリルカルボニルオキシ酢酸のカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(4):
図1に図示されるように、(3)(240mg、0.59mmol)、N,N-カルボニルジイミダゾール(288mg、1.77mmol)のクロロホルム(80mL)溶液を50℃で18時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去した後、エチルアセテートですりつぶし、薄い黄色の固体として(4)(170mg、58%)を得た。
【化20】

【0077】
実施例4
2-PEG40kDaカルバモイル酢酸のカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(5a):
方法A:
図1に表されるように、(3)(60.4mg、0.148mmol)、PEG40kジイソシアネート(2g、0.05mmol)、ジブチル錫ジラウレート(15.7mg、0.024mmol)のジクロロメタン(20mL)溶液を18時間還流した。減圧下で溶媒を除去し、2-プロパノール(10mL)から再結晶して(5a)を得た。
【0078】
実施例5
2-PEG40kDaカルバモイル酢酸のカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(5a):
方法B:
図1に表されるように、(4)(74mg、0.148mmol)及びPEG40kDaジアミン((12)、2g、0.05mmol)の2-プロパノール(20mL)溶液を12時間還流した。減圧下で溶媒を除去し、固体として(5a)を生成して、これを2-プロパノールから再結晶した(1.6g、79%)。
【0079】
実施例6
a)2-PEG40kN-メチルカルバモイル酢酸のカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(5b):
図1は、化合物(5b)の生成も表している。化合物(5b)は、出発材料としてPEG40kN‐メチルジアミン(13)を使用して、実施例5(方法B)の化合物(5a)を調製するために用いた方法と同様の方法により調製した。
【化21】

【0080】
b)20-O-ヒドロキシアセチルカンプトテシンのPEG40kジカルボン酸エステル/化合物(5c):
図1は、化合物(5c)の形成も表している。PEG40kDaジカルボン酸(3g、0.075mmol)をトルエン(100ml)中で1時間共沸した。この溶液に、カリウムt‐ブトキシド、1.0M溶液(165μl、0.165mmol)を加えてこの内容物を2時間還流した。減圧下で溶媒を除去し、得られた固体をDMSO(30ml)中に再溶解した。化合物(3)(140mg、0.299mmol)をこの溶液に加え、反応混合物を室温で18時間攪拌した。エーテル(100ml)を加え、沈殿した固体を濾過して収集し、2-プロパノールから再結晶して(5c)を得た。
【0081】
実施例7
ジグリコール酸のモノt‐ブチルエステル(6):
図2を参照し、ジグリコール酸無水物(10g、0.09mol)及びDMAP(10.5g、0.09mol)の乾燥t‐ブタノール(75ml)溶液を還流温度で18時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、残渣を水(100ml)中に溶解した。この水溶液を1NのHClでpH2.5〜3.0に酸性化し、ジクロロメタンで抽出した。乾燥した抽出物から溶媒を除去し、グリコール酸のモノt‐ブチルエステル(6)(12.3g、75%)を得た。
【化22】

【0082】
実施例8
(6)のカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(8):
引き続き図2を参照すると、(6)(4.2g、0.02mol)、カンプトテシン(4.0g、0.01mol)、ジメチルアミノピリジン(DMAP、2.7g、0.02mol)、及びジイソプロピルカルボジイミド(DIPC2.8g、0.02mol)の無水ジクロロメタン(40ml)混合物を室温で18時間攪拌した。この反応混合物を水、次いで飽和重炭酸ナトリウム水溶液、0.1NのHClで洗浄したあと、再び水で洗浄した。有機層を乾燥し(無水MgSO4)、減圧下で溶媒を除去した。ジクロロメタン/エーテルから得られた固体を再結晶し、(8)(3.1g、54%)を得た。
【化23】

【0083】
実施例9
ジグリコール酸のカンプトテシン-20-O-エステル(10):
引き続き図2を参照し、化合物(8)(0.8g、1.5mmol)のジクロロメタン-トリフルオロ酢酸溶液(12ml、8:4)を室温で30分間攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、得られた固体をジクロロメタン/エーテルから再結晶し、(10)(0.6g、82%)を得た。
【0084】
最終生成物(10)は、DMAPの存在下で、塩化メチレン中にてジグリコール酸無水物により20(S)カンプトテシンを縮合することにより直接調製することもできる。
【化24】

【0085】
実施例10
PEG40kDaジ-N-メチルアミン塩酸塩(12):
引き続き図2を参照し、mPEG5kClの合成方法(Greenwaldら、J. Org. Chem., 1995, 60, 331-336に報告されている。当該文献の内容は、本明細書中に参考として組み込まれる)と同様の手順を用いて、二塩化PEG40kDaを調製した。次にPEG40kDaジクロリドの40%メチルアミン溶液(400ml)を密封したポリプロピレン製ボトルに入れ、60℃で3日間加熱した。次にこの反応混合物から溶媒を除去した後、2-プロパノール(1.5L)から再結晶し、(12)(44g、87%)を得た。
【化25】

【0086】
実施例11
酸(10)のPEG40kDaアミド/化合物(14):
引き続き図2を参照し、mPEG5kNH2の合成方法(Greenwaldら、J. Org. Chem., 1995, 60, 331-336に報告されている。当該文献の内容は、本明細書中に上記参考として組み込まれる)と同様の手順に従い、PEG40kDaジアミン塩酸塩(13)を調製した。(10)(0.14g、0.3mmol)、PEG40kDaジアミン塩酸塩(13)(3.0g、0.075mmol)、DMAP(55mg、0.45mmol)及びDIPC(38mg、0.3mmol)の無水ジクロロメタン(30ml)混合溶液を、室温で18時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、2-プロパノールから再結晶して、(14)(2.8g、90%)を得た。
【化26】

【0087】
実施例12
a)酸(10)のPEG40kDaN‐メチルアミド/化合物(15):
図2に示されるように、(10)(0.14g、0.3mmol)、PEG40kDaジ-N‐メチルアミン塩酸塩(13)(3.0g、0.075mmol)、DMAP(55mg、0.45mmol)及びDIPC(38mg、0.3mmol)の無水ジクロロメタン(30ml)混合溶液を、室温で18時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去した後、2-プロパノールから再結晶して、(15)(2.8g、90%)を得た。
【化27】

【0088】
b)酸(10)のPEG40kDaエステル/化合物(44):
図13を参照し、(10)(0.14g、0.3mmol)、PEG40kDaジカルボン酸(43)(以下の実施例22を参照)(3.0g、0.075mmol)、DMAP(55mg、0.45mmol)及びDIPC(38mg、0.3mmol)の無水ジクロロメタン(30ml)混合溶液を、室温で18時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去した後、2-プロパノールから再結晶し、(44)(2.8g、90%)を得た。
【0089】
実施例13
チオジグリコール酸のモノt-ブチルエステル/化合物(7):
図2に示されるように、チオジグリコール酸無水物(10g、0.09mol)とDMAP(10.5g、0.09mol)のt-ブタノール(75ml)溶液を還流温度で18時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去し、残渣を水(100ml)中に溶解した。この水溶液を1NのHClでpH 2.5〜3.0まで酸性化し、ジクロロメタンで抽出した。乾燥した抽出物から溶媒を除去し、チオジグリコール酸のモノt-ブチルエステル(7)を得た。
【化28】

【0090】
実施例14
(7)のカンプトテシン-20-Oエステル/化合物(9):
引き続き図2を参照すると、(7)(4.2g、0.02mol)、カンプトテシン(4.0g、0.01mol)、DMAP(2.7g、0.02mol)及びDIPC(2.8g、0.02mol)の無水ジクロロメタン(40ml)混合溶液を、室温で18時間攪拌した。次にこの反応混合物を水、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、0.1NのHCl及び最後に水で洗浄した。有機層を乾燥させ(無水MgSO4)、減圧下で溶媒を除去し、得られた残渣をジクロロメタン/エーテルから再結晶して、(9)を得た。
【化29】

【0091】
実施例15
チオジグリコール酸のカンプトテシン-20-O-モノエステル/化合物(11):
図2に示されるように、化合物(9)(0.8g、1.5mmol)のジクロロメタン-トリフルオロ酢酸溶液(12ml、8:4)を室温で30分間攪拌した。減圧下で溶媒を除去して得た固体をジクロロメタン/エーテルから再結晶して、(11)を得た。
【0092】
実施例16
a)酸(11)のPEG40kDaアミド/化合物(16):
(11)(0.14g、0.3mmol)、PEG40kDaジアミン塩酸塩(13)(3.0g、0.075mmol)、DMAP(55mg、0.45mmol)及びDIPC(38mg、0.3mmol)の無水ジクロロメタン(30ml)混合溶液を、室温で18時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去した後、固体生成物を2-プロパノールから再結晶し、(16)を得た。図2を参照のこと。
【0093】
b)酸(11)のPEG40kDaエステル/化合物(45):
図13を参照し、(11)(0.14g、0.3mmol)、PEG40kDaジオール(以下の実施例22を参照のこと)(3.0g、0.075mmol)、DMAP(55mg、0.45mmol)及びDIPC(38mg、0.3mmol)の無水ジクロロメタン(30ml)混合溶液を、室温で18時間攪拌した。減圧下で溶媒を除去した後、2-プロパノールから固体生成物を再結晶し、(45)を得た。
【0094】
実施例17
酸(11)のPEG40kDaN‐メチルアミド/化合物(17):
(11)(0.14g、0.3mmol)、PEG40kDaジ-N‐メチルアミン塩酸塩(12)(3.0g、0.075mmol)、DMAP(55mg、0.45mmol)及びDIPC(38mg、0.3mmol)の無水ジクロロメタン(30ml)混合溶液を、室温で18時間攪拌した。溶媒を減圧除去して2-プロパノールから再結晶し、(17)を得た(図2を参照のこと)。
【0095】
実施例18
PEG40kDaチオ酢酸(18):
図3を参照すると、二塩化PEG40kDa(40.0g、1mmol)(GreenwaldらのJ. Org. Chem., 1995, 60, 331〜336参照)、チオ酢酸(3.6g、40mmol)及び水酸化ナトリウム(4.0g、40mmol)の水(160ml)溶液を密封したポリエチレン製ボトルに入れ、70℃の水浴中に18時間入れた。この反応混合物を室温まで冷まして100mlの水で希釈し、塩酸でpH2.0まで酸性化した後、塩化メチレンで抽出した。抽出物をまとめて硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過した後、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。2-プロパノールから固体残渣を再結晶し、生成物35g(69%)を得た。
【化30】

【0096】
実施例19
(18)のカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(19):
ここで図4を参照し、PEG40kDaチオ酢酸((18)、16g、0.40mmol)を250mLの無水塩化メチレン中に室温で溶解した。この溶液に、DIPC(280mg、2.2mmol)、DMAP(280mg、2.2mmol)及びカンプトテシン(800mg、2.2mmol)を0℃で加えた。この反応混合物を室温まで温め、16時間放置した後、溶媒を減圧除去した。残渣を2-プロパノールから再結晶して生成物(13.6g、77%)を得た。この生成物は(19a)+(19b)の混合物であった。
【0097】
実施例20
(18)のパクリタキセル-2’-O-エステル/化合物(20):
ここで図5を参照し、PEG40kDaチオ酢酸((18)、8g、0.20mmol)を120mLの無水塩化メチレン中に室温で溶解した。この溶液に、DIPC(108μL、0.70mmol)、DMAP(86mg、0.70mmol)及びパクリタキセル(606mg、0.70mmol)を0℃で加えた。この反応混合物を室温まで温め、16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させ、白い固体(15g、80%)を得て、これを2-プロパノールから再結晶した。この生成物は(20a)+(20b)の混合物であった。
【化31】

【0098】
実施例21
a)カンプトテシン-20-O-(l)アラナートTFA塩(23):
図6を参照し、tBoc-l-アラニン(1.8g、9.39mmol)を700mLの無水塩化メチレン中に室温で溶解した。この溶液に、DIPC(1.5ml、9.39mmol)、DMAP(765mg、6.26mmol)及びカンプトテシン(1.09g、3.13mmol)を0℃で加えた。この反応混合物を室温まで温め、16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させて白い固体を得て、これをメタノールから再結晶し、t-Boc-l-アラニンのカンプトテシン-20-O-エステル(21)を得た。
【化32】

【0099】
b)化合物21(1.19g、2.12mmol)を塩化メチレン(15ml)とトリフルオロ酢酸(15ml)の混合物に溶解して室温で1時間攪拌した。溶媒を除去し、塩化メチレン及びエーテルから固体を再結晶してTFA塩として1gの生成物(23)を得た。
【化33】

【0100】
c)カンプトテシン-20-O-(d/l)アラナートTFA塩:
実施例21a)で使用したtBoc-l-アラナートを対応する異性体に置き換えて上記で概説したものと同じ手順を用いて、d-アラナート及びd/lラセミアラナートを調製した。
【0101】
d)カンプトテシン-20-O-グリシナート,TFA塩/化合物(47):
ここで図14を参照すると、tBoc-l-アラニルカンプトテシン(21)の代わりにBoc-グリシニルカンプトテシン(46)を使用して、上記実施例21a)と似た手順を用いてカンプトテシン-20-O-グリシナートを調製したことが分かる。
【0102】
e)10,11-メチレンジオキシカンプトテシン20-O-グリシナートTFA塩
10,11-メチレンジオキシカンプトテシンを用いて実施例21のプロセスのステップa)〜d)を繰り返し、20-O-アラナート及びグリシナートTFA塩を得る。
【0103】
実施例22
PEG40kDaL-アラニンのカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(25):
方法A:
I) PEG(40kDa)ジカルボン酸
a)PEG(40,000)ジ‐カルボン酸のジ‐t-ブチルエステル
PEG-(OH)2(50g, 1.3mmol)のトルエン(750ml)溶液を共沸し、留出液150mlを除去した。次に反応混合物を30℃まで冷却した後、カリウムt-ブトキシドのt-ブタノール1.0M溶液4ml(4.0mmol)を加えた。得られた混合物を室温で1時間攪拌したあと、t-ブチルブロモアセテートを1.6g(8.0mmol)加えた。得られた不透明の混合物を加熱還流したあと、熱をとり、室温で18時間攪拌した。反応混合物をセライトで濾過し、ロータリーエバポレーターにより溶媒を除去した。塩化メチレン/エチルエーテルから残渣を再結晶し、生成物45.2gを得た(収率86%)。しかしこの表題の生成物は純度が99%を超えており、出発材料は1.0%未満しか存在しなかったことが判明した。13CNMR 帰属:
【化34】

【0104】
b)PEG(40,000)ジ-カルボン酸
PEG(40,000)カルボン酸t-ブチルエステル20.0g(0.5mmol)、トリフルオロ酢酸100ml及び水0.1mlの塩化メチレン(200ml)溶液を室温で3時間攪拌した。次にロータリーエバポレーターにより溶媒を除去し、塩化メチレン/エチルエーテルから再結晶して生成物16.9gを得た(収率84%)。この表題の生成物の純度は99%を超えることが確認された。13CNMR 帰属:C=0、170.9ppm
II) a) カンプトテシン-20-O-アラナートPEG誘導体の合成
図6を参照し、室温で無水塩化メチレン60mL中にPEG40kDa二酸(6.5g、0.62mmol)を溶解し、この溶液に0℃でDIPC(148μL、0.97mmol)、DMAP(296mg、2.43mmol)及び化合物(23)(627mg、0.97mmol)を加えた。この反応混合物を室温まで温めて16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥し、減圧下で蒸発させて白い固体として(25)を得て、2-プロパノールから再結晶した(5.5g、83%)。13C及び1HNMR分析により、その構造を確認した。
【化35】

【0105】
表題の化合物を形成するために、DIPCの代わりにプロパンホスホン酸環状無水物(PPACA)を用いてIIa)の手順を繰り返した。
【0106】
同じ方法によりラセミ混合物を調製する。
【0107】
II b)カンプトテシン-20-O-グリシナートPEG40kDa‐アミド誘導体/化合物(48)の合成:
ここで図14を参照し、化合物(48)を得るために、化合物(23)(図6)の代わりに化合物(47)(図14)を使用し、実施例22aに示されたものと同様の手順を用いて、PEG40kDaグリシナートのカンプトテシン-20-O-エステルを調製した。
【0108】
III) PEG40kDal-アラニンのカンプトテシン20-O-エステル(25)の分析:
塩化メチレン中の天然のカンプトテシンの227nmでのUV吸光度を、4〜21μMの5つの異なる濃度で測定した。(吸光度)対(濃度)の標準プロットからカンプトテシンの吸光率を計算すると、2.96×104Mol−1Cm−1であった。カンプトテシン化合物(25)を約4μM濃度で塩化メチレン中に溶解し、227nmでのこの化合物のUV吸光度を測定した。この値を用いて、及び上記から得られた吸光率を使用して、サンプル中のカンプトテシン濃度を測定した。従って、この値をカンプトテシン‐PEGエステル濃度で割ると、エステル中のカンプトテシンのパーセンテージが得られた。
【0109】
UV法を用いて生成物中のカンプトテシンの%を決定したところ、PEG1分子に対してカンプトテシンが2当量であることが判明した。
【0110】
IV) カンプトテシン-20-O-グリシナートPEG40kDaカルバメート誘導体/化合物(49)の合成:
ここで図15を参照し、米国特許第5,122,614号(当該特許の開示内容は、本明細書中に参考として組み込まれる)に記載された方法に従って調製したPEG40kDaジ‐SC-PEG(2.0g、0.59mmol)を、室温で40mLの無水クロロホルム中に溶解した。この溶液にDMAP(60.7mg、0.5mmol)及び化合物(47)(122mg、0.2mmol)を加えた。この反応混合物を室温にまで温め、16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させ、白い固体として表題の化合物(49)を得て、2-プロパノールから再結晶した。
【0111】
実施例23
PEG40kDa(d/l)-アラニンのカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(25):
方法B:
ここで参考程度に図9を参照し、以下の実施例30に示される化合物(31)を調製するための手順と同様の手順を用い、(27)の代わりにPEG‐d-アラニン(28)又はPEG‐l‐アラニン(29)(図7に図示)を用いて化合物(25)を調製することもできる。
【0112】
実施例24
PEG40kDa(d)‐アラニンのカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(26):
方法A:
図6に示されるように、出発材料としてtBoc-d-アラニンを用いて実施例22の化合物(25)を調製するのに使用したのと同様の方法を用いて、表題の化合物が調製される。
【0113】
実施例25
PEG40kDa(d)‐アラニンのカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(26):
方法B:
実施例30に記載された化合物(31)を調製するための手順と同様の手順を用い、(27)の代わりにPEG-d-アラニン(29)(図7を参照)を用いて、化合物(26)も調製される。上記手順のいずれかを用いてラセミアラニン混合物を調製することもできる。
【0114】
実施例26
PEG40kDa‐β‐アラニン(27):
図7に示されるように、PEG40kDa二酸(3g、0.075mmol)を30mLの無水塩化メチレン中に室温で溶解した。0℃でこの溶液に、DIPC(91.4μL、0.72mmol)、DMAP(128mg、1.04mmol)及びβ‐アラニン‐t-ブチルエステル(109mg、0.59mmol)を加えた。3時間後にこの反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させ、白い固体としてPEG40kDaβ‐アラニン‐t-ブチルエステルを得て、これを塩化メチレン(50ml)とトリフルオロ酢酸(25ml)の混合物中に溶解し、0℃で一晩おいた。溶媒を除去し、塩化メチレン/エーテルから固体を再結晶し、(27)(2.3g、77%)を得た。
【化36】

【0115】
実施例27
PEG40kDa‐d‐アラニン(28):
図7に表されるように、実施例26の化合物(27)を合成するために使用したのと同様の手順を用い、β‐アラニン‐t-ブチルエステルの代わりに(d)‐アラニン‐t‐ブチルエステルを用いて表題の化合物を調製する。
【0116】
実施例28
PEG40kDa‐l‐アラニン(29):
実施例26の化合物(27)を合成するために使用したのと同様の手順を用い、β‐アラニン‐t-ブチルエステルの代わりに(l)‐アラニン‐t-ブチルエステルを用いて表題の化合物を調製する(図7を参照)。
【0117】
実施例29
(27)のパクリタキセル‐2’‐O-エステル/化合物(30a):
図8を参照し、PEG40kDaβ‐アラニン((27)を2.3g、0.057mmol)を20mLの無水塩化メチレン中に室温で溶解した。0℃でこの溶液に、DIPC(32μL、0.2mmol)、DMAP(25mg、0.2mmol)及びパクリタキセル(175.6mg、0.2mmol)を加えた。この反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させ、白い固体として(30a)(2g、87%)を得て、2-プロパノールから再結晶した。
【化37】

【0118】
b)(28)のパクリタキセル‐2’‐O‐エステル/化合物(30b):
β‐アラニンの代わりにd‐アラニンを用いて実施例29aの手順を繰り返し、化合物(30b)を得た。
【0119】
c)(29)のパクリタキセル‐2’‐O‐エステル/化合物(30c):
β‐アラニンの代わりにl‐アラニンを用いて実施例29aの手順を繰り返し、化合物(30c)を得た。
【0120】
実施例30
(27)のカンプトテシン20-O-エステル/化合物(31):
ここで図9を参照し、PEG40kDaβ‐アラニン((27)を2.3g、0.057mmol)を20mLの無水塩化メチレン中に室温で溶解し、この溶液に0℃でDIPC(32μL、0.2mmol)、DMAP(25mg、0.2mmol)及びカンプトテシン(130mg、0.25mmol)を加えた。この反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させ、(31)を得た。
【0121】
実施例31
(27)のポドフィロトキシン-4-O-エステル/化合物(32):
ここで図10を参照し、PEG40kDaβ‐アラニン((27)を2.3g、0.057mmol)を20mLの無水塩化メチレン中に室温で溶解した。この溶液に、0℃でDIPC(27.3μL、0.18mmol)、DMAP(21.9mg、0.18mmol)及びポドフィロトキシン(110mg、0.25mmol)を加えた。この反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させ、白い固体として(32)を得て、2-プロパノールから再結晶した。
【0122】
実施例32
ブロモ酢酸のカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(35):
図11を参照し、カンプトテシン(1g、2.87mmol)のCH2Cl2(700ml)懸濁液に、0℃でブロモ酢酸((33)、1.2g、8.61mmol、アルドリッチ社(Aldrich)製)、ジイソプロピルカルボジイミド(1.3ml、8.61mmol)及びジメチルアミノピリジン(DMAP、700mg、5.74mmol)を加えた。4時間攪拌し続けた。得られた黄色い溶液を約100mlに濃縮し、1Nの塩酸(10ml×2)、次いで1%の重炭酸ナトリウム水溶液(10ml×2)で洗浄した。有機層を乾燥し(無水MgSO4)、減圧下で蒸発させ、黄色い固体を得てエチルアセテートから再結晶した。次にこの生成物をメタノール(10ml)ですりつぶし、スラリーを濾過して(35)(0.9g、67%)を得た。
【化38】

【0123】
実施例33
ヨード酢酸のカンプトテシン-20-O-エステル/化合物(36):
引き続き図11を参照し、カンプトテシン(1.06g、3.04mmol)のCH2Cl2(500ml)懸濁液に、0℃でヨード酢酸((34)、1.7g、9.13mmol、アルドリッチ社製)、ジイソプロピルカルボジイミド(1.4ml、9.13mmol)及びジメチルアミノピリジン(DMAP、743mg、8.04mmol)を加えた。2時間攪拌し続けた後、16時間室温に放置した。得られたこげ茶色の溶液を約100mlに濃縮し、1Nの塩酸(10ml×2)、次いで1%の重炭酸ナトリウム水溶液(10ml×2)で洗浄した。有機層を乾燥し(無水MgSO4)、減圧下で蒸発させ、黄色い固体を得て、これをエチルアセテートから再結晶した。次にこの生成物をメタノール(10ml)ですりつぶし、スラリーを濾過して(36)(1.3g、80%)を得た。
【化39】

【0124】
実施例34
PEGジアミン塩酸塩(13)‐ビス‐カンプトテシン‐N‐PEG40kDa-20-O-グリシナートと(36)の反応/化合物(37a):
引き続き図11を参照し、PEG40kDaジアミン塩酸塩((13)、5g、0.125mmol)、20-ヨード酢酸カンプトテシン((36)、322mg、0.624mmol)及びトリエチルアミン(208μL、1.497mmol)の無水塩化メチレン(75mL)溶液を室温で3日間攪拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、得られた固体をDMF、次いで2-プロパノールから再結晶して、白い固体として(37a)を得た(4.4g、87.4%)。
【0125】
実施例35
無水酢酸‐ビス‐カンプトテシン‐N‐アセチル‐PEG40kDa-20-O-グリシナートと化合物(37a)の反応/化合物(37b):
引き続き図11を参照し、(37a)のN‐アセチル誘導体の調製を示す((37b)とする)。化合物(37a)(300mg、0.007mmol)、無水酢酸(28μL)及びピリジン(28μL)の無水塩化メチレン(5mL)溶液を室温で18時間攪拌した。溶媒を除去し、2-プロパノールから残渣を再結晶して、(37b)を200g得た。
【0126】
実施例36
PEG N-メチルジアミン塩酸塩(12)と(36)の反応/化合物(38):
これも図11に表されているように、PEG40kDaN‐メチルジアミン塩酸塩((12)、5g、0.125mmol)、20-ヨード酢酸カンプトテシン((36)、322mg、0.624mmol)及びトリエチルアミン(208μL、1.497mmol)の無水塩化メチレン(75mL)溶液を室温で3日間攪拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、得られた固体をDMFから、次いで2-プロパノールから再結晶して、白い固体として(38)を得た(4.5g、90%)。
【0127】
実施例37
20-サルコシンカンプトテシン(41):
ここで図12を参照し、サルコシン(5g、56.13mmol)、Boc無水物(14.7g、67.35mmol)及び水酸化ナトリウム(4.5g、112.26mmol)の水(25mL)溶液を室温で18時間攪拌した。この反応混合物を0℃に冷却し、6NのHClでpH3まで酸性化して、酢酸エチルで抽出した。溶媒を蒸発させ、透明な油としてBocサルコシン(39)を得た。
【化40】

【0128】
Boc-サルコシン((39)、1.63g、8.61mmol)を室温で無水塩化メチレン100mLに溶解し、この溶液に0℃で DIPC(1.3mL、8.61mmol)、DMAP(725mg、5.74mmol)及びカンプトテシン(1g、2.87mmol)を加えた。この反応混合物を室温にまで温めて、2時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させ、白い固体を得て、2-プロパノールから再結晶し、20-Boc-サルコシンカンプトテシン((40)、750mg、50.3%)を得た。
【0129】
20-Boc-サルコシンカンプトテシン((40)、750mg)を塩化メチレン(4ml)及びトリフルオロ酢酸(4ml)中に溶解し、室温で1時間攪拌した。エーテル(10ml)を加え、沈殿した固体を濾過して乾燥し、黄色い固体として(41)(550mg、85%)を得た。
【化41】

【0130】
実施例38
PEGジカルボン酸と(41)の反応/化合物(42):
引き続き図12を参照し、室温で無水塩化メチレン30mL中にPEG40kDa二酸(2g、0.05mmol)を溶解し、この溶液に0℃でDIPC(30μL、0.20mmol)、DMAP(24mg、0.20mmol)及び20-サルコシンカンプトテシン((41)、112mg、0.21mmol)を加えた。この反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置した。この溶液を減圧下で蒸発させ、白い固体を得て、これを2-プロパノールから再結晶し、(42)(1.4g、69%)を得た。
【0131】
実施例39
a)PEG40kDaグリシン(50):
室温でPEG40kDa二酸(9.5g、0.23mmol)を20mLの無水塩化メチレンに溶解し、この溶液に0℃でDIPC(141μL、0.92mmol)、DMAP(197mg、1.6mmol)及びグリシン-t-ブチルエステル(176.4mg、0.92mmol)を加えた。3時間後にこの反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させ、白い固体としてPEG40kDaグリシン-t-ブチルエステルを得て、塩化メチレン(50ml)及びトリフルオロ酢酸(25ml)の混合物中に溶解し、0℃で一晩おいた。溶媒を除去し、塩化メチレン/エーテルから固体を再結晶して(50)(7.1g、75%)を得た。
【化42】

【0132】
b)PEG40kDaフェニルアラニン(51):
PEG40kDa二酸(9.5g、0.23mmol)を室温で20mLの無水塩化メチレンに溶解し、この溶液に0℃でDIPC(141μL、0.92mmol)、DMAP(197mg、1.6mmol)及びフェニルアラニン-t-ブチルエステル(176.4mg、0.92mmol)を加えた。3時間後にこの反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させ、白い固体としてPEG40kDaフェニルアラニン-t-ブチルエステルを得て、塩化メチレン(50ml)及びトリフルオロ酢酸(25ml)の混合物中に溶解し、0℃で一晩置いた。溶媒を除去し、塩化メチレン/エーテルから固体を再結晶して(51)(7.1g、75%)を得た。
【化43】

【0133】
c)PEG40kDaロイシン(52):
室温でPEG40kDa二酸(9.5g、0.23mmol)を20mLの無水塩化メチレンに溶解し、この溶液に0℃でDIPC(141μL、0.92mmol)、DMAP(197mg、1.6mmol)及びロイシン-t-ブチルエステル(176.4mg、0.92mmol)を0℃で加えた。3時間後にこの反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させ、白い固体としてPEG40kDaロイシン-t-ブチルエステルを得て、これを塩化メチレン(50ml)とトリフルオロ酢酸(25ml)の混合物中に溶解し、0℃で一晩置いた。溶媒を除去し、塩化メチレン/エーテルから固体を再結晶して(52)(7.1g、75%)を得た。
【化44】

【0134】
d)PEG40kDaプロリン(53):
室温でPEG40kDa二酸(9.5g、0.23mmol)を20mLの無水塩化メチレンに溶解し、この溶液に0℃でDIPC(141μL、0.92mmol)、DMAP(197mg、1.6mmol)及びプロリン-t-ブチルエステル(176.4mg、0.92mmol)を0℃で加えた。3時間後にこの反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させ、白い固体としてPEG40kDaプロリン-t-ブチルエステルを得て、これを塩化メチレン(50ml)とトリフルオロ酢酸(25ml)の混合物中に溶解し、0℃で一晩置いた。溶媒を除去し、塩化メチレン/エーテルから固体を再結晶して(53)(7.1g、75%)を得た。
【化45】

【0135】
e)PEG40kDaメチオニン(54):
室温でPEG40kDa二酸(9.5g、0.23mmol)を20mLの無水塩化メチレンに溶解し、この溶液に0℃でDIPC(141μL、0.92mmol)、DMAP(197mg、1.6mmol)及びメチオニン-t-ブチルエステル(176.4mg、0.92mmol)を0℃で加えた。3時間後にこの反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置した。この溶液を0.1NのHClで洗浄し、乾燥して減圧下で蒸発させ、白い固体としてPEG40kDaメチオニン-t-ブチルエステルを得て、塩化メチレン(50ml)及びトリフルオロ酢酸(25ml)の混合物中に溶解し、0℃で一晩置いた。溶媒を除去し、塩化メチレン/エーテルから固体を再結晶して(54)(7.1g、75%)を得た。
【化46】

【0136】
実施例40
アシクロビル‐PEGプロドラッグ:
室温でPEG40kDaL-アラニン二酸((29)、11.5g、0.287mmol)を200mLの無水塩化メチレンに溶解し、この溶液に0℃でDIPC(0.175ml、1.15mmol μL)、DMAP(140mg、1.15mmol)及びアシクロビル(258mg、1.15mmol)を加える。2時間後にこの反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置する。この溶液を約100mlに濃縮し、セライトで濾過して濾過物を減圧下で蒸発させ、固体としてアシクロビル‐PEGプロドラッグを得て、CH2Cl2/エーテルから再結晶する。
【0137】
実施例41
シクロスポリンA‐PEGプロドラッグ:
PEG40kDaグリシン二酸((50)、11.5g、0.287mmol)を室温で200mLの無水塩化メチレンに溶解し、この溶液に0℃でDIPC(0.175ml、1.15mmol μL)、DMAP(140mg、1.15mmol)及びシクロスポリンA(1.38g、1.15mmol)を加える。2時間後にこの反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置する。この溶液を約100mlに濃縮し、セライトで濾過して濾過物を減圧下で蒸発させ、固体としてシクロスポリンA‐PEGプロドラッグを得て、CH2Cl2/エーテルから再結晶する。
【0138】
実施例42
アモキシリン-PEGプロドラッグ:
PEG40kDaフェニルアラニン二酸((51)、11.5g、0.287mmol)を室温で200mLの無水塩化メチレンに溶解し、この溶液に0℃でDIPC(0.175ml、1.15mmol μL)、DMAP(140mg、1.15mmol)及びアモキシリン(419mg、1.15mmol)を加える。2時間後にこの反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置する。この溶液を約100mlに濃縮し、セライトで濾過して濾過物を減圧下で蒸発させ、固体としてアモキシリン‐PEGプロドラッグを得て、CH2Cl2/エーテルから再結晶する。
【0139】
実施例43
フルコナゾール(Fluconazole)‐PEGプロドラッグ:
室温でPEG40kDaロイシン二酸((52)、11.5g、0.287mmol)を200mLの無水塩化メチレンに溶解し、この溶液に0℃でDIPC(0.175ml、1.15mmol μL)、DMAP(140mg、1.15mmol)及びフルコナゾール(352mg、1.15mmol)を加える。2時間後にこの反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置する。この溶液を約100mlに濃縮し、セライトで濾過して濾過物を減圧下で蒸発させ、固体としてフルコナゾール‐PEGプロドラッグを得て、CH2Cl2/エーテルから再結晶する。
【0140】
実施例44
フロクスウリジン‐PEGプロドラッグ:
室温でPEG40kDaプロリン二酸((53)、0.5g、0.0125mmol)を20mLの無水塩化メチレンに溶解し、この溶液に0℃でヨウ化2-クロロ-1-メチルピリジニウム(17mg、0.067mmol)、DMAP(17mg、0.14mmol)及びフロクスウリジン(13mg、0.049mmol)を加える。2時間後にこの反応混合物を室温にまで温めて、16時間放置する。この溶液を約100mlに濃縮し、セライトで濾過して濾過物を減圧下で蒸発させ、固体としてフロクスウリジン‐PEGプロドラッグを得て、CH2Cl2/エーテルから再結晶する。
【0141】
実施例45
in vitroバイオアッセイ
この実施例では、一連のin vitroアッセイを行って修飾されていないカンプトテシン、修飾されていないパクリタキセル及び上記のように調製した幾つかの高分子量プロドラッグのIC50を決定した。
【0142】
すべての化合物について、1個以上のP388/O(マウスリンパ系新生物、Southern Research Institute)、HT-29(ヒト結腸癌)及び A549(ヒト肺腺癌)細胞系に対して独立に試験をおこなった。
【0143】
P388/O細胞系は、RPMI 1640培地(Whittaker Bioproducts,Walkersville, Maryland)+10%FBS(Hyclone, Inc. Logan, UT)中で培養した。HT-29細胞は、DMEM(GIBCOBRL)+10%FBS(Hyclone, Inc.)中で培養した。A549細胞はDMEM/F-12(Biowhitaker)+10%FBS(熱不活性化したもの)中で培養した。バイオアッセイは、抗生物質と抗カビ剤(fungizone)を加えたそれぞれの培地の中でおこなった。
【0144】
カンプトテシン及びパクリタキセルをDMSOに溶解して、培地で適当な濃度に希釈した。PEG-カンプトテシンプロドラッグ及びPEG-パクリタキセルプロドラッグを水に溶解して培地で適当な濃度に希釈した。
【0145】
アッセイは96-ウェルマイクロタイター細胞培養プレートで2個ずつおこなった。マイクロタイタープレートに化合物を2倍連続希釈で加えた。0.1%トリプシン/Verseneを加えて37℃でインキュベートすることにより、細胞を剥した。10%FBSを含むそれぞれの細胞系に適した培地を加えることによりトリプシンを不活性化した。マイクロタイタープレートのそれぞれのウェルに10,00細胞を加えた。3日後、代謝指示色素、Alamar Blueを製造者の指示書に従って加えることにより細胞の成長を測定した。それぞれの試験化合物のIC50値を測定して適当な参照化合物のIC50と比較した。
【表1】

【0146】
ここで表を参照すると、比較的高分子量のポリマープロドラッグが、無修飾型の薬物よりも優れていることがわかる。
【0147】
実施例46
in vivo実験
この実施例では、マウス白血病モデル及び結腸直腸異種移植モデルを使って、本発明に従って調製した化合物の幾つかについてin vivo活性を評価した。
【0148】
マウス白血病モデル(In vivo P388)
以下の表に表した化合物を、マウス白血病細胞系P388/0(マウス、リンパ系新生物)に対するin vivo活性についてスクリーニングした。Southern Research Institute (Birmingham, Alabama)から細胞系を入手し、RPMI1640+10%FBS中で培養した。P388/0細胞を1週間につき継代培養を2回行い、全てのin vivo実験で対数期培養物(生存度95%以上)を使用した。生後7〜8週間の雌のCD2F1マウス(Taconic Farms, Germantown, NY)を研究に使用した。1週間順化させた後、指定した日0(ゼロ)に、マウスにp388/0細胞(5×105細胞/マウス)を腹腔内(i.p.)に移植した。マウスをランダムに実験グループにふり分けた(1グループにつき10〜20匹)。これらのグループはコントロールグループと、薬物またはプロドラッグのいずれかを受けたグループとを含んでいた。次にマウスに5日連続して(1日目〜5日目まで)投与(500μL、i.p.)した。コントロールグループには、賦形剤(脂質内又は水)を与えた。最高40日までマウスをモニターし、治療法を評価し、40日目の生存率をパーセンテージで表した。
【0149】
結腸直腸の異種移植(In vivo HT-29)
治療開始時に、18〜24g、10〜14週齢の雌のnu/nuマウス(Harlan Sprague Dawley, Madison, WI)を使用した。ATCC(HTB38)から固形腫瘍HT-29(ヒト結腸腺癌)を得て、DMEM+10%FBS中で培養した。週に一度細胞を継代培養し、in vivo生体内実験のための生存度を90%以上とした。ミクロ単離装置の濾過ラックの中にマウスを入れ、濾過した酸性化水及び無菌実験室用の食料ad libitumを与え続けた。1週間順化させたあと、1×10に切り取ったHT-29腫瘍細胞を単一の皮下部位(マウスの左腋窩領域のわき腹)に注射して、腫瘍を定着させた。この腫瘍注射部位を毎週2回観察し、1回触診測定した。各マウスの腫瘍の体積は、カリパスで2次元測定により測定し、式(腫瘍体積=(長さ)×(幅)2)/2)を用いて計算した。腫瘍が平均体積300mm3に達したとき、マウスを幾つかの実験グループに分けた。非コントロールグループにはカンプトテシン2.5mg/kg/日を与え、カンプトテシンの含有量に基づいてプロドラッグを投与した。腫瘍サイズを均等に配分するようにマウスを整理し、1かごあたりマウス5匹でグループ分けし、常に識別できるように耳に穴を空けた。薬物を受けるマウスを、5週間、月曜日から金曜日まで1週間に5回、テスト薬物500μLでi.p.処理した。マウスの体重及び腫瘍のサイズを実験開始時、及び7週間毎週測定した。腫瘍全体の成長は、処理終了時の平均腫瘍体積から開始時の平均腫瘍体積を引き、これを開始時の平均腫瘍体積で割って計算した腫瘍サイズの%変化で表した。従って、処理に反応せず、実験経過を通して大きくなったあらゆる腫瘍グループは、ゼロ又は正の%変化を表し、腫瘍が退縮した処理グループは負の%変化を示す。
【0150】
得られたデータは以下の通りである。
【表2】

この表のデータは、本発明のプロドラッグを用いて得られた回復率が、修飾されていない又は天然のカンプトテシン化合物を用いて得られた回復率に匹敵していたことを示す。更に、それぞれのプロドラッグ組成物で処理したグループの半数が生き残っている日は、未処理グループのそれよりも長かった。更に、より高い分子量の化合物の生存率は、修飾されていないカンプトテシンの生存率とほぼ同じであった。
【表3】

【表4】

【0151】
本発明のプロドラッグの形態により水溶性が増したことに加え、データはPEG-プロドラッグ化合物が、親化合物よりも有効且つ毒性が低いことを示す。特に興味深いのは、処理が終わってから2週間経ってもなお、これらのプロドラッグで治療した動物の腫瘍体積は減少しており、これらの動物達は、コントロール動物に匹敵する体重の増加が見られた。出願人は理論に拘束されるものではないが、高分子量ポリマーと特定のエステル結合の制御された加水分解速度との組み合わせによって初めて、プロドラッグが体内から除去される前に治療効果のある量の親化合物が生成することを可能にすると考えられる。また、プロドラッグ組成物は腫瘍領域にある程度蓄積され、局部化して残留効果をもたらしたと結論付けられる。
【0152】
実施例47
カンプトテシン-20-O-カルボニルイミダゾリルカーボネート(54)の調製
容量100mLの丸底フラスコの中に、カンプトテシン(1)(1g、2.88mmol)、N,N‐カルボニルジイミダゾール(2.335g、14.4mmol)及び塩化メチレン(50mL)を入れ、10分間攪拌したあと、ジメチルアミノピリジン(110mg、0.864mmol)を加えた。得られた透明な溶液を窒素雰囲気下で室温で4時間攪拌した。この反応混合物を50mLの塩化メチレンで希釈し、0.1NのHCl(50mL)、次いで50mLの水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、蒸発乾固させた。こうして得られた粗生成物(604mg、95%)を、カンプトテシン20-O-カルバメート誘導体を調製するために、さらに精製することなく使用した。
【化47】

【0153】
実施例48
カンプトテシン-20-O-パラニトロフェニルカーボネート(55)の調製
容量100mLの丸底フラスコの中に、カンプトテシン(1)(0.5g、1.44mmol)、パラニトロフェニルクロロホルメート(0.871g、4.3mmol)及び塩化メチレン(15mL)を入れ、−8℃で30分間攪拌したあと、ジメチルアミノピリジン(1.06g、8.61mmol)を加えた。得られた透明な溶液を窒素雰囲気下で室温で2時間攪拌した。沈殿した固体を濾過し、乾燥して生成物を得た。この濾液を25mLの塩化メチレンで希釈し、0.1NのHCl(10mL)、次いで0.1Nの重炭酸ナトリウム溶液(10mL)で洗浄した。有機層を5mLに濃縮し、エーテルで沈殿させて、無水硫酸マグネシウム上に置き、蒸発乾固してさらに生成物を回収した。生成物の総収量は(604mg、95%)であった。
【化48】

【0154】
実施例49
カンプトテシン-20-O-N-ヒドロキシスクシンイミジルカーボネート(56)の調製
容量50mLの丸底フラスコの中に、カンプトテシン(1)(100mg、0.288mmol)、ジスクシンイミジルカーボネート(0.369mg、1.44mmol)及び塩化メチレン(7mL)を入れ、5分間攪拌したあと、ジメチルアミノピリジン(110mg、0.864mmol)を加えた。得られた透明な溶液を窒素雰囲気下で室温で2日間攪拌した。この反応混合物を50mLの塩化メチレンで希釈し、0.1NのHCl(25mL)、次いで25mLの水で洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、蒸発乾固して、生成物を得た(60mg、95%)。
【化49】

【0155】
実施例50a
カンプトテシン-20-O-PEGカルバメート(57)の調製
(54)(176mg、0.4mmol)及びPEG40kDa NH2(4g,0.1mmol)の無水2-プロパノール(75mL)溶液と、ジメチルアミノピリジン(37mg、0.3mmol)を21時間還流した。この反応混合物を室温まで冷却し、分離した固体を濾過し、エーテルで洗浄した。得られた固体を2-プロパノール(80mL)から2回再結晶して生成物3.67gを得た。
【化50】

【0156】
実施例50b
カンプトテシン-20-O-PEG5000カルバメートの調製
PEG40kDa NH2の代わりにPEG-5000を使用したほかは、上記実施例50aのプロセスを繰り返した。この化合物でのラットの血漿中のT1/2を測定すると、7.5時間であった。
【0157】
実施例51a
カンプトテシン-20-O-PEG 40kDaカーボネート(58)の調製
窒素雰囲気下で容量25mlの丸底フラスコの中に、カンプトテシン(228mg、0.65mmol)、PEG40kDa OH(4g、0.1mmol)及び5mLの無水塩化メチレンを入れた。この溶液に、トリホスゲン(72mg、0.24mmol)及びジメチルアミノピリジン(243mg、1.9mmol)を加え、16時間攪拌し続けた。この反応混合物をセライトで濾過し、蒸発乾固させた。得られた固体を2-プロパノールから再結晶した。
【化51】

【0158】
実施例51b
カンプトテシン-20-O-PEG-5000カーボネートの調製
PEG40kDa NH2の代わりにPEG-5000を使用したほかは、上記実施例51aのプロセスを繰り返した。
【0159】
実施例52
カンプトテシン-20-O-メチルカーボネート(59)の調製
(55)(500mg、0.976mmol)の無水メタノール(15mL)溶液と、塩化メチレン(15mL)及びジメチルアミノピリジン(60mg、0.488mmol)を室温で2時間攪拌した。この反応混合物を0.1NのHCl(3mL)、次いで0.1Nの重炭酸ナトリウム溶液(3mL)で洗浄し、乾燥し(無水硫酸マグネシウム)、蒸発させて体積を小さく(5mL)したあと、エーテルを加えて生成物を沈殿させた。得られた固体を濾過し、乾燥して、(59)(0.395g、83%)を得た。
【化52】

【0160】
実施例53
カンプトテシン-20-O-イソブチリルカーボネート(60)の調製
カンプトテシン(500mg、1.44mmol)及びジメチルアミノピリジン(1.5mg、0.012mmol)の無水塩化メチレン(25mL)溶液に、イソブチリルクロロホルメートを加え、内容物を室温で2時間攪拌した。この反応混合物を0.1NのHCl(3mL)、次いで0.1Nの重炭酸ナトリウム溶液(3mL)で洗浄し、乾燥し(無水硫酸マグネシウム)、蒸発させて生成物を得た。
【化53】

【0161】
実施例54
実施例45に関して先に述べたものと同じプロセスを用いて、実施例47〜53で調製された化合物の幾つかについてのIC50値を測定し、天然のカンプトテシンと比較した。その結果を以下に示す。
【表5】

【0162】
本願に記載された様々な刊行物、特許、特許出願、及び公開出願は、本明細書中に参考として組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式からなる化合物:
【化1】

式中、
Dは、エステル形成性ヒドロキシル基を有する薬物の残基であり、
R3は、20,000〜80,000の分子量を有する、水溶性のポリアルキレンオキシドの残基であり、
-O-CO-CH(R1)-NH-基は、(l)アミノ酸または(d)アミノ酸の残基であり、R1はHではない。
【請求項2】
R3がOH、C1-4アルキル基、または
【化2】

(式中、D'は、D、および、D以外のエステル形成性ヒドロキシル基を有する薬物からなる群から選択される)
からなる群から選択されるキャップ形成基Zを有するポリアルキレンオキシドである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
前記アミノ酸が、(d)および/または(l)アラニン、ロイシン、フェニルアラニン、メチオニンならびにプロリンからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
前記ポリアルキレンオキシドが25,000〜45,000の分子量を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
前記ポリアルキレンオキシドが30,000〜42,000の分子量を有する、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
Dがタンパク質、酵素、ペプチド、抗腫瘍薬、心血管薬、抗新生物薬、抗感染薬、抗カビ剤、抗不安薬、胃腸薬、中枢神経系-活性化薬、鎮痛薬、排卵誘発剤、避妊薬、抗炎症薬、ステロイド剤、抗尿毒症薬、血管拡張薬および血管収縮薬からなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
Dがパクリタキセル、タキソテル、カンプトテシン、ポドフィロトキシン、アシクロビル、シクロスポリンA、アモキシリン、フルコナゾールおよびフロクスウリジンからなる群から選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
Dがパクリタキセルおよびタキソテルからなる群から選択され、前記パクリタキセルまたはタキソテルが2'-OH基を介して結合されている、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
Dがカンプトテシン誘導体残基であり、前記カンプトテシン誘導体が20(S)-OH基を介して結合されている、請求項1記載の化合物。
【請求項10】
前記薬物と前記ポリアルキレンオキシドとの間の(l)および/または(d)アミノ酸リンケージが、該リンケージの加水分解速度とプロドラッグの体内からの除去速度との間の望ましいバランスが達成されるように選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
医薬の製造のための、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項12】
治療上有効な量の請求項1〜10のいずれか1項記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の、ポリマーを基剤とするプロドラッグ化合物の製造方法であって、
エステル形成性ヒドロキシル基を有する薬物と、有効カルボン酸基を含む二官能性スペーサー成分とを、第1のカップリング剤の存在下で反応させて薬物-二官能性スペーサープロドラッグ中間体を形成し、
前記薬物-二官能性スペーサープロドラッグ中間体と、20,000〜80,000の分子量を有し、カルボン酸である末端基を含む、水溶性のポリアルキレンオキシドとを、第2のカップリング剤の存在下で反応させ、そして得られるプロドラッグ化合物を回収する、
ことを含んでなる方法。
【請求項14】
前記薬物がタンパク質、酵素、ペプチド、抗腫瘍薬、心血管薬、抗新生物薬、抗感染薬、抗カビ剤、抗不安薬、胃腸薬、中枢神経系-活性化薬、鎮痛薬、排卵誘発剤、避妊薬、抗炎症薬、ステロイド剤、抗尿毒症薬、血管拡張薬および血管収縮薬からなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記二官能性スペーサー成分が(d)および/または(l)アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、メチオニンならびにプロリンからなる群から選択される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記第1および第2のカップリング剤が1,3-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、ジアルキルカルボジイミド、ハロゲン化2-ハロ-1-アルキル-ピリジニウム、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、プロパンホスホン酸環状無水物(PPACA)およびカルボジイミド(CDI)からなる群から独立に選択される、請求項13記載の方法。
【請求項17】
前記プロドラッグ化合物の前記二官能性スペーサー成分が-CO-CH(R1)-NH-基であり、ここで-CO-CH(R1)-NH-基は(l)アミノ酸または(d)アミノ酸の残基であり、R1はHではない、請求項13記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の、ポリマーを基剤とするプロドラッグ化合物の製造方法であって、
エステル形成性ヒドロキシル基を有する薬物を、式:
【化3】

〔式中、
R3は、20,000〜80,000の分子量を有する、水溶性のポリアルキレンオキシドの残基であり、
Z1-CH(R1)-NH-基は、(l)アミノ酸または(d)アミノ酸の残基を含み、R1はHではない
Z1は、CO2H、CO2R6、またはCONR1R8であり、
Z2は、CO2H、CO2R6、OR7、CONR1R8、H、C1-4アルキル、および
【化4】

からなる群から選択され、
ここで、R4およびR5は、H、C1-6アルキル、アリール、置換アリール、アルアルキル、ヘテロアルキル、置換ヘテロアルキル、および置換C1-6アルキルからなる群から独立に選択されるか、または一緒になって環式C5-7環を形成し、
R6は、R4またはN-ヒドロキシスクシンイミド、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-アシルタゾリジン、イミダゾールまたは酸活性化基であり、
R7は、R4またはC(O)-ハロゲン、パラニトロフェニルカーボネート、イミダゾリルカーボネートまたはN-ヒドロキシスクシンイミジルカーボネートであり、そして
R8は、R4またはCR1R2CO2Hである〕
の化合物と接触させ、
得られるプロドラッグ化合物を回収する、
ことを含んでなる方法。
【請求項19】
下記の一般式からなる化合物:
【化5】

式中、
R3は、20,000〜80,000の分子量を有する、水溶性のポリアルキレンオキシドの残基であり、
-O-CO-CH(R1)-NH-基は、(l)アミノ酸または(d)アミノ酸の残基であり、R1はHではない。
【請求項20】
R3がさらに、C1-4アルキル基および
【化6】

からなる群から選択されるキャップ形成基Zを有する、請求項19記載の化合物。
【請求項21】
ポリアルキレンオキシドが25,000〜45,000の分子量を有する、請求項19記載の化合物。
【請求項22】
治療上有効な量の請求項19〜21のいずれか1項記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項23】
有効量の請求項19〜21のいずれか1項記載の化合物を含む、哺乳動物における新生物疾患の治療、腫瘍量の減少、新生物転移の予防および腫瘍/新生物増殖の再発の予防のための医薬組成物。
【請求項24】
式:
【化7】

(式中、
Dはエステル形成性ヒドロキシル基を有する薬物の残基であり、
XはOまたはSであり、
R11およびR12は独立してHまたはCH3であり、
R3は20,000〜80,000の分子量を有するポリアルキレンオキシドである)
で表される化合物。
【請求項25】
前記ポリアルキレンオキシドが25,000〜45,000の分子量を有する、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
Dがタンパク質、酵素、ペプチド、抗腫瘍薬、心血管薬、抗新生物薬、抗感染薬、抗カビ剤、抗不安薬、胃腸薬、中枢神経系-活性化薬、鎮痛薬、排卵誘発剤、避妊薬、抗炎症薬、ステロイド剤、抗尿毒症薬、血管拡張薬および血管収縮薬からなる群から選択される、請求項24記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−100628(P2010−100628A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270416(P2009−270416)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【分割の表示】特願平10−510949の分割
【原出願日】平成9年8月20日(1997.8.20)
【出願人】(508299614)エンゾン,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】