高分子量プロドラッグの活性化の可能性
【課題】マスキング基および/または安定化基が大きい場合に、高い作用特異性、低い毒性、ならびに血液および/または血清、有利には哺乳動物における安定性を維持しつつ、その立体障害現象を除き、オリゴペプチドの切断を可能にするかあるいは促進させるプロドラッグ構造を提供する。
【解決手段】マスキング基および/または安定化基(例えばPEG)の間に“分子腕”または“分子スペーサー”を挿入する。
【解決手段】マスキング基および/または安定化基(例えばPEG)の間に“分子腕”または“分子スペーサー”を挿入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロドラッグの分野に関し、さらに特に、癌性腫瘍および/または炎症反応の治療および/または診断を目的とするプロドラッグの分野に関する。
【0002】
プロドラッグとは、その構造の化学的または酵素的修飾の後にin vivoで医薬品(活性な治療薬)へと変換され得る、薬理学的に不活性な分子のことである。プロドラッグは医薬品、即ちプロドラッグが変換されて生じる医薬品を、循環組織または非−標的組織ではなく、作用部位または標的組織へ放出することができる。また、プロドラッグはアントラサイクリン(例えばドキソルビシン)やビンカアルカロイドのような抗癌剤あるいはメトトレキサートのように抗炎症作用を有する抗癌剤等の治療薬のin vivoにおける治療指数(活性対毒性の比)を向上させることができる。それ故これまでにも、血液中および/または血清中での高い作用特異性、低い毒性ならびに改良された安定性を得る目的で、数種類のプロドラッグが開発されてきた。
【背景技術】
【0003】
従来より、治療薬の以下に示す基本構造を有するプロドラッグ、標的細胞の細胞外環境に存在する酵素により切断され得るオリゴペプチド、安定化基またはマスキング基は記載されている。
【0004】
国際公開第96/05863号のPCT特許明細書は特に、βアラニル−ロイシル−アラニル−ロイシル−ドキソルビシン(βALA−LEU−ALA−LEU−DoxまたはβALAL−Doxとも表記される)を記載している。このプロドラッグは血液中で安定、即ち血液中に含まれるペプチダーゼでは比較的切断されにくく、種々の腫瘍細胞周辺から分泌されるペプチダーゼではin vivoで再活性化される。このプロドラッグは腫瘍周辺の細胞外環境で連続的に加水分解されてAla−Leu−Doxとなり、更にLeu−Doxとなる。Leu−Doxは拡散により細胞内へ進入し、そこでドキソルビシン形へと活性化される(Trouet等、2001)。上記プロドラッグのin vivoにおける毒性および活性を調べると、ドキソルビシンそのものの場合よりも毒性が減少し腫瘍の増殖も顕著に抑制されることが分かる。しかし、薬物動態試験では腎排泄に係る半減時間が短いことが分かる。このプロドラッグは尿路経由で速やかに排泄されると考えられる(Dubois等、2002)。
【0005】
国際公開第00/33888号のPCT特許明細書は、βAla−Leu−Ala−Leu−Doxで表されるプロドラッグへβアラニンの陽電荷をマスクする基を付加することでその有効性を高める提案をしている。このマスキング基は例えばポリエチレングリコール(PEG)でよい。
【0006】
国際公開第01/91798号のPCT特許明細書は、改良された循環組織中で安定性を有するプロドラッグを記載している。例えば、プロドラッグはPEG化されていてよく、この場合PEGは安定化基および/またはマスキング基として使用されている。このポリマー(PEG)の結合はプロドラッグの薬物動態および薬力学特性を改善し、分子が大きくなるため腎排泄が減少する。実際、分子が大きいほどその排泄は遅くなる(Harris&Chess、2003)。
【0007】
本発明を導く研究の枠内で、出願者は、異なる大きさのPEGを使用してドキソルビシンのプロドラッグ(国際公開第96/05863号特許明細書に記載される)からPEG化したプロドラッグを製造し、化合物を大きくすることにより腎臓での限外濾過を減少させつつプロドラッグの特性(腫瘍細胞から分泌される酵素で再活性化される)を維持することを試みた。出願者は様々な大きさのPEG(分子量350〜20,000、その間をとって750、2000および5000)をプロドラッグβAla−Leu−Ala−Leu−Doxに結合させた。このプロドラッグのPEG化誘導体の再活性化を調べるためにin vitroで切断試験を実施した。この試験の目的は、腫瘍細胞(LS−174TおよびMCF−7/6)から分泌される酵素によるPEG化誘導体の再活性化を、癌細胞を含む調整培地の存在下にLeu−Doxへと加水分解されるβAla−Leu−Ala−Leu−Doxと比較して評価することである。これらの試験結果から、1)PEGの大きさにかかわらず、ペプチド配列(Ala−Leu−Ala−Leu)の切断による薬剤の再活性化は、PEG基を有さないプロドラッグほど効果がない、2)PEGの大きさとPEG化プロドラッグの切断との相関:結合するPEGが大きいほど、標的細胞の細胞外環境中の酵素によるプロドラッグの切断は少ない、ことが分かった。出願者は、プロドラッグのペプチド結合の切断が減少するのはおそらくPEGの立体障害現象のためであると仮定した。言い換えると、高分子量の安定化基またはマスキング基を含むプロドラッグであるほど再活性化されにくく、このことは半減期の長いプロドラッグの供給という課題に相反する。
【特許文献1】国際公開第96/05863号
【特許文献2】国際公開第00/33888号
【特許文献3】国際公開第01/91798号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は特に、マスキング基および/または安定化基が大きい場合に、高い作用特異性、低い毒性、ならびに血液および/または血清、有利には哺乳動物における安定性を維持しつつ、その立体障害現象を除き、オリゴペプチドの切断を可能にするかあるいは促進させるプロドラッグ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、マスキング基および/または安定化基(例えばPEG)の間に“分子腕”または“分子スペーサー”を挿入し、このペプチド配列が配列に“特異的”な酵素により切断され得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の分子スペーサー(以後“スペーサー”とも記載される)は、スペーサーを構成する単位の親水性を考慮して選択された。
【0011】
従って、本発明の最初の課題は、式(A)p−(E−B)n−(I)m:
(式中、
−Iは、標的細胞に対して有利に働く活性物質であり、
−Aは、血液循環時のB−Iの半減時間を延長させる基であり、
−E−Bは、AとIを連結させる基であり、
−Bは、単独で存在する酵素または好ましくは前記標的細胞の近くに存在するかあるいは標的細胞上に存在する酵素により、選択的に切断され得る構造であり、
−Eは、循環組織中で安定な親水性基であり、該基がBからAを引き離すことにより、前記標的細胞の近くまたは前記標的細胞上でのBの切断を可能にするか容易にし、その結果、Iの放出あるいは基Bを有するIの放出が可能になるか容易になる、
−nは、1から連結基E−Bが結合し得る反応基Iの全数までの、あるいは、連結基E−Bが結合し得る反応基Aの全数までの整数であり、
−mは、1から連結基E−Bが結合し得る反応基Aの全数までの整数であり、
−pは、1から連結基E−Bが結合し得る反応基Iの全数までの整数であり、
p=1の場合n=mであり、m=1の場合n=pである)
で示される化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について記載するが、第1の好ましい形態はp、nならびにmが1に等しい場合である。この化合物を以下、式A−E−B−Iと記す。
【0013】
本発明の第2の好ましい形態は、mが1に等しく、nとpとが同値且つ1より大きい場合である。この化合物を以下、式(A−E−B)t>1−Iと記し、この際、tは2から基A−E−B−が結合し得る反応基Iの全数までの整数を意味する。有利にIは、分子上で幾つかのA−E−B−基が枝分かれしているTNF−αサイトカイン分子のようなポリペプチドであってよい。
【0014】
本発明の第3の好ましい形態は、pが1に等しく、nとmとが同値且つ1より大きい場合である。この化合物を以下、式A−(E−B−I)k>1と記し、この際、kは2から基−E−B−Iが結合し得る反応基Aの全数までの整数を意味する。有利にAは、分子上で幾つかの−E−B−I基が枝分かれしている分枝型PEG分子のようなポリマーであってよい。
【0015】
本発明の第4の好ましい形態は、pとmとが1より大きく、nがpおよびmと異なっていてよい場合である。例えば、p=2、n=3、m=2の場合、化合物は以下の式で表せる:(I)−(B−E)−(A)−(E−B)−(I)−(B−E)−(A)。
【0016】
有利な活性物質(I)は、共有結合により1つ以上の構造Bと直接結合していてもよく、“連結腕”を介して間接的に結合していてもよい。例えば、構造Bがアミノ酸配列であり、これが有利な物質Iと直接結合している場合、その配向性に従ってアミノ酸配列のN−末端またはC−末端、あるいはオリゴペプチドの任意の部位(例えば1つのアミノ酸の側鎖)に共有結合が形成され得る。更に、BとIの間の結合が間接的である場合、連結腕は幾つかの官能基を有していてよく、その官能基によりB−I間の切断が容易になり、B−I間に適する化学結合手段が提供され、化合物の合成過程に改善がもたらされ、有利な物質(I)の物理的性質が向上し、有利な物質(I)の細胞内または細胞外放出に付加的なメカニズムが提供される。このような間接結合は、当業者に公知かつ任意の化学的、生化学的、酵素学的または遺伝学的結合方法により実施できる。このような連結腕として例えば、同種または異種官能性を有する架橋試薬、例えばサクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC);アルキル、アリール、アラルキルまたはペプチド基を有する二官能または多官能薬剤;エステル、アルデヒドまたはアルキル、アリールまたはアリールアルキル酸;無水物、スルヒドリル基またはカルボキシル基、例えば安息香酸マレイミル誘導体、プロピオン酸マレイミル誘導体およびサクシンイミジル誘導体;ブロモシアンまたはクロロシアン誘導基;カルボニルジイミダゾール、サクシンイミドエステルのチオカルボニルジイミダゾールまたはスルホン酸のハロゲン化物;ホスゲン、チオホスゲン;自己転位可能な(または“自己犠牲”の)スペーサーを挙げることができる(Schmidt等、2001)。
【0017】
本発明のスペーサー(E)は、基Aを構造Bへ結合させる。スペーサーは、親水性でありかつ循環組織中で安定なのが好ましい。
【0018】
スペーサーの20%未満、好ましくは10%未満、更に好ましくは2%未満が循環血中で(特に酵素により)分解または切断される場合、あるいは37℃のヒト血液中でスペーサーが2時間を越えて維持される場合、スペーサーは“循環組織中で安定である”とされる。有利なことに、基Aの構造Bからの離隔とその好ましい親水性の特徴とから、スペーサーは標的細胞の近くまたは標的細胞上で構造Bが切断されるのを可能にするかまたは容易にし、それにより、Iの放出またはB基を有するIの放出が可能になるかまたは容易になる。スペーサーは、1〜100個のアミノ酸に相当する長さであってよい。
【0019】
本発明の別の態様として、基Aの分子量に応じてスペーサーの大きさを変えることができる。この態様では、スペーサーが大きいほどAの分子量も大きい。
【0020】
本発明のスペーサーは、以下から選択される少なくとも1つの基で構成されるかまたはそのような基を含む:アミノ酸配列;ペプチドミメティック薬剤;偽ペプチド;ペプトイド;置換アルキル、アリールまたはアリールアルキル鎖;ポリアルキルグリコール;ポリサッカライド;ポリオール;ポリカルボキシラート;およびポリ(ヒドロ)エステル。またスペーサーは、これらの基を少なくとも2つ組み合わせて含んでもよい。
【0021】
本発明の有利な形態において、スペーサーは、立体配座Dの天然アミノ酸、遺伝学的にコードされていないアミノ酸または循環組織中に存在する酵素で切断できない合成アミノ酸、例えばβアミノ酸またはγアミノ酸等を含む群から選択される同種または異種アミノ酸1〜100個、好ましくは1〜20個、非常に好ましくは2〜10個で構成されるかまたはそのようなアミノ酸を含む。“立体配座Dの天然アミノ酸”とは遺伝暗号で正常にコードされているアミノ酸を意味し、天然では立体配座Lであるにもかかわらず立体配座Dへ合成されたアミノ酸のことではない。通常、遺伝子学的にコードされていないアミノ酸は、合成して製造したり天然物を原料に誘導したりできる。
【0022】
立体配座Dの天然アミノ酸のうち好ましいのは、以下から選択される親水性アミノ酸である:D−グルタミン、D−アスパラギン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−リジン、D−アルギニン、D−ヒスチジン、特に好ましくD−セリンおよびD−スレオニン。
【0023】
本発明の好ましい方法において、スペーサーは:(D−セリン)xまたは(D−スレオニン)xから選択される同種アミノ酸配列で構成されるかまたはそのようなアミノ酸配列を含み、この際、xは、1〜20の整数、好ましくは2〜10の整数、非常に好ましくは2〜6の整数である。
【0024】
特に、スペーサーは以下のものである:
(D−セリン)−(D−セリン)−(D−セリン)−(D−セリン)、これはD−セリル−D−セリル−D−セリル−D−セリルと表記されるのと同じである、
(D−スレオニン)−(D−スレオニン)−(D−スレオニン)−(D−スレオニン)、これはD−スレオニル−D−スレオニル−D−スレオニル−D−スレオニル−と表記されるのと同じである。
【0025】
本発明中アミノ酸は、当業者に公知の3文字のコードまたは1文字のコードのいずれかで表記される。
【0026】
基Aは、in vivoで、循環組織中でのB−Iの半減時間を延長する基である。この課題は、特に、Aが有利な物質Iまたは化合物B−Iの腎排泄を減少させる場合に達成され、ここで排泄とは、大きさに応じた化合物の腎臓での限外濾過を意味する。従って、化合物が大きいほど排泄は遅くなり、少なくとも50,000ダルトンの分子量を有する化合物は腎排泄されない。この課題も、本発明の化合物の肝代謝による分解を減少させることにより達成できる。言い換えると、半減期を延長するには、化合物の血中平均滞留時間を延長するかあるいは血液または血漿クリアランスを低下させればよい。
【0027】
“循環組織”とは、体液、特に血液を意味し、好ましくは哺乳動物の循環組織のことである。
【0028】
基Aは、親水性または両親媒性であるのが好ましい。
【0029】
循環組織中で安定な基A(即ち、式(A)p−(E−B)n−(I)mで表される化合物の20%未満、好ましくは2%未満が循環血中で(特に酵素により)分解または切断される場合、37℃のヒト血液中で前記化合物が2時間を越えて維持される場合)は、正常細胞に対して非毒性で、非−免疫抗原性で、非−凝集性またはマスキング性(即ち、プロドラッグから有利な物質(I)放出されるまで、細胞表面上で有利な物質(I)が作用するのを妨げる)であることが好ましい。
【0030】
有利に、基Aは、以下の特性を1つ以上有していてよい:連結基E−Bの非−特異的切断および/または分解を防止する;プロドラッグから有利な物質が放出されるまで有利な物質の生物学的作用を阻害する;循環組織中での化合物の安定性を向上させる;水、血液および/または血清中への式(A)p−(E−B)n−(I)mの化合物の可溶性(または可溶性を高める);式(A)p−(E−B)n−(I)mの化合物の標的細胞へのターゲティング特性(またはターゲティングを強化する)。
【0031】
“式(A)p−(E−B)n−(I)mで表される化合物の標的細胞へのターゲティング特性”とは、基Aが式(A)p−(E−B)n−(I)mの化合物の標的細胞の近くまたは標的細胞上での蓄積を可能にすることを意味する。このような基Aは“生物学的特異的”であると称され、即ち、このような基Aは特異的な生物学的相互作用を展開することができるので、生活系の生物学的実体として認識される。特に、抗体、抗原またはアミノ酸基(例えばアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD))のようなペプチドを基Aの表面に接木することにより、本発明の化合物が特定の細胞株表面へ付着するのを選択的に増加させることができる。基Aはまた、識別を目的とする好適な化学基により既存の高分子鎖を官能化して得られるかまたは官能性モノマーを共重合させて得られる生物学的特異的コポリマーを含んでよい。
【0032】
特に、基Aは以下から選択される:ポリペプチド(例えばポリグルタマート、ポリアスパルタート)、免疫グロブリン、アルブミン、ポリサッカライド、ポリマーまたはコポリマー。
【0033】
ポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチル−アスパナミド−フェノール、パルミトイル残基で置換されたポリ(エチレンオキシド)−ポリリジン、ポリ(乳酸)、ポリ(エプシロン−カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよび架橋性または両親媒性の配列型ヒドロゲルコポリマーが含まれてよい。
【0034】
基Aは、以下から選択されるのが好ましい:ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンイミンおよび塩化ビニルコポリマー。例えば、基Aが塩化ビニルコポリマーである場合、ポリマーが凝集活性を示さないようにするには、スルホナート基またはスルホナートならびにカルボキシラートの存在が必須である。
【0035】
基Aはまた、以下から選択されるのが好ましい:ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)、マレイン酸ナトリウムおよびマレイン酸ブチル(MMBE)、ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、メチルメタクリレート(MMA)、ポリ−[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン](PHEG)、およびポリ−[N−(ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド](PHEA)。
【0036】
基Aは特にポリエチレングリコール(PEG)であるのが好ましい。PEGの大きさは、200〜50,000Da、好ましくは350〜20,000Da、非常に好ましくは1,000〜10,000Daであってよい。このようなPEGの存在により、薬物動態特性(Duncan等、1994)および薬力学的特性が向上し、その結果、本発明の化合物の腎排泄を減少することができる。さらに従来技術で知られる別の利点として、PEGが腫瘍内に良好に蓄積し得ることが挙げられる。実際、104Da以上の分子量を有するPEGは正常組織よりも腫瘍内で顕著に蓄積することが知られている(Greenwald等、2003、Seymour等、1995)。
【0037】
基Aはまた治療活性を有する薬剤または診断活性を有する薬剤であってよい。
【0038】
有利に、診断活性を有する薬剤の特性を示す基Aは常磁性を持つ元素、即ち、その電子層内に単一電子を有する元素、特に磁気共鳴映像法(MRI)でコントラストを強化する、ガドリニウム、マンガンおよび鉄のような元素を有してよい。例として、鉄の結合したポリスチレンスルホナートが挙げられる。
【0039】
式(A)p−(E−B)n−(I)mで表される化合物の進行方向を標的細胞へ向けることが可能な1つ以上のターゲティング物質を利用した化合物も本発明の課題である。例えば、ターゲティング物質は、抗体、抗原およびリポソームであってよい。
【0040】
ターゲティング物質は、1つ以上の基Aで式(A)p−(E−B)n−(I)mの化合物と結合するのが好ましい。
【0041】
本発明において、構造Bは、単独で存在するかまたは好ましくは標的細胞環境中に存在する酵素により選択的に切断され得る。
【0042】
“標的細胞”とは特に、病理学的関与を示す細胞あるいは治療または診断の面で利点を有する細胞を意味する。このような標的細胞は、原発性または続発性(転移性)の腫瘍細胞、原発性または続発性腫瘍の間質細胞、腫瘍または転移腫瘍の血管新生内皮細胞、マクロファージ、単球、リンパ球または腫瘍および転移腫瘍に侵入できる多核体から成る群より選択されるのが好ましい。
【0043】
“選択的に切断可能”とは特に、切断されるべき配列が切断されることを意味する。言い換えると、切断されるべき配列は標的細胞環境中に存在する酵素によって認識されるのが望ましく、循環組織中や非−標的細胞付近ではわずかに分解されるかまたは全く分解されない。“標的細胞環境中で”という表現は、酵素が単独で存在するかまたは標的細胞の近くまたは標的細胞上に存在することを意味する。たとえ切断が標的細胞の近くまたは標的細胞上のみで生じているわけではなくとも、切断がどちらかといえば(あるいは多くの場合にまたはほとんどの事例で)標的細胞の近くまたは標的細胞上で起きているという事実があれば、切断は選択的であるとされることを注記しておく。言い換えると、生体の他の部位と比べて標的細胞の近くまたは標的細胞上で酵素が高濃度である場合、切断は選択的であると称される。
【0044】
更に“酵素”とは特に加水分解酵素を意味する。酵素はペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ、リソソーム酵素、リパーゼおよびグリコシダーゼから成る群より選択されてよい。
【0045】
本発明の好ましい方法において、酵素は腫瘍細胞、腫瘍の間質細胞、血管新生内皮細胞、マクロファージまたは単球に特異的なペプチダーゼである。“特異的酵素”とは、膜酵素であるかまたは標的細胞を含む細胞外培地に標的細胞のみから分泌されるかまたは大部分を標的細胞から分泌される酵素を意味する。例えば、酵素が腫瘍細胞に特異的である場合、後者はネプリリシン(CD10)、チメトリゴペプチダーゼ(TOP)、前立腺特異抗原(PSA)、プラスミン、レグマイン、コラゲナーゼ、ウロキナーゼ、カテプシン、および基質メタロペプチダーゼから成る群より選択されてよい。
【0046】
構造Bの選択は、もちろん、標的細胞環境中に存在する酵素に依存する。従って、酵素がペプチダーゼであれば、構造Bはそのペプチダーゼで切断され得るアミノ酸配列(またはオリゴペプチド)を含むと考えられる;酵素がグリコシダーゼ(例えばサッカラーゼ)であれば、構造Bはそのグリコシダーゼで切断され得るオリゴサッカライドを含むと考えられる;酵素がリパーゼであれば、構造Bはそのリパーゼで切断され得る脂質鎖を含むと考えられる、等。
【0047】
本発明の課題は、腫瘍細胞環境中に存在する酵素で選択的に切断され得るオリゴペプチドで構成されるかまたはそのようなオリゴペプチドを含む、好ましい構造Bである。このようなオリゴペプチドは2〜10個のアミノ酸を含むのが好ましく、3〜7個であれば更に好ましい。例えば、本発明の課題は以下の配列である(立体配座Lが好ましい):
Ala−Phe−Lys(SEQ ID No.1)、Ala−Leu−Ala−Leu(SEQ ID No.2)またはβAla−Leu−Ala−Leu、Ala−Leu−Lys−Leu−Leu(SEQ ID No.3)、Ala−Tyr−Gly−Gly−Phe−Leu(SEQ ID No.4)、His−Ser−Ser−Lys−Leu−Gln−Leu(SEQ ID No.5)、Gly−Pro−Leu−Gly−Ile−Ala−Gly−Gln(SEQ ID No.6)およびCys−Asp−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys(SEQ ID No.7)。
【0048】
しかし、当業者は腫瘍細胞に特異的な酵素により選択的に切断され得るその他のアミノ酸配列、例えば国際公開第96/05863号、第00/33888号、第01/68145号、第01/91798号、第01/95943号、第01/95945号、第02/00263号、第02/100353号、第02/07770号または第99/28345号のPCT特許明細書に記載されるアミノ酸配列を熟知している。
【0049】
本発明の酵素は構造Bを選択的に切断できるので、Iの放出または基Bを有するIの放出が可能となる。“基Bを有するIの放出”という表現について以下に例を挙げて説明する。構造Bがアミノ酸配列でその配列がAla−Leu−Ala−Leuであり、有利な物質がドキソルビシンであり(ここでB−IはAla−Leu−Ala−Leu−Dox)、酵素がCD10である場合、この酵素はAla−Leu−AlaとLeuとの間でアミノ酸配列を切断し、Leu−ドキソルビシンという生成物が放出されると考えられる。この生成物を“基Bを有するI”と定義する。
【0050】
“血液外再活性化”または“血液外区画での再活性化”とは、式(A)p−(E−B)n−(I)mで表される構造を有するプロドラッグのペプチド結合Bが、血液以外の任意の(例えば正常なまたは腫瘍の)臓器または組織中に存在する、好ましくは標的細胞に存在する、特異的エンドペプチダーゼにより切断されることを意味する。構造B(例えばペプチド)が切断されると、有利な物質Iの活性形(例えば治療薬)が放出される。
【0051】
“標的細胞に対して有利な活性物質(I)”とは、その作用部位が標的細胞の表面または内部に存在するかまたはその効果が標的細胞の表面または内部に影響を及ぼす物質を意味する。例えば、このような有利な物質を、化学薬品、ポリペプチド、たんぱく質、核酸(DNA、センスRNAまたはアンチセンスRNA、一本鎖または二本鎖、相補的DNA、妨害RNA等)、抗生物質、ウイルスまたは任意にベクター物質(例えば抗体)を結合させたマーカーから成る群より選択できる。
【0052】
前記の有利な物質(I)は治療活性を有する薬剤であることが好ましく、抗−腫瘍性、抗−血管新生性または抗−炎症性の治療活性を有する薬剤であれば更に好ましい。このような薬剤は標的(例えばレセプター)を有するかまたは細胞外ないし細胞内に作用部位を有していてよい。このような薬剤はまた、貫通するペプチド配列、例えばPCT特許明細書番号WO01/64738に記載される配列を含んでいてよい。例えばIは以下のものを含む抗−腫瘍性治療活性を有する薬剤の群から選択される:ビンカアルカロイド、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン;タキサンまたはタキソイド、例えばパクリタキセル、ドセタキセル、10−デアセチルタキソール、7−epi−タキソール、バッカチンIII、レキシロシルタキソール;アルキル化剤、例えばイホスファミド、メルファラン、クロロアミノフェン、プロカルバジン、クロランブシル、チオホスホルアミド、ブスルファン、ダカバジン(DTIC)、ミトマイシンCを含むミトマイシン、ニトロソ−ウレアおよびその誘導体(例えばエストラムスチン、BCNU、CCNU、フォテムスチン);白金誘導体、例えばシスプラチン等(例えばカルボプラチン、オキザリプラチン);代謝拮抗物質、例えばメトトレキサート、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、ラルチトレキセド、シトシンアラビノシド(またはシタラビン)、アデノシンアラビノシド、ゲムシタビン、クラドリビン、ペントスタチン、フルダラビンホスファート、ヒドロキシウレア;トポイソメラーゼIまたはIIの阻害剤、例えばカンプトテシン誘導体(例えば、イリノテカンおよびトポテカンまたは9−ジメチルアミノメチル−ヒドロキシ−カンプトテシン塩酸塩)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、アムサクリン;ミトキサントロン;L−カナバニン;抗生物質、例えばアントラサイクリン、例えばアドリアマイシンまたはドキソルビシン、THP−アドリアマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ルビダゾン、ピラルビシン、ゾルビシンおよびアクラルビシン、アントラサイクリンの類似体、例えばエピアドリアマイシン(4‘エピ−アドリアマイシンまたはエピルビシン)、ミトキサントロン、ブレオマイシン、アクチノマイシンDを含むアクチノマイシン、ストレプトゾトシン、カリケアミシン、デュオカルマイシン、コンブレタスタチン;L−アスパラギナーゼ;ホルモン;アロマターゼの純粋な阻害剤;アンドロゲン、LH−RHの類似体−拮抗剤;サイトカイン、例えばインターフェロンα(IFN−α)、インターフェロンγ(IFN−γ)、インターロイキン1(IL−1)、IL−2、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12、IL−15、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、IGF−1拮抗剤(インシュリン様成長因子);プロテアソーム阻害剤;ファルネシル−トランスフェラーゼ阻害剤(FTI);エポチロン;メイタンシノイド;ディスコデルモライド;フォストリエシン;BH3ペプチド;P53ペプチド;カスパーゼ;グランザイムB;リボザイム;モノクローナル抗体、例えばリツキシマブ、タスツズマブ;チロシンキナーゼの阻害剤、例えばSTI571(イマチニブメシレート);アンドスタチン;たんぱく質、ペプチドおよび抗炎症性サイトカイン。
【0053】
“マーカー”とは、酵素、抗体、蛍光またはリン光性化学分子、シンチグラフィーで使用できる分子を意味する。例えば、クマリン、7−アミド−トリフルオロメチルクマリン、パラニトロアニリド、8−ナフチルアミドおよび4−メトキシナフチルアミド、フルオロセイン、ビオチン、ローダミン、テトラメチルローダミン、GFP(緑色蛍光たんぱく質)、放射性同位体としてシンチグラフィーで使用される薬剤、およびこれらの化合物の誘導体である。
【0054】
更に本発明の課題は、製薬学的に入手可能な本発明の化合物の塩基性または酸性の付加塩、水和物、溶媒和物、前駆体、代謝物または立体異性体である。
【0055】
“製薬学的に入手可能な塩”とは、本発明の化合物の遊離塩基と好適な有機酸または無機酸とを反応させることにより一般に製造可能な、本発明の化合物の非−毒性塩を意味する。これらの塩は遊離塩基の生物学的効力および特性を保持している。このような塩の代表例として以下のものが挙げられる:水溶性塩および水不溶性塩、例えばアセタート、アンソナート(4,4−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホナート)、ベンゼンスルホナート、ベンゾナート、ビカルボナート、ビスルファート、ビタルトラート、ボラート、ブロミド、ブチラート、カルシウムエデタート、カンシラート、カルボナート、クロリド、シトラート、クラバラリアート、ジクロロハイドレート、エデタート、エジシラート、エストラート、エシラート、フマラート、グルセプタート、グルコナート、グルタマート、グリコリルアルサニラート、ヘキサフルオロホスファート、ヘキシルレゾルシナート、ヒドラバミン、ブロモハイドレート、クロロハイドレート、ヒドロキシナフトアート、イオジド、イソチオナート、ラクタート、ラクトビオナート、ラウラート、マラート、マレアート、マンデラート、メシラート、メチルブロミド、メチルニトラート、メチルスルファート、ムカート、ナプシラート、ニトラート、3−ヒドロキシ−2−ナフトアート、オレアート、オキサラート、パルミタート、パモアート(1,1−メチレン−ビス−2−ヒドロキシ−3−ナフトアート、エンボアート)、パントテナート、ホスファート/ジホスファート、ピクラート、ポリグルクロナート(例えばポリガラクトウロナートおよびポリグルクロナート)、プロピオナート、p−トルエンスルホナート、サリチラート、ステアラート、スバセタート、サクシナート、スルファート、スルホサリチラート、スラマート、タンナート、タルトラート、テオクラート、トシラート、トリエチオジド、バレラートおよびN−メチルグルカミンアンモニウム塩。
【0056】
本発明の課題はまた、活性成分として、本発明の化合物を少なくとも1つ含有する組成物である。更に、そのような組成物を、生物学、製薬、化粧品、農業、診断または追跡に関係のある配合品および製品に利用することも、その課題である。
【0057】
さらに特に本発明の課題は、本発明の化合物を少なくとも1つ含有する製剤であり、この際、前記製剤は製薬学的に入手可能な賦形剤、ベクター、希釈剤または医薬品添加剤を組み合わされていてよい。
【0058】
被験者は、本発明の化合物を製薬学的有効量で投与され得る。“製薬学的有効量”とは、従事する研究者や医者が、組織、系、動物または人間に生物学的または医学的レスポンスをもたらすことができると期待する量を意味する。
【0059】
前記組成物はまた、治療法を改善し治療範囲を拡大する目的で、本発明の化合物と一緒に別の医薬活性成分を少なくとも1種または当業者に公知の補助剤(ビタミンC、抗酸化剤等)を少なくとも1種含有するかまたは組み合わされていてよい。
【0060】
この組成物は極めて僅かな毒性しか有さないかまたは毒性が無いので非常に有用である。
【0061】
本発明の製剤は例えばウイルス感染症、転移、細胞アポトーシス(変性疾患、組織虚血等)、感染症(ウイルス感染症、細菌感染症、真菌症等)、癌および異常血管新生の予防または治療の目的で、in vivoで使用できる。
【0062】
本発明の化合物の投与は、治療薬に可能な任意の投与方法で実施できる。そのような方法には、全身投与、例えば経口、経鼻、非経口または局所投与、例えば経皮吸収または中枢投与、例えば頭蓋内への外科的経路を介した投与、または眼内への投与が含まれる。
【0063】
経口投与は、錠剤、カプセル剤、軟カプセル剤(遅延放出型または延長放出型製剤を含む)、ピル、粉剤、顆粒剤、エリキシル剤、染色剤、座剤、シロップ剤および乳剤を用いて実施できる。提示した剤形はまた、腸管バリアの通過に特に好適である。
【0064】
非経口投与は、通常、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射または潅流により実施される。注射可能な組成物は一般的な剤形、すなわち懸濁剤または液剤、あるいは液体へ即時溶解できる固形剤の形に製造できる。
【0065】
非経口投与では、例えば米国特許第3710795号明細書に記載されるように、一定用量を維持できる徐放型または延長放出型の系を導入してよい。
【0066】
鼻腔内投与の際、適する鼻腔内用賦形剤を使用できる。
【0067】
経皮吸収の際、当業者に公知の経皮性の皮膚パッチを使用できる。経皮放出システムでは持続投与が可能である。
【0068】
その他の好ましい局所製剤には、クリーム、薬用軟膏製剤、ローション、エアゾールスプレーおよびゲルが含まれる。
【0069】
指定の投与方法に応じ、化合物は固体、半−固体または液体であってよい。
【0070】
錠剤、ピル、粉剤またはそのままの状態の顆粒またはカプセルに装入された顆粒のような固体製剤では、活性成分を医薬品添加剤と組み合わせることができる、例えば:a)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムおよびカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;c)結合剤、例えばマグネシウムシリカートおよびアルミニウムシリカート、でんぷんペースト、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、必要であれば炭酸ナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドンを含むカルボキシメチルセルロース、d)崩壊剤、例えばでんぷん、アガー、アルギン酸またはそのナトリウム塩、あるいは発泡剤;および/またはe)吸収剤、着色剤、芳香剤および甘味料。
【0071】
座剤のような半−固体製剤では、医薬品添加物として、例えば脂肪性の乳濁液または懸濁液あるいはポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコールをベースとする添加物を使用できる。
【0072】
液体製剤、中でも注射用または軟カプセル装入用の液体製剤は、本発明の化合物を例えば、水、塩化ナトリウム(Nacl)生理食塩液、生理学的血清、含水性デキストロース、グリセロール、エタノール、油のような製薬学的に純粋な溶剤に溶解したり分散させる等して製造できる。
【0073】
本発明の化合物はまた、リポソームまたはリポプレックス型放出系の形体、例えば小さな単層小胞、大きな単層小胞および多層小胞の形体で投与できる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルクロリンを含む様々なリン脂質から形成され得る。1つの形態として、米国特許第5262564号に記載されるように、液体成分のフィルムを医薬品水溶液で水和して医薬品を封入した脂質層を形成することができる。
【0074】
本発明の組成物は滅菌が可能であり且つ/または無毒性の補助剤および補助物質、例えば保存剤、安定剤、湿潤剤または乳化剤;溶解促進剤;浸透圧を調節するための塩類および/またはバッファーを含有してよい。更に治療上の利点をもたらす別の物質を含有してもよい。組成物は、個々に、一般的な混合、造粒、被覆方法を経て製造される。
【0075】
本発明の化合物の投与量は、被験体の種類、系統、年齢、体重、性別および医学的症状;治療すべき症状の重症度;投与法;被験体の腎機能および肝機能の状態および使用する化合物または塩の性質を含む、様々なy因子に応じて選択される。通常、経験をつんだ医師または獣医師であれば、治療すべき医学的症状の進行を防いだり、妨げたり、食い止めたりするのに必要な化合物の有効量を容易に決定し処方することができると考えられる。
【0076】
前記した任意の製剤は、活性成分を0.1〜99%、好ましくは1〜70%含有する。
【0077】
例えば、所望の結果を得るために使用される本発明の化合物の経口投与量は、経口で0.05〜5000mg/日、好ましくは5〜1000mg/日の範囲であると考えられ、活性成分を0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100.0、250.0、500.0および1000.0mg含む錠剤の形体で投与されるのが好ましい。非経口投与では、本発明の化合物の有効レベルは、体重1kgおよび1日あたり0.002mg〜500mgの範囲であると考えられる。
【0078】
本発明の化合物は、1日1回の形式で投与してもよくあるいは1日の全体量を日に2、3ないし4回に分割して投与してもよい。
【0079】
特に、本発明は、本発明の化合物の少なくとも1つから構成されるかまたは本発明の化合物の少なくとも1つを含む、in vitroで使用される、診断用医薬品に関する。本発明の化合物はさらに、有利な物質(I)としてマーカーを有する。このような診断用医薬品はin vivoでも使用できる。
【0080】
従って、本発明の課題は、前記診断用医薬品を含む診断用キットでもある。特にこの診断用キットは、1つ以上のコンテナ中に、本発明の組成物を所定量含有する。
【0081】
本発明の他の利点および特徴は以下の実施例で例証することにより明らかにされ、その際、以下の図面を参照すること。
【0082】
図1は、ドキソルビシンのPEG化プロドラッグの2つの合成方法の概略を示す図である。
【0083】
図2は、MCF−7/6細胞に対するドキソルビシン、βALAL−Dox、PEG2000−βALAL−Dox、PEG2000−DSer−βALAL−DoxおよびPEG2000−(DSer)4−βALAL−Doxの細胞毒性試験を示す図である。細胞生存率は、細胞生存試験(WST−1、Roche Molecular Diagnostic)で評価した。グラフ2A、B、C、DおよびEは、それぞれ、ドキソルビシン(A)、βALAL−Dox(B)、PEG2000−βALAL−Dox(C)、PEG2000−DSer−βALAL−Dox(D)およびPEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox(E)の濃度の対数に対するMCF7/6株細胞の生存率(コントロールに対する%)を示している。
【0084】
図3は、LS−174−T腫瘍を持つ異種移植マウスの平均体重の変動をグラフで示している。結果は処理時に測定した体重に対するパーセンテージで表記されている:(●)NaCl、(■)ドキソルビシン6.69μmol/kg、(▲)ドキソルビシン8.6μmol/kg、(○)Su−βALAL−Dox45μmol/kg、(+)Su−βALAL−Dox50μmol/kg、(×)PEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox 1×45;3×25μmol/kg、(*)PEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox 1×50;3×35μmol/kg。
【0085】
図4は、コントロール(NaCl)に対して薬剤を処理したLS−147−Tヒト結腸癌腫瘍を持つ無胸腺マウス群の相対腫瘍体積(RTV)の平均値の変動を、各日処理を始めた日を基準にしたパーセンテージでグラフ表記した図である:(●)NaCl、(■)ドキソルビシン6.69μmol/kg、(▲)ドキソルビシン8.6μmol/kg、(○)Su−βALAL−Dox45μmol/kg、(+)Su−βALAL−Dox50μmol/kg、(×)PEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox 1×45;3×25μmol/kg、(*)PEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox 1×50;3×35μmol/kg。
【0086】
図5は、NaCl0.9%(w/v)溶液をコントロールとして、ドキソルビシン(Dox)、PEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox、Su−βALAL−Doxをそれぞれ6.69μmol/kg、1×50+3×35μmol/kg、50μmol/kgで投与した場合のLS−174T腫瘍の第1増殖期および第2増殖期の阻害を比較する図である。全てのマウスは、0、7、14および21日目に4回の静脈内注射を受けた。相対腫瘍体積(RTV)の平均値の最小T/C率(T/Cmin.)は、最大効果の指標である。コントロール群に対して薬剤処理された群のRTVの平均値の倍加時間の差(T−C)ならびにSGD(特異的増殖遅延)は、増殖期の直線回帰から算出され、EORTCの定めた判断基準に沿って活性度を決定する。コントロール群に対する薬剤処理群のRTV平均値の変動の回帰勾配(T/C勾配)の直線比率は、パーセントで表記され、増殖率比較パラメータを用いて求められる。
【0087】
図6は、血清培地中での、βALAL−Dox(A)、PEG2000−βALAL−Dox(B)およびPEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox(C)のin vitro中における安定性試験の図である。結果は、時間毎のHPLCで測定された複合体濃度を示している。
【0088】
図7は、化合物ALAL−Dox(A)、βALAL−Dox(B)、PEG2000−βALAL−Dox(C)およびPEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox(D)のヒト全血中での安定性試験の図である。結果は、時間毎のHPLCで測定された複合体および形成され得る代謝物の濃度の変動を示している。
【0089】
図8は、HCT−116ヒト結腸癌腫瘍を持つ無胸腺マウスの平均体重の変動をグラフで示した図である。結果は薬剤処理時に測定した体重に対するパーセンテージで表記されている:(●)NaCl、(+)Su−βALAL−Dox30μmol/kg;(▲)PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox53μmol/kg;(*)PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox110μmol/kg。
【0090】
図9は、薬剤処理群(T)とコントロール群(C)のRTV平均値の比の変動からHCT−116腫瘍の増殖阻害を示したものであり、パーセンテージ(T/C(%))で表記される。処理:(●)NaCl、(+)Su−βALAL−Dox30μmol/kg;(▲)PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox53μmol/kg;(*)PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox110μmol/kg。
【0091】
図10は、HCT−116腫瘍を持つ異種移植マウスの生存率の変動をグラフで示した図である(%で表記)。処理:NaCl(−●−)、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox200μmol/kg(……▲……)、300μmol/kg(−−▲−−)、400μmol/kg(−▲−);PEG2000−ALAL−Dox200μmol/kg(……■……)、300μmol/kg(−−■−−)、400μmol/kg(――■――)。
【0092】
図11は、薬剤処理群(T)とコントロール群(C)のRTV平均値の比の変動からHCT−116腫瘍の増殖阻害を示しており、パーセンテージ(T/C(%))で表記される。:NaCl(−●−)、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox200μmol/kg(……▲……)、PEG2000−ALAL−Dox200μmol/kg(……■……)。
【0093】
図12は、B16−BL6(%)メラノーマ腫瘍を持つ移植マウスの生存率の変動をグラフで示した図である。薬剤処理:コントロールPBS(●);(PEG5000−ALAL)n−TNFα(■);(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n―TNFα(▲);(PEG5000)n−TNFα(◆)。
【0094】
図13は、B16−BL6メラノーマ腫瘍を持つ移植マウスの平均体重の変動をグラフで示した図である。結果は薬剤処理時に測定した体重に対するパーセンテージで表記される。コントロールPBS(●);(PEG5000−ALAL)n−TNFα(■);(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFα(▲);(PEG5000)n−TNFα(◆)。
【0095】
図14は、薬剤処理群(T)とコントロール群(C)のRTV平均値の比の変動からB16−BL6腫瘍の増殖阻害を示しており、パーセンテージ(T/C(%))で表記される。:コントロールPBS(●);(PEG5000−ALAL)n−TNFα(■);(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFα(▲);(PEG5000)n−TNFα(◆)。
【0096】
実施例1:材料および方法
1.1)細胞株
MCF7/6細胞:1970年に肺の線癌を患う患者の胸水から得たMCF−7株(Michigan Cancer Foundation、Engel等、1978)の変異株(Soule等、1973)。この細胞はゲントにあるマリール教授の研究室(Experimental Cancerology Laboratory、ゲント大学病院、ベルギー)から入手される。
【0097】
LNCap細胞:1977年にホロゼヴィック(Horoszewic)等により、転移性の前立腺癌を患う患者の鎖骨上リンパ節の生検材料から単離された。この株はATCC(American Type Culture Collection、USA)から入手される。
【0098】
LS−174T細胞株:結腸癌を患う女性から得たLS180株の変異株である。この細胞は無胸腺マウスに接種すると非常に速い速度で腫瘍を形成する。この細胞はECACC(European Collection of Cells Cultures、UK)から入手される。
【0099】
HCT−116株:ヒト結腸の癌細胞の一次培養物から樹立した細胞株。この細胞は無胸腺マウスに皮下注射すると腫瘍を形成する。この細胞はATCC(American Type Culture Collection、USA)から入手される。
【0100】
1.2)化学療法試験に使用する抗癌剤
ドキソルビシンは、明治製菓株式会社(東京、日本)から提供され;サクシニル−βAla−Leu−Ala−Leu−ドキソルビシン(Su−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox)(Fernandez等、2001)、PEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu−DoxおよびPEG2000−(DSer)4−Ala−Leu−Ala−Leu−Doxは合成した。
【0101】
1.3)動物
NMRIまたはSWISSの雌のマウス、ヌード/ヌード(JANVIER飼育施設から輸送後5週間)を使用した。
動物の取り扱いは、その使用および実験的化学療法試験中の動物の健康に関し、UKCCCR(United Kingdom Coordinating Committee on Cancer Research;Workman等、1998)およびFELASA(Federation of European Laboratory Animal Science Associations;Nicklas等、2002;Rehbinder等、2000;Rehbinder等、1996)の推奨する方法に従って実施した。
【0102】
2)ドキソルビシンのPEG化誘導体型プロドラッグの合成
ドキソルビシンのPEG化誘導体型プロドラッグの合成は、2つの異なる方法“A”および“B”で実施された(図1)。
【0103】
2つの方法のいずれかで合成されたドキソルビシンのPEG化誘導体型プロドラッグは以下のものである:
−PEG2000−(DSer)4−βAla−Leu−Ala−Leu-ドキソルビシン
(1)
−PEG2000−(DSer)4−Ala−Leu−Ala−Leu-ドキソルビシン(2)
−PEG2000−(DSer)−βAla−Leu−Ala−Leu-ドキソルビシン(3)
−PEG2000−βAla−Leu−Ala−Leu-ドキソルビシン(4)
−PEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu-ドキソルビシン(5)。
【0104】
化合物1、3および4は方法“A”で合成され、化合物2および5は方法“B”で合成された。
【0105】
注記:Ala−Leu−Ala−Leu−ドキソルビシンおよびβAla−Leu−Ala−Leu−ドキソルビシンプロドラッグは特許明細書WO96/05863に記載されていた。
【0106】
2.1)合成法“A”
方法の原理は、NH2−ペプチド−ドキソルビシン化合物の溶液中でのPEG化である。クロロホルム/メタノール混合物(4:1)に溶解したmPEG2000−SPA(mPEG2000−サクシンイミジルプロピオナートエステル)1.5mol等量(Nektar)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)5μlを、クロロホルム/メタノール混合物(4:1)に溶解したNH2−ペプチド−ドキソルビシン生成物(合成法の3工程を実施後に予め得られている生成物、図1参照)へ添加する。
【0107】
約48〜72時間後、反応の最終生成物をHPLCクロマトグラフィーを用いて分析する(以下の段落2.2参照)。
【0108】
生成物(3)および(4)をpH4(乳酸を使用)でジクロロメタンを用いて抽出する。生成物は有機相に蓄積する、これを真空蒸着により濃縮し、その後、凍結乾燥させる。
【0109】
2.2)合成法“B”:Fmoc(フルオロエニル−Lメトキシカルボニル)化学による固形物質上でのペプチド合成(SPPS)
方法の原理は、固形ポリマー物質(Wang型樹脂)上でのPEG化ペプチド配列の合成とその後のPEG2000−ペプチド−OH生成物とドキソルビシンの結合である。
【0110】
SPPSの原理は、所定のペプチドの様々なアミノ酸を固相物質(Wang型樹脂)へ連続的に結合させることであり、当業者に公知の方法で実施される(Merrifield、1963および1965;StewardおよびYoung、1969)。
【0111】
固相物質上でのペプチド合成
合成ペプチドは例えば、手動合成反応装置(AnaSpec)中で、Fmoc基を用いる化学的手段を利用し、固相物質上でペプチド合成することにより取得される。固相物質上の合成で使用される全ての樹脂(AnaSpecまたはNovabiochem)はWang型樹脂であり、この樹脂は、供給業者が最初の置換で樹脂1gに対して0.4〜0.7mmolとなるよう予め結合させた第1の保護アミノ酸を有する。Fmocアミノ酸はAnaSpecまたはNovabiochemから提供され、側鎖に保護基を有している、例えば:トリチル(Asn,Cys、Gln、およびHis)、Acm(Cys)、Boc(LysおよびTrp)、O−tert−ブチル(AspおよびGlu)、tert−ブチル(Ser、Thr、Tyr)およびPbf(Arg)。所望の分子量を有する様々なポリエチレングリコール(PEG−SPA)は、Nektarから予め活性化したヒドロキシサクシンイミジル(OSu)エステルの形で入手される。Fmoc基の脱保護はジメチルホルムアミド(DMF)中でピペリジンを処理することにより実施される。合成時に使用される結合剤は、DMF中のHCTU(1H−ベンゾトリアゾイウム1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5クロロヘキサフルオロホスファート(1−)の3−オキシド)またはHBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,−1,3,−3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)またはHATU(O−(7―アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,−N,−N’,−N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)である。一般的なアミノ酸結合サイクルを以下のようにして実施する:3×30秒、DMFで洗浄;3×2分、次に1×7分、DMFで20%に希釈されたピペリジンを用いて脱保護;5×20秒、DMFで洗浄;2×15分、アミノ酸(2等量)、結合剤(2等量)およびDIPEA(4等量)を用いて結合、その後3×30秒DMFで洗浄。市販時当初の樹脂が有する置換基を、所望の配列に応じて、結合すべき第1Fmoc−AA−OH 0.5〜0.3モル等量を添加することにより還元し(最終的に望ましいとされる置換基の割合は0.1〜0.22mmol/g)、残るアミノ基をアセチル化する(Virender等、1981)。各アミノ酸の結合を、当業者に公知のカイザー試験(Kaiser等、1970)により確認する。全てのアミノ酸が所望の配列に応じて結合した後、2×2日間、活性エステルPEG−SPA(Nektar)およびDIPEAを結合させることにより、Wang型固相物質上でPEG化が起こる。
【0112】
Wang型固相物質へPEG化ペプチドを結合させている共有結合の化学的切断は、トリフルオロ酢酸(TFA):水:トリイソプロピルシラン(TIS)を95:2.5:2.5で含む混合物を、手動合成反応装置中の完全に乾燥した樹脂へ3時間添加することにより実行される。PEG化ペプチドを冷エタノールで沈殿させ、遠心し、エタノールで洗浄し、凍結乾燥させる。
【0113】
HPLCクロマトグラフィーによる分析
VYDAC−タイプのカラム(逆相)(C8.5μm、250×4.6mm)を用い、トリフルオロ酢酸(TFA)の水中0.1%溶液を第1溶離液(溶離液A)ならびにTFAのアセトニトリル(ACN)中0.1%溶液を第2溶離液(溶離液B)とし、25分間に溶離液Bを0%〜70%の勾配をかけて流すことにより、酸ペプチドを分析した。
【0114】
2.3)合成例:PEG2000−(DSer)4−Ala−Leu−Ala−Leu-ドキソルビシン(2)およびPEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu−ドキソルビシン(5)の合成
ドキソルビシン1.2モル等量、DMF中に溶解したHClおよびDIPEA3.2モル等量を、固相物質上で合成して得られたPEG2000−ペプチド−OH(PEG2000−(DSer)4−Ala−Leu−Ala−Leu−OHまたはPEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu−OH)へ添加する。混合物を遮光し、周囲温度で15分撹拌し、HATU(結合剤、PE Biosystem)1.3モル等量を添加する。HPLCクロマトグラフィー分析(前記項目2.3参照)まで、反応を約3時間実施する。反応終了時、溶剤を真空蒸発させる。残った生成物を水に取り込み、ジクロロメタンで抽出する。生成物(5)は最初に水相へ回収されるが、生成物(2)はむしろ有機相へ蓄積する。生成物(2)を含む有機相を真空蒸着により濃縮し、生成物を周囲温度でエーテル中に沈殿させる。得られた沈殿物を水に溶かし、凍結乾燥させる。生成物5を含む水相を回収し、アセトンとドライアイスから成る浴中で凍結させ、次いで凍結乾燥する。凍結乾燥させる前に、生成物をHPLCで分析した(前記項目2.2参照)。
【0115】
3)細胞培養に用いる生成物溶液の調製
in vitroでの細胞培養実験に使用する生成物はドキソルビシン、βAla−Leu−Ala−Leu−ドキソルビシン、PEG2000−(DSer)4−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(1)、PEG2000−(DSer)−βAla−Leu−Ala−Leu-Dox(3)、PEG2000−βAla−Leu−Ala−Leu-Dox(4)、PEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu−Dox(5)である。
【0116】
生成物を、極僅かな水に溶解し、穴の大きさが0.22μmのダイ(dye)を通して濾過滅菌する。溶液の濃度は吸光度を測定して判断する(ドキソルビシンのモル吸光係数に基づいて495nmで測定、ε=10837M−1cm−1)
【0117】
4)細胞培養
下記の実験に使用する培地は、ウシの胎児血清10%を含むグルタマックス−1を含有するRPMI 1640培地である(SBF:Gibco−BRL)。
【0118】
5)細胞毒性試験
ドキソルビシンおよび誘導体の細胞毒性試験は、MCF−7/6細胞およびLNCaP細胞を用いて実施した。
【0119】
細胞をトリプシンで剥離し、計数し、血清培地200μlの入った96穴プレートへ接種する。
【0120】
細胞を37℃で24時間インキュベートし、試験用の生成物を添加する:
ドキソルビシン、
βAla−Leu−Ala−Leu−Dox、
PEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu−Dox(5)、
PEG2000−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(4)
PEG2000−DSer−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(3)
PEG2000−(DSer)4−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(1)
これを血清培地で様々な濃度に希釈する。種々の化合物の存在下に48時間インキュベートした後、細胞を最後に血清培地のみの存在下に37℃で24時間ポスト−インキュベートする。このインキュベートの後、細胞の生存率試験を行う(WST−1、Roche Molecular Biochemical)。
【0121】
6)ドキソルビシンのPEG化誘導体プロドラッグの安定性および加水分解試験
6.1)ドキソルビシンのプロドラッグβALAL−Doxが腫瘍細胞から分泌されるペプチダーゼにより再活性化される際の、PEG化の効果
腫瘍細胞(MCF−7/6、LS−174T、LNCaP)を混合して継代培養したものを食塩加リン酸バッファー溶液で2回洗浄し、血清を含まずウシ血清アルブミン0.02%を含む新しい培地を添加する(100μl/cm2)。24時間のインキュベーションの後、調整培地を除き、300gで10分遠心し、1MのTris−HClバッファー(pH7.5)で緩衝させ(バッファー1体積+培地19体積)、限外濾過で20回濃縮する(濾過限界は10kDa)(Tris:トリスヒドロキシメチル−アミノメタン)。
【0122】
腫瘍細胞が分泌するペプチダーゼによる、ドキソルビシン誘導体(βALAL−Dox)のPEG化ペプチドプロドラッグの再活性化を、最初のプロドラッグであるβALAL−Doxの再活性化と比較する、この際、βALAL−Doxは腫瘍細胞で調整された培地でインキュベートする間にLeu−Doxとドキソルビシンとに加水分解される。化合物を調整培地で20μmolに希釈し、恒温浴で37℃で6〜18時間インキュベートする。化合物の加水分解をHPLC分析で定量化する(下記項目7.1参照)
【0123】
以下のPEG化プロドラッグを使用する。
PEG350−βALAL−Dox
PEG750−βALAL−Dox
PEG2000−βALAL−Dox
PEG5000−βALAL−Dox。
【0124】
6.2)培地での安定性
PEG2000−(DSer)4−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(1)、PEG2000−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(4)およびβAla−Leu−Ala−Leu−Dox(コントロール)を、ウシ胎児血清10%を含有する培地(血清培地)500μlで20μmolに希釈する。サンプルを24穴プレートに分配し、CO2 5%を含む飽水雰囲気下に37℃でインキュベートする。各生成物に関し、抽出(アセトニトリルを用いた抽出法、下記項目7.3参照)を、0時間、インキュベート後の1、2、6および24時間の時点で、三重反復試験の形で実施する。サンプルを次にHPLCクロマトグラフィーで分析する(下記項目7.3参照)。
【0125】
6.3)ヒト全血での安定性
PEG2000−(DSer)4−βAla−Leu−Ala−Leu−ドキソルビシン(1)、PEG2000−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(4)、βAla−Leu−Ala−Leu−DoxおよびAla−Leu−Ala−Leu−Doxをヒト全血(採取後、5mlの滅菌済みクエン酸入りチューブに4℃で保存)500μlで20μmolに希釈する。サンプルを含むチューブを37℃でインキュベートする。各生成物の抽出(アセトニトリルを用いた抽出法、下記項目7.3参照)を、0時間、インキュベート後の1、2、4および6時間の時点で、三重反復試験の形で実施する。
【0126】
7)分析法
7.1)基礎的な抽出
抽出すべきサンプル25μl、水500μlおよび内部標準(プロリル−ダウノルビシン3.45μmol)100μlを、有機クロロホルム/メタノール混合物(4:1)2.5mlを含むチューブへ添加する。塩基性バッファー(0.5Mボラートバッファー600μl、pH9.8)の添加後、チューブを速やかに5秒撹拌し、1800gで10分遠心する。
【0127】
有機相を回収し、空気流の下で乾燥させる。アセトニトリル30%およびアンモニウムホルマートバッファー(pH4)10%を含む混合物500μlを添加して、サンプルを溶解する。次いでサンプルを濾過し、HPLCクロマトグラフィーで分析する(下記項目7.3参照)。
【0128】
7.2)アセトニトリルによる抽出
内部標準(プロリル−ダウノルビシン)10μlおよび50μmolのアセトニトリル150μlを、抽出すべきサンプル50μlの入ったチューブへ添加する。チューブを撹拌し、13000gで10分遠心する。上清をホルマートバッファー(pH4)で4倍希釈し、遠心し、HPLCクロマトグラフィーで分析する(下記項目7.3参照)。
【0129】
7.3)HPLCによるクロマトグラフィー分析
全ての生成物サンプル(PEG2000−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(4)、PEG2000−(DSer)4−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(1)、PEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu−Dox(5)、βAla−Leu−Ala−Leu−DoxおよびAla−Leu−Ala−Leu−Dox)について、VYDAC(C8.5μm、250×4.6mm)のようなカラム(逆相)を用い、HP1100システム(Agilent)を利用して、HPLCクロマトグラフィー分析を行う。ドキソルビシンおよびその誘導体は蛍光検出され(Lambdaexc.=235nm;Lambdaem.=560nm)、それぞれの相対的滞留時間を内部標準と比較することにより同定される。濃度は、HPCLクロマトグラフィーで見られるピークの積算表面を基準に算出される。
【0130】
得られた安定曲線(時間に対する濃度の変動)は生成物の安定性評価を可能にし、加水分解試験では、6時間のインキュベートの後に得られるLeu−DoxおよびDoxの量を総括した表を用いることで、腫瘍細胞から分泌される酵素によるPEG化誘導体の加水分解の度合いを評価できる。
【0131】
8)ドキソルビシンのPEG化誘導体プロドラッグの腫瘍再活性化試験(in vivo)
ドキソルビシンのPEG化誘導体プロドラッグ(Su−βALAL−Dox)の腫瘍再活性化について、LS−174Tヒト結腸癌を異種移植した無胸腺マウスで測定した。以下のPEG化誘導体を使用した:PEG2000−βALAL−DoxおよびPEG2000−βALALDox。
【0132】
マウスに、69μmol/kgの量で様々な化合物を、静脈内ボーラス(静脈内)注射した。動物は注射後2〜72時間で死亡し、腫瘍内に蓄積した活性分子(Leu−Dox+Dox)をHPLCクロマトグラフィーで定量化した(上記項目7.3参照)。
【0133】
9)皮下に異所異種移植したモデルを用いたドキソルビシンPEG化誘導体プロドラッグの化学療法試験
ヒト起源の腫瘍LS−174TまたはHCT116(ヒト結腸癌)を予め皮下移植した無胸腺マウスを用いて、実験的化学療法試験を行った。
【0134】
腫瘍体積が等しく分布するようにマウスを選択し、異なる群へ分配した。異なる治療薬を、形成された群に無作為に割り当てた。
【0135】
治療薬を尾静脈へ静脈内投与する。注射中に、動物は、一定体積の生成物10μl/gを投与される(Workman等、1998)。注射後、臨床症状を適時に追跡し(初日は1時間毎、試験終了まで1日毎)、体重と腫瘍体積(mm3)を同時に測定する。はさみ尺を用いて腫瘍の直交する2直径(“対角線”)(最長および最短の“対角線”)を測定することにより、腫瘍の増殖を週2回で監視する。
【0136】
異なる群で腫瘍体積の変動を測定するために、0日目の平均腫瘍体積に対する変動として相対腫瘍体積(RTV=relative tumor volume)の平均値を算出し、パーセント表示する。パーセント表示された薬剤処理群(T)とコントロール群(C)の平均RTV比(T/C(%))を算出し、種々の治療薬の有効性を評価する。
【0137】
T/C比の最低値は使用される生成物の最大効果を推測するための指標である。
【0138】
腫瘍増殖の阻害時間は、薬剤処理群とコントロール群間のRTV平均値の倍加増殖(倍加時間=DT=Doubling Time)の遅延(T−C)を算出することで評価される(図5ではコントロール群の倍加時間を200%で表示している)。特異的増殖遅延(SGD=Specific Growth Delay)も、試験に関わる様々な群での平均RTVの倍加に要する時間から算出される。SGDは従って(DT処理群−DTコントロール群)/(DTコントロール群)に等しい。
【0139】
また、試験される様々な生成物の活性は、EORTC(European Organization for Reseach and Treatment of Cancer)(Boven等、1992;Langdon等、1994)の推奨する判断基準を基に評価され、結果を表Iに記載した。しかし、文献で提唱されている判断基準(Boven等、1992)は1つの直線増殖期を示す腫瘍にしか適用されないので、化合物の有効性を推定する方法は翻案である。
【0140】
使用されるLS−174−T細胞は2つの増殖期を示すのが特徴で、最終増殖期(フェーズ2)は最初の増殖期(フェーズ1)よりもかなり速い。このような理由から、増殖遅延(T−C)および特異的増殖遅延(SGD)は、腫瘍増殖に特徴を有する異なるフェーズの直線回帰により算出された。
【0141】
以下の表1は、EORTC(Boven等1992;Langdon等、1994)の推奨する判断基準に従って化学療法剤の有効性を評価したものである。活性レベル:−=活性無し;(+)=非常に低い活性;+=低い活性;++=中等度の活性;+++=顕著な活性;++++=非常に顕著な活性。
【0142】
【表1】
【0143】
10)皮内異所移植モデルを用いたTNF-αのPEG化誘導体の化学療法試験
10.1)細胞株
B16−BL6細胞:マウスのメラノーマ細胞であり、in vivoにおける膀胱への浸潤能および肺への高い自然転移能により選択される。この細胞は“NCI−Frederic Cancer Research and Development Center”、メリーランド、USAから入手される。
【0144】
10.2)化学療法試験に用いる抗癌剤
RhTNF−α(“組み換えヒト腫瘍壊死因子α”は、Henogen(ゴスリー、ベルギー)から提供される。
【0145】
(PEG5000)n−TNFα(PEG5000−Ala−Leu−Ala−Leu)n−TNFαおよび(PEG5000−(DSer)4−Ala−Leu−Ala−Leu)n−TNFα複合体を合成した。“n”は1〜18である(18はTNFα分子が三量体である場合の全リジン数であり、TNF単量体は6つのリジン残基を有することが知られている)。(PEG-ペプチド)n−TNFα誘導体の合成は以下のようにして実施される:ペプチドを固相で合成し、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下に活性化ポリエチレングリコール(PEG)と結合させてN−ヒドロキシサクシンイミド型とする。精製後、DMFに溶解しているPEG−ペプチド−OHを当業者に公知の結合剤(例えば:TSTU、2−サクシンイミド−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)の存在下に活性化させる。次に、マンニトール1%を含有する20mmolのホスフェートバッファー(pH7.4)に溶解しているrhTNFαを添加し、反応混合物を周囲温度で一晩撹拌する。結合生成物を回収し、過剰PEG-ペプチド−OHを限外濾過して除く。最終生成物の濃度をたんぱく質量から測定する。
【0146】
10.3)動物
雄のC57BL/6Jマウス(Charles River Laboratoriesから輸送後5週間、フランス、飼育場)を使用する。
【0147】
動物の取り扱いは、その使用および実験的化学療法試験中の動物の健康に関し、UKCCCR(United Kingdom Coordinating Committee on Cancer Research;Workman等、1998)およびFELASA(Federation of European Laboratory Animal Science Associations;Nicklas等、2002;Rehbinder等、2000;Rehbinder等、1996)の推奨する方法に従って実施した。
【0148】
マウス起源のB16−BL6腫瘍(マウスメラノーマ)を予め皮内移植された普通のC57BL/6Jタイプの雄のマウスを用いて、実験的化学療法試験を行う。
【0149】
腫瘍体積が等しく分布するようにマウスを選択し、異なる群へ分配する。異なる治療薬を、形成された群に無作為に割り当てる。
【0150】
治療剤を0〜3日に静脈内投与する。注射中に動物は一定体積の生成物10μl/gを投与される(Workman等、1998)。注射後、臨床症状を適時に追跡し(初日は1時間毎、試験終了まで1日毎)、体重と腫瘍体積(mm3)を同時に測定する。はさみ尺を用いて腫瘍の直交する2直径(“対角線”)(最長および最短の“対角線”)を測定することにより、腫瘍の増殖を週2回で監視する。
【0151】
抗−腫瘍効果をT/C比の値から定量化する(最低値は最大効果に相当する)。測定方法は前記項目9に詳細される。
【0152】
実施例2:ドキソルビシンのプロドラッグβALAL−Doxが腫瘍細胞から分泌されるペプチダーゼにより再活性化される際の、PEG化の効果
化合物βALAL−Dox、PEG350−βALAL−Dox、PEG750−βALAL−Dox、PEG2000−βALAL−DoxおよびPEG5000−βALAL−Dox(20μmol)をMCF−7/6またはLS−174T腫瘍細胞の調整培地中で6時間インキュベートした。プロドラッグの再活性化(ドキソルビシンおよびLeu−Doxの放出)をHPLCクロマトグラフィーで測定した。
【0153】
以下の表2は、プロドラッグβALAL−DoxとそのPEG化誘導体の加水分解を示している。結果は、ドキソルビシン(Dox)とロイシル−ドキソルビシン(L−DoxまたはLeu−Dox)の濃度で表され、3回の独立実験で得られた平均値±標準偏差(n=9)で表記される。
【0154】
【表2】
【0155】
上記表に記載される結果はプロドラッグの再活性化を示すものであり、PEGの分子量が増加すると活性分子(Leu−Dox+ドキソルビシン)の放出が特に阻害されることが分かる。ドキソルビシンプロドラッグ(βALAL−Dox)のPEG化は腫瘍ペプチダーゼによるその再活性化を妨げる。この阻害はPEGの大きさに関する。そこで、発明者は、このような妨害がおそらく切断部位の接触容易性が制限される立体障害現象の結果ではないかという仮説を立てた。
【0156】
実施例3:ドキソルビシンプロドラッグのPEG化誘導体の腫瘍再活性に関するin vivo試験
ドキソルビシンプロドラッグ(βALAL−Dox)のPEG化誘導体のin vivoにおける腫瘍再活性化について、LS−174Tヒト結腸癌腫瘍を異種移植された無胸腺マウスモデルを用いて評価した。以下の表3は試験化合物の注射後2および72時間で腫瘍に蓄積されるDoxおよびLeu−Doxの平均濃度を示している(18匹のマウスから得られた平均)。
【0157】
【表3】
【0158】
上記表から、2種薬剤PEG2000−βALAL−DoxおよびPEG20000−βALAL−Doxが、コントロールであるSu−βALAL−Doxと比べ、DoxおよびLeu−Doxを再活性化しないことが分かる。すなわち、ドキソルビシンプロドラッグのPEG化は、腫瘍に係る再活性化を強く抑制する。
【0159】
実施例4:ドキソルビシンのPEG化プロドラッグの腫瘍細胞から分泌されるペプチダーゼによる再活性化に対してスペーサーの挿入がもたらす効果
βALAL−Doxプロドラッグ(20μmol)をLS−174TまたはLNCap腫瘍細胞の調整培地で6〜18時間インキュベートした。プロドラッグの再活性化(ドキソルビシンおよびLeu−Doxの放出)をHPLCクロマトグラフィーで測定した。
【0160】
2種類のスペーサーを試験した:
−4つの親水性Dセリン((DSer)4)残基
−6−アミノヘキサン酸残基(またはセリンよりも長い疎水性アミノ酸であるアミノカプロン酸)、Ahxと表記、の挿入。
【0161】
以下の表4は、Su−βALAL−Dox(コントロール)プロドラッグおよびPEG化βALAL−Dox誘導体の加水分解を示す。結果は、放出されるドキソルビシンおよびLeu−Doxをコントロールと比較してパーセンテージで表記している(n=3)。
【0162】
【表4】
【0163】
前記表の結果は、PEG化誘導体の加水分解が、Su−βALAL−Doxの場合と比べて明らかに減少することを再度示すものである。
【0164】
LS−174T細胞の調整培地で化合物をインキュベートした後では、PEGとβALAL−Doxの間に4つのD−セリン残基を挿入することにより、スペーサーを有さないまたは3つのAhx残基(疎水性スペーサー基)を有するPEG2000のPEG化誘導体と比較して、ドキソルビシンおよびLeu−Doxの放出は2倍に増加している。
【0165】
アミノヘキサン酸残基(疎水性アミノ酸)の挿入は、スペーサーを有さない誘導体と比べても、プロドラッグのPEG化誘導体の再活性化を促進しない。
【0166】
実施例5:ドキソルビシンプロドラッグのPEG化誘導体の細胞毒性試験
MCF−7/6腫瘍細胞をドキソルビシン、βALAL−Dox、PEG2000−βALAL−Dox、PEG2000−DSer−βALAL−DoxまたはPEG2000−(DSer)4−βALAL−Doxを濃度勾配をかけて含有する血清培地中で48時間インキュベートした。次に血清培地の存在下に24時間ポストインキュベートする。細胞の生存率試験(WST−1、Roche Molecular Diagnostic)により生成物の細胞毒性を調べる。
【0167】
3回の独立した試験結果を図2に示す。
【0168】
ドキソルビシンおよびβALAL−Dox化合物のIC50値(50%阻害濃度)はそれぞれ0.045μMおよび158.48μMであり、これはβALAL−Doxプロドラッグの性質を証明するものである。PEG2000−βALAL−Doxが500μmolの濃度まで細胞毒性を示さないので、βALAL−DoxおよびPEG2000−βALAL−Dox化合物が示すIC50平均値の比較から、PEG化によりプロドラッグの再活性化が阻害されることが分かる。PEGとβALAL−Doxの間にDSerを含むプロドラッグ(PEG2000−DSer−βALAL−Dox)は細胞毒性を示さない。これとは反対に、PEGとβALAL−Doxの間に分子スペーサー(DSer)4を有するプロドラッグ(PEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox)は細胞毒性を示し、PEG2000−(DSer)4−βALAL−Doxはまさに非−PEG化プロドラッグ、βALAL−Doxと同等の活性(IC50=251.19μmol)を有する。
【0169】
この結果は、PEGとβALAL−Doxの間に4つのD−セリン残基を挿入することがPEG化プロドラッグの再活性化を可能にすることを示している。これに対して、スペーサーを有さないPEG化プロドラッグは再活性化できない。後者プロドラッグの細胞毒性は主に血液外での再活性化によるものであり、すなわち別の試験化合物と比べてドキソルビシンを多く放出する。
【0170】
実施例6:ドキソルビシンプロドラッグβALAL−DoxのPEG化誘導体の、LS−174Tヒト結腸癌異種移植モデルにおける有効性試験
ドキソルビシン、サクシニル−βAla−Leu−Ala−Leu−DoxおよびPEG2000−(DSer)4−Ala−Leu−Ala−Leu−Doxの抗−腫瘍活性を、LS−174T型のヒト腫瘍を異所異種移植された無胸腺マウス(ヌード/ヌードNMRI)モデルで試験した。生成物を静脈内注射した(10μl/g、1群あたりマウス6匹)。
【0171】
PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxを、最初に、50μmol/kgおよび45μmol/kgの量で静脈内ボーラス投与した。2種類の投与量で1匹が死亡した。
【0172】
投与量を7日目から減じた。PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxを35μmol/kgおよび25μmol/kgで注射した(週に1度、3回の注射)。別の化合物を0、7、14および21日目に週1回で静脈内ボーラス投与した(ドキソルビシン6.69および8.6μmol/kg、Su−βALAL−Dox45および50μmol/kg)。
【0173】
図3は、各日投与の開始から平均体重の変動をパーセントで示している。ドキソルビシンとPEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxを処理した群では2週間目まで顕著な体重減少は認められない。Su−βALAL−Doxを処理した群では僅かな体重減少が認められる。後者の場合、最大の体重減少は10%で、2つの処理群で32日目に認められる。
【0174】
図4は、コントロール(C)(NaCl)と比較した薬剤処理マウス群(T)の相対腫瘍体積(RTV)の平均値の変動を示している。最大耐量(MTD)より少ない量を投与しているにもかかわらず、全ての試験生成物は抗−腫瘍活性を有する。
【0175】
薬剤処理中、2つの腫瘍増殖期が観察された(図5)。第1増殖期では、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox(1×50+3×35μmol/kg)の活性はドキソルビシン(6.69μmol/kg)と同等であり、サクシニル−βALAL−Dox(50μmol/kg)より低い。これとは逆に、第2増殖期では、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxはドキソルビシンよりも活性であり、Su−βALAL−Doxと同等である。全体的に、Su−βALAL−Dox生成物(T/Cmin=26.6%;特異的増殖遅延(SGD=3.02))およびPEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox(T/Cmin=38%;SGD=1.58)はドキソルビシンよりも活性であることが分かった。
【0176】
実施例7;ドキソルビシンプロドラッグのPEG化誘導体の血清培地中での安定性
βALAL−Dox、PEG2000−βALAL−DoxおよびPEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox化合物の安定性を、ウシ胎児血清10%を含む培地に37℃で24時間インキュベートした後に測定した。初生成物および形成可能な代謝物の濃度をHPLCで定量化した。3種の試験複合体は血清培地中で安定である。分解生成物は検出されなかった(図6)。
【0177】
実施例8;ドキソルビシンプロドラッグのPEG化誘導体のヒト全血中での安定性
βALAL−Dox、PEG2000−ALAL−Dox、PEG2000−βALAL−DoxおよびPEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox化合物をヒトのクエン酸血で20μmolに希釈し、37℃でインキュベートした。様々な時点で、複合体および形成可能な代謝物の濃度をHPLCにより測定した。図7は、インキュベート時間に対する生成物濃度の変動を示している。
【0178】
ALAL−Dox化合物をコントロールとして使用した。後者は血液中に安定ではない。1時間後、出発物質の80%がLeu−DoxおよびDoxに分解される。他の3種の試験複合体はヒト全血に6時間安定である(図7)。6時間で、βALAL−Dox(Dox8%およびL−Dox10%)およびPEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox(Dox5%およびLeu−Dox5%)はほんの僅かに加水分解されただけであった。この結果は、オリゴペプチドの末端アミンをβアラニンで置換すると、血液中のペプチダーゼによる配列の加水分解が妨げられることを示している。試験されたPEG化誘導体の安定性は、天然ではないアミノ酸の存在(β−アラニンまたはd−セリン)および安定化基として使用されるPEGのおかげであると考えられる。
【0179】
実施例9.ドキソルビシンプロドラッグのPEG化誘導体βALAL−Doxの、HCT116ヒト結腸癌異種移植モデルでの有効性試験
HCT−116ヒト結腸癌をSwissヌード/ヌードマウスに皮内移植した異種移植モデルを使って、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxの抗−腫瘍効果をサクシニル−βALAL−Doxと比較した。動物はサクシニル−βALAL−Dox30μmol/kgまたはPEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox53および110μmol/kgを5回(5日連続)静脈内ボーラス投与された(マウス6匹/群)。薬剤処理群では死亡が確認されなかった。図8の結果は動物の体重の変動を表している。投与量にかかわらずPEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxに毒性は認められなかったが、サクシニル−βALAL−Doxを処理したマウスでは体重が減少した(試験終了時には約20%減、49日目)ことから、この群では最大耐量(MTD)に達していることが分かる。2つの期を示すT/C曲線により抗−腫瘍効果を示す(図9)。第1期では(21日まで)、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox(110μmol/kg)群が活性を示し、これはサクシニル−βALAL−Dox(30μmol/kg)でも同様である。第2期では、PEG化誘導体(110μmol/kg)の活性がサクシニル−βALAL−Doxの活性と比べて減少する。53μmol/kgでは、PEG化誘導体を処理した週に腫瘍増殖を抑制するどころか腫瘍退縮を誘導している。要するに、これらの結果は、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxがサクシニル−βALAL−Doxよりも低い毒性を示し、試験の第1期で活性化されることを意味している。本試験ではPEG化誘導体はMTDに達していない。
【0180】
実施例10.HCT−116ヒト結腸癌異種移植モデルにおける、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox対PEG2000−ALAL−Doxの化学療法試験
HCT−116ヒト結腸癌をSwissヌード/ヌードマウスに皮下移植した異種移植モデルを用いて、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxの抗−腫瘍効果をPEG2000−ALAL−Doxの抗−腫瘍効果と比較した。動物は化合物を200、300および400μmol/kgの量で5回(5日連続)静脈内ボーラス注射された(マウス5匹/群)。PEG2000−ALAL−Doxに対して、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxは300および400μmol/kgで毒性を有し、体重の減少と動物の死を招く(図10)。このような毒性はPEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxの方がPEG2000−ALAL−Doxよりも細胞外区画で顕著に再活性化されることを示唆している。1等モルの非−毒性量(200μmol/kg)では、PEG2000−(DSer)4−ALAL−DoxはPEG2000−ALAL−Doxよりも強い抗−腫瘍効果を示す(図11)。この結果は、4つのセリンを立体配座Dで有する分子スペーサー保持化合物がより強い腫瘍再活性化を導くという仮説を再び支持するものである。このデータは、PEGとプロドラッグの再活性化時に切断され得る配列の間に4つのDセリンを挿入することで正の効果が得られることを明らかに実証するものである。
【0181】
実施例11:TNF−αのPEG化誘導体の有効性試験
B16BL6マウス腫瘍(マウスメラノーマ)を異所移植(皮内移植)されたC57BL/6J型の一般的な雄のマウスモデルを使用して、(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFαの抗−腫瘍活性を、(PEG5000)n−TNFαおよび(PEG5000−Ala−Leu−Ala−Leu)n−TNFαと比較した。
【0182】
複合体を、1kgあたりTNF−α2000μg等量で週に2回、1週間にわたって(0および3日)静脈内投与した。この投与量では即時的な毒性の徴候は見られなかった。
【0183】
図12は、動物の生存の変動を示す。薬剤処理群では、(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFαは6日目にマウスの40%を、10日目に60%を死に至らしめた。コントロール群を含む別の群の死亡率は20%を越えず(マウス5匹のうち1匹)、これはB16−BL6型腫瘍の浸潤性および転移性によるものと考えられる。
【0184】
図13は、薬剤を処理し始めてからの、時間に対する平均体重の変動を示す図である。最初の注射をした日に(PEG5000−ALAL)n−TNFαおよび(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFαを処理した群で顕著な体重減少が認められる(それぞれ15および28%)。2回目の注射の後、(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFαを処理した群で更に体重減少が進んでいる。後者の場合、最大体重減少は6日目の32%である。これに対して、(PEG5000−ALAL)n−TNFαを処理した群では、2回目の注射(3日目)の後に体重が回復している。(PEG5000)n−TNFαを処理した群では体重の減少が見られなかった。
【0185】
T/C(薬剤処理群(T)とコントロール群の(C)の平均RTVの比)の変動を基に得た抗−腫瘍効果を図14に示す(パーセンテージで表記)。結果から、たんぱく質の活性型の放出に必要なTNFαのプロドラッグの活性化は複合体の構造に応じて変化することがはっきりと分かる。(PEG5000)n―TNFαは不活性、(PEG5000−ALAL)n―TNFα(T/Cmin=51.7%(j3);SGD=1.66)は(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFα(T/Cmin=16.7%(j6);SGD=3.72)よりも低い活性を示す。この結果から複合体の活性化と毒性は相関することが分かる。PEGとTNFαの間にペプチドが存在しなければ細胞毒性は低いかまたはゼロである(体重減少で判断)。これらの2つの部位の間にALAL結合を挿入すると生成物の毒性はより顕著になるが、これはその高い血液外再活性化を反映するものである。親水性スペーサー(DSer)4を挿入してこのペプチド(ALAL)を延長すると複合体の毒性は顕著に増加するが、明らかにこれは血液外区画での再活性化能が向上した結果である。
【0186】
参考文献
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【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】本発明のドキソルビシンのPEG化プロドラッグの2つの合成方法の概略を示す図である。
【図2】本発明のプロドラッグのMCF−7/6細胞に対する細胞毒性試験を示す図である。
【図3】本発明のプロドラッグ処理時のLS−174−T腫瘍を持つ異種移植マウスの平均体重の変動を示す図である。
【図4】本発明のプロドラッグ処理時のLS−147−Tヒト結腸癌腫瘍を持つ無胸腺マウスの相対腫瘍体積(RTV)の平均値の変動を示す図である。
【図5】本発明のプロドラッグ処理時のLS−174T腫瘍の第1増殖期および第2増殖期の阻害を比較する図である。
【図6】本発明のプロドラッグの血清培地中安定性を示す図である。
【図7】本発明のプロドラッグのヒト全血中での安定性を示す図である。
【図8】本発明のプロドラッグ処理時のHCT−116ヒト結腸癌腫瘍を持つ無胸腺マウスの平均体重の変動を示す図である。
【図9】本発明のプロドラッグ処理群(T)とコントロール群(C)のRTV平均値の比の変動からHCT−116腫瘍の増殖阻害を示す図である。
【図10】本発明のプロドラッグ処理時のHCT−116腫瘍を持つ異種移植マウスの生存率の変動を示す図である。
【図11】本発明のプロドラッグ処理群(T)とコントロール群(C)のRTV平均値の比の変動からHCT−116腫瘍の増殖阻害を示す図である。
【図12】本発明のプロドラッグ処理時のB16−BL6メラノーマ腫瘍を持つ移植マウスの生存率の変動を示す図である。
【図13】本発明のプロドラッグ処理時のB16−BL6メラノーマ腫瘍を持つ移植マウスの平均体重の変動を示す図である。
【図14】本発明のプロドラッグ処理群(T)とコントロール群(C)のRTV平均値の比の変動からB16−BL6腫瘍の増殖阻害を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロドラッグの分野に関し、さらに特に、癌性腫瘍および/または炎症反応の治療および/または診断を目的とするプロドラッグの分野に関する。
【0002】
プロドラッグとは、その構造の化学的または酵素的修飾の後にin vivoで医薬品(活性な治療薬)へと変換され得る、薬理学的に不活性な分子のことである。プロドラッグは医薬品、即ちプロドラッグが変換されて生じる医薬品を、循環組織または非−標的組織ではなく、作用部位または標的組織へ放出することができる。また、プロドラッグはアントラサイクリン(例えばドキソルビシン)やビンカアルカロイドのような抗癌剤あるいはメトトレキサートのように抗炎症作用を有する抗癌剤等の治療薬のin vivoにおける治療指数(活性対毒性の比)を向上させることができる。それ故これまでにも、血液中および/または血清中での高い作用特異性、低い毒性ならびに改良された安定性を得る目的で、数種類のプロドラッグが開発されてきた。
【背景技術】
【0003】
従来より、治療薬の以下に示す基本構造を有するプロドラッグ、標的細胞の細胞外環境に存在する酵素により切断され得るオリゴペプチド、安定化基またはマスキング基は記載されている。
【0004】
国際公開第96/05863号のPCT特許明細書は特に、βアラニル−ロイシル−アラニル−ロイシル−ドキソルビシン(βALA−LEU−ALA−LEU−DoxまたはβALAL−Doxとも表記される)を記載している。このプロドラッグは血液中で安定、即ち血液中に含まれるペプチダーゼでは比較的切断されにくく、種々の腫瘍細胞周辺から分泌されるペプチダーゼではin vivoで再活性化される。このプロドラッグは腫瘍周辺の細胞外環境で連続的に加水分解されてAla−Leu−Doxとなり、更にLeu−Doxとなる。Leu−Doxは拡散により細胞内へ進入し、そこでドキソルビシン形へと活性化される(Trouet等、2001)。上記プロドラッグのin vivoにおける毒性および活性を調べると、ドキソルビシンそのものの場合よりも毒性が減少し腫瘍の増殖も顕著に抑制されることが分かる。しかし、薬物動態試験では腎排泄に係る半減時間が短いことが分かる。このプロドラッグは尿路経由で速やかに排泄されると考えられる(Dubois等、2002)。
【0005】
国際公開第00/33888号のPCT特許明細書は、βAla−Leu−Ala−Leu−Doxで表されるプロドラッグへβアラニンの陽電荷をマスクする基を付加することでその有効性を高める提案をしている。このマスキング基は例えばポリエチレングリコール(PEG)でよい。
【0006】
国際公開第01/91798号のPCT特許明細書は、改良された循環組織中で安定性を有するプロドラッグを記載している。例えば、プロドラッグはPEG化されていてよく、この場合PEGは安定化基および/またはマスキング基として使用されている。このポリマー(PEG)の結合はプロドラッグの薬物動態および薬力学特性を改善し、分子が大きくなるため腎排泄が減少する。実際、分子が大きいほどその排泄は遅くなる(Harris&Chess、2003)。
【0007】
本発明を導く研究の枠内で、出願者は、異なる大きさのPEGを使用してドキソルビシンのプロドラッグ(国際公開第96/05863号特許明細書に記載される)からPEG化したプロドラッグを製造し、化合物を大きくすることにより腎臓での限外濾過を減少させつつプロドラッグの特性(腫瘍細胞から分泌される酵素で再活性化される)を維持することを試みた。出願者は様々な大きさのPEG(分子量350〜20,000、その間をとって750、2000および5000)をプロドラッグβAla−Leu−Ala−Leu−Doxに結合させた。このプロドラッグのPEG化誘導体の再活性化を調べるためにin vitroで切断試験を実施した。この試験の目的は、腫瘍細胞(LS−174TおよびMCF−7/6)から分泌される酵素によるPEG化誘導体の再活性化を、癌細胞を含む調整培地の存在下にLeu−Doxへと加水分解されるβAla−Leu−Ala−Leu−Doxと比較して評価することである。これらの試験結果から、1)PEGの大きさにかかわらず、ペプチド配列(Ala−Leu−Ala−Leu)の切断による薬剤の再活性化は、PEG基を有さないプロドラッグほど効果がない、2)PEGの大きさとPEG化プロドラッグの切断との相関:結合するPEGが大きいほど、標的細胞の細胞外環境中の酵素によるプロドラッグの切断は少ない、ことが分かった。出願者は、プロドラッグのペプチド結合の切断が減少するのはおそらくPEGの立体障害現象のためであると仮定した。言い換えると、高分子量の安定化基またはマスキング基を含むプロドラッグであるほど再活性化されにくく、このことは半減期の長いプロドラッグの供給という課題に相反する。
【特許文献1】国際公開第96/05863号
【特許文献2】国際公開第00/33888号
【特許文献3】国際公開第01/91798号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は特に、マスキング基および/または安定化基が大きい場合に、高い作用特異性、低い毒性、ならびに血液および/または血清、有利には哺乳動物における安定性を維持しつつ、その立体障害現象を除き、オリゴペプチドの切断を可能にするかあるいは促進させるプロドラッグ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、マスキング基および/または安定化基(例えばPEG)の間に“分子腕”または“分子スペーサー”を挿入し、このペプチド配列が配列に“特異的”な酵素により切断され得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の分子スペーサー(以後“スペーサー”とも記載される)は、スペーサーを構成する単位の親水性を考慮して選択された。
【0011】
従って、本発明の最初の課題は、式(A)p−(E−B)n−(I)m:
(式中、
−Iは、標的細胞に対して有利に働く活性物質であり、
−Aは、血液循環時のB−Iの半減時間を延長させる基であり、
−E−Bは、AとIを連結させる基であり、
−Bは、単独で存在する酵素または好ましくは前記標的細胞の近くに存在するかあるいは標的細胞上に存在する酵素により、選択的に切断され得る構造であり、
−Eは、循環組織中で安定な親水性基であり、該基がBからAを引き離すことにより、前記標的細胞の近くまたは前記標的細胞上でのBの切断を可能にするか容易にし、その結果、Iの放出あるいは基Bを有するIの放出が可能になるか容易になる、
−nは、1から連結基E−Bが結合し得る反応基Iの全数までの、あるいは、連結基E−Bが結合し得る反応基Aの全数までの整数であり、
−mは、1から連結基E−Bが結合し得る反応基Aの全数までの整数であり、
−pは、1から連結基E−Bが結合し得る反応基Iの全数までの整数であり、
p=1の場合n=mであり、m=1の場合n=pである)
で示される化合物である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について記載するが、第1の好ましい形態はp、nならびにmが1に等しい場合である。この化合物を以下、式A−E−B−Iと記す。
【0013】
本発明の第2の好ましい形態は、mが1に等しく、nとpとが同値且つ1より大きい場合である。この化合物を以下、式(A−E−B)t>1−Iと記し、この際、tは2から基A−E−B−が結合し得る反応基Iの全数までの整数を意味する。有利にIは、分子上で幾つかのA−E−B−基が枝分かれしているTNF−αサイトカイン分子のようなポリペプチドであってよい。
【0014】
本発明の第3の好ましい形態は、pが1に等しく、nとmとが同値且つ1より大きい場合である。この化合物を以下、式A−(E−B−I)k>1と記し、この際、kは2から基−E−B−Iが結合し得る反応基Aの全数までの整数を意味する。有利にAは、分子上で幾つかの−E−B−I基が枝分かれしている分枝型PEG分子のようなポリマーであってよい。
【0015】
本発明の第4の好ましい形態は、pとmとが1より大きく、nがpおよびmと異なっていてよい場合である。例えば、p=2、n=3、m=2の場合、化合物は以下の式で表せる:(I)−(B−E)−(A)−(E−B)−(I)−(B−E)−(A)。
【0016】
有利な活性物質(I)は、共有結合により1つ以上の構造Bと直接結合していてもよく、“連結腕”を介して間接的に結合していてもよい。例えば、構造Bがアミノ酸配列であり、これが有利な物質Iと直接結合している場合、その配向性に従ってアミノ酸配列のN−末端またはC−末端、あるいはオリゴペプチドの任意の部位(例えば1つのアミノ酸の側鎖)に共有結合が形成され得る。更に、BとIの間の結合が間接的である場合、連結腕は幾つかの官能基を有していてよく、その官能基によりB−I間の切断が容易になり、B−I間に適する化学結合手段が提供され、化合物の合成過程に改善がもたらされ、有利な物質(I)の物理的性質が向上し、有利な物質(I)の細胞内または細胞外放出に付加的なメカニズムが提供される。このような間接結合は、当業者に公知かつ任意の化学的、生化学的、酵素学的または遺伝学的結合方法により実施できる。このような連結腕として例えば、同種または異種官能性を有する架橋試薬、例えばサクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシラート(SMCC);アルキル、アリール、アラルキルまたはペプチド基を有する二官能または多官能薬剤;エステル、アルデヒドまたはアルキル、アリールまたはアリールアルキル酸;無水物、スルヒドリル基またはカルボキシル基、例えば安息香酸マレイミル誘導体、プロピオン酸マレイミル誘導体およびサクシンイミジル誘導体;ブロモシアンまたはクロロシアン誘導基;カルボニルジイミダゾール、サクシンイミドエステルのチオカルボニルジイミダゾールまたはスルホン酸のハロゲン化物;ホスゲン、チオホスゲン;自己転位可能な(または“自己犠牲”の)スペーサーを挙げることができる(Schmidt等、2001)。
【0017】
本発明のスペーサー(E)は、基Aを構造Bへ結合させる。スペーサーは、親水性でありかつ循環組織中で安定なのが好ましい。
【0018】
スペーサーの20%未満、好ましくは10%未満、更に好ましくは2%未満が循環血中で(特に酵素により)分解または切断される場合、あるいは37℃のヒト血液中でスペーサーが2時間を越えて維持される場合、スペーサーは“循環組織中で安定である”とされる。有利なことに、基Aの構造Bからの離隔とその好ましい親水性の特徴とから、スペーサーは標的細胞の近くまたは標的細胞上で構造Bが切断されるのを可能にするかまたは容易にし、それにより、Iの放出またはB基を有するIの放出が可能になるかまたは容易になる。スペーサーは、1〜100個のアミノ酸に相当する長さであってよい。
【0019】
本発明の別の態様として、基Aの分子量に応じてスペーサーの大きさを変えることができる。この態様では、スペーサーが大きいほどAの分子量も大きい。
【0020】
本発明のスペーサーは、以下から選択される少なくとも1つの基で構成されるかまたはそのような基を含む:アミノ酸配列;ペプチドミメティック薬剤;偽ペプチド;ペプトイド;置換アルキル、アリールまたはアリールアルキル鎖;ポリアルキルグリコール;ポリサッカライド;ポリオール;ポリカルボキシラート;およびポリ(ヒドロ)エステル。またスペーサーは、これらの基を少なくとも2つ組み合わせて含んでもよい。
【0021】
本発明の有利な形態において、スペーサーは、立体配座Dの天然アミノ酸、遺伝学的にコードされていないアミノ酸または循環組織中に存在する酵素で切断できない合成アミノ酸、例えばβアミノ酸またはγアミノ酸等を含む群から選択される同種または異種アミノ酸1〜100個、好ましくは1〜20個、非常に好ましくは2〜10個で構成されるかまたはそのようなアミノ酸を含む。“立体配座Dの天然アミノ酸”とは遺伝暗号で正常にコードされているアミノ酸を意味し、天然では立体配座Lであるにもかかわらず立体配座Dへ合成されたアミノ酸のことではない。通常、遺伝子学的にコードされていないアミノ酸は、合成して製造したり天然物を原料に誘導したりできる。
【0022】
立体配座Dの天然アミノ酸のうち好ましいのは、以下から選択される親水性アミノ酸である:D−グルタミン、D−アスパラギン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−リジン、D−アルギニン、D−ヒスチジン、特に好ましくD−セリンおよびD−スレオニン。
【0023】
本発明の好ましい方法において、スペーサーは:(D−セリン)xまたは(D−スレオニン)xから選択される同種アミノ酸配列で構成されるかまたはそのようなアミノ酸配列を含み、この際、xは、1〜20の整数、好ましくは2〜10の整数、非常に好ましくは2〜6の整数である。
【0024】
特に、スペーサーは以下のものである:
(D−セリン)−(D−セリン)−(D−セリン)−(D−セリン)、これはD−セリル−D−セリル−D−セリル−D−セリルと表記されるのと同じである、
(D−スレオニン)−(D−スレオニン)−(D−スレオニン)−(D−スレオニン)、これはD−スレオニル−D−スレオニル−D−スレオニル−D−スレオニル−と表記されるのと同じである。
【0025】
本発明中アミノ酸は、当業者に公知の3文字のコードまたは1文字のコードのいずれかで表記される。
【0026】
基Aは、in vivoで、循環組織中でのB−Iの半減時間を延長する基である。この課題は、特に、Aが有利な物質Iまたは化合物B−Iの腎排泄を減少させる場合に達成され、ここで排泄とは、大きさに応じた化合物の腎臓での限外濾過を意味する。従って、化合物が大きいほど排泄は遅くなり、少なくとも50,000ダルトンの分子量を有する化合物は腎排泄されない。この課題も、本発明の化合物の肝代謝による分解を減少させることにより達成できる。言い換えると、半減期を延長するには、化合物の血中平均滞留時間を延長するかあるいは血液または血漿クリアランスを低下させればよい。
【0027】
“循環組織”とは、体液、特に血液を意味し、好ましくは哺乳動物の循環組織のことである。
【0028】
基Aは、親水性または両親媒性であるのが好ましい。
【0029】
循環組織中で安定な基A(即ち、式(A)p−(E−B)n−(I)mで表される化合物の20%未満、好ましくは2%未満が循環血中で(特に酵素により)分解または切断される場合、37℃のヒト血液中で前記化合物が2時間を越えて維持される場合)は、正常細胞に対して非毒性で、非−免疫抗原性で、非−凝集性またはマスキング性(即ち、プロドラッグから有利な物質(I)放出されるまで、細胞表面上で有利な物質(I)が作用するのを妨げる)であることが好ましい。
【0030】
有利に、基Aは、以下の特性を1つ以上有していてよい:連結基E−Bの非−特異的切断および/または分解を防止する;プロドラッグから有利な物質が放出されるまで有利な物質の生物学的作用を阻害する;循環組織中での化合物の安定性を向上させる;水、血液および/または血清中への式(A)p−(E−B)n−(I)mの化合物の可溶性(または可溶性を高める);式(A)p−(E−B)n−(I)mの化合物の標的細胞へのターゲティング特性(またはターゲティングを強化する)。
【0031】
“式(A)p−(E−B)n−(I)mで表される化合物の標的細胞へのターゲティング特性”とは、基Aが式(A)p−(E−B)n−(I)mの化合物の標的細胞の近くまたは標的細胞上での蓄積を可能にすることを意味する。このような基Aは“生物学的特異的”であると称され、即ち、このような基Aは特異的な生物学的相互作用を展開することができるので、生活系の生物学的実体として認識される。特に、抗体、抗原またはアミノ酸基(例えばアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD))のようなペプチドを基Aの表面に接木することにより、本発明の化合物が特定の細胞株表面へ付着するのを選択的に増加させることができる。基Aはまた、識別を目的とする好適な化学基により既存の高分子鎖を官能化して得られるかまたは官能性モノマーを共重合させて得られる生物学的特異的コポリマーを含んでよい。
【0032】
特に、基Aは以下から選択される:ポリペプチド(例えばポリグルタマート、ポリアスパルタート)、免疫グロブリン、アルブミン、ポリサッカライド、ポリマーまたはコポリマー。
【0033】
ポリマーには、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシ−エチル−アスパナミド−フェノール、パルミトイル残基で置換されたポリ(エチレンオキシド)−ポリリジン、ポリ(乳酸)、ポリ(エプシロン−カプロラクトン)、ポリ(ヒドロキシ酪酸)、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレートおよび架橋性または両親媒性の配列型ヒドロゲルコポリマーが含まれてよい。
【0034】
基Aは、以下から選択されるのが好ましい:ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンイミンおよび塩化ビニルコポリマー。例えば、基Aが塩化ビニルコポリマーである場合、ポリマーが凝集活性を示さないようにするには、スルホナート基またはスルホナートならびにカルボキシラートの存在が必須である。
【0035】
基Aはまた、以下から選択されるのが好ましい:ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)、マレイン酸ナトリウムおよびマレイン酸ブチル(MMBE)、ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、メチルメタクリレート(MMA)、ポリ−[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン](PHEG)、およびポリ−[N−(ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド](PHEA)。
【0036】
基Aは特にポリエチレングリコール(PEG)であるのが好ましい。PEGの大きさは、200〜50,000Da、好ましくは350〜20,000Da、非常に好ましくは1,000〜10,000Daであってよい。このようなPEGの存在により、薬物動態特性(Duncan等、1994)および薬力学的特性が向上し、その結果、本発明の化合物の腎排泄を減少することができる。さらに従来技術で知られる別の利点として、PEGが腫瘍内に良好に蓄積し得ることが挙げられる。実際、104Da以上の分子量を有するPEGは正常組織よりも腫瘍内で顕著に蓄積することが知られている(Greenwald等、2003、Seymour等、1995)。
【0037】
基Aはまた治療活性を有する薬剤または診断活性を有する薬剤であってよい。
【0038】
有利に、診断活性を有する薬剤の特性を示す基Aは常磁性を持つ元素、即ち、その電子層内に単一電子を有する元素、特に磁気共鳴映像法(MRI)でコントラストを強化する、ガドリニウム、マンガンおよび鉄のような元素を有してよい。例として、鉄の結合したポリスチレンスルホナートが挙げられる。
【0039】
式(A)p−(E−B)n−(I)mで表される化合物の進行方向を標的細胞へ向けることが可能な1つ以上のターゲティング物質を利用した化合物も本発明の課題である。例えば、ターゲティング物質は、抗体、抗原およびリポソームであってよい。
【0040】
ターゲティング物質は、1つ以上の基Aで式(A)p−(E−B)n−(I)mの化合物と結合するのが好ましい。
【0041】
本発明において、構造Bは、単独で存在するかまたは好ましくは標的細胞環境中に存在する酵素により選択的に切断され得る。
【0042】
“標的細胞”とは特に、病理学的関与を示す細胞あるいは治療または診断の面で利点を有する細胞を意味する。このような標的細胞は、原発性または続発性(転移性)の腫瘍細胞、原発性または続発性腫瘍の間質細胞、腫瘍または転移腫瘍の血管新生内皮細胞、マクロファージ、単球、リンパ球または腫瘍および転移腫瘍に侵入できる多核体から成る群より選択されるのが好ましい。
【0043】
“選択的に切断可能”とは特に、切断されるべき配列が切断されることを意味する。言い換えると、切断されるべき配列は標的細胞環境中に存在する酵素によって認識されるのが望ましく、循環組織中や非−標的細胞付近ではわずかに分解されるかまたは全く分解されない。“標的細胞環境中で”という表現は、酵素が単独で存在するかまたは標的細胞の近くまたは標的細胞上に存在することを意味する。たとえ切断が標的細胞の近くまたは標的細胞上のみで生じているわけではなくとも、切断がどちらかといえば(あるいは多くの場合にまたはほとんどの事例で)標的細胞の近くまたは標的細胞上で起きているという事実があれば、切断は選択的であるとされることを注記しておく。言い換えると、生体の他の部位と比べて標的細胞の近くまたは標的細胞上で酵素が高濃度である場合、切断は選択的であると称される。
【0044】
更に“酵素”とは特に加水分解酵素を意味する。酵素はペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ、リソソーム酵素、リパーゼおよびグリコシダーゼから成る群より選択されてよい。
【0045】
本発明の好ましい方法において、酵素は腫瘍細胞、腫瘍の間質細胞、血管新生内皮細胞、マクロファージまたは単球に特異的なペプチダーゼである。“特異的酵素”とは、膜酵素であるかまたは標的細胞を含む細胞外培地に標的細胞のみから分泌されるかまたは大部分を標的細胞から分泌される酵素を意味する。例えば、酵素が腫瘍細胞に特異的である場合、後者はネプリリシン(CD10)、チメトリゴペプチダーゼ(TOP)、前立腺特異抗原(PSA)、プラスミン、レグマイン、コラゲナーゼ、ウロキナーゼ、カテプシン、および基質メタロペプチダーゼから成る群より選択されてよい。
【0046】
構造Bの選択は、もちろん、標的細胞環境中に存在する酵素に依存する。従って、酵素がペプチダーゼであれば、構造Bはそのペプチダーゼで切断され得るアミノ酸配列(またはオリゴペプチド)を含むと考えられる;酵素がグリコシダーゼ(例えばサッカラーゼ)であれば、構造Bはそのグリコシダーゼで切断され得るオリゴサッカライドを含むと考えられる;酵素がリパーゼであれば、構造Bはそのリパーゼで切断され得る脂質鎖を含むと考えられる、等。
【0047】
本発明の課題は、腫瘍細胞環境中に存在する酵素で選択的に切断され得るオリゴペプチドで構成されるかまたはそのようなオリゴペプチドを含む、好ましい構造Bである。このようなオリゴペプチドは2〜10個のアミノ酸を含むのが好ましく、3〜7個であれば更に好ましい。例えば、本発明の課題は以下の配列である(立体配座Lが好ましい):
Ala−Phe−Lys(SEQ ID No.1)、Ala−Leu−Ala−Leu(SEQ ID No.2)またはβAla−Leu−Ala−Leu、Ala−Leu−Lys−Leu−Leu(SEQ ID No.3)、Ala−Tyr−Gly−Gly−Phe−Leu(SEQ ID No.4)、His−Ser−Ser−Lys−Leu−Gln−Leu(SEQ ID No.5)、Gly−Pro−Leu−Gly−Ile−Ala−Gly−Gln(SEQ ID No.6)およびCys−Asp−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys(SEQ ID No.7)。
【0048】
しかし、当業者は腫瘍細胞に特異的な酵素により選択的に切断され得るその他のアミノ酸配列、例えば国際公開第96/05863号、第00/33888号、第01/68145号、第01/91798号、第01/95943号、第01/95945号、第02/00263号、第02/100353号、第02/07770号または第99/28345号のPCT特許明細書に記載されるアミノ酸配列を熟知している。
【0049】
本発明の酵素は構造Bを選択的に切断できるので、Iの放出または基Bを有するIの放出が可能となる。“基Bを有するIの放出”という表現について以下に例を挙げて説明する。構造Bがアミノ酸配列でその配列がAla−Leu−Ala−Leuであり、有利な物質がドキソルビシンであり(ここでB−IはAla−Leu−Ala−Leu−Dox)、酵素がCD10である場合、この酵素はAla−Leu−AlaとLeuとの間でアミノ酸配列を切断し、Leu−ドキソルビシンという生成物が放出されると考えられる。この生成物を“基Bを有するI”と定義する。
【0050】
“血液外再活性化”または“血液外区画での再活性化”とは、式(A)p−(E−B)n−(I)mで表される構造を有するプロドラッグのペプチド結合Bが、血液以外の任意の(例えば正常なまたは腫瘍の)臓器または組織中に存在する、好ましくは標的細胞に存在する、特異的エンドペプチダーゼにより切断されることを意味する。構造B(例えばペプチド)が切断されると、有利な物質Iの活性形(例えば治療薬)が放出される。
【0051】
“標的細胞に対して有利な活性物質(I)”とは、その作用部位が標的細胞の表面または内部に存在するかまたはその効果が標的細胞の表面または内部に影響を及ぼす物質を意味する。例えば、このような有利な物質を、化学薬品、ポリペプチド、たんぱく質、核酸(DNA、センスRNAまたはアンチセンスRNA、一本鎖または二本鎖、相補的DNA、妨害RNA等)、抗生物質、ウイルスまたは任意にベクター物質(例えば抗体)を結合させたマーカーから成る群より選択できる。
【0052】
前記の有利な物質(I)は治療活性を有する薬剤であることが好ましく、抗−腫瘍性、抗−血管新生性または抗−炎症性の治療活性を有する薬剤であれば更に好ましい。このような薬剤は標的(例えばレセプター)を有するかまたは細胞外ないし細胞内に作用部位を有していてよい。このような薬剤はまた、貫通するペプチド配列、例えばPCT特許明細書番号WO01/64738に記載される配列を含んでいてよい。例えばIは以下のものを含む抗−腫瘍性治療活性を有する薬剤の群から選択される:ビンカアルカロイド、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン;タキサンまたはタキソイド、例えばパクリタキセル、ドセタキセル、10−デアセチルタキソール、7−epi−タキソール、バッカチンIII、レキシロシルタキソール;アルキル化剤、例えばイホスファミド、メルファラン、クロロアミノフェン、プロカルバジン、クロランブシル、チオホスホルアミド、ブスルファン、ダカバジン(DTIC)、ミトマイシンCを含むミトマイシン、ニトロソ−ウレアおよびその誘導体(例えばエストラムスチン、BCNU、CCNU、フォテムスチン);白金誘導体、例えばシスプラチン等(例えばカルボプラチン、オキザリプラチン);代謝拮抗物質、例えばメトトレキサート、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、6−メルカプトプリン、ラルチトレキセド、シトシンアラビノシド(またはシタラビン)、アデノシンアラビノシド、ゲムシタビン、クラドリビン、ペントスタチン、フルダラビンホスファート、ヒドロキシウレア;トポイソメラーゼIまたはIIの阻害剤、例えばカンプトテシン誘導体(例えば、イリノテカンおよびトポテカンまたは9−ジメチルアミノメチル−ヒドロキシ−カンプトテシン塩酸塩)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド、テニポシド)、アムサクリン;ミトキサントロン;L−カナバニン;抗生物質、例えばアントラサイクリン、例えばアドリアマイシンまたはドキソルビシン、THP−アドリアマイシン、ダウノルビシン、イダルビシン、ルビダゾン、ピラルビシン、ゾルビシンおよびアクラルビシン、アントラサイクリンの類似体、例えばエピアドリアマイシン(4‘エピ−アドリアマイシンまたはエピルビシン)、ミトキサントロン、ブレオマイシン、アクチノマイシンDを含むアクチノマイシン、ストレプトゾトシン、カリケアミシン、デュオカルマイシン、コンブレタスタチン;L−アスパラギナーゼ;ホルモン;アロマターゼの純粋な阻害剤;アンドロゲン、LH−RHの類似体−拮抗剤;サイトカイン、例えばインターフェロンα(IFN−α)、インターフェロンγ(IFN−γ)、インターロイキン1(IL−1)、IL−2、IL−4、IL−6、IL−10、IL−12、IL−15、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、IGF−1拮抗剤(インシュリン様成長因子);プロテアソーム阻害剤;ファルネシル−トランスフェラーゼ阻害剤(FTI);エポチロン;メイタンシノイド;ディスコデルモライド;フォストリエシン;BH3ペプチド;P53ペプチド;カスパーゼ;グランザイムB;リボザイム;モノクローナル抗体、例えばリツキシマブ、タスツズマブ;チロシンキナーゼの阻害剤、例えばSTI571(イマチニブメシレート);アンドスタチン;たんぱく質、ペプチドおよび抗炎症性サイトカイン。
【0053】
“マーカー”とは、酵素、抗体、蛍光またはリン光性化学分子、シンチグラフィーで使用できる分子を意味する。例えば、クマリン、7−アミド−トリフルオロメチルクマリン、パラニトロアニリド、8−ナフチルアミドおよび4−メトキシナフチルアミド、フルオロセイン、ビオチン、ローダミン、テトラメチルローダミン、GFP(緑色蛍光たんぱく質)、放射性同位体としてシンチグラフィーで使用される薬剤、およびこれらの化合物の誘導体である。
【0054】
更に本発明の課題は、製薬学的に入手可能な本発明の化合物の塩基性または酸性の付加塩、水和物、溶媒和物、前駆体、代謝物または立体異性体である。
【0055】
“製薬学的に入手可能な塩”とは、本発明の化合物の遊離塩基と好適な有機酸または無機酸とを反応させることにより一般に製造可能な、本発明の化合物の非−毒性塩を意味する。これらの塩は遊離塩基の生物学的効力および特性を保持している。このような塩の代表例として以下のものが挙げられる:水溶性塩および水不溶性塩、例えばアセタート、アンソナート(4,4−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホナート)、ベンゼンスルホナート、ベンゾナート、ビカルボナート、ビスルファート、ビタルトラート、ボラート、ブロミド、ブチラート、カルシウムエデタート、カンシラート、カルボナート、クロリド、シトラート、クラバラリアート、ジクロロハイドレート、エデタート、エジシラート、エストラート、エシラート、フマラート、グルセプタート、グルコナート、グルタマート、グリコリルアルサニラート、ヘキサフルオロホスファート、ヘキシルレゾルシナート、ヒドラバミン、ブロモハイドレート、クロロハイドレート、ヒドロキシナフトアート、イオジド、イソチオナート、ラクタート、ラクトビオナート、ラウラート、マラート、マレアート、マンデラート、メシラート、メチルブロミド、メチルニトラート、メチルスルファート、ムカート、ナプシラート、ニトラート、3−ヒドロキシ−2−ナフトアート、オレアート、オキサラート、パルミタート、パモアート(1,1−メチレン−ビス−2−ヒドロキシ−3−ナフトアート、エンボアート)、パントテナート、ホスファート/ジホスファート、ピクラート、ポリグルクロナート(例えばポリガラクトウロナートおよびポリグルクロナート)、プロピオナート、p−トルエンスルホナート、サリチラート、ステアラート、スバセタート、サクシナート、スルファート、スルホサリチラート、スラマート、タンナート、タルトラート、テオクラート、トシラート、トリエチオジド、バレラートおよびN−メチルグルカミンアンモニウム塩。
【0056】
本発明の課題はまた、活性成分として、本発明の化合物を少なくとも1つ含有する組成物である。更に、そのような組成物を、生物学、製薬、化粧品、農業、診断または追跡に関係のある配合品および製品に利用することも、その課題である。
【0057】
さらに特に本発明の課題は、本発明の化合物を少なくとも1つ含有する製剤であり、この際、前記製剤は製薬学的に入手可能な賦形剤、ベクター、希釈剤または医薬品添加剤を組み合わされていてよい。
【0058】
被験者は、本発明の化合物を製薬学的有効量で投与され得る。“製薬学的有効量”とは、従事する研究者や医者が、組織、系、動物または人間に生物学的または医学的レスポンスをもたらすことができると期待する量を意味する。
【0059】
前記組成物はまた、治療法を改善し治療範囲を拡大する目的で、本発明の化合物と一緒に別の医薬活性成分を少なくとも1種または当業者に公知の補助剤(ビタミンC、抗酸化剤等)を少なくとも1種含有するかまたは組み合わされていてよい。
【0060】
この組成物は極めて僅かな毒性しか有さないかまたは毒性が無いので非常に有用である。
【0061】
本発明の製剤は例えばウイルス感染症、転移、細胞アポトーシス(変性疾患、組織虚血等)、感染症(ウイルス感染症、細菌感染症、真菌症等)、癌および異常血管新生の予防または治療の目的で、in vivoで使用できる。
【0062】
本発明の化合物の投与は、治療薬に可能な任意の投与方法で実施できる。そのような方法には、全身投与、例えば経口、経鼻、非経口または局所投与、例えば経皮吸収または中枢投与、例えば頭蓋内への外科的経路を介した投与、または眼内への投与が含まれる。
【0063】
経口投与は、錠剤、カプセル剤、軟カプセル剤(遅延放出型または延長放出型製剤を含む)、ピル、粉剤、顆粒剤、エリキシル剤、染色剤、座剤、シロップ剤および乳剤を用いて実施できる。提示した剤形はまた、腸管バリアの通過に特に好適である。
【0064】
非経口投与は、通常、皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射または潅流により実施される。注射可能な組成物は一般的な剤形、すなわち懸濁剤または液剤、あるいは液体へ即時溶解できる固形剤の形に製造できる。
【0065】
非経口投与では、例えば米国特許第3710795号明細書に記載されるように、一定用量を維持できる徐放型または延長放出型の系を導入してよい。
【0066】
鼻腔内投与の際、適する鼻腔内用賦形剤を使用できる。
【0067】
経皮吸収の際、当業者に公知の経皮性の皮膚パッチを使用できる。経皮放出システムでは持続投与が可能である。
【0068】
その他の好ましい局所製剤には、クリーム、薬用軟膏製剤、ローション、エアゾールスプレーおよびゲルが含まれる。
【0069】
指定の投与方法に応じ、化合物は固体、半−固体または液体であってよい。
【0070】
錠剤、ピル、粉剤またはそのままの状態の顆粒またはカプセルに装入された顆粒のような固体製剤では、活性成分を医薬品添加剤と組み合わせることができる、例えば:a)希釈剤、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロースおよび/またはグリシン;b)滑沢剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、そのマグネシウムおよびカルシウム塩および/またはポリエチレングリコール;c)結合剤、例えばマグネシウムシリカートおよびアルミニウムシリカート、でんぷんペースト、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、必要であれば炭酸ナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドンを含むカルボキシメチルセルロース、d)崩壊剤、例えばでんぷん、アガー、アルギン酸またはそのナトリウム塩、あるいは発泡剤;および/またはe)吸収剤、着色剤、芳香剤および甘味料。
【0071】
座剤のような半−固体製剤では、医薬品添加物として、例えば脂肪性の乳濁液または懸濁液あるいはポリプロピレングリコールのようなポリアルキレングリコールをベースとする添加物を使用できる。
【0072】
液体製剤、中でも注射用または軟カプセル装入用の液体製剤は、本発明の化合物を例えば、水、塩化ナトリウム(Nacl)生理食塩液、生理学的血清、含水性デキストロース、グリセロール、エタノール、油のような製薬学的に純粋な溶剤に溶解したり分散させる等して製造できる。
【0073】
本発明の化合物はまた、リポソームまたはリポプレックス型放出系の形体、例えば小さな単層小胞、大きな単層小胞および多層小胞の形体で投与できる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルクロリンを含む様々なリン脂質から形成され得る。1つの形態として、米国特許第5262564号に記載されるように、液体成分のフィルムを医薬品水溶液で水和して医薬品を封入した脂質層を形成することができる。
【0074】
本発明の組成物は滅菌が可能であり且つ/または無毒性の補助剤および補助物質、例えば保存剤、安定剤、湿潤剤または乳化剤;溶解促進剤;浸透圧を調節するための塩類および/またはバッファーを含有してよい。更に治療上の利点をもたらす別の物質を含有してもよい。組成物は、個々に、一般的な混合、造粒、被覆方法を経て製造される。
【0075】
本発明の化合物の投与量は、被験体の種類、系統、年齢、体重、性別および医学的症状;治療すべき症状の重症度;投与法;被験体の腎機能および肝機能の状態および使用する化合物または塩の性質を含む、様々なy因子に応じて選択される。通常、経験をつんだ医師または獣医師であれば、治療すべき医学的症状の進行を防いだり、妨げたり、食い止めたりするのに必要な化合物の有効量を容易に決定し処方することができると考えられる。
【0076】
前記した任意の製剤は、活性成分を0.1〜99%、好ましくは1〜70%含有する。
【0077】
例えば、所望の結果を得るために使用される本発明の化合物の経口投与量は、経口で0.05〜5000mg/日、好ましくは5〜1000mg/日の範囲であると考えられ、活性成分を0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100.0、250.0、500.0および1000.0mg含む錠剤の形体で投与されるのが好ましい。非経口投与では、本発明の化合物の有効レベルは、体重1kgおよび1日あたり0.002mg〜500mgの範囲であると考えられる。
【0078】
本発明の化合物は、1日1回の形式で投与してもよくあるいは1日の全体量を日に2、3ないし4回に分割して投与してもよい。
【0079】
特に、本発明は、本発明の化合物の少なくとも1つから構成されるかまたは本発明の化合物の少なくとも1つを含む、in vitroで使用される、診断用医薬品に関する。本発明の化合物はさらに、有利な物質(I)としてマーカーを有する。このような診断用医薬品はin vivoでも使用できる。
【0080】
従って、本発明の課題は、前記診断用医薬品を含む診断用キットでもある。特にこの診断用キットは、1つ以上のコンテナ中に、本発明の組成物を所定量含有する。
【0081】
本発明の他の利点および特徴は以下の実施例で例証することにより明らかにされ、その際、以下の図面を参照すること。
【0082】
図1は、ドキソルビシンのPEG化プロドラッグの2つの合成方法の概略を示す図である。
【0083】
図2は、MCF−7/6細胞に対するドキソルビシン、βALAL−Dox、PEG2000−βALAL−Dox、PEG2000−DSer−βALAL−DoxおよびPEG2000−(DSer)4−βALAL−Doxの細胞毒性試験を示す図である。細胞生存率は、細胞生存試験(WST−1、Roche Molecular Diagnostic)で評価した。グラフ2A、B、C、DおよびEは、それぞれ、ドキソルビシン(A)、βALAL−Dox(B)、PEG2000−βALAL−Dox(C)、PEG2000−DSer−βALAL−Dox(D)およびPEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox(E)の濃度の対数に対するMCF7/6株細胞の生存率(コントロールに対する%)を示している。
【0084】
図3は、LS−174−T腫瘍を持つ異種移植マウスの平均体重の変動をグラフで示している。結果は処理時に測定した体重に対するパーセンテージで表記されている:(●)NaCl、(■)ドキソルビシン6.69μmol/kg、(▲)ドキソルビシン8.6μmol/kg、(○)Su−βALAL−Dox45μmol/kg、(+)Su−βALAL−Dox50μmol/kg、(×)PEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox 1×45;3×25μmol/kg、(*)PEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox 1×50;3×35μmol/kg。
【0085】
図4は、コントロール(NaCl)に対して薬剤を処理したLS−147−Tヒト結腸癌腫瘍を持つ無胸腺マウス群の相対腫瘍体積(RTV)の平均値の変動を、各日処理を始めた日を基準にしたパーセンテージでグラフ表記した図である:(●)NaCl、(■)ドキソルビシン6.69μmol/kg、(▲)ドキソルビシン8.6μmol/kg、(○)Su−βALAL−Dox45μmol/kg、(+)Su−βALAL−Dox50μmol/kg、(×)PEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox 1×45;3×25μmol/kg、(*)PEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox 1×50;3×35μmol/kg。
【0086】
図5は、NaCl0.9%(w/v)溶液をコントロールとして、ドキソルビシン(Dox)、PEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox、Su−βALAL−Doxをそれぞれ6.69μmol/kg、1×50+3×35μmol/kg、50μmol/kgで投与した場合のLS−174T腫瘍の第1増殖期および第2増殖期の阻害を比較する図である。全てのマウスは、0、7、14および21日目に4回の静脈内注射を受けた。相対腫瘍体積(RTV)の平均値の最小T/C率(T/Cmin.)は、最大効果の指標である。コントロール群に対して薬剤処理された群のRTVの平均値の倍加時間の差(T−C)ならびにSGD(特異的増殖遅延)は、増殖期の直線回帰から算出され、EORTCの定めた判断基準に沿って活性度を決定する。コントロール群に対する薬剤処理群のRTV平均値の変動の回帰勾配(T/C勾配)の直線比率は、パーセントで表記され、増殖率比較パラメータを用いて求められる。
【0087】
図6は、血清培地中での、βALAL−Dox(A)、PEG2000−βALAL−Dox(B)およびPEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox(C)のin vitro中における安定性試験の図である。結果は、時間毎のHPLCで測定された複合体濃度を示している。
【0088】
図7は、化合物ALAL−Dox(A)、βALAL−Dox(B)、PEG2000−βALAL−Dox(C)およびPEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox(D)のヒト全血中での安定性試験の図である。結果は、時間毎のHPLCで測定された複合体および形成され得る代謝物の濃度の変動を示している。
【0089】
図8は、HCT−116ヒト結腸癌腫瘍を持つ無胸腺マウスの平均体重の変動をグラフで示した図である。結果は薬剤処理時に測定した体重に対するパーセンテージで表記されている:(●)NaCl、(+)Su−βALAL−Dox30μmol/kg;(▲)PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox53μmol/kg;(*)PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox110μmol/kg。
【0090】
図9は、薬剤処理群(T)とコントロール群(C)のRTV平均値の比の変動からHCT−116腫瘍の増殖阻害を示したものであり、パーセンテージ(T/C(%))で表記される。処理:(●)NaCl、(+)Su−βALAL−Dox30μmol/kg;(▲)PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox53μmol/kg;(*)PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox110μmol/kg。
【0091】
図10は、HCT−116腫瘍を持つ異種移植マウスの生存率の変動をグラフで示した図である(%で表記)。処理:NaCl(−●−)、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox200μmol/kg(……▲……)、300μmol/kg(−−▲−−)、400μmol/kg(−▲−);PEG2000−ALAL−Dox200μmol/kg(……■……)、300μmol/kg(−−■−−)、400μmol/kg(――■――)。
【0092】
図11は、薬剤処理群(T)とコントロール群(C)のRTV平均値の比の変動からHCT−116腫瘍の増殖阻害を示しており、パーセンテージ(T/C(%))で表記される。:NaCl(−●−)、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox200μmol/kg(……▲……)、PEG2000−ALAL−Dox200μmol/kg(……■……)。
【0093】
図12は、B16−BL6(%)メラノーマ腫瘍を持つ移植マウスの生存率の変動をグラフで示した図である。薬剤処理:コントロールPBS(●);(PEG5000−ALAL)n−TNFα(■);(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n―TNFα(▲);(PEG5000)n−TNFα(◆)。
【0094】
図13は、B16−BL6メラノーマ腫瘍を持つ移植マウスの平均体重の変動をグラフで示した図である。結果は薬剤処理時に測定した体重に対するパーセンテージで表記される。コントロールPBS(●);(PEG5000−ALAL)n−TNFα(■);(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFα(▲);(PEG5000)n−TNFα(◆)。
【0095】
図14は、薬剤処理群(T)とコントロール群(C)のRTV平均値の比の変動からB16−BL6腫瘍の増殖阻害を示しており、パーセンテージ(T/C(%))で表記される。:コントロールPBS(●);(PEG5000−ALAL)n−TNFα(■);(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFα(▲);(PEG5000)n−TNFα(◆)。
【0096】
実施例1:材料および方法
1.1)細胞株
MCF7/6細胞:1970年に肺の線癌を患う患者の胸水から得たMCF−7株(Michigan Cancer Foundation、Engel等、1978)の変異株(Soule等、1973)。この細胞はゲントにあるマリール教授の研究室(Experimental Cancerology Laboratory、ゲント大学病院、ベルギー)から入手される。
【0097】
LNCap細胞:1977年にホロゼヴィック(Horoszewic)等により、転移性の前立腺癌を患う患者の鎖骨上リンパ節の生検材料から単離された。この株はATCC(American Type Culture Collection、USA)から入手される。
【0098】
LS−174T細胞株:結腸癌を患う女性から得たLS180株の変異株である。この細胞は無胸腺マウスに接種すると非常に速い速度で腫瘍を形成する。この細胞はECACC(European Collection of Cells Cultures、UK)から入手される。
【0099】
HCT−116株:ヒト結腸の癌細胞の一次培養物から樹立した細胞株。この細胞は無胸腺マウスに皮下注射すると腫瘍を形成する。この細胞はATCC(American Type Culture Collection、USA)から入手される。
【0100】
1.2)化学療法試験に使用する抗癌剤
ドキソルビシンは、明治製菓株式会社(東京、日本)から提供され;サクシニル−βAla−Leu−Ala−Leu−ドキソルビシン(Su−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox)(Fernandez等、2001)、PEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu−DoxおよびPEG2000−(DSer)4−Ala−Leu−Ala−Leu−Doxは合成した。
【0101】
1.3)動物
NMRIまたはSWISSの雌のマウス、ヌード/ヌード(JANVIER飼育施設から輸送後5週間)を使用した。
動物の取り扱いは、その使用および実験的化学療法試験中の動物の健康に関し、UKCCCR(United Kingdom Coordinating Committee on Cancer Research;Workman等、1998)およびFELASA(Federation of European Laboratory Animal Science Associations;Nicklas等、2002;Rehbinder等、2000;Rehbinder等、1996)の推奨する方法に従って実施した。
【0102】
2)ドキソルビシンのPEG化誘導体型プロドラッグの合成
ドキソルビシンのPEG化誘導体型プロドラッグの合成は、2つの異なる方法“A”および“B”で実施された(図1)。
【0103】
2つの方法のいずれかで合成されたドキソルビシンのPEG化誘導体型プロドラッグは以下のものである:
−PEG2000−(DSer)4−βAla−Leu−Ala−Leu-ドキソルビシン
(1)
−PEG2000−(DSer)4−Ala−Leu−Ala−Leu-ドキソルビシン(2)
−PEG2000−(DSer)−βAla−Leu−Ala−Leu-ドキソルビシン(3)
−PEG2000−βAla−Leu−Ala−Leu-ドキソルビシン(4)
−PEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu-ドキソルビシン(5)。
【0104】
化合物1、3および4は方法“A”で合成され、化合物2および5は方法“B”で合成された。
【0105】
注記:Ala−Leu−Ala−Leu−ドキソルビシンおよびβAla−Leu−Ala−Leu−ドキソルビシンプロドラッグは特許明細書WO96/05863に記載されていた。
【0106】
2.1)合成法“A”
方法の原理は、NH2−ペプチド−ドキソルビシン化合物の溶液中でのPEG化である。クロロホルム/メタノール混合物(4:1)に溶解したmPEG2000−SPA(mPEG2000−サクシンイミジルプロピオナートエステル)1.5mol等量(Nektar)とジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)5μlを、クロロホルム/メタノール混合物(4:1)に溶解したNH2−ペプチド−ドキソルビシン生成物(合成法の3工程を実施後に予め得られている生成物、図1参照)へ添加する。
【0107】
約48〜72時間後、反応の最終生成物をHPLCクロマトグラフィーを用いて分析する(以下の段落2.2参照)。
【0108】
生成物(3)および(4)をpH4(乳酸を使用)でジクロロメタンを用いて抽出する。生成物は有機相に蓄積する、これを真空蒸着により濃縮し、その後、凍結乾燥させる。
【0109】
2.2)合成法“B”:Fmoc(フルオロエニル−Lメトキシカルボニル)化学による固形物質上でのペプチド合成(SPPS)
方法の原理は、固形ポリマー物質(Wang型樹脂)上でのPEG化ペプチド配列の合成とその後のPEG2000−ペプチド−OH生成物とドキソルビシンの結合である。
【0110】
SPPSの原理は、所定のペプチドの様々なアミノ酸を固相物質(Wang型樹脂)へ連続的に結合させることであり、当業者に公知の方法で実施される(Merrifield、1963および1965;StewardおよびYoung、1969)。
【0111】
固相物質上でのペプチド合成
合成ペプチドは例えば、手動合成反応装置(AnaSpec)中で、Fmoc基を用いる化学的手段を利用し、固相物質上でペプチド合成することにより取得される。固相物質上の合成で使用される全ての樹脂(AnaSpecまたはNovabiochem)はWang型樹脂であり、この樹脂は、供給業者が最初の置換で樹脂1gに対して0.4〜0.7mmolとなるよう予め結合させた第1の保護アミノ酸を有する。Fmocアミノ酸はAnaSpecまたはNovabiochemから提供され、側鎖に保護基を有している、例えば:トリチル(Asn,Cys、Gln、およびHis)、Acm(Cys)、Boc(LysおよびTrp)、O−tert−ブチル(AspおよびGlu)、tert−ブチル(Ser、Thr、Tyr)およびPbf(Arg)。所望の分子量を有する様々なポリエチレングリコール(PEG−SPA)は、Nektarから予め活性化したヒドロキシサクシンイミジル(OSu)エステルの形で入手される。Fmoc基の脱保護はジメチルホルムアミド(DMF)中でピペリジンを処理することにより実施される。合成時に使用される結合剤は、DMF中のHCTU(1H−ベンゾトリアゾイウム1−[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]−5クロロヘキサフルオロホスファート(1−)の3−オキシド)またはHBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,−1,3,−3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)またはHATU(O−(7―アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,−N,−N’,−N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)である。一般的なアミノ酸結合サイクルを以下のようにして実施する:3×30秒、DMFで洗浄;3×2分、次に1×7分、DMFで20%に希釈されたピペリジンを用いて脱保護;5×20秒、DMFで洗浄;2×15分、アミノ酸(2等量)、結合剤(2等量)およびDIPEA(4等量)を用いて結合、その後3×30秒DMFで洗浄。市販時当初の樹脂が有する置換基を、所望の配列に応じて、結合すべき第1Fmoc−AA−OH 0.5〜0.3モル等量を添加することにより還元し(最終的に望ましいとされる置換基の割合は0.1〜0.22mmol/g)、残るアミノ基をアセチル化する(Virender等、1981)。各アミノ酸の結合を、当業者に公知のカイザー試験(Kaiser等、1970)により確認する。全てのアミノ酸が所望の配列に応じて結合した後、2×2日間、活性エステルPEG−SPA(Nektar)およびDIPEAを結合させることにより、Wang型固相物質上でPEG化が起こる。
【0112】
Wang型固相物質へPEG化ペプチドを結合させている共有結合の化学的切断は、トリフルオロ酢酸(TFA):水:トリイソプロピルシラン(TIS)を95:2.5:2.5で含む混合物を、手動合成反応装置中の完全に乾燥した樹脂へ3時間添加することにより実行される。PEG化ペプチドを冷エタノールで沈殿させ、遠心し、エタノールで洗浄し、凍結乾燥させる。
【0113】
HPLCクロマトグラフィーによる分析
VYDAC−タイプのカラム(逆相)(C8.5μm、250×4.6mm)を用い、トリフルオロ酢酸(TFA)の水中0.1%溶液を第1溶離液(溶離液A)ならびにTFAのアセトニトリル(ACN)中0.1%溶液を第2溶離液(溶離液B)とし、25分間に溶離液Bを0%〜70%の勾配をかけて流すことにより、酸ペプチドを分析した。
【0114】
2.3)合成例:PEG2000−(DSer)4−Ala−Leu−Ala−Leu-ドキソルビシン(2)およびPEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu−ドキソルビシン(5)の合成
ドキソルビシン1.2モル等量、DMF中に溶解したHClおよびDIPEA3.2モル等量を、固相物質上で合成して得られたPEG2000−ペプチド−OH(PEG2000−(DSer)4−Ala−Leu−Ala−Leu−OHまたはPEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu−OH)へ添加する。混合物を遮光し、周囲温度で15分撹拌し、HATU(結合剤、PE Biosystem)1.3モル等量を添加する。HPLCクロマトグラフィー分析(前記項目2.3参照)まで、反応を約3時間実施する。反応終了時、溶剤を真空蒸発させる。残った生成物を水に取り込み、ジクロロメタンで抽出する。生成物(5)は最初に水相へ回収されるが、生成物(2)はむしろ有機相へ蓄積する。生成物(2)を含む有機相を真空蒸着により濃縮し、生成物を周囲温度でエーテル中に沈殿させる。得られた沈殿物を水に溶かし、凍結乾燥させる。生成物5を含む水相を回収し、アセトンとドライアイスから成る浴中で凍結させ、次いで凍結乾燥する。凍結乾燥させる前に、生成物をHPLCで分析した(前記項目2.2参照)。
【0115】
3)細胞培養に用いる生成物溶液の調製
in vitroでの細胞培養実験に使用する生成物はドキソルビシン、βAla−Leu−Ala−Leu−ドキソルビシン、PEG2000−(DSer)4−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(1)、PEG2000−(DSer)−βAla−Leu−Ala−Leu-Dox(3)、PEG2000−βAla−Leu−Ala−Leu-Dox(4)、PEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu−Dox(5)である。
【0116】
生成物を、極僅かな水に溶解し、穴の大きさが0.22μmのダイ(dye)を通して濾過滅菌する。溶液の濃度は吸光度を測定して判断する(ドキソルビシンのモル吸光係数に基づいて495nmで測定、ε=10837M−1cm−1)
【0117】
4)細胞培養
下記の実験に使用する培地は、ウシの胎児血清10%を含むグルタマックス−1を含有するRPMI 1640培地である(SBF:Gibco−BRL)。
【0118】
5)細胞毒性試験
ドキソルビシンおよび誘導体の細胞毒性試験は、MCF−7/6細胞およびLNCaP細胞を用いて実施した。
【0119】
細胞をトリプシンで剥離し、計数し、血清培地200μlの入った96穴プレートへ接種する。
【0120】
細胞を37℃で24時間インキュベートし、試験用の生成物を添加する:
ドキソルビシン、
βAla−Leu−Ala−Leu−Dox、
PEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu−Dox(5)、
PEG2000−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(4)
PEG2000−DSer−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(3)
PEG2000−(DSer)4−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(1)
これを血清培地で様々な濃度に希釈する。種々の化合物の存在下に48時間インキュベートした後、細胞を最後に血清培地のみの存在下に37℃で24時間ポスト−インキュベートする。このインキュベートの後、細胞の生存率試験を行う(WST−1、Roche Molecular Biochemical)。
【0121】
6)ドキソルビシンのPEG化誘導体プロドラッグの安定性および加水分解試験
6.1)ドキソルビシンのプロドラッグβALAL−Doxが腫瘍細胞から分泌されるペプチダーゼにより再活性化される際の、PEG化の効果
腫瘍細胞(MCF−7/6、LS−174T、LNCaP)を混合して継代培養したものを食塩加リン酸バッファー溶液で2回洗浄し、血清を含まずウシ血清アルブミン0.02%を含む新しい培地を添加する(100μl/cm2)。24時間のインキュベーションの後、調整培地を除き、300gで10分遠心し、1MのTris−HClバッファー(pH7.5)で緩衝させ(バッファー1体積+培地19体積)、限外濾過で20回濃縮する(濾過限界は10kDa)(Tris:トリスヒドロキシメチル−アミノメタン)。
【0122】
腫瘍細胞が分泌するペプチダーゼによる、ドキソルビシン誘導体(βALAL−Dox)のPEG化ペプチドプロドラッグの再活性化を、最初のプロドラッグであるβALAL−Doxの再活性化と比較する、この際、βALAL−Doxは腫瘍細胞で調整された培地でインキュベートする間にLeu−Doxとドキソルビシンとに加水分解される。化合物を調整培地で20μmolに希釈し、恒温浴で37℃で6〜18時間インキュベートする。化合物の加水分解をHPLC分析で定量化する(下記項目7.1参照)
【0123】
以下のPEG化プロドラッグを使用する。
PEG350−βALAL−Dox
PEG750−βALAL−Dox
PEG2000−βALAL−Dox
PEG5000−βALAL−Dox。
【0124】
6.2)培地での安定性
PEG2000−(DSer)4−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(1)、PEG2000−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(4)およびβAla−Leu−Ala−Leu−Dox(コントロール)を、ウシ胎児血清10%を含有する培地(血清培地)500μlで20μmolに希釈する。サンプルを24穴プレートに分配し、CO2 5%を含む飽水雰囲気下に37℃でインキュベートする。各生成物に関し、抽出(アセトニトリルを用いた抽出法、下記項目7.3参照)を、0時間、インキュベート後の1、2、6および24時間の時点で、三重反復試験の形で実施する。サンプルを次にHPLCクロマトグラフィーで分析する(下記項目7.3参照)。
【0125】
6.3)ヒト全血での安定性
PEG2000−(DSer)4−βAla−Leu−Ala−Leu−ドキソルビシン(1)、PEG2000−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(4)、βAla−Leu−Ala−Leu−DoxおよびAla−Leu−Ala−Leu−Doxをヒト全血(採取後、5mlの滅菌済みクエン酸入りチューブに4℃で保存)500μlで20μmolに希釈する。サンプルを含むチューブを37℃でインキュベートする。各生成物の抽出(アセトニトリルを用いた抽出法、下記項目7.3参照)を、0時間、インキュベート後の1、2、4および6時間の時点で、三重反復試験の形で実施する。
【0126】
7)分析法
7.1)基礎的な抽出
抽出すべきサンプル25μl、水500μlおよび内部標準(プロリル−ダウノルビシン3.45μmol)100μlを、有機クロロホルム/メタノール混合物(4:1)2.5mlを含むチューブへ添加する。塩基性バッファー(0.5Mボラートバッファー600μl、pH9.8)の添加後、チューブを速やかに5秒撹拌し、1800gで10分遠心する。
【0127】
有機相を回収し、空気流の下で乾燥させる。アセトニトリル30%およびアンモニウムホルマートバッファー(pH4)10%を含む混合物500μlを添加して、サンプルを溶解する。次いでサンプルを濾過し、HPLCクロマトグラフィーで分析する(下記項目7.3参照)。
【0128】
7.2)アセトニトリルによる抽出
内部標準(プロリル−ダウノルビシン)10μlおよび50μmolのアセトニトリル150μlを、抽出すべきサンプル50μlの入ったチューブへ添加する。チューブを撹拌し、13000gで10分遠心する。上清をホルマートバッファー(pH4)で4倍希釈し、遠心し、HPLCクロマトグラフィーで分析する(下記項目7.3参照)。
【0129】
7.3)HPLCによるクロマトグラフィー分析
全ての生成物サンプル(PEG2000−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(4)、PEG2000−(DSer)4−βAla−Leu−Ala−Leu−Dox(1)、PEG2000−Ala−Leu−Ala−Leu−Dox(5)、βAla−Leu−Ala−Leu−DoxおよびAla−Leu−Ala−Leu−Dox)について、VYDAC(C8.5μm、250×4.6mm)のようなカラム(逆相)を用い、HP1100システム(Agilent)を利用して、HPLCクロマトグラフィー分析を行う。ドキソルビシンおよびその誘導体は蛍光検出され(Lambdaexc.=235nm;Lambdaem.=560nm)、それぞれの相対的滞留時間を内部標準と比較することにより同定される。濃度は、HPCLクロマトグラフィーで見られるピークの積算表面を基準に算出される。
【0130】
得られた安定曲線(時間に対する濃度の変動)は生成物の安定性評価を可能にし、加水分解試験では、6時間のインキュベートの後に得られるLeu−DoxおよびDoxの量を総括した表を用いることで、腫瘍細胞から分泌される酵素によるPEG化誘導体の加水分解の度合いを評価できる。
【0131】
8)ドキソルビシンのPEG化誘導体プロドラッグの腫瘍再活性化試験(in vivo)
ドキソルビシンのPEG化誘導体プロドラッグ(Su−βALAL−Dox)の腫瘍再活性化について、LS−174Tヒト結腸癌を異種移植した無胸腺マウスで測定した。以下のPEG化誘導体を使用した:PEG2000−βALAL−DoxおよびPEG2000−βALALDox。
【0132】
マウスに、69μmol/kgの量で様々な化合物を、静脈内ボーラス(静脈内)注射した。動物は注射後2〜72時間で死亡し、腫瘍内に蓄積した活性分子(Leu−Dox+Dox)をHPLCクロマトグラフィーで定量化した(上記項目7.3参照)。
【0133】
9)皮下に異所異種移植したモデルを用いたドキソルビシンPEG化誘導体プロドラッグの化学療法試験
ヒト起源の腫瘍LS−174TまたはHCT116(ヒト結腸癌)を予め皮下移植した無胸腺マウスを用いて、実験的化学療法試験を行った。
【0134】
腫瘍体積が等しく分布するようにマウスを選択し、異なる群へ分配した。異なる治療薬を、形成された群に無作為に割り当てた。
【0135】
治療薬を尾静脈へ静脈内投与する。注射中に、動物は、一定体積の生成物10μl/gを投与される(Workman等、1998)。注射後、臨床症状を適時に追跡し(初日は1時間毎、試験終了まで1日毎)、体重と腫瘍体積(mm3)を同時に測定する。はさみ尺を用いて腫瘍の直交する2直径(“対角線”)(最長および最短の“対角線”)を測定することにより、腫瘍の増殖を週2回で監視する。
【0136】
異なる群で腫瘍体積の変動を測定するために、0日目の平均腫瘍体積に対する変動として相対腫瘍体積(RTV=relative tumor volume)の平均値を算出し、パーセント表示する。パーセント表示された薬剤処理群(T)とコントロール群(C)の平均RTV比(T/C(%))を算出し、種々の治療薬の有効性を評価する。
【0137】
T/C比の最低値は使用される生成物の最大効果を推測するための指標である。
【0138】
腫瘍増殖の阻害時間は、薬剤処理群とコントロール群間のRTV平均値の倍加増殖(倍加時間=DT=Doubling Time)の遅延(T−C)を算出することで評価される(図5ではコントロール群の倍加時間を200%で表示している)。特異的増殖遅延(SGD=Specific Growth Delay)も、試験に関わる様々な群での平均RTVの倍加に要する時間から算出される。SGDは従って(DT処理群−DTコントロール群)/(DTコントロール群)に等しい。
【0139】
また、試験される様々な生成物の活性は、EORTC(European Organization for Reseach and Treatment of Cancer)(Boven等、1992;Langdon等、1994)の推奨する判断基準を基に評価され、結果を表Iに記載した。しかし、文献で提唱されている判断基準(Boven等、1992)は1つの直線増殖期を示す腫瘍にしか適用されないので、化合物の有効性を推定する方法は翻案である。
【0140】
使用されるLS−174−T細胞は2つの増殖期を示すのが特徴で、最終増殖期(フェーズ2)は最初の増殖期(フェーズ1)よりもかなり速い。このような理由から、増殖遅延(T−C)および特異的増殖遅延(SGD)は、腫瘍増殖に特徴を有する異なるフェーズの直線回帰により算出された。
【0141】
以下の表1は、EORTC(Boven等1992;Langdon等、1994)の推奨する判断基準に従って化学療法剤の有効性を評価したものである。活性レベル:−=活性無し;(+)=非常に低い活性;+=低い活性;++=中等度の活性;+++=顕著な活性;++++=非常に顕著な活性。
【0142】
【表1】
【0143】
10)皮内異所移植モデルを用いたTNF-αのPEG化誘導体の化学療法試験
10.1)細胞株
B16−BL6細胞:マウスのメラノーマ細胞であり、in vivoにおける膀胱への浸潤能および肺への高い自然転移能により選択される。この細胞は“NCI−Frederic Cancer Research and Development Center”、メリーランド、USAから入手される。
【0144】
10.2)化学療法試験に用いる抗癌剤
RhTNF−α(“組み換えヒト腫瘍壊死因子α”は、Henogen(ゴスリー、ベルギー)から提供される。
【0145】
(PEG5000)n−TNFα(PEG5000−Ala−Leu−Ala−Leu)n−TNFαおよび(PEG5000−(DSer)4−Ala−Leu−Ala−Leu)n−TNFα複合体を合成した。“n”は1〜18である(18はTNFα分子が三量体である場合の全リジン数であり、TNF単量体は6つのリジン残基を有することが知られている)。(PEG-ペプチド)n−TNFα誘導体の合成は以下のようにして実施される:ペプチドを固相で合成し、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下に活性化ポリエチレングリコール(PEG)と結合させてN−ヒドロキシサクシンイミド型とする。精製後、DMFに溶解しているPEG−ペプチド−OHを当業者に公知の結合剤(例えば:TSTU、2−サクシンイミド−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート)の存在下に活性化させる。次に、マンニトール1%を含有する20mmolのホスフェートバッファー(pH7.4)に溶解しているrhTNFαを添加し、反応混合物を周囲温度で一晩撹拌する。結合生成物を回収し、過剰PEG-ペプチド−OHを限外濾過して除く。最終生成物の濃度をたんぱく質量から測定する。
【0146】
10.3)動物
雄のC57BL/6Jマウス(Charles River Laboratoriesから輸送後5週間、フランス、飼育場)を使用する。
【0147】
動物の取り扱いは、その使用および実験的化学療法試験中の動物の健康に関し、UKCCCR(United Kingdom Coordinating Committee on Cancer Research;Workman等、1998)およびFELASA(Federation of European Laboratory Animal Science Associations;Nicklas等、2002;Rehbinder等、2000;Rehbinder等、1996)の推奨する方法に従って実施した。
【0148】
マウス起源のB16−BL6腫瘍(マウスメラノーマ)を予め皮内移植された普通のC57BL/6Jタイプの雄のマウスを用いて、実験的化学療法試験を行う。
【0149】
腫瘍体積が等しく分布するようにマウスを選択し、異なる群へ分配する。異なる治療薬を、形成された群に無作為に割り当てる。
【0150】
治療剤を0〜3日に静脈内投与する。注射中に動物は一定体積の生成物10μl/gを投与される(Workman等、1998)。注射後、臨床症状を適時に追跡し(初日は1時間毎、試験終了まで1日毎)、体重と腫瘍体積(mm3)を同時に測定する。はさみ尺を用いて腫瘍の直交する2直径(“対角線”)(最長および最短の“対角線”)を測定することにより、腫瘍の増殖を週2回で監視する。
【0151】
抗−腫瘍効果をT/C比の値から定量化する(最低値は最大効果に相当する)。測定方法は前記項目9に詳細される。
【0152】
実施例2:ドキソルビシンのプロドラッグβALAL−Doxが腫瘍細胞から分泌されるペプチダーゼにより再活性化される際の、PEG化の効果
化合物βALAL−Dox、PEG350−βALAL−Dox、PEG750−βALAL−Dox、PEG2000−βALAL−DoxおよびPEG5000−βALAL−Dox(20μmol)をMCF−7/6またはLS−174T腫瘍細胞の調整培地中で6時間インキュベートした。プロドラッグの再活性化(ドキソルビシンおよびLeu−Doxの放出)をHPLCクロマトグラフィーで測定した。
【0153】
以下の表2は、プロドラッグβALAL−DoxとそのPEG化誘導体の加水分解を示している。結果は、ドキソルビシン(Dox)とロイシル−ドキソルビシン(L−DoxまたはLeu−Dox)の濃度で表され、3回の独立実験で得られた平均値±標準偏差(n=9)で表記される。
【0154】
【表2】
【0155】
上記表に記載される結果はプロドラッグの再活性化を示すものであり、PEGの分子量が増加すると活性分子(Leu−Dox+ドキソルビシン)の放出が特に阻害されることが分かる。ドキソルビシンプロドラッグ(βALAL−Dox)のPEG化は腫瘍ペプチダーゼによるその再活性化を妨げる。この阻害はPEGの大きさに関する。そこで、発明者は、このような妨害がおそらく切断部位の接触容易性が制限される立体障害現象の結果ではないかという仮説を立てた。
【0156】
実施例3:ドキソルビシンプロドラッグのPEG化誘導体の腫瘍再活性に関するin vivo試験
ドキソルビシンプロドラッグ(βALAL−Dox)のPEG化誘導体のin vivoにおける腫瘍再活性化について、LS−174Tヒト結腸癌腫瘍を異種移植された無胸腺マウスモデルを用いて評価した。以下の表3は試験化合物の注射後2および72時間で腫瘍に蓄積されるDoxおよびLeu−Doxの平均濃度を示している(18匹のマウスから得られた平均)。
【0157】
【表3】
【0158】
上記表から、2種薬剤PEG2000−βALAL−DoxおよびPEG20000−βALAL−Doxが、コントロールであるSu−βALAL−Doxと比べ、DoxおよびLeu−Doxを再活性化しないことが分かる。すなわち、ドキソルビシンプロドラッグのPEG化は、腫瘍に係る再活性化を強く抑制する。
【0159】
実施例4:ドキソルビシンのPEG化プロドラッグの腫瘍細胞から分泌されるペプチダーゼによる再活性化に対してスペーサーの挿入がもたらす効果
βALAL−Doxプロドラッグ(20μmol)をLS−174TまたはLNCap腫瘍細胞の調整培地で6〜18時間インキュベートした。プロドラッグの再活性化(ドキソルビシンおよびLeu−Doxの放出)をHPLCクロマトグラフィーで測定した。
【0160】
2種類のスペーサーを試験した:
−4つの親水性Dセリン((DSer)4)残基
−6−アミノヘキサン酸残基(またはセリンよりも長い疎水性アミノ酸であるアミノカプロン酸)、Ahxと表記、の挿入。
【0161】
以下の表4は、Su−βALAL−Dox(コントロール)プロドラッグおよびPEG化βALAL−Dox誘導体の加水分解を示す。結果は、放出されるドキソルビシンおよびLeu−Doxをコントロールと比較してパーセンテージで表記している(n=3)。
【0162】
【表4】
【0163】
前記表の結果は、PEG化誘導体の加水分解が、Su−βALAL−Doxの場合と比べて明らかに減少することを再度示すものである。
【0164】
LS−174T細胞の調整培地で化合物をインキュベートした後では、PEGとβALAL−Doxの間に4つのD−セリン残基を挿入することにより、スペーサーを有さないまたは3つのAhx残基(疎水性スペーサー基)を有するPEG2000のPEG化誘導体と比較して、ドキソルビシンおよびLeu−Doxの放出は2倍に増加している。
【0165】
アミノヘキサン酸残基(疎水性アミノ酸)の挿入は、スペーサーを有さない誘導体と比べても、プロドラッグのPEG化誘導体の再活性化を促進しない。
【0166】
実施例5:ドキソルビシンプロドラッグのPEG化誘導体の細胞毒性試験
MCF−7/6腫瘍細胞をドキソルビシン、βALAL−Dox、PEG2000−βALAL−Dox、PEG2000−DSer−βALAL−DoxまたはPEG2000−(DSer)4−βALAL−Doxを濃度勾配をかけて含有する血清培地中で48時間インキュベートした。次に血清培地の存在下に24時間ポストインキュベートする。細胞の生存率試験(WST−1、Roche Molecular Diagnostic)により生成物の細胞毒性を調べる。
【0167】
3回の独立した試験結果を図2に示す。
【0168】
ドキソルビシンおよびβALAL−Dox化合物のIC50値(50%阻害濃度)はそれぞれ0.045μMおよび158.48μMであり、これはβALAL−Doxプロドラッグの性質を証明するものである。PEG2000−βALAL−Doxが500μmolの濃度まで細胞毒性を示さないので、βALAL−DoxおよびPEG2000−βALAL−Dox化合物が示すIC50平均値の比較から、PEG化によりプロドラッグの再活性化が阻害されることが分かる。PEGとβALAL−Doxの間にDSerを含むプロドラッグ(PEG2000−DSer−βALAL−Dox)は細胞毒性を示さない。これとは反対に、PEGとβALAL−Doxの間に分子スペーサー(DSer)4を有するプロドラッグ(PEG2000−(DSer)4−βALAL−Dox)は細胞毒性を示し、PEG2000−(DSer)4−βALAL−Doxはまさに非−PEG化プロドラッグ、βALAL−Doxと同等の活性(IC50=251.19μmol)を有する。
【0169】
この結果は、PEGとβALAL−Doxの間に4つのD−セリン残基を挿入することがPEG化プロドラッグの再活性化を可能にすることを示している。これに対して、スペーサーを有さないPEG化プロドラッグは再活性化できない。後者プロドラッグの細胞毒性は主に血液外での再活性化によるものであり、すなわち別の試験化合物と比べてドキソルビシンを多く放出する。
【0170】
実施例6:ドキソルビシンプロドラッグβALAL−DoxのPEG化誘導体の、LS−174Tヒト結腸癌異種移植モデルにおける有効性試験
ドキソルビシン、サクシニル−βAla−Leu−Ala−Leu−DoxおよびPEG2000−(DSer)4−Ala−Leu−Ala−Leu−Doxの抗−腫瘍活性を、LS−174T型のヒト腫瘍を異所異種移植された無胸腺マウス(ヌード/ヌードNMRI)モデルで試験した。生成物を静脈内注射した(10μl/g、1群あたりマウス6匹)。
【0171】
PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxを、最初に、50μmol/kgおよび45μmol/kgの量で静脈内ボーラス投与した。2種類の投与量で1匹が死亡した。
【0172】
投与量を7日目から減じた。PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxを35μmol/kgおよび25μmol/kgで注射した(週に1度、3回の注射)。別の化合物を0、7、14および21日目に週1回で静脈内ボーラス投与した(ドキソルビシン6.69および8.6μmol/kg、Su−βALAL−Dox45および50μmol/kg)。
【0173】
図3は、各日投与の開始から平均体重の変動をパーセントで示している。ドキソルビシンとPEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxを処理した群では2週間目まで顕著な体重減少は認められない。Su−βALAL−Doxを処理した群では僅かな体重減少が認められる。後者の場合、最大の体重減少は10%で、2つの処理群で32日目に認められる。
【0174】
図4は、コントロール(C)(NaCl)と比較した薬剤処理マウス群(T)の相対腫瘍体積(RTV)の平均値の変動を示している。最大耐量(MTD)より少ない量を投与しているにもかかわらず、全ての試験生成物は抗−腫瘍活性を有する。
【0175】
薬剤処理中、2つの腫瘍増殖期が観察された(図5)。第1増殖期では、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox(1×50+3×35μmol/kg)の活性はドキソルビシン(6.69μmol/kg)と同等であり、サクシニル−βALAL−Dox(50μmol/kg)より低い。これとは逆に、第2増殖期では、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxはドキソルビシンよりも活性であり、Su−βALAL−Doxと同等である。全体的に、Su−βALAL−Dox生成物(T/Cmin=26.6%;特異的増殖遅延(SGD=3.02))およびPEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox(T/Cmin=38%;SGD=1.58)はドキソルビシンよりも活性であることが分かった。
【0176】
実施例7;ドキソルビシンプロドラッグのPEG化誘導体の血清培地中での安定性
βALAL−Dox、PEG2000−βALAL−DoxおよびPEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox化合物の安定性を、ウシ胎児血清10%を含む培地に37℃で24時間インキュベートした後に測定した。初生成物および形成可能な代謝物の濃度をHPLCで定量化した。3種の試験複合体は血清培地中で安定である。分解生成物は検出されなかった(図6)。
【0177】
実施例8;ドキソルビシンプロドラッグのPEG化誘導体のヒト全血中での安定性
βALAL−Dox、PEG2000−ALAL−Dox、PEG2000−βALAL−DoxおよびPEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox化合物をヒトのクエン酸血で20μmolに希釈し、37℃でインキュベートした。様々な時点で、複合体および形成可能な代謝物の濃度をHPLCにより測定した。図7は、インキュベート時間に対する生成物濃度の変動を示している。
【0178】
ALAL−Dox化合物をコントロールとして使用した。後者は血液中に安定ではない。1時間後、出発物質の80%がLeu−DoxおよびDoxに分解される。他の3種の試験複合体はヒト全血に6時間安定である(図7)。6時間で、βALAL−Dox(Dox8%およびL−Dox10%)およびPEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox(Dox5%およびLeu−Dox5%)はほんの僅かに加水分解されただけであった。この結果は、オリゴペプチドの末端アミンをβアラニンで置換すると、血液中のペプチダーゼによる配列の加水分解が妨げられることを示している。試験されたPEG化誘導体の安定性は、天然ではないアミノ酸の存在(β−アラニンまたはd−セリン)および安定化基として使用されるPEGのおかげであると考えられる。
【0179】
実施例9.ドキソルビシンプロドラッグのPEG化誘導体βALAL−Doxの、HCT116ヒト結腸癌異種移植モデルでの有効性試験
HCT−116ヒト結腸癌をSwissヌード/ヌードマウスに皮内移植した異種移植モデルを使って、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxの抗−腫瘍効果をサクシニル−βALAL−Doxと比較した。動物はサクシニル−βALAL−Dox30μmol/kgまたはPEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox53および110μmol/kgを5回(5日連続)静脈内ボーラス投与された(マウス6匹/群)。薬剤処理群では死亡が確認されなかった。図8の結果は動物の体重の変動を表している。投与量にかかわらずPEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxに毒性は認められなかったが、サクシニル−βALAL−Doxを処理したマウスでは体重が減少した(試験終了時には約20%減、49日目)ことから、この群では最大耐量(MTD)に達していることが分かる。2つの期を示すT/C曲線により抗−腫瘍効果を示す(図9)。第1期では(21日まで)、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox(110μmol/kg)群が活性を示し、これはサクシニル−βALAL−Dox(30μmol/kg)でも同様である。第2期では、PEG化誘導体(110μmol/kg)の活性がサクシニル−βALAL−Doxの活性と比べて減少する。53μmol/kgでは、PEG化誘導体を処理した週に腫瘍増殖を抑制するどころか腫瘍退縮を誘導している。要するに、これらの結果は、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxがサクシニル−βALAL−Doxよりも低い毒性を示し、試験の第1期で活性化されることを意味している。本試験ではPEG化誘導体はMTDに達していない。
【0180】
実施例10.HCT−116ヒト結腸癌異種移植モデルにおける、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Dox対PEG2000−ALAL−Doxの化学療法試験
HCT−116ヒト結腸癌をSwissヌード/ヌードマウスに皮下移植した異種移植モデルを用いて、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxの抗−腫瘍効果をPEG2000−ALAL−Doxの抗−腫瘍効果と比較した。動物は化合物を200、300および400μmol/kgの量で5回(5日連続)静脈内ボーラス注射された(マウス5匹/群)。PEG2000−ALAL−Doxに対して、PEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxは300および400μmol/kgで毒性を有し、体重の減少と動物の死を招く(図10)。このような毒性はPEG2000−(DSer)4−ALAL−Doxの方がPEG2000−ALAL−Doxよりも細胞外区画で顕著に再活性化されることを示唆している。1等モルの非−毒性量(200μmol/kg)では、PEG2000−(DSer)4−ALAL−DoxはPEG2000−ALAL−Doxよりも強い抗−腫瘍効果を示す(図11)。この結果は、4つのセリンを立体配座Dで有する分子スペーサー保持化合物がより強い腫瘍再活性化を導くという仮説を再び支持するものである。このデータは、PEGとプロドラッグの再活性化時に切断され得る配列の間に4つのDセリンを挿入することで正の効果が得られることを明らかに実証するものである。
【0181】
実施例11:TNF−αのPEG化誘導体の有効性試験
B16BL6マウス腫瘍(マウスメラノーマ)を異所移植(皮内移植)されたC57BL/6J型の一般的な雄のマウスモデルを使用して、(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFαの抗−腫瘍活性を、(PEG5000)n−TNFαおよび(PEG5000−Ala−Leu−Ala−Leu)n−TNFαと比較した。
【0182】
複合体を、1kgあたりTNF−α2000μg等量で週に2回、1週間にわたって(0および3日)静脈内投与した。この投与量では即時的な毒性の徴候は見られなかった。
【0183】
図12は、動物の生存の変動を示す。薬剤処理群では、(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFαは6日目にマウスの40%を、10日目に60%を死に至らしめた。コントロール群を含む別の群の死亡率は20%を越えず(マウス5匹のうち1匹)、これはB16−BL6型腫瘍の浸潤性および転移性によるものと考えられる。
【0184】
図13は、薬剤を処理し始めてからの、時間に対する平均体重の変動を示す図である。最初の注射をした日に(PEG5000−ALAL)n−TNFαおよび(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFαを処理した群で顕著な体重減少が認められる(それぞれ15および28%)。2回目の注射の後、(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFαを処理した群で更に体重減少が進んでいる。後者の場合、最大体重減少は6日目の32%である。これに対して、(PEG5000−ALAL)n−TNFαを処理した群では、2回目の注射(3日目)の後に体重が回復している。(PEG5000)n−TNFαを処理した群では体重の減少が見られなかった。
【0185】
T/C(薬剤処理群(T)とコントロール群の(C)の平均RTVの比)の変動を基に得た抗−腫瘍効果を図14に示す(パーセンテージで表記)。結果から、たんぱく質の活性型の放出に必要なTNFαのプロドラッグの活性化は複合体の構造に応じて変化することがはっきりと分かる。(PEG5000)n―TNFαは不活性、(PEG5000−ALAL)n―TNFα(T/Cmin=51.7%(j3);SGD=1.66)は(PEG5000−(DSer)4−ALAL)n−TNFα(T/Cmin=16.7%(j6);SGD=3.72)よりも低い活性を示す。この結果から複合体の活性化と毒性は相関することが分かる。PEGとTNFαの間にペプチドが存在しなければ細胞毒性は低いかまたはゼロである(体重減少で判断)。これらの2つの部位の間にALAL結合を挿入すると生成物の毒性はより顕著になるが、これはその高い血液外再活性化を反映するものである。親水性スペーサー(DSer)4を挿入してこのペプチド(ALAL)を延長すると複合体の毒性は顕著に増加するが、明らかにこれは血液外区画での再活性化能が向上した結果である。
【0186】
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【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】本発明のドキソルビシンのPEG化プロドラッグの2つの合成方法の概略を示す図である。
【図2】本発明のプロドラッグのMCF−7/6細胞に対する細胞毒性試験を示す図である。
【図3】本発明のプロドラッグ処理時のLS−174−T腫瘍を持つ異種移植マウスの平均体重の変動を示す図である。
【図4】本発明のプロドラッグ処理時のLS−147−Tヒト結腸癌腫瘍を持つ無胸腺マウスの相対腫瘍体積(RTV)の平均値の変動を示す図である。
【図5】本発明のプロドラッグ処理時のLS−174T腫瘍の第1増殖期および第2増殖期の阻害を比較する図である。
【図6】本発明のプロドラッグの血清培地中安定性を示す図である。
【図7】本発明のプロドラッグのヒト全血中での安定性を示す図である。
【図8】本発明のプロドラッグ処理時のHCT−116ヒト結腸癌腫瘍を持つ無胸腺マウスの平均体重の変動を示す図である。
【図9】本発明のプロドラッグ処理群(T)とコントロール群(C)のRTV平均値の比の変動からHCT−116腫瘍の増殖阻害を示す図である。
【図10】本発明のプロドラッグ処理時のHCT−116腫瘍を持つ異種移植マウスの生存率の変動を示す図である。
【図11】本発明のプロドラッグ処理群(T)とコントロール群(C)のRTV平均値の比の変動からHCT−116腫瘍の増殖阻害を示す図である。
【図12】本発明のプロドラッグ処理時のB16−BL6メラノーマ腫瘍を持つ移植マウスの生存率の変動を示す図である。
【図13】本発明のプロドラッグ処理時のB16−BL6メラノーマ腫瘍を持つ移植マウスの平均体重の変動を示す図である。
【図14】本発明のプロドラッグ処理群(T)とコントロール群(C)のRTV平均値の比の変動からB16−BL6腫瘍の増殖阻害を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
[式(A)p−(E−B)n−(I)mで示される化合物であって、
式中、
Iは、標的細胞に対して有利に働く活性物質であり、
Aは、血液循環時のB−Iの半減時間を延長させる基であり、
E−Bは、AとIを連結させる基であり、
Bは、単独で存在する酵素または好ましくは前記標的細胞の近くに存在するかあるいは標的細胞上に存在する酵素により、選択的に切断され得る構造であり、
Eは、循環組織中で安定な親水性基であり、該基がBからAを引き離すことにより、前記標的細胞の近くまたは前記標的細胞上でのBの切断を可能にするか容易にし、その結果、Iの放出あるいは基Bを有するIの放出が可能になるか容易になる、
nは、1から連結基E−Bが結合し得る反応基Iの全数までの、あるいは、連結基E−Bが結合し得る反応基Aの全数までの整数であり、
mは、1から連結基E−Bが結合し得る反応基Aの全数までの整数であり、
pは、1から連結基E−Bが結合し得る反応基Iの全数までの整数であり、
p=1の場合n=mであり、m=1の場合n=pである]ことを特徴とする、式(A)p−(E−B)n−(I)mで示される化合物。
【請求項2】
Iが共有結合により1つ以上の構造Bと直接結合していることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Iが連結腕を介して1つ以上の構造Bと結合していることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Eの大きさがアミノ酸1〜100個に等しいことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
Eは、1〜100個、好ましくは1〜20個、非常に好ましくは2〜10個の同一または異なるアミノ酸で構成されるかまたはそのようなアミノ酸を含み、前記アミノ酸は立体配座Dの天然アミノ酸を含む群から選択され、前記アミノ酸は遺伝学的にコードされたものではないことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
前記アミノ酸がD−グルタミン、D−アスパラギン、D−セリン、D−ヒスチジン、D−スレオニン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−リジンおよびD−アルギニンから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Eが、(D−セリン)x、(D−スレオニン)xから選択されるアミノ酸配列で構成されるかまたはそのようなアミノ酸配列を含み、xが1〜20の整数、好ましくは2〜10の整数、非常に好ましくは2〜6の整数であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
Eが、ペプチドミメティック薬剤、偽ペプチドまたはペプチドであることを特徴とする、請求項4または5に記載の化合物。
【請求項9】
Eが、置換アルキル鎖、ポリアルキルグリコール、ポリサッカライド、ポリオール、ポリカルボキシラートおよびポリ(ヒドロ)エステルから選択される少なくとも1つの基で構成されるかまたはそのような基を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
Aの分子量が大きくなるとEの大きさも大きくなることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
Eが、請求項5から8までのいずれかに記載される1つ以上のアミノ酸と請求項9または10に記載される少なくとも1つの基とで構成されるかそのようなアミノ酸と基とを含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
Aが更に、式(A)p−(E−B)n−(I)mで示される前記化合物の、水、血液または血清への可溶化特性を示すことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
Aが更に、式(A)p−(E−B)n−(I)mで示される前記化合物の、前記標的細胞へのターゲティング特性を示すことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
Aが更に、治療活性を有する薬剤または診断活性を有する薬剤であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
Aが、親水性であるかまたは両親媒性であることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
Aが、ポリペプチド、免疫グロブリン、アルブミン、ポリサッカライド、ポリマーおよびコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
Aが、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンイミン、および塩化ビニルコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
Aが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)、マレイン酸ナトリウムおよびマレイン酸ブチル(MMBE)、ヒドロキシプロピルメタクリラートまたはN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、メチルメタクリラート(MMA)、ポリ−[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン](PHEG)、およびポリ−[N−(ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド](PHEA)から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
Aが、200〜50,000Da、好ましくは350〜20,000Da、非常に好ましくは1,000〜10,000Daの大きさのポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
Bが、腫瘍細胞、腫瘍の間質細胞、腫瘍または転移腫瘍の血管新生内皮細胞、マクロファージ、単球、リンパ球または腫瘍および転移腫瘍に侵入できる多核体から成る群より選択される細胞環境中に存在する酵素により切断され得ることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
Bが、オリゴペプチド、オリゴサッカライド、および脂質鎖から選択されることを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
構造Bが、以下のペプチド配列:L−アラニン−L−ロイシン−L−アラニン−L−ロイシン、L−アラニン−L−チロシン−L−グリシン−L−グリシン−L−フェニルアラニン−L−ロイシンから選択されることを特徴とする、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
Bが、ペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ、リソソーム酵素、リパーゼ、およびグリコシダーゼから選択される酵素により切断され得ることを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
Bが、腫瘍細胞、腫瘍の間質細胞、血管新生内皮細胞、マクロファージ、単球、リンパ球または多核体の環境中に選択的に存在するペプチダーゼによって切断され得ることを特徴とする、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
腫瘍細胞の特異的ペプチダーゼが、ネプリリシン(CD10)、チメトオリゴペプチダーゼ(TOP)、前立腺特異抗原(PSA)、プラスミン、レグマイン、コラゲナーゼ、ウロキナーゼ、カテプシン、および基質メタロペプチダーゼから成る群より選択されることを特徴とする、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
Iが、任意にベクター物質と結合している化学薬品、ポリペプチド、たんぱく質、核酸、抗生物質、ウイルスまたはマーカーから成る群より選択されることを特徴とする、請求項1から25までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項27】
Iが、抗−腫瘍治療活性、抗−血管新生活性または抗−炎症活性を有する薬剤であることを特徴とする、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
Iが、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、葉酸誘導体、ビンカアルカロイド、カリケアミシン、ミトキサントロン、シトシンアラビノシド、アデノシンアラビノシド、フルダラビンホスファート、メルファラン、ブレオマイシン、ミトマイシン、L−カナバニン、タキソイド、カンプトテシン、9−ジメチルアミノメチル−ヒドロキシ−カンプトテシンヒドロクロリド、プロテアソーム阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)、エポシロン、メイタンシノイド、ディスコデルモライド、フォストリエシン、白金誘導体、デュオカルマイシン、コンブレタスタチン、エピポドフィロトキシン、BH3ペプチド、P53ペプチド、カスパーゼ、グランザイムB;リボザイム、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン1(IL−1),IL−2、IL−6、IL−12、IL−15およびIGF−1拮抗剤から成る群より選択されることを特徴とする、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
Iが、クマリン、7−アミド−トリフルオロメチルクマリン、パラニトロアニリド、8−ナフチルアミドおよび4−メトキシナフチルアミド、フルオロセイン、ビオチン、ローダミンおよびそれらの誘導体ならびにシンチグラフィーに使用される薬剤から成る群より選択されるマーカーであることを特徴とする、請求項26に記載の化合物。
【請求項30】
更に、式(A)p−(E−B)n−(I)mで示される前記化合物を前記標的細胞へ向かわせることができる1つ以上のターゲティング物質を含有することを特徴とする、請求項1から29までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
前記ターゲティング物質が、1つ以上の基A上で、式(A)p−(E−B)n−(I)mの化合物と結合していることを特徴とする、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
活性成分として、請求項1から31までのいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有することを特徴とする、診断用または追跡用の医薬品。
【請求項33】
化合物:
ポリエチレングリコール−D−セリル−D−セリル−D−セリル−D−セリル−L−アラニル−L−ロイシル−L−アラニル−L−ロイシル−ドキソルビシン
ポリエチレングリコール−D−セリル−D−セリル−D−セリル−D−セリル−L−アラニル−L−ロイシル−L−アラニル−L−ロイシル−TNFα
ポリエチレングリコール−D−セリル−D−セリル−D−セリル−D−セリル−L−アラニル−L−チロシル−L−グリシル−L−グリシル−L−フェニルアラニル−L−ロイシル−ドキソルビシン
ポリエチレングリコール−D−セリル−D−セリル−D−セリル−D−セリル−L−アラニル−L−ロイシル−L−アラニル−L−ロイシル−TNFα
を含む群から選択されることを特徴とする、化合物。
【請求項1】
[式(A)p−(E−B)n−(I)mで示される化合物であって、
式中、
Iは、標的細胞に対して有利に働く活性物質であり、
Aは、血液循環時のB−Iの半減時間を延長させる基であり、
E−Bは、AとIを連結させる基であり、
Bは、単独で存在する酵素または好ましくは前記標的細胞の近くに存在するかあるいは標的細胞上に存在する酵素により、選択的に切断され得る構造であり、
Eは、循環組織中で安定な親水性基であり、該基がBからAを引き離すことにより、前記標的細胞の近くまたは前記標的細胞上でのBの切断を可能にするか容易にし、その結果、Iの放出あるいは基Bを有するIの放出が可能になるか容易になる、
nは、1から連結基E−Bが結合し得る反応基Iの全数までの、あるいは、連結基E−Bが結合し得る反応基Aの全数までの整数であり、
mは、1から連結基E−Bが結合し得る反応基Aの全数までの整数であり、
pは、1から連結基E−Bが結合し得る反応基Iの全数までの整数であり、
p=1の場合n=mであり、m=1の場合n=pである]ことを特徴とする、式(A)p−(E−B)n−(I)mで示される化合物。
【請求項2】
Iが共有結合により1つ以上の構造Bと直接結合していることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Iが連結腕を介して1つ以上の構造Bと結合していることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Eの大きさがアミノ酸1〜100個に等しいことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
Eは、1〜100個、好ましくは1〜20個、非常に好ましくは2〜10個の同一または異なるアミノ酸で構成されるかまたはそのようなアミノ酸を含み、前記アミノ酸は立体配座Dの天然アミノ酸を含む群から選択され、前記アミノ酸は遺伝学的にコードされたものではないことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
前記アミノ酸がD−グルタミン、D−アスパラギン、D−セリン、D−ヒスチジン、D−スレオニン、D−アスパラギン酸、D−グルタミン酸、D−リジンおよびD−アルギニンから選択されることを特徴とする、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
Eが、(D−セリン)x、(D−スレオニン)xから選択されるアミノ酸配列で構成されるかまたはそのようなアミノ酸配列を含み、xが1〜20の整数、好ましくは2〜10の整数、非常に好ましくは2〜6の整数であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
Eが、ペプチドミメティック薬剤、偽ペプチドまたはペプチドであることを特徴とする、請求項4または5に記載の化合物。
【請求項9】
Eが、置換アルキル鎖、ポリアルキルグリコール、ポリサッカライド、ポリオール、ポリカルボキシラートおよびポリ(ヒドロ)エステルから選択される少なくとも1つの基で構成されるかまたはそのような基を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項10】
Aの分子量が大きくなるとEの大きさも大きくなることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項11】
Eが、請求項5から8までのいずれかに記載される1つ以上のアミノ酸と請求項9または10に記載される少なくとも1つの基とで構成されるかそのようなアミノ酸と基とを含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
Aが更に、式(A)p−(E−B)n−(I)mで示される前記化合物の、水、血液または血清への可溶化特性を示すことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
Aが更に、式(A)p−(E−B)n−(I)mで示される前記化合物の、前記標的細胞へのターゲティング特性を示すことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項14】
Aが更に、治療活性を有する薬剤または診断活性を有する薬剤であることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項15】
Aが、親水性であるかまたは両親媒性であることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
Aが、ポリペプチド、免疫グロブリン、アルブミン、ポリサッカライド、ポリマーおよびコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
Aが、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンイミン、および塩化ビニルコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
Aが、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリエチレンイミン、スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)、マレイン酸ナトリウムおよびマレイン酸ブチル(MMBE)、ヒドロキシプロピルメタクリラートまたはN−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(HPMA)、メチルメタクリラート(MMA)、ポリ−[N−(2−ヒドロキシエチル)−L−グルタミン](PHEG)、およびポリ−[N−(ヒドロキシエチル)−DL−アスパルトアミド](PHEA)から選択されることを特徴とする、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
Aが、200〜50,000Da、好ましくは350〜20,000Da、非常に好ましくは1,000〜10,000Daの大きさのポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項17に記載の化合物。
【請求項20】
Bが、腫瘍細胞、腫瘍の間質細胞、腫瘍または転移腫瘍の血管新生内皮細胞、マクロファージ、単球、リンパ球または腫瘍および転移腫瘍に侵入できる多核体から成る群より選択される細胞環境中に存在する酵素により切断され得ることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項21】
Bが、オリゴペプチド、オリゴサッカライド、および脂質鎖から選択されることを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項22】
構造Bが、以下のペプチド配列:L−アラニン−L−ロイシン−L−アラニン−L−ロイシン、L−アラニン−L−チロシン−L−グリシン−L−グリシン−L−フェニルアラニン−L−ロイシンから選択されることを特徴とする、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
Bが、ペプチダーゼ、エンドペプチダーゼ、リソソーム酵素、リパーゼ、およびグリコシダーゼから選択される酵素により切断され得ることを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項24】
Bが、腫瘍細胞、腫瘍の間質細胞、血管新生内皮細胞、マクロファージ、単球、リンパ球または多核体の環境中に選択的に存在するペプチダーゼによって切断され得ることを特徴とする、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
腫瘍細胞の特異的ペプチダーゼが、ネプリリシン(CD10)、チメトオリゴペプチダーゼ(TOP)、前立腺特異抗原(PSA)、プラスミン、レグマイン、コラゲナーゼ、ウロキナーゼ、カテプシン、および基質メタロペプチダーゼから成る群より選択されることを特徴とする、請求項24に記載の化合物。
【請求項26】
Iが、任意にベクター物質と結合している化学薬品、ポリペプチド、たんぱく質、核酸、抗生物質、ウイルスまたはマーカーから成る群より選択されることを特徴とする、請求項1から25までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項27】
Iが、抗−腫瘍治療活性、抗−血管新生活性または抗−炎症活性を有する薬剤であることを特徴とする、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
Iが、アントラサイクリン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、葉酸誘導体、ビンカアルカロイド、カリケアミシン、ミトキサントロン、シトシンアラビノシド、アデノシンアラビノシド、フルダラビンホスファート、メルファラン、ブレオマイシン、ミトマイシン、L−カナバニン、タキソイド、カンプトテシン、9−ジメチルアミノメチル−ヒドロキシ−カンプトテシンヒドロクロリド、プロテアソーム阻害剤、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤(FTI)、エポシロン、メイタンシノイド、ディスコデルモライド、フォストリエシン、白金誘導体、デュオカルマイシン、コンブレタスタチン、エピポドフィロトキシン、BH3ペプチド、P53ペプチド、カスパーゼ、グランザイムB;リボザイム、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターフェロン−α(IFN−α)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン1(IL−1),IL−2、IL−6、IL−12、IL−15およびIGF−1拮抗剤から成る群より選択されることを特徴とする、請求項27に記載の化合物。
【請求項29】
Iが、クマリン、7−アミド−トリフルオロメチルクマリン、パラニトロアニリド、8−ナフチルアミドおよび4−メトキシナフチルアミド、フルオロセイン、ビオチン、ローダミンおよびそれらの誘導体ならびにシンチグラフィーに使用される薬剤から成る群より選択されるマーカーであることを特徴とする、請求項26に記載の化合物。
【請求項30】
更に、式(A)p−(E−B)n−(I)mで示される前記化合物を前記標的細胞へ向かわせることができる1つ以上のターゲティング物質を含有することを特徴とする、請求項1から29までのいずれか1項に記載の化合物。
【請求項31】
前記ターゲティング物質が、1つ以上の基A上で、式(A)p−(E−B)n−(I)mの化合物と結合していることを特徴とする、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
活性成分として、請求項1から31までのいずれか1項に記載の化合物を少なくとも1つ含有することを特徴とする、診断用または追跡用の医薬品。
【請求項33】
化合物:
ポリエチレングリコール−D−セリル−D−セリル−D−セリル−D−セリル−L−アラニル−L−ロイシル−L−アラニル−L−ロイシル−ドキソルビシン
ポリエチレングリコール−D−セリル−D−セリル−D−セリル−D−セリル−L−アラニル−L−ロイシル−L−アラニル−L−ロイシル−TNFα
ポリエチレングリコール−D−セリル−D−セリル−D−セリル−D−セリル−L−アラニル−L−チロシル−L−グリシル−L−グリシル−L−フェニルアラニル−L−ロイシル−ドキソルビシン
ポリエチレングリコール−D−セリル−D−セリル−D−セリル−D−セリル−L−アラニル−L−ロイシル−L−アラニル−L−ロイシル−TNFα
を含む群から選択されることを特徴とする、化合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2007−503382(P2007−503382A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523656(P2006−523656)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002162
【国際公開番号】WO2005/021043
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(501046785)ディアトス (ソシエテ アノニム) (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002162
【国際公開番号】WO2005/021043
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(501046785)ディアトス (ソシエテ アノニム) (5)
【Fターム(参考)】
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