説明

高分子量ポリ(α−オレフィン)溶液およびそれから作製される物品

高い生産能力で強い材料を作製でき、資本およびエネルギー必要量を節約する、高分子量UHMW POの溶液の十全な連続調製方法、ならびにそれから作製される物品。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の背景
1.発明の分野
本発明は、高分子量ポリ(α−オレフィン)の溶液の連続調製方法およびそれから作製される成形物品に関する。
【0002】
2.関連技術の説明
高分子量ポリマーの溶液紡糸方法の幾つかは、従来技術において記載されてきた。高分子量ポリエチレンの溶液紡糸は、例えば米国特許(USP)第4413110号、第4344908号、第4430383号および第4663101号に記載されてあったが、それらの全ては、本明細書と矛盾しない程度まで参照により本明細書に組み込まれる。高分子量ポリビニルアルコールおよび高分子量ポリアクリロニトリルの溶液紡糸は、それぞれ米国特許(USP)第4440711号および第4883628号に記載されてあった。
【0003】
高分子量ポリマーの溶液を、溶液紡糸を併せて連続的に調製する方法は、USP第4413110号、第4440711号、第4663101号、第4668717号、第4784820号、第4883628号、第5032338号、WO 2005/066400、WO 2005/066401ならびにJ.SmookおよびA.J.Penningsによる、表題「Suspension Spinning of Ultra−high Molecular Weight Polyethylene」、Polymer Bulletin、10、291〜297頁(1983)の出版物に記載されてあった。
【0004】
USP第4413110号には、高分子量ポリエチレンのスラリーを第1容器中で形成する方法が記載されてあった。滞留時間が十分な状態で、このスラリーは、強力ミキサー中で溶液に転換された。このポリマー溶液は、押出機に供給され、次いでギヤポンプにより紡糸口金に供給された。
【0005】
USP第4668717号には、室温でデカリン中に高分子量ポリエチレンを含有する懸濁液を、交互に並んだ混合部および輸送部を有する同方向回転式二軸押出機に供給する方法が記載されてあった。滞留時間、せん断速度および温度が十分な状態で、ポリマーの溶液は、押出機中に形成され、ギヤポンプを場合により通して開口部に送達された。WO 2005/066400およびWO 2005/066401には、特定の紡糸条件および延伸条件を併せて二軸押出機を使用することによりポリマー溶液を形成することが記載されている。
【0006】
USP第4784820号には、高分子量ポリマーのスラリーを形成し、それを容積式ポンプによる圧力下でスクリュー押出機に移送する方法が記載されてあった。滞留時間および温度が十分な状態で、溶液は、押出機中で形成され、計量型ポンプによって紡糸口金に供給された。
【0007】
USP第5032338号には、2つの方法が記載されてあった。一方法では、高分子量ポリエチレンのスラリーは、混合容器中で形成され、次いで加熱コイル管を通して紡糸口金に直接送られた。第2の方法では、高分子量ポリエチレンのスラリーは、混合容器中で形成された。このスラリーは、そのポリマーの5〜50%を溶解するのに十分な時間および温度で予熱器に通された。溶解プロセスはスクリュー押出機中で完結され、この溶液はギヤポンプおよび紡糸口金に送られた。そのポリエチレンの粒度分布は、粒子の少なくとも75wt%が100〜400ミクロンの大きさの範囲内にあるような粒度分布であった。
【0008】
J.SmookおよびA.J.Penningsによる上述の出版物には、高分子量ポリエチレン溶液の半連続調製について記載されてあった。ポリエチレン粉末の懸濁液は、ポリエチレン密度と一致する密度を有する、v/vが80/20のパラフィン油/1,2,4−トリクロロベンゼンからなる混合溶媒中のステアリン酸アルミニウムの溶液中で形成された。このポリエチレン溶液は、この懸濁液を滞留時間約30分間で加熱コイル管に通してポンプ送液することによって形成された。その管の詰まりを防ぐために特別な注意を払わなければならないことが指摘された。
【0009】
上記引用した特許および出版物の各々によって、最新技術の進展が表された。しかしながら、本発明の具体的な方法を記載したものはなく、本発明により満たされる必要性の全てを満たしたものもない。これらの従来の方法には、幾つかの欠点があった。従来技術の特許の幾つかにより記載されている強力ミキサーおよびスクリュー押出機は、資本集約的かつ電力集約的である。これらは、分配混合用に優れた装置であるが、滞留時間を与えるための非常に高価な装置である。これらの装置内で溶解プロセスを完結させる目的で十分な滞留時間を与えるために、押出量および生産能力は十分活用されていなかった。USP第5032338号ならびにSmookおよびPenningsによる前述の論文により記載されている管状溶解機は、ポリマーの粒度分布の影響を受けかつ/または詰まりを被りやすかった。
【0010】
高い生産能力で強い材料を作製でき、ポリマー粒度分布の影響を受けず、資本およびエネルギー必要量を節約する十全な方法の必要性が存在する。
発明の概要
本発明は、超高分子量ポリ(α−オレフィン)の溶液の高生産性連続調製方法およびそれから作製される成形物品である。本発明では、超高分子量ポリ(α−オレフィン)(以下では場合によりUHMW POと略す)は、デカリン中135℃にて測定される5〜45dl/gの固有粘度を有するポリ(α−オレフィン)として定義される。UHMW POは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1などのホモポリマーであり、α−オレフィンのコポリマーであり、または非オレフィン系モノマーと共重合する少なくとも50mol%のα−オレフィンモノマーからなってもよい。
【0011】
第1の実施形態では、本発明は、デカリン中135℃にて測定される5〜45dl/gの固有粘度を有するUHMW POを最大50wt%まで含む溶液の連続調製方法であって、
a)UHMW PO粒子が前記UHMW PO用の溶媒中で溶解する温度未満である第1の温度で前記溶媒中に前記UHMW PO粒子のスラリーを形成するステップと、
b)前記溶媒および前記UHMW POの混合物が、前記UHMW POの溶融温度を超える第2の温度で形成されるように、また、前記混合物中のUHMW POの押出量が、Dが押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして少なくとも2.5D(2.5×D×D)グラム/分の量であるように作動する前記押出機を通って前記スラリーが加工されるステップと、
c)場合により、容積式ポンプを通して前記押出機から前記混合物を排出するステップと、
d)前記UHMW POの溶融温度を超える温度に加熱された容器であって、前記容器中での前記混合物の平均滞留時間が2〜120分であるような容積を有する前記容器に前記混合物を通すことにより前記UHMW POの溶液が形成されるステップと
を含む方法である。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、UHMW POのスラリーからの成形物品の連続調製方法であって、
a)デカリン中135℃にて測定される5〜45dl/gの固有粘度を有するUHMW PO粒子を前記UHMW PO用の溶媒中に含有するスラリーを、前記UHMW PO粒子が前記溶媒中で溶解する温度未満である第1の温度で形成するステップと、
b)前記溶媒および前記UHMW POの混合物が、前記UHMW POの溶融温度を超える温度で形成されるように、また、前記混合物中のUHMW POの押出量が、Dが押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして少なくとも2.5D(2.5×D×D)グラム/分の量であるように作動する前記押出機を通って前記スラリーが加工されるステップと、
c)場合により、容積式ポンプを通して前記押出機から前記混合物を排出するステップと、
d)前記UHMW POの溶融温度を超える温度に加熱された容器であって、前記容器中での前記混合物の平均滞留時間が2〜120分であるような容積を有する前記容器に前記混合物を通すことにより前記UHMW POの溶液が形成されるステップと、
e)そのように形成された、前記溶媒の大気中沸点未満の温度にある前記溶液を、容積式ポンプおよび成型オリフィスを介して前記容器外に送ることにより成形溶液物品を形成するステップと、
f)場合により、前記成形溶液物品を延伸するステップと、
g)前記成形溶液物品を冷却することにより成形ゲル物品を形成するステップと、
h)場合により、前記成形ゲル物品を延伸するステップと、
i)前記成形ゲル物品から前記溶媒を除去することにより成形固体物品を形成するステップと、
j)場合により、1段階または複数の段階で25℃〜165℃の温度にて前記固体物品を延伸するステップと
を含む方法である。
【0013】
別の実施形態では、本発明は、上記方法により調製される成形ゲル物品である。更に別の実施形態では、本発明は、上記方法により調製される成形固体物品である。
発明の詳細な記述
UHMW POの溶液の調製は、平凡な作業ではない。困難の1つとして、溶液が形成し終えた時点の決定がある。従来技術の作業者の中には、濁りのない液体の形成によって溶解プロセスの終点および均一性の証拠が示唆されると仮定する作業者がいた。この仮定の誤りは、高温顕微鏡上での直径約150ミクロンの単一の超高分子量ポリエチレン粒子の静的溶媒溶解性の研究にて例証された(M.Rammoorthy、Honeywell International Inc.の未発表の研究)。ホットステージの温度がそのポリエチレンの融点に近づくにつれて、その粒子は、外見的にはその外側周辺部で徐々に「溶解」し、次いで狭い温度範囲にわたって短時間で視界から消えた。しかしながら、ホットステージを冷却すると、その粒子は再結晶化して再び現れた。この粒子は全く溶解していなかった。どうやら、この粒子は、溶解したのではなく単に溶融しただけのようであった。この粒子は溶融状態では見られなかったが、その理由は、溶融ポリエチレンの屈折率が溶媒の屈折率にかなり接近したからである。したがって、濁りのない液体の出現は、超高分子量ポリエチレンが溶解したことを示唆するものではなく、「均一溶液」が形成したことを示唆するものでもなかった。
【0014】
UHMW POの溶液を形成するための2つの条件は、自明である。第1には、その温度は、結晶性ポリマーの溶融温度付近であるかまたはそれを超えなければならない。第2には、溶媒がポリマー中に拡散しポリマーが溶媒中に拡散するように十分な時間が与えられなければならない。
【0015】
例えば約2wt%を超えるUHMW PO濃度の場合のように多くの粒子を取り扱う場合、この状況はより複雑になる。ある溶媒中にUHMW PO粒子を含有するスラリーがポリマー融点に近い温度まで加熱される場合、この粒子は合着し凝集する。次いで、溶媒/ポリマー混合物は、非常に高いポリマー濃度のドメインと非常に低いポリマー濃度のドメインとを双方含み、これらの異なるドメインは根本的に異なった粘度を有する。この問題は、他の人々によって認識されてこなかったように思われる。
【0016】
約2wt%〜約50wt%の濃度でUHMW POの溶液を調製する作業は、以下の段階:
1.スラリーの形成段階、即ち、ポリマーを溶解し得る溶媒中に固体ポリマー粒子を分散する段階、
2.このスラリーを加熱することによりポリマーを溶融し強力な分配混合条件および分散混合条件下で液体混合物を形成することによって、混合物中の溶融ポリマーおよび溶媒のドメインサイズを微視的な寸法まで小さくする段階、
3.ポリマーへの溶媒の拡散および溶媒へのポリマーの拡散が生じるように十分な時間を与える段階
を有すると考えることができる。
【0017】
従来技術の方法では、第2段階と第3段階は、双方とも、押出機などの強力な混合装置においてこれらの装置をそれらの押出能力未満で操作することにより滞留時間を与えることによって達成されるよう試みられた。その結果、これらの資本集約的およびエネルギー集約的機械の生産能力の使用は非効率的であった。押出機の能力は、およそスクリュー直径の2乗に比例する。したがって、押出操作の性能指数は、ポリマー押出量とスクリュー直径の2乗との比率である。本発明は、資本およびエネルギー双方の必要量を節約し、高い生産能力で強い材料を作製できる方法である。本発明は、その方法により作製される材料も含む。
【0018】
一実施形態では、本発明は、デカリン中135℃にて測定される5〜45dl/gの固有粘度を有するUHMW POを最大50wt%まで含む溶液の連続調製方法であって、
a)UHMW POが前記UHMW PO用の溶媒中で溶解する温度未満である第1の温度で前記溶媒中に前記UHMW POを含有するスラリーを形成するステップと、
b)前記溶媒および前記UHMW POの混合物が、前記UHMW POの溶融温度を超える第2の温度で形成されるように、また、前記混合物中のUHMW POの押出量が、Dが押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして少なくとも2.5D(2.5×D×D)グラム/分の量であるように作動する前記押出機を通って前記スラリーが加工されるステップと、
c)場合により、容積式ポンプを通して前記押出機から前記混合物を排出するステップと、
d)前記UHMW POの溶融温度を超える温度に加熱された容器であって、前記容器中での前記混合物の平均滞留時間が2〜120分であるような容積を有する前記容器に前記混合物を通すことにより前記UHMW POの溶液が形成されるステップと
を含む方法である。
【0019】
本発明の高生産性の方法によって、従来技術と比較して一様性および均一性が改良されたUHMW PO溶液が作製されるが、このことは、UHMW PO溶液からより強い繊維を作製し得ることにより明らかである。
【0020】
本発明の方法では、押出機中の混合物の平均滞留時間は、Dをセンチメートル単位のスクリュー直径として最大で0.6D(0.6×D)の量であることが好ましい。押出機中の混合物の平均滞留時間は、最大で0.4Dの量であることがより好ましい。この平均滞留時間は、容積押出量で割った押出機の自由容積(バレルからスクリューを引いたもの)、例えば、分単位の平均滞留時間を与える、cm/分単位の押出量で割ったcm単位の自由容積として定義される。
【0021】
本発明の方法では、UHMW POの押出量は、Dを押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径として少なくとも4Dグラム/分であることが好ましい。UHMW POの押出量の押出量は、Dを押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径として少なくとも6Dグラム/分であることがより好ましい。UHMW POの押出量は、Dを押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径として少なくとも10Dグラム/分であることが更により好ましい。現在のところ、本発明の方法は、倍数の15.8Dを達成している。しかしながら、本発明の方法をスケールアップしより効率的にすると、20D、30Dおよび40Dなどの更に高い倍数が達成されることが予想される。UHMW POの押出量は、Dを押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径として2.5D〜40Dグラム/分であることが最も好ましい。
【0022】
本発明の方法に採用される押出機は、ポリマースラリーを溶融ポリマーと溶媒との均質混合物、理想的には微視的な寸法のドメインサイズを有する混合物に転換することを機能として有する。この押出機は、この目的を達成するために、十分な加熱能力および分配混合能力を有しなければならない。この押出機は、単軸押出機であってもよく、非噛合型二軸押出機または噛合型異方向回転二軸押出機であってもよい。本発明の方法に採用される押出機は、噛合型同方向回転二軸押出機であることが好ましい。噛合型同方向回転二軸押出機のスクリュー要素は、転送用運搬要素であることが好ましい。
【0023】
押出機中で作製される液体混合物は、ギヤポンプなどの容積式ポンプを場合により通して加熱容器中に排出される。加熱容器は、ポリマー/溶媒均質混合物が真溶液に転換し得るのに必要な滞留時間を与える。滞留時間が短すぎると、溶液形成が不完全となる。滞留時間が長すぎると、ポリマーの劣化が生じる恐れがある。この容器中の平均滞留時間は、2〜90分であることが好ましい。この容器中の平均滞留時間は、4〜60分であることがより好ましい。この平均滞留時間は、容積押出量で割った容器の内部容積、例えば、平均滞留時間分を与える、cm/分単位の押出量で割ったcm単位の容積として定義される。
【0024】
加熱容器の内部容積が、必要な滞留時間を与えるのに十分であれば、加熱容器は任意の形状を有してもよい。しかしながら、この容器中での滞留時間分布はできるだけ狭いことが望ましい。この容器は、加熱管であることが好ましい。加熱管は、1本の長い管であってもよく、曲管を有してもよく、またはらせんコイルであってもよい。これは、管による圧力の低下が度を超えないように選択される異なる長さおよび直径の区域を含んでもよい。管に入るポリマー/溶媒混合物は極めて偽塑性なので、加熱管は、管断面を横断する流れを間隔を置いて再分配するためにかつ/または更なる分散を与えるために1つまたは複数の静的ミキサーを含有することが好ましい。
【0025】
加熱を、外部被覆および熱伝導流体の循環によって与えてもよく、管を、抵抗体と接触させることによって電気的に加熱してもよく、または管を、電源との誘導結合によって加熱してもよい。熱伝導流体の外部循環により加熱を行うことが好ましい。
【0026】
本発明の方法の生産性および作製される物品の特性は、UHMW PO溶液の濃度および理想的な均一溶液に近づける度合いに依存する。ポリマー濃度が高ければ高いほど、生産性がより高くなる可能性は得られるが、溶解するのがより困難にもなる。溶液中のUHMW PO濃度は、2〜30wt%(溶液の2〜30重量パーセントのUHMW PO)であることが好ましい。溶液中のUHMW PO濃度は、5〜20wt%であることがより好ましい。
【0027】
UHMW POは、デカリン中135℃にて測定される9〜30dl/gの固有粘度を有する線状ポリエチレンであることが好ましい。通常、より高い繊維特性は、より高い固有粘度を有するポリエチレンから得られるが、固有粘度が高ければ高いほど、溶解プロセスには、通常、より長い滞留時間が必要とされよう。
【0028】
線状ポリエチレンは、炭素原子1000個当たり2個未満の置換基を有することが好ましく、炭素原子1000個当たり1個未満の置換基を有することがより好ましい。
本発明の方法に採用される溶媒は、脂肪族化合物、芳香族化合物、環式脂肪族化合物、ハロゲン化脂肪族化合物、ハロゲン化芳香族化合物、ハロゲン化環式脂肪族化合物およびそれらの混合液からなる群から選択されることが好ましい。溶媒は、鉱油およびデカリンまたはそれらの混合液からなる群から選択されることがより好ましい。
【0029】
溶媒中にUHMW POを含有するスラリーは、攪拌混合タンク中で形成してもよい。UHMW PO粒子および溶媒を混合タンクに連続供給し、形成されるスラリーを押出機に排出してもよい。この混合タンクを加熱してもよい。混合タンク中のスラリーの温度および滞留時間は、場合によりUHMW PO粒子が、UHMW POが溶解する温度未満の温度で溶媒を少なくとも5wt%吸収するような温度および滞留時間である。混合タンクから出るスラリーの温度は、約40℃〜約100℃であることが好ましい。
【0030】
押出機に供給する代替方式は、幾つか意図される。混合タンク中に形成されるUHMW POスラリーは、圧力をかけずに押出機供給ホッパーに供給してもよい。スラリーは、少なくとも約20KPaの正圧下で押出機の密閉供給ゾーンに入ることが好ましい。供給圧は、押出機の運搬能力を高める。あるいは、スラリーは押出機中で形成されてもよい。この場合、UHMW PO粒子は、開口した押出機供給ホッパーに供給してもよく、溶媒は、押出機の更に前方にあるその1つまたは2つのバレル部にポンプ送液される。更に別の代替供給方式では、濃縮スラリーは混合タンク中で形成される。このスラリーは、供給ゾーンから押出機に入る。ポリマー溶融温度を超える温度に予熱された純溶媒流は、押出機の更に前方の幾つかのゾーンに入る。この方式では、プロセス熱量の幾らかは押出機外に移されて、生産能力が向上する。
【0031】
別の実施形態では、本発明は、UHMW POのスラリーからの成形物品の連続形成方法である。この成形物品は、繊維、テープ、フィルム、シートおよびチューブからなる群から選択されることが好ましい。本発明では、繊維は、その物体の長さ寸法が幅および厚さの横断寸法よりずっと大きい細長い物体である。したがって、用語の繊維は、規則的または不規則的断面を有するフィラメント、リボン、条片などを包含する。ヤーンは、多くの繊維またはフィラメントから構成される連続ストランドである。
【0032】
この実施形態では、本発明の方法は、
a)5〜45dl/gの固有粘度を有するUHMW PO粒子をUHMW PO用の溶媒中に含有するスラリーを、前記UHMW POが前記溶媒中で溶解する温度未満の第1の温度で形成するステップと、
b)前記溶媒および前記UHMW POの混合物が、前記UHMW POの溶融温度を超える第2の温度で形成されるように、また、前記混合物中のUHMW POの押出量が、Dが押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして少なくとも2.5D(2.5×D×D)グラム/分の量であるように作動する前記押出機を通って前記スラリーが加工されるステップと、
c)場合により、容積式ポンプを通して前記押出機から前記混合物を排出するステップと、
d)前記UHMW POの溶融温度を超える温度に加熱された容器であって、前記容器中での前記混合物の平均滞留時間が2〜120分であるような容積を有する前記容器に前記混合物を通すことにより前記UHMW POの溶液が形成されるステップと、
e)そのように形成された、前記溶媒の大気中沸点未満の温度にある前記溶液を、容積式ポンプおよび成型オリフィスを介して前記容器外に送ることにより成形溶液物品を形成するステップと、
f)場合により、前記溶液物品を延伸するステップと、
g)前記成形溶液物品を冷却することにより成形ゲル物品を形成するステップと、
h)場合により、前記成形ゲル物品を延伸するステップと、
i)前記成形ゲル物品から前記溶媒を除去することにより成形固体物品を形成するステップと、
j)場合により、1段階または複数の段階で25℃〜165℃の温度にて前記成形固体物品を延伸するステップと
を含む。
【0033】
本発明は、上記方法により調製される、ゲルの繊維、テープ、フィルム、シートおよびチューブならびに固体の繊維、テープ、フィルム、シートおよびチューブからなる群から選択される成形ゲル物品および成形固体物品も含む。この成形固体物品は、防弾、スポールシールド、プラスチックおよびコンクリートの強化複合材料、ロープ、ネット、帆、縫糸、レードーム、管ならびに多くの他のものなどの用途に有用である。
【0034】
本発明の物品は、好ましくは少なくとも27g/d(23.8cN/dtex)、より好ましくは少なくとも35g/d(30.9cN/dtex)、更により好ましくは40g/d(35.3cN/dtex)、最も好ましくは少なくとも50g/d(44.1cn/dtex)のテナシティを有するUHMW PO繊維である。
【0035】
以下の実施例は、本発明のより完全な理解を与えるために提示される。本発明の原理を例示するために記述された具体的な技術、条件、材料、比率および報告されたデータは、例示であり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0036】
実施例
比較例1
18.5dl/gの固有粘度を有するポリエチレンを含むUHMW POの20wt%懸濁液を、デカリン中室温にて調製した。この懸濁液を、スクリュー直径30mm(3cm)およびL/D比27を有するWerner and Pflelderer噛合型同方向回転二軸押出機ZSK型を通じて押し出した。この押出物温度は、約180℃であった。押出機中の滞留時間は、3分であった。押出機中の滞留時間は、Dをセンチメートル単位の押出機スクリュー直径として0.6D=0.6×3=1.8分の量を超えた。
【0037】
押出機メーカーWerner and Pfleidererによれば、この機械の自由容積(バレル容積からスクリュー容積を引いた容積)は362cmであったことが示されている。3分の滞留時間は、362cm/3分=121cm/分の押出量に相当した。180℃でのポリエチレンの密度は、0.756g/cmである。180℃でのデカリンの密度は、0.744g/cmである。したがって、デカリン中にポリエチレンを含有する20wt%混合物の180℃での密度は、0.746g/cmであり、ポリエチレンの押出量は、0.746g/cm×121cm/分×0.20gPE/gsol’n=18.0gPE/分であった。したがって、UHMW PO(ポリエチレン)押出量は、2.5D=2.5×(3)=22.5の量未満であった。この押出物を、更には加工しなかった。
【0038】
この比較例についてのデータを、以下の表Iにまとめる。
比較例2aおよび2b
3wt%または5wt%のいずれかの濃度を有する、UHMW PO(15.5dl/gまたは18dl/gのいずれかの固有粘度を有する線状ポリエチレン)のデカリン溶液を、比較例1に記載の二軸押出機中で幾つか調製した。任意の実験での押出機中の最小滞留時間は、1.7分であった。押出機から出る混合物は、ギヤポンプを通り次いで直径1mmの紡糸開口部を通った。この溶液フィラメントを水で急冷することにより、ゲルフィラメントを形成した。このゲルフィラメントを、ジクロロメタンで抽出することによりデカリンを除去し、次いで120℃で延伸した。
【0039】
最大UHMW PO押出量は、任意の実験において、3wt%のUHMW PO濃度で3.81g/分であり、任意の実験において、5wt%のUHMW PO濃度で6.35g/分であった。したがって、全ての実験でのグラム/分単位の最大UHMW PO押出量は、2.5D=2.5×(3)=22.5量未満であった。
【0040】
得られた単一フィラメントの引張強度は、濃度3wt%で平均2.5GPa(25.8cN/dtex)、UHMW PO濃度5wt%で平均2.0GPa(20.6cN/dtex))であった。得られた単一フィラメントの最大引張強度は、UHMW PO濃度3wt%で3.2GPa(33cN/dtex)であり(比較例2a)、UHMW PO濃度5wt%で2.9GPa(29.9cN/dtex)であった(比較例2b)。
【0041】
これらの比較例についてのデータを、以下の表Iにまとめる。
実施例1
UHMW PO10wt%および白色鉱油90wt%からなる室温の攪拌混合タンク中でスラリーを調製した。このUHMW POは、デカリン中135℃にて25dl/gの固有粘度を有する線状ポリエチレンであった。この線状ポリエチレンは、炭素原子1000個当たり約0.5個未満の置換基を有し、138℃の融点を有した。この白色鉱油は、パラフィン炭素約70%およびナフテン炭素約30%からなるCrompton Corporation製HYDROBRITE(登録商標)550 POの低揮発性油であった。
【0042】
このスラリーを、40mm(4cm)のスクリュー直径を有する噛合型二軸押出機の供給ホッパー中に連続供給した。スクリュー要素は、全て転送用運搬要素であった。この押出機中の自由容積(バレル容積からスクリュー容積を引いた容積)は、1400cmであった。押出機バレル温度は、260℃であった。スクリュー回転速度は、300RPMであった。UHMW PO/鉱油スラリーは、平均滞留時間2.3分で260℃で押出機を通る際に液体混合物に転換された。したがって、本発明のこの実施例での押出機中の平均滞留時間は、Dをセンチメートル単位の押出機スクリュー直径として0.6D=0.6×4=2.4分の量未満であった。
【0043】
スラリーの押出量は423.6g/分であり、UHMW POの押出量は42.36グラム/分であった。したがって、グラム/分単位のUHMW POの押出量は、本発明のこの実施例では、2.5D=2.5×(4)=40の量を超えた。
【0044】
押出機から出る液体混合物は、ギヤポンプを通り、そこから温度273℃の外部加熱管、長さ14.17メートル(46.5フィート)、内部容積29212cmならびに幾つかの曲管および直径変化からなる容器を通った。管内には、間隔を置いて、L/D比8を有する7つの静的ミキサーがあった。この液体混合物は、平均滞留時間46.7分でその容器を通る際に溶液に転換された。
【0045】
管状容器から出るUHMW PO溶液を、ギヤポンプに通しそこから紡糸ブロックおよび0.889mm(0.035in.)の直径の穴を有する紡糸口金に通すことにより、240本のフィラメントの溶液ヤーンを形成した。この溶液ヤーンを、エアギャップに通して水浴に送る際に7.82:1に延伸し、水浴で急冷することによりゲルヤーンにした。このゲルヤーンを、室温で3:1に延伸した。
【0046】
ゲルヤーンをトリクロロトリフルオロエタン流に対して向流で送ることにより鉱油を抽出し、次いで乾燥した。抽出および乾燥中にこのヤーンの延伸が幾らか生じた。乾燥したヤーンを、150℃で6:1に延伸した。本発明の延伸UHMW POヤーンは、354デニール(393dtex)を有し、41.1g/d(36.3cN/dtex)のテナシティを有した。
【0047】
この実施例についてのデータを、以下の表Iにまとめる。
実施例2
実施例1の場合と同じUHMW POおよび鉱油からなる10wt%スラリーを、混合タンク中で調製し、実施例1に記載の場合と同じ押出機に供給した。押出機バレル温度は、280℃であった。スクリュー回転速度は、180RPMであった。UHMW PO/鉱油スラリーは、平均滞留時間2.1分で押出機を通る際に280℃で液体混合物に転換された。したがって、押出機中の平均滞留時間は、Dをセンチメートル単位の押出機スクリュー直径として0.6D=0.6×4=2.4分の量未満であった。
【0048】
スラリーの押出量は、454g/分であり、UHMW POの押出量は、45.4グラム/分であった。したがって、グラム/分単位のUHMW POの押出量は、本発明のこの実施例では、2.5D=2.5×(4)=40の量を超えた。
【0049】
押出機から出る液体混合物は、ギヤポンプを通り、そこから温度290℃の外部加熱管、長さ9.63メートル(31.6フィート)、内部容積17026cmならびに幾つかの曲管および直径変化からなる容器を通った。管内には、間隔を置いて、L/D比8を有する3つの静的ミキサーがあった。この管状容器中の液体/溶液の平均滞留時間は、本発明のこの実施例では、24.9分であった。この液体混合物は、その容器を通る際に溶液に転換された。
【0050】
管状容器から出るUHMW PO溶液を、ギヤポンプに通しそこから紡糸ブロックおよび1.016mm(0.040in.)の直径の穴を有する紡糸口金に通すことにより、118本のフィラメントの溶液ヤーンを形成した。この溶液ヤーンを、エアギャップに通して急冷水浴に送る際に3.16:1に延伸した。形成されたゲルヤーンを、室温で3:16に延伸した。このゲルヤーンをトリクロロトリフルオロエタン流に対して向流で送ることにより鉱油を抽出し、乾燥した。このヤーンを、抽出および乾燥中に1.47:1に延伸した。この乾燥したヤーンを、133℃〜139℃の温度間隔で1.7:1に延伸し、次いで150℃で5.1:1に延伸した。本発明の延伸UHMW POヤーンは、497デニール(552dtex)を有し、46.6g/d(41.1cN/dtex)のテナシティを有した。
【0051】
この実施例についてのデータを、以下の表Iにまとめる。
実施例3
UHMW PO(デカリン中135℃にて18.3dl/gの固有粘度、138℃の融点および炭素原子1000個当たり0.5個未満の置換基を有する線状ポリエチレン)の20wt%スラリーを、混合タンク内の白色鉱油(Crompton Corporation製550 PO)中で調製し、温度90℃に終夜維持した。このスラリーを、連続計量して、実施例1に記載の場合と同じ押出機の供給ホッパー中に810g/分の速度で供給した。押出機バレル温度は280℃であり、その回転速度は300RPMであった。温度280℃に予熱した同じ白色鉱油流を、計量して、押出機の供給端部から押出機の第5バレル部に270g/分の速度で供給した。20wt%UHMW POスラリーおよび予熱鉱油の相対供給速度は、15wt%UHMW PO液体混合物が押出機中で形成されるような速度であった。
【0052】
液体混合物の押出量は1080g/分であり、UHMW POの押出量は162グラム/分であった。したがって、グラム/分単位のUHMW POの押出量は、本発明のこの実施例では、10D=10×(4)=160の量を超えた。押出機中の液体混合物の平均滞留時間は、0.9分であった。
【0053】
押出機から出る液体混合物は、ギヤポンプを通り、そこから、内部容積9072cmを有する、温度280℃の外部加熱管からなる容器を通った。管内には、L/D比8を有する2つの静的ミキサーがあった。この管状容器中の液体/溶液の滞留時間は、本発明のこの実施例では5.7分であった。この液体混合物は、その容器を通る際に溶液に転換された。
【0054】
管状容器から出るUHMW PO溶液を、ギヤポンプに通しそこから紡糸ブロックおよび1.016mm(0.040in.)の直径の穴を有する紡糸口金に通すことにより、360本のフィラメントの溶液ヤーンを形成した。この溶液ヤーンを、エアギャップに通して急冷水浴に送る際に3.07:1に延伸した。形成されたゲルヤーンを、室温で4.75:1に延伸した。このゲルヤーンをトリクロロトリフルオロエタン流に対して向流で送ることにより鉱油を抽出し、乾燥した。このヤーンを、抽出ステップの際に1.37:1に延伸し、乾燥機中で1.07:1に延伸した。この乾燥したヤーンを、150℃で3.58:1に延伸した。本発明の延伸UHMW POヤーンは、712デニール(791dtex)を有し、27.2g/d(24.0cN/dtex)のテナシティを有した。
【0055】
この実施例についてのデータを、以下の表Iにまとめる。
実施例4
実施例1の場合と同じUHMW POおよび鉱油からなる10wt%スラリーを、混合タンク中で調製し、実施例1に記載の場合と同じ押出機に供給した。押出機バレル温度は、280℃であった。スクリュー回転速度は、350RPMであった。UHMW PO/鉱油スラリーは、押出機を通る際に液体混合物に転換された。スラリーの押出量は681g/分であり、UHMW POの押出量は68.1グラム/分であった。したがって、グラム/分単位のUHMW POの押出量は、本発明のこの実施例では、4D=4×(4)=64の量を超えた。押出機中の液体混合物の平均滞留時間は、1.4分であった。
【0056】
押出機から出る液体混合物は、温度280℃の外部加熱管、長さ9.63メートル(31.6フィート)、内部容積17026cmならびに幾つかの曲管および直径変化からなる容器の中を通った。管内には、L/D比8を有する2つの静的ミキサーがあった。この管状容器中の液体/溶液の滞留時間は、本発明のこの実施例では、16.8分であった。この液体混合物は、その容器を通る際に溶液に転換された。
【0057】
管状容器から出るUHMW PO溶液を、ギヤポンプに通しそこから紡糸ブロックおよび1.016mm(0.040in.)の直径の穴を有する紡糸口金に通すことにより、118本のフィラメントの溶液ヤーンを形成した。この溶液ヤーンを、エアギャップに通して急冷水浴に送る際に4:1に延伸した。形成されたゲルヤーンを、室温で2.5:1に延伸した。このゲルヤーンをトリクロロトリフルオロエタン流に対して向流で送ることにより鉱油を抽出し、乾燥した。抽出および乾燥中にこのヤーンの延伸が幾らか生じた。この乾燥したヤーンを、150℃で5.79:1に延伸した。本発明の延伸UHMW POヤーンは、608デニール(676dtex)を有し、41.8g/d(36.9cN/dtex)のテナシティを有した。
【0058】
この実施例についてのデータを、以下の表Iにまとめる。
実施例5
実施例1の場合と同じUHMW POおよび鉱油からなる12wt%スラリーを、混合タンク中で調製し、実施例1に記載の場合と同じ押出機に供給した。押出機バレル温度は、280℃であった。スクリュー回転速度は、200RPMであった。UHMW PO/鉱油スラリーは、押出機を通る際に液体混合物に転換された。スラリーの押出量は665g/分であり、UHMW POの押出量は90.8グラム/分であった。したがって、グラム/分単位のUHMW POの押出量は、本発明のこの実施例では、4D=4×(4)=64の量を超えた。押出機中の液体混合物の平均滞留時間は、1.4分であった。
【0059】
押出機から出る液体混合物は、ギヤポンプを通り、そこから温度280℃の外部加熱管、長さ9.63メートル(31.6フィート)、内部容積17026cmならびに幾つかの曲管および直径変化からなる容器の中を通った。管内には、L/D比8を有する3つの静的ミキサーがあった。この管状容器中の液体/溶液の滞留時間は、本発明のこの実施例では、16.7分であった。この液体混合物は、その容器を通る際に溶液に転換された。
【0060】
管状容器から出るUHMW PO溶液を、ギヤポンプに通しそこから紡糸ブロックおよび1.016mm(0.040in.)の直径の穴を有する紡糸口金に通すことにより、118本のフィラメントの溶液ヤーンを形成した。この溶液ヤーンを、エアギャップに通して急冷水浴に送る際に4:1に延伸した。形成されたゲルヤーンを、室温で2.5:1に延伸した。このゲルヤーンをトリクロロトリフルオロエタン流に対して向流で送ることにより鉱油を抽出し、乾燥した。抽出および乾燥中にこのヤーンの延伸が幾らか生じた。この乾燥したヤーンを、150℃で5.51に延伸した。本発明の延伸UHMW POヤーンは、646デニール(718dtex)を有し、37.2g/d(32.8cN/dtex)のテナシティを有した。
【0061】
この実施例についてのデータを、以下の表Iにまとめる。
実施例6
同じ白色鉱油中に実施例1の場合と同じUHMW POを含有する10wt%スラリーを、調製した。このスラリーを、58mm(5.8cm)のスクリュー直径を有する噛合型二軸押出機の供給ホッパー中に連続供給した。スクリュー要素は、全て転送用運搬要素であった。この押出機中の自由容積(バレル容積からスクリュー容積を引いた容積)は、6476cmであった。押出機バレル温度は、260℃であった。スクリュー回転速度は、300RPMであった。UHMW PO/鉱油スラリーは、押出機を通る際に液体混合物に転換された。スラリーの押出量は、5319g/分であり、UHMW POの押出量は、531.9グラム/分であった。したがって、グラム/分単位のUHMW POの押出量は、本発明のこの実施例では、10D=10×(5.8)=336の量を超えた。押出機中の液体混合物の平均滞留時間は、0.8分であった。押出機から出る液体混合物を、ギヤポンプに通した。
【0062】
次いで、この液体混合物を、温度290℃の外部加熱管、長さ22.86メートル(75フィート)、内部容積60000cmからなり幾つかの曲管および直径変化を有する容器に通す。管内には、間隔を置いて、L/D比8を有する9つの静的ミキサーがある。この管状容器中の液体/溶液の滞留時間は、7.8分であると推定される。この液体混合物は、その容器を通る際に溶液に転換される。
【0063】
管状容器から出るUHMW PO溶液を、ブロックに通し、紡糸ポンプおよび紡糸口金に通すことにより、各々240本のフィラメントの溶液ヤーンを6つ形成する。この溶液ヤーンを、エアギャップに通して急冷水浴に送る際に延伸する。形成されたゲルヤーンを、室温で延伸し、抽出して鉱油を除去し、乾燥する。この乾燥したヤーンを、150℃で延伸する。延伸されたヤーンは、少なくとも30g/d(24.5cN/dtex)のテナシティを有するであろうと考えられる。
【0064】
この実施例についてのデータを、以下の表Iにまとめる。
グラム/分単位のUHMW PO押出量は、本発明の各実施例では、2.5Dの量を超えたことがわかるであろう。押出機中の分単位の平均滞留時間は、本発明の各実施例では、0.6Dの量未満であり、容器中での平均滞留時間は、2分を超えたこともわかるであろう。最後に、本発明のマルチフィラメントヤーンは、全般的に、従来技術の単一フィラメントのテナシティを超えるテナシティを有したことから、たとえ本発明の繊維をずっと高い濃度で紡糸しても、改良された溶液品質が示唆されることがわかるであろう。
【0065】
このように、本発明をかなり十分詳細に記載してきたが、このような詳細に厳密に従う必要はないが、更なる変更および修正は当業者なら認識でき、全ては、添付の特許請求の範囲により定義されるように本発明の範囲内に含まれることは理解されよう。
【0066】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
デカリン中135℃にて測定される5〜45dl/gの固有粘度を有するUHMW POを最大50wt%まで含む溶液の連続調製方法であって、
a)UHMW PO粒子が前記UHMW PO用の溶媒中で溶解する温度未満である第1の温度で前記溶媒中に前記UHMW PO粒子スラリーを形成するステップと、
b)前記溶媒および前記UHMW POの混合物が、前記UHMW POの溶融温度を超える第2の温度で形成されるように、また、UHMW POの押出量が、Dが押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして少なくとも2.5D(2.5×D×D)グラム/分の量であるように作動する前記押出機を通って前記スラリーが加工されるステップと、
c)場合により、容積式ポンプを通して前記押出機から前記混合物を排出するステップと、
d)前記溶媒中の前記UHMW POの溶融温度を超える温度に加熱された容器であって、前記容器中での前記混合物の平均滞留時間が2〜120分であるような容積を有する前記容器に前記混合物を通すことにより前記UHMW POの溶液が形成されるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記スラリーが、押出機を通って加工される前に、前記UHMW POが前記溶媒中に溶解する温度未満の温度で、かつ前記UHMW PO粒子が溶媒の少なくとも5wt%吸収するのに十分な時間維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記押出機中の前記混合物の平均滞留時間が、Dが前記押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして最大で0.6D(0.6×D)分の量である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
UHMW POの押出量が、Dが前記押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして少なくとも4Dグラム/分である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
UHMW POの押出量が、Dが前記押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして少なくとも6Dグラム/分である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
UHMW POの押出量が、Dが前記押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして少なくとも10Dグラム/分である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
UHMW POの押出量が、Dが前記押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして2.5D〜40Dグラム/分である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記押出機が噛合型同方向回転二軸押出機である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記押出機のスクリュー要素が転送用運搬要素である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
加熱された前記容器中の前記混合物の平均滞留時間が2〜90分である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
加熱された前記容器中の前記混合物の平均滞留時間が4〜60分である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液中のUHMW PO濃度が2〜30wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記溶液中のUHMW PO濃度が5〜20wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記スラリーが、20kPaを超える圧力下で前記押出機に供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記UHMW PO粒子および前記溶媒が個別の供給流で前記押出機中に導入され、前記スラリーが前記押出機中で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒が、前記溶媒中の前記UHMW POの溶融温度を超える温度に予熱されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記溶媒中に前記UHMW POを含有する濃縮スラリーが前記押出機の供給部に導入され、前記UHMW POの溶融温度を超える温度に予熱された個別の溶媒流が、前記押出機中にその供給部の下流側から導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
加熱された前記容器が管である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記管が静的ミキサーを1つまたは複数含有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記超高分子量UHMW POが、デカリン中135℃にて測定される9〜30dl/gの固有粘度を有する線状ポリエチレンである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記線状ポリエチレンが炭素原子1000個当たり2個未満の置換基を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記線状ポリエチレンが炭素原子1000個当たり1個未満の置換基を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記溶媒が、脂肪族化合物、芳香族化合物、環式脂肪族化合物、ハロゲン化脂肪族化合物、ハロゲン化芳香族化合物、ハロゲン化環式脂肪族化合物およびそれらの混合液からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記溶媒が、鉱油およびデカリンからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
超高分子量UHMW POのスラリーからの成形物品の連続調製方法であって、
a)デカリン中135℃にて測定される5〜45dl/gの固有粘度を有する超高分子量UHMW PO粒子を前記UHMW PO用の溶媒中に含有するスラリーを、前記UHMW POが前記溶媒中で溶解する温度未満である第1の温度で形成するステップと、
b)前記溶媒および前記UHMW POの混合物が、前記UHMW POの溶融温度を超える第2の温度で形成されるように、また、前記混合物中のUHMW POの押出量が、Dが押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして少なくとも2.5D(2.5×D×D)グラム/分の量であるように作動する前記押出機を通って前記スラリーが加工されるステップと、
c)場合により、容積式ポンプを通して前記押出機から前記混合物を排出するステップと、
d)前記UHMW POの溶融温度を超える温度に加熱された容器であって、前記容器中での前記混合物の平均滞留時間が2〜120分であるような容積を有する前記容器に前記混合物を通すことにより前記UHMW POの溶液が形成されるステップと、
e)そのように形成された、前記溶媒の大気中沸点未満の温度にある前記溶液を、容積式ポンプおよび成型オリフィスを介して前記容器外に送ることにより成形溶液物品を形成するステップと、
f)場合により、前記成形溶液物品を延伸するステップと、
g)前記溶液物品を冷却することにより成形ゲル物品を得るステップと、
h)場合により、前記成形ゲル物品を延伸するステップと、
i)前記成形ゲル物品から前記溶媒を実質的に除去することにより成形固体物品を形成するステップと、
j)場合により、1段階または複数の段階で25℃〜165℃の温度にて前記成形固体物品を延伸するステップと
を含む方法。
【請求項26】
前記スラリーが、押出機を通って加工される前に、前記UHMW POが前記溶媒中に溶解する温度未満の温度で、かつ前記UHMW PO粒子が溶媒の少なくとも5wt%吸収するのに十分な時間維持される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記押出機中の前記混合物の平均滞留時間が、Dが前記押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして0.6D(0.6×D)分の量未満である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
UHMW POの押出量が、Dが前記押出機のセンチメートル単位のスクリュー直径を表すとして2.5D〜40Dグラム/分である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記成形ゲル物品が、繊維、テープ、フィルム、シートまたはチューブである、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記成形固体物品が、繊維、テープ、フィルム、シートまたはチューブである、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
請求項25のステップa)〜h)に記載の方法により調製される、繊維、テープ、フィルム、シートおよびチューブからなる群から選択される部材を含む成形ゲル物品。
【請求項32】
請求項25に記載の方法により調製される、繊維、テープ、フィルム、シートおよびチューブからなる群から選択される部材を含む成形固体物品。
【請求項33】
少なくとも27g/d(23.8cN/dtex)のテナシティを有するマルチフィラメントUHMW PO繊維を含む、請求項32に記載の物品。
【請求項34】
少なくとも35g/d(30.9cN/dtex)のテナシティを有するマルチフィラメントUHMW PO繊維を含む、請求項32に記載の物品。
【請求項35】
少なくとも40g/d(35.3cN/dtex)のテナシティを有するマルチフィラメントUHMW PO繊維を含む、請求項32に記載の物品。
【請求項36】
少なくとも50g/d(44.1cN/dtex)のテナシティを有するマルチフィラメントUHMW PO繊維を含む、請求項32に記載の物品。

【公表番号】特表2009−532528(P2009−532528A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503234(P2009−503234)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/065333
【国際公開番号】WO2007/118008
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】