説明

高分子電解質カプセル化顔料

【課題】水性媒体中での分散安定性に優れた、高分子電解質カプセル化顔料を製造する方法の提供。
【解決手段】(A)カプセル化されるべき顔料の分散液を生成するステップ、 (B)次いで、顔料粒子の表面に高分子電解質層を適用するステップ、 (C)さらに、(B)に対して反対の電荷を有する高分子電解質層を適用するステップ、および/または(B)に対して反対に帯電した低分子量多価イオンを添加するステップ、および (D)適切であるならば、ステップ(B)および(C)を繰り返すステップを含み、前記ステップ(B)、(C)および適切であるならば(D)が非イオン性界面活性剤の存在下で実施される、顔料粒子をカプセル化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子電解質カプセル化顔料、これらの製造、ならびに特に水性および溶剤系のインクおよびコーティング剤用の着色剤としてのこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インク、インクジェットインク、ミルベース、およびコーティング剤などの、溶剤含有および純粋に水性の適用媒体中の顔料分散液の安定性は、特に使用される顔料の表面電荷によって強く影響される。多くの用途にとって、特定の方法において表面電荷を調節して、それにより分散液の流動性、ぬれ挙動、安定性および品質を、各バインダー系に合わせることが望ましい。粒子の分散を特徴付ける通常の方法は、ゼータ電位であり、これは、粒子および帯電した境界層の表面電荷と直接関係付けられる。
【0003】
酸化物系または硫化物系構造を有する無機顔料は、僅かに負の表面電荷を通常担持し、この表面電荷は、例えば表面に他の金属イオンを組み込むことによって変化させることができる。
【0004】
有機顔料の表面電荷は、通常低く、顔料のクラス、置換の種類および特別の結晶構造により広く変わり得る。当業者は、有機顔料の表面電荷を変えるいくつかの方法を知っている。1つの方法は、顔料表面に強く吸着する添加剤を使用することであり、これ自体が電荷または部分電荷を担持している。これらの添加剤は、顔料の表面と強く相互作用するアンカー基を有するポリマーであり得る。あるいは、顔料のコア構造を有し、置換されており、そのため特別の構造クラスの顔料の表面に特に強く付着する添加剤もある。これらのポリマー系および顔料系の添加剤に伴う欠点は、これらの材料の作用が、通常個々の顔料または顔料クラスに特定的であり、表面電荷の調整が狭い限界内で可能であるに過ぎないことである。さらに、これらの添加剤の製造は、高価であり、不便である。
【0005】
固体のある種の粒子に高分子電解質を適用する一般的方法は、WO99/47252に記載されている。しかし、この参考資料には、顔料の性能特性が、このようなカプセル化によって改善されるという指摘はない。事実、この参考資料は、染料のカプセル化を挙げてはいるが、染料は可溶性着色剤であり、一方顔料は不溶性着色剤である。
【0006】
WO02/28660は、着色剤を含む高分子電解質層による粒子のコーティングを記載している。これらの材料は、インクジェットインクに対して、高度に適すると明確に記載されている。しかし、この高い適性は、光および他の作用による劣化反応に関して、着色剤を改善することに限定されている。この参考資料には、表面電荷の変化により、顔料の特性が改善したという如何なる示唆もない。
【0007】
Yuan,J.;Zhou,S.;You,B;Lu,L.;Chem.Mat.2005,117,3587−3894は、粒径480nmを超えるPigment Yellow 109を、塩化ポリ(ジアリルジメチル)アンモニウムおよびナトリウムポリ(4−スチリルスルホネート)およびナノスケール二酸化ケイ素粒子により引き続いてコーティングするマルチコートによる、コーティングの記述である。
【0008】
特に、インクジェット印刷プロセスの分野では、輝く印刷画像と印刷の容易さとを両立させた顔料系のインク配合物が求められている。
【0009】
例えば、電子写真(レーザー印刷機および複写機)のようなインクジェット印刷は、非衝撃印刷プロセスであり、特に、小さな事務所、自宅事務所(SOHO)分野において、また広範な形態の分野において、コンピュータの使用が増加する結果として、近年ますます重要になってきた。
【0010】
インクジェット印刷技術は、いわゆる連続印刷プロセスおよびドロップ−オン−デマンドプロセスに区別され、このドロップは、コンピュータ制御された電気信号によって発生されたインクドロップである。基本的に、2種類のドロップ−オン−デマンドインクジェットプロセス、すなわち、バブルジェットとしても知られる熱インクジェット、および圧電インクジェットがある。
【0011】
顔料は、染料と同様に、インクジェットインクの着色剤として、最近、ますます使用されるようになってきた。インクジェット印刷用の顔料着色されたインクは、必要条件の全てを満足する必要がある。顔料着色されたインクは、印刷に適する粘度および表面張力を有する必要があり、貯蔵中に安定である必要があり、すなわち、凝集してはならず、分散された顔料は沈降してはならず、印刷機のノズルを詰まらせてはならない。
【0012】
また、インクジェット印刷は、印刷物の、特に色強度の、色相、明度、光沢、透明性の、および堅牢度特性、例えば耐光堅牢度、耐水堅牢度および色落ち堅牢度の非常に高い水準を必要とする。特に、普通紙上の印刷の場合、高光学濃度および良好な光沢を実現することが難しい。これらの特性は、使用される顔料粒子の表面電荷によって主として決定される。
【0013】
従来技術の顔料は、しばしばインクジェット印刷の必要条件を満足していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、インクジェット印刷の必要条件を満足する表面電荷顔料を提供することを目的とする。
【0015】
さらに、本発明は、これらの粒子上の表面電荷を特定の値に設定することができる、表面変性顔料を製造する方法を提供することを目的とする。この方法は、使用される顔料のクラスには実質的に無関係であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、本発明者らは、この目的が、顔料を高分子電解質層によりカプセル化する場合に実現されることを見出した。
【0017】
したがって、本発明は、
(A)カプセル化されるべき顔料の分散液を生成するステップ、
(B)次いで、顔料粒子の表面に高分子電解質層を適用するステップ、
(C)さらに、(B)に対して反対の電荷を有する高分子電解質層を適用するステップ、および/または(B)に対して反対に帯電した低分子量多価イオンを添加するステップ、および
(D)適切であるならば、ステップ(B)および(C)を繰り返すステップ
を含み、前記ステップ(B)、(C)および適切であるならば(D)が非イオン性界面活性剤の存在下で実施される、顔料粒子をカプセル化する方法を提供する。
【0018】
(A):使用される顔料分散液は、磨砕、超音波処理、または高圧均質化などの通常の方法によって得られ、有利にはイオン性および/または非イオン性、分散および湿潤剤を含む。
ステップ(B)、(C)および(D)ならびに(A)において有用である非イオン性界面活性剤の例は、アルキルまたはアリールアルコキシレート、例えばヒマシ油ロジンエステルのアルコキシレート、脂肪アルコール、脂肪アミン、脂肪酸、または脂肪酸アミド、およびまたアルキルフェノールのアルコキシル化生成物、またはこのオリゴマー的またはポリマー的誘導体、例えばアルデヒド縮合生成物およびまたアルキルポリグルコシドである。また、例えば2,4,6−トリス(1−フェニルエチル)フェノールなどのスチレン−フェノール付加生成物の、およびまたジグリセロールのアルコキシレート、およびまた長鎖酸のポリグリセロールエステルも可能である。分散助剤として、両親媒的ポリマーまたはコポリマーを使用することが、同様に可能であり、例には、ブロック−ポリ(メタクリルエステル)−ブロック−ポリ(エチレンオキシド)コポリマー、ブロック−ポリスチレン−ブロック−ポリ(エチレンオキシド)コポリマー、ブロック−ポリ(エチレンオキシド)−ブロック−ポリ(プロピレンオキシド)コポリマー、ブロック−ポリ(エチレンジアミン)−ブロック−ポリ(エチレンオキシド)−ブロック−ポリ(プロピレンオキシド)コポリマー、ポリビニルピロリドン、またはポリビニルアルコールがある。
【0019】
アニオン性およびカチオン性界面活性剤は、イオン性表面活性化合物として有用である。非イオン性界面活性剤の化学的変性によって得られる界面活性剤は、例えば基、−O−SOH、−SOH、−COOH、−O−PO(OH)、−O−PO(OH)−O−、−O−CO−CH=CH−COOH、−O−COCH(SOH)CHCOOH、−COCHCH(SOH)COOHを有する化合物である。これらの界面活性剤は、有利には、このアルカリ金属塩、アンモニウム塩、および/または水溶性アミン塩の形態において使用される。これらの他に、α−オレフィンのスルホネート、ポリナフタレンのスルホネート、リグニンスルホネート、ジアルキルスルホスクシネート、およびまた硫酸化脂肪酸または硫酸化油およびこの塩を使用することも可能である。また、例えばアルキル−またはアリールアンモニウム塩の基からのカチオン性界面活性剤、および例えばアミンオキシドなどの両性イオン性界面活性剤またはメソイオン性界面活性剤も有用である。
【0020】
また、分散剤として、ポリマー的表面活性化合物を使用することも可能であり、例には、1000と50000g/モルの間の平均分子量Mを有する、本質的にモノアルケニル芳香族類およびアクリレートからなるアクリレート樹脂コポリマーがある。モノアルケニル芳香族類とは、特にスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、tert−ブチルスチレン、o−クロロスチレン、およびまたこの混合物からなる群からのモノマーを意味する。
【0021】
アクリレートとは、アクリル酸、メタクリル酸、およびまたアクリル酸またはメタクリル酸のエステルからなる群からのモノマーを意味する。例は、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−n−ブトキシエチルメタクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルブチルメタクリレート、シンナミルメタクリレート、クロチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、メタリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メトキシブチルメタクリレート、2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、プロパルギルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートおよびテトラヒドロピラニルメタクリレートである。
【0022】
(B)および(C):本発明の方法のステップ(B)による表面への適用は、(A)による分散液中で実施され、分散液は、この中に溶解された高分子電解質塩を含み、沈殿により、顔料粒子の周囲に、通常1〜150nmの範囲の、好ましくは1〜100nmの範囲の、さらに好ましくは5〜50nmの範囲の、および最も好ましくは10〜30nmの範囲の規定の厚さの鞘を形成する。カプセル鞘厚さおよび均質性は、高分子電解質の沈殿速度によって決定される。鞘の厚さは、本質的に顔料粒子の濃度、コーティング成分の濃度、および液相における、沈殿を起こす溶解度変化の速度に依存する。沈殿は、例えば液相中に初期装填材料として鞘形成成分の一部分を入れ、引き続いて、1種または複数のさらなる鞘成分を添加することによって実施することができる。このような沈殿ステップは、例えば金属カチオンと反対に帯電した高分子電解質との組合せに対して使用することができる。
【0023】
表面沈殿を起こさせる他の方法は、沈殿を起こさせるように液相を変化させるときに、液相中に既に全て存在する、鞘を形成するために必要とされる成分にある。液相に対するこの変化は、例えば無機塩のような、例えば電解質の添加および/または例えば緩衝液の添加のようなpH変化にあり得る。
【0024】
高分子電解質の適切な選択は、特に表面電荷に関して、明確に高分子電解質鞘の特性および組成を調整することを可能にする。さらに、鞘の組成を、層構成のための物質の選択により、広い限界内で変化させることができる。原理的に、使用される分子が、十分に高い電荷を有し、および/または例えば水素結合および/または疎水性相互作用のような相互作用の他の形態により、下にある層との結合を形成する能力を有する限り、使用されるべき高分子電解質に関して制約はない。
【0025】
ステップ(B)、(C)および適切であるならば、(D)は、非イオン性界面活性剤の存在下において、特に効率的におよび凝集なしに実施することができる。さらに、本発明者らは、ステップ(C)および(D)を、障害になる分離なしに、多数の高分子電解質層が連続して顔料粒子に適用することができるように、制御された表面沈殿により、最適化することができることを見出した。これは、鞘成分を連続して添加すること、および電解質濃度および/またはpHを変化させることにより沈殿を起こさせることによって達成される。この方法において、保護および安定化効果の点で、レイヤーバイレイヤー技法による層と同等である高分子電解質層が、顔料粒子に適用される。
【0026】
線状または分枝高分子電解質を使用することができる。分枝高分子電解質を使用すると、高度の多孔性を有する、密度の低い高分子電解質皮膜をもたらすことができる。カプセル安定性を向上させるために、高分子電解質分子を、例えばアミノ基をアルデヒドと架橋させることにより、個々の層内または/および層間で架橋させることができる。さらに、両性高分子電解質、例えば部分的高分子電解質性質を有する両性ブロックまたはランダムコポリマーを使用して、極性小分子に対する透過性を低下させることが可能である。このような両性コポリマーは、一方では官能性の異なる単位、例えば酸性または塩基性単位、他方では、ポリマーにわたりブロックとしてまたはランダムに配置することができるスチレン、ジエンまたはシロキサンなどの疎水性単位からなる。
【0027】
外部条件の関数として構造変化するコポリマーを使用して、カプセル表面電荷または他の特性に関して、規定されたやり方で、カプセルの壁を制御することが可能である。この適切な材料には、例えば弱高分子電解質、高分子両性電解質またはポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)部分を有するコポリマー、例えばポリ(N−イソプロピルアクリルアミド−アクリル酸)が含まれ、これらの水溶解度は、膨潤を伴う水素結合の平衡により温度の関数として変化する。
【0028】
1つの好ましい実施形態は、低分子量イオンおよび反対に荷電された高分子電解質の錯体でカプセル化することを含む。適切な低分子量イオンの例は、アルカリ土類金属カチオンおよび遷移金属カチオンなどの多価金属カチオン、スルフェート、炭酸塩、ホスフェートなどの無機アニオン、帯電した界面活性剤、帯電した脂質、および適宜に反対に帯電した高分子電解質と組み合わせた帯電したオリゴマーである。これは、他の高分子電解質が同時に存在する、1つの高分子電解質の分散源を作りだす。錯体の高分子電解質は、ポリカチオンだけでなく、ポリアニオンであることもできる。この選択は、使用される顔料の性質および所望の表面特性に依存する。この実施形態は、多価陰性低分子量アニオン、例えばスルフェートと共に、例えば正に帯電した高分子電解質を、負に帯電した高分子電解質の溶液および顔料の分散液に添加することを含み、顔料粒子のコーティングが生じる。被覆された顔料粒子は、例えば遠心分離、濾過、および引き続いて、洗浄または膜濾過によって遊離の錯体から分離することができる。
【0029】
さらに他の好ましい実施形態は、塩添加または/およびpH変化および/または他の不安定化因子による、可溶性の、部分的に不安定化された高分子電解質錯体(ポリカチオン/ポリアニオン)を含む顔料分散液中の表面沈殿を含む。この方法において、錯体から顔料表面に、高分子電解質が徐々に移動する。この目的のために、負および正に帯電した高分子電解質を、高い塩含有量、好ましくは0.5モル/lを超える塩含有量、例えば1M NaClを有する水性溶液中に、撹拌前に導入することができる。顔料粒子を添加すると、これらは、被覆され、例えば遠心分離または濾過および引き続く洗浄により、引き続いて回収することができる。
【0030】
よりさらに好ましい実施形態において、鞘は、金属カチオンおよび少なくとも1種の負に帯電した高分子電解質を含む。有用な金属カチオンには、例えば二価金属カチオンおよび特に三価金属カチオンが含まれる。適切な金属カチオンの例は、例えばCa2+、Mg2+、Al3+、Y3+、Tb3+およびFe3+などのアルカリ土類金属カチオン、遷移金属カチオンおよび希土類元素カチオンである。
【0031】
また、本発明は、コアを有する被覆された粒子を提供し、このコアは、200nm未満の中央値粒径d50、およびそれぞれ1〜150nm、好ましくは1〜100nm、さらに好ましくは5〜50nmおよび最も好ましくは10〜30nmの層厚さの、異なる電荷を有する少なくとも2つの高分子電解質層を有する有機顔料である。
【0032】
好ましくは、本発明の被覆された粒子は、
(a.)有機顔料からなるコア20%〜99%、さらに好ましくは50%〜99重量%、特に70%〜99重量%、
(b.)少なくとも2種の高分子電解質層1%〜80%、さらに好ましくは1%〜50重量%、特に1%〜30重量%、
(c.)多価低分子量イオン0%〜30%、好ましくは0%〜10重量%、例えば1%〜20重量%
を含む。
【0033】
有用な有機顔料には、モノアゾ、ジスアゾ、レーキ化アゾ、β−ナフトール、ナフトールAS、ベンゾイミダゾロン、濃縮ジアゾ、アゾ金属錯体顔料およびフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、チオインジゴ、アンサンスロン、アントラキノン、フラバントロン、インダンスロン、イソビオラントロン、ピラントロン、ジオキサジン、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリンおよびジケトピロロピロール顔料などの多環式顔料、またはカーボンブラックが含まれる。
【0034】
記述された有機顔料の中で、5より良好な、および特に6より良好なブルースケール耐光堅牢を有する有機顔料が、特に適切である。さらに、調合物を製造するために使用される顔料は、非常に微細に分級されるべきである。中央値粒径d50は、理想的には200nm未満、特に30nmと200nm未満の間、およびさらに好ましくは40nmと180nmの間である。
【0035】
特に好ましい有機顔料の例示的選択は、カーボンブラック顔料、例えばガスブラックまたはファーネスブラック;モノアゾおよびジアゾ顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Yellow1、Pigment Yellow3、Pigment Yellow12、Pigment Yellow13、Pigment Yellow14、Pigment Yellow16、Pigment Yellow17、Pigment Yellow73、Pigment Yellow74、Pigment Yellow81、Pigment Yellow83、Pigment Yellow87、Pigment Yellow97、Pigment Yellow111、Pigment Yellow126、Pigment Yellow127、Pigment Yellow128、Pigment Yellow155、Pigment Yellow174、Pigment Yellow176、Pigment Yellow191、Pigment Red38、Pigment Red144、Pigment Red214、Pigment Red242、Pigment Red262、Pigment Red266、Pigment Red269、Pigment Red274、Pigment Orange13、Pigment Orange34、またはPigment Brown41;β−ナフトールおよびナフトールAS顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Red2、Pigment Red3、Pigment Red4、Pigment Red5、Pigment Red9、Pigment Red12、Pigment Red14、Pigment Red53:1、Pigment Red112、Pigment Red146、Pigment Red147、Pigment Red170、Pigment Red184、Pigment Red187、Pigment Red188、Pigment Red210、Pigment Red247、Pigment Red253、Pigment Red256、Pigment Orange5、Pigment Orange38またはPigment Brown1;レーキ化アゾおよび金属錯体顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Red48:2、Pigment Red48:3、Pigment Red48:4、Pigment Red57:1、Pigment Red257、Pigment Orange68またはPigment Orange70;ベンゾイミダゾリン顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Yellow120、Pigment Yellow151、Pigment Yellow154、Pigment Yellow175、Pigment Yellow180、Pigment Yellow181、Pigment Yellow194、Pigment Red175、Pigment Red176、Pigment Red185、Pigment Red208、Pigment Violet32、Pigment Orange36、Pigment Orange62、Pigment Orange72またはPigmentBrown25;イソインドリノンおよびイソインドリン顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Yellow139、Pigment Yellow173;フタロシアニン顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Blue15、Pigment Blue15:1、Pigment Blue15:2、Pigment Blue15:3、Pigment Blue15:4、Pigment Blue16、Pigment Green7またはPigment Green36;アンサンスロン、アンスラキノン、キナクリドン、ジオキサジン、インダンスロン、ペリレン、ペリノンおよびチオインジゴ顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Yellow196、Pigment Red122、Pigment Red149、Pigment Red168、Pigment Red177、Pigment Red179、Pigment Red181、Pigment Red207、Pigment Red209、Pigment Red263、Pigment Blue60、Pigment Violet19、Pigment Violet23、Pigment Blue80またはPigment Orange43;トリアリールカルボニウム顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Red169、Pigment Blue56またはPigment Blue61;ジケトピロロピロール顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Red254である。
【0036】
本発明の目的に有用な高分子電解質は、ポリアニオンおよびポリ塩基の両方を含み、生体高分子、例えばアルギン酸、核酸、ペクチン、タンパク質アラビアゴムだけでなく、また化学的に変性された生体高分子、例えばイオンセイまたはイオン化可能なポリサッカライド、例えばカルボキシメチルセルロース、キトサン、およびキトサンスルフェート、リグニンスルホネート、およびまた合成ポリマー、例えばポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸およびポリエチレンイミンである。
【0037】
適切なポリアニオンは、天然に生じるポリアニオンおよび合成ポリアニオンを含む。天然に生じるポリアニオンの例は、適切なpHにおいて、アルギン酸塩、カルボキシメチルアミロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カラギーナン、セルローススルフェート、コンドロイチンスルフェート、キトサンスルフェート、デキストランスルフェート、アラビアゴム、グアーガム、ゲランゴム、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キサンタンおよびタンパク質である。合成ポリアニオンの例は、ポリアクリレート(ポリアクリル酸の塩)、ポリアミノ酸およびこのコポリマーのアニオン、ポリマレエート、ポリメタクリレート、ポリスチレンスルフェート、ポリスチレンスルホネート、ポリビニルホスフェート、ポリビニルホスホネート、ポリビニルスルフェート、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホネート、ポリラクテート、ポリ(ブタジエン/マレエート)、ポリ(エチレン/マレエート)、ポリ(エチルアクリレート/アクリレート)およびポリ(グリセリルメタクリレート)である。
【0038】
適切なポリ塩基は、天然に生じるポリカチオンおよび合成ポリカチオンを含む。適切な天然に生じるポリカチオンは、適切なpHにおいて、キトサン、変性デキストラン、例えばジエチルアミノエチル変性デキストラン、ヒドロキシメチルセルローストリメチルアミン、リゾチーム、ポリリシン、プロタミンスルフェート、ヒドロキシエチルセルローストリメチルアミンおよびタンパク質である。合成ポリカチオンの例は、ポリアリルアミン、塩酸ポリアリルアミン、ポリアミン、塩化ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウム、ポリブレン、塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム、ポリエチレンイミン、ポリイミダゾリン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリ(アクリルアミド/臭化メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム)、ポリ(塩化ジアリールジメチルアンモニウム/N−イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレート/アクリルアミド)、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリジメチルアミノエピクロルヒドリン、ポリエチレンイミノエピクロルヒドリン、臭化ポリメタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウム、塩化ヒドロキシプロピルメタクリロイルオキシエチルジメチルアンモニウム、ポリ(メチルジエチルアミノエチルメタクリレート/アクリルアミド)、ポリ(メチル、/グアニジン)、臭化ポリメチルビニルピリジニウム、ポリ(ビニルピロリドン−ジメチルアミノエチルメタクリレート)および臭化ポリビニルメチルピリジニウムである。
【0039】
さらに本発明は、液体印刷インクに対する、特にインクジェットインクに対する、静電写真トナー、特に付加重合トナー、コーティング剤、粉体コーティング剤およびカラーフィルターに対する着色剤としての、被覆された粒子の使用を提供する。
【0040】
本発明の高分子電解質カプセル化顔料は、単離された形態において、または分散液において使用することができる。分散液は、インク配合に直接使用できるようにするためには、結果としての顔料含有量で少なくとも8重量%および好ましくは少なくとも10重量%で有利には製造される。カプセル化ステップの後に、全ての付随するステップ(B)、(C)または(D)は、続いて、低分子量成分または非被覆高分子電解質を除去することができる。これは、分散液の膜濾過によって、または遠心分離または濾過により顔料を単離し、引き続いて洗浄することによって達成することができる。
【0041】
本発明の高分子電解質カプセル化顔料は、高い安定性が注目に値する。インクジェットプロセスにおいて使用された場合、多くの顔料が、ノズル詰りを促進し、これが不良な印刷挙動をもたらす。このような個々のノズルの故障は、本発明の高分子電解質カプセル化顔料を使用した場合には観察されず、縞のない、したがって均質な印刷を可能にする。
【0042】
本発明の高分子電解質カプセル化顔料は、好ましくは、水性および非水性のインクジェットインクにおける、ミクロエマルジョンインクにおける、およびまたホットメルトタイプのインクなどに着色剤として使用される。
【0043】
ミクロエマルジョンインクは、有機溶剤、水、および適切であるならば、他の水親和性物質(相溶化剤)をベースとする。一般に、ミクロエマルジョンインクは、本発明の高分子電解質カプセル化顔料の0.5%〜30重量%、好ましくは1%〜15重量%、水の5%〜99重量%、および有機溶剤および/または水親和性化合物の0.5%〜94.5重量%を含む。
【0044】
溶剤系のインクジェットインクは、好ましくは本発明の高分子電解質カプセル化顔料の0.5%〜30重量%、有機溶剤および/または水親和性化合物の85%〜99.5重量%を含む。
【0045】
ホットメルトインクは、通常、ワックス、脂肪酸、脂肪アルコールまたはスルホンアミドをベースとし、室温において固体であり、加熱すると液体になり、好ましい溶融範囲は、約60℃と約140℃の間である。ホットメルトインクジェットインクは、例えば、本質的にワックスの20%〜90重量%および本発明の高分子電解質カプセル化顔料の1%〜10重量%を含む。さらに、ホットメルトインクジェットインクは、他のポリマーの0%〜20重量%、分散助剤の5重量%まで、粘度調節剤の0%〜20重量%、可塑剤の0%〜20重量%、粘着性付与添加剤の0%〜10重量%、透明性安定剤(例えば、ワックスの結晶化防止)の0%〜10重量%、およびまた抗酸化剤の0%〜2重量%を含むことができる。
【0046】
インクジェットインクにおいて、高分子電解質カプセル化顔料は、また、例えば有機または無機顔料および/または染料などの他の着色剤で調色することもできる。この場合には、高分子電解質カプセル化顔料は、着色剤として顔料および/または染料を含む、黄色、マゼンタ、シアンおよび黒インクからなるインクセットにおいて使用される。さらに、高分子電解質カプセル化顔料は、さらに例えば、オレンジ色、緑色、青色、金色および銀色の1種または複数の「スポット色」(spot colors)をさらに含むインクセットにおいて使用することができる。
【0047】
黒配合が、好ましくは着色剤としてカーボンブラック、特にガスブラックまたはファーネスブラックを含む液体印刷インクのセットが好ましく;液体印刷インクのシアン配合は、好ましくはフタロシアニン、インダンスロンまたはトリアリールカルボニウム顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Blue15、Pigment Blue15:1、Pigment Blue15:2、Pigment Blue15:3、Pigment Blue15:4、Pigment Blue16、Pigment Blue56、Pigment Blue60またはPigment Blue61の群からの顔料を含み;液体印刷インクのマゼンタ配合は、好ましくはモノアゾ、ジアゾ、β−ナフトール、ナフトールAS、レーキ化アゾ、金属錯体、ベンゾイミダゾール、アンサンスロン、アントラキノン、キナクリドン、ジオキサジン、ペリレン、チオインジゴ、トリアリールカルボニウムまたはジケトピロロピロール顔料の群からの顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Red2、Pigment Red3、Pigment Red4、Pigment Red5、Pigment Red9、Pigment Red12、Pigment Red14、Pigment Red38、Pigment Red48:2、Pigment Red48:3、Pigment Red48:4、Pigment Red53:1、Pigment Red57:1、Pigment Red112、Pigment Red122、Pigment Red144、Pigment Red146、Pigment Red147、Pigment Red149、Pigment Red168、Pigment Red169、Pigment Red170、Pigment Red175、Pigment Red176、Pigment Red177、Pigment Red179、Pigment Red181、Pigment Red184、Pigment Red185、Pigment Red187、Pigment Red188、Pigment Red207、Pigment Red208、Pigment Red209、Pigment Red210、Pigment Red214、Pigment Red242、Pigment Red247、Pigment Red253、Pigment Red254、Pigment Red255、Pigment Red256、Pigment Red257、Pigment Red262、Pigment Red263、Pigment Red264、Pigment Red266、Pigment Red269、Pigment Red270、Pigment Red272、Pigment Red274、Pigment Violet19、Pigment Violet23またはPigment Violet32の群からの顔料を含み;液体印刷インクの黄色配合は、好ましくはモノアゾ、ジスアゾ、ベンゾイミダゾリン、イソインドリノン、イソインドリンまたはペリノン顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Yellow1、Pigment Yellow3、Pigment Yellow12、Pigment Yellow13、Pigment Yellow14、Pigment Yellow16、Pigment Yellow17、Pigment Yellow73、Pigment Yellow74、Pigment Yellow81、Pigment Yellow83、Pigment Yellow87、Pigment Yellow97、Pigment Yellow111、Pigment Yellow120、Pigment Yellow126、Pigment Yellow127、Pigment Yellow128、Pigment Yellow139、Pigment Yellow151、Pigment Yellow154、Pigment Yellow155、Pigment Yellow173、Pigment Yellow174、Pigment Yellow175、Pigment Yellow176、Pigment Yellow180、Pigment Yellow181、Pigment Yellow191、Pigment Yellow194、Pigment Yellow196、Pigment Yellow213またはPigment Yellow219の群からの顔料を含み;液体印刷インクのオレンジ色配合は、好ましくはジスアゾ、β−ナフトール、ナフトールAS、ベンゾイミダゾロン、またはペリノン顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Orange5、Pigment Orange13、Pigment Orange34、Pigment Orange36、Pigment Orange38、Pigment Orange43、Pigment Orange62、Pigment Orange68、Pigment Orange70、Pigment Orange71、Pigment Orange72、Pigment Orange73、Pigment Orange74またはPigment Orange81の群からの顔料を含み;液体印刷インクの緑色配合は、好ましくはフタロシアニン顔料、特にカラーインデックス顔料、Pigment Green7またはPigment Green36の群からの顔料を含む。
【0048】
液体インクセットは、さらに、好ましくは群、C.I.Acid Yellow17およびC.I.Acid Yellow23;C.I.Direct Yellow86およびC.I.Direct Yellow98およびC.I.Direct Yellow132;C.I.Reactive Yellow37;C.I.Pigment Yellow17、C.I.Pigment Yellow74、C.I.Pigment Yellow83、C.I.Pigment Yellow97、C.I.Pigment Yellow120、C.I.Pigment Yellow139、C.I.Pigment Yellow151、C.I.Pigment Yellow155、C.I.Pigment Yellow180;C.I.Direct Red1、C.I.Direct Red11、C.I.Direct Red37、C.I.Direct Red62、C.I.Direct Red75、C.I.Direct Red81、C.I.Direct Red87、C.I.Direct Red89、C.I.Direct Red95、およびC.I.Direct Red227;C.I.Acid Red1、C.I.Acid Red8、C.I.Acid Red80、C.I.Acid Red81、C.I.Acid Red82、C.I.Acid Red87、C.I.Acid Red94、C.I.Acid Red115、C.I.Acid Red131、C.I.Acid Red144、C.I.Acid Red152、C.I.Acid Red154、C.I.Acid Red186、C.I.Acid Red245、C.I.Acid Red249およびC.I.Acid Red1289;C.I.Reactive Red21、C.I.Reactive Red22、C.I.Reactive Red23、C.I.Reactive Red35、C.I.Reactive Red63、C.I.Reactive Red106、C.I.Reactive Red107、C.I.Reactive Red112、C.I.Reactive Red113、C.I.Reactive Red114、C.I.Reactive Red126、C.I.Reactive Red127、C.I.Reactive Red128、C.I.Reactive Red129、C.I.Reactive Red130、C.I.Reactive Red131、C.I.Reactive Red137、C.I.Reactive Red160、C.I.Reactive Red161、C.I.Reactive Red174およびC.I.Reactive Red180からの調色染料を含むことができる。
【0049】
本発明の高分子電解質顔料は、全ての通常のインクジェット印刷機における使用のための、特にバブルジェットまたはピエゾプロセスに基づくインクジェット印刷機のための液体インクの製造のために有用である。
【0050】
印刷紙、天然または合成繊維材料、箔またはプラスチックだけでなく、本発明の高分子電解質カプセル化顔料は、様々な被覆されたまたは被覆されていない基材材料、例えば板紙、厚紙、木材および木材系材料、金属材料、半導体材料、セラミック材料、ガラス、ガラス繊維およびセラミック繊維、建設の無機材料、コンクリート、皮革、食料品、化粧品、皮膚および髪を印刷するために使用することができる。基材材料は、二次元的平面または空間的に広がった、すなわち、三次元であってよく、および完全にまたは部分的にだけ印刷または被覆されてよい。
【0051】
また、本発明の高分子電解質顔料は、例えば1成分または2成分粉体トナー(1または2成分顕色剤としても知られている。)、磁気トナー、液体トナー、付加重合トナー、およびまた特殊トナーなどの、静電写真トナーおよび顕色剤の着色剤として有用である。典型的なトナーバインダーは、スチレン、スチレン−アクリレート、スチレン−ブタジエン、アクリレート、ポリエステル、フェノール−エポキシ樹脂、ポリスルホン、ポリウレタン、個々にまたは組み合わせて、およびまたポリエチレンまたはポリプロピレンなどの、付加重合、ポリ付加およびポリ縮合樹脂であり、これら樹脂は、それぞれ帯電制御剤、ワックスまたは流動助剤をさらに含むことができ、または引き続いて、これらの添加剤で変性することができる。
【0052】
さらに、本発明の高分子電解質カプセル化顔料は、粉体、または粉体コーティング剤、例えば金属、木材、プラスチック、ガラス、セラミック、コンクリート、織物材料、紙またはゴムからなる物品の表面被覆に使用される、特に摩擦電気的にまたは界面動電的に噴霧可能な粉体コーティング剤における着色剤として有用である。さらに、本発明の高分子電解質カプセル化顔料は、加法的だけでなく、また減法的発色のカラーフィルター用の着色剤として、例えばテレビジョンスクリーン、液晶ディスプレー(LCD)、電荷結合デバイス、プラズマディスプレーまたはエレクトロルミネッセンスディスプレーなどの電気工学システムにおいて、そしてまた、この電気工学システムは、アクティブ(ツイストネマチック)またはパッシブ(超ツイストネマチック)強誘電性ディスプレーまたは発光ダイオードであってよく、およびまた電子インク(「e−インク」)または電子紙(「e−紙」)用の着色剤として有用である。カラーフィルター、反射および透明カラーフィルターの両方を製造するために、顔料は、ペーストの形態においてまたは適切なバインダー(アクリレート、アクリリックエステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、エポキシド、ポリエステル、メラミン、ゼラチン、カゼイン)中の顔料着色されたフォトレジストとして、各LCD成分(例えば、TFT−LCD=薄膜トランジスタ液晶ディスプレーまたは例えば(S)TN−LCD=(超)ツイストネマチック−LCD)に適用される。高熱安定性と同様に、また、安定なペーストまたは顔料着色されたフォトレジストは、必要条件として高顔料純度を有する。さらに、顔料着色されたカラーフィルターは、インクジェット印刷プロセスまたは他の適切な印刷プロセスによって適用することができる。
【0053】
また、本発明の高分子電解質カプセル化顔料は、塗装および分散液着色剤、エマルジョン塗料の顔料着色用に、印刷インクまたは着色剤、例えば織物印刷着色剤、フレキソ印刷インク、装飾印刷インクまたはグラビア印刷インク用に、壁紙着色剤またはインク用に、水希釈性コーティング用に、木材保存システム用に、ビスコース溶液染色用に、ラッカー用に、ソーセージケーシング用に、種子用に、ガラス壜用に、屋根タイルの原料着色用に、石膏用に、木材ステイン用に、色鉛筆芯、フェルトペン、校正インク、ボールペン用のペースト、チョーク、洗浄およびクリーニング組成物、靴手入れ製品、ラテックス製品の着色、研削剤およびまたプラスチックおよび高分子材料の着色用に有用である。
【実施例】
【0054】
以下の実施例において、特に言及されなければ、百分率および部は、重量による。
【0055】
以下本明細書において、実施例の本質的特徴は、被覆の間に非イオン性界面活性剤が適用されることである。これは、観察下で、被覆の間の凝集による粒径成長を保つことを可能にし、その結果、形成された高分子電解質カプセル化顔料は、使用に適する粒径、表面電荷および分散液安定性を有する。
【0056】
レイヤーバイレイヤー技術を使用した高分子電解質カプセル化顔料の製造:
【0057】
(実施例1)
カチオン層より出発するC.I.Pigment Blue15:3のコーティング
(実施例1a)
顔料分散液の製造:
C.I.Pigment Blue15:3、50部、エチレンオキシド−プロピレンオキシドコポリマー(Pluronic(商標)F68、BASF)13.5部、ドデシル硫酸ナトリウム1部および脱塩水435.5部の混合物を、Ultra−Turrax(商標)を使用して、予備分散させ、引き続いて、粒径分布が一定になるまで高圧ホモジナイザーにより分散させる。
【0058】
(実施例1b)
塩酸ポリアリルアミン(PAH)のカチオン層による被覆:
実施例1aから得られた顔料分散液に、PAHの1.0%溶液(15000g/モル、0.05M酢酸塩緩衝液pH5.6、0.2M NaCl)2000部を添加し、この混合物を室温において20分間撹拌する。被覆された顔料粒子を、引き続いて、遠心分離によって取り出し、脱塩水500部により2回洗浄する。
【0059】
(実施例1c)
塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム(PDADMAC)のカチオン層による被覆:
実施例1aから得られた顔料分散液を、界面活性剤含有1.0重量%PDADMAC溶液(Pluronic(商標)F68、0.1重量%、0.05M酢酸塩緩衝液pH5.6、0.2M NaCl)2000部と混合し、室温において20分間撹拌する。被覆された顔料粒子を、引き続いて、遠心分離によって取り出し、脱塩水500部により2回洗浄する。
【0060】
(実施例1d)
ポリスチレンスルホン酸(PSS)のアニオン層による被覆:
実施例1bから得られた顔料調剤を、脱塩水440部中に分散させ、界面活性剤含有0.5重量%ポリスチレンスルホン酸溶液(70000g/モル、Pluronic(商標)F68、0.1重量%、0.05M酢酸塩緩衝液pH5.6、0.2M NaCl)2000部と混合し、室温において20分間撹拌する。被覆された顔料粒子を、引き続いて、遠心分離によって取り出し、脱塩水500部により2回洗浄する。
【0061】
(実施例1e)
ポリスチレンスルホン酸(PSS)のアニオン層による被覆:
実施例1cから得られた顔料調剤を、脱塩水440部中に分散させ、界面活性剤含有0.5重量%ポリスチレンスルホン酸溶液(70000g/モル、Pluronic(商標)F68、0.1重量%、0.05M酢酸塩緩衝液pH5.6、0.2M NaCl)2000部と混合し、室温において20分間撹拌する。被覆された顔料粒子を、引き続いて、遠心分離によって取り出し、脱塩水500部により2回洗浄する。
【0062】
(実施例1f)
PAHのカチオン層による被覆:
実施例1dから得られた顔料調剤を、界面活性剤含有1.0重量%PAH溶液(15000g/モル、Pluronic(商標)F68、0.1重量%、0.05M酢酸塩緩衝液pH5.6、0.2M NaCl)2000部と混合し、室温において20分間撹拌する。被覆された顔料粒子を、引き続いて、遠心分離によって取り出し、脱塩水500部により2回洗浄する。
【0063】
(実施例1g)(比較)
塩化ポリジアリルジメチルアンモニウム(PDADMAC)のカチオン層による被覆:
実施例1eから得られた顔料分散液を、1.0重量%PDADMAC溶液(0.05M酢酸塩緩衝液pH5.6、0.2M NaCl)2000部と混合し、室温において20分間撹拌する。被覆された顔料粒子を、引き続いて、遠心分離によって取り出し、脱塩水500部により2回洗浄する。
【0064】
【表1】

【0065】
表1は、C.I.Pigment Blue15:3の層のレイヤーバイレイヤーカプセル化は、ゼータポテンシャル、したがって、表面電荷に強い影響を有することを示す。したがって、広範囲にわたり、特定の値を設定することが可能である。非イオン性界面活性剤なしでは、10倍大きい粒子が形成される(実施例1g)。
【0066】
(実施例2)
カチオン層より出発するC.I.Pigment Yellow213の2層カプセル化
(実施例2a)
顔料分散液の製造:
C.I.Pigment Yellow213、50部、Pluronic(商標)F68、13.5部、ドデシル硫酸ナトリウム1部および脱塩水435.5部をUltra−Turrax(商標)を使用して予備分散させ、引き続いて、粒径分布が一定になるまで高圧ホモジナイザーにより分散させる。
【0067】
(実施例2b)
塩酸ポリアリルアミン(PAH)のカチオン性高分子電解質層による被覆:
実施例2aから得られた顔料分散液に、1.0重量%PAH溶液(15000g/モル、0.05M酢酸塩緩衝液pH5.6、0.2M NaCl)2000部を添加し、混合物を室温において20分間撹拌する。被覆された顔料粒子を、引き続いて、遠心分離によって取り出し、脱塩水500部により2回洗浄する。
【0068】
(実施例2c)
EudragitEのカチオン性高分子電解質層による被覆:
実施例2aから得られた顔料分散液に、0.1重量%アクリレートコポリマー(EudragitE)溶液2000部(Pluronic(商標)F68、0.1重量%、0.2M NaCl、pH4.6)を添加し、この混合物を室温において20分間撹拌する。被覆された顔料粒子を、引き続いて、遠心分離によって取り出し、脱塩水500部により2回洗浄する。
【0069】
(実施例2d)
ポリスチレンスルホン酸(PSS)のアニオン層による被覆:
実施例2bから得られた顔料調剤を、脱塩水440部中に分散させ、界面活性剤含有0.5重量%ポリスチレンスルホン酸溶液(70000g/モル、Pluronic(商標)F68、0.1重量%、0.05M酢酸塩緩衝液pH5.6、0.2M NaCl)2000部と混合し、室温において20分間撹拌する。被覆された顔料粒子を、引き続いて、遠心分離によって取り出し、脱塩水500部により2回洗浄する。
【0070】
(実施例2e)
ポリスチレンスルホン酸(PSS)のアニオン層による被覆:
実施例2cから得られた顔料調剤を、脱塩水440部中に分散させ、界面活性剤含有0.5重量%ポリスチレンスルホン酸溶液(70000g/モル、Pluronic(商標)F68、0.1重量%、0.05M酢酸塩緩衝液pH5.6、0.2M NaCl)2000部と混合し、室温において20分間撹拌する。被覆された顔料粒子を、引き続いて、遠心分離によって取り出し、脱塩水500部により2回洗浄する。
【0071】
【表2】

【0072】
表2は、C.I.Pigment Yellow213の層の重ね合わせカプセル化は、ゼータポテンシャル、したがって、表面電荷に強い影響を有することを示す。したがって、広範囲にわたり、特定の値を設定することが可能である。
【0073】
(実施例3)
アニオン性高分子電解質層より出発するC.I.Pigment Blue 15:3の高分子電解質被覆
(実施例3a)
ポリスチレンスルホン酸(PSS)のアニオン層による被覆:
実施例1aから得られた顔料分散液に界面活性剤含有0.1重量%PSS高分子電解質溶液(70000g/モル、0.05M酢酸塩緩衝液pH5.6、0.2M NaCl)2000部を添加し、この混合物を室温において20分間撹拌する。被覆された顔料粒子を、引き続いて、遠心分離によって取り出し、脱塩水500部により2回洗浄する。
【0074】
(実施例3b)
EudragitEのカチオン性高分子電解質層による被覆:
実施例3aから得られた顔料調剤を、脱塩水440部中に分散し、0.1重量%EudragitE溶液(pH4.7、0.2MNaCl)2000部とおよびPluronic(商標)F68、0.1重量%と混合し、この混合物を室温において20分間撹拌する。被覆された顔料粒子を、引き続いて、遠心分離によって取り出し、脱塩水500部により2回洗浄する。
【0075】
【表3】

【0076】
表3は、C.I.Pigment Blue15:3の層のレイヤーバイレイヤーカプセル化は、ゼータポテンシャル、したがって、表面電荷に強い影響を有することを示す。したがって、広範囲にわたり、特定の値を設定することが可能である。
【0077】
本発明の顔料調剤の性能特性の評価
インクジェット印刷の分散液の製造:
(使用実施例1)
C.I.Pigment Blue15:3の顔料分散液:
分散液は、実施例1eによる顔料調剤を、C.I.Pigment Blue15:3を10.5重量%含む脱イオン水中に分散することによって得られる。
【0078】
(使用実施例2)
C.I.Pigment Yellow213の顔料分散液:
分散液は、実施例2eによる顔料調剤を、C.I.Pigment Yellow213を9.2重量%含む脱イオン水中に分散することによって得られる。
【0079】
(比較実施例)
以下の実施例において、顔料を、以下に指定された分散剤、有機溶剤およびその他の添加物と一緒に脱イオン水中においてペーストにし、次いで、溶解機により予備分散する。引き続いて、冷却しながら2時間、ビーズミルによって微細な分散を行う。引き続いて、脱塩水により、分散液を所望の顔料最終濃度20%に調整し、各分散液100重量部を製造する。
【0080】
(比較実施例1)
スチレンアクリレートおよびC.I.Pigment Blue15:3をベースとする顔料分散液、非カプセル化:
20部 C.I.Pigment Blue15:3
2.5部 アクリル樹脂、ナトリウム塩(分散剤)
1.2部 ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ナトリウム塩(分散剤)
1部 湿潤剤
25部 グリコール
0.2部 防腐剤
残余 水
【0081】
(比較実施例2)
アニオン性界面活性剤およびC.I.Pigment Yellow213をベースとする顔料分散液、非カプセル化:
20部 C.I.Pigment Yellow213
2部 アニオン性界面活性剤(分散剤)
2部 Disperbyk(商標)190分散剤
5部 グリコール
0.2部 防腐剤
残余 水
【0082】
顔料調剤の印刷特性試験
試験インクの製造:
印刷特性を評価するために、試験インクを使用実施例1ならびに比較実施例1および2の分散液から製造し、熱インクジェット印刷機上で印刷適性を試験した。
【0083】
試験インクを製造するために、最初に分散液を1μmフィルターを通して微細に濾過して、粉砕媒体破片および粗い部分を除去した。その後、濾過された分散液を水で希釈し、さらに低分子量アルコールおよびポリオールと混合して、顔料含有量をインク(100重量%)に対して5重量%に調整した。
【0084】
粘度:
効果的なインクジェットインクは、多数の物理的必要条件を満足する必要がある。インクジェットインクは、印刷機ノズル詰りを回避し、均質な印刷画像を生成するために非常に低い粘度(好ましくは、<5mPas)を有する必要がある。
【0085】
粘度は、Haakeからのコーン−プレート粘度計(RS1)(チタンコーン:φ60mm、1°)を使用して測定した。表4に報告されている粘度値は、せん断速度60s−1において測定した。
【0086】
A Hewlett Packard960c印刷機を使用して、市販の普通紙(複写紙)および特殊紙(Premium Quality)に試験画像を印刷した。印刷画像の品質および長所を目視検査によって評価した。
【0087】
光学密度の評価:
光学密度を評価するために、HP960c印刷機により、DataCopyからの普通紙上に試験インクを均質に印刷し、Gretag MacBethからの分光光度計により光学密度を測定した。この結果は、表4に照合されている。
【0088】
【表4】

【0089】
使用実施例1および2の分散液から製造された試験インクは、比較実施例1および2に比べて、改善された非常に低い粘度を有し、非常に良好な印刷挙動を示す。より詳しくは、試験インクは、印刷操作において高い信頼性が得られる(使用される種々の紙上で、非常に良好な印刷の開始、ノズル詰りがない、および優れた品質を有する非常に均質な印刷画像)。使用実施例1および2に従って製造された試験インクの普通紙上の印刷は、比較実施例1および2の試験インクと比較して高い光学密度を有する。さらに、使用実施例1および2の印刷は、比較実施例1および2とは異なり、縞のない印刷画像を有する。
【0090】
使用実施例1および2に従って製造された試験インクは、したがって、優れた方法においてインクジェット印刷必要条件を満足する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)カプセル化されるべき顔料の分散液を生成するステップ、
(B)次いで、顔料粒子の表面に高分子電解質層を適用するステップ、
(C)さらに、(B)に対して反対の電荷を有する高分子電解質層を適用するステップ、および/または(B)に対して反対に帯電した低分子量多価イオンを添加するステップ、および
(D)適切であるならば、ステップ(B)および(C)を繰り返すステップ
を含み、前記ステップ(B)、(C)および適切であるならば(D)が非イオン性界面活性剤の存在下で実施される、
顔料粒子をカプセル化する方法。
【請求項2】
少なくとも2つの、反対の電荷を有する高分子電解質層が適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つの高分子電解質層が、レイヤーバイレイヤー技法によって適用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2つの高分子電解質層が、介在する分離なしに連続して顔料粒子に適用される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
高分子電解質層が、顔料粒子の表面に沈殿によって適用される、請求項1から4の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項6】
沈殿が、高分子電解質錯体の不安定化によって起こされる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
高分子電解質錯体の不安定化が、高分子電解質の濃度および/またはpHを変化させることによって起こされる、請求項1から6の一項以上に記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7の一項以上に記載の方法によって得られる被覆された粒子。
【請求項9】
200nm未満の中央値粒径d50、およびそれぞれ1から150nmの層厚さにおいて、異なる電荷を有する少なくとも2つの高分子電解質層を有する有機顔料であるコアを有する被覆された粒子。
【請求項10】
(a.)有機顔料からなるコア20から99重量%、
(b.)少なくとも2つの高分子電解質層1から80重量%、および
(c.)多価、低分子量イオン0から30重量%
を含む、請求項9に記載の被覆された粒子。
【請求項11】
有機顔料が、モノアゾ、ジスアゾ、レーキ化アゾ、β−ナフトール、ナフトールAS、ベンゾイミダロン、縮合ジスアゾ、アゾ金属錯体顔料の群から、またはフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、チオインジゴ、アンサンスロン、アントラキノン、フラバントロン、インダンスロン、イソビオラントロン、ピラントロン、ジオキサジン、キノフタロン、イソインドリノン、イソインドリンおよびジケトピロロピロール顔料の群からの多環式顔料の群から、またはカーボンブラックから選択される、請求項9または10に記載の被覆された粒子。
【請求項12】
コーティングが、5から50nm厚である、請求項9から11の少なくとも一項に記載の被覆された粒子。
【請求項13】
液体印刷インク、特にインクジェットインク、電子写真トナー、特に付加重合トナー、コーティング剤、粉体コーティング剤、およびカラーフィルター用の着色剤としての、請求項9から12の一項以上に記載の被覆された粒子の使用。
【請求項14】
請求項9から12の一項以上に記載の被覆された粒子を着色剤として含むインクジェットインク。

【公開番号】特開2007−291342(P2007−291342A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−43304(P2007−43304)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(596081005)クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド (27)
【Fターム(参考)】