説明

高効率ピクセル化エレクトロルミネセンスデバイスに使用するための高抵抗ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)

例えばOLEDなどのエレクトロルミネセンスデバイスに使用するための高抵抗PEDT/PSSバッファ層が提供される。別の実施形態によって、高抵抗PEDT/PSSバッファ層を含むOLEDが提供される。さらに別の実施形態によって、キャストする前にPEDT/PSSの水溶液に環状エーテル補助溶剤を添加することによって、水溶液から基板上にキャストされるPEDT/PSS層の導電率を減少させる方法が開発された。1つの実施形態において、この材料を赤色、緑色、青色の有機発光ダイオード(RGB OLED)の中間バッファ層として用いることができるように、基板上にキャストされるPEDT/PSS層の固有導電率を減少させる方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光ダイオードなどのピクセル化エレクトロルミネセンスデバイスの製造における導電性ポリマーの使用に関する。
【0002】
導電性ポリマーは最初は、20年以上前に研究者の注目をあつめた。従来の導電材料(例えば、金属)と比較してこれらのポリマーに関心が高まったのは主として、軽量、可撓性、耐久性および加工が容易である可能性などの要因のためであった。今日まで最も商業的に成功した導電性ポリマーはポリアニリンおよびポリチオフェンであり、様々な商品名で販売されている。
【0003】
発光型ディスプレイに使用するためのエレクトロルミネセンス(EL)デバイスが最近、開発されたことで導電性ポリマーに対する関心が再び高まることとなった。導電性ポリマーを含有する有機発光ダイオード(OLED)などのELデバイスは概して、以下の構成を有する。
【0004】
アノード/バッファ層/ELポリマー/カソード
アノードは典型的に、例えば、インジウム/スズ酸化物(ITO)などの半導性ELポリマーの、ほかの場合なら充填πバンドに正孔を注入する能力を有する任意の材料である。アノードは場合により、ガラスまたはプラスチック基板上に支持される。ELポリマーは典型的に、ポリ(パラフェニレンビニレン)またはポリフルオレンなどの共役半導電性ポリマーである。カソードは典型的に、半導性ELポリマーの、ほかの場合なら空πバンドに電子を注入する能力を有する、CaまたはBaなどの任意の材料である。
【0005】
バッファ層は典型的に導電性ポリマーであり、アノードからELポリマー層中への正孔の注入を容易にする。バッファ層はまた、正孔注入層、正孔輸送層と呼ばれることもあり、または二層アノードの一部として特徴づけられる場合がある。バッファ層として使用される代表的な導電性ポリマーは、ポリアニリン(PANI)のエメラルジン塩の形またはスルホン酸でドープされたポリマージオキシチオフェンである。最も広範囲に用いられるジオキシチオフェンは、ポリスチレンスルホン酸でドープされたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)であり、PEDT/PSSと略される。PEDT/PSSは、バイエル(Bayer)からバイトロン(Baytron)(登録商標)Pとして市販されている。
【0006】
PEDT/PSSは赤色、緑色、青色の有機発光ダイオード(RGB OLED)などのELデバイス中でバッファ層として使用するための主な候補になっている。しかしながら、RGB OLEDにおいてPEDT/PSSの広範囲にわたる使用を妨げる1つの要因は、デバイス性能を犠牲にしないでこの材料の導電率を制御することができないことである。例えば、RGB OLEDの製造において、(1センチ当たり約1.2×10−5ジーメンス(S/cm)の固有導電率に対して)PEDT/PSSの低導電率層がディスプレイのピクセル間のクロストークを最小にするために望ましい。確かに、基板上にキャストする前にPEDT/PSSの水溶液中に様々なポリマー添加剤を混入することによってPEDT/PSSの導電率を調節する試みがなされた。しかしながら、これらの添加剤はOLEDの性能に有害な効果を与えることがある。
【0007】
フィルムの厚さを減少させることによって、抵抗率を増加させることが可能である。しかしながら、OLEDのPEDT/PSSバッファ層の厚さを低減することは、フィルムが薄くなると電気ショートの発生のために製造率が低くなるので、良い選択ではない。ショートを避けるために、約200nmの厚さを有する比較的厚いバッファ層として用いることが必要である。
【0008】
【非特許文献1】H.ベッカー(H.Becker)ら著、Adv.Mater.12、42(2000年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電荷移動を促進するためにバッファ層が若干の電気導電率を有しなくてはならないが、PEDT/PSSバッファ層の導電率は、必要であるより概して高い。したがって、エレクトロルミネセンスデバイスに使用するための高抵抗PEDT/PSSバッファ層が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの実施形態によって、高抵抗PEDT/PSSフィルムが提供される。本発明の別の実施形態によって、エレクトロルミネセンスデバイス、例えば、OLEDに使用するための高抵抗PEDT/PSSバッファ層が提供される。本発明のさらに別の実施形態によって、高抵抗PEDT/PSSバッファ層を含むエレクトロルミネセンスデバイスが提供される。
【0011】
本発明のさらに別の実施形態によって、環状エーテルを含む少なくとも1つの補助溶剤の有効量をPEDT/PSSの水溶液に添加する工程と、前記溶液を基板上にキャストする工程とを含む、OLEDに使用するための高抵抗バッファ層の製造方法が提供される。
【0012】
本発明のさらに別の実施形態によって、水溶液から基板上にキャストされるPEDT/PSS層の導電率を減少させる方法であって、キャストする前に少なくとも1つの環状エーテル補助溶剤をPEDT/PSSの水溶液に添加する工程を含む方法が開発された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の1つの実施形態によって、例えば、OLEDなどのエレクトロルミネセンスデバイスに使用するための高抵抗(低導電率)PEDT/PSSフィルムおよびバッファ層が提供される。本発明の別の実施形態によって、高抵抗(低導電率)PEDT/PSSバッファ層を含むOLEDが提供される。
【0014】
電気抵抗率は電気導電率に逆比例している。従って、本明細書中で用いられる語句「高抵抗」および「低導電率」は、本明細書中で記載されたPEDT/PSSバッファ層に対して交換可能に用いられる。本明細書中で用いられる語句「高抵抗」および「低導電率」は各々、市販のPEDT/PSSの導電率レベルより小さい、すなわち、約1.2×10−5S/cmより小さい導電率レベルを指す。
【0015】
抵抗率および導電率の値は典型的に、オーム−センチメートル(ohm−cm)およびジーメンス/センチメートル(S/cm)の単位で記録される。本明細書中で用いられるとき、抵抗率の値ではなく導電率の値が(S/cmの単位を用いて)記録される。
【0016】
本発明のさらに別の実施形態によって、水溶液から基板上にキャストされるPEDT/PSS層の導電率を減少させる方法であって、有効量の少なくとも1つの環状エーテル補助溶剤を水溶液に添加する工程を含むが提供される。RGB OLEDの製造においてバッファ層などの適用において、低導電率PEDT/PSS層が望ましい。
【0017】
本明細書中で用いた用語「補助溶剤」は、室温において液体であり、水と混和性である物質を指す。本明細書中で用いた用語「混和性」は、補助溶剤が(各々の特定の補助溶剤についてここで示した濃度において)水と混合され、実質的に均質な溶液を形成することができることを意味する。
【0018】
本発明の実施においての使用が考えられる例示的な環状エーテル補助溶剤には、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4メチル−1,3−ジオキサン、4−フェニル−1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、2,5−ジメトキシ−2,5−ジヒドロフラン等、ならびにそれらの任意の2つ以上の組合せがある。本発明の1つの実施形態において、環状エーテル溶剤は、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、または1,4−ジオキサンである。本発明の別の実施形態において、環状エーテル溶剤は1,4−ジオキサンである。
【0019】
PEDT/PSSの水溶液に添加された補助溶剤の量は、そこからキャストされるPEDT/PSS層の所望の導電率に依存する。補助溶剤は典型的に、約0.5重量%〜約70重量%までの範囲の濃度において水溶液中に存在する(重量%は、全溶液の重量パーセントを指す)。1つの実施形態において、補助溶剤は、約0.5重量%〜約35重量%までの範囲の濃度において水溶液中に存在する。本発明の別の実施形態において、補助溶剤は、約0.5重量%〜約10重量%までの範囲の濃度において水溶液中に存在する。本発明のさらに別の実施形態において、補助溶剤は、約0.5重量%〜約2.5重量%までの範囲の濃度において水溶液中に存在する。
【0020】
本発明の1つの実施形態において、例えば、1,4−ジオキサンなどの環状エーテル溶剤をPEDT/PSSの水溶液に添加すると、そこからキャストされるPEDT/PSS層の導電率を1/100に減少させる(すなわち、添加された補助溶剤のないPEDT/PSSについて10−5S/cmに対して、1,4−ジオキサンを添加されたPEDT/PSSについて10−7S/cm)。本発明のこの実施形態によって製造されたPEDT/PSS層は、パッシブピクセル化ディスプレイに有用であり、そこにおいてはピクセル間のクロストークを最小にするために低導電率PEDT/PSS層が望ましい。
【0021】
本発明の別の実施形態において、少なくとも1つの環状エーテル補助溶剤の有効量をPEDT/PSSの水溶液に添加する工程と、前記溶液を基板上にキャストする工程とを含む、ポリマー発光型ディスプレイの高抵抗バッファ層の製造方法が提供される。本発明によって製造された高抵抗PEDT/PSSバッファ層は、すぐれた正孔注入を提供し、電気ショートを最小にし、デバイスの寿命を増強し、ピクセル間の電流の漏れ(すなわち、クロストーク)を最小にする。
【0022】
本発明によって製造されたPEDT/PSS層は当業者に周知の様々な技術を用いて基板上にキャストすることができる。代表的なキャスティング技術には、例えば、溶液キャスティング、ドロップキャスティング、カーテンキャスティング、スピン−コーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷等がある。キャスティングは典型的に室温において行なわれるが、キャスティングはまた、本技術分野に公知の、より高温またはより低温で行なわれてもよい。
【0023】
本発明によって製造されたPEDT/PSS層を様々な基板上にキャストすることができる。本発明の1つの実施形態において、場合によりガラス、プラスチック、セラミック、ケイ素などの基板上にあるアノード材料の薄層上にPEDT/PSS層をキャストする。本発明の実施においての使用が考えられるアノード材料には、インジウム/スズ酸化物(ITO)や、2族の元素(すなわち、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、13族の元素(すなわち、B、Al、Ga、In、Tl)、14族の元素(C、Si、Ge、Sn、Pb)の混合酸化物などがある。本明細書中で用いた語句「混合酸化物」は、2族の元素から選択された2つ以上の異なったカチオンを有する酸化物を指す。あるいは、アノードは、導電性ポリアニリンまたはポリ(ジオキシチオフェン)などの有機材料であってもよい。
【0024】
本発明のさらに別の実施形態において、アノードと、バッファ層と、エレクトロルミネセンス材料と、カソードとを含むエレクトロルミネセンスデバイスが提供され、前記バッファ層が、約1×10−5S/cm未満の導電率を有する。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態において、基板上にキャストされるPEDT/PSS層の乾燥条件が大幅に簡易化されてもよいことが発見された。例えば、本発明によって製造されたPEDT/PSS層を90℃より低い温度において乾燥させることができる。(200℃を超える代表的な乾燥温度に対して)これらのより温和な乾燥温度は、可撓性LEDの適用のために望ましい。温度が高くなると、可撓性の基板および/またはエレクトロルミネセンス材料のいくらかの劣化を起こすことがある。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態において、水溶液から基板上にキャストされるPEDT/PSS層の厚さを増加させる方法であって、有効量の少なくとも1つの補助溶剤を水溶液に添加する工程を含む方法が提供される。概して、導電率は、バッファ層の厚さを増加させることによってわずかに増加する。ディスプレイの生産率は、バッファ層の厚さを増加させることによって増加する。デバイスの性能は、バッファ層の厚さを増加させることによってわずかに減少する。
【0027】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照して、より詳細に記載される。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
(補助溶剤がPEDT/PSSの導電率および厚さに与える効果)
以下の実施例に用いられたPEDT/PSSの水溶液をバイエル(Bayer)から商品名バイトロンP CH8000(バイトロンP CH8000は典型的に、約0.14重量%のPEDTおよび約2.6重量%のPSSを含有する)として購入した。パターン化ITO電極を有するガラス基板を製造した。PEDT/PSS層をパターン化基板の上にフィルムとしてスピン−キャストし、その後、表1に記載されたように乾燥させた。ITO電極間の抵抗を高抵抗電位計を用いて測定した。フィルムの厚さをDec−Tac表面形状測定装置(テンコル・インストルメンツ(Tencor Instruments)製のアルファ・ステップ(Alpha−Step)500表面形状測定装置)を用いて測定した。
【0029】
以下の表1に示すように、環状エーテル補助溶剤を添加することによって、PEDT/PSS層の導電率を1/30未満、例えば、1.2×10−5S/cmから4.0×10−7S/cmより小さい値に減少させる。概して、同じく環状エーテル補助溶剤を添加すると、層の厚さを増加させる。表1の星印の2つの項目によって示されるように、本発明によって製造されたPEDT/PSS層を真空炉内で30分間、50℃で有効に乾燥させることができる。
【0030】
【表1】

【0031】
(実施例2)
(補助溶剤を含有する水溶液からキャストされるPEDT/PSS層を使用するデバイスの応力寿命(stress life)の効果)
図1および2は、様々な補助溶剤を含有する水溶液からキャストされるPEDT/PSS層を有するエレクトロルミネセンス(EL)デバイスの応力寿命を比較する。(非特許文献1)に記載されているように、エレクトロルミネセンス材料として可溶性ポリ(1,4−フェニレンビニレン)コポリマー(CPPV)を用いてELデバイスを製造した。デバイスは以下の構成を持った。
ガラス基板−−ITOアノード−−PEDT/PSSバッファ層−−C−PPV−−Ba/Alカソード
【0032】
図1は、補助溶剤を用いないPEDT/PSSを使用するデバイスの応力寿命を示す。バッファ層は、1.2×10−5S/cmの導電率を有した。バッファ層は1000rpmにおいてキャストされ、129nmの厚さを有した。エレクトロルミネセンス層は650rpmにおいてキャストされ、74nmの厚さを有した。デバイスの応力寿命を、3cmのバックライトで2.49mA/cmにおいて測定した。初期効率は6.9〜7.0cd/Aであり、動作電圧は3.7〜3.8Vであった。
【0033】
図2は、1.5%の1,4−ジオキサンを有するPEDT/PSSを使用するデバイスの応力寿命を示す。バッファ層は、6.9×10−8S/cm未満の導電率を有した。バッファ層は1000rpmにおいてキャストされ、136nmの厚さを有した。エレクトロルミネセンス層は650rpmにおいてキャストされ、76nmの厚さを有した。デバイスの応力寿命を3cmのバックライトで2.44mA/cmにおいて測定した。初期効率は9.6〜10.4cd/Aであり、動作電圧は3.6〜3.9Vであった。環状エーテル補助溶剤を添加すると、PEDT/PSSの導電率を1.2×10−5S/cmから6.9×10−8S/cmより小さい値に減少させた。図1および2のデータは、少なくとも1つの環状エーテル補助溶剤をPEDT/PSSの水溶液に添加することによって、そこからキャストされるPEDT/PSS層の導電率が、デバイスの応力寿命を損なわずに制御され得ることを示す。
【0034】
(実施例3)
(補助溶剤の濃度の効果)
図3Aおよび図3Bは、様々な1,4−ジオキサン濃度を有するPEDT/PSS(バイトロンP CH8000)溶液の吸収スペクトルを示す。図3Aは、ジオキサンを含有しないPEDT/PSS(310)および0.5重量%のジオキサンを含有するPEDT/PSS(320)、1.0重量%のジオキサンを含有するPEDT/PSS(330)、1.5重量%のジオキサンを含有するPEDT/PSS(340)、および2.0重量%のジオキサンを含有するPEDT/PSS(350)の吸収スペクトルを示す。図3Aに示されるように、1,4−ジオキサン濃度が2重量%より低いとき、当該量の1,4−ジオキサンを含有するPEDT/PSSの吸収スペクトルは、PEDT/PSSだけの吸収スペクトルと本質的に同じである。図3Bは、ジオキサンを含有しないPEDT/PSS(310)および2.0重量%のジオキサンを含有するPEDT/PSS(350)、3.0重量%のジオキサンを含有するPEDT/PSS(360)、4.0重量%のジオキサンを含有するPEDT/PSS(370)、5.0重量%のジオキサンを含有するPEDT/PSS(380)、および10.0重量%のジオキサンを含有するPEDT/PSS(390)の吸収スペクトルを示す。図3Bに示されるように、1,4−ジオキサンの濃度が2重量%より高い時にPEDT/PSSのスペクトルに著しい変化がある。920nmあたりのピークが760nmあたりに青色シフトされ、430および320nmの2つの新しいピークが出現する。これらの変化は、10重量%の1,4−ジオキサン濃度において図3Bにおいて最も明らかである。
【0035】
図4に示されるように、実施例1に記載されたように製造されたPEDT/PSSフィルムの導電率は、1,4−ジオキサン濃度の増加によって急激に減少する。導電率が7×10−7S/cm未満に低下する(それは1.5%の1,4−ジオキサン濃度において計測器の検出限界を近づく。図5に示されるように、1,4−ジオキサン濃度が2重量%を超える時にELデバイスの効率が低下し、動作電圧が増加する)。図6を参照すると、1,4−ジオキサン濃度が2重量%を超える時に80℃においての応力寿命が減少するが、電圧の同様な増加が観察される(電圧増加率(V.I.R.))。図1〜6のデータは、PEDT/PSSの水溶液の好ましい1,4−ジオキサン濃度が約1.0〜1.5重量%であることを示す。
【0036】
これらのデータは、1,4−ジオキサンをPEDT/PSSの水溶液に約1.0〜1.5重量%の濃度において添加すると、デバイスの性能および応力寿命を損なわずにそこからキャストされるPEDT/PSS層の導電率を7×10−7S/cm未満に減少させ、層の厚さを増加させることを明らかに示す。
【0037】
本発明は、その特定の好ましい実施形態に対して詳細に記載されたが、改良および変型は、記載および請求される本発明の精神および範囲内であることは理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】補助溶剤を含有しない水溶液からキャストされるPEDT/PSS(バイトロンP CH8000、ロット#CHN0004)のバッファ層を使用するデバイスの80℃においての応力寿命を示す。
【図2】1.5重量%の1,4−ジオキサン(すなわち、1.5重量%の1,4−ジオキサンを有するバイトロンP CH8000、ロット#CHN0004)を含有する水溶液からキャストされるPEDT/PSSの層を使用するデバイスの80℃においての応力寿命を示す。
【図3A】様々な濃度の1,4−ジオキサンを含有するPEDT/PSS水溶液(すなわち、バイトロンP CH8000、ロット♯CHN0004)の吸収スペクトルを示す。
【図3B】様々な濃度の1,4−ジオキサンを含有するPEDT/PSS水溶液(すなわち、バイトロンP CH8000、ロット♯CHN0004)の吸収スペクトルを示す。
【図4】1,4−ジオキサン濃度が、様々な量の1,4−ジオキサンを含有する水溶液(すなわち、バイトロンP CH8000、ロット♯CHN0004)からキャストされるPEDT/PSS層の導電率に与える効果を示す。
【図5】1,4−ジオキサン濃度が、様々な量の1,4−ジオキサンを含有する水溶液(すなわち、バイトロンP CH8000、ロット♯CHN0004)からキャストされるPEDT/PSS層を使用するSYデバイスの効率および動作電圧に与える効果を示す。
【図6】1,4−ジオキサン濃度が、様々な量の1,4−ジオキサンを含有する水溶液(すなわち、バイトロンP CH8000、ロット♯CHN0004)からキャストされるPEDT/PSS層を使用するデバイスの電圧増加率(VIR)および80℃においての応力寿命に与える効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PEDT/PSSと、環状エーテル補助溶剤とを含み、約1×10−5S/cm未満の導電率を有することを特徴とする、高抵抗フィルム。
【請求項2】
約1×10−6S/cm未満の導電率を有することを特徴とする、請求項1に記載の高抵抗フィルム。
【請求項3】
アノードと、高抵抗バッファ層と、エレクトロルミネセンス材料と、カソードとを含むエレクトロルミネセンスデバイスであって、前記バッファ層が、PEDT/PSSと、環状エーテル補助溶剤とを含み、約1×10−5S/cm未満の導電率を有することを特徴とする、エレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項4】
前記バッファ層が約1×10−6S/cm未満の導電率を有することを特徴とする、請求項3に記載のエレクトロルミネセンスデバイス。
【請求項5】
水溶液から基板上にキャストされるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)層の導電率を減少させる方法であって、有効量の少なくとも1つの環状エーテル補助溶剤を前記水溶液に添加する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記環状エーテル溶剤が、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、4メチル−1,3−ジオキサン、4−フェニル−1,3−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、2,5−ジメトキシ−2,5−ジヒドロフラン、およびそれらの任意の2つ以上の組合せから選択された溶剤を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記環状エーテル溶剤が、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、および1,4−ジオキサンから選択された溶剤を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記環状エーテル溶剤が1,4−ジオキサンを含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの補助溶剤が前記水溶液の約0.5重量%〜約70重量%までの範囲を構成することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1つの補助溶剤が前記水溶液の約0.5重量%〜約35重量%までの範囲を構成することを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの補助溶剤が前記水溶液の約0.5重量%〜約10重量%までの範囲を構成することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの補助溶剤が前記水溶液の約0.5重量%〜約2.5重量%までの範囲を構成することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)層が、スピン−コーティング、カーテンキャスティング、またはスクリーン印刷によって前記基板上にキャストされることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項14】
前記基板がインジウム/スズ酸化物であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記基板がポリマーフィルムであることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリマーフィルムがポリアニリンであることを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
水溶液から基板上にキャストされるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)層の導電率を約1×10−5S/cm未満の値まで減少させる方法であって、約0.5重量%〜約2.5重量%までの範囲の1,4−ジオキサンを前記水溶液に添加する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
少なくとも1つの環状エーテル補助溶剤の有効量をポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)の水溶液に添加する工程と、前記溶液を基板上にキャストする工程とを含むことを特徴とする、発光ダイオードに使用するための高抵抗バッファ層の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法によって製造されることを特徴とする、発光ダイオードに使用するための高抵抗バッファ層。
【請求項20】
約1×10−5S/cm未満の導電率を有することを特徴とする、請求項18に記載の高抵抗バッファ層。
【請求項21】
水溶液から基板上にキャストされるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホネート)層の厚さを増加させる方法であって、有効量の少なくとも1つの環状エーテル補助溶剤を前記水溶液に添加する工程を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−518778(P2006−518778A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500842(P2006−500842)
【出願日】平成16年1月6日(2004.1.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/000370
【国際公開番号】WO2004/063256
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】