説明

高収率の脱ロウ製品のための脱ロウ触媒の酸素化物処理

非コバルト触媒を使用するフィッシャー−トロプシュ炭化水素合成を使用して、天然ガスに由来する合成ガスから、ワックス質燃料および潤滑油炭化水素を製造する。ワックス質炭化水素は、ワックス質炭化水素を、水素の存在下に非硫化水素化脱ロウ触媒と接触させることによって、低沸点炭化水素への低い転化率で水素化脱ロウされ、その触媒は、還元され、次いで、1種以上の酸素化物を含むストリームと接触させることによって処理されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素化物で処理した非硫化脱ロウ触媒上での炭化水素の水素化脱ロウに関する。より詳しくは本発明は、前記触媒および天然ガスから製造されるHとCOを、フィッシャー−トロプシュ触媒の存在下に反応させることによって合成されるワックス質炭化水素から、触媒を酸素化物と接触させることにより処理されている非硫化脱ロウ触媒上で、ワックス質炭化水素を水素化脱ロウすることによって、脱ロウされた燃料および潤滑油留分を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料および潤滑油は、様々な添加剤を基油に組み込むことによって製造され、基油は一般に、所望の燃料および潤滑油の沸点範囲で沸騰するワックス質炭化水素から誘導される脱ロウされた炭化水素留分を含んでなる。脱ロウは、ワックス質炭化水素の流動点および曇り点を許容可能なレベルまで低下させる。フィッシャー−トロプシュ法によって合成される比較的純粋なワックス質およびパラフィン性炭化水素は、硫黄、窒素および芳香族化合物含量の少ないディーゼル燃料、ジェット燃料および高級潤滑油を製造するための優れた原料である。これらのワックス質炭化水素の硫黄、窒素および芳香族化合物含量は実質的に零であり、従って、原料のままの炭化水素を、事前の水素化処理なしで品質向上化運転に移すことができる。フィッシャー−トロプシュ法では、HとCOが炭化水素合成触媒の存在下に反応して、ワックス質炭化水素が形成される。周囲条件で固体であるそれらのワックス質炭化水素留分は、フィッシャー−トロプシュ・ワックスと呼ばれ、典型的には燃料および潤滑油の両方の沸点範囲で沸騰する炭化水素が含まれる。しかし、それらは、燃料および潤滑油として役立つには高すぎる曇り点および流動点を有し、従って、許容できる低いレベルの曇り点および流動点を満たすために、更に処理(例えば、脱ロウ)する必要がある。溶剤脱ロウ法は、使用することができない。何故なら、留出液燃料の沸点範囲で沸騰する脱ロウされた炭化水素の収率が、かなり低下することになり、潤滑油留分を含んでなるより高い分子量(例えば、C16+)の炭化水素が、一般に周囲温度で固体であるからである。ワックス質炭化水素を接触脱ロウ処理する様々な方法が開示されてきた。ZSM−5触媒を使用するものなどの多くは、ワックス質炭化水素を、燃料および潤滑油の沸点範囲より下で沸騰する生成物に水素化分解することによって、脱ロウする。他には、ヘテロ原子、芳香族化合物および他の不飽和化合物を除去するための水素処理が含まれる。様々な接触脱ロウプロセスの例示的な、しかしこれに限定されない例は、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7に開示されている。
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,179,994号明細書
【特許文献2】米国特許第6,090,989号明細書
【特許文献3】米国特許第6,080,301号明細書
【特許文献4】米国特許第6,051,129号明細書
【特許文献5】米国特許第5,689,031号明細書
【特許文献6】米国特許第5,075,269号明細書
【特許文献7】欧州特許第0 668 342B1号明細書
【特許文献8】米国特許第6,294,077号明細書
【特許文献9】米国特許第5,246,566号明細書
【特許文献10】米国特許第5,282,958号明細書
【特許文献11】米国特許第4,975,177号明細書
【特許文献12】米国特許第4,397,827号明細書
【特許文献13】米国特許第4,585,747号明細書
【特許文献14】米国特許第6,310,265号明細書
【特許文献15】国際公開第0242207号パンフレット
【特許文献16】国際公開第0078677号パンフレット
【特許文献17】米国特許第4,900,707号明細書
【特許文献18】米国特許第6,383,366号明細書
【特許文献19】EP0 142 317号明細書
【特許文献20】米国特許第5,098,684号明細書
【特許文献21】米国特許第5,227,353号明細書
【特許文献22】米国特許第5,573,657号明細書
【特許文献23】米国特許第6,284,807号明細書
【特許文献24】米国特許第6,168,768号明細書
【特許文献25】米国特許第6,107,353号明細書
【特許文献26】米国特許第5,882,614号明細書
【特許文献27】米国特許第4,568,663号明細書
【特許文献28】米国特許第4,663,305号明細書
【特許文献29】米国特許第4,542,122号明細書
【特許文献30】米国特許第4,621,072号明細書
【特許文献31】米国特許第5,545,674号明細書
【特許文献32】米国特許出願公開第20020128331号明細書
【特許文献33】米国特許第6,147,126号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、主に異性化によって脱ロウする触媒が発見され(例えば、特許文献6に開示されている)、これらは、クラッキングが少ない故に、より高い脱ロウされた製品収率をもたらす。しかし、これらの触媒のうちの最良のものでさえ、ある程度のクラッキング活性を有し、同時に脱ロウされた製品の損失を伴う。高いクラッキング活性を有する触媒は、多量のワックスを含まない炭化水素の脱ロウにとって特に望ましくない。何故なら、例えば、それらは、非コバルト・フィッシャー−トロプシュ触媒を使用して製造されるからである。脱ロウ触媒を硫化すると、当技術分野でよく知られているように、そのクラッキング活性を低下させることができるが、しかし、硫化することは、脱ロウ反応器を通過する脱ロウされた製品および水素反応ガスの両方を汚染するおそれがある。硫化の必要がなく、多量のワックスを含まないワックス質炭化水素でさえ、依然として水素化脱ロウの良好な結果を与える代わりの触媒処理を見出すことができれば、この技術にとって改良になるだろう。また、触媒は、非コバルト・フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成によって製造される炭化水素を水素化脱ロウする際、低下したクラッキング活性を有し、それによってその異性化脱ロウ活性および汚染物脱ロウ製品収率を増大させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
さて、燃料および潤滑油留分を含めて、非コバルト触媒を使用するフィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスから製造されるワックス質炭化水素は、還元されており、次いで、酸素化物含有炭化水素と接触させてある非硫化触媒を使用して、低沸点炭化水素への低い転化率で水素化脱ロウできることが判明した。
【0006】
一実施形態では、本発明は、
(a)天然ガスから合成ガスを製造する工程;
(b)燃料および潤滑油の沸点範囲で沸騰する留分を含んでなるワックス質炭化水素を合成するのに有効な反応条件で、非コバルト・フィッシャー−トロプシュ触媒の存在下にガス中のHとCOを反応させる工程;および
(c)少なくとも一部のワックス質炭化水素を品質向上設備に移し、そこでそれらを、水素および酸素化物含有炭化水素と接触させてある非硫化触媒を用いて水素化脱ロウする工程
に関する。天然ガスが合成ガスに転化されるプロセスは、合成ガスはその次には炭化水素に転化されるが、ガス転化プロセスと呼ばれる。従って、この実施形態は、水素化脱ロウによる製品品質向上を加えたガス転化プロセスに関する。
【0007】
水素化脱ロウプロセスは、ワックス質炭化水素を、水素、および触媒に1種以上の酸素化物を含む炭化水素を接触させることによって処理した脱ロウ触媒と接触させることを含んでなる。あるいは、水素化脱ロウすべき1種以上の酸素化物を含むワックス質炭化水素を、脱ロウ触媒と接触させてもよい。この脱ロウ触媒は、還元され、かつ非硫化のままでよく、好ましくは還元され、かつ硫化されない。この処理は、脱ロウ触媒のクラッキング活性が低下することによって、原料の低沸点炭化水素への転化による水素化脱ロウされた製品の損失を減少させ、水素化脱ロウ反応器のその場でまたは実験施設内で行われる。実験では、酸素化物で処理した水素化脱ロウ触媒、例えば、ZSM−48水素化脱ロウ触媒は、原料の低沸点炭化水素への転化およびより少ないメタン製造に関して硫化されているものに等しいことが示された。本明細書では、ZSM−48には、EU−2、EU−11およびZBM−30が含まれ、それらは構造的にZSM−48に等しい。
【0008】
非コバルト・フィッシャー・トロプシュ触媒は、その中の活性触媒成分が、Fe、Ni、Ru、ReおよびRhのうちの少なくとも1種を含む、コバルト以外の金属である触媒を指す。
【0009】
この処理に使用する1種以上の酸素化物を含む炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒上で合成されるワックス質炭化水素の少なくとも一部を含んでなり、水素化脱ロウすべきワックス質炭化水素原料を含んでなる場合があり、または含まない場合がある。用語「酸素化物」は、水および水素化脱ロウ条件下で水を形成する酸素含有化合物を指す。この処理の際使用する酸素化物は、水、または1種以上の酸素含有分子を含んでなるものでよく、それは、好ましくはヒドロキシル、モノおよび多価アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸並びにこれらの混合物を含む官能基を含んでなり、好ましくは1種以上のアルコールを含んでいる。酸素化物は、フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成反応器の触媒上で合成されるワックス質炭化水素に生来のものでもよく、および/または、酸素化物を、この処理のためにそれに加えてもよい。酸素化物処理に酸素化物として水を使用する場合、脱ロウ触媒を還元した後に水を加える。処理後、水素化脱ロウされる原料中に処理酸素化物が引き続き存在することは、触媒、水素化脱ロウ反応、または水素化脱ロウされた製品に全く悪影響を及ぼさない。従って、触媒反応に預かるフィッシャー−トロプシュ炭化水素合成反応によって製造される酸素化物含有ワックス質炭化水素留分を、触媒処理のために使用し、次に、ワックス中に酸素化物が引き続き存在することに起因する悪影響を伴わずに、水素化脱ロウすることができる。以下の実施例では、好適な水素化脱ロウ触媒であるZSM−48が、酸素化物含有の原料のままのフィッシャー−トロプシュ・ワックスで、およびまた、約525°F(274℃)の終留点を有する酸素化物含有フィッシャー−トロプシュ軽質油で首尾よく処理された。そのそれぞれは、非シフト化コバルト炭化水素合成触媒上で合成された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ワックス質原料の水素化脱ロウ用の脱ロウ触媒は、結晶質でも非晶質でもよい。結晶性材料は、少なくとも1つの10または12環チャネル(ring channel)を含むモレキュラーシーブであり、アルミノケイ酸塩(ゼオライト)を基礎にすることができる。酸素化物処理に使用するゼオライトは、少なくとも1つの10または12環チャネルを含むことができる。かかるゼオライトの例には、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、EU−1、NU−87、ITQ−13およびMCM−71が含まれる。12環チャネルを含むモレキュラーシーブの例には、ゼオライト・ベータ、ZSM−12、MCM−68、ZSM−18、モルデナイト、ホージャサイトおよびオフレタイトが含まれる。ZSM−5などの脱ロウ触媒は、特許文献8に言及されているように、酸性度、金属分散、触媒粒子径などの触媒特性を調節することによって、脱ロウ特性を変えることができることに留意する必要がある。このモレキュラーシーブは、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13および特許文献6に記載されている。MCM−68は、特許文献14に記載されている。MCM−71およびITQ−13は、PCT出願の特許文献15および特許文献16に記載されている。好適な触媒には、ZSM−48、ZSM−22およびZSM−23が含まれる。特に好ましのは、ZSM−48である。モレキュラーシーブは、水素形であることが好ましい。還元は、脱ロウステップ自体のその場で起こすことができ、または、実験施設内の別の容器中で起こすことができる。
【0011】
非晶質の脱ロウ触媒には、アルミナ、フッ化アルミナ、シリカ−アルミナ、フッ化シリカ−アルミナ、および第3族金属をドープしたシリカ−アルミナが含まれる。かかる触媒は、例えば、特許文献17および特許文献18に記載されている。
【0012】
この脱ロウ触媒は二官能性であり、即ちそれらには、少なくとも1種の第VI族金属、少なくとも1種の第VIII族金属、またはこれらの混合物である金属水素化成分が負荷されている。好適な金属は、第VIII族金属である。特に好ましいのは、Pt、Pd、またはこれらの混合物である。これらの金属は、触媒を基準にして0.1〜30重量%の割合で負荷される。触媒調製および金属の負荷方法は、例えば特許文献8に記載されており、例えば、分解可能な金属塩を使用したイオン交換および含浸が含まれる。金属分散技術および触媒粒子径制御は、特許文献10に記載されている。小さい粒子径および十分に分散した金属を有する触媒が好ましい。
【0013】
モレキュラーシーブは、典型的には高温度に抵抗力があるバインダ材料とともに合成され、脱ロウ条件下で使用して、完成した脱ロウ触媒を形成することができ、または、バインダなしでもよい(自己結合)。バインダ材料は、通常シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカとチタニア、マグネシア、トリア、ジルコニアおよびこれらの類似物などの他の金属酸化物との二成分の組合せ、並びにシリカ−アルミナ−トリアおよびシリカ−アルミナ・マグネシアなどのこれら酸化物の第三の(tertiary)組合せなどの、無機質酸化物である。完成した脱ロウ触媒中のモレキュラーシーブの量は、触媒を基準にして10〜100重量%、好ましくは35〜100重量%である。かかる触媒は、噴霧乾燥、押出成形等などの方法によって形成される。この脱ロウ触媒は、非硫化形で使用される。この脱ロウ触媒はまた、還元した形が好ましい。
【0014】
脱ロウ触媒の更なる説明は、好適な実施形態であるZSM−48ゼオライトの調製および使用によって例証される。ZSM−48ゼオライト成分および水素化成分を含んでなる脱ロウ触媒は公知であり、例えば、特許文献12、特許文献13、特許文献6および特許文献19に開示されている。これらの明細は、引用により本明細書に組み込まれる。ZSM−48ゼオライトは、10個の側環(sided ring)孔構造を有する、中間細孔径の酸性結晶質シリカ−アルミナ・モレキュラーシーブであり、有機配向剤(organic directing agent)を用いて調製される。調製後、それは、イオン交換およびカ焼によって水素形に転化される。本発明の方法に有用な触媒を製造する際、水素形ZSM−48ゼオライトは、バインダおよびまたはマトリックス成分、並びに、必要に応じて、好ましくはその異性化活性に悪影響を及ぼさない、またはそのクラッキング活性を増大しないような1種以上の追加の多孔性の触媒担体成分とともに合成される。かかる成分は、例えば、シリカ、アルミナ、好ましくは非酸性ガンマ・アルミナ、非晶質および結晶質のシリカ−アルミナの非酸性形、ベントナイトおよびカオリンなどの粘土等を含んでなることができる。水素化成分は、少なくとも1種の第VIII族金属成分、好ましくはPtおよびPdのような少なくとも1種の第VIII族貴金属成分を含んでなることができる。貴金属濃度は、触媒複合材に使用されるZSM−48ゼオライト成分、適宜のバインダ、あるいは他の担体またはマトリックス成分を含む合計触媒重量を基準にして、金属の約0.1〜5重量%、より典型的には約0.2〜1重量%の範囲になるだろう。ここでいう第VIII族とは、サージェント−ウェルチ・サイエンティフィック社(Sargent−Welch Scientific Company)が1968年に版権を得たサージェント−ウェルチ元素周期表(Sargent−Welch Periodic Table of the Elements)に見出される第VIII族を指す。1種以上の水素化成分は、任意の適切な手段によって、ZSM−48、または他の成分、あるいはそれらの複合材上に、堆積させ、合成し、またはそれらとイオン交換させることができる。かかる手段は、公知であり、例えば、含浸またはイオン交換が含まれる。以下の実施例で使用するZSM−48触媒は、ZSM−48の水素形、アルミナ・バインダおよび水素化成分として貴金属を含んでいた。金属の分解可能な塩の水溶液を、ZSM−48ゼオライト/アルミナ複合体上に含浸させ、続けてカ焼して、塩を金属に分解した。次いで、得られた触媒を、本発明の酸素化物処理の前に、水素中で還元した。還元および/または後続の処理は、異性化反応器中のその場で、または実験施設内の別の容器中で実行できる。
【0015】
ZSM−48触媒は、酸素化物処理の前に、好ましくは水素で還元される。触媒を処理するために使用する1種以上の酸素化物は、炭化水素中で行うことができ、その処理は、還元した触媒を、1種以上の酸素化物を含む炭化水素ストリームと接触させることを含んでなる。本発明の実施形態では、フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成反応によって合成される炭化水素製品の少なくとも一部である炭化水素キャリヤは、脱ロウすべき原料を含んでも、または、含まなくてもよい。この処理に使用する酸素化物の全てまたは一部を炭化水素に加えてもよく、または、それらは炭化水素に生来のものでもよい。例えば、原料のままの未処理のフィッシャー−トロプシュ軽質油およびワックスには、一般に合成反応の結果として形成される生来の酸素化物が含まれる。この軽質油またはワックスを使用して、触媒を処理することができ、次いでそのワックスを、この処理済触媒で水素化脱ロウすることができる。
【0016】
本発明の一態様では、この処理のために、生来の酸素化物の形で約400〜1500wppmの酸素を含む原料のままの(未処理の)フィッシャー−トロプシュワックスを使用すること、続けてこの処理済触媒を使用して、同じワックス質原料を水素化脱ロウすることが示された。従って、処理に使用した酸素化物は、それに続く水素化脱ロウの間、存在していた。また、そこでは、酸素含有分子の合計重量として測定して、15重量%の酸素化物を含む原料のままの(未処理の)フィッシャー−トロプシュ合成軽質油留分を使用することが示された。水素化脱ロウされた炭化水素製品には、酸素化物が全く見出されなかった。水素化脱ロウはこの処理の際に起こるが、しかし最初のうちはより高い水素化脱ロウされた製品収率を伴わず、これは、触媒がラインアウト(line out)する程度に十分長く触媒を処理した後に得られた。これは、以下に説明される。ワックスおよび軽質油は、非シフト化コバルト触媒上のフィッシャー−トロプシュ炭化水素合成反応から形成された。
【0017】
生来の酸素化物が十分な量で存在しない場合、その時は処理のために、追加の酸素化物が単に原料に加えられる。別の実施形態では、水素化脱ロウすべき原料以外の炭化水素を、酸素化物処理のためのキャリヤとして使用してもよい。処理のためには、酸素化物は、酸素として測定して、処理に使用する炭化水素の少なくとも100wppm、好ましくは少なくとも200wppm、より好ましくは少なくとも400wppmの量で存在することになる。酸素化物がより多量(例えば、≧3,000wppm)に存在しても、触媒、プロセス、または水素化脱ロウされた製品に悪影響を及ぼすことはないだろう。好適な酸素化物は、ヒドロキシル、アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、およびこれらの混合物を含む官能基を含んでなる酸素含有分子であり、より好ましくは1種以上のアルコールを含んでなる。好適な別の酸素化物は、水素化脱ロウ条件下で他の酸素化物から生成され得る水である。1種以上の酸素化物を、処理に使用する炭化水素ストリームに加える場合、2週間から1月かかる触媒のラインアウト後に、それを中断してもよい。しかし、水素化脱ロウされる原料中にそれらを放置しても、水素化脱ロウ反応または触媒に悪影響が及ぶことはない。ラインアウトは、ガス製造および原料の低沸点炭化水素への転化の程度のどちらかまたは両方における減少を反映するクラッキング活性を観察することよって定めることができる。触媒は、クラッキング活性がだいたい一定値に減少したとき、ラインアウトしたとみなされる。
【0018】
水素化脱ロウにより酸素化物が除去され、従って、酸素化物は、一般に水素化脱ロウされた製品中に見出されない。酸素化物処理は、触媒が処理された後にそれに続く水素化脱ロウで使用されるのと同じもしくは異なる条件で行われる。以下の実施例では、触媒処理は、それに続く水素化脱ロウ温度より下の約300°F(167℃)の温度で開始される。水素化脱ロウ反応条件には、それぞれ450〜850°F(232〜454℃)、10〜2,000psig(170〜13891kPa)、0.1〜5.0LHSV(時間当たりの液空間速度)および500〜10000scf/B(89〜1780m/m)の広い範囲にある温度、水素分圧、時間当たりの液空間速度および水素処理ガス比が含まれる。これらの条件は、より典型的には500〜750°F(260〜399℃)、100〜1,000 psig(791〜6996kPa)、0.5〜3.0LHSVおよび1000〜5000scf/B(178〜890m/m)の範囲にあり、200〜700psig(1480〜4928kPa)の圧力が好ましい。
【0019】
フィッシャー−トロプシュ反応によって製造されるワックスまたはワックス質炭化水素は、本発明の処理済触媒を使用して水素化脱ロウされ、(i)留出液燃料留分、および(ii)潤滑油留分のうちの少なくとも1つを含んでなる、流動点が低下した脱ロウされた製品が製造される。一般に、水素化脱ロウは、水素化脱ロウされた製品の流動点を所望の規格まで低下させ、(a)ブレンディングに使用する1種以上の留出液燃料基材油、および(b)1種以上の潤滑基油のうちの1種以上を形成する。この1種以上の潤滑基油は、重質潤滑基油を含む場合があるか、または含まない場合がある。好適な実施形態では、水素化脱ロウされた潤滑油製品には、1種以上の潤滑基油、また好ましくは重質潤滑基油が含まれる。留出液燃料は、約Cから約550〜730°F(288〜388℃)までの範囲のいずれかで沸騰する水素化脱ロウされた炭化水素留分を意味し、ナフサ、ディーゼルおよびジェット燃料が含まれる。本発明との関連で、重質留分は、重質潤滑油留分を含んでなり、重質潤滑油留分は、水素化脱ロウされたとき、重質潤滑基油を含んでなる。潤滑基油は、600°F(316℃)より上の、より典型的には少なくとも約700〜750°F(371〜399℃)の初留点を有する潤滑油を意味し、それは、所望の流動点および曇り点まで水素化脱ロウされている。重質潤滑基油は、約850〜1000°F(454〜538℃)の範囲の初留点、並びに、1000°Fより上の、好ましくは1050°F(566℃)より上の終留点を有する。ここでいう初留点および終留点値とは、公称値であり、以下に述べる方法を使用して、ガスクロマトグラフ蒸留(GCD)によって得たT5およびT95留分境界点を基準にする。
【0020】
本発明に従って製造される留出液燃料および潤滑基油は、色相および安定性を改良するために、一般にマイルドな条件で水素化精製され、かつ場合により脱ヘイズされて、完成した燃料および潤滑基油が形成される。周知のように、ヘイズは、曇りまたは透明度の欠如であり、外見因子である。ヘイズの除去は、一般に、ヘイズに結びつく成分を除去する接触法または吸収法のいずれかによって達成される。水素化精製は、非常にマイルドな、比較的低温の水素化プロセスであり、それは、酸化安定性および色相を改良するために、触媒、水素、およびマイルドな反応条件を使用して、微量のヘテロ原子化合物、芳香族化合物およびオレフィンを除去する。水素化精製反応条件には、302〜662°F(150〜350℃)、好ましくは302〜482°F(150〜250℃)の温度、400〜3000psig(2859〜20786kPa)の全圧力、0.1〜5LHSV(hr−1)、好ましくは0.5〜3hr−1の範囲にある時間当たりの液空間速度が含まれる。水素の時間当たりの処理ガス比は、250〜10000scf/B(44.5〜1780m/m)の範囲にあるだろう。触媒は、担体成分、並びに、第VIB族(Mo、W、Cr)、および/または鉄族(Ni、Co)、並びに第族VIIIの貴金属(Pt、Pd)からの金属のうちの少なくとも1種の触媒金属成分を含むことになる。ここでいう第VIBおよびVIII族とは、サージェント−ウェルチ・サイエンティフィック社が1968年に版権を得たサージェント−ウェルチ元素周期表に見出される第VIBおよびVIII族を指す。この金属は、貴金属の場合わずか0.1重量%から、非貴金属の場合触媒組成物の30重量%もの高さまで存在することができる。好適な担体物質は、酸性が低く、例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、およびメソ細孔性結晶性材料として公知である超大細孔結晶性材料などの非晶質または結晶質の金属酸化物が含まれ、そのうち、MCM−41が好適な担体成分である。MCM−41の調製および使用方法は、公知であり、例えば、特許文献20、特許文献21および特許文献22に開示されている。
【0021】
燃料および潤滑基油はそれぞれ、所望の規格または要件を満たすために、それぞれの留分が水素化脱ロウの前に有していた流動点および曇り点に比べて十分に低い流動点および曇り点を含めた低温物性を有し、留出液燃料および潤滑油の沸点範囲内で沸騰する水素化脱ロウされた燃料および潤滑油留分を含んでなる。燃料または潤滑油は、それぞれの基材油と、少なくとも1種の添加物、または、より典型的には2種以上の添加剤を含む添加物パッケージの有効量との混合物を形成することによって調製される。完成した潤滑油(潤滑油)用のかかる添加物の例示的な、しかしこれに限定されない例には、1種以上の界面活性剤、分散剤、酸化防止剤、減摩添加剤、極圧添加剤、流動点降下剤、VI向上剤、摩擦改質剤、乳化破壊剤、酸化防止剤、消泡剤、腐食防止剤およびシール膨潤制御添加剤が含まれる。この混合物を形成する際に使用する基材油は一般に、マイルドに水素化精製され、および/または、水素化脱ロウした後に、その色相、外観および安定性を改良するために脱ヘイズされたものである。低温物性の要件は変化することになり、いくつかは、燃料または潤滑油が使用されることになる地理的な場所に依存する。例えば、ジェット燃料は、−47℃以下の凍結点を有する必要がある。ディーゼル燃料は、夏および冬それぞれの曇り点を有し、−15〜+5℃および−35〜−5℃まで、地球規模の地域によって変化する。通常の軽質および中質潤滑基油の低温物性は、約−20℃の流動点、および、一般に15℃超を超えない曇り点を含む場合がある。重質潤滑基油は、一般に75°F(24℃)および1気圧(101kPa)の室温および圧力条件で透明でかつ輝きがあるものである。しかし、ある場合には曇り点は75°F(24℃)より高くてもよい。
【0022】
水素化脱ロウすべきワックス質原料またはワックスは、フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成反応器で製造されるワックス質炭化水素留分の全てまたは一部を含んでなり、それは、反応条件で液体である。フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスでは、液体およびガス状の炭化水素製品が、HとCOの混合物を含んでなる合成ガスを、フィッシャー−トロプシュ触媒と接触させることによって形成され、そこでは、HとCOが反応して炭化水素が形成されることが知られている。この合成ガスは一般に、1種以上の硫黄および窒素保持化合物の形で、0.1vppm未満、好ましくは50vppb未満の硫黄または窒素を含む。合成ガスからこれらの非常に低いレベルまで窒素および硫黄を除去する方法は知られており、例えば、特許文献23、特許文献24、特許文献25および特許文献26に開示されている。
【0023】
本発明の方法では、非コバルト・フィッシャー−トロプシュ触媒は、適切な無機担体材料上、好ましくは1種以上の耐火性金属酸化物を含んでなる材料上に、Fe、Ni、Ru、Re、またはRh、好ましくはFeおよびRuのうちの少なくとも1種、並びに、場合によりMn、Ti、Mg、Cr、Ca、Si、Al、Cu、Th、Zr、Hf、U、MgおよびLaなどの1種以上の助触媒の触媒的に有効な量を含んでなる。有用な触媒およびそれらの調製方法は公知であり、例示的な、しかしこれに限定されない例は、例えば、特許文献27、特許文献28、特許文献29、特許文献30、特許文献31および特許文献32に見出すことができる。
【0024】
固定床、流動床およびスラリー炭化水素合成プロセスは、周知であり、文献に文書化されている。これらのプロセスの全てにおいて、合成ガスは、炭化水素を形成するのに有効な反応条件で、適切なフィッシャー−トロプシュ・タイプの炭化水素合成触媒の存在下に反応する。温度および圧力が25℃および1気圧(101kPa)の標準の室温条件で、これらの炭化水素の一部は液体、一部は固体(例えばワックス)、一部はガスになるだろう。スラリー・フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成プロセスがしばしば好ましい。何故なら、それにより、潤滑油および重質潤滑基油にとって有用な相対的に高い分子量のパラフィン性炭化水素の多くを製造することができるからである。本発明の実施では、ワックス質炭化水素またはワックス原料は、スラリー、固定床、または流動床フィッシャー−トロプシュ反応器で製造することができる。
【0025】
フィッシャー−トロプシュ・ワックスは、生来の酸素化物を含んでいる。例えば、以下の表1には、レニウム助触コバルト触媒成分を含んでなる非シフト化触媒を使用して合成されたワックスから、沸点範囲の関数として得た、酸素として測定した生来の酸素化物の値域を挙げてある。表1では、酸素は、酸素含有有機化合物または酸素化物からのそれであり、酸素として与えられており、酸素化された分子自体のwppmまたは重量%として与えられていない。例えば、ワックスが、酸素として測定して400〜600wppmの酸素化物を含有していると称される場合、ワックス中の酸素化物からの酸素量が400〜600wppmであると定められることを意味する。表中の反応器ワックスは、約500°F(260℃)から1,000°F(538℃)超までの沸点範囲を有するとして定義され、一方、高温分離器ワックスは、約350〜700°F(177〜371℃)で沸騰する。
【0026】
【表1】

【0027】
以下の表2には、同じ種類のフィッシャー−トロプシュ・ワックスにおいて、3種の異なる分子量範囲の代表である3種の異なる分子の炭素数で、これらの3種のタイプの酸素化物濃度を挙げてある。
【0028】
【表2】

【0029】
例示的な、しかしこれに限定されない以下の実施例では、ワックスは、チタニア担体成分を有する非シフト化レニウム助触コバルト触媒を含むスラリー・フィッシャー−トロプシュ反応器で製造され、約450°F(232℃)の初留点を有していた。このワックスは、一般に90重量パーセント以上のパラフィン、並びに、最高2〜4重量%の酸素化物および最高2〜5重量%のオレフィンを含んでなる。芳香族化合物は、NMR分析によって検出できなかった。このワックスは、1wppm未満の硫黄および1wppm未満の窒素を含んでいた。重量%合計酸素は、中性子活性化で測定される。合計酸素含量は、(アセチレンを形成するために)カルシウムカーバイドを使用して含水量を測定することによって、続けて含水量が約200wppm未満である場合GC−MSにより、水のない基準に設定することができる。含水量が200wppmより高い場合、ASTM標準D−4928のカール・フィッシャー法が使用される。合計酸素化物含量は、高解像度のNMRによって定められ、一方、第一級アルコール、ケトンおよびアルデヒドは、GC−MSによって定められる。酸類、エステルおよび他の二原子酸素化物は、赤外線、またはGC−FIDおよびGC−MSによって定められる。芳香族化合物は、ASTM標準D−2622に記載されているように、蛍光X線(XRF)によって定められ、一方、オレフィンは、ASTM標準のD−2710による電量分析によって決定される臭素指数を使用して定められる。硫黄はASTM標準D−2622に従ってXRFによって、窒素は、ASTM標準D−4629に従ってシリンジ/入口酸化性燃焼および化学ルミネセンス検出によって測定される。
【0030】
ワックス質炭化水素を合成し、かつ脱ロウする統合したプロセスの実施形態では、本方法は、ワックス質炭化水素を形成するのに有効な反応条件で、フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成触媒の存在下にHとCOを反応させ、その一部は、反応条件で液体であり、水素、並びに、水素化成分および脱ロウ成分を含んでなる非硫化触媒の存在下に、これらのワックス質炭化水素の少なくとも一部を水素化脱ロウするステップを含んでなり、この場合、(i)水素化脱ロウのための触媒の選択性を増大させるために、(ii)水素化脱ロウ中のガス製造を減少させるために、(iii)流動点および曇り点が低下した脱ロウされた炭化水素を製造するために、この触媒は、還元されており、次いで、水素化脱ロウの前に、1種以上の酸素化物を含む炭化水素ストリームで処理してある。水素は、水素、並びに、少なくとも60、好ましくは少なくとも80%の水素と、残りが水素化脱ロウ触媒および上流側の炭化水素合成触媒に関して不活性な物質とを含んでなる水素の時間当たりの処理ガスまたは水素リッチ排ガス、を意味する。かかる低硫黄レベルを有する水素または水素処理ガスは、合成ガスからCOを除去し、かつ高品質の水素ガスを製造するために、これに限らないが、合成ガスの後流を処理すること(例えば特許文献33で公知であり、これに開示されているような、例えばメタネータまたはシフト反応器、TSA、PSA、膜分離等)を含めて、様々な供給源から得ることができる
【0031】
次の実施例を参照することによって本発明をより良く理解できるだろう。
【実施例】
【0032】
実施例1では、還元したZSM−48水素化脱ロウ触媒を処理するために使用した酸素化物含有炭化水素は、フィッシャー−トロプシュ・ワックスであり、一方、実施例2では、それは、やはりフィッシャー−トロプシュ炭化水素合成反応器で製造された酸素化物含有軽質油であった。両方とも、スラリー・フィッシャー−トロプシュ反応器で一緒に合成され、そこで、HとCOが、チタニア担持のレニウム助触コバルト触媒の存在下に反応して、炭化水素が形成され、その大部分は、反応条件で液体だった。ワックス中および軽質油中両方の酸素化物もまた、合成反応の結果として炭化水素合成反応器中で形成され、従って、ワックスおよび油に生来のものであった。これらの酸素化物は、主にアルコールであり、少量のエステルおよびエーテルを同伴していた。周囲条件で固体であったワックスは、後述の450°F+(232℃)ワックス質留分を含み、酸素として測定して400〜600wppmの酸素化物を含んでいた。周囲条件で液体であった軽質油は、約C〜C20分子を含み、約97〜526°F(36〜274℃)の沸点範囲を有し、アルコール、エステルおよび有機酸としての合計酸素含量として測定して、約7010wppmの酸素化物を含んでいた。軽質油の約5.2重量%は、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、ペンタノールおよびヘキサデカノールのようなノルマルアルコールを含んでいた。
【0033】
【表3】

【0034】
還元した脱ロウ触媒を処理するために使用した酸素化物含有ワックスおよび軽質油に加えて、320°F+(160℃+)および700°F+(371℃+)ワックス質異性体を、(i)本発明の酸素化物処理に対する比較として、還元した触媒と接触させるために、および、(ii)実施例1の水素化脱ロウ用のワックス質原料として、使用した。このワックス質異性体は全く酸素化物を含まず、実施例1で使用したものは、酸素化物含有450°F+(232℃+)フィッシャー−トロプシュ・ワックスを、非晶質のシリカアルミナ担体上に0.3重量%のPdを含んでなる触媒上で水素化脱ロウすることによって、得た。実施例2の場合、約700〜950°F(371〜510℃)の沸点範囲を有する軽質異性体を使用した。異性化により、全ての酸素化物がワックスから除去された。軽質異性体は、ZSM−48触媒を使用して得た。3種全ての異性体留分は、異性化の後、ある程度のワックスを依然として含んでいた。例えば、軽質異性体は、+14℃の流動点を有し、−18℃でMIBKを用いて溶媒脱ロウしたとき、22重量%のワックスが生じた。
【0035】
以下の全ての実施例では、ワックス質原料は、微粒子ZSM−48触媒上で水素化脱ロウされ、水素処理ガスは純粋水素であった。ZSM−48触媒は、ZSM−48ゼオライトの水素形の複合材上に、水素化成分として0.6重量%のPtおよびアルミナ・バインダを含んでいた。触媒の水素形ZSM−48ゼオライト成分は、特許文献6の手順に従って調製した。その明細は、引用により本明細書に組み込まれる。Pt成分を、含浸によって加え、続けてカ焼した。カ焼された粒子を、固定床パイロットプラント反応器に装入し、反応器中のその場で流動水素を用いて還元した。次いで、温度を下げ、還元した触媒粒子全てがワックス質液体中に浸漬され、従って酸素化物と接触することを確保するため、反応器の中に高温液体ワックスを(発熱を回避するために)約6時間にわたりゆっくり導入することによって、この還元した触媒を処理した。この後に、反応器の温度を、水素化脱ロウ温度に上げ、脱ロウすべき原料をその中に入れた。処理およびそれに続く水素化脱ロウの間、反応器への水素流れを維持した。反応器がラインアウトした後、これには一般に約30日かかったが、図中の流動点および転化率データを採った。
【0036】
図中の700°F+(371℃+)収率および流動点は、水素化脱ロウされた(異性化された)700°F+(371℃+)留分に対するものを指す。CH/イソ−C10の比は、モル比であり、水素化分解(CH製造)対ベータ切断(イソ−C10製造)の測度である。ガス製造は、C〜C炭化水素に転化される原料の重量パーセントである。700°F(371℃)転化率は、700°F(700°F−/(371−℃))より下で沸騰する炭化水素に転化される700°F+(371℃+)供給原料の重量パーセントである。700°F+(371℃+)収率対流動点は、グラフ上の対応する流動点に対する原料転化率レベルにおいて、700°F(371℃)より上で沸騰する異性化された炭化水素の重量パーセント収率を指す。700°F+(371℃+)転化率は、以下のように算出される.
700°F+転化率=[1−(製品中の700°F+留分重量%)/(原料中の700°F+重量%)]×100
【0037】
ガスクロマトグラフ蒸留(GCD)は、修正ASTM D−5307の高温度GCD法を使用して行った。カラムは、0.2ミクロン未満の薄い液相を有する単一キャピラリーカラムからなっていた。5〜100個の炭素範囲にある沸点校正物質よりなる外部標準を使用した。温度プログラム式注入器を使用し、注入の前に、サンプルを熱水を使用して穏やかに暖めた。この方法並びにT5およびT95 GCDの結果を使用して沸点範囲を決定した。潤滑油手続方法下で、フェイズ・ツー・テック・インストルメンツ(Phase Two Tec Instruments)のためにASTM D−5773を使用して、曇り点値を測定した。流動点は、ISL自動流動点測定のためにASTM D−5950に従って測定した。粘性および粘度指数は、それぞれASTMプロトコルD−445およびD−2270に従って測定した。
【0038】
実施例1−処理済触媒
ZSM−48触媒は、500°F(260℃)の温度および500psig(3549kPa)の圧力で、流動水素中で6時間還元した。水素流速は、時間当たりのガス空間速度(GHSV)445であった。還元の後、水素流れおよび圧力を維持しながら、温度を350°F(177℃)に下げ、次に、フィッシャー−トロプシュ450°F+(232℃)酸素化物含有液体ワックスを、反応器の中に6時間にわたりゆっくり導入して、触媒を処理した。圧力、水素、および、反応器への1LHSVの酸素化物含有ワックス流速を維持しながら、温度を610〜630°F(321〜332℃)の水素化脱ロウ温度範囲に上げ、脱ロウを50日間続けた。次いで、原料を、320°F+(160℃)および700°F+(371℃+)ワックス質異性体に、45日間順番に切替えた。これらの異性体は、予め部分的に水素化脱ロウされており、酸素化物を含んでいなかった。これらの異性体は、酸素化物含有フィッシャー・トロプシュ・ワックスを水素化脱ロウすることによって得た。この処理済触媒の結果を図1〜6に示す。
【0039】
図1は、本発明の処理済触媒の場合、水素化脱ロウの間、水素化分解対ベータ切断の比(CH/イソ−C10)が非常に低いこと、および比較例Aの未処理の触媒を使用したときに被る非常に大きい比を示す。60日目の白い正方形は、酸素化物含有ワックス原料について処理済触媒の運転開始に対応する。水素化脱ロウのわずか約6日後、ベータ切断比は0.5未満だった。115日目の黒円は、比較例Aの未処理の触媒の運転開始に対応する。未処理の触媒を運転開始すると同時に、処理済触媒用の原料を、非酸素化物のワックス質異性体原料に切替えた。本発明の処理済触媒の場合、ラインアウト挙動は、約115日目での原料切替えによっては変化しない。対照的に、未処理の触媒の挙動は、運転開始時、非常に異なる。ベータ切断比は高く、6を超え、時間とともによりゆっくりと下がる。比較例Aの未処理の触媒の場合に観察されるデータの散乱は、温度変化のためである。しかし、本発明の処理済触媒は、この時同じ温度変化を受けたが、散乱を示さない。
【0040】
図2は、700°F+(371℃+)原料の低沸点炭化水素(700°F−(371℃−))への転化率の関数として、ガス製造を2種の触媒について比較したものである。転化率全体の範囲にわたり、円として示される比較例Aの未処理の触媒は、白い正方形として示される本発明の処理済触媒に比べて、ガス製造が大きかった。
【0041】
図3は、流動点の関数として、700°F+(371℃+)脱ロウされた油収率を比較したものである。図3は、所与の流動点目標に対して、本発明の処理済触媒を使用すると脱ロウされた油収率がかなり大きいことを示す。
【0042】
比較例A−未処理の触媒
この実施例は、還元した触媒の処理を除いて実施例1と同様であった。この実験では、還元した触媒を酸素化物含有フィッシャー−トロプシュ・ワックスで処理する代わりに、還元した触媒を、320°F+(160℃+)酸素化物フリーのワックス質異性体中に6時間浸漬した。次いで、実施例1のように、温度を570〜620°F(299〜327℃)の水素化脱ロウ範囲に上げた。水素化脱ロウ反応を45日間運転し、その間に、原料を、320°F+(160℃+)異性体から700°F+(371℃+)異性体(やはり酸素化物フリー)に切替えた。結果を図1〜3に示す。上記実施例1で議論した。
【0043】
比較例B−硫化触媒
この実験では、実施例1のように、カ焼した触媒を還元し、次いで、700°F(371℃+)および500psig(3549kPa)で4時間、水素中の2%硫化水素でそれを処理することによって硫化した。硫化の後、それを、酸素化物フリーの320°F+(160℃+)ワックス質異性体を有するストリームに、540〜580°F(282〜304℃)の温度で、2500SCF/Bおよび500psig(3549kPa)の純粋水素を使用して、約20日間置いた。ワックス質異性体供給速度は、1LHSVであった。次いで、原料を、450°F+(232℃)酸素化物含有フィッシャー−トロプシュ・ワックスに切替え、更に84日間、同じ条件で運転した。この結果を、実施例1の本発明の処理済触媒と比較して、図4、5および6に示す。
【0044】
水素化分解対ベータ切断の比の結果を図4に示す。硫化触媒を黒の菱形として、実施例1の本発明の酸素化物処理した触媒を白い正方形として示す。硫化触媒は、ほとんど直ちに0.5未満の比にラインアウトしたが、一方、本発明の処理済触媒の場合、同じ比に到達するのに数日かかった。しかし、ラインアウトに到達した後は、両方の触媒はほぼ同じであった。
【0045】
図5は、両方の触媒の場合、合計のガス製造が、ラインアウト後は同様であることを示す。60日目、両方の触媒は酸素化された原料上にあり、両方とも一連の温度変化を受けていた。それにもかかわらず、両方とも、ラインアウトの後は、実験的に見分けがつかない。図6は、両方の触媒の場合の流動点−転化率データが、実験誤差内で実質的に見分けがつかないことを示す。
【0046】
実施例2−処理済触媒
この実験は、あらゆる点で実施例1のそれと同様だった。ただし、(i)処理後、原料のままのワックスを、600°F(316℃)および500psig(3549kPa)水素で6日間だけ脱ロウした。次いで、(ii)圧力を、250psig(1825kPa)まで下げ、更に25日間脱ロウを続け、その後、原料を、原料のままのワックスから、600°F(316℃)および250psig(1724kPa)で脱ロウした上記軽質異性体に切替えたことを除く。軽質異性体に対する脱ロウの結果を、図7および8に示す。
【0047】
実施例3−処理済触媒
この実験は、実施例1および2のそれと同様であった。ただし、この触媒は、500°F(260℃)および500psig(3549kPa)の代わりに、250°F(121℃)および250psig(1825kPa)で還元し、水素化脱ロウの前に、酸素化物含有ワックスの代わりに、上記酸素化物含有軽質油を使用して、250psig(1724kPa)および350°F(177℃)で還元した触媒を処理したことことを除く。次いで、温度を600°F(316℃)に上げ、原料を、異性体原料の700〜950°F(371〜482℃)留分に、14日だけのラインアウト時間にわたりゆっくりと切替えた。この実施例の軽質油で処理した触媒によって脱ロウされた軽質異性体に対する脱ロウの結果を、図7〜8に示す。
【0048】
さて図7および8を参照すると、ZSM−48脱ロウ触媒を処理するのに、酸素化物含有軽質油の使用と酸素化物含有ワックスの使用との間には実質的に全く差異がないことがわかる。これは、転化率対、流動点およびガス製造脱ロウ結果に反映されており、両方の場合とも実質的に同じである。
【0049】
実施例4−その他の触媒
接触脱ロウを、750psig(5272kPa)H、1.0LHSV、2500SCF/BBL(445m/m)のガス処理比で行った。5ccの触媒を14/35メッシュに粉砕し、希釈剤と混合した。全ての触媒の場合、原料は、水素異性化されたフィッシャー・トロプシュ・ワックスであり、それを分留して、100%MIBKを用いた溶剤脱ロウ法で測定して、6.42%のワックス含量を有する名目上700°F+の原料を製造した。
【0050】
テストした全ての触媒は、脱水素された成分として0.5重量%の白金を有していた。ただし、0.3重量%のPtおよび0.15重量%のPdであったZ−876Aを除く。運転温度は、550°F(288℃)〜580°F(304℃)の範囲であった。様々な触媒からの製品を、流動点および粘性について分析した。このデータは、以下の表に含まれている。表に示す収率は、列挙した触媒単独の運転で得たものに対応する。これらの結果は、フィッシャー・トロプシュ誘導異性体の脱ロウについて、酸素化物処理なしのこれら触媒の性能を示す。これらの触媒から製造された潤滑油は、合理的な粘性および流動点を示す。これらの触媒に酸素化物を添加すると、ZSM−48を使用したときの潤滑油の製造において選択的に接触脱ロウするこれまでの実施例で示したものと同様の収率向上をもたらすと期待されるだろう。
【0051】
【表4】

【0052】
表4で、TONはシータ−1(ZSM−22)であり、FERはフェリエライトである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】未処理の触媒と比較して、本発明の処理済触媒について、水素化分解対ベータ切断の比を示す図である。
【図2】処理済触媒および未処理の触媒について、原料転化率の関数としてガス製造を比較する図である。
【図3】処理済触媒および未処理の触媒について、流動点の関数として700°F+(371℃)水素化脱ロウされた油収率を比較する図である。
【図4】水素化分解対ベータ切断比の処理済触媒および硫化触媒の間の類似性を示す図である。
【図5】処理済触媒および硫化触媒の両方について、ガス製造の類似性を示す図である。
【図6】処理済触媒および硫化触媒の両方について、所与の流動点での700°F(371℃)転化率の程度を比較するグラフである。
【図7】酸素化された軽質油処理触媒およびワックス処理触媒について、種々の700°F(371℃)転化率レベルでのガス製造を示す図である。
【図8】酸素化された軽質油処理触媒およびワックス処理触媒について、種々の700°F(371℃)転化率レベルでの流動点を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第VIII族金属成分および脱ロウ成分を含んでなる非硫化水素化脱ロウ触媒であって、
前記触媒は、還元、次いで1種以上の酸素化物を含むストリームによる処理によって製造され、前記金属は、Pt、Pdまたはこれらの混合物であることを特徴とする非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項2】
前記処理に使用される炭化水素は、非コバルト・フィッシャー・トロプシュ触媒上で製造されることを特徴とする請求項1に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項3】
前記非コバルト触媒は、Fe、Ni、Ru、ReおよびRhのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項4】
前記非コバルト触媒は、FeまたはRuであることを特徴とする請求項3に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項5】
前記酸素化物は、1種以上の酸素含有分子を含んでなることを特徴とする請求項4に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項6】
前記酸素化物は、ヒドロキシル、モノおよび多価アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸並びにこれらの混合物を含む1種以上の官能基を含んでなることを特徴とする請求項5に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項7】
前記1種以上の酸素化物は、前記処理用炭化水素中に酸素として測定して少なくとも100wppm存在することを特徴とする請求項6に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項8】
前記1種以上の酸素化物は、前記処理用炭化水素中に酸素として測定して少なくとも200wppm存在することを特徴とする請求項7に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項9】
少なくとも1種のモレキュラーシーブを含むことを特徴とする請求項8に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項10】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、EU−1、NU−87、ITQ−13およびMCM−71のうちの少なくとも1種であり、前記モレキュラーシーブは、少なくとも1つの10または12環チャネルを含むことを特徴とする請求項9に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項11】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−48であることを特徴とする請求項10に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項12】
前記モレキュラーシーブは、ゼオライト・ベータ、ZSM−12、MCM−68、ZSM−18、オフレタイト、モルデナイトおよびホージャサイトのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項13】
非コバルト触媒上で製造されるワックス質フィッシャー−トロプシュ炭化水素を水素化脱ロウする方法において使用されることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項14】
非コバルト触媒上で製造されるワックス質フィッシャー−トロプシュ炭化水素の水素化脱ロウ方法であって、
第VIII族金属成分および脱ロウ成分を含んでなる処理された非硫化水素化脱ロウ触媒の存在下、前記ワックス質炭化水素を水素化脱ロウし、その流動点および曇り点を低下させるのに有効な反応条件で、前記ワックス質炭化水素を水素と接触させる工程を含んでなり、
前記触媒は、前記水素化脱ロウの前に、還元され、次いで1種以上の酸素化物を含むストリームで処理されたものであることを特徴とする水素化脱ロウ方法。
【請求項15】
前記処理に使用される前記炭化水素は、非コバルト・フィッシャー・トロプシュ触媒上で製造されることを特徴とする請求項14に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項16】
前記非コバルト触媒は、Fe、Ni、Ru、ReおよびRhのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項15に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項17】
前記非コバルト触媒は、FeまたはRuであることを特徴とする請求項16に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項18】
前記酸素化物は、1種以上の酸素含有分子を含んでなることを特徴とする請求項17に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項19】
前記酸素化物は、ヒドロキシル、モノおよび多価アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸並びにこれらの混合物を含む1種以上の官能基を含んでなることを特徴とする請求項18に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項20】
前記1種以上の酸素化物は、前記処理用炭化水素中に酸素として測定して少なくとも100wppm存在することを特徴とする請求項19に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項21】
前記水素化脱ロウ触媒は、少なくとも1種のモレキュラーシーブを含むことを特徴とする請求項20に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項22】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、EU−1、NU−87、ITQ−13およびMCM−71のうちの少なくとも1種であり、前記モレキュラーシーブは、少なくとも1つの10または12環チャネルを含むことを特徴とする請求項21に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項23】
前記モレキュラーシーブは、ゼオライト・ベータ、ZSM−12、MCM−68、ZSM−18、オフレタイト、モルデナイトおよびホージャサイトのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項21に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項24】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−48であることを特徴とする請求項22に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項25】
前記1種以上の酸素化物は、酸素として測定して少なくとも200wppm存在することを特徴とする請求項21に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項26】
前記水素化脱ロウされた炭化水素は、(a)燃料基材油および(b)潤滑基油のうちの少なくとも1種を含んでなることを特徴とする請求項25に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項27】
前記基材油は、水素精製され、かつ場合により脱ヘイズされることを特徴とする請求項26に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項28】
前記基材油は、潤滑基油を含んでなり、前記潤滑基油は、1種以上の潤滑油添加剤と混合されて潤滑油を形成することを特徴とする請求項27に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項29】
ワックス質炭化水素を合成し、水素化脱ロウする方法であって、
非コバルト触媒成分を有する非シフト化フィッシャー−トロプシュ炭化水素合成触媒の存在下、ワックス質炭化水素を形成するのに有効な反応条件で、HとCOを反応させる工程;および
水素、並びに第VIII族金属成分および脱ロウ成分を含んでなる非硫化水素化脱ロウ触媒の存在下、前記ワックス質炭化水素を水素化脱ロウし、その流動点および曇り点を低下させ、燃料および/または潤滑油の沸点範囲で沸騰する1種以上の水素化脱ロウされた炭化水素留分を製造するのに有効な反応条件で、前記ワックス質炭化水素の少なくとも一部を水素化脱ロウする工程
を含んでなり、
前記水素化脱ロウ触媒は、前記水素化脱ロウの前に、還元され、次いで1種以上の酸素化物を含むストリームで処理されたものであることを特徴とする方法。
【請求項30】
前記非コバルト成分は、Fe、Ni、Ru、ReおよびRhのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記酸素化物は、1種以上の酸素含有分子を含んでなることを特徴とする請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記酸素化物は、ヒドロキシル、モノおよび多価アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸並びにこれらの混合物を含む1種以上の官能基を含んでなることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記1種以上の酸素化物の少なくとも一部は、前記処理用炭化水素に生来のものであり、酸素として測定して少なくとも200wppm存在することを特徴とする請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記水素化脱ロウ触媒は、少なくとも1種のモレキュラーシーブを含むことを特徴とする請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記水素化脱ロウ触媒は、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、EU−1、NU−87、ITQ−13およびMCM−71のうちの少なくとも1種を含み、前記モレキュラーシーブは、少なくとも1つの10または12環チャネルを含むことを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記水素化脱ロウ触媒は、ゼオライト・ベータ、ZSM−12、MCM−68、ZSM−18、オフレタイト、モルデナイトおよびホージャサイトのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記水素化脱ロウ触媒は、ZSM−48を含むことを特徴とする請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記脱ロウされた炭化水素は、燃料および潤滑基油のうちの1種以上を含んでなり、1種以上の基材油は、水素精製され、かつ場合により脱ヘイズされることを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記基材油は、潤滑油を形成するために、1種以上の潤滑油添加剤と混合される潤滑基油を含んでなることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
非コバルト触媒上で製造されるワックス質フィッシャー・トロプシュ炭化水素の水素化脱ロウ方法であって、
水素化脱ロウ成分および第VIII族金属成分を含んでなる非硫化水素化脱ロウ触媒の存在下、前記ワックス質炭化水素を水素化脱ロウし、その流動点および曇り点を低下させるのに有効な反応条件で、1種以上の酸素化物を含む前記ワックス質炭化水素を水素と接触させる工程を含んでなり、
前記水素化脱ロウ触媒は、還元されていることを特徴とする水素化脱ロウ方法。
【請求項41】
前記酸素化物は、1種以上の酸素含有分子を含んでなることを特徴とする請求項40に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項42】
前記酸素化物は、ヒドロキシル、モノおよび多価アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸並びにこれらの混合物を含む1種以上の官能基を含んでなることを特徴とする請求項41に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項43】
前記1種以上の酸素化物は、酸素として測定して少なくとも100wppm存在することを特徴とする請求項42に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項44】
前記非コバルト触媒は、Fe、Ni、Ru、ReおよびRhのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項43に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項45】
前記水素化脱ロウ触媒は、少なくとも1種のモレキュラーシーブを含むことを特徴とする請求項44に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項46】
前記水素化脱ロウ触媒は、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、EU−1、NU−87、ITQ−13およびMCM−71のうちの少なくとも1種を含み、前記モレキュラーシーブは、少なくとも1つの10または12環チャネルを含むことを特徴とする請求項45に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項47】
前記水素化脱ロウ触媒は、ゼオライト・ベータ、ZSM−12、MCM−68、ZSM−18、オフレタイト、モルデナイトおよびホージャサイトのうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項45に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項48】
前記水素化脱ロウ触媒は、ZSM−48を含むことを特徴とする請求項46に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項49】
前記酸素化物は、酸素として測定して少なくとも200wppm存在することを特徴とする請求項45に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項50】
FeおよびRuのうちの少なくとも1種のフィッシャー−トロプシュ触媒上で製造されるフィッシャー−トロプシュ炭化水素を水素化脱ロウする方法であって、
第VIII族金属成分並びにZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48およびZSM−57のうちの少なくとも1種である脱ロウ成分を含んでなる、処理された非硫化水素化脱ロウ触媒の存在下、前記ワックス質炭化水素を水素化脱ロウし、その流動点および曇り点を低下させるのに有効な反応条件で、前記炭化水素を水素と接触させる工程を含んでなり、
前記触媒は、前記水素化脱ロウの前に、還元され、次いで1種以上の酸素化物を含むストリームで処理されたものであることを特徴とする水素化脱ロウ方法。
【請求項51】
前記酸素化物は、1種以上の酸素含有分子を含んでなることを特徴とする請求項50に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項52】
前記酸素化物は、ヒドロキシル、モノおよび多価アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸並びにこれらの混合物を含む1種以上の官能基を含んでなることを特徴とする請求項51に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項53】
前記1種以上の酸素化物は、酸素として測定して少なくとも100wppm存在することを特徴とする請求項52に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項54】
前記水素化脱ロウ触媒は、ZSM−48を含むことを特徴とする請求項53に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項55】
水素化脱ロウするのに有効な前記反応条件は、232〜399℃の温度、170〜13891kPaの圧力、0.1〜5.0の時間当たりの液空間速度および89〜1789m/mの時間当たりの処理ガス比を含むことを特徴とする請求項14、29、40または50に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項56】
前記水素化脱ロウ触媒は、アルミナまたはアルミナ含有金属酸化物バインダを更に含んでなることを特徴とする請求項14、29、40または50に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項57】
非コバルト触媒上で製造されるワックス質フィッシャー−トロプシュ炭化水素の水素化脱ロウ方法であって、
第VIII族金属成分および脱ロウ成分を含んでなる、処理された非硫化水素化脱ロウ触媒の存在下、前記ワックス質炭化水素を水素化脱ロウし、その流動点および曇り点を低下させるのに有効な反応条件で、前記炭化水素を水素と接触させる工程を含んでなり、
前記水素化脱ロウ触媒は、前記水素化脱ロウの前に、還元され、次いで水で処理されたものであることを特徴とする方法。
【請求項58】
前記酸素化物は、1種以上の酸素含有分子を含んでなることを特徴とする請求項57に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項59】
前記酸素化物は、好ましくはヒドロキシル、モノおよび多価アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸並びにこれらの混合物を含む1種以上の官能基を含んでなることを特徴とする請求項58に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項60】
水は、酸素として測定して少なくとも100wppm存在することを特徴とする請求項59に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項61】
前記ワックス質炭化水素は、燃料および潤滑油の沸点範囲のいずれかまたは両方で沸騰する炭化水素を含んでなることを特徴とする請求項60に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項62】
水素化脱ロウするのに有効な前記反応条件は、232〜399℃の温度、170〜13891kPaの圧力、0.1〜5.0の時間当たりの液空間速度および89〜1789m/mの処理ガス比を含むことを特徴とする請求項61に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項63】
前記水素化脱ロウ触媒は、アルミナまたはアルミナ含有金属酸化物バインダを更に含んでなることを特徴とする請求項62に記載の水素化脱ロウ方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第VIII族金属成分および脱ロウ成分を含んでなる非硫化水素化脱ロウ触媒であって、
前記触媒は、還元、次いで1種以上の酸素化物を含むストリームによる処理によって製造され、前記金属は、Pt、Pdまたはこれらの混合物であることを特徴とする非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項2】
前記処理に使用される炭化水素は、非コバルト・フィッシャー・トロプシュ触媒上で製造されることを特徴とする請求項1に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項3】
前記非コバルト触媒は、Fe、Ni、Ru、ReおよびRhのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項4】
前記非コバルト触媒は、FeまたはRuであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項5】
前記酸素化物は、1種以上の酸素含有分子を含んでなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項6】
前記酸素化物は、ヒドロキシル、モノおよび多価アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸並びにこれらの混合物を含む1種以上の官能基を含んでなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項7】
前記1種以上の酸素化物は、前記処理用炭化水素中に酸素として測定して少なくとも100wppm存在することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項8】
前記1種以上の酸素化物は、前記処理用炭化水素中に酸素として測定して少なくとも200wppm存在することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項9】
少なくとも1種のモレキュラーシーブを含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項10】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、EU−1、NU−87、ITQ−13およびMCM−71のうちの少なくとも1種であり、前記モレキュラーシーブは、少なくとも1つの10または12環チャネルを含むことを特徴とする請求項9に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項11】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−48であることを特徴とする請求項9または10に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項12】
前記モレキュラーシーブは、ゼオライト・ベータ、ZSM−12、MCM−68、ZSM−18、オフレタイト、モルデナイトおよびホージャサイトのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項9に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項13】
非コバルト触媒上で製造されるワックス質フィッシャー−トロプシュ炭化水素を水素化脱ロウする方法において使用されることを特徴とする請求項11または請求項12に記載の非硫化水素化脱ロウ触媒。
【請求項14】
非コバルト触媒上で製造されるワックス質フィッシャー−トロプシュ炭化水素の水素化脱ロウ方法であって、
第VIII族金属成分および脱ロウ成分を含んでなる処理された非硫化水素化脱ロウ触媒の存在下、前記ワックス質炭化水素を水素化脱ロウし、その流動点および曇り点を低下させるのに有効な反応条件で、前記ワックス質炭化水素を水素と接触させる工程を含んでなり、
前記触媒は、前記水素化脱ロウの前に、還元され、次いで1種以上の酸素化物を含むストリームで処理されたものであることを特徴とする水素化脱ロウ方法。
【請求項15】
前記処理に使用される前記炭化水素は、非コバルト・フィッシャー・トロプシュ触媒上で製造されることを特徴とする請求項14に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項16】
前記非コバルト触媒は、Fe、Ni、Ru、ReおよびRhのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項14または15に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項17】
前記非コバルト触媒は、FeまたはRuであることを特徴とする請求項14〜16のいずれかに記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項18】
前記酸素化物は、1種以上の酸素含有分子を含んでなることを特徴とする請求項14〜17のいずれかに記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項19】
前記酸素化物は、ヒドロキシル、モノおよび多価アルコール、エステル、エーテル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸並びにこれらの混合物を含む1種以上の官能基を含んでなることを特徴とする請求項14〜18のいずれかに記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項20】
前記1種以上の酸素化物は、前記処理用炭化水素中に酸素として測定して少なくとも100wppm存在することを特徴とする請求項14〜19のいずれかに記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項21】
前記水素化脱ロウ触媒は、少なくとも1種のモレキュラーシーブを含むことを特徴とする請求項14〜20のいずれかに記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項22】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、EU−1、NU−87、ITQ−13およびMCM−71のうちの少なくとも1種であり、前記モレキュラーシーブは、少なくとも1つの10または12環チャネルを含むことを特徴とする請求項21に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項23】
前記モレキュラーシーブは、ゼオライト・ベータ、ZSM−12、MCM−68、ZSM−18、オフレタイト、モルデナイトおよびホージャサイトのうちの少なくとも1種であることを特徴とする請求項21に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項24】
前記モレキュラーシーブは、ZSM−48であることを特徴とする請求項22に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項25】
前記1種以上の酸素化物は、酸素として測定して少なくとも200wppm存在することを特徴とする請求項21〜24のいずれかに記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項26】
前記水素化脱ロウされた炭化水素は、(a)燃料基材油および(b)潤滑基油のうちの少なくとも1種を含んでなることを特徴とする請求項21〜25のいずれかに記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項27】
前記基材油は、水素精製され、かつ場合により脱ヘイズされることを特徴とする請求項26に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項28】
前記基材油は、潤滑基油を含んでなり、前記潤滑基油は、1種以上の潤滑油添加剤と混合されて潤滑油を形成することを特徴とする請求項26または27に記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項29】
前記非コバルト触媒は、非シフト性であることを特徴とする請求項14〜28のいずれかに記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項30】
前記ワックス質炭化水素は、1種以上の酸素化物を含むことを特徴とする請求項14〜29のいずれかに記載の水素化脱ロウ方法。
【請求項31】
前記酸素化物は、水であることを特徴とする請求項14〜30のいずれかに記載の水素化脱ロウ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2006−502000(P2006−502000A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−501149(P2005−501149)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/032096
【国際公開番号】WO2004/033586
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】