説明

高周波同軸コネクタ及びこれを用いる直交高周波スイッチモジュール群の嵌合方法

【課題】 オス側接栓、メス側接栓間の位置誤差が自動的に吸収されて円滑に嵌合することができ、しかも混み合った狭い場所にも取付け可能な高周波同軸コネクタ。
【解決手段】 円筒状の外部導体13の中心軸上に絶縁体14を介して中心導体15が配設され、全体が所定長に形成された導体アセンブリ7と、導体アセンブリより大きい寸法を有する軸方向の有底孔9を備え、その中に導体アセンブリを略同軸に収容する外殻導体6と、外殻導体の有底孔内で導体アセンブリを弾性的に支持し、かつ導体アセンブリ内の外部導体と中心導体に所要の電気的接続を与える導電ゴム製の緩衝部材8とを有するメス側接栓2、及び前記メス側接栓と嵌合可能な形状の円筒状の外部導体3とピン状の中心導体5を有し、中心導体は外部導体の中心軸上に絶縁体4を介して配設されるオス側接栓1からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波同軸ケーブル等の接続に用いられる同軸コネクタを構成する接栓の構造及びその応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波同軸コネクタはオス側接栓とメス側接栓から成り、両接栓を嵌合することで同軸ケーブルの芯線及びシールド線がそれぞれ接続されるようになっている。同軸コネクタにより同軸ケーブルを接続する態様としては、メス側接栓がシャーシに固定され、オス側接栓が自由状態のケーブル先端に取付けられる場合と、オス側接栓、メス側接栓ともそれぞれ別々のシャーシに取付けられ、二つのシャーシをこれらの接栓を介して接続する場合がある。後者の態様においては、同軸ケーブル又はその同等物がそれぞれのシャーシ内に在り、その末端が各接栓に接続されている。
【0003】
後者の態様は、メス側接栓が取付けられたシャーシAが装置の構造部材、例えばフレームに固定され、オス側接栓が取付けられたシャーシBがフレームに対してスライド可能に支持され、オス側接栓がシャーシBのスライド動作に伴ってメス側接栓に対して近接離反するような場合に相当する。但し、メス、オスの関係は逆もありうる。
【0004】
上記の構成では、一方の接栓がケーブルの自由端に取付けられる構成と異なり、各接栓の相対的位置関係が各シャーシによって制限されるので、嵌合に際して「芯が合わない」状態が起こりうる。そうすると最悪の場合は嵌合不能に陥るので、通常は、いずれか一方のシャーシ上の接栓をスプリング支持等して、半径方向に変位可能にすることで対処している。しかし、この構成では水平方向の位置ずれには対応可能であっても、軸方向の位置不適合に対応できないので、接栓の挿入口部分にテーパーを形成したり、あるいは位置決めピンを用いる方法等が提案されている。
【0005】
下記特許文献1及び2は、そのような高周波同軸コネクタの構造に関する先行出願例であるが、これらに含まれる接栓は、一般にスプリング支持部が大型になり勝ちであり、さらに位置決めピンを含むと全体形状が大きくなり、例えば多数のスイッチ回路を内蔵する多極高周波スイッチモジュールの基板に複数の接栓を配置するような応用が困難になる。
【特許文献1】特開平09−139250号公報
【特許文献2】2001−057268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、高周波同軸コネクタにおいて、オス側接栓、メス側接栓がそれぞれ別のシャーシ等に取付けられ、これら二つのシャーシ等を接栓を介して接続する場合に、両接栓間の半径方向及び軸方向の位置誤差が自動的に吸収されて円滑に嵌合することができ、しかも形状がコンパクトで、混み合った狭い場所にも取付けることができる高周波同軸コネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題は、円筒状の外部導体の中心軸上に絶縁体を介して中心導体が配設され、全体が所定長に形成されてなる導体アセンブリと、導体アセンブリより大きい長さと直径を有する軸方向の有底孔を備え、その中に導体アセンブリを遊びを伴って略同軸に収容する外殻導体と、外殻導体の有底孔内において導体アセンブリを弾性的に支持し、かつ導体アセンブリ内の外部導体と中心導体にそれぞれ所要の電気的接続を与える導電性ゴム製の緩衝部材とを有してなるメス側接栓、及び前記メス側接栓と嵌合可能な形状の円筒状の外部導体とピン状の中心導体を有し、中心導体は外部導体の中心軸上に絶縁体を介して配設されてなるオス側接栓から構成される高周波同軸コネクタ、により解決することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明による高周波同軸コネクタでは、嵌合時のメス・オス両接栓間の位置誤差を吸収し、かつ接栓内導体に所要の電気的接続を与える緩衝部材を導電性ゴム製としたので、ゴムの弾性により半径方向及び軸方向の位置誤差をある限度内で同時に吸収して、両接栓を円滑に嵌合できるとともに、該緩衝部材をメス側接栓軸上の有底孔内に配設する構造を採用したので、メス側接栓の直径が小さく抑えられ、比較的狭い場所にも容易に取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を実施するための最良の形態を、下記実施例1及び2により説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の実施例1としての高周波同軸コネクタを示す概念図である。図1(A)は高周波同軸コネクタを構成するオス側接栓、図1(B)はメス側接栓を示す。図中の参照符号1はオス側接栓、3はオス側接栓の外部導体、4はオス側接栓の中心絶縁体、5はオス側接栓の中心導体を示す。参照符号2はメス側接栓、6はメス側接栓の外郭導体、7はメス側接栓の導体アセンブリ、8はメス側接栓の緩衝部材を示す。さらに外郭導体6は有底孔9、有底孔9の内壁に設けた円環状凹溝10、及び有底孔9の底面に底部絶縁体11を介して設けた底部導体12を有し、導体アセンブリ7は外部導体13、中心絶縁体14、中心導体15、及び外部導体13の外壁に設けた抜け防止鍔16を有し、緩衝部材8は導電性ゴム製の短円柱部材17及び導電性ゴム製の円環状部材18からなる。なお図2は、緩衝部材8における短円柱部材17及び円環状部材18を示す斜視図である。
【0011】
緩衝部材8を構成する導電性ゴムとしては、各種の軟質ゴムにカーボンブラック等の導電性付与剤を混練したものが例示される。
【0012】
メス側接栓2において、軸方向に有底孔9が形成された外郭導体6は二つ割り構造になっている。外郭導体6の二つ割りを開いて、有底孔9の内壁に設けた円環状凹溝10中に導体アセンブリ7の外壁に設けた抜け防止鍔16を受け容れ、有底孔9の底面中心に設けた貫通孔を底部絶縁体11で埋め、該絶縁体中心部に、一端が外殻導体6外に在る底部導体12を立設し、底部導体12の外殻導体6内に在る端部を有底孔9の底面と面一に仕上げる。外殻導体9内の底部導体12の端部が存在する領域に短円柱部材17を導電性接着剤で接着して立て、その周囲に円環状部材18を、短円柱部材17に接触しないように導電性接着剤で接着して配置した後、二つ割りを閉じる。
【0013】
このようにして、実施例1の高周波同軸コネクタ中のメス側接栓2では、外殻導体6内に収容された導体アセンブリ7の平らに仕上げられた端面が緩衝部材8に接触して弾性的に支持され、かつ、導体アセンブリ7中の中心導体14が前記短円柱部材17を介して前記底部導体12と電気的に接続され、外部導体13が円環状部材18を介して外殻導体6の前記底面と電気的に接続される。
【0014】
したがって、実施例1に係る高周波同軸コネクタでは、嵌合時のメス・オス両接栓間の位置誤差をある限度内で吸収して両接栓1及び2を円滑に嵌合でき、同時に電気的接続も完成され、かつメス側接栓2の直径が小さく抑えられるので比較的狭い場所にも容易に取付けることができる。
【実施例2】
【0015】
図3は、本発明の実施例2としての、複数の多極高周波スイッチモジュール群を同数づつの空間的に直交するX座標側モジュール群とY座標側モジュール群とに分けて配置した状態を示す概念図である。複数のX座標側モジュール群はそれぞれ実施例1記載のオス型接栓を備え、Y座標側モジュール群はそれぞれ実施例1記載のメス型接栓を備える。
【0016】
このように構成されるX座標側モジュール群とY座標側モジュール群では、X座標側モジュール基板とY座標側モジュール基板との位置誤差にも拘わらず、相互の接栓嵌合を容易に完成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は、高周波同軸コネクタに関するものであるので、電気部品製造業、無線機器
製造業及びこれらの関連産業において利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の、高周波同軸コネクタを構成するオス側接栓とメス側接栓とを示す概念図である。
【図2】実施例1中の緩衝部材を構成する短円柱部材と円環状部材を示す斜視図である。
【図3】実施例2の、空間的に直交するX座標側モジュール群とY座標側モジュール群を示す概念図である。
【符号の説明】
【0019】
1 オス側接栓
2 メス側接栓
3 オス側接栓の外部導体
4 オス側接栓の中心絶縁体
5 オス側接栓の中心導体
6 メス側接栓の外郭導体
7 メス側接栓の導体アセンブリ
8 メス側接栓の緩衝部材
9 外郭導体の有底孔
10 有底孔の内壁に設けた円環状凹溝
11 有底孔の底面に設けた底部絶縁体
12 有底孔の底面に設けた底部導体
13 導体アセンブリの外部導体
14 導体アセンブリの中心絶縁体
15 導体アセンブリの中心導体
16 導体アセンブリの抜け防止鍔
17 緩衝部材中の短円柱部材
18 緩衝部材中の円環状部材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の外部導体の中心軸上に絶縁体を介して中心導体が配設され、全体が所定長に形成されてなる導体アセンブリと、
導体アセンブリより大きい長さと直径を有する軸方向の有底孔を備え、その中に導体アセンブリを遊びを伴って略同軸に収容する外殻導体と、
外殻導体の有底孔内において導体アセンブリを弾性的に支持し、かつ導体アセンブリ内の外部導体と中心導体にそれぞれ所要の電気的接続を与える導電性ゴム製の緩衝部材と、を有してなるメス側接栓、及び、
前記メス側接栓と嵌合可能な形状の円筒状の外部導体とピン状の中心導体を有し、中心導体は外部導体の中心軸上に絶縁体を介して配設されてなるオス側接栓、
から構成されることを特徴とする高周波同軸コネクタ。
【請求項2】
前記メス側接栓において、
外殻導体の有底孔底面の中心部に設けた貫通孔を底部絶縁体で埋め、該絶縁体中心部に外殻導体内外を導通させる底部導体を立設し、
前記緩衝部材が導電性ゴム製の短円柱部材と、これと同じ高さを有する導電性ゴム製の円環状部材とからなり、外殻導体内底面の前記底部導体の端部が存在する領域に前記短円柱部材を導電性接着剤で接着して立設し、その周囲の前記底面に前記円環状部材を前記短円柱部材を非接触で囲むように導電性接着剤で接着して配置し、
外殻導体内に収容された導体アセンブリの端面が前記緩衝部材に接触して弾性的に支持され、導体アセンブリ中の中心導体が前記短円柱部材を介して前記底部導体と電気的に接続され、かつ外部導体が前記円環状部材を介して外殻導体の前記底面と電気的に接続されることを特徴とする請求項1記載の高周波同軸コネクタ。
【請求項3】
複数の多極高周波スイッチモジュール群を同数づつの空間的に直交するX座標側モジュール群とY座標側モジュール群とに分けて配置し、
X座標側モジュール群にはそれぞれ請求項1記載のオス型接栓を備え、Y座標側モジュール群にはそれぞれ請求項1記載のメス型接栓を備え、
直交するX座標側モジュールとY座標側モジュールとの位置誤差にも拘わらず、一動作で容易に相互の接栓嵌合が完成することを特徴とする直交多極高周波スイッチモジュール群の嵌合方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−147493(P2006−147493A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−339507(P2004−339507)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(591195259)海洋電子工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】