説明

高周波増幅器

【課題】外部部品を必要とせず、異なる周波数帯域で整合をとることができ、低コスト化を図ることができる高周波増幅器を提供する。
【解決手段】増幅器の入力側、出力側に接続するインピーダンス制御回路を備え、このインピーダンス制御回路は、インピーダンス素子とスイッチ素子の直列回路で構成する。そして、スイッチ素子は、スイッチ素子制御端子が開放状態あるいは接地状態に制御されることで、スイッチング動作される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体通信機器等の無線通信に用いられる高周波増幅器に係り、特に、異なる周波数帯域の高周波信号の無線通信のための移動体通信機器に、共通部品として使用できる高周波増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機、無線LAN、地上デジタルテレビ受信機端末等の無線通信が盛んに行われている。一般的に、無線通信に使用される高周波信号の周波数帯域は、移動体通信機器毎に異なっている。一方、移動体通信機器の低コスト化のため、一種類の部品を異なる周波数帯域の移動体通信機器に共通部品として使用したいという要求が高まってきている。
【0003】
例えば、共通部品の1つの高周波増幅器を用いて、異なる周波数帯域の高周波信号を、それぞれ所望の増幅特性をもたせて増幅できるようにして、移動体通信機器の低コスト化を図りたいという要求がある。このような要求に対して、半導体基板上に集積化した高周波増幅器では、所望の増幅特性が得られるように調整したインピーダンス変換回路を、予め、複数、半導体基板上に形成しておき、使用する移動体通信機器に応じて、その内の1つを使用することで、1つの高周波増幅器でありながら、所望の周波数帯域で所望の増幅特性を持つ高周波増幅器を形成することができる。
【0004】
図7に、この種の第1の従来例の高周波増幅器を示す。信号入力端子506から入力された高周波信号を増幅用素子501で増幅し、増幅された増幅信号をインピーダンス変換回路A502、あるいはインピーダンス変換回路B503のいずれか一方でインピーダンス変換し、信号出力端子507から出力する。
【0005】
インピーダンス変換回路502、503は、それぞれ所定の周波数帯域の高周波信号を、所望の増幅特性を持たせて増幅できるように、予めインピーダンスが調整されている。2つのスイッチ素子504、505は、入力する高周波信号を、2つのインピーダンス変換回路502、503のいずれか一方へ通過させるように制御される。この種の高周波変換器は、特許文献1に開示されている。
【0006】
このように、予め、所望の周波数帯域の高周波信号を増幅するためのインピーダンス変換器を複数備え、そのいずれかを選択して使用することで、異なる周波数帯域の移動体通信機器の共通部品として使用することが可能となる。
【0007】
また、インピーダンス変換回路の一部をスイッチ素子によって切り替えることで、入力する高周波信号に応じた増幅特性を得る方法が特許文献2に開示されている。
【0008】
図8に、この種の第2の従来例の高周波増幅器を示す。増幅回路601は、ゲートバイアス端子607に印加する電圧を制御することにより、電界効果型トランジスタ611のゲート電位を変化させ、利得制御する機能を備えている。増幅回路601の出力側は、インピーダンス制御回路602を介して、信号出力端子604と接続され、入力側は、インピーダンス制御回路603を介して、信号入力端子605と接続されている。インピーダンス制御回路602は、電界効果型トランジスタ621とコンデンサ素子622を主な構成素子として、インピーダンス制御回路603は、電界効果型トランジスタ631とコンデンサ素子632とを主な構成素子としている。2つのインピーダンス制御回路602、603は、制御端子606に印加する電圧に応じて、電界効果型トランジスタ621、631を導通状態または遮断状態に切り替えることで、入力側インピーダンスおよび出力側インピーダンスが制御される。
【0009】
具体的には、ゲートバイアス端子607を0Vにするとともに、制御端子606に負電圧を印加して、電界効果型トランジスタ621、631をピンチオフ状態とすることで、利得制御量が最小の場合の制御が行われる。一方、ゲートバイアス端子607に負電圧を印加して電界効果型トランジスタ611をピンチオフ状態とするとともに、制御端子606を0Vにすることで、電界効果型トランジスタ621、631の内部抵抗を最小にして、信号を接地へ逃がすことによって利得制御量が最大の場合の制御が行われる。利得制御量が最大値と最小値の中間の値の場合には、ゲートバイアス端子607と制御端子606の電位を調整して利得制御量と入出力インピーダンスを整合させる構成となっている。
【0010】
なお特許文献2に開示されている発明は、増幅回路の利得最大時と利得最小時のインピーダンスの変化を、インピーダンス制御回路によって一定に保つことを目的としているが、入力する高周波信号に応じて、所望の増幅特性が得られるように入力側インピーダンスおよび出力側インピーダンスを制御できることは容易に想到できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−276035号公報
【特許文献2】特開平4−361412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、第1の従来例では、2つのインピーダンス変換回路のいずれかを選択することで2つの周波数帯域の高周波増幅器の共通部品として使用できるという利点がある一方、使用しないインピーダンス変換回路が組み込まれているため、半導体集積回路で構成した場合、半導体チップの面積の増大につながり、低コスト化の要求に応えられないという問題があった。
【0013】
また第2の従来例は、制御端子606には、負の電圧印加を必要とし、電源電圧を供給できる構成とする必要がある。そのため、外部にバイパスコンデンサなどの接続が必要となり、外部部品の増加につながり、コストアップを招いてしまうという問題があった。
【0014】
このように、一種類の部品を異なる周波数帯域の共通部品として使用できるように構成された従来の高周波増幅器は、半導体チップの面積が増大したり、外付け部品が必要になるという課題を抱え、低コスト化を実現することができなかった。本発明は、このような問題を解消し、複数の移動体通信機器に共通部品として使用することができるように、外部部品を必要とせず、異なる周波数帯域で整合をとることができ、低コスト化を図ることができる高周波増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、信号入力端子から入力する信号を増幅して信号出力端子へ出力する増幅回路と、前記信号入力端子と前記増幅回路の入力側との間の第1の接続点あるいは前記増幅回路の出力側と前記信号出力端子との間の第2の接続点の少なくともいずれか一方に、インピーダンス制御回路を接続した高周波増幅器において、前記インピーダンス制御回路は、前記第1の接続点あるいは前記第2の接続点と接地との間に接続された第1のインピーダンス素子と第1のスイッチ素子からなる直列回路で構成され、前記第1のスイッチ素子は、スイッチ素子制御端子に接続され、該スイッチ素子制御端子が開放状態あるいは接地状態に制御されることで、導通状態あるいは遮断状態のいずれかに切り換えられることを特徴とする。
【0016】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載の高周波増幅器において、前記インピーダンス制御回路は、前記第1の接続点と接地との間に接続された第2のインピーダンス素子と第2のスイッチ素子からなる第2の直列回路と、前記第2の接続点と接地との間に接続された第3のインピーダンス素子と第3のスイッチ素子からなる第3の直列回路で構成され、前記第2のスイッチ素子および前記第3のスイッチ素子は、前記スイッチ素子制御端子に接続されていることを特徴とする。
【0017】
本願請求項3に係る発明は、請求項1記載の高周波増幅器において、前記インピーダンス制御回路は、前記第2の接続点と前記第1の接続点との間に接続された第4のインピーダンス素子と第4のスイッチ素子の直列回路で構成され、前記第4のスイッチ素子は、前記スイッチ素子制御端子に接続されていることを特徴とする。
【0018】
本願請求項4に係る発明は、請求項1乃至3いずれか記載の高周波増幅器において、前記増幅回路および前記インピーダンス制御回路が集積回路で形成され、前記スイッチ素子制御端子が、前記集積回路の外部接続端子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の高周波増幅器は、スイッチ素子制御端子を開放状態または接地状態とすることにより、インピーダンス制御回路内のスイッチ素子を導通状態、遮断状態と制御し、予め整合のとれたインピーダンスに切り替えることで、外部に接続する素子数を増加させることなく、異なる周波数帯域の増幅動作において整合がとれた高周波増幅器を提供することができる。また半導体基板上に集積化する場合、チップ面積が増大することもなく、低コスト化を図ることができる。高周波増幅器の低コスト化に伴い、それを搭載する通信用機器の低コスト化を図ることができるという利点もある。
【0020】
また、スイッチ素子制御端子に、出力側のインピーダンス制御回路を構成するスイッチ素子を接続するとともに、増幅回路の入力側に接続することで、負帰還回路を構成することができ、増幅利得を変化させることもできるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施例の説明図である。
【図2】本発明の第1の実施例におけるスイッチ素子制御端子106を接地状態とした場合の信号出力端子104のインピーダンスを示すスミスチャートである。
【図3】本発明の第1の実施例におけるスイッチ素子制御端子106を開放状態とした場合の信号出力端子104のインピーダンスを示すスミスチャートである。
【図4】本発明の第1の実施例をより具体的な回路で構成した説明図である。
【図5】本発明の第2の実施例の説明図である。
【図6】本発明の第3の実施例の説明図である。
【図7】第1の従来例の説明図である。
【図8】第2の従来例の説明図である
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の高周波増幅器は、信号入力端子と信号出力端子との間に増幅回路を備え、増幅回路の入力側、出力側あるいは並列に、インピーダンス制御回路が接続されている。このインピーダンス制御回路は、増幅回路の入力側と接地との間、増幅回路の出力側と接地との間、あるいは増幅器の入力側と出力側に、インピーダンス素子とスイッチ素子が直列に接続されている。このスイッチ素子は、スイッチ素子制御端子に接続されている。本発明では、スイッチ素子制御端子を開放状態あるいは接地状態にすることで、スイッチ素子の導通状態、遮断状態を切り換えられることで、整合のとれたインピーダンス制御回路を接続する構成として点が大きな特徴となっている。
【0023】
例えば、スイッチ素子が遮断状態となると、インピーダンス素子とスイッチ素子のインピーダンスが直列に接続した構成となり、またスイッチ素子が導通状態となると、インピーダンス素子が接地した構成となり、スイッチ素子の動作状態により、インピーダンス制御回路のインピーダンスを切り替えることができる。
【0024】
本発明では、スイッチ素子制御端子は、開放状態あるいは接地状態のいずれかに切り換えることで、インピーダンスを切り替えることができるので、スイッチ素子の動作を制御するための負電源を別個に用意する必要がなく、半導体集積回路で形成する場合に好適である。以下、本発明の実施例について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の第1の実施例の説明図である。増幅回路101は高周波信号を増幅する回路である。増幅回路101の出力側は、インピーダンス制御回路102を介して信号出力端子104に接続され、入力側はインピーダンス制御回路103を介して信号入力端子105に接続されている。インピーダンス制御回路102は、増幅回路101の出力側と接地との間に、インピーダンス素子122とスイッチ素子121が直列に接続された回路で構成され、インピーダンス制御回路103は、増幅回路101の入力側と接地との間に、インピーダンス素子132とスイッチ素子131が直列に接続された回路で構成されている。
【0026】
2つのインピーダンス制御回路102、103は、共にスイッチ素子制御端子106を開放状態または接地状態とすることで、スイッチ素子121、131を導通状態または遮断状態に切り替えられる構成となっており、入力側および出力側のインピーダンスを制御することができる。
【0027】
ここで2つのインピーダンス制御回路102、103は、スイッチ素子121、131が導通状態で使用する場合と遮断状態で使用する場合、それぞれ異なる周波数帯域の増幅において、所望のインピーダンスとなるように設定されている。例えばスイッチ素子制御端子106を接地状態とすることでスイッチ素子121、131が遮断状態となる。ここで所定の周波数Aで、信号出力端子104、信号入力端子105を共にほぼ50Ωに整合させるように回路定数を設定しておく。また、スイッチ制御端子106を開放状態とすることで、スイッチ素子121、131が導通状態となる。この場合には周波数Aより周波数の低い周波数Bで、信号出力端子104、信号入力端子105を共にほぼ50Ωに整合させるように回路定数を設定しておく。
【0028】
この第1の実施例の動作について、図2および図3を用いて説明する。図2は第1の実施例において、スイッチ素子制御端子106を接地状態とした場合の信号出力端子104のインピーダンスを表すスミスチャートである。周波数A点は50Ωの定抵抗円上に位置し、信号出力端子104の外部に直列にインダクタンス素子等を接続することで容易に50Ωに整合することが可能であることがわかる。
【0029】
図3は第1の実施例において、スイッチ素子制御端子106を開放状態とした場合の信号出力端子104のインピーダンスを表すスミスチャートである。周波数B点は50Ωの定抵抗円上に位置し、信号出力端子104の外部に直列にインダクタンス素子等を接続することで容易に50Ωに整合することが可能であることがわかる。
【0030】
従って、周波数Aで使用する場合には、スイッチ素子制御端子を接地状態として使用し、周波数Bで使用する場合には、スイッチ素子制御端子を開放状態として使用することで、周波数Aおよび周波数Bで使用される高周波増幅器として、共通使用できることになる。
【0031】
図2および図3は、信号出力端子104のインピーダンスの例であるが、信号入力端子105もこれと同様に、スイッチ素子制御端子106を開放状態または接地状態と切り換えることで、周波数Aおよび周波数Bにおいて、それぞれ50Ωの定抵抗円上に位置させることが可能である。
【0032】
このように本実施例の高周波増幅器は、スイッチ素子制御端子106を開放状態または接地状態とすることにより、外部に接続する素子数を増加させることなく、また電源供給端子を増やすことなく、異なる周波数帯において50Ωに整合させることが可能となる。そのため、図1に示すように半導体基板上に集積化させた集積回路100で構成する場合、1つの集積回路の外部接続端子を開放状態あるいは接地電位に接続することのみで、異なる周波数帯域の高周波信号の増幅器として使用することが可能となる。
【0033】
図4は、第1の実施例をより具体的な回路で構成した説明図である。増幅回路201を構成するFET(電界効果型トランジスタ)211のドレインは、インピーダンス制御回路202を介して、信号出力端子204と接続され、ゲートは、インピーダンス制御回路203を介して、信号入力端子205と接続されている。インピーダンス制御回路202は、インピーダンス素子を構成するコンデンサ素子222とスイッチ素子を構成するFET221を主な構成素子としている。同様に、インピーダンス制御回路203は、インピーダンス素子を構成するコンデンサ素子232とスイッチ素子を構成するFET231を主な構成素子としている。
【0034】
そして図4に示すように、コンデンサ素子222の一端は信号出力端子204と接続し、他端はFET221のドレインと接続し、FET221のソースは接地され、FET221のゲートは、抵抗素子223を介して、スイッチ素子制御端子206と接続している。また、抵抗素子の224を介して信号出力端子204と接続している。この抵抗素子224は、FET221のゲート電位を決定するために接続されている。
【0035】
また、コンデンサ素子232の一端は信号入力端子205と接続し、他端はFET231のドレインと接続し、FET231のソースは接地され、FET231のゲートは、抵抗素子233を介して、スイッチ素子制御端子206と接続している。
【0036】
このように構成された2つのインピーダンス制御回路202、203は、スイッチ素子制御端子206を開放状態または接地状態することで、FET221、231を導通状態または遮断状態に切り替えられる。その結果、増幅回路201の出力側および入力側のインピーダンスを制御することができる。たとえば、FETをエンハンスメント型n型チャネル電界効果型トランジスタで構成した場合、スイッチ素子制御端子206を接地状態とすることで遮断状態となり、開放状態とすることで導通状態と切り換えることができる。また、FETをp型チャネル電界効果トランジスタで構成した場合、スイッチ素子制御端子206を開放状態にすると遮断状態となり、接地状態とすると導通状態と切り換えることができる。
【0037】
ここでコンデンサ素子として容量が5pF程度の素子を用いた場合、2つの周波数帯域600MHz(周波数Aに相当)と100MHz(周波数Bに相当)において、信号出力端子204、信号入力端子205をともにほぼ50Ωに整合させることが可能となる。なお、外部に接続する整合素子の素子値は適宜調整する。
【0038】
このように本実施例の高周波増幅器は、スイッチ素子制御端子206を開放状態または接地状態とすることにより、外部に接続する素子数を増加させることなく、また電源供給端子を増やすことなく、異なる周波数帯において50Ωに整合させることが可能となる。そのため、図4に示すように半導体基板上に集積化された集積回路200で構成する場合、1つの集積回路の外部接続端子を開放状態あるいは接地電位に接続することで、異なる周波数帯域の高周波信号の増幅器として使用することが可能となる。
【実施例2】
【0039】
図5は、本発明の第2の実施例の説明図である。増幅回路301は高周波信号を増幅する回路である。増幅回路301の入力側と出力側との間に、増幅回路301と並列にインピーダンス制御回路302が接続されている。インピーダンス制御回路302は、インピーダンス素子322とスイッチ素子321が直列に接続された回路で構成されている。
【0040】
インピーダンス制御回路302は、スイッチ素子制御端子306を開放状態または接地状態とすることで、スイッチ素子321の導通状態または遮断状態を切り替えられる構成となっており、インピーダンスを制御することができる。さらに本実施例では、増幅回路301の負帰還の役割もあわせ持つことになる。そのため、スイッチ素子制御端子206を開放状態または接地状態とすることで、スイッチ素子321の導通状態、遮断状態を切り換えられ、増幅回路301の出力から入力への帰還量を切り替え、帰還量が大きいときは利得を低くし、帰還量が小さいときは利得を高くし、増幅回路301の利得を変化させることもできるという利点もある。
【0041】
なお、第1の実施例同様、インピーダンス制御回路302は、スイッチ素子321を導通状態で使用する場合と遮断状態で使用する場合、それぞれ異なる周波数帯域の信号増幅において、所望のインピーダンスに設定されている。またインピーダンス素子としてコンデンサ素子を、スイッチ素子として電界効果型トランジスタを、それぞれ主な構成素子とすることができる。
【0042】
このように本実施例の高周波増幅器でも、スイッチ素子制御端子306を開放状態または接地状態とすることにより、外部に接続する素子数を増加させることなく、また電源供給端子を増やすことなく、異なる周波数帯において所望のインピーダンスに整合させることが可能となる。そのため、図5に示すように、半導体基板上に集積化させて集積回路300で構成する場合、1つの集積回路外部接続端子を開放状態あるいは接地電位に接続することで、異なる周波数帯域の高周波信号の増幅器として使用することが可能となる。
【実施例3】
【0043】
図6は、本発明の第3の実施例の説明図である。本実施例は、第1の実施例で説明したインピーダンス制御回路のFETをディプレッション型としている。図6に示すように、増幅回路401を構成するFET411のドレインは、インピーダンス制御回路402を介して、信号出力端子404と接続され、ゲートは、インピーダンス制御回路403を介して、信号入力端子405と接続されている。インピーダンス制御回路402は、インピーダンス素子を構成するコンデンサ素子422a、422bとスイッチ素子を構成するFET421を主な構成素子としている。同様に、インピーダンス制御回路403は、インピーダンス素子を構成するコンデンサ素子432a、432bとスイッチ素子を構成するFET431を主な構成素子としている。
【0044】
そして図6に示すように、コンデンサ素子422aの一端は信号出力端子404と接続し、他端はFET421のドレインと接続し、FET421のソースは、コンデンサ素子422bの一端と接続し、コンデンサ素子422bの他端は、接地されている。FET421のゲートは、抵抗素子423を介して、スイッチ素子制御端子406と接続している。また、抵抗素子425、426、427を介して、FET421のドレインとソースに正の電位が与えられている。
【0045】
一方コンデンサ素子432aの一端は信号入力端子405と接続し、他端はFET431のドレインと接続し、FET431のソースは、コンデンサ素子432bの一端と接続し、コンデンサ素子432bの他端は、接地されている。FET431のゲートは、抵抗素子433を介して、スイッチ素子制御端子406と接続している。また、抵抗素子425、428、429を介して、FET431のドレインとソースに正の電位が与えられている。
【0046】
このように構成された2つのインピーダンス制御回路402、403は、スイッチ素子制御端子406を開放状態または接地状態とすることで、FET421、431を導通状態または遮断状態と切り替えられる。具体的には、スイッチ素子制御端子406が開放状態の場合、FET421、431のゲートは抵抗素子424、423、433を介して正の電位が与えられ、FET421、431のドレインとソースとほぼ同電位となる。FET421、431はディプレッション型であるから、ドレイン、ソース、ゲートが同電位となるため、導通状態となる。
【0047】
一方、スイッチ素子制御端子406が接地状態の場合、FET421、431のゲートは接地電位となり、ドレインとソース電位と比べて負の電位となる。ドレイン、ソース電位に比べてゲート電位がFET421、431のしきい値電圧より負になると、遮断状態となる。
【0048】
このように構成された2つのインピーダンス制御回路402、403は、スイッチ素子制御端子406を開放状態または接地状態とすることで、FET421、431を導通状態または遮断状態に切り替えられる。その結果、増幅回路401の出力側および入力側のインピーダンスを制御することができる。
【0049】
なお、コンデンサ素子422bは、コンデンサ素子422aと共にインピーダンス素子として機能するほか、FET421のソースを接地端子と切り離す、いわゆるDCカットキャパシタとしても機能する。同様にコンデンサ素子432bは、コンデンサ素子432aと共にインピーダンス素子として機能するほか、FET431のソースを接地端子と切り離す、DCカットキャパシタとして機能する。
【0050】
また本実施例においても、図5と同様の構成することが可能である。即ち、増幅回路401の入力側と出力側との間に、増幅回路401と並列にインピーダンス制御回路402を接続し、インピーダンス制御回路403を省略した構成とすることで、帰還量を切り替える構成とすることも可能である。
【0051】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば、スイッチ素子制御端子を開放状態としたときにスイッチ素子を遮断状態とするような構成としてもよい。またスイッチ素子は電界効果型トランジスタに限定されるものではなく、バイポーラトランジスタや機械的なスイッチ素子としてもよい。更にインピーダンス制御回路は、増幅回路の入力側および出力側に各々1個ずつ接続する場合に限定されるものではなく、入力側および出力側のどちらか一方のみに接続したり、多段に接続して2点以上の周波数に対応した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
100、200、300、400;集積回路、101、201、301、401;増幅回路、102、103、202、203、302、402、403;インピーダンス制御回路、104、204、304、404;信号出力端子、105、205、305、405;信号入力端子、106、206、306、406;スイッチ素子制御端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号入力端子から入力する信号を増幅して信号出力端子へ出力する増幅回路と、
前記信号入力端子と前記増幅回路の入力側との間の第1の接続点あるいは前記増幅回路の出力側と前記信号出力端子との間の第2の接続点の少なくともいずれか一方に、インピーダンス制御回路を接続した高周波増幅器において、
前記インピーダンス制御回路は、前記第1の接続点あるいは前記第2の接続点と接地との間に接続された第1のインピーダンス素子と第1のスイッチ素子からなる直列回路で構成され、
前記第1のスイッチ素子は、スイッチ素子制御端子に接続され、該スイッチ素子制御端子が開放状態あるいは接地状態に制御されることで、導通状態あるいは遮断状態のいずれかに切り換えられることを特徴とする高周波増幅器。
【請求項2】
請求項1記載の高周波増幅器において、
前記インピーダンス制御回路は、前記第1の接続点と接地との間に接続された第2のインピーダンス素子と第2のスイッチ素子からなる第2の直列回路と、前記第2の接続点と接地との間に接続された第3のインピーダンス素子と第3のスイッチ素子からなる第3の直列回路で構成され、
前記第2のスイッチ素子および前記第3のスイッチ素子は、前記スイッチ素子制御端子に接続されていることを特徴とする高周波増幅器。
【請求項3】
請求項1記載の高周波増幅器において、
前記インピーダンス制御回路は、前記第2の接続点と前記第1の接続点との間に接続された第4のインピーダンス素子と第4のスイッチ素子の直列回路で構成され、
前記第4のスイッチ素子は、前記スイッチ素子制御端子に接続されていることを特徴とする高周波増幅器。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれか記載の高周波増幅器において、
前記増幅回路および前記インピーダンス制御回路が集積回路で形成され、前記スイッチ素子制御端子が、前記集積回路の外部接続端子であることを特徴とする高周波増幅器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−4777(P2012−4777A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136982(P2010−136982)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)
【Fターム(参考)】