高周波表面音響波デバイスおよびその基板
【課題】高周波SAWデバイスの製造コスト削減の為、その基板として高価なサファイア基板の要件を排除する高周波SAWデバイスの提供。
【解決手段】高周波SAWデバイス2は、基板21と、前記基板21の表面上に形成された第1緩衝層22と、前記第1緩衝層22の表面上に形成された第2緩衝層23と、前記第2緩衝層23の表面上に形成された圧電層24と、入力変換ユニット25と、出力変換ユニット26とを備えて成り、前記入力変換ユニット25および前記出力変換ユニット26は前記圧電層24の表面上もしくはその下方に夫々対として形成される。
【解決手段】高周波SAWデバイス2は、基板21と、前記基板21の表面上に形成された第1緩衝層22と、前記第1緩衝層22の表面上に形成された第2緩衝層23と、前記第2緩衝層23の表面上に形成された圧電層24と、入力変換ユニット25と、出力変換ユニット26とを備えて成り、前記入力変換ユニット25および前記出力変換ユニット26は前記圧電層24の表面上もしくはその下方に夫々対として形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波表面音響波デバイス(high frequency surface acoustic wave device)およびその基板に関し、より詳細には、その基板として従来の高価なサファイア基板を必要としない高周波表面音響波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
図1Aおよび図1Bを参照すると、図1Aは従来の高周波表面音響波デバイスの斜視図であり、且つ、図1Bは図1AのA-A'面に沿う断面図である。図1Aおよび図1Bに示された如く、従来の高周波表面音響波デバイス1は、基板11と、該基板11の表面上に形成された圧電層12と、入力変換ユニット13と、出力変換ユニット14とを備えて成る。入力変換ユニット13および出力変換ユニット14は夫々、圧電層12の表面上に対として形成される。入力変換ユニット13および出力変換ユニット14は両者ともにインターデジタル電極であることから、インターデジタル変換器が形成される。これに加え、従来の高周波表面音響波デバイス1においては、該高周波表面音響波デバイス1の基板11はサファイア基板である。圧電層12は、好適には0.1μm〜10μmの厚みを有するZnO、AlN、LiNbO3またはLiTaO3膜である。更に、圧電層12の表面上に夫々が対として形成された入力変換ユニット13および出力変換ユニット14は、アルミニウムから成り、それらのライン幅は0.1μm〜5μmである。
【0003】
しかし、発光ダイオードの如きの他の光電子用途もその基板としてサファイア基板を必要とするので、サファイア基板の価格は相当に高くなり、市場に対するサファイア基板の供給も安定しない。結果として、従来の高周波表面音響波デバイスの基板としてサファイア基板を使用すると、該デバイスの製造コストは削減され得ず、且つ、サファイア基板が品切れになることが多いので製造プロセスが中断されることもある。
【0004】
故に、高周波表面音響波デバイスの製造コストを削減するためには、その基板として高価なサファイア基板の要件を排除し得る高周波表面音響波デバイスが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高周波表面音響波デバイスの製造コストを削減するために、その基板として高価なサファイア基板の要件を排除する高周波表面音響波デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の高周波表面音響波デバイスは、基板と、上記基板の表面上に形成された第1緩衝層と、上記第1緩衝層の表面上に形成された第2緩衝層と、上記第2緩衝層の表面上に形成された圧電層と、入力変換ユニットと、出力変換ユニットとを備えて成り、上記入力変換ユニットおよび上記出力変換ユニットは上記圧電層の表面上もしくはその下方に夫々対として形成される。
【0007】
故に、ケイ素基板の表面上に第1緩衝層(すなわち酸化ケイ素層)および第2緩衝層(すなわちAl2O3層)を順次的に形成してから、上記第2緩衝層(すなわちAl2O3層)上に圧電層を形成することにより、本発明の高周波表面音響波デバイスの基板は、従来の高周波表面音響波デバイスの基板と同様の構造を有し得る。これに加え、(たとえばネットワーク・スペクトル応答、および、表面音響波の音響波速度などの)本発明の高周波表面音響波デバイスの動作性能は、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに等しい。結果として、その基板として高価なサファイア基板を使用せずに、本発明の高周波表面音響波デバイスは依然として、従来の高周波表面音響波デバイスと等しいまたはそれより良好な動作性能を有し得る。故に、本発明の高周波表面音響波デバイスの製造コストは劇的に削減され得る。
【0008】
更に、12インチのシリコン・ウェハの如き大寸のケイ素基板を成長させることは大寸のサファイア基板を成長させるよりも容易であり、且つ、殆どの電子的デバイスはケイ素基板上に形成され得ることから、本発明の高周波表面音響波デバイスの製造コストは効果的に削減され得ると共に、本発明の高周波表面音響波デバイスは同一のケイ素基板上の他のケイ素系の電子的デバイスと集積化され得る。
【0009】
本発明の高周波表面音響波デバイスは任意の種類の基板を有し得るが、上記基板は好適にはケイ素基板である。本発明の上記高周波表面音響波デバイスの上記第1緩衝層は任意の種類の材料から成り得るが、該第1緩衝層は好適には酸化ケイ素から成ると共に、その厚みは好適には0.05μm〜0.2μmである。本発明の上記高周波表面音響波デバイスの上記第2緩衝層は任意の種類の材料から成り得るが、該第2緩衝層は好適には酸化アルミニウムから成ると共に、その厚みは好適には0.5μm〜20μmである。本発明の上記高周波表面音響波デバイスの上記第2緩衝層は任意の種類の製造プロセスにより上記第1緩衝層の表面上に形成され得るが、それは好適には、電子ビーム蒸着プロセスまたはRFマグネトロン・スパッタリング・プロセスにより形成される。本発明の上記高周波表面音響波デバイスの上記圧電層は任意の種類の圧電膜とされ得るが、それは好適にはZnO、AlN、LiNbO3またはLiTaO3膜である。本発明の上記高周波表面音響波デバイスの上記入力変換ユニットおよび上記出力変換ユニットは任意の種類の材料から成り得るが、それらは好適にはアルミニウムから成る。
【0010】
本発明の他の目的、利点および新規な特徴は、添付図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すれば更に明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図2Aおよび図2Bを参照すると、図2Aは本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの斜視図であり且つ図2Bは図2AのB-B'面に沿う断面図であり、本発明の高周波表面音響波デバイス2は、基板21と、該基板21の表面上に形成された第1緩衝層22と、該第1緩衝層22の表面上に形成された第2緩衝層23と、該第2緩衝層23の表面上に形成された圧電層24と、入力変換ユニット25と、出力変換ユニット26とを備えて成る。入力変換ユニット25および出力変換ユニット26は夫々、圧電層24の表面において対として形成される。入力変換ユニット25および出力変換ユニット26は両者ともにインターデジタル電極であることから、インターデジタル変換器が形成される。
【0012】
これに加え、本実施例において高周波表面音響波デバイス2の基板21はケイ素から成る(すなわちケイ素基板)。第1緩衝層22は酸化ケイ素から成ると共に、その厚みは好適には0.05μm〜0.2μmである。更に、第2緩衝層23は酸化アルミニウムから成ると共に、その厚みは8μmである。第2緩衝層23は、電子ビーム蒸着プロセスによって第1緩衝層22の表面上で形成される。第2緩衝層23の厚みは上述の値に限定されないことを銘記されたい。第2緩衝層23は、上記高周波表面音響波デバイスの用途に依存して、0.5μm〜20μmの間の任意の厚みを有し得る。第2緩衝層23の表面上に形成された圧電層24はAl2O3から成ると共に、その厚みは1.2μmである。圧電層24の構成材料および厚みは上記の種類の材料および値に限定されないことを銘記されたい。圧電層24は、AlN、LiNbO3またはLiTaO3膜の如き任意の種類の圧電材料から成り得る。これに加え、圧電層24は上記高周波表面音響波デバイスの用途に依存して0.1μm〜10μmの間の任意の厚みを有し得る。最後に、圧電層24の表面上に夫々が対として形成された入力変換ユニット25および出力変換ユニット26はアルミニウムから成り、それらの厚みは0.1μm〜5μmである。
【0013】
図3は、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの製造プロセスを示すフローチャートであり、上記高周波表面音響波デバイスは図2Aおよび図2Bに示されている。図3に示された如く、上記製造プロセスは以下の段階を備える:
(a)図2Aに示された基板21として、(001)格子配向を有するケイ素基板を配備する段階;
(b)上記(001)格子配向を有するケイ素基板を加熱炉内に載置し、湿式空気酸化プロセスにより、図2Aに示された第1緩衝層22として、基板21の表面上に酸化ケイ素層を形成する段階;
(c)図2Aに示された第2緩衝層23として、(不図示の)電子ビーム蒸着システムにより、第1緩衝層22の表面上に酸化アルミニウム層を形成する段階;
(d)図2Aに示された圧電層24として、RFマグネトロン・スパッタリング・システムにより、第2緩衝層23の表面上にZnOから成る圧電層を形成する段階;および、
(e)リソグラフィ・プロセスにより圧電層24の表面上に夫々を対として2つのインターデジタル電極を形成する段階であって、図2Aに示された入力変換ユニット25および出力変換ユニット26として、これらの2つのインターデジタル電極によりインターデジタル変換器が形成されるという段階。
【0014】
以下においては、図4A、図4B、図5Aおよび図5Bに関して上記高周波表面音響波デバイスの動作性能が記述される。すなわち、本発明の上記高周波表面音響波デバイスのネットワーク・スペクトル応答は、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに匹敵する。更に、本発明の高周波表面音響波デバイスの表面波の位相速度もまた、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに匹敵する。
【0015】
図4Aは、従来の高周波表面音響波デバイスのネットワーク・スペクトル応答を示す概略図であり、且つ、図4Bは本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスのネットワーク・スペクトル応答を示す概略図である。図5Aは、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの第2緩衝層(すなわち酸化アルミニウム層)の厚みと製造プロセスの間における該第2緩衝層の析出時間との間の関係を示す概略図である。図5Bは、表面音響波の音響波速度と第2緩衝層(すなわち酸化アルミニウム層)の析出時間との間の関係を示す概略図である。
【0016】
第1に、図4Aに示された如く、従来の高周波表面音響波デバイスが動作しているときに動作周波数(f0)は253MHzであり、且つ、挿入損失は-25dBである。これに加え、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスが動作しているとき、動作周波数(f0)は270MHzであり、且つ、挿入損失は-15dBである。故に、動作周波数(f0)の如き、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの動作性能は、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに匹敵する。更に、挿入損失の如き、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの動作周波数の内の幾つかは、従来の高周波表面音響波デバイスのそれよりも良好である。
【0017】
その後、図5Aおよび図5Bに示された如く、上記第2緩衝層(すなわち酸化アルミニウム層)の厚みが8μmの如き一定値より大きくなったとき、本発明の一実施例に係る上記高周波表面音響波デバイスの表面音響波の音響波速度は、サファイア基板を有する従来の高周波表面音響波デバイスのそれに等しい。換言すると、上記第2緩衝層(すなわち酸化アルミニウム層)の厚みが8μmの如き一定値より大きくなると、(たとえばネットワーク・スペクトル応答、および、表面音響波の音響波速度などの)本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの動作性能は、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに等しくなる。結果として、その基板として高価なサファイア基板を使用せずに、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスは依然として、従来の高周波表面音響波デバイスに等しいまたはそれより良好な動作性能を有し得る。故に、本発明の一実施例に係る上記デバイスの製造コストは劇的に削減され得る。
【0018】
以下においては、図6Aおよび図6Bを参照し、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの構造が、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに類似していることが立証される。図6Aは、従来の高周波表面音響波デバイスの基板のX線回折パターンを示す概略図である。図6Bは、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの基板のX線回折パターンを示す概略図である。
【0019】
図6Aおよび図6Bに示された如く、2つの回折パターンのピークは殆ど同一の値(すなわち2θ=34.4°の付近)。これに加え、2つのピークの半値全幅(FWHM)は相互に接近している(すなわち0.24°対0.22°である)。故に、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの基板の構造(すなわち格子配向)は、サファイア基板である従来の高周波表面音響波デバイスの基板のそれと類似している。結果として、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの基板は、高周波表面音響波デバイスの基板として、高価なサファイア基板に代用され得る。
【0020】
上述された如く、第1緩衝層(すなわち酸化ケイ素層)および第2緩衝層(すなわちAl2O3層)をケイ素基板の表面上に順次的に形成してから、上記第2緩衝層(すなわちAl2O3層)上に圧電層を形成することにより、本発明の高周波表面音響波デバイスの基板は、従来の高周波表面音響波デバイスの基板と同様の構造を有し得る。これに加え、(たとえばネットワーク・スペクトル応答、および、表面音響波の音響波速度などの)本発明の高周波表面音響波デバイスの動作性能は、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに等しい。結果として、その基板として高価なサファイア基板を使用せずに、本発明の高周波表面音響波デバイスは依然として、従来の高周波表面音響波デバイスと等しいまたはそれより良好な動作性能を有し得る。故に、本発明の高周波表面音響波デバイスの製造コストは劇的に削減され得る。
【0021】
本発明はその好適実施例に関して説明されたが、権利請求された本発明の有効範囲から逸脱せずに他の多くの可能的な改変および変更が為され得ることは理解される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】従来の高周波表面音響波デバイスの斜視図である。
【図1B】図1AのA-A'面に沿う断面図である。
【図2A】本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの斜視図である。
【図2B】図2AのB-B'面に沿う断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの製造プロセスを示すフローチャートである。
【図4A】従来の高周波表面音響波デバイスのネットワーク・スペクトル応答を示す概略図である。
【図4B】本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスのネットワーク・スペクトル応答を示す概略図である。
【図5A】本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの第2緩衝層(すなわち酸化アルミニウム層)の厚みと製造プロセスの間における該第2緩衝層の析出時間との間の関係を示す概略図である。
【図5B】表面音響波の音響波速度と第2緩衝層(すなわち酸化アルミニウム層)の析出時間との間の関係を示す概略図である。
【図6A】従来の高周波表面音響波デバイスの基板のX線回折パターンを示す概略図である。
【図6B】本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの基板のX線回折パターンを示す概略図である。
【符号の説明】
【0023】
1 従来の高周波表面音響波デバイス
2 本発明の高周波表面音響波デバイス
11 基板
12 圧電層
13 入力変換ユニット
14 出力変換ユニット
21 基板
22 第1緩衝層
23 第2緩衝層
24 圧電層
25 入力変換ユニット
26 出力変換ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波表面音響波デバイス(high frequency surface acoustic wave device)およびその基板に関し、より詳細には、その基板として従来の高価なサファイア基板を必要としない高周波表面音響波デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
図1Aおよび図1Bを参照すると、図1Aは従来の高周波表面音響波デバイスの斜視図であり、且つ、図1Bは図1AのA-A'面に沿う断面図である。図1Aおよび図1Bに示された如く、従来の高周波表面音響波デバイス1は、基板11と、該基板11の表面上に形成された圧電層12と、入力変換ユニット13と、出力変換ユニット14とを備えて成る。入力変換ユニット13および出力変換ユニット14は夫々、圧電層12の表面上に対として形成される。入力変換ユニット13および出力変換ユニット14は両者ともにインターデジタル電極であることから、インターデジタル変換器が形成される。これに加え、従来の高周波表面音響波デバイス1においては、該高周波表面音響波デバイス1の基板11はサファイア基板である。圧電層12は、好適には0.1μm〜10μmの厚みを有するZnO、AlN、LiNbO3またはLiTaO3膜である。更に、圧電層12の表面上に夫々が対として形成された入力変換ユニット13および出力変換ユニット14は、アルミニウムから成り、それらのライン幅は0.1μm〜5μmである。
【0003】
しかし、発光ダイオードの如きの他の光電子用途もその基板としてサファイア基板を必要とするので、サファイア基板の価格は相当に高くなり、市場に対するサファイア基板の供給も安定しない。結果として、従来の高周波表面音響波デバイスの基板としてサファイア基板を使用すると、該デバイスの製造コストは削減され得ず、且つ、サファイア基板が品切れになることが多いので製造プロセスが中断されることもある。
【0004】
故に、高周波表面音響波デバイスの製造コストを削減するためには、その基板として高価なサファイア基板の要件を排除し得る高周波表面音響波デバイスが必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高周波表面音響波デバイスの製造コストを削減するために、その基板として高価なサファイア基板の要件を排除する高周波表面音響波デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の高周波表面音響波デバイスは、基板と、上記基板の表面上に形成された第1緩衝層と、上記第1緩衝層の表面上に形成された第2緩衝層と、上記第2緩衝層の表面上に形成された圧電層と、入力変換ユニットと、出力変換ユニットとを備えて成り、上記入力変換ユニットおよび上記出力変換ユニットは上記圧電層の表面上もしくはその下方に夫々対として形成される。
【0007】
故に、ケイ素基板の表面上に第1緩衝層(すなわち酸化ケイ素層)および第2緩衝層(すなわちAl2O3層)を順次的に形成してから、上記第2緩衝層(すなわちAl2O3層)上に圧電層を形成することにより、本発明の高周波表面音響波デバイスの基板は、従来の高周波表面音響波デバイスの基板と同様の構造を有し得る。これに加え、(たとえばネットワーク・スペクトル応答、および、表面音響波の音響波速度などの)本発明の高周波表面音響波デバイスの動作性能は、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに等しい。結果として、その基板として高価なサファイア基板を使用せずに、本発明の高周波表面音響波デバイスは依然として、従来の高周波表面音響波デバイスと等しいまたはそれより良好な動作性能を有し得る。故に、本発明の高周波表面音響波デバイスの製造コストは劇的に削減され得る。
【0008】
更に、12インチのシリコン・ウェハの如き大寸のケイ素基板を成長させることは大寸のサファイア基板を成長させるよりも容易であり、且つ、殆どの電子的デバイスはケイ素基板上に形成され得ることから、本発明の高周波表面音響波デバイスの製造コストは効果的に削減され得ると共に、本発明の高周波表面音響波デバイスは同一のケイ素基板上の他のケイ素系の電子的デバイスと集積化され得る。
【0009】
本発明の高周波表面音響波デバイスは任意の種類の基板を有し得るが、上記基板は好適にはケイ素基板である。本発明の上記高周波表面音響波デバイスの上記第1緩衝層は任意の種類の材料から成り得るが、該第1緩衝層は好適には酸化ケイ素から成ると共に、その厚みは好適には0.05μm〜0.2μmである。本発明の上記高周波表面音響波デバイスの上記第2緩衝層は任意の種類の材料から成り得るが、該第2緩衝層は好適には酸化アルミニウムから成ると共に、その厚みは好適には0.5μm〜20μmである。本発明の上記高周波表面音響波デバイスの上記第2緩衝層は任意の種類の製造プロセスにより上記第1緩衝層の表面上に形成され得るが、それは好適には、電子ビーム蒸着プロセスまたはRFマグネトロン・スパッタリング・プロセスにより形成される。本発明の上記高周波表面音響波デバイスの上記圧電層は任意の種類の圧電膜とされ得るが、それは好適にはZnO、AlN、LiNbO3またはLiTaO3膜である。本発明の上記高周波表面音響波デバイスの上記入力変換ユニットおよび上記出力変換ユニットは任意の種類の材料から成り得るが、それらは好適にはアルミニウムから成る。
【0010】
本発明の他の目的、利点および新規な特徴は、添付図面と併せて以下の詳細な説明を考慮すれば更に明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図2Aおよび図2Bを参照すると、図2Aは本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの斜視図であり且つ図2Bは図2AのB-B'面に沿う断面図であり、本発明の高周波表面音響波デバイス2は、基板21と、該基板21の表面上に形成された第1緩衝層22と、該第1緩衝層22の表面上に形成された第2緩衝層23と、該第2緩衝層23の表面上に形成された圧電層24と、入力変換ユニット25と、出力変換ユニット26とを備えて成る。入力変換ユニット25および出力変換ユニット26は夫々、圧電層24の表面において対として形成される。入力変換ユニット25および出力変換ユニット26は両者ともにインターデジタル電極であることから、インターデジタル変換器が形成される。
【0012】
これに加え、本実施例において高周波表面音響波デバイス2の基板21はケイ素から成る(すなわちケイ素基板)。第1緩衝層22は酸化ケイ素から成ると共に、その厚みは好適には0.05μm〜0.2μmである。更に、第2緩衝層23は酸化アルミニウムから成ると共に、その厚みは8μmである。第2緩衝層23は、電子ビーム蒸着プロセスによって第1緩衝層22の表面上で形成される。第2緩衝層23の厚みは上述の値に限定されないことを銘記されたい。第2緩衝層23は、上記高周波表面音響波デバイスの用途に依存して、0.5μm〜20μmの間の任意の厚みを有し得る。第2緩衝層23の表面上に形成された圧電層24はAl2O3から成ると共に、その厚みは1.2μmである。圧電層24の構成材料および厚みは上記の種類の材料および値に限定されないことを銘記されたい。圧電層24は、AlN、LiNbO3またはLiTaO3膜の如き任意の種類の圧電材料から成り得る。これに加え、圧電層24は上記高周波表面音響波デバイスの用途に依存して0.1μm〜10μmの間の任意の厚みを有し得る。最後に、圧電層24の表面上に夫々が対として形成された入力変換ユニット25および出力変換ユニット26はアルミニウムから成り、それらの厚みは0.1μm〜5μmである。
【0013】
図3は、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの製造プロセスを示すフローチャートであり、上記高周波表面音響波デバイスは図2Aおよび図2Bに示されている。図3に示された如く、上記製造プロセスは以下の段階を備える:
(a)図2Aに示された基板21として、(001)格子配向を有するケイ素基板を配備する段階;
(b)上記(001)格子配向を有するケイ素基板を加熱炉内に載置し、湿式空気酸化プロセスにより、図2Aに示された第1緩衝層22として、基板21の表面上に酸化ケイ素層を形成する段階;
(c)図2Aに示された第2緩衝層23として、(不図示の)電子ビーム蒸着システムにより、第1緩衝層22の表面上に酸化アルミニウム層を形成する段階;
(d)図2Aに示された圧電層24として、RFマグネトロン・スパッタリング・システムにより、第2緩衝層23の表面上にZnOから成る圧電層を形成する段階;および、
(e)リソグラフィ・プロセスにより圧電層24の表面上に夫々を対として2つのインターデジタル電極を形成する段階であって、図2Aに示された入力変換ユニット25および出力変換ユニット26として、これらの2つのインターデジタル電極によりインターデジタル変換器が形成されるという段階。
【0014】
以下においては、図4A、図4B、図5Aおよび図5Bに関して上記高周波表面音響波デバイスの動作性能が記述される。すなわち、本発明の上記高周波表面音響波デバイスのネットワーク・スペクトル応答は、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに匹敵する。更に、本発明の高周波表面音響波デバイスの表面波の位相速度もまた、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに匹敵する。
【0015】
図4Aは、従来の高周波表面音響波デバイスのネットワーク・スペクトル応答を示す概略図であり、且つ、図4Bは本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスのネットワーク・スペクトル応答を示す概略図である。図5Aは、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの第2緩衝層(すなわち酸化アルミニウム層)の厚みと製造プロセスの間における該第2緩衝層の析出時間との間の関係を示す概略図である。図5Bは、表面音響波の音響波速度と第2緩衝層(すなわち酸化アルミニウム層)の析出時間との間の関係を示す概略図である。
【0016】
第1に、図4Aに示された如く、従来の高周波表面音響波デバイスが動作しているときに動作周波数(f0)は253MHzであり、且つ、挿入損失は-25dBである。これに加え、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスが動作しているとき、動作周波数(f0)は270MHzであり、且つ、挿入損失は-15dBである。故に、動作周波数(f0)の如き、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの動作性能は、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに匹敵する。更に、挿入損失の如き、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの動作周波数の内の幾つかは、従来の高周波表面音響波デバイスのそれよりも良好である。
【0017】
その後、図5Aおよび図5Bに示された如く、上記第2緩衝層(すなわち酸化アルミニウム層)の厚みが8μmの如き一定値より大きくなったとき、本発明の一実施例に係る上記高周波表面音響波デバイスの表面音響波の音響波速度は、サファイア基板を有する従来の高周波表面音響波デバイスのそれに等しい。換言すると、上記第2緩衝層(すなわち酸化アルミニウム層)の厚みが8μmの如き一定値より大きくなると、(たとえばネットワーク・スペクトル応答、および、表面音響波の音響波速度などの)本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの動作性能は、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに等しくなる。結果として、その基板として高価なサファイア基板を使用せずに、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスは依然として、従来の高周波表面音響波デバイスに等しいまたはそれより良好な動作性能を有し得る。故に、本発明の一実施例に係る上記デバイスの製造コストは劇的に削減され得る。
【0018】
以下においては、図6Aおよび図6Bを参照し、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの構造が、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに類似していることが立証される。図6Aは、従来の高周波表面音響波デバイスの基板のX線回折パターンを示す概略図である。図6Bは、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの基板のX線回折パターンを示す概略図である。
【0019】
図6Aおよび図6Bに示された如く、2つの回折パターンのピークは殆ど同一の値(すなわち2θ=34.4°の付近)。これに加え、2つのピークの半値全幅(FWHM)は相互に接近している(すなわち0.24°対0.22°である)。故に、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの基板の構造(すなわち格子配向)は、サファイア基板である従来の高周波表面音響波デバイスの基板のそれと類似している。結果として、本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの基板は、高周波表面音響波デバイスの基板として、高価なサファイア基板に代用され得る。
【0020】
上述された如く、第1緩衝層(すなわち酸化ケイ素層)および第2緩衝層(すなわちAl2O3層)をケイ素基板の表面上に順次的に形成してから、上記第2緩衝層(すなわちAl2O3層)上に圧電層を形成することにより、本発明の高周波表面音響波デバイスの基板は、従来の高周波表面音響波デバイスの基板と同様の構造を有し得る。これに加え、(たとえばネットワーク・スペクトル応答、および、表面音響波の音響波速度などの)本発明の高周波表面音響波デバイスの動作性能は、従来の高周波表面音響波デバイスのそれに等しい。結果として、その基板として高価なサファイア基板を使用せずに、本発明の高周波表面音響波デバイスは依然として、従来の高周波表面音響波デバイスと等しいまたはそれより良好な動作性能を有し得る。故に、本発明の高周波表面音響波デバイスの製造コストは劇的に削減され得る。
【0021】
本発明はその好適実施例に関して説明されたが、権利請求された本発明の有効範囲から逸脱せずに他の多くの可能的な改変および変更が為され得ることは理解される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】従来の高周波表面音響波デバイスの斜視図である。
【図1B】図1AのA-A'面に沿う断面図である。
【図2A】本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの斜視図である。
【図2B】図2AのB-B'面に沿う断面図である。
【図3】本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの製造プロセスを示すフローチャートである。
【図4A】従来の高周波表面音響波デバイスのネットワーク・スペクトル応答を示す概略図である。
【図4B】本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスのネットワーク・スペクトル応答を示す概略図である。
【図5A】本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの第2緩衝層(すなわち酸化アルミニウム層)の厚みと製造プロセスの間における該第2緩衝層の析出時間との間の関係を示す概略図である。
【図5B】表面音響波の音響波速度と第2緩衝層(すなわち酸化アルミニウム層)の析出時間との間の関係を示す概略図である。
【図6A】従来の高周波表面音響波デバイスの基板のX線回折パターンを示す概略図である。
【図6B】本発明の一実施例に係る高周波表面音響波デバイスの基板のX線回折パターンを示す概略図である。
【符号の説明】
【0023】
1 従来の高周波表面音響波デバイス
2 本発明の高周波表面音響波デバイス
11 基板
12 圧電層
13 入力変換ユニット
14 出力変換ユニット
21 基板
22 第1緩衝層
23 第2緩衝層
24 圧電層
25 入力変換ユニット
26 出力変換ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
上記基板の表面上に形成された第1緩衝層と、
上記第1緩衝層の表面上に形成された第2緩衝層と、
上記第2緩衝層の表面上に形成された圧電層と、
入力変換ユニットと、
出力変換ユニットとを備えて成り、
上記入力変換ユニットおよび上記出力変換ユニットは上記圧電層の表面上もしくはその下方に夫々対として形成される、
高周波表面音響波デバイス。
【請求項2】
前記基板はケイ素から成る、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項3】
前記第1緩衝層は酸化ケイ素から成る、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項4】
前記第1緩衝層の厚みは0.05μm〜0.2μmである、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項5】
前記第2緩衝層は酸化アルミニウムから成る、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項6】
前記第2緩衝層の厚みは0.5μm〜20μmである、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項7】
前記第2緩衝層は電子ビーム蒸着プロセスにより前記第1緩衝層の表面上に形成される、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項8】
前記圧電層はZnO、AlN、LiNbO3またはLiTaO3膜から成る、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項9】
前記入力変換ユニットおよび前記出力変換ユニットは夫々インターデジタル電極である、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項10】
前記入力変換ユニットおよび前記出力変換ユニットはアルミニウムから成る、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項1】
基板と、
上記基板の表面上に形成された第1緩衝層と、
上記第1緩衝層の表面上に形成された第2緩衝層と、
上記第2緩衝層の表面上に形成された圧電層と、
入力変換ユニットと、
出力変換ユニットとを備えて成り、
上記入力変換ユニットおよび上記出力変換ユニットは上記圧電層の表面上もしくはその下方に夫々対として形成される、
高周波表面音響波デバイス。
【請求項2】
前記基板はケイ素から成る、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項3】
前記第1緩衝層は酸化ケイ素から成る、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項4】
前記第1緩衝層の厚みは0.05μm〜0.2μmである、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項5】
前記第2緩衝層は酸化アルミニウムから成る、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項6】
前記第2緩衝層の厚みは0.5μm〜20μmである、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項7】
前記第2緩衝層は電子ビーム蒸着プロセスにより前記第1緩衝層の表面上に形成される、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項8】
前記圧電層はZnO、AlN、LiNbO3またはLiTaO3膜から成る、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項9】
前記入力変換ユニットおよび前記出力変換ユニットは夫々インターデジタル電極である、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【請求項10】
前記入力変換ユニットおよび前記出力変換ユニットはアルミニウムから成る、請求項1記載の高周波表面音響波デバイス。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【公開番号】特開2010−45752(P2010−45752A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279186(P2008−279186)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(508207815)タトゥン ユニヴァーシティー (8)
【出願人】(508213562)タトゥン カンパニー (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(508207815)タトゥン ユニヴァーシティー (8)
【出願人】(508213562)タトゥン カンパニー (9)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]