説明

高周波電力増幅器

【課題】バイアス制御部を比較的簡素化し、且つ多段接続された各半導体増幅素子に対して所望のバイアス電圧を設定する。
【解決手段】高周波電力増幅器1は、バイアス制御部10と電力増幅部20とを備える。電力増幅部20は半導体増幅素子211,212,213が多段接続されてなり、高周波信号を増幅して出力する。バイアス制御部10では、バッファアンプ111を介したバイアス制御用信号が定抵抗器131、可変抵抗部132,133へ供給される。可変抵抗部132,133はレジスタ130のスイッチ制御信号より抵抗値が可変でき、所定の抵抗値に設定される。バイアス制御信号に基づき、定抵抗器131はバイアス電圧Vbias1を半導体増幅素子211へ供給し、可変抵抗部132はバイアス電圧Vbias2を半導体増幅素子212へ供給し、可変抵抗部133はバイアス電圧Vbias3を半導体増幅素子213へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線通信信号等の高周波信号を増幅する高周波電力増幅器、特に増幅素子を複数段接続してなる高周波電力増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機等の無線通信を行う装置には、送信信号を所定レベルの信号に増幅する高周波電力増幅器が備えられている。このような送信回路に用いられる高周波電力増幅器は、通常、半導体増幅素子を複数段接続してなり、例えば、特許文献1の高周波電力増幅器では、FETを3段に接続してなる。
【0003】
そして、このような複数段の半導体増幅素子からなる高周波電力増幅器では、特許文献1にも示されているように、高周波電力増幅器として所望の特性が得られるように、各段に与えるバイアス電圧を適宜設定している。
【0004】
例えば、特許文献1に示す従来技術では、当該特許文献1の図20に示すように、複数の抵抗器を直列接続したバイアス電圧生成回路が示されている。このバイアス電圧生成回路では、直列接続された複数の抵抗器の各接続点を半導体増幅素子毎のバイアス電圧への出力点としている。
【0005】
また、特許文献1では、上述の従来技術のバイアス電圧生成回路では、詳細なバイアス電圧の設定が不可能であり、特に各FETの閾値電圧近傍にバイアス電圧を設定する場合に詳細なバイアス電圧の設定を行うことが難しいことから、当該特許文献の図7に示すようなバイアス制御回路が備えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−37454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の図7に記載のバイアス制御回路は、二個のオペアンプ、定電流源、V/I変換回路、電流バッファ回路等を備える複雑な構造を有し、回路規模が大きくなりコストアップの要因にもなる。
【0008】
特に、バイアス制御回路は、実際に電力増幅を行う回路ではなく、この電力増幅部にバイアス電圧を与える回路であり、当該間接的な回路部が大きくなることで、主たる電力増幅部のスペースをも制限する可能性がある。また、当該バイアス制御回路に係るコストが高くなり、電力増幅部にコストを掛けられなくなる可能性も生じてしまう。
【0009】
したがって、本発明の目的は、バイアス制御回路を比較的簡素化し、且つ複数段接続された各半導体増幅素子に対して所望のバイアス電圧を設定しやすい構成からなる高周波電力増幅器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、複数の半導体増幅素子が接続されてなる電力増幅部と、複数の半導体増幅素子のそれぞれに与えるバイアス電圧を制御するバイアス制御部と、を備えた高周波電力増幅器に関するものである。この高周波電力増幅器のバイアス制御部は、複数の半導体増幅素子毎に設けられ、バイアス制御用信号が供給されることで、それぞれに接続される半導体増幅素子へのバイアス電圧を発生する複数の抵抗部を備える。そして、これら複数の抵抗部の少なくとも一つが可変抵抗部により形成されている。
【0011】
この構成では、複数の半導体増幅素子に供給されるバイアス電圧が抵抗器を主体とする簡素な回路で決定される上、その少なくとも一部が可変抵抗により調整可能になる。
【0012】
また、この発明の高周波電力増幅器において、複数の半導体増幅素子における最終段の半導体増幅素子にバイアス電圧を与える抵抗部は、可変抵抗部である。
【0013】
この構成では、可変抵抗部を用いる半導体増幅素子を詳細に示すものである。複数段接続された電力増幅部の場合、最終段の半導体増幅素子の特性が、これより前段の半導体増幅素子の特性よりも、電力増幅部の特性に与える影響が大きい。このため、少なくとも最終段の半導体増幅素子に対してバイアス電圧を詳細に調整できれば、電力増幅部の特性を適する特性に調整しやすい。したがって、少なくとも最終段の半導体増幅素子へのバイアス電圧を可変抵抗で与えれば、簡素な構造を用いながら、より適する特性に電力増幅部を設定することが可能になる。
【0014】
また、この発明の高周波電力増幅器の可変抵抗部は、それぞれがスイッチ素子と定抵抗器とが直列接続されてなる複数の直列回路を並列接続した回路と、それぞれの直列回路のスイッチ素子にスイッチ制御信号を与えるスイッチ制御部と、を備える。
【0015】
この構成では、可変抵抗部の具体的構成を示している。そして、この構成では、複数の定抵抗器を並列接続し、スイッチ素子によって各定抵抗器を利用するかどうかを選択することで、その選択の組合せにより可変抵抗部としての抵抗値を変化させている。これにより、定抵抗器とスイッチのみを組み合わせてなる単純な回路構成および構造で、可変抵抗部を形成できる。この結果、後述するように当該可変抵抗部をSi基板に形成する場合に、簡単なプロセスで可変抵抗を形成できる。
【0016】
また、この発明の高周波電力増幅器のバイアス制御部は、複数の抵抗部に接続するバッファアンプを備える。
【0017】
この構成では、バッファアンプにより各抵抗部の素子バラツキがバイアス電圧に与える影響を緩和することができる。
【0018】
また、この発明の高周波電力増幅器のバッファアンプは、複数の抵抗部の前段の接続点以前に配置された一つのバッファアンプである。
【0019】
この構成では、複数の抵抗部に対して一つのバッファアンプで済むため、バイアス制御部を、より簡素化することができる。
【0020】
また、この発明の高周波電力増幅器は、電力増幅部を構成する基板と、バイアス制御部を構成する基板とが異なる。
【0021】
この構成では、電力増幅部とバイアス制御部とを個別の基板で形成することで、後述するように、各部を異なる材質の基板で形成することができる。
【0022】
また、この発明の高周波電力増幅器では、電力増幅部の半導体増幅素子がヘテロ接合バイポーラトランジスタで形成される化合物系基板により電力増幅部を構成する基板が形成されている。さらに、バイアス制御部を構成する基板がSi系基板で形成されている。
【0023】
この構成では、上述の電力増幅部とバイアス制御部とを異なる材質の基板で形成する具体的な例を示している。通常、電力増幅部は、特性を向上させるため化合物系の高価な基板を用いて複雑なプロセスから半導体増幅素子を形成する必要がある。一方で、バイアス制御部は、所定精度のバイアス電圧が供給できればよく、上述のように抵抗器とスイッチ素子用のFET程度でよいので、一般的な汎用のSi系基板等で十分に形成できる。したがって、これらを別の基板で構成することで、良好な特性を得ながら安価に高周波電力増幅器を形成することができる。
【0024】
また、この発明の高周波電力増幅器では、電力増幅部を構成する基板とバイアス制御部を構成する基板とが、電極パターンと誘電体層とを積層してなる積層基板上に実装されている。
【0025】
この構成では、積層基板に電力増幅部やバイアス制御部に接続する各種の回路素子を形成し、当該積層基板上に電力増幅部の基板やバイアス制御部の基板を実装すれば、高周波電力増幅器や当該高周波電力増幅器を含む通信モジュールを小型に形成することができる。
【発明の効果】
【0026】
この発明によれば、従来のように一意の値のバイアス電圧しか供給できないことを防止でき、半導体増幅素子の製品バラツキが生じても、適切なバイアス電圧に設定することができる。その上で、オペアンプや定電流源、各種の回路素子を用いた機能回路等を複数用いるような複雑且つ部品点数の多い回路にはならず、バイアス制御部を簡素且つ安価に構成することができる。すなわち、安価で且つ優れた増幅特性の高周波電力増幅器を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係る高周波電力増幅器の回路図および可変抵抗部の回路図である。
【図2】本実施形態の高周波電力増幅器1の概略構造を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態に係る高周波電力増幅器について、図を参照して説明する。図1(A)は本実施形態の高周波電力増幅器の回路図であり、図1(B)は図1(A)に示す可変抵抗部132の詳細回路図である。また、図2は本実施形態の高周波電力増幅器1の概略構造を示す外観斜視図であり、図2(A)はワイヤボンディングによりバイアス制御部と電力増幅部と接続した構成を示し、図2(B)は積層基板の配線電極パターンによりバイアス制御部と電力増幅部とを接続した構成を示す。
【0029】
本実施形態の高周波電力増幅器1は、図1(A)に示すように、バイアス制御部10と電力増幅部20とを備える。ここで、バイアス制御部10と電力増幅部20とは、異なる基板に形成されている。具体的には図2を用いて説明するが、バイアス制御部10は汎用で安価なSi系基板に形成され、電力増幅部20は高価であるが増幅素子を形成した場合に優れた特性が得られる化合物系基板(GaAs基板やInP基板等)が用いられている。
【0030】
バイアス制御部10には、制御信号入力端子101が備えられており、当該制御信号入力端子101へ、外部からバイアス制御用信号が入力される。このバイアス制御用信号は、例えば、当該高周波電力増幅器1の出力信号の一部を方向性結合器によりフィードバックした信号に基づいて設定されている。
【0031】
バッファアンプ111は、入力端が制御信号入力端子101へ接続し、出力端が定抵抗器131、可変抵抗部132,133に接続している。バッファアンプ111は、バイアス制御用信号を所定増幅率(例えばAv=1)で増幅し、定抵抗器131、可変抵抗部132,133へ印加する。このバッファアンプ111は、例えば実装部品であり基板上に実装されている。このように、バッファアンプ111を用いることで、定抵抗器131、可変抵抗部132,133を構成する各回路素子の特性バラツキがあっても、このバラツキを緩和し、バッファアンプ111を用いない場合よりも安定したバイアス電圧を供給することが可能になる。
【0032】
特に、本実施形態のように、バイアス制御部10をSi基板で形成する場合、電力増幅部20に用いられる化合物系基板で形成するよりも、回路素子のバラツキおよびバイアス制御部10としてのバラツキが大きくなり易いが、当該バッファアンプ111を用いることで、このようなバラツキを緩和し、汎用で比較的安価なSi基板でバイアス制御部10を形成しても、十分に実用性を有するバイアス電圧を電力増幅部20へ供給することができる。
【0033】
定抵抗器131は、バイアス制御用信号が印加されることで、バイアス電圧Vbias1を発生し、電力増幅部20の半導体増幅素子211へ供給する。
【0034】
可変抵抗部132は、バイアス制御用信号が印加されることで、バイアス電圧Vbias2を発生し、電力増幅部20の半導体増幅素子212へ供給する。同様に、可変抵抗部133も、バイアス制御用信号が印加されることで、バイアス電圧Vbias3を発生し、電力増幅部20の半導体増幅素子213へ供給する。ここで、バイアス電圧Vbias1、バイアス電圧Vbias2、バイアス電圧Vbias3はそれぞれ個別に設定された値である。
【0035】
レジスタ130は、上述のバイアス電圧Vbias2,Vbias3を設定するためのスイッチ制御データが記憶されており、バイアス電圧Vbias2,Vbias3が半導体増幅素子212,213に対して適する電圧レベルになるように、可変抵抗部132,133へスイッチ制御信号を出力する。
【0036】
可変抵抗部132,133は、図1(B)に示すように、複数の定抵抗器と複数のスイッチ素子とから構成される。ここで、可変抵抗部132、133は、構成する定抵抗器の抵抗値が異なるものの、基本的な回路構成は同じであるので、図1(B)を用いて、可変抵抗部132の構成を説明する。
【0037】
可変抵抗部132は、CMOS型FETのスイッチ素子FET41と定抵抗器R31とが直列接続されたの第1直列回路と、CMOS型FETのスイッチ素子FET42と定抵抗器R32とが直列接続された第2直列回路と、CMOS型FETのスイッチ素子FET43と定抵抗器R33とが直列接続された第3直列回路と、を備える。ここで、スイッチ素子と定抵抗器とが直列接続されるとは、スイッチ素子であるFETのドレイン(もしくはコレクタ)に定抵抗器が接続されることを示す。
【0038】
これら第1直列回路、第2直列回路、第3直列回路は、前段のバッファアンプ111と、後段の電力増幅部20の半導体増幅素子212との間で並列接続されている。また、第1直列回路のスイッチ素子FET41のゲートには定抵抗器R51を介してレジスタ130が接続され、第2直列回路のスイッチ素子FET42のゲートには定抵抗器R52を介してレジスタ130が接続され、第3直列回路のスイッチ素子FET43のゲートには定抵抗器R53を介してレジスタ130が接続されている。
【0039】
レジスタ130からは、スイッチ素子FET41,FET42,FET43毎に上述の選択したスイッチ制御データに基づく個別のスイッチ制御信号が与えられる。スイッチ素子FET41,FET42,FET43は、スイッチ制御信号に基づいてオン/オフ動作する。これにより、オン動作しているスイッチ素子のみにバイアス制御用信号が印加され、当該オン動作しているスイッチ素子に接続する定抵抗器の合成抵抗値に応じたバイアス電圧Vbias2が、電力増幅部20の半導体増幅素子212へ供給される。
【0040】
このような構成とすれば、従来のように単一の定抵抗器で一定値のバイアス電圧しか供給できないことを防止でき、バイアス電圧の調整が可能になる。また、オペアンプや定電流源、各種回路素子を組み合わせた機能回路を複数設けなくても、バイアス電圧の調整が可能である。
【0041】
また、複雑なバイアス制御回路を形成して詳細なバイアス電圧の微調整を行う場合には、電力増幅部20と同じ高価な化合物系基板を用いなければならなくなり、Si系基板を利用できない。したがって、バイアス制御部を安価に形成することができなくなる。しかしながら、本実施形態の構成を用いれば、バイアス電圧の調整が可能でありながらも、安価なSi系基板でバイアス制御部10を形成できる。
【0042】
電力増幅部20は、駆動電圧入力端子201、RF用入力端子202、およびRF用出力端子203を備える。駆動電圧入力端子201には、駆動電圧Vbatが印加され、当該駆動電圧Vbatは、各半導体増幅素子211,212,213へ供給される。
【0043】
RF用入力端子202には、外部のVCO等により生成された高周波信号が入力され、当該高周波信号は、初段の半導体増幅素子211へ出力される。
【0044】
半導体増幅素子211,212,213は、化合物系基板に形成されたヘテロ接合バイポーラトランジスタからなる。これにより、高精度で優れた特性を有する半導体増幅素子を形成することができる。
【0045】
初段の半導体増幅素子211は、駆動電圧Vbatおよびバイアス電圧Vbias1に基づいて、高周波信号を所定増幅率で増幅して出力する。出力された1段増幅済みの高周波信号は、整合回路221を介して第二段の半導体増幅素子212へ入力される。
【0046】
第二段の半導体増幅素子212は、駆動電圧Vbatおよびバイアス電圧Vbias2に基づいて、1段増幅済みの高周波信号を所定増幅率でさらに増幅して出力する。出力された2段増幅済みの高周波信号は、整合回路222を介して最終段の半導体増幅素子213へ入力される。
【0047】
最終段の半導体増幅素子213は、駆動電圧Vbatおよびバイアス電圧Vbias3に基づいて、2段増幅済みの高周波信号を所定増幅率でさらに増幅して出力する。この最終増幅済みで電力増幅部20として所望のレベルに増幅された高周波信号は、RF用出力端子203を介して、後段の外部回路へ出力される。
【0048】
以上のような構成とすることで、複数段接続された複数の半導体増幅素子における所定の半導体増幅素子に対して、バイアス電圧Vbiasを調整して供給することができる。特に、本実施形態に示すように、少なくとも最終段の半導体増幅素子213に対するバイアス電圧Vbias3を調整できることで、電力増幅部20としての増幅特性に最も影響を与える最終段の半導体増幅素子213のバイアス電圧Vbias3を適正値に設定することができる。これにより、各素子に特性バラツキがあっても、適する増幅特性からなる電力増幅部20を構成することができる。
【0049】
次に、本実施形態の高周波電力増幅器の構造について説明する。図2に示すように、本実施形態の高周波電力増幅器は、バイアス制御部用基板と電力増幅部用基板とが積層基板上に実装され、これらバイアス制御部用基板と電力増幅部用基板がワイヤもしくは配線パターンにより接続された構造からなる。
【0050】
まず、図2(A)に示すように、ワイヤボンディングで接続する場合について説明する。積層基板900A上には、バイアス制御部用基板901FUと電力増幅部用基板902FUとが所定位置に実装されている。これらバイアス制御部用基板901FUと電力増幅部用基板902FUは接続用ランドが上面に形成された基板である。
【0051】
バイアス制御部用基板901FUの上面には、接続用ランド911P,912P,913Pが形成されている。一方、電力増幅部用基板902FUの上面には、接続用ランド921P,922P,923Pが形成されている。そして、バイアス制御部用基板901FUの上面の接続用ランド911Pと、電力増幅部用基板902FUの上面の接続用ランド921Pとがワイヤボンディング工法によりワイヤ931によって接続されている。同様に、バイアス制御部用基板901FUの上面の接続用ランド912Pと、電力増幅部用基板902FUの上面の接続用ランド922Pとがワイヤ932によって接続されている。さらに、バイアス制御部用基板901FUの上面の接続用ランド913Pと、電力増幅部用基板902FUの上面の接続用ランド923Pとがワイヤ933によって接続されている。これらワイヤ931,932,933による伝送経路が、図1に示した定抵抗器131と半導体増幅素子211とを接続する回路、可変抵抗部132と半導体増幅素子212とを接続する回路、可変抵抗部133と半導体増幅素子213とを接続する回路となる。
【0052】
次に、図2(B)に示すように、配線パターンで接続する場合について説明する。積層基板900B上には、バイアス制御部用基板901FDと電力増幅部用基板902FDとが所定位置に実装されている。これらバイアス制御部用基板901FDと電力増幅部用基板902FDは接続用バンプが基板の底面に形成された基板である。
【0053】
バイアス制御部用基板901FDの底面には、接続用バンプ911BP,912BP,913Pが形成されている。一方、電力増幅部用基板902FDの底面には、接続用バンプ921BP,922BP,923BPが形成されている。
【0054】
積層基板900B上には、配線パターン941,942,943が形成されている。
【0055】
そして、上述のように、バイアス制御部用基板901FDと電力増幅部用基板902FDとを積層基板900B上に実装する場合には、配線パターン941の一方端がバイアス制御部用基板901FDの接続用バンプ911BPに接続され、配線パターン941の他方端が電力増幅部用基板902FDの接続用バンプ921BPに接続される。同様に、配線パターン942の一方端がバイアス制御部用基板901FDの接続用バンプ912BPに接続され、配線パターン942の他方端が電力増幅部用基板902FDの接続用バンプ922BPに接続される。さらに、配線パターン943の一方端がバイアス制御部用基板901FDの接続用バンプ913BPに接続され、配線パターン943の他方端が電力増幅部用基板902FDの接続用バンプ923BPに接続される。これら配線パターン941,942,943による伝送経路が、図1に示した定抵抗器131と半導体増幅素子211とを接続する回路、可変抵抗部132と半導体増幅素子212とを接続する回路、可変抵抗部133と半導体増幅素子213とを接続する回路となる。
【0056】
このように、バイアス制御部10を構成する基板と、電力増幅部20を構成する基板とを個別に形成することで、これら基板を異なる材質で形成することができる。具体的には、汎用で安価なSi系基板でバイアス制御部用基板を形成し、高価で且つデバイスの形成が複雑ではあるが特性に優れたデバイスが形成可能なGaAs基板やInP基板等の化合物系基板により電力増幅部用基板を形成することができる。すなわち、用途に応じて適する異なる基板を用いることできる。これにより、特性が優先される電力増幅部20のみを化合物系基板で形成し、電力増幅部20と比較すると精度の要求が高くないバイアス制御部10をSi系基板で形成できるので、高周波電力増幅器としての実用十分な特性を得ながら、安価に形成することができる。特に、上述のようにバイアス制御部にバッファアンプを用いれば、バイアス制御部から出力されるバイアス電圧のバラツキが緩和されるので、より有効である。
【0057】
さらに、これらバイアス制御部用基板および電力増幅部用基板が実装される積層基板の内層電極や積層基板に実装される実装型回路素子を用いて、バイアス制御部10や電力増幅部20が接続する付加回路、例えば、上述の方向性結合器等を形成することもできる。このように積層基板に付加回路を形成し、当該積層基板上にバイアス制御部用基板および電力増幅部用基板を実装することで、高周波電力増幅器および当該高周波電力増幅器を備える通信モジュール等を小型に形成することもできる。
【0058】
なお、上述の説明では、半導体増幅素子を3段接続した電力増幅部を有する高周波電力増幅器を例に示したが、2段以上の複数段であれば、上述の構成を適用でき、上述の作用効果を得ることができる。この際、少なくとも最終段の半導体増幅素子にバイアス電圧を供給する回路に、可変抵抗部を用いるようにしておけばよい。
【0059】
また、上述の説明では、初段の半導体増幅素子にバイアス電圧を供給する回路に定抵抗器を用いた例を示したが、初段の半導体増幅素子に対して、すなわち全ての半導体増幅素子に対して可変抵抗部を用いてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1−高周波電力増幅器、10−バイアス制御部、20−電力増幅部、101−制御信号入力端子、111−バッファアンプ、130−レジスタ、131−定抵抗器、132,133−可変抵抗部、201−駆動電圧入力端子、202−RF用入力端子、203−RF用出力端子、211,212,213−半導体増幅素子、221,222−整合回路、
900A,900B−積層基板、901FU,901FD−バイアス制御部用基板、902FU,902FD−電力増幅部用基板、911P,912P,913P,921P,922P,923P−接続用ランド、911BP,912BP,913BP,921BP,922BP,923BP−接続用バンプ、931,932,933−ワイヤ、941,942,943−配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体増幅素子が接続されてなる電力増幅部と、
前記複数の半導体増幅素子のそれぞれに与えるバイアス電圧を制御するバイアス制御部と、を備えた高周波電力増幅器であって、
前記バイアス制御部は、前記複数の半導体増幅素子毎に設けられ、バイアス制御用信号が供給されることで、それぞれに接続される半導体増幅素子へのバイアス電圧を発生する複数の抵抗部を備え、
該複数の抵抗部の少なくとも一つが可変抵抗部により形成されている、高周波電力増幅器。
【請求項2】
前記複数の半導体増幅素子における最終段の半導体増幅素子にバイアス電圧を与える抵抗部が、前記可変抵抗部である、請求項1に記載の高周波電力増幅器。
【請求項3】
前記可変抵抗部は、
それぞれがスイッチ素子と定抵抗器とが直列接続されてなる複数の直列回路を並列接続した回路と、
それぞれの直列回路のスイッチ素子にスイッチ制御信号を与えるスイッチ制御部と、を備える請求項1または請求項2に記載の高周波電力増幅器。
【請求項4】
前記バイアス制御部は、前記複数の抵抗部に接続するバッファアンプを備える、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の高周波電力増幅器。
【請求項5】
前記バッファアンプは、前記複数の抵抗部の前段の接続点以前に配置された一つのバッファアンプである、請求項4に記載の高周波電力増幅器。
【請求項6】
前記電力増幅部を構成する基板と、前記バイアス制御部を構成する基板とが異なる、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の高周波電力増幅器。
【請求項7】
前記電力増幅部の半導体増幅素子がヘテロ接合バイポーラトランジスタで形成される化合部半導体基板により前記電力増幅部を構成する基板が形成され、
前記バイアス制御部を構成する基板がSi系基板で形成されている、請求項6に記載の高周波電力増幅器。
【請求項8】
前記電力増幅部を構成する基板と前記バイアス制御部を構成する基板とが、電極パターンと誘電体層とを積層してなる積層基板上に実装されている、請求項6または請求項7に記載の高周波電力増幅器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−124621(P2011−124621A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278257(P2009−278257)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】