説明

高周波電源装置および高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器

【課題】1つの負荷回路に対するインバーター回路の発熱箇所を分散して、局部的な発熱による故障や出力の制限を極力回避した使い勝手のよい高周波電源装置を提供する。
【解決手段】第1の負荷回路5に対し、2つのパワーモジュール3、4の1組の上・下スイッチ10と11および18と19を互いに組み合わせて第1のインバーター回路INV1を構成し、第2の負荷回路6に対し各パワーモジュール3、4の1組の上・下スイッチ12と13および20と21を互いに組み合わせて第2のインバーター回路INV2を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパワーモジュールを有する高周波電源装置およびその高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導加熱調理器には、2個直列に接続されたスイッチング素子を複数有するパワーモジュールを備え、そのパワーモジュールに設けられた2個直列のスイッチング素子を複数組み合わせてフルブリッジ型インバーター回路が構成されたものがある。そのインバーター回路の出力側には、加熱コイルと共振コンデンサからなる負荷回路が接続されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−235124号公報(第3頁、図1−図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の誘導加熱調理器では、パワーモジュールを使用することによりインバーター回路をコンパクトに構成することができ、インバーター回路が実装される基板を小型化することができる。しかし、複数の負荷回路に対しインバーター回路をそれぞれ個別のパワーモジュールのスイッチング素子を使用して構成した場合、各負荷回路への出力状態によっては、高周波電源装置全体では熱的に余裕がある状態であっても、一部のパワーモジュールに発熱(損失)が集中する場合がある。そのような場合には、対応するパワーモジュールのインバーター回路の出力を制限しなければならず、使い勝手が悪くなる課題があった。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、1つの負荷回路に対するインバーター回路の発熱箇所を分散して、局部的な発熱による故障や出力の制限を極力回避した使い勝手のよい高周波電源装置および高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る高周波電源装置は、交流電力を直流に変換する直流電源回路と、直流電源回路の出力間に直列に接続された2個のスイッチング素子を1組として複数組有する2以上のパワーモジュールとを備え、負荷回路に対し、2以上のパワーモジュールのうち2つのパワーモジュールの1組のスイッチング素子を互いに組み合わせてフルブリッジ型インバーター回路を構成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、負荷回路に対し、2つのパワーモジュールの1組のスイッチング素子を互いに組み合わせてフルブリッジ型インバーター回路を構成するようにしている。これにより、1つの負荷回路に対して高出力動作を行った場合に、その高出力動作によるフルブリッジ型インバーター回路のスイッチング素子における発熱は、もう一方のパワーモジュールに分散することができる。そのため、高周波電源装置全体では熱的に余裕のある状態でありながら一部のインバーター回路に発熱が集中して加熱出力を制限しなければならない状態が生じ難くなり、使い勝手のよい高周波電源装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1に係る高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。
【図2】図1の誘導加熱調理器における第1のインバーター回路の駆動信号および出力を示す波形図である。
【図3】図1の誘導加熱調理器における第2のインバーター回路の駆動信号および出力を示す波形図である。
【図4】図1の誘導加熱調理器における第1および第2のインバーター回路の各駆動信号および各出力を示す波形図である。
【図5】実施の形態2に係る高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。
【図6】実施の形態3に係る高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。
【図7】実施の形態4に係る高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は実施の形態1に係る高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。
図において、本実施の形態の誘導加熱調理器は、商用交流電源1と接続される直流電源回路2と、第1および第2のパワーモジュール3、4と、第1および第2のパワーモジュール3、4の間にそれぞれ挿入された第1および第2の負荷回路5、6と、本調理器を制御する制御回路46とを主要部品として備えている。本実施の形態における誘導加熱調理器の高周波電源装置は、直流電源回路2と、第1および第2のパワーモジュール3、4と、後述する駆動回路36〜39、スナバコンデンサ40〜43、放熱部材44、温度センサー45と、制御回路46とから構成されている。
【0010】
前述の直流電源回路2は、商用交流電源1の交流電力を整流するダイオードブリッジ回路7と、ダイオードブリッジ回路7により整流された直流電圧を平滑するチョークコイル8および平滑コンデンサ9とから構成されている。この直流電源回路2の出力電圧は、第1および第2のパワーモジュール3、4に供給される。
【0011】
第1のパワーモジュール3は、直流電源回路2の出力間に2個ずつ直列に接続されたスイッチング素子10と11および12と13と、各スイッチング素子10〜13にそれぞれ逆並列に接続された4個のダイオード14〜17とで構成されている。第2のパワーモジュール4は、第1のパワーモジュール3と同様に、直流電源回路2の出力間に2個ずつ直列に接続されたスイッチング素子18と19および20と21と、各スイッチング素子18〜21にそれぞれ逆並列に接続された4個のダイオード22〜25とで構成されている。
【0012】
なお、以下、直流電源回路2の高電位側の出力端に接続されたスイッチング素子10、12、18、20を上スイッチ10、12、18、20と記し、直流電源回路2の低電位側の出力端に接続されたスイッチング素子11、13、19、21を下スイッチ11、13、19、21と記す。また、上スイッチ10、12、18、20にそれぞれ逆並列に接続されたダイオード14、16、22、24を上ダイオード14、16、22、24と記し、下スイッチ11、13、19、21にそれぞれ逆並列に接続されたダイオード15、17、23、25を下ダイオード15、17、23、25と記す。
【0013】
第1のパワーモジュール3に内蔵された上・下スイッチ10、11および上・下ダイオード14、15と、第2のパワーモジュール4に内蔵された上・下スイッチ18、19および上・下ダイオード22、23とで第1のフルブリッジ型インバーター回路INV1(以下、第1のインバーター回路INV1と記す)が構成されている。また、第1のパワーモジュール3に内蔵された上・下スイッチ12、13および上・下ダイオード16、17と、第2のパワーモジュール4に内蔵された上・下スイッチ20、21および上・下ダイオード24、25とで第2のフルブリッジ型インバーター回路INV2(以下、第2のインバーター回路INV2と記す)が構成されている。
【0014】
前述の第1の負荷回路5は、第1の加熱コイル26とその共振コンデンサ27とで構成され、第1のインバーター回路INV1の出力端(接続点A,C)と接続されている。第2の負荷回路6は、第2の加熱コイル28とその共振コンデンサ29とから構成され、第2のインバーター回路INV2の出力端(接続点B,D)と接続されている。なお、第1および第2の加熱コイル26、28は、本調理器に設けられた鍋載置用の天板の裏面側に配置されている。
【0015】
また、本実施の形態の誘導加熱調理器は、第1の加熱コイル26に流れる電流を検出する電流検出器30と、第1の加熱コイル26に印加される電圧を検出する電圧検出器31と、電流検出器30により検出された電流と電圧検出器31により検出された電圧とから第1の負荷回路5の出力電力を算出する乗算器32と、第2の加熱コイル28に流れる電流を検出する電流検出器33と、第2の加熱コイル28に印加される電圧を検出する電圧検出器34と、電流検出器33により検出された電流と電圧検出器34により検出された電圧とから第2の負荷回路6の出力電力を算出する乗算器35と、第1のインバーター回路INV1を駆動する駆動回路36、38と、第2のインバーター回路INV2を駆動する駆動回路37、39と、4個のスナバコンデンサ40、41、42、43とを備えている。
【0016】
前述の2個の駆動回路36、38のうち、一方の駆動回路36は、制御回路46の制御に基づいて第1のインバーター回路INV1の上・下スイッチ10、11を交互にオン・オフし、他方の駆動回路38は、制御回路46の制御に基づいて同インバーター回路INV1の上・下スイッチ18、19を交互にオン・オフする。また、2個の駆動回路37、39のうち、一方の駆動回路37は、制御回路46の制御に基づいて第2のインバーター回路INV2の上・下スイッチ12、13を交互にオン・オフし、他方の駆動回路39は、制御回路46の制御に基づいて同インバーター回路INV2の上・下スイッチ20、21を交互にオン・オフする。
【0017】
第1の負荷回路5に高周波出力する場合には、駆動回路36により上スイッチ10と下スイッチ11を高周波で交互にオン・オフし、上スイッチ10と下スイッチ11の接続点Aに高周波で変動する電位を発生させる。またこの時、駆動回路38によって駆動回路36と同一周波数で位相遅れの高周波で上スイッチ18と下スイッチ19を交互にオン・オフし、上スイッチ18と下スイッチ19の接続点Cに高周波で変動する電位を発生させる。その駆動回路36と駆動回路38の位相差の駆動により、接続点A・C間に生じる高周波電圧が第1の負荷回路5に印加される。
【0018】
また、第2の負荷回路6に高周波出力する場合には、駆動回路37により上スイッチ12と下スイッチ13を高周波で交互にオン・オフし、上スイッチ12と下スイッチ13の接続点Bに高周波で変動する電位を発生させる。またこの時、駆動回路39によって駆動回路37と同一の周波数で位相進みの高周波で上スイッチ20と下スイッチ21を交互にオン・オフし、上スイッチ20と下スイッチ21の接続点Dに高周波で変動する電位を発生させる。その駆動回路37と駆動回路39の位相差の駆動により、接続点B・D間に生じる高周波電圧が第2の負荷回路6に印加される。
【0019】
前述のスナバコンデンサ40、41、42、43のうち、スナバコンデンサ40は、直流電源回路2の高電位側の出力端と第1のインバーター回路INV1の接続点Aとの間に挿入され、スナバコンデンサ41は、直流電源回路2の高電位側の出力端と第2のインバーター回路INV2の接続点Bとの間に挿入されている。また、スナバコンデンサ42は、直流電源回路2の高電位側の出力端と第1のインバーター回路INV1の接続点Cとの間に挿入され、スナバコンデンサ43は、直流電源回路2の高電位側の出力端と第2のインバーター回路INV2の接続点Dとの間に挿入されている。これらスナバコンデンサ40、41、42、43は、各インバーター回路INV1、INV2の上・下スイッチのターンオフ時における印加電圧の急増を回避して、テール電流によるスイッチング損失を抑制する。
【0020】
また、本実施の形態の誘導加熱調理器は、1つの放熱部材44と、放熱部材44に取り付けられた温度センサー45とを備えている。放熱部材44は、上面に放熱フィンが設けられ、その下面に第1および第2のパワーモジュール3、4が熱結合された状態で取り付けられている。その放熱部材44の共有化により、2つのパワーモジュール3、4内の2のインバーター回路INV1、INV2あるいは何れか一方から発生する熱を温度差なく均等に放出させることができる。
【0021】
温度センサー45は、例えばサーミスタからなり、放熱部材44の下面のうち2つのパワーモジュール3、4間のほぼ中央に位置する下面に取り付けられている。その温度センサー45により検出された温度は、制御回路46によって2つのインバーター回路INV1、INV2の各スイッチ10〜13、18〜21の許容温度と比較される。本実施の形態においては、放熱部材44を1つとし、これに伴って温度センサー45も1つにして構成の簡単化、コスト低減を図っている。
【0022】
なお、第1および第2のパワーモジュール3、4の各出力端子および共振コンデンサ27、29には大きな負荷電流が流れるため、これらを同一プリント基板上に配置する場合には、そのプリント基板上にその間を接続する太い電流路を確保する必要がある。そのため、一方のパワーモジュールの出力端子に共振コンデンサの接続が集中するとコンパクトに配置することが困難となってプリント基板が大形化する等の問題が生じうるが、本実施の形態では、各パワーモジュールに1つずつの共振コンデンサが接続されるように構成して部品配置を分散させ、プリント基板の大形化の回避を図っている。
【0023】
次に、第1および第2のインバーター回路INV1、INV2の動作について図2乃至図4を参照しながら説明する。
図2は図1の誘導加熱調理器における第1のインバーター回路の駆動信号および出力を示す波形図、図3は図1の誘導加熱調理器における第2のインバーター回路の駆動信号および出力を示す波形図、図4は図1の誘導加熱調理器における第1および第2のインバーター回路の各駆動信号および各出力を示す波形図である。
【0024】
本実施の形態の誘導加熱調理器では、第1および第2の負荷回路5、6は共振周波数を有し、制御回路46は、駆動回路36〜39を制御して第1および第2のインバーター回路INV1、INV2を各負荷回路5、6の共振周波数よりも高い周波数で駆動する。
【0025】
第1の負荷回路5に高周波出力を行う場合は、制御回路46により、駆動回路36を制御して第1のインバーター回路INV1の上スイッチ10と下スイッチ11を交互にオン・オフするとともに、駆動回路38を制御して第1のインバーター回路INV1の上スイッチ18と下スイッチ19を交互にオン・オフする。その際、図2に示すように、駆動回路36から出力される上スイッチ10と下スイッチ11への駆動信号、および駆動回路38から出力される上スイッチ18と下スイッチ19への駆動信号は同一周波数である。駆動回路36からの駆動信号は駆動回路38からの駆動信号より位相が進んでおり、その位相差の分だけ第1の負荷回路5に出力電圧が印加され、ほぼ正弦波状の出力電流が第1の負荷回路5に流れる。なお、その出力電流は、電流検出器30により検出され、制御回路46により読み込まれて目標の電流波形か否か監視されている。
【0026】
また、第2の負荷回路6に高周波出力を行う場合は、制御回路46により、駆動回路39を制御して第2のインバーター回路INV2の上スイッチ20と下スイッチ21を交互にオン・オフするとともに、駆動回路37を制御して第2のインバーター回路INV2の上スイッチ12と下スイッチ13を交互にオン・オフする。この場合は、図3に示すように、駆動回路39から出力される上スイッチ20と下スイッチ21への駆動信号、および駆動回路37から出力される上スイッチ12と下スイッチ13への駆動信号は同一周波数である。駆動回路39からの駆動信号は駆動回路37からの駆動信号より位相が進んでおり、その位相差の分だけ第2の負荷回路6に出力電圧が印加され、前記と同様にほぼ正弦波状の出力電流が第2の負荷回路6に流れる。なお、その出力電流は、電流検出器33により検出され、制御回路46により読み込まれて目標の電流波形か否か監視されている。
【0027】
なお、図3に示すように、2組の上スイッチ12、20と下スイッチ13、21の駆動時の位相差が小さい場合には、位相が先行する上スイッチ20と下スイッチ21のターンオン時に出力電流がすでに転流してハードスイッチングとなり易い。その場合には、スナバコンデンサ43を充電あるいは放電するラッシュ電流もその上スイッチ20と下スイッチ21に流れる。
【0028】
第1および第2の負荷回路5、6に同時に高周波出力を行う場合は、図4に示すように、それぞれ駆動回路36、38と37、39を制御回路46により制御して同一周波数の出力電圧を各負荷回路5、6に印加する。1つの直流電源回路2の出力に接続された第1および第2のインバーター回路INV1、INV2を同時に駆動する場合、各インバーター回路INV1、INV2の動作により直流電源回路2の出力電圧に変動が生じるため、各インバーター回路INV1、INV2の出力が他のインバーター回路の出力の影響を受けて他のインバーター回路の駆動周波数成分も出力に表出し、2つのインバーター回路INV1、INV2の駆動周波数の差分周波数等の振動が各負荷回路5、6等から発生し得る。その差分周波数等の振動を各負荷回路5、6等から生じさせないために、第1および第2のインバーター回路INV1、INV2を同一周波数で駆動している。
【0029】
なお、各インバーター回路INV1、INV2のそれぞれ2組の上・下スイッチのうち、駆動位相が先行する上・下スイッチ10と11および20と21はハードスイッチングとなりやすく、ターンオン時にスナバコンデンサの充電電流・放電電流が流れ易いので、駆動位相が先行するスイッチ群に接続するスナバコンデンサ40、43に、駆動位相が追従するスイッチ群に接続するスイッチ群に接続するスナバコンデンサ41、42よりも容量が小さいものを使用して、ラッシュ電流によりスイッチング素子の損失が過大になるのを防止している。
【0030】
つまり、本実施の形態では、2つのパワーモジュール3、4にそれぞれ容量の小さいスナバコンデンサ40、43と容量の大きいスナバコンデンサ41、42を1つずつ接続している。その結果、本実施の形態では、各パワーモジュール3、4の出力端子に接続するスナバコンデンサ40〜43の容量を同等のもの(大・小1つずつ)としているので、プリント基板における部品配置は、各パワーモジュール3、4の近傍にそれぞれ同等の部品を配置することができ、プリント基板への取付のバランスがよく、容易となる。
【0031】
以上のように本実施の形態においては、第1の負荷回路5に対し各パワーモジュール3、4の1組の上・下スイッチ10と11および18と19を互いに組み合わせて第1のインバーター回路INV1を構成し、第2の負荷回路6に対し各パワーモジュール3、4の1組の上・下スイッチ12と13および20と21を互いに組み合わせて第2のインバーター回路INV2を構成している。これにより、各インバーター回路INV1、INV2を駆動する場合に、そのインバーター回路INV1、INV2で生じる損失を一方のパワーモジュールに集中させることなく分散させることが可能になり、局部的な発熱による故障や出力の制限を極力回避できる使い勝手のよい誘導加熱調理器を提供できる。
【0032】
また、本実施の形態では、2つのパワーモジュール3、4に接続される共振コンデンサ27、29等の電子部品を各パワーモジュール3、4に均等に配分したので、プリント基板への部品配置をバランスよく、コンパクトに配置することができる。
【0033】
実施の形態2.
図5は実施の形態2に係る高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。なお、実施の形態1と同様又は相当部分には同じ符号を付している。
本実施の形態の誘導加熱調理器においては、第1のパワーモジュール3aは、前述した実施の形態1の第1のパワーモジュール3に、スイッチング素子50、51(以下、上・下スイッチ50、51と記す)と、ダイオード52、53(以下、上・下ダイオード52、53と記す)と、スナバコンデンサ60を組み入れて構成されたものである。また、第2のパワーモジュール4aは、前述した実施の形態1の第2のパワーモジュール4に、上・下スイッチ54、55と、上・下ダイオード56、57と、スナバコンデンサ61を組み入れて構成されたものである。
【0034】
第1のパワーモジュール3aの上・下スイッチ50、51は、上・下スイッチ10と11および12と13と同様に、直流電源回路2の出力間に直列に接続され、第1のパワーモジュール3aの上・下ダイオード52、53は、その上・下スイッチ50、51にそれぞれ逆並列に接続されている。第2のパワーモジュール4aの上・下スイッチ54、55は、上・下スイッチ18と19および20と21と同様に、直流電源回路2の出力間に直列に接続され、第2のパワーモジュール4aの上・下ダイオード56、57は、その上・下スイッチ54、55にそれぞれ逆並列に接続されている。
【0035】
第1のパワーモジュール3aの上・下スイッチ50、51および上・下ダイオード52、53と、第2のパワーモジュール4aの上・下スイッチ54、55および上・下ダイオード56、57とで第3のフルブリッジ型インバーター回路INV3(以下、第3のインバーター回路INV3と記す)が構成されている。第1のパワーモジュール3aのスナバコンデンサ60は、直流電源回路2の高電位側の出力端と第3のインバーター回路INV3の接続点Eとの間に挿入され、第2のパワーモジュール4aのスナバコンデンサ61は、直流電源回路2の高電位側の出力端と第3のインバーター回路INV3の接続点Fとの間に挿入されている。
【0036】
第3のインバーター回路INV3の出力端(接続点E、F)には、第3の加熱コイル48とその共振コンデンサ49とから構成される第3の負荷回路47が接続されている。また、第3のインバーター回路INV3には、駆動回路58、59が接続されている。駆動回路58は、制御回路46の制御に基づいて上・下スイッチ50、51を交互にオン・オフし、駆動回路59は、制御回路46の制御に基づいて上・下スイッチ54、55を交互にオン・オフする。
【0037】
また、本実施の形態の誘導加熱調理器には、商用交流電源1から直流電源回路2への入力電流を検出する入力電流検出器62と、直流電源回路2の出力電圧を検出する入力電圧検出器63とが設けられている。また、各パワーモジュール3a、4aは、実施の形態1と同様に、1つの放熱部材44に熱結合されており、放熱部材44の下面には、2つのパワーモジュール3a、4aの間に温度センサー45が設けられている。
【0038】
本実施の形態においては、制御回路46によって、第1乃至第3のインバーター回路INV1、INV2、INV3のうち何れか1回路、又は同時に2回路あるいは全回路が駆動される。制御回路46によって2つあるいは3つのインバーター回路が同時に駆動される場合には、各負荷回路から各駆動周波数の差分周波数等の振動が生じないように同一周波数で駆動される。この場合、制御回路46は、入力電流検出器62により検出された入力電流と入力電圧検出器63により検出された入力電圧とから入力電力を算出し、算出した入力電力が所定の電力となるように制御する。また、制御回路46は、駆動している複数のインバーター回路の出力電流が略同等となるように制御する。
【0039】
以上のように本実施の形態においては、第1の負荷回路5に対し各パワーモジュール3a、4aの1組の上・下スイッチ10と11および18と19を互いに組み合わせて第1のインバーター回路INV1を構成し、第2の負荷回路6に対し各パワーモジュール3a、4aの1組の上・下スイッチ12と13および20と21を互いに組み合わせて第2のインバーター回路INV2を構成している。また、第3の負荷回路60に対し各パワーモジュール3a、4aの1組の上・下スイッチ50と51および54と55を互いに組み合わせて第3のインバーター回路INV3を構成している。これにより、本実施の形態においても、いずれのインバーター回路を使用した場合にも各パワーモジュール3a、4aに損失を分散させることができ、局部的な発熱による故障や出力の制限を極力回避した使い勝手のよい誘導加熱調理器を提供できる。
【0040】
実施の形態3.
前述した実施の形態1、2では、2つのパワーモジュールを有する高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器について説明をしたが、本実施の形態は、3つのパワーモジュールを有する高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器である。
図6は実施の形態3に係る高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。なお、実施の形態1と同様又は相当部分には同じ符号を付している。
【0041】
図において、本実施の形態の誘導加熱調理器は、商用交流電源1と接続される直流電源回路2と、直流電源回路2にそれぞれ接続された第1乃至第3のパワーモジュール100a、100b、100cと、第1および第2のパワーモジュール100a、100bの間に挿入された第1の負荷回路101aと、第2および第3のパワーモジュール100b、100cの間に挿入された第2の負荷回路101bと、第1および第3のパワーモジュール100a、100cの間に挿入された第3の負荷回路101cと、本調理器を制御する制御回路46とを主要部品として備えている。
【0042】
第1のパワーモジュール100aは、直流電源回路2の出力間に2個ずつ直列に接続されたスイッチング素子102aと103aおよび104aと105aと、各スイッチング素子102a〜105aにそれぞれ逆並列に接続された4個のダイオード106a〜109aとで構成されている。第2のパワーモジュール100bは、直流電源回路2の出力間に2個ずつ直列に接続されたスイッチング素子102bと103bおよび104bと105bと、各スイッチング素子102b〜105bにそれぞれ逆並列に接続された4個のダイオード106b〜109bとで構成されている。第3のパワーモジュール100cは、直流電源回路2の出力間に2個ずつ直列に接続されたスイッチング素子102cと103cおよび104cと105cと、各スイッチング素子102c〜105cにそれぞれ逆並列に接続された4個のダイオード106c〜109cとで構成されている。
【0043】
第1のパワーモジュール100aに内蔵されたスイッチング素子102a、103aおよびダイオード106a、107aと、第2のパワーモジュール100bに内蔵されたスイッチング素子102b、103bおよびダイオード106b、107bとで第1のフルブリッジ型インバーター回路INV1が構成されている。また、第2のパワーモジュール100bに内蔵されたスイッチング素子104b、105bおよびダイオード108b、109bと、第3のパワーモジュール100cに内蔵されたスイッチング素子104c、105cおよびダイオード108c、109cとで第2のフルブリッジ型インバーター回路INV2が構成されている。さらに、第1のパワーモジュール100aに内蔵されたスイッチング素子104a、105aおよびダイオード108a、109aと、第3のパワーモジュール100cに内蔵されたスイッチング素子102c、103cおよびダイオード106c、107cとで第3のフルブリッジ型インバーター回路INV3が構成されている。
【0044】
前述の第1の負荷回路101aは、第1の加熱コイル112aとその共振コンデンサ113aとで構成され、第1のフルブリッジ型インバーター回路INV1の出力端(接続点A、C)と接続されている。第2の負荷回路101bは、第2の加熱コイル112bとその共振コンデンサ113bとから構成され、第2のフルブリッジ型インバーター回路INV2の出力端(接続点D、F)と接続されている。第3の負荷回路101cは、第1の加熱コイル112cとその共振コンデンサ113cとで構成され、第3のフルブリッジ型インバーター回路INV3の出力端(接続点B、E)と接続されている。
【0045】
本実施の形態においては、図に示すように、各パワーモジュール100a、100b、100cの出力端に共振コンデンサ113a、113b、113cを1つずつ接続するようにしたので、特定のパワーモジュールの出力端に共振コンデンサの接続が集中することがない。これにより、プリント基板上における部品配置を分散させることができ、プリント配線を容易にし、また、プリント基板上の発熱部位の集中の回避を図ることができる。
【0046】
なお、各パワーモジュール100a、100b、100cは、図6には示していないが、1つの放熱部材44に熱結合されている。また、放熱部材44の下面には、各パワーモジュール100a、100b、100cから放熱される熱の温度を検出する温度センサー45が設けられている。
【0047】
以上のように本実施の形態においては、2個直列の2組のスイッチング素子を内蔵するパワーモジュール100a、100b、100cを3つ有し、3つのフルブリッジ型インバーター回路INV1、INV2、INV3をそれぞれ異なるパワーモジュールの2個直列のスイッチング素子を一組ずつ使用して構成している。これにより、何れのフルブリッジ型インバーター回路を使用した場合にも複数のパワーモジュールに損失を分散させることができ、局部的な発熱による故障や出力の制限を極力回避した使い勝手のよい誘導加熱調理器を提供できる。
【0048】
実施の形態4.
図7は実施の形態3に係る高周波電源装置を備えた誘導加熱調理器の回路構成を示す図である。なお、実施の形態1と同様又は相当部分には同じ符号を付している。
本実施の形態の誘導加熱調理器の回路構成は、スナバコンデンサがないだけで、図1で説明した実施の形態1と同様である。
【0049】
第1のパワーモジュール3’に設けられた4つのスイッチング素子10’〜13’には、SiC等のワードバンドギャップ半導体で構成されたMOSFETが使用されている。また、その各スイッチング素子10’〜13’にそれぞれ逆並列に接続されたダイオード14’〜17’には、SBD(ショットキーバリアダイオード)が用いられている。また、第2のパワーモジュール4’に設けられた4つのスイッチング素子18’〜21’には、前述のスイッチング素子10’〜13’と同様に、SiC等のワイドバンドギャップ半導体で構成されたMOSFETが使用されている。また、その各スイッチング素子18’〜21’にそれぞれ逆並列に接続されたダイオード22’〜25’には、前述のダイオード14’〜17’と同様に、SBD(ショットキーバリアダイオード)が用いられている。
【0050】
本実施の形態においては、前述したようにスナバコンデンサを省略しているが、SiC等のワイドバンドギャップ半導体のMOSFETには、従来のSi半導体のIGBTのような大きなテール電流が流れない。そのため、スナバコンデンサを省略しても各スイッチング素子10’〜13’と18’〜21’のターンオフ時のスイッチング損失を少なく抑制することができる。
【0051】
ハードスイッチングした際においても、スイッチング速度が速く、また、スナバコンデンサへの充電電流・放電電流が流れない(スナバコンデンサが接続されていない)。そのため、スイッチング素子10’〜13’と18’〜21’における損失が少ない。ダイオード14’〜17’と22’〜25’もワイドバンドギャップ半導体のSBDであるので、逆回復電流が小さく、損失が小さくなる。なお、ワイドバンドギャップ半導体としては、SiC(炭化珪素)の他に、窒化ガリウム系材料やダイヤモンドからなる半導体でもよい。
【0052】
以上のように本実施の形態においては、第1の負荷回路5に対し各パワーモジュール3’、4’の1組のスイッチング素子10’と11’および18’と19’を互いに組み合わせて第1のインバーター回路INV1を構成し、第2の負荷回路6に対し各パワーモジュール3’、4’の1組のスイッチング素子12’と13’および20’と21’を互いに組み合わせて第2のインバーター回路INV2を構成している。これにより、各インバーター回路INV1、INV2を駆動する場合に、そのインバーター回路INV1、INV2で生じる損失を一方のパワーモジュールに集中させることなく分散させることができ、局部的な発熱による故障や出力の制限を極力回避することが可能になる。また、2つのパワーモジュール3’、4’にワイドバンドギャップ半導体を使用して損失を低減して加熱効率を改善することができる。さらに、ワイドバンドギャップ半導体は耐熱性も高いので、各スイッチング素子の高温化による加熱出力制限を極力回避することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 商用交流電源、 2 直流電源回路、3、3a、3’ 第1のパワーモジュール、4、4a、4’ 第2のパワーモジュール、5 第1の負荷回路、6 第2の負荷回路、30、33 電流検出器、31、34 電圧検出器、32、35 乗算器、36〜39 駆動回路、40〜43 スナバコンデンサ、44 放熱部材、45 温度センサー、46 制御回路、58、59 駆動回路、60 第3の負荷回路、60、61 スナバコンデンサ、62 入力電流検出器、63 入力電圧検出器、100a 第1のパワーモジュール、100b 第2のパワーモジュール、100c 第3のパワーモジュール、101a 第1の負荷回路、101b 第2の負荷回路、101c 第3の負荷回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流に変換する直流電源回路と、
前記直流電源回路の出力間に直列に接続された2個のスイッチング素子を1組として複数組有する2以上のパワーモジュールとを備え、
負荷回路に対し、前記2以上のパワーモジュールのうち2つのパワーモジュールの1組のスイッチング素子を互いに組み合わせてフルブリッジ型インバーター回路を構成することを特徴とする高周波電源装置。
【請求項2】
前記各パワーモジュールが熱結合された放熱部材と、
前記放熱部材の各パワーモジュール間の面に取り付けられ、各パワーモジュールからの放熱による温度を検出する温度検出手段と
を備えたことを特徴とする請求項1記載の高周波電源装置。
【請求項3】
前記各パワーモジュールのスイッチング素子に、ワイドバンドギャップ半導体を使用したことを特徴とする請求項1又は2記載の高周波電源装置。
【請求項4】
前記ワイドバンドギャップ半導体は、炭化水素、窒化ガリウム系材料、あるいはダイヤモンドからなることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の高周波電源装置。
【請求項5】
請求項1乃至4記載の高周波電源装置を備えたことを特徴とする誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−119235(P2012−119235A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269574(P2010−269574)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】