説明

高圧噴付用撥水処理剤、および、車両表面の撥水処理方法

【課題】塗布後の濯ぎ処理、および、拭き上げなどの仕上げ処理を不要とし、撥水性および持続性に優れる高圧噴付用撥水処理剤、および、その高圧噴付用撥水処理剤を用いた車両表面の撥水処理方法を提供すること。
【解決手段】
高圧噴付用撥水処理剤に、アミノ変性シリコーンと、トリメチルシロキシケイ酸と、低級1価アルコールとを含有させる。そして、車両表面を水洗し(水洗工程)、その後、水分が残存する車両表面に、この高圧噴付用撥水処理剤を高圧で噴き付ける(高圧噴付工程)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両表面の撥水処理に用いられる高圧噴付用撥水処理剤、および、車両表面の撥水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車などの車両表面には、撥水性を付与するために、撥水処理剤を用いて撥水処理している。
【0003】
このような撥水処理剤としては、例えば、シリコーンオイルとエステル系ワックスとを含むワックス剤などがよく知られているが、このようなワックス剤は、拭き上げなどの仕上げ処理を必要とし、その撥水処理方法が煩雑である。
【0004】
そのため、近年では、拭き上げなどの仕上げ処理を不要とする撥水処理剤が求められており、このような撥水処理剤として、例えば、アミノ変性シリコーンオイルと、アンモニウム塩変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーンのエステル化物、アミノポリエーテル変性シリコーンおよびアミドポリエーテル変性シリコーンからなる群から選択される少なくとも1種の変性シリコーンからなる安定剤とを含有する水性硬表面用撥水コート剤が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−206478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の水性硬表面用撥水コート剤は、塗布、水洗後に塗布跡を残さず、撥水性の塗膜を形成するものの、その撥水性は十分ではなく、さらには、撥水性を長期間にわたって持続できないという不具合がある。
【0007】
本発明の目的は、拭き上げなどの仕上げ処理を不要とし、撥水性および持続性に優れる高圧噴付用撥水処理剤、および、その高圧噴付用撥水処理剤を用いた車両表面の撥水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の高圧噴付用撥水処理剤は、アミノ変性シリコーンと、トリメチルシロキシケイ酸と、低級1価アルコールとを含有することを特徴としている。
【0009】
また、本発明の高圧噴付用撥水処理剤は、さらに、多価アルコールを含有することが好適である。
【0010】
また、本発明の高圧噴付用撥水処理剤では、トリメチルシロキシケイ酸の配合割合が、アミノ変性シリコーン1重量部に対して、0.5〜6重量部であることが好適である。
【0011】
また、本発明の高圧噴付用撥水処理剤では、アミノ変性シリコーンのアミン当量が、300以上5000以下であることが好適である。
【0012】
また、本発明の高圧噴付用撥水処理剤では、アミノ変性シリコーンが、アミン当量が300以上1000未満の第1アミノ変性シリコーンと、アミン当量が1000以上5000以下の第2アミノ変性シリコーンとを含有することが好適である。
【0013】
また、本発明の高圧噴付用撥水処理剤は、さらに、ジメチルポリシロキサンを含有することが好適である。
【0014】
また、本発明の高圧噴付用撥水処理剤では、ジメチルポリシロキサンは、その両末端が水酸基により変性されており、ジメチルポリシロキサンの配合割合が、アミノ変性シリコーン1重量部に対して、0.2〜5重量部であることが好適である。
【0015】
また、本発明の車両表面の撥水処理方法は、車両表面を水洗する水洗工程と、前記水洗工程の後、水分が残存する前記表面に、請求項1〜5のいずれかに記載の高圧噴付用撥水処理剤を高圧で噴き付ける高圧噴付工程とを備えることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の車両表面の撥水処理方法では、前記高圧噴付工程において、前記表面に、前記高圧噴付用撥水処理剤を0.2MPa以上の噴付圧力で噴き付けることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の高圧噴付用撥水処理剤によれば、水分が残存する被処理面においても、高圧噴付用撥水処理剤を高圧で噴き付け、必要により水で濯ぐのみでムラなく仕上げることができ、拭き上げなどの仕上げ処理を不要として被処理面に塗布することができる。
【0018】
また、本発明の高圧噴付用撥水処理剤を被処理面に塗布すれば、被処理面に優れた撥水性を付与することができ、さらには、その撥水性を長期間にわたって持続することができる。
【0019】
加えて、本発明の高圧噴付用撥水処理剤によれば、塗装面、ガラス面などのいずれにも撥水性を付与することができるため、塗装面およびガラス面を同時に処理することができ、作業性およびコストに優れる。
【0020】
そして、本発明の車両表面の撥水処理方法では、このような高圧噴付用撥水処理剤を車両表面に高圧で噴き付けることによって塗布する。そのため、本発明の車両表面の撥水処理方法によれば、拭き上げなど煩雑な仕上げ処理を不要とし、撥水性および持続性に優れる車両表面を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の高圧噴付用撥水処理剤は、必須成分として、アミノ変性シリコーンと、トリメチルシロキシケイ酸と、低級1価アルコールとを含有する。
【0022】
本発明において、アミノ変性シリコーンは、ジメチルポリシロキサンなどのオルガノポリシロキサンの側鎖および/または末端に、アミノ基(例えば、−NH、−RNHR´NH(RおよびR´はアルキレン基を示す。)など)が導入されている反応性シリコーンである。アミノ基の導入位置により、側鎖型、両末端型、片末端型、側鎖両末端型などに分類され、本発明においては、いずれをも用いることができ、その目的および用途によって、適宜選択される。好ましくは、側鎖型のアミノ変性シリコーンが挙げられる。
【0023】
また、側鎖型のアミノ変性シリコーンは、通常、その末端に、メチル基、フェニル基または水素原子を有するが、例えば、アミノ変性シリコーンの末端が、さらに、置換基(アミノ基を除く。)により変性されていてもよい。
【0024】
そのようなアミノ変性シリコーンとしては、例えば、両末端が水酸基により変性されたアミノ変性シリコーン、両末端がアルコキシ基により変性されたアミノ変性シリコーンなどが挙げられる。
【0025】
アミノ変性シリコーンを配合することにより、撥水処理される被処理面に対するトリメチルシロキシケイ酸の定着性を向上させることができる。
【0026】
アミノ変性シリコーンのアミン当量は、例えば、50以上20000未満、好ましくは、350以上5000未満、より好ましくは、300以上5000以下である。
【0027】
なお、アミン当量は、例えば、塩酸を用いた中和滴定法などにより、測定することができる。
【0028】
より具体的には、例えば、試料約1gにイソプロピルアルコールとトルエンとの1:1混合溶液を50mL加え、充分に攪拌した後、0.1N塩酸を用いて自動滴定装置にて中和滴定するとともに、中和に要する塩酸使用量を測定し、次式によりアミン当量を算出する。
アミン当量=試料量(g)×10000/0.1N塩酸使用量(mL)×力価
アミノ変性シリコーンのアミン当量が上記下限未満であると、撥水処理剤を被処理面に塗布したときには、その被処理面に撥水処理剤が付着するが、その後、水で濯ぐ場合において、撥水処理剤が流れてしまう場合がある。
【0029】
一方、アミン当量が上記上限を超過すると、高圧噴付用撥水処理剤の付着性が不十分となり、高圧噴付用撥水処理剤を塗布できない場合がある。
【0030】
また、本発明においては、アミノ変性シリコーンは、上記のアミノ変性シリコーンのうち、1種のみを含有することもできるが、好ましくは、アミン当量が1000未満の第1アミノ変性シリコーンと、アミン当量が1000以上の第2アミノ変性シリコーンとを含有する。
【0031】
第1アミノ変性シリコーンは、とりわけ、ガラス面に対するトリメチルシロキシケイ酸の定着性を向上させ、ガラス面に対して撥水性を付与するアミノ変性シリコーンとして、配合される。
【0032】
第1アミノ変性シリコーンとしては、上記と同様のアミノ変性シリコーンが挙げられる。
【0033】
第1アミノ変性シリコーンのアミン当量は、上記の通り1000未満、例えば、300以上1000未満であり、好ましくは、350以上900未満である。
【0034】
また、第1アミノ変性シリコーンとしては、側鎖型、両末端型、片末端型、側鎖両末端型などのいずれをも用いることができるが、好ましくは、側鎖型のアミノ変性シリコーン、より好ましくは、両末端がアルコキシ基により変性された側鎖型のアミノ変性シリコーンが挙げられる。
【0035】
第1アミノ変性シリコーンとして、両末端がアルコキシ基により変性された側鎖型のアミノ変性シリコーンを用いれば、ガラス面に対するトリメチルシロキシケイ酸の定着性を、より向上させることができる。
【0036】
第2アミノ変性シリコーンは、とりわけ、車体(塗装面)に対するトリメチルシロキシケイ酸の定着性を向上させ、車体(塗装面)に対して撥水性を付与するアミノ変性シリコーンとして、配合される。
【0037】
第2アミノ変性シリコーンとしては、上記と同様のアミノ変性シリコーンが挙げられ、そのアミン当量は、上記の通り1000以上、例えば、1000以上5000以下であり、好ましくは、1000以上3000以下である。
【0038】
また、第2アミノ変性シリコーンとしては、側鎖型、両末端型、片末端型、側鎖両末端型などのいずれをも用いることができるが、好ましくは、側鎖型のアミノ変性シリコーン、より好ましくは、両末端が変性されていない(両末端にメチル基、フェニル基または水素原子を有する)側鎖型のアミノ変性シリコーンが挙げられる。
【0039】
また、アミノ変性シリコーン(第1アミノ変性シリコーンおよび第2アミノ変性シリコーンを含む。以下同様。)の動粘度は、例えば、20〜5000mm/s、好ましくは、200〜2000mm/sである。
【0040】
アミノ変性シリコーンの動粘度が上記下限未満であると、車両表面への付着性が低下し、撥水性が低下する場合がある。
【0041】
一方、アミノ変性シリコーンの動粘度が上記上限を超過すると、粘性が高くなり、塗布ムラが発生しやすくなる場合がある。
【0042】
このようなアミノ変性シリコーンは、市販品として入手可能であり、例えば、KF−859(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度60mm/s、アミン当量6000、信越化学工業社製)、KF−393(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度70mm/s、アミン当量350、信越化学工業社製)、KF−860(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度250mm/s、アミン当量7600、信越化学工業社製)、KF−880(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度650mm/s、アミン当量1800、信越化学工業社製)、KF−8004(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度800mm/s、アミン当量1500、信越化学工業社製)、KF−8002(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度1100mm/s、アミン当量1700、信越化学工業社製)、KF−8005(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度1200mm/s、アミン当量11000、信越化学工業社製)、KF−867(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度1300mm/s、アミン当量1700、信越化学工業社製)、KF−869(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度1500mm/s、アミン当量3800、信越化学工業社製)、KF−861(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度3500mm/s、アミン当量2000、信越化学工業社製)、L−653(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度75mm/s、アミン当量8300、旭化成ワッカーシリコーン社製)、L−655(側鎖型(両末端アルコキシ基)、動粘度40mm/s、アミン当量700、旭化成ワッカーシリコーン社製)、L−656(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度25mm/s、アミン当量800、旭化成ワッカーシリコーン社製)、WR−301(側鎖型(両末端アルコキシ基)、動粘度1000mm/s、アミン当量3700、旭化成ワッカーシリコーン社製)、WR−1100(側鎖型(両末端アルコキシ基)、動粘度5000mm/s、アミン当量7000、旭化成ワッカーシリコーン社製)、WR−1300(側鎖型(両末端アルコキシ基)、動粘度1000mm/s、アミン当量3300、旭化成ワッカーシリコーン社製)、WR−1600(側鎖型(両末端アルコキシ基)、動粘度1000mm/s、アミン当量1700、旭化成ワッカーシリコーン社製)、SF−8417(側鎖型(両末端メチル基)、動粘度1200mm/s、アミン当量1800、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)などが用いられる。
【0043】
これらアミノ変性シリコーンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0044】
なお、上記の市販品のアミノ変性シリコーンのうち、アミン当量が1000未満のものは、第1アミノ変性シリコーンに分類され、また、アミン当量が1000以上のものは、第2アミノ変性シリコーンに分類される。
【0045】
第1アミノ変性シリコーンとして、好ましくは、KF−393(アミン当量350)、L−655(アミン当量700)、L−656(アミン当量800)が挙げられる。
【0046】
また、第2アミノ変性シリコーンとして、好ましくは、KF−880(アミン当量1800)、KF−8004(アミン当量1500)、KF−8002(アミン当量1700)、KF−867(アミン当量1700)、WR−1600(アミン当量1700)、SF−8417(アミン当量1800)が挙げられる。
【0047】
アミノ変性シリコーンの配合割合(第1アミノ変性シリコーンおよび第2アミノ変性シリコーンを含む場合には、それらの総量。以下同様。)は、高圧噴付用撥水処理剤の総量100重量部に対して、例えば、0.01〜5重量部、好ましくは、0.05〜2重量部である。
【0048】
また、高圧噴付用撥水処理剤を、後述するように希釈して用いる場合には、アミノ変性シリコーンの配合割合は、高圧噴付用撥水処理剤(希釈後)の総量100重量部に対して、例えば、0.00001〜0.5重量部、好ましくは、0.00005〜0.2重量部である。
【0049】
アミノ変性シリコーンの配合割合が上記下限未満であると、十分な撥水性が得られない場合がある。
【0050】
一方、アミノ変性シリコーンの配合割合が上記上限を超過すると、撥水処理したときに、高圧噴付用撥水処理剤の塗布ムラが多くなる場合がある。
【0051】
また、アミノ変性シリコーンが第1アミノ変性シリコーンおよび第2アミノ変性シリコーンを配合する場合において、それらの配合割合は、第1アミノ変性シリコーン1重量部に対して、第2アミノ変性シリコーンが、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは、0.5〜2重量部である。
【0052】
第1アミノ変性シリコーンおよび第2アミノ変性シリコーンの配合割合が上記範囲であれば、ガラス面および車体(塗装面)のいずれの面に対しても、良好に撥水性を付与することができる。
【0053】
本発明において、トリメチルシロキシケイ酸は、高圧噴付用撥水処理剤に撥水性を付与するための成分であって、例えば、下記式(1)で示される。
【0054】
((CHSiO1/2(SiO (1)
(式中、xは、1〜3の範囲の組成比を示し、yは、0.5〜8の範囲の組成比を示す。)
本発明において、トリメチルシロキシケイ酸は、好ましくは、溶剤に溶解され、かつ界面活性剤によって水に乳化分散されたエマルション(乳化液)として配合されるか、または、溶剤に溶解され、かつ界面活性剤によって水中に懸濁されたサスペンション(懸濁液)として配合される。好ましくは、エマルションとして配合される。
【0055】
トリメチルシロキシケイ酸の溶剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーンオイル)およびその変性体や、環状シリコーンなどの各種ポリシロキサン、例えば、流動パラフィン、スピンドル油、各種アルコール類、各種炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0056】
トリメチルシロキシケイ酸のエマルションやサスペンションには、溶剤に対する乳化作用や、水中での懸濁作用を有する各種の界面活性剤を用いることができる。このような界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、および両性界面活性剤が挙げられる。
【0057】
アニオン界面活性剤としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸塩、ポリオキシエチレン・アルキルエーテル・カルボン酸塩、N−アシルサルコシン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩などのカルボン酸型、例えば、ジアルキルスルホ・こはく酸塩、アルカンスルホン酸塩、α−オレフィン・スルホン酸塩、直鎖アルキルベンゼン・スルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩−ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレン・スルホン酸塩、N−メチル−N−アシルタウリンなどのスルホン酸型、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレン・アルキルエーテル・硫酸塩、油脂硫酸エステル塩などの硫酸エステル型、例えば、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレン・アルキルエーテル・リン酸塩、ポリオキシエチレン・アルキルフェニルエーテル・リン酸塩などのリン酸エステル型、などの各種のアニオン界面活性剤が挙げられる。
【0058】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、しょ糖脂肪酸エステルなどのエステル型、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどのエーテル型、例えば、脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタンなどのエステル・エーテル型、例えば、脂肪酸アルカノールアミドなどのアルカノールアミド型、アルキルポリグルコシド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミン、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、などの各種のノニオン界面活性剤が挙げられる。
【0059】
カチオン界面活性剤としては、例えば、モノアルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、トリアルキルアミン塩などのアルキルアミン塩型、例えば、ハロゲン化トリメチルアンモニウム、ハロゲン化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルベンジルジメチルアンモニウムなどの第4級アンモニウム塩型、などの各種のカチオン界面活性剤が挙げられる。
【0060】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン、脂肪酸アミドプロピルベタインなどのカルボキシベタイン型、例えば、イミダゾリン誘導体型、グリシン型、アミンオキシド型、などの各種の両性界面活性剤が挙げられる。
【0061】
また、高圧噴付用撥水処理剤がジメチルポリシロキサンエマルション(後述)を含有する場合において、そのジメチルポリシロキサンエマルション(後述)に用いられる界面活性剤がアニオン界面活性剤またはカチオン界面活性剤である場合には、トリメチルシロキシケイ酸のエマルションまたはサスペンションに用いられる界面活性剤は、好ましくは、ノニオン界面活性剤であるか、あるいは、ジメチルポリシロキサンエマルション(後述)に用いられる界面活性剤と同じタイプの界面活性剤である。
【0062】
トリメチルシロキシケイ酸のエマルションまたはサスペンション中でのトリメチルシロキシケイ酸の含有割合は、特に限定されないが、トリメチルシロキシケイ酸のエマルションまたはサスペンションの総量に対し、好ましくは、10〜80重量%であり、さらに好ましくは、20〜60重量%である。
【0063】
トリメチルシロキシケイ酸の含有割合が上記下限未満であると、高圧噴付用撥水処理剤中でのトリメチルシロキシケイ酸の含有割合が低下するため、被処理面に対する撥水性付与効果や、その持続性付与効果が不十分になる場合がある。
【0064】
一方、トリメチルシロキシケイ酸の含有割合が上記上限を超過すると、上記エマルションまたはサスペンション中でのトリメチルシロキシケイ酸の分散性や、高圧噴付用撥水処理剤中でのトリメチルシロキシケイ酸の分散性が低下するため、高圧噴付用撥水処理剤の処理時に塗布ムラを生じる場合がある。
【0065】
また、トリメチルシロキシケイ酸のエマルションが、トリメチルシロキシケイ酸を溶剤で溶解後、界面活性剤によって水に乳化分散されている場合において、溶剤は、トリメチルシロキシケイ酸を溶解するために必要な量を含有していればよい。
【0066】
なお、溶剤にジメチルポリシロキサンが含まれる場合には、そのジメチルポリシロキサンは、後述する任意成分を兼ねる。そのような場合において、ジメチルポリシロキサンの含有量は、必要に応じて適宜調整される。
【0067】
トリメチルシロキシケイ酸のエマルションまたはサスペンションにおいて、界面活性剤は、トリメチルシロキシケイ酸、または、そのトリメチルシロキシケイ酸が溶剤に溶解された溶解液を乳化するために必要な量を含有していればよい。
【0068】
トリメチルシロキシケイ酸のエマルションまたはサスペンションは、トリメチルシロキシケイ酸および上記した界面活性剤を、適宜の割合で混合し、攪拌しながら、この混合物に徐々に水を加えることにより、調製することができる。
【0069】
また、トリメチルシロキシケイ酸のエマルションまたはサスペンションは、市販品として入手可能である。具体的には、例えば、KM−9717(不揮発分60重量%、アニオン性、低粘度シリコーン含有、信越化学工業社製)、X−52−8005(不揮発分59重量%、ノニオン性、低粘度シリコーン含有、信越化学工業社製)、R−2701(有効成分40重量%、アニオン性、旭化成ワッカーシリコーン社製)などが挙げられる。
【0070】
これらトリメチルシロキシケイ酸は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0071】
トリメチルシロキシケイ酸として、好ましくは、X−52−8005が挙げられる。
【0072】
トリメチルシロキシケイ酸の配合割合は、高圧噴付用撥水処理剤の総量100重量部に対して、固形分換算で、例えば、0.001〜10重量部、好ましくは、0.05〜5重量部である。
【0073】
また、高圧噴付用撥水処理剤を、後述するように希釈して用いる場合には、トリメチルシロキシケイ酸の配合割合は、高圧噴付用撥水処理剤(希釈後)の総量100重量部に対して、固形分換算で、例えば、0.000001〜1重量部、好ましくは、0.00005〜0.5重量部である。
【0074】
トリメチルシロキシケイ酸の配合割合が、上記下限未満であると、撥水性が低下する場合がある。
【0075】
一方、トリメチルシロキシケイ酸の配合割合が、上記上限を超過すると、塗布ムラが発生する場合がある。
【0076】
また、トリメチルシロキシケイ酸の配合割合は、アミノ変性シリコーン1重量部に対して、固形分換算で、例えば、0.2〜20重量部、好ましくは、0.5〜10重量部、より好ましくは、0.8〜6重量部、とりわけ好ましくは、0.8〜3重量部である。
【0077】
トリメチルシロキシケイ酸のアミノ変性シリコーンに対する配合割合が、上記下限未満であると、撥水性が低下する場合がある。
【0078】
一方、トリメチルシロキシケイ酸のアミノ変性シリコーンに対する配合割合が、上記上限を超過すると、車両表面へのトリメチルシロキシケイ酸の付着性が低下する場合がある。
【0079】
本発明において、低級1価アルコールとしては、例えば、炭素数1〜3の1価アルコールが挙げられ、より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール(2−プロパノール)などが挙げられる。
【0080】
これら低級1価アルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0081】
低級1価アルコールとして、好ましくは、イソプロパノールが挙げられる。
【0082】
低級1価アルコールを配合することにより、その低級1価アルコールにアミノ変性シリコーンを溶解させるとともに、撥水処理において被処理面に残存する水分を凝集させることができ、これによって、アミノ変性シリコーンの被処理面への付着性を向上させることができる。
【0083】
また、低級1価アルコールを配合することにより、視覚的にも優れた撥水性を示すことができ、良好な外観を得ることができる。
【0084】
さらには、低級1価アルコールを配合することにより、トリメチルシロキシケイ酸のエマルションまたはサスペンションを破壊することができ、トリメチルシロキシケイ酸の被処理面に対する付着性を向上させることができる。
【0085】
低級1価アルコールの配合割合は、高圧噴付用撥水処理剤の総量100重量部に対して、例えば、5〜40重量部、好ましくは、10〜30重量部である。
【0086】
また、高圧噴付用撥水処理剤を、後述するように希釈して用いる場合には、低級1価アルコールの配合割合は、高圧噴付用撥水処理剤(希釈後)の総量100重量部に対して、例えば、0.005〜4重量部、好ましくは、0.01〜3重量部である。
【0087】
低級1価アルコールの配合割合が、上記下限未満であると、水分の凝集効果を十分に発現できない場合がある。
【0088】
一方、低級1価アルコールの配合割合が、上記上限を超過すると、低級1価アルコールが被処理面に浸透する場合があり、例えば、被処理面が塗装されている場合などには、低級1価アルコールがその塗装膜に浸透して、塗装を浸食する場合がある。
【0089】
また、本発明の高圧噴付用撥水処理剤は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、例えば、多価アルコールや、ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーンオイル)などを含有することもできる。
【0090】
本発明において、多価アルコールは、高圧噴付用撥水処理剤に配合される任意成分であって、アミノ変性シリコーンの塗りムラの発生を抑制するために配合される。
【0091】
多価アルコールとしては、例えば、炭素数1〜3の2価以上、好ましくは、2〜3価のアルコール類が挙げられる。
【0092】
このような多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、メチルセロソルブなどの2価アルコール、例えば、グリセリンなどの3価アルコールなどが挙げられる。
【0093】
これら多価アルコールは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0094】
多価アルコールとして、好ましくは、3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、グリセリンが挙げられる。
【0095】
高圧噴付用撥水処理剤が多価アルコールを含有する場合には、多価アルコールの配合割合は、高圧噴付用撥水処理剤の総量100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部、好ましくは、1〜5重量部である。
【0096】
また、高圧噴付用撥水処理剤を、後述するように希釈して用いる場合には、多価アルコールの配合割合は、高圧噴付用撥水処理剤(希釈後)の総量100重量部に対して、例えば、0.0001〜1重量部、好ましくは、0.001〜0.5重量部である。
【0097】
多価アルコールの配合割合が、上記下限未満であると、多価アルコールによる塗りムラの低減効果を十分に発現できない場合がある。
【0098】
一方、多価アルコールの配合割合が、上記上限を超過すると、高圧噴付用撥水処理剤の濡れ性が大きくなり、撥水性が低下する場合がある。
【0099】
本発明において、ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーンオイル)は、高圧噴付用撥水処理剤に配合される任意成分であって、被処理面に艶を出すため、および、高圧噴付用撥水処理剤を塗り伸ばしやすくし、塗布ムラが生じた場合に、高圧噴付用撥水処理剤を塗り伸ばすことによってその塗布ムラを低減させやすくするために、配合される。
【0100】
このようなジメチルポリシロキサンは、−(Si(CH−O)−の単位構造を有する高分子化合物であり、−(Si(CH−O)−の鎖が直鎖状である直鎖状ジメチルポリシロキサン、および、−(Si(CH−O)−の鎖が環状である環状ジメチルポリシロキサンのいずれも含まれる。
【0101】
また、ジメチルポリシロキサンは、その側鎖および/または末端が置換基により変性されていてもよい。そのようなジメチルポリシロキサン(変性ジメチルポリシロキサン)としては、例えば、水酸基変性ジメチルポリシロキサン(例えば、両末端が水酸基により変性されたジメチルポリシロキサンなど)、アルキル変性ジメチルポリシロキサン、アルキル/アラルキル変性ジメチルポリシロキサン、アルキル/ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、高級脂肪酸変性ジメチルポリシロキサン、フルオロアルキル変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、アルコール変性ジメチルポリシロキサンなどが挙げられる。
【0102】
ジメチルポリシロキサンとして、好ましくは、変性ジメチルポリシロキサンが挙げられ、より好ましくは、水酸基変性ジメチルポリシロキサン、さらに好ましくは、両末端が水酸基により変性されたジメチルポリシロキサンが挙げられる。
【0103】
ジメチルポリシロキサンとして、両末端が水酸基により変性されたジメチルポリシロキサンを用いれば、車体(塗装面)およびガラス面のいずれにおいても優れた撥水性を付与することができる。さらには、ガラス面の滑り性を確保することができ、例えば、ワイパーなどを良好に作動させることができる。
【0104】
高圧噴付用撥水処理剤において、ジメチルポリシロキサンは、好ましくは、エマルション(乳化液)として配合される。
【0105】
ジメチルポリシロキサンエマルションには、ジメチルポリシロキサンの乳化作用を有する各種の界面活性剤を用いることができる。このような界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、および両性界面活性剤が挙げられる。具体的には、上記したトリメチルシロキシケイ酸のエマルションまたはサスペンションに用いられる界面活性剤と同様のものが挙げられる。
【0106】
ジメチルポリシロキサンエマルション中でのジメチルポリシロキサンの含有割合は、特に限定されず、適宜の割合でよい。
【0107】
また、ジメチルポリシロキサンエマルションにおいて、界面活性剤は、ジメチルポリシロキサンを乳化させるために必要な量を含有していればよい。
【0108】
ジメチルポリシロキサンのエマルションは、ジメチルポリシロキサンおよび上記した界面活性剤を、適宜の割合で混合し、攪拌しながら、この混合物に徐々に水を加えることにより、調製することができる。
【0109】
また、ジメチルポリシロキサン(ジメチルシリコーンオイル)のエマルションは、市販品として入手可能である。具体的には、例えば、IE−7045(ジメチルシリコーンオイルをノニオン界面活性剤で水に乳化分散させたもの、不揮発分35重量%、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、SM 7036 EX(ストレートジメチルシリコーンオイルをノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とで水に乳化分散させたもの、不揮発分38重量%、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、P2003(ジメチルシリコーンオイルを、ノニオン界面活性剤とアニオン界面活性剤とで水に乳化分散させたもの、有効成分量55重量%、旭化成ワッカーシリコーン社製)、SLJ−1320(ジメチルシリコーンオイルを、ノニオン界面活性剤で水に乳化分散させたもの、有効成分量60重量%、旭化成ワッカーシリコーン社製)、XS65−C2173(両末端が水酸基により変性されたジメチルポリシロキサンを、ノニオン界面活性剤で水に乳化分散させたもの、有効成分量70重量%、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製)などが挙げられる。
【0110】
高圧噴付用撥水処理剤がジメチルポリシロキサンを含有する場合には、ジメチルポリシロキサンの配合割合は、アミノ変性シリコーン1重量部に対して、固形分換算で、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは、0.2〜5重量部、より好ましくは、0.5〜3重量部である。
【0111】
ジメチルポリシロキサンのアミノ変性シリコーンに対する配合割合が上記下限未満であると、ガラス面の滑り性を確保することができず、ガラス面においてワイパーなどを円滑に摺動させることができない場合がある。
【0112】
ジメチルポリシロキサンのアミノ変性シリコーンに対する配合割合が上記上限を超過すると、塗布ムラが被処理面に貼着し、外観を損ねる場合がある。
【0113】
また、ジメチルポリシロキサンの配合割合は、高圧噴付用撥水処理剤の総量100重量部に対して、固形分換算で、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは、0.2〜2重量部である。
【0114】
また、高圧噴付用撥水処理剤を、後述するように希釈して用いる場合には、ジメチルポリシロキサンの配合割合は、高圧噴付用撥水処理剤(希釈後)の総量100重量部に対して、固形分換算で、例えば、0.0001〜0.5重量部、好ましくは、0.0002〜0.2重量部である。
【0115】
ジメチルポリシロキサンの配合割合が、上記下限未満であると、被処理面に与えられる艶が十分でない場合や、塗布ムラが被処理面に貼着し、その塗布ムラを塗り伸ばせなくなる場合がある。
【0116】
一方、ジメチルポリシロキサンの配合割合が、上記上限を超過すると、乳化に用いる界面活性剤の影響により、被処理面の撥水性が低下する場合がある。
【0117】
また、本発明の高圧噴付用撥水処理剤には、その他に、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、例えば、酸、粘度調整剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、水溶性溶剤、染料、蛍光顔料、着色剤、香料、防腐剤などの添加剤を、必要に応じて適宜、配合することができる。
【0118】
そして、本発明の高圧噴付用撥水処理剤は、アミノ変性シリコーンと、トリメチルシロキシケイ酸と、低級1価アルコールとを含有している。そのため、本発明の高圧噴付用撥水処理剤によれば、水分が残存する被処理面においても、高圧噴付用撥水処理剤を高圧で噴き付け、必要により水で濯ぐのみでムラなく仕上げることができ、拭き上げなどの仕上げ処理を不要として被処理面に塗布することができる。
【0119】
また、本発明の高圧噴付用撥水処理剤を被処理面に塗布すれば、被処理面に優れた撥水性を付与することができ、さらには、その撥水性を長期間にわたって持続することができる。
【0120】
それに加えて、本発明の高圧噴付用撥水処理剤は、ワックス成分を含有しないため、油膜が形成されず、例えば、ガラス面などに付着しても、その外観を損ねることなく、良好に撥水性を付与することができる。
【0121】
そして、このようにして得られた高圧噴付用撥水処理剤により、被処理面を撥水処理するには、上記により調製した高圧噴付用撥水処理剤を、被処理面に塗布する。
【0122】
被処理面としては、水に濡れたときに撥水性が要求されるものであれば特に限定されず、例えば、雨水のかかる屋外で用いられる部材、例えば、自動車や電車などの車両表面(例えば、車体の塗装面や、例えば、フロントガラスなどのガラス面など)、自動車のサイドミラーや路上のカーブミラーなどのミラー、建造物の壁、窓、屋根などが挙げられる。好ましくは、車両表面が挙げられる。
【0123】
以下において、本発明の高圧噴付用撥水処理剤を用いて車両表面を撥水処理する本発明の撥水処理方法の一例について、詳述する。
【0124】
この撥水処理方法は、車両表面を撥水処理するための撥水処理方法であって、水洗工程と、高圧噴付工程とを備えている。
【0125】
この方法では、まず、車両表面を公知の方法によって水洗する(水洗工程)。次いで、この方法では、水洗工程の後に、水分が残存する車両表面に、上記により得られた本発明の高圧噴付用撥水処理剤を高圧で噴き付ける(高圧噴付工程)。
【0126】
すなわち、高圧噴付工程では、水洗工程の後、車両表面の水分を払拭することなく、高圧噴付用撥水処理剤を、高圧で噴き付ける。
【0127】
高圧噴付工程における、高圧噴付用撥水処理剤の噴射口と、車両表面との間隔は、例えば、0.2〜5m、好ましくは、0.5〜3mである。
【0128】
また、高圧噴付工程における高圧噴付用撥水処理剤の噴付圧力は、噴射口において、通常、0.2MPa以上、好ましくは、0.5MPa以上であり、通常、30MPa以下である。
【0129】
噴付圧力が上記下限未満であると、高圧噴付用撥水処理剤の付着性が低下し、撥水性および耐久性が低下する場合がある。
【0130】
一方、噴付圧力が上記上限を超過すると、被処理面に損傷を生じる場合がある。
【0131】
高圧噴付用撥水処理剤の噴き付けは、公知の方法でよく、例えば、スプレーコーティング法などを採用できる。
【0132】
高圧噴付用撥水処理剤の噴き付け量は、特に制限されないが、車両表面1.0m2あたり、高圧噴付用撥水処理剤が、例えば、1〜1000g、好ましくは、3〜500gである。
【0133】
そして、この方法では、高圧噴付工程の後、必要により高圧噴付用撥水処理剤を常温乾燥させ、その後、必要により、高圧噴付用撥水処理剤が噴き付けられた車両表面を、水で濯ぐ(濯ぎ工程)。
【0134】
これにより、拭き上げなどの仕上げ処理することなく、車両表面に高圧噴付用撥水処理剤の塗膜を形成し、車両表面を撥水処理できる。
【0135】
なお、高圧噴付用撥水処理剤の目的および用途や、その処方などによっては、高圧噴付用撥水処理剤を、さらに、例えば、水で、例えば、10〜1000倍、好ましくは、20〜500倍に希釈して用いることもできる。
【0136】
また、高圧噴付用撥水処理剤の目的および用途や、その処方などによっては、水で濯ぐことなく、例えば、水分が残存する車両表面に、高圧噴付用撥水処理剤を高圧で噴き付けるのみで、車両表面を撥水処理することもできる。
【0137】
このように車両表面を撥水処理すれば、車両表面を水で濯ぐ濯ぎ工程を省略できるため、作業性の向上を図ることができる。
【0138】
上記したように、本発明の高圧噴付用撥水処理剤は、水分が残存する被処理面においても、高圧噴付用撥水処理剤を高圧で噴き付け、必要により水で濯ぐのみでムラなく仕上げることができ、拭き上げなどの仕上げ処理を不要として被処理面に塗布することができる。
【0139】
そして、本発明の車両表面の撥水処理方法では、このような高圧噴付用撥水処理剤を車両表面に高圧で噴き付けることによって塗布する。そのため、本発明の車両表面の撥水処理方法によれば、拭き上げなど煩雑な仕上げ処理を不要とし、撥水性および持続性に優れる車両表面を得ることができる。
【実施例】
【0140】
以下に、実施例および比較例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、何らこれに限定されない。
【0141】
実施例1〜12および比較例1〜3
表1に示す配合処方に従って、各成分を順次イオン交換水に添加し、撹拌することにより、各実施例および各比較例の高圧噴付用撥水処理剤を得た。なお、イオン交換水は、高圧噴付用撥水処理剤の総量が100重量部となるように配合した。
【0142】
各実施例および各比較例における配合処方を表1に示す。
【0143】
【表1】

【0144】
なお、表1中の略号および製品名の詳細を下記に示す。
KF−880:アミノ変性シリコーン、側鎖型(両末端メチル基)、動粘度650mm/s、アミン当量1800、信越化学工業社製
KF−393:アミノ変性シリコーン、側鎖型(両末端メチル基)、動粘度70mm/s、アミン当量350、信越化学工業社製
KF−859:アミノ変性シリコーン、側鎖型(両末端メチル基)、動粘度60mm/s、アミン当量6000、信越化学工業社製
X−52−8005:トリメチルシロキシケイ酸のエマルション、不揮発分59重量%、ノニオン性、低粘度シリコーン含有、信越化学工業社製
SLJ−1320:ジメチルシリコーンオイルを、ノニオン界面活性剤で水に乳化分散させたもの、有効成分量60重量%、旭化成ワッカーシリコーン社製
TSF4452:ポリエーテル変性シリコーン、オキシプロピレン/オキシエチレン=50/50、動粘度900mm/s、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製
撥水処理
試験片として、商品名クラウンコンフォートの黒色タイプのボンネット板を用意し、試験片の表面を水洗した後、各実施例および各比較例により得られた高圧噴付用撥水処理剤を、イオン交換水で100倍に希釈して、振盪し、その高圧噴付用撥水処理剤を、水滴が残存する試験片の表面に噴き付けた(噴付量:試験片1.0m2あたり高圧噴付用撥水処理剤100g)。その後、高圧噴付用撥水処理剤を、常温において、1分間乾燥させた。これにより、試験片の表面を撥水処理した。なお、噴き付けにおいては、高圧噴付用撥水処理剤の噴付口と、試験片の表面とを、1m離した。各実施例および各比較例の高圧噴付用撥水処理剤の、噴射口における噴付圧力を、表1に示す。
【0145】
評価
各実施例および各比較例の高圧噴付用撥水処理剤により撥水処理した試験片の表面の、ムラ、撥水性および耐久性について、それぞれ評価した。評価方法を下記に示す。
(1)ムラ
各実施例および各比較例の高圧噴付用撥水処理剤により撥水処理した試験片の表面の、高圧噴付用撥水処理剤の塗布ムラを目視により確認し、塗布ムラの様子を評価した。評価の基準を下記に示す。
○:塗布ムラが確認されなかった。
△:わずかな塗布ムラが確認された。
(2)撥水性
各実施例および各比較例の高圧噴付用撥水処理剤により撥水処理した試験片の表面、および、撥水処理していない試験片の表面に、水をかけ、その水(水玉)の状態を、目視で観察し、撥水性を評価した。評価の基準を下記に示す。
○:水玉となってはじく。
△:はじきが弱く(鈍く)、水玉が変形している。
×:ほとんどはじかず、未処理部分とほとんど変わらない。
(3)持続性
各実施例および各比較例の高圧噴付用撥水処理剤により撥水処理した試験片の表面、および、撥水処理していない試験片を、屋外に30日間放置した。
【0146】
その後、撥水処理した試験片の表面、および、撥水処理していない試験片の表面に、水をかけ、その水(水玉)の状態を、目視で観察し、撥水性の持続性を評価した。評価の基準を下記に示す。
○:水玉となってはじく。
△:はじきが弱く(鈍く)、水玉が変形している。
×:ほとんどはじかず、未処理部分とほとんど変わらない。
【0147】
実施例13〜19
表2に示す配合処方に従って、各成分を順次イオン交換水に添加し、撹拌することにより、各実施例の高圧噴付用撥水処理剤を得た。なお、イオン交換水は、高圧噴付用撥水処理剤の総量が100重量部となるように配合した。
【0148】
各実施例および各比較例における配合処方を表2に示す。
【0149】
【表2】

【0150】
なお、表2中の略号および製品名の詳細を下記に示す。
L−655:アミノ変性シリコーン、側鎖型(両末端アルコキシ基)、動粘度40mm/s、アミン当量700、旭化成ワッカーシリコーン社製
KF−393:アミノ変性シリコーン、側鎖型(両末端メチル基)、動粘度70mm/s、アミン当量350、信越化学工業社製
L−656:アミノ変性シリコーン、側鎖型(両末端メチル基)、動粘度25mm/s、アミン当量800、旭化成ワッカーシリコーン社製
KF−880:アミノ変性シリコーン、側鎖型(両末端メチル基)、動粘度650mm/s、アミン当量1800、信越化学工業社製
X−52−8005:トリメチルシロキシケイ酸のエマルション、不揮発分59重量%、ノニオン性、低粘度シリコーン含有、信越化学工業社製
SLJ−1320:ジメチルシリコーンオイルを、ノニオン界面活性剤で水に乳化分散させたもの、有効成分量60重量%、旭化成ワッカーシリコーン社製
XS65−C2173:両末端が水酸基により変性されたジメチルポリシロキサンを、ノニオン界面活性剤で水に乳化分散させたもの、有効成分量70重量%、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製
撥水処理
試験片として、商品名クラウンコンフォートの黒色タイプのボンネット板(車体試験片)、および、そのフロントガラス(ガラス試験片)を用意し、各試験片の表面を水洗した後、各実施例により得られた高圧噴付用撥水処理剤を、イオン交換水で100倍に希釈して、振盪し、その高圧噴付用撥水処理剤を、水滴が残存する各試験片の表面に噴き付けた(噴付量:試験片1.0m2あたり高圧噴付用撥水処理剤100g)。その後、高圧噴付用撥水処理剤を、常温において、1分間乾燥させた。これにより、各試験片の表面を撥水処理した。なお、噴き付けにおいては、高圧噴付用撥水処理剤の噴付口と、各試験片の表面とを、1m離した。各実施例および各比較例の高圧噴付用撥水処理剤の、噴射口における噴付圧力を、表2に示す。
【0151】
評価
各実施例の高圧噴付用撥水処理剤により撥水処理した車体試験片の表面の、ムラ、撥水性および耐久性と、ガラス試験片の表面の、撥水性および耐久性について、それぞれ評価した。評価方法を下記に示す。
<車体試験片>
(1)ムラ
各実施例の高圧噴付用撥水処理剤により撥水処理した車体試験片の表面の、高圧噴付用撥水処理剤の塗布ムラを目視により確認し、塗布ムラの様子を評価した。評価の基準を下記に示す。
○:塗布ムラが確認されなかった。
△:わずかな塗布ムラが確認された。
(2)撥水性
各実施例の高圧噴付用撥水処理剤により撥水処理した車体試験片の表面、および、撥水処理していない車体試験片の表面に、水をかけ、その水(水玉)の状態を、目視で観察し、撥水性を評価した。評価の基準を下記に示す。
○:水玉となってはじく。
△:はじきが弱く(鈍く)、水玉が変形している。
(3)持続性
各実施例の高圧噴付用撥水処理剤により撥水処理した車体試験片の表面、および、撥水処理していない車体試験片を、屋外に30日間放置した。
【0152】
その後、撥水処理した車体試験片の表面、および、撥水処理していない車体試験片の表面に、水をかけ、その水(水玉)の状態を、目視で観察し、撥水性の持続性を評価した。評価の基準を下記に示す。
○:水玉となってはじく。
△:はじきが弱く(鈍く)、水玉が変形している。
<ガラス試験片>
(1)撥水性
各実施例の高圧噴付用撥水処理剤により撥水処理したガラス試験片の表面、および、撥水処理していないガラス試験片の表面に、水をかけ、その水(水玉)の状態を、目視で観察し、撥水性を評価した。評価の基準を下記に示す。
◎:水玉となってはじく。
○:はじきが弱く(鈍く)、水玉が変形している。
△:ほとんどはじかず、未処理部分とほとんど変わらない。
(2)持続性
各実施例の高圧噴付用撥水処理剤により撥水処理したガラス試験片の表面、および、撥水処理していないガラス試験片を、屋外に30日間放置した。
【0153】
その後、撥水処理したガラス試験片の表面、および、撥水処理していないガラス試験片の表面に、水をかけ、その水(水玉)の状態を、目視で観察し、撥水性の持続性を評価した。評価の基準を下記に示す。
◎:水玉となってはじく。
○:はじきが弱く(鈍く)、水玉が変形している。
△:ほとんどはじかず、未処理部分とほとんど変わらない。
(3)滑り性
試験体として、商品名カローラフィールダーを用意し、そのフロントガラスの表面を水洗した後、各実施例により得られた高圧噴付用撥水処理剤を、イオン交換水で100倍に希釈して、振盪し、その高圧噴付用撥水処理剤を、水滴が残存するフロントガラスの表面に、上記のガラス試験片に対する噴き付けと同じ条件(噴付量:試験片1.0m2あたり高圧噴付用撥水処理剤100g)で噴き付けた。その後、高圧噴付用撥水処理剤を、常温において、1分間乾燥させた。これにより、フロントガラスの表面を撥水処理した。
【0154】
次いで、ワイパー(商品名:ガラコワイパー グラファイト超視界、ソフト99コーポレーション社製)を作動させることにより、フロントガラスの表面を摩擦した(動作速度:40回/分)。ワイパーの動作を目視で観察し、ガラスの滑り性を評価した。評価の基準を下記に示す。
○:ワイパーの滑りが良く、問題なく使用できる。
△:ワイパーの滑りが悪く、円滑に摺動させることができない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ変性シリコーンと、トリメチルシロキシケイ酸と、低級1価アルコールとを含有することを特徴とする、高圧噴付用撥水処理剤。
【請求項2】
さらに、多価アルコールを含有することを特徴とする、請求項1に記載の高圧噴付用撥水処理剤。
【請求項3】
トリメチルシロキシケイ酸の配合割合が、アミノ変性シリコーン1重量部に対して、0.5〜6重量部であることを特徴とする、請求項1または2に記載の高圧噴付用撥水処理剤。
【請求項4】
アミノ変性シリコーンのアミン当量が、300以上5000以下であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の高圧噴付用撥水処理剤。
【請求項5】
アミノ変性シリコーンが、アミン当量が300以上1000未満の第1アミノ変性シリコーンと、アミン当量が1000以上5000以下の第2アミノ変性シリコーンとを含有することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の高圧噴付用撥水処理剤。
【請求項6】
さらに、ジメチルポリシロキサンを含有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の高圧噴付用撥水処理剤。
【請求項7】
ジメチルポリシロキサンは、その両末端が水酸基により変性されており、
ジメチルポリシロキサンの配合割合が、アミノ変性シリコーン1重量部に対して、0.2〜5重量部であることを特徴とする、請求項6に記載の高圧噴付用撥水処理剤。
【請求項8】
車両表面を水洗する水洗工程と、
前記水洗工程の後、水分が残存する前記表面に、請求項1〜7のいずれかに記載の高圧噴付用撥水処理剤を高圧で噴き付ける高圧噴付工程と
を備えることを特徴とする、車両表面の撥水処理方法。
【請求項9】
前記高圧噴付工程において、前記表面に、前記高圧噴付用撥水処理剤を0.2MPa以上の噴付圧力で噴き付けることを特徴とする、請求項8に記載の車両表面の撥水処理方法。

【公開番号】特開2011−63794(P2011−63794A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182060(P2010−182060)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000227331)株式会社ソフト99コーポレーション (84)
【Fターム(参考)】