高圧放電ランプをシャットダウンする方法および高圧放電ランプを駆動する駆動ユニット
本発明は、アーク管(3)内に一対の電極(2)が配された高圧放電ランプ(1)をシャットダウンする方法であって、電極(2)間のアーク放電を点弧状態から消弧状態への移行状態に維持することを可能にする低下された動作レベルにランプ電力を下げる段階と;ランプ(1)が冷めるよう、ランプ(1)を前記低下された動作レベルで駆動する段階と;このランプ電力低下プロセスの間および前記低下された動作レベルでのランプ(1)の駆動の間、ランプ電圧(U)を、所定の放電プロセス安定性基準に関して監視し、該放電プロセス安定性基準が満たされない場合にはランプ電力を上げる段階と;十分な期間後、ランプ電力(PA)を完全にシャットダウンする段階であって、十分な期間後とは、ランプ(1)が消弧後に短時間で再点弧できるような気体圧力の状態までランプ(1)が冷めるのを許容する期間である段階とを有する方法を記述する。さらに、本発明は、高圧放電ランプ(1)
を駆動する適切な駆動ユニット(7)およびそのような駆動ユニット(4)を有する画像レンダリング・システム(40)、特にプロジェクター・システムをも記述する。
を駆動する適切な駆動ユニット(7)およびそのような駆動ユニット(4)を有する画像レンダリング・システム(40)、特にプロジェクター・システムをも記述する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電ランプ、特に水銀蒸気放電ランプをシャットダウンする方法に関する。さらに、本発明は、高圧放電ランプを駆動する駆動ユニットに関する。さらに、本発明は、高圧放電ランプおよびそのような駆動ユニットを有する画像レンダリング・システム、特にプロジェクター・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧放電ランプ、たとえば水銀蒸気放電ランプは、石英などの高温に耐えられる物質でできた容器を有する。両側から、タングステンでできた電極がこの容器中に突出している。以下で「アーク管」とも呼ばれる容器は、一つまたは複数の希薄気体からなる充満物を含んでおり、水銀蒸気放電ランプの場合、希薄気体は主として水銀である。電極間に高電圧を加えることによって、電極の先端間に光のアークが生成され、その後アークは低電圧で維持できる。その光学的な性質のため、高圧放電ランプはなかでも投影目的に好ましく使われる。そのような用途のためには、できる限り自然な光のスペクトル組成を伴う、できる限り高い光度が望まれる。そうした性質は、いわゆる「高圧気体放電ランプ」すなわち「HIDランプ」(High Intensity Discharge Lamp[高強度放電ランプ])、特に「UHPランプ」(Ultra High Performance Lamp[超高性能ランプ])を用いて最適に達成できる。
【0003】
そのようなランプを点弧させるいくつかの異なる方法が存在している。従来式の方法を使うと、20kVを超える高電圧サージが電極に加えられる。いくつかのより新しい方法はたった5kVの点弧電圧と、必要な電圧を下げる作用をする追加的な「アンテナ」で動作する。
【0004】
これらすべての方法は、ユーザーが、うっかりそのようなランプを消したあと、ランプが再びオンにできるまでにかなりの時間――数分に及ぶこともある――待たなければならないという問題がある。これは、オンにされている間、ランプが非常に熱くなり、アーク管内の圧力が著しく上昇するためである。アーク管内の圧力が高いほど、要求される点弧電圧は大きくなる。したがって、消したあと、通常のレベルの点弧電圧でランプが点弧できる圧力値に達するまで冷める必要があるのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この問題に対処するため、JP2004/319193Aは、プロジェクター・システムのランプのより低い電力レベルが引き下げられ、次いで、ランプが冷めて、オフにしたあと比較的すみやかに再点弧できる点になるまで、このより低い電力レベルで駆動される方法を記載している。ランプが該より低い電力レベルで動作している移行期の間、前記プロジェクター・システムは、画面が、画像が投影されない状態にされることを保証する。この移行期に再びランプがオンにされれば、画面は再アクティブ化されることができ、ランプ電力はすばやく上げられる。ユーザーの観点からは、あたかもランプが即座に再びオンにされたように見える。しかしながら、最終的にオフにされたあとランプが再点弧される速度は、移行期にランプが駆動されていた電力に依存する。というのも、ある電力では、ある温度平衡、よってある圧力平衡がアーク管中で生じるからである。さらに、通常のランプの場合のように、再点弧時間は点弧電圧のレベルに依存する。できるだけ低い点弧電圧でランプを再点弧できるためには、移行期において動作電力をできるだけ低いレベルに維持することが有利である。他方、ランプは移行期にどんな無差別な低電力レベルでも駆動できるというものではなく、放電アークが保持できる可能な最低レベルからある安全マージンをもった電力レベルで駆動される必要がある。そうでなければ、たとえばランプ内で起こる物理的プロセスのために生じる電流または電圧のちょっとした逸脱でさえ、ランプの不用意の早まった消弧につながりうる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、究極的にオフにされる前にランプを可能な最低温度にできる、高圧放電ランプをシャットダウンする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明は、高圧放電ランプをシャットダウンする方法であって、電極間の放電を点弧状態から消弧状態への移行状態に維持することを可能にする低下された動作レベルにランプ電力を下げる段階と、ランプが冷めるよう、ランプを前記低下された動作レベルで駆動する段階とを有する。本発明によれば、このランプ電力低下プロセスの間および前記低下された動作レベルでのランプの駆動の間、ランプ電圧が、所定の放電プロセス安定性基準に関して監視される。放電プロセス安定性基準が満たされない場合には、ランプ電力が暫時上げられる。最終的には、十分な期間後、ランプ電力は完全にシャットダウンされる。十分な期間後とは、消弧後に「通常(normal)」点弧回路を使って短時間で――好ましくは即座に――再点弧できるような気体圧力の状態になるまでランプが冷めるのを許容するだけの期間である。
【0008】
この方法を使うと、前記低下した動作レベルは本質的に、アーク放電が維持されうる可能な最低動作レベルである。したがって、この方法は、ランプが不用意に早すぎて消弧されないことを保証しつつ、ランプが消弧される際のランプの特に低い最終温度を達成することを可能にする。
【0009】
高圧放電ランプを駆動する適切な駆動ユニットは、シャットダウン要求を受領するシャットダウン要求入力と、ランプ電力制御ユニットとを有するべきである。該ランプ電力制御ユニットは、シャットダウン要求の受領に際して、電極間の放電を点弧状態から消弧状態への移行状態に維持することを可能にする低下された動作レベルにランプ電力が下げられ、ランプが冷めるよう、前記低下された動作レベルでランプが駆動されるよう構成される。さらに、本発明によれば、本駆動ユニットは、ランプ電力低下プロセスの間および前記低下された動作レベルでのランプの駆動の間、ランプ電圧を、所定の放電プロセス安定性基準に関して監視する監視装置を有する必要がある。本発明によれば、駆動ユニットは、放電プロセス安定性基準が満たされない場合には、ランプ電力が暫時上げられ、十分な期間たった後にランプ電力が完全にシャットダウンされるように構成されるべきである。十分な期間たった後とは、消弧後に短時間で――好ましくは即座に――ランプを再点弧できるような気体圧力の状態になるまでランプが冷めるのを許容するだけの期間である。
【0010】
従属請求項および以下の記述は、本発明の特に有利な実施形態および特徴を開示する。
【0011】
好適な安定性基準を定義するためにはいくつもの可能性が存在する。しかしながら、安定性基準を決定するため、ランプ電圧平均値が好ましくは常に、たとえばある時間窓のようなある窓にわたって測定されるか、あるいはランプ電圧のいくつかの相続く測定値(標本値)が決定される。該平均値を援用して、個々の電圧値の逸脱が強すぎるかどうかが決定できる。
【0012】
たとえば、ある時間の長さ内の最大の測定値が決定でき、この最大値が平均値のある因数倍よりも小さければ安定性基準が満たされる。前記の因数はそのランプおよび厳密な駆動回路に多分に依存する。その値はたとえば1.25であることができる。
【0013】
しかしながら、ある特に好ましい実施形態では、ランプ電圧平均値はスライディング窓にわたって決定されることができ、現在の測定値と平均値との差がある閾値より小さい限り安定性基準が満たされる。この閾値レベルを決定する際には、測定の通例の不正確さのルおよびランプ電圧の通例の変化レートを考慮に入れることができる。こうして、1%より大きな逸脱が、ある特定の駆動回路をもつあるランプについての不安定性を含意できる。別のランプおよびドライバについては、10%の逸脱が受け容れ可能であることもできる。
【0014】
代替的に、測定を実行する他の諸方法が可能である。たとえば、ある固定数の測定値について、平均値のほかに最大値および最小値が計算されることができる。その場合、最大値および最小値の平均値からの逸脱がしかるべく評価されることになる。
【0015】
スライディング平均値の代わりに、ランプの電圧の1周期または半周期にわたる全測定値にわたる平均値が使われることができる。これは、摂動を抑えるためにしばしば行われる。そのような場合、不正確さのレベルは低下し、小規模な不安定性の効果も低下する。したがって、そのような場合、閾値はいくぶん低めに選ぶことができる。
【0016】
ランプ電力の調節は、たとえば、現在のランプ電力を直接ある非常に低い所望ランプ電力(所望される値)に向けて調節することによって実行できる。この場合、たとえば、所望ランプ電力としてある電力レベルが定義され、該ある電力レベルは、放電が安定して維持されるレベルより下にある。通常、瞬間的な電力調節は、ランプ・ドライバにおいて電流を調節することによって実行される。すなわち、電流を増減することによって瞬間電力の増減が得られるのである。
【0017】
好ましくは、少なくとも低下した動作レベルでランプを駆動する間、所望ランプ電力(公称電力とも呼ばれる)は目標ランプ電力によって制御され、放電プロセス安定性基準が満たされていない場合には瞬間的な所望ランプ電力が上げられ、その後は実際のランプ電力(または実際の電流)は前記瞬間的な所望ランプ電力によって制御される。公称電力が目標電力に向けて徐々に適応され、該所望電力に従って今度は瞬間電力が調節されるというこの方法は、通常動作において公称電力を調節するためにドライバが使用するドライバの公称電力調節にいかなる介入も必要とすることなく、所望される電力――想像上の量としての――が所望される指針に従って調節されることができるという利点を有する。そのため調節サイクル全体がより高速に動作できる。これと対照的に、瞬間電力調節が、「通常の」電力調節のために使われるのでなく低下した電力レベルに電力を調節するよう「誤用」されるとしたら、調節サイクルは遅くなり、電力調節はそれほどすばやく反応できないであろう。
【0018】
通常の動作レベルから低下した電力レベルへの電力の低下はいくつかの仕方で行える。たとえば、第一の方法では、電力は比較的ゆっくり、連続的または段階的に低下させることができる。もう一つの好ましい方法は、電力がある第一の低電力レベルまで引き下げられ、そのレベルからはゆっくり、連続的または段階的に、放電の安定性が維持される最低レベルに達するまで低下させられることを要求する。それにより、所望ランプ電力が目標ランプ電力に調整される電力低下の変化速度を、瞬間ランプ電力に依存して選ぶことができる。換言すれば、比較的低い瞬間電力の場合には電力はゆっくりしたレートでさらに低下させられるだけだが、より高い瞬間電力については変化はより速く効果をもつ。この方法では、システムは、ランプが不用意に早すぎて消弧されるのを避けるために、可能な最低電力レベルに向かって手探りで進む。
【0019】
本発明のある好ましい実施形態では、ランプの強制冷却が、少なくともシャットダウン・プロセスの一段階の間に開始または増加させられる。たとえば、ベンチレータまたはベンチレータ・アレイなどの冷却手段が何らかの仕方でランプ内に配置されることができ、ランプをシャットダウンするコマンドがランプ・ドライバに送られ、ランプが冷却されるべきとなるとすぐに、この冷却手段がしかるべく作動させられるか、毎分回転数が上げられるか、補助クーラーがオンにされるかする。
【0020】
ランプが十分冷めるまでの経過時間の長さを決定するためにもさまざまな可能性が存在する。たとえば、ランプは、低い平衡温度に達したのちオフにされることができる。
【0021】
これはたとえば、電圧が下がるレートを観察することによってできる。電圧の著しい変化が検知されなければ、平衡に達したと想定してよい。
【0022】
特に単純なバージョンでは、ランプは、前記低下された動作レベルである所定の時間期間にわたって駆動されたのちにシャットダウンされる。この時間期間は好ましくは少なくとも約60秒である。
【0023】
もう一つの好ましい実施形態では、前記低下した動作レベルでのランプの駆動の間、ランプ内の気体圧力が監視され、ランプは観察された気体圧力にしたがってシャットダウンされる。
【0024】
ランプ圧力は、平均ランプ電圧に基づいて、たとえば先行する通常動作における平均ランプ電圧を測定および記録し、次いでそのランプ電圧がある値を下回ったかどうかを検査することによって推定できる。前記のある値は、通常動作における平均電圧にある因数を乗算して決定できる。たとえば、冷却時間は、低下した電力レベルにおける平均ランプ電圧が通常動作における平均ランプ電圧の半分しかなければ十分であると見なすことができる。
【0025】
本発明のあるさらなる好ましい実施形態によれば、ランプ電圧およびランプ電流が監視および解析され、ランプの電流‐電圧特性の属性が、アーク管内の気体圧力の指標を与えるために判別される。この方法は、水銀蒸気放電ランプの場合に特にうまくいく。
【0026】
通常の動作モードでは、水銀蒸気放電ランプは負の電流‐電圧特性を示す。通例電流を低下させることによって実施されるランプ電力の低下は、動作電圧の上昇を引き起こす。しかしながら、いくらかの水銀が凝縮すれば、電力(または電流)の変動に応答した電圧応答は、主として水銀圧力の変動によって決定される。これは、電流低下に対してランプ電圧の異なる応答を生じる。不飽和のランプの場合とは逆に、飽和したランプの電圧は水銀凝縮およびその結果として生じる水銀圧力の低下のために降下する。電圧応答挙動の同様の違いが、電流増の場合にも観察される。この挙動は次のように説明できる:不飽和領域の間、すなわち通常の動作モードにおいて電流が低下させられれば、電極間のプラズマはより低い温度に冷め、電離度が下がる。結果として、ランプの抵抗が増し、動作電圧も増す。他方、飽和状態では、電流増は結果としてランプの増加した熱出力を生じる。これはまず溶融質量からの水銀蒸発につながる。気体中で蒸発した水銀原子が増えると、ランプ抵抗の増加にもつながる。この効果が優勢な役割を演じ、飽和したランプについて、電流が増加した場合、電圧の上昇につながる。
【0027】
電流レベルの関数としての電圧の挙動に関するこの観察は、電圧および電流ならびにこれらの測定値の相互の関係を同時に測定することによって、簡単かつ込み入っていない仕方で、バルブ中の水銀飽和の状態の指標を決定するために使用される。
【0028】
本発明のあるさらなる実施形態では、ランプ電圧の傾きとランプ電流の傾きの比が、ランプ内での水銀飽和の状態に関する定量的な指標を与えるのに使用される。
【0029】
本発明に基づく画像レンダリング・システム、特に投影システムは、本発明によれば、高圧放電ランプのほかに、該ランプのための本発明に従う駆動ユニットを有する。特に好ましくは、そのような画像レンダリング・システムは、駆動ユニットにシャットダウン要求を送るために、および/またはたとえば、シャットダウン・プロセスの少なくともある段階でランプの強制冷却を開始するか強制冷却を増強するための冷却手段を制御するために、中央制御ユニットをも有するべきである。
【0030】
そのようなより上位の制御ユニットの使用は、典型的なランプ・ドライバは、たとえば電力を制御するランプ・ドライバのプログラム可能な制御チップ内の対応するソフトウェア更新によってわずかに修正されるだけでよいという利点を有する。ランプ・ドライバへの込み入ったハードウェア修正は必要ない。
【0031】
たいていのプロジェクター・システムは、いずれにせよ、たとえば色ホイール(colour wheel)またはディスプレイといった該プロジェクター・システムのさらなるコンポーネントを制御し、同期させる中央制御ユニットを有している。そのような場合、中央制御は、ランプ・ドライバのためのシャットダウン要求と同時に、ディスプレイを暗くするためのディスプレイのための適切なコマンドを発するために使われることができる。ディスプレイを暗くするとはすなわち、ランプがシャットダウン要求を受け取ってからランプの完全な消弧までの間の移行期にある限り、さらなる画像レンダリングが回避されるようにすることである。このプロセスは実質的にユーザーには知覚されずに進む。ユーザーは、不用意にオフにしたあとすぐにプロジェクターを再びオンにできるという事実に気がつくのみである。それは、ランプがまだ移行状態にあって、そのため通常動作電力レベルに引き戻されることができるため、あるいはランプが実際完全に消弧されていたとしても、本発明の方法によって十分冷めていたため、すぐ再点弧できるためである。
【0032】
一般に、本発明は高圧放電ランプのすべての種類のために使用されうる。好ましくは、本発明はHIDランプ、特にUHPランプのために使用される。本発明は、投影システムにおける使用のために意図されているのでない他のランプ、たとえば自動車照明システムのためのランプにも適用できる。
【0033】
本発明の他の目的および特徴は、付属の図面とともに考慮される以下の詳細な記述から明らかになるであろう。しかしながら、図面は、本発明の解説の目的のためにのみ意図されており、本発明の限界の定義として意図されているのではないことは理解されるものとする。図面において、同様の参照符号は全体を通じて同じ要素を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図面におけるオブジェクトの大きさは明確のために選ばれたのであって、必ずしも実際の相対的な大きさを反映するものではない。
【0035】
図1〜図5には、水銀蒸気放電ランプをオフにするための諸作用の可能なシーケンスが記載されている。言うまでもなく、これらの確定した作用の経過との関連で述べられる値は純粋に例示的なものであり、本発明の一般性を制限することなく、ランプの通常動作における120/130ワットの公称電力をもつ水銀蒸気放電ランプに関する。明らかに、これらの値は、実際に使用されるランプまたはドライバ構築に合うよう調整されなければならない。
【0036】
図1に示された作用のシーケンスでは、シャットダウン・プロセスにおいて瞬間ランプ電力が直接影響される。このフローチャートの初期ステップ50、51は、瞬間電力が通例の仕方で、たとえばランプの動作のための通常の公称値に向けて調節されることを示している。ステップ51は、ループで、シャットダウン要求が出されたかどうか、すなわちユーザーがランプをオフにしたがっているかどうかを継続的に検査している。もしそうであれば、ランプを実際にシャットダウンする方法がステップ52で始まる。この目的のため、「目標電力」がまずステップ52で20Wに低下させられる。20Wの電力レベルは、ランプが安定した仕方で動作できるレベルより下にある。目標電力は、好ましくは公称電力の20ないし25%の範囲内、特に好ましくはこれより下であるべきである。
【0037】
その後、ステップ53、54、55および56を有する調節ループが始まり、第一のステップ53で、放電プロセス安定性基準が評価される。この評価の可能性は、のちに図2を援用してより詳細に説明する。放電プロセス安定性基準が満たされれば、瞬間電力は、瞬間電流を下げることによって、所望の目標電力20Wが達成されるまで低下させられる(ステップ54)。他方、放電プロセス安定性基準が満たされていない場合には、ステップ55で実際の電力は暫時上げられる。
【0038】
その後、どちらの場合においても、ステップ56は、ランプが十分冷めたかどうかが評価される。先述したように、これは単に、ある時間期間が経過したかどうか、すなわちある冷却期間が経過したかどうかを検査することに関わるのでもよい。同様に、ランプの瞬間電圧または平均電圧に係る基準が評価されることもできる。さらなる可能性は、ランプ内の温度を測定するか、圧力を推定することである。それは図11を援用してのちにより詳細に説明する。
【0039】
ステップ56で冷却基準に到達していなかった場合、再びステップ53が放電プロセス安定性基準を評価し、瞬間電力をしかるべくさらに低下させるか、あるいは――放電プロセス安定性基準が満たされなかった場合には――ステップ55で再び電力を上げるかする。この方法は、瞬間ランプ電力が、冷却基準を満たせるまで、放電アークが維持できる可能な最低レベルに恒久的に保持されることを保証する。ひとたびステップ56が、冷却基準が満たされたと判定すると、ランプの最終的なシャットダウンがステップ57で続くことができる。
【0040】
図2は、放電プロセス安定性基準を評価するための可能なフローチャートを示している。図2に示された作用の経緯全体は、図1のフローチャートのステップ53において生起できる。
【0041】
評価は、ステップ60で、ランプ電圧標本値Uiを測定することによって始まる。この測定は、規則的な間隔で実行される。たとえば、現在使われるドライバ回路では、ランプの半周期内に短い間隔で16回の測定がなされる。次いで、ステップ61で、ランプ電力平均値
【数1】
が、直前のN個の標本値の平均値として計算される。その後、ステップ62で、新たな平均値が、前の測定について計算された古い平均値と比較される。ステップ63で、平均値の更新が行われることができる。すなわち、次の測定サイクルのために古い平均値が新しい平均値で置き換えられる。
【0042】
直前のN個の測定値を記憶しておいて対応する平均値を古い平均値と比較しもし該当すれば古い平均値を更新するために平均値を計算するのではなく、その代わりに、新しい測定値Uiを用いてスライディング平均値
【数2】
が、たとえば次の式にしたがって継続的に計算されることもできる
【数3】
これは、一次の低域通過フィルタに対応し、離散的なアナログ回路を使っても実現されうる。
【0043】
現在の平均値が計算される仕方に関わりなく、ステップ64は実際の安定性基準の評価を、現在の測定値Uiの平均値からの相違がある閾値Usより大きいかどうか(あるいは該閾値に達したかどうか)を評価することによって行える。この閾値は、平均値のある割合と定義できる。たとえば、ランプおよび実装されるドライバ回路に依存して、この閾値は平均の1%から10%の間にあってよい。
【0044】
図3は、図1と同様の、本発明に基づく、ランプのスイッチをオフにする方法を示している。ここでも、ステップ70で、ランプの動作の間に「通常」の電力調節が実行されており、ステップ71はループで、シャットダウン要求が出されたかどうかを検査する。また、もしそうである場合、ステップ72はまず目標電力20Wを指定する。
【0045】
次いで調節サイクルが始まり、これもステップ73における安定性基準の評価で始まる。しかしながら、図1での方法と異なり、電力調節への直接的な介入は起こらない。その代わり、放電プロセス安定性基準が満たされ、所望ランプ電力に従って瞬間電力を調節する調節サイクルのための所望電力が、目標電力が目標電力より大きい限り、ステップ74で低下させられ、さもなくばステップ75で所望電力が上げられる。ステップ76では、実際の、すなわち瞬間電力が瞬間的な所望電力に従って調節される。所定の所望電力に従った実際の電力の調節は、電流を調節することによって通例の仕方で実施される。
【0046】
図1に基づく方法と同様、その後ステップ77で冷却基準が満たされているかどうかが評価され、やはりループが完了され、冷却基準が満たされている限り、ランプは最終的にステップ78で消弧される。
【0047】
図3に記載した作用のシーケンスの利点は、ドライバの通例の実際の電力調節に実際に介入することなく、想像上の所望される電力値が要求に従って目標電力に向かって低下させられ、結果としていかなる形であれ該通例の実際の電力調節が不必要に妨げられることがないという利点を有する。
【0048】
図1および図3に基づく方法の間、電力はゆっくりと目標電力に向かって調整される。これは、電力調節が発振につながる傾向があるときにとりわけ望ましい。こうして、小さなきざみで、図1のステップ54で実際の電力が目標電力に近づくか、図3のステップ74で所望電力が目標電力に近づく(それによりステップ76で実際の電力が瞬間的な所望電力に従って調節される)。きざみの大きさはランプおよびドライバ構築に応じて定義できる。たとえば、公称電力120Wをもつランプの所望電力は、各ランプ周期ごとに0.067W低下させることができる。ランプ周波数50Hzでは、これは20Wの目標電力が30秒以内に達成されることを許容することになる。ステップ53または73で不安定が検出された場合には、それぞれステップ55およびステップ75で、瞬間電力または所望電力がたとえば5W上げられることができる。次いで目標電力への戻りが、1周期当たり0.067Wで起こることができる。
【0049】
この方法では、瞬間電力の変化レートを適応させることが望ましいことがありうる。こうして、所望電力と目標電力との間の相違が大きい場合については、所望電力は1周期当たり0.1W低下させることができ、たとえば5Wより小さな相違については、所望電力は周期当たり0.01Wしか低下させられない。
【0050】
プロセスを加速するため、所望電力は、初期の第一の段階で、放電アークの消弧を引き起こさないことが確かである限り、より低い電力に低下させられることができる。本方法のこのバージョンは図4に示されている。ここでもまた、ステップ80はランプの通例の電力調節を表しており、ステップ81でシャットダウン要求の継続的なポーリングが実行される。そのようなシャットダウン要求が出されれば、所望電力はステップ82ですぐ35Wに下げられる。その後、実際の電力は、ステップ83における瞬間的な所望電力に従って調節される。その後、目標電力を20Wにセットすることがステップ84で行われる。これが図1および図3のステップ52およびステップ72に対応する。次いで所望電力の指定された目標電力へのさらなる調節が、ステップ85、86、87、88、89で起こりうる。これは、図3の調節サイクルのステップ73、74、75、76、77に対応する。次いで、ステップ89において冷却基準が評価され、基準が満たされたら、ステップ90でランプは最終的に消弧できる。
【0051】
この特に好ましい二段階のプロセスは、目標電力より上の安全な値までの初期の速い電力低下と、実際の目標値へのその後のゆっくりした慎重な接近とを保証する。
【0052】
図5に示されるさらなる代替的なプロセスでは、ステップ100での通例の電力調節の間にステップ101でシャットダウン要求が出されたあと、所望電力がステップ102ですぐ20Wに低下させられ、次いでステップ103で実際の電力がこの所望される電力に近づくよう調節される。すぐにステップ104(ここでは明確のために後続ステップとして示されている)で目標電力は20Wに低下させられ、ランプが消弧されないことを確かにするために、ステップ105で放電プロセス安定性基準の評価が実行される。次のループ、すなわち放電プロセス安定性基準の定期的な評価、そしてステップ107における所望電力の対応する上昇またはステップ106における所望電力の低下、そしてまたステップ108における瞬間的な所望電力への実際の電力の調節、そしてステップ109における冷却基準の評価のためのループは、図3および図4を援用してすでに述べた通例の方法に対応する。この場合も、ステップ109で冷却基準が満たされるや否や、ステップ110で最終的にランプは消弧できる。
【0053】
図3のステップ73、図4のステップ85または図5のステップ105における放電プロセス安定性基準の評価は、図1のステップ53について、あるいは図2を用いてすでに述べたのと同じ仕方で実施されることもできる。
【0054】
すでに上述したように、単純に時間の値を冷却基準のために取ることもできる。すなわち、その長さの時間後には、ランプはたとえば平衡温度に達することによっておそらく十分冷めていると推定でき、この長さの時間の経過後には、プロセスは中断でき、ランプは最終的にオフにできる。120Wの水銀ランプについて実行された実験では、ランプが約20Wの目標電力まで調節して下げられるとき、60〜240秒の冷却期間が十分であることが観察されている。この時間の長さは、外気冷却などによるランプの冷却に応じて短縮できる。
【0055】
ランプ内圧力がより精密に推定されるほうがいいのは明らかである。そうすれば、ランプは圧力があるレベルを下回ったときにしかるべく最終的にオフにできる。これは、一方では、不都合な条件のためランプの冷却が遅くなる場合に、ランプがオフにされるのが早すぎることがなく、他方では、ランプが実際に非常に早く冷却する状況において、プロセスに不必要に長い時間がかからないという利点を有する。
【0056】
ランプ内の瞬間的な圧力を推定する一つの可能性は、電流と電圧の間、あるいは電流の傾きと電圧の傾きの間の関係を観察することに関わる。
【0057】
図11は、ランプの1電流サイクルにわたって記録された電流I(上)と電圧U13(下)の曲線の例を示している。電流Iは、各反転前に、いわゆる反フラッター・パルス(anti-flutter pulse)という追加的な増大を示す。これは、たいていのランプにおいて安定性の理由のために適用される。示されている電圧U13は、図6のA/Dコンバータ13の入力で測定された電圧である。点線および一点鎖線の曲線UI、UIIは、比較的大きなコンデンサ15を用いた測定を示しており、破線および実線の曲線UI′、UII′は、非常に小さなコンデンサ15または全くコンデンサなしでの測定を示している。
【0058】
第一の対の曲線UI、UI′は、水銀圧力約200バールでの通常の動作条件下で測定された典型的な電圧応答を示している。第二の対の曲線UII、UII′は、たとえば50バールという低下された圧力での同じ測定を示している。
【0059】
明らかに、この電圧応答では、ランプ1内の圧力は、電圧測定から決定できる。増大した電流を加えるとき電圧に鋭い負の変化があれば、高い圧力を示す一方、より平坦な変化は水銀の凝縮を示し、よって低下した圧力を示す。最後に、この変化は正になる傾向がある、すなわち、電圧降下の代わりに上昇が観察されることができる。
【0060】
したがって、ドライバ制御は、ランプ圧力がランプのスイッチをオフにするのに十分低くなった時間を決定するために、この電圧変化のためのある閾値を設定できる。
【0061】
さらに進んだ解決策は、電圧ステップ応答の遷移時間をも測定できる。見て取れるように、電圧ステップ応答もランプ圧力に対する強い変化を示す。
【0062】
図6は、本発明に基づく、気体放電ランプを駆動するための駆動ユニット4のある可能な実現を示している。
【0063】
駆動ユニット4は、気体放電ランプ1の放電室3内の電極2と、コネクタ9を介して接続されている。さらに、駆動ユニット4は、電源8に接続され、シャットダウン要求または他の制御信号を受け取るための入力18およびランプ状態(LS: lamp status)をより高レベルの制御ユニットに報告するための出力19を備えている。
【0064】
駆動ユニット4は、直流コンバータ24、整流段(commutation stage)25、点弧機構32、ランプ電力制御ユニット10、電圧測定ユニット14および電流測定ユニット12を有している。
【0065】
ランプ電力制御ユニット10は、コンバータ24、整流段25および点弧機構32を制御し、ランプ・ドライバ4の気体放電ランプ1における電圧挙動を監視する。
【0066】
整流段25は、4つのスイッチ27、28、29、30を制御するドライバ26を有する。点弧機構32は、点弧コントローラ31(たとえばコンデンサ、抵抗器および火花ギャップを有する)および点弧変圧器を有する。点弧変圧器は、二つのチョーク33、34を援用して、ランプ1が点弧できるよう、対称的な高電圧を生成する。
【0067】
コンバータ24は、たとえば380Vの外部の直流電源8によって供給を受ける。直流コンバータ24はスイッチ20、ダイオード21、インダクタンス22およびコンデンサ23を有する。ランプ電力制御ユニット10は、レベル・コンバータ35を介してスイッチ20を、よってランプ1内の電流をも制御する。このようにして、ランプ電力制御ユニット10によって実際のランプ電力が調節される。
【0068】
電圧測定ユニット14は、コンデンサ23に並列に接続され、二つの抵抗器16、17をもつ分圧器の形で実現される。コンデンサ15は抵抗器17に並列に接続される。
【0069】
電圧測定のために、低下された電圧が、分圧器16、17を介してコンデンサ23に逸らされ、アナログ/デジタル・コンバータ13によってランプ電力制御ユニット10において測定される。コンデンサ15は、測定信号中の高周波数ひずみを減らすはたらきをする。
【0070】
ランプ1における電流は、電流測定ユニット12によってランプ電力制御ユニット10において監視される。電流測定ユニット12も電磁誘導の原理に基づいて動作する。ランプ電力制御ユニット10は、レベル・コンバータ35およびスイッチ20によってランプ1内の電流を制御するので、瞬間電流レベルもランプ電力制御ユニット10において引き受けられることができる。この場合、本発明に基づいて要求される電流測定ユニットは、該制御回路内に直接統合され、図6に示した外部電流測定ユニット36はたとえば検査目的のために使うことができ、あるいはランプの型によっては全くなしですますことができる。
【0071】
ランプ電力制御ユニット10はプログラム可能なマイクロプロセッサを有する。解析ユニット11は、ここでは制御回路のマイクロプロセッサ上で走るソフトウェアの形で実装される。解析ユニット11は、電圧測定ユニット14および電流測定ユニット12によって報告される測定値を解析する。
【0072】
電圧測定ユニット14およびアナログ/デジタル・コンバータ13とともに、解析ユニット11は、ランプ電力低下プロセスの間、および低下された動作レベルでのランプの駆動の間にランプ電圧を監視するための監視機構を提供する。解析ユニット11内での解析または評価は、本発明に基づく所定の放電プロセス安定性基準に関して実行されることができ、それによりランプ電力制御ユニット10は図1および図4のもとで述べたプロセスを調節できる。
【0073】
図5のもとで述べたような圧力の監視も解析ユニット11内で実行できる。電圧はここで監視され、電流も電流測定ユニット12を援用して測定できるからである。したがって、解析ユニット11を使って、冷却基準も評価でき、シャットダウン・プロセスは、ランプ1を最終的にオフにすることによって終了できる。
【0074】
ランプのシャットダウン・プロセスを開始するためのコマンドは、シャットダウン要求の形で入力18を介して直接ランプ制御ユニット10に転送される。ランプ1の瞬間的なランプ状態は、ランプ電力制御ユニット10によって出力19を介して知らされることができる。
【0075】
具体的には、ランプ状態LSは、ランプ1がまだ移行期において低下した電力レベルに向かって駆動されているかどうかを、あるいはシャットダウン・プロセスが完了しているかどうかを報告できる。必要なら、たとえば瞬間的な圧力に係り、解析ユニット11によって決定される他のより精密な情報がこの出力19を介して知らされることもできる。
【0076】
図7および図8は、ランプ駆動ユニット4が画像レンダリング・システム40内の中央制御ユニット5によって駆動されることができる可能な実現を示している。以下では、画像レンダリング・システム40は、基本構築が図9に示されるプロジェクター・システムであるとする。
【0077】
図9に示されるプロジェクター・システムは、シーケンシャル・システムであり、異なる色――赤、緑および青――が一つずつレンダリングされ、それにより目の反応時間のため、ユーザーによって相異なる色が知覚される。
【0078】
それにより、ランプ1の光は、反射器41内で、赤R、緑Gおよび青Bの三つの色領域をもつ色ホイール42上に合焦される。この色ホイールはあるペースで駆動されており、そのため赤の画像、緑の画像または青の画像のいずれかが生成される。色ホイール42の位置に従って生成される赤、緑または青の光は次いでコリメート・レンズ43によって合焦され、それにより表示ユニット44は均一に照らされる。ここで、表示ユニット44は、その上にいくつかの微小な可動鏡が個々の表示素子として配置されているチップである。鏡は光によって照らされる。各鏡は、投影領域上の画像ピクセル、すなわち結果として得られる画像が明となるべきか暗となるべきかに従って傾けられ、それにより光はプロジェクター・レンズ45を通じて投影領域に反射されるか、プロジェクター・レンズから外れて吸収体に入射するよう反射されるかする。ミラー・アレイの個々の鏡はグリッドを形成する。該グリッドを用いていかなる画像でも生成でき、たとえばビデオ画像がレンダリングされることもできる。画像中の異なる明るさレベルのレンダリングは、パルス幅変調法を援用して実施される。すなわち、ディスプレイ装置の各表示素子は、投影領域の対応するピクセル領域に画像継続時間のある部分の間光が入射し、残りの時間については投影領域に入射しないように制御される。
【0079】
そのようなプロジェクター・システムの一例は、テキサスインスツルメンツ(登録商標)のDLP(登録商標)システム(DLP=Digital Light Processing)である。
【0080】
当然ながら、本発明はその種のプロジェクター・システムに限定されるものではなく、他のいかなる種類のプロジェクター・システムとともに使うこともできる。
【0081】
図9は、ランプ1がランプ駆動ユニット4によって制御されることを示している。ランプ駆動ユニット4は今度は中央制御ユニット5によって制御される。ここで、中央制御ユニット5はランプ1を冷却するためのベンチレータ7をも制御し、また色ホイール42と表示装置44との同期も管理する。ビデオ信号Vのような信号はこの図に示されるように中央制御ユニット5に入力されることができる。
【0082】
図7にも示されるように、この中央制御ユニット5は電源8にも接続され、ユーザーがプロジェクター・システム40をオフにするのに用いるユーザー・インターフェース6、たとえばオン/オフ・スイッチまたは遠隔制御入力などを設けられる。制御ユニットはその後、シャットダウン要求(shut down request)SRをランプ・ドライバ4の入力に送り、これは所定の仕方でランプ電力を低下させ、次いでランプが十分冷めたのちにランプをオフにすることができる。同時に、中央制御ユニット5は、ランプ1の冷却を加速するために、ベンチレータ7を作動させる、あるいはベンチレーションを最大まで増加させる。さらに、中央制御ユニット5は表示ユニット44を制御して、画像がもはやレンダリングされないようにできる。ユーザーの観点からは、装置が実際にオフにされ、投影領域にもはや光が投影されていない。
【0083】
ランプ駆動ユニット4が完全にランプ1をオフにするや否や、ランプ駆動ユニット4は対応するランプ状態信号LSを出力19を介して中央制御ユニット5に報告する。すると中央制御ユニット5はベンチレータ7およびランプ駆動ユニット4をオフにして、たとえば装置全体を待機状態にし、電源8のスイッチを介して該装置を完全にオフにする。
【0084】
図8は、いくらか異なる実現を示している。この実現と図8の実現との差は、基本的には、この場合にはベンチレータ7が中央制御ユニット5によって制御されず、ランプ駆動ユニット4によって直接制御されるということである。
【0085】
図10は、より長い時間期間にわたってより低い電力レベルに向けて駆動されているランプについての、上から下の順に、平均ランプ電圧U、ランプ電流I、所望される電力PDおよび実際の電力PAの曲線を示している。ランプの実際の、すなわち瞬間電力PAは、ランプ電流Iに追随する。所望される電力PDは指定された目標電力PT 20Wまで低下させられ、そのレベルに保持される。実際の電力は、安定性基準の評価のため、この指針に不均一に従う。これは、図1のもとで上記した単純な電力調節である。
【0086】
グラフの中ほどで電力が実際まず20Wまで降下していることが明瞭に見て取れる。その後、小さなスパイクが見える。これは平均ランプ電圧Uについての曲線にも見られる。同時に、ランプ電流Iが比較的大きな増分で上がっていることが見て取れる。この繰り返された増加のため、実際のランプ電力PAは究極的に30Wに近づく。これは、この実験で使われたランプについての適用可能な電力値であり、この値で放電アークはちょうど維持できる。実験の終了付近で、所望電力はシャットダウンされ、すぐ再びオンにされる。実際のランプ電力PAはゆっくりと公称値に戻る。
【0087】
本発明は、好ましい実施形態およびそれに対する変形の形で開示されたが、本発明の範囲から外れることなくそれに数多くの追加的な修正および変形をなしうることは理解されるであろう。明確のため、本願を通じて単数形の使用は複数を排除せず、「有する」は他のステップまたは要素を排除しないことも理解されるものとする。また、「ユニット」は明示的に単一の実体であると記載されていない限り、複数のブロックまたはデバイスを有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に従う、第一の実施形態に基づく方法の諸作用の可能なシーケンスのフローチャートを示す図である。
【図2】放電プロセス安定性基準を監視するための可能な監視プロセスのフローチャートを示す図である。
【図3】本発明に従う、第二の実施形態に基づく方法の諸作用の可能なシーケンスのフローチャートを示す図である。
【図4】本発明に従う、第三の実施形態に基づく方法の諸作用の可能なシーケンスのフローチャートを示す図である。
【図5】本発明に従う、第四の実施形態に基づく方法の諸作用の可能なシーケンスのフローチャートを示す図である。
【図6】本発明に基づくランプ駆動ユニットのブロック図である。
【図7】第一の実施形態に基づくプロジェクター・システムのランプ、冷却手段および要求される制御コンポーネントの概略図である。
【図8】第二の実施形態に基づくプロジェクター・システムのランプ、冷却手段および要求される制御コンポーネントの概略図である。
【図9】本発明に基づくプロジェクター・システムのある実施形態の概略図である。
【図10】放電がちょうど維持できる最低電力レベルへのランプ電力の低下および通常動作電力へのランプ電力のその後の復帰における、ランプ電圧、ランプ電流、公称ランプ電力および瞬間ランプ電力の推移を示す図である。
【図11】ランプ電力の変動の間の120ワットUHPランプの電圧変動を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電ランプ、特に水銀蒸気放電ランプをシャットダウンする方法に関する。さらに、本発明は、高圧放電ランプを駆動する駆動ユニットに関する。さらに、本発明は、高圧放電ランプおよびそのような駆動ユニットを有する画像レンダリング・システム、特にプロジェクター・システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧放電ランプ、たとえば水銀蒸気放電ランプは、石英などの高温に耐えられる物質でできた容器を有する。両側から、タングステンでできた電極がこの容器中に突出している。以下で「アーク管」とも呼ばれる容器は、一つまたは複数の希薄気体からなる充満物を含んでおり、水銀蒸気放電ランプの場合、希薄気体は主として水銀である。電極間に高電圧を加えることによって、電極の先端間に光のアークが生成され、その後アークは低電圧で維持できる。その光学的な性質のため、高圧放電ランプはなかでも投影目的に好ましく使われる。そのような用途のためには、できる限り自然な光のスペクトル組成を伴う、できる限り高い光度が望まれる。そうした性質は、いわゆる「高圧気体放電ランプ」すなわち「HIDランプ」(High Intensity Discharge Lamp[高強度放電ランプ])、特に「UHPランプ」(Ultra High Performance Lamp[超高性能ランプ])を用いて最適に達成できる。
【0003】
そのようなランプを点弧させるいくつかの異なる方法が存在している。従来式の方法を使うと、20kVを超える高電圧サージが電極に加えられる。いくつかのより新しい方法はたった5kVの点弧電圧と、必要な電圧を下げる作用をする追加的な「アンテナ」で動作する。
【0004】
これらすべての方法は、ユーザーが、うっかりそのようなランプを消したあと、ランプが再びオンにできるまでにかなりの時間――数分に及ぶこともある――待たなければならないという問題がある。これは、オンにされている間、ランプが非常に熱くなり、アーク管内の圧力が著しく上昇するためである。アーク管内の圧力が高いほど、要求される点弧電圧は大きくなる。したがって、消したあと、通常のレベルの点弧電圧でランプが点弧できる圧力値に達するまで冷める必要があるのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この問題に対処するため、JP2004/319193Aは、プロジェクター・システムのランプのより低い電力レベルが引き下げられ、次いで、ランプが冷めて、オフにしたあと比較的すみやかに再点弧できる点になるまで、このより低い電力レベルで駆動される方法を記載している。ランプが該より低い電力レベルで動作している移行期の間、前記プロジェクター・システムは、画面が、画像が投影されない状態にされることを保証する。この移行期に再びランプがオンにされれば、画面は再アクティブ化されることができ、ランプ電力はすばやく上げられる。ユーザーの観点からは、あたかもランプが即座に再びオンにされたように見える。しかしながら、最終的にオフにされたあとランプが再点弧される速度は、移行期にランプが駆動されていた電力に依存する。というのも、ある電力では、ある温度平衡、よってある圧力平衡がアーク管中で生じるからである。さらに、通常のランプの場合のように、再点弧時間は点弧電圧のレベルに依存する。できるだけ低い点弧電圧でランプを再点弧できるためには、移行期において動作電力をできるだけ低いレベルに維持することが有利である。他方、ランプは移行期にどんな無差別な低電力レベルでも駆動できるというものではなく、放電アークが保持できる可能な最低レベルからある安全マージンをもった電力レベルで駆動される必要がある。そうでなければ、たとえばランプ内で起こる物理的プロセスのために生じる電流または電圧のちょっとした逸脱でさえ、ランプの不用意の早まった消弧につながりうる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、究極的にオフにされる前にランプを可能な最低温度にできる、高圧放電ランプをシャットダウンする方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明は、高圧放電ランプをシャットダウンする方法であって、電極間の放電を点弧状態から消弧状態への移行状態に維持することを可能にする低下された動作レベルにランプ電力を下げる段階と、ランプが冷めるよう、ランプを前記低下された動作レベルで駆動する段階とを有する。本発明によれば、このランプ電力低下プロセスの間および前記低下された動作レベルでのランプの駆動の間、ランプ電圧が、所定の放電プロセス安定性基準に関して監視される。放電プロセス安定性基準が満たされない場合には、ランプ電力が暫時上げられる。最終的には、十分な期間後、ランプ電力は完全にシャットダウンされる。十分な期間後とは、消弧後に「通常(normal)」点弧回路を使って短時間で――好ましくは即座に――再点弧できるような気体圧力の状態になるまでランプが冷めるのを許容するだけの期間である。
【0008】
この方法を使うと、前記低下した動作レベルは本質的に、アーク放電が維持されうる可能な最低動作レベルである。したがって、この方法は、ランプが不用意に早すぎて消弧されないことを保証しつつ、ランプが消弧される際のランプの特に低い最終温度を達成することを可能にする。
【0009】
高圧放電ランプを駆動する適切な駆動ユニットは、シャットダウン要求を受領するシャットダウン要求入力と、ランプ電力制御ユニットとを有するべきである。該ランプ電力制御ユニットは、シャットダウン要求の受領に際して、電極間の放電を点弧状態から消弧状態への移行状態に維持することを可能にする低下された動作レベルにランプ電力が下げられ、ランプが冷めるよう、前記低下された動作レベルでランプが駆動されるよう構成される。さらに、本発明によれば、本駆動ユニットは、ランプ電力低下プロセスの間および前記低下された動作レベルでのランプの駆動の間、ランプ電圧を、所定の放電プロセス安定性基準に関して監視する監視装置を有する必要がある。本発明によれば、駆動ユニットは、放電プロセス安定性基準が満たされない場合には、ランプ電力が暫時上げられ、十分な期間たった後にランプ電力が完全にシャットダウンされるように構成されるべきである。十分な期間たった後とは、消弧後に短時間で――好ましくは即座に――ランプを再点弧できるような気体圧力の状態になるまでランプが冷めるのを許容するだけの期間である。
【0010】
従属請求項および以下の記述は、本発明の特に有利な実施形態および特徴を開示する。
【0011】
好適な安定性基準を定義するためにはいくつもの可能性が存在する。しかしながら、安定性基準を決定するため、ランプ電圧平均値が好ましくは常に、たとえばある時間窓のようなある窓にわたって測定されるか、あるいはランプ電圧のいくつかの相続く測定値(標本値)が決定される。該平均値を援用して、個々の電圧値の逸脱が強すぎるかどうかが決定できる。
【0012】
たとえば、ある時間の長さ内の最大の測定値が決定でき、この最大値が平均値のある因数倍よりも小さければ安定性基準が満たされる。前記の因数はそのランプおよび厳密な駆動回路に多分に依存する。その値はたとえば1.25であることができる。
【0013】
しかしながら、ある特に好ましい実施形態では、ランプ電圧平均値はスライディング窓にわたって決定されることができ、現在の測定値と平均値との差がある閾値より小さい限り安定性基準が満たされる。この閾値レベルを決定する際には、測定の通例の不正確さのルおよびランプ電圧の通例の変化レートを考慮に入れることができる。こうして、1%より大きな逸脱が、ある特定の駆動回路をもつあるランプについての不安定性を含意できる。別のランプおよびドライバについては、10%の逸脱が受け容れ可能であることもできる。
【0014】
代替的に、測定を実行する他の諸方法が可能である。たとえば、ある固定数の測定値について、平均値のほかに最大値および最小値が計算されることができる。その場合、最大値および最小値の平均値からの逸脱がしかるべく評価されることになる。
【0015】
スライディング平均値の代わりに、ランプの電圧の1周期または半周期にわたる全測定値にわたる平均値が使われることができる。これは、摂動を抑えるためにしばしば行われる。そのような場合、不正確さのレベルは低下し、小規模な不安定性の効果も低下する。したがって、そのような場合、閾値はいくぶん低めに選ぶことができる。
【0016】
ランプ電力の調節は、たとえば、現在のランプ電力を直接ある非常に低い所望ランプ電力(所望される値)に向けて調節することによって実行できる。この場合、たとえば、所望ランプ電力としてある電力レベルが定義され、該ある電力レベルは、放電が安定して維持されるレベルより下にある。通常、瞬間的な電力調節は、ランプ・ドライバにおいて電流を調節することによって実行される。すなわち、電流を増減することによって瞬間電力の増減が得られるのである。
【0017】
好ましくは、少なくとも低下した動作レベルでランプを駆動する間、所望ランプ電力(公称電力とも呼ばれる)は目標ランプ電力によって制御され、放電プロセス安定性基準が満たされていない場合には瞬間的な所望ランプ電力が上げられ、その後は実際のランプ電力(または実際の電流)は前記瞬間的な所望ランプ電力によって制御される。公称電力が目標電力に向けて徐々に適応され、該所望電力に従って今度は瞬間電力が調節されるというこの方法は、通常動作において公称電力を調節するためにドライバが使用するドライバの公称電力調節にいかなる介入も必要とすることなく、所望される電力――想像上の量としての――が所望される指針に従って調節されることができるという利点を有する。そのため調節サイクル全体がより高速に動作できる。これと対照的に、瞬間電力調節が、「通常の」電力調節のために使われるのでなく低下した電力レベルに電力を調節するよう「誤用」されるとしたら、調節サイクルは遅くなり、電力調節はそれほどすばやく反応できないであろう。
【0018】
通常の動作レベルから低下した電力レベルへの電力の低下はいくつかの仕方で行える。たとえば、第一の方法では、電力は比較的ゆっくり、連続的または段階的に低下させることができる。もう一つの好ましい方法は、電力がある第一の低電力レベルまで引き下げられ、そのレベルからはゆっくり、連続的または段階的に、放電の安定性が維持される最低レベルに達するまで低下させられることを要求する。それにより、所望ランプ電力が目標ランプ電力に調整される電力低下の変化速度を、瞬間ランプ電力に依存して選ぶことができる。換言すれば、比較的低い瞬間電力の場合には電力はゆっくりしたレートでさらに低下させられるだけだが、より高い瞬間電力については変化はより速く効果をもつ。この方法では、システムは、ランプが不用意に早すぎて消弧されるのを避けるために、可能な最低電力レベルに向かって手探りで進む。
【0019】
本発明のある好ましい実施形態では、ランプの強制冷却が、少なくともシャットダウン・プロセスの一段階の間に開始または増加させられる。たとえば、ベンチレータまたはベンチレータ・アレイなどの冷却手段が何らかの仕方でランプ内に配置されることができ、ランプをシャットダウンするコマンドがランプ・ドライバに送られ、ランプが冷却されるべきとなるとすぐに、この冷却手段がしかるべく作動させられるか、毎分回転数が上げられるか、補助クーラーがオンにされるかする。
【0020】
ランプが十分冷めるまでの経過時間の長さを決定するためにもさまざまな可能性が存在する。たとえば、ランプは、低い平衡温度に達したのちオフにされることができる。
【0021】
これはたとえば、電圧が下がるレートを観察することによってできる。電圧の著しい変化が検知されなければ、平衡に達したと想定してよい。
【0022】
特に単純なバージョンでは、ランプは、前記低下された動作レベルである所定の時間期間にわたって駆動されたのちにシャットダウンされる。この時間期間は好ましくは少なくとも約60秒である。
【0023】
もう一つの好ましい実施形態では、前記低下した動作レベルでのランプの駆動の間、ランプ内の気体圧力が監視され、ランプは観察された気体圧力にしたがってシャットダウンされる。
【0024】
ランプ圧力は、平均ランプ電圧に基づいて、たとえば先行する通常動作における平均ランプ電圧を測定および記録し、次いでそのランプ電圧がある値を下回ったかどうかを検査することによって推定できる。前記のある値は、通常動作における平均電圧にある因数を乗算して決定できる。たとえば、冷却時間は、低下した電力レベルにおける平均ランプ電圧が通常動作における平均ランプ電圧の半分しかなければ十分であると見なすことができる。
【0025】
本発明のあるさらなる好ましい実施形態によれば、ランプ電圧およびランプ電流が監視および解析され、ランプの電流‐電圧特性の属性が、アーク管内の気体圧力の指標を与えるために判別される。この方法は、水銀蒸気放電ランプの場合に特にうまくいく。
【0026】
通常の動作モードでは、水銀蒸気放電ランプは負の電流‐電圧特性を示す。通例電流を低下させることによって実施されるランプ電力の低下は、動作電圧の上昇を引き起こす。しかしながら、いくらかの水銀が凝縮すれば、電力(または電流)の変動に応答した電圧応答は、主として水銀圧力の変動によって決定される。これは、電流低下に対してランプ電圧の異なる応答を生じる。不飽和のランプの場合とは逆に、飽和したランプの電圧は水銀凝縮およびその結果として生じる水銀圧力の低下のために降下する。電圧応答挙動の同様の違いが、電流増の場合にも観察される。この挙動は次のように説明できる:不飽和領域の間、すなわち通常の動作モードにおいて電流が低下させられれば、電極間のプラズマはより低い温度に冷め、電離度が下がる。結果として、ランプの抵抗が増し、動作電圧も増す。他方、飽和状態では、電流増は結果としてランプの増加した熱出力を生じる。これはまず溶融質量からの水銀蒸発につながる。気体中で蒸発した水銀原子が増えると、ランプ抵抗の増加にもつながる。この効果が優勢な役割を演じ、飽和したランプについて、電流が増加した場合、電圧の上昇につながる。
【0027】
電流レベルの関数としての電圧の挙動に関するこの観察は、電圧および電流ならびにこれらの測定値の相互の関係を同時に測定することによって、簡単かつ込み入っていない仕方で、バルブ中の水銀飽和の状態の指標を決定するために使用される。
【0028】
本発明のあるさらなる実施形態では、ランプ電圧の傾きとランプ電流の傾きの比が、ランプ内での水銀飽和の状態に関する定量的な指標を与えるのに使用される。
【0029】
本発明に基づく画像レンダリング・システム、特に投影システムは、本発明によれば、高圧放電ランプのほかに、該ランプのための本発明に従う駆動ユニットを有する。特に好ましくは、そのような画像レンダリング・システムは、駆動ユニットにシャットダウン要求を送るために、および/またはたとえば、シャットダウン・プロセスの少なくともある段階でランプの強制冷却を開始するか強制冷却を増強するための冷却手段を制御するために、中央制御ユニットをも有するべきである。
【0030】
そのようなより上位の制御ユニットの使用は、典型的なランプ・ドライバは、たとえば電力を制御するランプ・ドライバのプログラム可能な制御チップ内の対応するソフトウェア更新によってわずかに修正されるだけでよいという利点を有する。ランプ・ドライバへの込み入ったハードウェア修正は必要ない。
【0031】
たいていのプロジェクター・システムは、いずれにせよ、たとえば色ホイール(colour wheel)またはディスプレイといった該プロジェクター・システムのさらなるコンポーネントを制御し、同期させる中央制御ユニットを有している。そのような場合、中央制御は、ランプ・ドライバのためのシャットダウン要求と同時に、ディスプレイを暗くするためのディスプレイのための適切なコマンドを発するために使われることができる。ディスプレイを暗くするとはすなわち、ランプがシャットダウン要求を受け取ってからランプの完全な消弧までの間の移行期にある限り、さらなる画像レンダリングが回避されるようにすることである。このプロセスは実質的にユーザーには知覚されずに進む。ユーザーは、不用意にオフにしたあとすぐにプロジェクターを再びオンにできるという事実に気がつくのみである。それは、ランプがまだ移行状態にあって、そのため通常動作電力レベルに引き戻されることができるため、あるいはランプが実際完全に消弧されていたとしても、本発明の方法によって十分冷めていたため、すぐ再点弧できるためである。
【0032】
一般に、本発明は高圧放電ランプのすべての種類のために使用されうる。好ましくは、本発明はHIDランプ、特にUHPランプのために使用される。本発明は、投影システムにおける使用のために意図されているのでない他のランプ、たとえば自動車照明システムのためのランプにも適用できる。
【0033】
本発明の他の目的および特徴は、付属の図面とともに考慮される以下の詳細な記述から明らかになるであろう。しかしながら、図面は、本発明の解説の目的のためにのみ意図されており、本発明の限界の定義として意図されているのではないことは理解されるものとする。図面において、同様の参照符号は全体を通じて同じ要素を表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図面におけるオブジェクトの大きさは明確のために選ばれたのであって、必ずしも実際の相対的な大きさを反映するものではない。
【0035】
図1〜図5には、水銀蒸気放電ランプをオフにするための諸作用の可能なシーケンスが記載されている。言うまでもなく、これらの確定した作用の経過との関連で述べられる値は純粋に例示的なものであり、本発明の一般性を制限することなく、ランプの通常動作における120/130ワットの公称電力をもつ水銀蒸気放電ランプに関する。明らかに、これらの値は、実際に使用されるランプまたはドライバ構築に合うよう調整されなければならない。
【0036】
図1に示された作用のシーケンスでは、シャットダウン・プロセスにおいて瞬間ランプ電力が直接影響される。このフローチャートの初期ステップ50、51は、瞬間電力が通例の仕方で、たとえばランプの動作のための通常の公称値に向けて調節されることを示している。ステップ51は、ループで、シャットダウン要求が出されたかどうか、すなわちユーザーがランプをオフにしたがっているかどうかを継続的に検査している。もしそうであれば、ランプを実際にシャットダウンする方法がステップ52で始まる。この目的のため、「目標電力」がまずステップ52で20Wに低下させられる。20Wの電力レベルは、ランプが安定した仕方で動作できるレベルより下にある。目標電力は、好ましくは公称電力の20ないし25%の範囲内、特に好ましくはこれより下であるべきである。
【0037】
その後、ステップ53、54、55および56を有する調節ループが始まり、第一のステップ53で、放電プロセス安定性基準が評価される。この評価の可能性は、のちに図2を援用してより詳細に説明する。放電プロセス安定性基準が満たされれば、瞬間電力は、瞬間電流を下げることによって、所望の目標電力20Wが達成されるまで低下させられる(ステップ54)。他方、放電プロセス安定性基準が満たされていない場合には、ステップ55で実際の電力は暫時上げられる。
【0038】
その後、どちらの場合においても、ステップ56は、ランプが十分冷めたかどうかが評価される。先述したように、これは単に、ある時間期間が経過したかどうか、すなわちある冷却期間が経過したかどうかを検査することに関わるのでもよい。同様に、ランプの瞬間電圧または平均電圧に係る基準が評価されることもできる。さらなる可能性は、ランプ内の温度を測定するか、圧力を推定することである。それは図11を援用してのちにより詳細に説明する。
【0039】
ステップ56で冷却基準に到達していなかった場合、再びステップ53が放電プロセス安定性基準を評価し、瞬間電力をしかるべくさらに低下させるか、あるいは――放電プロセス安定性基準が満たされなかった場合には――ステップ55で再び電力を上げるかする。この方法は、瞬間ランプ電力が、冷却基準を満たせるまで、放電アークが維持できる可能な最低レベルに恒久的に保持されることを保証する。ひとたびステップ56が、冷却基準が満たされたと判定すると、ランプの最終的なシャットダウンがステップ57で続くことができる。
【0040】
図2は、放電プロセス安定性基準を評価するための可能なフローチャートを示している。図2に示された作用の経緯全体は、図1のフローチャートのステップ53において生起できる。
【0041】
評価は、ステップ60で、ランプ電圧標本値Uiを測定することによって始まる。この測定は、規則的な間隔で実行される。たとえば、現在使われるドライバ回路では、ランプの半周期内に短い間隔で16回の測定がなされる。次いで、ステップ61で、ランプ電力平均値
【数1】
が、直前のN個の標本値の平均値として計算される。その後、ステップ62で、新たな平均値が、前の測定について計算された古い平均値と比較される。ステップ63で、平均値の更新が行われることができる。すなわち、次の測定サイクルのために古い平均値が新しい平均値で置き換えられる。
【0042】
直前のN個の測定値を記憶しておいて対応する平均値を古い平均値と比較しもし該当すれば古い平均値を更新するために平均値を計算するのではなく、その代わりに、新しい測定値Uiを用いてスライディング平均値
【数2】
が、たとえば次の式にしたがって継続的に計算されることもできる
【数3】
これは、一次の低域通過フィルタに対応し、離散的なアナログ回路を使っても実現されうる。
【0043】
現在の平均値が計算される仕方に関わりなく、ステップ64は実際の安定性基準の評価を、現在の測定値Uiの平均値からの相違がある閾値Usより大きいかどうか(あるいは該閾値に達したかどうか)を評価することによって行える。この閾値は、平均値のある割合と定義できる。たとえば、ランプおよび実装されるドライバ回路に依存して、この閾値は平均の1%から10%の間にあってよい。
【0044】
図3は、図1と同様の、本発明に基づく、ランプのスイッチをオフにする方法を示している。ここでも、ステップ70で、ランプの動作の間に「通常」の電力調節が実行されており、ステップ71はループで、シャットダウン要求が出されたかどうかを検査する。また、もしそうである場合、ステップ72はまず目標電力20Wを指定する。
【0045】
次いで調節サイクルが始まり、これもステップ73における安定性基準の評価で始まる。しかしながら、図1での方法と異なり、電力調節への直接的な介入は起こらない。その代わり、放電プロセス安定性基準が満たされ、所望ランプ電力に従って瞬間電力を調節する調節サイクルのための所望電力が、目標電力が目標電力より大きい限り、ステップ74で低下させられ、さもなくばステップ75で所望電力が上げられる。ステップ76では、実際の、すなわち瞬間電力が瞬間的な所望電力に従って調節される。所定の所望電力に従った実際の電力の調節は、電流を調節することによって通例の仕方で実施される。
【0046】
図1に基づく方法と同様、その後ステップ77で冷却基準が満たされているかどうかが評価され、やはりループが完了され、冷却基準が満たされている限り、ランプは最終的にステップ78で消弧される。
【0047】
図3に記載した作用のシーケンスの利点は、ドライバの通例の実際の電力調節に実際に介入することなく、想像上の所望される電力値が要求に従って目標電力に向かって低下させられ、結果としていかなる形であれ該通例の実際の電力調節が不必要に妨げられることがないという利点を有する。
【0048】
図1および図3に基づく方法の間、電力はゆっくりと目標電力に向かって調整される。これは、電力調節が発振につながる傾向があるときにとりわけ望ましい。こうして、小さなきざみで、図1のステップ54で実際の電力が目標電力に近づくか、図3のステップ74で所望電力が目標電力に近づく(それによりステップ76で実際の電力が瞬間的な所望電力に従って調節される)。きざみの大きさはランプおよびドライバ構築に応じて定義できる。たとえば、公称電力120Wをもつランプの所望電力は、各ランプ周期ごとに0.067W低下させることができる。ランプ周波数50Hzでは、これは20Wの目標電力が30秒以内に達成されることを許容することになる。ステップ53または73で不安定が検出された場合には、それぞれステップ55およびステップ75で、瞬間電力または所望電力がたとえば5W上げられることができる。次いで目標電力への戻りが、1周期当たり0.067Wで起こることができる。
【0049】
この方法では、瞬間電力の変化レートを適応させることが望ましいことがありうる。こうして、所望電力と目標電力との間の相違が大きい場合については、所望電力は1周期当たり0.1W低下させることができ、たとえば5Wより小さな相違については、所望電力は周期当たり0.01Wしか低下させられない。
【0050】
プロセスを加速するため、所望電力は、初期の第一の段階で、放電アークの消弧を引き起こさないことが確かである限り、より低い電力に低下させられることができる。本方法のこのバージョンは図4に示されている。ここでもまた、ステップ80はランプの通例の電力調節を表しており、ステップ81でシャットダウン要求の継続的なポーリングが実行される。そのようなシャットダウン要求が出されれば、所望電力はステップ82ですぐ35Wに下げられる。その後、実際の電力は、ステップ83における瞬間的な所望電力に従って調節される。その後、目標電力を20Wにセットすることがステップ84で行われる。これが図1および図3のステップ52およびステップ72に対応する。次いで所望電力の指定された目標電力へのさらなる調節が、ステップ85、86、87、88、89で起こりうる。これは、図3の調節サイクルのステップ73、74、75、76、77に対応する。次いで、ステップ89において冷却基準が評価され、基準が満たされたら、ステップ90でランプは最終的に消弧できる。
【0051】
この特に好ましい二段階のプロセスは、目標電力より上の安全な値までの初期の速い電力低下と、実際の目標値へのその後のゆっくりした慎重な接近とを保証する。
【0052】
図5に示されるさらなる代替的なプロセスでは、ステップ100での通例の電力調節の間にステップ101でシャットダウン要求が出されたあと、所望電力がステップ102ですぐ20Wに低下させられ、次いでステップ103で実際の電力がこの所望される電力に近づくよう調節される。すぐにステップ104(ここでは明確のために後続ステップとして示されている)で目標電力は20Wに低下させられ、ランプが消弧されないことを確かにするために、ステップ105で放電プロセス安定性基準の評価が実行される。次のループ、すなわち放電プロセス安定性基準の定期的な評価、そしてステップ107における所望電力の対応する上昇またはステップ106における所望電力の低下、そしてまたステップ108における瞬間的な所望電力への実際の電力の調節、そしてステップ109における冷却基準の評価のためのループは、図3および図4を援用してすでに述べた通例の方法に対応する。この場合も、ステップ109で冷却基準が満たされるや否や、ステップ110で最終的にランプは消弧できる。
【0053】
図3のステップ73、図4のステップ85または図5のステップ105における放電プロセス安定性基準の評価は、図1のステップ53について、あるいは図2を用いてすでに述べたのと同じ仕方で実施されることもできる。
【0054】
すでに上述したように、単純に時間の値を冷却基準のために取ることもできる。すなわち、その長さの時間後には、ランプはたとえば平衡温度に達することによっておそらく十分冷めていると推定でき、この長さの時間の経過後には、プロセスは中断でき、ランプは最終的にオフにできる。120Wの水銀ランプについて実行された実験では、ランプが約20Wの目標電力まで調節して下げられるとき、60〜240秒の冷却期間が十分であることが観察されている。この時間の長さは、外気冷却などによるランプの冷却に応じて短縮できる。
【0055】
ランプ内圧力がより精密に推定されるほうがいいのは明らかである。そうすれば、ランプは圧力があるレベルを下回ったときにしかるべく最終的にオフにできる。これは、一方では、不都合な条件のためランプの冷却が遅くなる場合に、ランプがオフにされるのが早すぎることがなく、他方では、ランプが実際に非常に早く冷却する状況において、プロセスに不必要に長い時間がかからないという利点を有する。
【0056】
ランプ内の瞬間的な圧力を推定する一つの可能性は、電流と電圧の間、あるいは電流の傾きと電圧の傾きの間の関係を観察することに関わる。
【0057】
図11は、ランプの1電流サイクルにわたって記録された電流I(上)と電圧U13(下)の曲線の例を示している。電流Iは、各反転前に、いわゆる反フラッター・パルス(anti-flutter pulse)という追加的な増大を示す。これは、たいていのランプにおいて安定性の理由のために適用される。示されている電圧U13は、図6のA/Dコンバータ13の入力で測定された電圧である。点線および一点鎖線の曲線UI、UIIは、比較的大きなコンデンサ15を用いた測定を示しており、破線および実線の曲線UI′、UII′は、非常に小さなコンデンサ15または全くコンデンサなしでの測定を示している。
【0058】
第一の対の曲線UI、UI′は、水銀圧力約200バールでの通常の動作条件下で測定された典型的な電圧応答を示している。第二の対の曲線UII、UII′は、たとえば50バールという低下された圧力での同じ測定を示している。
【0059】
明らかに、この電圧応答では、ランプ1内の圧力は、電圧測定から決定できる。増大した電流を加えるとき電圧に鋭い負の変化があれば、高い圧力を示す一方、より平坦な変化は水銀の凝縮を示し、よって低下した圧力を示す。最後に、この変化は正になる傾向がある、すなわち、電圧降下の代わりに上昇が観察されることができる。
【0060】
したがって、ドライバ制御は、ランプ圧力がランプのスイッチをオフにするのに十分低くなった時間を決定するために、この電圧変化のためのある閾値を設定できる。
【0061】
さらに進んだ解決策は、電圧ステップ応答の遷移時間をも測定できる。見て取れるように、電圧ステップ応答もランプ圧力に対する強い変化を示す。
【0062】
図6は、本発明に基づく、気体放電ランプを駆動するための駆動ユニット4のある可能な実現を示している。
【0063】
駆動ユニット4は、気体放電ランプ1の放電室3内の電極2と、コネクタ9を介して接続されている。さらに、駆動ユニット4は、電源8に接続され、シャットダウン要求または他の制御信号を受け取るための入力18およびランプ状態(LS: lamp status)をより高レベルの制御ユニットに報告するための出力19を備えている。
【0064】
駆動ユニット4は、直流コンバータ24、整流段(commutation stage)25、点弧機構32、ランプ電力制御ユニット10、電圧測定ユニット14および電流測定ユニット12を有している。
【0065】
ランプ電力制御ユニット10は、コンバータ24、整流段25および点弧機構32を制御し、ランプ・ドライバ4の気体放電ランプ1における電圧挙動を監視する。
【0066】
整流段25は、4つのスイッチ27、28、29、30を制御するドライバ26を有する。点弧機構32は、点弧コントローラ31(たとえばコンデンサ、抵抗器および火花ギャップを有する)および点弧変圧器を有する。点弧変圧器は、二つのチョーク33、34を援用して、ランプ1が点弧できるよう、対称的な高電圧を生成する。
【0067】
コンバータ24は、たとえば380Vの外部の直流電源8によって供給を受ける。直流コンバータ24はスイッチ20、ダイオード21、インダクタンス22およびコンデンサ23を有する。ランプ電力制御ユニット10は、レベル・コンバータ35を介してスイッチ20を、よってランプ1内の電流をも制御する。このようにして、ランプ電力制御ユニット10によって実際のランプ電力が調節される。
【0068】
電圧測定ユニット14は、コンデンサ23に並列に接続され、二つの抵抗器16、17をもつ分圧器の形で実現される。コンデンサ15は抵抗器17に並列に接続される。
【0069】
電圧測定のために、低下された電圧が、分圧器16、17を介してコンデンサ23に逸らされ、アナログ/デジタル・コンバータ13によってランプ電力制御ユニット10において測定される。コンデンサ15は、測定信号中の高周波数ひずみを減らすはたらきをする。
【0070】
ランプ1における電流は、電流測定ユニット12によってランプ電力制御ユニット10において監視される。電流測定ユニット12も電磁誘導の原理に基づいて動作する。ランプ電力制御ユニット10は、レベル・コンバータ35およびスイッチ20によってランプ1内の電流を制御するので、瞬間電流レベルもランプ電力制御ユニット10において引き受けられることができる。この場合、本発明に基づいて要求される電流測定ユニットは、該制御回路内に直接統合され、図6に示した外部電流測定ユニット36はたとえば検査目的のために使うことができ、あるいはランプの型によっては全くなしですますことができる。
【0071】
ランプ電力制御ユニット10はプログラム可能なマイクロプロセッサを有する。解析ユニット11は、ここでは制御回路のマイクロプロセッサ上で走るソフトウェアの形で実装される。解析ユニット11は、電圧測定ユニット14および電流測定ユニット12によって報告される測定値を解析する。
【0072】
電圧測定ユニット14およびアナログ/デジタル・コンバータ13とともに、解析ユニット11は、ランプ電力低下プロセスの間、および低下された動作レベルでのランプの駆動の間にランプ電圧を監視するための監視機構を提供する。解析ユニット11内での解析または評価は、本発明に基づく所定の放電プロセス安定性基準に関して実行されることができ、それによりランプ電力制御ユニット10は図1および図4のもとで述べたプロセスを調節できる。
【0073】
図5のもとで述べたような圧力の監視も解析ユニット11内で実行できる。電圧はここで監視され、電流も電流測定ユニット12を援用して測定できるからである。したがって、解析ユニット11を使って、冷却基準も評価でき、シャットダウン・プロセスは、ランプ1を最終的にオフにすることによって終了できる。
【0074】
ランプのシャットダウン・プロセスを開始するためのコマンドは、シャットダウン要求の形で入力18を介して直接ランプ制御ユニット10に転送される。ランプ1の瞬間的なランプ状態は、ランプ電力制御ユニット10によって出力19を介して知らされることができる。
【0075】
具体的には、ランプ状態LSは、ランプ1がまだ移行期において低下した電力レベルに向かって駆動されているかどうかを、あるいはシャットダウン・プロセスが完了しているかどうかを報告できる。必要なら、たとえば瞬間的な圧力に係り、解析ユニット11によって決定される他のより精密な情報がこの出力19を介して知らされることもできる。
【0076】
図7および図8は、ランプ駆動ユニット4が画像レンダリング・システム40内の中央制御ユニット5によって駆動されることができる可能な実現を示している。以下では、画像レンダリング・システム40は、基本構築が図9に示されるプロジェクター・システムであるとする。
【0077】
図9に示されるプロジェクター・システムは、シーケンシャル・システムであり、異なる色――赤、緑および青――が一つずつレンダリングされ、それにより目の反応時間のため、ユーザーによって相異なる色が知覚される。
【0078】
それにより、ランプ1の光は、反射器41内で、赤R、緑Gおよび青Bの三つの色領域をもつ色ホイール42上に合焦される。この色ホイールはあるペースで駆動されており、そのため赤の画像、緑の画像または青の画像のいずれかが生成される。色ホイール42の位置に従って生成される赤、緑または青の光は次いでコリメート・レンズ43によって合焦され、それにより表示ユニット44は均一に照らされる。ここで、表示ユニット44は、その上にいくつかの微小な可動鏡が個々の表示素子として配置されているチップである。鏡は光によって照らされる。各鏡は、投影領域上の画像ピクセル、すなわち結果として得られる画像が明となるべきか暗となるべきかに従って傾けられ、それにより光はプロジェクター・レンズ45を通じて投影領域に反射されるか、プロジェクター・レンズから外れて吸収体に入射するよう反射されるかする。ミラー・アレイの個々の鏡はグリッドを形成する。該グリッドを用いていかなる画像でも生成でき、たとえばビデオ画像がレンダリングされることもできる。画像中の異なる明るさレベルのレンダリングは、パルス幅変調法を援用して実施される。すなわち、ディスプレイ装置の各表示素子は、投影領域の対応するピクセル領域に画像継続時間のある部分の間光が入射し、残りの時間については投影領域に入射しないように制御される。
【0079】
そのようなプロジェクター・システムの一例は、テキサスインスツルメンツ(登録商標)のDLP(登録商標)システム(DLP=Digital Light Processing)である。
【0080】
当然ながら、本発明はその種のプロジェクター・システムに限定されるものではなく、他のいかなる種類のプロジェクター・システムとともに使うこともできる。
【0081】
図9は、ランプ1がランプ駆動ユニット4によって制御されることを示している。ランプ駆動ユニット4は今度は中央制御ユニット5によって制御される。ここで、中央制御ユニット5はランプ1を冷却するためのベンチレータ7をも制御し、また色ホイール42と表示装置44との同期も管理する。ビデオ信号Vのような信号はこの図に示されるように中央制御ユニット5に入力されることができる。
【0082】
図7にも示されるように、この中央制御ユニット5は電源8にも接続され、ユーザーがプロジェクター・システム40をオフにするのに用いるユーザー・インターフェース6、たとえばオン/オフ・スイッチまたは遠隔制御入力などを設けられる。制御ユニットはその後、シャットダウン要求(shut down request)SRをランプ・ドライバ4の入力に送り、これは所定の仕方でランプ電力を低下させ、次いでランプが十分冷めたのちにランプをオフにすることができる。同時に、中央制御ユニット5は、ランプ1の冷却を加速するために、ベンチレータ7を作動させる、あるいはベンチレーションを最大まで増加させる。さらに、中央制御ユニット5は表示ユニット44を制御して、画像がもはやレンダリングされないようにできる。ユーザーの観点からは、装置が実際にオフにされ、投影領域にもはや光が投影されていない。
【0083】
ランプ駆動ユニット4が完全にランプ1をオフにするや否や、ランプ駆動ユニット4は対応するランプ状態信号LSを出力19を介して中央制御ユニット5に報告する。すると中央制御ユニット5はベンチレータ7およびランプ駆動ユニット4をオフにして、たとえば装置全体を待機状態にし、電源8のスイッチを介して該装置を完全にオフにする。
【0084】
図8は、いくらか異なる実現を示している。この実現と図8の実現との差は、基本的には、この場合にはベンチレータ7が中央制御ユニット5によって制御されず、ランプ駆動ユニット4によって直接制御されるということである。
【0085】
図10は、より長い時間期間にわたってより低い電力レベルに向けて駆動されているランプについての、上から下の順に、平均ランプ電圧U、ランプ電流I、所望される電力PDおよび実際の電力PAの曲線を示している。ランプの実際の、すなわち瞬間電力PAは、ランプ電流Iに追随する。所望される電力PDは指定された目標電力PT 20Wまで低下させられ、そのレベルに保持される。実際の電力は、安定性基準の評価のため、この指針に不均一に従う。これは、図1のもとで上記した単純な電力調節である。
【0086】
グラフの中ほどで電力が実際まず20Wまで降下していることが明瞭に見て取れる。その後、小さなスパイクが見える。これは平均ランプ電圧Uについての曲線にも見られる。同時に、ランプ電流Iが比較的大きな増分で上がっていることが見て取れる。この繰り返された増加のため、実際のランプ電力PAは究極的に30Wに近づく。これは、この実験で使われたランプについての適用可能な電力値であり、この値で放電アークはちょうど維持できる。実験の終了付近で、所望電力はシャットダウンされ、すぐ再びオンにされる。実際のランプ電力PAはゆっくりと公称値に戻る。
【0087】
本発明は、好ましい実施形態およびそれに対する変形の形で開示されたが、本発明の範囲から外れることなくそれに数多くの追加的な修正および変形をなしうることは理解されるであろう。明確のため、本願を通じて単数形の使用は複数を排除せず、「有する」は他のステップまたは要素を排除しないことも理解されるものとする。また、「ユニット」は明示的に単一の実体であると記載されていない限り、複数のブロックまたはデバイスを有していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明に従う、第一の実施形態に基づく方法の諸作用の可能なシーケンスのフローチャートを示す図である。
【図2】放電プロセス安定性基準を監視するための可能な監視プロセスのフローチャートを示す図である。
【図3】本発明に従う、第二の実施形態に基づく方法の諸作用の可能なシーケンスのフローチャートを示す図である。
【図4】本発明に従う、第三の実施形態に基づく方法の諸作用の可能なシーケンスのフローチャートを示す図である。
【図5】本発明に従う、第四の実施形態に基づく方法の諸作用の可能なシーケンスのフローチャートを示す図である。
【図6】本発明に基づくランプ駆動ユニットのブロック図である。
【図7】第一の実施形態に基づくプロジェクター・システムのランプ、冷却手段および要求される制御コンポーネントの概略図である。
【図8】第二の実施形態に基づくプロジェクター・システムのランプ、冷却手段および要求される制御コンポーネントの概略図である。
【図9】本発明に基づくプロジェクター・システムのある実施形態の概略図である。
【図10】放電がちょうど維持できる最低電力レベルへのランプ電力の低下および通常動作電力へのランプ電力のその後の復帰における、ランプ電圧、ランプ電流、公称ランプ電力および瞬間ランプ電力の推移を示す図である。
【図11】ランプ電力の変動の間の120ワットUHPランプの電圧変動を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク管内に一対の電極が配された高圧放電ランプをシャットダウンする方法であって、
・電極間のアーク放電を点弧状態から消弧状態への移行状態に維持することを可能にする低下された動作レベルにランプ電力を下げる段階と;
・ランプが冷めるよう、ランプを前記低下された動作レベルで駆動する段階と;
・このランプ電力低下プロセスの間および前記低下された動作レベルでのランプの駆動の間、ランプ電圧を、所定の放電プロセス安定性基準に関して監視し、該放電プロセス安定性基準が満たされない場合にはランプ電力を上げる段階と;
・十分な期間後、ランプ電力を完全にシャットダウンする段階であって、十分な期間後とは、ランプが消弧後に短時間で再点弧できるような気体圧力の状態までランプが冷めるのを許容する期間である段階とを有する方法。
【請求項2】
前記放電プロセス安定性基準の判定のために、ある窓にわたるランプ電圧平均値が決定される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
スライディング窓にわたるランプ電圧平均値が決定され、
瞬間的に測定される電圧値の前記ランプ電圧平均値までの距離がある閾値以下である限り前記放電プロセス安定性基準が満足される、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも低下した動作レベルでランプを駆動する間、所望ランプ電力が目標ランプ電力によって制御され、
前記放電プロセス安定性基準が満たされていない場合には瞬間的な所望ランプ電力が上げられ、
その後実際のランプ電力は前記瞬間的な所望ランプ電力によって制御される、
請求項1ないし3のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
ランプ電力低下プロセスの間、電力低下速度が瞬間ランプ電力に従って選ばれる、
請求項1ないし4のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
ランプ電力低下プロセスの初期にランプ電力が所定の第一の電力レベルにまで高速に低下させられる、
請求項1ないし5のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
少なくともシャットダウン・プロセスのある段階の間に、ランプの強制冷却が開始または増強される、
請求項1ないし6のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記低下された動作レベルである所定の時間期間にわたって駆動されたのちにランプがシャットダウンされる、
請求項1ないし7のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記低下された動作レベルでランプを駆動する間、ランプのアーク管内の気体圧力が監視され、その観察された気体圧力に従ってランプがシャットダウンされる、
請求項1ないし7のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記アーク管内の気体圧力の指標を与えるために、ランプ電圧およびランプ電流が監視および解析され、ランプの電流‐電圧特性の性質が判別される、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
アーク管内に一対の電極が配された高圧放電ランプを駆動する駆動ユニットであって、
・シャットダウン要求を受領するシャットダウン要求入力と;
・シャットダウン要求の受領に際して、電極間のアーク放電を点弧状態から消弧状態への移行状態に維持することを可能にする低下された動作レベルにランプ電力が下げられ、ランプが冷めるよう、前記低下された動作レベルでランプが駆動されるよう構成されるランプ電力制御ユニットと;
・ランプ電力低下プロセスの間および前記低下された動作レベルでのランプの駆動の間、ランプ電圧を、所定の放電プロセス安定性基準に関して監視する監視装置とを有しており;
前記ランプ電力制御ユニットは、前記放電プロセス安定性基準が満たされない場合には、ランプ電力が上げられ、十分な期間たった後にランプ電力が完全にシャットダウンされるように構成され、該十分な期間たった後とは、消弧後に短時間でランプが再点弧できるような気体圧力の状態になるまでランプが冷めるのを許容するだけの期間である、駆動ユニット。
【請求項12】
アーク管内に一対の電極が配された高圧放電ランプと、請求項10記載の駆動ユニットとを有する画像レンダリング・システム、特にプロジェクター・システム。
【請求項13】
請求項11記載の画像レンダリング・システムであって、前記駆動ユニットにシャットダウン要求を送り、少なくともシャットダウン・プロセスのある段階の間にランプの強制冷却を開始または増強するために冷却機構を制御する中央制御ユニットを有するシステム。
【請求項1】
アーク管内に一対の電極が配された高圧放電ランプをシャットダウンする方法であって、
・電極間のアーク放電を点弧状態から消弧状態への移行状態に維持することを可能にする低下された動作レベルにランプ電力を下げる段階と;
・ランプが冷めるよう、ランプを前記低下された動作レベルで駆動する段階と;
・このランプ電力低下プロセスの間および前記低下された動作レベルでのランプの駆動の間、ランプ電圧を、所定の放電プロセス安定性基準に関して監視し、該放電プロセス安定性基準が満たされない場合にはランプ電力を上げる段階と;
・十分な期間後、ランプ電力を完全にシャットダウンする段階であって、十分な期間後とは、ランプが消弧後に短時間で再点弧できるような気体圧力の状態までランプが冷めるのを許容する期間である段階とを有する方法。
【請求項2】
前記放電プロセス安定性基準の判定のために、ある窓にわたるランプ電圧平均値が決定される、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
スライディング窓にわたるランプ電圧平均値が決定され、
瞬間的に測定される電圧値の前記ランプ電圧平均値までの距離がある閾値以下である限り前記放電プロセス安定性基準が満足される、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも低下した動作レベルでランプを駆動する間、所望ランプ電力が目標ランプ電力によって制御され、
前記放電プロセス安定性基準が満たされていない場合には瞬間的な所望ランプ電力が上げられ、
その後実際のランプ電力は前記瞬間的な所望ランプ電力によって制御される、
請求項1ないし3のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
ランプ電力低下プロセスの間、電力低下速度が瞬間ランプ電力に従って選ばれる、
請求項1ないし4のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
ランプ電力低下プロセスの初期にランプ電力が所定の第一の電力レベルにまで高速に低下させられる、
請求項1ないし5のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
少なくともシャットダウン・プロセスのある段階の間に、ランプの強制冷却が開始または増強される、
請求項1ないし6のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
前記低下された動作レベルである所定の時間期間にわたって駆動されたのちにランプがシャットダウンされる、
請求項1ないし7のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
前記低下された動作レベルでランプを駆動する間、ランプのアーク管内の気体圧力が監視され、その観察された気体圧力に従ってランプがシャットダウンされる、
請求項1ないし7のうちいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
前記アーク管内の気体圧力の指標を与えるために、ランプ電圧およびランプ電流が監視および解析され、ランプの電流‐電圧特性の性質が判別される、
請求項9記載の方法。
【請求項11】
アーク管内に一対の電極が配された高圧放電ランプを駆動する駆動ユニットであって、
・シャットダウン要求を受領するシャットダウン要求入力と;
・シャットダウン要求の受領に際して、電極間のアーク放電を点弧状態から消弧状態への移行状態に維持することを可能にする低下された動作レベルにランプ電力が下げられ、ランプが冷めるよう、前記低下された動作レベルでランプが駆動されるよう構成されるランプ電力制御ユニットと;
・ランプ電力低下プロセスの間および前記低下された動作レベルでのランプの駆動の間、ランプ電圧を、所定の放電プロセス安定性基準に関して監視する監視装置とを有しており;
前記ランプ電力制御ユニットは、前記放電プロセス安定性基準が満たされない場合には、ランプ電力が上げられ、十分な期間たった後にランプ電力が完全にシャットダウンされるように構成され、該十分な期間たった後とは、消弧後に短時間でランプが再点弧できるような気体圧力の状態になるまでランプが冷めるのを許容するだけの期間である、駆動ユニット。
【請求項12】
アーク管内に一対の電極が配された高圧放電ランプと、請求項10記載の駆動ユニットとを有する画像レンダリング・システム、特にプロジェクター・システム。
【請求項13】
請求項11記載の画像レンダリング・システムであって、前記駆動ユニットにシャットダウン要求を送り、少なくともシャットダウン・プロセスのある段階の間にランプの強制冷却を開始または増強するために冷却機構を制御する中央制御ユニットを有するシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−547169(P2008−547169A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−517656(P2008−517656)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051952
【国際公開番号】WO2006/136993
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【国際出願番号】PCT/IB2006/051952
【国際公開番号】WO2006/136993
【国際公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】
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