高圧放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具並びに照明システム
【課題】高圧放電灯の始動性を改善した高圧放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具並びに照明システムを提供する。
【解決手段】インバータ制御回路部8は、イグナイタ回路部7及び極性反転回路部6のスイッチング動作を、高圧放電灯DLを絶縁破壊させる絶縁破壊モード、高圧放電灯DLのランプ電極を予熱する高周波予熱モード、高圧放電灯DLに矩形波交流を供給することで高圧放電灯DLを安定点灯させる矩形波点灯モードの3つのモードに順次切り替えることで、不点灯状態の高圧放電灯DLを始動点灯させる。インバータ制御回路部8は、高周波予熱モードにおいて、絶縁破壊モードにおける第1スイッチング周波数(イグナイタ回路部7が備えるLC共振回路7aの共振周波数の奇数分の1の周波数)より低い周波数であって、共振周波数の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数付近でイグナイタ回路部7をスイッチングさせる。
【解決手段】インバータ制御回路部8は、イグナイタ回路部7及び極性反転回路部6のスイッチング動作を、高圧放電灯DLを絶縁破壊させる絶縁破壊モード、高圧放電灯DLのランプ電極を予熱する高周波予熱モード、高圧放電灯DLに矩形波交流を供給することで高圧放電灯DLを安定点灯させる矩形波点灯モードの3つのモードに順次切り替えることで、不点灯状態の高圧放電灯DLを始動点灯させる。インバータ制御回路部8は、高周波予熱モードにおいて、絶縁破壊モードにおける第1スイッチング周波数(イグナイタ回路部7が備えるLC共振回路7aの共振周波数の奇数分の1の周波数)より低い周波数であって、共振周波数の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数付近でイグナイタ回路部7をスイッチングさせる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具並びに照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、HIDランプのような高圧放電灯を点灯させる高圧放電灯点灯装置として、インダクタ及びキャパシタからなるLC共振回路の共振作用により発生させた高電圧の始動電圧を高圧放電灯に印加して、高圧放電灯を始動点灯させるものがあった(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献に開示された高圧放電灯点灯装置は、交流電源を直流に変換するAC/DC変換回路と、AC/DC変換回路の出力をスイッチングすることで矩形波電圧を発生させて、高圧放電灯を含む負荷回路部に供給するDC/DCコンバータと、AC/DC変換回路及びDC/DCコンバータのスイッチング動作を制御する制御回路とを備えている。
【0004】
そして制御回路では、AC/DC変換回路及びDC/DCコンバータのスイッチング動作を制御することによって、高圧放電灯を始動させる共振イグニッションフェーズと、グロー放電を発生させてランプ電極を予熱するウォームアップフェーズと、高圧放電灯に矩形波電圧を印加することで高圧放電灯を安定点灯させる通常動作フェーズとを順次行わせ、高圧放電灯を始動点灯させている。
【0005】
すなわち高圧放電灯の始動点灯時には、先ず共振イグニッションフェーズにおいて、LC共振回路を構成するインダクタ及びキャパシタを電気的に共振させることで、高圧放電灯を絶縁破壊させるのに十分な高電圧の始動電圧を発生させ、この始動電圧を高圧放電灯の両端間に印加する。
【0006】
次にウォームアップフェーズでは、共振イグニッションフェーズにおける周波数よりも比較的低い周波数の電圧を高圧放電灯に印加することで、グロー放電を起こさせてランプ電極を予熱し、その後通常動作フェーズにおいて、アーク放電を継続して起こさせることで、高圧放電灯を安定的に点灯させている。
【特許文献1】特表2005−507553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に開示された高圧放電灯点灯装置では、ウォームアップフェーズで動作中に高圧放電灯が立ち消えした場合、DC/DCコンバータの出力である約300Vのバス電圧までしか再始動電圧として高圧放電灯に印加することができず、高圧放電灯が完全に消灯した場合は、高圧放電灯の始動に失敗してしまうという問題があった。また高圧放電灯の始動に失敗した場合、上記の高圧放電灯点灯装置では、共振イグニッションフェーズとウォームアップフェーズとが繰り返し行われることになり、始動時間が長引いてしまうという問題があった。
【0008】
また共振イグニッションフェーズでは、高圧放電灯に高電圧の始動電圧を印加するため、始動電圧を1秒以内に連続印加しても高圧放電灯が始動しない場合は、再始動の前にガラスバルブ内の放電蒸気圧を低下させる必要があり、数秒〜数分間の休止期間を開けた後に再び高電圧の始動電圧を印加していた。したがって、上記特許文献に開示された高圧放電灯点灯装置では、高圧放電灯を初始動させる場合でも、数秒〜数分間の休止期間を開けることで、高圧放電灯の始動が遅れる可能性があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、高圧放電灯の始動性を改善した高圧放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具並びに照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、直流電源部と、LC共振回路を具備し直流電源部の出力をスイッチングすることによって高圧放電灯を絶縁破壊させる始動電圧を発生させるイグナイタ回路部と、直流電源部の出力をスイッチングすることによって矩形波交流に変換し高圧放電灯を含む負荷回路部に供給して高圧放電灯を安定点灯させる電力変換部と、イグナイタ回路部及び電力変換部のスイッチング動作を、高圧放電灯を絶縁破壊させる絶縁破壊モード、高圧放電灯に予熱電流を供給してランプ電極を予熱する高周波予熱モード、高圧放電灯に矩形波交流を供給することで高圧放電灯を安定点灯させる矩形波点灯モードの3つのモードに順次切り替える制御回路部とを備え、制御回路部は、絶縁破壊モードにおいて、LC共振回路の共振周波数の奇数分の1の周波数である第1スイッチング周波数付近でイグナイタ回路部のスイッチング素子をスイッチングさせることで始動電圧を発生させるとともに、高周波予熱モードにおいて、第1スイッチング周波数よりも低く且つ共振周波数の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数付近でイグナイタ回路部のスイッチング素子をスイッチングさせることで得られた高周波電圧を負荷回路部に供給することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、制御回路部は、高周波予熱モードにおいて、第2スイッチング周波数を含む所定の周波数範囲内でイグナイタ回路部のスイッチング周波数を掃引してスイッチングさせることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、所定の周波数範囲とは、LC共振回路と、点灯状態の高圧放電灯を含む負荷回路部との周波数特性に対して、遅相側の周波数帯であることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1つの発明において、制御回路部は、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行する際に、イグナイタ回路部のスイッチング周波数を第1スイッチング周波数付近から第2スイッチング周波数付近まで時間の経過に応じて徐々に低下させることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、制御回路部は、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行する際に、イグナイタ回路部のスイッチング周波数を第1スイッチング周波数付近から第2スイッチング周波数付近まで段階的に低下させることを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、制御回路部が、スイッチング周波数を段階的に低下させる際に、第1スイッチング周波数より低く且つ第2スイッチング周波数より高い周波数であって、共振周波数の奇数分の1の周波数となる1乃至複数の中間周波数を設定し、第1スイッチング周波数から1乃至複数の中間周波数を経て第2スイッチング周波数まで段階的に低下させることを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は照明器具の発明であって、請求項1〜6の何れか1項に記載の高圧放電灯点灯装置と、当該放電灯点灯装置によって電力を供給される放電灯を具備した灯具とを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項8の発明の発明は照明システムの発明であって、請求項1の発明において、請求項7記載の照明器具を備えて点灯制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、制御回路部が、放電灯点灯装置のモードを絶縁破壊モードから高周波予熱モードに切り替えた際に、絶縁破壊モードにおける第1スイッチング周波数より低い周波数であって、LC共振回路の共振周波数の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数付近でイグナイタ回路部をスイッチングさせているので、高周波予熱モードで動作中に立ち消えが発生した場合は、LC共振回路の共振作用によって直流電源部の出力よりも高電圧の共振電圧を高圧放電灯に印加することができ、したがって高圧放電灯が再点灯しやすくなるから、高圧放電灯の始動性を向上させることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、高周波予熱モードで動作中に立ち消えが発生すると、制御回路部によって、イグナイタ回路部のスイッチング周波数が、第2スイッチング周波数を含む所定の周波数範囲内で掃引制御されるから、スイッチング周波数が共振周波数に近付くにつれて共振が強まり、LC共振回路の共振作用によって直流電源部の出力よりも高電圧の共振電圧を高圧放電灯に印加することができるので、請求項1の発明と同様、高圧放電灯が再点灯しやすくなり、高圧放電灯の始動性を向上させることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、高周波予熱モードにおいて制御回路部がスイッチング周波数を低下させるにつれて、高圧放電灯に供給されるランプ電流が増加するから、高圧放電灯の両ランプ電極を十分に温めて、グロー放電からアーク放電に移行させやすくできる。
【0021】
請求項4の発明によれば、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに切り替わる際に、スイッチング周波数を徐々に低下させることで、LC共振回路を構成するコンデンサへの充電電流が急激に増加するのを防止して、回路要素に加わるストレスを低減することができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに切り替わる際に、スイッチング周波数を段階的に低下させることで、請求項4の発明と同様、LC共振回路を構成するコンデンサへの充電電流が急激に増加するのを防止して、回路要素に加わるストレスを低減することができる。
【0023】
請求項6の発明によれば、制御回路部が、モード切替時にスイッチング周波数を段階的に低下させる際に、第1スイッチング周波数より低く且つ第2スイッチング周波数より高い周波数であって共振周波数の奇数分の1の周波数となる1乃至複数の中間周波数を経て、第2スイッチング周波数まで段階的に低下させており、立ち消えの発生しやすいモード切替直後に高圧放電灯が立ち消えした場合は、第2スイッチング周波数に比べて共振周波数に近い中間周波数でスイッチング動作を行うことで、LC共振により発生する電圧を大きくでき、立ち消え後に高圧放電灯が再点灯しやすくなるから高圧放電灯の始動性をさらに向上させることができる。
【0024】
請求項7の発明によれば、請求項1乃至6の発明の何れかと同様の効果を奏し得る照明器具を提供することができる。
【0025】
請求項8の発明によれば、請求項7の発明と同様の効果を奏し得る照明システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1〜図5に基づいて説明する。本実施形態の高圧放電灯点灯装置は、図1のブロック回路図に示すように、ダイオードブリッジからなり商用交流電源1を全波整流する整流回路部2と、整流回路部2の出力を平滑化する直流電源回路部3と、直流電源回路部3の出力を制御するチョッパ制御回路部4と、HIDランプのような高圧放電灯DLを含む負荷回路部5と、直流電源回路部3の直流出力をスイッチングすることで矩形波交流電力に変換して負荷回路部5に供給する極性反転回路部6と、直流電源回路部3の直流出力をスイッチングすることによって高圧放電灯DLを絶縁破壊させるための始動電圧を発生させるイグナイタ回路部7と、極性反転回路部6及びイグナイタ回路部7のスイッチング動作を制御するインバータ制御回路部8とを主要な構成として備えている。
【0028】
直流電源回路部3は昇圧型のチョッパ回路からなり、整流回路部2の高圧側出力端に一端が接続されたインダクタL1と、インダクタL1の他端と整流回路部2の低圧側出力端との間にドレイン−ソース間が接続されたMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)よりなるスイッチング素子Q1と、インダクタL1の他端にアノードが接続されたダイオードD1と、ダイオードD1のカソードと整流回路部2の低圧側出力端との間に接続された電解コンデンサC1とを備えている。
【0029】
チョッパ制御回路部4は、直流電源回路部3の出力電圧V1(電解コンデンサC1の両端電圧)を検出し、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数やオン/オフのデューティ比を制御することによって出力電圧V1を所望の電圧値に制御する。ここにおいて、整流回路部2と直流電源回路部3とチョッパ制御回路部4とで直流電源部が構成される。
【0030】
極性反転回路部6は、直流電源回路部3の出力端間(すなわちコンデンサC1の両端間)にそれぞれ接続されたスイッチング素子Q3,Q4の直列回路、スイッチング素子Q5,Q6の直列回路を有する4石のフルブリッジ回路からなり、スイッチング素子Q3,Q4の接続点と、スイッチング素子Q5,Q6の接続点との間には、オートトランス(単巻変圧器)構造のインダクタL3と高圧放電灯DLとインダクタL2とが直列に接続され、さらにインダクタL3及び高圧放電灯DLからなる直列回路と並列にコンデンサC2が接続されている。ここで、インダクタL2およびコンデンサC2からなるLC共振回路と高圧放電灯DLとで負荷回路部5が構成されている。
【0031】
またイグナイタ回路部7は、直流電源回路部3の出力端間に接続された極性反転回路部6内のスイッチング素子Q3,Q4の組、スイッチング素子Q5,Q6の組と、インダクタL3と、インダクタL3の一次巻線(分路巻線)N1の両端間にスイッチング素子Q4を介して接続されたコンデンサC3及び抵抗R1の直列回路とを備え、インダクタL3の直列巻線N2は高圧放電灯DLに接続されている。またインダクタL3の一次巻線N1とコンデンサC3とでLC共振回路7aが構成されている。
【0032】
インバータ制御回路部8は例えばマイクロコンピュータからなり、負荷状態に応じて各スイッチング素子Q3〜Q6のオン/オフを制御している。例えば高圧放電灯DLの安定点灯時(矩形波点灯モード時)には、インバータ制御回路部8は、対角の位置に配置されたスイッチング素子Q4,Q5のペアをオフさせた状態でスイッチング素子Q3,Q6のペアをオン/オフさせる第1の期間(図3(a)の期間T22)と、スイッチング素子Q3,Q6のペアをオフさせた状態でスイッチング素子Q4,Q5のペアをオン/オフさせる第2の期間(図3(a)の期間T21)とを比較的低い周波数で交番させており、第1の期間T22ではスイッチング素子Q3をオンさせた状態でスイッチング素子Q6を比較的高い周波数でオン/オフさせ、また第2の期間T21ではスイッチング素子Q4をオンさせた状態でスイッチング素子Q5を比較的高い周波数でオン/オフさせている。
【0033】
次に、この高圧放電灯点灯装置により高圧放電灯DLが不点灯状態から安定点灯状態に至るまでの動作を、図3(a)(b)を参照して説明する。尚、図3(a)は高圧放電灯DLが不点灯状態から安定点灯状態に至るまでの各部の波形図であり、同図(b)は絶縁破壊モード中の期間Taにおけるスイッチング動作とランプ電圧の関係を示している。
【0034】
先ず、高圧放電灯DLが不点灯状態で図示しない点灯スイッチが投入されると、チョッパ制御回路部4およびインバータ制御回路部8が制御動作を開始し、チョッパ制御回路部4では、スイッチング素子Q1のオン/オフを制御することによって直流電源回路部3にチョッパ動作を行わせ、入力電源を昇圧した所定電圧値の直流電圧を出力する。
【0035】
インバータ制御回路部8は、先ず絶縁破壊モードで動作を開始し(図3(a)の期間TM1)、上記LC共振回路7aの共振周波数f0の奇数分の1となる数百kHzの第1スイッチング周波数f1付近で、スイッチング素子Q3,Q6の組がオンになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオフになる期間T01と、スイッチング素子Q3,Q6の組がオフになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオンになる期間T02とを交互に設けることで、LC共振回路7aを共振させ、このときインダクタL3の一次巻線N1に発生する共振電圧を、一次巻線(分路巻線)N1と直列巻線N2との巻線比で昇圧した電圧を、高圧放電灯DLの電極間に印加して、絶縁破壊を発生させる。ここで、図2(a)は無負荷時(高圧放電灯DLの不点灯状態)におけるLC共振回路7aの周波数特性と動作周波数の関係を示しており、本実施形態ではLC共振回路7aの共振周波数f0が約430kHzとなっている。而してインバータ制御回路部8は、絶縁破壊モードにおいて、共振周波数f0の奇数分の1(例えば3分の1)の第1スイッチング周波数f1(約143kHz)付近、すなわち第1スイッチング周波数f1を含む所定の周波数範囲f1swp(例えば96kHz〜160kHZ)で、スイッチング素子Q3,Q6の組と、スイッチング素子Q4,Q5の組とを交互にオンさせる動作周波数を掃引する。この動作周波数の掃引に応じて、LC共振回路7aの共振作用により高圧放電灯DLの両端間に印加されるランプ電圧Vlaの大きさが変化し、動作周波数が共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第1スイッチング周波数f1(約143kHz)に近付くほどランプ電圧Vlaが大きくなって、高圧放電灯DLを絶縁破壊させるのに必要な始動電圧Vp1を高圧放電灯DLに印加することができ、高圧放電灯DLを絶縁破壊させることができる(図3(a)の時刻t1)。尚、インバータ制御回路部8では、絶縁破壊モードにおける第1スイッチング周波数f1を共振周波数f0や、共振周波数f0の奇数分の1の周波数に設定してもよく、LC共振回路7aの共振作用によって高圧の共振電圧を高圧放電灯DLに印加して、高圧放電灯DLを絶縁破壊を起こさせることができる。
【0036】
上述の絶縁破壊モードにおいて高圧放電灯DLの絶縁破壊が発生すると、高圧放電灯DLではグロー放電が発生し、その後アーク放電に至るのであるが、その間に両側のランプ電極に予熱電流を供給して、両ランプ電極を素早く温めるモードが高周波予熱モードである(図3(a)の期間TM2)。ここで、図2(b)は高圧放電灯DLの始動時(高周波予熱モード時)におけるランプ電流(図中のa)、コンデンサC2に流れるコンデンサ電流(図中のb)、チョークL2,L3に流れるチョーク電流(図中のc)の周波数特性を示し、後述する第2スイッチング周波数f2において、インダクタL2,L3、コンデンサC3及び高圧放電灯DLの合成インピーダンス内で高圧放電灯DLに流れるランプ電流I1が所望の電流値(すなわちランプ電極の予熱に必要な電流値)となるように、各回路要素の定数を設定してある。
【0037】
高周波予熱モードでは、インバータ制御回路部8が、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、共振周波数f0の奇数分の1(本実施形態では11分の1)の周波数である第2スイッチング周波数f2(約39kHz)で、スイッチング素子Q3,Q6の組がオフになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオンになる期間T11と、スイッチング素子Q3,Q6の組がオンになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオフになる期間T12とを交互に設けており、高圧放電灯DLの両ランプ電極にランプ電流I1が供給されることで、両ランプ電極が予熱される。尚、高周波予熱モードにおける第2スイッチング周波数f2は、LC共振回路7aと点灯状態の高圧放電灯DLを含む負荷回路部5との周波数特性に対して、遅相側の周波数帯に設定されている。
【0038】
そして、高周波予熱モードにおいて高圧放電灯DLの両ランプ電極が均等に予熱されると、図3(a)の時刻t3において、インバータ制御回路部8が、高周波予熱モードから矩形波点灯モードにモードを切り換える。矩形波点灯モードでは(図3(a)の期間TM3)、インバータ制御回路部8が、対角の位置に配置されたスイッチング素子Q4,Q5のペアをオフさせた状態でスイッチング素子Q3,Q6のペアをオン/オフさせる第1の期間T21と、スイッチング素子Q3,Q6のペアをオフさせた状態でスイッチング素子Q4,Q5のペアをオン/オフさせる第2の期間T22とを比較的低い周波数(例えば数十Hz〜数百Hz)で交番させており、第1の期間T21ではスイッチング素子Q3をオンさせた状態でスイッチング素子Q6を比較的高い周波数でオン/オフさせ、第2の期間T22ではスイッチング素子Q4をオンさせた状態でスイッチング素子Q5を比較的高い周波数でオン/オフさせることで、数十Hz〜数百Hzの矩形波交流電圧を高圧放電灯DLに印加する。このとき、高圧放電灯DLのガラスバルブ内の温度とともに、ランプ電圧が徐々に上昇し、数分後にはランプ電圧が略一定の安定状態となり、この状態でアーク放電が継続して発生することにより、高圧放電灯DLが安定点灯状態となる。
【0039】
以上のようにインバータ制御回路部8では絶縁破壊モード、高周波予熱モード、矩形波点灯モードの3つのモードを順次切り替えることで、不点灯状態の高圧放電灯DLを安定点灯状態に移行させているのであるが、高圧放電灯DLの状態によっては高周波予熱モードで予熱中に高圧放電灯DLが立ち消えする場合もある。
【0040】
図4は高周波予熱モードで動作中に立ち消えが発生した場合の各部の波形図を示しており、絶縁破壊モードにおける時刻t1に絶縁破壊が発生し、時刻t2に絶縁破壊モードから高周波予熱モードにモードが切り替えられた後、高圧放電灯DLの両ランプ電極を高周波予熱している間の時刻t3に立ち消えが発生すると、インバータ制御回路部8は、第2スイッチング周波数f2でスイッチング素子Q3,Q6の組がオフになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオンになる期間T11と、スイッチング素子Q3,Q6の組がオンになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオフになる期間T12とを交番させることになる。ここで、第2スイッチング周波数f2(約39kHz)は、無負荷時におけるLC共振回路7aの共振周波数をf0としたとき、共振周波数f0の奇数分の1(例えば11分の1)の周波数に設定されているので、LC共振回路7aの共振作用により直流電源回路部3の出力電圧V1に比べて高電圧の共振電圧Vp2を高圧放電灯DLのランプ電極間に印加することができ、再び絶縁破壊を発生させることで、高圧放電灯DLを高周波予熱モードへと移行させ、その後両ランプ電極が十分温まったところで、矩形波点灯モードに移行されるから、高圧放電灯DLを安定点灯させることができる。
【0041】
すなわち本実施形態の放電灯点灯装置では、高周波予熱モードにおいて、インバータ制御回路部8が、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数f2でイグナイタ回路部7のスイッチング素子Q3〜Q6にスイッチング動作を行わせることで、高圧放電灯DLの両ランプ電極を高周波予熱しており、ランプ電極が十分温まったところで、矩形波点灯モードに移行して、高圧放電灯DLを安定点灯させている。したがって、高圧放電灯DLを予熱中に立ち消えが発生した場合、高周波予熱モードではイグナイタ回路部7のスイッチング周波数が、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、無負荷時の共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数f2に設定されているので、LC共振回路7aの共振作用により、直流電源部の出力電圧よりも高電圧の共振電圧を高圧放電灯DLに印加することができ、高圧放電灯DLを再び絶縁破壊させて高周波予熱モードに復帰させることが可能なため、始動の失敗が少なく、始動性を向上させた高圧放電灯点灯装置を提供することができる。
【0042】
尚、本実施形態では極性反転回路部6をフルブリッジ回路で構成しているが、図5に示すように極性反転回路部6をハーフブリッジ構成としてもよい。図5に示す回路では、直流電源回路部3の出力端子間に2個の電解コンデンサC1a,C1bを直列に接続してあり、電解コンデンサC1a,C1bの直列回路と並列に、スイッチング素子Q3,Q4の直列回路を接続する。そして、電解コンデンサC1a,C1bの接続点とスイッチング素子Q3,Q4の接続点との間に、コンデンサC3及びインダクタL3の直列回路からなるLC共振回路7aを接続し、コンデンサC3と並列に高圧放電灯DLを接続してある。ここにおいて、スイッチング素子Q3,Q4と電解コンデンサC1a,C1bとで極性反転回路部6が構成され、スイッチング素子Q3,Q4と、コンデンサC3及びインダクタL3からなるLC共振回路7aとでイグナイタ回路部7が構成される。
【0043】
図5に示す高圧放電灯点灯装置においても、インバータ制御回路部8は、絶縁破壊モードと高周波予熱モードと矩形波点灯モードの3つのモードを順次切り替えることによって、高圧放電灯DLを点灯させている。そして、絶縁破壊モードでは、LC共振回路7aの共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第1スイッチング周波数f1付近(上記の周波数範囲f1swp)で、スイッチング素子Q3,Q4を交互にオンさせることによって、高圧放電灯DLを絶縁破壊させる始動電圧を発生させる。またインバータ制御回路部8は、高周波予熱モードにおいて、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、上記共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数f2でスイッチング素子Q3,Q4を交互にオンさせることによって発生した高周波電圧を高圧放電灯DLの両ランプ電極に供給し、両ランプ電極を予熱する。その後の矩形波点灯モードでは、インバータ制御回路部8は、数十Hz〜数百Hzの比較的低い周波数で、スイッチング素子Q3のオン/オフと、スイッチング素子Q4のオン/オフとを交番させており、高圧放電灯DLに比較的低周波の矩形波交流電圧を供給することで、高圧放電灯DLを安定点灯させている。
【0044】
この放電灯点灯装置においても、上述したフルブリッジ構成の極性反転回路部6を有する放電灯点灯装置と同様に、高周波予熱モードにおいて高圧放電灯DLが立ち消えした場合には、スイッチング素子Q3,Q4を、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、無負荷時の共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数f2でスイッチングしているので、LC共振回路7aの共振作用によって直流電源回路部3の出力電圧よりも高電圧の共振電圧を高圧放電灯DLに印加することができ、高圧放電灯DLを再び絶縁破壊させて高周波予熱モードに復帰させることが可能なため、始動の失敗が少なく、始動性を向上させることができる。
【0045】
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図6及び図7に基づいて説明する。尚、高圧放電灯点灯装置の回路構成は実施形態1で説明した図1の回路と同一であるので、図示及び説明は省略する。
【0046】
本実施形態により高圧放電灯DLが不点灯状態から安定点灯状態に至るまでの動作を、図7を参照して説明する。尚、絶縁破壊モード及び矩形波点灯モードにおける動作は実施形態1と同様であるので、その説明は省略する。
【0047】
絶縁破壊モード(図7の期間TM1)で動作中の時刻t1に高圧放電灯DLの絶縁破壊が発生すると、高圧放電灯DLではグロー放電が発生し、その後アーク放電に至るのであるが、インバータ制御回路部8では、その後の時刻t2において絶縁破壊モードから高周波予熱モードにモードを切り換えている。図6(b)は高圧放電灯DLの始動時(高周波予熱モード時)におけるランプ電流(図中のa)、コンデンサC2に流れるコンデンサ電流(図中のb)、チョークL2,L3に流れるチョーク電流(図中のc)の周波数特性を示し、スイッチング周波数を後述の周波数範囲f2swpで掃引した場合のランプ電流I(I2≦I≦I3)が所望の電流値(すなわちランプ電極の予熱に必要な電流値)となるように、各回路要素の定数を設定してある。
【0048】
そして、高周波予熱モードでは、インバータ制御回路部8が、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、共振周波数f0の奇数分の1(本実施形態では11分の1)の第2スイッチング周波数f2(約39kHz)付近、すなわち第2スイッチング周波数f2を含む所定の周波数範囲f2swpで、スイッチング素子Q3,Q6の組と、スイッチング素子Q4,Q5の組とを交互にオンさせる動作周波数を掃引しており、動作周波数の掃引制御に応じて、高圧放電灯DLに流れるランプ電流Iは、周波数範囲f2swpの上限周波数におけるランプ電流I2と、周波数範囲f2swpの下限周波数におけるランプ電流I3との間で変化するので(I2≦I≦I3)、両ランプ電極には予熱に十分なランプ電流が供給され、両ランプ電極を十分に予熱することができる。尚、第2スイッチング周波数f2を含む上記の周波数範囲f2swpは、LC共振回路7aと点灯状態の高圧放電灯DLを含む負荷回路部5との周波数特性に対して、遅相側の周波数帯となっている。
【0049】
そして、高周波予熱モードにおいて高圧放電灯DLの両ランプ電極が均等に予熱されると、図7の時刻t5において、インバータ制御回路部8が、高周波予熱モードから矩形波点灯モードにモードを切り換えており、高圧放電灯DLを安定点灯させることができる。
【0050】
以上のようにインバータ制御回路部8では絶縁破壊モード、高周波予熱モード、矩形波点灯モードの3つのモードを順番に実行することで、不点灯状態の高圧放電灯DLを安定点灯状態に移行させているのであるが、高圧放電灯DLの状態によっては高周波予熱モードで予熱中の高圧放電灯DLが立ち消えする場合もある。
【0051】
ここで、高周波予熱モードで動作中の時刻t3に高圧放電灯DLの立ち消えが発生すると、高周波予熱モードではインバータ制御回路部8が、スイッチング素子Q3,Q6の組と、スイッチング素子Q4,Q5の組とを交互にオンさせる動作周波数を上記の周波数範囲f2swpで掃引しているので、動作周波数が共振周波数f0(例えば430kHz)の奇数分の1(11分の1)の周波数である第2スイッチング周波数f2(例えば39kHz)に近付くと、LC共振回路7aの共振作用により直流電源回路部3の出力電圧V1に比べて高電圧の共振電圧Vp2を高圧放電灯DLのランプ電極間に印加することができる。したがって、予熱中に立ち消えが発生した場合でも、共振電圧を高圧放電灯DLの電極間に印加することで、再び絶縁破壊が発生しやすくなり、絶縁破壊が発生した後に高周波予熱モードへと移行させ、両ランプ電極が十分温まったところで、矩形波点灯モードに移行させることで高圧放電灯DLを安定点灯させることができるから、始動の失敗が少なく、始動性を向上させた高圧放電灯点灯装置を提供することができる。
【0052】
尚、実施形態1で説明した図5の高圧放電灯点灯装置において、本実施形態と同様の制御を行ってもよく、上述と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(実施形態3)
本発明の実施形態3を図8及び図9に基づいて説明する。本実施形態の高圧放電灯点灯装置は、図8のブロック回路図に示すように、ダイオードブリッジからなり商用交流電源1を全波整流する整流回路部2と、整流回路部2の出力を平滑化する昇圧チョッパからなる直流電源回路部3と、直流電源回路部3の出力を制御する昇圧チョッパ制御回路部4と、直流電源回路部3の出力電圧を所望の電圧値に降圧することによって高圧放電灯DLの点灯電力を制御する電力制御回路部9と、電力制御回路部9の出力を制御する降圧チョッパ制御回路部10と、電力制御回路部9の直流出力をスイッチングすることで矩形波交流電力に変換して高圧放電灯DLに供給する極性反転回路部6と、電力制御回路部9の直流出力をスイッチングすることによって高圧放電灯DLを絶縁破壊させるための始動電圧を発生させるイグナイタ回路部7と、極性反転回路部6及びイグナイタ回路部7のスイッチング動作を制御するインバータ制御回路部8とを主要な構成として備えている。
【0054】
直流電源回路部3は昇圧型のチョッパ回路からなり、整流回路部2の高圧側出力端に一端が接続されたインダクタL1と、インダクタL1の他端と整流回路部2の低圧側出力端との間にドレイン−ソース間が接続されたMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)よりなるスイッチング素子Q1と、インダクタL1の他端にアノードが接続されたダイオードD1と、ダイオードD1のカソードと整流回路部2の低圧側出力端との間に接続された電解コンデンサC1とを備えている。
【0055】
昇圧チョッパ制御回路部4は、直流電源回路部3の出力電圧V1(電解コンデンサC1の両端電圧)を検出し、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数やオン/オフのデューティ比を制御することによって出力電圧V1を所望の電圧値に制御する。
【0056】
電力制御回路部9は、直流電源回路部3の高圧側出力端に接続されたMOS型FETからなるスイッチング素子Q2とインダクタL2との直列回路と、スイッチング素子Q2を介して直流電源回路部3の出力端間に接続されたダイオードD2と、インダクタL2の他端と直流電源回路部3の低圧側出力端との間に接続されたコンデンサC2とを備え、コンデンサC2の両端電圧V2が出力として極性反転回路部6に供給される。
【0057】
降圧チョッパ制御回路部10は、インバータ制御回路部8から入力される制御信号に応じて、電力制御回路部9のスイッチング素子Q2をオン/オフ駆動することで、電力制御回路部9の出力電圧V2を変化させ、高圧放電灯DLへの点灯電力を制御する。ここにおいて、整流回路部2と直流電源回路部3と電力制御回路部9と昇圧チョッパ制御回路部4と降圧チョッパ制御回路部10とで直流電源部が構成される。
【0058】
極性反転回路部6は、電力制御回路部9の出力端間(すなわちコンデンサC2の両端間)にそれぞれ接続されたスイッチング素子Q3,Q4の直列回路、スイッチング素子Q5,Q6の直列回路を有するフルブリッジ回路からなり、スイッチング素子Q3,Q4の接続点と、スイッチング素子Q5,Q6の接続点との間には、オートトランス(単巻変圧器)構造のインダクタL3と高圧放電灯DLとが直列に接続されている。
【0059】
イグナイタ回路部7は、直流電源回路部3の出力端間に接続された極性反転回路部6内のスイッチング素子Q3,Q4の組、スイッチング素子Q5,Q6の組と、インダクタL3と、インダクタL3の一次巻線(分路巻線)N1の両端間にスイッチング素子Q4を介して接続されたコンデンサC3及び抵抗R1の直列回路とを備え、インダクタL3の直列巻線N2は高圧放電灯DLに接続されている。またインダクタL3の一次巻線N1とコンデンサC3とでLC共振回路7aが構成されている。
【0060】
インバータ制御回路部8は例えばマイクロコンピュータからなり、負荷状態に応じて、電力制御回路部9のスイッチング素子Q2と極性反転回路部6のスイッチング素子Q3〜Q6のオン/オフを制御している。例えば高圧放電灯DLの安定点灯時(矩形波点灯モード時)には、インバータ制御回路部8は、対角の位置に配置されたスイッチング素子Q4,Q5のペアをオフさせた状態でスイッチング素子Q3,Q6のペアをオン/オフさせる第1の期間T21と、スイッチング素子Q3,Q6のペアをオフさせた状態でスイッチング素子Q4,Q5のペアをオン/オフさせる第2の期間T22とを比較的低い周波数で交番させている。
【0061】
次に、この高圧放電灯点灯装置により高圧放電灯DLが不点灯状態から安定点灯状態に至るまでの動作を、図9及び図10を参照して説明する。尚、図10は高圧放電灯DLが不点灯状態から安定点灯状態に至るまでの各部の波形図である。
【0062】
先ず、高圧放電灯DLが不点灯状態で図示しない点灯スイッチが投入されると、チョッパ制御回路部4およびインバータ制御回路部8が制御動作を開始する。チョッパ制御回路部4では、スイッチング素子Q1のオン/オフを制御することによって直流電源回路部3にチョッパ動作を行わせ、入力電源を昇圧した所定電圧値の直流電圧を出力するとともに、インバータ制御回路部8が、降圧チョッパ制御回路部10を用いてスイッチング素子Q2のオン/オフを制御し、直流電源回路部3の出力電圧を降圧した所定電圧値の直流電圧を出力する。
【0063】
またインバータ制御回路部8は、先ず絶縁破壊モードで動作を開始し(図10の期間TM1)、降圧チョッパ制御回路部10を用いてスイッチング素子Q2のオン/オフを制御し、直流電源回路部3の出力電圧を降圧した所定電圧値の直流電圧を出力するとともに、LC共振回路7aの共振周波数f0の奇数分の1となる数十kHz〜数百kHzの第1スイッチング周波数f1付近で、スイッチング素子Q3,Q6の組がオンになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオフになる期間T01と、スイッチング素子Q3,Q6の組がオフになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオンになる期間T02とを交互に設けることで、LC共振回路7aを共振させ、このときインダクタL3の一次巻線N1に発生する共振電圧を、一次巻線(分路巻線)N1と直列巻線N2との巻線比で昇圧した電圧を、高圧放電灯DLの電極間に印加して、絶縁破壊を発生させる。
【0064】
ここで、図9は無負荷時(高圧放電灯DLの不点灯状態)におけるLC共振回路7aの周波数特性と動作周波数の関係を示しており、本実施形態ではLC共振回路7aの共振周波数f0が約430kHzとなっている。而してインバータ制御回路部8は、絶縁破壊モードにおいて、共振周波数f0の奇数分の1(例えば3分の1)の第1スイッチング周波数f1(約143kHz)付近、すなわち第1スイッチング周波数f1を含む所定の周波数範囲f1swp(例えば96kHz〜160kHZ)で、スイッチング素子Q3,Q6の組と、スイッチング素子Q4,Q5の組とを交互にオンさせる動作周波数を掃引する。そして、動作周波数の掃引に応じて、LC共振回路7aの共振作用により高圧放電灯DLの両端間に印加されるランプ電圧Vlaの大きさが変化し、動作周波数が共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第1スイッチング周波数f1(約143kHz)に一致したときにランプ電圧Vlaが最大となって、高圧放電灯DLを絶縁破壊させるのに必要な始動電圧Vp1を高圧放電灯DLに印加することができ、高圧放電灯DLを絶縁破壊させることができる(図10の時刻t1)。尚、インバータ制御回路部8では、絶縁破壊モードにおける第1スイッチング周波数f1を共振周波数f0や、共振周波数f0の奇数分の1の周波数に設定してもよく、LC共振回路7aの共振作用によって高圧の共振電圧を高圧放電灯DLに印加して、高圧放電灯DLを絶縁破壊を起こさせることができる。
【0065】
上述の絶縁破壊モードにおいてイグナイタ回路部7によって高圧放電灯DLの絶縁破壊が発生すると、高圧放電灯DLではグロー放電が発生し、その後アーク放電に至るのであるが、その間に両側のランプ電極に予熱電流を供給して、両ランプ電極を素早く温めるモードが高周波予熱モードである(図10の期間TM2)。この高周波予熱モードにおいて、インバータ制御回路部8は、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、共振周波数f0の奇数分の1(本実施形態では11分の1)の第2スイッチング周波数f2(約39kHz)で、スイッチング素子Q3,Q6の組がオフになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオンになる期間T11と、スイッチング素子Q3,Q6の組がオンになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオフになる期間T12とを交互に設けており、高圧放電灯DLの両ランプ電極にランプ電流I1が供給されることで、両ランプ電極が予熱される。尚、第2スイッチング周波数f2は、LC共振回路7aと点灯状態の高圧放電灯DLを含む負荷回路部5との周波数特性に対して、遅相側の周波数帯となっている。
【0066】
そして、高周波予熱モードにおいて高圧放電灯DLの両ランプ電極が均等に予熱されると、図10の時刻t5において、インバータ制御回路部8が、高周波予熱モードから矩形波点灯モードにモードを切り換える。矩形波点灯モードでは(図10の期間TM3)、インバータ制御回路部8が、対角の位置に配置されたスイッチング素子Q4,Q5のペアと、スイッチング素子Q3,Q6のペアを比較的低い周波数flow(例えば数十Hz〜数百Hz)で交互にオン/オフさせており、数十Hz〜数百Hzの矩形波交流電圧を高圧放電灯DLに印加する。このとき、高圧放電灯DLのガラスバルブ内の温度とともに、ランプ電圧が徐々に上昇し、数分後にはランプ電圧が略一定の安定状態となり、この状態でアーク放電が継続して発生することにより、高圧放電灯DLが安定点灯状態となる。
【0067】
以上のようにインバータ制御回路部8では絶縁破壊モード、高周波予熱モード、矩形波点灯モードの3つのモードを順次切り替えることで、不点灯状態の高圧放電灯DLを安定点灯状態に移行させているのであるが、高圧放電灯DLの状態によっては高周波予熱モードで予熱中の高圧放電灯DLが立ち消えする場合もある。図10は高周波予熱モードで動作中に立ち消えが発生した場合の各部の波形図を示しており、高周波予熱モードで動作中の時刻t3に立ち消えが発生すると、インバータ制御回路部8は、スイッチング素子Q3,Q6の組がオフになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオンになる期間T11と、スイッチング素子Q3,Q6の組がオンになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオフになる期間T12とを第2スイッチング周波数f2で交番させている。この第2スイッチング周波数f2(約39kHz)は、無負荷時のLC共振回路7aの共振周波数をf0としたとき、共振周波数f0の奇数分の1(例えば11分の1)の周波数となるので、LC共振回路7aの共振作用により直流電源回路部3の出力電圧V1(所謂バス電圧)に比べて高電圧の共振電圧Vp2を高圧放電灯DLのランプ電極間に印加することができ、再び絶縁破壊を発生させることで、高圧放電灯DLを高周波予熱モードへと移行させ、その後両ランプ電極が十分温まったところで、矩形波点灯モードに移行させることで高圧放電灯DLを安定点灯させることができる。
【0068】
すなわち本実施形態の放電灯点灯装置では、高周波予熱モードにおいて立ち消えが発生した場合でも、無負荷時の共振周波数f0の奇数分の1の周波数でスイッチング動作を行わせているので、LC共振回路7aの共振作用により、直流電源部の出力電圧よりも高電圧の共振電圧を高圧放電灯DLに印加することができ、高圧放電灯DLを再び絶縁破壊させて高周波予熱モードに復帰させることが可能なため、始動の失敗が少なく、始動性を向上させた高圧放電灯点灯装置を提供することができる。
【0069】
(実施形態4)
本発明の実施形態4を図11〜図14に基づいて説明する。上述の実施形態1では、インバータ制御回路部8が、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行する際、イグナイタ回路部7のスイッチング周波数を第1スイッチング周波数f1から第2スイッチング周波数f2へ切り替えるのであるが、図11に示すようにスイッチング周波数の切り替えを徐々に行うようにしてもよい。尚、高圧放電灯点灯装置の回路構成は図1と同一であるので、図示及び説明は省略する。
【0070】
図11は高圧放電灯DLが不点灯状態から安定点灯状態に至るまでの各部の波形図であり、絶縁破壊モードTM1中の時刻t1において絶縁破壊が発生すると、その後の時刻t2に動作モードが高周波予熱モードに切り替えられるのであるが、インバータ制御回路部8では、スイッチング素子Q3,Q6の組とスイッチング素子Q4,Q5の組を交互にオン/オフさせる周波数を、時刻t2に共振周波数f0の5分の1の周波数(f0/5)、時刻t3に共振周波数f0の7分の1の周波数(f0/7)、時刻t4に共振周波数f0の9分の1の周波数(f0/9)の順番で段階的に低下させた後、最終的に共振周波数f0の11分の1の周波数(f0/11)に切り替えている。すなわち、スイッチング周波数を段階的に低下させる際に、第1スイッチング周波数f1(=f0/3)より低く且つ第2スイッチング周波数f2(=f0/11)より高い周波数であって、共振周波数f0の奇数分の1の周波数となる1乃至複数(本実施形態では例えば3つ)の中間周波数f0/5,f0/7,f0/9を設定し、第1スイッチング周波数f0から3つの中間周波数f0/5,f0/7,f0/9を経て第2スイッチング周波数f2まで段階的に低下させているのであるが、動作モードが高周波予熱モードに切り替えられた直後の高圧放電灯DLが立ち消えしやすいタイミングでは、高圧放電灯DLの立ち消えが発生した場合に、第2スイッチング周波数に比べて、共振周波数f0に近い中間周波数(f0/5,f0/7,f0/9)でスイッチング動作を行うから、モードの切替直後に第2スイッチング周波数f2(=f0/11)でスイッチングする場合に比べて高電圧の共振電圧を発生させることができ、高周波予熱モードで立ち消えが発生した場合には高電圧の共振電圧を高圧放電灯DLに印加させることで、高圧放電灯DLを再点灯させることができる。また高周波予熱モードにおいて、インバータ制御回路部8は、時間の経過と共にスイッチング周波数を段階的に低下させており、最終的には所望のスイッチング周波数(f0/11)に切り替えているので、予熱電流を段階的に増加させ、高圧放電灯DLのランプ電極を十分に予熱した状態で、矩形波点灯に移行させることができる。
【0071】
尚、図11に示す例では絶縁破壊モードから高周波予熱モードに切り替わると、インバータ制御回路部8は、スイッチング周波数をf0/5→f0/7→f0/9→f0/11の順番でステップ状に切り替えているが、スイッチング周波数の切り替え方を上記の形態に限定する趣旨のものではなく、例えば図12に示すように、高周波予熱モードに移行させた後の時刻tn(n=2,3,4)にスイッチング周波数をf0/(2×n+1)に切り替えるとともに、時刻tnから時刻t(n+1)の間では時間の経過に応じてスイッチング周波数をf0/(2×n+1)から線形的に低下させ、最終的には時刻t5においてスイッチング周波数を(f0/11)に切り換えるようにしてもよい。
【0072】
また図13に示すように動作モードを絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行させる際に、スイッチング周波数が第1スイッチング周波数f1(例えば140kHz)から第2スイッチング周波数f2(例えば39kHz)にダイレクトに切り替えられた場合、コンデンサC2への充電電流(振動電流)が過大になるので、図14に示すようにモード切替時に、スイッチング周波数f1よりも低く且つ第2スイッチング周波数f2よりも高い周波数(例えば47kHz)に一旦切り替えた後(期間TA)、第2スイッチング周波数f2(例えば39kHz)に切り替えるようにしてもよく(期間TB)、コンデンサC2への充電電流のピークを低減することができる。
【0073】
尚、本実施形態では実施形態1の回路において高周波予熱モードでのスイッチング周波数の制御方式を説明したが、実施形態2又は3の高圧放電灯点灯装置において、本実施形態のようにスイッチング周波数を切り替えてもよく、上述と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(実施形態5)
本発明の実施形態5を図15(a)〜(c)に基づいて説明する。図15(a)〜(c)は、実施形態1乃至4で説明した何れかの高圧放電灯点灯装置をハウジング20内に収納して、灯具21内のソケット(図示なし)に装着された高圧放電灯DLを点灯させる照明器具の外観図であり、ハウジング20内の高圧放電灯点灯装置からケーブル23及びソケットを介して高圧放電灯に点灯電力を供給することで、高圧放電灯DLを点灯させるものである。
【0075】
これらの照明器具は、実施形態1乃至4の何れかの高圧放電灯点灯装置を用いているので、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行した際に立ち消えが発生したとしても、イグナイタ回路部7が備えるLC共振回路7aで発生した共振電圧を高圧放電灯DLの両ランプ電極間に印加することで、高圧放電灯DLが再点灯しやすくなり、高圧放電灯DLの始動性を改善することができる。
【0076】
なお図15(a)は、ダウンライトにHIDランプ等の高圧放電灯DLを用いた照明器具であり、同図(b)(c)は、スポットライトにHIDランプ等の高圧放電灯DLを用い、商用電源を給電するための配線ダクトレール23に対して移動自在に取り付けられたハウジング20に対して灯具21を吊下げ支持させた器具である。
【0077】
さらに、これらの照明器具を用いて、各照明器具の点灯制御を行う照明システムを構築すれば、システムとしても上記同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施形態1の高圧放電灯点灯装置のブロック回路図である。
【図2】同上のイグナイタ回路部の動作周波数と共振回路の周波数特性の関係を示し、(a)は無負荷時の説明図、(b)は点灯時の説明図である。
【図3】(a)は同上の絶縁破壊モードから矩形波点灯モードに至るまでの各部の波形図であり、(b)は絶縁破壊モード中の期間Taにおける各部の波形図である。
【図4】同上の絶縁破壊モードから矩形波点灯モードに至るまでの各部の波形図であり、高周波予熱モードで立ち消えが発生した場合の波形図である。
【図5】同上の他の回路構成を示すブロック回路図である。
【図6】実施形態2のイグナイタ回路部の動作周波数と共振回路の周波数特性の関係を示し、(a)は無負荷時の説明図、(b)は点灯時の説明図である。
【図7】同上の絶縁破壊モードから矩形波点灯モードに至るまでの各部の波形図である。
【図8】実施形態3の放電灯点灯装置のブロック回路図である。
【図9】同上の無負荷時における共振回路の周波数特性とイグナイタ回路部の動作周波数との関係を示す説明図である。
【図10】同上の絶縁破壊モードから矩形波点灯モードに至るまでの各部の波形図である。
【図11】実施形態4の放電灯点灯装置を示し、絶縁破壊モードから矩形波点灯モードに至るまでの各部の波形図である。
【図12】同上の他の制御方式を示し、絶縁破壊モードから矩形波点灯モードに至るまでの各部の波形図である。
【図13】同上を示し、絶縁破壊モードから高周波予熱モードへの移行時における各部の電流波形図である。
【図14】同上の他の制御方式を示し、絶縁破壊モードから高周波予熱モードへの移行時における各部の電流波形図である。
【図15】(a)〜(c)は同上を用いた照明装置の外観図である。
【符号の説明】
【0079】
2 整流回路部(直流電源部)
3 直流電源回路部(直流電源部)
5 負荷回路部
6 極性反転回路部(電力変換部)
7 イグナイタ回路部
7a LC共振回路
8 インバータ制御回路部(制御回路部)
DL 高圧放電灯
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具並びに照明システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、HIDランプのような高圧放電灯を点灯させる高圧放電灯点灯装置として、インダクタ及びキャパシタからなるLC共振回路の共振作用により発生させた高電圧の始動電圧を高圧放電灯に印加して、高圧放電灯を始動点灯させるものがあった(例えば特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献に開示された高圧放電灯点灯装置は、交流電源を直流に変換するAC/DC変換回路と、AC/DC変換回路の出力をスイッチングすることで矩形波電圧を発生させて、高圧放電灯を含む負荷回路部に供給するDC/DCコンバータと、AC/DC変換回路及びDC/DCコンバータのスイッチング動作を制御する制御回路とを備えている。
【0004】
そして制御回路では、AC/DC変換回路及びDC/DCコンバータのスイッチング動作を制御することによって、高圧放電灯を始動させる共振イグニッションフェーズと、グロー放電を発生させてランプ電極を予熱するウォームアップフェーズと、高圧放電灯に矩形波電圧を印加することで高圧放電灯を安定点灯させる通常動作フェーズとを順次行わせ、高圧放電灯を始動点灯させている。
【0005】
すなわち高圧放電灯の始動点灯時には、先ず共振イグニッションフェーズにおいて、LC共振回路を構成するインダクタ及びキャパシタを電気的に共振させることで、高圧放電灯を絶縁破壊させるのに十分な高電圧の始動電圧を発生させ、この始動電圧を高圧放電灯の両端間に印加する。
【0006】
次にウォームアップフェーズでは、共振イグニッションフェーズにおける周波数よりも比較的低い周波数の電圧を高圧放電灯に印加することで、グロー放電を起こさせてランプ電極を予熱し、その後通常動作フェーズにおいて、アーク放電を継続して起こさせることで、高圧放電灯を安定的に点灯させている。
【特許文献1】特表2005−507553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献に開示された高圧放電灯点灯装置では、ウォームアップフェーズで動作中に高圧放電灯が立ち消えした場合、DC/DCコンバータの出力である約300Vのバス電圧までしか再始動電圧として高圧放電灯に印加することができず、高圧放電灯が完全に消灯した場合は、高圧放電灯の始動に失敗してしまうという問題があった。また高圧放電灯の始動に失敗した場合、上記の高圧放電灯点灯装置では、共振イグニッションフェーズとウォームアップフェーズとが繰り返し行われることになり、始動時間が長引いてしまうという問題があった。
【0008】
また共振イグニッションフェーズでは、高圧放電灯に高電圧の始動電圧を印加するため、始動電圧を1秒以内に連続印加しても高圧放電灯が始動しない場合は、再始動の前にガラスバルブ内の放電蒸気圧を低下させる必要があり、数秒〜数分間の休止期間を開けた後に再び高電圧の始動電圧を印加していた。したがって、上記特許文献に開示された高圧放電灯点灯装置では、高圧放電灯を初始動させる場合でも、数秒〜数分間の休止期間を開けることで、高圧放電灯の始動が遅れる可能性があった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、高圧放電灯の始動性を改善した高圧放電灯点灯装置及びそれを用いた照明器具並びに照明システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、直流電源部と、LC共振回路を具備し直流電源部の出力をスイッチングすることによって高圧放電灯を絶縁破壊させる始動電圧を発生させるイグナイタ回路部と、直流電源部の出力をスイッチングすることによって矩形波交流に変換し高圧放電灯を含む負荷回路部に供給して高圧放電灯を安定点灯させる電力変換部と、イグナイタ回路部及び電力変換部のスイッチング動作を、高圧放電灯を絶縁破壊させる絶縁破壊モード、高圧放電灯に予熱電流を供給してランプ電極を予熱する高周波予熱モード、高圧放電灯に矩形波交流を供給することで高圧放電灯を安定点灯させる矩形波点灯モードの3つのモードに順次切り替える制御回路部とを備え、制御回路部は、絶縁破壊モードにおいて、LC共振回路の共振周波数の奇数分の1の周波数である第1スイッチング周波数付近でイグナイタ回路部のスイッチング素子をスイッチングさせることで始動電圧を発生させるとともに、高周波予熱モードにおいて、第1スイッチング周波数よりも低く且つ共振周波数の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数付近でイグナイタ回路部のスイッチング素子をスイッチングさせることで得られた高周波電圧を負荷回路部に供給することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、制御回路部は、高周波予熱モードにおいて、第2スイッチング周波数を含む所定の周波数範囲内でイグナイタ回路部のスイッチング周波数を掃引してスイッチングさせることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、所定の周波数範囲とは、LC共振回路と、点灯状態の高圧放電灯を含む負荷回路部との周波数特性に対して、遅相側の周波数帯であることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1つの発明において、制御回路部は、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行する際に、イグナイタ回路部のスイッチング周波数を第1スイッチング周波数付近から第2スイッチング周波数付近まで時間の経過に応じて徐々に低下させることを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、制御回路部は、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行する際に、イグナイタ回路部のスイッチング周波数を第1スイッチング周波数付近から第2スイッチング周波数付近まで段階的に低下させることを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5の発明において、制御回路部が、スイッチング周波数を段階的に低下させる際に、第1スイッチング周波数より低く且つ第2スイッチング周波数より高い周波数であって、共振周波数の奇数分の1の周波数となる1乃至複数の中間周波数を設定し、第1スイッチング周波数から1乃至複数の中間周波数を経て第2スイッチング周波数まで段階的に低下させることを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は照明器具の発明であって、請求項1〜6の何れか1項に記載の高圧放電灯点灯装置と、当該放電灯点灯装置によって電力を供給される放電灯を具備した灯具とを備えることを特徴とする。
【0017】
請求項8の発明の発明は照明システムの発明であって、請求項1の発明において、請求項7記載の照明器具を備えて点灯制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、制御回路部が、放電灯点灯装置のモードを絶縁破壊モードから高周波予熱モードに切り替えた際に、絶縁破壊モードにおける第1スイッチング周波数より低い周波数であって、LC共振回路の共振周波数の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数付近でイグナイタ回路部をスイッチングさせているので、高周波予熱モードで動作中に立ち消えが発生した場合は、LC共振回路の共振作用によって直流電源部の出力よりも高電圧の共振電圧を高圧放電灯に印加することができ、したがって高圧放電灯が再点灯しやすくなるから、高圧放電灯の始動性を向上させることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、高周波予熱モードで動作中に立ち消えが発生すると、制御回路部によって、イグナイタ回路部のスイッチング周波数が、第2スイッチング周波数を含む所定の周波数範囲内で掃引制御されるから、スイッチング周波数が共振周波数に近付くにつれて共振が強まり、LC共振回路の共振作用によって直流電源部の出力よりも高電圧の共振電圧を高圧放電灯に印加することができるので、請求項1の発明と同様、高圧放電灯が再点灯しやすくなり、高圧放電灯の始動性を向上させることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、高周波予熱モードにおいて制御回路部がスイッチング周波数を低下させるにつれて、高圧放電灯に供給されるランプ電流が増加するから、高圧放電灯の両ランプ電極を十分に温めて、グロー放電からアーク放電に移行させやすくできる。
【0021】
請求項4の発明によれば、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに切り替わる際に、スイッチング周波数を徐々に低下させることで、LC共振回路を構成するコンデンサへの充電電流が急激に増加するのを防止して、回路要素に加わるストレスを低減することができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに切り替わる際に、スイッチング周波数を段階的に低下させることで、請求項4の発明と同様、LC共振回路を構成するコンデンサへの充電電流が急激に増加するのを防止して、回路要素に加わるストレスを低減することができる。
【0023】
請求項6の発明によれば、制御回路部が、モード切替時にスイッチング周波数を段階的に低下させる際に、第1スイッチング周波数より低く且つ第2スイッチング周波数より高い周波数であって共振周波数の奇数分の1の周波数となる1乃至複数の中間周波数を経て、第2スイッチング周波数まで段階的に低下させており、立ち消えの発生しやすいモード切替直後に高圧放電灯が立ち消えした場合は、第2スイッチング周波数に比べて共振周波数に近い中間周波数でスイッチング動作を行うことで、LC共振により発生する電圧を大きくでき、立ち消え後に高圧放電灯が再点灯しやすくなるから高圧放電灯の始動性をさらに向上させることができる。
【0024】
請求項7の発明によれば、請求項1乃至6の発明の何れかと同様の効果を奏し得る照明器具を提供することができる。
【0025】
請求項8の発明によれば、請求項7の発明と同様の効果を奏し得る照明システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1〜図5に基づいて説明する。本実施形態の高圧放電灯点灯装置は、図1のブロック回路図に示すように、ダイオードブリッジからなり商用交流電源1を全波整流する整流回路部2と、整流回路部2の出力を平滑化する直流電源回路部3と、直流電源回路部3の出力を制御するチョッパ制御回路部4と、HIDランプのような高圧放電灯DLを含む負荷回路部5と、直流電源回路部3の直流出力をスイッチングすることで矩形波交流電力に変換して負荷回路部5に供給する極性反転回路部6と、直流電源回路部3の直流出力をスイッチングすることによって高圧放電灯DLを絶縁破壊させるための始動電圧を発生させるイグナイタ回路部7と、極性反転回路部6及びイグナイタ回路部7のスイッチング動作を制御するインバータ制御回路部8とを主要な構成として備えている。
【0028】
直流電源回路部3は昇圧型のチョッパ回路からなり、整流回路部2の高圧側出力端に一端が接続されたインダクタL1と、インダクタL1の他端と整流回路部2の低圧側出力端との間にドレイン−ソース間が接続されたMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)よりなるスイッチング素子Q1と、インダクタL1の他端にアノードが接続されたダイオードD1と、ダイオードD1のカソードと整流回路部2の低圧側出力端との間に接続された電解コンデンサC1とを備えている。
【0029】
チョッパ制御回路部4は、直流電源回路部3の出力電圧V1(電解コンデンサC1の両端電圧)を検出し、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数やオン/オフのデューティ比を制御することによって出力電圧V1を所望の電圧値に制御する。ここにおいて、整流回路部2と直流電源回路部3とチョッパ制御回路部4とで直流電源部が構成される。
【0030】
極性反転回路部6は、直流電源回路部3の出力端間(すなわちコンデンサC1の両端間)にそれぞれ接続されたスイッチング素子Q3,Q4の直列回路、スイッチング素子Q5,Q6の直列回路を有する4石のフルブリッジ回路からなり、スイッチング素子Q3,Q4の接続点と、スイッチング素子Q5,Q6の接続点との間には、オートトランス(単巻変圧器)構造のインダクタL3と高圧放電灯DLとインダクタL2とが直列に接続され、さらにインダクタL3及び高圧放電灯DLからなる直列回路と並列にコンデンサC2が接続されている。ここで、インダクタL2およびコンデンサC2からなるLC共振回路と高圧放電灯DLとで負荷回路部5が構成されている。
【0031】
またイグナイタ回路部7は、直流電源回路部3の出力端間に接続された極性反転回路部6内のスイッチング素子Q3,Q4の組、スイッチング素子Q5,Q6の組と、インダクタL3と、インダクタL3の一次巻線(分路巻線)N1の両端間にスイッチング素子Q4を介して接続されたコンデンサC3及び抵抗R1の直列回路とを備え、インダクタL3の直列巻線N2は高圧放電灯DLに接続されている。またインダクタL3の一次巻線N1とコンデンサC3とでLC共振回路7aが構成されている。
【0032】
インバータ制御回路部8は例えばマイクロコンピュータからなり、負荷状態に応じて各スイッチング素子Q3〜Q6のオン/オフを制御している。例えば高圧放電灯DLの安定点灯時(矩形波点灯モード時)には、インバータ制御回路部8は、対角の位置に配置されたスイッチング素子Q4,Q5のペアをオフさせた状態でスイッチング素子Q3,Q6のペアをオン/オフさせる第1の期間(図3(a)の期間T22)と、スイッチング素子Q3,Q6のペアをオフさせた状態でスイッチング素子Q4,Q5のペアをオン/オフさせる第2の期間(図3(a)の期間T21)とを比較的低い周波数で交番させており、第1の期間T22ではスイッチング素子Q3をオンさせた状態でスイッチング素子Q6を比較的高い周波数でオン/オフさせ、また第2の期間T21ではスイッチング素子Q4をオンさせた状態でスイッチング素子Q5を比較的高い周波数でオン/オフさせている。
【0033】
次に、この高圧放電灯点灯装置により高圧放電灯DLが不点灯状態から安定点灯状態に至るまでの動作を、図3(a)(b)を参照して説明する。尚、図3(a)は高圧放電灯DLが不点灯状態から安定点灯状態に至るまでの各部の波形図であり、同図(b)は絶縁破壊モード中の期間Taにおけるスイッチング動作とランプ電圧の関係を示している。
【0034】
先ず、高圧放電灯DLが不点灯状態で図示しない点灯スイッチが投入されると、チョッパ制御回路部4およびインバータ制御回路部8が制御動作を開始し、チョッパ制御回路部4では、スイッチング素子Q1のオン/オフを制御することによって直流電源回路部3にチョッパ動作を行わせ、入力電源を昇圧した所定電圧値の直流電圧を出力する。
【0035】
インバータ制御回路部8は、先ず絶縁破壊モードで動作を開始し(図3(a)の期間TM1)、上記LC共振回路7aの共振周波数f0の奇数分の1となる数百kHzの第1スイッチング周波数f1付近で、スイッチング素子Q3,Q6の組がオンになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオフになる期間T01と、スイッチング素子Q3,Q6の組がオフになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオンになる期間T02とを交互に設けることで、LC共振回路7aを共振させ、このときインダクタL3の一次巻線N1に発生する共振電圧を、一次巻線(分路巻線)N1と直列巻線N2との巻線比で昇圧した電圧を、高圧放電灯DLの電極間に印加して、絶縁破壊を発生させる。ここで、図2(a)は無負荷時(高圧放電灯DLの不点灯状態)におけるLC共振回路7aの周波数特性と動作周波数の関係を示しており、本実施形態ではLC共振回路7aの共振周波数f0が約430kHzとなっている。而してインバータ制御回路部8は、絶縁破壊モードにおいて、共振周波数f0の奇数分の1(例えば3分の1)の第1スイッチング周波数f1(約143kHz)付近、すなわち第1スイッチング周波数f1を含む所定の周波数範囲f1swp(例えば96kHz〜160kHZ)で、スイッチング素子Q3,Q6の組と、スイッチング素子Q4,Q5の組とを交互にオンさせる動作周波数を掃引する。この動作周波数の掃引に応じて、LC共振回路7aの共振作用により高圧放電灯DLの両端間に印加されるランプ電圧Vlaの大きさが変化し、動作周波数が共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第1スイッチング周波数f1(約143kHz)に近付くほどランプ電圧Vlaが大きくなって、高圧放電灯DLを絶縁破壊させるのに必要な始動電圧Vp1を高圧放電灯DLに印加することができ、高圧放電灯DLを絶縁破壊させることができる(図3(a)の時刻t1)。尚、インバータ制御回路部8では、絶縁破壊モードにおける第1スイッチング周波数f1を共振周波数f0や、共振周波数f0の奇数分の1の周波数に設定してもよく、LC共振回路7aの共振作用によって高圧の共振電圧を高圧放電灯DLに印加して、高圧放電灯DLを絶縁破壊を起こさせることができる。
【0036】
上述の絶縁破壊モードにおいて高圧放電灯DLの絶縁破壊が発生すると、高圧放電灯DLではグロー放電が発生し、その後アーク放電に至るのであるが、その間に両側のランプ電極に予熱電流を供給して、両ランプ電極を素早く温めるモードが高周波予熱モードである(図3(a)の期間TM2)。ここで、図2(b)は高圧放電灯DLの始動時(高周波予熱モード時)におけるランプ電流(図中のa)、コンデンサC2に流れるコンデンサ電流(図中のb)、チョークL2,L3に流れるチョーク電流(図中のc)の周波数特性を示し、後述する第2スイッチング周波数f2において、インダクタL2,L3、コンデンサC3及び高圧放電灯DLの合成インピーダンス内で高圧放電灯DLに流れるランプ電流I1が所望の電流値(すなわちランプ電極の予熱に必要な電流値)となるように、各回路要素の定数を設定してある。
【0037】
高周波予熱モードでは、インバータ制御回路部8が、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、共振周波数f0の奇数分の1(本実施形態では11分の1)の周波数である第2スイッチング周波数f2(約39kHz)で、スイッチング素子Q3,Q6の組がオフになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオンになる期間T11と、スイッチング素子Q3,Q6の組がオンになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオフになる期間T12とを交互に設けており、高圧放電灯DLの両ランプ電極にランプ電流I1が供給されることで、両ランプ電極が予熱される。尚、高周波予熱モードにおける第2スイッチング周波数f2は、LC共振回路7aと点灯状態の高圧放電灯DLを含む負荷回路部5との周波数特性に対して、遅相側の周波数帯に設定されている。
【0038】
そして、高周波予熱モードにおいて高圧放電灯DLの両ランプ電極が均等に予熱されると、図3(a)の時刻t3において、インバータ制御回路部8が、高周波予熱モードから矩形波点灯モードにモードを切り換える。矩形波点灯モードでは(図3(a)の期間TM3)、インバータ制御回路部8が、対角の位置に配置されたスイッチング素子Q4,Q5のペアをオフさせた状態でスイッチング素子Q3,Q6のペアをオン/オフさせる第1の期間T21と、スイッチング素子Q3,Q6のペアをオフさせた状態でスイッチング素子Q4,Q5のペアをオン/オフさせる第2の期間T22とを比較的低い周波数(例えば数十Hz〜数百Hz)で交番させており、第1の期間T21ではスイッチング素子Q3をオンさせた状態でスイッチング素子Q6を比較的高い周波数でオン/オフさせ、第2の期間T22ではスイッチング素子Q4をオンさせた状態でスイッチング素子Q5を比較的高い周波数でオン/オフさせることで、数十Hz〜数百Hzの矩形波交流電圧を高圧放電灯DLに印加する。このとき、高圧放電灯DLのガラスバルブ内の温度とともに、ランプ電圧が徐々に上昇し、数分後にはランプ電圧が略一定の安定状態となり、この状態でアーク放電が継続して発生することにより、高圧放電灯DLが安定点灯状態となる。
【0039】
以上のようにインバータ制御回路部8では絶縁破壊モード、高周波予熱モード、矩形波点灯モードの3つのモードを順次切り替えることで、不点灯状態の高圧放電灯DLを安定点灯状態に移行させているのであるが、高圧放電灯DLの状態によっては高周波予熱モードで予熱中に高圧放電灯DLが立ち消えする場合もある。
【0040】
図4は高周波予熱モードで動作中に立ち消えが発生した場合の各部の波形図を示しており、絶縁破壊モードにおける時刻t1に絶縁破壊が発生し、時刻t2に絶縁破壊モードから高周波予熱モードにモードが切り替えられた後、高圧放電灯DLの両ランプ電極を高周波予熱している間の時刻t3に立ち消えが発生すると、インバータ制御回路部8は、第2スイッチング周波数f2でスイッチング素子Q3,Q6の組がオフになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオンになる期間T11と、スイッチング素子Q3,Q6の組がオンになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオフになる期間T12とを交番させることになる。ここで、第2スイッチング周波数f2(約39kHz)は、無負荷時におけるLC共振回路7aの共振周波数をf0としたとき、共振周波数f0の奇数分の1(例えば11分の1)の周波数に設定されているので、LC共振回路7aの共振作用により直流電源回路部3の出力電圧V1に比べて高電圧の共振電圧Vp2を高圧放電灯DLのランプ電極間に印加することができ、再び絶縁破壊を発生させることで、高圧放電灯DLを高周波予熱モードへと移行させ、その後両ランプ電極が十分温まったところで、矩形波点灯モードに移行されるから、高圧放電灯DLを安定点灯させることができる。
【0041】
すなわち本実施形態の放電灯点灯装置では、高周波予熱モードにおいて、インバータ制御回路部8が、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数f2でイグナイタ回路部7のスイッチング素子Q3〜Q6にスイッチング動作を行わせることで、高圧放電灯DLの両ランプ電極を高周波予熱しており、ランプ電極が十分温まったところで、矩形波点灯モードに移行して、高圧放電灯DLを安定点灯させている。したがって、高圧放電灯DLを予熱中に立ち消えが発生した場合、高周波予熱モードではイグナイタ回路部7のスイッチング周波数が、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、無負荷時の共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数f2に設定されているので、LC共振回路7aの共振作用により、直流電源部の出力電圧よりも高電圧の共振電圧を高圧放電灯DLに印加することができ、高圧放電灯DLを再び絶縁破壊させて高周波予熱モードに復帰させることが可能なため、始動の失敗が少なく、始動性を向上させた高圧放電灯点灯装置を提供することができる。
【0042】
尚、本実施形態では極性反転回路部6をフルブリッジ回路で構成しているが、図5に示すように極性反転回路部6をハーフブリッジ構成としてもよい。図5に示す回路では、直流電源回路部3の出力端子間に2個の電解コンデンサC1a,C1bを直列に接続してあり、電解コンデンサC1a,C1bの直列回路と並列に、スイッチング素子Q3,Q4の直列回路を接続する。そして、電解コンデンサC1a,C1bの接続点とスイッチング素子Q3,Q4の接続点との間に、コンデンサC3及びインダクタL3の直列回路からなるLC共振回路7aを接続し、コンデンサC3と並列に高圧放電灯DLを接続してある。ここにおいて、スイッチング素子Q3,Q4と電解コンデンサC1a,C1bとで極性反転回路部6が構成され、スイッチング素子Q3,Q4と、コンデンサC3及びインダクタL3からなるLC共振回路7aとでイグナイタ回路部7が構成される。
【0043】
図5に示す高圧放電灯点灯装置においても、インバータ制御回路部8は、絶縁破壊モードと高周波予熱モードと矩形波点灯モードの3つのモードを順次切り替えることによって、高圧放電灯DLを点灯させている。そして、絶縁破壊モードでは、LC共振回路7aの共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第1スイッチング周波数f1付近(上記の周波数範囲f1swp)で、スイッチング素子Q3,Q4を交互にオンさせることによって、高圧放電灯DLを絶縁破壊させる始動電圧を発生させる。またインバータ制御回路部8は、高周波予熱モードにおいて、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、上記共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数f2でスイッチング素子Q3,Q4を交互にオンさせることによって発生した高周波電圧を高圧放電灯DLの両ランプ電極に供給し、両ランプ電極を予熱する。その後の矩形波点灯モードでは、インバータ制御回路部8は、数十Hz〜数百Hzの比較的低い周波数で、スイッチング素子Q3のオン/オフと、スイッチング素子Q4のオン/オフとを交番させており、高圧放電灯DLに比較的低周波の矩形波交流電圧を供給することで、高圧放電灯DLを安定点灯させている。
【0044】
この放電灯点灯装置においても、上述したフルブリッジ構成の極性反転回路部6を有する放電灯点灯装置と同様に、高周波予熱モードにおいて高圧放電灯DLが立ち消えした場合には、スイッチング素子Q3,Q4を、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、無負荷時の共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数f2でスイッチングしているので、LC共振回路7aの共振作用によって直流電源回路部3の出力電圧よりも高電圧の共振電圧を高圧放電灯DLに印加することができ、高圧放電灯DLを再び絶縁破壊させて高周波予熱モードに復帰させることが可能なため、始動の失敗が少なく、始動性を向上させることができる。
【0045】
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図6及び図7に基づいて説明する。尚、高圧放電灯点灯装置の回路構成は実施形態1で説明した図1の回路と同一であるので、図示及び説明は省略する。
【0046】
本実施形態により高圧放電灯DLが不点灯状態から安定点灯状態に至るまでの動作を、図7を参照して説明する。尚、絶縁破壊モード及び矩形波点灯モードにおける動作は実施形態1と同様であるので、その説明は省略する。
【0047】
絶縁破壊モード(図7の期間TM1)で動作中の時刻t1に高圧放電灯DLの絶縁破壊が発生すると、高圧放電灯DLではグロー放電が発生し、その後アーク放電に至るのであるが、インバータ制御回路部8では、その後の時刻t2において絶縁破壊モードから高周波予熱モードにモードを切り換えている。図6(b)は高圧放電灯DLの始動時(高周波予熱モード時)におけるランプ電流(図中のa)、コンデンサC2に流れるコンデンサ電流(図中のb)、チョークL2,L3に流れるチョーク電流(図中のc)の周波数特性を示し、スイッチング周波数を後述の周波数範囲f2swpで掃引した場合のランプ電流I(I2≦I≦I3)が所望の電流値(すなわちランプ電極の予熱に必要な電流値)となるように、各回路要素の定数を設定してある。
【0048】
そして、高周波予熱モードでは、インバータ制御回路部8が、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、共振周波数f0の奇数分の1(本実施形態では11分の1)の第2スイッチング周波数f2(約39kHz)付近、すなわち第2スイッチング周波数f2を含む所定の周波数範囲f2swpで、スイッチング素子Q3,Q6の組と、スイッチング素子Q4,Q5の組とを交互にオンさせる動作周波数を掃引しており、動作周波数の掃引制御に応じて、高圧放電灯DLに流れるランプ電流Iは、周波数範囲f2swpの上限周波数におけるランプ電流I2と、周波数範囲f2swpの下限周波数におけるランプ電流I3との間で変化するので(I2≦I≦I3)、両ランプ電極には予熱に十分なランプ電流が供給され、両ランプ電極を十分に予熱することができる。尚、第2スイッチング周波数f2を含む上記の周波数範囲f2swpは、LC共振回路7aと点灯状態の高圧放電灯DLを含む負荷回路部5との周波数特性に対して、遅相側の周波数帯となっている。
【0049】
そして、高周波予熱モードにおいて高圧放電灯DLの両ランプ電極が均等に予熱されると、図7の時刻t5において、インバータ制御回路部8が、高周波予熱モードから矩形波点灯モードにモードを切り換えており、高圧放電灯DLを安定点灯させることができる。
【0050】
以上のようにインバータ制御回路部8では絶縁破壊モード、高周波予熱モード、矩形波点灯モードの3つのモードを順番に実行することで、不点灯状態の高圧放電灯DLを安定点灯状態に移行させているのであるが、高圧放電灯DLの状態によっては高周波予熱モードで予熱中の高圧放電灯DLが立ち消えする場合もある。
【0051】
ここで、高周波予熱モードで動作中の時刻t3に高圧放電灯DLの立ち消えが発生すると、高周波予熱モードではインバータ制御回路部8が、スイッチング素子Q3,Q6の組と、スイッチング素子Q4,Q5の組とを交互にオンさせる動作周波数を上記の周波数範囲f2swpで掃引しているので、動作周波数が共振周波数f0(例えば430kHz)の奇数分の1(11分の1)の周波数である第2スイッチング周波数f2(例えば39kHz)に近付くと、LC共振回路7aの共振作用により直流電源回路部3の出力電圧V1に比べて高電圧の共振電圧Vp2を高圧放電灯DLのランプ電極間に印加することができる。したがって、予熱中に立ち消えが発生した場合でも、共振電圧を高圧放電灯DLの電極間に印加することで、再び絶縁破壊が発生しやすくなり、絶縁破壊が発生した後に高周波予熱モードへと移行させ、両ランプ電極が十分温まったところで、矩形波点灯モードに移行させることで高圧放電灯DLを安定点灯させることができるから、始動の失敗が少なく、始動性を向上させた高圧放電灯点灯装置を提供することができる。
【0052】
尚、実施形態1で説明した図5の高圧放電灯点灯装置において、本実施形態と同様の制御を行ってもよく、上述と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(実施形態3)
本発明の実施形態3を図8及び図9に基づいて説明する。本実施形態の高圧放電灯点灯装置は、図8のブロック回路図に示すように、ダイオードブリッジからなり商用交流電源1を全波整流する整流回路部2と、整流回路部2の出力を平滑化する昇圧チョッパからなる直流電源回路部3と、直流電源回路部3の出力を制御する昇圧チョッパ制御回路部4と、直流電源回路部3の出力電圧を所望の電圧値に降圧することによって高圧放電灯DLの点灯電力を制御する電力制御回路部9と、電力制御回路部9の出力を制御する降圧チョッパ制御回路部10と、電力制御回路部9の直流出力をスイッチングすることで矩形波交流電力に変換して高圧放電灯DLに供給する極性反転回路部6と、電力制御回路部9の直流出力をスイッチングすることによって高圧放電灯DLを絶縁破壊させるための始動電圧を発生させるイグナイタ回路部7と、極性反転回路部6及びイグナイタ回路部7のスイッチング動作を制御するインバータ制御回路部8とを主要な構成として備えている。
【0054】
直流電源回路部3は昇圧型のチョッパ回路からなり、整流回路部2の高圧側出力端に一端が接続されたインダクタL1と、インダクタL1の他端と整流回路部2の低圧側出力端との間にドレイン−ソース間が接続されたMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)よりなるスイッチング素子Q1と、インダクタL1の他端にアノードが接続されたダイオードD1と、ダイオードD1のカソードと整流回路部2の低圧側出力端との間に接続された電解コンデンサC1とを備えている。
【0055】
昇圧チョッパ制御回路部4は、直流電源回路部3の出力電圧V1(電解コンデンサC1の両端電圧)を検出し、スイッチング素子Q1のスイッチング周波数やオン/オフのデューティ比を制御することによって出力電圧V1を所望の電圧値に制御する。
【0056】
電力制御回路部9は、直流電源回路部3の高圧側出力端に接続されたMOS型FETからなるスイッチング素子Q2とインダクタL2との直列回路と、スイッチング素子Q2を介して直流電源回路部3の出力端間に接続されたダイオードD2と、インダクタL2の他端と直流電源回路部3の低圧側出力端との間に接続されたコンデンサC2とを備え、コンデンサC2の両端電圧V2が出力として極性反転回路部6に供給される。
【0057】
降圧チョッパ制御回路部10は、インバータ制御回路部8から入力される制御信号に応じて、電力制御回路部9のスイッチング素子Q2をオン/オフ駆動することで、電力制御回路部9の出力電圧V2を変化させ、高圧放電灯DLへの点灯電力を制御する。ここにおいて、整流回路部2と直流電源回路部3と電力制御回路部9と昇圧チョッパ制御回路部4と降圧チョッパ制御回路部10とで直流電源部が構成される。
【0058】
極性反転回路部6は、電力制御回路部9の出力端間(すなわちコンデンサC2の両端間)にそれぞれ接続されたスイッチング素子Q3,Q4の直列回路、スイッチング素子Q5,Q6の直列回路を有するフルブリッジ回路からなり、スイッチング素子Q3,Q4の接続点と、スイッチング素子Q5,Q6の接続点との間には、オートトランス(単巻変圧器)構造のインダクタL3と高圧放電灯DLとが直列に接続されている。
【0059】
イグナイタ回路部7は、直流電源回路部3の出力端間に接続された極性反転回路部6内のスイッチング素子Q3,Q4の組、スイッチング素子Q5,Q6の組と、インダクタL3と、インダクタL3の一次巻線(分路巻線)N1の両端間にスイッチング素子Q4を介して接続されたコンデンサC3及び抵抗R1の直列回路とを備え、インダクタL3の直列巻線N2は高圧放電灯DLに接続されている。またインダクタL3の一次巻線N1とコンデンサC3とでLC共振回路7aが構成されている。
【0060】
インバータ制御回路部8は例えばマイクロコンピュータからなり、負荷状態に応じて、電力制御回路部9のスイッチング素子Q2と極性反転回路部6のスイッチング素子Q3〜Q6のオン/オフを制御している。例えば高圧放電灯DLの安定点灯時(矩形波点灯モード時)には、インバータ制御回路部8は、対角の位置に配置されたスイッチング素子Q4,Q5のペアをオフさせた状態でスイッチング素子Q3,Q6のペアをオン/オフさせる第1の期間T21と、スイッチング素子Q3,Q6のペアをオフさせた状態でスイッチング素子Q4,Q5のペアをオン/オフさせる第2の期間T22とを比較的低い周波数で交番させている。
【0061】
次に、この高圧放電灯点灯装置により高圧放電灯DLが不点灯状態から安定点灯状態に至るまでの動作を、図9及び図10を参照して説明する。尚、図10は高圧放電灯DLが不点灯状態から安定点灯状態に至るまでの各部の波形図である。
【0062】
先ず、高圧放電灯DLが不点灯状態で図示しない点灯スイッチが投入されると、チョッパ制御回路部4およびインバータ制御回路部8が制御動作を開始する。チョッパ制御回路部4では、スイッチング素子Q1のオン/オフを制御することによって直流電源回路部3にチョッパ動作を行わせ、入力電源を昇圧した所定電圧値の直流電圧を出力するとともに、インバータ制御回路部8が、降圧チョッパ制御回路部10を用いてスイッチング素子Q2のオン/オフを制御し、直流電源回路部3の出力電圧を降圧した所定電圧値の直流電圧を出力する。
【0063】
またインバータ制御回路部8は、先ず絶縁破壊モードで動作を開始し(図10の期間TM1)、降圧チョッパ制御回路部10を用いてスイッチング素子Q2のオン/オフを制御し、直流電源回路部3の出力電圧を降圧した所定電圧値の直流電圧を出力するとともに、LC共振回路7aの共振周波数f0の奇数分の1となる数十kHz〜数百kHzの第1スイッチング周波数f1付近で、スイッチング素子Q3,Q6の組がオンになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオフになる期間T01と、スイッチング素子Q3,Q6の組がオフになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオンになる期間T02とを交互に設けることで、LC共振回路7aを共振させ、このときインダクタL3の一次巻線N1に発生する共振電圧を、一次巻線(分路巻線)N1と直列巻線N2との巻線比で昇圧した電圧を、高圧放電灯DLの電極間に印加して、絶縁破壊を発生させる。
【0064】
ここで、図9は無負荷時(高圧放電灯DLの不点灯状態)におけるLC共振回路7aの周波数特性と動作周波数の関係を示しており、本実施形態ではLC共振回路7aの共振周波数f0が約430kHzとなっている。而してインバータ制御回路部8は、絶縁破壊モードにおいて、共振周波数f0の奇数分の1(例えば3分の1)の第1スイッチング周波数f1(約143kHz)付近、すなわち第1スイッチング周波数f1を含む所定の周波数範囲f1swp(例えば96kHz〜160kHZ)で、スイッチング素子Q3,Q6の組と、スイッチング素子Q4,Q5の組とを交互にオンさせる動作周波数を掃引する。そして、動作周波数の掃引に応じて、LC共振回路7aの共振作用により高圧放電灯DLの両端間に印加されるランプ電圧Vlaの大きさが変化し、動作周波数が共振周波数f0の奇数分の1の周波数である第1スイッチング周波数f1(約143kHz)に一致したときにランプ電圧Vlaが最大となって、高圧放電灯DLを絶縁破壊させるのに必要な始動電圧Vp1を高圧放電灯DLに印加することができ、高圧放電灯DLを絶縁破壊させることができる(図10の時刻t1)。尚、インバータ制御回路部8では、絶縁破壊モードにおける第1スイッチング周波数f1を共振周波数f0や、共振周波数f0の奇数分の1の周波数に設定してもよく、LC共振回路7aの共振作用によって高圧の共振電圧を高圧放電灯DLに印加して、高圧放電灯DLを絶縁破壊を起こさせることができる。
【0065】
上述の絶縁破壊モードにおいてイグナイタ回路部7によって高圧放電灯DLの絶縁破壊が発生すると、高圧放電灯DLではグロー放電が発生し、その後アーク放電に至るのであるが、その間に両側のランプ電極に予熱電流を供給して、両ランプ電極を素早く温めるモードが高周波予熱モードである(図10の期間TM2)。この高周波予熱モードにおいて、インバータ制御回路部8は、第1スイッチング周波数f1より低い周波数であって、共振周波数f0の奇数分の1(本実施形態では11分の1)の第2スイッチング周波数f2(約39kHz)で、スイッチング素子Q3,Q6の組がオフになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオンになる期間T11と、スイッチング素子Q3,Q6の組がオンになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオフになる期間T12とを交互に設けており、高圧放電灯DLの両ランプ電極にランプ電流I1が供給されることで、両ランプ電極が予熱される。尚、第2スイッチング周波数f2は、LC共振回路7aと点灯状態の高圧放電灯DLを含む負荷回路部5との周波数特性に対して、遅相側の周波数帯となっている。
【0066】
そして、高周波予熱モードにおいて高圧放電灯DLの両ランプ電極が均等に予熱されると、図10の時刻t5において、インバータ制御回路部8が、高周波予熱モードから矩形波点灯モードにモードを切り換える。矩形波点灯モードでは(図10の期間TM3)、インバータ制御回路部8が、対角の位置に配置されたスイッチング素子Q4,Q5のペアと、スイッチング素子Q3,Q6のペアを比較的低い周波数flow(例えば数十Hz〜数百Hz)で交互にオン/オフさせており、数十Hz〜数百Hzの矩形波交流電圧を高圧放電灯DLに印加する。このとき、高圧放電灯DLのガラスバルブ内の温度とともに、ランプ電圧が徐々に上昇し、数分後にはランプ電圧が略一定の安定状態となり、この状態でアーク放電が継続して発生することにより、高圧放電灯DLが安定点灯状態となる。
【0067】
以上のようにインバータ制御回路部8では絶縁破壊モード、高周波予熱モード、矩形波点灯モードの3つのモードを順次切り替えることで、不点灯状態の高圧放電灯DLを安定点灯状態に移行させているのであるが、高圧放電灯DLの状態によっては高周波予熱モードで予熱中の高圧放電灯DLが立ち消えする場合もある。図10は高周波予熱モードで動作中に立ち消えが発生した場合の各部の波形図を示しており、高周波予熱モードで動作中の時刻t3に立ち消えが発生すると、インバータ制御回路部8は、スイッチング素子Q3,Q6の組がオフになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオンになる期間T11と、スイッチング素子Q3,Q6の組がオンになり、且つ、スイッチング素子Q4,Q5の組がオフになる期間T12とを第2スイッチング周波数f2で交番させている。この第2スイッチング周波数f2(約39kHz)は、無負荷時のLC共振回路7aの共振周波数をf0としたとき、共振周波数f0の奇数分の1(例えば11分の1)の周波数となるので、LC共振回路7aの共振作用により直流電源回路部3の出力電圧V1(所謂バス電圧)に比べて高電圧の共振電圧Vp2を高圧放電灯DLのランプ電極間に印加することができ、再び絶縁破壊を発生させることで、高圧放電灯DLを高周波予熱モードへと移行させ、その後両ランプ電極が十分温まったところで、矩形波点灯モードに移行させることで高圧放電灯DLを安定点灯させることができる。
【0068】
すなわち本実施形態の放電灯点灯装置では、高周波予熱モードにおいて立ち消えが発生した場合でも、無負荷時の共振周波数f0の奇数分の1の周波数でスイッチング動作を行わせているので、LC共振回路7aの共振作用により、直流電源部の出力電圧よりも高電圧の共振電圧を高圧放電灯DLに印加することができ、高圧放電灯DLを再び絶縁破壊させて高周波予熱モードに復帰させることが可能なため、始動の失敗が少なく、始動性を向上させた高圧放電灯点灯装置を提供することができる。
【0069】
(実施形態4)
本発明の実施形態4を図11〜図14に基づいて説明する。上述の実施形態1では、インバータ制御回路部8が、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行する際、イグナイタ回路部7のスイッチング周波数を第1スイッチング周波数f1から第2スイッチング周波数f2へ切り替えるのであるが、図11に示すようにスイッチング周波数の切り替えを徐々に行うようにしてもよい。尚、高圧放電灯点灯装置の回路構成は図1と同一であるので、図示及び説明は省略する。
【0070】
図11は高圧放電灯DLが不点灯状態から安定点灯状態に至るまでの各部の波形図であり、絶縁破壊モードTM1中の時刻t1において絶縁破壊が発生すると、その後の時刻t2に動作モードが高周波予熱モードに切り替えられるのであるが、インバータ制御回路部8では、スイッチング素子Q3,Q6の組とスイッチング素子Q4,Q5の組を交互にオン/オフさせる周波数を、時刻t2に共振周波数f0の5分の1の周波数(f0/5)、時刻t3に共振周波数f0の7分の1の周波数(f0/7)、時刻t4に共振周波数f0の9分の1の周波数(f0/9)の順番で段階的に低下させた後、最終的に共振周波数f0の11分の1の周波数(f0/11)に切り替えている。すなわち、スイッチング周波数を段階的に低下させる際に、第1スイッチング周波数f1(=f0/3)より低く且つ第2スイッチング周波数f2(=f0/11)より高い周波数であって、共振周波数f0の奇数分の1の周波数となる1乃至複数(本実施形態では例えば3つ)の中間周波数f0/5,f0/7,f0/9を設定し、第1スイッチング周波数f0から3つの中間周波数f0/5,f0/7,f0/9を経て第2スイッチング周波数f2まで段階的に低下させているのであるが、動作モードが高周波予熱モードに切り替えられた直後の高圧放電灯DLが立ち消えしやすいタイミングでは、高圧放電灯DLの立ち消えが発生した場合に、第2スイッチング周波数に比べて、共振周波数f0に近い中間周波数(f0/5,f0/7,f0/9)でスイッチング動作を行うから、モードの切替直後に第2スイッチング周波数f2(=f0/11)でスイッチングする場合に比べて高電圧の共振電圧を発生させることができ、高周波予熱モードで立ち消えが発生した場合には高電圧の共振電圧を高圧放電灯DLに印加させることで、高圧放電灯DLを再点灯させることができる。また高周波予熱モードにおいて、インバータ制御回路部8は、時間の経過と共にスイッチング周波数を段階的に低下させており、最終的には所望のスイッチング周波数(f0/11)に切り替えているので、予熱電流を段階的に増加させ、高圧放電灯DLのランプ電極を十分に予熱した状態で、矩形波点灯に移行させることができる。
【0071】
尚、図11に示す例では絶縁破壊モードから高周波予熱モードに切り替わると、インバータ制御回路部8は、スイッチング周波数をf0/5→f0/7→f0/9→f0/11の順番でステップ状に切り替えているが、スイッチング周波数の切り替え方を上記の形態に限定する趣旨のものではなく、例えば図12に示すように、高周波予熱モードに移行させた後の時刻tn(n=2,3,4)にスイッチング周波数をf0/(2×n+1)に切り替えるとともに、時刻tnから時刻t(n+1)の間では時間の経過に応じてスイッチング周波数をf0/(2×n+1)から線形的に低下させ、最終的には時刻t5においてスイッチング周波数を(f0/11)に切り換えるようにしてもよい。
【0072】
また図13に示すように動作モードを絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行させる際に、スイッチング周波数が第1スイッチング周波数f1(例えば140kHz)から第2スイッチング周波数f2(例えば39kHz)にダイレクトに切り替えられた場合、コンデンサC2への充電電流(振動電流)が過大になるので、図14に示すようにモード切替時に、スイッチング周波数f1よりも低く且つ第2スイッチング周波数f2よりも高い周波数(例えば47kHz)に一旦切り替えた後(期間TA)、第2スイッチング周波数f2(例えば39kHz)に切り替えるようにしてもよく(期間TB)、コンデンサC2への充電電流のピークを低減することができる。
【0073】
尚、本実施形態では実施形態1の回路において高周波予熱モードでのスイッチング周波数の制御方式を説明したが、実施形態2又は3の高圧放電灯点灯装置において、本実施形態のようにスイッチング周波数を切り替えてもよく、上述と同様の効果を得ることができる。
【0074】
(実施形態5)
本発明の実施形態5を図15(a)〜(c)に基づいて説明する。図15(a)〜(c)は、実施形態1乃至4で説明した何れかの高圧放電灯点灯装置をハウジング20内に収納して、灯具21内のソケット(図示なし)に装着された高圧放電灯DLを点灯させる照明器具の外観図であり、ハウジング20内の高圧放電灯点灯装置からケーブル23及びソケットを介して高圧放電灯に点灯電力を供給することで、高圧放電灯DLを点灯させるものである。
【0075】
これらの照明器具は、実施形態1乃至4の何れかの高圧放電灯点灯装置を用いているので、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行した際に立ち消えが発生したとしても、イグナイタ回路部7が備えるLC共振回路7aで発生した共振電圧を高圧放電灯DLの両ランプ電極間に印加することで、高圧放電灯DLが再点灯しやすくなり、高圧放電灯DLの始動性を改善することができる。
【0076】
なお図15(a)は、ダウンライトにHIDランプ等の高圧放電灯DLを用いた照明器具であり、同図(b)(c)は、スポットライトにHIDランプ等の高圧放電灯DLを用い、商用電源を給電するための配線ダクトレール23に対して移動自在に取り付けられたハウジング20に対して灯具21を吊下げ支持させた器具である。
【0077】
さらに、これらの照明器具を用いて、各照明器具の点灯制御を行う照明システムを構築すれば、システムとしても上記同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】実施形態1の高圧放電灯点灯装置のブロック回路図である。
【図2】同上のイグナイタ回路部の動作周波数と共振回路の周波数特性の関係を示し、(a)は無負荷時の説明図、(b)は点灯時の説明図である。
【図3】(a)は同上の絶縁破壊モードから矩形波点灯モードに至るまでの各部の波形図であり、(b)は絶縁破壊モード中の期間Taにおける各部の波形図である。
【図4】同上の絶縁破壊モードから矩形波点灯モードに至るまでの各部の波形図であり、高周波予熱モードで立ち消えが発生した場合の波形図である。
【図5】同上の他の回路構成を示すブロック回路図である。
【図6】実施形態2のイグナイタ回路部の動作周波数と共振回路の周波数特性の関係を示し、(a)は無負荷時の説明図、(b)は点灯時の説明図である。
【図7】同上の絶縁破壊モードから矩形波点灯モードに至るまでの各部の波形図である。
【図8】実施形態3の放電灯点灯装置のブロック回路図である。
【図9】同上の無負荷時における共振回路の周波数特性とイグナイタ回路部の動作周波数との関係を示す説明図である。
【図10】同上の絶縁破壊モードから矩形波点灯モードに至るまでの各部の波形図である。
【図11】実施形態4の放電灯点灯装置を示し、絶縁破壊モードから矩形波点灯モードに至るまでの各部の波形図である。
【図12】同上の他の制御方式を示し、絶縁破壊モードから矩形波点灯モードに至るまでの各部の波形図である。
【図13】同上を示し、絶縁破壊モードから高周波予熱モードへの移行時における各部の電流波形図である。
【図14】同上の他の制御方式を示し、絶縁破壊モードから高周波予熱モードへの移行時における各部の電流波形図である。
【図15】(a)〜(c)は同上を用いた照明装置の外観図である。
【符号の説明】
【0079】
2 整流回路部(直流電源部)
3 直流電源回路部(直流電源部)
5 負荷回路部
6 極性反転回路部(電力変換部)
7 イグナイタ回路部
7a LC共振回路
8 インバータ制御回路部(制御回路部)
DL 高圧放電灯
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源部と、LC共振回路を具備し直流電源部の出力をスイッチングすることによって高圧放電灯を絶縁破壊させる始動電圧を発生させるイグナイタ回路部と、直流電源部の出力をスイッチングすることによって矩形波交流に変換し前記高圧放電灯を含む負荷回路部に供給して前記高圧放電灯を安定点灯させる電力変換部と、イグナイタ回路部及び電力変換部のスイッチング動作を、高圧放電灯を絶縁破壊させる絶縁破壊モード、高圧放電灯に予熱電流を供給してランプ電極を予熱する高周波予熱モード、高圧放電灯に矩形波交流を供給することで高圧放電灯を安定点灯させる矩形波点灯モードの3つのモードに順次切り替える制御回路部とを備え、
制御回路部は、絶縁破壊モードにおいて、前記LC共振回路の共振周波数の奇数分の1の周波数である第1スイッチング周波数付近でイグナイタ回路部のスイッチング素子をスイッチングさせることで始動電圧を発生させるとともに、高周波予熱モードにおいて、前記第1スイッチング周波数よりも低く且つ前記共振周波数の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数付近でイグナイタ回路部のスイッチング素子をスイッチングさせることで得られた高周波電圧を前記負荷回路部に供給することを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記制御回路部は、高周波予熱モードにおいて、前記第2スイッチング周波数を含む所定の周波数範囲内でイグナイタ回路部のスイッチング周波数を掃引してスイッチングさせることを特徴とする請求項1記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記所定の周波数範囲とは、前記LC共振回路と、点灯状態の前記高圧放電灯を含む前記負荷回路部との周波数特性に対して、遅相側の周波数帯であることを特徴とする請求項2記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記制御回路部は、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行する際に、イグナイタ回路部のスイッチング周波数を第1スイッチング周波数付近から第2スイッチング周波数付近まで時間の経過に応じて徐々に低下させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記制御回路部は、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行する際に、イグナイタ回路部のスイッチング周波数を第1スイッチング周波数付近から第2スイッチング周波数付近まで段階的に低下させることを特徴とする請求項4記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記制御回路部が、スイッチング周波数を段階的に低下させる際に、第1スイッチング周波数より低く且つ第2スイッチング周波数より高い周波数であって、前記共振周波数の奇数分の1の周波数となる1乃至複数の中間周波数を設定し、前記第1スイッチング周波数から1乃至複数の前記中間周波数を経て前記第2スイッチング周波数まで段階的に低下させることを特徴とする請求項5記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の高圧放電灯点灯装置と、当該放電灯点灯装置によって電力を供給される放電灯を具備した灯具とを備えることを特徴とする照明器具。
【請求項8】
請求項7記載の照明器具を備えて点灯制御を行うことを特徴とする照明システム。
【請求項1】
直流電源部と、LC共振回路を具備し直流電源部の出力をスイッチングすることによって高圧放電灯を絶縁破壊させる始動電圧を発生させるイグナイタ回路部と、直流電源部の出力をスイッチングすることによって矩形波交流に変換し前記高圧放電灯を含む負荷回路部に供給して前記高圧放電灯を安定点灯させる電力変換部と、イグナイタ回路部及び電力変換部のスイッチング動作を、高圧放電灯を絶縁破壊させる絶縁破壊モード、高圧放電灯に予熱電流を供給してランプ電極を予熱する高周波予熱モード、高圧放電灯に矩形波交流を供給することで高圧放電灯を安定点灯させる矩形波点灯モードの3つのモードに順次切り替える制御回路部とを備え、
制御回路部は、絶縁破壊モードにおいて、前記LC共振回路の共振周波数の奇数分の1の周波数である第1スイッチング周波数付近でイグナイタ回路部のスイッチング素子をスイッチングさせることで始動電圧を発生させるとともに、高周波予熱モードにおいて、前記第1スイッチング周波数よりも低く且つ前記共振周波数の奇数分の1の周波数である第2スイッチング周波数付近でイグナイタ回路部のスイッチング素子をスイッチングさせることで得られた高周波電圧を前記負荷回路部に供給することを特徴とする高圧放電灯点灯装置。
【請求項2】
前記制御回路部は、高周波予熱モードにおいて、前記第2スイッチング周波数を含む所定の周波数範囲内でイグナイタ回路部のスイッチング周波数を掃引してスイッチングさせることを特徴とする請求項1記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項3】
前記所定の周波数範囲とは、前記LC共振回路と、点灯状態の前記高圧放電灯を含む前記負荷回路部との周波数特性に対して、遅相側の周波数帯であることを特徴とする請求項2記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項4】
前記制御回路部は、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行する際に、イグナイタ回路部のスイッチング周波数を第1スイッチング周波数付近から第2スイッチング周波数付近まで時間の経過に応じて徐々に低下させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項5】
前記制御回路部は、絶縁破壊モードから高周波予熱モードに移行する際に、イグナイタ回路部のスイッチング周波数を第1スイッチング周波数付近から第2スイッチング周波数付近まで段階的に低下させることを特徴とする請求項4記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項6】
前記制御回路部が、スイッチング周波数を段階的に低下させる際に、第1スイッチング周波数より低く且つ第2スイッチング周波数より高い周波数であって、前記共振周波数の奇数分の1の周波数となる1乃至複数の中間周波数を設定し、前記第1スイッチング周波数から1乃至複数の前記中間周波数を経て前記第2スイッチング周波数まで段階的に低下させることを特徴とする請求項5記載の高圧放電灯点灯装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載の高圧放電灯点灯装置と、当該放電灯点灯装置によって電力を供給される放電灯を具備した灯具とを備えることを特徴とする照明器具。
【請求項8】
請求項7記載の照明器具を備えて点灯制御を行うことを特徴とする照明システム。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図1】
【公開番号】特開2010−108659(P2010−108659A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277428(P2008−277428)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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