説明

高強度部品の製造方法および高強度部品

【課題】自動車の構造部材・補強部材に使用される部材のような高温成形後の強度に優れた部品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.55%、Mn:0.1%〜3%以下の化学成分を含有する鋼板を用い、水素量が体積分率で10%以下、かつ露点が30℃以下である雰囲気にて、Ac3〜融点までに鋼板を加熱した後、フェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト変態が生じる温度より高い温度で成形を開始し、成形後に金型中にて冷却して焼入れを行い高強度の部品を製造した後に部品の一部を溶融して切断する加工を施す、もしくは、機械加工にて穴加工や部品周囲の切断を行う高強度部品の製造方法と、方法にて製造した高強度部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の構造部材・補強部材に使用されるような強度が必要とされる部材に関し、特に高温成形後の強度に優れた部品とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球環境問題に端を発する自動車の軽量化のためには、自動車に使用される鋼板をできるだけ高強度化することが必要となるが、一般に鋼板を高強度化していくと伸びやr値が低下し、成形性が劣化していく。このような課題を解決するために、温間で成形し、その際の熱を利用して強度上昇を図る技術が、特許文献1に開示されている。この技術では、鋼中成分を適切に制御し、フェライト温度域で加熱し、この温度域での析出強化を利用して強度を上昇させることを狙っている。
【0003】
また、特許文献2では、プレス成形精度を向上させる目的で成形温度での降伏強度を常温での降伏強度より大きく低下する高強度鋼板が提案されている。しかしながら、これらの技術では得られる強度に限度がある可能性がある。一方、より高強度を得る目的で、成形後に高温のオーステナイト単相域に加熱し、その後の冷却過程で硬質の相に変態させる技術が特許文献3に提案されている。
しかしながら、成形後に加熱・急速冷却を行うと形状精度に問題が生じる可能性がある。この欠点を克服する技術としては、鋼板をオーステナイト単相域に加熱し、その後プレス成形過程にて冷却を施す技術が非特許文献1や特許文献4に開示されている。
【特許文献1】特開2000−234153号公報
【特許文献2】特開2000−87183号公報
【特許文献3】特開2000−38640号公報
【特許文献4】特開2001−181833号公報
【特許文献5】特開2003−328031号公報
【非特許文献1】SAE,2001-01-0078
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、自動車等に使用される高強度鋼板は高強度化されるほど上述した成形性の問題や特に1000MPaを超えるような高強度材においては従来から知られているように水素脆化(置きわれや遅れ破壊と呼ばれることもある)という本質的な課題がある。ホットプレス用鋼板として用いられる場合、高温でのプレスによる残留応力は少ないものの、プレス前の加熱時に水素が鋼中に浸入すること、また後加工での残留応力により水素脆化の感受性が高くなる。したがって単に高温でプレスするだけでは本質的な課題解決にならず、加熱工程および後加工までの一貫工程での工程条件最適化が必要となる。
【0005】
剪断加工などの後加工時の残留応力を減少する可能性がある技術としては、後加工を行う部位の冷却速度を低下させて焼入れを不十分として、その部位の強度を低下させる技術が特許文献5に示されている。この方法によれば部品の一部の強度が低下し、剪断加工などの後加工後の残留応力が低下する可能性が考えられる。しかし、この方法を用いる場合には、金型構造が複雑になり、経済的に不利であると考えられる。さらに、この方法では水素脆化に対してはなんか言及しておらず、この方法により鋼板強度が若干低下して後加工後の残留応力がある程度低下した場合であっても、鋼中に水素が残存した状態であれば水素脆化が生じる可能性は否定できない。本発明は上記のような従来技術の問題点を解決し、高温成形後に1200MPa以上の強度を得ることができる耐水素脆性に優れた高強度部品及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々の検討を実施した。その結果、水素脆化を抑制するためには、成形前の加熱炉中の雰囲気を制御して鋼中の水素量を減少させ、さらに加工後の残留応力が小さい溶断や切削などの加工方法にて後加工を行うことが効果的であることを見出した。
すなわち、本発明の要旨とするところは下記のとおりである。
(1)質量%で、C:0.05〜0.55%、Mn:0.1〜3%、Si:1.0%以下、Al:0.005〜0.1%、S:0.02%以下、P:0.03%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる化学成分を含有する鋼板を用い、水素量が体積分率で10%以下、かつ露点が30℃以下である雰囲気にて、Ac3〜融点までに鋼板を加熱した後、フェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト変態が生じる温度より高い温度で成形を開始し、成形後に金型中にて冷却して焼入れを行い高強度の部品を製造した後に部品の一部を溶融して切断する加工を施すことを特徴とする高強度部品の製造方法。
(2)前記部品の一部を溶融して切断する加工方法として、レーザー加工を行うことを特徴とする(1)に記載の高強度部品の製造方法。
(3)前記部品の一部を溶融して切断する加工方法として、プラズマ切断加工を行うことを特徴とする(1)に記載の高強度部品の製造方法
(4)質量%で、C:0.05〜0.55%、Mn:0.1〜3%、Si:1.0%以下、Al:0.005〜0.1%、S:0.02%以下、P:0.03%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる化学成分を含有する鋼板を用い、水素量が体積分率で10%以下、かつ露点が30℃以下である雰囲気にて、Ac3〜融点までに鋼板を加熱した後、フェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト変態が生じる温度より高い温度で成形を開始し、成形後に金型中にて冷却して焼入れを行い高強度の部品を製造した後、機械加工にて穴加工や部品周囲の切断を行うことを特徴とする高強度部品の製造方法。
(5)前記鋼板の化学成分が質量%で、C:0.05〜0.55%、Mn:0.1〜3%、Si:1.0%以下、Al:0.005〜0.1%、S:0.02%以下、P:0.03%以下、Cr:0.01〜1.2%、N:0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の高強度部品の製造方法。
(6)前記鋼板の化学成分が質量%で、C:0.05〜0.55%、Mn:0.1〜3%、Si:1.0%以下、Al:0.005〜0.1%、S:0.02%以下、P:0.03%以下、B:0.0002%〜0.0050%、Ti:(3.42×N+0.001)%以上、3.99×(C-0.1)%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の高強度部品の製造方法。
(7)前記鋼板の化学成分が質量%で、C:0.05〜0.55%、Mn:0.1〜3%、Si:1.0%以下、Al:0.005〜0.1%、S:0.02%以下、P:0.03%以下、Cr:0.01〜1.2%、B:0.0002%〜0.0050%、Ti:(3.42×N+0.001)%以上、3.99×(C-0.1)%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の高強度部品の製造方法。
(8)前記鋼板が、アルミめっき、アルミ−亜鉛めっき、亜鉛めっきのいずれかを施したものであることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の高強度部品の製造方法。
(9)(1)乃至(8)のいずれかに記載の方法で製造されたことを特徴とする高強度部品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、成形後に金型中にて冷却して焼入れを行って高強度の部品を製造する際に、車体が軽量で衝突安全性に優れた自動車が製造できるため、社会的貢献が大きいものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明の制限範囲について詳細に説明する。
水素量が体積分率で10%以下としたのは、水素量が制限以上であった場合には、加熱中に鋼板中に進入する水素量が多量となり、耐水素脆化特性が低下するためにである。また、雰囲気中の露点を30℃以下としたのは、これ以上の露点である場合には加熱中に鋼板中に進入する水素量が多量となり、耐水素脆化特性が低下するためにである。
【0009】
鋼板の加熱温度Ac3以上、融点以下としたのは成形後に焼入れ強化するために鋼板の組織をオーステナイトにしておくためである。また加熱温度が融点以上であるとプレス成形が不可能であるためである。
成形開始温度をフェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト変態が生じる温度より高い温度としたのはその温度以下で成形した場合には成形後の硬度が不十分であるためである。
成形後に金型中にて冷却して焼入れを行い高強度の部品を製造した後に部品の一部を溶融して切断する加工を施すとしたのは、部品の一部を溶融して切断する加工を行うと加工後の残留応力が小さく、耐水素脆化特性が良好であるためである。
【0010】
部品の一部を溶融して切断する加工方法としては、いかなる方法を用いても良いが、工業的には請求項2, 3に示すような熱影響部の小さいレーザー加工とプラズマ切断加工が望ましい。ガス切断は加工後の残留応力としては小さいが入熱が大きくて、部品の強度が低下する部位が多くなるため不利である。
成形後に金型中にて冷却して焼入れを行い高強度の部品を製造した後、機械加工にて穴加工や部品周囲の切断を行うこととしたのは、切削などの機械加工では加工後の残留応力が小さく、耐水素脆化特性が良好であるためである。
機械加工にて穴加工や部品周囲の切断を行う方法としては、いかなる方法を用いても良いが、工業的には経済性に優れるドリル加工や金鋸による切断を用いることが望ましい。
【0011】
以下に素材についての制限について説明する。
Cは冷却後の組織をマルテンサイトとして材質を確保するために添加する元素であり、強度1000MPa以上を確保するためには0.1%以上添加することが望ましい。ところが、添加量が多すぎると、衝撃変形時の強度確保が困難となるため、その上限を0.55%が望ましい。
Mnは強度および焼入れ性を向上させる元素であり、0.2%未満では焼入れ時の強度を十分に得られず、また、3%を超えて添加しても効果が飽和するため、Mnは0.2〜3%の範囲が望ましい。
【0012】
Siは固溶強化型の合金元素であるが、1%を超えると、表面スケールの問題が生じる。また、鋼板表面にメッキ処理を行う場合は、Siの添加量が多いとメッキ性が劣化するため、上限を0.5%とすることが好ましい。
Alは溶鋼の脱酸材として使われる必要な元素であり、またNを固定する元素でもあり、その量は結晶粒径や機械的性質に影響を及ぼす。このような効果を有するためには0.005%以上の含有量が必要であるが、0.1%を超えると非金属介在物が多くなり製品に表面疵が発生しやすくなる。このため、Alは0.005〜0.1%の範囲が望ましい。
【0013】
Sは鋼中の非金属介在物に影響し、加工性を劣化させるとともに、靱性劣化、異方性および再熱割れ感受性の増大の原因となる。このため、Sは0.02%以下が望ましい。なお、さらに好ましくは、0.01%以下である。また、Sを0.005%以下に規制することにより、衝撃特性が飛躍的に向上する。
Pは溶接割れ性および靱性に悪影響を及ぼす元素であるため、Pは0.03%以下が望ましい。なお、好ましくは、0.02%以下である。また、更に好ましくは0.015%以下である。
【0014】
Nは0.01%を超えると窒化物の粗大化および固溶Nによる時効硬化により、靱性が劣化する傾向がみられる。このため、Nは0.01%以下の含有が望ましい。
Oについては特に規定しないがは過度の添加は靱性に悪影響を及ぼす酸化物の生成の原因となるとともに、疲労破壊の起点となる酸化物を生成するため、0.015%以下の含有が望ましい。
【0015】
Crは焼入れ性を向上させる元素であり、またマトリックス中へM236 型炭化物を析出させる効果を有し、強度を高めるとともに、炭化物を微細化する作用を有するため、上記の効果を得る目的で添加しても良い。0.01%未満ではこれらの効果が十分期待できず、また、1.2%を超えると降伏強度が過度に上昇する傾向にあるため、Crは0.01〜1.2%の範囲が望ましい。より望ましくは、0.05〜1%である。
Bはプレス成形中あるいはプレス成形後の冷却での焼入れ性を向上させる目的でに添加しても良い。この効果を発揮させるためには0.0002%以上の添加が必要である。しかしながら、この添加量がむやみに増加すると熱間での割れの懸念があることや、その効果が飽和するためその上限は0.0050%が望ましい。
【0016】
TiはBの効果を有効に発揮させるため、Bと化合物を生成するNを固着する目的で添加する。この効果を発揮させるためには、(Ti−3.42×N)が0.001%以上必要であるが、Ti量がむやみに増加するとTiと結合していないC量が減少し冷却後に十分な強度が得られなくなるため、その上限として、Tiと結合していないC量が0.1%以上確保できるTi当量、すなわち、3.99×(C−0.1)%とした方がよい。
スクラップから混入すると考えられるNi, Cu, Snなどの元素が含有してもよい。更に介在物の形状制御の観点からCa, Mg, Y, ,As, Sb, REMを添加してもよい。さらに強度を向上する目的でTi, Nb, Zr, Mo, Vを添加してもよいが、これらの元素がむやみに増加するとこれらの元素と結合していないC量が減少し冷却後に十分な強度が得られなくなるため、各々1%以下の添加が望ましい。
その他、不可避的に含まれる不純物が含有しても特に問題は生じない。
【0017】
以上の成分の鋼板にアルミめっき、アルミ-亜鉛めっき、亜鉛めっきを施しても良い。その製造方法は酸洗、冷間圧延は常法でよく、その後アルミめっき工程あるいはアルミ−亜鉛めっき工程、亜鉛めっきについても常法で問題ない。つまり、アルミめっきであれば浴中Si濃度は5〜12%が適しており、アルミ−亜鉛めっきでは浴中Zn濃度は40〜
50%が適している。また、アルミめっき層中にMgやZnが混在しても、アルミ−亜鉛めっき層中にMgが混在しても特に問題なく同様の特性の鋼板を製造することができる。なお、めっき工程における雰囲気については、無酸化炉を有する連続式めっき設備でも無酸化炉を有しない連続式めっき設備でも通常の条件とすることでめっき可能であり、本鋼板だけ特別な制御を必要としないことから生産性を阻害することもない。また、亜鉛めっき方法であれば、溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっきなどいかなる方法と取っても良い。以上の製造条件ではめっき前に鋼板表面に金属プレめっきを施していないが、NiプレめっきやFeプレめっき、その他めっき性を向上させる金属プレめっきを施しても特に問題は無い。また、めっき層表面に異種の金属めっきや無機系、有機系化合物の皮膜などを付与しても特に問題は無い。
【実施例】
【0018】
表1に示す化学成分のスラブを鋳造した。これらのスラブを1050〜1350℃に加熱し、熱間圧延にて仕上温度800〜900℃、巻取温度450〜680℃で板厚4mmの熱延鋼板とした。その後、酸洗を行った後、冷間圧延により板厚1.6mmの冷延鋼板とした。また、その冷延板の一部に溶融アルミめっき、溶融アルミ―亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融亜鉛めっきを施した。表2にめっき種の凡例を示す。その後、それらの冷延鋼板、表面処理鋼板を炉加熱によりAc3 点以上である950℃のオーステナイト領域に加熱した後、熱間成型加工を行った。加熱炉の雰囲気は水素量と露点を変化させた。その条件を表3に示す。
【0019】
金型形状の断面を図1に示す。図1中の凡例を示す。1:ダイス、2:パンチ。パンチを上方から見た形状を図2に示す。図2中の凡例を示す。1:パンチ。ダイスを下方から見た形状を図3に示す。図3中の凡例を示す。1:ダイス。金型はパンチ形状に倣い、板厚1.6mmのクリアランスにてダイスの形状と決定した。ブランクサイズを1.6mm厚×300 ×500とした。成形条件としては、パンチ速度10mm/s、加圧力200トン、下死点での保持時間を5秒とした。成形品の模式図を図4に示す。
熱間成形後は図5に示す位置に直径10mmφの穴を設けた。図5は部品を上方から見た形状を示す。図5中の凡例を示す。1:部品、2:穴加工部。加工方法としてはレーザー加工、プラズマ切断、ドリル加工、コンターマシーンによる金鋸での切断を行った。加工方法は表3に合せて示す。表中の凡例を示す。レーザー加工:「L」、プラズマ切断:「P」、ガス溶断「G」、ドリル加工:「D」、金鋸:「S」。以上の加工は熱間成形後30分以内に実施した。耐水素脆化特性の評価基準は後加工の1週間後に穴を全周観察し、割れの有無を判定した。観察はルーペもしくは電子顕微鏡を用いて行った。判定結果は表3に合せて示した。
【0020】
また、レーザー加工、プラズマ切断、ガス溶断については切断面近傍の熱影響についても調べた。切断面から3mm離れた位置の断面硬度を荷重10kgfのビッカース硬度により調査し、切断面から100mm離れて熱影響が無いと考えられる部位の硬度と比較した結果を下記に示す硬度低下率で表し、これを表3に合わせて示した。
硬度低下率=(切断面から100mm離れた位置の硬度)−(切断面から3mm離れた位置の硬度)/(切断面から100mm離れた位置の硬度)×100 (%)
その際の凡例は、硬度低下率10%未満:◎、硬度低下率10%以上、30%未満:〇、硬度低下率30%以上、50%未満:△、硬度低下率50%以上:×
【0021】
実験番号1〜249はレーザー加工を行った場合について、鋼種、めっき種、雰囲気中の水素濃度、露点の影響を検討した結果であるが、本発明の範囲内であれば、ピアス加工後に割れが発生しなかった。実験番号250〜277は加工方法の影響としてプラズマ加工を行った結果であるが、本発明の範囲内であれば、ピアス加工後に割れが発生しなかった。実験番号278〜526はドリル加工を行った場合について、鋼種、めっき種、雰囲気中の水素濃度、露点の影響を検討した結果であるが、本発明の範囲内であれば、ピアス加工後に割れが発生しなかった。実験番号527〜558は加工方法の影響として金鋸にて加工を行った結果であるが、本発明の範囲内であれば、ピアス加工後に割れが発生しなかった。
実験番号559〜564は溶断方法を変化させた実験である。雰囲気が本発明の範囲であり、溶断加工であるために割れは発生していないものの、実験番号561, 564は切断部近傍の硬度が低下していることがわかる。これより請求項2,3に示した溶断方法が熱影響が小さいことで優れていることがわかる。
【表1】

【表2】

【表3(1)】

【表3(2)】

【表3(3)】

【表3(4)】

【表3(5)】

【表3(6)】

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に用いる金型形状の断面を示す図である。
【図2】本発明に用いるパンチを上方から見た形状を示す図である。
【図3】本発明に用いるダイスを下方から見た形状を示す図である。
【図4】本発明における成形品の模式図である。
【図5】本発明における成形品を上方から見た形状を示す図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ダイス
2 パンチ
3 成形品
4 穴加工部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、C:0.05〜0.55%、Mn:0.1〜3%、Si:1.0%以下、Al:0.005〜0.1%、S:0.02%以下、P:0.03%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる化学成分を含有する鋼板を用い、水素量が体積分率で10%以下、かつ露点が30℃以下である雰囲気にて、Ac3〜融点までに鋼板を加熱した後、フェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト変態が生じる温度より高い温度で成形を開始し、成形後に金型中にて冷却して焼入れを行い高強度の部品を製造した後に部品の一部を溶融して切断する加工を施すことを特徴とする高強度部品の製造方法。
【請求項2】
前記部品の一部を溶融して切断する加工方法として、レーザー加工を行うことを特徴とする請求項1に記載の高強度部品の製造方法。
【請求項3】
前記部品の一部を溶融して切断する加工方法として、プラズマ切断加工を行うことを特徴とする請求項1に記載の高強度部品の製造方法
【請求項4】
質量%で、C:0.05〜0.55%、Mn:0.1〜3%、Si:1.0%以下、Al:0.005〜0.1%、S:0.02%以下、P:0.03%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる化学成分を含有する鋼板を用い、水素量が体積分率で10%以下、かつ露点が30℃以下である雰囲気にて、Ac3〜融点までに鋼板を加熱した後、フェライト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイト変態が生じる温度より高い温度で成形を開始し、成形後に金型中にて冷却して焼入れを行い高強度の部品を製造した後、機械加工にて穴加工や部品周囲の切断を行うことを特徴とする高強度部品の製造方法。
【請求項5】
前記鋼板の化学成分が質量%で、C:0.05〜0.55%、Mn:0.1〜3%、Si:1.0%以下、Al:0.005〜0.1%、S:0.02%以下、P:0.03%以下、Cr:0.01〜1.2%、N:0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の高強度部品の製造方法。
【請求項6】
前記鋼板の化学成分が質量%で、C:0.05〜0.55%、Mn:0.1〜3%、Si:1.0%以下、Al:0.005〜0.1%、S:0.02%以下、P:0.03%以下、B:0.0002%〜0.0050%、Ti:(3.42×N+0.001)%以上、3.99×(C-0.1)%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の高強度部品の製造方法。
【請求項7】
前記鋼板の化学成分が質量%で、C:0.05〜0.55%、Mn:0.1〜3%、Si:1.0%以下、Al:0.005〜0.1%、S:0.02%以下、P:0.03%以下、Cr:0.01〜1.2%、B:0.0002%〜0.0050%、Ti:(3.42×N+0.001)%以上、3.99×(C-0.1)%以下、N:0.01%以下を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の高強度部品の製造方法。
【請求項8】
前記鋼板が、アルミめっき、アルミ−亜鉛めっき、亜鉛めっきのいずれかを施したものであることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の高強度部品の製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の方法で製造されたことを特徴とする高強度部品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−110713(P2006−110713A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−266232(P2005−266232)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】