説明

高所作業車

【課題】高所作業車において、作業台に乗降するための梯子を備えている場合に、作業者が梯子に乗った状態のときに作業台の昇降作動及び車体の走行を規制する。また、梯子を介して車体と作業台との電気導通を阻止する。
【解決手段】本発明にかかる高所作業車は、コントローラ60の規制部62が作業者搭乗検出手段によって梯子に作業者が搭乗しているという信号を受けたときには、昇降作動制御部61及び走行制御部64に規制信号を送り、作業台40の昇降作動を規制する及び走行体10の走行を規制する警報作動が行われる。また、作業台40と梯子50の取り付け部である支持部材56を電気絶縁材料で構成し、走行体10と作業台40との電気導通を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行可能な車体上に昇降装置を介して取り付けられた作業台と、作業台に作業者が乗降するための梯子とを備えた高所作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
高所作業車は走行可能な車体上に昇降装置(シザース型又はマスト型等の垂直昇降装置もしくは起伏、伸縮、旋回動自在に設けられたブーム型の昇降装置)を介して取り付けられた作業台を有しており、昇降装置により作業台を所望の位置に移動させて高所作業を行うことができるようになっている。
【0003】
高所作業時にアウトリガジャッキを用いて作業車の安定度を高めるブーム型の高所作業車において、作業者が作業台上もしくは作業台に搭乗するためのステップ上にいる場合に、アウトリガジャッキの操作を規制し、走行体が揺れたり傾いたりすることにより作業台上もしくはステップ上の作業者がバランスを崩して不安定な姿勢になることを防ぎ作業者の安全を確保する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
特に電気工事に用いられるブーム型の高所作業車において、作業台が取り付けられた先端ブームが電気絶縁材料によって形成され、ブームの伸長状態に基づいてブームの起伏作動を規制し、車体と作業台間の電気絶縁を確保することができ、活線状態の架線に対する作業でも感電の怖れがなくなり作業者の安全を確保する技術が知られている(特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−21897号公報
【特許文献2】実開平7−4500号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようにブーム型の高所作業車においては作業者の安全を確保する技術が知られているが、垂直昇降装置を備えた高所作業車においては車体の下部から作業台に作業者が乗降するための梯子を備えているものがあり、この場合に、作業者が梯子に乗った状態のときに、他の作業者がこれに気づかずに誤って作業台の昇降操作や車体の走行操作を行なうことができる構成では梯子に搭乗している作業者の安全を確保するのが難しいという問題がある。
【0007】
また、従来では垂直昇降装置を備えた高所作業車においては作業台の電気絶縁性を考慮されていなかった。しかしながら、垂直昇降式の高所作業車を用いて活線作業を行う用途も求められることがあり、作業台に絶縁性を有した垂直昇降式の高所作業車が必要となっている。垂直昇降式の高所作業車では車体の下部から作業台に作業者が乗降するための梯子を備えているものがあり、この場合に、梯子を介した車体と作業台との電気導通を阻止する絶縁機能を有することも必要である。
【0008】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、作業者が梯子上にいるにもかかわらず、他の作業者がこれに気づかずに誤って作業台の昇降操作又は車体の走行操作を行ってしまうことを未然に防止できる構成の高所作業車を提供することを目的とする。
【0009】
また、作業台から車体に延びて設けられた梯子を備えている場合であっても、活線状態の架線に対する作業でも感電の怖れがなくなり作業者の安全を確保することができる構成の高所作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明に係る高所作業車は、走行装置を備えて走行可能な車体と、前記車体上に設けられた垂直昇降装置と、前記垂直昇降装置に取り付けられて垂直昇降自在な作業台と、前記垂直昇降装置の操作入力を行う垂直昇降操作手段(例えば、実施形態における上部昇降操作装置42a、下部昇降操作装置42b)と、前記垂直昇降操作手段の操作入力に応じて前記垂直昇降装置を作動させる垂直昇降作動制御手段(例えば、実施形態における昇降作動制御部61)と、前記作業台から前記車体に延びて設けられて作業者が前記作業台に乗降するための梯子と、作業者が前記梯子に搭乗しているか否かの検出を行う作業者搭乗検出手段と、前記作業者搭乗検出手段により前記梯子に作業者が搭乗していることが検出されているときに前記垂直昇降作動制御手段による前記作業台の垂直昇降作動に対して警報作動を行う垂直昇降作動警報手段(例えば、実施形態におけるコントローラ60の規制部62)とを備える。
【0011】
第2の本発明に係る高所作業車は、走行装置を備えて走行可能な車体と、前記車体上に設けられた垂直昇降装置と、前記垂直昇降装置に取り付けられて垂直昇降自在な作業台と、前記走行装置の操作入力を行う走行操作手段(例えば、実施形態における上部走行操作装置43a、下部走行操作装置43b)と、前記走行操作手段の操作入力に応じて前記走行装置を作動させる走行制御手段(例えば、実施形態における走行制御部64)と、前記作業台から前記車体に延びて設けられて作業者が前記作業台に乗降するための梯子と、作業者が前記梯子に搭乗しているか否かの検出を行う作業者搭乗検出手段と、前記作業者搭乗検出手段により前記梯子に作業者が搭乗していることが検出されているときに前記走行制御手段による前記車体の走行に対して警報作動を行う走行警報手段(例えば、実施形態におけるコントローラ60の規制部62)とを備える。
【0012】
ここで、前記作業者搭乗検出手段は、前記梯子の負荷入力を検出する梯子負荷検出手段(例えば、実施形態における作業者搭乗検出器80)と、前記梯子負荷検出手段により前記梯子にかかる負荷が予め定めた所定値を超えているかを検出して前記梯子に作業者が搭乗しているか否かの判断を行う判断手段(例えば、実施形態におけるコントローラ60の判断部63)とから構成されていることが好ましい。
【0013】
第3の本発明に係る高所作業車は、走行装置を備えて走行可能な車体と、前記車体上に設けられた垂直昇降装置と、前記垂直昇降装置に取り付けられて垂直昇降自在な作業台と、前記垂直昇降装置の操作入力を行う垂直昇降操作手段(例えば、実施形態における上部昇降操作装置42a、下部昇降操作装置42b)と、前記垂直昇降操作手段の操作入力に応じて前記垂直昇降装置を作動させる垂直昇降作動制御手段(例えば、実施形態における昇降作動制御部61)と、前記作業台から前記車体に延びて設けられて作業者が前記作業台に乗降するための梯子とを備え、前記梯子を介して前記車体と前記作業台との電気導通を阻止する絶縁機能を有する。
【0014】
ここで、前記梯子は、前記車体に取り付けられて上下方向に延びる下部梯子と、前記作業台に取り付けられ下方に延びて前記作業台の垂直昇降作動に伴って垂直昇降するとともに前記下部梯子と併用される上部梯子とを備え、前記作業台が任意の高所の位置にあるときにおいても作業者が前記下部梯子及び前記上部梯子を用いて前記作業台に乗降することができるように構成され、前記下部梯子と前記上部梯子とが離れて設けられて前記絶縁機能を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に関する高所作業車によれば、梯子に作業者が搭乗していることが検出されているときに、垂直昇降作動制御手段による作業台の垂直昇降作動に対して警報手段による警報作動又は走行制御手段による車体の走行に対して警報手段による警報作動が行われる。よって、作業者が梯子に搭乗している状態にあるにもかかわらず、他の作業者がこれに気づかずに誤って作業台の昇降操作又は車体の走行操作を行った場合に、梯子に搭乗している作業者の安全性が低下するようなことはなくなり作業者の安全を確保することができる。
【0016】
本明細書においては、警報作動とは作業台の昇降作動を規制する作動又は車体の走行を規制する作動や、警報ブザー、警報ランプ等を用いて警報を行う作動を含めた作動を意味する。
【0017】
また、もう一つの本発明に関する高所作業車によれば、車体上に垂直昇降装置を備え作業台から車体に延びて設けられて作業者が作業台に乗降するための梯子を備えている場合に、梯子を介して車体と作業台との電気導通を阻止する絶縁機能を有しているので、活線状態の架線に対する作業でも感電の怖れがなくなり作業者の安全を確保するとともにこのような事故を未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明に係る高所作業車の一例としての軌陸高所作業車1を示している。この軌陸高所作業車1は、運転キャビン11及びその後方に設けられた車台12を有し、これら運転キャビン11及び車台12の左右両側に設けられた複数の車輪13(道路走行用車輪)を備えて道路上を走行運転が可能なトラック式の走行体10と、走行体10の下部に下方に揺動張出可能に取り付けられた鉄輪支持部材14に回転自在に取り付けられた複数の鉄輪15(軌道走行用車輪)と、走行体10の下部中央に取り付けられて軌陸高所作業車1をレール上へ載せ換え移動するための転車台16と、車台12上に設けられた箱型の架装用フレーム20と、架装用フレーム20の上部に取り付けられた垂直昇降装置30と、垂直昇降装置30の上部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台40と、走行体10の後方に走行体10の下部から作業台40に延びて設けられて作業者が作業台40に乗降するための梯子50とを有して構成される。
【0019】
架装用フレーム20は、走行体10のシャシフレームに取り付けられて垂直昇降装置30や作業台40などを架装するためのもので、車台12よりも前後方向の長さが大きい作業台40を格納するために運転キャビン11とほぼ同じ高さ、車台12の前後方向の長さとほぼ同じ長さ及び車台12の左右方向の長さとほぼ同じ長さの箱型に構成され、走行体10の剛性確保や架装性向上を目的として車台12上に設けられている。
【0020】
架装用フレーム20の上部に取り付けられている垂直昇降装置30は、架装用フレーム20上に左右一対2つの平面リンク機構30a(図1には車体左側のリンク機構30aのみが表れており、左右同一構成であるので、ここでは左側のリンク機構30aを例にして説明する。)を並設してなり、これら平面リンク機構30aは共に2つのリンクバーを交差させ、この交点を回動自在に連結したシザースリンク機構である。シザースリンク機構30aは、それぞれ交差する2つのリンクバー31a、32aを左右水平支軸P1によって回動自在に連結し、リンクバー31a、32aを左右水平支軸P1周りに回動させることにより車両の上下方向に伸縮する。
【0021】
これらシザースリンク機構30aには、架装用フレーム20に対してリンクバー31aをその下端を中心として上下に起伏させる昇降用油圧シリンダ33(図2参照)が設けられている。リンクバー31aの下端は左右水平支軸P2によって架装用フレーム20に対して枢結され、リンクバー32aの下端は左右水平支軸P3によって架装用フレーム20に対して前後にスライド可能に取り付けられている。リンクバー31aの上端は左右水平支軸P4によって作業台40の底面に対して前後スライド可能に取り付けられており、リンクバー32aの上端は左右水平支軸P5によって作業台40の底面に枢結されている。これにより垂直昇降装置30は昇降用油圧シリンダ33によって上下に伸縮し、作業台40を架装用フレーム20及び車台12に対して昇降させることができる。
【0022】
作業台40上には、作業者転落防止用の手摺41と、垂直昇降装置30の昇降操作を行うための上部昇降操作装置42a及び走行体10の走行操作(鉄輪15を用いた軌道上の走行操作)を行うための上部走行操作装置43aが設けられている。また、走行体10の側面に垂直昇降装置30の昇降操作を行うための下部昇降操作装置42b(図2参照)が設けられ、運転キャビン11内に走行体10の走行操作(車輪13を用いた道路上の走行操作及び鉄輪15を用いた軌道上の走行操作)を行うための下部走行操作装置43b(図2参照、これは通常のトラックの運転操作用のペダル、レバー類である)が設けられている。
【0023】
この軌陸高所作業車1は、鉄輪支持部材14を上方に揺動させて鉄輪15を格納し、車輪13を接地させて道路走行を行うことができ、鉄輪支持部材14を下方に揺動させて鉄輪15を軌道(レール)上に載置させて軌道上を走行することもできる。この走行の切換、すなわち、道路走行から軌道走行への走行切換もしくは逆の走行切換行を行うときに転車台16が用いられる。たとえば、道路走行から軌道走行への移行は、軌陸高所作業車1を道路走行して作業現場最寄りの踏切へ移動させ、軌道を跨ぐようにして停止し、転車台張出格納用シリンダ(図示せず)を作動させて転車台16を下方へ張り出させ、走行体10を転車台16により持ち上げ支持する。次に走行体10内に設けた油圧モータ(図示せず)を作動させて転車台16を水平回転させて、走行体10を地面に対して約90度旋回させ、走行体10の方向がレールの方向に一致したら鉄輪張出格納用シリンダ(図示せず)を作動させて鉄輪15を下方に張り出させ、転車台16を格納しながら鉄輪15をレール上に位置させる。これにより軌陸高所作業車1は道路上からレール上に載せ換え移動された状態となる。
【0024】
なお、レール上への載せ換えが終わったら、運転キャビン11から走行体10内に設けられた走行装置70(図2参照)を介して鉄輪15(軌道走行用車輪)を回転駆動させてレール上を走行移動できる。この走行移動は作業台40上の上部走行操作装置43aからも可能であるが、この上部走行操作装置43aによっては低速での走行のみが安全上可能となっている。そして、作業現場に到着したら作業者は梯子50を用いて作業台40に搭乗し上部昇降操作装置42aを操作して垂直昇降装置30を伸縮作動させれば、作業台40を所望の高所位置に移動させて作業を行うことができる。
【0025】
軌陸高所作業車1には、図2に示すように、上部昇降操作装置42a及び下部昇降操作装置42bの操作により出力された操作信号が入力されるコントローラ60を備えており、これら操作信号はコントローラ60の昇降作動制御部61に入力される。この昇降作動制御部61は上部昇降操作装置42a及び下部昇降操作装置42bの操作信号に基づいて昇降制御バルブVを直接駆動する。昇降制御バルブVは、油圧ポンプPから昇降用油圧シリンダ33への作動油圧供給を制御するもので、これにより垂直昇降装置30を上下に伸縮させて作業台40を架装用フレーム20に対して昇降させる操作制御を行うことができる。なお、油圧ポンプPは、走行体10内に設けられ、図示しないエンジンや電動モータ等により回転駆動され、上記昇降制御バルブV経由で昇降用油圧シリンダ33に油圧を供給する。
【0026】
コントローラ60はさらに、上部および下部走行操作装置43a,43bからの操作信号を受ける走行制御部64を有し、走行制御部64は上部走行操作装置43a及び下部走行操作装置43bの操作により出力された操作信号に基づいて走行装置70(走行装置70は、図示しないエンジン、鉄輪駆動用油圧モータ、変速機及びプロペラシャフト等を備える)を介して、下部走行操作装置43bの操作信号により複数の車輪13(道路走行用車輪)を回転駆動させ、上部および下部走行操作装置43a、43bの操作信号により複数の鉄輪15(軌道走行用車輪)を回転駆動させる。これにより、道路走行および軌道走行の操作制御を行うことができる。
【0027】
コントローラ60は、作業者搭乗検出器80からの検出信号を受ける判断部63およびこの判断部63からの判断信号を受けて規制信号を出力する規制部62も備える。作業者搭乗検出器80は、梯子50に作業者が乗っているか否かを検出するもので、例えば、梯子に作用する負荷を検出する梯子負荷検出器等により構成される。作業者搭乗検出器80による検出信号は判断部63に送られて、ここで梯子50に人が乗っているか否かが判断され、人が乗っていると判断されるとその判断信号が規制部62に送られる。規制部62は人が乗っていると判断された信号を受けたときには、昇降作動制御部61に規制信号を送り昇降制御バルブVによる昇降用油圧シリンダ33への作動油供給を停止させて作業台40の昇降作動を規制したり、走行制御部64に規制信号を送り走行装置70による車輪13もしくは鉄輪15の回転駆動を停止させて走行を規制したりする警報作動が行われる。なお、このとき、警報装置90が同時に作動されて、警報ランプ、ブザー等による警報作動も行われる。
【0028】
この構成について、具体的に説明すると、作業者搭乗検出手段80を構成する梯子負荷検出器は例えば、梯子50に設けられたロードセルからなり梯子50にかかる負荷(梯子50に搭乗する作業者の体重)を検出する。コントローラ60の判断部63は、作業者搭乗検出手段80により検出された梯子50にかかる負荷の情報を受け、梯子50にかかる負荷が予め定めた所定値を超えているか否かを判定して梯子50に作業者が搭乗しているか否かの判断を行う。そして、梯子50にかかる負荷がその所定値を超えていると判断したときには梯子50に作業者が搭乗しているものとして作業者搭乗検出信号をコントローラの60の規制部62に出力する。なお、上記所定値は梯子50に作業者が搭乗した状態において作業者搭乗検出器80が最低限示すであろうと思われる荷重値(負荷の値)であり、作業者の体重を考慮して任意に設定される。また、作業者搭乗検出器80は、図5に示すように、スプリングSPとリミットスイッチSWによる簡易的な方法又は梯子50の格納を検出するリミットスイッチを設けてその信号で代用する方法等、梯子50の形状によって多様の方法が考えられる。
【0029】
コントローラ60の規制部62は、上記作業者搭乗検出手段により梯子50に作業者が搭乗していることが検出されているとき、すなわち作業者搭乗検出器80により検出される梯子にかかる負荷が予め定めた所定値を超えているとコントローラ60の判断部63が判断して作業者搭乗検出信号を出力しているとき、コントローラ60の昇降作動制御部61が行う垂直昇降装置30の昇降作動を規制したり、走行制御部64が行う車輪13もしくは鉄輪15の回転駆動を規制したりする。
【0030】
また、作業台40上の上部昇降操作装置42a、上部走行操作装置43aの周辺部及び下部昇降操作装置42bの周辺部及び下部走行操作装置43bの周辺部には、警報ブザーや警報ランプ、或いはディスプレイ表示装置等からなる警報装置90が設けられている。この警報装置90は、作業者搭乗検出手段により梯子50に作業者が搭乗していることが検出されている状態において、コントローラ60の昇降作動制御部61からの指令を受けて警報(垂直昇降装置30の昇降作動は規制されており、上部昇降操作装置42a及び下部昇降操作装置42bを操作しても垂直昇降装置30は昇降作動しない旨の警報)を発する警報規制を行ったり、コントローラ60の走行制御部64からの指令を受けて警報(走行体10の走行が規制されており、上部走行操作装置43a及び下部走行操作装置43bを操作しても走行体10は走行しない旨の警報)を発する警報規制を行う。警報規制は警報ブザーであれば音声又はブザー音、警報ランプであればランプの光、ディスプレイ表示装置であれば文字等による表示となる。
【0031】
このような構成の軌陸高所作業車1によれば、作業者が梯子50上にいるにもかかわらず他の作業者がこれに気づかずに誤って作業台40の昇降操作又は走行体10の走行操作を行ってしまった場合に、作業台40の昇降作動を規制したり、走行体10の走行を規制したりするとともに、警報装置90において警報規制を行うので梯子50に搭乗している作業者の安全性が低下するようなことはなくなり、梯子50上の作業者の安全が確保される。
【0032】
次に、車体後部に設けられた梯子50について説明する。図1及び図3に示すように、梯子50は、上下方向に水平に配置された一対の側枠51a、51aと両側枠51a、51a間に横架された複数のステップ部材51bとを備える下側梯子部分51と、上下方向に水平に配置された一対の側枠52a、52aと両側枠52a、52a間に横架された複数のステップ部材52bを備える上側梯子部分52と、下側梯子部分51の上端部と上側梯子部分52の下端部を互いに重なり状態に保持する複数の保持手段53とで構成される。梯子50の下方側部(下側梯子部分51の両側枠51a、51aの中間側部)は、架装用フレーム20の後方側下端に固設された支持部材54に一対の連結アーム55を用いて左右水平支軸P6,P6,P7,P7によって回動自在に軸支され、梯子50の上端部(上側梯子部分52の上端部)は、作業台40の後方下端部から後方に突設された支持部材56に左右水平支軸P8、P8によって前後揺動自在に軸支されており、作業者が作業台40に昇降するときに梯子50の下端側ほど走行体10から後方に離れるように傾斜されるようになっている。また、作業台40が格納状態のとき(作業台40が最も下降した状態にあるとき)には、梯子50側の一対の連結アーム55の端部を上方に移動させて梯子50が架装用フレーム20の後方側に沿うようにして格納される(梯子50は垂直の姿勢で格納される)。
【0033】
図3に示すように、上記保持手段53は、上側梯子部分52の下端部後方側(作業者が昇降する側)に重なる下側梯子部分51の上端部の左右両側に取り付けられて、上側梯子部分52の左右両側枠52a、52aを左右両側抱きかかえる左右一対のL形保持部材53a、53aと、上側梯子部分52の下端部の左右両側に取り付けられて、下側梯子部分51の左右両側枠51a、51aを左右両側から抱きかかえる左右一対のL形保持部材53b、53bとを備えており、これら各L形保持部材53a、53a、53b、53bのL形内側面には合成樹脂製滑り材Sが張設されている。
【0034】
梯子50は上記構成であるため、L形保持部材53a、53a、53b、53bによって下側梯子部分51,上側梯子部分52はその端部の重なり部分において長さ方向の相対移動のみ可能に連結されている。梯子50の伸縮動作時には、下側梯子部分51の上端部の左右一対のL形保持部材53a、53aはその内側の合成樹脂製滑り材Sを介して上側梯子部分52の左右両側枠52a、52aに対してその長さ方向に相対摺接移動し、上側梯子部分52の下端部の左右一対のL形保持部材53b、53bはその内側の合成樹脂製滑り材Sを介して下側梯子部分51の左右両側枠51a、51aに対してその長さ方向に相対摺接移動する。
【0035】
このため、予め梯子50を傾斜させた姿勢のままであっても垂直昇降装置30及び昇降用油圧シリンダ33を伸長させて作業台40を上昇させたとき、上側梯子部分52が下側梯子部分51に対して上方に引き上げられ梯子50全体の傾斜角度が小さくなる方向に変化しながら梯子50が伸長することになる(図1の二点差線と実線で示す作業台および梯子の位置変化参照)。逆に、垂直昇降装置30及び昇降用油圧シリンダ33を縮小させて作業台40を降下させたとき、上側梯子部分52が下側梯子部分51に対して降下し梯子50全体の傾斜角度が大きくなる方向に変化しながら梯子50が縮小することになる。すなわち、走行体10に対する作業台40の高さに関係なく傾斜した姿勢又は垂直姿勢(梯子の格納姿勢)のまま梯子50が走行体10と作業台40の間をつないでおり、作業者は傾斜した姿勢の梯子50を利用して作業台40に容易に昇り降りすることができる。
【0036】
上側梯子部分52の上端部は、作業台40の後方下端部から後方に突設された支持部材56に左右水平支軸P8、P8によって前後揺動自在に軸支されており、この支持部材56を電気絶縁材料で構成することによって、梯子50を介して走行体10と作業台40との電気導通を阻止することができる。梯子50と作業台40の取り付け部を電気絶縁材料で構成することによって、梯子50を介して走行体10と作業台40との電気導通を阻止するようにしても、梯子50自体を電気絶縁材料で構成してもよい。なお、作業台40と垂直昇降装置30及び車台12との電気導通も阻止されている必要があり、作業台40と垂直昇降装置30の取り付け部を電気絶縁材料で嵩上げ構造にする又は架装用フレーム20の車台12に対して上下方向に構成された複数のフレーム柱を電気絶縁材料で構成し、走行体10と作業台40との電気導通を阻止する。
【0037】
このような構成によれば、梯子50を介して走行体10と作業台40との電気導通を阻止する絶縁機能を有しているので、活線状態の架線に対する作業でも感電の怖れがなくなり作業者の安全を確保するとともにこのような事故を未然に防ぐことができる。
【0038】
また、梯子の異なる実施形態を、図4を参照して説明する。図4に示すように、作業者が作業台40に乗降するための梯子100は、架装用フレーム20に取り付けられた下部梯子101と、作業台40に取り付けられて作業台40の垂直昇降作動に伴って垂直昇降する上部梯子120とを備え、下部梯子101と上部梯子120が互いに離れて設けられている。下部梯子101は、上下方向に水平に配置された一対の側枠102、102と、両側枠102、102間に横架された複数のステップ部材103とを備える。
【0039】
下部梯子101の上端部は、架装用フレーム20の後方上端から後方に突設され上方へ伸びて上端部に水平に取り付けられたステップ板104を有する支持部材105にステップ板104よりも下方に架装用フレーム20の後方へ水平に突設された踏み板106に、左右水平支軸107によって前後揺動自在に軸支され、下部梯子101の中間部は、架装用フレーム20の後方下端に固設された支持部材108に一対の連結アーム109、109を用いて左右水平支軸110,110,111,111によって回動自在に軸支されており、作業者が作業台40に乗降するときに下部梯子101の下端側ほど走行体10から後方に離れて傾斜されるようになっている。上部梯子120は上下方向に水平に配置された一対の側枠121、121と、両側枠121、121間に横架された複数のステップ部材122とを備える。上部梯子120は作業台40の後方下端部から後方に突設された支持部材123に固設されており、上部梯子120の下端部には、自重で伸びるパイプ124,124が両側枠121、121の内側に出退自在に設けられている。
【0040】
上記構成の梯子100において、上部梯子120は、作業台40の垂直昇降作動に伴って垂直昇降を行うので作業台40の格納状態のとき(作業台40が最も下降した状態にあるとき)に架装用フレーム20及び車台12と干渉しないように両側枠121、121の上下方向長さを設定する必要がある。そのため作業台40の上昇高さ位置によっては下部梯子101と上部梯子120との間に空間が生じてしまうことがある。そのとき作業者は下部梯子101を用いて踏み板106に搭乗し、さらにステップ板104を介して上部梯子120を用いて作業台40に搭乗することが容易にできる。また、上部梯子120の下端部に両側枠121,121の内側に出退自在に設けられたパイプ124,124は、架装用フレーム20の上端部よりも下方まで伸びる長さに設定されており、作業台40の昇降作動時においてステップ板104又は踏み台106に搭乗している作業者が下部梯子101と上部梯子120との間に生じた空間へ侵入するのを防止する、及び作業台40の下降作動時において上部梯子120の下端部とステップ板104又は架装用フレーム20の上端部が作業台40の揺れなどにより干渉するのを防止するために設けられている。
【0041】
このような構成の梯子100によれば、下部梯子101と上部梯子120が離れて設けられているので、支持部に絶縁材料を用いることや梯子自体を絶縁材料で構成することがなくても梯子100を介して走行体10と作業台40との電気導通を阻止する絶縁機能を有する構成を容易にとることができる。
【0042】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、作業者が作業台40に乗降するための梯子50は、作業台の昇降作動に伴って伸縮自在な梯子を2個重ねた形状のスライド式梯子であったが、スライド式の梯子に代えて伸縮自在な折り畳み式の梯子を設けるなど梯子の形状に限られたものではない。また、上述の実施形態では、梯子50を介して走行体10と作業台40との電気導通を阻止するために支持部材56を電気絶縁材料で構成したが、梯子50自体を電気絶縁材料で構成してもよい。さらに、作業者が下部梯子101と上部梯子120との間に生じた空間へ侵入するのを防止するためのパイプ124、124の代わりに、ガイドを設けてもよい。
【0043】
このような構成の軌陸高所作業車1によれば、作業者が梯子50上にいるにもかかわらず他の作業者がこれに気づかずに誤って垂直昇降装置30もしくは走行装置70の作動操作を行った場合に、垂直昇降装置30の昇降作動を規制したり、走行体10の走行を規制したり、警報装置90において警報規制を行うので梯子50に搭乗している作業者の安全性が低下するようなことはなくなり、梯子50上の作業者の安全が確保される。また、梯子50を介して走行体10と作業台40との電気導通を阻止する絶縁機能を有しているので、活線状態の架線に対する作業でも感電の怖れがなくなり、作業者の安全を確保するとともにこのような事故を未然に防ぐことができる。
【0044】
本発明における高所作業車の形態は上述の実施形態に示したものに限定されない。すなわち、上述の実施形態において示した作業者が作業台40に乗降するための梯子50の位置や形状は一例に過ぎず、あらゆる形態の高所作業車について本発明の適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る軌陸高所作業車の一例の側面図である。
【図2】本発明に係る操作装置の構成を示すブロック図である。
【図3】梯子の重なり部分の構成を示す図であり、(A)は側面図、(B)は断面図である。
【図4】上記実施形態の異なる実施形態に係る梯子の構造を示す斜視図である。
【図5】上記実施例の変形例に係る作業者搭乗検出手段の構成を示す側面図であり、(A)は梯子50に負荷がかかっていない状態、(B)は梯子50に負荷がかかった状態である。
【符号の説明】
【0046】
1 軌陸高所作業車 10 走行体
30 垂直昇降装置 40 作業台
42a 上部垂直昇降操作装置 42b 下部垂直昇降操作装置
43a 上部走行操作装置 43b 下部走行操作装置
50 梯子 60 コントローラ
61 昇降作動制御装置 62 規制部
63 判断部 64 走行制御部
80 作業者搭乗検出器 90 警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置を備えて走行可能な車体と、
前記車体上に設けられた垂直昇降装置と、
前記垂直昇降装置に取り付けられて垂直昇降自在な作業台と、
前記垂直昇降装置の操作入力を行う垂直昇降操作手段と、
前記垂直昇降操作手段の操作入力に応じて前記垂直昇降装置を作動させる垂直昇降
作動制御手段と、
前記作業台から前記車体に延びて設けられて作業者が前記作業台に乗降するための梯子と、
作業者が前記梯子に搭乗しているか否かの検出を行う作業者搭乗検出手段と、
前記作業者搭乗検出手段により前記梯子に作業者が搭乗していることが検出されているときに前記垂直昇降作動制御手段による前記作業台の垂直昇降作動に対して警報作動を行う垂直昇降作動警報手段と、
を備えたことを特徴とする高所作業車。
【請求項2】
走行装置を備えて走行可能な車体と、
前記車体上に設けられた垂直昇降装置と、
前記垂直昇降装置に取り付けられて垂直昇降自在な作業台と、
前記走行装置の操作入力を行う走行操作手段と、
前記走行操作手段の操作入力に応じて前記走行装置を作動させる走行制御手段と、
前記作業台から前記車体に延びて設けられて作業者が前記作業台に乗降するための梯子と、
作業者が前記梯子に搭乗しているか否かの検出を行う作業者搭乗検出手段と、
前記作業者搭乗検出手段により前記梯子に作業者が搭乗していることが検出されているときに前記走行制御手段による前記車体の走行に対して警報作動を行う走行警報手段と、
を備えたことを特徴とする高所作業車。
【請求項3】
前記作業者搭乗検出手段は、
前記梯子の負荷入力を検出する梯子負荷検出手段と、
前記梯子負荷検出手段により前記梯子にかかる負荷が予め定めた所定値を超えているかを検出して前記梯子に作業者が搭乗しているか否かの判断を行う判断手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の高所作業車。
【請求項4】
走行装置を備えて走行可能な車体と、
前記車体上に設けられた垂直昇降装置と、
前記垂直昇降装置に取り付けられて垂直昇降自在な作業台と、
前記垂直昇降装置の操作入力を行う垂直昇降操作手段と、
前記垂直昇降操作手段の操作入力に応じて前記垂直昇降装置を作動させる垂直昇降作動制御手段と、
前記作業台から前記車体に延びて設けられて作業者が前記作業台に乗降するための梯子と、
を備え、前記梯子を介して前記車体と前記作業台との電気導通を阻止する絶縁機能を有することを特徴とする高所作業車。
【請求項5】
前記梯子は、
前記車体に取り付けられて上下方向に延びる下部梯子と、
前記作業台に取り付けられ下方に延びて前記作業台の垂直昇降作動に伴って垂直昇降するとともに前記下部梯子と併用される上部梯子と、
を備え、前記作業台が任意の高所の位置にあるときにおいても作業者が前記下部梯子及び前記上部梯子を用いて前記作業台に乗降することができるように構成され、前記下部梯子と前記上部梯子とが離れて設けられて前記絶縁機能を有することを特徴とする請求項4に記載の高所作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−105828(P2008−105828A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292053(P2006−292053)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000116644)株式会社アイチコーポレーション (168)
【Fターム(参考)】