高機能性ポーラスガラス素材、環境浄化装置及び環境浄化方法
【目的】二酸化チタン光触媒の高効率化を図る共に、光透過性を有する吸着材を活用して光照射効率と光分解効率を激増できる高機能性素材を実現する。
【構成】本発明に係る高機能性ポーラスガラス素材20は、アナターゼ型や特にルチル型の二酸化チタン微粒子に平均粒径が2nm以下の貴金属超微粒子を担持させた金属担持光触媒からなり、前記ポーラスガラス吸着素材の表面に前記金属担持光触媒2を多数固定させて被分解物質を吸着分解することを特徴とする。前記高機能性ポーラスガラス素材20は、蛍光管・放電管といった通常の密封管の外側表面に形成され、ポーラスガラス表面に吸着された被分解物質22を外向けの放射光で効率よく分解できる。前記高機能性ポーラスガラス素材20を用いて環境浄化方法や環境浄化装置、例えば空気清浄器24が提供される。
【構成】本発明に係る高機能性ポーラスガラス素材20は、アナターゼ型や特にルチル型の二酸化チタン微粒子に平均粒径が2nm以下の貴金属超微粒子を担持させた金属担持光触媒からなり、前記ポーラスガラス吸着素材の表面に前記金属担持光触媒2を多数固定させて被分解物質を吸着分解することを特徴とする。前記高機能性ポーラスガラス素材20は、蛍光管・放電管といった通常の密封管の外側表面に形成され、ポーラスガラス表面に吸着された被分解物質22を外向けの放射光で効率よく分解できる。前記高機能性ポーラスガラス素材20を用いて環境浄化方法や環境浄化装置、例えば空気清浄器24が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属超微粒子を光触媒微粒子に多数担持した金属担持光触媒に関し、更に詳細には、金属超微粒子の平均粒径を限定することにより光分解効率の高効率化を達成した金属担持光触媒に関し、また被分解物質の吸着材としてポーラスガラス吸着材を利用することによりその光透過性を活用して光照射特性と光分解性能を高度化した高機能性ポーラスガラス素材に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンの光触媒反応は1972年にネイチャーに発表され、本田・藤島効果として世界に知られるところとなった。それ以来、光照射下での二酸化チタンによる水の分解、また有機物水溶液の分解を通して水素と二酸化炭素の生成研究が行われ、現在ではタイルや窓ガラスに二酸化チタンの微粒子を薄膜状に保持させて環境汚染物質、即ちタバコのヤニや細菌あるいは細菌が作った毒素等の有機物の分解に実用化されつつある。
【0003】
二酸化チタンは粉末状の金属酸化物であり、水や溶液の分解では溶液中に分散して使用する。しかし、窓ガラスや風呂タイル、建材表面には粒子状であっても均一な薄膜状に付着することが望まれる。そのためにゾルーゲル法、チタンアセテートなどのスプレーパイロリシス法やディップコーティング法等が開発されるに至った(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。これらの二酸化チタン保持ガラス等を用いて、紫外線照射下で付着した油やタバコのヤニも分解できることが示された。チリ・ホコリ等の無機物を分解することは難しいが、油などの有機物がバインダーとなって無機物が付着していたため、有機物の分解によって無機物も付着しにくくなったことが報告されている。
【0004】
タイル等の素材上における二酸化チタン微粒子の作用原理は、二酸化チタンの半導体としての光触媒特性である。二酸化チタンにバンドギャップ・エネルギーより大きな光、例えば紫外線を照射すると、価電子帯にある電子が励起されて伝導帯に遷移し、価電子帯には正電荷の正孔が残されて電子−正孔の対が生成される。この電子と正孔は二酸化チタン中を動きながら表面に到達し、電子は空気中の酸素に与えられてO2−(スーパーオキサイドアニオン)を作って他の物質を還元する。正孔は有機物を直接酸化分解するだけでなく表面に付着する水分子を酸化して水酸ラジカルという強酸化物を作り、この水酸ラジカルの酸化力により他物質を酸化分解する。前記O2−はこの酸化過程にも関与していると云われるが、その詳細な反応過程は現在もなお研究対象となっている。このようにして光により誘起された電子−正孔対の直接作用だけでなく、スーパーオキサイドアニオンおよび水酸ラジカルの移動反応により有機物等の被分解物質は二酸化炭素と水にまで分解される。
【0005】
この研究の中で、二酸化チタン単体では電子と正孔が外部物質を酸化還元する前に再結合して消滅する場合があるから、その光触媒効率に限界があることが指摘されていた。二酸化チタンは常態が粉末であり、その一粒を考えてみると、その表面及び内部には無数の点欠陥・面欠陥等の格子欠陥が入っている。紫外線により二酸化チタンに励起された電子と正孔はその移動過程で格子欠陥に遭遇すると、その格子欠陥に捕獲されて再結合してしまう。また表面に移動できても電子と正孔が接近すると再結合する場合もある。これを改善するには格子欠陥のない二酸化チタンの作製技術と表面で電子−正孔を分離する技術を開発しなければならない。前者については結晶成長技術の改良が逐次なされてきており、また本発明とは直接関係しないのでここではその詳細を省略する。
【0006】
表面で電子−正孔を分離する技術に関しては、励起電子を集電する電極を二酸化チタン上に形成して、二酸化チタン表面に正孔を、金属電極表面に電子をそれぞれ分離集電する光触媒が提案された。このようにすれば金属電極上に効率的に電子を集電でき、しかも正孔と電子を分離できるので再結合の確率が低くなると考えられたのである。この種の光触媒を金属担持光触媒といい、従来から触媒として用いられているPt(白金)やCu(銅)等の金属を二酸化チタン上に形成して作製された。金属単体でも触媒作用を有するものならば、二酸化チタンの触媒作用と相乗効果を発揮できるだろうというアイデアである。
【0007】
このような金属担持光触媒の製法として、光析出法、混合法、含浸法、化学析出法、同時沈澱法が開発されてきたが、担持される金属粒子の粒径はミクロン程度と大きく、しかも二酸化チタン粒子1個当りに担持される金属微粒子の個数(担持密度)も数十個の範囲に留まっていた。担持密度が小さいのは、金属微粒子の粒径が大きいために多くの金属微粒子が1個の二酸化チタン粒子上に付着しないことも原因の一つである。従って、金属担持二酸化チタンの光触媒効果については二酸化チタン単体よりも2〜4倍程度に増強されるに過ぎなかった。
【0008】
発明者等はなぜミクロンサイズの金属微粒子では触媒効率がそれほど増強されないかについて、理論的に検討してみた。二酸化チタン中に生じた電子を金属電極中に効率的に取り込むためには、二酸化チタンと金属の界面における電子遷移の障壁をできるだけ小さくすることが望まれる。ところが金属微粒子の粒径がミクロンサイズ(約0.1μm以上)の場合には、その電子状態は大きな固体結晶(バルク結晶)とほぼ同じバンド構造となる。つまり、価電子帯と伝導帯が一定のバンドギャップを隔てて画然と形成され、伝導帯では自由電子が底から最上端のフェルミ準位まで順に密に詰まった構造となる。他方、二酸化チタンはバルクな結晶であるからその電子状態は当然バンド構造をとる。バンド構造においては、バンドを構成するエネルギー準位はほぼ連続的に密に配置され、各準位に対応した波動関数はその物質内に鋭く局在している。換言すると、波動関数がその物質外に裾をはみ出すことがないため、その準位に滞在する電子は物質外に放出される確率がかなり小さくなる。
【0009】
この状態で、二酸化チタンが励起光、例えば紫外線照射を受けて電子が伝導帯に励起され電子−正孔対が生成されたとしよう。この電子が被分解物質を還元したりスーパーオキサイドアニオンを生成するためには、電子が迅速に二酸化チタンから金属中に移動し、更に金属から金属外の外部物質に移動する必要がある。ところが上述したように金属微粒子はミクロンサイズであるから、電子状態が大きな結晶と同様のバンド構造をとるだけでなく、波動関数も金属微粒子内に鋭く局在した構造をとる。従って、二酸化チタンの伝導帯に上った電子は金属の波動関数に乗ることが容易でないから、金属の伝導帯に移動することも簡単ではない。また電子が金属に何とか移動できても、金属から外部物質に移動することも同様に容易でないため、金属の外部に出る前に金属の伝導帯にあるフェルミ準位の上に素早く落ちてしまう事が多く、外部物質と反応する機会は更に少なくなる。
【0010】
つまり、バンド構造のように伝導帯の準位密度が大きい場合には、電子がフェルミ準位の上にまで落ちる時間(緩和時間)が極端に短くなり、波動関数の局在性とともに電子の外部への移動を阻止するのである。換言すると、ミクロンサイズでは電子は外部に出にくいから金属内に電子が過剰に蓄積されることとなり、その反発電場によって逆に二酸化チタン内の電子が金属中に移動することを阻止する結果となる。結局、金属微粒子の粒径がミクロンサイズの領域では、エネルギーのバンド構造と波動関数の局在性によって電子が二酸化チタン又は金属微粒子中に留まり、金属外部に放出される確率が小さくなると結論できる。同時に、ミクロンサイズの金属微粒子の場合には、1個の二酸化チタン粒子上に担持される金属微粒子の個数も従来の製法では数十個が限界であり、これらのことが金属担持光触媒の触媒効率を制限していた理由である。
【0011】
光触媒は環境汚染物質の分解作用を有するが、これに吸着作用を付加しようとするアイデアが現れた。吸着作用を有する物質には活性炭、アルミナ、ゼオライト等の多孔性材料がある。これらの多孔性材料の表面には直径1nm〜4nm程度の無数の孔、いわゆるミクロポアが開いている。このミクロポアに有機物等の被分解物質・環境汚染物質を吸着するのである。これらの吸着材を種々の形状に加工して浄水器や空気清浄器に利用している。
【0012】
この吸着材を素材として光触媒を固定させれば、吸着材が被分解物質を吸着し、光触媒が被分解物質を分解できるはずである。特許第2574840号公報(特許文献1)には活性炭に光触媒としてアナターゼ型二酸化チタンを保持させた脱臭装置が記載されている。ミクロポアに吸着された有機物等の被分解物質が総て光触媒により分解されれば、効率100%の吸着・分解力を有することになる。ところが、前述したように二酸化チタン単体の分解力には限界があるため、ミクロポアに有機物が残留するようになる。従って、吸着力は次第に低下し、いずれ二酸化チタンの分解力だけが残存し、当初に予想した効果を発揮できないことが分かってきた。この第一の原因はアナターゼ型二酸化チタンの光触媒効率の限界であり、光触媒効率の画期的な向上が望まれていた。また、第二の原因は吸着材が光に対し不透明であるため、その影の位置にある二酸化チタンに励起光が到達せず、励起光の有効利用に限界があったことである。
【0013】
二酸化チタンには結晶構造の違いからアナターゼ型とルチル型が存在する。このうちルチル型が安定構造で、微粒子では約600℃以上に加熱するとアナターゼ型はルチル型に相転移し、冷却後の低温ではルチル型になる。超微粒子では600℃以下でもアナターゼ型の一部はルチル型になる。従って、ルチル型がアナターゼ型よりも安価に量産できる二酸化チタンである。しかし従来、光触媒として用いられてきた二酸化チタンは全てアナターゼ型であり、安価なルチル型は全く使用されなかった。その理由はバンド構造から理解できる。
【0014】
ルチル型二酸化チタンのギャップエネルギーは3.05eVである。励起光により伝導帯に励起した電子はエネルギーを一部消費しながら緩和して伝導帯の底に到達する。還元電位である酸素電位は3.13eVに位置しているから、伝導帯の底から酸素電位に登るためには外部エネルギーをもらう以外になく、自然には起こりにくい。従って、ルチル型ではスーパーオキサイドアニオンを生成することが困難である。一方、アナターゼ型二酸化チタンのギャップエネルギーは3.20eVであり、励起電子が伝導帯の底に緩和しても3.13eVの酸素電位に十分に落ちることができ、スーパーオキサイドアニオンを生成できる能力を有している。従って、従来の技術では高価なアナターゼ型二酸化チタンを光触媒として使用せざるを得なかった。
【非特許文献1】応用物理第64巻8(1995)pp803
【非特許文献2】化学と工業第48巻10(1995)pp1256
【非特許文献3】化学と工業第49巻6(1996)pp764
【特許文献1】特許第2574840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の課題は金属担持光触媒の光触媒効率を格段に増強できる方法を見いだすことである。また、吸着材を使用した場合に励起光の照射効率を激増して被分解物質の分解効率を一層高度化できる方法を確立することである。従って、吸着・分解のサイクルの長寿命化を達成することである。更に、安価であるにも拘らず光触媒として利用されなかったルチル型二酸化チタンを、光触媒として活用できる方法を見いだすことである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記欠点を解消するためになされたものであり、本発明に係る高効率型金属担持光触媒は、多数の金属超微粒子を光触媒微粒子に担持させた金属担持光触媒であって、金属超微粒子の粒径平均が2nm以下であることを特徴としている。また、光触媒微粒子の1個当りに担持されている金属超微粒子の個数(担持密度)が100個以上である点にも特徴を有する。この高効率型金属担持光触媒の製造方法として、有機金属化合物を疎水性溶媒に溶解させる第一工程と、これに親水性溶媒を添加して有機金属コロイドを形成する第二工程と、これに光触媒微粒子を混合して光触媒微粒子の表面に有機金属コロイドを付着させる第三工程と、これを焼成して金属担持光触媒を製造する第四工程を提案する。金属超微粒子の平均粒径を制御するために、前記第一工程において有機金属化合物および/または疎水性溶媒の添加量を調整する方法を提案する。また、金属超微粒子の担持密度を制御するために、前記第二工程において親水性溶媒の添加量を調整する方法を提案する。
【0017】
本発明に係る高機能性ポーラスガラス素材は、表面に露出する細孔の中に多数の微細孔を有するポーラスガラス吸着材と、このポーラスガラス吸着材の表面に、金属超微粒子を光触媒微粒子に担持させた金属担持光触媒を多数固定させる点に特徴を有している。この高機能性ポーラスガラス素材を用いて、その微細孔に被分解物質を吸着させ、ポーラスガラスの光透過性を利用して励起光により金属担持光触媒を励起し、生じた電子・正孔を通して吸着した前記被分解物質を分解する環境浄化方法を提案する。この方法を実現するため、高機能性ポーラスガラス素材と、この高機能性ポーラスガラス素材に対し励起光を照射する別設の励起光源からなる環境浄化装置を提案する。また、表面に露出する細孔の中に多数の微細孔を有するポーラスガラスにより形成した密封管と、この密封管の内部に封入された放電ガスと、この密封管の外表面に、多数固定された金属超微粒子を光触媒微粒子に担持した金属担持光触媒とから構成され、密封管の外表面に被分解物質を吸着させ、放電ガスの放電により生起する励起光により被分解物質を分解する環境浄化装置を提案する。前記密封管の内表面に蛍光物質を塗着して、放電により発生した励起光を蛍光に変換することもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記詳述したように、金属超微粒子の平均粒径を2nm以下にすることによって金属担持光触媒の光触媒特性、即ち有機物等の分解力を激増させることが可能となった。しかも同時に2nm以下にする具体的方法を提供したものであるから、空気清浄器に代表される画期的な環境浄化装置を市場に安価に提供できる効果を有する。また、活性炭などの不透明な吸着材に替えて、光透過性のあるポーラスガラス吸着材を活用すれば、従来影になって励起光が到達しなかった部分にまで励起光を到達させることが可能となり、励起光の照射効率を格段に増加させることが出来る。しかも、このポーラスガラス吸着材に前記の高性能の金属担持光触媒を固定すれば、吸着と分解を高効率に行う環境浄化方法と環境浄化装置を実現することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者は金属担持二酸化チタンの光触媒機能を増強するために鋭意研究した結果、ナノスケールの金属超微粒子を二酸化チタン表面に担持させることにより、二酸化チタン単体よりも光触媒機能を約100倍〜1000倍以上にまで増強できることが分かった。従って、ミクロンスケールの金属微粒子を担持した二酸化チタンと比較した場合でも、触媒効率を約25倍〜250倍位にまで増強することができる。これは金属を微粒子から超微粒子へ転換すること、即ち粒径をミクロンスケールからナノスケールに、換言すれば粒径をミクロンスケール(約0.1μm以上)の1/10〜1/100程度以下にまで極小化することによって達成できるのである。
【0020】
本発明者は更に鋭意研究した結果、金属超微粒子の平均粒径に光触媒効率を激増させる臨界値があることを発見するに至った。即ち、金属超微粒子の平均粒径が2nm以下になると光触媒効率が急激に増大するのである。研究の初期段階では、平均粒径が10nm以下であればよく、より好ましくは5nm以下であると考えていたが、後述する量子サイズ効果の発現が2nm以下で折れ線的に急増する事実を発見したのである。従って、本発明の特徴は、平均粒径が2nm以下の金属超微粒子を光触媒微粒子に多数担持した金属担持光触媒に存する。
【0021】
本発明の第2の特徴は、光触媒微粒子1個に担持できる金属超微粒子の個数、つまり金属超微粒子の担持密度がその平均粒径とともに重要な要素となることである。本発明では平均粒径を極小化した金属超微粒子を用いることにより、光触媒微粒子1個に多数の金属超微粒子を担持させることを可能にした。ここで、粒径とは直径を意味している。本発明者等の研究によれば、前記平均担持密度は100個以上、好ましくは200個以上に設定することが望まれる。平均担持密度が100個以上であれば量子サイズ効果との相乗効果により光触媒効率を従来より顕著に増大化できる。200個以上であれば光触媒効率の格段の増加を達成できる。もちろん担持密度を更に増加できれば、光触媒効率の更なる増大化を図ることが可能となる。
【0022】
金属超微粒子により初めて発現する量子サイズ効果について以下に検討する。例えば直径1nmの超微粒子を考えると、その中に金属原子は原子のサイズに依存するが数十個程度しか存在しない。臨界値である2nm以下であれば、約100個程度以下の原子数からなる金属超微粒子を意味している。このように原子数の少ない金属超微粒子では、金属の電子エネルギー状態はバンド構造から離れ、エネルギー準位は広範囲に離散化する。例えば、伝導帯を構成する多数のエネルギー準位が互いに離散して上下に広範囲に分布するようになる。この準位の離散化は電子の緩和時間、即ちその準位からフェルミ準位に落ちるまでの時間を長くする効果を奏する。つまり、電子の準位滞在時間が長くなるのである。同時に、各エネルギー準位に対応した波動関数が左右に裾を延ばしながら金属外部にもはみ出し、同時にピークが低くなる効果も有する。つまりこの波動関数に乗った電子は量子トンネル効果により、二酸化チタンから金属へ、金属から外部へと容易に移動できることになる。平均粒径2nmがこの効果の臨界値を与えると考えられる。本発明において量子サイズ効果という場合には、上記したようにエネルギー準位の離散化と波動関数の非局在化による量子トンネル効果の発現を意味している。
【0023】
金属超微粒子を担持した二酸化チタンが如何に有機物等の被分解物質に対し効率的に酸化還元を行うかを見てみよう。二酸化チタンに紫外線等の励起光を照射すると電子−正孔対が形成され、価電子帯に正孔を残して伝導帯に電子が励起される。エネルギーの大きな紫外線で励起した場合には電子は伝導帯の高い位置に遷移するが、次第にエネルギーを失いながら伝導帯の底に落ちてくる。金属超微粒子のエネルギー準位は離散化しているため、緩和過程にある電子のエネルギーに対応したエネルギー準位を必ず有している。しかもその準位の波動関数は左右に長く裾を引いており、左端は二酸化チタン中に右端は金属外部にまで延びている。つまり、二酸化チタンと金属のエネルギー準位は金属の波動関数を介して共鳴的に連続していることになる。二酸化チタンの伝導帯にある励起電子はその金属の波動関数に乗って一気に金属を介して外部に量子トンネル効果により放出される。二酸化チタンと金属が共鳴状態にあるため、この量子トンネル効果を共鳴トンネリングと称する。このとき金属準位は離散化しているので緩和時間は長く、従って電子は金属のフェルミ準位に落ちる前に容易に金属外に放出されるのである。
【0024】
二酸化チタンの価電子帯にある正孔は二酸化チタン表面に移動し、外部物質を酸化する。また外部物質を酸化するだけでなく、表面に付着した水を酸化して水酸ラジカルという強酸化物を生成し、この水酸ラジカルが外部物質を酸化分解しているとも考えられている。一方、金属外に共鳴トンネリングで放出された電子は外部物質を直接還元するだけでなく、空気中の酸素を還元してO2−というスーパーオキサイドアニオンを生成し、このアニオンが前記外部物質の分解にも関与していると考えられている。金属担持光触媒から離れた被分解物質が分解されるのは、これらのスーパーオキサイドアニオンや水酸ラジカルが熱運動して表面を移動し、その途中で遭遇する被分解物質を酸化還元して分解するものと考えられる。
【0025】
特に、本発明では二酸化チタンから金属に移動した励起電子は金属中に蓄積されずに直ちに外部に放出されるから、金属中の蓄積電子により外部に反発電場が形成されず、紫外線照射による励起電子を次々と吸引することができる点で優れた還元力を有している。
【0026】
二酸化チタンに限らず、本発明で用いられる光触媒の種類は、酸化還元しようとする分解対象物質によって決まる。この分解対象物質が還元される物質の場合には還元電位が存在し、酸化される物質の場合には酸化電位が存在する。これらの還元電位と酸化電位が光触媒物質の価電子帯と伝導帯の間にあるエネルギーギャップ内に位置している必要がある。つまり、還元電位はギャップ内の上側に位置し、酸化電位はギャップ内の下側に位置するような光触媒物質を選択することが望まれる。この場合に、励起電子は伝導帯の底から還元電位に落ちて対象物質を還元し、正孔は価電子帯の上端から酸化電位に登って対象物質を酸化できる。但し、本発明では金属超微粒子の共鳴トンネリングが効力を発揮するから、還元電位は伝導帯の底の位置または上側にあってもよい。少なくとも励起光の励起エネルギーより下側にあることが要請される。
【0027】
前述したように、ルチル型二酸化チタンでは還元電位は伝導帯の底より0.08eV上に位置している。それでも励起電子はその位置の金属準位から共鳴トンネリングにより素早く外部物質を還元できる。この共鳴トンネリングによってルチル型二酸化チタンも光触媒として利用できるようになった意義は画期的である。量産性のある安価で安定なルチル型二酸化チタンが本発明によって初めて光触媒として脚光を浴びることになる。
【0028】
本発明では、ルチル型二酸化チタンとともにアナターゼ型二酸化チタンも積極的に利用できる。後述する有機金属コロイド焼成法では、加熱するためにアナターゼ型二酸化チタンはすぐにルチル型二酸化チタンに相転移し、アナターゼ型二酸化チタンを利用してもルチル型を利用するのと同じだと考えるであろう。しかし、アナターゼ型二酸化チタンの表面を特殊処理することにより、その相転移温度を従来の600℃からかなり上昇させることが可能である。従って、この上昇した相転移温度以下であれば、加熱してもアナターゼ型の構造を保持することが可能である。アナターゼ型二酸化チタンに金属超微粒子を担持させることにより、より高い光触媒効率を有する金属担持光触媒を提供できる。
【0029】
又、前述したように、電子はO2を還元してスーパーオキサイドアニオンO2−にし、正孔は水を酸化して水酸ラジカルを形成し、これらのO2−と水酸ラジカルの移動反応により対象物質を分解すると考えられている。従って、還元電位としてO2電位、酸化電位としてOH電位を選んで光触媒物質を選択することもできる。即ち、紫外線の照射によって電子−正孔対が生成され、電子によって空気中や水中の酸素を還元してスーパーオキサイドアニオンを生成し、正孔によって表面に付着した水を酸化して水酸ラジカルを生成する光触媒物質であればよい。
【0030】
光触媒物質としては半導体が適当である。絶縁体ではギャップエネルギーが大きすぎて通常の紫外線では電子−正孔対を生成するのが困難であり、またギャップエネルギーの小さな物質では禁制帯内に酸化および還元電位を配置させることが困難になるととも、水溶液に溶解し易くなるために不適である。半導体の中でも金属酸化物半導体が本発明には適切である。金属酸化物は金属単体と比較して極めて安定な物質であるため、他物質との反応性が低くて安全でもあり、しかも電子の授受を十分に行うことができる物質である。従って、これらの性質を満足する金属酸化物半導体が本発明の光触媒物質として利用でき、例えば、WO3、CdO3、In2O3、Ag2O、MnO2、Cu2O3、Fe2O3、V2O5、TiO2、ZrO2、RuO2,Cr2O3、CoO3、NiO、SnO2、CeO2、Nb2O3、KTaO3、SrTiO3、K4NbO17等を含む公知の物質から分解対象物質に応じて選択することができる。この中でも、生成される電子−正孔密度やスーパーオキサイドアニオン・水酸ラジカル密度および材質としての耐腐食性・安全性等の観点からTiO2、SrTiO3、K4NbO17が好ましく、特に二酸化チタンであるTiO2が最も望ましい。
【0031】
本発明に利用できる光触媒物質は微粒子である。微粒子はその表面積が極めて大きいから環境汚染物質と接触する確率が大きくなると同時に、多数の金属超微粒子を表面に担持することができる。また、微粒子の方が紫外線等の有効受光面積が大きくなり、光触媒効率がバルク物質より格段に高くなる。通常、金属酸化物は粉体であるから、二酸化チタンのような金属酸化物半導体が本発明には適する。粒径としては30nm〜1000nm、より好ましくは50nm〜500nmである。もちろんこれより小さい光触媒微粒子を利用できる。ただし、非常に小さくなると加熱処理時に光触媒微粒子同士が結合して団子状になってしまう。団子自体の大きさは数十nmとなってしまうが、この団子は多数の凹所を有しているから、この部分に被分解物質を吸着するため、最初から大粒子である光触媒微粒子より効果的である。本発明はこのような団子状の光触媒微粒子も包含する。光触媒微粒子の形態は金属超微粒子を担持できる限り特に制限されず、例えば球状・ペレット状・粒状などの任意の形態で使用できる。
【0032】
本発明において利用できる光源は、光触媒のバンドギャップ・エネルギー以上のエネルギーを有する光源であればよく、通常は紫外線灯が用いられる。特に二酸化チタンを用いる場合には、ルチル型とアナターゼ型があり、各々のギャップエネルギーを波長に換算すると、ルチル型は407nm、アナターゼ型は388nmである。従って、二酸化チタンに対する光源の波長分布は400nmをピーク付近に有することが望ましい。
【0033】
自然太陽光線は、可視光線が中心であるが、400nmを含んでいるために十分に利用できる。特に自然太陽光線では388nmより407nmの方が光強度が高いのでルチル型の方がアナターゼ型よりも有効である。従って、本発明によりルチル型二酸化チタンを光触媒として利用できることは自然太陽光線を活用できる大きな道を開いたものである。このことは、従来のアナターゼ型の場合には紫外線灯を利用できても、自然太陽光線の場合には触媒効率が極めて低かったことと対照的である。また、従来の光触媒では、屋外での太陽光線の利用は光強度が強いために可能であったが、屋内利用では光強度が弱いため弱点となっていた。しかし、本発明では光触媒効率が格段に増強されているため、太陽光線を光源として屋内における光触媒の利用の拡大を図ることが可能となる。
【0034】
担持される金属超微粒子は遷移金属であればよい。遷移金属元素とは不完全なd殻を有する元素で原子番号21(Sc)〜29(Cu)、39(Y)〜47(Ag)、57(La)〜79(Au)および89(Ac)〜理論的には111までの4グループからなる金属元素である。d殻が不完全であるために最外殻がd電子により方向性を有し、その結果光触媒物質からやってくる励起電子を金属超微粒子表面で捕まえ易く、スーパーオキサイドアニオンを生成し易い。この中でも金属単体で触媒として利用できる貴金属が望ましく、また安全性の観点から考えるとAu、Pt、Ag、Pd、Rhが好ましく、金属としての安定性の観点からAu、Pt、Pdがより好ましい。
【0035】
本発明の特徴は、微粒子からなる光触媒物質の表面に平均粒径2nm以下の金属超微粒子を担持させたことであり、また担持密度を100個以上で担持形成できる方法を確立したことである。従来の製法ではミクロンサイズの金属微粒子を担持させることはできたが、ナノスケールの金属超微粒子を形成担持することは不可能であった。この従来製法の限界が光触媒効率の向上を阻害していた原因でもあった。従来製法が金属塩または金属粉を原料として使用していたのに対し、本発明では加熱により還元可能な有機金属化合物を用いることにより、光触媒効率の飛躍的な向上を達成したのである。加熱により還元可能とは、加熱すると有機金属化合物から金属だけが単離でき、換言すれば他の有機物部分が分離されてしまうことである。有機金属化合物の中でも、特に有機金属錯体が本発明の目的に適している。しかし、加熱により還元可能な有機金属化合物で有れば特に制限されないことは云うまでもない。
【0036】
この中でも金属としての安定性および安全性の観点から、特にAu系化合物、Ag系化合物、Pd系化合物、Rh系化合物又はpt系化合物の少なくとも1種を用いることが好ましい。より好ましくはAu、Ag、Pd、Rh又はPtと硫黄含有有機物との化合物であり、更に最も好ましくはAu、Pd、Rh又はPtと硫黄含有有機物との化合物である。例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、チオグリコール酸ブチル等のチオグリコール酸類、そのほかトリメチロールプロパントリスチオグリコレート、チオグリセロール、チオ酢酸、チオ安息香酸、チオグリコール、チオジプロピオン酸、チオ尿素、t−ブチルフェニルメルカプタン、t−ブチルベンジルメルカプタン等が挙げられる。更にその他、バルサム金(C10H18SAuCl1−3)、バルサム白金(C10H18SPtCl1−3)、バルサムパラジウム(C10H18SPdCl1−3)、バルサムロジウム(C10H18SRhCl1−3)等が利用できる。
【0037】
本発明に係る有機金属コロイド焼成法を利用すれば、金属超微粒子の平均粒径を増減制御することが可能となる。この有機金属コロイド焼成法は以下の工程から構成される。即ち、有機金属化合物を疎水性溶媒に溶解させる第一工程と、これに親水性溶媒を添加して有機金属コロイドを形成する第二工程と、これに光触媒微粒子を混合して光触媒微粒子の表面に有機金属コロイドを付着させる第三工程と、これを焼成して金属担持光触媒を製造する第四工程である。
【0038】
第一工程では、トルエン、ベンゼン、ベンジン、キシレン等の公知の疎水性溶媒に有機金属化合物を添加溶解させる。これにアセトン、メチルアルコール、エチルアルコール等の公知の親水性溶媒を添加すると、有機金属化合物の疎水性コロイドが分散形成される。有機金属化合物の添加量を少なくすると、1コロイド中に含まれる有機金属化合物の分子数が少なくなり、従って金属原子数が少なくなる。また、疎水性溶媒の添加量を多くしても同様の作用を発揮できる。即ち、加熱により形成される金属超微粒子のサイズを小さくでき、これによって平均粒径2nm以下の金属超微粒子の担持形成が可能となった。
【0039】
また、親水性溶媒の添加量を減少させることにより、光触媒微粒子表面への担持密度を増大化できる。親水性溶媒の添加量を減少させると云うことは、コロイド溶液の単位体積当りのコロイド数を増加させることであり、第三工程で光触媒微粒子を混合した際に光触媒微粒子の1個当りに付着するコロイド数を増加させることになる。従って、担持密度を増減制御が可能となる。
【0040】
第四工程では、このコロイド溶液を焼成(加熱乾燥)させる。スプレー状に噴霧して加熱乾燥器の中を通過させれば、有機成分が逃散して金属超微粒子が光触媒微粒子表面に固く担持できる。また、これに類似した公知の方法で加熱乾燥して、金属担持光触媒を製造する。
【0041】
この焼成温度は、通常は有機金属化合物の還元析出温度以上であって、且つ還元されて析出する金属の融点未満の温度範囲内で適宜変更することができる。更に具体的に述べると、有機金属錯体のような有機金属化合物から金属を単離するためには、有機金属化合物を完全に分解して金属原子だけを残して他の有機物原子を逃散させなければならない。この温度を金属の還元析出温度と定義している。次に、単離された金属原子を集合させて金属超微粒子にまで再配列させなければならない。この上限温度はバルクの金属の融点以下であればよく、好ましくは、析出金属の融点の80%以下、特に70%以下とする。
【0042】
本発明の次の特徴は、被分解物質の吸着材としてポーラスガラス吸着材を利用した環境浄化方法を実現したことである。活性炭素繊維やゼオライト等の不透明吸着材と比較して、ポーラスガラスは光透過率が極めて高く、任意の形状に形成可能で、全く透明な板状に形成することもできる。従って、このポーラスガラス吸着材に前記の金属担持光触媒を公知の方法で固定させて高機能性ポーラスガラス素材を形成する。ポーラスガラス吸着材が被分解物質を吸着し、この吸着した被分解物質を光照射下で金属担持光触媒により分解できる。ポーラスガラスは励起光を透過させるから、励起光は直射で、あるいはポーラスガラス吸着材を透過して金属担持光触媒を照射し、生成されたスーパーオキサイドアニオンや水酸ラジカルが被分解物質の位置まで移動してその分解を実行する。つまり、ポーラスガラス吸着材の光透過性により金属担持光触媒に対する励起光の照射効率が格段に増加し、その結果、励起効率が飛躍的に増加する。
【0043】
ポーラスガラスは高ケイ酸ガラスの中間体として形成できる。つまり主成分であるSiO2に小量のB2O3やAl2O3やNa2Oを添加してホウケイ酸ガラスとし、これを熱処理してSiO2からなる不溶相とB2O3やAl2O3やNa2Oからなる三次元に連続した可溶相に分相させる。この可溶相を酸処理して可溶相の全部を溶出させると、可溶相の存在した連続領域が細孔となる。この細孔の断面直径は10nm〜1000nm程度まで可溶相成分の分量調整により可変できる。ところがこの可溶相には多少のSiO2がゲル状に存在し、このSiO2ゲルの網目構造を残留させるように他の成分を溶出させると、細孔の中にSiO2ゲルの微細孔が形成される。この微細孔の大きさは1nm〜5nm程度で、この微細孔の中に被分解物質を吸着するので、ポーラスガラスは吸着材として機能するのである。
【0044】
本発明では所望形状に形成したポーラスガラス吸着材に金属担持光触媒を多数固定した素材を高機能性ポーラスガラス素材と呼んでいる。固定するには各種の方法を利用できる。例えば、金属担持光触媒からなる粉末を適当な溶媒中に分散させ、この溶媒中にポーラスガラス吸着材を浸漬して金属担持光触媒微粒子を固定する浸漬法。また金属担持光触媒を分散させた溶媒をポーラスガラス吸着材に噴霧するスプレー法。またローラーや刷毛での塗着法。金属担持光触媒をポーラスガラス吸着材に静電吸着させる方法がある。金属担持光触媒微粒子もポーラスガラスも自然状態で静電気を帯びており、この静電吸着力により金属担持光触媒微粒子の粉末を素材に噴霧固定する方法や粉末中にポーラスガラス吸着材を押し付けて物理吸着させる方法等がある。又、電気集塵の原理によりまず金属担持光触媒微粒子をコロナ放電により強制帯電させておき、極板間の電界力で極板間又は極板上にあるポーラスガラス表面に固定することもできる。
【0045】
上記の環境浄化方法を実現する装置として、励起光源を高機能性ポーラスガラス素材と別体で配置した環境浄化装置を提供する。高機能性ポーラスガラス素材表面の微細孔に被分解物質を吸着させ、ポーラスガラスの光透過性を利用して、励起光源からの励起光により金属担持光触媒を励起し、生じた電子・正孔を通して吸着した前記被分解物質を分解する。
【0046】
また、高機能性ポーラスガラス素材自体を励起光源とする環境浄化装置を提供する。即ち、表面に露出した細孔の中に多数の微細孔を有するポーラスガラス吸着材を少なくとも外表面側に配置した光透過性の密封管と、この密封管の内部に封入された放電ガスと、前記ポーラスガラスの外表面に多数固定された金属超微粒子を光触媒微粒子に担持した金属担持光触媒とから前記装置を構成すれば、密封管の外表面に被分解物質を吸着させ、放電ガスの放電により生起する励起光により被分解物質を分解することができる。
【0047】
密封管の形成方法には各種の方法がある。例えば、密封管を二重構造とし、内側密封管を細孔を有さない通常のガラスから形成して、内部の放電ガスを封入しておく。この内側密封管の外表面をポーラスガラス層とし、密封状または非密封状に高機能性ポーラスガラス素材で被覆する。従って、ポーラスガラス吸着材で被分解物質を吸着し、放電励起光の透過光で金属担持光触媒により被分解物質を分解するのである。
【0048】
ポーラスガラス層を形成するには各種の方法がある。例えば、不溶相と可溶相に分相したポーラスガラスを内側密封管に巻回し、この後表面を酸処理して可溶相を溶出させて細孔と微細孔を形成し、次に金属担持光触媒を固定させる。また別の方法として、ポーラスガラスを破砕して粒子状に形成し、この粒子をシリカゾルで内側密封管の外表面に付着させ熱処理により固結させる。その後、金属担持光触媒を常法で固定させればよい。次のような方法も存在する。通常のガラスであるパイレックス(登録商標)ガラスと分層ガラスを同時に揃えて引き出し成形すれば、両者が重なり合った二重ガラスが形成でき、これをパイレックス(登録商標)ガラス層が内面になるように密封管を形成する。その後、外面の分層ガラスを酸処理してポーラスガラス化すれば、パイレックス(登録商標)ガラスが内側密封管となり、前記した所望の密封管を形成できる。
【0049】
前記密封管を一重構造とし、外表面にのみ露出した細孔・微細孔を有するポーラスガラス素材のみで形成することもできる。即ち、前記分相ガラスから密封管を成形する。この密封管を酸中に短時間だけ浸漬すれば、酸と接触する外表面から可溶相が溶出し始め、この細孔が内部まで貫通する前に取り出して反応を停止させる。つまり厚み方向の途中にまで達した細孔中には微細孔が形成され、しかも内部の密封性は保持されているから、放電ガスは漏出しない。密封管の外表面に金属担持光触媒を固定させれば、吸着分解できる励起光源を実現できる。このように密封管を実現する多様な技術が提供される。
【0050】
放電により生起する励起光の波長は放電ガスに依存する。例えばアルゴンガスやネオンガス等、金属担持光触媒の励起効率の最も高い放電ガスを選択すればよい。高機能性ポーラスガラス素材は励起光を内部から外部へ透過させるから、金属担持光触媒を十分励起できることになる。前記密封管の内表面に蛍光物質を塗着しておけば、放電により発生した励起光を所望波長の蛍光に変換することができる。本発明によって各種の波長の励起光を生成・選択することができる。
【0051】
金属担持光触媒のポーラスガラス吸着材に対する固定分量は吸着分解を効果的に行えるように自在に設定すればよいが、一般的には、金属担持光触媒の重量はポーラスガラス吸着材重量の少なくとも1%以上、好ましくは3%以上あればよい。1%以下でも効果的であれば構わない。
【0052】
ポーラスガラスからガラス繊維を形成すれば、このガラス繊維を布状に編成・織成・不織成でき、繊維としての1次元形状から布としての2次元形状に、また立体構成して3次元形状に展開できる。フィルターその他の繊維製品も本発明の素材に含まれる。フィルターは空気清浄器、浄水器、トイレ脱臭器、室内脱臭器、冷蔵庫脱臭器などに利用できる。
【0053】
また、固形ガラスとして板状に、また立体状に構成でき、ポーラスガラス吸着材の形状は自在である。例えば、平面状の2次元素材としては窓ガラス、鏡、テーブル、壁材、タイル等があり、立体状の3次元素材としてはトイレの便器、置物などがある。これらは例示に過ぎず、現在知られる公知で任意の微小物体から巨大物体までが本発明の対象となる。これらの表面に本発明の金属担持光触媒を固定させれば、有機性の環境阻害物質・人体に有害な物質・悪臭などを自然の太陽光、蛍光灯、あるいは紫外線灯からの紫外線により自然に自浄分解することができる。有機物を分解するから、いままで有機物をバインダーにして付着していた無機汚れも付着しにくくなる。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明に係る高効率型金属担持光触媒および高機能性ポーラスガラス素材の実施例を示し、本発明の特徴とするところを一層明確にする。
【0055】
実施例1[3種類のPt担持光触媒の調製]
有機金属錯体であるバルサムPtの有機錯体液の同量を疎水性溶媒である重量が3種類のトルエンに溶解させた。そしてこれに親水性溶媒である重量が3種類のアセトンを添加して有機金属コロイド溶液を調製した。3種類の有機金属コロイド溶液を、サンプルA、サンプルBおよびサンプルCと名付けて、その詳細を表1に重量%でまとめる。
【0056】
【表1】
【0057】
有機錯体液の15重量%がPtの重量に相当するから、サンプルA、B、Cの全重量に占めるPtの重量%はこの順に、8.9%、1.1%、0.5%となる。Pt有機錯体液のトルエンに対する重量比率が高いほど、1コロイドに含まれる有機金属錯体の分子数が多いから、金属超微粒子の粒径も大きくなると予想できる。その比率は、サンプルA、B、Cの順に2.3、1.4、0.33であるから、金属超微粒子の粒径は、サンプルA>サンプルB>サンプルCと予想できることになる。
【0058】
これら3種類のコロイド溶液に光触媒微粒子として平均粒径70nmのルチル型二酸化チタン粉末を混入させて、二酸化チタン微粒子にコロイドを付着させた。このコロイド溶液をパイレックス(登録商標)ガラス板に塗布して乾燥し、500℃で30分間焼成し、ガラス板から剥がして金属担持光触媒を得た。図1に金属担持光触媒微粒子2の球形モデルが示されている。粒径Dの光触媒微粒子4の表面に粒径dの金属超微粒子6が多数担持されている。ここで粒径とは各粒子の直径を意味している。1個の光触媒微粒子4に担持されている金属超微粒子6の個数を担持密度と呼ぶ。
【0059】
実施例2[3種類のPt担持光触媒における金属超微粒子の平均粒径の測定]
サンプルA、B、Cの金属担持光触媒微粒子の透過型電子顕微鏡写真を撮影して、その写真のコピーを図3、図5、図7に示す。大きな黒い像が光触媒微粒子で、小さな黒い粒粒が金属超微粒子に対応する。写真コピー中に示される長さは10nmに相当し、これと比較して金属超微粒子の個々の粒径が計測できる。複数の金属担持光触媒微粒子についてこの計測を行い、その集計結果を図2、図4、図6に度数分布として示す。その結果、サンプルA、サンプルBおよびサンプルCの金属超微粒子の平均粒径は、その順に7nm、3nm、1.5nmとなることが分かった。この結果は予想と一致した。特に1.5nmの棒グラフに斜線を入れている。
【0060】
実施例3[3種類のPt担持光触媒を使ったアセトアルデヒド分解効率の測定]
サンプルA、サンプルB、サンプルCをこの順にルチル70/Pt7、ルチル70/Pt3、ルチル70/Pt1.5と表記して、アセトアルデヒドの分解効率を測定した。各数字の単位はnmである。密封容器内にこれらのサンプルを同量づつ配置し、容器内にアセトアルデヒドを100ppmになるまで注入した。その時点からアセトアルデヒド濃度の時間変化を3種類のサンプルに対して測定した。コントロールとして粒径7nmのアナターゼ型二酸化チタン微粒子と粒径70nmのルチル型二酸化チタン微粒子による分解効率も測定した。もちろんこれらには金属超微粒子を担持していない。結果を図8に片対数グラフで示す。
【0061】
図8から分かるように、金属超微粒子の粒径が小さくなるに従って、急速に分解している。しかも、7nmから3nmへの変化では同時刻の分解比率が数倍程度の向上であるのに対し、3nmから1.5nmへの変化では同時刻の分解比率が数十倍に向上している。この違いは粒径が小さくなるほど量子サイズ効果が激増することを示しており、発明者はこのデータから金属超微粒子の粒径が2nm以下で分解効率の急増効果があると判断した。アナターゼ7nmの分解効率がルチル70/Pt7よりやや良いのは以外であるが、このことは粒径が7nm程度では量子サイズ効果の顕著な発現がないことを意味するものと考える。もちろんルチル70単体の分解効率と比較すればPt7nmを担持するだけで分解効率が数十倍に増加することは図8から分かる。
【0062】
実施例4[3種類のPt担持光触媒の分解時間と担持密度の測定]
前述した3種類の金属担持光触媒微粒子の担持密度を図3、図5および図7の原写真から測定した。表2の結果から分かるように、サンプルA、サンプルBおよびサンプルCの担持密度はこの順に85、130、120であった。表1のアセトン添加量から判断すると、サンプルB・Cにはそれほど差がないことが予想でき、その通りとなった。しかし、サンプルAのアセトン添加量は一番少ないから担持密度が一番大きくなると予想できるが、実際には一番小さくなってしまった。これは金属超微粒子の粒径がかなり大きいために、金属超微粒子の個数が増加に結び付かなかったことに依っている。しかし、粒径がかなり接近している場合には親水性溶媒の添加量の増減で担持密度を増減できると考えられ、一応の粒径制御の指針とすることができる。
【0063】
【表2】
【0064】
表2において、分解時間τとはC(t)=C0×exp{−t/τ}によって定義される時間である。この式でC0はアセトアルデヒドの初期濃度、C(t)は経過時間tの時の濃度を表している。図8のグラフをこの式でフィティングして得られた分解時間τが表2に与えられている。この分解時間から判断すると、Pt7nmからPt3nmでは分解時間が約1/2に短縮されるが、Pt3nmからPt1.5nmへの変化では分解時間は約1/5に短縮される。従って、発明者は3nmと1.5nmの中間に臨界値があると考え、その臨界値をPt2nmと判断した。この数値は実施例3の結果と一致している。
【0065】
実施例5[高機能性ポーラスガラス素材の作成]
図9に示す手順にしたがって高機能性ポーラスガラス素材を作成した。ケイ砂・ソーダ灰・ホウ酸を原料として調合し、これを1300℃で撹拌しながら溶融させた。その後、800℃にして粒状ガラスに成形し、矩形をハッチングした未分相のホウケイ酸ガラス8を形成した。このホウケイ酸粒状ガラス8を600℃で熱処理すると、分相ガラス10となる。黒く塗りつぶした部分はSiO2からなる不溶相12で、ハッチングで示す部分は三次元に連続したB2O3−Na2Oからなる可溶相14である。この分相ガラス10を90℃で酸処理すると、可溶相14のB2O3−Na2O成分は酸に溶出し、しかもこの細孔部分16に小量のSiO2成分がゲル状に残留して、無数の微細孔18を形成する。SiO2ゲルは多点で示され、点と点の間が微細孔18と考えれば良い。細孔16の平均断面直径は50nm、微細孔の平均直径は3nmであった。
【0066】
図10に、ポーラスガラスの電子顕微鏡写真のコピーが示されている。この図にはSiO2ゲルは存在せず、細孔がそのまま示されている。前述したポーラスガラス吸着材はこの細孔の中に無数の微細孔が存在するものだと考えればよい。このポーラスガラス吸着材にルチル70Pt1.5の金属担持光触媒微粒子を物理吸着法により固定して粒状の高機能性ポーラスガラス素材を作成した。この粒の直径は約0.2mmである。
【0067】
高機能性ポーラスガラス素材20の断面が図11に示されている。不溶相12の中に表面まで露出した細孔16が存在し、この細孔16の中に無数の微細孔18が形成されている。ポーラスガラス表面には、光触媒微粒子4の表面に多数の金属超微粒子6を担持した金属担持光触媒微粒子2が多数固定されている。前記の微細孔18には被分解物質22が無数に吸着されており、矢印aで示す励起光の直射により金属担持光触媒の作用で被分解物質22は分解されることになる。特にポーラスガラスが光に対して透明であるため、ポーラスガラスを透過する励起光bによっても被分解物質22は分解される。励起光の照射効率が格段に増強できることが理解できる。このように、高機能性ポーラスガラス素材20は被分解物質22の吸着と分解を高効率に連続システムで行うことができる利点を有する。
【0068】
実施例6[高機能性ポーラスガラス素材の反復分解効果の測定]
作成した高機能性ポーラスガラス素材のアセトアルデヒドの反復分解効果を測定し、その結果は図12に示されている。PG50とは平均直径50nmの細孔を有するポーラスガラスで、10gのPG50に対しルチル70/pt1.5を0.5g固定した高機能性ポーラスガラス素材を使用した。密封容器の中にこの高機能性ポーラスガラス素材を配置し、100ppmのアセトアルデヒドを注入した。吸着分解によって濃度が0.1ppmにまで低下すると、再びアセトアルデヒドを100ppmになるまで再注入する。これを繰り返した結果、100ppmから0.1ppmになるまで約30分を必要とし、1週間測定を継続したが周期的な反復効果を示し、極めて優れた吸着分解サイクルを示すことを実証した。
【0069】
比較例1[粒状活性炭単体の反復吸着効果]
粒状ポーラスガラスの吸着性能と比較するために、粒径2mmの粒状活性炭単体の反復吸着効果を測定し、結果を図13に示す。アセトアルデヒド濃度が100ppmから出発し、次第に濃度が低下して2時間40分後に再び100ppmになるまでアセトアルデヒドを注入する。反復するにしたがって、次第に吸着量が低下し、粒状活性炭の微細孔への吸着が飽和してくることが分かった。この飽和現象は分解を始めない限りポーラスガラス単体の吸着においても当然出現する。
【0070】
比較例2[金属担持光触媒を固定した粒状活性炭の分解効果の測定]
高機能性ポーラスガラス素材の分解効果と比較するため、金属担持光触媒を固定した粒状活性炭の分解効果の測定し、結果を図14に示す。具体的には、比較例1の粒状活性炭5gにルチル70/Pt1.5の金属担持光触媒を0.5gだけ物理吸着法により固定させる。この粒状活性炭を密封容器に配置してアセトアルデヒドを10ppmだけ注入する。1ppmにまで低下するのに1時間を要しており、比較例1と対比しても多少の分解効果が示されているだけで、金属担持光触媒の分解効果が十分に発揮できているとはとても考えられない結果である。
【0071】
比較例3[金属担持光触媒を固定した粉状活性炭の分解効果の測定]
比較例2の結果が良くなかったので、この比較例3では粉状の活性炭を利用した。粉の大きさは1メッシュで、5gの粉状活性炭にルチル70/pt1.5の金属担持光触媒を0.5g混合させて、物理吸着させたものをサンプルとした。結果を図15に示す。最初の1時間は励起光を照射しないで、アセトアルデヒド濃度が100ppmから出発する反復吸着効果を確認した。吸着性能が高いことが分かった時点から励起光を照射したところ、2時間ほどアセトアルデヒド濃度が増加し、その後次第に濃度の低下が見られた。図15から分かるように、10ppmから1ppmに低下するのに約8時間を要し、とても実用に耐えないことが分かった。
【0072】
実施例7[高機能性ポーラスガラス素材と励起光源からなる空気清浄器]
図16に高機能性ポーラスガラス素材20を利用した空気清浄器24が示されている。中央に公知の励起光源26を設置し、その周りに高機能性ポーラスガラス素材20を配置する。吸入口28の近傍にはフィルター30を、放出口32の近傍にはファン34を配置する。ファン34により汚染空気は矢印c方向に吸入され、汚染物質は高機能性ポーラスガラス素材20の表面に吸着される。清浄化された空気は放出口32から外部に放出される。高機能性ポーラスガラス素材20に吸着された汚染物質は、励起光源26から矢印d方向に照射される励起光により分解される。この時、励起光は高機能性ポーラスガラス素材20を透過して更に遠方の高機能性ポーラスガラス素材20に到達するので、励起光の照射効率と汚染物質の分解効率が飛躍的に増大し、高効率の空気清浄器を実現できる。
【0073】
実施例8[高機能性ポーラスガラス素材で励起光源を構成した空気清浄器]
図17に高機能性ポーラスガラス素材20で励起光源26を構成した空気清浄器24が示されている。図16と同一部分には同一番号を符してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。高機能性ポーラスガラス素材20により密封管を形成し、その中に放電ガス36を封入する。従って、このガスが放電すると、生成された励起光が高機能性ポーラスガラス素材からなる密封管を透過して矢印d方向に外部に射出される。密封管の表面には汚染物質が吸着されており、これらは前記励起光により分解される。この実施例では励起光源が高機能性ポーラスガラス素材で形成されているので、高効率な吸着分解効果を有するだけでなく、極めてコンパクトな空気清浄器を実現できる。
【0074】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例・設計変更等をその技術的範囲内に包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】金属担持光触媒微粒子の球形モデルを示す。
【図2】サンプルAに担持されている金属超微粒子の粒径の度数分布表である。
【図3】サンプルAの透過型電子顕微鏡写真のコピーである。
【図4】サンプルBに担持されている金属超微粒子の粒径の度数分布表である。
【図5】サンプルBの透過型電子顕微鏡写真のコピーである。
【図6】サンプルCに担持されている金属超微粒子の粒径の度数分布表である。
【図7】サンプルBの透過型電子顕微鏡写真のコピーである。
【図8】サンプルA・B・Cおよび2種の二酸化チタンのアセトアルデヒドに対する分解効果特性図である。
【図9】高機能性ポーラスガラス素材の製造工程図である。
【図10】細孔を露出させたポーラスガラスの電子顕微鏡写真のコピーである。
【図11】高機能性ポーラスガラス素材の断面模式図である。
【図12】高機能性ポーラスガラス素材のアセトアルデヒドに対する分解効果特性図である。
【図13】粒状活性炭単体の反復吸着効果を示す吸着効果特性図である。
【図14】金属担持光触媒を固定した粒状活性炭のアセトアルデヒドに対する分解効果特性図である。
【図15】金属担持光触媒を固定した粉状活性炭のアセトアルデヒドに対する分解効果特性図である。
【図16】励起光源と高機能性ポーラスガラス素材を別体とした空気清浄器である。
【図17】励起光源を高機能性ポーラスガラス素材により形成した空気清浄器である。
【符号の説明】
【0076】
2・・金属担持光触媒微粒子
4・・光触媒微粒子
6・・金属超微粒子
8・・ホウケイ酸ガラス
10・・分相ガラス
12・・不溶相
14・・可溶相
16・・細孔
18・・微細孔
20・・高機能性ポーラスガラス素材
22・・被分解物質
24・・空気清浄器
26・・励起光源
28・・吸入口
30・・フィルター
32・・放出口
34・・ファン
36・・放電ガス
【技術分野】
【0001】
本発明は金属超微粒子を光触媒微粒子に多数担持した金属担持光触媒に関し、更に詳細には、金属超微粒子の平均粒径を限定することにより光分解効率の高効率化を達成した金属担持光触媒に関し、また被分解物質の吸着材としてポーラスガラス吸着材を利用することによりその光透過性を活用して光照射特性と光分解性能を高度化した高機能性ポーラスガラス素材に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンの光触媒反応は1972年にネイチャーに発表され、本田・藤島効果として世界に知られるところとなった。それ以来、光照射下での二酸化チタンによる水の分解、また有機物水溶液の分解を通して水素と二酸化炭素の生成研究が行われ、現在ではタイルや窓ガラスに二酸化チタンの微粒子を薄膜状に保持させて環境汚染物質、即ちタバコのヤニや細菌あるいは細菌が作った毒素等の有機物の分解に実用化されつつある。
【0003】
二酸化チタンは粉末状の金属酸化物であり、水や溶液の分解では溶液中に分散して使用する。しかし、窓ガラスや風呂タイル、建材表面には粒子状であっても均一な薄膜状に付着することが望まれる。そのためにゾルーゲル法、チタンアセテートなどのスプレーパイロリシス法やディップコーティング法等が開発されるに至った(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。これらの二酸化チタン保持ガラス等を用いて、紫外線照射下で付着した油やタバコのヤニも分解できることが示された。チリ・ホコリ等の無機物を分解することは難しいが、油などの有機物がバインダーとなって無機物が付着していたため、有機物の分解によって無機物も付着しにくくなったことが報告されている。
【0004】
タイル等の素材上における二酸化チタン微粒子の作用原理は、二酸化チタンの半導体としての光触媒特性である。二酸化チタンにバンドギャップ・エネルギーより大きな光、例えば紫外線を照射すると、価電子帯にある電子が励起されて伝導帯に遷移し、価電子帯には正電荷の正孔が残されて電子−正孔の対が生成される。この電子と正孔は二酸化チタン中を動きながら表面に到達し、電子は空気中の酸素に与えられてO2−(スーパーオキサイドアニオン)を作って他の物質を還元する。正孔は有機物を直接酸化分解するだけでなく表面に付着する水分子を酸化して水酸ラジカルという強酸化物を作り、この水酸ラジカルの酸化力により他物質を酸化分解する。前記O2−はこの酸化過程にも関与していると云われるが、その詳細な反応過程は現在もなお研究対象となっている。このようにして光により誘起された電子−正孔対の直接作用だけでなく、スーパーオキサイドアニオンおよび水酸ラジカルの移動反応により有機物等の被分解物質は二酸化炭素と水にまで分解される。
【0005】
この研究の中で、二酸化チタン単体では電子と正孔が外部物質を酸化還元する前に再結合して消滅する場合があるから、その光触媒効率に限界があることが指摘されていた。二酸化チタンは常態が粉末であり、その一粒を考えてみると、その表面及び内部には無数の点欠陥・面欠陥等の格子欠陥が入っている。紫外線により二酸化チタンに励起された電子と正孔はその移動過程で格子欠陥に遭遇すると、その格子欠陥に捕獲されて再結合してしまう。また表面に移動できても電子と正孔が接近すると再結合する場合もある。これを改善するには格子欠陥のない二酸化チタンの作製技術と表面で電子−正孔を分離する技術を開発しなければならない。前者については結晶成長技術の改良が逐次なされてきており、また本発明とは直接関係しないのでここではその詳細を省略する。
【0006】
表面で電子−正孔を分離する技術に関しては、励起電子を集電する電極を二酸化チタン上に形成して、二酸化チタン表面に正孔を、金属電極表面に電子をそれぞれ分離集電する光触媒が提案された。このようにすれば金属電極上に効率的に電子を集電でき、しかも正孔と電子を分離できるので再結合の確率が低くなると考えられたのである。この種の光触媒を金属担持光触媒といい、従来から触媒として用いられているPt(白金)やCu(銅)等の金属を二酸化チタン上に形成して作製された。金属単体でも触媒作用を有するものならば、二酸化チタンの触媒作用と相乗効果を発揮できるだろうというアイデアである。
【0007】
このような金属担持光触媒の製法として、光析出法、混合法、含浸法、化学析出法、同時沈澱法が開発されてきたが、担持される金属粒子の粒径はミクロン程度と大きく、しかも二酸化チタン粒子1個当りに担持される金属微粒子の個数(担持密度)も数十個の範囲に留まっていた。担持密度が小さいのは、金属微粒子の粒径が大きいために多くの金属微粒子が1個の二酸化チタン粒子上に付着しないことも原因の一つである。従って、金属担持二酸化チタンの光触媒効果については二酸化チタン単体よりも2〜4倍程度に増強されるに過ぎなかった。
【0008】
発明者等はなぜミクロンサイズの金属微粒子では触媒効率がそれほど増強されないかについて、理論的に検討してみた。二酸化チタン中に生じた電子を金属電極中に効率的に取り込むためには、二酸化チタンと金属の界面における電子遷移の障壁をできるだけ小さくすることが望まれる。ところが金属微粒子の粒径がミクロンサイズ(約0.1μm以上)の場合には、その電子状態は大きな固体結晶(バルク結晶)とほぼ同じバンド構造となる。つまり、価電子帯と伝導帯が一定のバンドギャップを隔てて画然と形成され、伝導帯では自由電子が底から最上端のフェルミ準位まで順に密に詰まった構造となる。他方、二酸化チタンはバルクな結晶であるからその電子状態は当然バンド構造をとる。バンド構造においては、バンドを構成するエネルギー準位はほぼ連続的に密に配置され、各準位に対応した波動関数はその物質内に鋭く局在している。換言すると、波動関数がその物質外に裾をはみ出すことがないため、その準位に滞在する電子は物質外に放出される確率がかなり小さくなる。
【0009】
この状態で、二酸化チタンが励起光、例えば紫外線照射を受けて電子が伝導帯に励起され電子−正孔対が生成されたとしよう。この電子が被分解物質を還元したりスーパーオキサイドアニオンを生成するためには、電子が迅速に二酸化チタンから金属中に移動し、更に金属から金属外の外部物質に移動する必要がある。ところが上述したように金属微粒子はミクロンサイズであるから、電子状態が大きな結晶と同様のバンド構造をとるだけでなく、波動関数も金属微粒子内に鋭く局在した構造をとる。従って、二酸化チタンの伝導帯に上った電子は金属の波動関数に乗ることが容易でないから、金属の伝導帯に移動することも簡単ではない。また電子が金属に何とか移動できても、金属から外部物質に移動することも同様に容易でないため、金属の外部に出る前に金属の伝導帯にあるフェルミ準位の上に素早く落ちてしまう事が多く、外部物質と反応する機会は更に少なくなる。
【0010】
つまり、バンド構造のように伝導帯の準位密度が大きい場合には、電子がフェルミ準位の上にまで落ちる時間(緩和時間)が極端に短くなり、波動関数の局在性とともに電子の外部への移動を阻止するのである。換言すると、ミクロンサイズでは電子は外部に出にくいから金属内に電子が過剰に蓄積されることとなり、その反発電場によって逆に二酸化チタン内の電子が金属中に移動することを阻止する結果となる。結局、金属微粒子の粒径がミクロンサイズの領域では、エネルギーのバンド構造と波動関数の局在性によって電子が二酸化チタン又は金属微粒子中に留まり、金属外部に放出される確率が小さくなると結論できる。同時に、ミクロンサイズの金属微粒子の場合には、1個の二酸化チタン粒子上に担持される金属微粒子の個数も従来の製法では数十個が限界であり、これらのことが金属担持光触媒の触媒効率を制限していた理由である。
【0011】
光触媒は環境汚染物質の分解作用を有するが、これに吸着作用を付加しようとするアイデアが現れた。吸着作用を有する物質には活性炭、アルミナ、ゼオライト等の多孔性材料がある。これらの多孔性材料の表面には直径1nm〜4nm程度の無数の孔、いわゆるミクロポアが開いている。このミクロポアに有機物等の被分解物質・環境汚染物質を吸着するのである。これらの吸着材を種々の形状に加工して浄水器や空気清浄器に利用している。
【0012】
この吸着材を素材として光触媒を固定させれば、吸着材が被分解物質を吸着し、光触媒が被分解物質を分解できるはずである。特許第2574840号公報(特許文献1)には活性炭に光触媒としてアナターゼ型二酸化チタンを保持させた脱臭装置が記載されている。ミクロポアに吸着された有機物等の被分解物質が総て光触媒により分解されれば、効率100%の吸着・分解力を有することになる。ところが、前述したように二酸化チタン単体の分解力には限界があるため、ミクロポアに有機物が残留するようになる。従って、吸着力は次第に低下し、いずれ二酸化チタンの分解力だけが残存し、当初に予想した効果を発揮できないことが分かってきた。この第一の原因はアナターゼ型二酸化チタンの光触媒効率の限界であり、光触媒効率の画期的な向上が望まれていた。また、第二の原因は吸着材が光に対し不透明であるため、その影の位置にある二酸化チタンに励起光が到達せず、励起光の有効利用に限界があったことである。
【0013】
二酸化チタンには結晶構造の違いからアナターゼ型とルチル型が存在する。このうちルチル型が安定構造で、微粒子では約600℃以上に加熱するとアナターゼ型はルチル型に相転移し、冷却後の低温ではルチル型になる。超微粒子では600℃以下でもアナターゼ型の一部はルチル型になる。従って、ルチル型がアナターゼ型よりも安価に量産できる二酸化チタンである。しかし従来、光触媒として用いられてきた二酸化チタンは全てアナターゼ型であり、安価なルチル型は全く使用されなかった。その理由はバンド構造から理解できる。
【0014】
ルチル型二酸化チタンのギャップエネルギーは3.05eVである。励起光により伝導帯に励起した電子はエネルギーを一部消費しながら緩和して伝導帯の底に到達する。還元電位である酸素電位は3.13eVに位置しているから、伝導帯の底から酸素電位に登るためには外部エネルギーをもらう以外になく、自然には起こりにくい。従って、ルチル型ではスーパーオキサイドアニオンを生成することが困難である。一方、アナターゼ型二酸化チタンのギャップエネルギーは3.20eVであり、励起電子が伝導帯の底に緩和しても3.13eVの酸素電位に十分に落ちることができ、スーパーオキサイドアニオンを生成できる能力を有している。従って、従来の技術では高価なアナターゼ型二酸化チタンを光触媒として使用せざるを得なかった。
【非特許文献1】応用物理第64巻8(1995)pp803
【非特許文献2】化学と工業第48巻10(1995)pp1256
【非特許文献3】化学と工業第49巻6(1996)pp764
【特許文献1】特許第2574840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の課題は金属担持光触媒の光触媒効率を格段に増強できる方法を見いだすことである。また、吸着材を使用した場合に励起光の照射効率を激増して被分解物質の分解効率を一層高度化できる方法を確立することである。従って、吸着・分解のサイクルの長寿命化を達成することである。更に、安価であるにも拘らず光触媒として利用されなかったルチル型二酸化チタンを、光触媒として活用できる方法を見いだすことである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記欠点を解消するためになされたものであり、本発明に係る高効率型金属担持光触媒は、多数の金属超微粒子を光触媒微粒子に担持させた金属担持光触媒であって、金属超微粒子の粒径平均が2nm以下であることを特徴としている。また、光触媒微粒子の1個当りに担持されている金属超微粒子の個数(担持密度)が100個以上である点にも特徴を有する。この高効率型金属担持光触媒の製造方法として、有機金属化合物を疎水性溶媒に溶解させる第一工程と、これに親水性溶媒を添加して有機金属コロイドを形成する第二工程と、これに光触媒微粒子を混合して光触媒微粒子の表面に有機金属コロイドを付着させる第三工程と、これを焼成して金属担持光触媒を製造する第四工程を提案する。金属超微粒子の平均粒径を制御するために、前記第一工程において有機金属化合物および/または疎水性溶媒の添加量を調整する方法を提案する。また、金属超微粒子の担持密度を制御するために、前記第二工程において親水性溶媒の添加量を調整する方法を提案する。
【0017】
本発明に係る高機能性ポーラスガラス素材は、表面に露出する細孔の中に多数の微細孔を有するポーラスガラス吸着材と、このポーラスガラス吸着材の表面に、金属超微粒子を光触媒微粒子に担持させた金属担持光触媒を多数固定させる点に特徴を有している。この高機能性ポーラスガラス素材を用いて、その微細孔に被分解物質を吸着させ、ポーラスガラスの光透過性を利用して励起光により金属担持光触媒を励起し、生じた電子・正孔を通して吸着した前記被分解物質を分解する環境浄化方法を提案する。この方法を実現するため、高機能性ポーラスガラス素材と、この高機能性ポーラスガラス素材に対し励起光を照射する別設の励起光源からなる環境浄化装置を提案する。また、表面に露出する細孔の中に多数の微細孔を有するポーラスガラスにより形成した密封管と、この密封管の内部に封入された放電ガスと、この密封管の外表面に、多数固定された金属超微粒子を光触媒微粒子に担持した金属担持光触媒とから構成され、密封管の外表面に被分解物質を吸着させ、放電ガスの放電により生起する励起光により被分解物質を分解する環境浄化装置を提案する。前記密封管の内表面に蛍光物質を塗着して、放電により発生した励起光を蛍光に変換することもできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上記詳述したように、金属超微粒子の平均粒径を2nm以下にすることによって金属担持光触媒の光触媒特性、即ち有機物等の分解力を激増させることが可能となった。しかも同時に2nm以下にする具体的方法を提供したものであるから、空気清浄器に代表される画期的な環境浄化装置を市場に安価に提供できる効果を有する。また、活性炭などの不透明な吸着材に替えて、光透過性のあるポーラスガラス吸着材を活用すれば、従来影になって励起光が到達しなかった部分にまで励起光を到達させることが可能となり、励起光の照射効率を格段に増加させることが出来る。しかも、このポーラスガラス吸着材に前記の高性能の金属担持光触媒を固定すれば、吸着と分解を高効率に行う環境浄化方法と環境浄化装置を実現することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明者は金属担持二酸化チタンの光触媒機能を増強するために鋭意研究した結果、ナノスケールの金属超微粒子を二酸化チタン表面に担持させることにより、二酸化チタン単体よりも光触媒機能を約100倍〜1000倍以上にまで増強できることが分かった。従って、ミクロンスケールの金属微粒子を担持した二酸化チタンと比較した場合でも、触媒効率を約25倍〜250倍位にまで増強することができる。これは金属を微粒子から超微粒子へ転換すること、即ち粒径をミクロンスケールからナノスケールに、換言すれば粒径をミクロンスケール(約0.1μm以上)の1/10〜1/100程度以下にまで極小化することによって達成できるのである。
【0020】
本発明者は更に鋭意研究した結果、金属超微粒子の平均粒径に光触媒効率を激増させる臨界値があることを発見するに至った。即ち、金属超微粒子の平均粒径が2nm以下になると光触媒効率が急激に増大するのである。研究の初期段階では、平均粒径が10nm以下であればよく、より好ましくは5nm以下であると考えていたが、後述する量子サイズ効果の発現が2nm以下で折れ線的に急増する事実を発見したのである。従って、本発明の特徴は、平均粒径が2nm以下の金属超微粒子を光触媒微粒子に多数担持した金属担持光触媒に存する。
【0021】
本発明の第2の特徴は、光触媒微粒子1個に担持できる金属超微粒子の個数、つまり金属超微粒子の担持密度がその平均粒径とともに重要な要素となることである。本発明では平均粒径を極小化した金属超微粒子を用いることにより、光触媒微粒子1個に多数の金属超微粒子を担持させることを可能にした。ここで、粒径とは直径を意味している。本発明者等の研究によれば、前記平均担持密度は100個以上、好ましくは200個以上に設定することが望まれる。平均担持密度が100個以上であれば量子サイズ効果との相乗効果により光触媒効率を従来より顕著に増大化できる。200個以上であれば光触媒効率の格段の増加を達成できる。もちろん担持密度を更に増加できれば、光触媒効率の更なる増大化を図ることが可能となる。
【0022】
金属超微粒子により初めて発現する量子サイズ効果について以下に検討する。例えば直径1nmの超微粒子を考えると、その中に金属原子は原子のサイズに依存するが数十個程度しか存在しない。臨界値である2nm以下であれば、約100個程度以下の原子数からなる金属超微粒子を意味している。このように原子数の少ない金属超微粒子では、金属の電子エネルギー状態はバンド構造から離れ、エネルギー準位は広範囲に離散化する。例えば、伝導帯を構成する多数のエネルギー準位が互いに離散して上下に広範囲に分布するようになる。この準位の離散化は電子の緩和時間、即ちその準位からフェルミ準位に落ちるまでの時間を長くする効果を奏する。つまり、電子の準位滞在時間が長くなるのである。同時に、各エネルギー準位に対応した波動関数が左右に裾を延ばしながら金属外部にもはみ出し、同時にピークが低くなる効果も有する。つまりこの波動関数に乗った電子は量子トンネル効果により、二酸化チタンから金属へ、金属から外部へと容易に移動できることになる。平均粒径2nmがこの効果の臨界値を与えると考えられる。本発明において量子サイズ効果という場合には、上記したようにエネルギー準位の離散化と波動関数の非局在化による量子トンネル効果の発現を意味している。
【0023】
金属超微粒子を担持した二酸化チタンが如何に有機物等の被分解物質に対し効率的に酸化還元を行うかを見てみよう。二酸化チタンに紫外線等の励起光を照射すると電子−正孔対が形成され、価電子帯に正孔を残して伝導帯に電子が励起される。エネルギーの大きな紫外線で励起した場合には電子は伝導帯の高い位置に遷移するが、次第にエネルギーを失いながら伝導帯の底に落ちてくる。金属超微粒子のエネルギー準位は離散化しているため、緩和過程にある電子のエネルギーに対応したエネルギー準位を必ず有している。しかもその準位の波動関数は左右に長く裾を引いており、左端は二酸化チタン中に右端は金属外部にまで延びている。つまり、二酸化チタンと金属のエネルギー準位は金属の波動関数を介して共鳴的に連続していることになる。二酸化チタンの伝導帯にある励起電子はその金属の波動関数に乗って一気に金属を介して外部に量子トンネル効果により放出される。二酸化チタンと金属が共鳴状態にあるため、この量子トンネル効果を共鳴トンネリングと称する。このとき金属準位は離散化しているので緩和時間は長く、従って電子は金属のフェルミ準位に落ちる前に容易に金属外に放出されるのである。
【0024】
二酸化チタンの価電子帯にある正孔は二酸化チタン表面に移動し、外部物質を酸化する。また外部物質を酸化するだけでなく、表面に付着した水を酸化して水酸ラジカルという強酸化物を生成し、この水酸ラジカルが外部物質を酸化分解しているとも考えられている。一方、金属外に共鳴トンネリングで放出された電子は外部物質を直接還元するだけでなく、空気中の酸素を還元してO2−というスーパーオキサイドアニオンを生成し、このアニオンが前記外部物質の分解にも関与していると考えられている。金属担持光触媒から離れた被分解物質が分解されるのは、これらのスーパーオキサイドアニオンや水酸ラジカルが熱運動して表面を移動し、その途中で遭遇する被分解物質を酸化還元して分解するものと考えられる。
【0025】
特に、本発明では二酸化チタンから金属に移動した励起電子は金属中に蓄積されずに直ちに外部に放出されるから、金属中の蓄積電子により外部に反発電場が形成されず、紫外線照射による励起電子を次々と吸引することができる点で優れた還元力を有している。
【0026】
二酸化チタンに限らず、本発明で用いられる光触媒の種類は、酸化還元しようとする分解対象物質によって決まる。この分解対象物質が還元される物質の場合には還元電位が存在し、酸化される物質の場合には酸化電位が存在する。これらの還元電位と酸化電位が光触媒物質の価電子帯と伝導帯の間にあるエネルギーギャップ内に位置している必要がある。つまり、還元電位はギャップ内の上側に位置し、酸化電位はギャップ内の下側に位置するような光触媒物質を選択することが望まれる。この場合に、励起電子は伝導帯の底から還元電位に落ちて対象物質を還元し、正孔は価電子帯の上端から酸化電位に登って対象物質を酸化できる。但し、本発明では金属超微粒子の共鳴トンネリングが効力を発揮するから、還元電位は伝導帯の底の位置または上側にあってもよい。少なくとも励起光の励起エネルギーより下側にあることが要請される。
【0027】
前述したように、ルチル型二酸化チタンでは還元電位は伝導帯の底より0.08eV上に位置している。それでも励起電子はその位置の金属準位から共鳴トンネリングにより素早く外部物質を還元できる。この共鳴トンネリングによってルチル型二酸化チタンも光触媒として利用できるようになった意義は画期的である。量産性のある安価で安定なルチル型二酸化チタンが本発明によって初めて光触媒として脚光を浴びることになる。
【0028】
本発明では、ルチル型二酸化チタンとともにアナターゼ型二酸化チタンも積極的に利用できる。後述する有機金属コロイド焼成法では、加熱するためにアナターゼ型二酸化チタンはすぐにルチル型二酸化チタンに相転移し、アナターゼ型二酸化チタンを利用してもルチル型を利用するのと同じだと考えるであろう。しかし、アナターゼ型二酸化チタンの表面を特殊処理することにより、その相転移温度を従来の600℃からかなり上昇させることが可能である。従って、この上昇した相転移温度以下であれば、加熱してもアナターゼ型の構造を保持することが可能である。アナターゼ型二酸化チタンに金属超微粒子を担持させることにより、より高い光触媒効率を有する金属担持光触媒を提供できる。
【0029】
又、前述したように、電子はO2を還元してスーパーオキサイドアニオンO2−にし、正孔は水を酸化して水酸ラジカルを形成し、これらのO2−と水酸ラジカルの移動反応により対象物質を分解すると考えられている。従って、還元電位としてO2電位、酸化電位としてOH電位を選んで光触媒物質を選択することもできる。即ち、紫外線の照射によって電子−正孔対が生成され、電子によって空気中や水中の酸素を還元してスーパーオキサイドアニオンを生成し、正孔によって表面に付着した水を酸化して水酸ラジカルを生成する光触媒物質であればよい。
【0030】
光触媒物質としては半導体が適当である。絶縁体ではギャップエネルギーが大きすぎて通常の紫外線では電子−正孔対を生成するのが困難であり、またギャップエネルギーの小さな物質では禁制帯内に酸化および還元電位を配置させることが困難になるととも、水溶液に溶解し易くなるために不適である。半導体の中でも金属酸化物半導体が本発明には適切である。金属酸化物は金属単体と比較して極めて安定な物質であるため、他物質との反応性が低くて安全でもあり、しかも電子の授受を十分に行うことができる物質である。従って、これらの性質を満足する金属酸化物半導体が本発明の光触媒物質として利用でき、例えば、WO3、CdO3、In2O3、Ag2O、MnO2、Cu2O3、Fe2O3、V2O5、TiO2、ZrO2、RuO2,Cr2O3、CoO3、NiO、SnO2、CeO2、Nb2O3、KTaO3、SrTiO3、K4NbO17等を含む公知の物質から分解対象物質に応じて選択することができる。この中でも、生成される電子−正孔密度やスーパーオキサイドアニオン・水酸ラジカル密度および材質としての耐腐食性・安全性等の観点からTiO2、SrTiO3、K4NbO17が好ましく、特に二酸化チタンであるTiO2が最も望ましい。
【0031】
本発明に利用できる光触媒物質は微粒子である。微粒子はその表面積が極めて大きいから環境汚染物質と接触する確率が大きくなると同時に、多数の金属超微粒子を表面に担持することができる。また、微粒子の方が紫外線等の有効受光面積が大きくなり、光触媒効率がバルク物質より格段に高くなる。通常、金属酸化物は粉体であるから、二酸化チタンのような金属酸化物半導体が本発明には適する。粒径としては30nm〜1000nm、より好ましくは50nm〜500nmである。もちろんこれより小さい光触媒微粒子を利用できる。ただし、非常に小さくなると加熱処理時に光触媒微粒子同士が結合して団子状になってしまう。団子自体の大きさは数十nmとなってしまうが、この団子は多数の凹所を有しているから、この部分に被分解物質を吸着するため、最初から大粒子である光触媒微粒子より効果的である。本発明はこのような団子状の光触媒微粒子も包含する。光触媒微粒子の形態は金属超微粒子を担持できる限り特に制限されず、例えば球状・ペレット状・粒状などの任意の形態で使用できる。
【0032】
本発明において利用できる光源は、光触媒のバンドギャップ・エネルギー以上のエネルギーを有する光源であればよく、通常は紫外線灯が用いられる。特に二酸化チタンを用いる場合には、ルチル型とアナターゼ型があり、各々のギャップエネルギーを波長に換算すると、ルチル型は407nm、アナターゼ型は388nmである。従って、二酸化チタンに対する光源の波長分布は400nmをピーク付近に有することが望ましい。
【0033】
自然太陽光線は、可視光線が中心であるが、400nmを含んでいるために十分に利用できる。特に自然太陽光線では388nmより407nmの方が光強度が高いのでルチル型の方がアナターゼ型よりも有効である。従って、本発明によりルチル型二酸化チタンを光触媒として利用できることは自然太陽光線を活用できる大きな道を開いたものである。このことは、従来のアナターゼ型の場合には紫外線灯を利用できても、自然太陽光線の場合には触媒効率が極めて低かったことと対照的である。また、従来の光触媒では、屋外での太陽光線の利用は光強度が強いために可能であったが、屋内利用では光強度が弱いため弱点となっていた。しかし、本発明では光触媒効率が格段に増強されているため、太陽光線を光源として屋内における光触媒の利用の拡大を図ることが可能となる。
【0034】
担持される金属超微粒子は遷移金属であればよい。遷移金属元素とは不完全なd殻を有する元素で原子番号21(Sc)〜29(Cu)、39(Y)〜47(Ag)、57(La)〜79(Au)および89(Ac)〜理論的には111までの4グループからなる金属元素である。d殻が不完全であるために最外殻がd電子により方向性を有し、その結果光触媒物質からやってくる励起電子を金属超微粒子表面で捕まえ易く、スーパーオキサイドアニオンを生成し易い。この中でも金属単体で触媒として利用できる貴金属が望ましく、また安全性の観点から考えるとAu、Pt、Ag、Pd、Rhが好ましく、金属としての安定性の観点からAu、Pt、Pdがより好ましい。
【0035】
本発明の特徴は、微粒子からなる光触媒物質の表面に平均粒径2nm以下の金属超微粒子を担持させたことであり、また担持密度を100個以上で担持形成できる方法を確立したことである。従来の製法ではミクロンサイズの金属微粒子を担持させることはできたが、ナノスケールの金属超微粒子を形成担持することは不可能であった。この従来製法の限界が光触媒効率の向上を阻害していた原因でもあった。従来製法が金属塩または金属粉を原料として使用していたのに対し、本発明では加熱により還元可能な有機金属化合物を用いることにより、光触媒効率の飛躍的な向上を達成したのである。加熱により還元可能とは、加熱すると有機金属化合物から金属だけが単離でき、換言すれば他の有機物部分が分離されてしまうことである。有機金属化合物の中でも、特に有機金属錯体が本発明の目的に適している。しかし、加熱により還元可能な有機金属化合物で有れば特に制限されないことは云うまでもない。
【0036】
この中でも金属としての安定性および安全性の観点から、特にAu系化合物、Ag系化合物、Pd系化合物、Rh系化合物又はpt系化合物の少なくとも1種を用いることが好ましい。より好ましくはAu、Ag、Pd、Rh又はPtと硫黄含有有機物との化合物であり、更に最も好ましくはAu、Pd、Rh又はPtと硫黄含有有機物との化合物である。例えば、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン、オクタデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、チオグリコール酸ブチル等のチオグリコール酸類、そのほかトリメチロールプロパントリスチオグリコレート、チオグリセロール、チオ酢酸、チオ安息香酸、チオグリコール、チオジプロピオン酸、チオ尿素、t−ブチルフェニルメルカプタン、t−ブチルベンジルメルカプタン等が挙げられる。更にその他、バルサム金(C10H18SAuCl1−3)、バルサム白金(C10H18SPtCl1−3)、バルサムパラジウム(C10H18SPdCl1−3)、バルサムロジウム(C10H18SRhCl1−3)等が利用できる。
【0037】
本発明に係る有機金属コロイド焼成法を利用すれば、金属超微粒子の平均粒径を増減制御することが可能となる。この有機金属コロイド焼成法は以下の工程から構成される。即ち、有機金属化合物を疎水性溶媒に溶解させる第一工程と、これに親水性溶媒を添加して有機金属コロイドを形成する第二工程と、これに光触媒微粒子を混合して光触媒微粒子の表面に有機金属コロイドを付着させる第三工程と、これを焼成して金属担持光触媒を製造する第四工程である。
【0038】
第一工程では、トルエン、ベンゼン、ベンジン、キシレン等の公知の疎水性溶媒に有機金属化合物を添加溶解させる。これにアセトン、メチルアルコール、エチルアルコール等の公知の親水性溶媒を添加すると、有機金属化合物の疎水性コロイドが分散形成される。有機金属化合物の添加量を少なくすると、1コロイド中に含まれる有機金属化合物の分子数が少なくなり、従って金属原子数が少なくなる。また、疎水性溶媒の添加量を多くしても同様の作用を発揮できる。即ち、加熱により形成される金属超微粒子のサイズを小さくでき、これによって平均粒径2nm以下の金属超微粒子の担持形成が可能となった。
【0039】
また、親水性溶媒の添加量を減少させることにより、光触媒微粒子表面への担持密度を増大化できる。親水性溶媒の添加量を減少させると云うことは、コロイド溶液の単位体積当りのコロイド数を増加させることであり、第三工程で光触媒微粒子を混合した際に光触媒微粒子の1個当りに付着するコロイド数を増加させることになる。従って、担持密度を増減制御が可能となる。
【0040】
第四工程では、このコロイド溶液を焼成(加熱乾燥)させる。スプレー状に噴霧して加熱乾燥器の中を通過させれば、有機成分が逃散して金属超微粒子が光触媒微粒子表面に固く担持できる。また、これに類似した公知の方法で加熱乾燥して、金属担持光触媒を製造する。
【0041】
この焼成温度は、通常は有機金属化合物の還元析出温度以上であって、且つ還元されて析出する金属の融点未満の温度範囲内で適宜変更することができる。更に具体的に述べると、有機金属錯体のような有機金属化合物から金属を単離するためには、有機金属化合物を完全に分解して金属原子だけを残して他の有機物原子を逃散させなければならない。この温度を金属の還元析出温度と定義している。次に、単離された金属原子を集合させて金属超微粒子にまで再配列させなければならない。この上限温度はバルクの金属の融点以下であればよく、好ましくは、析出金属の融点の80%以下、特に70%以下とする。
【0042】
本発明の次の特徴は、被分解物質の吸着材としてポーラスガラス吸着材を利用した環境浄化方法を実現したことである。活性炭素繊維やゼオライト等の不透明吸着材と比較して、ポーラスガラスは光透過率が極めて高く、任意の形状に形成可能で、全く透明な板状に形成することもできる。従って、このポーラスガラス吸着材に前記の金属担持光触媒を公知の方法で固定させて高機能性ポーラスガラス素材を形成する。ポーラスガラス吸着材が被分解物質を吸着し、この吸着した被分解物質を光照射下で金属担持光触媒により分解できる。ポーラスガラスは励起光を透過させるから、励起光は直射で、あるいはポーラスガラス吸着材を透過して金属担持光触媒を照射し、生成されたスーパーオキサイドアニオンや水酸ラジカルが被分解物質の位置まで移動してその分解を実行する。つまり、ポーラスガラス吸着材の光透過性により金属担持光触媒に対する励起光の照射効率が格段に増加し、その結果、励起効率が飛躍的に増加する。
【0043】
ポーラスガラスは高ケイ酸ガラスの中間体として形成できる。つまり主成分であるSiO2に小量のB2O3やAl2O3やNa2Oを添加してホウケイ酸ガラスとし、これを熱処理してSiO2からなる不溶相とB2O3やAl2O3やNa2Oからなる三次元に連続した可溶相に分相させる。この可溶相を酸処理して可溶相の全部を溶出させると、可溶相の存在した連続領域が細孔となる。この細孔の断面直径は10nm〜1000nm程度まで可溶相成分の分量調整により可変できる。ところがこの可溶相には多少のSiO2がゲル状に存在し、このSiO2ゲルの網目構造を残留させるように他の成分を溶出させると、細孔の中にSiO2ゲルの微細孔が形成される。この微細孔の大きさは1nm〜5nm程度で、この微細孔の中に被分解物質を吸着するので、ポーラスガラスは吸着材として機能するのである。
【0044】
本発明では所望形状に形成したポーラスガラス吸着材に金属担持光触媒を多数固定した素材を高機能性ポーラスガラス素材と呼んでいる。固定するには各種の方法を利用できる。例えば、金属担持光触媒からなる粉末を適当な溶媒中に分散させ、この溶媒中にポーラスガラス吸着材を浸漬して金属担持光触媒微粒子を固定する浸漬法。また金属担持光触媒を分散させた溶媒をポーラスガラス吸着材に噴霧するスプレー法。またローラーや刷毛での塗着法。金属担持光触媒をポーラスガラス吸着材に静電吸着させる方法がある。金属担持光触媒微粒子もポーラスガラスも自然状態で静電気を帯びており、この静電吸着力により金属担持光触媒微粒子の粉末を素材に噴霧固定する方法や粉末中にポーラスガラス吸着材を押し付けて物理吸着させる方法等がある。又、電気集塵の原理によりまず金属担持光触媒微粒子をコロナ放電により強制帯電させておき、極板間の電界力で極板間又は極板上にあるポーラスガラス表面に固定することもできる。
【0045】
上記の環境浄化方法を実現する装置として、励起光源を高機能性ポーラスガラス素材と別体で配置した環境浄化装置を提供する。高機能性ポーラスガラス素材表面の微細孔に被分解物質を吸着させ、ポーラスガラスの光透過性を利用して、励起光源からの励起光により金属担持光触媒を励起し、生じた電子・正孔を通して吸着した前記被分解物質を分解する。
【0046】
また、高機能性ポーラスガラス素材自体を励起光源とする環境浄化装置を提供する。即ち、表面に露出した細孔の中に多数の微細孔を有するポーラスガラス吸着材を少なくとも外表面側に配置した光透過性の密封管と、この密封管の内部に封入された放電ガスと、前記ポーラスガラスの外表面に多数固定された金属超微粒子を光触媒微粒子に担持した金属担持光触媒とから前記装置を構成すれば、密封管の外表面に被分解物質を吸着させ、放電ガスの放電により生起する励起光により被分解物質を分解することができる。
【0047】
密封管の形成方法には各種の方法がある。例えば、密封管を二重構造とし、内側密封管を細孔を有さない通常のガラスから形成して、内部の放電ガスを封入しておく。この内側密封管の外表面をポーラスガラス層とし、密封状または非密封状に高機能性ポーラスガラス素材で被覆する。従って、ポーラスガラス吸着材で被分解物質を吸着し、放電励起光の透過光で金属担持光触媒により被分解物質を分解するのである。
【0048】
ポーラスガラス層を形成するには各種の方法がある。例えば、不溶相と可溶相に分相したポーラスガラスを内側密封管に巻回し、この後表面を酸処理して可溶相を溶出させて細孔と微細孔を形成し、次に金属担持光触媒を固定させる。また別の方法として、ポーラスガラスを破砕して粒子状に形成し、この粒子をシリカゾルで内側密封管の外表面に付着させ熱処理により固結させる。その後、金属担持光触媒を常法で固定させればよい。次のような方法も存在する。通常のガラスであるパイレックス(登録商標)ガラスと分層ガラスを同時に揃えて引き出し成形すれば、両者が重なり合った二重ガラスが形成でき、これをパイレックス(登録商標)ガラス層が内面になるように密封管を形成する。その後、外面の分層ガラスを酸処理してポーラスガラス化すれば、パイレックス(登録商標)ガラスが内側密封管となり、前記した所望の密封管を形成できる。
【0049】
前記密封管を一重構造とし、外表面にのみ露出した細孔・微細孔を有するポーラスガラス素材のみで形成することもできる。即ち、前記分相ガラスから密封管を成形する。この密封管を酸中に短時間だけ浸漬すれば、酸と接触する外表面から可溶相が溶出し始め、この細孔が内部まで貫通する前に取り出して反応を停止させる。つまり厚み方向の途中にまで達した細孔中には微細孔が形成され、しかも内部の密封性は保持されているから、放電ガスは漏出しない。密封管の外表面に金属担持光触媒を固定させれば、吸着分解できる励起光源を実現できる。このように密封管を実現する多様な技術が提供される。
【0050】
放電により生起する励起光の波長は放電ガスに依存する。例えばアルゴンガスやネオンガス等、金属担持光触媒の励起効率の最も高い放電ガスを選択すればよい。高機能性ポーラスガラス素材は励起光を内部から外部へ透過させるから、金属担持光触媒を十分励起できることになる。前記密封管の内表面に蛍光物質を塗着しておけば、放電により発生した励起光を所望波長の蛍光に変換することができる。本発明によって各種の波長の励起光を生成・選択することができる。
【0051】
金属担持光触媒のポーラスガラス吸着材に対する固定分量は吸着分解を効果的に行えるように自在に設定すればよいが、一般的には、金属担持光触媒の重量はポーラスガラス吸着材重量の少なくとも1%以上、好ましくは3%以上あればよい。1%以下でも効果的であれば構わない。
【0052】
ポーラスガラスからガラス繊維を形成すれば、このガラス繊維を布状に編成・織成・不織成でき、繊維としての1次元形状から布としての2次元形状に、また立体構成して3次元形状に展開できる。フィルターその他の繊維製品も本発明の素材に含まれる。フィルターは空気清浄器、浄水器、トイレ脱臭器、室内脱臭器、冷蔵庫脱臭器などに利用できる。
【0053】
また、固形ガラスとして板状に、また立体状に構成でき、ポーラスガラス吸着材の形状は自在である。例えば、平面状の2次元素材としては窓ガラス、鏡、テーブル、壁材、タイル等があり、立体状の3次元素材としてはトイレの便器、置物などがある。これらは例示に過ぎず、現在知られる公知で任意の微小物体から巨大物体までが本発明の対象となる。これらの表面に本発明の金属担持光触媒を固定させれば、有機性の環境阻害物質・人体に有害な物質・悪臭などを自然の太陽光、蛍光灯、あるいは紫外線灯からの紫外線により自然に自浄分解することができる。有機物を分解するから、いままで有機物をバインダーにして付着していた無機汚れも付着しにくくなる。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明に係る高効率型金属担持光触媒および高機能性ポーラスガラス素材の実施例を示し、本発明の特徴とするところを一層明確にする。
【0055】
実施例1[3種類のPt担持光触媒の調製]
有機金属錯体であるバルサムPtの有機錯体液の同量を疎水性溶媒である重量が3種類のトルエンに溶解させた。そしてこれに親水性溶媒である重量が3種類のアセトンを添加して有機金属コロイド溶液を調製した。3種類の有機金属コロイド溶液を、サンプルA、サンプルBおよびサンプルCと名付けて、その詳細を表1に重量%でまとめる。
【0056】
【表1】
【0057】
有機錯体液の15重量%がPtの重量に相当するから、サンプルA、B、Cの全重量に占めるPtの重量%はこの順に、8.9%、1.1%、0.5%となる。Pt有機錯体液のトルエンに対する重量比率が高いほど、1コロイドに含まれる有機金属錯体の分子数が多いから、金属超微粒子の粒径も大きくなると予想できる。その比率は、サンプルA、B、Cの順に2.3、1.4、0.33であるから、金属超微粒子の粒径は、サンプルA>サンプルB>サンプルCと予想できることになる。
【0058】
これら3種類のコロイド溶液に光触媒微粒子として平均粒径70nmのルチル型二酸化チタン粉末を混入させて、二酸化チタン微粒子にコロイドを付着させた。このコロイド溶液をパイレックス(登録商標)ガラス板に塗布して乾燥し、500℃で30分間焼成し、ガラス板から剥がして金属担持光触媒を得た。図1に金属担持光触媒微粒子2の球形モデルが示されている。粒径Dの光触媒微粒子4の表面に粒径dの金属超微粒子6が多数担持されている。ここで粒径とは各粒子の直径を意味している。1個の光触媒微粒子4に担持されている金属超微粒子6の個数を担持密度と呼ぶ。
【0059】
実施例2[3種類のPt担持光触媒における金属超微粒子の平均粒径の測定]
サンプルA、B、Cの金属担持光触媒微粒子の透過型電子顕微鏡写真を撮影して、その写真のコピーを図3、図5、図7に示す。大きな黒い像が光触媒微粒子で、小さな黒い粒粒が金属超微粒子に対応する。写真コピー中に示される長さは10nmに相当し、これと比較して金属超微粒子の個々の粒径が計測できる。複数の金属担持光触媒微粒子についてこの計測を行い、その集計結果を図2、図4、図6に度数分布として示す。その結果、サンプルA、サンプルBおよびサンプルCの金属超微粒子の平均粒径は、その順に7nm、3nm、1.5nmとなることが分かった。この結果は予想と一致した。特に1.5nmの棒グラフに斜線を入れている。
【0060】
実施例3[3種類のPt担持光触媒を使ったアセトアルデヒド分解効率の測定]
サンプルA、サンプルB、サンプルCをこの順にルチル70/Pt7、ルチル70/Pt3、ルチル70/Pt1.5と表記して、アセトアルデヒドの分解効率を測定した。各数字の単位はnmである。密封容器内にこれらのサンプルを同量づつ配置し、容器内にアセトアルデヒドを100ppmになるまで注入した。その時点からアセトアルデヒド濃度の時間変化を3種類のサンプルに対して測定した。コントロールとして粒径7nmのアナターゼ型二酸化チタン微粒子と粒径70nmのルチル型二酸化チタン微粒子による分解効率も測定した。もちろんこれらには金属超微粒子を担持していない。結果を図8に片対数グラフで示す。
【0061】
図8から分かるように、金属超微粒子の粒径が小さくなるに従って、急速に分解している。しかも、7nmから3nmへの変化では同時刻の分解比率が数倍程度の向上であるのに対し、3nmから1.5nmへの変化では同時刻の分解比率が数十倍に向上している。この違いは粒径が小さくなるほど量子サイズ効果が激増することを示しており、発明者はこのデータから金属超微粒子の粒径が2nm以下で分解効率の急増効果があると判断した。アナターゼ7nmの分解効率がルチル70/Pt7よりやや良いのは以外であるが、このことは粒径が7nm程度では量子サイズ効果の顕著な発現がないことを意味するものと考える。もちろんルチル70単体の分解効率と比較すればPt7nmを担持するだけで分解効率が数十倍に増加することは図8から分かる。
【0062】
実施例4[3種類のPt担持光触媒の分解時間と担持密度の測定]
前述した3種類の金属担持光触媒微粒子の担持密度を図3、図5および図7の原写真から測定した。表2の結果から分かるように、サンプルA、サンプルBおよびサンプルCの担持密度はこの順に85、130、120であった。表1のアセトン添加量から判断すると、サンプルB・Cにはそれほど差がないことが予想でき、その通りとなった。しかし、サンプルAのアセトン添加量は一番少ないから担持密度が一番大きくなると予想できるが、実際には一番小さくなってしまった。これは金属超微粒子の粒径がかなり大きいために、金属超微粒子の個数が増加に結び付かなかったことに依っている。しかし、粒径がかなり接近している場合には親水性溶媒の添加量の増減で担持密度を増減できると考えられ、一応の粒径制御の指針とすることができる。
【0063】
【表2】
【0064】
表2において、分解時間τとはC(t)=C0×exp{−t/τ}によって定義される時間である。この式でC0はアセトアルデヒドの初期濃度、C(t)は経過時間tの時の濃度を表している。図8のグラフをこの式でフィティングして得られた分解時間τが表2に与えられている。この分解時間から判断すると、Pt7nmからPt3nmでは分解時間が約1/2に短縮されるが、Pt3nmからPt1.5nmへの変化では分解時間は約1/5に短縮される。従って、発明者は3nmと1.5nmの中間に臨界値があると考え、その臨界値をPt2nmと判断した。この数値は実施例3の結果と一致している。
【0065】
実施例5[高機能性ポーラスガラス素材の作成]
図9に示す手順にしたがって高機能性ポーラスガラス素材を作成した。ケイ砂・ソーダ灰・ホウ酸を原料として調合し、これを1300℃で撹拌しながら溶融させた。その後、800℃にして粒状ガラスに成形し、矩形をハッチングした未分相のホウケイ酸ガラス8を形成した。このホウケイ酸粒状ガラス8を600℃で熱処理すると、分相ガラス10となる。黒く塗りつぶした部分はSiO2からなる不溶相12で、ハッチングで示す部分は三次元に連続したB2O3−Na2Oからなる可溶相14である。この分相ガラス10を90℃で酸処理すると、可溶相14のB2O3−Na2O成分は酸に溶出し、しかもこの細孔部分16に小量のSiO2成分がゲル状に残留して、無数の微細孔18を形成する。SiO2ゲルは多点で示され、点と点の間が微細孔18と考えれば良い。細孔16の平均断面直径は50nm、微細孔の平均直径は3nmであった。
【0066】
図10に、ポーラスガラスの電子顕微鏡写真のコピーが示されている。この図にはSiO2ゲルは存在せず、細孔がそのまま示されている。前述したポーラスガラス吸着材はこの細孔の中に無数の微細孔が存在するものだと考えればよい。このポーラスガラス吸着材にルチル70Pt1.5の金属担持光触媒微粒子を物理吸着法により固定して粒状の高機能性ポーラスガラス素材を作成した。この粒の直径は約0.2mmである。
【0067】
高機能性ポーラスガラス素材20の断面が図11に示されている。不溶相12の中に表面まで露出した細孔16が存在し、この細孔16の中に無数の微細孔18が形成されている。ポーラスガラス表面には、光触媒微粒子4の表面に多数の金属超微粒子6を担持した金属担持光触媒微粒子2が多数固定されている。前記の微細孔18には被分解物質22が無数に吸着されており、矢印aで示す励起光の直射により金属担持光触媒の作用で被分解物質22は分解されることになる。特にポーラスガラスが光に対して透明であるため、ポーラスガラスを透過する励起光bによっても被分解物質22は分解される。励起光の照射効率が格段に増強できることが理解できる。このように、高機能性ポーラスガラス素材20は被分解物質22の吸着と分解を高効率に連続システムで行うことができる利点を有する。
【0068】
実施例6[高機能性ポーラスガラス素材の反復分解効果の測定]
作成した高機能性ポーラスガラス素材のアセトアルデヒドの反復分解効果を測定し、その結果は図12に示されている。PG50とは平均直径50nmの細孔を有するポーラスガラスで、10gのPG50に対しルチル70/pt1.5を0.5g固定した高機能性ポーラスガラス素材を使用した。密封容器の中にこの高機能性ポーラスガラス素材を配置し、100ppmのアセトアルデヒドを注入した。吸着分解によって濃度が0.1ppmにまで低下すると、再びアセトアルデヒドを100ppmになるまで再注入する。これを繰り返した結果、100ppmから0.1ppmになるまで約30分を必要とし、1週間測定を継続したが周期的な反復効果を示し、極めて優れた吸着分解サイクルを示すことを実証した。
【0069】
比較例1[粒状活性炭単体の反復吸着効果]
粒状ポーラスガラスの吸着性能と比較するために、粒径2mmの粒状活性炭単体の反復吸着効果を測定し、結果を図13に示す。アセトアルデヒド濃度が100ppmから出発し、次第に濃度が低下して2時間40分後に再び100ppmになるまでアセトアルデヒドを注入する。反復するにしたがって、次第に吸着量が低下し、粒状活性炭の微細孔への吸着が飽和してくることが分かった。この飽和現象は分解を始めない限りポーラスガラス単体の吸着においても当然出現する。
【0070】
比較例2[金属担持光触媒を固定した粒状活性炭の分解効果の測定]
高機能性ポーラスガラス素材の分解効果と比較するため、金属担持光触媒を固定した粒状活性炭の分解効果の測定し、結果を図14に示す。具体的には、比較例1の粒状活性炭5gにルチル70/Pt1.5の金属担持光触媒を0.5gだけ物理吸着法により固定させる。この粒状活性炭を密封容器に配置してアセトアルデヒドを10ppmだけ注入する。1ppmにまで低下するのに1時間を要しており、比較例1と対比しても多少の分解効果が示されているだけで、金属担持光触媒の分解効果が十分に発揮できているとはとても考えられない結果である。
【0071】
比較例3[金属担持光触媒を固定した粉状活性炭の分解効果の測定]
比較例2の結果が良くなかったので、この比較例3では粉状の活性炭を利用した。粉の大きさは1メッシュで、5gの粉状活性炭にルチル70/pt1.5の金属担持光触媒を0.5g混合させて、物理吸着させたものをサンプルとした。結果を図15に示す。最初の1時間は励起光を照射しないで、アセトアルデヒド濃度が100ppmから出発する反復吸着効果を確認した。吸着性能が高いことが分かった時点から励起光を照射したところ、2時間ほどアセトアルデヒド濃度が増加し、その後次第に濃度の低下が見られた。図15から分かるように、10ppmから1ppmに低下するのに約8時間を要し、とても実用に耐えないことが分かった。
【0072】
実施例7[高機能性ポーラスガラス素材と励起光源からなる空気清浄器]
図16に高機能性ポーラスガラス素材20を利用した空気清浄器24が示されている。中央に公知の励起光源26を設置し、その周りに高機能性ポーラスガラス素材20を配置する。吸入口28の近傍にはフィルター30を、放出口32の近傍にはファン34を配置する。ファン34により汚染空気は矢印c方向に吸入され、汚染物質は高機能性ポーラスガラス素材20の表面に吸着される。清浄化された空気は放出口32から外部に放出される。高機能性ポーラスガラス素材20に吸着された汚染物質は、励起光源26から矢印d方向に照射される励起光により分解される。この時、励起光は高機能性ポーラスガラス素材20を透過して更に遠方の高機能性ポーラスガラス素材20に到達するので、励起光の照射効率と汚染物質の分解効率が飛躍的に増大し、高効率の空気清浄器を実現できる。
【0073】
実施例8[高機能性ポーラスガラス素材で励起光源を構成した空気清浄器]
図17に高機能性ポーラスガラス素材20で励起光源26を構成した空気清浄器24が示されている。図16と同一部分には同一番号を符してその説明を省略し、異なる部分のみを説明する。高機能性ポーラスガラス素材20により密封管を形成し、その中に放電ガス36を封入する。従って、このガスが放電すると、生成された励起光が高機能性ポーラスガラス素材からなる密封管を透過して矢印d方向に外部に射出される。密封管の表面には汚染物質が吸着されており、これらは前記励起光により分解される。この実施例では励起光源が高機能性ポーラスガラス素材で形成されているので、高効率な吸着分解効果を有するだけでなく、極めてコンパクトな空気清浄器を実現できる。
【0074】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々の変形例・設計変更等をその技術的範囲内に包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】金属担持光触媒微粒子の球形モデルを示す。
【図2】サンプルAに担持されている金属超微粒子の粒径の度数分布表である。
【図3】サンプルAの透過型電子顕微鏡写真のコピーである。
【図4】サンプルBに担持されている金属超微粒子の粒径の度数分布表である。
【図5】サンプルBの透過型電子顕微鏡写真のコピーである。
【図6】サンプルCに担持されている金属超微粒子の粒径の度数分布表である。
【図7】サンプルBの透過型電子顕微鏡写真のコピーである。
【図8】サンプルA・B・Cおよび2種の二酸化チタンのアセトアルデヒドに対する分解効果特性図である。
【図9】高機能性ポーラスガラス素材の製造工程図である。
【図10】細孔を露出させたポーラスガラスの電子顕微鏡写真のコピーである。
【図11】高機能性ポーラスガラス素材の断面模式図である。
【図12】高機能性ポーラスガラス素材のアセトアルデヒドに対する分解効果特性図である。
【図13】粒状活性炭単体の反復吸着効果を示す吸着効果特性図である。
【図14】金属担持光触媒を固定した粒状活性炭のアセトアルデヒドに対する分解効果特性図である。
【図15】金属担持光触媒を固定した粉状活性炭のアセトアルデヒドに対する分解効果特性図である。
【図16】励起光源と高機能性ポーラスガラス素材を別体とした空気清浄器である。
【図17】励起光源を高機能性ポーラスガラス素材により形成した空気清浄器である。
【符号の説明】
【0076】
2・・金属担持光触媒微粒子
4・・光触媒微粒子
6・・金属超微粒子
8・・ホウケイ酸ガラス
10・・分相ガラス
12・・不溶相
14・・可溶相
16・・細孔
18・・微細孔
20・・高機能性ポーラスガラス素材
22・・被分解物質
24・・空気清浄器
26・・励起光源
28・・吸入口
30・・フィルター
32・・放出口
34・・ファン
36・・放電ガス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に露出した多数の細孔を有するポーラスガラス吸着材と、二酸化チタン微粒子に平均粒径が2nm以下の貴金属超微粒子を担持させた金属担持光触媒からなり、前記ポーラスガラス吸着材の表面に前記金属担持光触媒を多数固定させて被分解物質を吸着分解することを特徴とする高機能性ポーラスガラス素材。
【請求項2】
前記二酸化チタン微粒子がルチル型二酸化チタン微粒子である請求項1に記載の高機能性ポーラスガラス素材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高機能性ポーラスガラス素材と、この高機能性ポーラスガラス素材に対し励起光を照射する励起光源を有することを特徴とする環境浄化装置。
【請求項4】
表面に露出した多数の細孔を有するポーラスガラス吸着材を少なくとも外表面側に配置した光透過性の密封管と、この密封管の内部に封入された放電ガスと、二酸化チタン微粒子に平均粒径が2nm以下の貴金属超微粒子を担持させた金属担持光触媒からなり、前記ポーラスガラス吸着材の表面に前記金属担持光触媒を多数固定させ、前記ポーラスガラス吸着材の表面に被分解物質を吸着させ、放電ガスの放電により生起する励起光により被分解物質を分解することを特徴とする環境浄化装置。
【請求項5】
前記密封管は、細孔を有さない通常のガラスから形成された内側密封管と、この内側密封管の外表面に密着して配置された前記ポーラスガラス吸着材とから構成されている請求項4に記載の環境浄化装置。
【請求項6】
前記密封管の内表面に蛍光物質を塗着して、放電により発生した励起光を蛍光に変換する請求項4又は5に記載の環境浄化装置。
【請求項7】
前記二酸化チタン微粒子がルチル型二酸化チタン微粒子である請求項3〜6のいずれかに記載の環境浄化装置。
【請求項8】
請求項1に記載の高機能性ポーラスガラス素材を用いて、その細孔に被分解物質を吸着させ、ポーラスガラスの光透過性を利用して励起光により金属担持光触媒を励起し、吸着した前記被分解物質を分解することを特徴とする環境浄化方法。
【請求項1】
表面に露出した多数の細孔を有するポーラスガラス吸着材と、二酸化チタン微粒子に平均粒径が2nm以下の貴金属超微粒子を担持させた金属担持光触媒からなり、前記ポーラスガラス吸着材の表面に前記金属担持光触媒を多数固定させて被分解物質を吸着分解することを特徴とする高機能性ポーラスガラス素材。
【請求項2】
前記二酸化チタン微粒子がルチル型二酸化チタン微粒子である請求項1に記載の高機能性ポーラスガラス素材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の高機能性ポーラスガラス素材と、この高機能性ポーラスガラス素材に対し励起光を照射する励起光源を有することを特徴とする環境浄化装置。
【請求項4】
表面に露出した多数の細孔を有するポーラスガラス吸着材を少なくとも外表面側に配置した光透過性の密封管と、この密封管の内部に封入された放電ガスと、二酸化チタン微粒子に平均粒径が2nm以下の貴金属超微粒子を担持させた金属担持光触媒からなり、前記ポーラスガラス吸着材の表面に前記金属担持光触媒を多数固定させ、前記ポーラスガラス吸着材の表面に被分解物質を吸着させ、放電ガスの放電により生起する励起光により被分解物質を分解することを特徴とする環境浄化装置。
【請求項5】
前記密封管は、細孔を有さない通常のガラスから形成された内側密封管と、この内側密封管の外表面に密着して配置された前記ポーラスガラス吸着材とから構成されている請求項4に記載の環境浄化装置。
【請求項6】
前記密封管の内表面に蛍光物質を塗着して、放電により発生した励起光を蛍光に変換する請求項4又は5に記載の環境浄化装置。
【請求項7】
前記二酸化チタン微粒子がルチル型二酸化チタン微粒子である請求項3〜6のいずれかに記載の環境浄化装置。
【請求項8】
請求項1に記載の高機能性ポーラスガラス素材を用いて、その細孔に被分解物質を吸着させ、ポーラスガラスの光透過性を利用して励起光により金属担持光触媒を励起し、吸着した前記被分解物質を分解することを特徴とする環境浄化方法。
【図1】
【図2】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図3】
【図5】
【図7】
【図10】
【図2】
【図4】
【図6】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図3】
【図5】
【図7】
【図10】
【公開番号】特開2006−312167(P2006−312167A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168456(P2006−168456)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【分割の表示】特願平10−112631の分割
【原出願日】平成10年3月19日(1998.3.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1997年11月28日〜11月29日 開催の「光物性研究会’97」において文書をもって発表
【出願人】(597120466)
【出願人】(591040292)大研化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【分割の表示】特願平10−112631の分割
【原出願日】平成10年3月19日(1998.3.19)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 1997年11月28日〜11月29日 開催の「光物性研究会’97」において文書をもって発表
【出願人】(597120466)
【出願人】(591040292)大研化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]