説明

高減衰バッキングを備えたIC取り付けセンサを実装する装置及び方法

本開示の実施形態によれば、超音波トランスデューサプローブは、減衰バッキング基板、集積回路、及び圧電素子のアレイを含む。集積回路は減衰バッキング基板に結合し、当該集積回路は音波を透過させる。圧電素子のアレイは集積回路に結合し、当該圧電素子のアレイは、音響整合層をアレイの第1表面に配置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には医療超音波に用いるトランスデューサアレイに係り、より詳細には、高減衰バッキングを備えたIC取り付けセンサを実装する方法及び装置に係る。
【背景技術】
【0002】
医療超音波では、現行技術のトランスデューサは、一般には集積回路(IC)の表面に実装される。トランスデューサの音響素子が取り付けられてIC表面に個々に電気的に接続される。このことを達成するのに用いる典型的な技術が、フリップチップである。ICは、たとえば、ビーム形成、信号増幅等のための音響素子の電気制御を提供する。
【0003】
超音波トランスデューサの典型的な設計の一例を図1に示す。超音波トランスデューサ10は、フリップチップ導電バンプ16を介して集積回路14の表面に結合した音響素子12の平坦なアレイを含む。フリップチップアンダーフィル材料18が、フリップチップ導電バンプ16、集積回路14及び音響素子12の平坦なアレイとの間の領域内に含まれる。トランスデューサ10は更に、トランスデューサ基部20及び相互接続ケーブル22を含む。相互接続ケーブル22は、集積回路14と外部ケーブル(図示せず)との間を相互接続するためのものである。集積回路14は、当該技術分野で周知の技法を用いて、ワイヤボンディングされたワイヤ24を介して相互接続ケーブル22に電気的に結合する。
【0004】
フリップチップ手法の不都合な点は、トランスデューサの音響減衰に対するICの影響である。トランスデューサの動作中、圧電素子により生成された音響エネルギーの一部が、デバイスの動作の所望の方向に向けられる。残りのエネルギーは、逆方向に向けられる。典型的な超音波トランスデューサでは、音響吸収バッキングが用いられて、この不要なエネルギーを吸収する。しかしながら、IC取り付けセンサに関しては、音響素子の背後にICが位置することから、不要なエネルギーを吸収することは不可能であった。
【0005】
図2は、典型的な超音波トランスデューサ30の一部分の断面図を示す。超音波トランスデューサ30は、圧電素子34及び整合層素子36のアレイ32を含む。整合層素子36は、対応する圧電素子34に結合する。圧電素子34により生成された音響エネルギーは参照数字38により示され、逆方向に向けられた残余エネルギーは参照数字40により示される。残余エネルギー40は、減衰バッキング材料42によって減衰される。しかしながら、このデバイスの不都合な点としては、減衰バッキング材料42が、アレイ32の個々の圧電素子34への複数の電気接続44を含むことである。結果として、減衰バッキング材料42は、たとえば、数千程度の電気接続を含むであろう。電気接続44は、減衰バッキング材料42内に含まれる。
【0006】
図3は、別の従来の超音波トランスデューサ50の一部分の断面図である。超音波トランスデューサ50は、圧電素子54及び整合層素子56のアレイ52を含む。整合層素子56は、対応する圧電素子54に結合する。超音波トランスデューサ50は、圧電共振子の背後に位置して音響減衰器の必要性を減じる音響反射層58を含む。超音波トランスデューサ50は集積回路60をも含み、集積回路60は、フリップチップ電気接続62及びアンダーフィル材料64を介してアレイ52に結合されている。圧電素子54により生成された音響エネルギーは参照数字68により示され、逆方向に向けられた残余エネルギーは、参照数字70により示され、当該残余エネルギー70は音響反射層58により反射される。しかしながら、この方法は、トランスデューサデバイスの製造を非常に困難にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、改良されたトランスデューサプローブ及び当該技術分野における問題を克服するトランスデューサプローブを動作する方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の実施形態によれば、超音波トランスデューサプローブは、減衰バッキング基板、集積回路、及び圧電素子のアレイを含む。集積回路は減衰バッキング基板に結合し、当該集積回路は音波を透過させる。圧電素子及び整合層素子のアレイは、集積回路に結合する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本開示の実施形態によれば、図4は、集積回路及び音響減衰を備える超音波トランスデューサ80の一部分の断面図である。超音波トランスデューサ80は、圧電素子84及び整合層素子86のアレイ82を含む。整合層素子86は、対応する圧電素子84に結合する。超音波トランスデューサ80は集積回路88をも含む。集積回路88は、フリップチップ電気接続90及びアンダーフィル材料92を介してアレイ82に結合されている。
【0010】
一実施形態によれば、集積回路88は、実質的に音波を透過させ、5〜50ミクロンの範囲の厚さで作成される。特定の所望の集積回路の厚さもまた、意図される超音波応用に依存する。一実施形態では、集積回路の厚さを、機械的研磨工程、続いて蝕刻によって減らす。更に、集積回路はたとえば、シリコン基板の集積回路を含むことができる。
【0011】
加えて、トランスデューサ80は、減衰バッキング材料94を含む。圧電素子84により生成された音響エネルギーは参照数字96により示され、逆方向に向けられた残余エネルギーは参照数字98により示される。残余エネルギー98は、集積回路88を通過し、減衰バッキング材料94により減衰される。
【0012】
本開示の一実施形態によれば、図5は、超音波トランスデューサを備える超音波診断画像形成システムのブロック図である。超音波診断画像形成システム100は、超音波トランスデューサプローブ104とともに用いるよう適合された基部ユニット102を含む。超音波トランスデューサプローブ104は、本明細書で考察したように、超音波トランスデューサ80を含む。基部ユニット102は、超音波診断画像形成を実行する追加の従来の電子機器を含む。超音波トランスデューサプローブ104は、適当な接続を介して基部ユニット102に結合する。適当な接続には、たとえば、電子ケーブル、ワイヤレス接続、又は他の適当な手段がある。超音波診断画像形成システム100は、様々な種類の医療診断超音波画像形成を実行することに用いることができる。
【0013】
本開示の一実施形態によれば、超音波トランスデューサは、高減衰バッキングを備えたIC取り付けセンサを実装する解決策を提供する。集積回路の厚さは5〜50ミクロンの範囲で(用途に依存して)作成され、それによって、集積回路が音波を透過させるようにする。考察したように、一実施形態では、集積回路(IC)の厚さは、機械的研磨工程、続いて蝕刻によって減らすことができる。加えて、IC材料の薄層の背後に位置する音響吸収材料が、適切な減衰を提供する。
【0014】
本開示の実施形態の応用の一例は、二次元トランスデューサを含む。本開示の実施形態は、他のICが取り付けられたトランスデューサ設計においても好都合であり得る。たとえば、心臓内視応用といった一次元(1D)トランスデューサ応用では、ICは、プリント回路基板(PCB)、フレキシブル基板等の従来の相互接続技術では達成できないルーティング密度を提供できる。
【0015】
本開示の実施形態によれば、超音波トランスデューサプローブは、減衰バッキング基板、集積回路、及び圧電素子のアレイを含む。集積回路は減衰バッキング基板に結合し、当該集積回路は音波を透過させる。圧電素子のアレイは集積回路に結合する。当該圧電素子のアレイは、アレイの第1表面に配置された音響整合層を有する。
【0016】
減衰バッキング基板は、(5MHzで)約10dB/cm〜50dB/cm程度の減衰を提供できる如何なる材料をも含むことができる。加えて、減衰バッキング基板は、エポキシ複合材料を含むことができる。エポキシ複合材料は、エポキシ及び超高音響インピーダンスパーティクルと超低音響インピーダンスパーティクルとの混合物から構成される。減衰バッキング基板は、0.125インチ程度の厚さを有する。
【0017】
一実施形態において、超音波トランスデューサプローブは、音波を透過させるのに十分に薄い厚さを有する集積回路を含む。更に、集積回路の厚さは約5〜50μm程度である。更に、集積回路は、シリコン基板、ガリウム基板、及びゲルマニウム基板の集積回路の少なくとも1つを含む。加えて、一実施形態では、圧電素子のアレイは二次元アレイを含む。別の実施形態では、圧電素子のアレイは一次元アレイを含む。
【0018】
更に別の実施形態では、超音波トランスデューサプローブは、減衰バッキング基板、バッキング基板に結合した集積回路、及び圧電素子のアレイを含む。減衰バッキング基板は、5MHzで約10dB/cm〜50dB/cm程度の減衰を提供できる材料を含む。本明細書で考察したように、一実施形態では、集積回路は音波を透過させ、当該集積回路は、約5〜50μm程度の厚さを含み且つ音波を透過させるのに十分に薄い厚さを有する。更に、圧電素子のアレイは集積回路に結合する。当該圧電素子のアレイは、アレイの第1表面に配置された音響整合層を有する。
【0019】
更に別の実施形態では、超音波トランスデューサプローブを製造する方法は、減衰バッキング基板を提供することを含む。集積回路は減衰バッキング基板に結合し、当該集積回路は音波を透過させる。加えて、圧電素子のアレイが集積回路に結合する。当該圧電素子のアレイは、音響整合層をアレイの第1表面に配置させる。たとえば、減衰バッキング基板は、5MHzで約10dB/cm〜50dB/cm程度の減衰を提供できる材料を含む。
【0020】
本開示の一実施形態によれば、超音波トランスデューサプローブを作成する方法は、減衰バッキング基板を提供することを含み、当該減衰バッキング基板は、5MHzで約10dB/cm〜50dB/cm程度の減衰を提供できる材料を含む。集積回路は減衰バッキング基板に結合する。当該集積回路は、音波を透過させ、約5〜50μm程度の厚さを含み且つ音波を透過させるのに十分に薄い厚さを有する。最後に、圧電素子のアレイは集積回路に結合する。当該圧電素子のアレイは更に、音響整合層をアレイの第1表面に配置させる。
【0021】
いくつかの例示的な実施形態のみを上に詳細に記載したが、当業者は、新規の教示及び本開示の実施形態の利点から大いに逸脱することなく、例示的な実施形態において多くの変更形態が可能であることを容易に理解されよう。したがって、全てのかかる変更形態は、添付の特許請求の範囲に定義されるように、本開示の実施形態の範囲内に含まれることが意図される。特許請求の範囲において、機能クレームは、本明細書に記載のその機能を実施する構造を包含し、構造的等価物のみならず他の等価的構造をも包含するよう意図される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の超音波センサの平面図を示す。
【図2】従来の超音波センサの断面図を示す。
【図3】別の従来の超音波センサの断面図を示す。
【図4】本開示の実施形態による、集積回路及び音響減衰を備える超音波トランスデューサの一部分の断面図である。
【図5】本開示の実施形態による、超音波トランスデューサを備える超音波診断画像形成システムのブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波トランスデューサプローブであって:
減衰バッキング基板;
該減衰バッキング基板に結合した集積回路であり、音波を透過させる集積回路;及び
該集積回路に結合した圧電素子のアレイであり;音響整合層を当該アレイの第1表面に配置させた圧電素子のアレイ、
を有する、ところの超音波トランスデューサプローブ。
【請求項2】
前記減衰バッキング基板は5MHzで約10dB/cm〜50dB/cm程度の減衰を提供できる材料を有する、
請求項1記載の超音波トランスデューサプローブ。
【請求項3】
前記減衰バッキング基板は、エポキシ及び超高音響インピーダンスパーティクルと超低音響インピーダンスパーティクルとの混合物から構成されるエポキシ複合材料を有する、
請求項1記載の超音波トランスデューサプローブ。
【請求項4】
前記集積回路は音波を透過させるのに十分に薄い厚さを有する、
請求項1記載の超音波トランスデューサプローブ。
【請求項5】
前記集積回路の厚さは約5〜50μm程度である、
請求項1記載の超音波トランスデューサプローブ。
【請求項6】
前記集積回路はシリコン基板、ガリウム基板、及びゲルマニウム基板の集積回路の少なくとも1つを有する、
請求項1記載の超音波トランスデューサプローブ。
【請求項7】
前記圧電素子のアレイは二次元アレイを有する、
請求項1記載の超音波トランスデューサプローブ。
【請求項8】
前記圧電素子のアレイは一次元アレイを有する、
請求項1記載の超音波トランスデューサプローブ。
【請求項9】
超音波トランスデューサプローブであって:
5MHzで約10dB/cm〜50dB/cm程度の減衰を提供できる材料を有する減衰バッキング基板;
該減衰バッキング基板に結合した集積回路であり、音波を透過させ、約5〜50μm程度の厚さを有し且つ音波を透過させるのに十分である集積回路;及び
前記集積回路に結合した圧電素子のアレイであり;音響整合層を当該アレイの第1表面に配置させた圧電素子のアレイ、
を有する、ところの超音波トランスデューサプローブ。
【請求項10】
前記減衰バッキング基板は、エポキシ及び超高音響インピーダンスパーティクルと超低音響インピーダンスパーティクルとの混合物から構成されるエポキシ複合材料を有し、且つ前記集積回路はシリコン基板の集積回路を有する、
請求項9記載の超音波トランスデューサプローブ。
【請求項11】
超音波トランスデューサプローブを利用する超音波診断画像形成システムであって、該トランスデューサプローブは:
5MHzで約10dB/cm〜50dB/cm程度の減衰を提供できる材料を有する減衰バッキング基板;
該減衰バッキング基板に結合した集積回路であり、音波を透過させ、約5〜50μm程度の厚さを有し且つ音波を透過させるのに十分である集積回路;及び
前記集積回路に結合した圧電素子のアレイであり;音響整合層を当該アレイの第1表面に配置させた圧電素子のアレイ、
を有する、ところのシステム。
【請求項12】
超音波トランスデューサプローブを製造する方法であって:
減衰バッキング基板を提供する工程;
集積回路を前記減衰バッキング基板に結合する工程であり、当該集積回路は音波を透過させる、ところの工程;及び
圧電素子のアレイを前記集積回路に結合する工程であり;当該圧電素子のアレイは音響整合層を当該アレイの第1表面に配置させる、ところの工程、
を有する方法。
【請求項13】
前記減衰バッキング基板は5MHzで約10dB/cm〜50dB/cm程度の減衰を提供できる材料を有する、
請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記減衰バッキング基板は、エポキシ及び超高音響インピーダンスパーティクルと超低音響インピーダンスパーティクルとの混合物から構成されるエポキシ複合材料を有する、
請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記集積回路は音波を透過させるのに十分に薄い厚さを有する、
請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記集積回路の厚さは約5〜50μm程度である、
請求項12記載の方法。
【請求項17】
前記集積回路はシリコン基板の集積回路を有する、
請求項12記載の方法。
【請求項18】
前記圧電素子のアレイは二次元アレイを有する、
請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記圧電素子のアレイは一次元アレイを有する、
請求項1記載の方法。
【請求項20】
超音波トランスデューサプローブを作成する方法であって:
減衰バッキング基板を提供する工程であり、該減衰バッキング基板は5MHzで約10dB/cm〜50dB/cm程度の減衰を提供できる材料を有する、ところの工程;
集積回路を前記減衰バッキング基板に結合する工程であり、当該集積回路は約5〜50μm程度の厚さを有し且つ音波を透過させるのに十分に薄い、ところの工程;及び
圧電素子のアレイを前記集積回路に結合する工程であり;当該圧電素子のアレイは音響整合層を当該アレイの第1表面に配置させる、ところの工程、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−513563(P2007−513563A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−542101(P2006−542101)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【国際出願番号】PCT/IB2004/052626
【国際公開番号】WO2005/055195
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】