説明

高温流体用弁

【課題】高温の流体への使用に適した弁の提供。
【解決手段】本発明に係る弁2は、高温流体に用いられる。この弁2は、流体の流路48を備えた管状の弁箱4を備えている。この弁箱4は、管状の冷却ジャケット22を備えている。この冷却ジャケット22は、弁箱4の内壁の全面に沿った形状である。この冷却ジャケット22は、その内部に冷却流体を流す冷却経路36を備えている。この冷却経路36は、流路48の軸線に直交して延びる複数の周経路を組み合わせて形成されている。好ましくは、それぞれの周経路は、流路48の軸線に直交して延びる一方の端を上流部とされ、他方の端を下流部とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の遮断及び流量の調節に用いられる弁に関する。詳細には、本発明は、高温流体に使用される弁箱の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の遮断及び流量の調節に用いられる弁には、弁箱の流路内に弁体を位置させたものがある。この弁体が流路内で回転させられることで、流路の開口断面積の大きさが変えられる。弁体の回転により、流体の遮断及び流量の調節がなされている。
【0003】
この弁は、高温の流体に使用されることがある。この弁箱は、高温流体が通される。高温の流体を通される弁箱の流路は、溶解及び損傷するおそれがある。高温の流体に使用される弁箱では、弁箱の外側が冷却される構造のものがある。更には、弁箱の流路内部に冷却水が噴射されて流路表面が、保護される構造のものがある。
【0004】
弁箱が外側から冷却される構造では、弁箱の内部は均一に冷却されない。均一に冷却されず、高温となる流路内壁が損傷するおそれがある。この損傷を抑制するために、流路内壁には分厚い耐火煉瓦が貼り付けられる。また、弁箱の流路内部に冷却水が噴射される構造では、流路内に大量のドレンが溜まる。この冷却水の噴射により、高温の流体の温度及び圧力が変化する。正確な温度及び圧力の管理が必要とされる流体では、その管理が困難である。
【0005】
高温流体に使用されるバタフライ弁が、特開平8−61557号公報に記載されている。このバタフライ弁は、弁箱に断熱構造を備えている。この弁箱の流路内周に沿った収容体に断熱材が充填された構造が開示されている。
【特許文献1】特開平8−61557号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この弁箱の断熱構造では、弁箱の流路内周に断熱材が充填された収容体が配置されている。この構造では、収容体の厚みが厚い。この弁箱は、分厚い耐火煉瓦が張られた弁箱と同様に大きい。特に金属が溶ける様な高温流体(1200℃から1800℃)に使用する弁では、断熱材の厚みが一層厚くされる。
【0007】
本発明の目的は、高温の流体への使用に適したコンパクトな弁の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る弁は、高温流体に用いられる。この弁は、流体の流路を備えた管状の弁箱を備えている。この弁箱は、管状の冷却ジャケットを備えている。この冷却ジャケットは、弁箱の内壁の全面に沿った形状である。この冷却ジャケットは、その内部に冷却流体を流す冷却経路を備えている。この冷却経路は、複数の周経路を組み合わせて形成されている。この周経路は、流路の軸線に直交して延びている。
【0009】
好ましくは、この弁は、上記弁箱に支持された弁棒と、流路に位置してこの弁棒を回転軸として回動して流路開口の大きさを変化させる弁体とを備えている。この冷却ジャケットは、弁棒を貫通させる軸孔を備えている。この冷却経路の経路断面積は、軸孔周辺で小さくされている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る弁では、弁箱が効率的に冷却される。この弁体は、高温流体に使用される弁に適する。特に金属が溶融するような高温流体に使用する弁では、冷却効果が大きい。また、冷却効果が大きい一方で、高温流体の温度及び圧力への影響が抑えられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るバタフライ弁2が示された部分断面正面図である。図2は、図1のバタフライ弁2が示された部分断面側面図である。このバタフライ弁2は、弁箱4、弁体6、弁棒8、上蓋10、下蓋12、ヨーク14、駆動装置16、回転軸18及びポジショナ20を備えている。
【0013】
弁箱4は、本体5、冷却ジャケット22、ヒートシールド24、供給配管26及び排出配管28を備えている。本体5は、円筒形の管である。図2に示されるように、この本体5の両端にフランジ30が形成されている。この本体5は、配管口32及び34が形成されている。配管口32及び34は、本体5の壁面を貫通する孔である。図1に示されるように、この配管口32は、正面視にて本体5の右側下方壁面に形成されている。配管口34は、正面視にて本体5の右側上方壁面に形成されている。
【0014】
図3は、図2のバタフライ弁2の冷却ジャケット22の断面の正面図である。図4は、図1のバタフライ弁2の冷却ジャケット22の冷却経路36が示された断面の右側面図である。図5は、図1のバタフライ弁2の冷却ジャケット22の冷却経路36が示された断面の左側面図である。冷却ジャケット22は、円筒形の管である。この冷却ジャケット22は、内壁38、外壁40、隔壁42及び冷却経路36を備えている。内壁38及び外壁40は、円筒の管形状である。内壁38及び外壁40は同軸上に位置させられている。内壁38と外壁40とは隔壁42により結合されている。この冷却ジャケット22には内壁38、外壁40及び隔壁42により冷却経路36が形成されている。
【0015】
この冷却ジャケット22は、配管口44及び46が形成されている。配管口44及び46は、外壁40に形成された孔である。この配管口44は、図3に示されるように、この冷却ジャケット22の右側面の斜め下方に位置している。配管口44は、外壁40を貫通して冷却経路36に連通させられている。配管口46は、この冷却ジャケット22の右側面の斜め上方に位置している。配管口46は、外壁40を貫通して冷却経路36に連通させられている。
【0016】
ヒートシールド24は、薄肉円筒状である。ヒートシールド24には、薄肉円筒状の面の全体に多数のスリットが形成されている。スリットは、ヒートシールド24の軸線に平行に形成されている。このスリットの両端は、スリットの幅より大きな直径の円形孔で切りかかれている。このヒートシールド24の材質としては、ステンレス鋼又はハステロイが例示される。
【0017】
冷却ジャケット22は、本体5の円筒状の管内に挿入されている。冷却ジャケット22は、本体5の管内壁に沿っている。ヒートシールド24は、冷却ジャケット22に挿入されている。この冷却ジャケット22の管内壁には、サーマルバリアコーティングがされている。このサーマルバリアコーティングは、部分安定化ジルコニア(PSZ)のコーティングである。このサーマルバリアコーティングは、冷却ジャケット22とヒートシールド24との間に位置している。ヒートシールド24は、サーマルバリアコーティングを間にして冷却ジャケット22の管内壁に沿っている。
【0018】
本体5に冷却ジャケット22が挿入された弁箱4では、配管口32と配管口44とが同軸上に位置している。この配管口32は、本体5の外側から冷却ジャケット22の冷却経路36に連通させられている。配管口34と配管口46とが同軸上に位置している。この配管口34は、本体5の外側から冷却ジャケット22の冷却経路36に連通させられている。
【0019】
弁箱4は、円筒状の管の流路48を備えている。この実施形態では、流路48は、ヒートシールド24の内周面で形成される円筒形状の空間である。この弁箱4は、軸孔50を備えている。この軸孔50は、本体5、冷却ジャケット22及びヒートシールド24の対向する壁面を貫通して形成されている。この軸孔50は、流路48の軸線に直交させられている。この軸孔50は、流路48の円形断面の中心を通されている。この軸孔50は、弁箱4の軸方向中央を貫通させられている。
【0020】
供給配管26は、図1に示されるように、この弁箱4の右側面の斜め下方に位置している。この供給配管26は、本体5の配管口32に接続されている。供給配管26は冷却経路36に連通させられている。排出配管28は、この弁箱4の右側面の斜め上方に位置している。この排出配管28は、本体5の配管口34に接続されている。排出配管28は冷却経路36と連通させられている。この供給配管26及び排出配管28は、軸孔50と弁箱4の軸方向の同一円周上に位置させられている。
【0021】
図6は、図3の冷却ジャケット22の展開図である。図6の上下方向は、冷却ジャケット22の円周方向である。図6の左右方向は、冷却ジャケット22の軸方向である。この隔壁42は、隔壁201から212からなる。隔壁201及び202は、円周方向にリング状に形成されている。隔壁201は、冷却ジャケット22の軸方向の一方端に位置している。隔壁202は、冷却ジャケット22の軸方向の他方端に位置している。隔壁203は、隔壁201の壁面と隔壁202の壁面との間に冷却ジャケット22の軸方向に延びている。隔壁203の一端は隔壁201の壁面に接合されている。隔壁203の他端は隔壁202の壁面に接合されている。隔壁211は、上方の軸孔50を囲む隔壁である。隔壁212は、下方の軸孔50を囲む隔壁である。 内壁38、外壁40、隔壁201、202、203、211、212に囲われた空間が、隔壁204から210に仕切られている。この空間により冷却経路36が形成されている。
【0022】
隔壁203から円周方向に180°離れて隔壁204が形成されている。この隔壁204は、冷却ジャケット22の軸方向に延びている。この隔壁204は、隔壁201及び隔壁202との間に形成されている。隔壁204の一端と隔壁201の壁面との間には、空間が形成されている。隔壁204の他端と隔壁202の壁面との間にも同様に空間が形成されている。
【0023】
この隔壁204の一端から、円周方向両側に隔壁205が延びている。この隔壁205の両端と隔壁203の壁面との間にそれぞれ空間が形成されている。この円周方向に延びる隔壁205の端と軸方向に延びる隔壁203の壁面との間に形成される空間が経路開口である。言い換えると、この隔壁205の一方の端と隔壁203の壁面との間に経路開口110が形成されている。隔壁205の他方の端と隔壁203の壁面との間に経路開口111が形成されている。同様にして隔壁204の他端から、円周方向両側に隔壁206が延びている。この隔壁206の一方の端と隔壁203の壁面との間に経路開口114が形成されている。隔壁206の他方の端と隔壁203の壁面との間に経路開口115が形成されている。
【0024】
配管口46と隔壁205との間には、隔壁207が形成されている。隔壁207は、円周方向に延びている。この隔壁207の一端は、隔壁203の壁面に接合されている。隔壁207の他端と隔壁204との間に経路開口112が形成されている。配管口46と隔壁206との間には、隔壁208が形成されている。隔壁208は、円周方向に延びている。この隔壁208の一端は、隔壁203の壁面に接合されている。隔壁208の他端と隔壁204との間に経路開口116が形成されている。
【0025】
配管口44と隔壁205との間には、隔壁209が形成されている。隔壁209は、円周方向に延びている。この隔壁209の一端は、隔壁203の壁面に接合されている。隔壁209の他端と隔壁204との間に経路開口109が形成されている。配管口44と隔壁206との間には、隔壁210が形成されている。隔壁210は、円周方向に延びている。この隔壁210の一端は、隔壁203の壁面に接合されている。隔壁210の他端と隔壁204との間に経路開口113が形成されている。
【0026】
図6に示されるように、この冷却経路36は、周方向に延びる周経路101から108により構成されている。周経路101は、内壁38、外壁40、隔壁209、隔壁210、隔壁203、隔壁204及び隔壁212により形成される空間である。周経路101の中央には、隔壁212に囲まれた軸孔50が位置させられている。隔壁203近傍の周経路101の一方の端には配管口44が位置させられている。この周経路101の他方の端は、周経路102及び105に分岐している。周経路101と周経路102とは経路開口109により連通させられている。周経路101と周経路105とは経路開口113により連通させられている。
【0027】
周経路102は、内壁38、外壁40、隔壁205、隔壁209、隔壁203及び隔壁204により形成される空間である。周経路102と周経路103とは経路開口110により連通させられている。周経路102の一方の端は周経路101に連通させられており、他方の端は周経路103に連通させられている。
【0028】
周経路103は、内壁38、外壁40、隔壁201、隔壁205及び隔壁203により形成される空間である。周経路103と周経路104とは、経路開口111により連通させられている。周経路103の一方の端は周経路102に連通させられており、他方の端は周経路104に連通させられている。
【0029】
周経路104は、内壁38、外壁40、隔壁205、隔壁207、隔壁203及び隔壁204により形成される空間である。周経路104と周経路108とは、経路開口112により連通させられている。周経路104の一方の端は周経路103に連通させられており、他方の端は周経路108に連通させられている。
【0030】
周経路108は、内壁38、外壁40、隔壁207、隔壁208、隔壁203、隔壁204及び隔壁211により形成される空間である。周経路108の中央には、隔壁211に囲まれた軸孔50が位置させられている。隔壁203近傍の周経路108の一方の端には配管口46が位置させられている。この周経路108の他方の端は、周経路104と連通させられている。
【0031】
図6に示されるように、他方の周経路105、106及び107は、前述の周経路102、103及び104と同様に構成されている。周経路105の一端は、経路開口113により周経路101と連通させられている。周経路105の他端は、経路開口114により周経路106の一端と連通させられている。周経路106の他端は、経路開口115により周経路107の一端と連通させられている。周経路107の他端は、経路開口116により周経路108に連通させられている。周経路104と周経路107とは周経路108で合流させられている。
【0032】
図1に示されるように、弁体6は、円板状に形成されている。この弁体6の材料は、銅合金である。この弁体6の表面は、一対の端面と、この一対の端面の間の側面とを備えている。この弁体6には、軸孔が形成されている。この軸孔は、弁体6の上方の側面から対向する下方の側面を貫通している。この軸孔は、一対の端面に平行である。
【0033】
図1に示されるように、弁棒8は、丸棒である。弁棒8の一端には、回転軸18がスプラインで連結されている。弁箱4の軸孔50には弁棒8が通されている。弁棒8の一端は、弁箱4の上方に突き出ており、この一端は上蓋10に通されている。弁棒8の他端は、弁箱4の下方に突き出ており、この他端は下蓋12に通されている。この弁棒8は、弁箱4、上蓋10及び下蓋12により弁棒8の軸線を回転軸として回転可能に支持されている。この弁棒8は弁箱4の流路48の軸線と直交している。この弁棒8は、この流路48内で弁体6の軸孔に通されている。この弁体6は、弁棒8に回止めされている。
【0034】
この上蓋10には、図示されない配管に接続される接続口52が形成されている。下蓋12には図示されない配管が接続される接続口54が形成されている。この下蓋12、弁棒8、弁体6及び上蓋10には、冷却水が流される経路が形成されている。接続口54から供給される冷却流体が接続口52から排出される。この弁2では、弁体6の一対の端面と側面に沿った冷却流体が流れる経路が形成されている。
【0035】
図1に示されるように、この上蓋10の上には、ヨーク14が固定され、このヨーク14の上には駆動装置16が固定されている。この駆動装置16の駆動軸56には、回転軸18の一端が一体に連結されている。回転軸18の他端は弁棒8の一端に連結されている。この回転軸18及び弁棒8は、駆動軸56の回転により、一体で回転させられる。駆動装置16にはポジショナ20が取り付けられている。
【0036】
このバタフライ弁2の流路48には、高温の流体が流される。駆動装置16により駆動軸56が回転させられる。駆動軸56の回転により、回転軸18及び弁棒8が弁棒8の軸線を回転軸として回転させられる。この弁棒8の回転により、弁体6が流路48内で回動させられる。この弁体6の回動により、流路48の開口断面積が変えられる。この開口断面積の変化により、流路48を流れる流体の流量が調整される。ポジショナ20により、駆動軸56の回転角度が正確に制御される。これにより、流路48を流れる流体の流量が正確に制御されている。
【0037】
この弁体6の側面には、切欠部が形成されている。このバタフライ弁2では、流路48は完全に閉塞されない。このバタフライ弁2は、流量調整弁として機能する。この切欠部と弁箱4の内周面とにより形成される左右一対の開口が、この流路48の最小の流路断面積として確保されている。
【0038】
このバタフライ弁2には、供給配管26より冷却流体としての冷却水が供給される。この冷却水は、冷却ジャケット22の配管口44から冷却ジャケット22の内部の冷却経路36に供給される。
【0039】
この冷却水は、配管口44から周経路101に送られる。この周経路101には、軸孔50の周りに隔壁212が形成されている。この隔壁212により軸孔50と周経路101が隔てられている。周経路101を流れる冷却水は、隔壁209と隔壁212との間及び隔壁210と隔壁212との間を通って流れる。隔壁209と隔壁212との間及び隔壁210と隔壁212との間を合わせた経路断面積は、隔壁210と隔壁209との間で形成される経路断面積より小さい。この冷却経路36の経路断面積は、軸孔50の周辺で小さくされている。これにより、軸孔50周りの冷却水の流速が最も速い。
【0040】
冷却水は、周経路101から周経路102と105とに分岐して流れる。分岐した一方の冷却水は、一方の周経路102から周経路103へ流れる。この冷却水は、周経路103から周経路104へ流れる。この冷却水は、周経路104から周経路108に流れる。分岐した他方の冷却水は、周経路105から周経路106へ流れる。この冷却水は、周経路106から周経路107へ流れる。この冷却水は、周経路107から周経路108に流れる。周経路102及び105で分岐された冷却水は、周経路108で合流する。冷却水は、周経路108から配管口46に流れる。冷却水は、配管口46から冷却ジャケット22の外へ排出される。冷却水は、配管口46から排出配管28へ排出される。冷却水は、排出配管28から図示されない配管に排出される。
【0041】
この冷却ジャケット22は、本体5の内側に配置されている。この冷却ジャケット22が本体5の内周面の全面に沿った形状で配置されている。周経路101から108で構成される冷却経路36が本体5の内周面の全面に沿って形成されている。これにより、本体5の内周面の全面が冷却される。外側から冷却する構造に比べ、この冷却ジャケット22は小型化できる。この冷却ジャケット22は、本体5の内周面に配置されているので弁箱4の内部を均一に冷却できる。この冷却ジャケット22は、冷却効率に優れている。冷却効率に優れているので、この冷却ジャケット22の径方向の厚みは、薄くしうる。
【0042】
本体5の内周面は、冷却ジャケット22を間にして高温流体に対している。この本体5の径方向の厚みは、外側から冷却するものに比べて薄くしうる。この弁箱4は、小型化しうる。
【0043】
この冷却ジャケット22の内壁38の厚みは、5mmである。内壁38の厚みを薄くすることで、内壁38の肉厚方向の温度勾配が小さくされている。これにより熱応力が緩和されている。この観点から、内壁38の厚みは、好ましくは5mm以下であり、更に好ましくは3mm以下である。一方、この内壁38の厚みは、耐久性及び強度の面から、3.5mm以上が好ましい。
【0044】
このバタフライ弁2では、冷却水の流体圧は0.3MPaとされている。この流体圧は、図示されないが供給配管26の入口で測定される値である。加圧された冷却水が冷却経路36の内部を流される。これにより、圧力降下による冷却水の沸騰を抑えることができる。冷却水の流速を速くできる。流速の速い冷却水が冷却経路36を流されることで、冷却効果が大きくされている。この冷却ジャケット22は、冷却効率が高いので小型化できる。この観点から、冷却水の流体圧は0.1MPa以上とされており、好ましくは、1.0MPa以上である。一方で、経済性の観点から冷却水の流体圧は0.3MPa以下が好ましい。
【0045】
この冷却ジャケット22では、冷却経路36が全周に亘って形成されている。この冷却ジャケット22では、冷却経路36が周経路101から108の組み合わせで形成されている。周経路101から108は、円周方向に延びる。周経路101から108を流れる冷却水の流れる方向は、流路48を流れる高温流体の流れる方向に直交させられている。これにより、冷却効率が高い。
【0046】
この弁箱4には、高温の流体が流される。弁体6の側面や弁棒8の近辺では、流路48を通過する高温流体の流速が比較的に速い。この弁箱4では、軸孔50近傍が高温となりやすい。この周経路101及び108では、軸孔50の近傍で冷却経路断面積が小さくされている。これにより、軸孔50近傍での冷却水の流速が速い。これにより、軸孔50の近傍が効率的に冷却される。
【0047】
この弁箱4は、ヒートシールド24を備えている。これにより、冷却ジャケット22が高温の流体から保護されている。冷却ジャケット22の耐久性が向上している。ヒートシールド24を交換することで、冷却ジャケット22は長く使用される。この弁箱4では、冷却ジャケット22とヒートシールド24との間にTBCがコーティングされている。これにより、一層、冷却ジャケット22の耐久性が向上している。
【0048】
このヒートシールド24は、薄肉円筒状の面の全体にスリットが多数形成されている。スリットは、ヒートシールド24の軸線に平行に形成されている。このスリットの両端は、スリットの幅より大きな直径の円形孔で切りかかれている。これにより熱膨張、熱収縮による亀裂の発生及び応力集中が緩和されている。
【産業上の利用可能性】
【0049】
ここでは、バタフライ弁を用いて説明がされた。この発明はバタフライ弁に限らず、その効果を奏する。この発明は、流路を備えた弁箱を用いる弁であって、高温流体に使用される弁に広く適用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るバタフライ弁が示された部分断面正面図である。
【図2】図2は、図1のバタフライ弁が示された部分断面側面図である。
【図3】図3は、図2のバタフライ弁の冷却ジャケットの断面の正面図である。
【図4】図4は、図1のバタフライ弁の冷却ジャケットの冷却経路が示された断面の右側面図である。
【図5】図5は、図1のバタフライ弁の冷却ジャケットの冷却経路が示された断面の左側面図である。
【図6】図6は、図3の冷却ジャケットの展開図である。
【符号の説明】
【0051】
2・・・バタフライ弁
4・・・弁箱
5・・・本体
6・・・弁体
8・・・弁棒
10・・・上蓋
12・・・下蓋
14・・・ヨーク
16・・・駆動装置
18・・・回転軸
20・・・ポジショナ
22・・・冷却ジャケット
24・・・ヒートシールド
26・・・供給配管
28・・・排出配管
30・・・フランジ
32・・・配管口
34・・・配管口
36・・・冷却経路
38・・・内壁
40・・・外壁
42・・・隔壁
44、46・・・配管口
50・・・軸孔
52、54・・・接続口
56・・・駆動軸
101〜108・・・周経路
109〜116・・・経路開口
201〜212・・・隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路を備えた管状の弁箱を備えており、
この弁箱が管状の冷却ジャケットを備えており、
この冷却ジャケットが弁箱の内壁の全面に沿った形状であり、
この冷却ジャケットがその内部に冷却流体を流す冷却経路を備えており、
この冷却経路が複数の周経路を組み合わせて形成されており、
この周経路が流路の軸線に直交して延びている、
高温流体に用いられる弁。
【請求項2】
上記弁箱に支持された弁棒と、流路に位置してこの弁棒を回転軸として回動して流路開口の大きさを変化させる弁体とを備えており、
この冷却ジャケットが弁棒を貫通させる軸孔を備えており、
この冷却経路の経路断面積が軸孔周辺で小さくされている請求項1に記載の弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−133457(P2010−133457A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308061(P2008−308061)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000219369)東亜バルブエンジニアリング株式会社 (5)
【Fターム(参考)】