説明

高湿度保冷庫及び冷却方法

【課題】 生花を含む植物、青果物及びそれ以外の生鮮食料品等の保存物を低温及び高湿度の状態で貯蔵する高湿度保冷庫及びそれを用いた冷却方法を提供する。
【解決手段】 保存物Pを貯蔵する密閉容器11と、密閉容器11内に設けられる氷製造用水槽35と、氷製造用水槽35内に配置されて氷製造用水槽35内に貯留された水を凍らせる冷却ユニットとを備えた製氷手段39と、氷製造用水槽35に水を供給する給水手段43と、氷製造用水槽35の下方又は下部に設けられ、氷製造用水槽35から溢れた水を貯留するオーバーフロー用水槽40と、氷製造用水槽35内で製造された氷に密閉容器11内の空気を吹き付ける送風手段48とを有し、保存物Pを90%RH以上の相対湿度、かつ、0℃を超え12℃以下の温度で保存する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生花を含む植物、青果物、及びそれ以外の生鮮食料品等の保存物を低温及び高湿度の状態で貯蔵する高湿度保冷庫及びその冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生花を含む植物、青果物、生鮮食料品等は、鮮度を保持するために冷蔵庫に保存されている。また、例えば、切り花の鮮度を保つために、特許文献1には、切り花を入れる水槽を配置した貯蔵室と、水槽内の水を冷却及び循環させる冷却装置とを有し、水槽内の水が蒸発することによって、貯蔵室内を高湿度に保つ鮮度保持装置及びその方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−196139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷蔵庫で保存物を貯蔵すると、低湿度となって鮮度が低下する。この場合、冷蔵庫内に水蒸気を放出する加湿器を備えてもよいが、加湿器から放出される水蒸気は、すぐに水滴となっていた。また、特許文献1の発明では、水槽内の水を蒸発させて貯蔵庫内を高湿度とするので、水が蒸発して貯蔵室内が高湿度になるまでの時間がかかりすぎていた。水槽内の水の冷却で、貯蔵室の室温を調整することは難しく、また、室温を水温よりも低くすることができなかった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、生花を含む植物、青果物及びそれ以外の生鮮食料品等の保存物を低温及び高湿度の状態で貯蔵する高湿度保冷庫及びそれを用いた冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う請求項1記載の高湿度保冷庫は、生花を含む植物、青果物、及びそれ以外の生鮮食料品のいずれか1以上の保存物を90%RH(relative humidity )以上、好ましくは95%RH以上、更に好ましくは98%RH以上の相対湿度、かつ、0℃を超え12℃以下の温度で保存する高湿度保冷庫であって、
前記保存物を貯蔵する密閉容器と、
前記密閉容器内に設けられる氷製造用水槽、及び、該氷製造用水槽内に配置されて前記氷製造用水槽内に貯留された水を凍らせる冷却ユニットを備えた製氷手段と、
前記氷製造用水槽の下方又は下部に設けられ、前記氷製造用水槽から溢れた水を貯留するオーバーフロー用水槽と、
前記オーバーフロー用水槽内に貯留される水を前記氷製造用水槽に供給する水供給管、及び、該水供給管に設けられるポンプを備えた給水手段と、
前記氷製造用水槽内で製造された氷に前記密閉容器内を循環する空気を吹き付ける送風手段とを有する。
【0007】
請求項1記載の高湿度保冷庫において、密閉容器は、内部を低温で高湿度に保つために密閉構造とし、更に、その外壁(天井及び床も含む)には、断熱材を取付けるのが好ましい。また、保存物を密閉容器内に出し入れする扉にも断熱材を取付けるのが好ましく、また、扉の内側に更に内扉を設けて二重扉にすることによって、保存物の出し入れ時に密閉容器内の温度と湿度を一定に保つのが好ましい。
【0008】
ここで、保存物が生花等の生きている植物である場合には、保存する植物によって、密閉容器内を0℃を超え12℃以下、好ましくは0℃を超え5℃以下の低温の状態にすることにより、植物の生理活性を抑えることができ、また、90〜100%RH(relative humidity 、相対湿度)、好ましくは95〜100%RH、更に好ましくは98〜100%RHの高湿度の状態では呼吸と水の蒸散が抑制されるので、鮮度を保持できる。なお、0℃以下では、植物に含まれる水が凍ってしまい、12℃を超えると、生理活性を抑えることができず、成長が促進され、植物が老化してしまう。また、相対湿度が90%RH未満では、水の蒸散が起こり易くなる。
【0009】
保存物が青果物、及びそれ以外の生鮮食料品のいずれか一方又は双方の場合には、0℃を超え12℃以下の低温の状態では付着した細菌の増殖を抑えることができ、また、90〜100%RH、好ましくは95〜100%RH、更に好ましくは98〜100%RHの高湿度の状態では保存物の表面からの水分の蒸発を防ぐことができるので、鮮度を保持することができる。なお、0℃以下では、保存物に含まれる水が凍ってしまい、12℃を超えると、保存物に付着した細菌が増殖し易くなる。また、相対湿度が90%RH未満では、保存物中の水分が蒸発する。
【0010】
製氷手段の冷却ユニットとしては、例えば、蒸気圧縮式冷凍機又は吸収式冷凍機等の冷凍機、及び冷凍機で0℃以下、例えば、−5〜−30℃に冷却された冷媒を通す冷媒配管を有するもの、また、この冷媒配管が内部に設けられたもの、又はペルチェ素子を用いて電子冷却を行う装置等が使用できる。冷却ユニットが氷製造用水槽内に配置されるので、効率よく氷を製造することができる。
【0011】
オーバーフロー用水槽としては、氷製造用水槽の下方又は下部に設けられ、氷製造用水槽から溢れた水を貯留するものであればよく、氷製造用水槽の側壁下部に一体的に設けたもの、又は、氷製造用水槽の下方に氷製造用水槽とは別に設けたものでもよい。また、オーバーフロー用水層として、氷製造用水槽の下部に氷製造用水槽から溢れた水を受ける、例えば、受皿を設け、その下方に受皿を介して溢れた水を貯留する大型の水槽を設けてもよく、この場合、この水槽の上部に簀の子状の載置台を設けてその上に保存物を置くようにすることができる。
【0012】
送風手段としては、遠心式のファンや軸流式のファン等を使用した送風機、又は、圧縮機等が使用できる。密閉容器内を循環する空気が氷製造用水槽内で生成した氷で冷却されると共に、氷を解かして加湿される。また、密閉容器内に空気を循環させ空気を吹き付け易くするために邪魔板等を設けてもよく、氷製造用水槽内の氷に吹き付ける空気を誘導するフードを取付けてもよい。
また、給水手段の水供給管の先端部は、氷製造用水槽の上方、かつ、送風手段の空気吐出口の下方に配置するのが好ましい。水供給管の先端部には、シャワーヘッド、又は水を流下させる複数の小孔が設けられたパイプ状部材等を接続し、空気を接触させ易くしてもよい。
【0013】
ここで、高湿度保冷庫の密閉容器をステンレス板等の不透明体で形成し、更に、密閉容器内に波長が400〜700nmの可視光線を照射する可視光線照射手段と、可視光線照射手段からの可視光線の照射時間を制御するタイマーとを設けてもよい。可視光線照射手段としては、蛍光灯が使用できる。保存物が光合成を行う植物である場合は、通常、昼には光合成を、夜には水の吸収を行っているので、昼と夜が必要となる。従って、タイマーによって、可視光線を照射する時間(つまり、昼)と、照射しない時間(つまり、夜)を作り、光合成と水の吸収を行うことによって、植物を育てることができる。これは、夜間に電灯などの人工光の照射のもとで栽培する電照栽培と同じであり、昼夜の長さを変えるのと同じ効果をもち、着花、開花等の時期を人工的に制御することができる。
【0014】
高湿度保冷庫の密閉容器内には、波長が380〜400nmの近紫外線を照射する近紫外線照射手段を取付け、更に、密閉容器の内壁に二酸化チタンを塗布してもよい。近紫外線照射手段としては、蛍光灯及びブラックライト等がある。近紫外線照射手段によって、二酸化チタンに波長が380〜400nmの近紫外線を照射すると、強い酸化力を持った正孔と還元力を持った電子とを生成する。正孔はヒドロキシラジカル(・OH)を、電子はスーパーオキサイドアニオン(O2 - )等の活性酸素種を生成し、これらによって、脱臭、滅菌、防汚、防かび、及び有機化合物等の分解を行うことができる。なお、密閉容器内の空気は、送風手段によって循環しているので、密閉容器の内壁に接触し易く、効果が向上する。
【0015】
ここで、保存物が生花を含む植物、及び青果物(果物及び生の野菜を含むもの)のいずれか一方又は双方である場合、二酸化チタンに照射された近紫外線によって発生する活性酸素種が、この保存物が生成するエチレン等の有害物質を分解するので鮮度を保つことができる。生花の場合、エチレンによって花のしおれや落下が促進されるので、エチレンの分解により花を長持ちさせることができる。また、保存物が生鮮食料品(魚、肉類等)の場合、生鮮食料品に付着している例えば、コリ−エロゲネス群細菌、プロテウス、枯草菌群、クロストリディウム、プソイドモナス、及びセルロース分解細菌等のいずれか1又は2以上の腐敗菌を死滅させて、鮮度を保つことができる。
【0016】
高湿度保冷庫の密閉容器内には、波長が300〜400nmの紫外線を照射する紫外線照射手段を設けてもよい。保存物が生きている植物(生花を含む)である場合には、紫外線を浴びて、例えば、ビタミンE、ビタミンC、カロテン、アントシアニン、及びリコペン等の1及び2以上からなる抗酸化物質を生成する。これらの抗酸化物質は、葉、花、及び実等の色となる物質であり、生きている植物に、紫外線を照射することによって、抗酸化物質を生成させ、葉、花、及び実等の色を綺麗にすることができる。
【0017】
請求項2記載の高湿度保冷庫は、請求項1記載の高湿度保冷庫において、更に前記氷製造用水槽内の氷に吹き付けられた空気を水と接触させる加湿手段を有する。
請求項2記載の高湿度保冷庫において、加湿手段としては、含水した吸水性物質、又は水を流下させる複数の小孔が設けられたパイプ状部材等がある。
含水した吸水性物質としては、例えば、タオル等の布、スポンジ、及び紙があり、これらに水を含ませて使用することができる。氷に吹き付けられた空気が吸水性物質に接触する際の蒸発潜熱により、吸水性物質に含まれる水の温度が低下して吸水性物質に含まれる水が凍ることがあり、吸水性物質及び吸水性物質に供給される水のいずれか一方又は双方を加熱して、吸水性物質に含まれる水を凍らせず、水を蒸発させるようにするのが好ましい。
【0018】
また、加湿手段として、水を流下させる複数の小孔が設けられたパイプ状部材を使用した場合には、小孔から流下する水を貯留する受皿と、オーバーフロー用水槽からパイプ状部材に水を供給するポンプとを設け、流下させている水に空気を接触させるので、水を蒸発させ易い。また、水を循環させるので、水が凍り難くなり、氷を解凍させる手段を必要としない。なお、パイプ状部材及び受皿を氷製造用水槽よりも上方に配置すると、受皿から氷製造用水槽に水を供給する際にポンプ等の装置が必要でないので好ましい。
【0019】
請求項3記載の高湿度保冷庫は、請求項1及び2記載の高湿度保冷庫において、前記オーバーフロー用水槽には、該オーバーフロー用水槽内の水が凍らないようにする加熱手段が設けられている。
請求項3記載の高湿度保冷庫において、加熱手段としては、ヒータ、又はパイプ状部材等に気体又は液体を供給するもの等が使用できる。加熱に必要な熱は、冷凍機の圧縮側の熱量を使用してもよい。
請求項4記載の高湿度保冷庫は、請求項1〜3記載の高湿度保冷庫において、前記冷却ユニットは冷凍機及び該冷凍機に接続されて該冷凍機で冷却された冷媒を授受する冷媒配管を有し、該冷媒配管は前記氷製造用水槽内の上端部側に配置されている。
【0020】
前記目的に沿う請求項5記載の冷却方法は、生花を含む植物、青果物、及びそれ以外の生鮮食料品のいずれか1以上の保存物を貯蔵する密閉容器内に氷製造用水槽を設け、該氷製造用水槽内に水を供給しながら冷却して氷を製造し、該氷に前記密閉容器内の空気を直接吹き付けて、前記氷を解かして循環する空気を冷却する保存物の冷却方法であって、
前記氷に吹き付ける風量及び前記氷製造用水槽に供給する水量のいずれか一方又は双方を制御して、前記密閉容器内の相対湿度を90%RH以上、かつ、温度を0℃を超え12℃以下に保つ。
請求項6記載の冷却方法は、請求項5記載の冷却方法において、更に前記氷に吹き付けた空気を別の水と接触させて加湿する。
【発明の効果】
【0021】
請求項1〜4記載の高湿度保冷庫は、密閉容器と、氷製造用水槽内に貯留された水を凍らせる冷却ユニットを備えた製氷手段と、オーバーフロー用水槽と、水を氷製造用水槽に供給する給水手段と、氷製造用水槽内で製造された氷に密閉容器内を循環する空気を吹き付ける送風手段とを有するので、低温及び高湿度の状態で保存物の鮮度を保って貯蔵できる。
特に、請求項2記載の高湿度保冷庫は、氷製造用水槽内の氷に吹き付けられた空気を水と接触させる加湿手段を有するので、密閉容器内を速く高湿度にすることができる。
【0022】
請求項3記載の高湿度保冷庫は、オーバーフロー用水槽内の水が凍らないようにする加熱手段が設けられているので、オーバーフロー用水槽内の水を氷製造用水槽に供給できる。
請求項4記載の高湿度保冷庫は、冷却ユニットが冷凍機及び冷凍機に接続されて冷凍機で冷却された冷媒を授受する冷媒配管を有し、冷媒配管が氷製造用水槽内の上端部側に配置されているので、氷を効率的に製造することができる。
【0023】
請求項5及び6記載の冷却方法は、密閉容器内で製造した氷に密閉容器内の循環する空気を直接吹き付けて、氷を解かして空気を冷却するので、密閉容器内を低温で高湿度の状態とすることができる。また、氷製造用水槽に供給する水量、及び、氷に直接吹き付ける風量を制御するので、簡単に密閉容器内の相対湿度を90%RH以上、かつ、温度を0℃を超え12℃以下に保つことができる。
特に、請求項6記載の冷却方法は、氷に吹き付けられた空気を別の水と接触させるので、密閉容器内を速く高湿度とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る高湿度保冷庫の説明図、図2は同高湿度保冷庫の要部断面図、図3は図1のA−A断面図、図4は同高湿度保冷庫の変形例に係る送風手段及び給水手段の説明図、図5は同高湿度保冷庫の変形例に係るオーバーフロー用水槽及び給水手段の説明図、図6は本発明の第2の実施の形態に係る高湿度保冷庫の説明図、図7は同高湿度保冷庫の要部断面図、図8は図6のB−B断面図、図9は同高湿度保冷庫の第1の変形例に係る送風手段、給水手段、及び加湿手段の説明図、図10は同高湿度保冷庫の第2の変形例に係る送風手段、給水手段、及び加湿手段の説明図である。
【0025】
図1〜図3を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る高湿度保冷庫10について説明する。
高湿度保冷庫10は、生花を含む植物、青果物、及びそれ以外の生鮮食料品のいずれか1以上の保存物の一例であるチューリップの切り花Pを貯蔵する密閉容器11を有している。密閉容器11は、四方の側壁12〜15、天井16、及び床17を有し、側壁12〜15、天井16、及び床17は、それぞれ、内側に設けられた不透明体の一例であるステンレス板18〜23と、外側に設けられた断熱材24〜29とで形成されている。
【0026】
また、側壁12の一部には、切り花Pの搬入出を行う扉30が設けられている。床17のステンレス板23の外側(下側)には、4つの脚部31〜34が設けられ、密閉容器11を設置面から隙間をあけて支持できるようになっている。密閉容器11の内部は暗室となり、密閉容器11内を低温に保持することができる。また、密閉容器11及び扉30の内側には、二酸化チタンの粉末が塗布されている。
【0027】
高湿度保冷庫10は、側壁14の内側上部に天井16とは隙間を有して氷製造用水槽35が設けられている。氷製造用水槽35内には、氷製造用水槽35内に貯留された水を凍らせる冷却ユニットを構成する冷媒配管36が氷製造用水槽35内の上端部側に配置されている。冷媒配管36は、密閉容器11外に設置され冷却ユニットを構成する冷凍機37に冷媒供給管38を介して接続され、冷凍機37で冷却される冷媒を授受している。氷製造用水槽35と冷却ユニットとで製氷手段39が構成されている。
【0028】
高湿度保冷庫10は、氷製造用水槽35の下方に氷製造用水槽35から溢れた水を貯留するオーバーフロー用水槽40が設けられている。また、オーバーフロー用水槽40の側壁に設けられた排水口40aに接続されてオーバーフロー用水槽40内に貯留される水を氷製造用水槽35に供給する水供給管41と、水供給管41に設けられるポンプ42とを備えた給水手段43が設けられている。なお、水供給管41の先端部は、水を流下させる複数の小孔44が設けられた複数、例えば、5本のパイプ状部材45をソケット46を介して接続している。オーバーフロー用水槽40には、オーバーフロー用水槽40内の水が凍らないようにする加熱手段の一例であるヒータ47が設けられている。
【0029】
更に、高湿度保冷庫10は、氷製造用水槽35内で製造された氷に密閉容器11内を循環する空気を吹き付ける送風手段48が設けられている。送風手段48は、側壁14の近傍に設けられ、例えば、遠心式のシロッコファン49、シロッコファン49を駆動するモータ50、及びシロッコファン49のケーシング51を有する送風機52と、送風機52から吐出される空気を氷製造用水槽35で製造される氷に向けて吹き付ける吹付具53と、基部が送風機52に、先部が吹付具53に接続され送風機52から吹付具53へ空気を送る導風管52aとを有している。
【0030】
吹付具53は、下部に空気を氷製造用水槽35内に導く筒状のフード53aが取付けられ、氷製造用水槽35の上方に隙間を有して配置されている。フード53aにより、空気を効率よく氷製造用水槽35内の氷に吹き付けることができるようになっている。なお、フード53aには、縦方向に配置される複数の仕切板を設けて、送風機52から供給される空気を氷に導きやすくしてもよい。送風機52は側壁14の下側近傍に設置され、送風機52の吸気口54が側壁14とは反対側、つまり、密閉容器11の中心側に向くようにして配置され、送風機52の上部には空気の吐出口55が設けられている。
【0031】
吐出口55に連通する導風管52aは、その内部に図示しない導風経路を有し、吹付具53は導風経路を介して供給される空気を氷製造用水槽35で製造される氷に向けて吹き出す複数の吐出孔56が設けられている。これにより、送風機52の吸気口54から吸い込まれた空気は、吹付具53の吐出孔56から氷に吹き付けられて冷却される。また、モータ50は、側壁14に設けられた貫通孔57から密閉容器11の外部に露出して配置され、モータ50から発生する熱が密閉容器11内に入らないようなっている。
【0032】
高湿度保冷庫10には、密閉容器11内の天井16のステンレス板22の内側に、波長380〜400nmの近紫外線を含む波長320〜400nmの紫外線を照射する近紫外線ランプ58が取付けられている。密閉容器11の内側には、二酸化チタンが塗布されており、近紫外線照射手段としての近紫外線ランプ58から照射される近紫外線によって、二酸化チタンは、強い酸化力を持った正孔と還元力を有する電子とを生成する。正孔はヒドロキシラジカルを、電子はスーパーオキサイドアニオン等の活性酸素種を生成し、これらによって、脱臭、滅菌、防汚、防かび、及び有機化合物等の分解を行うことができる。
【0033】
なお、密閉容器11内の空気は、送風手段48によって循環しているので、二酸化チタンに接触し易く、脱臭、滅菌、防汚、防かび、及び有機化合物等の分解の効果が向上する。
ここで、保存物が生花を含む植物、及び青果物(果物及び生の野菜を含む)のいずれか一方又は双方である場合、この植物が生成するエチレン等の有害物質を分解して、鮮度を保つことができる。また、保存物が生鮮食料品の場合、生鮮食料品に付着している細菌を滅菌して、鮮度を保つことができる。
【0034】
密閉容器11内の天井16のステンレス板22の内側には、波長280〜320nmの中間紫外線を照射する中間紫外線ランプ59が取付けられている。紫外線照射手段を構成する近紫外線ランプ58と中間紫外線ランプ59から照射される波長300〜400nmの紫外線によって、生きている植物は、例えば、ビタミンE、ビタミンC、カロテン、アントシアニン、及びリコペン等のいずれか1及び2以上の抗酸化物質を生成する。これらの抗酸化物質は、葉、花、及び実等の色となる物質であり、紫外線照射によって抗酸化物質を生成させることにより、葉、花、及び実等の色を綺麗にすることができる。
【0035】
更に、密閉容器11内の天井16のステンレス板22の内側には、波長が400〜700nmの可視光線を照射する可視光線照射手段の一例である蛍光灯60が設けられている。また、蛍光灯60は、図示しないタイマーによって、その照射時間が制御されている。タイマーは、可視光線を照射する時間帯(昼)と、照射しない時間帯(夜)を作り、これによって生きている植物は、可視光線を照射されている時間帯に光合成を行い、可視光線を照射されていない時間帯である夜に水を吸収している。なお、可視光線の照射時間を変えることによって、植物の生長を制御することができる。
【0036】
密閉容器11の温度及び湿度を測定する温度計61、及び湿度計62が、切り花Pの位置に設けられている。また、温度計61の測定値が0を超え12℃以下で、湿度計62の測定値が90%RH以上となるように制御する図示しない制御装置が組み込まれた制御盤63が密閉容器11の側壁12の外側に取付けられている。また、吹付具53より下方でパイプ状部材45よりも上方には、吹付具53から氷製造用水槽35の氷に吹き付けられた空気の温度を測定する温度計64が取付けられている。更に、氷製造用水槽35内には製造される氷の温度を測定する温度計65が設けられ、オーバーフロー用水槽40内にはオーバーフロー用水槽40内に貯留される水の温度を測定する温度計66が設けられている。
【0037】
制御盤63の制御装置は、冷凍機37の図示しない制御装置、及び送風機52のモータ50の図示しない制御装置が接続され、冷凍機37から冷媒配管36に供給する冷媒の温度及び供給量をそれぞれ制御して氷の温度を変え、また、モータ50の回転数を制御して氷に吹き付ける空気の量(風量)を変えることによって、温度計61の測定値が所定値となるようにしている。
【0038】
制御盤63の制御装置は、湿度計62の測定値が所定値となるように、給水手段43のポンプ42の回転数を変えて、氷製造用水槽35内の氷に供給する水の量を制御している。また、制御盤63の制御装置には、オーバーフロー用水槽40内に設けられた温度計66及びヒータ47が接続され、温度計66による測定値が、オーバーフロー用水槽40内の水が凍る温度(つまり、0℃以下)とならないように、ヒータ47を制御してオーバーフロー用水槽40内の水を加熱している。
【0039】
制御盤63の制御装置は、近紫外線ランプ58、中間紫外線ランプ59、及び蛍光灯60の照射時間をそれぞれ制御するタイマーが組み込まれている。
また、制御盤63には、図示しない表示手段が設けられ、温度計61、64〜66及び湿度計62の測定値、近紫外線ランプ58、中間紫外線ランプ59、及び蛍光灯60の照射状況等を表示している。
【0040】
高湿度保冷庫10の送風手段48及び給水手段43の代わりに、図4に示す送風手段70、給水手段71を使用することもできる。送風手段70は、パイプ状部材45の上方に配置されるファン72と、ファン72からの空気を氷製造用水槽35に導くフード73とを有している。また、ファン72の下方の床17の上には密閉容器11内の空気を強制的に循環させると共に、密閉容器11内の空気をファン72に供給する空気循環手段の一例であるファン74が配置されている。更に、給水手段71は、オーバーフロー用水槽40内に設けられる水中ポンプ75と、水中ポンプ75に接続され、先端部にソケット46を介して5本のパイプ状部材45が接続された水供給管76とを有している。
【0041】
更に、オーバーフロー用水槽40の代わりに、図5に示すオーバーフロー用水槽80を使用することもできる。オーバーフロー用水槽80は、密閉容器11の床17のステンレス板23上の全面に配置されている。オーバーフロー用水槽80の上には、隙間を有して配置される板状の床部材81が配置され、その上に保存物を載置する。給水手段82は、オーバーフロー用水槽80内に配置される水中ポンプ75aと、水中ポンプ75aに接続され、先端部にソケット46を介して5本のパイプ状部材45が接続された水供給管83とを有している。更に、水中ポンプ75aによって供給されて氷製造用水槽35から溢れる水を受ける受皿84が氷製造用水槽35の下部に設けられ、受皿84の底部に設けられた排水口85に接続された配水管86によって溢れた水をオーバーフロー用水槽80に供給している。
【0042】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る高湿度保冷庫10を使用した冷却方法について説明する。
扉30を開け、水の入っている花瓶88に入れたチューリップの切り花Pを密閉容器11内に搬入する。冷凍機37から冷媒供給管38を介して、冷媒配管36に例えば−30℃に冷却された冷媒を供給して冷却し、予め氷製造用水槽35内に貯留されている水を凍らせて氷を製造する。
【0043】
次に、予めオーバーフロー用水槽40内に貯留されている水を給水手段43のポンプ42を駆動し、水供給管41を介してパイプ状部材45の小孔44から氷製造用水槽35内の氷に供給して氷を解かすと共に、供給された水を冷却する。ここで、氷製造用水槽35内の氷に過剰に供給された水は、氷製造用水槽35から溢れてオーバーフロー用水槽40に供給される。オーバーフロー用水槽40内の温度計66の測定値が0℃以下となりそうなときには、制御盤63内の制御装置がヒータ47を作動させて、オーバーフロー用水槽40内の水を加熱する。加熱された水は、ポンプ42を介して、オーバーフロー用水槽40から氷製造用水槽35内の氷に供給される。
【0044】
更に、送風手段48の送風機52のモータ50を駆動して、シロッコファン49を回転し、密閉容器11内の高温で低湿度の空気α(12℃よりも高く、90%RHよりも低い、例えば、20℃、50%RH)が、送風機52の吸気口54から吸い込まれ、更に、吐出口55を介して吹付具53に送られる。空気αの温度及び湿度は、それぞれ温度計61、及び湿度計62によって測定されている。更に、空気αは、吹付具53の吐出孔56から氷製造用水槽35で製造された氷に吹き付けられて冷却されると共に、氷を解かして加湿される。更に、吐出孔56から排出される空気は、パイプ状部材45の小孔44から氷製造用水槽35内の氷に供給されている水に接触して加湿される。
【0045】
空気αは、水と接触して加湿され、更に氷と接触して冷却されると共に加湿されて、低温で高湿度(例えば、18℃で55%RH)の空気βとなる。このとき、空気βは18℃における水の飽和水蒸気量が下がるので、相対湿度は上昇する。なお、空気αに含まれる水蒸気量が空気βの飽和水蒸気量よりも大きい場合には、空気内の水が凝縮し水滴となり、空気中の水分量が減るので絶対湿度は減少する。なお、この場合の相対湿度は100%である。
【0046】
空気βは再び密閉容器11内の空気αと混ざり、温度が上がると共に湿度が下がる。更に、この混合した空気は、再び送風機52の吸気口54から吸い込まれ、冷却及び加湿される。温度計61及び湿度計62での測定値、つまり、密閉容器11内が、0℃を超え12℃以下で相対湿度が90〜100%RH(例えば、3℃で98%RH)となるまで、以上の作業を繰り返し行う。
【0047】
密閉容器11内の空気が、低温で高湿度(例えば、3℃で98%RH)の状態となった場合には、冷凍機37からの冷媒配管36への冷媒の供給を停止、給水手段43による氷製造用水槽35内への給水の停止、及び送風手段48による氷製造用水槽35内の氷への送風停止等を行い、密閉容器11内の空気の温度を0℃以下にならないようにする。また、切り花Pは、低温状態で生理活性を抑えられ、また、高湿度状態で呼吸と水の蒸散が抑制されるので、鮮度を保持できる。
【0048】
また、近紫外線ランプ58から波長380〜400nmの近紫外線を含む紫外線を照射する。密閉容器11の内側には、二酸化チタンが塗布されているので、二酸化チタンが強い酸化力を持った正孔と還元力を持った電子とを生成して、正孔はヒドロキシラジカルを、電子はスーパーオキサイドアニオン等の活性酸素種を生成し、密閉容器11内の脱臭、滅菌、防汚、防かび、及び有機化合物等の分解を行うことができる。特に、切り花Pから発生するエチレンを分解して、切り花Pのしおれ、及び落下を防止することができる。なお、密閉容器11内の空気は循環しているので、密閉容器11の内側壁に接触し易く、効果が向上する。
【0049】
更に、密閉容器11内に波長が300〜400nmの紫外線を、近紫外線ランプ58及び中間紫外線ランプ59から照射して抗酸化物質を生成させ、切り花Pの葉及び花等の色を綺麗にする。
【0050】
また、密閉容器11内に波長が400〜700nmの可視光線を蛍光灯60から照射する。なお、可視光線の照射時間は、制御盤63に設けられた制御装置のタイマーにより設定時間毎、例えば、照射している時間(昼)を6時間、照射しない時間(夜)を18時間としている。可視光線の照射時間を設定することにより、光合成を行う昼と水を吸収する夜を作り、また、昼と夜の割合を変えて季節を作ることができる。
【0051】
図6〜図8を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る高湿度保冷庫90について説明する。なお、高湿度保冷庫10と同一の構成要素については同一の番号を付してその詳しい説明を省略する。
高湿度保冷庫90は、前記した高湿度保冷庫10と同様にチューリップの切り花Pを貯蔵する密閉容器11と、氷製造用水槽35と、製氷手段39とを有し、氷製造用水槽35の下方には、内部にヒータ47が配置されたオーバーフロー用水槽40が設けられている。なお、氷製造用水槽35及びオーバーフロー用水槽40の取付け位置は、高湿度保冷庫10に比べて低くなっている。
【0052】
高湿度保冷庫90の送風手段48aは、高湿度保冷庫10の送風手段48と同様に、送風機52と、吹付具53とを有し、送風機52と吹付具53とは導風管90aで接続されている。なお、吹付具53は、下部に設けたフード91によって下方の氷製造用水槽35と連接されている。フード91の側壁14側の下部には送風口92を有し、送風機52から供給される空気は、氷製造用水槽35内の氷に吹き付けられた後、送風口92を通って側壁14側に放出され、吹付具53の上方の隙間に導かれている。
【0053】
吹付具53と天井16との間には、側壁13及び側壁15と垂直に配置され、水を流下させる複数の小孔93が設けられたパイプ状部材94と、パイプ状部材94の下方に設けられ、小孔93から流下する水を貯留する受皿95とが設置されている。更に、オーバーフロー用水槽40の排水口40bに接続してパイプ状部材94に水を供給する水供給管95a及び水供給管95aに設けられたポンプ96を有して加湿手段97が構成されている。オーバーフロー用水槽40から供給されパイプ状部材94の複数の小孔93から吐出される水によって水の膜が形成される。
【0054】
また、加湿手段97の受皿95の底面に設けられた排水口98に接続され、その先端が氷製造用水槽35の上方の中央部に配置される複数の小孔99を有するシャワーヘッド100が接続された水供給管101を備えた給水手段102が設けられている。なお、給水手段102には、オーバーフロー用水槽40の水を水給水管101に供給するパイプ状部材94、受皿95、水供給管95a、及びポンプ96も含まれる。
【0055】
ここで、送風機52から供給される空気は、まず、給水手段102によって加湿され、氷製造用水槽35内の氷に吹き付けらて冷却され、更に、加湿手段97の小孔93から供給される水に接触して加湿される。しかも、氷製造用水槽35に供給する水を加湿手段97用の水にも利用できる。なお、氷製造用水槽35から溢れた水は、フード91の送風口92から排出されてオーバーフロー用水槽40に供給される。
【0056】
密閉容器11には、近紫外線ランプ58、中間紫外線ランプ59、及び蛍光灯60が設けられている。また、密閉容器11には、温度計61、湿度計62、及び制御盤63が取付けられ、密閉容器11内の温度が0を超え12℃以下で、相対湿度が90%RH以上となるように制御されている。更に、加湿手段97で加湿された空気の出側には温度計103が取付けられ、氷製造用水槽35内には製造される氷の温度を測定する温度計65が、オーバーフロー用水槽40内にはオーバーフロー用水槽40内に貯留される水の温度を測定する温度計66がそれぞれ設けられている。温度計65、66、103は、それぞれ制御盤63の制御装置に接続されている。
【0057】
制御盤63の制御装置は、冷凍機37の図示しない制御装置、及び送風機52のモータ50の図示しない制御装置がそれぞれ接続され、冷凍機37から冷媒配管36に供給する冷媒の温度及び供給量を制御して氷の温度を変え、また、モータ50の回転数を制御して氷に吹き付ける空気の量を変えることによって、温度計61の測定値が所定値となるようにしている。また、制御盤63の制御装置は、湿度計62の測定値が所定値となるように、加湿手段97のポンプ96の回転数を変えて、氷製造用水槽35内の氷に供給する水の量を制御している。
【0058】
制御盤63の制御装置には、オーバーフロー用水槽40内に設けられた温度計66及びヒータ47が接続され、温度計66による測定値が、オーバーフロー用水槽40内の水が凍る温度(つまり、0℃以下)とならないように、ヒータ47を制御してオーバーフロー用水槽40内の水を加熱している。制御盤63の制御装置は、近紫外線ランプ58、中間紫外線ランプ59、及び蛍光灯60の照射時間をそれぞれ制御するタイマーが組み込まれている。また、制御盤63には、図示しない表示手段が設けられ、温度計61、65、66、103の測定値、近紫外線ランプ58、中間紫外線ランプ59、及び蛍光灯60の照射状況等を表示している。
【0059】
高湿度保冷庫90の送風手段48a及び給水手段102の代わりに、それぞれ図4に示した送風手段70及び給水手段71を使用することもできる。ここで、図9に示すように加湿手段110は、吸水性物質の一例であるタオル111を有している。タオル111は、上部が天井16に取付けられ、下部がオーバーフロー用水槽40内に貯留された水に浸漬されて含水される。
【0060】
また、高湿度保冷庫90の送風手段48a、加湿手段97、及び給水手段102の代わりに、それぞれ図10に示す送風手段120、加湿手段121、給水手段122を使用することもできる。送風手段120は、密閉容器11の天井16から隙間を有して配置され、下方に設置された氷製造用水槽35に送風するファン72と、ファン72からの空気を氷製造用水槽35内に導くフード91とを有している。また、加湿手段は121は、ファン72と天井16との間に配置され、ファン72の上部に載置され、水を貯留する加湿用水槽123と加湿用水槽123内の貯留された水に先端部が浸漬されて含水される吸水性物質の一例であるタオル111を有している。
【0061】
更に、給水手段122は、オーバーフロー用水槽40に設けられた排水口40cに接続される水供給管41と、水供給管41に設けられるポンプ42とを備えている。水供給管41は、先端に氷製造用水槽35の上方の中央部に配置される複数の小孔99を有するシャワーヘッド100が接続され、オーバーフロー用水槽40内に貯留される水を氷製造用水槽35に直接供給する。ファン72から氷製造用水槽35内に吹き付けられる空気は、まず、シャワーヘッド100の小孔99からの水によって加湿され、氷製造用水槽35内の氷で冷却され、フード91の送風口92から含水されたタオル111に導かれ、タオル111を通過する際に更に加湿される。
【0062】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る高湿度保冷庫90を使用した冷却方法について説明する。
扉30を開け、水の入っている花瓶88に入れたチューリップの切り花Pを密閉容器11内に搬入する。冷凍機37から冷媒供給管38を介して、冷媒配管36に例えば−30℃に冷却された冷媒を供給して冷却し、予め氷製造用水槽35内に貯留されている水を凍らせて氷を製造する。
【0063】
次に、予めオーバーフロー用水槽40内に貯留されている水を加湿手段97のポンプ96を駆動し、水供給管95aを介してパイプ状部材94の小孔93から受皿95に供給する。受皿95内の水は、受皿95の排水口98から水供給管101を介して氷製造用水槽35内の氷に供給され、氷製造用水槽35内の氷を解かすと共に、供給された水を冷却する。氷製造用水槽35内の氷に過剰に供給された水は、氷製造用水槽35から溢れてオーバーフロー用水槽40に供給される。オーバーフロー用水槽40内の温度計66の測定値が0℃以下となりそうなときには、制御盤63内の制御装置がヒータ47を作動させて、オーバーフロー用水槽40内の水を加熱する。
【0064】
更に、送風手段48aの送風機52のモータ50を駆動して、シロッコファン49を回転し、密閉容器11内の高温で低湿度の空気α(12℃よりも高く、90%RHよりも低い、例えば、20℃、50%RH)が、送風機52の吸気口54から吸い込まれ、更に、吐出口55を介して吹付具53に送られる。空気αの温度及び湿度は、それぞれ温度計61、湿度計62によって測定している。更に、空気αは、吹付具53の吐出孔56から氷製造用水槽35で製造された氷に吹き付けられて冷却されると共に、氷を解かして加湿される。更に、吐出孔56から排出される空気は、シャワーヘッド100の小孔99から氷製造用水槽35内の氷に供給されている水に接触して加湿される。
【0065】
空気αは、水と接触して加湿され、更に氷と接触して冷却されると共に加湿されて、低温で高湿度(例えば、18℃で55%RH)の空気βとなる。このとき、空気βは18℃における水の飽和水蒸気量が下がるので、相対湿度は上昇する。なお、空気αに含まれる水蒸気量が空気βの飽和水蒸気量よりも大きい場合には、空気内の水が凝縮し水滴となり、空気中の水分量が減るので絶対湿度は減少する。なお、この場合の相対湿度は100%である。次に、空気βは、フード91の送風口92を通り、パイプ状部材94の小孔93から供給される水に接触して更に加湿されて、低温で高湿度(例えば、18℃で65%RH)の空気γとなる。
【0066】
空気γは再び密閉容器11内の空気αと混ざり、温度が上がり、湿度が下がる。更に、この混合した空気は、再び送風機52の吸気口54から吸い込まれ、冷却及び加湿される。温度計61及び湿度計62での測定値、つまり、密閉容器11内が、0℃を超え12℃以下で相対湿度が90〜100%RH(例えば、3℃で98%RH)となるまで、以上の作業を繰り返し行う。
【0067】
密閉容器11内の空気が、低温で高湿度(例えば、3℃で98%RH)の状態となった場合には、冷凍機37からの冷媒配管36への冷媒の供給を停止、加湿手段97を介して行われる氷製造用水槽35内への給水の停止、及び送風手段48aによる氷製造用水槽35内の氷への送風停止等を行い、密閉容器11内の空気の温度を0℃以下にならないようにする。また、切り花Pは、低温状態で生理活性を抑えられ、また、高湿度状態で呼吸と水の蒸散が抑制されるので、鮮度を保持できる。
【0068】
本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の高湿度保冷庫及び冷却方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、前記実施の形態の高湿度保冷庫において、密閉容器は、扉の内側に更に内扉を設けて二重扉にし、保存物の出し入れ時に密閉容器内の温度と湿度を一定に保つようにしてもよい。また、密閉容器内に空気を循環させ易くするために邪魔板等を設けてもよい。
【0069】
また、冷却ユニットとしては、蒸気圧縮式冷凍機又は吸収式冷凍機等の冷凍機で0℃以下、例えば、−5〜−30℃に冷却された冷媒を通す冷媒配管が内部に設けられたもの、又は、ペルチェ素子を用いて電子冷却を行う装置等も使用できる。送風手段としては、圧縮機も使用できる。含水した吸水性物質としては、タオル等の布以外に、スポンジ又は紙等も使用できる。加熱手段としては、ヒータの他に、パイプ状部材等に気体又は液体を供給するもの等が使用でき、また、冷凍機の圧縮側の熱量を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る高湿度保冷庫の説明図である。
【図2】同高湿度保冷庫の要部断面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】同高湿度保冷庫の変形例に係る送風手段及び給水手段の説明図である。
【図5】同高湿度保冷庫の変形例に係るオーバーフロー用水槽及び給水手段の説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る高湿度保冷庫の説明図である。
【図7】同高湿度保冷庫の要部断面図である。
【図8】図6のB−B断面図である。
【図9】同高湿度保冷庫の第1の変形例に係る送風手段、給水手段、及び加湿手段の説明図である。
【図10】同高湿度保冷庫の第2の変形例に係る送風手段、給水手段、及び加湿手段の説明図である。
【符号の説明】
【0071】
10:高湿度保冷庫、11:密閉容器、12〜15:側壁、16:天井、17:床、18〜23:ステンレス板、24〜29:断熱材、30:扉、31〜34:脚部、35:氷製造用水槽、36:冷媒配管、37:冷凍機、38:冷媒供給管、39:製氷手段、40:オーバーフロー用水槽、40a、40b、40c:排水口、41:水供給管、42:ポンプ、43:給水手段、44:小孔、45:パイプ状部材、46:ソケット、47:ヒータ、48、48a:送風手段、49:シロッコファン、50:モータ、51:ケーシング、52:送風機、52a:導風管、53:吹付具、53a:フード、54:吸気口、55:吐出口、56:吐出孔、57:貫通孔、58:近紫外線ランプ、59:中間紫外線ランプ、60:蛍光灯、61:温度計、62:湿度計、63:制御盤、64〜66:温度計、70:送風手段、71:給水手段、72:ファン、73:フード、74:ファン、75、75a:水中ポンプ、76:水供給管、80:オーバーフロー用水槽、81:床部材、82:給水手段、83:水供給管、84:受皿、85:排水口、86:配水管、88:花瓶、90:高湿度保冷庫、90a:導風管、91:フード、92:送風口、93:小孔、94:パイプ状部材、95:受皿、95a:水給水管、96:ポンプ、97:加湿手段、98:排水口、99:小孔、100:シャワーヘッド、101:水供給管、102:給水手段、103:温度計、110:加湿手段、111:タオル、120:送風手段、121:加湿手段、122:給水手段、123:加湿用水槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生花を含む植物、青果物、及びそれ以外の生鮮食料品のいずれか1以上の保存物を90%RH以上の相対湿度、かつ、0℃を超え12℃以下の温度で保存する高湿度保冷庫であって、
前記保存物を貯蔵する密閉容器と、
前記密閉容器内に設けられる氷製造用水槽、及び、該氷製造用水槽内に配置されて前記氷製造用水槽内に貯留された水を凍らせる冷却ユニットを備えた製氷手段と、
前記氷製造用水槽の下方又は下部に設けられ、前記氷製造用水槽から溢れた水を貯留するオーバーフロー用水槽と、
前記オーバーフロー用水槽内に貯留される水を前記氷製造用水槽に供給する水供給管、及び、該水供給管に設けられるポンプを備えた給水手段と、
前記氷製造用水槽内で製造された氷に前記密閉容器内を循環する空気を吹き付ける送風手段とを有することを特徴とする高湿度保冷庫。
【請求項2】
請求項1記載の高湿度保冷庫において、更に前記氷製造用水槽内の氷に吹き付けられた空気を水と接触させる加湿手段を有することを特徴とする高湿度保冷庫。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の高湿度保冷庫において、前記オーバーフロー用水槽には、該オーバーフロー用水槽内の水が凍らないようにする加熱手段が設けられていることを特徴とする高湿度保冷庫。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の高湿度保冷庫において、前記冷却ユニットは冷凍機及び該冷凍機に接続されて該冷凍機で冷却された冷媒を授受する冷媒配管を有し、該冷媒配管は前記氷製造用水槽内の上端部側に配置されていることを特徴とする高湿度保冷庫。
【請求項5】
生花を含む植物、青果物、及びそれ以外の生鮮食料品のいずれか1以上の保存物を貯蔵する密閉容器内に氷製造用水槽を設け、該氷製造用水槽内に水を供給しながら冷却して氷を製造し、該氷に前記密閉容器内の空気を直接吹き付けて、前記氷を解かして循環する空気を冷却する保存物の冷却方法であって、
前記氷に吹き付ける風量及び前記氷製造用水槽に供給する水量のいずれか一方又は双方を制御して、前記密閉容器内の相対湿度を90%RH以上、かつ、温度を0℃を超え12℃以下に保つことを特徴とする冷却方法。
【請求項6】
請求項5記載の冷却方法において、更に前記氷に吹き付けた空気を別の水と接触させて加湿することを特徴とする冷却方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−3052(P2006−3052A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−182888(P2004−182888)
【出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(502334744)株式会社八重工業 (4)
【出願人】(502336139)株式会社メジャー (4)
【Fターム(参考)】