説明

高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物

【課題】
射出成形時の成形流動性を大幅に改善された、射出成形性に優れる高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】
分子量が400以上である下記一般式(1):
HO−(RO)−H (1)
で表されるポリエーテル化合物、及び下記一般式(2):
H−(OR−O−Ph−X−Ph−O−(RO)−H (2)
で表されるポリエーテル化合物からなる群から選択される少なくとも1種であるポリエーテルセグメントと、アルキレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリアルキレンテレフタレート系セグメントとからなるポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)及び、単体での熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導性無機化合物(B)を含有し、かつ得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率が0.8W/mK以上であることを特徴とする、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却固化が速いため射出成形が困難であるという高熱伝導性樹脂の課題を画期的に改良した、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物に関する。更に詳しくはポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)、及び高熱伝導性無機化合物からなる、高熱伝導性と優れた成形加工性とを併せ持った樹脂組成物及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂組成物をパソコンやディスプレーの筐体、電子デバイス材料、自動車の内外装、など種々の用途に使用する際、プラスチックは金属材料など無機物と比較して熱伝導性が低いため、発生する熱を逃がしづらいことが問題になることがある。このような課題を解決するため、高熱伝導性無機物を大量に熱可塑性樹脂中に配合することで、高熱伝導性樹脂組成物を得ようとする試みが広くなされている。高熱伝導性無機化合物としては、グラファイト、炭素繊維、アルミナ、窒化ホウ素、などの高熱伝導性無機物を、通常は30体積%以上、さらには50体積%以上もの高含有量で樹脂中に配合する必要がある。
しかしながら、高熱伝導性熱可塑性樹脂を通常良く用いられる射出成形法で成形しようとすると、その高熱伝導性が故に金型内に流入した樹脂が高速に冷却固化してしまい、金型内のゲート部が固化した後は全く型内に樹脂を流入させることができなくなるという課題がある。これを解決するためには、高熱伝導性熱可塑性樹脂を射出成形する際には、ホットランナーと特殊形状のゲートの組み合わせなど特殊な金型が必要となり、汎用金型での成形が不可能であることが普及の妨げとなっている。
フィラーを高充填した高熱伝導性熱可塑性樹脂の射出成形性を向上させるため、例えば特許文献1では室温で液体の有機化合物を添加する方法が例示されている。しかしながらこのような方法では、射出成形時に液体の有機化合物がブリードアウトし、金型を汚染するなどの課題がある。その他種々の成形性改良法が検討されているが、未だ有効な手法が見出されていないのが現状である。
【特許文献1】特開2003−41129号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記現状に鑑み、高熱伝導性熱可塑性樹脂の金型内冷却時の固化速度を遅くすることで、汎用射出成形用金型でも高熱伝導性熱可塑性樹脂の成形を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、特定構造のポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体が有する、固化速度が遅いという特性を有効に活用することで、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物の金型内冷却時の固化速度を大幅に遅延させうることを見出し、本発明にいたった。
【0005】
すなわち本発明は、
ポリエーテルセグメントが、分子量が400以上である下記一般式(1):
HO−(RO)−H (1)
(式中、Rは炭素数2〜5のアルキル基を、kは5以上の整数を表し、k個のRはそれぞれ異なっていてもよい。)
で表されるポリエーテル化合物、及び下記一般式(2):
H−(OR−O−Ph−X−Ph−O−(RO)−H (2)
(式中、Rは炭素数2〜5のアルキル基を、Xは−C(CH−又は−SO−を、PhはCを表し、m及びnはそれぞれ1以上の整数であって、かつm+nは3以上である整数を表し、m及びn個のRはそれぞれ異なってもよい。)
で表されるポリエーテル化合物からなる群から選択される少なくとも1種であるポリエーテルセグメントと、アルキレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリアルキレンテレフタレート系セグメントとからなるポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)及び、単体での熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導性無機化合物(B)を含有し、かつ得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率が0.8W/mK以上であることを特徴とする、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項1)であり、
前記ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)が、ポリエーテルセグメントと、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリエチレンテレフタレート系セグメントとからなるポリエチレンテレフタレート系ブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。(請求項2)であり、
ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)が、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリエチレンテレフタレート系セグメント97〜20重量%とポリエーテルセグメント3〜80重量%からなるポリエチレンテレフタレート系ブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項3)であり、
ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)、高熱伝導性無機化合物(B)、熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)を含有し、かつ得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率が0.8W/mK以上であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項4)であり、
熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)が、ポリアルキレンテレフタレート熱可塑性ポリエステル樹脂であることを特徴とする、請求項4記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項5)であり、
ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)が、ポリエーテルセグメントと、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリエチレンテレフタレート系セグメントとからなるポリエチレンテレフタレート系ブロック共重合体であり、熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)が、ポリエチレンテレフタレート熱可塑性ポリエステル樹脂であることを特徴とする、請求項4または5に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項6)であり、
(B)が、グラファイト、導電性金属粉、軟磁性フェライト、炭素繊維、導電性金属繊維、酸化亜鉛、からなる群より選ばれる1種以上の高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、請求項1〜6いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項7)であり、
(B)が、単体での熱伝導率が20W/m・K以上の電気絶縁性高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、請求項1〜6いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項8)であり、
(B)が、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、ダイヤモンド、からなる群より選ばれる1種以上の高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、請求項1〜6または8いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項9)であり、
前記{ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)+熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)}/高熱伝導性無機化合物(B)の組成物中での{(A)+(C)}/(B)体積比が、5/95〜95/5の範囲であることを特徴とする、請求項1〜8いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物(請求項10)であり、
請求項1〜10いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を射出成形して作成された、高熱伝導性成形体(請求項11)である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の方法を用いることにより、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を射出成形した際に金型内冷却時の固化速度を遅延させることで、射出成形時の成形加工性を大幅に改良することに成功した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に用いられるポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)は、ポリエーテルセグメントが、分子量が400以上である下記一般式(1):
HO−(RO)−H (1)
(式中、Rは炭素数2〜5のアルキル基を、kは5以上の整数を表し、k個のRはそれぞれ異なっていてもよい。)
で表されるポリエーテル化合物、及び下記一般式(2):
H−(OR−O−Ph−X−Ph−O−(RO)−H (2)
(式中、Rは炭素数2〜5のアルキル基を、Xは−C(CH−又は−SO−を、PhはCをを表し、m及びnはそれぞれ1以上の整数であって、かつm+nは3以上である整数を表し、m及びn個のRはそれぞれ異なってもよい。)
で表されるポリエーテル化合物からなる群から選択される少なくとも1種であるポリエーテルセグメントと、アルキレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリアルキレンテレフタレート系セグメントとからなるポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体である。ポリエーテルセグメント、ポリアルキレンテレフタレートセグメント、それぞれの製造方法は特に限定されず、公知の重合方法を用いることができる。
【0008】
共重合成分のうち、ポリアルキレンテレフタレートセグメントは、酸成分としてテレフタル酸又はそのエステル形成能を有する誘導体を用い、グリコール成分としてアルキレングリコール又はそのエステル形成能を有する誘導体を用いて得られるアルキレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするセグメントである。本発明において、アルキレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするとは、ポリエステルセグメントの内、80モル%以上がアルキレンテレフタレートセグメントから構成されているもののことをいう。
【0009】
ポリアルキレンテレフタレートセグメントの重合方法としては例えば、まずテレフタル酸とエチレングリコールやテトラメチレングリコールなどのアルキレングリコールとを無触媒又は触媒の存在下に直接エステル化させる方法、テレフタル酸ジメチルとアルキレングリコールとを触媒の存在下にエステル交換させる方法などによって低重合度の重合体を合成し、次いでこの低重合度の重合体とアンチモン・チタン・ゲルマニウムなどの触媒化合物とを、例えば約230〜300℃程度の温度、例えば1Torr以下の真空下に保ち、溶融重縮合あるいは固相重縮合によって縮合重合を行い、ポリアルキレンテレフタレートセグメントを製造する方法を挙げることができる。
アルキレングリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、デカンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、等の化合物又はそのエステル形成能を有する誘導体が挙げられる。
【0010】
ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)を構成するアルキレンテレフタレートセグメントは、結晶化速度が最適であり、成形性を大幅に改善しうるという点から、ポリエチレンテレフタレートセグメントであることが好ましい。
【0011】
共重合成分のうちポリエーテルセグメントは、下記一般式(1):
HO−(RO)−H (1)
(式中、Rは炭素数2〜5のアルキル基を、kは5以上の整数を表し、k個のRはそれぞれ異なっていてもよい。)
で表されるポリエーテル化合物、及び下記一般式(2):
H−(OR−O−Ph−X−Ph−O−(RO)−H (2)
(式中、Rは炭素数2〜5のアルキル基を、Xは−C(CH−又は−SO−を、PhはCを表し、m及びnはそれぞれ1以上の整数であって、かつm+nは3以上である整数を表し、m及びn個のRはそれぞれ異なってもよい。)
で表されるポリエーテル化合物からなる群から選択される少なくとも1種であるセグメントで、分子量400以上のものである。これら以外のポリエーテル化合物を使用すると、ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体の結晶化速度が促進され本願の効果が得られない場合がある。
【0012】
該ポリエーテルセグメントの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド・プロピレンオキシド)共重合体、ポリ(エチレンオキシド・テトラヒドロフラン)共重合体、ポリ(エチレンオキシド・プロピレンオキシド・テトラヒドロフラン)共重合体、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどのビスフェノール類のエチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフランなどのアルキレンオキシド付加重合体などが挙げられる。
【0013】
上記のポリエーテルセグメントとしては、ビスフェノール類のアルキレンオキシド付加重合体の少なくとも1種からなることが、熱安定性、耐熱耐久性の点から好ましい。これらのなかでは、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノールAのテトラヒドロフラン付加重合体、ビスフェノールAの(エチレンオキシド・プロピレンオキシド)付加重合体、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加重合体、ビスフェノールSのプロピレンオキシド付加重合体、ビスフェノールSのテトラヒドロフラン付加重合体、ビスフェノールSの(エチレンオキシド・プロピレンオキシド)付加重合体などが好ましく用いられる。
【0014】
該ポリエーテル化合物の分子量は、400以上であり、好ましくは600〜6000、更に好ましくは800〜3000である。分子量が400未満の場合は、得られるブロック共重合体の機械的強度、成形性などが低下するので好ましくない。6000を越えると、ポリエチレンテレフタレート系樹脂との相溶性が低下し、反応性や得られた共重合体の機械的強度などの低下が見られることがある。該ポリエーテル化合物は、単独あるいは異種及び/又は分子量の異なる2種以上を混合して用いられる。
【0015】
ポリエーテルセグメントとポリアルキレンテレフタレート系セグメントとの割合は、両者を合わせたものを100重量%としたときのポリエーテルセグメントの割合が3〜80重量%であり、好ましくは10〜70重量%、更に好ましくは15〜60重量%である。共重合量は3重量%未満では、成形加工性の改良効果が小さい。また、80重量%を越えると、耐熱耐久性、耐湿耐久性、成形性、等が低下する傾向がある。
【0016】
ポリアルキレンテレフタレート系セグメントとポリエーテルセグメントとを重縮合する方法は特に制限はなく、例えば、予め溶融されているポリアルキレンテレフタレート系樹脂中に、ポリエーテル化合物を添加し、減圧して溶融重縮合する方法する方法、予めポリエーテルを減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下及び/又は酸化防止剤存在下に約80〜250℃に加熱しておき、その中にポリアルキレンテレフタレート系樹脂を断続的あるいは連続的あるいは一括に添加し、減圧して溶融重縮合する方法、ペレット状、フレーク状あるいは粉体状のポリアルキレンテレフタレート系樹脂にポリエーテル化合物をドライブレンドし、押出機、ニーダーなどの混練機で溶融重縮合する方法などが挙げられる。このような方法で溶融重縮合した後、更に固相重合する方法も好ましく用いることができる。
【0017】
ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)を製造する際には、着色、熱劣化、酸化劣化などを抑制するなどの目的でフェノール系酸化防止剤、燐系化合物または酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などの酸化防止剤、熱安定剤、着色防止剤などを反応前、反応途中あるいは反応終了後に添加してもよい。さらに、色調を改良するなどの目的でリン酸化合物、例えばリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸トリメチル、リン酸メチルジエチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリベンジル、リン酸トリシクロヘキシル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸メチルジエチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリイソプロピル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリフェニル等の化合物をエステル化反応あるいはエステル交換反応後に添加してもよい。
【0018】
また、ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)には、反応性や得られたブロック共重合体の機械的特性、化学的特性を損なわない範囲で、共重合可能な公知の成分が使用できる。該成分としては炭素数8〜22の2価以上の芳香族カルボン酸、炭素数4〜12の2価以上の脂肪族カルボン酸、更には炭素数8〜15の2価以上の脂環式カルボン酸などのカルボン酸類及びこれらのエステル形成性誘導体、炭素数6〜40の芳香族化合物であって分子内に2個以上の水酸基を有する化合物類、及びこれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
【0019】
具体的には、カルボン酸類としては、テレフタル酸以外に、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタンアントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、デカヒドロナフタレンジカルボン酸などのカルボン酸又はそのエステル形成能を有する誘導体が挙げられ、水酸基含有化合物類としては、アルキレングリコールの他に、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、ハイドロキノン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の化合物又はそのエステル形成能を有する誘導体が挙げられる。
【0020】
また、p−オキシ安息香酸、p−ヒドロキシエトキシ安息香酸のようなオキシ酸及びこれらのエステル形成性誘導体、ε−カプロラクトンのような環状エステル等も使用可能である。上記成分の共重合量としては概ね20重量%以下であり、好ましくは15重量%以下、更に好ましくは10重量%以下である。
【0021】
更に、本発明では、反応性基を少なくとも2個有するエポキシ化合物、有機カルボン酸及び/又はその無水物、オキサゾリン化合物、イソシアネート化合物などの群から選ばれる多官能性化合物を添加することにより、高分子量の共重合体を比較的短時間で得ることができ、ブロック共重合体の熱安定性の点からも有用である。
【0022】
これらエポキシ化合物の具体例としては、例えばビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、多価の脂肪族、脂環式、芳香族グリシジルエーテル化合物、多価の脂肪族、脂環式、芳香族グリシジルエステル化合物、不飽和基を複数有する脂肪族もしくは脂環式化合物を酢酸と過酢酸とエポキシ化したエポキシ化合物、多価の脂肪族、脂環式、芳香族グリシジルアミン化合物などが挙げられる。
【0023】
その具体例としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、エリスリットポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ジグリシジルアニリン、テトラグリシジル4,4’−ジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、高級油脂のポリエポキシ化物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、エポキシ化フェノールノボラック、エポキシ化クレゾールノボラックなどが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0024】
有機カルボン酸としては例えば、トリトメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられ、有機カルボン酸の無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)チオエーテル二無水物、ビスフェノールAビスエーテル二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などのテトラカルボン酸の二無水物などが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0025】
オキサゾリン化合物としては、例えば2,2’−メチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−プロピレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ビス(2−オキサゾリン)、トリ(2−オキサゾリン)メタン、トリ(2−オキサゾリン)エタン、トリ(2−オキサゾリン)ベンゼンなどが挙げられ、これらは単独又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0026】
イソシアネート化合物としては、例えばヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0027】
上記多官能性化合物を添加する方法には、特に制限はなく、通常の方法が利用される。例えば、重縮合終了前の任意の段階で添加する方法、重縮合終了後、不活性ガス雰囲気下で添加する方法、共重合体をペレット状、フレーク状、あるいは粉体状に取り出した後、添加し、押出機あるいはニーダーで溶融混合する方法などが挙げられる。
【0028】
得られるポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体の固有粘度は、好ましくは0.35以上であり、更に好ましくは0.40〜2.00、より好ましくは0.50〜1.20である。固有粘度が0.35未満の場合、得られたブロック共重合体の機械的特性、成形性が低下する場合が有り、2.00を越えるとブロック共重合体の成形性が低下することがある。
【0029】
本発明では、ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)とともに、必要に応じて熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)を併用することができる。熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)としては、非晶性脂肪族ポリエステル、非晶性半芳香族ポリエステル、非晶性全芳香族ポリエステルなどの非晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂、結晶性脂肪族ポリエステル、結晶性半芳香族ポリエステル、結晶性全芳香族ポリエステルなどの結晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂、液晶性脂肪族ポリエステル、液晶性半芳香族ポリエステル、液晶性全芳香族ポリエステルなどの液晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂、などを用いることができる。
【0030】
熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)のうち、液晶性熱可塑性ポリエステル系樹脂として好ましい構造の具体例は、
−O−Ph−CO−構造単位(I)、
−O−R−O−構造単位(II)、
−O−CHCH−O−構造単位(III)および
−CO−R−CO−構造単位(IV)
の構造単位からなる液晶性ポリエステルが挙げられる。
(ただし式中のR
【0031】
【化1】

から選ばれた1種以上の基を示し、R
【0032】
【化2】

から選ばれた1種以上の基を示す(ただし式中Xは水素原子または塩素原子を示す)。
上記構造単位(I)はp−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位であり、構造単位(II)は4,4’−ジヒドロキシビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルから選ばれた一種以上の芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位を、構造単位(III)はエチレングリコールから生成した構造単位を、構造単位(IV)はテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸から選ばれた一種以上の芳香族ジカルボン酸から生成した構造単位を各々示す。
【0033】
これらのなかでも、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位からなる液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、芳香族ジヒドロキシ化合物から生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステル、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造単位、エチレングリコールから生成した構造単位、テレフタル酸から生成した構造単位の液晶性ポリエステルを特に好ましく用いることができる。
【0034】
熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)のうち、結晶性熱可塑性ポリエステルの具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートおよびポリエチレン−1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどのほか、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレートおよびポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート/イソフタレートなどの結晶性共重合ポリエステル等が挙げられる。
【0035】
これら結晶性ポリエステルの中でも、結晶化速度が最適であり、成形性を大幅に改善しうるという点、及びポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)との相溶性に優れるという点から、ポリアルキレンテレフタレート熱可塑性ポリエステル樹脂であることが好ましい。中でもポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリ1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、等を用いることが好ましい。
【0036】
さらにより成形性を最適化しうるという点、及び得られた組成物の強度や剛性に優れるという点から、熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)はポリエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0037】
本発明の熱可塑性樹脂組成物における、ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)と熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)の使用比率は、結晶化速度と機械的特性とのバランスに優れるという観点から、好ましくは重量比で(A)/(C)=100/0〜1/99、より好ましくは(A)/(C)=100/0〜10/90、特に好ましくは(A)/(C)=100/0〜20/80、最も好ましくは(A)/(C)=100/0〜30/70である。
【0038】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、必要に応じてポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)、熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)、以外の各種熱可塑性樹脂をさらに用いることができる。(A)(C)以外の熱可塑性樹脂は、合成樹脂であっても自然界に存在する樹脂であっても良い。(A)(C)以外の熱可塑性樹脂を用いる場合の使用量は、成形性と機械的特性とのバランスを考慮すると、(A)(C)の合計100重量部に対して好ましくは0〜100重量部、より好ましくは0〜50重量部である。
【0039】
(A)(C)以外の熱可塑性樹脂としては、ポリスチレンなどの芳香族ビニル系樹脂、ポリアクリロニトリルなどのシアン化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニルなどの塩素系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のポリメタアクリル酸エステル系樹脂やポリアクリル酸エステル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンや環状ポリオレフィン樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ酢酸ビニルなどのポリビニルエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂及びこれらの誘導体樹脂、ポリメタクリル酸系樹脂やポリアクリル酸系樹脂及びこれらの金属塩系樹脂、ポリ共役ジエン系樹脂、マレイン酸やフマル酸及びこれらの誘導体を重合して得られるポリマー、マレイミド系化合物を重合して得られるポリマー、脂肪族ポリアミドや脂肪族−芳香族ポリアミドや全芳香族ポリアミドなどのポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアルキレンオキシド系樹脂、セルロース系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリケトン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂、フェノキシ系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、液晶ポリマー、及びこれら例示されたポリマーのランダム・ブロック・グラフト共重合体、などが挙げられる。これら(A)(C)以外の熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上の複数を組み合わせて用いることができる。2種以上の樹脂を組み合わせて用いる場合には、必要に応じて相溶化剤などを添加して用いることもできる。これら(A)(C)以外の熱可塑性樹脂は、目的に応じて適宜使い分ければよい。
【0040】
これら(A)(C)以外の熱可塑性樹脂の中でも、樹脂の一部あるいは全部が結晶性あるいは液晶性を有する熱可塑性樹脂であることが、得られた樹脂組成物の熱伝導率が高くなる傾向がある点や、無機化合物(B)を樹脂中に含有させることが容易である点から好ましい。これら結晶性あるいは液晶性を有する熱可塑性樹脂は、樹脂全体が結晶性であっても、ブロックあるいはグラフト共重合体樹脂の分子中における特定ブロックのみが結晶性や液晶性であるなど樹脂の一部のみが結晶性あるいは液晶性であっても良い。樹脂の結晶化度には特に制限はない。また(A)(C)以外の熱可塑性樹脂として、非晶性樹脂と結晶性あるいは液晶性樹脂とのポリマーアロイを用いることもできる。樹脂の結晶化度には特に制限はない。
【0041】
樹脂の一部あるいは全部が結晶性あるいは液晶性を有する(A)(C)以外の熱可塑性樹脂の中には、結晶化させることが可能であっても、単独で用いたり特性の成形加工条件で成形したりすることにより場合によっては非晶性を示す樹脂もある。このような樹脂を用いる場合には、無機化合物(B)の添加量や添加方法を調整したり、延伸処理や後結晶化処理をするなど成形加工方法を工夫したりすることにより、樹脂の一部あるいは全体を結晶化させることができる場合もある。
【0042】
結晶性あるいは液晶性を有する熱可塑性樹脂の中でも好ましい樹脂として、結晶性ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、液晶ポリマー、結晶性ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィン系ブロック共重合体、等を例示することができるが、これらに限らず各種の結晶性樹脂や液晶性樹脂を用いることができる。
【0043】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に配合する、単体での熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導性無機化合物(B)は、単体での熱伝導率が10W/m・K以上のものを用いることができる。10W/m・K未満では、組成物の熱伝導率を向上させる効果に劣るため好ましくない。単体での熱伝導率は、好ましくは12W/m・K以上、さらに好ましくは15W/m・K以上、最も好ましくは20W/m・K以上、特に好ましくは30W/m・K以上のものが用いられる。高熱伝導性無機化合物(B)単体での熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、一般的には3000W/m・K以下、さらには2500W/m・K以下、のものが好ましく用いられる。
【0044】
組成物として特に電気絶縁性が要求されない用途に用いる場合には、高熱伝導性無機化合物(B)としては金属系化合物や導電性炭素化号物などが好ましく用いられる。これらの中でも、熱伝導性に優れることから、グラファイト、炭素繊維、などの導電性炭素材料、各種金属を微粒子化した導電性金属粉、各種金属を繊維状に加工した導電性金属繊維、各種フェライト類、酸化亜鉛、などの金属酸化物、を好ましく用いることができる。
【0045】
組成物として電気絶縁性が要求される用途に用いる場合には、高熱伝導性無機化合物(B)としては電気絶縁性を示す化合物が好ましく用いられる。電気絶縁性とは具体的には、電気抵抗率1Ω・cm以上のものを示すこととするが、好ましくは10Ω・cm以上、より好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは1010Ω・cm以上、最も好ましくは1013Ω・cm以上のものを用いるのが好ましい。電気抵抗率の上限には特に制限は無いが、一般的には1018Ω・cm以下である。本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体の電気絶縁性も上記範囲にあることが好ましい。
【0046】
高熱伝導性無機化合物(B)のうち、電気絶縁性を示す化合物としては具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化銅、亜酸化銅、等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ダイヤモンド、等の絶縁性炭素材料、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、等の金属水酸化物、を例示することができる。
【0047】
中でも電気絶縁性に優れることから、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、等の金属窒化物、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、等の金属酸化物、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、等の金属水酸化物、ダイヤモンド、等の絶縁性炭素材料、をより好ましく用いることができる。これらは単独あるいは複数種類を組み合わせて用いることができる。
【0048】
高熱伝導性無機化合物(B)の形状については、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、微粒子状、ナノ粒子、凝集粒子状、チューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状、液体、など種々の形状を例示することができる。またこれら高熱伝導性無機化合物(B)は天然物であってもよいし、合成されたものであってもよい。天然物の場合、産地等には特に限定はなく、適宜選択することができる。これら高熱伝導性無機化合物(B)は、1種類のみを単独で用いてもよいし、形状、平均粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種以上を併用してもよい。
【0049】
これら高熱伝導性無機化合物(B)は、樹脂と無機化合物との界面の接着性を高めたり、作業性を容易にしたりするため、シラン処理剤等の各種表面処理剤で表面処理がなされたものであってもよい。表面処理剤としては特に限定されず、例えばシランカップリング剤、チタネートカップリング剤、等従来公知のものを使用することができる。中でもエポキシシラン等のエポキシ基含有シランカップリング剤、及び、アミノシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、ポリオキシエチレンシラン、等が樹脂の物性を低下させることが少ないため好ましい。無機化合物の表面処理方法としては特に限定されず、通常の処理方法を利用できる。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂組成物におけるポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)+熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)と高熱伝導性無機化合物(B)の使用量は、{(A)+(C)}/(B)体積比が5/95〜95/5となるよう含有することが好ましい。{(A)+(C)}の使用量が多いほど、得られる成形品の耐衝撃性、表面性、成形加工性が向上し、溶融混練時の樹脂との混練が容易になる傾向がある、という観点、及び(B)化合物が多いほど熱伝導率が向上する傾向があり好ましいという観点から、体積比は好ましくは80/20〜10/90、より好ましくは75/25〜15/85、さらに好ましくは70/30〜20/80、最も好ましくは65/35〜25/75である。
【0051】
本発明の熱可塑性樹脂組成物には、樹脂組成物の耐熱性や機械的強度をより高めるため、本発明の特徴を損なわない範囲で(B)以外の無機化合物を更に添加することができる。このような無機化合物としては特に限定ない。但しこれら無機化合物を添加すると、熱伝導率に影響をおよぼす場合があるため、添加量などには注意が必要である。 これら無機化合物も表面処理がなされていてもよい。これらを使用する場合、その添加量は、ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)100重量部に対して、100重量部以下であることが好ましい。添加量が100重量部を超えると、耐衝撃性が低下するうえ、成形加工性が低下する場合もある。好ましくは50重量部以下であり、より好ましくは10重量部以下である。また、これら無機化合物の添加量が増加するとともに、成形品の表面性や寸法安定性が悪化する傾向が見られるため、これらの特性が重視される場合には、無機化合物の添加量をできるだけ少なくすることが好ましい。
【0052】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物をより高性能なものにするため、フェノール系安定剤、イオウ系安定剤、リン系安定剤等の熱安定剤等を、単独又は2種類以上を組み合わせて添加することが好ましい。更に必要に応じて、一般に良く知られている、安定剤、滑剤、離型剤、可塑剤、リン系以外の難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、染料、帯電防止剤、導電性付与剤、分散剤、相溶化剤、抗菌剤等を、単独又は2種類以上を組み合わせて添加してもよい。
【0053】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては特に限定されるものではない。例えば、上述した成分や添加剤等を乾燥させた後、単軸、2軸等の押出機のような溶融混練機にて溶融混練することにより製造することができる。また、配合成分が液体である場合は、液体供給ポンプ等を用いて溶融混練機に途中添加して製造することもできる。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の成形加工法としては特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、ブロー成形、押出成形、真空成形、プレス成形、カレンダー成形等が利用できる。これらの中でも成形サイクルが短く生産効率に優れること、本組成物が射出成形時の流動性が良好であるという特性を有していること、などから、射出成形法により射出成形することが好ましい。
【0055】
本願発明の組成物は、実施例でも示すとおり良好な熱伝導性を示し、0.8W/m・K以上、好ましくは1W/m・K以上、さらに好ましくは1.3W/m・K以上の成形体を得ることが可能である。
【0056】
本発明の樹脂組成物においては、必要に応じ造核剤などの結晶化促進剤を添加することにより、成形性をさらに改善することができる。
【0057】
本発明において用いられる結晶化促進剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、尿素誘導体、ソルビトール系化合物、高級脂肪酸塩、芳香族脂肪酸塩等が挙げられ、これらは1種又は2種以上用いることができる。なかでも結晶化促進剤としての効果が高いことから、高級脂肪酸アミド、尿素誘導体、ソルビトール系化合物が好ましい。
【0058】
上記高級脂肪酸アミドとしては、例えば、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N−ステアリルベヘン酸アミド、N−ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、p−フェニレンビスステアリン酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸とセバシン酸の重縮合物等が挙げられ、特にベヘン酸アミドが好ましい。
【0059】
上記尿素誘導体としては、ビス(ステアリルウレイド)ヘキサン、4,4’−ビス(3−メチルウレイド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(3−シクロヘキシルウレイド)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(3−シクロヘキシルウレイド)ジシクロヘキシルメタン、4,4’−ビス(3−フェニルウレイド)ジシクロヘキシルメタン、ビス(3−メチルシクロヘキシルウレイド)ヘキサン、4,4’−ビス(3−デシルウレイド)ジフェニルメタン、N−オクチル−N’−フェニルウレア、N,N’−ジフェニルウレア、N−トリル−N’−シクロヘキシルウレア、N,N’−ジシクロヘキシルウレア、N−フェニル−N’−トリブロモフェニルウレア、N−フェニル−N’−トリルウレア、N−シクロヘキシル−N’−フェニルウレア等が例示され、特にビス(ステアリルウレイド)ヘキサンが好ましい。
【0060】
上記ソルビトール系化合物としては、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール 、1,3−ベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−プロピルベンジリデン)ソルビトール 、1,3,2,4−ジ(p−i−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−s−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−t−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エトキシベンジリデン)ソルビトール 、1,3−ベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、及び1,3,2,4−ジ(p−クロルベンジリデン)ソルビトール 等が挙げられる。これらの中で、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトールが好ましい。
【0061】
本発明の樹脂組成物における結晶化促進剤の使用量は、ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)100重量部に対し、成形性の点から、0.01〜5重量部が好ましく、0.03〜4重量部がより好ましく、0.05〜3重量部がさらに好ましい。0.01重量部未満では、結晶化促進剤としての効果が不足する可能性があり、また、5重量部を超えると、効果が飽和する可能性があることから経済的に好ましくなく、外観や物性が損なわれる可能性がある。
【0062】
このようにして得られた複合材料は、樹脂フィルム、樹脂成形品、樹脂発泡体、塗料やコーティング剤、などさまざまな形態で、電子材料、磁性材料、触媒材料、構造体材料、光学材料、医療材料、自動車材料、建築材料、等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。本発明で得られた高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物は、現在広く用いられている射出成形機や押出成形機等の一般的なプラスチック用成形機が使用可能であるため、複雑な形状を有する製品への成形も容易である。特に優れた成形加工性、高熱伝導性、という優れた特性を併せ持つことから、発熱源を内部に有する携帯電話、ディスプレー、コンピューターなどの筐体用樹脂として、非常に有用である。
【0063】
本発明の高熱伝導性樹脂組成物は、家電、OA機器部品、AV機器部品、自動車内外装部品、等の射出成形品等に好適に使用することができる。特に多くの熱を発する家電製品やOA機器において、外装材料として好適に用いることができる。
【0064】
さらには発熱源を内部に有するがファン等による強制冷却が困難な電子機器において、内部で発生する熱を外部へ放熱するために、これらの機器の外装材として好適に用いられる。これらの中でも好ましい装置として、ノートパソコンなどの携帯型コンピューター、PDA、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯型音楽プレーヤー、携帯型TV/ビデオ機器、携帯型ビデオカメラ、等の小型あるいは携帯型電子機器類の筐体、ハウジング、外装材用樹脂として非常に有用である。また自動車や電車等におけるバッテリー周辺用樹脂、家電機器の携帯バッテリー用樹脂、ブレーカー等の配電部品用樹脂、モーター等の封止用材料、としても非常に有用に用いることができる。
【0065】
本発明の高熱伝導性樹脂組成物は従来良く知られている組成物に比べて、成形加工性、耐衝撃性、さらには得られる成形体の表面性が良好であり、上記の用途における部品あるいは筐体用として有用な特性を有するものである。
【実施例】
【0066】
次に、本発明の組成物およびその成形品について、実施例に基づいて、さらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに制限されるものではない。
【0067】
製造例1:
溜出管及び攪拌器を備えた耐圧容器(容量7リットル:日本耐圧ガラス製)にポリエーテル化合物(1)(ビスフェノールAのエチレンオキシド付加重合体:平均分子量1000)を900g、フェノール系酸化防止剤(アデカスタブAO−60:旭電化工業株式会社の登録商標)を10g添加し、窒素気流で攪拌しながら200℃まで昇温した後、ポリエチレンテレフタレート(1)((株)ベルポリエステルプロダクツ製:対数粘度0.7)2100gを一括に添加して、引き続き、285℃まで攪拌しながら昇温し、溶融混合した。285℃に達した後、1Torr以下まで減圧し3時間攪拌して反応を終了し、ポリエチレンテレフタレートセグメントとビスフェノールAのエチレンオキシド付加重合体セグメントとよりなる対数粘度0.81のブロック共重合体(CB−1)を得た。なお対数粘度の測定は、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=1/1(重量比)混合溶媒を用い、25℃、濃度0.25g/dlにて行った。
【0068】
製造例2:
ポリエチレンテレフタレート(1)の代わりにポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製5009L)を使用した以外は製造例1と同様にして、対数粘度0.80のブロック共重合体(CB−2)を得た。
【0069】
ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)
(CB−1):ポリエチレンテレフタレートセグメントとビスフェノールAのエチレンオキシド付加重合体セグメントとよりなる対数粘度0.81のブロック共重合体。
(CB−2):ポリブチレンテレフタレートセグメントとビスフェノールAのエチレンオキシド付加重合体セグメントとよりなる対数粘度0.80のブロック共重合体。
【0070】
(実施例1)
ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)である(CB―1)100重量部に、フェノール系安定剤であるAO−60((株)ADEKA製)0.2重量部、を混合したものを準備した(原料1)。別途、高熱伝導性無機化合物(B)である真球状アルミナ粉末(電気化学工業(株)製DAW−03、単体での熱伝導率35W/m・K、体積平均粒子径3μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1016Ω・cm)(FIL−1)100重量部、信越化学製エポキシシランであるKBM−303を1重量部、エタノール5重量部、をスーパーフローターにて混合し、5分間撹拌した後、80℃にて4時間乾燥したものを準備した。(原料2)。
【0071】
原料1、原料2、をヘンシェルミキサーにて、ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)、高熱伝導性無機化合物(B)、を体積比で(A)/(B)=40/60となるよう混合した後、テクノベル製KZW15−45同方向噛み合い型二軸押出機のスクリュー根本付近に設けられたホッパーより投入した。設定温度は供給口近傍が250℃で、順次設定温度を上昇させ、押出機スクリュー先端部温度を270℃に設定した。本条件にて評価用サンプルペレットを得た。
【0072】
(実施例2〜11、比較例1〜2)
配合原料の種類や量を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、評価用サンプルペレットを得た。但し比較例1については、押出機スクリュー先端部温度を280℃に設定している。
【0073】
実施例及び比較例に用いた原料は、下記の通りである。
高熱伝導性無機化合物(B)
(FIL−1):真球状アルミナ粉末(電気化学工業(株)製DAW−03、単体での熱伝導率35W/m・K、体積平均粒子径3μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1016Ω・cm)
(FIL−2):真球状アルミナ粉末(電気化学工業(株)製ASFP−20、単体での熱伝導率32W/m・K、体積平均粒子径300nm、電気絶縁性、体積固有抵抗1016Ω・cm)
(FIL−3):窒化ホウ素粉末(電気化学工業(株)製SGP、単体での熱伝導率60W/m・K、体積平均粒子径7.0μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1014Ω・cm)
(FIL−4):球状化無水炭酸マグネシウム粉末(神島化学(株)製MSLをビーズミルで処理し球状化したもの、単体での熱伝導率40W/m・K、体積平均粒子径7.0μm、電気絶縁性、体積固有抵抗1016Ω・cm)
(FIL−5):天然鱗片状黒鉛粉末(中越黒鉛(株)製BF−250A、単体での熱伝導率1200W/m・K、体積平均粒子径250.0μm、導電性)
(FIL−6):炭素繊維(東邦テナックス(株)製HTA−C6−S、単体での熱伝導率250W/m・K、繊維直径7μm、導電性)
ポリアルキレンテレフタレート系熱可塑性樹脂(C):
(PES−1):ポリエチレンテレフタレート樹脂((株)ベルポリエステルプロダクツ製ベルペットEFG−70)
(PES−2):ポリブチレンテレフタレート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製ノバデュラン5009L)
[試験片成形]
得られた各サンプルペレットを乾燥した後、射出成形機にて120mm×120mm×厚み3.2mmの平板、及び厚み6mm×30mmφの円板状サンプルを成形した。
【0074】
[熱伝導率]
厚み6mm×30mmφの円板状サンプルにて、京都電子工業製ホットディスク法熱伝導率測定装置で4φのセンサーを用い、熱伝導率を算出した。
【0075】
[密度]
厚み3.2mm平板を3cm×3cm角に切り出し、水中置換法にて密度を測定した。
【0076】
[電気絶縁性]
厚み3.2mmの平板を用いて、ASTM D−257に従い体積固有抵抗値を測定した。抵抗値が低すぎて測定できない場合は「導電」と表示した。
【0077】
[薄肉成形性]
射出成形機にて、平板の面中心部分にゲートサイズ0.8mmφで設置されたピンゲートを通じて、150mm×80mm×厚み0.8mmの平板形状試験片を成形し、試験片がショートショットとならずにフル充填した際の成形機設定樹脂温度を測定することで、薄肉成形性を評価した。設定樹脂温度を樹脂の分解開始温度以上に上げても成形不可能であった場合は、「不可」と表示した。
【0078】
それぞれの配合および結果を表1に示す。表1より、本特許の範囲外の組成物と比べ、本特許の組成物は成形流動性に優れた高熱伝導率の樹脂組成物が得られることがわかる。
【0079】
【表1】

以上から本発明の熱可塑性樹脂組成物は、高熱伝導性でありながら、射出成形時の成形流動性も非常に優れており、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物が得られることが分かる。このような組成物は電気・電子工業分野、自動車分野、などさまざまな状況で熱対策素材として用いることが可能で、工業的に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテルセグメントが、分子量が400以上である下記一般式(1):
HO−(RO)−H (1)
(式中、Rは炭素数2〜5のアルキル基を、kは5以上の整数を表し、k個のRはそれぞれ異なっていてもよい。)
で表されるポリエーテル化合物、及び下記一般式(2):
H−(OR−O−Ph−X−Ph−O−(RO)−H (2)
(式中、Rは炭素数2〜5のアルキル基を、Xは−C(CH−又は−SO−を、PhはCを表し、m及びnはそれぞれ1以上の整数であって、かつm+nは3以上である整数を表し、m及びn個のRはそれぞれ異なってもよい。)
で表されるポリエーテル化合物からなる群から選択される少なくとも1種であるポリエーテルセグメントと、アルキレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリアルキレンテレフタレート系セグメントとからなるポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)及び、単体での熱伝導率が10W/m・K以上の高熱伝導性無機化合物(B)を含有し、かつ得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率が0.8W/mK以上であることを特徴とする、高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)が、ポリエーテルセグメントと、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリエチレンテレフタレート系セグメントとからなるポリエチレンテレフタレート系ブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)が、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリエチレンテレフタレート系セグメント97〜20重量%とポリエーテルセグメント3〜80重量%からなるポリエチレンテレフタレート系ブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1または2に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)、高熱伝導性無機化合物(B)、熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)を含有し、かつ得られる熱可塑性樹脂組成物の熱伝導率が0.8W/mK以上であることを特徴とする、請求項1〜3いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)が、ポリアルキレンテレフタレート熱可塑性ポリエステル樹脂であることを特徴とする、請求項4記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)が、ポリエーテルセグメントと、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とするポリエチレンテレフタレート系セグメントとからなるポリエチレンテレフタレート系ブロック共重合体であり、熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)が、ポリエチレンテレフタレート熱可塑性ポリエステル樹脂であることを特徴とする、請求項4または5に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
(B)が、グラファイト、導電性金属粉、軟磁性フェライト、炭素繊維、導電性金属繊維、酸化亜鉛、からなる群より選ばれる1種以上の高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、請求項1〜6いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
(B)が、単体での熱伝導率が20W/m・K以上の電気絶縁性高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、請求項1〜6いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
(B)が、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化ベリリウム、ダイヤモンド、からなる群より選ばれる1種以上の高熱伝導性無機化合物であることを特徴とする、請求項1〜6または8いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記{ポリアルキレンテレフタレート系ブロック共重合体(A)+熱可塑性ポリエステル系樹脂(C)}/高熱伝導性無機化合物(B)の組成物中での{(A)+(C)}/(B)体積比が、5/95〜95/5の範囲であることを特徴とする、請求項1〜8いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1〜10いずれか1項に記載の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物を射出成形して作成された、高熱伝導性成形体。

【公開番号】特開2009−91440(P2009−91440A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262521(P2007−262521)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】