説明

高熱安定性を有する機能性フォスファジド

【課題】フォスファゼン塩基は、有害な重金属類を用いることなく、環境に対してより害の少ない有機触媒として、さらに、効率よく医薬品の合成中間体などを製造するための触媒として有用であり、その非常に特徴的な反応性を持つフォスファゼンP4の更なる利用のため、多様な置換基を導入した誘導体を簡便で効率良く合成する技術の開発が求められている。
【解決手段】トリスジアルキルアミノホスフィンを出発物質として使用し、有機アジドを反応させることにより製造されたフォスファジドP4(I)は、高い熱安定性を有し、強い塩
基性を持っており、機能性触媒として有用であり、有機合成に利用できる。さらに高分子への固定化も容易に可能であり、回収再利用が可能な環境調和型の触媒として有望である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い熱安定性を有する機能性フォスファジド及びその用途に関する。特に、本発明は、トリスジアルキルアミノホスフィンを出発物質として使用し、有機アジドを反応させることにより製造されたフォスファジド、その強い塩基性を利用する有機合成における高機能触媒用途に関する。
【背景技術】
【0002】
フォスファゼン塩基はSchwesingerらによって開発されたトリアミノイミノフォスフォ
ラン骨格を基本P1ユニットとする非金属性の有機塩基であり、従来の有機塩基とは比較にならないほどの強力な塩基性を有している(図1)〔Schwesinger, R.; Schlemper, H., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 26, 1167-1169 (1987): 非特許文献1〕。例えば、t-Bu-P1塩基は一つのP1ユニットから構成されるフォスファゼン塩基であるが、DBUの2000倍もの
塩基性を有している。Schwesingerらは、イミン結合上の窒素がプロトン化されることで
生じたリン原子上のカチオンを、周囲の窒素原子の共鳴効果により広範囲にわたって非局在化できるため、強力な塩基性が発現すると述べている。4つのP1ユニットを持つt-Bu-P4塩基は有機リチウム試薬に匹敵するほどの高い塩基性を持ち、これまで強力な塩基試薬
として広く用いられてきた〔Kraus, G. A.; Zhang, N.; Verkade, J. G.; Nagarajan, M.; Kisanga, P. B., Org. Lett., 2, 2409-2410 (2000): 非特許文献2〕。
【0003】
本発明者らのグループではt-Bu-P4塩基が脱プロトン反応や、有機珪素化合物、有機亜
鉛化合物をルイス塩基的に活性化することによる様々な置換反応や付加反応における触媒として働くことを見いだしている(図2)〔(a) Imahori, T.; Hori, C.; Kondo, Y., Adv.
Synth. Catal., 346, 1090-1092 (2004): 非特許文献3; (b) Ueno, M.; Hori, C.; Suzawa, K.; Ebisawa, M.; Kondo, Y., Eur. J. Org. Chem., 1965-1968 (2005): 非特許文
献4; (c) Ueno, M.; Weatley, E. H. A.; Kondo, Y., Chem. Commun., 33, 3549-3350 (2006): 非特許文献5〕。特許文献1: 特許第3864199号。
以上のようにフォスファゼンP4は非常に特徴的な反応性を持つことから、不斉官能基、フルオラスタグの導入、ポリマーへの担持が可能となれば、不斉反応への応用や触媒回収が可能となることが期待できる。また、その他の様々な置換基を導入することで特徴的な物理的性質、化学選択性を利用した触媒反応の開発が可能になることが期待できる(図3)。
【0004】
しかしながら、これまで多様な置換基を持つフォスファゼンP4は汎用性の高い合成法が存在しなかったためほとんど知られていない。従来のフォスファゼンP4の合成法は、フォスファゼンP1-H(1)とPCl5から合成できるジクロロ体(2)とアミンから合成する方法、またはPCl5とアミン、もしくはPCl3とアジドから合成できるトリクロロイミノフォスフォラン(3)と(1)から合成する方法が用いられてきた〔(a) Schwesinger, R.; Schlemper, H., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 26, 1167-1169 (1987): 非特許文献1; (b) Kolomeitsev, A. A. et al., J. Am. Chem. Soc., 127, 17656-17666 (2005): 非特許文献6〕。
しかし、これらの方法は中間生成物(2)、(3)、最終生成物であるフォスファゼンP4(4)
の単離、精製が困難な他、低収率であることから、(4)に様々な置換基を効率的に導入す
ることは困難であった(図4)。
【0005】
【特許文献1】特許第3864199号
【非特許文献1】Schwesinger, R.; Schlemper, H., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 26, 1167-1169 (1987)
【非特許文献2】Kraus, G. A.; Zhang, N.; Verkade, J. G.; Nagarajan, M.; Kisanga, P. B., Org. Lett., 2, 2409-2410 (2000)
【非特許文献3】Imahori, T.; Hori, C.; Kondo, Y., Adv. Synth. Catal., 346, 1090-1092 (2004)
【非特許文献4】Ueno, M.; Hori, C.; Suzawa, K.; Ebisawa, M.; Kondo, Y., Eur. J. Org. Chem., 1965-1968 (2005)
【非特許文献5】Ueno, M.; Weatley, E. H. A.; Kondo, Y., Chem. Commun., 33, 3549-3350 (2006)
【非特許文献6】Kolomeitsev, A. A. et al., J. Am. Chem. Soc., 127, 17656-17666 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3で示すように、非常に特徴的な反応性を持つフォスファゼンP4に不斉官能基、フルオラスタグの導入、ポリマーへの担持などが、可能となれば、不斉反応への応用や触媒回収などが可能となったり、その他の様々な置換基を導入することが可能となり、それにより特徴的な物理的性質、化学選択性を利用することが可能となって、触媒反応などの開発が可能になると期待されている。すなわち、フォスファゼン塩基は、有害な重金属類を用いることなく、環境に対してより害の少ない有機触媒として、さらに、効率よく医薬品の合成中間体などを製造するための触媒として有用であり、その非常に特徴的な反応性を持つフォスファゼンP4の更なる利用のため、多様な置換基を導入した誘導体を簡便で効率良く合成する技術の開発が求められている。
そこで、多様な置換基を持つフォスファゼンP4を合成するのに適した簡便で汎用性の高い合成法を開発して、機能性のフォスファゼンP4誘導体を製造することを目標に開発を行った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を行った結果、フォスファゼンP4にアジド基を有する機能性のフォスファゼンP4誘導体、すなわち、フォスファジドを簡便で汎用性の高い合成法で製造することに成功し、さらに、得られたフォスファジドが高い熱安定性を有すると共に、母体フォスファゼンP4と同様に、強力な塩基試薬として有用であることを見出した。そして、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明では、次なる態様が提供される。
〔1〕一般式(I):
【化1】

(式中、Xは、同一でも互いに異なっていてもよく、それぞれ独立に、ジアルキルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基及びピペラジノ基からなる群から選択されたものである、あるいは、二つのXが一緒になり、該Xの間がアルキレン基で架橋されている、アルキレンジアミノ基、N-アルキルアルキレンジアミノ基及びN,N'-ジアルキル
アルキレンジアミノ基からなる群から選択されたものであり、Yは、置換されていてもよいアルキル基、ベンジル基以外の、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていて
もよいアリール基、置換されていてもよい複素環式基及び高分子残基からなる群から選択されたものである)
で表されることを特徴するフォスファジド化合物又はその塩。
〔2〕Xが、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、又はピロリジノ基であり、Yが、置換されていてもよいフェニル基、ナフチル基、置換されていてもよいフェニルプロピル基、1-メチル-3-フェニルプロピル基、1-アダマンチル基、又はシクロヘキシル基である
ことを特徴する上記〔1〕に記載の化合物又はその塩。
〔3〕Xが、ジメチルアミノ基で、Yが、フェニル基、フェニルプロピル基、1-メチル-3-フェニルプロピル基、又は1-アダマンチル基であることを特徴する上記〔1〕又は〔
2〕に記載の化合物又はその塩。
【0009】
〔4〕一般式(II):
【化2】

(式中、Xは、同一でも互いに異なっていてもよく、それぞれ独立に、ジアルキルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基及びピペラジノ基からなる群から選択されたものである、あるいは、二つのXが一緒になり、該Xの間がアルキレン基で架橋されている、アルキレンジアミノ基、N-アルキルアルキレンジアミノ基及びN,N'-ジアルキル
アルキレンジアミノ基からなる群から選択されたものであり、Zは、陰イオンである)
で表されるフォスフォニウム塩を、脱プロトン化した後、アジド化合物Y−N3
(式中、Yは、置換されていてもよいアルキル基、ベンジル基以外の、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環式基及び高分子残基からなる群から選択されたものである)
と反応させ、上記〔1〕に記載の一般式(I)のフォスファジド化合物
(式中、X及びYは、上記と同義である)
又はその塩を得ることを特徴とするフォスファジドの製造方法。
〔5〕一般式(III):
【化3】

(式中、Xは、同一でも互いに異なっていてもよく、それぞれ独立に、ジアルキルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基及びピペラジノ基からなる群から選択されたものである、あるいは、二つのXが一緒になり、該Xの間がアルキレン基で架橋されている、アルキレンジアミノ基、N-アルキルアルキレンジアミノ基及びN,N'-ジアルキル
アルキレンジアミノ基からなる群から選択されたものである)
のフォスファゼンをPCl3と反応させ、得られた一般式(II)のフォスフォニウム塩
(式中、Xは、上記と同義であり、Zは、陰イオンである)
を塩交換処理した後、脱プロトン化し、次にアジド化合物Y−N3
(式中、Yは、置換されていてもよいアルキル基、ベンジル基以外の、置換されていても
よいアラルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環式基及び高分子残基からなる群から選択されたものである)
と反応させ、上記〔1〕に記載の一般式(I)のフォスファジド化合物
(式中、X及びYは、上記と同義である)
又はその塩を得ることを特徴とするフォスファジドの製造方法。
【0010】
〔6〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれか一に記載の一般式(I)のフォスファジド化合物を
活性成分として含有することを特徴とする有機合成反応の求核反応触媒。
〔7〕請求項1〜3のいずれか一に記載の一般式(I)のフォスファジド化合物を求核反
応触媒として有機合成反応に使用する方法。
〔8〕請求項1〜3のいずれか一に記載の一般式(I)のフォスファジド化合物を溶液あ
るいは固定化触媒として用いる方法。
〔9〕求核置換反応又は求核付加反応において、一般式(IV):
【化4】

(式中、Nuは、水素、炭素求核基、酸素求核基、窒素求核基及び硫黄求核基からなる群から選択されたもの、そしてRは、同一でも互いに異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アラルキル基、アリール基及びアルコキシル基からなる群から選択されたものを示す)
で表される有機ケイ素化求核性化合物に、請求項1〜3のいずれか一に記載の一般式(I)
のフォスファジド化合物を作用させることを特徴とする求核置換反応又は求核付加反応方法。
〔10〕一般式(IIa):
【化5】

(式中、Xは、同一でも互いに異なっていてもよく、それぞれ独立に、ジアルキルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基及びピペラジノ基からなる群から選択されたものである、あるいは、二つのXが一緒になり、該Xの間がアルキレン基で架橋されている、アルキレンジアミノ基、N-アルキルアルキレンジアミノ基及びN,N'-ジアルキル
アルキレンジアミノ基からなる群から選択されたものであり、Zaは、テトラ置換ボレートイオンである)
で表されるフォスフォニウム塩。
〔11〕一般式(V):
【化6】

(式中、Xは、同一でも互いに異なっていてもよく、それぞれ独立に、ジアルキルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基及びピペラジノ基からなる群から選択されたものである、あるいは、二つのXが一緒になり、該Xの間がアルキレン基で架橋されている、アルキレンジアミノ基、N-アルキルアルキレンジアミノ基及びN,N'-ジアルキル
アルキレンジアミノ基からなる群から選択されたものである)
で表されるフォスファゼニルフォスフィン化合物とアジド化合物Y−N3
(式中、Yは、置換されていてもよいアルキル基、ベンジル基以外の、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環式基及び高分子残基からなる群から選択されたものである)
と反応させ、上記〔1〕に記載の一般式(I)のフォスファジド化合物
(式中、X及びYは、上記と同義である)
又はその塩を得ることを特徴とするフォスファジドの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、フォスファゼンP1-H(III)の簡便な合成法が提供され、当該化合物(III)とPCl3から合成したフォスフォニウム塩(IIa)を脱プロトン化し、系中にて発生させたフォ
スフォリックトリアミド(V)とアジドを反応させることにより、様々な置換基を持つ新規
フォスファジドP4(I)を合成でき、さらに化合物(I)の置換基Yとして多様な官能基を導入することが可能であり、さらに、フォスファジドP4(I)は触媒活性を示し、t-Bu-P4 base
による触媒反応の基質適応範囲の拡大、不斉反応化、また新反応の開発、触媒の回収等への応用などが可能となる。
本発明のその他の目的、特徴、優秀性及びその有する観点は、以下の記載より当業者にとっては明白であろう。しかしながら、以下の記載及び具体的な実施例等の記載を含めた本件明細書の記載は本発明の好ましい態様を示すものであり、説明のためにのみ示されているものであることを理解されたい。本明細書に開示した本発明の意図及び範囲内で、種々の変化及び/又は改変(あるいは修飾)をなすことは、以下の記載及び本明細書のその他の部分からの知識により、当業者には容易に明らかであろう。本明細書で引用されている全ての特許文献及び参考文献は、説明の目的で引用されているもので、それらは本明細書の一部としてその内容はここに含めて解釈されるべきものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、新規な機能性フォスファジド、その製造法並びにその用途を提供するものである。本発明の機能性フォスファジドとしては、上記一般式(I)の化合物及びその塩が挙
げられる。該一般式(I)中、置換基Xにおける「アルキル基」としては、直鎖又は分岐鎖
であってよく、炭素原子1〜6個を有していてよく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、、i-ブチル基、t-ブチル基、n-オクチル基などが挙げられる。また、該置換基Xにおけるアルキレン基は、直鎖又は分岐鎖であってよく、炭素原子1〜6個を有していてよく、例えば、メチレン基、エチレン基、メチル置換メチレン基、プロピレン基、メチル置換エチレン基、ジメチル置換メチレン基、ブチレン基、メチル置換プロピレン基などが挙げられる。また、置換基Yの「置換されていてもよいア
ルキル基」における「アルキル基」としては、直鎖又は分岐鎖、さらには環式のもののいずれであってもよく、例えばC1-22アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソ
プロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デカニル、ヘキサデカニル、エイコサニル等)等、さらには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等の環状アルキル基などが挙げられ、好ましくは、C1-6アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、ペンチ
ル等)が挙げられ、さらに好ましくは、C1-4アルキル(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル等)が挙げられる。該「アルキル基」は、不飽
和であってもよく、例えば、C2-10アルケニル基、C2-10アルキニル基なども包含されてよい。該C2-10アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、2-ブテニル、1-ペンテニ
ル基などが用いられる。該C2-10アルキニル基としては、例えば、1-エチニル、プロパル
ギル、2-ブチニル、1-ペンチニル基などが用いられる。
【0013】
置換基Yの「置換されていてもよいアラルキル基」における「アラルキル基」としては、例えば、C8-16アラルキル基が挙げられ、2-フェネチル、3-フェニルプロピル、1-メチ
ル-3-フェニルプロピル、3-フェニルブチル、4-フェニルブチル、3-(1-ナフチル)プロピ
ル、3-(2-ナフチル)プロピル等が用いられる。また、「置換されていてもよいアリール基」における「アリール基」としては、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリル、2-アンスリル、3-インデニル、5-フルオレニル等が用いられる。「置換されていてもよい複素環式基」における「複素環式基」としては、同一又は異なっていてもよい、1〜4個の複素原子(酸素原子、窒素原子、硫黄原子などから選択される)を有していてよい、飽和又は不飽和の単環式あるいは縮合環式のものが包含されてよく、例えば、2-または3-チエニル、2-または3-フリル、2-または3-ピロリル、2-,3-ま
たは4-ピリジル、2-,4-または5-オキサゾリル、2-,4-または5-チアゾリル、3-,4-または5-ピラゾリル、2-,4-または5-イミダゾリル、3-,4-または5-イソオキサゾリル、3-,4-または5-イソチアゾリル、3-または5-(1,2,4-オキサジアゾリル)、1,3,4-オキサジアゾリル
、3-または5-(1,2,4-チアジアゾリル)、1,3,4-チアジアゾリル、4-または5-(1,2,3-チア
ジアゾリル)、1,2,5-チアジアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、1H-
または2H-テトラゾリル、N-オキシド-2-,3-または4-ピリジル、2-,4-または5-ピリミジニル、N-オキシド-2-,4-または5-ピリミジニル、3-または4-ピリダジニル、ピラジニル、N
−オキシド-3-または4-ピリダジニル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサ
ゾリル、トリアジニル、オキソトリアジニル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニル、トリア
ゾロ[4,5-b]ピリダジニル、オキソイミダジニル、ジオキソトリアジニル、ピロリジニル
、ピペリジニル、ピラニル、チオピラニル、1,4-オキサジニル、モルホリニル、1,4-チアジニル、1,3-チアジニル、ピペラジニル、ベンゾイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、インドリジニル、キノリジニル、1,8-ナフチリジニル、プリニル、プテリジニル、ジベンゾフラニル、カルバゾリル、アクリジニル等が用いられる。
【0014】
置換基Yの「高分子残基」における「高分子」としては、固定化触媒を形成するのに適した担体として当該分野で知られたものから選択してよい。そうした担体としては、触媒などの化合物を固相化できる多くの担体が知られており、本発明ではそれらから適宜選んで用いることができる。担体としては、酵素や抗体、有機化合物などを固定化するのに使用されるものが種々知られており、本発明においても勿論これらの公知のものの中から選んで使用できる。代表的な担体としては、天然高分子又は天然物由来の高分子、ポリマーを包含する合成高分子、無機材料などが挙げられる。無機材料としては、例えばガラス、例えばアミノアルキルシリルガラスなどの活性化ガラス、多孔質ガラス、シリカゲル、シリカ−アルミナ、アルミナ、金属又は合金、磁化鉄、磁化合金などが挙げられる。該高分子としては、架橋化アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、デキストラン、アガロース、架
橋アガロース、セルロース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートなどの天然または変成セルロース、架橋デキストラン、天然ポリアミド、生分解性プラスチックなども包含される。「ポリマー」としては、例えば、熱可塑性樹脂であっても、熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂などであってもよく、さらにそれらの配合物であってもよい。該ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プ
ロピレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジェン-スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリスチ
レン、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート、ナイロンなどのポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリレートやポリアクリルアミドあるいは架橋ポリアクリルアミドを含むアクリル樹脂、スチレン−メタクリレート共重合体、ポリグリシジルメタクリレート、アクロレイン−エチレングリコールジメタクリレート共重合体、ポリアセタール樹脂、ポリフッ化ビニリデンを含むフッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルサルファイド樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂などが挙げられる。
【0015】
上記の「置換されていてもよいアルキル基」、「置換されていてもよいアラルキル基」、「置換されていてもよいアリール基」及び「置換されていてもよい複素環式基」における「置換基」としては、上記したアルキル基(「置換されていてもよいアルキル基」で挙げたアルキル基を含む)、「置換されていてもよいアラルキル基」で挙げたアラルキル基、「置換されていてもよいアリール基」で挙げたアリール基、「置換されていてもよい複素環基」で挙げた複素環基、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、オキソ基、チオキソ基、シアノ基、カルバモイル基、カルボキシル基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等の炭素数1〜4のアルコキシカルボニル基、スルホ基、例えばフツ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基、例えばフエノキシ等の炭素数6〜10のアリールオキシ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n-
プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ等の炭素数1〜4のアルキルチオ基、例えばフエニルチオ等の炭素数6〜10のアリー
ルチオ基、例えばメチルスルフィニル、エチルスルフィニル等の炭素数1〜4のアルキルスルフィニル基、例えばフエニルスルフィニル等の炭素数6〜10のアリールスルフィニル基
、例えばメチルスルホニル、エチルスルホニル等の炭素数1〜4のアルキルスルホニル基、例えばフェニルスルホニル等の炭素数6〜10のアリールスルホニル基、アミノ基、例えば
アセチルアミノ、プロピオニルアミノ等のアルカノイルアミノ基等の炭素数2〜6のアシルアミノ基、メチルスルホニルアミド等の炭素数1〜4のアルキルスルホニルアミド基、p-メチルベンゼンスルホニルアミド等の炭素数6〜10のアリールスルホニルアミド基、例えば
メチルアミノ、エチルアミノ、n−プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、n-ブチルアミ
ノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等のモノまたはジ炭素数1〜4のアルキル置換アミノ基、例えばシクロヘキシルアミノ等の炭素数3〜6のシクロアルキルアミノ基、例えばアニリノ等の炭素数6〜10のアリールアミノ基、例えばアセチル等のアルカノイル基等の炭素
数2〜4のアシル基、例えばベンゾイル等の炭素数6〜10のアリールカルボニル基などが挙
げられてよい。該置換基は、適宜、存在しているが、例えば、1〜5個存在していてよい

【0016】
本発明のフォスファジド化合物(I)は、一般式(II)のフォスフォニウム塩を、脱プロト
ン化した後、アジド化合物Y-N3と反応させることにより製造される。該脱プロトン化に先立って、該フォスフォニウム塩(II)は、好ましくは塩交換処理されているものであり、例えば、陰イオンとして、テトラ置換ボレートイオンとされているのが好ましい。テトラ置
換ボレートイオンの導入には、ボレート塩を使用することができる。該ボレート塩としては、例えば、アリール基、アラルキル基及びアルキル基からなる群から選択された置換基を有するテトラ置換ボレートが挙げられ、例えば、テトラフェニルボレート塩、テトラキス(p-クロロフェニル)ボレート塩、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート塩などのテトラアリールボレート塩、n-ブチルトリフェニルボレート塩、n-ブチルトリアニシルボレート塩、n-オクチルトリフェニルボレート塩などのモノアルキルトリアリールボレート塩などが挙げられる。該ボレート塩の対イオンとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属イオン、カルシウムイオン等のアルカリ金属イオンのような無機イオンであってもよいし、テトラアルキルアンモニウムイオンのような有機イオンであってもよい。
【0017】
典型的な態様では、フォスフォニウム・テトラ置換ボレート塩を脱プロトン化処理するが、当該脱プロトン化は、強塩基、例えば、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属のアルコキシドを使用して実施できる。該脱プロトン化は、好適に、t-ブトキシカリウムを使用して行うことが可能である。反応系中にて生成されたフォスファゼニルフォスフィン化合物(V)は、それを単離することなく、アジド化合物Y-N3と反応させることができる。
上記化合物(II)から化合物(I)の合成反応は、通常は適当な溶媒中で行われる。このよ
うな溶媒としては、反応試薬を溶解するものが好ましいが、場合によっては必ずしもそれに限定されず、適宜、公知の溶媒などから選択することができる。代表的な溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ジクロロヘキサン等の飽和炭化水素類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等のエーテル類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン
等のケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチル
アセトアミド等の酸アミド類、例えば、酢酸エチル等のエステル類、例えば、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類等、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン等の複素環化合物等が挙げられる。水を使用することもできる。これらの溶媒は単独で用いることもできるし、また必要に応じて二種又はそれ以上の多種類を適当な割合、例えば、1:1〜1:10
の割合で混合して用いてもよい。
本反応の反応温度は、通常、−50℃〜200℃、好ましくは−20℃〜80℃、より好ましく
は0℃〜50℃、さらに好ましくは10℃〜35℃で、反応時間は、通常、1分〜1週間、好まし
くは5分〜24時間、より好ましくは10分〜12時間、さらに好ましくは15分〜3時間の範囲である。本反応で得られた生成物又はその塩は、例えば、濃縮、減圧濃縮、蒸留、分留、溶媒抽出、液性変換、転溶、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、カラムクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、結晶化、再結晶
等により、単離精製することができる。
一般式(IIa)のフォスフォニウム塩は、空気中で安定な化合物として単離することがで
き、さらに、この化合物(IIa)を使用して、簡単な操作で有機アジドと反応せしめて、安
定な化合物である機能性の化合物(I)を得ることができる。該化合物(I)及びその塩は、極めて高い熱安定性を有するとともに、フォスファゼンと同様の極めて強い塩基性を示し、新しい機能性有機触媒として有機合成のプロセスに利用することが期待できる。本フォスファジド(I)は有機合成における高機能触媒として様々な分子変換反応に利用が可能であ
り、特に、医薬品関連化合物のプロセス合成における環境に負荷のかからない合成法を提供する。従来のフォスファジドに比べ高い熱安定を有するとともに、フォスファゼン触媒と同等の触媒活性を有することから、化学選択性の高い環境調和型の合成プロセスを支える有機触媒としての利用を図るのに有用である。本フォスファジド(I)は環境調和型の有
機合成用の触媒および高分子固定化触媒である。
【0018】
一般式(II)のフォスフォニウム塩は、一般式(III)のフォスファゼンを三塩化リンで処
理することにより、通常は、塩素イオンを対イオンとしている塩の形態で反応系中に生成される。本反応は、通常は適当な溶媒中で行われる。このような溶媒としては、反応試薬を溶解するものが好ましいが、場合によっては必ずしもそれに限定されず、適宜、公知の溶媒などから選択することができる。溶媒としては、上記化合物(I)の合成反応で説明し
たようなものの中から選択してよい。本反応の反応温度は、通常、−50℃〜200℃、好ま
しくは−20℃〜80℃、より好ましくは0℃〜50℃、さらに好ましくは10℃〜35℃で、反応
時間は、通常、1分〜1週間、好ましくは5分〜24時間、より好ましくは10分〜12時間、さ
らに好ましくは15分〜3時間の範囲である。本反応で得られた生成物又はその塩は、単離
することなく次の工程に使用できるが、例えば、濃縮、減圧濃縮、蒸留、分留、溶媒抽出、液性変換、転溶、クロマトグラフィー、再結晶等により、単離精製することもできる。
【0019】
一般式(III)のフォスファゼンは、下記でフォスファゼンP1-H(1)の合成法として、具体的に説明するように、対応するフォスフィンをトリ置換シリルアジドで処理して、得られたトリ置換シリル基含有フォスファゼンよりシリル基を除去することにより、製造することができる。本反応は、通常は適当な溶媒中で行われる。このような溶媒としては、反応試薬を溶解するものが好ましいが、場合によっては必ずしもそれに限定されず、適宜、公知の溶媒などから選択することができる。溶媒としては、上記化合物(I)の合成反応で説
明したようなものの中から選択してよい。本反応の反応温度は、通常、−50℃〜200℃、
好ましくは−20℃〜100℃、より好ましくは0℃〜60℃、さらに好ましくは10℃〜50℃で、反応時間は、通常、1分〜1週間、好ましくは5分〜24時間、より好ましくは10分〜12時間
、さらに好ましくは15分〜3時間の範囲である。本反応で得られた生成物又はその塩は、
単離することなく次の工程に使用できるが、例えば、濃縮、減圧濃縮、蒸留、分留、溶媒抽出、液性変換、転溶、クロマトグラフィー、再結晶等により、単離精製することもできる。
【0020】
従来のフォスファゼンP1-H(1)の合成法は液体アンモニアを用いるなど、実験室レベル
での合成にはあまり適していなかった(図5)〔(a) Saeki, T.; Shimamoto, M.; Izukawa,
T. (Mitsui Takeda Chemical Ink., Japan), Jpn. Kokai Tokkyo Koho; Jp,; 14 pp (2004); (b) Nobori, T.; Hara, I.; Kiyono, S.; Mizutani, K.; Hayashi, T.; Takagi, U.
(Mitsui Chemicals Inc., Japan), Jpn. Kokai Tokkyo Koho; Jp,; 6 pp (1998)〕。
そこで、より簡便で汎用性の高い方法を開発する目的で、Beddie, C.; Hollink, E.; Wei, P.; Gauld, J.; Stephan, D. W., Organometallics, 23, 5240-5251 (2004)の記載を参考にして、文献の条件に従ってトリスジメチルアミノフォスフィン(7)とトリメチルシ
リルアジドよりP1-SiMe3(8)を合成した後、ワンポットでメタノールを加えることにより
トリメチルシリル基を除去し、フォスファゼン(1)を合成する(図6)。中程度の収率では
あるが簡便に合成することができる。なお、化合物番号下の数値はリンのNMRケミカルシ
フトを示している。
【0021】
次に、化合物(1)とPCl3から合成したフォスフォニウム塩(11)〔Marchenko, A. P.; Koidan, G. N.; Pinchuk, A. M.; Kursanov, A. V., Journal of General Chemistry of the
USSR., 54, 1581-1589 (1984)〕に対しソディウムテトラフェニルボレートを加え塩交換せしめ、空気中でも安定な化合物としてフォスフォニウム塩(6)を得ることができ、それ
は単離することもできる。この化合物(6)を過剰量のt-ブトキシカリウムを用いて脱プロ
トン化し、反応系中て発生させた化合物(5)とフェニルアジドとを反応せしめ、フェニル
フォスファジドP4(12)を得ることができる(図7)。化合物(12)は安定な化合物として合成できる。化合物(12)は反応溶液中のt-ブタノールを減圧留去した後ヘキサンで抽出することにより、純粋な状態で単離することができる。
【0022】
本発明のフォスファジド化合物(I)は、t-Bu-P4 baseなどのフォスファゼン塩基P4に匹
敵する塩基性を示し、強力なブレンステッド塩基として環境調和型の高効率有機合成反応
において有用と考えられる。特に、医薬品合成の分野で有望である。該フォスファジド化合物(I)は、種々の脱プロトン化反応に用いルことが可能であり、芳香環の脱プロトン化
−修飾反応にも用いることが可能で、脱ハロゲン化水素反応、酸の脱離反応、縮合反応、Wittig反応、Michael付加反応などを含めた様々な置換反応、付加反応といった有機合成
反応の触媒などとして有用である。非特許文献2〜5、特許文献1、R. Schwesinger et al., Liebigs Ann. 1996, 1055-1081 (1996)、T. Imahori et al., J. Am. Chem. Soc., 125, 8082-8083 (2003)、T. Imahori, Yakugaku Zasshi, 124, 509-517 (2004)などにお
けるフォスファゼン塩基に代えて、本発明のフォスファジド化合物(I)を使用できる。本
発明のフォスファジド化合物(I)は、抗生物質、ヌクレオチド類、ペプチドやタンパク質
の修飾や合成においてもそれを適用できる。
【0023】
本発明の代表的な態様では、該非金属有機塩基と有機ケイ素化求核剤との相互作用を触媒的に利用する技術に基づいた、医薬品候補分子あるいは医薬品合成中間体合成技術が提供される。当該フォスファジド化合物(I)をケイ素化した化合物と反応させると、フォス
ファジド化合物(I)がケイ素化されると同時に活性型アニオン(反応性求核体)が形成さ
れ、この形成された活性型アニオン(反応性求核体)は系内に存在する親電子性化合物(親電子剤)あるいは求核試薬反応性物質と反応して、中間体アニオンを形成し、この中間体アニオンが前記ケイ素化されたフォスファジニウムと反応してフォスファジド化合物(I)が再生されるという、有機ケイ素化求核剤(有機ケイ素化求核性化合物)とフォスファ
ジド化合物(I)といった非金属有機塩基との相互作用を触媒的に利用することが可能であ
る。
本発明は、(A)有機ケイ素化求核性化合物(有機ケイ素化求核試薬)とフォスファジド
化合物(I)を作用させるステップ及び(B)該求核性化合物(求核試薬)と親電子性化合物(親電子剤)あるいは求核試薬反応性物質との反応で、フォスファジド化合物(I)を触媒的
に利用せしめるステップを使用する技術を提供している。
また、本発明は、(a)有機ケイ素化求核性化合物(有機ケイ素化求核試薬)とフォスフ
ァジド化合物(I)を作用させて、活性化された求核性化合物を形成せしめるステップ及び(b)該形成された活性化求核性化合物(活性化求核試薬)と親電子性化合物(親電子剤)あるいは求核試薬反応性物質とを反応せしめて、中間体アニオンを形成し、該中間体アニオンでもってケイ素化された非金属有機塩基から、フォスファジド化合物(I)を再生せしめ
るステップを使用する技術を提供している。上記両ステップ(a)及び(b)を使用したり、あるいは含んでいる、有機化合物(医薬品、医薬品候補分子あるいは医薬品合成中間体)を合成・製造する技術は、すべて本発明に包含されると理解される。
【0024】
フォスファジド化合物(I)(Pz)と、有機ケイ素化求核性化合物(Nu-SiR3)とは、親電子性化合物(親電子剤(E): electrophile(s))の存在下に反応せしめられると
〔フォスファジド化合物(I)(Pz)と、有機ケイ素化求核性化合物(Nu-SiR3)とを反応させた後に、親電子剤(E)を加えてもよい〕、
例えば、次にスキームで示すようなサイクルを形成し、有機ケイ素化求核性化合物(IV)とフォスファジド化合物(I)とは触媒的相互作用をする。
【0025】
【化7】

【0026】
一般式(IV)の有機ケイ素化求核性化合物のNu部は、本反応によって形成される活性型アニオンの種類によって分類すると、該活性型アニオンが炭素アニオンであるものを炭素求核基(炭素求核剤)、酸素アニオンであるものを酸素求核基(酸素求核剤)、窒素アニオンであるものを窒素求核基(窒素求核剤)、硫黄アニオンであるものを硫黄求核基(硫黄求核剤)、そしてヒドリドアニオンであるものを「H」として示してある。
本明細書において炭素求核剤、酸素求核剤、窒素求核剤及び硫黄求核剤は、有機合成分野で当業者に知られていたり、あるいは当業者により公知の技術を利用して容易に取得しえるものや合成できるものであり、さらに、例えば、Chemical Abstracts (CA)データベ
ースを「nucleophilic reagent(s)」、「nucleophile(s)」などの用語を使用して検索す
ることなどにより探し出したものから、適宜、選択できる。該有機ケイ素化求核性化合物(IV)は、所定の目的を達成できるものであれば、公知の求核剤を公知のケイ素化技術を適用して得ることができる。
【0027】
親電子性化合物(親電子剤)としては、有機合成分野で当業者に知られていたり、あるいは当業者により公知の技術を利用して容易に取得しえるものや合成できるものであり、さらに、例えば、Chemical Abstracts (CA)データベースを「electrophilic reagent(s)
」、「electrophile(s)」などの用語を使用して検索することなどにより探し出したもの
から、適宜、選択できる。代表的な親電子性化合物としては、芳香族フッ素化合物、エポキシド化合物、カルボニル化合物、イミン化合物、イミニウム化合物などが包含されるが、それに限定されず所定の目的を達成できるものであれば、使用できる。有機合成の分野で重要な親電子剤としては、金属塩、プロトンドナー、ハロゲン類、酸素、硫黄、二酸化硫黄、ハロゲン化リン(phosphorus halides)、ハロゲン化ケイ素(silicon halides)、ハ
ロゲン化ホウ素(boron halides)、二酸化炭素、酸ハライド類、カルボン酸エステル類、
アルデヒド類、ケトン類、ニトリル類、アミド類などが知られている。
上記置換基Rにおける「アルキル基」、「アリール基」及び「アルコキシル基」は、上記で説明したものと同様なものと考えてよい。また、上記置換基Rにおける「アラルキル基」としては、例えばベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル等のフエニルアルキル基等の炭素数7〜10のアラルキル基などが包含される。
【0028】
当該反応は、通常は適当な溶媒中で行われる。このような溶媒としては、反応試薬を溶解するものが好ましいが、場合によっては必ずしもそれに限定されず、適宜、公知の溶媒などから選択することができる。代表的な溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ジクロロヘキサン等の飽和炭化水素類、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等
のエーテル類、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、例えば、アセトニトリルなどのニトリル類、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド等の酸アミド類、例
えば、酢酸エチル等のエステル類、例えば、酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類等、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ピリジン等の複素環化合物等が挙げられる。水を使用することもできる。これらの溶媒は単独で用いることもできるし、また必要に応じて二種又はそれ以上の多種類を適当な割合、例えば、1:1〜1:10の割合で混合して用いてもよい。
場合によっては、例えば、トリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリ-n-オクチル
メチルアンモニウムクロリド、トリメチルデシルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド等の第四級アンモニウム塩やクラウンエーテル類等の相間移動触媒の存在下に反応を行ってもよい。好適には、固定化触媒としてフォスファジド化合物(I)を
使用することができる。
【0029】
本発明の反応でフォスファジド化合物(I)の使用量は、有機ケイ素化求核性化合物や、
親電子性化合物に対して触媒量でよい。該触媒量とは、各有機ケイ素化求核性化合物や親電子性化合物の量に対して少ない量を意味してよく、例えば、それらに対して1/1.1〜1/1000の量、通常、1/2〜1/100の量、ある場合には1/4〜1/50の量、又は1/5〜1/10の量など
が挙げられるが、もちろん、有機ケイ素化求核性化合物と親電子性化合物の組み合わせにより適宜適当な量を選択できる。上記「触媒的相互作用」及び「触媒的に利用」とは、触媒量でのフォスファジド化合物(I)の使用を意味することを含むものであってよい。
本反応の反応温度は、通常、−50℃〜200℃、好ましくは−20℃〜150℃、より好ましくは0℃〜150℃、さらに好ましくは10℃〜120℃で、反応時間は、通常、1分〜2週間、好ましくは5分〜50時間、より好ましくは10分〜35時間、さらに好ましくは15分〜20時間の範
囲である。本反応では、マイクロウェーブ(MW)を使用することもできる。本発明の反応で得られた生成物又はその塩は、例えば、濃縮、減圧濃縮、蒸留、分留、溶媒抽出、液性変換、転溶、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)
、カラムクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、結晶化、再結晶等により、単離精製することができる。
【0030】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。
全ての実施例は、他に詳細に記載するもの以外は、標準的な技術を用いて実施したもの、又は実施することのできるものであり、これは当業者にとり周知で慣用的なものである。
反応は乾燥させた溶媒を使用し、Ar雰囲気下に実施した。融点(mp)は、微量融点測定器(Yazawa micro melting point apparatus) 〔(株)矢沢科学〕で決定し、補正を加えてい
ないものである。
赤外スペクトル(IR)のデータは、全反射吸収(Attenuated Total Reflectance: ATR)フ
ーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR) 〔米国、SensIR社〕で記録した。当該スペクトルは、システムReactIRTM 2.20ソフトウェアを使用し分解能4の32スキャン/スペクトルで取得された。吸収波長は、cm-1で示してある。
NMRデータは、JEOL AL400スペクトロメーター(395.75 MHz for 1H, 99.50 MHz for 13C)又はJEOL ECA600スペクトロメーター(600.172 MHz for 1H, 150.907 for 13C, 242.956 MHz for 31P)のいずれかにより記録された。ケミカルシフトは、d (ppm) で表記せしめられており、カップリング定数は、ヘルツ(Hz)で表されている。1H NMRスペクトルは、内部標準としてテトラメチルシランを使用して溶媒のシグナル(CDCl3: 7.26 ppm or C6D6: 7.15 ppm)に対比して示されている。13C NMRスペクトルは、内部標準としてテトラメチルシランを使用して溶媒のシグナル(CDCl3: 77.0 ppm or C6D6: 128.0 ppm) に対比して示さ
れている。31P NMRスペクトルは、D2O中の外部85% H3PO4に対比して示されている。次な
る略号を使用する: s = singlet, d = doublet, t = triplet, q = quartet, m = multiplet, dq = double quartet, tt = triple triplet, br = broad singlet。
低分解能マススペクトル(LRMS)と高分解能マススペクトル(HRMS)を、東北大学大学院薬学研究科核磁気共鳴測定室(Mass Spectrometry Resource, Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Tohoku University)の装置JEOL JMS-DX303とJMS-700スペクトロメーターで取得した。
材料物質:特に別途記載しない限り、東京化成工業(株)、アルドリッチ社(Aldrich Inc.)及びその他の供給業者より入手し、適宜、精製(蒸留又は再結晶)した後使用された。
【0031】
主な略号は次の通りである。
BEMP: 2-t-ブチルイミノ-2-ジエチルアミノ-1,3-ジメチルペルヒドロ-1,3,2-ジアザホス
ホリン(2-t-butylimino-2-diethylamino-1,3-dimethylperhydro-1,3,2-diazaphosphorine)
d: doublet
DBU: 1,8-ジアザビシクト[5.4.0]ウンデセ-7-エン(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)
DMSO: ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide)
eq.: 当量(equivalent)
Et: エチル(ethyl)
FG: 官能基(functional group)
M: モル(molar)
Me: メチル(methyl)
Ph: フェニル(phenyl)
q: quartet
quant.: 定量的(quantitative)
s: singlet
t: 第三級(tertiary)
THF: テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)
【実施例1】
【0032】
(A)N-(トリメチルシリル)トリス(ジメチルアミノ)フォスフィンイミン(8)
【化8】

【0033】
Ar雰囲気下、Me3SiN3 (14.0 mL, 105 mmol)を、P(NMe2)3 (18.2 mL, 100 mmol)のトル
エン(30 mL)溶液に室温で添加した。得られた混合物を2時間還流した後、過剰のMe3SiN3を減圧下(室温/0.2 mmHg)に除去して、化合物(8)を粗製トルエン溶液(約100 mmol)として得た。本溶液は、さらに精製することなく、化合物(1)の合成に使用された。そのスペク
トルデータは、従来報告されているもの〔Beddie, C.; Hollink, E.; Wei, P.; Gauld, J.; Stephan, D. W., Organometallics, 23, 5240-5251 (2004)〕と一致した。
粗製溶液
1H NMR (600 MHz, C6D6) δ(ppm): 0.27 (s, 9H), 2.34 (d, J = 10.08 Hz, 18H)。
31P[1H] NMR (243 MHz, C6D6) δ(ppm): 17.5 (s)。
【0034】
(B)トリス(ジメチルアミノ)フォスフィンイミン(1)
【化9】

【0035】
Ar雰囲気下、MeOH (20.3 mL, 500 mmol)を、化合物(8)の粗製溶液(約100 mmol)に室温
で添加した。得られた混合物を同じ温度で20時間攪拌した。得られた混合物を減圧下で濃縮し、真空蒸留(50〜60 ℃/0.2 mmHg)して精製し、化合物(1) (10.8 g, 60%)を得た。そ
のスペクトルデータは、従来報告されているもの〔Batsanov, A. S.; Copley, R. C. B.;
Davidson, M. G.; Fox, M. A.; Hibbert, T. G.; Howard, J. A. K.; Wade, k., Journal of Cluster Science, 17, 119-137 (2006)〕と一致した。
無色油状物
1H NMR (600 MHz, C6D6) δ(ppm): 0.23 (br, 1H), 2.37 (d, J = 10.08 Hz, 18H)。
31P[1H] NMR (243 MHz, C6D6) δ(ppm): 43.2 (s).LRMS (EI) m/z: 178。
HRMS: 計算値: C6H19N4P: 178.1347、測定値: 178.1333。
IR (neat): 2993, 2871, 2834, 2792, 1457, 1192, 1102, 957.0, 843.2, 712.0 cm-1
【0036】
(C)トリス(ヘキサメチルトリアミノフォスファゼニル)フォスフォニウムクロライド(11)
【化10】

【0037】
Ar雰囲気下、クロロベンゼン(2.0 mL)中のPCl3 (0.125 mL, 1.43 mmol)を、クロロベンゼン(2.0 mL)中の化合物(1) (1.30 mL, 7.14 mmol)にシュレンクフラスコ中、−45 ℃で
添加した。得られた溶液を室温に温まるまで置いた後、1時間攪拌した。得られた反応混合物を、Et2Oで抽出してクロロベンゼンを除いた後、CH2Cl2で抽出した。有機相をロータリーエバポレーターで濃縮し、化合物(11)を粗油状物(0.834 g, 1.39 mmol)として得た。本油状物は、さらに精製することなく、化合物(6)の合成に使用された。そのスペクトル
データは、従来報告されているもの〔Marchenko, A. P.; Koidan, G. N.; Pinchuk, A. M.; Kursanov, A. V., Journal of General Chemistry of the USSR., 54, 1581-1589 (1984)〕と一致した。
粗油状物
1H NMR (600 MHz, C6D6) δ(ppm): 2.44 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 7.53 (dq, J = 582, 5.52 Hz, 1H)。
31P NMR (243 MHz, C6D6) δ(ppm): −26.7 (q, J = 29.6 Hz), 23.9 (d, J = 29.6 Hz)

【0038】
(D)トリス(ヘキサメチルトリアミノフォスファゼニル)フォスフォニウムテトラフェニル
ボレート(6)
【化11】

【0039】
MeOH (5.0 mL)中のNaBPh4 (0.476 g, 1.39 mmol)を、MeOH (5.0 mL)中の化合物(11)(0.834 g, 1.39 mmol)に室温で添加した。得られた混合物を1時間攪拌した後、ロータリー
エバポレーターを使用して濃縮した。シリカゲル(CH2Cl2のみ)のカラムクロマトグラフィーにより精製処理し、MeOHから再結晶して、化合物(6) (0.887 g, 70%)を得た。
MeOHから再結晶して得られた無色結晶、mp 80-82 ℃。
元素分析、C42H75BN12P4の計算値: C, 57.14; H, 8.56; B, 1.22; N, 19.04; P, 14.03、測定値: C, 57.34; H, 8.43; N, 19.04。
1H NMR (600 MHz, C6D6) δ(ppm): 2.16 (d, J = 11.0 Hz, 54H), 7.04-7.13 (m, 4H), 7.17-7.31 (m, 8H), 7.29 (dq, J = 554, 5.52 Hz, 1H), 7.83-8.00 (m, 8H)。
13C[1H] NMR (150 MHz, C6D6) δ(ppm): 36.6 (d, J = 4.31 Hz) , 121.7 (s), 125.6 (s), 137.0 (s), 164.9 (q, J = 48.8 Hz)。
31P[1H] NMR (243 MHz, C6D6) δ(ppm): −27.2 (q, J = 29.6 Hz), 23.5 (d, J = 29.6 Hz)。
31P NMR (243 MHz, C6D6) δ(ppm): −27.2 (dq, J = 554, 29.6 Hz), 23.6 (m)。
LRMS (EI) m/z: 563 (M+−320)。
HRMS: C18H55N12P4の計算値: 563.3623、測定値: 563.3616。
IR (neat): 3053, 2881, 2846, 2804, 2314, 1580, 1478, 1183, 972.5, 702.3。
【0040】
(E)フェニルアジド
【化12】

【0041】
イミダゾール-1-スルホニルアジド塩酸塩(5.03 g, 24 mmol)を、MeOH (30 mL)中のアニリン(1.82 mL, 20 mmol)、K2CO3 (4.70 g, 34 mmol)及びCuSO4・5H2O (0.050 g, 0.20 mmol)に室温で添加した。得られた反応混合物を25時間攪拌し、次に濃HClで酸性とし、Et2Oで抽出した。有機相を食塩水で洗い、MgSO4上で乾燥し、ロータリーエバポレーターを使
用して濃縮し、粗生成物を得た。シリカゲル(ペンタンのみ) のカラムクロマトグラフィ
ーにより精製処理し、フェニルアジド(0.777 g, 33%)を得た。そのスペクトルデータは、従来報告されているもの〔Barral, K.; Moorhouse, A. D.; Moses, J. E., Org. Lett., 9, 1809-1811 (2007)〕と一致した。
黄色油状物
1H NMR (400 MHz, CDCl3/TMS) δ(ppm): 7.01-7.11 (m, 2H), 7.13-7.21 (m, 1H), 7.34-7.45 (m, 2H)。
LRMS (EI) m/z: 119 (M+)。
HRMS: C6H5N3の計算値: 119.0483、測定値: 119.0485。
IR (neat): 2418, 2121, 2090, 1594, 1492, 1293, 1279, 1129, 895.3, 744.8 cm-1
【0042】
(F)3-フェニルプロピルアジド
【化13】

【0043】
イミダゾール-1-スルホニルアジド塩酸塩(0.503 g, 2.4 mmol)を、MeOH (5.0 mL)中の3-フェニルプロピルアミン(0.284 mL, 2.0 mmol), K2CO3 (0.401 g, 2.9 mmol)及びCuSO4
・5H2O (0.0050 g, 0.0020 mmol)に室温で添加した。得られた反応混合物を21時間攪拌し、次に濃HClで酸性とし、EtOAcで抽出した。有機相を食塩水で洗い、MgSO4上で乾燥し、
ロータリーエバポレーターを使用して濃縮し、粗生成物を得た。シリカゲル(グラジエン
ト溶出: 0〜9% AcOEtのヘキサン液)のカラムクロマトグラフィーにより精製処理し、3-フェニルプロピルアジド(0.230 g, 72%)を得た。そのスペクトルデータは、従来報告されているもの〔Benati, L.; Bencivenni, G.; Leardini, R.; Nanni, D.; Minozzi, M.; Spagnolo, P.; Scialpi, R.; Zanardi, G., Org. Lett., 8, 2499-2502 (2006)〕と一致した

無色油状物
1H NMR (400 MHz, CDCl3/TMS) δ(ppm): 1.94 (tt, J = 7.56, 6.48 Hz, 2H), 2.73 (t, J = 7.56。
Hz, 2H), 3.30 (t, J = 6.84 Hz, 2H), 7.17-7.27 (m, 3H), 7.28-7.35 (m, 2H)。
LRMS (EI) m/z: 133 (M+−28)。
HRMS: C9H11Nの計算値: 133.0891、測定値: 133.0856。
IR (neat): 3027, 2491, 2863, 2090, 1603, 1497, 1453, 1256, 742.9, 698.5 cm-1
【0044】
(G)1-メチル-3-フェニルプロピルアジド
【化14】

【0045】
イミダゾール-1-スルホニルアジド塩酸塩(0.503 g, 2.4 mmol)を、MeOH (5.0 mL)中の1-メチル-3-フェニルプロピルアミン(0.324 mL, 2.0 mmol), K2CO3(0.401 g, 2.9 mmol)及びCuSO4・5H2O(0.0050 g, 0.0020 mmol)に室温で添加した。得られた反応混合物を22時間攪拌し、次に濃HClで酸性とし、EtOAcで抽出した。有機相を食塩水で洗い、MgSO4上で乾
燥し、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮し、粗生成物を得た。シリカゲル(グラ
ジエント溶出: 0〜9% AcOEtのヘキサン液)のカラムクロマトグラフィーにより精製処理し、1-メチル-3-フェニルプロピルアジド(0.300 g, 86%)を得た。そのスペクトルデータは
、従来報告されているもの〔Waser, J.; Nambu, H.; Carreira, E. M., J. Am. Chem. Soc., 127, 8294-8295 (2005)〕と一致した。
無色油状物
1H NMR (400 MHz, CDCl3/TMS) δ(ppm): 1.28 (d, J = 6.6 Hz, 3H), 1.70-1.86 (m, 2H), 2.61-2.78 (m, 2H), 3.40-3.46 (m, 1H), 7.14-7.23 (m, 3H), 7.24-7.32 (m, 2H)。
LRMS (EI) m/z: 147 (M+−28)。
HRMS: C10H13Nの計算値: 147.1048、測定値: 147.1012。
IR (neat): 3027, 2929, 2861, 2094, 1603, 1453, 1248, 1030, 744.8, 698.5 cm-1
【実施例2】
【0046】
〔化合物(12), (14), (15)及び(16)の一般的な製造法〕
Ar雰囲気下、THF(0.5 mL)中の化合物(6)(0.177 g, 0.20 mmol) を、THF(2.0 mL)中のt-BuOK(0.224 g, 2.0 mmol)にシュレンクフラスコ中、室温で添加した。得られた混合物を
同じ温度で1時間攪拌した後、0 ℃でアジド(0.20 mmol)を添加した。得られた溶液を室
温に温まるまで置いた後、1〜3時間攪拌した。ジオキサン(10 mL)をその溶液に加えた
後、THF及びt-BuOHを減圧下(30 ℃/0.2 mmHg)に除去した。ヘキサン(10 mL)を残留物に加えて、t-BuOK及びKBPh4のほとんどを沈殿せしめた後、ろ過して除き、化合物(12), (14),
(15)又は(16)を粗製ヘキサン液として得た。
【0047】
N-フェニルトリス(ヘキサメチルトリアミノフォスファゼニル)フォスファジド(12)
【化15】

【0048】
黄色油状物
1H NMR (600 MHz, C6D6) δ(ppm): 2.52 (d, J = 10.1 Hz, 54H), 6.93-6.98 (m, 1H), 7.34-7.39 (m, 2H), 7.88-7.94 (m, 2H)。
13C[1H] NMR (150 MHz, C6D6) δ(ppm): 37.3 (d, J = 4.31 Hz), 119.84 (s), 119.85 (s), 128.2 (s), 158.0 (s)。
31P[1H] NMR (243 MHz, C6D6) δ(ppm): −0.01 (q, J = 36.2 Hz), 18.0 (m)。
31P NMR (243 MHz, C6D6) δ(ppm): 0.01 (q, J = 36.2 Hz), 18.0 (m)。
LRMS (EI) m/z: 682 (M++1)。
HRMS: C24H60N15P4の計算値: 682.4107、測定値: 682.4088。
IR (neat): 2975, 2869, 2856, 2354, 1480, 1260, 1069, 986.0, 910.7, 679.2 cm-1
【0049】
N-(3-フェニルプロピル)トリス(ヘキサメチルトリアミノフォスファゼニル)フォスファジド(14)
【化16】

【0050】
黄色油状物
31P[1H] NMR (243 MHz, C6D6) δ(ppm): -0.05 (m), 16.5 (d, J =36.2 Hz)。
LRMS (EI) m/z: 724 (M++1).
HRMS: C27H66N15P4の計算値: 724.4576、測定値: Found: 724.4588。
IR (neat): 2973, 2860, 2358, 1289, 1192, 1069, 986.0, 910.7, 744.8, 679.2 cm-1
【0051】
N-(1-メチル-3-フェニルプロピル)トリス(ヘキサメチルトリアミノフォスファゼニル)フ
ォスファジド(15)
【化17】

【0052】
黄色油状物
31P[1H] NMR (243 MHz, C6D6) δ(ppm): 0.88 (m), 16.9 (d, J =32.9 Hz)。
LRMS (EI) m/z: 738 (M++1)。
HRMS: C28H68N15P4の計算値: 738.4733、測定値: 738.4716。
IR (neat): 2975, 2858, 1461, 1254, 1192, 1069, 986.0, 910.7, 731.3, 679.2 cm-1
【0053】
N-(1-アダマンチル)トリス(ヘキサメチルトリアミノフォスファゼニル)フォスファジド(16)
【化18】

【0054】
黄色油状物
31P[1H] NMR (243 MHz, C6D6) δ(ppm): 1.25 (m), 16.9 (m)。
LRMS (EI) m/z: 740 (M++1)。
HRMS: C28H70N15P4の計算値: 740.4899、測定値: 740.4890。
IR (neat): 2975, 2871, 2861, 2358, 1480, 1192, 1069, 984.1, 912.7, 679.2 cm-1
【0055】
フェニルアジドは電子不足なアジドであるためフォスフォリックトリアミドからの求核反応が行きやすく反応は短時間で終了する(図7)。アルキルアジドは電子豊富なアジドであるため長い反応時間が必要であり、反応時間は3 時間とした。1 級、2 級、3 級のアジドを用いて化合物(6)との反応を行った。フォスファジドP4(14、15、16)が安定な化合
物として得られた(図8)。
得られたフォスファジドP4(13)をトルエン加熱還流下の加熱処理を加えたところ、フェニルフォスファジドP4は13時間の加熱によっても何も変化せず、3級のアダマンチルフォ
スファジドP4は16時間の加熱でわずかに分解反応が進行しただけであり、この結果は化合物(13)が過酷な条件でも触媒として機能する可能性を示唆するものであった。
【実施例3】
【0056】
〔触媒としてフェニルエチニルトリメチルシラン/化合物(12), (14), (15)又は(16)を使
用しての1,2-付加の一般的な方法〕
THF (1.0 mL)中のベンゾフェノン(0.091 g, 0.5 mmol)とフェニルエチニルトリメチル
シラン(0.118 mL, 0.60 mmol)の混合物にTHF (1.0 mL)中の化合物(12), (14), (15)又は(16)(0.050 mmol)をAr雰囲気下、0 ℃で滴下した。得られた反応混合物を1時間攪拌し、
次に飽和NH4Clで反応を止めて、EtOAcで抽出した。有機相を食塩水で洗い、MgSO4上で乾
燥し、ロータリーエバポレーターを使用して濃縮し、粗生成物を得た。シリカゲル(グラ
ジエント溶出: 0〜9% AcOEtのヘキサン液)のカラムクロマトグラフィーにより精製処理し、トリメチル-(1,1,3-トリフェニルプロプ-2-イニロキシ)シラン(0〜70%)と1,1,3-トリフェニルプロプ-2-インオール(8〜99%)を得た。そのスペクトルデータは、従来報告されて
いるもの〔(a) Kuwajima, I.; Nakamura, E.; Hashimoto, K., Tetrahedron, 39, 975-982 (1983); (b) Jagtap, Sachin R.; Bhanage, B. M., Journal of Chemical Research, 6, 370-372 (2007)〕と一致した。
【0057】
トリメチル-(1,1,3-トリフェニルプロプ-2-イニロキシ)シラン
【化19】

【0058】
MeOHから再結晶して得られた無色結晶、mp 65 ℃。
1H NMR (400 MHz, CDCl3/TMS) δ(ppm): 0.15 (s, 9H), 7.18-7.38 (m, 9H), 7.47-7.54 (m, 2H), 7.58-7.68 (m, 4H)。
LRMS (EI) m/z: 356 (M+)。
HRMS: C24H24OSiの計算値: 356.1596、測定値: 356.1601。
IR (crystal): 3083, 2958, 2221, 1488, 1449, 1250, 1061 cm-1
【0059】
1,1,3-トリフェニルプロプ-2-インオール
【化20】

【0060】
Et2O-ヘキサンから再結晶して得られた無色結晶、mp 81〜82 ℃。
1H NMR (400 MHz, CDCl3/TMS) δ(ppm): 2.85 (s, 1H), 7.20-7.40 (m, 9H), 7.44-7.56 (m, 2H), 7.62-7.74 (m, 4H)。
LRMS (EI) m/z: 284 (M+)。
HRMS: C21H16Oの計算値: 284.1201、測定値: 284.1188。
IR (crystal): 3545, 3083, 3054, 2221, 1596, 1488, 1333, 1156, 988, 760 cm-1
【0061】
フォスファジドP4はその構造がフォスファゼンP4と類似していることから、フォスファゼンP4と同様の反応性を持つことが期待できる。そこで、本発明者らのグループよって開発されたフォスファゼンP4触媒によるベンゾフェノンへのフェニルエチニルトリメチルシランの1,2付加反応〔Ueno, M.; Hori, C.; Suzawa, K.; Ebisawa, M.; Kondo, Y., Eur. J. Org. Chem., 1965-1968 (2005)〕に、合成したフォスファジドP4を用いることで、
フォスファジドP4の反応性の評価を行った。得られた結果を、次の表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
本反応はDBU、BEMP、t-Bu-P2 baseなどの有機塩基を触媒として用いた場合は全く進行
せず、t-Bu-P4 baseを用いたときのみ生成物を高収率で与えることが知られている。フォスファジド P4 を用いて同条件で本反応を行った結果、化合物(12)、(14)、(15)、(16)において、t-Bu-P4 baseを用いたときと同程度の収率で生成物を得ることができた。このことから、少なくとも本反応においてフォスファジドP4はフォスファゼンP4と同様の反応性を持つということがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明では、フォスファジドP4を安定な化合物として取り出し、また、触媒として有用であることを示している。本フォスファジドP4は、極めて高い熱安定性を有するとともに、フォスファゼンと同様の極めて強い塩基性を示し、利用価値の高い有機触媒として期待されるもので、高い機能性を有し、将来有機合成の分野でこの触媒が活用されることになる。
本フォスファジドP4化合物(I)は、従来のフォスファゼン触媒よりも安定性が高く、ま
た合成も簡便であり、さらに高分子への固定化も容易に可能であり、回収再利用が可能な環境調和型の触媒として有望で、新しい機能性有機触媒として有機合成のプロセスでの利用が期待できる。
本発明によるフォスファジドは有機合成における高機能触媒として様々な分子変換反応に利用が可能であり、とくに医薬品関連化合物のプロセス合成における環境に負荷のかからない合成法を提供する。本フォスファジドP4化合物(I)並びにその利用技術は、化学選
択性の高い環境調和型の合成プロセスを支える有機触媒としての利用を図る上で優れており、環境調和型の有機合成用の触媒および高分子固定化触媒としても優れている。
本発明は、前述の説明及び実施例に特に記載した以外も、実行できることは明らかである。上述の教示に鑑みて、本発明の多くの改変及び変形が可能であり、従ってそれらも本件添付の請求の範囲の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】フォスファゼン塩基の化学構造を示す。トリアミノイミノフォスフォラン骨格を基本P1ユニットとしている。t-Bu-P1塩基は一つのP1ユニットから構成され、t-Bu-P4塩基は4つのP1ユニットを持つ。
【図2】t-Bu-P4塩基により触媒される様々な反応を示す。
【図3】フォスファゼンP4に各種の置換基を導入することにより、特徴的な物理的性質、化学選択性が得られる可能性を示す。不斉官能基、フルオラスタグの導入、ポリマーへの担持、その他の置換基の導入などの可能性があることを示す。
【図4】従来のフォスファゼンP4の合成法を示す。これらの方法は中間生成物(2)、(3)、最終生成物であるフォスファゼンP4(4)の単離、精製が困難な他、低収率である。
【図5】従来のフォスファゼンP1-H(1)の合成法を示す。液体アンモニアを用いるなど、取り扱いの難しい合成法である。
【図6】フォスファゼンP1-H(1)の簡便な合成法を示す。
【図7】フォスファゼンP1-H(1)からフォスファジドP4(12)の合成経路を示す。
【図8】各種のフォスファジドP4(13)の合成法を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

(式中、Xは、同一でも互いに異なっていてもよく、それぞれ独立に、ジアルキルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基及びピペラジノ基からなる群から選択されたものである、あるいは、二つのXが一緒になり、該Xの間がアルキレン基で架橋されている、アルキレンジアミノ基、N-アルキルアルキレンジアミノ基及びN,N'-ジアルキル
アルキレンジアミノ基からなる群から選択されたものであり、Yは、置換されていてもよいアルキル基、ベンジル基以外の、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環式基及び高分子残基からなる群から選択されたものである)
で表されることを特徴するフォスファジド化合物又はその塩。
【請求項2】
Xが、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、又はピロリジノ基であり、Yが、置換されていてもよいフェニル基、ナフチル基、置換されていてもよいフェニルプロピル基、1-メチル-3-フェニルプロピル基、1-アダマンチル基、又はシクロヘキシル基であることを特
徴する請求項1に記載の化合物又はその塩。
【請求項3】
Xが、ジメチルアミノ基で、Yが、フェニル基、フェニルプロピル基、1-メチル-3-フェ
ニルプロピル基、又は1-アダマンチル基であることを特徴する請求項1又は2に記載の化合物又はその塩。
【請求項4】
一般式(II):
【化2】

(式中、Xは、同一でも互いに異なっていてもよく、それぞれ独立に、ジアルキルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基及びピペラジノ基からなる群から選択されたものである、あるいは、二つのXが一緒になり、該Xの間がアルキレン基で架橋されている、アルキレンジアミノ基、N-アルキルアルキレンジアミノ基及びN,N’-ジアルキルアルキレンジアミノ基からなる群から選択されたものであり、Zは、陰イオンである)
で表されるフォスホニウム塩を、脱プロトン化した後、アジド化合物Y−N3
(式中、Yは、置換されていてもよいアルキル基、ベンジル基以外の、置換されていても
よいアラルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環式基及び高分子残基からなる群から選択されたものである)
と反応させ、上記〔1〕に記載の一般式(I)のフォスファジド化合物
(式中、X及びYは、上記と同義である)
又はその塩を得ることを特徴とするフォスファジドの製造方法。
【請求項5】
一般式(III):
【化3】

(式中、Xは、同一でも互いに異なっていてもよく、それぞれ独立に、ジアルキルアミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基及びピペラジノ基からなる群から選択されたものである、あるいは、二つのXが一緒になり、該Xの間がアルキレン基で架橋されている、アルキレンジアミノ基、N-アルキルアルキレンジアミノ基及びN,N’-ジアルキルアルキレンジアミノ基からなる群から選択されたものである)
のフォスファゼンをPCl3と反応させ、得られた一般式(II)のフォスホニウム塩
(式中、Xは、上記と同義であり、Zは、陰イオンである)
を塩交換処理した後、脱プロトン化し、次にアジド化合物Y−N3
(式中、Yは、置換されていてもよいアルキル基、ベンジル基以外の、置換されていてもよいアラルキル基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよい複素環式基及び高分子残基からなる群から選択されたものである)
と反応させ、上記〔1〕に記載の一般式(I)のフォスファジド化合物
(式中、X及びYは、上記と同義である)
又はその塩を得ることを特徴とするフォスファジドの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一に記載の一般式(I)のフォスファジド化合物を活性成分として
含有することを特徴とする有機合成反応の求核反応触媒。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれか一に記載の一般式(I)のフォスファジド化合物を求核反応触媒と
して有機合成反応に使用する方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか一に記載の一般式(I)のフォスファジド化合物を溶液あるいは固
定化触媒として用いる方法。
【請求項9】
求核置換反応又は求核付加反応において、一般式(II):
【化2】

(式中、Nuは、水素、炭素求核基、酸素求核基、窒素求核基及び硫黄求核基からなる群から選択されたもの、そしてRは、同一でも互いに異なっていてもよく、それぞれアルキル基、アラルキル基、アリール基及びアルコキシル基からなる群から選択されたものを示す)
で表される有機ケイ素化求核性化合物に、請求項1〜3のいずれか一に記載の一般式(I)
のフォスファジド化合物を作用させることを特徴とする求核置換反応又は求核付加反応方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−30941(P2010−30941A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−193767(P2008−193767)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人日本薬学会「(26PW‐am119)新しい機能性P4塩基の合成研究」
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】