説明

高純度ジルコニウム、ハフニウム、タンタル及びニオブアルコキサイドの製造方法

【課題】高純度ジルコニウム、ハフニウム、タンタル及びニオブアルコキサイド(アルコレート)M(OR)の新規な製造方法、新規なタンタル及びニオブ化合物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(a)不純物として少なくとも0.05重量%の単核又は多核ハロゲン含有金属アルコキサイドを含む、ハロゲン含有量>200ppmの粗アルコキサイド生成物M(OR)を、(b)粗アルコキサイドの合計を基準に、多くとも30重量%のROH[RはC〜C12アルキル基]と混合し、(c)その後又は同時に、単核又は多核ハロゲン含有金属アルコキサイドを基準として過剰のアンモニアを配量する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度ジルコニウム、ハフニウム、タンタル及びニオブアルコキサイド(アルコレート)の新規な製造方法、新規なタンタル及びニオブ化合物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジルコニウム、ハフニウム、タンタル及びニオブアルコキサイド(アルコレート)は、化学蒸着(CVD)を用いて、対応する金属酸化物の蒸着に使用することができ、従って、例えば電子産業で使用される極めて抵抗性成分を製造するために価値ある出発化合物である。そのような金属酸化物層を、ゾルゲル法を用いて、加水分解によって、対応するジルコニウム、ハフニウム、タンタル及びニオブアルコキサイドから製造することができる。極めて高い誘電率は、例えば、ジルコニウム、ハフニウム及びタンタル酸化物層をいわゆるDRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・リード/ライト・メモリー)に使用することを可能とする。
【0003】
しかし、電子産業の課題は、そのような層のための出発材料、即ち、アルコキサイドの純度に関する極端な要求であり、その結果、例えばニオブ及びタンタルアルコキサイドを精製するための特別な方法の特許文献の記載に不足はない。
【0004】
最も一般的で、技術的に簡単で最も経済的な、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル及びニオブアルコキサイドの製造は、対応する金属塩化物とアルコールに基づく。広範囲にわたる調査が、D. C. Bradley, R. C. Mehrotra, I. P. Rothwell 及び A. Singh による書籍「Alkoxo and Aryloxo Derivatives of Metals」Academic Press, 2001 に記載されている。典型的手順は例えば DE 10113169 A1 に記載されている。
【0005】
金属塩化物からの製造は、アルコキサイドから分離すべき主たる不純物の一つとして、必然的に塩化物を生ずる。従って、蒸留前の粗タンタルエトキサイドのCl含有量は、およそ500〜1000ppm又はそれ以上である。例えば、DE 10113169 A1 に基づいて製造される粗生成物は、典型的には3000ppmを超えるClを含む。
【0006】
従って、塩化物の除去は、Ta及びNbアルコキサイドを精製するために、上述の特許の発明の最も頻繁に引用される主題でもある。これは、蒸留のみが唯一の限定的な適切な方法であるという事実に特に起因する。例えば、粗タンタルエトキサイドの簡単な高真空蒸留のみが、Cl含有量を約半分に減ずることが経験的に示される。充填カラムを用いる蒸留でより良好な結果が得られる。しかし、大部分のアルコキサイド、例えばタンタルエトキサイドは、たとえ低圧でも高沸点なので、この方法は、時間とエネルギーの観点から相当の出費を伴い、1mbarより低い操作圧力である技術的に費用のかかる製造を伴う。単蒸留の分離効果は、通常不十分であり、相当非経済的な複数カラム蒸留が必要である。これらの困難も、ジルコニウム及びハフニウムアルコキサイドからのClの除去を生じさせる。
【0007】
JP 2002161059 A2 の出願人は、エタノール性アルカリ金属水酸化物溶液、特にNaOH溶液を用いて粗タンタルエトキサイド(例えば、450ppmのClを含有する)を後処理することでこの問題を解決することを試みる。この方法はCl含有量を所望の低濃度範囲に減少させるが、そのような操作によるタンタルエトキサイドとアルカリ金属化合物との間の接触は、蒸留にかかわらず、生成物に望ましくない高いアルカリ金属含有量をもたらすことが経験的に示される。
【0008】
同様の手順がJP 06220069 A2 に提案され、それは、アルカリ金属ハイドライド(例えば、LiH)又はこれらのハイドライドのコンプレックス化合物を用いる。これもアルカリ金属イオンによるタンタルアルコキサイドの追加の汚染という問題を生じさせる。
【0009】
JP 06192148 A2 に使用される方法に、全く相違はない。ここで使用されるアルカリ金属又はアルカリ土類金属アルコキサイド、例えばリチウム又はナトリウムエトキサイドは、同様に、所望の方法でCl含有量を減らすが、前と同様に、生成物中のアルカリ金属イオン濃度は高く望ましくない。例えば、ナトリウムエトキサイドをタンタルエトキサイドに加えると、Na値は、その後蒸留するにもかかわらず、典型的には、1ppm> から、2〜4ppmに上昇する。
【0010】
最後に、JP 10036299 A2 も、アルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物を用いる後処理を開示するが、この場合はカーボネートを用いる。実質的にClのない生成物にアルカリ金属又はアルカリ土類金属の汚染の影響は、上述した特許出願と同様に、またもや不利である。該特許出願に提案された炭酸銀も、経済的理由のみで不利である。
【0011】
全ての上述の特許出願において、塩基性アルカリ金属及びアルカリ土類金属化合物を精製に使用する。このことは、タンタル及びニオブアルコキサイドの技術的に常套の製造方法において、金属五ハロゲン化物とアルコールとの反応の補助的塩基としてアンモニアを使用することで、費用のかかる蒸留を含む追加の後処理及び精製工程を用いることなく、例えば100ppmより少ないClを含む生成物を与えない又は認めないという事実に明らかに基づく。従って、先行技術の状態の教示は、タンタル又はニオブ塩化物とアルコールとの反応の補助塩基として、アンモニアを使用することで、100ppmより多いClを常に含む粗生成物を得られ、通常蒸留により更に精製する前はこの量の何倍ものClを含む粗生成物が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明の要約
従って、本発明の目的は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属化合物を使用することなく、蒸留により更に精製する前に、200ppmより少ない、特に100ppmより少ない及び好ましくは50ppmより少ないClを含む、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル及びニオブアルコキサイド粗生成物を製造することを可能とする方法を提供することである。従って、そのような製造方法は、従来技術的に不可能であった、低蒸留コストと、極めて広い範囲でアルカリを有さないで、Clの少ない生成物を組み合わせることを可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、先行技術状況の教示に反して、適切な、特定の選択された条件下で、アルコールとアンモニアを使用することで、後ほど蒸留する前に、200ppmより小さい、特に100ppmより小さい、好ましくは50ppmより少ないハロゲン含有量、特にCl含有量を有するジルコニウム、ハフニウム、タンタル及びニオブアルコキサイドを提供できることが、見出された。
【0014】
本発明は、高純度金属アルコキサイドM(OR)[Mは、Nb、Ta、Zr又はHfであり、好ましくはNb又はTaであり、M=Nb又はTaの場合、Xは5であり、M=Zr又はHfの場合、Xは4であり、Rは、互いに独立して、同じ又は異なるC〜C12アルキル基である]の製造方法であって、
・不純物として少なくとも0.05重量%、好ましくは0.1〜10.0重量%の単核又は多核ハロゲン含有金属アルコキサイドを含む、ハロゲン含有量>100ppm、場合により>200ppmの粗金属アルコキサイドM(OR)を、
・粗アルコキサイドの量の合計を基準として、多くとも30重量%、好ましくは4〜12重量%のアルコールROH[Rは、C〜C12アルキル基である]と混合し、
・その後又は同時に(例えば、アルコールROHへの先の溶解後)、単核又は多核ハロゲン含有金属アルコキサイドの量を基準とすると過剰のアンモニアであり、粗アルコキサイドの量の合計を基準とすると好ましくは0.1〜5.0重量%のアンモニアを計量して加える(配量する又は測って入れる)
ことを特徴とする製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
発明の詳細な説明
例で使用されるものを含み、明細書及び特許請求の範囲に使用されるものとして、もし他に明示的に記載されていないならば、全ての数値は、たとえ用語「約」を明示的に記載していなくても、まるで用語「約」を前に記載しているように読むことができる。更に、明細書に記載の数値範囲は、その中に含まれる全ての部分的範囲を含むことを意図する。
【0016】
好ましくは、本発明の方法において、R基は、C〜Cアルキルであり、HalはClである。特に好ましくは、本発明の方法において、R基はC〜Cアルキルであり、HalはClであり、MはTaである。極めて特に好ましい方法は、式(I)の化合物において、MはTa、Rはエチル、HalはClである方法である。
【0017】
タンタル及びニオブアルコキサイドの場合、この精製操作の本質的要旨は、粗生成物混合物中の、従来文献に記載されていない、下記化合物の存在による、分析的に検知されるハロゲン化物、好ましくはClの主部分の起源(出所又は由来)である:
(OR)Hal (I)
Mは、ニオブ又はタンタルであり、Rは、C〜C12アルキル基であり、Halは、F、Cl、Br及びIを含む群からのハロゲンであり、好ましくはClである。
【0018】
同様に、粗ジルコニウム及びハフニウムアルコキサイドの、分析的に検知されるハロゲン化物、好ましくはClの主部分の起源は、粗生成物混合物中の、下記、可能なコンプレックス化合物の存在に帰する:
(OR)4p−qHal (II)
ここで、q=1、2、3又は4であるが、主に1又は2であり、ジルコニウム及びハフニウムアルコキサイドの分子の複雑さのために、特定の枝分かれ、特に三級アルコキサイドを除き、p>1であり、実際は2、3又は4であるが、主に3又は4である。Zr及びHfアルコキサイドの複雑さ、即ち、オリゴマークラスターの存在については、例えば、D. C. Bradley, R. C. Mehrotra, I. P. Rothwell 及び A. Singh による「Alkoxo and Aryloxo Derivatives of Metals」Academic Press, 2001を参照されたい。ここで、Mはジルコニウム又はハフニウム、RはC〜C12アルキル基、Halは、F、Cl、Br及びIを含む群からのハロゲンであり、好ましくはClである。
【0019】
従って、本発明に基づく方法を用いて、粗アルコキサイドから除去される単核又は多核ハロゲン含有金属アルコキサイドは、本質的にM=Nb又はTaの場合、式M(OR)Halの二核ハロゲン含有化合物であり、本質的にM=Zr又はHfの場合、式M(OR)4p−qHalの単核又はそれ以上の多核コンプレックスハロゲン含有化合物である。
【0020】
特に特定の枝分かれの場合、特に三級アルキル基Rの場合、ジルコニウム及びハフニウムアルコキサイドについてもタンタル及びニオブアルコキサイドについても、単核ハロゲン含有金属アルコキサイド、即ち一般式(II)の化合物でpが1のものが、粗生成物混合物に不純物として存在することも可能である。
【0021】
本発明の構成内で、C〜C12アルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、n−ヘキシル、1,1−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1,2−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1,1−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、1,1,2−トリメチルプロピル、1,2,2−トリメチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル及びn−ドデシルである。
【0022】
好ましいC〜Cアルキル基は、特に、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル及びn−ペンチルを含む群に属するものであるが;エチル、n−プロピル、n−ブチル及びn−ペンチルが特に好ましい。
【0023】
好ましく精製することが可能な適する化合物の例は、タンタルメトキサイド、タンタルエトキサイド、タンタルn−プロポキサイド、タンタル2−プロポキサイド、タンタルn−ブトキサイド、タンタル2−ブトキサイド(=タンタルsec−ブトキサイド)、タンタルイソブトキサイド(=タンタル2−メチル−1−プロポキサイド)、タンタルtert−ブトキサイド、タンタルn−ペントキサイド及び対応するニオブ化合物である。タンタルエトキサイド、タンタルn−プロポキサイド、タンタルn−ブトキサイド及びタンタルn−ペントキサイドが特に好ましい。
【0024】
混合物中に存在し、M(OR)Hal又はM(OR)4p−qHalによって汚染された化合物M(OR)及びROHから離れ、不活性溶媒、即ち、金属化合物と反応しない溶媒を、新規な方法で更に使用することができる。そのような溶媒の例は、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン及びシクロヘキサン等の直鎖状、枝分かれ状、環状脂肪族炭化水素、又はトルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素、又はそれらの溶媒の混合物である。典型的には、追加で用いられるこれらの溶媒の重量割合は、金属化合物の重量を超えない。
【0025】
上述の粗金属オキサイドをもたらす合成工程は、本発明に基づく精製方法と無関係であるが、金属ハロゲン化物MHalからの合成が常に行われなければならない。そのような合成は、文献及び特許文献にしばしば記載されている;例えば、D. C. Bradley, R. C. Mehrotra, I. P. Rothwell 及び A. Singh による「Alkoxo and Aryloxo Derivatives of Metals」Academic Press, 2001を参照されたい。本発明に基づく方法は、MHalとROHから以外の方法、例えば、金属アミド又はアミド−イミドとROHからの方法、又は例えばアルコールROH中での金属Mの電気分解によって製造された粗金属アルコキサイドの精製に適用されない。
【0026】
上述したようにアンモニア/ROHを用いて反応したアルコキサイドは、生成したハロゲン化アンモニウムの濾過と、例えば減圧して蒸留によって全ての溶媒を除去することによって後処理される。本発明では、必須ではないが、濾過の前に、好ましくは減圧して、蒸留により使用したアルコールROHを除去することが有利である。もしこの除去を行う場合、より低い温度、好ましくは40℃より低い温度を選択することが重要である。より高い温度、特に80〜100℃及びより高い温度では、ハロゲン化アンモニウムが存在する場合、平衡で存在するHHalの濃度によって下記式(例として、タンタル及びニオブアルコキサイドを用いて詳細に示す)に基づいて金属アルコキサイドの反応が生ずる;明にするために、「ペンタアルコキサイド」M(OR)より実際に通常多く存在するダイマーアルコキサイドについて、該式を表し、簡単にする目的で参照する:
【化1】

【0027】
分子M(OR)が実際に存在する非ダイマー金属アルコキサイドのために、同様に下記の様に式で表した:
【化2】

【0028】
精製すべき生成物のハロゲン含有量は、高温でのこの反応で再び増加し、NH/ROHを用いる精製操作の成功は否定されるであろう。
【0029】
同様の反応を、ジルコニウム及びハフニウムアルコキサイドM(OR)について同様に表すことができる。
【0030】
NH/ROHを用いる反応後に得られる混合物を、蒸留によりROHを除去する前又は後で、脂肪族炭化水素(HC)、例えばn−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン又はシクロヘキサン、又は例えばトルエン又はキシレン等の芳香族炭化水素を用いて処理し、その後濾過する好ましい変形も有利である。本発明で加えるHCの量は、広い範囲で様々であるが;粗アルコキサイドの量を基準として、20〜200重量%の量が特に有利である。
【0031】
従って、新規な方法は、NH/ROHを用いる粗アルコキサイドの反応後の後処理の種々の好ましい変形を有する:
1)濾過、その後蒸留によるROHの除去
2)蒸留によるROHの除去、その後濾過
3)濾過、蒸留によるROHの除去、HCの添加、濾過
4)蒸留によるROHの除去、HCの添加、濾過
5)HCの添加、濾過、蒸留によるHC/ROHの除去
【0032】
実行できる、更により多くの考慮できる濾過/ROHの除去/HCの添加の順序がある。変形3)及び4)が、生成物の純度のために特に有利である。
【0033】
本発明に基づく粗アルコキサイドの精製は、通常、続いて蒸留が行われる。この蒸留は、今や大きな蒸留効果、即ち、相当の蒸留効果を有する蒸留装置又は充填カラムをもはや必要とせず、一度実行することで200より小さい、特には100より小さい、好ましくは50ppmより小さいHalを含むアルコキサイドを得られるということが、本発明の特に有利なことである。従って、本発明は、時間、エネルギー及び装置に関する節約を行うことで、金属アルコキサイド製造の経済性を相当改良する。
【0034】
本発明は、従来文献に記載のない化合物M(OR)Halと、少なくとも0.05重量%のM(OR)Hal、好ましくは0.1〜10重量%のM(OR)HalとM(OR)との混合物[Mは、Ta又はNbである]も提供する。
【0035】
好ましい化合物又は対応する混合物は、R=C〜Cアルキル及びHal=Clのものである。特に好ましい化合物は、タンタル化合物及びその混合物である[R=C〜Cアルキル及びHal=Clである]。きわめて特に好ましい化合物は、M=Ta、R=エチル及びHal=Clのものである。
【0036】
例えば金属アルコキサイドM(OR)又はM(OR)10を適当な化学量論比でハロゲン化物MHalと反応させることで、化合物M(OR)Halを製造することができる(「コンプロポーシオネイション:comproportionation」)。溶媒を用いて又は好ましくは溶媒を用いないで加熱して好ましくは40〜120℃で、このコンプロポーシオネイション反応を行うことができる。これらの化合物を製造するための可能な別法は、金属アルコキサイドとハロゲン化アセチルとの2:1のモル比での反応であり、例えばHal=Clの場合塩化アセチルとの反応である。
【0037】
例えば適する求核試薬(例えば、場合により置換されたアミノ基、アルキル基、アルキルチオ基又は他のアルコキシ基)でハロゲンを置換することによって形成される二次化合物用抽出物(又は遊離体)として、これらの新規な化合物を、使用することができる。
【0038】
より高度にハロゲン化された、混合金属アルコキサイド−ハロゲン化物、例えばM(OR)Hal又はM(OR)Halの製造にも、コンプロポーシオネイションは適する。
【0039】
下記の例は、限定することを意味することなく、例として本発明を説明する。
【実施例】
【0040】
例1
粗タンタルエトキサイドの精製
初期重量:
DE 10113169 A1に基づいて製造した2992gの粗未蒸留タンタルエトキサイド
299gのエタノール(無水)
15.5gのアンモニア、気体状(ガス)、無水
タンタルエトキサイド(3500ppmのCl)及びエタノールを反応容器に入れた;室温で冷却しないで、アンモニアを2時間かけて攪拌しながら導入した(約30℃まで発熱)。反応混合物を更に室温で2時間攪拌した。一夜間放置した後、水流ポンプで減圧し、最後に1mbarより低い高真空に減圧して最高で40℃でエタノールを除去した。1500mlのヘキサンをその後加え、混合物をヒダ付き濾紙で濾過した。その後ヘキサンを16mbar/80℃で、最後に<1mbar/80℃で除去した。
Cl(測色法又は比色法による):25ppm
【0041】
例2
タンタルエトキサイドの製造及び精製
53.8g(150mmol)の塩化タンタルを、30mlの乾燥ヘプタンに懸濁した。500ml(853mmol)の無水エタノールを半時間かけて計量して入れた。水/氷を用いて冷却しながら内温を30℃以下に保ちつつ、発熱を減らすためにエタノールを最初はゆっくり滴下した。混合物をその後25℃で半時間攪拌した。
その後、24.94g(1.464mol)のアンモニアを1.5時間かけて最大30℃で(氷/水を用いて冷却しながら)、入れた。一夜間放置した後、塩化アンモニウムを濾過で除き、エタノールを2mbarで、最後に1mbar>の高真空で減圧蒸留して除いた。
4.3gの無水エタノールを、得られた42.9gの粗エトキサイドに加えた。その後、2.07g(121mmol)のアンモニアを1時間かけて室温で入れた。23℃で更に1.5時間攪拌した後、エタノールを<40℃で除き、40mlのヘキサンを加え、混合物を濾過した。その後ヘキサンを20mbar/<40℃で蒸留して除いた。Cl(測色法による):33ppm
【0042】
例3
ニオブエトキサイドの製造及び精製
40.5g(150mmol)の塩化ニオブを、30mlの乾燥ヘプタンに懸濁した。550gの無水エタノールを半時間かけて計量して入れた。水/氷を用いて冷却しながら内温を40℃以下に保ちつつ、発熱を減らすためにエタノールを最初はゆっくり滴下した。混合物をその後25℃で半時間攪拌した。
その後、16.61g(975mmol)のアンモニアを1.5時間かけて最大35℃で(氷/水を用いて冷却しながら)、入れた。塩化アンモニウムを濾過で除き、エタノールを20mbarで、最後に1mbar>の高真空で減圧蒸留して除いた。
3.5gの無水エタノールを、得られた粗エトキサイドに加えた。その後、1.69g(992mmol)のアンモニアを23℃で半時間かけて入れた。23℃で更に2時間攪拌した後、40mlのヘキサンを加え、混合物を濾過し、フィルター上の塩化アンモニウムをヘキサンを用いてすすいだ。ヘキサン溶液を蒸留した;ヘキサンの蒸留後得られたニオブエトキサイドは、約40ppmのClを含んでいた。160℃/0.49mbarで蒸留後、35.9g(理論量の75%)のニオブエトキサイドを得た。Cl(測色法による):20ppm
【0043】
例4
タンタルエトキサイドと塩化タンタルからTa(OEt)Clの製造
3.58g(10mmol)の塩化タンタルと36.56g(90mmol)のタンタルエトキサイドを攪拌しながら混合し80℃で7時間加熱した。冷却後、底に少量の固体を有する液体生成物を得た。液相は、傾斜して移し(デカントし又は上澄み液を移し)(約3g)、それはTa(OEt)Clから成る。
HNMR(C、400MHz、δはTMS基準):1.24(t、J=6.85Hz);1.32(t、J=6.85Hz);1.44(t、J=6.85Hz);4.62(m、br);4.85(m、br)
元素分析%: C26.9;H5.65;Cl4.42
1845ClOTa:C27.1;H5.9 ;Cl4.32
【0044】
例5
タンタルエトキサイドと塩化アセチルからTa(OEt)Clの製造
40.62g(100mmol)のタンタルエトキサイドを、100mlの乾燥トルエンに入れた。3.92g(50mmol)の塩化アセチルを滴下して加え、混合物を1時間還流した。その後全ての揮発成分を30℃/0.5mbarまでで蒸留で除いた。液体残部を少量の固体から傾斜して移した。それは、Ta(OEt)Clから成っていた。
HNMR(C、400MHz、δはTMS基準):1.24(t、J=6.85Hz);1.31(t、J=6.85Hz);1.44(t、J=6.85Hz);4.62(m、br);4.85(m、br)
【0045】
例6
文献に基づくTa(OEt)Clの製造:Kapoor, R.N.; Prakash, Sarla; Kapoor, P.N. Indian Journal of Chemistry (1967), 5(9), 442-3
(本発明に基づかない、Ta(OEt)Clと異なるものであることを確認する比較例)
20.3g(50mmol)のタンタルエトキサイドを100mlの乾燥トルエンに入れた。3.92g(50mmol)の塩化アセチルを滴下して加え、混合物を1時間還流した。全ての揮発性成分をその後30℃/0.5mbarまでで蒸留で除去した。白色ワックス状残渣:Ta(OEt)Cl
融点:61〜65℃
HNMR(C、400MHz、δはTMS基準):1.21(12H、t、J=6.85Hz);1.30(6H、t、br);1.48(6H、t、J=6.85Hz);4.59(4H、m、br);4.74(4H、m、J=6.85Hz);4.85(8H、m、br)
元素分析%: C22.7;H4.53;Cl9.15
20ClOTa:C24.2;H5.08;Cl8.94
【0046】
例7
コンプロポーシオネイションによるTa(OEt)Clの製造(本発明に基づかない、Ta(OEt)Clと異なるものであることを確認する)
11.02g(30.8mmol)の塩化タンタルと50.00g(123mmol)のタンタルエトキサイドを攪拌しながら混合し80℃で6時間加熱した。冷却後、均一な白色ワックス状生成物を得た。
融点:65℃
HNMR(C、400MHz、δはTMS基準):1.21(12H、t、J=6.85Hz);1.30(6H、t、br);1.48(6H、t、J=6.85Hz);4.59(4H、m、br);4.74(4H、m、J=6.85Hz);4.85(8H、m、br)
【0047】
例8
粗ハフニウムエトキサイドの精製
初期重量:
DE 10113169 A1 に基づいてHfClから製造される25gの粗未蒸留ハフニウムエトキサイド
2gの無水エタノール
38mlのヘキサン
1.5gのアンモニア、気体状及び無水
ハフニウムエトキサイド(Cl>1000ppm)、エタノール及びヘキサンを反応容器に入れた;室温で、冷却しないで、攪拌しながらアンモニアを35分間かけて入れた。その後反応混合物を、更に室温で2(1/4)時間攪拌した。約7.5gのエタノール/ヘキサン混合物をその後水流ポンプで減圧しながら最高40℃で取り除いた。その後19mlのヘキサンを加え、混合物をひだ付き濾紙で濾過した。その後ヘキサンを16mbar/80℃、最後に<1mbar/70℃で除去した。
Cl(測色法による):128ppm
【0048】
本発明を説明することを目的として、詳細に説明したが、そのような詳細な説明は、単にそのような目的のためのものであり、特許請求の範囲によって制限され得ることを除いて、本発明の精神と範囲から離れることなく、当業者であれば種々の変更を行うことができることを、理解するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高純度金属アルコキサイドM(OR)[Mは、Nb、Ta、Zr又はHfであり、M=Nb又はTaの場合、Xは5であり、M=Zr又はHfの場合、Xは4であり、Rは、互いに独立して、同じ又は異なるC〜C12アルキル基である]の製造方法であって、
(a)不純物として少なくとも0.05重量%の単核又は多核ハロゲン含有金属アルコキサイドを含む、ハロゲン含有量>200ppmの粗金属アルコキサイド生成物M(OR)を、
(b)粗アルコキサイドの合計を基準として、多くとも30重量%のアルコールROH[Rは、C〜C12アルキル基である]と混合し、
(c)その後又は同時に、単核又は多核ハロゲン含有金属アルコキサイドの量を基準とすると過剰のアンモニアであり、粗アルコキサイドの合計を基準とすると好ましくは0.1〜5.0重量%のアンモニアを計量して加える
製造方法。
【請求項2】
Mは、Ta又はNbであり、不純物として存在する単核又は多核ハロゲン含有金属アルコキサイドは、化合物M(OR)Halである[Halは、F、Cl、Br又はIであり、Rは、請求項1に規定した通りである]請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
Mは、Zr又はHfであり、不純物として存在する単核又は多核ハロゲン含有金属アルコキサイドは、少なくとも1の化合物M(OR)4p−qHalである[Halは、F、Cl、Br又はIであり、qは、1、2、3又は4であり、pは、2、3又は4であり、Rは、請求項1に規定した通りである]請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
R基は、C〜Cアルキルであり、Halは、Clである請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
OR基は、エトキシ基であり、Mは、Taである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
Rは、請求項1に規定した通りであり、Mは、Ta又はNbであり、Halは、F、Cl、Br及びIを含んで成る群からのハロゲン、好ましくはClである化合物M(OR)Hal。
【請求項7】
Rは、C〜Cアルキル基であり、Halは、Clである請求項6に記載の化合物M(OR)Hal。
【請求項8】
Ta(OEt)Clである請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
少なくとも0.05重量%の請求項6に記載の化合物M(OR)Halを含む、M(OR)とM(OR)Halの混合物。
【請求項10】
Rは、C〜Cアルキル基であり、Halは、Clである請求項9に記載の混合物。
【請求項11】
Ta(OEt)ClとTa(OEt)から成る請求項9に記載の混合物。
【請求項12】
ハロゲン含有量は、0.1〜10.0重量%である請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
アルコールROHの量は、4〜12重量%である請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
アンモニアの量は、0.1〜5.0重量%の間である請求項1に記載の製造方法。

【公開番号】特開2007−70357(P2007−70357A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−228987(P2006−228987)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(303036245)ハー ツェー シュタルク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (18)
【氏名又は名称原語表記】H.C. Starck GmbH
【住所又は居所原語表記】Im Schleeke 78−91, D−38642 Goslar, Germany
【Fターム(参考)】