高脂血症を改善するための組成物および方法
本発明は、ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)抑制剤を、肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)抑制剤と組み合わせて投与することによって、高脂血症を治療するための組成物および方法、肝臓脂肪症の発現を防止する方法、高脂血症を治療するために有用な薬剤を同定する方法、ならびに、MTPおよびL−FABP活性の抑制剤をスクリーニングする方法を提供する。また、MTP抑制剤およびL−FABP抑制剤を含む医薬組成物を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して高脂血症および肥満に対する薬および治療に関するものであり、特には、高脂血症を改善するための組成物および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高脂血症とは上昇した血中脂質濃度を言及するものであり、トリグリセリドおよびコレステロールによって表されるものに留まらない。高脂血症は、リポタンパク代謝の異常な脱着の兆候を表す異常脂質血症としても定義される。人間では、低比重リポタンパク質(LDL)の血中濃度の増加が、冠状動脈性心臓病(CHD)の高いリスクと強く関係している。一方、高比重リポタンパク質(HDL)の血中濃度の増加は、CHDの低いリスクと関係している。トリグリセリド高含有のリポタンパク質(超低比重リポタンパク:VLDL)の血中濃度は、CHD、メタボリック症候群、および2型糖尿病のリスクに応じて変化する。CHDに関係する疾病率および死亡率の両方を減少させるためには、特別食または薬理療法を介してLDLを低下させることが示されている。CHD、膵炎、および2型糖尿病の発現を減少させるためには、特別食または薬理療法を介してプラズマトリグリセリドを減少させることが示されている。
【0003】
人間の肝臓は、VLDLの生産のための主な組織部位である。一部のLDLは肝臓によって直接的に生産されるが、大部分のLDLはVLDLの代謝作用から生成される。VLDLおよびLDLの両方の粒子は、単一のアポリポタンパク質分子(apoB)を含む。apoBは、脂質の安定した球状のエマルジョン粒子を形成する能力を介して、VLDLおよびLDLの粒子の基本的な構造組成物となる。VLDLのコアは主にトリグリセリドから成り、脂肪酸を介して肝外組織にエネルギーを提供する。肝臓でのVLDLの分泌に続いて、コアトリグリセリドが脂肪酸に分解され、この脂肪酸は特定の受容体およびタンパク結合脂肪酸(FABPs)によって急速に取り込まれる。その後、脂肪酸は、トリグリセリドとして蓄えられるか、または、酸化を介してエネルギーおよび熱を生産するために用いられるかのいずれかとなる。LDLのコアは、主にコレステリルエステルから成り、主に、特定の細胞表面受容体に結合することによって、肝外組織にコレステロールを提供する。ほとんどの肝外組織は、厳格に調節された受容体(LDL受容体)によってLDLを取り込むことができる。正常な状態の下で、LDL受容体の発現は細胞コレステロール濃度と逆に変化するため、LDLの取り込みに介在するLDL受容体が過剰なコレステロールの吸収をもたすことはない。しかしながら、仮に、LDLが酸化によって(通常、血中に長期的に存在することの結果として)修飾されると、修飾LDLは、細胞コレステロール濃度と関係せずに発現する受容体を介して、マクロファージによって取り込まれる。過剰な血漿LDL濃度は、血漿中に存在する期間の増加、酸化修飾の増加、および、動脈壁マクロファージによる取り込みの増加と関係する。動脈壁マクロファージによる酸化修飾されたLDLの取り込みは、動脈壁内の炎症およびアテローム性動脈硬化症の発現を引き起こす次の事象を開始する。アテローム性動脈硬化症は主に、熱中症、脳梗塞、および最終的には心臓麻痺の原因となる。
【0004】
アポリポプロテインB含有のリポプロテインの肝臓での生産は、同化およびエネルギーの要求に対して、必須脂質および脂溶性栄養素が周辺組織に運ばれることについての主要経路である。識別できる3つの遺伝子生産物、すなわち、アポリポプロテインB(apoB)、MTP、および肝臓脂肪酸が結合したタンパク質(L−FABPまたはLFABP)は、「脂肪結合」構造ドメインを分け合う。上記「脂肪結合」構造ドメインは、超低比重リポタンパク(VLDL)会合/分泌に必須である。
【0005】
apoBは、非常に大きく(>500kDa)、上記会合のために必要な両親媒性タンパク質であり、トリグリセリドを豊富に含有するVLDLの分泌物である。肝臓および腸が十分なサイズ(〜35kDa)のapoBを生産する能力を喪失することは、apoB含有リポタンパク質の会合および分泌についての阻害と関係する。通常、肝臓によるapoBの発現は構造性であり、肝臓におけるapoB含有リポタンパク質の分泌の変化は、新規に合成されたapoBの量の変化による結果である。
【0006】
ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)は、脂質輸送タンパク質、ならびに、apoBの折り畳みおよび転移を促進するものの両方として働く。MTPは、4つの主な脂質の種類(遊離コレステロール、リン脂質、トリグリセリド、およびコレステロールエステル)を、2つの工程のプロセスを介して、新生apoB含有リポタンパク質粒子へ移送することを促進する。多くのこうした協調するMTP依存プロセスの1つを阻止することは、プロテアソームによる新生apoBの同時翻訳の低下を引き起こす。
【0007】
肝臓でのVLDL会合および分泌は、個々の間で高度に可変であり、栄養状態の変化に対して敏感である。VLDL分泌中のこの栄養変化は、主要な脂質合成酵素の発現レベルにおけるステロール調節エレメント結合タンパク質の媒介による変化と関係している。肝臓による新規の脂質合成率が減少するとき(例えば断食)、脂肪組織によって供給される脂肪酸は、グリセロ脂質合成およびVLDL会合/分泌に対して十分な基質を提供することができる。肝臓によるMTPおよびL−FABPの両方の発現レベルの変化は、グリセロ脂質生合成およびVLDL会合/分泌への脂肪酸の流動を制御する。
【0008】
MTPの発現はapoBの分泌を律速するための理想的な目的となり、MTPの抑制は、高脂血症を治療的に改善するための理想的な目的になると考えられている。いくつかの研究によれば、MTP抑制剤を用いたマウスの処理、または、MTP遺伝子ノックアウトのいずれかによって、MTPの機能的な発現を低下させることは、アテローム性動脈硬化症に対して感受性を増加するように遺伝的改造をされたマウスにおいて、アテローム性動脈硬化症の形成を顕著に減少させることが示されている。MTP抑制剤は、肝臓のリポタンパク質分泌を阻害し、血漿脂質濃度を低下させるが、それらはまた、肝臓脂肪症(例えば脂肪肝の発現)の原因でもある。よって、MTP抑制剤は、高脂血症(心臓病の主な原因)に対して効果的であるが、それらは肝臓脂肪症の原因となるため、安全ではなく、または実用的ではない。したがって、脂肪肝の発現を引き起こすことなく、高脂血症および肥満を治療するために組成物および方法が求められている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、MTPとL−FABP活性の同時抑制が、肝臓脂肪症(脂肪肝)を引き起こすことなく、高脂血症を改善(例えば紡糸または抑制)するという発見に基づいている。この独創性に富んだ発見は、癌(例えば、肝臓癌細胞)の治療、スクリーニング、リスクアセスメント、予後診断、診断、および治療法の発展のために有用である。
【0010】
したがって、本発明は、治療を必要とする被験者に、治療効果のある量のミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)抑制剤を、治療効果のある量の肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)抑制剤と組み合わせて投与することによって、高脂血症を治療する方法を提供する。一実施形態では、L−FABP抑制剤は小分子である。他の実施形態では、MTP抑制剤が小分子であって、L−FABP抑制剤と組み合わせて投与されると、脂質転移によって、肝臓脂肪症を引き起こすことなしに、血漿中トリグリセリド濃度が減少する。MTPおよびL−FABPの模範的な小分子抑制剤には、これに制限されないが、それぞれ、8aRとして設計されたジアミノインダン、および3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)が挙げられる。
【0011】
他の実施形態では、MTP抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドと、または当該ポリヌクレオチドの機能性断片と、ハイブリダイズするdsRNAである。他の実施形態では、L−FABP抑制剤は、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドと、または当該ポリヌクレオチドの機能性断片と、ハイブリダイズするdsRNAである。加えて、癌細胞(例えば肝臓癌細胞)においてMTPおよびL−FABPの濃度が上昇しているかどうかを測定する方法、およびそのような癌を治療するために有用な薬剤を同定するための方法を提供する。さらに、高脂血症または肝臓癌をかかえる被験者を治療するための治療規制を観測する方法を提供する。このように、本方法は、肝臓脂肪症の発現を防止したまま高脂血症を改善する方法として用いられてもよい。
【0012】
本発明は、治療を必要とする被験者からの細胞試料を少なくとも1つの検査薬と接触させ、さらに、接触に続くMTPおよびL−FABPの発現の減少を検出することによって、高脂血症または肝臓癌を治療するために有用な薬剤を同定する方法と関係する。当該方法では、接触に続くL−FABP発現の減少の検出が、高脂血症を治療するために有益な薬剤を同定する。一実施形態において、上記方法は、ハイスループット法で行われてもよい。他の実施形態では、上記方法は、オーダーメイド医療を実行するための方法を提供する。当該方法における治療は、被験者の肝臓細胞の特徴に基づいて、個別の被験者に合わせられる。本発明の方法は、例えば、被験者からの細胞試料を少なくとも1つの検査薬と接触させることによって行われることができる。当該方法において、接触の後に増加したMTPおよびL−FABP活性または発現を検出することが、その薬剤を用いた治療の効果を同定する。
【0013】
本発明は、L−FABP活性または発現の抑制剤に対するスクリーニングの方法であって、MTPおよび/またはL−FABPを発現している細胞を、少なくとも1つの検査薬と接触させる工程、および、接触に続くL−FABPの発現または活性の減少を検出する工程を含んでおり、接触に続くL−FABPの発現または活性の減少を検出することが、L−FABP抑制剤としての薬剤を同定する方法をも提供する。
【0014】
本発明は、また、MTPおよびL−FABP活性の抑制剤に対するスクリーニングの方法であって、MTPおよびL−FABPを発現している細胞を、少なくとも1つの検査薬と接触させる工程、および、接触に続くMTPおよびL−FABPの発現の減少を検出する工程を含んでおり、接触に続くMTPおよびL−FABPの発現の減少を検出することが、MTPおよびL−FABPの抑制剤としての薬剤を同定する方法をも提供する。
【0015】
本発明は、さらに、L−FABP活性抑制剤と組み合わせてMTP抑制剤を用いる治療に適している、被験者の肝臓癌細胞を同定する方法と関係する。当該方法は、対応正常細胞におけるMTPおよびL−FABP活性と比較して、細胞試料におけるMTPおよびL−FABP活性の上昇を検出する工程、それによって、L−FABP活性抑制剤と組み合わせてMTP抑制剤を用いた治療に適した肝臓癌細胞を同定する工程を含んでいる。このように、上記方法は、癌(例えば肝臓癌)を有する被験者が、本発明の抑制剤を用いた治療に対して反応が良いかどうかを決定するための手段を提供する。上記方法は、例えば、対応正常細胞と比較して、被験者の細胞試料におけるMTPおよびL−FABP活性の上昇を検出することによって行われてもよく、当該方法では、MTPおよびL−FABPの上昇した濃度を検出することは、被験者が抑制剤を用いた治療から益を得ることができることを示している。上記方法は、さらに、MTPもしくはL−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNAと、またはその機能的断片と細胞を接触させる工程、および、接触に続くMTPもしくはL−FABPの発現または活性の減少を検出する工程、それによって、肝臓癌細胞がこのような治療に適しているかを確かめる工程を含んでいる。
【0016】
他の態様では、本発明は、例えばC型肝炎ウイルス(HCV)などによるウイルス感染を改善し、肝臓脂肪症、炎症性肝臓疾患、線維症、肝硬変、肝不全、および/または肝細胞癌の発現を減少するための方法を提供する。MTP抑制剤は、HCV生産を減少することが明らかにされているが、MTP抑制剤によって引き起こされる肝臓脂肪症の発現は、肝硬変および肝細胞癌の形成を実際に促進するだろう。一実施形態において、L−FABPおよびMTP脂質転移活性の同時抑制は、肝臓脂肪症ならびにその後の肝硬変および肝細胞癌の形成を引き起こすことなしに、HCV感染の進行を低下させるだろう。
【0017】
本発明の態様において、細胞試料は、例えば、癌を患う被験者の生体から得られた腫瘍試料、外科手術(例えば腫瘍を除去または減量するための外科的処置)によって得られた腫瘍試料、または、被験者の体液の試料などを含む、任意の試料であってもよい。
【0018】
一般に、必須ではないが、スクリーニング法は、例えば培養液中または固体担体上などの生体外で、細胞試料と接触させることによって行われる。このように、上記方法は、ハイスループット(high-throughput)法に都合よく適用できる。ハイスループット法では、同様のまたは異なる、多く(例えば2つ以上)の細胞試料が並行して調査される。よって、一実施形態では、候補薬は、単独の被験者からのいくつかの細胞試料上で検査されてもよい。これによれば、例えば、被験者に投与される薬剤の特に効果的な濃度を同定すること、または、被験者に投与される特に効果的な薬剤を同定することなどが可能になる。
他の実施形態では、ハイスループット法は、最もよい(最も効果的な)薬剤または薬剤の組み合わせを治療手段に用いることができるように、被験者の癌細胞上で、2つ、3つ、4つ、それ以上の異なる検査薬を、単独または組み合わせて試験することを可能にする。したがって、様々な実施形態では、ハイスループット法は、異なる被験者の異なる細胞試料を、同じ量の候補薬と接触させること;または、単独の被験者の異なる細胞試料を、異なる量の候補薬と接触させること;または、2人以上の異なる被験者の異なる細胞試料を、同量または異なる量の、異なる候補薬と接触させることによって実行される。さらに、スループット法によれば、例えばコントロール試料(ポジティブコントロールおよび/またはネガティブコントロール)を、例えば検査された薬剤を用いて効果的に治療される既知の細胞試料などの検査試料と、並行して実施することが可能になる。様々に例示した方法もまた意図したものである。
【0019】
他の態様では、本発明は、本発明の組成物を備えるキットを提供する。一実施形態では、上記キットは、さらに、本発明の方法を実施するための説明書を提供する。
【0020】
よって、本発明は、L−FABP脂質転移活性についての遺伝子の不活性化または化学的抑制のいずれかによる、L−FABPの機能的な発現を阻害することは、MTPが、脂肪肝の発現を引き起こすことなく、血漿中脂質を減少できるようにするということを実証する。単独のMTP抑制剤は、血漿中脂質濃度を減少する効果的な手段であるが、脂肪肝の関連発現によって、単独のMTP抑制剤は、高脂血症を低下するための安全な治療規制から除外される。したがって、MTP抑制剤と組み合わせた、L−FABP脂質転移活性の抑制剤は、肝臓脂肪症の発現を引き起こすことなしに、高脂血症を改善する。
【0021】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、上記説明および特許請求の範囲から明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1A〜図1Cは、MTPおよびL−FABPが、mRNAおよびプロモーター活性レベルの両方において、類似の細胞型特異性の違いを明らかにすることを示すグラフ図である。図1Aは、MTP(SEQ ID NO:16)およびL−FABP(SEQ ID NO:17)の両方のプロモーター(ラット)の近位領域内における保存DR1要素(5’および3’六量体ハーフサイト(half site)には下線を引いている)を示している。
【図1B】図1Bは、MTPおよびL−FABPが、mRNAおよびプロモーター活性レベルの両方において、類似の細胞型特異性の違いを明らかにすることを示すグラフ図である。図1Bは、L35細胞およびFAO細胞におけるMTPおよびL−FABPのmRNAレベルのサイバーグリーン(sybr green)リアルタイムPCR解析の結果を示している。全ての値を、36B4のmRNAレベルに対して規格化した。誤差バーは、トリプリケート(triplicate)サンプルによる標準偏差を示している。
【図1C】図1Cは、MTPおよびL−FABPが、mRNAおよびプロモーター活性レベルの両方において、類似の細胞型特異性の違いを明らかにすることを示すグラフ図である。図1Cは、MTP(-135/+66)またはL−FABP(-141/+66)のいずれかのプロモーターに由来するルシフェラーゼ構築体が、L35細胞およびFAO細胞中に一時的に導入されたことを示している。変異型DR1要素を含む構築体は、以下に説明するように、各プロモーターの5’六量体ハーフサイトにおけるACからTGへの塩基対変化から構成される。ルシフェラーゼ活性は、黒いバー(FAO細胞)と白いバー(L35細胞)とによって表されている。全てのルシフェラーゼ値を、Renillaコントロールに対して規格化した。誤差バーは、トリプリケート(triplicate)サンプルによる標準偏差を示している。
【図2A】図2Aは、COUP−TFIIが、L−FABPプロモーター活性のレプレッサーとして働く近位DR1サイトと結合することを示す模式的な図である。図2Aは、放射性同位体標識されたL−FABP−DR1プローブによるEMSAを使用して、L35細胞とFAO細胞由来との核抽出物を比べることによって、異なる複合体が得られたことを示している。L35−/FAO−特異的な複合体におけるCOUP−TFIIの存在を評価するために、L−FABP−DR1プローブとの培養中、核酸抽出物に、COUP−TFIIに対して特異的な抗体を加えた。抗体を追加したL35特異的なCOUP−TFII複合体、および抗体なしのL35特異的なCOUP−TFII複合体を、それぞれ、黒い矢印および白い矢印によって示している。
【図2B】図2Bは、COUP−TFIIが、L−FABPプロモーター活性のレプレッサーとして働く近位DR1サイトと結合することを示す模式的な図である。図2Bは、FAO細胞中のCOUP−TFIIの同時導入がL−FABPプロモーター活性を減少させることを示している。ラットL−FABPプロモーターの配列-141/+66を含むルシフェラーゼレポータープラスミドを、図に示された量のCOUP−TFII発現プラスミドと共に、FAO細胞中に同時導入した。変異型DR1要素を含む構築体は、図1に示す通りである。全てのルシフェラーゼ値を、Renillaコントロールに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図3A】図3Aは、L35(COUP−TFII)細胞およびFAO(PPARα/RXRα)細胞におけるDR1要素との細胞型特異的な複合体形成が、核内受容体COUP−TFII:PPARα/RXRαの相対的発現率を反映することを示す模式的なグラフ図である。図3Aは、放射性同位体標識されたL−FABP−DR1プローブまたはMTP−DR1プローブによるEMSAを使用して、類似のFAO特異的複合体が得られたことを示している。FAO特異的な複合体におけるPPARα/RXRαの存在を評価するために、核酸抽出物を、L−FABP−DR1プローブまたはMTP−DR1プローブのいずれかと培養中に、PPARα(P)、RXRα(R)、またはCOUP−TFII(C)に対して特異的な抗体を加えた。
【図3B】図3Bは、L35(COUP−TFII)細胞およびFAO(PPARα/RXRα)細胞におけるDR1要素との細胞型特異的な複合体形成が、核内受容体COUP−TFII:PPARα/RXRαの相対的発現率を反映することを示す模式的なグラフ図である。図3Bは、L35細胞とFAO細胞とを比較したChIP解析による結果を示しており、当該解析は、COUP−TFIIおよびPPARαに特異的な抗体を利用して行われた。図に示すように、領域特異的DNAの相対的な量は、L−FABP−DR1またはMTP−DR1のいずれかのプロモーター領域に対して特異的なプライマーを用いて、リアルタイムPCRによって測定された(黒いバー)。末端の非翻訳領域の相対的なレベルは、領域特異性を証明するために示される(白いバー)。以下に説明されるように、全ての値を、IgGを用いた免疫沈降に対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図3C】図3Cは、L35(COUP−TFII)細胞およびFAO(PPARα/RXRα)細胞におけるDR1要素との細胞型特異的な複合体形成が、核内受容体COUP−TFII:PPARα/RXRαの相対的発現率を反映することを示す模式的なグラフ図である。図3Cは、L35細胞(白いバー)およびFAO細胞(黒いバー)における、COUP−TFII、RXRα、およびPPARαのmRNAレベルのリアルタイムPCR解析による結果を示している。全ての値を36B4のmRNAレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図4A】図4Aは、L35細胞のPPARα/RXRα作用薬処理が、L−FABPおよびMTPのmRNAの協調的な誘発、DR1サイト依存的なプロモーター活性レベルの増加、ならびにapoB分泌能力の回復を可能にすることを示す模式的なグラフ図である。図4Aは、図に示すように、リアルタイムPCRを使用して、PPARα作用薬WY−14,643(WY)、RXRα9−cisレチノイン酸(RA)作用薬、または賦形剤(DMSO)のいずれかと48時間処理したL35細胞と、未処理L35細胞(−)とを比較することによって、相対的なL−FABPとMTPとのmRNAレベルを測定したものを示している。WY/RAは、両方の作用薬を同時に用いて処理したL35細胞を示している。全ての値を、36B4のmRNAレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateコントロールによる標準偏差を示している。
【図4B】図4Bは、L35細胞のPPARα/RXRα作用薬処理が、L−FABPおよびMTPのmRNAの協調的な誘発、DR1サイト依存的なプロモーター活性レベルの増加、ならびにapoB分泌能力の回復を可能にすることを示す模式的なグラフ図である。図4Bは、野生型および変異型の両方のDR1ルシフェラーゼレポーター構築体を利用して、未処理L35細胞(−)と、上述のように48時間処理した細胞とを比較することによって、L−FABPおよびMTPの両方に対する相対的なプロモーター活性レベルを測定したことを示している。プロモーター活性については、野生型を白いバーとして、変異型DR1構築体を黒いバーとして示している。全てのルシフェラーゼ値をRenillaコントロールに対して規格化した。誤差バーは、triplicateコントロールによる標準偏差を示している。
【図4C】図4Cは、L35細胞のPPARα/RXRα作用薬処理が、L−FABPおよびMTPのmRNAの協調的な誘発、DR1サイト依存的なプロモーター活性レベルの増加、ならびにapoB分泌能力の回復を可能にすることを示す模式的なグラフ図である。図4Cは、〔35S〕−メチオニンで標識する前に、72時間、1μM9−cisレチノイン酸および10μM WY−14,643がない場合(レーン1〜3)、または存在する場合(レーン4〜6)において、L35細胞を培養した結果を示している。培養液を、放射能の添加の24時間後に採集した。分泌されたapoBを、ポリクローナル抗apoB抗体を用いて免疫沈降し、SDS−PAGE(4〜12%)で分離した。標識化されたタンパク質を、オートラジオグラフィーによって検出した。apoB48およびapoB100の位置を、分子量マーカーおよびヒトLDL標準(human LDL standards)によって測定した。
【図5A】図5Aは、L35細胞のPPARα/RXRα作用薬処理が、COUP−TFII:PPARα/RXRαの核内受容体を減少させ、結果的に、L−FABPおよびMTPの両方のプロモーターの近位DR1領域の占有を、抑制的COUP−TFII複合体から活性化PPARα/RXRα複合体に変化させることを示すグラフ図である。図5Aは、リアルタイムPCRを使用して、図に示すように、48時間、WY−14,643および9−cisレチノイン酸を同時に処理したもの(黒いバー)またはDMSOで処理したもの(灰色のバー)と、未処理L35細胞(白バー)とを比較することによって、COUP−TFII、RXRαおよびPPARαの相対的なmRNAレベルを測定した結果を示している。全ての値を、36B4mRNAのレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図5B】図5Bは、L35細胞のPPARα/RXRα作用薬処理が、COUP−TFII:PPARα/RXRαの核内受容体を減少させ、結果的に、L−FABPおよびMTPの両方のプロモーターの近位DR1領域の占有を、抑制的COUP−TFII複合体から活性化PPARα/RXRα複合体に変化させることを示すグラフ図である。図5Bは、未処理のL35細胞およびFAO細胞と、WY−14,643および9−cisレチノイン酸の両方で処理したL35細胞(L35W/R)とを比較したChIP解析による結果を示しており、当該回折は、図に示すように、COUP−TFIIおよびPPARαに特異的な抗体を利用して行われた。図に示すように、領域特異的DNAの相対的な量は、L−FABP−DR1またはMTP−DR1のいずれかのプロモーター領域に対して特異的なプライマーを用いて、リアルタイムPCRによって測定された(黒いバー)。末端の非翻訳領域の相対的なレベルは、領域特異性を証明するために示されている(白いバー)。「実験手順」に説明されるように、全ての値を、投入DNAと、IgGを用いた免疫沈降とに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図6A】図6Aは、FAO細胞におけるL−FABPおよびMTP発現を持続するために、および、生体内での両遺伝子の誘発に媒介されるGW−7647のために、PPARαが必要であることを示すグラフ図である。図6Aは、PPARαのRNA干渉ノックダウンの結果を示しており、当該結果は、FAO細胞に、PPARα特異的siRNA、またはネガティブコントロールである非標的コントロールsiRNAのいずれかを72時間導入することによって得た。リアルタイムPCRを用いて、PPARα特異的siRNAで処理したFAO細胞(黒いバー)と、ネガティブコントロールsiRNAで処理したFAO細胞(白いバー)とを比較することによって、PPARα、MTP、L−FABP、およびapoBの相対的なmRNAレベルを測定した。PPARα特異的siRNAを用いて処理したFAO細胞におけるmRNAレベルは、ネガティブコントロールの割合を100%に設定して表されている。全ての値を、18SmRNAのレベルに対して規格化した。
【図6B】図6Bは、FAO細胞におけるL−FABPおよびMTP発現を持続するために、および、生体内での両遺伝子の誘発に媒介されるGW−7647のために、PPARαが必要であることを示すグラフ図である。図6Bは、コントロールC57BL/6およびPPARα-/-マウス(5マウス/グループ)を、PPARα作用薬GW−7647で7週間処理した結果を示している。リアルタイムPCRを用いて、L−FABPおよびMTPの相対的なmRNAレベルを測定した。相対的なmRNAレベルは、黒いバー(GW−7647処理)と白いバー(賦形剤処理)として表されている。全ての値を、18SmRNAのレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図7A】図7Aは、PGC−1β発現が、肝臓細胞中および生体内の両方において、L−FABPおよびMTPと相互に関係しており、かつ、FAO細胞中の両方の遺伝子発現に誘発されるPPARα/RXRαのために必要であることを示すグラフ図である。図7Aは、L35細胞(白いバー)およびFAO細胞(黒いバー)におけるPGC−1αおよびPGC−1βのmRNAレベルについてのリアルタイムPCR解析の結果を示している。全ての値を36B4のmRNAレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図7B】図7Bは、PGC−1β発現が、肝臓細胞中および生体内の両方において、L−FABPおよびMTPと相互に関係しており、かつ、FAO細胞中の両方の遺伝子発現に誘発されるPPARα/RXRαのために必要であることを示すグラフ図である。図7Bは、未処理のL35細胞(白いバー)と、WY−14,643および9−cisレチノイン酸で同時に49時間処理したL35細胞(黒いバー)とを比較することによって、PGC−1βのmRNAレベルについて、リアルタイムRNA解析をした結果を示している。追加して、未処理の野生型マウス(Wt、白いバー)と、PPARα作用薬WY−7647で7週間処理した野生型マウス(WtGW−7647、黒いバー)とを比較して、PGC−1βのmRNAレベルを測定した。全ての値を36B4のmRNAレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図7C】図7Cは、PGC−1β発現が、肝臓細胞中および生体内の両方において、L−FABPおよびMTPと相互に関係しており、かつ、FAO細胞中の両方の遺伝子発現に誘発されるPPARα/RXRαのために必要であることを示すグラフ図である。図7Cは、PGC−1βのRNA干渉ノックダウンの結果を示しており、当該結果は、FAO細胞に、PGC−1β特異的siRNA、またはネガティブコントロールである非標的コントロールsiRNAのいずれかを72時間導入することによって得た。集菌の48時間前、細胞をWY(10μM)およびRA(1μM)で処理した。リアルタイムPCRを用いて、PGC−1β特異的なsiRNAで処理したFAO細胞(黒いバー)と、ネガティブコントロールsiRNAで処理したFAO細胞(白いバー)とを比較することによって、PGC−1β、MTP、L−FABP、およびPGC−1αの相対的なmRNAレベルを測定した。PGC−1β特異的siRNAを用いて処理したFAO細胞におけるmRNAレベルは、ネガティブコントロールの割合を100%に設定して表されている。全ての値を、36B4mRNAのレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図8】図8は、L35細胞におけるL−FABPおよびMTPについての、PGC−1βの媒介による増加が、PPARα/RXRα依存性であることを示すグラフ図である。図に示すように、リアルタイムPCRは、アデノウイルス構築体および作用薬で48時間処理されたL35細胞において、L−FABPおよびMTPのmRNAレベルを解析している。L35細胞は、図に示すように、Ad−PGC−1βもしくはAd−GFPで感染されているか、または非感染であった。感染については、同時的な作用薬の処理(WY−14,643および9−sisレチオニン酸)と同時に行った。全ての値(平均値±triplicateサンプルの標準偏差)を、36B4mRNAのレベルに対して規格化した。
【図9A】図9Aは、L−FABP遺伝子の除去によって、MTP抑制剤の誘導する肝臓脂肪症を防止することを示すグラフ図である。雄のC57BL/6マウスおよびL−FABP-/-マウス(6マウス/グループ)に対し、MTP抑制時8aR(50mg/日/kg)を7日間与えた。マウスを解剖し、血漿および肝臓を得て、脂質レベルを測定した。図9Aは、賦形剤処理(白いバー)と、8aR処理(黒いバー)とを比較して、C57BL/6マウスおよびL−FABP-/-マウスの両方において、血漿中のトリグリセリド濃度およびコレステロール濃度を測定した結果を示す。
【図9B】図9Bは、L−FABP遺伝子の除去によって、MTP抑制剤の誘導する肝臓脂肪症を防止することを示すグラフ図である。雄のC57BL/6マウスおよびL−FABP-/-マウス(6マウス/グループ)に対し、MTP抑制時8aR(50mg/日/kg)を7日間与えた。マウスを解剖し、血漿および肝臓を得て、脂質レベルを測定した。図9Bは、未処理(白いバー)と、8aR処理(黒いバー)とを比較して、両系統において、肝臓トリグリセリド濃度を測定した結果を示す。全ての値は、平均値±標準偏差を示している。*P<.001。
【図10】図10は、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与がマウスにおける血漿中トリグリセリド濃度を減少させることを示すグラフ図である。
【図11】図11は、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与がマウスにおける血漿中コレステロール濃度を減少させることを示すグラフ図である。
【図12】図12は、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与がマウスにおける肝臓脂肪症の発現を防止することを示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔本発明の詳細な説明〕
本発明は、ミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)および肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABPまたはLFABP)を同時に抑制することを通じて、高脂血症を改善することに基づいており、また、本発明はそのための方法である。MTPおよびL―FABPの同時抑制によって、本発明の組成物および方法は、肝臓脂肪症(脂肪肝)を引き起こすことなく、高脂血症を改善することができ、ひいては、高脂血症を治療するための効果的かつ安全な方法を提供することができる。
【0024】
本発明の組成物および方法を説明する前に、本発明は、説明される特定の組成物、方法、および実験条件に限定されるものではないことを理解されたい。例えば、組成物、方法、および実験条件は変更されてもよい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲だけに限定されるため、本明細書における専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的として用されており、それに限定されることを意図してはいない。
【0025】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられているような単数形の表現は、文脈が明らかに別なように指示しているのでない限り、複数形への言及を含んでいる。したがって、例えば、「方法」への言及は、ここで説明される種類についての1つ以上の方法および/または工程を含んでいることは、この公開その他を読む当業者にとって明らかであるだろう。
【0026】
他に定義されていない限り、本明細書における全ての技術用語および科学用語は、本発明が所属する技術分野の当業者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で説明されるものと類似または均等である任意の方法および物質は、本発明の実施または実験において用いることができるが、好ましい方法および物質は、これから説明されるものである。
【0027】
脂肪はリポタンパク質の形で血液を介して腸および肝臓から移送される。肝臓および腸の両方によるリポタンパク質の生産は、非常に大きな両親媒性タンパク質であるアポリポタンパク質(apoB)を要求する。apoBは、トリグリセリド高含有の超低比重リポタンパク質(VLDL)中の構造タンパクとして、肝臓によって分泌される。血漿中、VLDL中に運ばれたトリグリセリドは、脂肪酸として取り除かれ、エネルギー生産および同化作用に用いるために肝外組織に供給される。粒子を含むapoBは、LDLに変換される。コレステロール高含有の低比重リポタンパク質(LDL)の血漿中濃度の増加は、アテローム性動脈硬化の発現と関係しており、米国および他の先進工業国において、循環器疾患および死亡の主な原因となっている。肝臓は、LDLの生産および分解の両方に関与する主な臓器である。無βリポタンパク血症の劣勢遺伝性疾患を有する患者は、血漿中にLDLをほぼ有しておらず、アテローム性動脈硬化症に対する感受性の減少を示すため、LDLの血漿中濃度を減少させる治療法の発展に対して、多大な努力がされてきた。この提案は、肝臓のLDL摂取および分解の増加の結果として、血漿中のLDL濃度を減少させることによって、循環器疾患から疾患率および死亡率の両方を顕著に減少することが示されている薬(例えばスタチン)の発達によって実現されていた。全ての人が安全にスタチンを摂取できるとは限らず、これが、血漿中のLDL濃度を減少するためのさらなる薬の発展に対する推進力を与えている。
【0028】
無βリポタンパク血症が機能的なミクロソームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)の突然変異欠損によって引き起こされるという発見によって、MTP−脂質転移がapoB含有リポタンパク質の会合および分泌のために必要となることが提案された。本明細書における「無βリポタンパク血症」とは、MTP機能の機能的な欠損を引き起こす、MTP遺伝子における変異の原因となる異常な脂肪代謝という遺伝性疾患に言及している。MTPは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)を有する複合体として、小胞体(ER)中に存在しているタンパク質である。MTPは、最初は、細胞膜からリポタンパク質へ向けた脂質(トリグリセリド、リン脂質、コレステロール、およびコレステロールエステル)の転移を促進したタンパク質として認識された。MTPは、apoB含有リポタンパク質の会合において、2つの役割を果たす。すなわち、MTPは、(1)apoBへの脂質の転移を促進することによって、apoBを小胞体の内腔中に転位させ、(2)apoBの折り畳みを促進する。MTP活性を欠くときは、apoBは小胞体中で効果的に分解される。MTPが機能的に不活性である結果、無βリポタンパク血症を有する患者の肝臓は、apoB含有リポタンパク質を合成することもできず、また、分泌することもできず、LDL(これまではβリポタンパク質と表している)の血漿中濃度がほぼ検出できないレベル(例えば無βリポタンパク血症)まで減少することが引き起こされる。したがって、MTP活性を阻害する薬は血漿中のLDL濃度を減少させるために有用であるだろうことが推論された。
【0029】
一般に、無βリポタンパク血症は、MTPの欠損に起因して肝臓のapoB含有リポタンパク質を生産せず、また、脂肪肝を示すことはないため、無βリポタンパク血症の肝臓における脂肪症の発現を妨げる代償的プロセスがあるに違いないことが推測された。この問題を解明するために、MTPの存在が欠損しているが、脂肪を蓄積した肝細胞培養モデル(L35細胞)が調べられた。したがって、本発明は、MTP遺伝子の転写が、転写の類似DR1プロモーター因子の存在を介して、肝臓(L−FABP)によって、脂肪酸の取り込みを調節する他の遺伝子と協調的に調節されたことを明らかにしている。MTPおよびL−FABPは共通の先祖遺伝子から派生していると考えられるため、類似DR1プロモーター因子の保有は、相関転写形質発現が生理学的に重要であることを提案している。後述の実験は、なぜL35細胞はMTP−促進リポタンパク質分泌の無いときに脂肪を蓄積しないのかについてMTPとL−FABPとの相関阻害が説明し得るということを示している。L−FABPがないとき、MTPの抑制は、脂肪の蓄積(脂肪症)を引き起こすことなく、肝臓のVLDL分泌を減少させる。なぜならば、L−FABPが促進する脂肪酸の取り込みが欠失しているためである。
【0030】
本発明に一態様では、主題の方法は、高脂血症のための治療計画の一環として用いられ得る。L−FABPとMTPとは協調して、グリセロ脂質合成、および超低比重リポタンパク質(VLDL)分泌の中に脂肪酸を入れ替える。高脂血症は、血中に、上昇した濃度または異常な濃度の脂質および/またはリポタンパク質が存在することである。脂質(脂肪分子)は、タンパク質カプセル中に輸送され、脂質の比重およびタンパク質の種類は、上記粒子の最終結果、および代謝に対するその影響を決定する。したがって、本発明は、高脂血症を改善(例えば、阻害または抑制)のための組成物および方法を提供する。一実施形態において、ここで提供される高脂血症の治療のための方法は、L−FABPの抑制剤と組み合わせたMTPの抑制剤とを、被験者または細胞に対する投与することを含む。
【0031】
ここで定義されるMTP活性の抑制剤は、apoB含有リポタンパク質の肝臓による生産および血漿中LDL濃度を減少させ、または抑制する。典型的なMTP抑制剤は、修飾されたジアミノインダン8aR(Novartis,Summit NJ)である。肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)、肝臓の実質細胞の細胞質ゾル中における非常に豊富な脂質が結合したタンパク質は、脂肪酸の輸送および利用を促進する。L−FABP発現の遺伝子破壊は、グリセロ脂質生合成およびミトコンドリア酸化を含むいくつかの代謝経路中に、効率的に脂肪酸を運び込んで移動させるための、肝臓の能力を低下させる。
L−FABPの欠失は、肝外細胞用に脂肪酸を転用する。脂肪酸は直ちに取り込まれ、さらに、エネルギーおよび熱の生産のために骨格筋および心臓によって利用される。脂肪酸は脂肪組織によっても取り込まれ、脂肪組織ではトリグリセリドとして蓄えられ得る。したがって、ここで定義されたL−FABP活性の抑制剤は、MTP抑制剤によって引き起こされる肝臓脂肪症の発現を減少または抑制する。模範的なL−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−〔2−(4−メチルフェニル)−1−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である。
【0032】
MTPの抑制剤と組み合わせて投与するときのL−FABPの抑制剤の能力は、肝臓脂肪症の発現を引き起こすことなく血漿中脂質を減少させるような血漿中脂質および肝臓脂質に対する併用治療の効果と、MTP抑制剤を単独で用いた治療による効果とを、比較することによって決定され得る。
【0033】
本明細書における「被験者」という用語は、主題の方法が実行された任意の個人または患者を言及している。大抵、被験者は人間であるが、当業者にとって明らかなように、被験者は動物であってもよい。したがって、げっ歯類(マウス、ラット、ハムスター、およびモルモットを含む)、猫、犬、ウサギ、家畜(牛、馬、ヤギ、羊、豚などを含む)、ならびに、霊長類(モンキー、チンパンジー、オラウータン、およびゴリラを含む)などの哺乳類を含む他の動物は、被験者の定義の内に含まれる。
【0034】
「治療効果のある量」または「効果的な量」という用語は、研究者、獣医、医師、または他の臨床医学者によって求められる、組織、組織系、動物、または人間の生物学的反応または医学的反応を引き出すであろう、化合物または医薬組成物の量である。
【0035】
「薬学的に許容可能な」という用語は、キャリアに関して用いられるとき、キャリア、希釈剤、または賦形剤が、剤形の成分と適合し、かつ、その受容者に対して有害にならないことを意味する。
【0036】
「投与」または「投与すること」という用語は、治療を必要とする被験者に対して、本発明に係る化合物または医薬組成物を提供することの実行を含むように定義される。本明細書における「非経口的投与」および「静脈投与」という表現は、腸内投与および局所性投与以外の投与の形態であり、通常、注射による投与であり、制限されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、および胸骨内の注射および注入を含む。本明細書における「全身投与」「全身投与された」「末梢投与」および「抹消血管から投与された」という表現は、中枢神経系に対する直接的な投与以外の、被験者の系に入るような、化合物、薬剤、または他の物質の投与を意味しており、このため、例えば皮下投与など、代謝および他の類似のプロセスの影響下にある。
【0037】
「アゴニスト(作用薬)」という用語は、受容体に対して生産的に結合し、その生物活性を模倣する作用物質または類似体を言及している。「アンタゴニスト(拮抗薬)」という用語は、受容体に結合はするが、正常な生物的反応を引き起こすことはない作用物質を言及している。アゴニストまたはアンタゴニストは、タンパク質、核酸、炭水化物、抗体、または正常な生物的反応を減少させる他の分子を含んでもよい。
【0038】
本発明で用いられる「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体について、その断片のみならず無傷分子を備えることを意味し、例えば、FabおよびF(ab’)2、エピトープ決定基に結合することができるFvおよびSCA断片がある。
【0039】
本明細書における「対応正常細胞」とは、同じ臓器由来の細胞であり、かつ、その細胞が調べられるときに同一性を有する細胞を意味する。一態様において、対応正常細胞は、健常人から得られた細胞試料から成る。このような対応正常細胞は、個人が検査される細胞を提供するとき、年齢を適合させたり、同じ性別であったりする必要はない。他の態様では、対応正常細胞は、高脂血症を有する被験者の組織のうち、その他の健康な部位から得られる細胞試料から成る。
【0040】
本明細書では、「試料」および「生物試料」という用語は、本発明によって提供される方法に適した任意の試料を言及している。一実施形態において、本発明に係る生物試料は、例えば針生検からの試料である生検標本などの組織試料である。他の実施形態では、本発明に係る生物試料は、例えば血清、血漿、尿、精液などの体液試料である。
【0041】
本明細書では、「低減」および「抑制」という用語は一緒に使用される。例えばMTP活性が特定の分析の検出レベルより下まで減少し得る場合など、場合によっては減少が認められるためである。それ自体は、上記活性が分析の検出レベルより下まで「低減」されるか、または、完全に「抑制」される否かについて、常に明らかにならない可能性がある。それでもなお、本発明の方法に係る治療を受けて、MTP活性レベルは治療前のレベルから少なくとも低減されることが明確に決定できるだろう。
【0042】
一実施形態において、高脂血症を治療するための方法は、RNA干渉(RNAi)、ならびに、サイレンスMTPおよび/またはL−FABP活性を誘発するために、例えば二重差RNA(dsRNA)などの核酸について治療効果のある量を被験者に投与することを含む。RNAiは、さまざま種類の有機体および細胞中へのdsRNAの導入が、完全なmRNAの分解を引き起こすという現象である。細胞中、長いdsRNAは、リボヌクレアーゼによって、短い(例えば21〜25ヌクレオチド)低分子干渉RNA(siRNA)になるよう切り裂かれる。その後、siRNAは、上記プロセスに巻き込まれて、タンパク質成分と共にRNA誘発サイレンシング複合体内に会合する。次に、活性化RISCは、siRNAアンチセンス鎖とmRNAtの間の塩基対合相互作用によって、転写物に対して完全に結合する。次に、結合mRNAは切断され、mRNAの配列特異的な分解は遺伝子サイレンシングをもたらす。本明細書において、「サイレンシング」とは、大部分の染色体DNAを中断するメカニズムであり、このメカニズムは特定遺伝子の発現の抑制をもたらす。RNAi機構は、内因性転移因子(トランスポゾン)およびウイルス感染から、遺伝子を守るために進化していることが明らかである。したがって、RNAiは、以下の実施例に記載されているように、分解されるターゲットRNAと相補的な核酸分子を取り込むことによって誘発されることができる。
【0043】
他の実施例では、主題の抑制剤を用いて、被験者の高脂血症を改善または治療する方法を提供する。本明細書では、「改善」または「治療」という用語は、臨床的症状および/または高脂血症と関連した徴候が、行われた行為の結果として減少することを意味する。モニターされる上記症状または上記徴候は、高脂血症の特徴であり、かつ、上記症状および状態をモニターするための方法として、技術のある臨床医学者によく知られているだろう。例えば、脂質濃度の化学的測定は、昔から最も用いられる臨床的測定である。それが個々の結果との最良の相関関係を有しているためだけではなく、この実験方法が安上がりであり、さらに広範囲に利用できるためである。しかしながら、数値がより高性能な方法についての証拠および認識が増加している。具体的には、LDL粒子数(濃度)は、より小さなサイズであるほど、上記粒子の中に含まれるLDLの全濃度の科学的な測定法を用いて得られるよりも、アテローム性動脈硬化および心血管系イベントの発現とのより密接な相関関係を示す。LDLコレステロール濃度は低くなり得るが、それにもかかわらずLDL粒子数が高いと心血管系イベントの確率は高い。
【0044】
本発明の他の態様では、主題の方法は、肝臓脂肪症を引き起こすであろう任意の兆候のための治療計画の一部として用いられ得る。本明細書における「癌」という用語は、これに限定されないが、上皮性悪性腫瘍、非上皮性悪性腫瘍などの、任意の悪性腫瘍などを含む。例えば、本発明に係る組成物および方法は、肝癌など、MTPおよびL−FABP活性の上昇によって特徴付けられる任意の癌の治療のために用いられてもよい。本明細書では、「肝癌」は肝臓の上皮性悪性腫瘍を言及している。癌は、ひいては周囲の組織へ侵入して破壊を行うことになる、抑制されていない細胞分裂/または異常な細胞分裂によって生じる。本明細書では、「増殖型の」および「増殖」は細部が有糸分裂を起こすことを言及している。本明細書では、「転移」は、元の光景からの悪性腫瘍の遠位の広がりを言及している。癌細胞は、血流を介して、リンパ系を介して、体腔を超えて、またはそれらの複合によって、転移する可能性がある。場合によっては、癌の治療は、固形癌の治療または転移の治療を含んでいるだろう。転移は、形質転換細胞または悪性細胞が移動して、ある場所から他の場所へ癌を広げるような癌の形式である。
【0045】
本明細書における「癌性細胞」という用語は、本明細書における任意の1つの癌状態にかかった細胞を含んでいる。したがって、本発明に係る方法は、メラニン細胞、グリア細胞、前立腺肥大、および多発性嚢胞腎の良性肥大の治療を含む。「上皮性悪性腫瘍」という用語は、周囲の細胞に侵入する傾向がある上皮細胞で構成されており、かつ、転移を引き起こす悪性新腫瘍を言及している。
【0046】
ある実施形態では、本発明の化合物については、このような治療を必要とする被験者に対して、抗炎症剤、抗菌剤、抗ヒスタミン剤、化学療法薬、血管新生阻害剤、免疫賦活剤、治療抗体、または例えばチロシンキナーゼ阻害剤などのプロテインキナーゼ阻害薬と組み合わせて投与する。本発明の化合物と組み合わせて投与してよい他の薬剤は、サイトカインなどの治療薬、免疫調節薬、および、抗体を含む。限定される必要はないが、抗菌剤は、抗ウイルス剤、抗生物質、抗真菌剤、および駆虫薬を含む。他の治療薬が本発明の化合物と組み合わせて採用される場合、例えば米医薬品便覧(PDR)に記載されたような量で用いてもよいし、または、当業者によって決定された別の方法で用いられてもよい。
【0047】
本明細書において「サイトカイン」は、ケモカイン、インターロイキン、リンフォカイン、モノカイン、コロニー刺激因子、および受容体関連プロテイン、ならびに、それらの機能的な断片を含む。模範的なサイトカインは、これに限定されないが、内皮単球活性ポリメラーゼII(EMAP−II)、顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF)、顆粒球−CSF(G−CSF)、マクロファージ−CSF(M−CSF)、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−12およびIL−13、インターフェロンなどを含んでおり、これらは、細胞または細胞メカニズムにおける特定の生物学的変化、形態学的変化、表現型の変化と関与する。
【0048】
FAOラットの肝臓細胞は、L−FABPおよびMTPを発現し、かつ、VLDLを集めて分泌する一方、FAO細胞からの単細胞クローンに由来するL35細胞は、L−FABPまたはMTPを発現もせず、また、VLDLを集めて分泌もしない。それについて、L−FABPおよびMTPのプロモーター中に存在する保存DR1プロモーター要素が転写、発現、およびVLDL生産に対してどのように影響を与えるのかを解明するために、肝臓細胞が用いられた。FAO細胞中では、L−FABPプロモーターおよびMTPプロモーターの両方のDR1要素は、PPARαRXRαによって占められる。PPARαRXRαは、PGC−1βと共に転写を活性化する。その一方、L35細胞中では、L−FABPプロモーターおよびMTPプロモーターの両方のDR1要素はCOUP−TFIIによって占められ、転写は減少される。これらの結果を組み合わせると、PPARαRXRαおよびPGC−1βは、協調的に、各遺伝子の近位プロモーターにおけるDR1サイトを目指してCOUP−TFIIと競争することによって、L−FABPおよびMTPの発現を上昇させることが示される。さらなる研究では、L−FABPの除去は、MTP抑制剤を用いて治療されたマウスにもたらされる肝臓脂肪症を防止することが示される。L−FABPおよびMTPの調整された転写の変化は、肝臓脂肪症を引き起こすことなく、VLDL分泌へ脂肪酸が入ることに合わせて変化する。
【0049】
本明細書において、「脂肪症」という用語は、細胞内の脂質の異常な保有を説明するプロセスを言及している。脂質(通常はトリグリセリドおよびコレステロールエステル)の合成、移動、および分解の正常なプロセスの機能障害を反映する。過剰な脂質は、細胞質と置き換えられて、細胞内膜中および小胞中に蓄積する。小胞が細胞核をゆがめるのに十分な程度に大きいとき、この状態は、大血管脂肪症として、あるいは微小空胞変性として知られている。軽症の細胞にとって特に有害ではないが、膜構造を変化させたり、膜機能や細胞の生存能力を害したりすることがある。これに関して、「脂肪症」は、臓器の間質組織中における脂肪の蓄積を含む。脂肪症に関連する危険因子は多様であり、炎症性の脂質およびサイトカインの生産を含む。炎症反応を促進する(炎症性の)脂質およびサイトカインは、アテローム性動脈硬化症、真性糖尿病、悪性腫瘍、高血圧、細胞毒性、肥満、および酸素欠乏症を引き起こす。肝臓が脂質代謝の主要臓器であるように、肝臓は脂肪症と最も深く関係するが、脂肪症は、腎臓、心臓、および筋肉に共通して、任意の臓器に起こり得る。肝臓脂肪症は、肝硬変および肝細胞癌など、重度の肝臓病の発現を増進する。
【0050】
本発明の方法における有用な抑制剤は、任意の遺伝子導入法によって細胞中に導入されてもよい。本明細書で示唆されるように、遺伝子治療のために利用できる様々なウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AVV)、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、またはレトロウイルスなどのRNAウイルスを含む。多くの既知のレトロウイルスは、形質導入細胞を同定して生成することができるように、選択マーカーのための遺伝子を導入する、または組み込むことができる。例えば、特定の標的細胞における受容体のためのリガンドをコードする他の遺伝子と共に、目的対象のポリヌクレオチド配列をウイルスベクターに挿入することによって、ベクターは標的特異性となる。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質をコードするヌクレオチドを挿入することによって、標的特異性の状態になる。好ましい標的は、レトロウイルスベクターを標的とする抗体を用いることによって得られる。アンチセンスポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的な転移を可能にするために、レトロウイルス遺伝子中に挿入することができる特異的なポリヌクレオチド配列について、当業者は知っているか、または実験を行うことなく容易に解明できるだろう。
【0051】
本発明は、また、本発明に係る治療に適している癌細胞(例えば肝細胞)を同定するための方法を提供する。上記方法は、例えば、治療する細胞試料中のMTPおよびL−FABPについての発現レベルまたは活性レベルを測定すること、ならびに、MTPおよびL−FABPについての発現または活性が対応正常細胞中のMTPおよびL−FABPについての発現レベルまたは活性レベルと比較して上昇することを測定することによって、実行されてもよい。上記対応正常細胞は、正常(例えば癌でない)細胞の試料としてもよい。対応正常細胞と比較して、癌細胞中のMTPおよびL−FABPについての発現レベルまたは活性レベルが上昇したことを測定することは、細胞が治療によって良い影響を受けているということを示している。本発明において用いられる細胞試料は、被験者からの組織試料または体液、あるいは、生検処置(例えば針生検)または腫瘍の切除および/または減量のための外科的処置によって得られた組織から得られる。
【0052】
一実施形態において、治療に適している癌細胞を同定するための方法は、さらに、L−FABP活性抑制剤と組み合わせたMTP抑制剤と細胞を接触させること、ならびに、接触の後におけるMTP活性およびL−FABP活性の減少を測定することを含んでもよい。このような方法は、癌細胞が上記治療に適していることを確かめるという意味を提供する。
【0053】
他の実施形態において、治療の影響を受けやすい癌細胞を同定する方法は、細胞を、MTPコードするまたは調節するポリヌクレオチドと、またはその機能性断片とハイブリダイズするdsRNAなどの核酸分子と接触させること、および、接触後の細胞において、MTPの発現または活性についての減少を検出することを、さらに含んでもよい。このような方法は、癌細胞がこの治療の影響を受けやすいことを確かめるための手段を提供する。さらに、上記方法は、単独または組み合わせによる抑制剤の影響のために、1つ以上の異なる核酸分子を検査することを含んでもよく、それ故、試験される特定の癌を治療するために有用な1つ以上の核酸分子を同定するための手段が提供される。
【0054】
それに応じて、本発明は、L−FABPおよびMTPの転写がどのように協調して調節されるかについて明らかにするために、VLDLの会合および分泌について別個の能力を示す、肝細胞の2つの別個の系統(Hui et al., 2002; Kang et al., 2003)の利用を説明する。FAO細胞、すなわち、肝臓リポタンパク質の合成および分泌を研究するために用いられているラットの肝臓細胞系(Scarino and Howell, 1987a; Scarino and Howell, 1987b)は、L−FABPとMTPとの両方を発現し、かつ、apoB含有リポタンパク質を会合および分泌する能力を示す。一方、FAO細胞からの単細胞クローンとして得られたL35細胞は、L−FABPもMTPも発現せず、apoB含有リポタンパク質を会合および分泌する能力を欠いている。これらを組み合わせたデータは、L−FABPおよびMTPが共通の祖先の脂質結合タンパク質から派生したという提議(Phelps et al., 2006)を支持する。L−FABPおよびMTPの発現の同時的変動、および脂肪酸基質の供給に適応できるL−FABPおよびMTPの協調的機能とを保証する共通の構造が保存され、一方、プロモーターにおけるDR1サイトの保有は、L−FABPおよびMTPについての別個の脂質輸送機能を進化させた。
【0055】
したがって、本明細書で提供されるデータは、L−FABPおよびMTPの転写が、脂肪酸リガンドにより活性化する転写因子(PPARα−RXRα)またはCOUP−TFIIのいずれかによる類似DR1要素との競合的結合に基づいて調節されることを示している。このように、2つの脂質輸送タンパク質、すなわち、互いに協調して機能するL−FABPおよびMTPの発現は、脂肪酸の利用可能性に応えて協調的に調節され得る。肝臓による脂肪酸の利用をめぐって競争する、機能的に異なる多くの経路が存在する。これらは、細胞取り込み、他の脂質(例えばグリセロ脂質、およびコレステロールエステル)の生産におけるエステル化、β酸化、主にVLDL脂質の形成における蓄積および輸出を含む。これらの経路の1つ以上に向けての脂肪酸の輸送は、エネルギーおよび基質恒常性を保つために、迅速かつ選択的に変化しなくてはならない。基質主導の「フィードフォワード(正方向送り)」の転写調節は、恒常性と効率の良さとの両方を可能にする共通のメカニズムであり、同時的に存在する利用に適している(Wall et al., 2005)。脂肪酸は、L−FABP(Poirier et al., 2001)およびMTP(Ameen et al., 2005)についてのPPARα依存遺伝子の転写を活性化することもできるため、肝臓への脂肪酸流動は、脂質合成基質を提供するのと同様に、VLDL会合/分泌を調節する酵素を誘導する。
【0056】
証拠となる複数の系は、L−FABPおよびMTPプロモーターに存在する類似DR1要素が、VLDL会合/分泌の経路に向かって脂肪酸を輸送するとき、これら2つの脂質輸送タンパク質の相互依存的な役割に必要な協調転写制御を提供することを示している。L−FABPおよびMTP両方のプロモーターのレポーター構築における、DR1要素の突然変異欠損は、(1)FAO細胞により提示される比較的高い活性レベルが、L35細胞によって提示される低いレベルへ還元されること(図1C)、および(2)転写を抑制または活性化するCOUP−TFII(図2B)またはPPARα−RXRα(図4A)の作用薬の能力が無効にさせる。これらのDR1要素が、COUP−TFII(抑制体)またはPPARα−RXRα(活性体)による競争的な占有に関与する、機能的に意味のある同起源の結合部位であるということを示すためのさらなる証拠は、EMSAスーパーシフト解析(図2のL−FABPおよびKang et al.,2003のMTP)ならびにChIP解析(図3)によって提供される。DR1要素についての相補的なEMSAスーパーシフトとChIPとの実験から得られる複合解析は、PPARα−RXRαによる占有が両方の遺伝子の転写活性と関係いる(FAO細胞)と同時に、COUP−TFIIによる占有が抑制に関係している(L35細胞)ということを協調的に示す。
【0057】
FAO細胞およびL35細胞により示されるL−FABPおよびMTPの発現における表現型の違いに関与する主要な決定要因は、PPARα−RXRα(活性体)とCOUP−TFII(抑制体)との相対的な細胞の中身である。3つの独立的な実験は、FAO細胞およびL35細胞の細胞表現型における可塑性が、PPARα−RXRα(活性体)と比較したCOUP−TFII(抑制体)の細胞内容物に依存することを実証する:(1)PPARα−RXRα作用薬を有するL35細胞の治療は、PPARα−RXRα(活性体)の発現を増加させる一方、COUP−TFII(抑制体)の発現を減少させ(図5A);(2)PPARα−RXRα/COUP−TFIIについての細胞内容物におけるこれらの変化は、L−FABPおよびMTPの両方のプロモーターに存在するDR1の占有における類似変化に反映され(図5B);(3)その結果、L−FABPおよびMTPの両方のプロモーター−ルシフェラーゼレポーター構築体の転写活性おいて、DR1サイト依存性が増加し(図4B);ならびに、(4)L−FABPおよびMTPのmRNAの発現増強がもたらされる(図4A)。さらに、L35細胞における作用薬が媒介する変化は、apoB含有リポタンパク質を会合および分泌するための回復能力と関係している。
【0058】
PPARα−RXRαヘテロダイマーは、近位プロモーター領域におけるDR1サイトへの結合によって、L−FABPの転写を活性化することが見られている(Poirier et al., 1997)。PPARα作用薬を用いた野生型(ただしPPARαノックアウトではない)マウスの治療は、MTPの肝臓での発現を増加させた(Ameen et al., 2005)。これらの事項および脂肪酸代謝に関連した遺伝子の翻訳調節を調べる研究から得られた追加所見(Cabrero et al., 2003; Carter et al., 1994; Miyata et al., 1993; Palmer et al., 1994)は、PPARα−RXRαおよびCOUP−TFIIがDR1プロモーター要素に結合するために互いに競争するという提言を支持している。これらの遺伝子との関連において、PPARα−RXRαによるこの要素の占有は転写の活性化と関連し、一方、COUP−TFIIによる占有は転写抑制と関連する。
【0059】
本明細書に開示される発見は、L−FABPおよびMTPの発現のPPARα−RXRα作用薬が媒介する誘導のために、PGC−1βが必要とされることを示す(図7C)。PPARα−/−マウスのPPARα作用薬は、L−FABPおよびMTPの発現を誘導しなかったが(図4)、PGC−1βmRNAの肝臓発現は2倍に増加した。このデータは、PPARαの欠損状態において、PGC−1βは、L−FABPおよびMTPの発現を増加させるのに十分ではないということを示唆する。アデノウイルスが媒介するPGC−1βの発現を用いた追加実験は、L−FABPおよびMTPの転写を増進するために、PPARα−RXRαが必要となることを示す。この複合的な所見は、PGC−1βがMTPの転写活性化に関与するという提言(Lin et al., 2005; Wolfrum and Stoffel, 2006)を支持する。ob/ob糖尿病性マウスにおいて、アデノウイルスが媒介するPGC−1βおよびFoxa2の発現は、MTP発現を誘導し、インシュリンがVLDL会合/分泌を阻害するメカニズムを提案する(Wolfum and Stoffel, 2006)。Foxa2はob/obマウスの核から完全に除かれる(Wolfrum et al., 2004)が、しかし一方、MTP発現とVLDL会合/分泌との両方は増加する(Bartels et al., 2002)ということが実証されている。さらに、ob/obマウスには、PGC−1βが媒介するMTP発現の増加が保存されており、MTP転写の誘導がFoxa2非依存性メカニズムを介して生じ得るということが示される(Wolfrum and Stoffel, 2006)。脂肪肥育された高脂血症のマウスにおいて、SREBPおよびLXRαのPGC−1β活性化は、MTP発現およびVLDL会合/分泌の増進に関係する(Lin et al., 2005)。PGC−1βは、PPARαと相互作用することができ(Lin et al., 2002b)、かつ、PPARα標的遺伝子の転写を活性化する(Lin et al., 2003)。したがって、所見は、ラットの肝臓癌細胞との関連において、PGC−1βはPPARα−RXRαを活性化するということを示す(図8)。
【0060】
L−FABPおよびMTPのプロモーターにおける類似DR1要素の保有は、それらの発現がエネルギーの十分な転用を脂肪酸の形でVLDL会合/分泌経路に提供するために十分に誘導されるだろうことを確実にすることを、複合データは示している。L−FABPの除去は、MTP抑制剤を用いて治療されたマウスの肝臓において、トリグリセリドの蓄積を阻害することを示す追加研究(図9)によって、L−FABPおよびMTPの発現が協調的に減少されることの重要性が明確に示された。これらの発見は、高脂血症を改善することを目的としたときのMTP抑制剤の有効性に関して、重要な意味合いを備えている。
【0061】
先に示したとおり、MTP抑制剤は高脂血症を減少させるために効果的な治療法であるように思われるが、その使用は脂肪肝の発現に関連する(Bjorkegren et al., 2002; Liao et al., 2003)。本明細書の提供するデータは、L−FABPの除去がMTP抑制剤8aRを用いて治療したマウスの肝臓におけるトリグリセリドの蓄積を完全に阻害することを示す(図9B)。したがって、これらの研究は、L−FABPおよびMTPの両方の機能および/または発現のいずれかを阻害する薬剤が、脂肪肝の発現を引き起こすことなく、高脂血症を減少することを示す。
【0062】
別の態様では、本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)などのウイルス感染を改善するための方法、および、炎症性肝疾患、線維症、肝硬変、肝不全、および/または肝細胞癌の発現を減少するための方法を提供する。HCV粒子の生産および輸送に関与するプロセスは、血漿リポタンパクの生産および輸送と関連する多くの態様を共有する。HCVはリポタンパク複合体を形成し、かつ、VLDLおよびLDLの両方の構成要素として血漿中に輸送される(Andre et al., 2005, Hepatitis C virus particles and lipoprotein metabolism. Semin liver Dis 25:93-104)。HCVの肝臓での生産は、VLDLの分泌と同様に、MTPの発現および活性を低下させる(Domitrovich, et al., 2005, Hepatitis C virus nonstructural proteins inhibit apolipoprotein B100 secretion. J BiolChem 280:39802-39808)。MTPの抑制は、HCVに感染した被験者が血漿脂質濃度の変化を示し(Siagris, et al., 2006, Serum lipid pattern in chronic hepatitis C: histological and virological correlations. J Viral Hepat 13:56-61)、さらに、その被験者の肝臓が脂肪症を発現する(Mirandola, et al, 2006, Liver microsomal triglyceride transfer protein is involved in hepatitis C liver steatosis. Gastroenterology 130:1661-1669)ことの理由について説明するだろう。逆に言えば、MTP抑制剤は、肝臓癌細胞によるHCVの生産を阻害する(Huang, et al., 2007, Hepatitis C virus production by human hepatocytes dependent on assembly and secretion of very low-density lopoproteins. Proc Natl Acad Sci USA 104:5848-5853)。本発明は、脂肪症の発現を引き起こすことなく、MTP(ひいてはHCVの生産)を抑制する方法を説明する。したがって、HCVに感染した被験者に対してMTP抑制剤とL−FABP抑制剤とを同時に投与することは、HCVの生産を減少し、かつ、慢性HCV感染、脂肪症の発現、肝硬変、および肝不全と関連する病状を改善するだろう(Hwang, et al., 2001, Hepatic steatosis in chronic hepatitis C virus infection: prevalence and clinical correlation. J Gastroenterol Hepatol 16:190-195)。
【0063】
本発明の別の態様では、癌(例えば肝臓癌)および/または高脂血症を治療するために有用な薬剤を同定するための方法が提供される。本発明の任意の方法において有用な薬剤は、例えば、ポリヌクレオチド、ペプチド、ペプチド模倣薬、ビニル性ペプトイドなどのペプチド、有機小分子など、任意の種類の分子であってもよく、また、MTPおよびL−FABPの発現または活性の減少または抑制を促進する任意の様々な過程に作用してもよい。薬剤については、特定の種類の癌/高脂血症を治療するために用いられる典型的な薬剤の何らかの方法で投与してもよく、または、標的癌細胞と薬剤の接触(また適切な場合、細胞中への侵入)を容易にする条件の下で投与してもよい。例えば、細胞中へのポリヌクレオチド薬剤の導入は、細胞に感染し得るウイルスベクター中にポリヌクレオチドを組み込むことによって容易にされてもよい。細胞の種類に特異的なウイルスベクターが入手できない場合、ベクターは、標的細胞上で発現されたリガンド(または受容体)に対して特異的な受容体(またはリガンド)を発現するために修飾されてもよく、または、リポソーム内に封入されてもよい。また、上記リポソームも、このようなリガンド(または受容体)を含むために修飾されてもよい。ペプチド薬剤は、様々な方法によって細胞中に導入されてもよい。例えば、細胞中へのペプチドの転位を容易にすることにできる、人免疫不全ウイルスTATタンパク質導入ドメインなどのタンパク質導入ドメインを含むように、ペプチドを設計する方法などによってもよい。概して、薬剤は、被験者へ投与するのに適切な組成物(例えば医薬組成物)に処方される。このように処方された薬剤は、高脂血症、または一部分においてMTPおよびL−FABPについての活性または発現の上昇によって特性を示す癌を患う被験者を治療するための薬剤として有用である。
【0064】
典型的には、候補薬剤は有機分子であり、100ダルトンよりも大きく、約2500ダルトンよりも小さい重さの分子を有する有機小化合物(例えば小分子)であることが好ましいとはいえ、候補薬剤は多数の化学的分類を包含する。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特には水素結合のために必要な官能基を含んでおり、典型的には、少なくとも、アミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基を含んでおり、少なくとも2つの化学官能基を含んでいることが好ましい。候補薬剤は、多くの場合、1つ以上の上記官能基と置換された、炭素環構造もしくは複素環構造、および/または、芳香族構造若しくは多環芳香族構造を含む。候補薬剤は、ペプチド、サッカリド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体、またはそれらの複合体を含む生分子の間にも検出される。
【0065】
候補薬は、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む多種多様の源から得られるだろう。例えば、任意抽出されたオリゴヌクレオチドの発現を含む、多種多様の有機化合物および生分子についての、無作為または指向性のある合成のために、多数の手段が利用できる。あるいは、バクテリア、真菌、植物、および動物の抽出物の形である天然化合物のライブラリーが利用できる、または、容易に生産される。さらには、天然または合成的に生産されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的手段、物理的手段、および生物学的手段を介して容易に修飾される。既知の薬理作用のある薬剤が、構造的類似体を生産するために、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化など、無作為または指向性のある化学的修飾を受けてもよい。
【0066】
別の態様では、本発明の方法は、オーダーメイド医療を実施する方法を提供することのために有用である。オーダーメイド医療では、被験者の高脂血症または癌細胞の個別の特性に基づいて、治療が被験者に合わせられる。例えば、少なくとも1つの検査薬、またはMTPおよびL−FABP抑制剤と、被験者由来の細胞試料とを接触させることによって、本方法を実施してもよい。ここで、検査薬または抑制剤を欠くときのMTPおよびL−FABPの活性または発現と比較して、検査薬または抑制剤存在下におけるMTPおよびL−FABPの活性または発現が減少すると、その減少は、上記薬剤または抑制剤を、疾患を治療するために有益であると同定する。本発明の方法に従って検査する細胞試料は、治療する予定の被験者から得られてもよく、または、確立された癌細胞系の細胞、もしくは被験者のものと同じ種類である既知の高脂血症の細胞であってもよい。一態様では、確立された細胞系は、このような細胞系の一団の1つであってもよい。ここで、上記一団は、同じ種類の疾患の異なる細胞系、ならびに/または、MTPおよびL−FABPの活性もしくは発現の上昇値と関係する、異なる疾患の異なる細胞系を含んでもよい。このような細胞系の一団は、例えば、治療する被験者から少数の細胞しか得られないときに、被験者の細胞の代用試料を提供するため、本発明の方法を実施するために有用であり、また、本発明の方法を実施するときのコントロール試料として有用となるだろう。
【0067】
いったん、疾患が明らかとなり、治療プロトコルを開始すれば、被験者におけるMTPおよびL−FABPの活性または発現の値が、健常被験者に観察される値に近似し始めるかどうかを評価するために、本発明の方法を定期的に繰り返してもよい。数日間から数ヶ月間の測量期間にわたる治療の効果を示すために、連続的な分析から得られる結果を用いてもよい。よって、本発明は、高脂血症を有する被験者を治療するために、治療規制をモニタリングする方法も指示している。治療前と治療中とにおけるMTPおよびL−FABPの活性または発現のレベルを比較すれば、治療の効果が示される。これによって、当業者は、必要に応じて治療的なアプローチを認識し、かつ調節することができるだろう。
【0068】
全ての方法は、さらに、1つ以上の補助的な成分を構成する、薬学的に受容可能なキャリアと、有効成分とを関連させる工程を含んでもよい。被験者に投与するための薬剤を処方するために有用である、薬学的に受容可能なキャリアには、当技術分野で周知のように、例えば、水もしくは緩衝生理食塩水などの水溶液もしくは他の溶媒、グリコールもしくはグリセロールなどの賦形剤、オリーブオイルなどの油、または注射用有機エステルが挙げられる。薬学的に受容可能なキャリアには、例えば、複合体の吸収を安定するまたは増加する役割を果たす、生理学的に許容可能な化合物が挙げられる。このような生理学的に許容可能な化合物には、例えば、グルコース、サクロース、もしくはデキシトリンなどの糖質、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化物質、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定化剤もしくは賦形剤などが挙げられる。薬学的に受容可能なキャリアの選択は、例えば、治療薬の物理化学的な特性、および化合物の投与経路に基づくことについて、当業者は分かるだろう。ここで、投与経路には、例えば、経口、または、静脈注射などの非経口、および、注射、挿管、または従来知られている他の方法によるものがあるだろう。医薬組成物は、例えば癌の化学的療法薬および/またはビタミンなど、診断用薬、栄養物質、トキシン、または治療薬などの、第2(またはそれ以上)の化合物を含んでもよい。
【0069】
本発明の抑制剤を含む組成物の投与経路は、ある程度、分子の化学的構造に依存するだろう。例えば、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、経口で投与されると、消化管で分解されるため、特に有用ではない。しかしながら、例えば、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドのそれぞれを、内因性ヌクレアーゼまたは内因性プロテアーゼによる分解の影響され難くする、あるいは、消化管を介してより吸収されるようにするために、それらを化学的に修飾する方法がよく知られている(例えば、Blondelle et al., Trends Anal. Chem. 14:83-92, 1995; Ecker and Crook, Bio Technology, 13:351-360,1995参照)。例えば、ペプチド剤は、D−アミノ酸を用いて調製されてもよいし、または、ペプチド模倣薬に基づいた1つ以上のドメインを含んでいてもよい。ここで、ペプチド模倣薬は、ペプチドドメインの構造を模倣しているか、または、ビニル性ペプトイドなどのペプチドに基づいている有機分子である。抑制剤がステロイドアルカロイドなどの有機小分子である場合、その抑制剤については、体内(例えば肝臓内)の所望の位置で活性薬剤を開放する形状で投与してもよく、または、抑制剤が標的細胞(例えば肝臓癌細胞)を循環するように血管中に注射することによって投与してもよい。
【0070】
例となる投与経路には、これに限定されないが、経口または静脈内、膣内、皮下、腹腔内、直腸内、もしくは嚢内などの非経口、または適切な場合、例えば皮膚用パッチ剤もしくは経皮イオン導入などの皮膚利用を介した受動的吸収もしくは促進的吸収のそれぞれが挙げられる。さらには、医薬組成物は、注射、挿管、もしくは経口によって、または局所的に投与してもよい。その局所的な投与とは、例えば軟膏の直接的な塗布による受動的なものであってもよく、または、その組成物の1つ成分が適切な高圧ガスである場合には、鼻内噴霧もしくは鼻孔吸入を用いた能動的なものであってもよい。上述したように、医薬組成物については、例えば、癌を供給する血管中への静脈内投与または動脈内投与など、癌部位に投与してもよい。
【0071】
本発明の方法の実施において投与する化合物または組成物の総量については、単回投与として、ボーラスまたは輸液によって、比較的短い期間にわたって投与してもよいし、あるいは、長期間わたって複数回投与するための分割治療プロトコルを用いて投与してもよい。被験者の高脂血症または肝臓癌を治療するための、MTPおよびL−FABP活性または発現の抑制剤の量が、投与経路および投与が行われる治療の回数と同様に、被験者の年齢および総体的な健康を含む多くの要因に基づくことは、当業者は分かるだろう。これらの要因を考慮して、当業者は、必要に応じて特定の量を調節するだろう。概して、医薬組成物の処方ならびに投与経路および投与回数は、第1相および第2相臨床試験を用いて、始めに決定される。
【0072】
本発明の方法については、例えば培養液中または固形担体上などの生体外で、細胞試料と接触することによって実施してもよい。あるいは、それに加えて、上記方法は、例えば実験動物(例えばヌードマウス)中に癌細胞試料を導入すること、または、実験動物中に検査薬または組成物を投与することによって生体内で実施してもよい。生体内分析の利点は、生きた動物で、ひいては臨床状態をより厳密に模倣して、検査薬の効果を評価し得ることにある。一般に、生体内分析はよりコストが高いため、生体外方法を用いて「先導(リード)」薬剤の同定の後に、二次スクリーニングとして用いることが特に有用であるだろう。
【0073】
本方法は、生体外分析として実施されるとき、スループット法(高速大量処理法)に適応する。よって、独立的に、並行して同じものである、または異なるものである、複数個(すなわち、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上)の細胞試料および/または検査薬の試験が可能になる。スループット法は、検査薬が単一の被験者に由来するいくつかの細胞試料を検査できるなど、多数の利点を提供する。ひいては、例えば、被験者に投与する薬剤の特定の効果的な濃度を同定したり、被験者に投与する特定の効果的な薬剤を同定したりすることが可能になる。このように、スループット法は、最もよい(最も効果的な)薬剤または薬剤の組み合わせを治療手段に用いることができるように、被験者の癌細胞上で、2つ、3つ、4つ、それ以上の異なる検査薬を、単独または組み合わせて試験することを可能にする。さらには、スループット法によれば、例えばコントロール試料(ポジティブコントロールおよび/またはネガティブコントロール)を、検査された薬剤を用いて効果的に治療されるだろう既知の細胞試料などの検査試料と並行して実施することが可能になる。
【0074】
本発明のスループット法は、任意の様々な手段で実行され得る。例えば、異なる被験者から得られた、異なる細胞試料を、同一または異なる量の、1つまたは複数の検査薬を用いて並行に試験してもよい。あるいは、一人の被験者から得られた2つ以上の細胞試料を、1つまたは複数の検査薬についての、同じまたは異なる量を用いて試験してもよい。加えて、同じまたは異なる被験者の細胞試料を、検査薬および/または既知の効果的な薬剤の組み合わせを用いて試験してもよい。これらの例示された様々は形態は、癌の治療のために有用な薬剤または薬剤の組み合わせを同定するために用いられてもよい。
【0075】
本方法をスループット法(または超スループット法)により実行するときは、固形担体(例えばマイクロタイタープレート、シリコンウエア、またはスライドガラス)の上で実行してもよい。ここで、検査薬と接触させる試料については、各々が互いに線引きされるように(例えば、ウエル中にあるように)配置する。任意の数の試料(例えば、96、1024、10,000、100,000、またはそれ以上)については、特定の使用された単体に基づいて、このような方法を用いて並行に検査してもよい。試料をアレイ状(すなわち規定されたパターン)に配置する場合、アレイ状の各試料は、その位置によって(例えばXY軸を用いて)定義され得る。よって、各試料のための「アドレス」が提供される。アドレス可能なアレイ形式を用いることの利点は、細胞試料、薬剤、および検査薬などを、所望の時間に、特定の位置に施す(または特定の位置から取り除く)ことができ、かつ、試料(または資料の分割単位)における、例えばMTPおよびL−FABP活性または発現の減少をモニターすることができるように、本方法を、全体的にまたは部分的に、自動化することができることである。
【0076】
ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールは、本発明の解析において用いられてもよい。全てのコントロールおよび検査試料については、統計学的に顕著な結果を得るために、少なくとも3倍、実行することが好ましい。全ての試料の培養については、薬剤がタンパク質に結合するために十分な時間行う。培養後、全ての試料を、非特異的に結合した物質がないように洗浄し、概して、ラベル標識された薬剤の結合量を決定する。例えば、放射性標識を採用する場合、結合した化合物の量を決定するために、シンチレーションカウンタによって試料を計測してもよい。
【0077】
スクリーニング検定中に、他の様々な薬剤を用いてもよい。これらには、塩、アルブミンなどの天然タンパク質、洗剤などの試薬が挙げられる。これらを、最適なタンパク質−タンパク質結合を促進したり、非特異的またはバックグラウンドの相互作用を減少させたりするために用いてもよい。プロテアーゼ抑制剤、ヌクレアーゼ抑制剤、抗菌剤など、分析の効率を向上させる他の試薬もまた同様に用いてもよい。成分の混合体を、結合に必要な条件を与える任意の順序で加えてもよい。
【0078】
全ての条件が各測定に対して同様の状態において、もしくは様々な条件下で、検査薬を用いて、もしくは検査薬を用いずに、または癌などの病状の異なるステージにおいて、測定が行われ得る。例えば、検査薬が存在する状態で、および検査薬が欠失した状態で、細胞中、または細胞集団中において、測定が行われ得る。他の例では、例えば、ホルモン、抗体、ペプチド、抗原、サイトカイン、成長因子、活動電位、化学療法薬などの薬剤、放射線、発癌物質、または他の細胞(例えば細胞−細胞接触)など、生理学体信号の暴露が存在するもしくは欠失した状態で、またはその暴露の前もしくは後で、細胞が評価されてもよい。さらにもう1つの例では、同じ条件において、および、1つの細胞もしくは細胞集団と、他の細胞もしくは他の細胞集団との間で変更された条件で、Dkk活性の測定が行われる。
【0079】
他の態様では、本発明は、MTPおよび/またはL−FABPの活性もしくは発現についての1つ以上の抑制剤を含む、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。一実施形態において、本発明は、MTPおよび/またはL−FABPの活性もしくは発現についての1つ以上の抑制剤から構成される医薬組成物を含むキットを提供する。含まれる抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドと、またはその機能的断片とハイブリダイズするdsRNAであってもよく、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドと、またはその機能的断片とハイブリダイズするdsRNAであってもよい。他の実施形態では、上記キットは、本発明の方法を実施するための説明書を含む。
【0080】
以下の例は、本発明の利点および特徴をさらに説明するために提供されるが、本発明の範囲がこれに限定されることを意図していない。それらは典型的な使用例であるが、当業者に知られた手順、方法論、または技術が代わりに用いられてもよい。
【実施例1】
【0081】
(L−FABP発現の除去による肝臓脂肪症の発現の防止)
この例は、MTP抑制剤によって引き起こされる肝臓脂肪症の発現を防止するための方法として、L−FABP抑制剤を使用することを実証している。
【0082】
細胞培養:細胞は、(Kang et al., 2003)に記述されているように培養し、形質転換した。FAO細胞はコロラド大学から無料で得られた。L35細胞は(Leighton et al., 1990)に記載されているように得られた。
【0083】
細胞は、マイナー変更(Kang et al., 2003)と共に、LipofectAMINE薬剤(Invitrogen)を用いて、メーカーの手順にしたがって形質転換した。形質転換の1日前に、L35細胞およびFAO細胞(2×105)を12ウエルのプレートに蒔いた。形質転換の当日、0.8μgのプロモーター/ルシフェラーゼレポーター構築、および、L−FABPおよびMTPの正常化のための内部調整として、6ngのpRL−CMVプラスミドを細胞に導入した。並行実験から、空ベクターの活性と比較して、規格化したpRL−CMV活性を記録した。図の説明文に示すように、様々な量のCOUP−TFII発現ベクターを加えた。空ベクターpCR3.1(Invitrogen)の追加によって、各分析に対する全DNA濃度を一定に保った。形質転換後、細胞を48時間培養し、パッシブ溶解バッファー(Promega)を用いて集菌した。デュアル−ルシフェラーゼレポーター分析システム(Promega)を用いて、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0084】
PPARαおよびRXR作用薬、WY−14,643(WY)、ならびに、9−シスレチノイン酸(cRA)の各々を用いて、L−FABPおよびMTPプロモーターレポーター分析(A. G. Scientific, Inc.)を、図の説明文に示すように実施した。WY−14,643および9−シスレチノイン酸の両方を、ジメチルスホキシド(DMSO、0.15%v/v)中に溶かし、10μM(WY)および1μM(cRA)の作用濃度で用いた。簡潔に言えば、形質転換後、細胞を、図のように作用薬またはDMSO単独で48時間処理した。細胞を集菌し、プロモーター活性を図のように分析した。
【0085】
(レポーター遺伝子構築およびベクターの発現)
野生型および変異型のラットMTPレポーターベクター(-135/+66)は、前述の(Kang et al., 2003)のとおりである。野生型ラットL−FABPレポーターベクター(-141/+66)を作り出すために、DNeasy tissue kit(Qiagen)を用いて、FAO細胞からゲノムDNAを単離および抽出した。指定された制限酵素サイトを有するプライマーを用いて、PCRによって、プロモーター断片を作り出した。フォワード5’(KpnI)−GAACAAACTTCTGCCGGTACCATTCTGATTTTTA−3’(SEQ ID NO:1)、および、リバース5’(BglII)−TTCATGGTGGCAATGAGATCTCCTTTCCACAGCTGA−3’(SEQ ID NO:2)である。次いで、プロモーター断片を、空ルシフェラーゼレポーターベクターPGL3Basic(Promega)のKpnIサイトおよびBglIIサイトにクローニングした。
【0086】
変異L−FABPレポーターベクターを作り出すために、QuikChange site-directed mutagenesis kit(Stratagene)を用いて、近位DR1シークエンスにおける特異的な変異を作り出した。インビトロにおいて、テンプレートとして、ラットL−FABP(-141/+66)−ルシフェラーゼレポーターベクターおよびベクターの逆鎖とそれぞれ相補的な2つのオリゴヌクレオチドプライマー(突然変異基には下線を付す)(フォワード 5’―AATCGACAATCACTGTGCTATGGCCTATATTT−3’(SEQ ID NO:3);リバース 5’−AAATATAGGCCATAGCACAGTGATTGTCGATT−3’(SEQ ID NO:4))の突然変異生成を行った。DNAシークエンスによって部位特異的変異構築を検証した。COUP−TFIIのための発現プラスミドはベイラー医科大学から贈呈された。
【0087】
(核抽出物の調製)
前述の(Kang, 2003)にしたがって、L35細胞およびFAO細胞からの核抽出物を調製した。簡潔に述べると、細胞をトリプシン処理し、遠心分離によって集菌し、1×リン酸塩緩衝食塩水で洗浄し、さらに、低張緩衝液(20mM HEPES、pH7.9(4℃)、25%グリセロール、1.5mM MgCl2、10mM KCl、0.2mM フッ化フェニルメチルスルフォニル、0.5mMジチオスレイトール)中に再懸濁した。氷上で10分間の低温放置後、Dounceホモジナイザーを使用して細胞を溶解した。細胞核を遠心分離によってペレット化し、低塩緩衝液(20mM HEPES、pH7.9(4℃)、25%グリセロール、1.5mM MgCl2、0.02mM KCl、0.2mM EDTA、0.2mM フッ化フェニルメチルスルフォニル、0.5mMジチオスレイトール)中に再懸濁した。その後、高塩濃度緩衝液(20mM HEPES、pH7.9(4℃)、25%グリセロール、1.5mM MgCl2、1.2mM KCl、0.2mM EDTA、0.2mM フッ化フェニルメチルスルフォニル、0.5mMジチオスレイトール)を、攪拌しながら滴下して加えた。核タンパク質の抽出をするために、得られた懸濁液を30分間、静かに振蕩した。細胞核を、30分間、再び遠心分離し、得られた上澄みを、1時間、透析緩衝液(20mM HEPES、pH7.9(4℃)、20%グリセロール、100mM KCl、0.2mM EDTA、0.2mM フッ化フェニルメチルスルフォニル、0.5mMジチオスレイトール)に対して透析した。
【0088】
(電気泳動移動度シフトアッセイ)
IDTによって、EMSAに用いる全てのオリゴヌクレオチドを合成した。ゲル移動度シフトアッセイでは、以下のオリゴヌクレオチド(センス鎖)を用いた:MTP−DR1 5’−TGACCTTTCCCCTATAGATAAACACTGTTG−3’(SEQ ID NO:5);変異MTP−DR1 5’−TGTGCTTTCCCCTATAGATAAACACTGTTG−3’(SEQ ID NO:6);L−FABP−DR1 5’−TGACCTATGGCCTATATTTGAGGAGGAAGA−3’(SEQ ID NO:7);変異L−FABP−DR1 5’−TGTGCTATGGCCTATATTTGAGGAGGAAGA−3’(SEQ ID NO:8)。
【0089】
相補的オリゴヌクレオチドをアニーリングし、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs)を用いて〔γ‐32P〕ATP(300mCi/mmol)(PerkinElmer Life Sciences)で末端標識し、続いて、G50カラムに精製することによって、プローブを調製した。結合反応のために、総量15μlの溶液(20mM HEPES、pH7.9(4℃)、10%グリセロール、100mM KCl、1mM EDTA、および、2μgのポリ(dI−dC))中に、20分間、氷上で、3×104cpmプローブとともに核抽出物15μgを低温放置した。スーパーシフトアッセイ(supershift experiments)のために、氷上でさらに20分間、前もって低温放置したDNA−タンパク質複合体に特異的抗体1μlを加えた。COUP−TFII(sc-6576X)、RXRα(sc-553X)、およびPPARα(sc-9000x)に対する抗体は、Santa Cruz Biotechnology, Inc.から得られた。0.5×TBE緩衝液を含む4%天然ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、DNA−タンパク質複合体を分離した。
【0090】
(cDNA合成およびリアルタイムPCR)
製品使用説明書により、オンカラムDNA除去と共に、Versagene RNA Tissue Kit(Gentra Systems, Inc.)を用いて凍結肝臓から、または、Versagene Cell Culture Kit(Gentra Systems, Inc.)を用いて細胞から、全RNAを単離した。分光光度計によって、260nmで、RNA濃度を測定した。逆転写のためのBio Rad iScript(Biorad)を用いて、0.5μgの全RNAから、一本鎖cDNA鎖を合成した。GenBankTMが提供している遺伝子配列を用いて、各遺伝子(補足表1)に対して特異的なプライマーを設計した。ゲノムDNAの増幅を避けるため、上記プライマーをエクソン接合部にまたがるように配置した。IDTによって全てのプライマーを合成した。
【0091】
製品使用説明書に従ってBioRad SyBr Green supermixを用いたBioRad iCyclerによって、リアルタイムPCR分析を行った。溶解−曲線分析を用いた特定産物モニターによって、三通りに、反応を分析した。内在性コントロール、すなわち、18SリボソームRNA、または酸性リボソーム燐タンパクP0(36B4)に対して、発現データを規格化した。18SRNAおよび36B4の両方の濃度は、全ての実験サンプルの間で不変であった。式2−ΔCtに従って、相対的発現濃度を計算した。ここで、ΔCtは、標的と、18Sまたは36B4の内在性コントロールとの、閾値サイクル(Ct)濃度における差分である。
【0092】
(クロマチン免疫沈降分析および相対定量)
150mmシャーレ中の完全培地で、約70〜80%程度の密集状態まで、細胞を培養した。ここで、集菌の48時間前、細胞培地に、指定の作用薬であるWY(10μ)およびcRA(1μM)を加えた。その後、37%ホルムアルデヒド(Sigma)28μlを培地10mlに加えることによって、37℃で10分間、細胞を固定し、集菌し、そして、クロマチン免疫沈降のためのChIP-IT Shearing Kit(Active Motif)およびChIP-IT Chromatin Immunoprecipitation Kit(Active Motif)を用いて、製品使用説明書に従って、免疫沈降の処理を行った。免疫複合体を、65℃で5M NaClを用いて溶出、すなわち脱架橋し、プロテアーゼKで処理し、ChIP-IT kitに提供されるミニカラムを用いて精製した。
【0093】
上述に示すように、BioRad SyBr Green Supermixを用いたリアルタイムPCRによって、免疫沈降した試料からの特異的ゲノムDNA断片および投入量を定量した。免疫沈降−特異的濃縮差の領域選択性のためのコントロールとして、サンプル毎に、非コード遠位非翻訳領域の量を決定した。使用した抗体は、COUP−TFII(Wyeth-Ayerst Research, PA)、PPARα(sc-9000X, Santa Cruz Biotechnology, Inc.)およびコントロールIgG(Active Motif)に対するものであった。以下のラットゲノムDNA領域を増幅するために、プライマーセットを設計した:MTP−DR1(フォワード−5’−TAGTGAGCCCTTCCATGAAC−3’(SEQ ID NO:9);リバース−5’−CAGAATCTGCGACAACAGTG−3’)(SEQ ID NO:10)、L−FABP−DR1(フォワード−5’−GAGTTAATGTTTGATCCTGGCC−3’(SEQ ID NO:11);リバース−5’−CCACCCACTGTTGGCTATTTT−3’)(SEQ ID NO:12)、および、L−FABP−3’−非翻訳領域(フォワード−5’−GTCTTCCGCTACCTAAGAGG−3’(SEQ ID NO:13);リバース−5’−CTGTCATCTGACCAGCTCTC−3’(SEQ ID NO:14)。ΔΔCt法を用いて、投入DNAとIgGによる免疫沈降との両方からの値に対して、全ての値を規格化した。簡単に述べると、調査したプロモーター毎に、免疫沈降した試料により得られたCt値から、投入DNAによるCt値を引くことによって、各試料のΔCtを計算した。その後、正常型ラビット血清(IgG)により免疫沈降された対応試料に対するΔCtから、特異的抗体(PPARαまたはCoup−TFII)により免疫沈降された試料に対するΔCtを引くことによって、ΔΔCtを計算した。その後、2をΔΔCt乗することによって、倍数差分(Fold difference)(コントロールIgG ChIPと比較した因子特異的ChIP)を決定した。
【0094】
(RNA干渉)
ラットPPARαに対して特異的なSmartpool siRNA(Dharmacon)を用いることによって、FAO細胞におけるPPARαノックダウンを実現した。前述に記載のように(Lin et al., 2005)、ラットPGC−1βに対して指向性のあるsiRNAのための配列を選択した。3’ジヌクレオチド(TT)突出部と共に、オプションA4を用いて、21−ヌクレオチドニ本鎖として、ラットPGC−1βsiRNA(センス配列;5’−GATATCCTCTGTGATGTTA−3’)(SEQ ID NO:15)をDharmaconによって合成した。非特異的な標的をモニターするために、ネガティブコントロール配列として、種に特異なsiCONTROL非標的siRNA#1を利用した。実験の24時間前、5×104/ウエルの濃度で、12−ウエルプレートに細胞をまいた。形質転換前、1×siRNA緩衝液(Dharmacon)中に、20μMの濃度になるまでsiRNAを再懸濁した。製品使用説明書に従って、DharmaFECTTM4 transfection reagent(Dharmacon)用いて、FAO細胞中に、全てのsiRNAを導入した。図の説明文に示されるように、100nMの作用濃度で、48〜72時間、示されたsiRNAをFAO細胞に導入した。PGC−1βのノックダウンのために、72時間、示されたsiRNAを細胞に導入した;形質転換の24時間後、作用薬であるWY−14,643(10μM)および9−cisRA(1μM)に細胞を暴露し、集菌の48時間前に処理した。上述のように、RNA単離、cDNA合成、およびリアルタイムPCR発現分析を行った。
【0095】
(動物実験)
雄のPPARα−/−マウス、および同年齢のWT型同腹子(SV/129バックグラウンド)に、PPATα作用薬GW−7647(2.5mg/kg/d)または等量の溶解性賦形剤(DMSO)のいずれかを添加された標準ダイエット食を、7週間与えた。全ての動物には水を適宜に摂取させた。2週間ごとにマウスの体重を量り、その平均体重に従って薬物摂取を調節した。処理後、動物を解剖し、肝臓を単離し、そして、Versagene RNA Tissue Kit(Gentra Systems, Inc.)を用いて全RNAを抽出した。上述したように、一本鎖cDNA合成、およびリアルタイムPCR発現分析を行った。
【0096】
MTP抑制剤(8aR)実験では、雄のL−FABP−/−マウスおよび同年齢のWT型コントロール(C57BL/6)に標準ダイエット食を与え、そのとき、8aR化合物を体重に対して50mg/kgの量で経口により7日間毎日投与した。処理後、動物を解剖し、血漿および肝臓を単離し、そして、上述したように(Newberry et At., 2003)、市販のキットを用いて、各種の肝臓と血漿の脂質レベルを測定した。
【0097】
(脂質抽出)
PBS中で肝臓をホモジナイズし、タンパク質濃度を測定した。5mlのクロロフォルムメタノール(2:1)および0.5mlの0.1%硫酸によって300μlのホモジェネートを抽出した。器官活動相の部分標本を採集し、窒素下で乾燥し、2%Triton X−100中に再懸濁した。上述したように(Newberry et At., 2003)、市販のキットを用いて、肝臓中のFFA、TG、およびコレステロール含量を測定した。タンパク質濃度の違いに対して、データを規格化した。
【0098】
(アデノウイルス実験)
PGC−1β(Ad−PGC−1β)またはGFP(Ad−GFP)のいずれかを発現するアデノウイルスベクターは、Dana-Farver Cancer Institute, Harvard Medical School, Boston, MAから贈られた。2時間、無血清培地でAd−PGC−1βまたはAd−GFPのいずれかをL35細胞に感染させ、その後、48時間、完全培地で、作用薬WY−14,643(10μM)および9−cisRA(1μM)で処理した。GFP発現によって測定されるように、75〜85%程度の細胞が感染した。上述したように、RNA単離、cDNA合成、およびリアルタイムPCR発現分析を行った。
【0099】
(分泌apoBの免疫沈降)
上述したように(Borchardt and Davis, 1987; Hui et al., 2002)、分泌apoBを免疫沈降した。簡単に述べると、WY−14,643(10μM)および9−cisRA(1μM)の欠乏下で、または、それらの存在下で、L35細胞を60mmシャーレ中で72時間培養した。その後、細胞を、メチオニン−フリーDMEMに、2時間、切り替え、次に、DMEM中で、3ml〔35S〕−メチオニン(100μCi/ml)によった24時間標識した。培地を採取し、そして、4℃で一晩、ポリクローナル抗apoB抗体と培養した。次いで、タンパク質A−セファローズを加え、さらに、4℃で2時間培養した。免疫沈降複合体を、TETN緩衝液(pH7.5で25mM Tris、5mM EDTA、250mM NaCl、および1%Triton X−100)で3回洗浄し、PBSで1回洗浄した。ペレットを、SDS-PAGEローディングバッファー中に再懸濁し、5分間沸騰させ、さらに、電気泳動によって4〜12%トリス−グリシン ゲルで分離した。オートラジオグラフィーによって放射性タンパク質を検出した。
【0100】
MTPおよびL−FABPのプロモーター−レポーターの転写活性は、mRNA発現における細胞型特異的な違いを反映する。近位MTPプロモーター領域内に配置されたDR1要素は、L35細胞における発現の欠損とFAO細胞により示された高レベル発現との原因であることが、以前から明らかであった(Kang et al., 2003)COUP−TFIIによるこのDR1の占有は、L35細胞により示された、抑制されたMTP遺伝子転写を引き起こすことが明らかであった(Kang et al., 2003)。L−FABPの生産物はVLDL会合/分泌の調節に関与しており(Newverry et al., 2003)、このL−FABPが類似メカニズムによって調節されるかどうかを判断するために調査した。L−FABPプロモーターの配列分析(図1A)によれば、それがMTP遺伝子の転写調節を担うDR1要素(Kang et al., 2003)と類似するDR1を含むことが示された。さらに、L35細胞およびFAO細胞によるL−FABPのmRNA発現は、MTPのmRNA発現と並行であり(図1B)、これは、両者の遺伝子の転写が協調的に調節されているだろうことを示唆している。
【0101】
L−FABPの、またはMTPの近位プロモーター領域のいずれかを含むルシフェラーゼレポーター構築体は、類似の細胞型特異的な違いを表した;プロモーター活性は、L35細胞中のレベルと比較して、FAO細胞中で約8倍高い(図1C)。L−FABPまたはMTPのプロモーター構築対における、DR1サイトの突然変異欠損は、FAO細胞中のプロモーター活性レベルを、L35細胞に見られるものに類似するレベルまで減少させた(図1B)。したがって、L−FABPおよびMTP遺伝子のプロモーター領域内に存在する近位DR1要素は、L35細胞系およびFAO細胞系に示される両者の遺伝子の内在性mRNAレベルと関連する相対プロモーター活性を与えるのに十分である。
【0102】
近位DR1サイトへのCOUP−TFIIの結合は、L−FABP遺伝子の転写抑制を媒介する。L35およびFAOの肝臓細胞系から得られた核抽出物は、L−FABPプロモーターのDR1要素を含むオリゴヌクレオチドプローブと、明確なDNA−タンパク質複合体を形成した(図2A)。L35細胞からの核抽出物を用いて形成されたDNA−タンパク質複合体は、COUP−TFIIに対して特異的な抗体とのスーパーシフトを示した(図2A)。対照的に、FAOからの核抽出物を用いて形成されたDNA−タンパク質複合体は、COUP−TFII抗体とのスーパーシフトを表さなかった(図2A)。DR1サイトの変異が、細胞型特異的DNAタンパク質複合体の形成を阻害したため、その形成には、正常なDR1サイトを必要した。
【0103】
COUP−TFII発現プラスミドを導入されたFAO細胞におけるCOUP−TFIIの異所性発現は、L−FABPプロモーター活性における用量依存的抑制をもたらした(図2B)。COUP−TFII発現の増加は、DR1配列の突然変異欠損をかかえるL−FABPプロモーター構築体の活性を変化させないため(図2B)、COUP−TFIIによるL−FABPプロモーターの抑制は、機能性DR1要素に依存する。COUP−TFIIを発現するプラスミドを導入されたFAO細胞によって示される、転写の最大限の減少は、L35細胞によって示される低レベルを、部分的(50〜70%)にのみ再現した。これは、発現における細胞型特異的な違いに対して、追加的な因子が寄与している可能性を示唆する。これらの発見は、MTP DR1要素を用いて得られたもの(Kang et al., 2003)に類似する発見であり、L35細胞中で、COUP−TFIIによるDR1要素の占有が、両者の遺伝子の転写不活性化に関与するという結論を支持している(図2A)。
【0104】
PPARα−RXRαヘテロダイマーは、MTPおよびL−FABP遺伝子の両者のDR1プロモーター要素と結合するために、COUP−TFIIと競争する。MTP−DR1サイトと共に形成された複合体についてのEMSA−スーパーシフト解析によれば、RXRαを含んでいるFAO細胞特異的複合体が明らかになった(Kang et al., 2003)。PPARα−RXRαヘテロダイマーは、近位プロモーター領域におけるDR1サイトを介して、L−FABPの転写を活性化することが示されているため(Poirie et al., 1997)、MTP遺伝子が同じように調節されたかどうかを評価した。FAO細胞からの核酸を用いたEMSAスーパーシフト解析によれば、L−FABP−またはMTP−DR1サイトのいずれかを含むDNAプローブが、類似FAO特異的複合体を形成したこと(図3A;レーン1)が明らかにされた。なお、上記複合体は、COUP−TFII特異的抗血清とスーパーシフトしなかったが(図3A;レーン2)、RXRα(図3;レーン3)またはPPARα(図3;レーン4)のいずれかを認識する抗血清とスーパーシフトした。対照的に、L35細胞から得られた核抽出物とのPPARα−RXRαスーパーシフトは、検出されなった(Kang et al., 2003)。これらの発見は、FAO細胞中では、L−FABPおよびMTPの両方のプロモーターのDR1サイトがPPARα−RXRαヘテロダイマーによって占有される一方、L35細胞中では、これら同様のサイトはCOUP−TFII複合体によって占有されるということを示す。
【0105】
COUP−TFII特異的抗血清を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)解析によれば、L35細胞の含有クロマチンは、FAO細胞のクロマチン細胞と比較して、4倍の濃縮度のL−FABP−DR1およびMTP−DR1領域を示すことが明らかにされた(図3B)。対照的に、PPARα特異的抗血清を用いて、FAO細胞から得られたクロマチンは、L35細胞からのクロマチンと比較して、1〜4倍の濃縮度の近位L−FABP−DR1およびMTP−DR1領域を示した(図3B)。両方の細胞系から免疫沈降された末端非翻訳領域のレベルは類似しているため(図3B)、約4倍の濃縮度の近位L−FABP−DR1およびMTP−DR1領域を含むDNA配列は、L−FABPおよびMTPの両方のプロモーターに対する、PPARα−RXRα(FAO細胞)またはCOUP−TFII(L35細胞)の結合に関する細胞型特異的な違いを反映する。したがって、ChIP解析から得られたデータ(図3B)は、EMSAスーパーシフト解析から得られたデータ(図2Aおよび図3A)と調和している。
【0106】
L35細胞のPPARα−RXRα作用薬処理は、L−FABPおよびMTPの発現の転写誘導と、apoBを分泌する能力の回復とをもたらす。PPARαおよび/またはRXRα作用薬によるL35細胞の処理は、MTP(約55〜65倍)およびL−FABP(約60〜75倍)の両方のmRNAの発現を顕著に増加させた(図4A)。両方の作用薬による処理は、MTPおよびL−FABPのmRNA発現を相乗的に300倍近くまで増加させた(図4A)。MTPおよびL−FABPのプロモータールシフェラーゼレポーター構築体は、PPARαおよびRXRα作用薬に対して、同様の反応を示した(図4B)。したがって、PPARαおよびRXRα作用薬(各単独で、および組み合わせで)によるL35細胞の処理は、MTP−DR1およびL−FABP−DR1の両方のプロモーターレポーター構築体の転写活性を、10倍に至るまで増幅する(図4B)。各プロモーターの活性における無有意変化は、DR1サイトをかかえるレポーター構築体を用いて検出された(図4B)。これらの発見は、PPARαおよびRXRα作用薬の効果がDR1要素を介して媒介されるということを示している。
【0107】
賦形剤DMSOによる単独処理は、MTPおよびL−FABPの両方のmRNAの発現における比較的少量であるが有意な増加と、それらのプロモーター−レポーターの活性とを引き起こした(各図4Aおよび図4B)。賦形剤としてDMSOを用いつつ、細胞にPPARαおよびRXRα作用薬を加えると、DMSO賦形剤を単独で加えたときよりも、より多くのL−FABPおよびMTPの誘導が示された(図4Aおよび図4B)。DMSOによるPPARα活性化遺伝子の誘導は(Pauley et al., 2002)に説明されている。
【0108】
L35細胞は、MTP遺伝子の転写不活性化によって、apoB含有リポタンパク質を会合および分泌するための能力が欠けている(Hui et al., 2002; Kang et al., 2003)。PPARα−RXRα作用薬によるL35細胞の処理は、デノボ合成された35S−標識apoBの分泌を顕著に増幅した(図4C)。したがって、PPARα−RXRα作用薬は、L−FABPおよびMTPの発現を回復し、それによって、L35細胞におけるapoB含有リポタンパク質の会合および分泌の活性化が引き起こされる。
【0109】
L−FABPおよびMTPの作用薬誘導は、DR1関連因子の相対的な細胞内含有量の変化によって引き起こされ、両方の遺伝子の近位要素の複合体占有を変化させる。さらなる解析によれば、PPARα−RXRα作用薬によるL35細胞の処理が、その核内受容体のレベルを、FAO細胞によって示されるレベルと類似するように変更したということが明らかとなった(図5A)。したがって、PPARα−RXRα作用薬によるL35細胞の処理を受けて、PPARα(5倍)およびRXRα(2.3倍)の両方のmRNAの発現は増加し、一方、COUP−RFIIのレベルは減少(−60%)した(図5A)。DMSO単独によって処理されたL35細胞もまた、COUP−RFIIレベルにおける大幅な減少を示したが、PPARαまたはRXRαにいずれかのレベルでは変化がなかった(図5A)。COUP−RFIIにおけるDMSOの媒介による減少は、なぜDMSOが、単独で、L−FABPおよびMTPの転写および発現についての増加と関係していたのか(図4)について、説明するだろう。
【0110】
転写因子の発現において作用薬が媒介する変化が、内在性プロモーター中のDR1サイトの複合体占有における変化と一致するかどうかを判断するために、作用薬により処理したL35細胞のChIP解析を、未処理のL35およびFAO細胞のものと比較した。L35細胞のPPARα−RXRα作用薬処理は、COUP−RFII特異的抗血清と免疫沈降した、L−FABP−およびMTP−DR1領域含有クロマチンの量を(約3倍に)減少させ(図5B)、同時に、PPARα特異的抗血清によるその結合量を(約3倍に)増加させた(図5B)。よって、ChIp解析による結果は、核内受容体の発現レベルにおける変化(図5A)と一致した。データの組み合わせによれば、PPARα−RXRαリガンド活性化は、リプレッサーCOUP−RFIIと比較して、活性化複合体PPARα−RXRαの細胞内含有量を増加させることによって、L35細胞型の表現型を、FAO細胞型の表現型に変換することが示される。これらの変化は、L−FABP遺伝子およびMTP遺伝子のDR1要素と結びつく複合体において並行的な変化をもたらし、PPARα−RXRα複合体の活性化によるDR1の占有を助ける。
【0111】
肝臓細胞および生体内において、L−FABPおよびMTPの高レベル発現のためには、PPARαが必要である。そのようなものとして、本発明は、L−FABPおよびMTPの協調した発現のために、PPARα−RXRα活性化複合体が必須であることを予測する。この仮説を検証するために、FAO細胞中のPPARαの発現レベルをノックダウンするRNA干渉を利用した。PPARα特異的siRNAを導入したFAO細胞では、コントロールsiRNAを導入した細胞と比較して、PPARαのmRNAにおける75%の減少が実証された(図6A)。PPARαのmRNAにおけるこの減少は、L−FABPおよびMTPの両方のmRNAの細胞内含有量がコントロールの50%近くまで減少したことと関係があった(図6A)。PPARα特異的RNAiは、PPARα非依存性apoBのmTNAレベルと変化させておらず、これは、L−FABPおよびMTPにおける減少がPPARαの低減に特異的であったこと(図6A)を示唆している。これらの発見によれば、FAO細胞に見られる比較的高度な発現レベルのL−FABPおよびMTPのためには、PPARαが必要であることが示される。
【0112】
また、PPARα作用薬が、生体内におけるL−FABPおよびMTPのmRNAの肝臓での発現を協調的に誘発するかどうかについて、そうだとしたら、上記作用薬が媒介する増加はPPARα依存性であるかどうかについて検討した。コントロールC57/BL6マウス、およびPPARα-/-マウスを、PPARα作用薬GW−7647(Fu et al., 2005)で処理した。コントロールマウスは、PPARα作用薬による処理の後、L−FABPおよびMTPの両方のmRNAのレベル増加を示したが(図6B)、機能性PPARα欠損マウスは、L−FABPおよびMTPのいずれの発現レベルにおいても顕著な変化を示さなかった(図6B)。これらの生体内データは、FAO/L35肝臓細胞を用いて得られた発見を裏付ける。本明細書で提供される発見は、共に、L−FABP遺伝子およびMTP遺伝子の両方の転写調節において、PPARαが重要な役割を果たすことを実証している。
【0113】
L−FABP遺伝子およびMTP遺伝子を協調的に誘導するために、PPARαと協調してPGC−1βが作用する。転写コアクチベータであるPGC−1αおよびPGC−1β(kressler et al., 2002)には、明確な遺伝子標的が示される(Lin et al., 2003; Lin et al., 2005)。PGC−1α活性化遺伝子は、グルコース新生およびミトコンドリア生物発生/脂肪酸酸化に関与し(Lin et al., 2003)、また、PGC−1β活性化遺伝子は、ミトコンドリア生物発生/脂肪酸酸化、および肝臓脂質輸送(例えばMTP)に関与する(Lin et al., 2005)。L35細胞は、高いレベルのPGC−1αと、ほぼ検出できないレベルのPGC−1βとを発現するのに対して、FAO細胞は、高いレベルのPGC−1βと、ほぼ検出できないレベルのPGC−1αとを発現する(図7A)という観察結果は、PGC−1βがMTP遺伝子発現を活性化させるという提言(Lin et al., 2005)と一致する。この提言は、PPARα作用薬で処理されたL35細胞およびマウスの両方が、PGC−1βのmRNAについての1〜3倍に誘発を引き起こしたという発見(図7B)によって、さらに裏付けされる。L−FABPおよびMTPの誘発におけるPGC−1βの役割を調べるために、FAO細胞をPPARα−RXRα作用薬で処理し、かつ、PGC−1βをノックダウンするsiRNAの効果を測定した。PPARα−RXRα作用薬によって、PGC−1βに対して特異的なsiRNAを与えられたFAO細胞を処理すると、PGC−1βのmRNAレベルは、L−FABP(−38%)とMTP(−48%)との両方のmRNAレベルの協調的な減少と関係して、65%減少した。その一方、PGC−1αのmRNAレベルは変化せずに保たれた(図7C)。PPARα−RXRα作用薬によって、ネガティブコントロールのsiRNAを与えられたFAO細胞を処理すると、いずれのmRNAレベルにおいても変化が示されなかった(図7C)。よって、siRNAは標的特異性を実証しており、L−FABPおよびMTPのmRNA発現における協調的な低下は、PGC−1β濃度の低下に起因していた。
【0114】
未処理のL35細胞、および、PPARα−RXRα作用薬により処理されたL35細胞において、PGC−1βを発現するアデノウイルス(Lin et al., 2002a; Lin et al., 2005)の導入を介して、PGC−1βの発現を増強することによって、L−FABPおよびMTPの遺伝子転写におけるPGC−1βの役割をさらに検討した。PGC−1βアデノウイルスは、未処理のL35細胞におけるL−FABPまたはMTPのmRNAレベルに作用しなかった(図8)。対照的に、PGC−1βアデノウイルスによってPPARα−RXRα作用薬に刺激されたL35を処理すると、L−FABPおよびMTPの両方のmRNAは、作用薬により処理したコントロール(GFP導入したコントロールおよび導入していないコントロール)のレベルと比較して、顕著に増加された(〜3倍)(図8)。GFPを発現するアデノウイルスによって、PPARα−RXRα作用薬に刺激されたL35を処理することは、L−FABPおよびMTPのmRNAの発現に対して作用しなかった(図8)。L−FABPおよびMTPの協調的な転写を増幅するために、PPARα−RXRαとPGC−1βとの両方が必要であるという提言に対して、これらのデータは追加的な根拠を提供する。
【0115】
L−FABPおよびMTPの協調的な不活性化は、生体内で、肝臓脂肪症を防止する。L−FABPおよびMTPの両方のプロモーターにおける機能的DR1サイトの保有は、発現および機能(例えばVLDL会合/分泌)における協調的な変動を可能にするだろう。MTPの化学的な抑制、すなわち、高脂血症を治療的に改善するために発達した戦略(Chandler et al., 2003; Ksander et al., 2001; Shiomi and Ito, 2001; Wetterau et al., 1998)は、肝臓脂肪症の発現と関係するせいで、あまり役に立たない(Bjorkegren et al., 2002; Liao et al., 2003)。L−FABPおよびMTPの協調的な抑制が、肝臓脂肪症を引き起こすことなしに、肝臓でのVLDL会合/分泌を阻害するか否かを調べるために、コントロールマウスおよびL−FABP欠損マウス(L−FABP-/-)を、MTP抑制剤(8aR)(Liao et al., 2003)で処理した。8aR処理の7日後、トリグリセリドおよびコレステロールの血漿中濃度は、両グループのマウスにおいて同様のレベルまで顕著に減少された(図9A)。MTP抑制剤によってコントロールC57BL/6マウスを処理したところ、肝臓中のトリグリセリド濃度が4倍に増加したが、肝臓中のトリグリセリド蓄積は、L−FABPの除去によって完全に防止された(図9B)。これらのデータによれば、L−FABP遺伝子およびMTP遺伝子の協調的な転写調節は、肝臓脂肪症を除外して、VLDL会合/分泌の変動を可能にすることが示された。
【実施例2】
【0116】
(L−FABPの化学的抑制による肝臓脂肪症の発現の防止)
本実施例は、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与が血漿中トリグリセリド濃度を減少させることを説明する。
【0117】
3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)(lot # fr. 09061988)は、L−FABPを抑制することが明らかにされている。したがって、MTP抑制剤8aR(Novartis, Summit, NJ)とSandoz compound 58-035との同時投与が、野生型マウスにおいて、肝臓脂肪症の発現を防止するか否かを調べた。処理の前、マウスを出血させ、トリグリセリド(図10)およびコレステロール(図11)の血清中濃度を測定した。その後、0.150mlのコーンオイル(賦形剤のみ)、またはMTP抑制剤8aR(50mg/kg)を含むコーンオイル、もしくはL−FABP抑制剤Sandoz compound 58-035(100mg/kg)を加えたMTP抑制剤8aR(50mg/kg)を含むコーンオイルを用いて、マウスを強制飼養した。7日間の処理後、マウスを出血させて解剖した。L−FABP抑制剤と共に投与したとき、および投与しなかったときにおいて、MTP抑制剤は、血清中トリグリセリド濃度(図10)および血清中コレステロール濃度(図11)の両方を減少させた。予想通りに、MTP抑制剤のみで処理したマウスは、肝臓脂肪症を示した(肝臓トリグリセリド濃度は、5倍にまで増加した;図12)。際立って対照的に、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との両方で処理したマウスからの肝臓は、肝臓トリグリセリド濃度の増加を示さなかった(図12)。MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与は、肝臓脂肪症の発現を防止すると示すこれらのデータは、標的遺伝子の不活性化に起因してマウスのL−FABP発現が欠損するという、発明者らの以前の発見を拡張する。
さらに、これらの発見は、L−FABPを抑制する能力のある薬剤(例えばSandoz compound 58-035)の同時投与は、肝臓脂肪症を引き起こすことなく(図12)、MTP抑制剤が血漿中のリポタンパク質を減少させることができるようにする(図10および図11)。
【0118】
C57BL6雄マウス(8〜10週齢)(n=各グループ中5)には、水を飲むことを自由にさせ、餌として、コーンオイル(0.15ml)のみ、またはMTP抑制剤8aR(50mg/kg)(Novartis, Summit, NJ)(Ksander, et al., 2001, Diaminoindanes as microsomal triglyceride transfer protein inhibitors. J Med Chem 44:4677-4687)を含むコーンオイル、もしくはL−FABP抑制剤Sandoz compound 58-035(100mg/kg)を加えたMTP抑制剤8aR(Novartis, Summit, NJ)を含むコーンオイルを用いて、7日間、毎日強制摂取させた。試験を始める前および試験を始めてから7日後に、マウスを出血させた。12時間の光サイクルを有している(午前6:00から午後6:00まで照明を照らした)空間にマウスを収容した。午前10:00にマウスを眼窩後から出血させ、その後、解剖した。
【0119】
肝臓中のトリグリセリド濃度、ならびに血漿中のコレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を(Liao, et al., 2003, Blocking microsomal triglyceride transfer protein interferes with apoB secretion without causing retention or stress in the ER. J Lipid Res 44:978-985)に記載のように測定した。値は、各グループの5匹のマウスについての平均値±標準偏差を表している。*処理前のマウスと処理後のマウスとの顕著な違い、p<0.05、スチューデントt検定(Student's t test)を示す(図10)。
【0120】
図11は、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与がマウスにおいて血漿中のコレステロール濃度を減少させることを示している。上述にように、C57BL6雄マウス(8〜10週齢)(n=各グループ中5)に対し、コーンオイルのみ、またはMTP抑制剤8aR(Novartis, Summit, NJ)を含むコーンオイル、もしくはL−FABP抑制剤Sandoz compound 58-035を加えたMTP抑制剤8aR(Novartis, Summit, NJ)を含むコーンオイルを用いて、毎日、強制摂取させた。試験を始める前および試験を始めてから7日後に、マウスを出血させた。血漿中のコレステロール濃度を上述のように測定した。値は、各グループの5匹のマウスについての平均値±標準偏差を表している。
【0121】
図12は、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与が、マウスにおける肝臓脂肪症の発現を防止することを示している。上述のように、C57BL6雄マウス(8〜10週齢)(n=各グループ中5)に対し、コーンオイルのみ、またはMTP抑制剤8aR(Novartis, Summit, NJ)を含むコーンオイル、もしくはL−FABP抑制剤Sandoz compound 58-035を加えたMTP抑制剤8aR(Novartis, Summit, NJ)を含むコーンオイルを用いて、毎日、強制摂取させた。7日後にマウスを解剖した。肝臓トリグリセリド濃度を測定した。値は、各グループの5匹のマウスについての平均値±標準偏差を表している。
【0122】
本発明は、上述の実施例を参照して説明されているが、本発明の精神および範囲内で、いろいろと変更したものを含むことは理解されるだろう。したがって、本発明は、以下の特許請求事項の範囲によってのみ限定される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して高脂血症および肥満に対する薬および治療に関するものであり、特には、高脂血症を改善するための組成物および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高脂血症とは上昇した血中脂質濃度を言及するものであり、トリグリセリドおよびコレステロールによって表されるものに留まらない。高脂血症は、リポタンパク代謝の異常な脱着の兆候を表す異常脂質血症としても定義される。人間では、低比重リポタンパク質(LDL)の血中濃度の増加が、冠状動脈性心臓病(CHD)の高いリスクと強く関係している。一方、高比重リポタンパク質(HDL)の血中濃度の増加は、CHDの低いリスクと関係している。トリグリセリド高含有のリポタンパク質(超低比重リポタンパク:VLDL)の血中濃度は、CHD、メタボリック症候群、および2型糖尿病のリスクに応じて変化する。CHDに関係する疾病率および死亡率の両方を減少させるためには、特別食または薬理療法を介してLDLを低下させることが示されている。CHD、膵炎、および2型糖尿病の発現を減少させるためには、特別食または薬理療法を介してプラズマトリグリセリドを減少させることが示されている。
【0003】
人間の肝臓は、VLDLの生産のための主な組織部位である。一部のLDLは肝臓によって直接的に生産されるが、大部分のLDLはVLDLの代謝作用から生成される。VLDLおよびLDLの両方の粒子は、単一のアポリポタンパク質分子(apoB)を含む。apoBは、脂質の安定した球状のエマルジョン粒子を形成する能力を介して、VLDLおよびLDLの粒子の基本的な構造組成物となる。VLDLのコアは主にトリグリセリドから成り、脂肪酸を介して肝外組織にエネルギーを提供する。肝臓でのVLDLの分泌に続いて、コアトリグリセリドが脂肪酸に分解され、この脂肪酸は特定の受容体およびタンパク結合脂肪酸(FABPs)によって急速に取り込まれる。その後、脂肪酸は、トリグリセリドとして蓄えられるか、または、酸化を介してエネルギーおよび熱を生産するために用いられるかのいずれかとなる。LDLのコアは、主にコレステリルエステルから成り、主に、特定の細胞表面受容体に結合することによって、肝外組織にコレステロールを提供する。ほとんどの肝外組織は、厳格に調節された受容体(LDL受容体)によってLDLを取り込むことができる。正常な状態の下で、LDL受容体の発現は細胞コレステロール濃度と逆に変化するため、LDLの取り込みに介在するLDL受容体が過剰なコレステロールの吸収をもたすことはない。しかしながら、仮に、LDLが酸化によって(通常、血中に長期的に存在することの結果として)修飾されると、修飾LDLは、細胞コレステロール濃度と関係せずに発現する受容体を介して、マクロファージによって取り込まれる。過剰な血漿LDL濃度は、血漿中に存在する期間の増加、酸化修飾の増加、および、動脈壁マクロファージによる取り込みの増加と関係する。動脈壁マクロファージによる酸化修飾されたLDLの取り込みは、動脈壁内の炎症およびアテローム性動脈硬化症の発現を引き起こす次の事象を開始する。アテローム性動脈硬化症は主に、熱中症、脳梗塞、および最終的には心臓麻痺の原因となる。
【0004】
アポリポプロテインB含有のリポプロテインの肝臓での生産は、同化およびエネルギーの要求に対して、必須脂質および脂溶性栄養素が周辺組織に運ばれることについての主要経路である。識別できる3つの遺伝子生産物、すなわち、アポリポプロテインB(apoB)、MTP、および肝臓脂肪酸が結合したタンパク質(L−FABPまたはLFABP)は、「脂肪結合」構造ドメインを分け合う。上記「脂肪結合」構造ドメインは、超低比重リポタンパク(VLDL)会合/分泌に必須である。
【0005】
apoBは、非常に大きく(>500kDa)、上記会合のために必要な両親媒性タンパク質であり、トリグリセリドを豊富に含有するVLDLの分泌物である。肝臓および腸が十分なサイズ(〜35kDa)のapoBを生産する能力を喪失することは、apoB含有リポタンパク質の会合および分泌についての阻害と関係する。通常、肝臓によるapoBの発現は構造性であり、肝臓におけるapoB含有リポタンパク質の分泌の変化は、新規に合成されたapoBの量の変化による結果である。
【0006】
ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク質(MTP)は、脂質輸送タンパク質、ならびに、apoBの折り畳みおよび転移を促進するものの両方として働く。MTPは、4つの主な脂質の種類(遊離コレステロール、リン脂質、トリグリセリド、およびコレステロールエステル)を、2つの工程のプロセスを介して、新生apoB含有リポタンパク質粒子へ移送することを促進する。多くのこうした協調するMTP依存プロセスの1つを阻止することは、プロテアソームによる新生apoBの同時翻訳の低下を引き起こす。
【0007】
肝臓でのVLDL会合および分泌は、個々の間で高度に可変であり、栄養状態の変化に対して敏感である。VLDL分泌中のこの栄養変化は、主要な脂質合成酵素の発現レベルにおけるステロール調節エレメント結合タンパク質の媒介による変化と関係している。肝臓による新規の脂質合成率が減少するとき(例えば断食)、脂肪組織によって供給される脂肪酸は、グリセロ脂質合成およびVLDL会合/分泌に対して十分な基質を提供することができる。肝臓によるMTPおよびL−FABPの両方の発現レベルの変化は、グリセロ脂質生合成およびVLDL会合/分泌への脂肪酸の流動を制御する。
【0008】
MTPの発現はapoBの分泌を律速するための理想的な目的となり、MTPの抑制は、高脂血症を治療的に改善するための理想的な目的になると考えられている。いくつかの研究によれば、MTP抑制剤を用いたマウスの処理、または、MTP遺伝子ノックアウトのいずれかによって、MTPの機能的な発現を低下させることは、アテローム性動脈硬化症に対して感受性を増加するように遺伝的改造をされたマウスにおいて、アテローム性動脈硬化症の形成を顕著に減少させることが示されている。MTP抑制剤は、肝臓のリポタンパク質分泌を阻害し、血漿脂質濃度を低下させるが、それらはまた、肝臓脂肪症(例えば脂肪肝の発現)の原因でもある。よって、MTP抑制剤は、高脂血症(心臓病の主な原因)に対して効果的であるが、それらは肝臓脂肪症の原因となるため、安全ではなく、または実用的ではない。したがって、脂肪肝の発現を引き起こすことなく、高脂血症および肥満を治療するために組成物および方法が求められている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、MTPとL−FABP活性の同時抑制が、肝臓脂肪症(脂肪肝)を引き起こすことなく、高脂血症を改善(例えば紡糸または抑制)するという発見に基づいている。この独創性に富んだ発見は、癌(例えば、肝臓癌細胞)の治療、スクリーニング、リスクアセスメント、予後診断、診断、および治療法の発展のために有用である。
【0010】
したがって、本発明は、治療を必要とする被験者に、治療効果のある量のミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)抑制剤を、治療効果のある量の肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)抑制剤と組み合わせて投与することによって、高脂血症を治療する方法を提供する。一実施形態では、L−FABP抑制剤は小分子である。他の実施形態では、MTP抑制剤が小分子であって、L−FABP抑制剤と組み合わせて投与されると、脂質転移によって、肝臓脂肪症を引き起こすことなしに、血漿中トリグリセリド濃度が減少する。MTPおよびL−FABPの模範的な小分子抑制剤には、これに制限されないが、それぞれ、8aRとして設計されたジアミノインダン、および3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)が挙げられる。
【0011】
他の実施形態では、MTP抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドと、または当該ポリヌクレオチドの機能性断片と、ハイブリダイズするdsRNAである。他の実施形態では、L−FABP抑制剤は、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドと、または当該ポリヌクレオチドの機能性断片と、ハイブリダイズするdsRNAである。加えて、癌細胞(例えば肝臓癌細胞)においてMTPおよびL−FABPの濃度が上昇しているかどうかを測定する方法、およびそのような癌を治療するために有用な薬剤を同定するための方法を提供する。さらに、高脂血症または肝臓癌をかかえる被験者を治療するための治療規制を観測する方法を提供する。このように、本方法は、肝臓脂肪症の発現を防止したまま高脂血症を改善する方法として用いられてもよい。
【0012】
本発明は、治療を必要とする被験者からの細胞試料を少なくとも1つの検査薬と接触させ、さらに、接触に続くMTPおよびL−FABPの発現の減少を検出することによって、高脂血症または肝臓癌を治療するために有用な薬剤を同定する方法と関係する。当該方法では、接触に続くL−FABP発現の減少の検出が、高脂血症を治療するために有益な薬剤を同定する。一実施形態において、上記方法は、ハイスループット法で行われてもよい。他の実施形態では、上記方法は、オーダーメイド医療を実行するための方法を提供する。当該方法における治療は、被験者の肝臓細胞の特徴に基づいて、個別の被験者に合わせられる。本発明の方法は、例えば、被験者からの細胞試料を少なくとも1つの検査薬と接触させることによって行われることができる。当該方法において、接触の後に増加したMTPおよびL−FABP活性または発現を検出することが、その薬剤を用いた治療の効果を同定する。
【0013】
本発明は、L−FABP活性または発現の抑制剤に対するスクリーニングの方法であって、MTPおよび/またはL−FABPを発現している細胞を、少なくとも1つの検査薬と接触させる工程、および、接触に続くL−FABPの発現または活性の減少を検出する工程を含んでおり、接触に続くL−FABPの発現または活性の減少を検出することが、L−FABP抑制剤としての薬剤を同定する方法をも提供する。
【0014】
本発明は、また、MTPおよびL−FABP活性の抑制剤に対するスクリーニングの方法であって、MTPおよびL−FABPを発現している細胞を、少なくとも1つの検査薬と接触させる工程、および、接触に続くMTPおよびL−FABPの発現の減少を検出する工程を含んでおり、接触に続くMTPおよびL−FABPの発現の減少を検出することが、MTPおよびL−FABPの抑制剤としての薬剤を同定する方法をも提供する。
【0015】
本発明は、さらに、L−FABP活性抑制剤と組み合わせてMTP抑制剤を用いる治療に適している、被験者の肝臓癌細胞を同定する方法と関係する。当該方法は、対応正常細胞におけるMTPおよびL−FABP活性と比較して、細胞試料におけるMTPおよびL−FABP活性の上昇を検出する工程、それによって、L−FABP活性抑制剤と組み合わせてMTP抑制剤を用いた治療に適した肝臓癌細胞を同定する工程を含んでいる。このように、上記方法は、癌(例えば肝臓癌)を有する被験者が、本発明の抑制剤を用いた治療に対して反応が良いかどうかを決定するための手段を提供する。上記方法は、例えば、対応正常細胞と比較して、被験者の細胞試料におけるMTPおよびL−FABP活性の上昇を検出することによって行われてもよく、当該方法では、MTPおよびL−FABPの上昇した濃度を検出することは、被験者が抑制剤を用いた治療から益を得ることができることを示している。上記方法は、さらに、MTPもしくはL−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNAと、またはその機能的断片と細胞を接触させる工程、および、接触に続くMTPもしくはL−FABPの発現または活性の減少を検出する工程、それによって、肝臓癌細胞がこのような治療に適しているかを確かめる工程を含んでいる。
【0016】
他の態様では、本発明は、例えばC型肝炎ウイルス(HCV)などによるウイルス感染を改善し、肝臓脂肪症、炎症性肝臓疾患、線維症、肝硬変、肝不全、および/または肝細胞癌の発現を減少するための方法を提供する。MTP抑制剤は、HCV生産を減少することが明らかにされているが、MTP抑制剤によって引き起こされる肝臓脂肪症の発現は、肝硬変および肝細胞癌の形成を実際に促進するだろう。一実施形態において、L−FABPおよびMTP脂質転移活性の同時抑制は、肝臓脂肪症ならびにその後の肝硬変および肝細胞癌の形成を引き起こすことなしに、HCV感染の進行を低下させるだろう。
【0017】
本発明の態様において、細胞試料は、例えば、癌を患う被験者の生体から得られた腫瘍試料、外科手術(例えば腫瘍を除去または減量するための外科的処置)によって得られた腫瘍試料、または、被験者の体液の試料などを含む、任意の試料であってもよい。
【0018】
一般に、必須ではないが、スクリーニング法は、例えば培養液中または固体担体上などの生体外で、細胞試料と接触させることによって行われる。このように、上記方法は、ハイスループット(high-throughput)法に都合よく適用できる。ハイスループット法では、同様のまたは異なる、多く(例えば2つ以上)の細胞試料が並行して調査される。よって、一実施形態では、候補薬は、単独の被験者からのいくつかの細胞試料上で検査されてもよい。これによれば、例えば、被験者に投与される薬剤の特に効果的な濃度を同定すること、または、被験者に投与される特に効果的な薬剤を同定することなどが可能になる。
他の実施形態では、ハイスループット法は、最もよい(最も効果的な)薬剤または薬剤の組み合わせを治療手段に用いることができるように、被験者の癌細胞上で、2つ、3つ、4つ、それ以上の異なる検査薬を、単独または組み合わせて試験することを可能にする。したがって、様々な実施形態では、ハイスループット法は、異なる被験者の異なる細胞試料を、同じ量の候補薬と接触させること;または、単独の被験者の異なる細胞試料を、異なる量の候補薬と接触させること;または、2人以上の異なる被験者の異なる細胞試料を、同量または異なる量の、異なる候補薬と接触させることによって実行される。さらに、スループット法によれば、例えばコントロール試料(ポジティブコントロールおよび/またはネガティブコントロール)を、例えば検査された薬剤を用いて効果的に治療される既知の細胞試料などの検査試料と、並行して実施することが可能になる。様々に例示した方法もまた意図したものである。
【0019】
他の態様では、本発明は、本発明の組成物を備えるキットを提供する。一実施形態では、上記キットは、さらに、本発明の方法を実施するための説明書を提供する。
【0020】
よって、本発明は、L−FABP脂質転移活性についての遺伝子の不活性化または化学的抑制のいずれかによる、L−FABPの機能的な発現を阻害することは、MTPが、脂肪肝の発現を引き起こすことなく、血漿中脂質を減少できるようにするということを実証する。単独のMTP抑制剤は、血漿中脂質濃度を減少する効果的な手段であるが、脂肪肝の関連発現によって、単独のMTP抑制剤は、高脂血症を低下するための安全な治療規制から除外される。したがって、MTP抑制剤と組み合わせた、L−FABP脂質転移活性の抑制剤は、肝臓脂肪症の発現を引き起こすことなしに、高脂血症を改善する。
【0021】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面および以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴、目的、および利点は、上記説明および特許請求の範囲から明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】図1A〜図1Cは、MTPおよびL−FABPが、mRNAおよびプロモーター活性レベルの両方において、類似の細胞型特異性の違いを明らかにすることを示すグラフ図である。図1Aは、MTP(SEQ ID NO:16)およびL−FABP(SEQ ID NO:17)の両方のプロモーター(ラット)の近位領域内における保存DR1要素(5’および3’六量体ハーフサイト(half site)には下線を引いている)を示している。
【図1B】図1Bは、MTPおよびL−FABPが、mRNAおよびプロモーター活性レベルの両方において、類似の細胞型特異性の違いを明らかにすることを示すグラフ図である。図1Bは、L35細胞およびFAO細胞におけるMTPおよびL−FABPのmRNAレベルのサイバーグリーン(sybr green)リアルタイムPCR解析の結果を示している。全ての値を、36B4のmRNAレベルに対して規格化した。誤差バーは、トリプリケート(triplicate)サンプルによる標準偏差を示している。
【図1C】図1Cは、MTPおよびL−FABPが、mRNAおよびプロモーター活性レベルの両方において、類似の細胞型特異性の違いを明らかにすることを示すグラフ図である。図1Cは、MTP(-135/+66)またはL−FABP(-141/+66)のいずれかのプロモーターに由来するルシフェラーゼ構築体が、L35細胞およびFAO細胞中に一時的に導入されたことを示している。変異型DR1要素を含む構築体は、以下に説明するように、各プロモーターの5’六量体ハーフサイトにおけるACからTGへの塩基対変化から構成される。ルシフェラーゼ活性は、黒いバー(FAO細胞)と白いバー(L35細胞)とによって表されている。全てのルシフェラーゼ値を、Renillaコントロールに対して規格化した。誤差バーは、トリプリケート(triplicate)サンプルによる標準偏差を示している。
【図2A】図2Aは、COUP−TFIIが、L−FABPプロモーター活性のレプレッサーとして働く近位DR1サイトと結合することを示す模式的な図である。図2Aは、放射性同位体標識されたL−FABP−DR1プローブによるEMSAを使用して、L35細胞とFAO細胞由来との核抽出物を比べることによって、異なる複合体が得られたことを示している。L35−/FAO−特異的な複合体におけるCOUP−TFIIの存在を評価するために、L−FABP−DR1プローブとの培養中、核酸抽出物に、COUP−TFIIに対して特異的な抗体を加えた。抗体を追加したL35特異的なCOUP−TFII複合体、および抗体なしのL35特異的なCOUP−TFII複合体を、それぞれ、黒い矢印および白い矢印によって示している。
【図2B】図2Bは、COUP−TFIIが、L−FABPプロモーター活性のレプレッサーとして働く近位DR1サイトと結合することを示す模式的な図である。図2Bは、FAO細胞中のCOUP−TFIIの同時導入がL−FABPプロモーター活性を減少させることを示している。ラットL−FABPプロモーターの配列-141/+66を含むルシフェラーゼレポータープラスミドを、図に示された量のCOUP−TFII発現プラスミドと共に、FAO細胞中に同時導入した。変異型DR1要素を含む構築体は、図1に示す通りである。全てのルシフェラーゼ値を、Renillaコントロールに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図3A】図3Aは、L35(COUP−TFII)細胞およびFAO(PPARα/RXRα)細胞におけるDR1要素との細胞型特異的な複合体形成が、核内受容体COUP−TFII:PPARα/RXRαの相対的発現率を反映することを示す模式的なグラフ図である。図3Aは、放射性同位体標識されたL−FABP−DR1プローブまたはMTP−DR1プローブによるEMSAを使用して、類似のFAO特異的複合体が得られたことを示している。FAO特異的な複合体におけるPPARα/RXRαの存在を評価するために、核酸抽出物を、L−FABP−DR1プローブまたはMTP−DR1プローブのいずれかと培養中に、PPARα(P)、RXRα(R)、またはCOUP−TFII(C)に対して特異的な抗体を加えた。
【図3B】図3Bは、L35(COUP−TFII)細胞およびFAO(PPARα/RXRα)細胞におけるDR1要素との細胞型特異的な複合体形成が、核内受容体COUP−TFII:PPARα/RXRαの相対的発現率を反映することを示す模式的なグラフ図である。図3Bは、L35細胞とFAO細胞とを比較したChIP解析による結果を示しており、当該解析は、COUP−TFIIおよびPPARαに特異的な抗体を利用して行われた。図に示すように、領域特異的DNAの相対的な量は、L−FABP−DR1またはMTP−DR1のいずれかのプロモーター領域に対して特異的なプライマーを用いて、リアルタイムPCRによって測定された(黒いバー)。末端の非翻訳領域の相対的なレベルは、領域特異性を証明するために示される(白いバー)。以下に説明されるように、全ての値を、IgGを用いた免疫沈降に対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図3C】図3Cは、L35(COUP−TFII)細胞およびFAO(PPARα/RXRα)細胞におけるDR1要素との細胞型特異的な複合体形成が、核内受容体COUP−TFII:PPARα/RXRαの相対的発現率を反映することを示す模式的なグラフ図である。図3Cは、L35細胞(白いバー)およびFAO細胞(黒いバー)における、COUP−TFII、RXRα、およびPPARαのmRNAレベルのリアルタイムPCR解析による結果を示している。全ての値を36B4のmRNAレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図4A】図4Aは、L35細胞のPPARα/RXRα作用薬処理が、L−FABPおよびMTPのmRNAの協調的な誘発、DR1サイト依存的なプロモーター活性レベルの増加、ならびにapoB分泌能力の回復を可能にすることを示す模式的なグラフ図である。図4Aは、図に示すように、リアルタイムPCRを使用して、PPARα作用薬WY−14,643(WY)、RXRα9−cisレチノイン酸(RA)作用薬、または賦形剤(DMSO)のいずれかと48時間処理したL35細胞と、未処理L35細胞(−)とを比較することによって、相対的なL−FABPとMTPとのmRNAレベルを測定したものを示している。WY/RAは、両方の作用薬を同時に用いて処理したL35細胞を示している。全ての値を、36B4のmRNAレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateコントロールによる標準偏差を示している。
【図4B】図4Bは、L35細胞のPPARα/RXRα作用薬処理が、L−FABPおよびMTPのmRNAの協調的な誘発、DR1サイト依存的なプロモーター活性レベルの増加、ならびにapoB分泌能力の回復を可能にすることを示す模式的なグラフ図である。図4Bは、野生型および変異型の両方のDR1ルシフェラーゼレポーター構築体を利用して、未処理L35細胞(−)と、上述のように48時間処理した細胞とを比較することによって、L−FABPおよびMTPの両方に対する相対的なプロモーター活性レベルを測定したことを示している。プロモーター活性については、野生型を白いバーとして、変異型DR1構築体を黒いバーとして示している。全てのルシフェラーゼ値をRenillaコントロールに対して規格化した。誤差バーは、triplicateコントロールによる標準偏差を示している。
【図4C】図4Cは、L35細胞のPPARα/RXRα作用薬処理が、L−FABPおよびMTPのmRNAの協調的な誘発、DR1サイト依存的なプロモーター活性レベルの増加、ならびにapoB分泌能力の回復を可能にすることを示す模式的なグラフ図である。図4Cは、〔35S〕−メチオニンで標識する前に、72時間、1μM9−cisレチノイン酸および10μM WY−14,643がない場合(レーン1〜3)、または存在する場合(レーン4〜6)において、L35細胞を培養した結果を示している。培養液を、放射能の添加の24時間後に採集した。分泌されたapoBを、ポリクローナル抗apoB抗体を用いて免疫沈降し、SDS−PAGE(4〜12%)で分離した。標識化されたタンパク質を、オートラジオグラフィーによって検出した。apoB48およびapoB100の位置を、分子量マーカーおよびヒトLDL標準(human LDL standards)によって測定した。
【図5A】図5Aは、L35細胞のPPARα/RXRα作用薬処理が、COUP−TFII:PPARα/RXRαの核内受容体を減少させ、結果的に、L−FABPおよびMTPの両方のプロモーターの近位DR1領域の占有を、抑制的COUP−TFII複合体から活性化PPARα/RXRα複合体に変化させることを示すグラフ図である。図5Aは、リアルタイムPCRを使用して、図に示すように、48時間、WY−14,643および9−cisレチノイン酸を同時に処理したもの(黒いバー)またはDMSOで処理したもの(灰色のバー)と、未処理L35細胞(白バー)とを比較することによって、COUP−TFII、RXRαおよびPPARαの相対的なmRNAレベルを測定した結果を示している。全ての値を、36B4mRNAのレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図5B】図5Bは、L35細胞のPPARα/RXRα作用薬処理が、COUP−TFII:PPARα/RXRαの核内受容体を減少させ、結果的に、L−FABPおよびMTPの両方のプロモーターの近位DR1領域の占有を、抑制的COUP−TFII複合体から活性化PPARα/RXRα複合体に変化させることを示すグラフ図である。図5Bは、未処理のL35細胞およびFAO細胞と、WY−14,643および9−cisレチノイン酸の両方で処理したL35細胞(L35W/R)とを比較したChIP解析による結果を示しており、当該回折は、図に示すように、COUP−TFIIおよびPPARαに特異的な抗体を利用して行われた。図に示すように、領域特異的DNAの相対的な量は、L−FABP−DR1またはMTP−DR1のいずれかのプロモーター領域に対して特異的なプライマーを用いて、リアルタイムPCRによって測定された(黒いバー)。末端の非翻訳領域の相対的なレベルは、領域特異性を証明するために示されている(白いバー)。「実験手順」に説明されるように、全ての値を、投入DNAと、IgGを用いた免疫沈降とに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図6A】図6Aは、FAO細胞におけるL−FABPおよびMTP発現を持続するために、および、生体内での両遺伝子の誘発に媒介されるGW−7647のために、PPARαが必要であることを示すグラフ図である。図6Aは、PPARαのRNA干渉ノックダウンの結果を示しており、当該結果は、FAO細胞に、PPARα特異的siRNA、またはネガティブコントロールである非標的コントロールsiRNAのいずれかを72時間導入することによって得た。リアルタイムPCRを用いて、PPARα特異的siRNAで処理したFAO細胞(黒いバー)と、ネガティブコントロールsiRNAで処理したFAO細胞(白いバー)とを比較することによって、PPARα、MTP、L−FABP、およびapoBの相対的なmRNAレベルを測定した。PPARα特異的siRNAを用いて処理したFAO細胞におけるmRNAレベルは、ネガティブコントロールの割合を100%に設定して表されている。全ての値を、18SmRNAのレベルに対して規格化した。
【図6B】図6Bは、FAO細胞におけるL−FABPおよびMTP発現を持続するために、および、生体内での両遺伝子の誘発に媒介されるGW−7647のために、PPARαが必要であることを示すグラフ図である。図6Bは、コントロールC57BL/6およびPPARα-/-マウス(5マウス/グループ)を、PPARα作用薬GW−7647で7週間処理した結果を示している。リアルタイムPCRを用いて、L−FABPおよびMTPの相対的なmRNAレベルを測定した。相対的なmRNAレベルは、黒いバー(GW−7647処理)と白いバー(賦形剤処理)として表されている。全ての値を、18SmRNAのレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図7A】図7Aは、PGC−1β発現が、肝臓細胞中および生体内の両方において、L−FABPおよびMTPと相互に関係しており、かつ、FAO細胞中の両方の遺伝子発現に誘発されるPPARα/RXRαのために必要であることを示すグラフ図である。図7Aは、L35細胞(白いバー)およびFAO細胞(黒いバー)におけるPGC−1αおよびPGC−1βのmRNAレベルについてのリアルタイムPCR解析の結果を示している。全ての値を36B4のmRNAレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図7B】図7Bは、PGC−1β発現が、肝臓細胞中および生体内の両方において、L−FABPおよびMTPと相互に関係しており、かつ、FAO細胞中の両方の遺伝子発現に誘発されるPPARα/RXRαのために必要であることを示すグラフ図である。図7Bは、未処理のL35細胞(白いバー)と、WY−14,643および9−cisレチノイン酸で同時に49時間処理したL35細胞(黒いバー)とを比較することによって、PGC−1βのmRNAレベルについて、リアルタイムRNA解析をした結果を示している。追加して、未処理の野生型マウス(Wt、白いバー)と、PPARα作用薬WY−7647で7週間処理した野生型マウス(WtGW−7647、黒いバー)とを比較して、PGC−1βのmRNAレベルを測定した。全ての値を36B4のmRNAレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図7C】図7Cは、PGC−1β発現が、肝臓細胞中および生体内の両方において、L−FABPおよびMTPと相互に関係しており、かつ、FAO細胞中の両方の遺伝子発現に誘発されるPPARα/RXRαのために必要であることを示すグラフ図である。図7Cは、PGC−1βのRNA干渉ノックダウンの結果を示しており、当該結果は、FAO細胞に、PGC−1β特異的siRNA、またはネガティブコントロールである非標的コントロールsiRNAのいずれかを72時間導入することによって得た。集菌の48時間前、細胞をWY(10μM)およびRA(1μM)で処理した。リアルタイムPCRを用いて、PGC−1β特異的なsiRNAで処理したFAO細胞(黒いバー)と、ネガティブコントロールsiRNAで処理したFAO細胞(白いバー)とを比較することによって、PGC−1β、MTP、L−FABP、およびPGC−1αの相対的なmRNAレベルを測定した。PGC−1β特異的siRNAを用いて処理したFAO細胞におけるmRNAレベルは、ネガティブコントロールの割合を100%に設定して表されている。全ての値を、36B4mRNAのレベルに対して規格化した。誤差バーは、triplicateサンプルによる標準偏差を示している。
【図8】図8は、L35細胞におけるL−FABPおよびMTPについての、PGC−1βの媒介による増加が、PPARα/RXRα依存性であることを示すグラフ図である。図に示すように、リアルタイムPCRは、アデノウイルス構築体および作用薬で48時間処理されたL35細胞において、L−FABPおよびMTPのmRNAレベルを解析している。L35細胞は、図に示すように、Ad−PGC−1βもしくはAd−GFPで感染されているか、または非感染であった。感染については、同時的な作用薬の処理(WY−14,643および9−sisレチオニン酸)と同時に行った。全ての値(平均値±triplicateサンプルの標準偏差)を、36B4mRNAのレベルに対して規格化した。
【図9A】図9Aは、L−FABP遺伝子の除去によって、MTP抑制剤の誘導する肝臓脂肪症を防止することを示すグラフ図である。雄のC57BL/6マウスおよびL−FABP-/-マウス(6マウス/グループ)に対し、MTP抑制時8aR(50mg/日/kg)を7日間与えた。マウスを解剖し、血漿および肝臓を得て、脂質レベルを測定した。図9Aは、賦形剤処理(白いバー)と、8aR処理(黒いバー)とを比較して、C57BL/6マウスおよびL−FABP-/-マウスの両方において、血漿中のトリグリセリド濃度およびコレステロール濃度を測定した結果を示す。
【図9B】図9Bは、L−FABP遺伝子の除去によって、MTP抑制剤の誘導する肝臓脂肪症を防止することを示すグラフ図である。雄のC57BL/6マウスおよびL−FABP-/-マウス(6マウス/グループ)に対し、MTP抑制時8aR(50mg/日/kg)を7日間与えた。マウスを解剖し、血漿および肝臓を得て、脂質レベルを測定した。図9Bは、未処理(白いバー)と、8aR処理(黒いバー)とを比較して、両系統において、肝臓トリグリセリド濃度を測定した結果を示す。全ての値は、平均値±標準偏差を示している。*P<.001。
【図10】図10は、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与がマウスにおける血漿中トリグリセリド濃度を減少させることを示すグラフ図である。
【図11】図11は、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与がマウスにおける血漿中コレステロール濃度を減少させることを示すグラフ図である。
【図12】図12は、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与がマウスにおける肝臓脂肪症の発現を防止することを示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔本発明の詳細な説明〕
本発明は、ミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)および肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABPまたはLFABP)を同時に抑制することを通じて、高脂血症を改善することに基づいており、また、本発明はそのための方法である。MTPおよびL―FABPの同時抑制によって、本発明の組成物および方法は、肝臓脂肪症(脂肪肝)を引き起こすことなく、高脂血症を改善することができ、ひいては、高脂血症を治療するための効果的かつ安全な方法を提供することができる。
【0024】
本発明の組成物および方法を説明する前に、本発明は、説明される特定の組成物、方法、および実験条件に限定されるものではないことを理解されたい。例えば、組成物、方法、および実験条件は変更されてもよい。また、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲だけに限定されるため、本明細書における専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的として用されており、それに限定されることを意図してはいない。
【0025】
本明細書および添付の特許請求の範囲において用いられているような単数形の表現は、文脈が明らかに別なように指示しているのでない限り、複数形への言及を含んでいる。したがって、例えば、「方法」への言及は、ここで説明される種類についての1つ以上の方法および/または工程を含んでいることは、この公開その他を読む当業者にとって明らかであるだろう。
【0026】
他に定義されていない限り、本明細書における全ての技術用語および科学用語は、本発明が所属する技術分野の当業者によって普通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で説明されるものと類似または均等である任意の方法および物質は、本発明の実施または実験において用いることができるが、好ましい方法および物質は、これから説明されるものである。
【0027】
脂肪はリポタンパク質の形で血液を介して腸および肝臓から移送される。肝臓および腸の両方によるリポタンパク質の生産は、非常に大きな両親媒性タンパク質であるアポリポタンパク質(apoB)を要求する。apoBは、トリグリセリド高含有の超低比重リポタンパク質(VLDL)中の構造タンパクとして、肝臓によって分泌される。血漿中、VLDL中に運ばれたトリグリセリドは、脂肪酸として取り除かれ、エネルギー生産および同化作用に用いるために肝外組織に供給される。粒子を含むapoBは、LDLに変換される。コレステロール高含有の低比重リポタンパク質(LDL)の血漿中濃度の増加は、アテローム性動脈硬化の発現と関係しており、米国および他の先進工業国において、循環器疾患および死亡の主な原因となっている。肝臓は、LDLの生産および分解の両方に関与する主な臓器である。無βリポタンパク血症の劣勢遺伝性疾患を有する患者は、血漿中にLDLをほぼ有しておらず、アテローム性動脈硬化症に対する感受性の減少を示すため、LDLの血漿中濃度を減少させる治療法の発展に対して、多大な努力がされてきた。この提案は、肝臓のLDL摂取および分解の増加の結果として、血漿中のLDL濃度を減少させることによって、循環器疾患から疾患率および死亡率の両方を顕著に減少することが示されている薬(例えばスタチン)の発達によって実現されていた。全ての人が安全にスタチンを摂取できるとは限らず、これが、血漿中のLDL濃度を減少するためのさらなる薬の発展に対する推進力を与えている。
【0028】
無βリポタンパク血症が機能的なミクロソームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)の突然変異欠損によって引き起こされるという発見によって、MTP−脂質転移がapoB含有リポタンパク質の会合および分泌のために必要となることが提案された。本明細書における「無βリポタンパク血症」とは、MTP機能の機能的な欠損を引き起こす、MTP遺伝子における変異の原因となる異常な脂肪代謝という遺伝性疾患に言及している。MTPは、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)を有する複合体として、小胞体(ER)中に存在しているタンパク質である。MTPは、最初は、細胞膜からリポタンパク質へ向けた脂質(トリグリセリド、リン脂質、コレステロール、およびコレステロールエステル)の転移を促進したタンパク質として認識された。MTPは、apoB含有リポタンパク質の会合において、2つの役割を果たす。すなわち、MTPは、(1)apoBへの脂質の転移を促進することによって、apoBを小胞体の内腔中に転位させ、(2)apoBの折り畳みを促進する。MTP活性を欠くときは、apoBは小胞体中で効果的に分解される。MTPが機能的に不活性である結果、無βリポタンパク血症を有する患者の肝臓は、apoB含有リポタンパク質を合成することもできず、また、分泌することもできず、LDL(これまではβリポタンパク質と表している)の血漿中濃度がほぼ検出できないレベル(例えば無βリポタンパク血症)まで減少することが引き起こされる。したがって、MTP活性を阻害する薬は血漿中のLDL濃度を減少させるために有用であるだろうことが推論された。
【0029】
一般に、無βリポタンパク血症は、MTPの欠損に起因して肝臓のapoB含有リポタンパク質を生産せず、また、脂肪肝を示すことはないため、無βリポタンパク血症の肝臓における脂肪症の発現を妨げる代償的プロセスがあるに違いないことが推測された。この問題を解明するために、MTPの存在が欠損しているが、脂肪を蓄積した肝細胞培養モデル(L35細胞)が調べられた。したがって、本発明は、MTP遺伝子の転写が、転写の類似DR1プロモーター因子の存在を介して、肝臓(L−FABP)によって、脂肪酸の取り込みを調節する他の遺伝子と協調的に調節されたことを明らかにしている。MTPおよびL−FABPは共通の先祖遺伝子から派生していると考えられるため、類似DR1プロモーター因子の保有は、相関転写形質発現が生理学的に重要であることを提案している。後述の実験は、なぜL35細胞はMTP−促進リポタンパク質分泌の無いときに脂肪を蓄積しないのかについてMTPとL−FABPとの相関阻害が説明し得るということを示している。L−FABPがないとき、MTPの抑制は、脂肪の蓄積(脂肪症)を引き起こすことなく、肝臓のVLDL分泌を減少させる。なぜならば、L−FABPが促進する脂肪酸の取り込みが欠失しているためである。
【0030】
本発明に一態様では、主題の方法は、高脂血症のための治療計画の一環として用いられ得る。L−FABPとMTPとは協調して、グリセロ脂質合成、および超低比重リポタンパク質(VLDL)分泌の中に脂肪酸を入れ替える。高脂血症は、血中に、上昇した濃度または異常な濃度の脂質および/またはリポタンパク質が存在することである。脂質(脂肪分子)は、タンパク質カプセル中に輸送され、脂質の比重およびタンパク質の種類は、上記粒子の最終結果、および代謝に対するその影響を決定する。したがって、本発明は、高脂血症を改善(例えば、阻害または抑制)のための組成物および方法を提供する。一実施形態において、ここで提供される高脂血症の治療のための方法は、L−FABPの抑制剤と組み合わせたMTPの抑制剤とを、被験者または細胞に対する投与することを含む。
【0031】
ここで定義されるMTP活性の抑制剤は、apoB含有リポタンパク質の肝臓による生産および血漿中LDL濃度を減少させ、または抑制する。典型的なMTP抑制剤は、修飾されたジアミノインダン8aR(Novartis,Summit NJ)である。肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)、肝臓の実質細胞の細胞質ゾル中における非常に豊富な脂質が結合したタンパク質は、脂肪酸の輸送および利用を促進する。L−FABP発現の遺伝子破壊は、グリセロ脂質生合成およびミトコンドリア酸化を含むいくつかの代謝経路中に、効率的に脂肪酸を運び込んで移動させるための、肝臓の能力を低下させる。
L−FABPの欠失は、肝外細胞用に脂肪酸を転用する。脂肪酸は直ちに取り込まれ、さらに、エネルギーおよび熱の生産のために骨格筋および心臓によって利用される。脂肪酸は脂肪組織によっても取り込まれ、脂肪組織ではトリグリセリドとして蓄えられ得る。したがって、ここで定義されたL−FABP活性の抑制剤は、MTP抑制剤によって引き起こされる肝臓脂肪症の発現を減少または抑制する。模範的なL−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−〔2−(4−メチルフェニル)−1−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である。
【0032】
MTPの抑制剤と組み合わせて投与するときのL−FABPの抑制剤の能力は、肝臓脂肪症の発現を引き起こすことなく血漿中脂質を減少させるような血漿中脂質および肝臓脂質に対する併用治療の効果と、MTP抑制剤を単独で用いた治療による効果とを、比較することによって決定され得る。
【0033】
本明細書における「被験者」という用語は、主題の方法が実行された任意の個人または患者を言及している。大抵、被験者は人間であるが、当業者にとって明らかなように、被験者は動物であってもよい。したがって、げっ歯類(マウス、ラット、ハムスター、およびモルモットを含む)、猫、犬、ウサギ、家畜(牛、馬、ヤギ、羊、豚などを含む)、ならびに、霊長類(モンキー、チンパンジー、オラウータン、およびゴリラを含む)などの哺乳類を含む他の動物は、被験者の定義の内に含まれる。
【0034】
「治療効果のある量」または「効果的な量」という用語は、研究者、獣医、医師、または他の臨床医学者によって求められる、組織、組織系、動物、または人間の生物学的反応または医学的反応を引き出すであろう、化合物または医薬組成物の量である。
【0035】
「薬学的に許容可能な」という用語は、キャリアに関して用いられるとき、キャリア、希釈剤、または賦形剤が、剤形の成分と適合し、かつ、その受容者に対して有害にならないことを意味する。
【0036】
「投与」または「投与すること」という用語は、治療を必要とする被験者に対して、本発明に係る化合物または医薬組成物を提供することの実行を含むように定義される。本明細書における「非経口的投与」および「静脈投与」という表現は、腸内投与および局所性投与以外の投与の形態であり、通常、注射による投与であり、制限されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、および胸骨内の注射および注入を含む。本明細書における「全身投与」「全身投与された」「末梢投与」および「抹消血管から投与された」という表現は、中枢神経系に対する直接的な投与以外の、被験者の系に入るような、化合物、薬剤、または他の物質の投与を意味しており、このため、例えば皮下投与など、代謝および他の類似のプロセスの影響下にある。
【0037】
「アゴニスト(作用薬)」という用語は、受容体に対して生産的に結合し、その生物活性を模倣する作用物質または類似体を言及している。「アンタゴニスト(拮抗薬)」という用語は、受容体に結合はするが、正常な生物的反応を引き起こすことはない作用物質を言及している。アゴニストまたはアンタゴニストは、タンパク質、核酸、炭水化物、抗体、または正常な生物的反応を減少させる他の分子を含んでもよい。
【0038】
本発明で用いられる「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体について、その断片のみならず無傷分子を備えることを意味し、例えば、FabおよびF(ab’)2、エピトープ決定基に結合することができるFvおよびSCA断片がある。
【0039】
本明細書における「対応正常細胞」とは、同じ臓器由来の細胞であり、かつ、その細胞が調べられるときに同一性を有する細胞を意味する。一態様において、対応正常細胞は、健常人から得られた細胞試料から成る。このような対応正常細胞は、個人が検査される細胞を提供するとき、年齢を適合させたり、同じ性別であったりする必要はない。他の態様では、対応正常細胞は、高脂血症を有する被験者の組織のうち、その他の健康な部位から得られる細胞試料から成る。
【0040】
本明細書では、「試料」および「生物試料」という用語は、本発明によって提供される方法に適した任意の試料を言及している。一実施形態において、本発明に係る生物試料は、例えば針生検からの試料である生検標本などの組織試料である。他の実施形態では、本発明に係る生物試料は、例えば血清、血漿、尿、精液などの体液試料である。
【0041】
本明細書では、「低減」および「抑制」という用語は一緒に使用される。例えばMTP活性が特定の分析の検出レベルより下まで減少し得る場合など、場合によっては減少が認められるためである。それ自体は、上記活性が分析の検出レベルより下まで「低減」されるか、または、完全に「抑制」される否かについて、常に明らかにならない可能性がある。それでもなお、本発明の方法に係る治療を受けて、MTP活性レベルは治療前のレベルから少なくとも低減されることが明確に決定できるだろう。
【0042】
一実施形態において、高脂血症を治療するための方法は、RNA干渉(RNAi)、ならびに、サイレンスMTPおよび/またはL−FABP活性を誘発するために、例えば二重差RNA(dsRNA)などの核酸について治療効果のある量を被験者に投与することを含む。RNAiは、さまざま種類の有機体および細胞中へのdsRNAの導入が、完全なmRNAの分解を引き起こすという現象である。細胞中、長いdsRNAは、リボヌクレアーゼによって、短い(例えば21〜25ヌクレオチド)低分子干渉RNA(siRNA)になるよう切り裂かれる。その後、siRNAは、上記プロセスに巻き込まれて、タンパク質成分と共にRNA誘発サイレンシング複合体内に会合する。次に、活性化RISCは、siRNAアンチセンス鎖とmRNAtの間の塩基対合相互作用によって、転写物に対して完全に結合する。次に、結合mRNAは切断され、mRNAの配列特異的な分解は遺伝子サイレンシングをもたらす。本明細書において、「サイレンシング」とは、大部分の染色体DNAを中断するメカニズムであり、このメカニズムは特定遺伝子の発現の抑制をもたらす。RNAi機構は、内因性転移因子(トランスポゾン)およびウイルス感染から、遺伝子を守るために進化していることが明らかである。したがって、RNAiは、以下の実施例に記載されているように、分解されるターゲットRNAと相補的な核酸分子を取り込むことによって誘発されることができる。
【0043】
他の実施例では、主題の抑制剤を用いて、被験者の高脂血症を改善または治療する方法を提供する。本明細書では、「改善」または「治療」という用語は、臨床的症状および/または高脂血症と関連した徴候が、行われた行為の結果として減少することを意味する。モニターされる上記症状または上記徴候は、高脂血症の特徴であり、かつ、上記症状および状態をモニターするための方法として、技術のある臨床医学者によく知られているだろう。例えば、脂質濃度の化学的測定は、昔から最も用いられる臨床的測定である。それが個々の結果との最良の相関関係を有しているためだけではなく、この実験方法が安上がりであり、さらに広範囲に利用できるためである。しかしながら、数値がより高性能な方法についての証拠および認識が増加している。具体的には、LDL粒子数(濃度)は、より小さなサイズであるほど、上記粒子の中に含まれるLDLの全濃度の科学的な測定法を用いて得られるよりも、アテローム性動脈硬化および心血管系イベントの発現とのより密接な相関関係を示す。LDLコレステロール濃度は低くなり得るが、それにもかかわらずLDL粒子数が高いと心血管系イベントの確率は高い。
【0044】
本発明の他の態様では、主題の方法は、肝臓脂肪症を引き起こすであろう任意の兆候のための治療計画の一部として用いられ得る。本明細書における「癌」という用語は、これに限定されないが、上皮性悪性腫瘍、非上皮性悪性腫瘍などの、任意の悪性腫瘍などを含む。例えば、本発明に係る組成物および方法は、肝癌など、MTPおよびL−FABP活性の上昇によって特徴付けられる任意の癌の治療のために用いられてもよい。本明細書では、「肝癌」は肝臓の上皮性悪性腫瘍を言及している。癌は、ひいては周囲の組織へ侵入して破壊を行うことになる、抑制されていない細胞分裂/または異常な細胞分裂によって生じる。本明細書では、「増殖型の」および「増殖」は細部が有糸分裂を起こすことを言及している。本明細書では、「転移」は、元の光景からの悪性腫瘍の遠位の広がりを言及している。癌細胞は、血流を介して、リンパ系を介して、体腔を超えて、またはそれらの複合によって、転移する可能性がある。場合によっては、癌の治療は、固形癌の治療または転移の治療を含んでいるだろう。転移は、形質転換細胞または悪性細胞が移動して、ある場所から他の場所へ癌を広げるような癌の形式である。
【0045】
本明細書における「癌性細胞」という用語は、本明細書における任意の1つの癌状態にかかった細胞を含んでいる。したがって、本発明に係る方法は、メラニン細胞、グリア細胞、前立腺肥大、および多発性嚢胞腎の良性肥大の治療を含む。「上皮性悪性腫瘍」という用語は、周囲の細胞に侵入する傾向がある上皮細胞で構成されており、かつ、転移を引き起こす悪性新腫瘍を言及している。
【0046】
ある実施形態では、本発明の化合物については、このような治療を必要とする被験者に対して、抗炎症剤、抗菌剤、抗ヒスタミン剤、化学療法薬、血管新生阻害剤、免疫賦活剤、治療抗体、または例えばチロシンキナーゼ阻害剤などのプロテインキナーゼ阻害薬と組み合わせて投与する。本発明の化合物と組み合わせて投与してよい他の薬剤は、サイトカインなどの治療薬、免疫調節薬、および、抗体を含む。限定される必要はないが、抗菌剤は、抗ウイルス剤、抗生物質、抗真菌剤、および駆虫薬を含む。他の治療薬が本発明の化合物と組み合わせて採用される場合、例えば米医薬品便覧(PDR)に記載されたような量で用いてもよいし、または、当業者によって決定された別の方法で用いられてもよい。
【0047】
本明細書において「サイトカイン」は、ケモカイン、インターロイキン、リンフォカイン、モノカイン、コロニー刺激因子、および受容体関連プロテイン、ならびに、それらの機能的な断片を含む。模範的なサイトカインは、これに限定されないが、内皮単球活性ポリメラーゼII(EMAP−II)、顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF)、顆粒球−CSF(G−CSF)、マクロファージ−CSF(M−CSF)、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−12およびIL−13、インターフェロンなどを含んでおり、これらは、細胞または細胞メカニズムにおける特定の生物学的変化、形態学的変化、表現型の変化と関与する。
【0048】
FAOラットの肝臓細胞は、L−FABPおよびMTPを発現し、かつ、VLDLを集めて分泌する一方、FAO細胞からの単細胞クローンに由来するL35細胞は、L−FABPまたはMTPを発現もせず、また、VLDLを集めて分泌もしない。それについて、L−FABPおよびMTPのプロモーター中に存在する保存DR1プロモーター要素が転写、発現、およびVLDL生産に対してどのように影響を与えるのかを解明するために、肝臓細胞が用いられた。FAO細胞中では、L−FABPプロモーターおよびMTPプロモーターの両方のDR1要素は、PPARαRXRαによって占められる。PPARαRXRαは、PGC−1βと共に転写を活性化する。その一方、L35細胞中では、L−FABPプロモーターおよびMTPプロモーターの両方のDR1要素はCOUP−TFIIによって占められ、転写は減少される。これらの結果を組み合わせると、PPARαRXRαおよびPGC−1βは、協調的に、各遺伝子の近位プロモーターにおけるDR1サイトを目指してCOUP−TFIIと競争することによって、L−FABPおよびMTPの発現を上昇させることが示される。さらなる研究では、L−FABPの除去は、MTP抑制剤を用いて治療されたマウスにもたらされる肝臓脂肪症を防止することが示される。L−FABPおよびMTPの調整された転写の変化は、肝臓脂肪症を引き起こすことなく、VLDL分泌へ脂肪酸が入ることに合わせて変化する。
【0049】
本明細書において、「脂肪症」という用語は、細胞内の脂質の異常な保有を説明するプロセスを言及している。脂質(通常はトリグリセリドおよびコレステロールエステル)の合成、移動、および分解の正常なプロセスの機能障害を反映する。過剰な脂質は、細胞質と置き換えられて、細胞内膜中および小胞中に蓄積する。小胞が細胞核をゆがめるのに十分な程度に大きいとき、この状態は、大血管脂肪症として、あるいは微小空胞変性として知られている。軽症の細胞にとって特に有害ではないが、膜構造を変化させたり、膜機能や細胞の生存能力を害したりすることがある。これに関して、「脂肪症」は、臓器の間質組織中における脂肪の蓄積を含む。脂肪症に関連する危険因子は多様であり、炎症性の脂質およびサイトカインの生産を含む。炎症反応を促進する(炎症性の)脂質およびサイトカインは、アテローム性動脈硬化症、真性糖尿病、悪性腫瘍、高血圧、細胞毒性、肥満、および酸素欠乏症を引き起こす。肝臓が脂質代謝の主要臓器であるように、肝臓は脂肪症と最も深く関係するが、脂肪症は、腎臓、心臓、および筋肉に共通して、任意の臓器に起こり得る。肝臓脂肪症は、肝硬変および肝細胞癌など、重度の肝臓病の発現を増進する。
【0050】
本発明の方法における有用な抑制剤は、任意の遺伝子導入法によって細胞中に導入されてもよい。本明細書で示唆されるように、遺伝子治療のために利用できる様々なウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AVV)、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、またはレトロウイルスなどのRNAウイルスを含む。多くの既知のレトロウイルスは、形質導入細胞を同定して生成することができるように、選択マーカーのための遺伝子を導入する、または組み込むことができる。例えば、特定の標的細胞における受容体のためのリガンドをコードする他の遺伝子と共に、目的対象のポリヌクレオチド配列をウイルスベクターに挿入することによって、ベクターは標的特異性となる。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質、またはタンパク質をコードするヌクレオチドを挿入することによって、標的特異性の状態になる。好ましい標的は、レトロウイルスベクターを標的とする抗体を用いることによって得られる。アンチセンスポリヌクレオチドを含むレトロウイルスベクターの標的特異的な転移を可能にするために、レトロウイルス遺伝子中に挿入することができる特異的なポリヌクレオチド配列について、当業者は知っているか、または実験を行うことなく容易に解明できるだろう。
【0051】
本発明は、また、本発明に係る治療に適している癌細胞(例えば肝細胞)を同定するための方法を提供する。上記方法は、例えば、治療する細胞試料中のMTPおよびL−FABPについての発現レベルまたは活性レベルを測定すること、ならびに、MTPおよびL−FABPについての発現または活性が対応正常細胞中のMTPおよびL−FABPについての発現レベルまたは活性レベルと比較して上昇することを測定することによって、実行されてもよい。上記対応正常細胞は、正常(例えば癌でない)細胞の試料としてもよい。対応正常細胞と比較して、癌細胞中のMTPおよびL−FABPについての発現レベルまたは活性レベルが上昇したことを測定することは、細胞が治療によって良い影響を受けているということを示している。本発明において用いられる細胞試料は、被験者からの組織試料または体液、あるいは、生検処置(例えば針生検)または腫瘍の切除および/または減量のための外科的処置によって得られた組織から得られる。
【0052】
一実施形態において、治療に適している癌細胞を同定するための方法は、さらに、L−FABP活性抑制剤と組み合わせたMTP抑制剤と細胞を接触させること、ならびに、接触の後におけるMTP活性およびL−FABP活性の減少を測定することを含んでもよい。このような方法は、癌細胞が上記治療に適していることを確かめるという意味を提供する。
【0053】
他の実施形態において、治療の影響を受けやすい癌細胞を同定する方法は、細胞を、MTPコードするまたは調節するポリヌクレオチドと、またはその機能性断片とハイブリダイズするdsRNAなどの核酸分子と接触させること、および、接触後の細胞において、MTPの発現または活性についての減少を検出することを、さらに含んでもよい。このような方法は、癌細胞がこの治療の影響を受けやすいことを確かめるための手段を提供する。さらに、上記方法は、単独または組み合わせによる抑制剤の影響のために、1つ以上の異なる核酸分子を検査することを含んでもよく、それ故、試験される特定の癌を治療するために有用な1つ以上の核酸分子を同定するための手段が提供される。
【0054】
それに応じて、本発明は、L−FABPおよびMTPの転写がどのように協調して調節されるかについて明らかにするために、VLDLの会合および分泌について別個の能力を示す、肝細胞の2つの別個の系統(Hui et al., 2002; Kang et al., 2003)の利用を説明する。FAO細胞、すなわち、肝臓リポタンパク質の合成および分泌を研究するために用いられているラットの肝臓細胞系(Scarino and Howell, 1987a; Scarino and Howell, 1987b)は、L−FABPとMTPとの両方を発現し、かつ、apoB含有リポタンパク質を会合および分泌する能力を示す。一方、FAO細胞からの単細胞クローンとして得られたL35細胞は、L−FABPもMTPも発現せず、apoB含有リポタンパク質を会合および分泌する能力を欠いている。これらを組み合わせたデータは、L−FABPおよびMTPが共通の祖先の脂質結合タンパク質から派生したという提議(Phelps et al., 2006)を支持する。L−FABPおよびMTPの発現の同時的変動、および脂肪酸基質の供給に適応できるL−FABPおよびMTPの協調的機能とを保証する共通の構造が保存され、一方、プロモーターにおけるDR1サイトの保有は、L−FABPおよびMTPについての別個の脂質輸送機能を進化させた。
【0055】
したがって、本明細書で提供されるデータは、L−FABPおよびMTPの転写が、脂肪酸リガンドにより活性化する転写因子(PPARα−RXRα)またはCOUP−TFIIのいずれかによる類似DR1要素との競合的結合に基づいて調節されることを示している。このように、2つの脂質輸送タンパク質、すなわち、互いに協調して機能するL−FABPおよびMTPの発現は、脂肪酸の利用可能性に応えて協調的に調節され得る。肝臓による脂肪酸の利用をめぐって競争する、機能的に異なる多くの経路が存在する。これらは、細胞取り込み、他の脂質(例えばグリセロ脂質、およびコレステロールエステル)の生産におけるエステル化、β酸化、主にVLDL脂質の形成における蓄積および輸出を含む。これらの経路の1つ以上に向けての脂肪酸の輸送は、エネルギーおよび基質恒常性を保つために、迅速かつ選択的に変化しなくてはならない。基質主導の「フィードフォワード(正方向送り)」の転写調節は、恒常性と効率の良さとの両方を可能にする共通のメカニズムであり、同時的に存在する利用に適している(Wall et al., 2005)。脂肪酸は、L−FABP(Poirier et al., 2001)およびMTP(Ameen et al., 2005)についてのPPARα依存遺伝子の転写を活性化することもできるため、肝臓への脂肪酸流動は、脂質合成基質を提供するのと同様に、VLDL会合/分泌を調節する酵素を誘導する。
【0056】
証拠となる複数の系は、L−FABPおよびMTPプロモーターに存在する類似DR1要素が、VLDL会合/分泌の経路に向かって脂肪酸を輸送するとき、これら2つの脂質輸送タンパク質の相互依存的な役割に必要な協調転写制御を提供することを示している。L−FABPおよびMTP両方のプロモーターのレポーター構築における、DR1要素の突然変異欠損は、(1)FAO細胞により提示される比較的高い活性レベルが、L35細胞によって提示される低いレベルへ還元されること(図1C)、および(2)転写を抑制または活性化するCOUP−TFII(図2B)またはPPARα−RXRα(図4A)の作用薬の能力が無効にさせる。これらのDR1要素が、COUP−TFII(抑制体)またはPPARα−RXRα(活性体)による競争的な占有に関与する、機能的に意味のある同起源の結合部位であるということを示すためのさらなる証拠は、EMSAスーパーシフト解析(図2のL−FABPおよびKang et al.,2003のMTP)ならびにChIP解析(図3)によって提供される。DR1要素についての相補的なEMSAスーパーシフトとChIPとの実験から得られる複合解析は、PPARα−RXRαによる占有が両方の遺伝子の転写活性と関係いる(FAO細胞)と同時に、COUP−TFIIによる占有が抑制に関係している(L35細胞)ということを協調的に示す。
【0057】
FAO細胞およびL35細胞により示されるL−FABPおよびMTPの発現における表現型の違いに関与する主要な決定要因は、PPARα−RXRα(活性体)とCOUP−TFII(抑制体)との相対的な細胞の中身である。3つの独立的な実験は、FAO細胞およびL35細胞の細胞表現型における可塑性が、PPARα−RXRα(活性体)と比較したCOUP−TFII(抑制体)の細胞内容物に依存することを実証する:(1)PPARα−RXRα作用薬を有するL35細胞の治療は、PPARα−RXRα(活性体)の発現を増加させる一方、COUP−TFII(抑制体)の発現を減少させ(図5A);(2)PPARα−RXRα/COUP−TFIIについての細胞内容物におけるこれらの変化は、L−FABPおよびMTPの両方のプロモーターに存在するDR1の占有における類似変化に反映され(図5B);(3)その結果、L−FABPおよびMTPの両方のプロモーター−ルシフェラーゼレポーター構築体の転写活性おいて、DR1サイト依存性が増加し(図4B);ならびに、(4)L−FABPおよびMTPのmRNAの発現増強がもたらされる(図4A)。さらに、L35細胞における作用薬が媒介する変化は、apoB含有リポタンパク質を会合および分泌するための回復能力と関係している。
【0058】
PPARα−RXRαヘテロダイマーは、近位プロモーター領域におけるDR1サイトへの結合によって、L−FABPの転写を活性化することが見られている(Poirier et al., 1997)。PPARα作用薬を用いた野生型(ただしPPARαノックアウトではない)マウスの治療は、MTPの肝臓での発現を増加させた(Ameen et al., 2005)。これらの事項および脂肪酸代謝に関連した遺伝子の翻訳調節を調べる研究から得られた追加所見(Cabrero et al., 2003; Carter et al., 1994; Miyata et al., 1993; Palmer et al., 1994)は、PPARα−RXRαおよびCOUP−TFIIがDR1プロモーター要素に結合するために互いに競争するという提言を支持している。これらの遺伝子との関連において、PPARα−RXRαによるこの要素の占有は転写の活性化と関連し、一方、COUP−TFIIによる占有は転写抑制と関連する。
【0059】
本明細書に開示される発見は、L−FABPおよびMTPの発現のPPARα−RXRα作用薬が媒介する誘導のために、PGC−1βが必要とされることを示す(図7C)。PPARα−/−マウスのPPARα作用薬は、L−FABPおよびMTPの発現を誘導しなかったが(図4)、PGC−1βmRNAの肝臓発現は2倍に増加した。このデータは、PPARαの欠損状態において、PGC−1βは、L−FABPおよびMTPの発現を増加させるのに十分ではないということを示唆する。アデノウイルスが媒介するPGC−1βの発現を用いた追加実験は、L−FABPおよびMTPの転写を増進するために、PPARα−RXRαが必要となることを示す。この複合的な所見は、PGC−1βがMTPの転写活性化に関与するという提言(Lin et al., 2005; Wolfrum and Stoffel, 2006)を支持する。ob/ob糖尿病性マウスにおいて、アデノウイルスが媒介するPGC−1βおよびFoxa2の発現は、MTP発現を誘導し、インシュリンがVLDL会合/分泌を阻害するメカニズムを提案する(Wolfum and Stoffel, 2006)。Foxa2はob/obマウスの核から完全に除かれる(Wolfrum et al., 2004)が、しかし一方、MTP発現とVLDL会合/分泌との両方は増加する(Bartels et al., 2002)ということが実証されている。さらに、ob/obマウスには、PGC−1βが媒介するMTP発現の増加が保存されており、MTP転写の誘導がFoxa2非依存性メカニズムを介して生じ得るということが示される(Wolfrum and Stoffel, 2006)。脂肪肥育された高脂血症のマウスにおいて、SREBPおよびLXRαのPGC−1β活性化は、MTP発現およびVLDL会合/分泌の増進に関係する(Lin et al., 2005)。PGC−1βは、PPARαと相互作用することができ(Lin et al., 2002b)、かつ、PPARα標的遺伝子の転写を活性化する(Lin et al., 2003)。したがって、所見は、ラットの肝臓癌細胞との関連において、PGC−1βはPPARα−RXRαを活性化するということを示す(図8)。
【0060】
L−FABPおよびMTPのプロモーターにおける類似DR1要素の保有は、それらの発現がエネルギーの十分な転用を脂肪酸の形でVLDL会合/分泌経路に提供するために十分に誘導されるだろうことを確実にすることを、複合データは示している。L−FABPの除去は、MTP抑制剤を用いて治療されたマウスの肝臓において、トリグリセリドの蓄積を阻害することを示す追加研究(図9)によって、L−FABPおよびMTPの発現が協調的に減少されることの重要性が明確に示された。これらの発見は、高脂血症を改善することを目的としたときのMTP抑制剤の有効性に関して、重要な意味合いを備えている。
【0061】
先に示したとおり、MTP抑制剤は高脂血症を減少させるために効果的な治療法であるように思われるが、その使用は脂肪肝の発現に関連する(Bjorkegren et al., 2002; Liao et al., 2003)。本明細書の提供するデータは、L−FABPの除去がMTP抑制剤8aRを用いて治療したマウスの肝臓におけるトリグリセリドの蓄積を完全に阻害することを示す(図9B)。したがって、これらの研究は、L−FABPおよびMTPの両方の機能および/または発現のいずれかを阻害する薬剤が、脂肪肝の発現を引き起こすことなく、高脂血症を減少することを示す。
【0062】
別の態様では、本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)などのウイルス感染を改善するための方法、および、炎症性肝疾患、線維症、肝硬変、肝不全、および/または肝細胞癌の発現を減少するための方法を提供する。HCV粒子の生産および輸送に関与するプロセスは、血漿リポタンパクの生産および輸送と関連する多くの態様を共有する。HCVはリポタンパク複合体を形成し、かつ、VLDLおよびLDLの両方の構成要素として血漿中に輸送される(Andre et al., 2005, Hepatitis C virus particles and lipoprotein metabolism. Semin liver Dis 25:93-104)。HCVの肝臓での生産は、VLDLの分泌と同様に、MTPの発現および活性を低下させる(Domitrovich, et al., 2005, Hepatitis C virus nonstructural proteins inhibit apolipoprotein B100 secretion. J BiolChem 280:39802-39808)。MTPの抑制は、HCVに感染した被験者が血漿脂質濃度の変化を示し(Siagris, et al., 2006, Serum lipid pattern in chronic hepatitis C: histological and virological correlations. J Viral Hepat 13:56-61)、さらに、その被験者の肝臓が脂肪症を発現する(Mirandola, et al, 2006, Liver microsomal triglyceride transfer protein is involved in hepatitis C liver steatosis. Gastroenterology 130:1661-1669)ことの理由について説明するだろう。逆に言えば、MTP抑制剤は、肝臓癌細胞によるHCVの生産を阻害する(Huang, et al., 2007, Hepatitis C virus production by human hepatocytes dependent on assembly and secretion of very low-density lopoproteins. Proc Natl Acad Sci USA 104:5848-5853)。本発明は、脂肪症の発現を引き起こすことなく、MTP(ひいてはHCVの生産)を抑制する方法を説明する。したがって、HCVに感染した被験者に対してMTP抑制剤とL−FABP抑制剤とを同時に投与することは、HCVの生産を減少し、かつ、慢性HCV感染、脂肪症の発現、肝硬変、および肝不全と関連する病状を改善するだろう(Hwang, et al., 2001, Hepatic steatosis in chronic hepatitis C virus infection: prevalence and clinical correlation. J Gastroenterol Hepatol 16:190-195)。
【0063】
本発明の別の態様では、癌(例えば肝臓癌)および/または高脂血症を治療するために有用な薬剤を同定するための方法が提供される。本発明の任意の方法において有用な薬剤は、例えば、ポリヌクレオチド、ペプチド、ペプチド模倣薬、ビニル性ペプトイドなどのペプチド、有機小分子など、任意の種類の分子であってもよく、また、MTPおよびL−FABPの発現または活性の減少または抑制を促進する任意の様々な過程に作用してもよい。薬剤については、特定の種類の癌/高脂血症を治療するために用いられる典型的な薬剤の何らかの方法で投与してもよく、または、標的癌細胞と薬剤の接触(また適切な場合、細胞中への侵入)を容易にする条件の下で投与してもよい。例えば、細胞中へのポリヌクレオチド薬剤の導入は、細胞に感染し得るウイルスベクター中にポリヌクレオチドを組み込むことによって容易にされてもよい。細胞の種類に特異的なウイルスベクターが入手できない場合、ベクターは、標的細胞上で発現されたリガンド(または受容体)に対して特異的な受容体(またはリガンド)を発現するために修飾されてもよく、または、リポソーム内に封入されてもよい。また、上記リポソームも、このようなリガンド(または受容体)を含むために修飾されてもよい。ペプチド薬剤は、様々な方法によって細胞中に導入されてもよい。例えば、細胞中へのペプチドの転位を容易にすることにできる、人免疫不全ウイルスTATタンパク質導入ドメインなどのタンパク質導入ドメインを含むように、ペプチドを設計する方法などによってもよい。概して、薬剤は、被験者へ投与するのに適切な組成物(例えば医薬組成物)に処方される。このように処方された薬剤は、高脂血症、または一部分においてMTPおよびL−FABPについての活性または発現の上昇によって特性を示す癌を患う被験者を治療するための薬剤として有用である。
【0064】
典型的には、候補薬剤は有機分子であり、100ダルトンよりも大きく、約2500ダルトンよりも小さい重さの分子を有する有機小化合物(例えば小分子)であることが好ましいとはいえ、候補薬剤は多数の化学的分類を包含する。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特には水素結合のために必要な官能基を含んでおり、典型的には、少なくとも、アミン基、カルボニル基、ヒドロキシル基、またはカルボキシル基を含んでおり、少なくとも2つの化学官能基を含んでいることが好ましい。候補薬剤は、多くの場合、1つ以上の上記官能基と置換された、炭素環構造もしくは複素環構造、および/または、芳香族構造若しくは多環芳香族構造を含む。候補薬剤は、ペプチド、サッカリド、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体、またはそれらの複合体を含む生分子の間にも検出される。
【0065】
候補薬は、合成化合物または天然化合物のライブラリーを含む多種多様の源から得られるだろう。例えば、任意抽出されたオリゴヌクレオチドの発現を含む、多種多様の有機化合物および生分子についての、無作為または指向性のある合成のために、多数の手段が利用できる。あるいは、バクテリア、真菌、植物、および動物の抽出物の形である天然化合物のライブラリーが利用できる、または、容易に生産される。さらには、天然または合成的に生産されたライブラリーおよび化合物は、従来の化学的手段、物理的手段、および生物学的手段を介して容易に修飾される。既知の薬理作用のある薬剤が、構造的類似体を生産するために、アシル化、アルキル化、エステル化、アミド化など、無作為または指向性のある化学的修飾を受けてもよい。
【0066】
別の態様では、本発明の方法は、オーダーメイド医療を実施する方法を提供することのために有用である。オーダーメイド医療では、被験者の高脂血症または癌細胞の個別の特性に基づいて、治療が被験者に合わせられる。例えば、少なくとも1つの検査薬、またはMTPおよびL−FABP抑制剤と、被験者由来の細胞試料とを接触させることによって、本方法を実施してもよい。ここで、検査薬または抑制剤を欠くときのMTPおよびL−FABPの活性または発現と比較して、検査薬または抑制剤存在下におけるMTPおよびL−FABPの活性または発現が減少すると、その減少は、上記薬剤または抑制剤を、疾患を治療するために有益であると同定する。本発明の方法に従って検査する細胞試料は、治療する予定の被験者から得られてもよく、または、確立された癌細胞系の細胞、もしくは被験者のものと同じ種類である既知の高脂血症の細胞であってもよい。一態様では、確立された細胞系は、このような細胞系の一団の1つであってもよい。ここで、上記一団は、同じ種類の疾患の異なる細胞系、ならびに/または、MTPおよびL−FABPの活性もしくは発現の上昇値と関係する、異なる疾患の異なる細胞系を含んでもよい。このような細胞系の一団は、例えば、治療する被験者から少数の細胞しか得られないときに、被験者の細胞の代用試料を提供するため、本発明の方法を実施するために有用であり、また、本発明の方法を実施するときのコントロール試料として有用となるだろう。
【0067】
いったん、疾患が明らかとなり、治療プロトコルを開始すれば、被験者におけるMTPおよびL−FABPの活性または発現の値が、健常被験者に観察される値に近似し始めるかどうかを評価するために、本発明の方法を定期的に繰り返してもよい。数日間から数ヶ月間の測量期間にわたる治療の効果を示すために、連続的な分析から得られる結果を用いてもよい。よって、本発明は、高脂血症を有する被験者を治療するために、治療規制をモニタリングする方法も指示している。治療前と治療中とにおけるMTPおよびL−FABPの活性または発現のレベルを比較すれば、治療の効果が示される。これによって、当業者は、必要に応じて治療的なアプローチを認識し、かつ調節することができるだろう。
【0068】
全ての方法は、さらに、1つ以上の補助的な成分を構成する、薬学的に受容可能なキャリアと、有効成分とを関連させる工程を含んでもよい。被験者に投与するための薬剤を処方するために有用である、薬学的に受容可能なキャリアには、当技術分野で周知のように、例えば、水もしくは緩衝生理食塩水などの水溶液もしくは他の溶媒、グリコールもしくはグリセロールなどの賦形剤、オリーブオイルなどの油、または注射用有機エステルが挙げられる。薬学的に受容可能なキャリアには、例えば、複合体の吸収を安定するまたは増加する役割を果たす、生理学的に許容可能な化合物が挙げられる。このような生理学的に許容可能な化合物には、例えば、グルコース、サクロース、もしくはデキシトリンなどの糖質、アスコルビン酸もしくはグルタチオンなどの抗酸化物質、キレート剤、低分子量タンパク質、または他の安定化剤もしくは賦形剤などが挙げられる。薬学的に受容可能なキャリアの選択は、例えば、治療薬の物理化学的な特性、および化合物の投与経路に基づくことについて、当業者は分かるだろう。ここで、投与経路には、例えば、経口、または、静脈注射などの非経口、および、注射、挿管、または従来知られている他の方法によるものがあるだろう。医薬組成物は、例えば癌の化学的療法薬および/またはビタミンなど、診断用薬、栄養物質、トキシン、または治療薬などの、第2(またはそれ以上)の化合物を含んでもよい。
【0069】
本発明の抑制剤を含む組成物の投与経路は、ある程度、分子の化学的構造に依存するだろう。例えば、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、経口で投与されると、消化管で分解されるため、特に有用ではない。しかしながら、例えば、ポリヌクレオチドおよびポリペプチドのそれぞれを、内因性ヌクレアーゼまたは内因性プロテアーゼによる分解の影響され難くする、あるいは、消化管を介してより吸収されるようにするために、それらを化学的に修飾する方法がよく知られている(例えば、Blondelle et al., Trends Anal. Chem. 14:83-92, 1995; Ecker and Crook, Bio Technology, 13:351-360,1995参照)。例えば、ペプチド剤は、D−アミノ酸を用いて調製されてもよいし、または、ペプチド模倣薬に基づいた1つ以上のドメインを含んでいてもよい。ここで、ペプチド模倣薬は、ペプチドドメインの構造を模倣しているか、または、ビニル性ペプトイドなどのペプチドに基づいている有機分子である。抑制剤がステロイドアルカロイドなどの有機小分子である場合、その抑制剤については、体内(例えば肝臓内)の所望の位置で活性薬剤を開放する形状で投与してもよく、または、抑制剤が標的細胞(例えば肝臓癌細胞)を循環するように血管中に注射することによって投与してもよい。
【0070】
例となる投与経路には、これに限定されないが、経口または静脈内、膣内、皮下、腹腔内、直腸内、もしくは嚢内などの非経口、または適切な場合、例えば皮膚用パッチ剤もしくは経皮イオン導入などの皮膚利用を介した受動的吸収もしくは促進的吸収のそれぞれが挙げられる。さらには、医薬組成物は、注射、挿管、もしくは経口によって、または局所的に投与してもよい。その局所的な投与とは、例えば軟膏の直接的な塗布による受動的なものであってもよく、または、その組成物の1つ成分が適切な高圧ガスである場合には、鼻内噴霧もしくは鼻孔吸入を用いた能動的なものであってもよい。上述したように、医薬組成物については、例えば、癌を供給する血管中への静脈内投与または動脈内投与など、癌部位に投与してもよい。
【0071】
本発明の方法の実施において投与する化合物または組成物の総量については、単回投与として、ボーラスまたは輸液によって、比較的短い期間にわたって投与してもよいし、あるいは、長期間わたって複数回投与するための分割治療プロトコルを用いて投与してもよい。被験者の高脂血症または肝臓癌を治療するための、MTPおよびL−FABP活性または発現の抑制剤の量が、投与経路および投与が行われる治療の回数と同様に、被験者の年齢および総体的な健康を含む多くの要因に基づくことは、当業者は分かるだろう。これらの要因を考慮して、当業者は、必要に応じて特定の量を調節するだろう。概して、医薬組成物の処方ならびに投与経路および投与回数は、第1相および第2相臨床試験を用いて、始めに決定される。
【0072】
本発明の方法については、例えば培養液中または固形担体上などの生体外で、細胞試料と接触することによって実施してもよい。あるいは、それに加えて、上記方法は、例えば実験動物(例えばヌードマウス)中に癌細胞試料を導入すること、または、実験動物中に検査薬または組成物を投与することによって生体内で実施してもよい。生体内分析の利点は、生きた動物で、ひいては臨床状態をより厳密に模倣して、検査薬の効果を評価し得ることにある。一般に、生体内分析はよりコストが高いため、生体外方法を用いて「先導(リード)」薬剤の同定の後に、二次スクリーニングとして用いることが特に有用であるだろう。
【0073】
本方法は、生体外分析として実施されるとき、スループット法(高速大量処理法)に適応する。よって、独立的に、並行して同じものである、または異なるものである、複数個(すなわち、2つ、3つ、4つ、またはそれ以上)の細胞試料および/または検査薬の試験が可能になる。スループット法は、検査薬が単一の被験者に由来するいくつかの細胞試料を検査できるなど、多数の利点を提供する。ひいては、例えば、被験者に投与する薬剤の特定の効果的な濃度を同定したり、被験者に投与する特定の効果的な薬剤を同定したりすることが可能になる。このように、スループット法は、最もよい(最も効果的な)薬剤または薬剤の組み合わせを治療手段に用いることができるように、被験者の癌細胞上で、2つ、3つ、4つ、それ以上の異なる検査薬を、単独または組み合わせて試験することを可能にする。さらには、スループット法によれば、例えばコントロール試料(ポジティブコントロールおよび/またはネガティブコントロール)を、検査された薬剤を用いて効果的に治療されるだろう既知の細胞試料などの検査試料と並行して実施することが可能になる。
【0074】
本発明のスループット法は、任意の様々な手段で実行され得る。例えば、異なる被験者から得られた、異なる細胞試料を、同一または異なる量の、1つまたは複数の検査薬を用いて並行に試験してもよい。あるいは、一人の被験者から得られた2つ以上の細胞試料を、1つまたは複数の検査薬についての、同じまたは異なる量を用いて試験してもよい。加えて、同じまたは異なる被験者の細胞試料を、検査薬および/または既知の効果的な薬剤の組み合わせを用いて試験してもよい。これらの例示された様々は形態は、癌の治療のために有用な薬剤または薬剤の組み合わせを同定するために用いられてもよい。
【0075】
本方法をスループット法(または超スループット法)により実行するときは、固形担体(例えばマイクロタイタープレート、シリコンウエア、またはスライドガラス)の上で実行してもよい。ここで、検査薬と接触させる試料については、各々が互いに線引きされるように(例えば、ウエル中にあるように)配置する。任意の数の試料(例えば、96、1024、10,000、100,000、またはそれ以上)については、特定の使用された単体に基づいて、このような方法を用いて並行に検査してもよい。試料をアレイ状(すなわち規定されたパターン)に配置する場合、アレイ状の各試料は、その位置によって(例えばXY軸を用いて)定義され得る。よって、各試料のための「アドレス」が提供される。アドレス可能なアレイ形式を用いることの利点は、細胞試料、薬剤、および検査薬などを、所望の時間に、特定の位置に施す(または特定の位置から取り除く)ことができ、かつ、試料(または資料の分割単位)における、例えばMTPおよびL−FABP活性または発現の減少をモニターすることができるように、本方法を、全体的にまたは部分的に、自動化することができることである。
【0076】
ポジティブコントロールおよびネガティブコントロールは、本発明の解析において用いられてもよい。全てのコントロールおよび検査試料については、統計学的に顕著な結果を得るために、少なくとも3倍、実行することが好ましい。全ての試料の培養については、薬剤がタンパク質に結合するために十分な時間行う。培養後、全ての試料を、非特異的に結合した物質がないように洗浄し、概して、ラベル標識された薬剤の結合量を決定する。例えば、放射性標識を採用する場合、結合した化合物の量を決定するために、シンチレーションカウンタによって試料を計測してもよい。
【0077】
スクリーニング検定中に、他の様々な薬剤を用いてもよい。これらには、塩、アルブミンなどの天然タンパク質、洗剤などの試薬が挙げられる。これらを、最適なタンパク質−タンパク質結合を促進したり、非特異的またはバックグラウンドの相互作用を減少させたりするために用いてもよい。プロテアーゼ抑制剤、ヌクレアーゼ抑制剤、抗菌剤など、分析の効率を向上させる他の試薬もまた同様に用いてもよい。成分の混合体を、結合に必要な条件を与える任意の順序で加えてもよい。
【0078】
全ての条件が各測定に対して同様の状態において、もしくは様々な条件下で、検査薬を用いて、もしくは検査薬を用いずに、または癌などの病状の異なるステージにおいて、測定が行われ得る。例えば、検査薬が存在する状態で、および検査薬が欠失した状態で、細胞中、または細胞集団中において、測定が行われ得る。他の例では、例えば、ホルモン、抗体、ペプチド、抗原、サイトカイン、成長因子、活動電位、化学療法薬などの薬剤、放射線、発癌物質、または他の細胞(例えば細胞−細胞接触)など、生理学体信号の暴露が存在するもしくは欠失した状態で、またはその暴露の前もしくは後で、細胞が評価されてもよい。さらにもう1つの例では、同じ条件において、および、1つの細胞もしくは細胞集団と、他の細胞もしくは他の細胞集団との間で変更された条件で、Dkk活性の測定が行われる。
【0079】
他の態様では、本発明は、MTPおよび/またはL−FABPの活性もしくは発現についての1つ以上の抑制剤を含む、本発明の方法を実施するためのキットを提供する。一実施形態において、本発明は、MTPおよび/またはL−FABPの活性もしくは発現についての1つ以上の抑制剤から構成される医薬組成物を含むキットを提供する。含まれる抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドと、またはその機能的断片とハイブリダイズするdsRNAであってもよく、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドと、またはその機能的断片とハイブリダイズするdsRNAであってもよい。他の実施形態では、上記キットは、本発明の方法を実施するための説明書を含む。
【0080】
以下の例は、本発明の利点および特徴をさらに説明するために提供されるが、本発明の範囲がこれに限定されることを意図していない。それらは典型的な使用例であるが、当業者に知られた手順、方法論、または技術が代わりに用いられてもよい。
【実施例1】
【0081】
(L−FABP発現の除去による肝臓脂肪症の発現の防止)
この例は、MTP抑制剤によって引き起こされる肝臓脂肪症の発現を防止するための方法として、L−FABP抑制剤を使用することを実証している。
【0082】
細胞培養:細胞は、(Kang et al., 2003)に記述されているように培養し、形質転換した。FAO細胞はコロラド大学から無料で得られた。L35細胞は(Leighton et al., 1990)に記載されているように得られた。
【0083】
細胞は、マイナー変更(Kang et al., 2003)と共に、LipofectAMINE薬剤(Invitrogen)を用いて、メーカーの手順にしたがって形質転換した。形質転換の1日前に、L35細胞およびFAO細胞(2×105)を12ウエルのプレートに蒔いた。形質転換の当日、0.8μgのプロモーター/ルシフェラーゼレポーター構築、および、L−FABPおよびMTPの正常化のための内部調整として、6ngのpRL−CMVプラスミドを細胞に導入した。並行実験から、空ベクターの活性と比較して、規格化したpRL−CMV活性を記録した。図の説明文に示すように、様々な量のCOUP−TFII発現ベクターを加えた。空ベクターpCR3.1(Invitrogen)の追加によって、各分析に対する全DNA濃度を一定に保った。形質転換後、細胞を48時間培養し、パッシブ溶解バッファー(Promega)を用いて集菌した。デュアル−ルシフェラーゼレポーター分析システム(Promega)を用いて、ルシフェラーゼ活性を測定した。
【0084】
PPARαおよびRXR作用薬、WY−14,643(WY)、ならびに、9−シスレチノイン酸(cRA)の各々を用いて、L−FABPおよびMTPプロモーターレポーター分析(A. G. Scientific, Inc.)を、図の説明文に示すように実施した。WY−14,643および9−シスレチノイン酸の両方を、ジメチルスホキシド(DMSO、0.15%v/v)中に溶かし、10μM(WY)および1μM(cRA)の作用濃度で用いた。簡潔に言えば、形質転換後、細胞を、図のように作用薬またはDMSO単独で48時間処理した。細胞を集菌し、プロモーター活性を図のように分析した。
【0085】
(レポーター遺伝子構築およびベクターの発現)
野生型および変異型のラットMTPレポーターベクター(-135/+66)は、前述の(Kang et al., 2003)のとおりである。野生型ラットL−FABPレポーターベクター(-141/+66)を作り出すために、DNeasy tissue kit(Qiagen)を用いて、FAO細胞からゲノムDNAを単離および抽出した。指定された制限酵素サイトを有するプライマーを用いて、PCRによって、プロモーター断片を作り出した。フォワード5’(KpnI)−GAACAAACTTCTGCCGGTACCATTCTGATTTTTA−3’(SEQ ID NO:1)、および、リバース5’(BglII)−TTCATGGTGGCAATGAGATCTCCTTTCCACAGCTGA−3’(SEQ ID NO:2)である。次いで、プロモーター断片を、空ルシフェラーゼレポーターベクターPGL3Basic(Promega)のKpnIサイトおよびBglIIサイトにクローニングした。
【0086】
変異L−FABPレポーターベクターを作り出すために、QuikChange site-directed mutagenesis kit(Stratagene)を用いて、近位DR1シークエンスにおける特異的な変異を作り出した。インビトロにおいて、テンプレートとして、ラットL−FABP(-141/+66)−ルシフェラーゼレポーターベクターおよびベクターの逆鎖とそれぞれ相補的な2つのオリゴヌクレオチドプライマー(突然変異基には下線を付す)(フォワード 5’―AATCGACAATCACTGTGCTATGGCCTATATTT−3’(SEQ ID NO:3);リバース 5’−AAATATAGGCCATAGCACAGTGATTGTCGATT−3’(SEQ ID NO:4))の突然変異生成を行った。DNAシークエンスによって部位特異的変異構築を検証した。COUP−TFIIのための発現プラスミドはベイラー医科大学から贈呈された。
【0087】
(核抽出物の調製)
前述の(Kang, 2003)にしたがって、L35細胞およびFAO細胞からの核抽出物を調製した。簡潔に述べると、細胞をトリプシン処理し、遠心分離によって集菌し、1×リン酸塩緩衝食塩水で洗浄し、さらに、低張緩衝液(20mM HEPES、pH7.9(4℃)、25%グリセロール、1.5mM MgCl2、10mM KCl、0.2mM フッ化フェニルメチルスルフォニル、0.5mMジチオスレイトール)中に再懸濁した。氷上で10分間の低温放置後、Dounceホモジナイザーを使用して細胞を溶解した。細胞核を遠心分離によってペレット化し、低塩緩衝液(20mM HEPES、pH7.9(4℃)、25%グリセロール、1.5mM MgCl2、0.02mM KCl、0.2mM EDTA、0.2mM フッ化フェニルメチルスルフォニル、0.5mMジチオスレイトール)中に再懸濁した。その後、高塩濃度緩衝液(20mM HEPES、pH7.9(4℃)、25%グリセロール、1.5mM MgCl2、1.2mM KCl、0.2mM EDTA、0.2mM フッ化フェニルメチルスルフォニル、0.5mMジチオスレイトール)を、攪拌しながら滴下して加えた。核タンパク質の抽出をするために、得られた懸濁液を30分間、静かに振蕩した。細胞核を、30分間、再び遠心分離し、得られた上澄みを、1時間、透析緩衝液(20mM HEPES、pH7.9(4℃)、20%グリセロール、100mM KCl、0.2mM EDTA、0.2mM フッ化フェニルメチルスルフォニル、0.5mMジチオスレイトール)に対して透析した。
【0088】
(電気泳動移動度シフトアッセイ)
IDTによって、EMSAに用いる全てのオリゴヌクレオチドを合成した。ゲル移動度シフトアッセイでは、以下のオリゴヌクレオチド(センス鎖)を用いた:MTP−DR1 5’−TGACCTTTCCCCTATAGATAAACACTGTTG−3’(SEQ ID NO:5);変異MTP−DR1 5’−TGTGCTTTCCCCTATAGATAAACACTGTTG−3’(SEQ ID NO:6);L−FABP−DR1 5’−TGACCTATGGCCTATATTTGAGGAGGAAGA−3’(SEQ ID NO:7);変異L−FABP−DR1 5’−TGTGCTATGGCCTATATTTGAGGAGGAAGA−3’(SEQ ID NO:8)。
【0089】
相補的オリゴヌクレオチドをアニーリングし、T4ポリヌクレオチドキナーゼ(New England Biolabs)を用いて〔γ‐32P〕ATP(300mCi/mmol)(PerkinElmer Life Sciences)で末端標識し、続いて、G50カラムに精製することによって、プローブを調製した。結合反応のために、総量15μlの溶液(20mM HEPES、pH7.9(4℃)、10%グリセロール、100mM KCl、1mM EDTA、および、2μgのポリ(dI−dC))中に、20分間、氷上で、3×104cpmプローブとともに核抽出物15μgを低温放置した。スーパーシフトアッセイ(supershift experiments)のために、氷上でさらに20分間、前もって低温放置したDNA−タンパク質複合体に特異的抗体1μlを加えた。COUP−TFII(sc-6576X)、RXRα(sc-553X)、およびPPARα(sc-9000x)に対する抗体は、Santa Cruz Biotechnology, Inc.から得られた。0.5×TBE緩衝液を含む4%天然ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、DNA−タンパク質複合体を分離した。
【0090】
(cDNA合成およびリアルタイムPCR)
製品使用説明書により、オンカラムDNA除去と共に、Versagene RNA Tissue Kit(Gentra Systems, Inc.)を用いて凍結肝臓から、または、Versagene Cell Culture Kit(Gentra Systems, Inc.)を用いて細胞から、全RNAを単離した。分光光度計によって、260nmで、RNA濃度を測定した。逆転写のためのBio Rad iScript(Biorad)を用いて、0.5μgの全RNAから、一本鎖cDNA鎖を合成した。GenBankTMが提供している遺伝子配列を用いて、各遺伝子(補足表1)に対して特異的なプライマーを設計した。ゲノムDNAの増幅を避けるため、上記プライマーをエクソン接合部にまたがるように配置した。IDTによって全てのプライマーを合成した。
【0091】
製品使用説明書に従ってBioRad SyBr Green supermixを用いたBioRad iCyclerによって、リアルタイムPCR分析を行った。溶解−曲線分析を用いた特定産物モニターによって、三通りに、反応を分析した。内在性コントロール、すなわち、18SリボソームRNA、または酸性リボソーム燐タンパクP0(36B4)に対して、発現データを規格化した。18SRNAおよび36B4の両方の濃度は、全ての実験サンプルの間で不変であった。式2−ΔCtに従って、相対的発現濃度を計算した。ここで、ΔCtは、標的と、18Sまたは36B4の内在性コントロールとの、閾値サイクル(Ct)濃度における差分である。
【0092】
(クロマチン免疫沈降分析および相対定量)
150mmシャーレ中の完全培地で、約70〜80%程度の密集状態まで、細胞を培養した。ここで、集菌の48時間前、細胞培地に、指定の作用薬であるWY(10μ)およびcRA(1μM)を加えた。その後、37%ホルムアルデヒド(Sigma)28μlを培地10mlに加えることによって、37℃で10分間、細胞を固定し、集菌し、そして、クロマチン免疫沈降のためのChIP-IT Shearing Kit(Active Motif)およびChIP-IT Chromatin Immunoprecipitation Kit(Active Motif)を用いて、製品使用説明書に従って、免疫沈降の処理を行った。免疫複合体を、65℃で5M NaClを用いて溶出、すなわち脱架橋し、プロテアーゼKで処理し、ChIP-IT kitに提供されるミニカラムを用いて精製した。
【0093】
上述に示すように、BioRad SyBr Green Supermixを用いたリアルタイムPCRによって、免疫沈降した試料からの特異的ゲノムDNA断片および投入量を定量した。免疫沈降−特異的濃縮差の領域選択性のためのコントロールとして、サンプル毎に、非コード遠位非翻訳領域の量を決定した。使用した抗体は、COUP−TFII(Wyeth-Ayerst Research, PA)、PPARα(sc-9000X, Santa Cruz Biotechnology, Inc.)およびコントロールIgG(Active Motif)に対するものであった。以下のラットゲノムDNA領域を増幅するために、プライマーセットを設計した:MTP−DR1(フォワード−5’−TAGTGAGCCCTTCCATGAAC−3’(SEQ ID NO:9);リバース−5’−CAGAATCTGCGACAACAGTG−3’)(SEQ ID NO:10)、L−FABP−DR1(フォワード−5’−GAGTTAATGTTTGATCCTGGCC−3’(SEQ ID NO:11);リバース−5’−CCACCCACTGTTGGCTATTTT−3’)(SEQ ID NO:12)、および、L−FABP−3’−非翻訳領域(フォワード−5’−GTCTTCCGCTACCTAAGAGG−3’(SEQ ID NO:13);リバース−5’−CTGTCATCTGACCAGCTCTC−3’(SEQ ID NO:14)。ΔΔCt法を用いて、投入DNAとIgGによる免疫沈降との両方からの値に対して、全ての値を規格化した。簡単に述べると、調査したプロモーター毎に、免疫沈降した試料により得られたCt値から、投入DNAによるCt値を引くことによって、各試料のΔCtを計算した。その後、正常型ラビット血清(IgG)により免疫沈降された対応試料に対するΔCtから、特異的抗体(PPARαまたはCoup−TFII)により免疫沈降された試料に対するΔCtを引くことによって、ΔΔCtを計算した。その後、2をΔΔCt乗することによって、倍数差分(Fold difference)(コントロールIgG ChIPと比較した因子特異的ChIP)を決定した。
【0094】
(RNA干渉)
ラットPPARαに対して特異的なSmartpool siRNA(Dharmacon)を用いることによって、FAO細胞におけるPPARαノックダウンを実現した。前述に記載のように(Lin et al., 2005)、ラットPGC−1βに対して指向性のあるsiRNAのための配列を選択した。3’ジヌクレオチド(TT)突出部と共に、オプションA4を用いて、21−ヌクレオチドニ本鎖として、ラットPGC−1βsiRNA(センス配列;5’−GATATCCTCTGTGATGTTA−3’)(SEQ ID NO:15)をDharmaconによって合成した。非特異的な標的をモニターするために、ネガティブコントロール配列として、種に特異なsiCONTROL非標的siRNA#1を利用した。実験の24時間前、5×104/ウエルの濃度で、12−ウエルプレートに細胞をまいた。形質転換前、1×siRNA緩衝液(Dharmacon)中に、20μMの濃度になるまでsiRNAを再懸濁した。製品使用説明書に従って、DharmaFECTTM4 transfection reagent(Dharmacon)用いて、FAO細胞中に、全てのsiRNAを導入した。図の説明文に示されるように、100nMの作用濃度で、48〜72時間、示されたsiRNAをFAO細胞に導入した。PGC−1βのノックダウンのために、72時間、示されたsiRNAを細胞に導入した;形質転換の24時間後、作用薬であるWY−14,643(10μM)および9−cisRA(1μM)に細胞を暴露し、集菌の48時間前に処理した。上述のように、RNA単離、cDNA合成、およびリアルタイムPCR発現分析を行った。
【0095】
(動物実験)
雄のPPARα−/−マウス、および同年齢のWT型同腹子(SV/129バックグラウンド)に、PPATα作用薬GW−7647(2.5mg/kg/d)または等量の溶解性賦形剤(DMSO)のいずれかを添加された標準ダイエット食を、7週間与えた。全ての動物には水を適宜に摂取させた。2週間ごとにマウスの体重を量り、その平均体重に従って薬物摂取を調節した。処理後、動物を解剖し、肝臓を単離し、そして、Versagene RNA Tissue Kit(Gentra Systems, Inc.)を用いて全RNAを抽出した。上述したように、一本鎖cDNA合成、およびリアルタイムPCR発現分析を行った。
【0096】
MTP抑制剤(8aR)実験では、雄のL−FABP−/−マウスおよび同年齢のWT型コントロール(C57BL/6)に標準ダイエット食を与え、そのとき、8aR化合物を体重に対して50mg/kgの量で経口により7日間毎日投与した。処理後、動物を解剖し、血漿および肝臓を単離し、そして、上述したように(Newberry et At., 2003)、市販のキットを用いて、各種の肝臓と血漿の脂質レベルを測定した。
【0097】
(脂質抽出)
PBS中で肝臓をホモジナイズし、タンパク質濃度を測定した。5mlのクロロフォルムメタノール(2:1)および0.5mlの0.1%硫酸によって300μlのホモジェネートを抽出した。器官活動相の部分標本を採集し、窒素下で乾燥し、2%Triton X−100中に再懸濁した。上述したように(Newberry et At., 2003)、市販のキットを用いて、肝臓中のFFA、TG、およびコレステロール含量を測定した。タンパク質濃度の違いに対して、データを規格化した。
【0098】
(アデノウイルス実験)
PGC−1β(Ad−PGC−1β)またはGFP(Ad−GFP)のいずれかを発現するアデノウイルスベクターは、Dana-Farver Cancer Institute, Harvard Medical School, Boston, MAから贈られた。2時間、無血清培地でAd−PGC−1βまたはAd−GFPのいずれかをL35細胞に感染させ、その後、48時間、完全培地で、作用薬WY−14,643(10μM)および9−cisRA(1μM)で処理した。GFP発現によって測定されるように、75〜85%程度の細胞が感染した。上述したように、RNA単離、cDNA合成、およびリアルタイムPCR発現分析を行った。
【0099】
(分泌apoBの免疫沈降)
上述したように(Borchardt and Davis, 1987; Hui et al., 2002)、分泌apoBを免疫沈降した。簡単に述べると、WY−14,643(10μM)および9−cisRA(1μM)の欠乏下で、または、それらの存在下で、L35細胞を60mmシャーレ中で72時間培養した。その後、細胞を、メチオニン−フリーDMEMに、2時間、切り替え、次に、DMEM中で、3ml〔35S〕−メチオニン(100μCi/ml)によった24時間標識した。培地を採取し、そして、4℃で一晩、ポリクローナル抗apoB抗体と培養した。次いで、タンパク質A−セファローズを加え、さらに、4℃で2時間培養した。免疫沈降複合体を、TETN緩衝液(pH7.5で25mM Tris、5mM EDTA、250mM NaCl、および1%Triton X−100)で3回洗浄し、PBSで1回洗浄した。ペレットを、SDS-PAGEローディングバッファー中に再懸濁し、5分間沸騰させ、さらに、電気泳動によって4〜12%トリス−グリシン ゲルで分離した。オートラジオグラフィーによって放射性タンパク質を検出した。
【0100】
MTPおよびL−FABPのプロモーター−レポーターの転写活性は、mRNA発現における細胞型特異的な違いを反映する。近位MTPプロモーター領域内に配置されたDR1要素は、L35細胞における発現の欠損とFAO細胞により示された高レベル発現との原因であることが、以前から明らかであった(Kang et al., 2003)COUP−TFIIによるこのDR1の占有は、L35細胞により示された、抑制されたMTP遺伝子転写を引き起こすことが明らかであった(Kang et al., 2003)。L−FABPの生産物はVLDL会合/分泌の調節に関与しており(Newverry et al., 2003)、このL−FABPが類似メカニズムによって調節されるかどうかを判断するために調査した。L−FABPプロモーターの配列分析(図1A)によれば、それがMTP遺伝子の転写調節を担うDR1要素(Kang et al., 2003)と類似するDR1を含むことが示された。さらに、L35細胞およびFAO細胞によるL−FABPのmRNA発現は、MTPのmRNA発現と並行であり(図1B)、これは、両者の遺伝子の転写が協調的に調節されているだろうことを示唆している。
【0101】
L−FABPの、またはMTPの近位プロモーター領域のいずれかを含むルシフェラーゼレポーター構築体は、類似の細胞型特異的な違いを表した;プロモーター活性は、L35細胞中のレベルと比較して、FAO細胞中で約8倍高い(図1C)。L−FABPまたはMTPのプロモーター構築対における、DR1サイトの突然変異欠損は、FAO細胞中のプロモーター活性レベルを、L35細胞に見られるものに類似するレベルまで減少させた(図1B)。したがって、L−FABPおよびMTP遺伝子のプロモーター領域内に存在する近位DR1要素は、L35細胞系およびFAO細胞系に示される両者の遺伝子の内在性mRNAレベルと関連する相対プロモーター活性を与えるのに十分である。
【0102】
近位DR1サイトへのCOUP−TFIIの結合は、L−FABP遺伝子の転写抑制を媒介する。L35およびFAOの肝臓細胞系から得られた核抽出物は、L−FABPプロモーターのDR1要素を含むオリゴヌクレオチドプローブと、明確なDNA−タンパク質複合体を形成した(図2A)。L35細胞からの核抽出物を用いて形成されたDNA−タンパク質複合体は、COUP−TFIIに対して特異的な抗体とのスーパーシフトを示した(図2A)。対照的に、FAOからの核抽出物を用いて形成されたDNA−タンパク質複合体は、COUP−TFII抗体とのスーパーシフトを表さなかった(図2A)。DR1サイトの変異が、細胞型特異的DNAタンパク質複合体の形成を阻害したため、その形成には、正常なDR1サイトを必要した。
【0103】
COUP−TFII発現プラスミドを導入されたFAO細胞におけるCOUP−TFIIの異所性発現は、L−FABPプロモーター活性における用量依存的抑制をもたらした(図2B)。COUP−TFII発現の増加は、DR1配列の突然変異欠損をかかえるL−FABPプロモーター構築体の活性を変化させないため(図2B)、COUP−TFIIによるL−FABPプロモーターの抑制は、機能性DR1要素に依存する。COUP−TFIIを発現するプラスミドを導入されたFAO細胞によって示される、転写の最大限の減少は、L35細胞によって示される低レベルを、部分的(50〜70%)にのみ再現した。これは、発現における細胞型特異的な違いに対して、追加的な因子が寄与している可能性を示唆する。これらの発見は、MTP DR1要素を用いて得られたもの(Kang et al., 2003)に類似する発見であり、L35細胞中で、COUP−TFIIによるDR1要素の占有が、両者の遺伝子の転写不活性化に関与するという結論を支持している(図2A)。
【0104】
PPARα−RXRαヘテロダイマーは、MTPおよびL−FABP遺伝子の両者のDR1プロモーター要素と結合するために、COUP−TFIIと競争する。MTP−DR1サイトと共に形成された複合体についてのEMSA−スーパーシフト解析によれば、RXRαを含んでいるFAO細胞特異的複合体が明らかになった(Kang et al., 2003)。PPARα−RXRαヘテロダイマーは、近位プロモーター領域におけるDR1サイトを介して、L−FABPの転写を活性化することが示されているため(Poirie et al., 1997)、MTP遺伝子が同じように調節されたかどうかを評価した。FAO細胞からの核酸を用いたEMSAスーパーシフト解析によれば、L−FABP−またはMTP−DR1サイトのいずれかを含むDNAプローブが、類似FAO特異的複合体を形成したこと(図3A;レーン1)が明らかにされた。なお、上記複合体は、COUP−TFII特異的抗血清とスーパーシフトしなかったが(図3A;レーン2)、RXRα(図3;レーン3)またはPPARα(図3;レーン4)のいずれかを認識する抗血清とスーパーシフトした。対照的に、L35細胞から得られた核抽出物とのPPARα−RXRαスーパーシフトは、検出されなった(Kang et al., 2003)。これらの発見は、FAO細胞中では、L−FABPおよびMTPの両方のプロモーターのDR1サイトがPPARα−RXRαヘテロダイマーによって占有される一方、L35細胞中では、これら同様のサイトはCOUP−TFII複合体によって占有されるということを示す。
【0105】
COUP−TFII特異的抗血清を用いたクロマチン免疫沈降(ChIP)解析によれば、L35細胞の含有クロマチンは、FAO細胞のクロマチン細胞と比較して、4倍の濃縮度のL−FABP−DR1およびMTP−DR1領域を示すことが明らかにされた(図3B)。対照的に、PPARα特異的抗血清を用いて、FAO細胞から得られたクロマチンは、L35細胞からのクロマチンと比較して、1〜4倍の濃縮度の近位L−FABP−DR1およびMTP−DR1領域を示した(図3B)。両方の細胞系から免疫沈降された末端非翻訳領域のレベルは類似しているため(図3B)、約4倍の濃縮度の近位L−FABP−DR1およびMTP−DR1領域を含むDNA配列は、L−FABPおよびMTPの両方のプロモーターに対する、PPARα−RXRα(FAO細胞)またはCOUP−TFII(L35細胞)の結合に関する細胞型特異的な違いを反映する。したがって、ChIP解析から得られたデータ(図3B)は、EMSAスーパーシフト解析から得られたデータ(図2Aおよび図3A)と調和している。
【0106】
L35細胞のPPARα−RXRα作用薬処理は、L−FABPおよびMTPの発現の転写誘導と、apoBを分泌する能力の回復とをもたらす。PPARαおよび/またはRXRα作用薬によるL35細胞の処理は、MTP(約55〜65倍)およびL−FABP(約60〜75倍)の両方のmRNAの発現を顕著に増加させた(図4A)。両方の作用薬による処理は、MTPおよびL−FABPのmRNA発現を相乗的に300倍近くまで増加させた(図4A)。MTPおよびL−FABPのプロモータールシフェラーゼレポーター構築体は、PPARαおよびRXRα作用薬に対して、同様の反応を示した(図4B)。したがって、PPARαおよびRXRα作用薬(各単独で、および組み合わせで)によるL35細胞の処理は、MTP−DR1およびL−FABP−DR1の両方のプロモーターレポーター構築体の転写活性を、10倍に至るまで増幅する(図4B)。各プロモーターの活性における無有意変化は、DR1サイトをかかえるレポーター構築体を用いて検出された(図4B)。これらの発見は、PPARαおよびRXRα作用薬の効果がDR1要素を介して媒介されるということを示している。
【0107】
賦形剤DMSOによる単独処理は、MTPおよびL−FABPの両方のmRNAの発現における比較的少量であるが有意な増加と、それらのプロモーター−レポーターの活性とを引き起こした(各図4Aおよび図4B)。賦形剤としてDMSOを用いつつ、細胞にPPARαおよびRXRα作用薬を加えると、DMSO賦形剤を単独で加えたときよりも、より多くのL−FABPおよびMTPの誘導が示された(図4Aおよび図4B)。DMSOによるPPARα活性化遺伝子の誘導は(Pauley et al., 2002)に説明されている。
【0108】
L35細胞は、MTP遺伝子の転写不活性化によって、apoB含有リポタンパク質を会合および分泌するための能力が欠けている(Hui et al., 2002; Kang et al., 2003)。PPARα−RXRα作用薬によるL35細胞の処理は、デノボ合成された35S−標識apoBの分泌を顕著に増幅した(図4C)。したがって、PPARα−RXRα作用薬は、L−FABPおよびMTPの発現を回復し、それによって、L35細胞におけるapoB含有リポタンパク質の会合および分泌の活性化が引き起こされる。
【0109】
L−FABPおよびMTPの作用薬誘導は、DR1関連因子の相対的な細胞内含有量の変化によって引き起こされ、両方の遺伝子の近位要素の複合体占有を変化させる。さらなる解析によれば、PPARα−RXRα作用薬によるL35細胞の処理が、その核内受容体のレベルを、FAO細胞によって示されるレベルと類似するように変更したということが明らかとなった(図5A)。したがって、PPARα−RXRα作用薬によるL35細胞の処理を受けて、PPARα(5倍)およびRXRα(2.3倍)の両方のmRNAの発現は増加し、一方、COUP−RFIIのレベルは減少(−60%)した(図5A)。DMSO単独によって処理されたL35細胞もまた、COUP−RFIIレベルにおける大幅な減少を示したが、PPARαまたはRXRαにいずれかのレベルでは変化がなかった(図5A)。COUP−RFIIにおけるDMSOの媒介による減少は、なぜDMSOが、単独で、L−FABPおよびMTPの転写および発現についての増加と関係していたのか(図4)について、説明するだろう。
【0110】
転写因子の発現において作用薬が媒介する変化が、内在性プロモーター中のDR1サイトの複合体占有における変化と一致するかどうかを判断するために、作用薬により処理したL35細胞のChIP解析を、未処理のL35およびFAO細胞のものと比較した。L35細胞のPPARα−RXRα作用薬処理は、COUP−RFII特異的抗血清と免疫沈降した、L−FABP−およびMTP−DR1領域含有クロマチンの量を(約3倍に)減少させ(図5B)、同時に、PPARα特異的抗血清によるその結合量を(約3倍に)増加させた(図5B)。よって、ChIp解析による結果は、核内受容体の発現レベルにおける変化(図5A)と一致した。データの組み合わせによれば、PPARα−RXRαリガンド活性化は、リプレッサーCOUP−RFIIと比較して、活性化複合体PPARα−RXRαの細胞内含有量を増加させることによって、L35細胞型の表現型を、FAO細胞型の表現型に変換することが示される。これらの変化は、L−FABP遺伝子およびMTP遺伝子のDR1要素と結びつく複合体において並行的な変化をもたらし、PPARα−RXRα複合体の活性化によるDR1の占有を助ける。
【0111】
肝臓細胞および生体内において、L−FABPおよびMTPの高レベル発現のためには、PPARαが必要である。そのようなものとして、本発明は、L−FABPおよびMTPの協調した発現のために、PPARα−RXRα活性化複合体が必須であることを予測する。この仮説を検証するために、FAO細胞中のPPARαの発現レベルをノックダウンするRNA干渉を利用した。PPARα特異的siRNAを導入したFAO細胞では、コントロールsiRNAを導入した細胞と比較して、PPARαのmRNAにおける75%の減少が実証された(図6A)。PPARαのmRNAにおけるこの減少は、L−FABPおよびMTPの両方のmRNAの細胞内含有量がコントロールの50%近くまで減少したことと関係があった(図6A)。PPARα特異的RNAiは、PPARα非依存性apoBのmTNAレベルと変化させておらず、これは、L−FABPおよびMTPにおける減少がPPARαの低減に特異的であったこと(図6A)を示唆している。これらの発見によれば、FAO細胞に見られる比較的高度な発現レベルのL−FABPおよびMTPのためには、PPARαが必要であることが示される。
【0112】
また、PPARα作用薬が、生体内におけるL−FABPおよびMTPのmRNAの肝臓での発現を協調的に誘発するかどうかについて、そうだとしたら、上記作用薬が媒介する増加はPPARα依存性であるかどうかについて検討した。コントロールC57/BL6マウス、およびPPARα-/-マウスを、PPARα作用薬GW−7647(Fu et al., 2005)で処理した。コントロールマウスは、PPARα作用薬による処理の後、L−FABPおよびMTPの両方のmRNAのレベル増加を示したが(図6B)、機能性PPARα欠損マウスは、L−FABPおよびMTPのいずれの発現レベルにおいても顕著な変化を示さなかった(図6B)。これらの生体内データは、FAO/L35肝臓細胞を用いて得られた発見を裏付ける。本明細書で提供される発見は、共に、L−FABP遺伝子およびMTP遺伝子の両方の転写調節において、PPARαが重要な役割を果たすことを実証している。
【0113】
L−FABP遺伝子およびMTP遺伝子を協調的に誘導するために、PPARαと協調してPGC−1βが作用する。転写コアクチベータであるPGC−1αおよびPGC−1β(kressler et al., 2002)には、明確な遺伝子標的が示される(Lin et al., 2003; Lin et al., 2005)。PGC−1α活性化遺伝子は、グルコース新生およびミトコンドリア生物発生/脂肪酸酸化に関与し(Lin et al., 2003)、また、PGC−1β活性化遺伝子は、ミトコンドリア生物発生/脂肪酸酸化、および肝臓脂質輸送(例えばMTP)に関与する(Lin et al., 2005)。L35細胞は、高いレベルのPGC−1αと、ほぼ検出できないレベルのPGC−1βとを発現するのに対して、FAO細胞は、高いレベルのPGC−1βと、ほぼ検出できないレベルのPGC−1αとを発現する(図7A)という観察結果は、PGC−1βがMTP遺伝子発現を活性化させるという提言(Lin et al., 2005)と一致する。この提言は、PPARα作用薬で処理されたL35細胞およびマウスの両方が、PGC−1βのmRNAについての1〜3倍に誘発を引き起こしたという発見(図7B)によって、さらに裏付けされる。L−FABPおよびMTPの誘発におけるPGC−1βの役割を調べるために、FAO細胞をPPARα−RXRα作用薬で処理し、かつ、PGC−1βをノックダウンするsiRNAの効果を測定した。PPARα−RXRα作用薬によって、PGC−1βに対して特異的なsiRNAを与えられたFAO細胞を処理すると、PGC−1βのmRNAレベルは、L−FABP(−38%)とMTP(−48%)との両方のmRNAレベルの協調的な減少と関係して、65%減少した。その一方、PGC−1αのmRNAレベルは変化せずに保たれた(図7C)。PPARα−RXRα作用薬によって、ネガティブコントロールのsiRNAを与えられたFAO細胞を処理すると、いずれのmRNAレベルにおいても変化が示されなかった(図7C)。よって、siRNAは標的特異性を実証しており、L−FABPおよびMTPのmRNA発現における協調的な低下は、PGC−1β濃度の低下に起因していた。
【0114】
未処理のL35細胞、および、PPARα−RXRα作用薬により処理されたL35細胞において、PGC−1βを発現するアデノウイルス(Lin et al., 2002a; Lin et al., 2005)の導入を介して、PGC−1βの発現を増強することによって、L−FABPおよびMTPの遺伝子転写におけるPGC−1βの役割をさらに検討した。PGC−1βアデノウイルスは、未処理のL35細胞におけるL−FABPまたはMTPのmRNAレベルに作用しなかった(図8)。対照的に、PGC−1βアデノウイルスによってPPARα−RXRα作用薬に刺激されたL35を処理すると、L−FABPおよびMTPの両方のmRNAは、作用薬により処理したコントロール(GFP導入したコントロールおよび導入していないコントロール)のレベルと比較して、顕著に増加された(〜3倍)(図8)。GFPを発現するアデノウイルスによって、PPARα−RXRα作用薬に刺激されたL35を処理することは、L−FABPおよびMTPのmRNAの発現に対して作用しなかった(図8)。L−FABPおよびMTPの協調的な転写を増幅するために、PPARα−RXRαとPGC−1βとの両方が必要であるという提言に対して、これらのデータは追加的な根拠を提供する。
【0115】
L−FABPおよびMTPの協調的な不活性化は、生体内で、肝臓脂肪症を防止する。L−FABPおよびMTPの両方のプロモーターにおける機能的DR1サイトの保有は、発現および機能(例えばVLDL会合/分泌)における協調的な変動を可能にするだろう。MTPの化学的な抑制、すなわち、高脂血症を治療的に改善するために発達した戦略(Chandler et al., 2003; Ksander et al., 2001; Shiomi and Ito, 2001; Wetterau et al., 1998)は、肝臓脂肪症の発現と関係するせいで、あまり役に立たない(Bjorkegren et al., 2002; Liao et al., 2003)。L−FABPおよびMTPの協調的な抑制が、肝臓脂肪症を引き起こすことなしに、肝臓でのVLDL会合/分泌を阻害するか否かを調べるために、コントロールマウスおよびL−FABP欠損マウス(L−FABP-/-)を、MTP抑制剤(8aR)(Liao et al., 2003)で処理した。8aR処理の7日後、トリグリセリドおよびコレステロールの血漿中濃度は、両グループのマウスにおいて同様のレベルまで顕著に減少された(図9A)。MTP抑制剤によってコントロールC57BL/6マウスを処理したところ、肝臓中のトリグリセリド濃度が4倍に増加したが、肝臓中のトリグリセリド蓄積は、L−FABPの除去によって完全に防止された(図9B)。これらのデータによれば、L−FABP遺伝子およびMTP遺伝子の協調的な転写調節は、肝臓脂肪症を除外して、VLDL会合/分泌の変動を可能にすることが示された。
【実施例2】
【0116】
(L−FABPの化学的抑制による肝臓脂肪症の発現の防止)
本実施例は、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与が血漿中トリグリセリド濃度を減少させることを説明する。
【0117】
3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)(lot # fr. 09061988)は、L−FABPを抑制することが明らかにされている。したがって、MTP抑制剤8aR(Novartis, Summit, NJ)とSandoz compound 58-035との同時投与が、野生型マウスにおいて、肝臓脂肪症の発現を防止するか否かを調べた。処理の前、マウスを出血させ、トリグリセリド(図10)およびコレステロール(図11)の血清中濃度を測定した。その後、0.150mlのコーンオイル(賦形剤のみ)、またはMTP抑制剤8aR(50mg/kg)を含むコーンオイル、もしくはL−FABP抑制剤Sandoz compound 58-035(100mg/kg)を加えたMTP抑制剤8aR(50mg/kg)を含むコーンオイルを用いて、マウスを強制飼養した。7日間の処理後、マウスを出血させて解剖した。L−FABP抑制剤と共に投与したとき、および投与しなかったときにおいて、MTP抑制剤は、血清中トリグリセリド濃度(図10)および血清中コレステロール濃度(図11)の両方を減少させた。予想通りに、MTP抑制剤のみで処理したマウスは、肝臓脂肪症を示した(肝臓トリグリセリド濃度は、5倍にまで増加した;図12)。際立って対照的に、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との両方で処理したマウスからの肝臓は、肝臓トリグリセリド濃度の増加を示さなかった(図12)。MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与は、肝臓脂肪症の発現を防止すると示すこれらのデータは、標的遺伝子の不活性化に起因してマウスのL−FABP発現が欠損するという、発明者らの以前の発見を拡張する。
さらに、これらの発見は、L−FABPを抑制する能力のある薬剤(例えばSandoz compound 58-035)の同時投与は、肝臓脂肪症を引き起こすことなく(図12)、MTP抑制剤が血漿中のリポタンパク質を減少させることができるようにする(図10および図11)。
【0118】
C57BL6雄マウス(8〜10週齢)(n=各グループ中5)には、水を飲むことを自由にさせ、餌として、コーンオイル(0.15ml)のみ、またはMTP抑制剤8aR(50mg/kg)(Novartis, Summit, NJ)(Ksander, et al., 2001, Diaminoindanes as microsomal triglyceride transfer protein inhibitors. J Med Chem 44:4677-4687)を含むコーンオイル、もしくはL−FABP抑制剤Sandoz compound 58-035(100mg/kg)を加えたMTP抑制剤8aR(Novartis, Summit, NJ)を含むコーンオイルを用いて、7日間、毎日強制摂取させた。試験を始める前および試験を始めてから7日後に、マウスを出血させた。12時間の光サイクルを有している(午前6:00から午後6:00まで照明を照らした)空間にマウスを収容した。午前10:00にマウスを眼窩後から出血させ、その後、解剖した。
【0119】
肝臓中のトリグリセリド濃度、ならびに血漿中のコレステロール濃度およびトリグリセリド濃度を(Liao, et al., 2003, Blocking microsomal triglyceride transfer protein interferes with apoB secretion without causing retention or stress in the ER. J Lipid Res 44:978-985)に記載のように測定した。値は、各グループの5匹のマウスについての平均値±標準偏差を表している。*処理前のマウスと処理後のマウスとの顕著な違い、p<0.05、スチューデントt検定(Student's t test)を示す(図10)。
【0120】
図11は、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与がマウスにおいて血漿中のコレステロール濃度を減少させることを示している。上述にように、C57BL6雄マウス(8〜10週齢)(n=各グループ中5)に対し、コーンオイルのみ、またはMTP抑制剤8aR(Novartis, Summit, NJ)を含むコーンオイル、もしくはL−FABP抑制剤Sandoz compound 58-035を加えたMTP抑制剤8aR(Novartis, Summit, NJ)を含むコーンオイルを用いて、毎日、強制摂取させた。試験を始める前および試験を始めてから7日後に、マウスを出血させた。血漿中のコレステロール濃度を上述のように測定した。値は、各グループの5匹のマウスについての平均値±標準偏差を表している。
【0121】
図12は、MTP抑制剤とL−FABP抑制剤との同時投与が、マウスにおける肝臓脂肪症の発現を防止することを示している。上述のように、C57BL6雄マウス(8〜10週齢)(n=各グループ中5)に対し、コーンオイルのみ、またはMTP抑制剤8aR(Novartis, Summit, NJ)を含むコーンオイル、もしくはL−FABP抑制剤Sandoz compound 58-035を加えたMTP抑制剤8aR(Novartis, Summit, NJ)を含むコーンオイルを用いて、毎日、強制摂取させた。7日後にマウスを解剖した。肝臓トリグリセリド濃度を測定した。値は、各グループの5匹のマウスについての平均値±標準偏差を表している。
【0122】
本発明は、上述の実施例を参照して説明されているが、本発明の精神および範囲内で、いろいろと変更したものを含むことは理解されるだろう。したがって、本発明は、以下の特許請求事項の範囲によってのみ限定される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
MTP抑制剤とL−FABP抑制剤とを含む医薬組成物。
【請求項2】
上記MTP抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
上記L−FABP抑制剤は、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
上記MTP抑制剤は、8aRである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
肝臓脂肪症の発現を防止する方法であって、上記防止を必要とする被験者に、治療効果のある量のミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)抑制剤を、治療効果のある量の肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)抑制剤と組み合わせて投与する工程、それによって高脂血症を治療する工程を含んでいる方法。
【請求項7】
上記MTP抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記L−FABP抑制剤は、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
上記MTP抑制剤は、8aRである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
上記MTP抑制剤は、8aRであり、かつ、上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
高脂血症を治療する方法であって、上記治療を必要とする被験者に、治療効果のある量のミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)抑制剤を、治療効果のある量の肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)抑制剤と組み合わせて投与する工程、それによって高脂血症を治療する工程を含んでいる方法。
【請求項13】
上記MTP抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記L−FABP抑制剤は、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
上記MTP抑制剤は、8aRである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
被験者のC型肝炎ウイルス(HCV)感染を改善する方法であって、上記改善を必要とする被験者に、治療効果のある量のミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)抑制剤を、治療効果のある量の肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)抑制剤と組み合わせて投与する工程を含んでおり、それによって上記被験者におけるHCVを改善する方法。
【請求項18】
上記MTP抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記L−FABP抑制剤は、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
上記MTP抑制剤は、8aRである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
上記MTP抑制剤は、8aRであり、かつ、上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
高脂血症を治療するために有用な薬剤を同定する方法であって、治療を必要とする被験者からの細胞試料を少なくとも1つの検査薬と接触させる工程、および接触に続くL−FABP発現の減少を検出する工程を含んでおり、当該工程において、接触に続くL−FABP発現の減少の検出が、高脂血症を治療するために有益な薬剤を同定する方法。
【請求項24】
ハイスループット法で行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
接触に続くMTP発現の減少を検出する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
L−FABP活性抑制剤と組み合わせてMTP抑制剤を用いる治療に適する癌細胞を同定する方法であって、対応正常細胞におけるMTPおよびL−FABP活性と比較して上昇した、癌細胞試料におけるMTPおよびL−FABP活性を検出する工程、それによって、L−FABP活性抑制剤と組み合わせてMTP抑制剤を用いた治療に適する癌細胞を同定する工程を含んでいる方法。
【請求項27】
上記癌細胞は肝臓癌細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記MTP抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
上記L−FABP抑制剤は、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
上記MTP抑制剤は、8aRである、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項26に記載の方法。
【請求項1】
MTP抑制剤とL−FABP抑制剤とを含む医薬組成物。
【請求項2】
上記MTP抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
上記L−FABP抑制剤は、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
上記MTP抑制剤は、8aRである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
肝臓脂肪症の発現を防止する方法であって、上記防止を必要とする被験者に、治療効果のある量のミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)抑制剤を、治療効果のある量の肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)抑制剤と組み合わせて投与する工程、それによって高脂血症を治療する工程を含んでいる方法。
【請求項7】
上記MTP抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
上記L−FABP抑制剤は、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
上記MTP抑制剤は、8aRである、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
上記MTP抑制剤は、8aRであり、かつ、上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
高脂血症を治療する方法であって、上記治療を必要とする被験者に、治療効果のある量のミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)抑制剤を、治療効果のある量の肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)抑制剤と組み合わせて投与する工程、それによって高脂血症を治療する工程を含んでいる方法。
【請求項13】
上記MTP抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記L−FABP抑制剤は、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
上記MTP抑制剤は、8aRである、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
被験者のC型肝炎ウイルス(HCV)感染を改善する方法であって、上記改善を必要とする被験者に、治療効果のある量のミクロゾームトリグリセリド転移タンパク質(MTP)抑制剤を、治療効果のある量の肝臓脂肪酸結合タンパク質(L−FABP)抑制剤と組み合わせて投与する工程を含んでおり、それによって上記被験者におけるHCVを改善する方法。
【請求項18】
上記MTP抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
上記L−FABP抑制剤は、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
上記MTP抑制剤は、8aRである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
上記MTP抑制剤は、8aRであり、かつ、上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
高脂血症を治療するために有用な薬剤を同定する方法であって、治療を必要とする被験者からの細胞試料を少なくとも1つの検査薬と接触させる工程、および接触に続くL−FABP発現の減少を検出する工程を含んでおり、当該工程において、接触に続くL−FABP発現の減少の検出が、高脂血症を治療するために有益な薬剤を同定する方法。
【請求項24】
ハイスループット法で行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
接触に続くMTP発現の減少を検出する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
L−FABP活性抑制剤と組み合わせてMTP抑制剤を用いる治療に適する癌細胞を同定する方法であって、対応正常細胞におけるMTPおよびL−FABP活性と比較して上昇した、癌細胞試料におけるMTPおよびL−FABP活性を検出する工程、それによって、L−FABP活性抑制剤と組み合わせてMTP抑制剤を用いた治療に適する癌細胞を同定する工程を含んでいる方法。
【請求項27】
上記癌細胞は肝臓癌細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上記MTP抑制剤は、MTPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
上記L−FABP抑制剤は、L−FABPをコードまたは調節するポリヌクレオチドとハイブリダイズするdsRNA、または当該dsRNAの機能性断片である、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
上記MTP抑制剤は、8aRである、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
上記L−FABP抑制剤は、3−(デシルジメチルシリル)−N−[2−(4−メチルフェニル)−l−フェニルエチル〕プロパンアミド(Sandoz compound 58-035)である、請求項26に記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−541213(P2009−541213A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513323(P2009−513323)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/013057
【国際公開番号】WO2007/143164
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508354795)サン ディエゴ ステート ユニバーシティ リサーチ ファウンデーション (1)
【氏名又は名称原語表記】SAN DIEGO STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】Gateway Center,5250 Campanile Drive,San Diego,CA 92182,United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2007/013057
【国際公開番号】WO2007/143164
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508354795)サン ディエゴ ステート ユニバーシティ リサーチ ファウンデーション (1)
【氏名又は名称原語表記】SAN DIEGO STATE UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】Gateway Center,5250 Campanile Drive,San Diego,CA 92182,United States of America
【Fターム(参考)】
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