説明

高親油性スルフヒドリル化合物の製薬組成物及び使用方法

化学構造式Iの化合物、並びにその水和物及び溶媒和物:

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は親油性抗酸化化合物、親油性抗酸化化合物を含む製薬組成物、及び酸化ストレスの防止あるいは減少のためのその使用に関する。より詳細には、本発明は非中枢神経(CNS)及び中枢神経を標的とする新規な抗酸化物質、及び酸化ストレスの生成に関連する非CNS及びCNSの疾患、疾病または状態の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化ストレス
細胞生理学上のレドックス状態は、酸素と反応性酸素種(ROS)の濃度に依存しているが、チロシンリン酸化、転写の調節及びメッセンジャーRNAの安定性の改変のような中心となる生化学的調節反応に関係しており、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルタチオン・ペルオキシダーゼ、及びチオレドキシンのような特定の酵素と、グルタチオンのような選択的抗酸化剤により精巧に平衡が保たれている。細胞内レドックス状態のホメオスタシスが調節されていることは細胞の適切な生理学的機能には不可欠であるが、細胞性抗酸化防御の中和能力を超える水準でのROSの過剰生産は酸化状態を発生させ、この状態は酸化ストレスと称される。そのような酸化ストレスは炎症性疾患、アポトーシス、及び突然変異誘発のような過程を経て、酸化損傷をもたらし得る。
【0003】
炎症性疾患は制限された組織損傷を伴う通常の生理学作用であるが、過剰な酸化ストレスの状態下のように、制御されない状態では病因となり得る。そのような場合では、レドックス状態反応性遺伝子の発現の変化を介し、ROSの上昇がNF-kB阻害蛋白質のユビキチン化及び破壊の原因となり、よって複数の炎症前サイトカインの上流調節において枢要の事象であるNF-kBの標的遺伝子プロモーターへの結合が可能になる。敗血症、多発性硬化症(MS)、発作、心筋炎、及び慢性間接リウマチのような炎症性疾患と関連する多数の疾患において、過剰なフリーラジカルが同定されている。
【0004】
健常な組織の発達と維持には適切に調節されたアポトーシスを必要とすると同時に、この過程への干渉は腫瘍生成の促進、免疫欠損症、及び神経組織変性疾病を含む種々の病理の原因となる。細胞内での酸化状態の上昇は、ROSの付加あるいは細胞性抗酸化剤の涸渇のいずれかを経て、アポトーシスの原因となり得ることが示されている。また酸化ストレスとアポトーシスに関係する特定の酵素の活性化とを関連付ける多くの証拠が蓄積されている。
【0005】
そのような酵素の1つにシトクロームc介在アポトーシスのシグナリング経路において必須であるc-Jun N末端キナーゼ(JNK)がある。この酵素は、紫外線放射、シスプラチン治療、あるいは細胞性ストレスに応答して活性化する。JNKの破壊は、ミトコンドリア死シグナリング経路の損傷を誘発する紫外線誘発性アポトーシスを防ぐということが証明されている。
【0006】
ROSは、特定のレドックス活性部位を含むすべての生存細胞に偏在する酵素であるチオレドキシンに関係する種々のシグナル伝達経路の経路内で、中間因子として役割を果たすということが示されている。チオレドキシンは、レドックス状態反応性ドメインを介して酸化ストレス誘発アポトーシスを介在する蛋白質であるアポトーシス信号調節キナーゼ-1(ASK1)と結合して抑制することによって、酸化ストレス誘発アポトーシスのインヒビターとして機能する。しかしながら、過度な酸化ストレスの状態下では、酸化したチオレドキシンがASK1と解離し、よってそれを活性化し、アポトーシスを誘導する。
【0007】
酸化ストレスに関連する病理
酸化剤損傷は、例えば心臓血管、神経、代謝、感染性、肝臓、膵臓、リウマチ、悪性、及び免疫性の種々の疾患に加えて、敗血症、白内障、筋萎縮性側索硬化症、及びダウン症候群、多臓器機能不全症候群、及び嚢胞性繊維症のような先天性疾患のような種々の疾病のように、主な臨床的かつ実利的な影響の多くを含む多岐にわたる種々の疾患の病因に関わっている。
【0008】
以下に述べるのは酸化ストレスが原因となる最も広まっており最も重大な疾患である。
【0009】
神経組織変性病理:炎症性疾患及び酸化ストレスとの関係:酸化ストレスとパーキンソン病、アルツハイマー病、クロイツフェルト−ヤコブ病、及びMSを含むヒトの主な神経組織変性疾患の病因との強い関連を示す証明が蓄積されている。
【0010】
パーキンソン病におけるレヴィー体及びアルツハイマー病におけるアミロイドプラークのような種々の神経組織変性疾患の各種の病理マーカー指標が、これらの疾患の発症時における異なる原因を示している。しかしながら、一旦発症すると、多くの神経組織変性疾患の進行は類似した細胞経路をたどるということが証明されてきている。すなわち、CNSの特定の領域内の細胞内酸化状態の上昇は、アルツハイマー病、パーキンソン病、海綿状脳症、脳幹神経節の変性疾患、運動ニューロン疾患、及び記憶喪失のような疾患の原因の重要な因子であるようである。
【0011】
例えば、アルツハイマー病の病因での酸化ストレスの役割が、βアミロイド蛋白質の断片と酸素基の生成との関係に関する最近の分析に示されている。この研究は、高感度のシステムを使用し、フェニレフリン介在血管収縮のβアミロイド介在性増大が、酸素フリーラジカルを捕獲する酵素であるSODで血管を前処理することで排除され得るというような、血管作用性応答のモニタリングを活用している。また他の研究は、酸化ストレスとフリーラジカルの生成は、βアミロイド断片(アミノ酸25-35)の存在に関連しており、アルツハイマー病に関係する神経組織変性に寄与しているようであることを示している。さらに、アルツハイマー病及びダウン症候群におけるニューロンの過度のRNA酸化を示す研究も存在し、アルツハイマー病における酸化ストレスの遺伝学的証拠も報告されている。
【0012】
MSの病因における酸化ストレスの上昇の役割に関する証拠が、レドックスホメオスタシスの維持に関係する酵素であるメタロチオネインの、MSあるいは後天的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)における役割を分析する研究、及びMS患者の血清及び脳脊髄液の脂質過酸化の増大を証明する研究、及びEAEの進行において酸化ストレスにより誘発されるヒートショック蛋白質であるヘム・オキシゲナーゼ-1(HO-1)の役割を証明する研究で提供された。
【0013】
羊に起こる海綿状脳症の一類型であるスクレーピーの事例では、病因が酸素フリーラジカルの生成の増加によるプリオン蛋白質断片PrP106-126に応答する神経膠細胞を介しているということが証明された。
【0014】
糖尿病:ROSの生成が糖尿病の両類型において増加すること、及び糖尿病の開始は酸化ストレスと密接に関係していることについて、実験及び臨床上の説得力のある証拠が存在している。最近、2’,7’-ジクロロフルオレセインで明視化され、フローサイトメトリーによって定量化される、酸化剤たる過酸化水素の細胞内含有量が、高グルコース濃度での治療後に上昇するということが証明された。乳酸ゲヒドロゲナーゼの活性の相伴う上昇が検出され、高グルコースが過酸化水素の生成を通じて壊死性の細胞死を促進し、それが糖尿病性血管障害の発生の一因となりうることを示唆している。最近の研究で、抗酸化剤の長期間の投与は糖尿病性網膜症の初期段階の発生を抑制し得るということが証明されたことは、これらの結果と矛盾がない。抗酸化剤使用を糖尿病のラットの治療で実施した他の研究は、糖尿病で誘発された酸化ストレスとスーパーオキシドの生成は糖尿病患者の血管系及び神経系の合併症の発生に部分的に関与するということを示唆している。
【0015】
白内障の形成:酸化剤損傷の白内障の形成に関する役割については、抗酸化剤である肝臓グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GSH)の減少濃度が、水晶体の混濁の増進と関係していることを示す以前の研究によって証明されている。その後の研究により、哺乳類の水晶体では、光によって誘発される酸化工程によって生産される細胞内酸化剤が酸化損傷の原因となり、結果として遺伝子発現が変化し、また白内障の形成の原因として関係していることが示されている。現在では過酸化水素が水晶体に曝露される主な酸化剤だと解されている。
【0016】
感染性疾患:有害な濃度の酸素フリーラジカルと一酸化窒素(NO)が、多様な範囲にわたる多種の細菌の感染症の病因において生成され、それらはその病因にとって最も重要である。病因が酸化ストレスと関連付けられるウイルス性疾患は、C型肝炎、AIDS、インフルエンザ、及び種々の神経栄養性病原体によってひき起こされる疾患を含む。多くの種類のウイルス性疾患では、高濃度のNOが、酸素基との相互作用を介して、反応性酸素中間体、並びに過酸化窒化物を含む高反応性窒素酸素種を生成する。これらの反応性窒素核種は、種々の生体分子の酸化を介して、酸化剤損傷、並びに突然変異誘発の原因となる。最近では、NOによって誘発された酸化ストレスは、ウイルス性突然変異の増加及び1型ヘルパーT細胞機能の抑制によって、さらなる損傷をひき起こすことも証明されている。例えば、ウマインフルエンザウイルス(EIV)のインフルエンザモデルを用いた研究では、ウイルス感染は酸化ストレスの結果として細胞病原性効果とアポトーシスの原因となるということが示されている。別の研究では、ヒトC型肝炎ウイルス感染の進行は、非構造的HCV蛋白質NS5Aがミトコンドリア内のROSの上昇を誘発するメカニズムを介して酸化ストレスの誘発に関係しており、細胞核の転移及び炎症性転写因子NF-kB及びSTAT-3の構成的活性化を導くということが示されている。
【0017】
心臓手術後の神経機能不全:多発性の梗塞形成に引き続く、冠状動脈バイパス手術のような心臓手術は、脳機能及び記憶障害のような神経機能不全の危険性を有意に増大させるということが示されている。複数の研究によって、そのような神経障害は酸化ストレスと関係しているという証拠が示されている。
【0018】
心臓血管疾患:アテローム性動脈硬化、高血圧症、心臓発作、及び再狭窄のような主な心臓血管疾患の病因には酸化ストレスが関係していることが示されている。そのような血管構造内での酸化ストレスは、血管反作用、血管平滑筋細胞の増殖、マクロファージ癒着、血小板活性化、及び脂質過酸化の原因となる。先進諸国の主な死因の1つであるアテローム性動脈硬化の症例では、リポ蛋白質から誘導された脂質の炎症及び酸化に病因が特に関係している。
【0019】
最近の研究では、大脳虚血症とその後の血液再灌流は酸化ストレスの上昇を導き、そのような酸化ストレスは機能的DNA修復メカニズムにもかかわらず、脳組織内の遺伝子の損傷の原因となるということが示されている。虚血症に関係する病因におけるそのような酸化ストレスの関与は、虚血/灌流損傷を受けたグルタチオン・ペルオキシターゼ-1(Gpx-1)ノックアウトマウスの脳内での梗塞の拡大とアポトーシスの悪化を報告する研究でさらに証明されている。
【0020】
癌:酸化ストレス/反応性酸化種が一部の癌の発生に関係しているという研究が示されている。加えて、種々の化学療法試薬で治療を受けた癌患者はしばしば、物忘れ、集中力の欠乏、めまい(総称して化学脳、化学混迷、あるいは化学療法に関連する認識機能不全と呼ばれている)を訴える。抗癌剤アドリアマイシンによってひき起こされた化学脳と一貫したゆるやかな認知機能不全が、フリーラジカル介在性酸化ストレスに関係していることが報告されている。
【0021】
よって、非常に広い範囲の様々な疾患の病因が酸化ストレスに関係しており、そのように酸化状態を減少させる方法がそのような疾患の魅力的な治療方法を提供しうるのである。
【非特許文献1】Tacke and Zilch, Endeavour, New Series, 10, 191-197(1986)
【非特許文献2】Showell, GA and Mills, JS, Chemistry challenges in lead optimization: silicon isosteres in drug discovery. Drug Discovery Today 8(12): 551-556, 2003
【非特許文献3】Green et al.の”Protective Groups in Organic Chemistry”, (Willey, 2. sup.nd ed. 1991)
【非特許文献4】Harrison et al. ”Compendium of Synthetic Organic Methods”, Vols. 1-8 (John Wiley and Sons, 1971-1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
酸化ストレスの減少を介して疾患を治療する方法
酸化ストレスの減少を介して酸化ストレスに関連する疾患を治療する種々の従来技術方法が試みられており、レドックス平衡を回復することによって疾患を治療することの潜在的有用性が証明されている。これらは特定のインヒビターによるROSの酵素的生産の防止か、あるいはレドックス平衡の回復のために外因性の抗酸化剤を導入することを含む。
【0023】
CNSの疾患:CNSの疾患の治療のために高い酸化ストレスを克服するためには、CNSに進入する酸化ストレスを減少させることが可能な薬を投与することが望ましい。しかしながら、CNSは、脳血液関門(BBB)によって、身体の他の部分及び末梢の血液循環から生理的に分離されている。BBBは、抗酸化剤のような試薬の通過に対して非常に有用なバリアを構成し、酸化ストレスを減少させることが可能な酵素あるいは他の蛋白質のような選択的トランスポーターを欠くため、そのような試薬は脳あるいは脳脊髄液への直接の注入をもって投与されなくてはならない。しかしながら、そのような投与経路は容認できないほど危険を伴うものであり、煩わしく、かつ侵襲性であり、よってこの治療態様にとって重大な欠点であることを意味する。
【0024】
パーキンソン病のような神経疾患の治療のために、抗酸化剤であるビタミンE及びビタミンCの投与を採用した方法がある。ビタミンEは中脳の黒質内の酸化ストレスの減少には有用ではないということが発見されており、BBBを通過することは可能なのではあるが、細胞膜内に閉じ込められ、よって抗酸化特性が必要とされる場所である細胞質には到達しない。ビタミンCは、選択的トランスポーターを介して、ある程度はBBBを通過することが可能であるが、やはりCNSの神経変性疾患の治療には有用でないことが示されている。
【0025】
別のアプローチでは、化合物が生物のBBBを通過できるように、低分子量かつ低膜混和特性と、抗酸化特性を発揮するための酸化可能な(すなわち、還元性)化学基と、化合物あるいはその化合物の細胞内誘導体が細胞の細胞質の内部に蓄積されるような化学的メイクアップの組み合わせによって特徴付けられる抗酸化化合物が、CNS病理を含む酸化ストレスに関係する病理の治療に使われている。
【0026】
非CNS組織の疾患
【0027】
抗酸化剤の全身投与:非CNS組織における酸化ストレスの減少のために使用される主な従来技術アプローチは、抗酸化剤の投与を採用している。
【0028】
抗酸化剤であるNアセチルシステイン(NAC)は、EIVにより誘発された細胞変性効果及びアポトーシスを減衰させて、血管形成術後のアテローム性動脈硬化症及び再狭窄を治療するために、イヌの腎細胞の治療に使用されている。またNACの二量体もアテローム性動脈硬化症の治療に使用されている。
【0029】
抗酸化特性を持つ硫黄含有脂肪酸、テトラデシルチオ酢酸はブタの冠状静脈内のバルーン血管形成術後の再狭窄の長期的復位を達成するために採用されている。
【0030】
抗酸化剤であるピロリジンジチオカルバミン酸塩(PDTC)及びNACは、炎症前転写因子STAT-3の病原性HCV介在性構成的活性化を防止するために使用されている。
【0031】
また、酸化ストレスに関連する疾患の治療には合成抗酸化剤も使用されている。例えば、合成反応性酸素インヒビター2,4-ジアミノピロール-2,3-ジピリミジンを使用して遊離酸素の濃度を減少させることで、喘息の治療が試みられている。
【0032】
虚血症のイノシシの心臓モデル内のアポトーシスがグルタチオン・ペルオキシターゼの模倣体であるエブセレンによって治療されている。
【0033】
細胞質抗酸化剤である銅/亜鉛スーパーオキシドジスムターゼは、脳虚血症再灌流後の脳血液関門破裂及び梗塞の治療のために使用されている。虚血症に誘導されたマウスの脳損傷の減弱が、レドックス誘発可能な抗酸化蛋白質であるSAGの投与によって試みられている。
【0034】
抗酸化剤の代謝調節因子の投与:もう1つのアプローチとして、抗酸化剤の代謝調節因子を酸化ストレスを減少させるために使用する試みがある。ある研究では、グルココルチコイドによって誘発された酸化ストレスを減少させるように、肝臓のGSHの濃度の代謝維持を行うために、チロキシンの投与を介してチキンの胚のモデル内の白内障予防を試みた。
【0035】
酸化ストレスに誘発された蛋白質の誘発因子、ヘミン、ヘムオキシゲナーゼ-1はEAEの進行を阻害するために使用されている。
【0036】
MS患者の脂質過酸化の治療にコルチコステロイドの投与が採用されている。
【0037】
内因性の抗酸化剤である還元グルタチオンの生産の刺激が、プロシステイン(Free Radical Sciences Inc., CA, U.S.)という薬剤の投与によって、免疫系による酸化剤あるいはROSの過剰生産に特徴づけられる症候である急性呼吸窮迫症候群の治療のために試みられている。この薬剤は、細胞システインの摂取の上流調節によってグルタチオンの細胞性生産を追加することにより機能する。
【0038】
以上に述べられたすべての及び他の抗酸化化合物に共通する特徴は、それらが構造、体配置、細胞配置、オルガネラ配置、及び/または抗酸化特性等において多様性に欠けていることである。それなりに、どの1つの抗酸化剤をとってみてもある応用への有用性は証明されうるが、他の応用には有用性に劣るかあるいは有用でないと証明されうるのである。場合によっては、ある特定の抗酸化剤がある身体器官、ある細胞、あるいはある細胞下構造における酸化ストレスを減少するのに有用だとしても、他のものにおいては有用でないということがありうるのである。
【0039】
かくして、非CNS及びCNS組織の両方で酸化ストレスの生成に関係する疾病、症候群、及び状態に対抗できるような親油性の、つまり水溶性が低い抗酸化化合物を有することは、非常に有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明は薬物動力特性を含む治療上の特性を改良した新規なスルフヒドリル化合物を提供する。また、これらの化合物を調製及び使用する方法についても開示されている。本発明は有益な特性を持つケイ素を含む薬剤を包含する。そのアプローチはケイ素原子を挿入すること、及び生物学上と治療上の特性を改良したそれらの修飾された薬剤を選択することを伴う。ケイ素化学についての評論はTacke and Zilch, Endeavour, New Series, 10, 191-197(1986)、及びShowell, GA and Mills, JS, Chemistry challenges in lead optimization: silicon isosteres in drug discovery. Drug Discovery Today 8(12): 551-556, 2003に提供される。
【0041】
本発明の組成物は、改良された生物学的特性及び薬物動力特性を示すCOOH含有スルフヒドリル誘導体のようなCOOH含有薬剤を含む、カルボン酸塩含有薬剤を含む。これらの分子はそれらの分子の修飾されていないカウンターパート親薬剤の抗酸化特性を保持しつつも、誘導前の薬剤には示されなかった他の効果を示す。
【0042】
[0010]本発明のケイ素含有スルフヒドリル化合物は、N-アセチルシステイン、D-ペニシラミン、L-ペニシラミン、D-ペニシラミンとL-ペニシラミンの混合物、N-アセチル-D-ペニシラミン、N-アセチル-DL-ペニシラミン、カプトプリル(N-[(S)-3-メルカプト-2-メチルプロピオニル]-L-プロリン)、D-メチオニン、L-メチオニン、D-メチオニンとL-メチオニンの混合物、ホモメチオニン、S-アデノシル-L-メチオニン、エチオニン、金チオマレート酸((1,2-ジカルボキシルエチルチオ)金)を含むがこれらに限定されない。
【0043】
本発明の一つの目的は、あるスルフヒドリル化合物のカルボン酸部分の親油性ケイ素類似体を生成することである。その結果生成される化合物も本発明に包含される。
【0044】
また、哺乳類、特にヒトに対し、治療に有効な量のケイ素含有スルフヒドリル誘導体を投与するための方法も提供される。一つの実施態様では、そのスルフヒドリル化合物にはカルボン酸部分を含み、製薬上許容可能なその塩を含む。その化合物はスルフヒドリル含有薬剤か、あるいは製薬上許容可能な塩であることが望ましい。
【0045】
本発明のさらなる目的は、誘導されていないカウンターパートと比較して、薬物動力の向上、及び/または代謝改変、及び/または薬物の改良された生体利用性と半滅期を示す化合物を提供することである。
【0046】
また、親油性の向上、胃腸の吸収の改善、及び経口の生体利用性の向上を示す化合物を提供することも、本発明の一目的である。また、その新規な化合物が、誘導されていないカウンターパート化合物と比較して、改善された薬理学的プロフィールを有し、その結果、ヒトあるいは動物にとってより優れた薬剤生体利用性を有することも、本発明のさらなる目的である。
【0047】
ここで説明されている1つ以上の化合物を含む製薬組成物が、製薬上許容可能な希釈液あるいは基材の中にあることもまた企図されている。多くの製薬上の希釈液が知られており、使用が可能である。そのような組成物を提供することは、製薬処方技術の当業者の間では周知である。
【0048】
また、本発明の化合物はジアステレオマー、ラセミ体、単体の鏡像体を含み、その化合物は既に知られているように、水和物形態、溶媒和物形態、種々の結晶形態、あるいは無定形態のいずれもとり得る。その化合物の結晶形態には1つより多い多型形態で存在するものがあり、そのようなすべての形態が本発明に含まれることを意味している。無定形の固形物は、結晶形態とは対照的に、識別可能な結晶格子を持たず、化学構造単位の規則的な配列を持たない。無定形態は一般的に溶解しやすく、よってそれらは無定形態化合物の生体利用性が結晶体のカウンターパートに比べて大きい場合があるため、製薬目的上望ましくありうる。これらの形態を生成する種々の確立した方法が知られており、そのような方法を用いてこれらの形態を生産することは当業者には周知である。
【0049】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の発明の詳細な説明と図面から明らかになるだろう。
【0050】
ある実施態様として、本発明は1つ以上のケイ素原子を持つある特定の種類の化合物に向けられたものである。ケイ素は親油性が高く、よってそれは消化器官壁、細胞膜及び血液脳関門への浸透を高める。
【0051】
本発明は高い製薬特性を発揮するケイ素原子を取り込んだ化合物を提供する。
【0052】
本発明に有用であり、特に好ましいケイ素含有スルフヒドリル誘導体はN-アセチルシステイン、D-ペニシラミン、L-ペニシラミン、D-ペニシラミンとL-ペニシラミンの混合物、N-アセチル-D-ペニシラミン、N-アセチル-DL-ペニシラミン、カプトプリル(N-[(S)-3-メルカプト-2-メチルプロピオニル]-L-プロリン)、D-メチオニン、L-メチオニン、D-メチオニンとL-メチオニンの混合物、ホモメチオニン、S-アデノシル-L-メチオニン、エチオニン、金チオマレート酸((1,2-ジカルボキシルエチルチオ)金)などを含むがこれらに限定されない。
【0053】
ある実施態様においては、上述したうちの1つの物質は化学構造式(I)を持つ化合物を含む。
【化1】

【0054】
nは活性化合物を生成するいずれの整数でもよいが、できれば1-6が好ましい。
【0055】
R1、R2、R3は化合物の形成に実質的に干渉しないいずれの基でもよい。Rのそれぞれは同じであっても異なっていてもよく、例を挙げると、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert−ブチル基、-CH2CH(CH2CH3)2、2-メチル-n-ブチル基、6-フルオロ-n-ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、アリル基、イソブト-2-エニル基、3-メチルペンチル基、-CH2-シクロプロピル、-CH2-シクロヘキシル、-CH2CH2-シクロプロピル、-CH2CH2-シクロヘキシル、-CH2-インドール-3-イル、p-(フェニル)フェニル基、o-フルオロフェニル基、m-フルオロフェニル基、p-フルオロフェニル基、m-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、フェネチル基、ベンジル基、m-ヒドロキシベンジル基、p-ヒドロキシベンジル基、p-ニトロベンジル基、m-トリフルオロメチルフェニル基、p-(CH3)2NCH2CH2CH2O-ベンジル基、p-(CH3)3COC(O)CH2O-ベンジル基、p-(HOOCCH2O)-ベンジル基、2-アミノピリド-6-イル、p-(N-モルホリノ-CH2CH2O)-ベンジル基、-CH2CH2C(O)NH2、-CH2-イミダゾール-4-イル、-CH2-(3-テトラヒドロフラニル)、-CH2-チオフェン-2-イル、-CH2(1-メチル)シクロプロピル、-CH2-チオフェン-3-イル、チオフェン-3-イル、チオフェン-2-イル、-CH2--C(O)O-t-ブチル、-CH2-C(CH3)3、-CH2CH(CH2CH3)2、-2-メチルシクロペンチル、-シクロヘキサ-2-エニル、-CH[CH(CH3)2]COOCH3、-CH2CH2N(CH3)2、-CH2C(CH3)=CH2、-CH2CH=CHCH3 (シス形及びトランス形)、-CH2OH、-CH(OH)CH3、-CH(O-t-ブチル)CH3、-CH2OCH3、-(CH2)4NH-Boc、-(CH2)4NH2、-CH2-ピリジル(例えば、2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジル)、ピリジル基(2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジル)、-CH2-ナフチル(例えば、1-ナフチル及び2-ナフチル)、-CH2-(N-モルホリノ)、p-(N-モルホリノ-CH2CH2O)-ベンジル基、ベンゾ[b]チオフェン-2-イル、5-クロロベンゾ[b]チオフェン-2-イル、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-2-イル、ベンゾ[b]チオフェン-3-イル、5-クロロベンゾ[b]チオフェン-3-イル、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル、6-メトキシナフサ-2-イル、-CH2CH2SCH3、チエン-2-イル、チエン-3-イル等、あるいはそれの製薬上許容可能な塩を含む。
【0056】
別の実施態様では、本発明は酸化ストレスを防止あるいは減少するための製薬組成物に関する。その組成物とは製薬上許容可能なキャリアと、有効な量の化学構造式(I)の少なくとも1つの化合物を含む。前記製薬組成物は哺乳類、とりわけヒトの治療に対して高い安全性の許容性を持って、優れた薬物動力特性を持つ。
【0057】
さらに、別の実施態様では、本発明は、化学構造物(I)の安定したシリル化合物を生成するために、化学構造式(II)の化合物を化学構造式(III)の化合物と反応させて得られる化学構造式(I)の誘導体を生産する方法に関する。
【化2】

【0058】
化学構造式(III)の好ましいケイ素誘導体は、アミノメチルトリメチルシラン、アミノプロピルトリメチルシラン、
(ジメチル(プロピル)シリル)メタンアミン、アミノブチルトリメチルシラン、
(ブチルジメチルシリル)メタンアミン、アミノペンチルトリメチルシラン、
(ジメチル(ペンチル)シリル)メタンアミン、アミノヘキシルトリメチルシラン、
(ジメチル(ヘキシル)シリル)メタンアミン、アミノヘプチルトリメチルシラン、
(ジメチル(ヘプチル)シリル)メタンアミン、1,1-ジメチルシリナン-3-アミン、4-トリメチルシリルアニリン、(4-トリメチルシリル)フェニル)メタンアミン、4-((トリメチルシリル)メチル)ベンズアミン、2-トリメチルシリル-5-アミノピリジン、(ジメチル(ピリジン-3-イル)シリル)メタンアミン、2-(ジメチル(ピリジン-3-イル)シリル)エタンアミン、(ジメチル(フェニル)シリル)-メタンアミン、((4-フルオロフェニル)ジメチルシリル)メタンアミン、((4-クロロフェニル)ジメチルシリル)メタンアミン、((4-メトキシフェニル)ジメチルシリル)メタンアミン、(ジメチル(フェニル)シリル)-エタンアミン、((4-フルオロフェニル)ジメチルシリル)エタンアミン、((4-クロロフェニル)ジメチルシリル)エタンアミン、((4-メトキシフェニル)ジメチルシリル)エタンアミンを含むがこれらに限定されない。
【0059】
本発明のさらに広い応用範囲は、以下に提供される詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、次に述べられる詳細な説明と実施例は、本発明の特定の実施態様を示唆するものでありながらも、当業者にとっては本発明の精神及び範囲内での種々の変更及び修正がこの詳細な説明から明白になるだけがゆえに、説明として挙げられているということは理解されるべきである。
【0060】
本発明の上述及び他の目的、特徴、及び利点は、単なる説明として挙げられる以下の詳細な説明からよりよく理解されるだろうが、それらの説明は本発明を制限するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0061】
化合物の調製方法
シリルアミンを調製する一般的な手順
本発明の置換シリルアミンの調製には多くの方法が知られており,また使用可能である。得られた最終生成物もしくは中間体のどのような混合物であっても、その構成物それぞれの物質的及び化学的相違により、例えばクロマトグラフィー、蒸留、分別晶出、あるいは塩生成によってなど、状況に応じて、適当に、既知の態様で、純粋な最終生成物もしくは中間体を分離することができる。
【0062】
以下の合成経路は化学構造式IIIの化合物を調製するための単なる例示的な方法である。
【0063】
その手順は、テトラクロロシラン(SiCl4)あるいはトリクロロクロルメチルシラン(Cl3SiCH2Cl)から得られたシリル誘導体、あるいはそれらから調製された修飾物を出発物質として使用することができる。これらのシリル誘導体は、本質的に、化学構造式IIで規定されたR4、R5、及びR6を用いた化学構造式IV及びVの化合物、あるいはR4、R5、及びR6の置換基の反応保護形態である。
【化3】

【0064】
化学構造式IV及びVのR4、R5、及びR6置換シラン調製方法の1つに、テトラクロロシラン及びトリクロロクロロメチルシランを適当なR4、R5、及びR6置換基の有機マグネシウムハロゲン化物誘導体を用いて連続的にアルキル化する方法がある。例えば、SiCl4がR4Mgハロゲン化物と反応して、R4SiCl3化合物を生成し、それがR5Mgハロゲン化物と反応してR4R5SiCl2化合物を生成し、またそれがR6Mgハロゲン化物と反応してR4、R5、及びR6SiCl化合物を生成する。類似して、R4Si(Cl2)CH2Cl、R4R5Si(Cl)CH2Cl及びR4R5R6SiCH2Cl化合物はCl3SiCH2Clを出発反応体として、これらの連続アルキル化の手順で調製される。
【0065】
nが1の場合、化学構造式IIIの化合物を調製するためには、適当なR4R5R6シリルメチル塩化物が、カリウムフタルイミドあるいはアジ化ナトリウム処理で、対応するフタルイミドあるいはアジ化物を得るための置換反応に供されうる。フタルイミドの望ましいアミンへの変換はヒドラジン水和物との反応によって、またアジ化物は化学還元を通してアミンへの変換を行うことができ、そして結果的に起こるそのように調製されたアミンの精製は、加水分解によってアミンに変換し得るそのN-Boc誘導体を介して達成されうる。
【0066】
前述の反応を実施するにおいて、フタルイミドの形成は置換反応のための標準的な反応条件、好ましくは不活性溶媒中での反応体の加熱、例えば無水ジメチルホルムアミドで70℃のような条件で難なく達成され得る。フタルイミドの対応するアミンへの変換は、好ましくはエタノールのような適切な溶媒中でのヒドラジン水和物との反応及びその後の好ましくはHClのような水性の酸剤での還流状態下での処理によって実施することができる。
【0067】
前述の反応を実施するにおいて、アジ化物の形成は、置換反応の標準的な反応条件、好ましくは反応体を不活性溶媒中で(例えば、無水ジメチルホルムアミド)40℃に熱することによって難なく達成することができる。アジ化物の対応するアミンへの変換は、(a)室温程度のテトラヒドロフラン(THF)中でトリフェニルホスフィン(PO3)処理、(b)水処理後(c)室温のTHF中で(BOC)Oとの反応によるN-t-ブトキシカルボニル誘導体の形成による望ましい生産物の精製という一連の処理によって、そのN-Boc誘導体を介して実施することができる。前記N-Boc誘導体は、室温でジエチルエーテル中HClガス(すなわち、ジエチルエーテル中3NHCl)との反応によってアミンHCl塩に変換される。
【0068】
nが2の場合、化学構造式IIIの化合物を調製するためには、適当なシリル塩化物から誘導されたエステルは、好ましくはリチウムアルミニウム水素化物で、対応するアルコールに還元されることができ、そして前記アルコールはミツノブ反応条件(すなわち、ジエチルアゾジカルボン酸塩、トリフェニルホスフィン及びフタルイミドでのアルコール処理)を用いて、対応するフタルイミドに変換され得る。結果として生じるフタルイミドは、ヒドラジン水和物と水性HClとの連続反応によって、対応するアミン塩酸塩に加水分解され得る。前記エステルは、標準的でよく知られている条件に従って、エチルアセテートの金属誘導体(好ましくは、亜鉛もしくはナトリウム)を用い、適当なシリル塩化物のアルキル化によって調製され得る。別法として、化合物は、代わりに、ホルムアルデヒドで(好ましくは、パラホルムアルデヒドを使用し)処理された場合対応するアルコールを生するような、適当なグリニャール試薬を形成するために、ジエチルエーテル中でマグネシウムと反応させてもよい。
【0069】
保護基
複合分子の合成中にはしばしば、分子のある官能基が、ある意図された反応で、同じ分子内のどこか他の部分にある第二の官能基と干渉することがある。典型的には、より反応性の高い官能基を一時的に遮蔽するかあるいは「保護する」ことによって望ましい反応を促進することで、この問題を回避することができる。保護は本質的に3段階を要する。1)保護基を有する試薬によって、官能基に保護基を導入して保護する。2)望まれている反応を遂行する。3)保護基を取り除く。
【0070】
保護及び脱保護は、合成化学生成物、純度の高い化学中間体、もしくは重要な産業用あるいは製薬用の有機物質の生成にかかる長時間の合成連鎖反応においては避けられない必要条件である。よって、合成過程に導入可能な多くの保護基及び試薬が開発されており、今日でもなお開発され続けている。しかしながら、いずれの分子も保護基として役に立つというわけではない。むしろ選択された合成を遂行するに有用であるためには、保護基は多くの条件を満たさなくてはならない。
【0071】
第一に、保護基は選択的に反応し、保護する前提の官能基にたやすく結合する必要がある。また、保護される化合物には高い収率がなくてはならない。さらに、保護基はそれが保護する基に対して攻撃的である特定の試薬に対して耐性がなくてはならず、かつ分子内の他の官能基を損傷してはならない。言い換えると、保護される合成物は合成連鎖反応中の複数の段階を通して、安定した状態を保持する必要があるのである。最後に、保護基は、再生成した官能基と不都合に反応しない条件の下、たやすく除去される必要がある。
【0072】
保護基は種々の官能部分のために存在し、脱保護の最中に固有の化学分離様式を持つ。複数の別々の保護が同時に起っている分子中では、さらされた官能性の特定の除去及び修飾に対して注意深い戦略が存在する。よって、精巧に保護されると、高機能の鋳型が全体の合成中間体として役に立ち得るのである。
【0073】
現在までのところ、著しく多様な保護試薬が報告されており、その試薬の調製は、多様な条件下での保護及び脱保護戦略同様、文献としてまとめられている。加えて、正しく認識されるべきなのは、より精巧な合成というのは、ほんの数種の保護基でしか達成し得ないということである。むしろ、そのような精巧な合成は、典型的に多数の互いに相補性の保護基の使用によってしか成功できないのである。よって、現存する保護基を補完する新規な保護基を合成することは長足の進歩と言えるのである。
【0074】
保護基の例及びそれに対応する試薬は、Green et al.の”Protective Groups in Organic Chemistry”, (Willey, 2. sup.nd ed. 1991)及びHarrison et al.の”Compendium of Synthetic Organic Methods”, Vols. 1-8 (John Wiley and Sons, 1971-1996)で見出すことができる。例えば、いくつかを挙げると、保護基は水酸基、アミノ基、カルボニル基、及びカルボキシル基とチオールの保護のために開発されてきた。
【0075】
ある方法では、化学構造式Iの化合物の調製で用いられる最終段階は、そこから遊離アミノ/遊離チオール及び/あるいは製薬上許容可能な塩を生成するために、N-保護基及びS-保護基の除去を含む。また、他の同様に機能的な保護基も知られており、それらは使用されているかもしれないし、また企図されている。
【0076】
カルボン酸のアミド化の一般的な手順
第二級アミン及びチオールの保護に引き続き、カルボン酸スルフヒドリル化合物は対応するアミドに変換される。この変換を達成するためのいくつかの方法が知られており、使用可能である。例えばカルボン酸スルフヒドリル化合物のジクロメタン溶液を、塩を加えた氷槽中で-5℃に冷却しておく。その冷却溶液にはトリエチルアミンが加えられ、続いてエチルクロロホルム酸塩を加える。エチルクロロホルム酸塩に加えて、チオニル塩化物、リン塩化物及び蓚酸塩化物を含む種々の他の化合物が使用できる。反応混合物を15分間攪拌し、化学構造式IIIの適当なシリルアミン誘導体が滴加され、-5℃で25分以上反応させた後、さらに室温で一晩反応させておく。そして、その反応混合物は5%の塩酸、重炭酸ナトリウム溶液、そして最後に水で洗浄される。そして前記ジクロロメタン溶液をマグネシウム硫酸塩上で乾燥し、無水状態まで蒸発させる。最後に2M HClメタノール溶液中のスルフヒドリル化合物アミドを含む溶液は、室温で24時間攪拌される。そして、前記ジクロロメタン溶液は蒸発させられる。すると、シリルアミド誘導生成物を適当な溶媒から再結晶化できる。
【0077】
本発明の化合物はキラルであってもよい。それらは単体の鏡像体あるいはジアステレオマー、あるいはラセミ体の形態であってよい。そのキラル環原子の空間的配置は、母体類似体の空間的配置と同じであることが好ましい。また、化合物全体の空間的配置が母体分子の空間的配置に一致することがより好ましい。
【0078】
本発明の化合物はラセミ体の形態で調製されるか、あるいは特定の合成または分解により個々の鏡像体の形態で調製される。その化合物は、例えば、光学活性酸での塩生成の後、分別晶出及び遊離塩基の再生成によるジアステレオマーの対形成のような標準的な手法により、鏡像体に分解されてもよい。またその代わりに、新規な化合物の鏡像体は、例えばキラムカラムを使用するような、HPLCのような装置の使用により、色層分析上分離していてもよい。
【0079】
化合物は水和物のような溶媒和物の形態で存在してもよく、そのような化合物も本発明の範囲内にある。
【0080】
本発明の化合物は、例えば無機あるいは有機酸の加成塩のような、製薬上許容可能な塩でもよい。そのような無機酸加成塩は、例えば臭化水素酸、塩化水素酸、硝酸、燐酸及び硫酸の塩を含む。有機酸加成塩は、例えば酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、2-(4-クロロフェノキシ)-2、メチルプロピオン酸、1,2-エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、エチレンジアミノ四酢酸(EDTA)、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、N-グリコールラルサニリン酸、4-ヘキシルレゾルシノール、馬尿酸、2-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒロドキシ-2-ナフトエ酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸ビオニック酸、n-ドデシル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、メチル硫酸、粘液酸、2-ナフタレンスルホン酸、パモ酸、パントテン酸、ホスファニル酸((4-アミノフェニル)ホスホン酸)、ピクリン酸、サリチル酸、ステアリン酸、琥珀酸、タンニン酸、酒石酸、テレフタル酸、p-トルエンスルホン酸、10-ウンデセン酸等の塩を含む。
【0081】
そのような塩が、製薬上許容可能であれば、治療に使用してもよいということが認められるだろう。そのような塩は化合物を通常の方法で適当な酸と反応させて調製してもよい。
【0082】
本発明の化合物は当業者に知られたいずれの適当な方法で調製されてもよい。得られた最終生成物あるいは中間体の混合物は、このような事情では、適当もしくは可能であれば、クロマトグラフィー、蒸留、分別晶出、あるいは塩生成といった、知られている方法で、構成物の物理化学的相異に基づいて、純粋な最終生成物あるいは中間体に分離され得る。
【0083】
化学構造式Iの化合物の調製は、主としてn及びR1、R2、R3、R4、R5及びR6部分の特定の定義づけに依存した、種々の方法に影響を及ぼされる。当業者ならば、化学反応及び方法が当業者で知られた化学反応及び方法と類似していること、及びある特定の化合物を得るためのある特定の経路の選択は知られた原則によって決定され、その化合物は開示された方法と類似した方法を用いて得られ得ることを認めることができるだろう。
【0084】
そのような方法を用いて生成される、好ましいケイ素誘導体は以下を含む。
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-((トリメチルシリル)メチル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(3-(トリメチルシリル)プロピル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ジメチル(プロピル)シリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(4-(トリメチルシリル)ブチル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ブチルジメチルシリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(5-(トリメチルシリル)ペンチル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ジメチル(ペンチル)シリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(6-(トリメチルシリル)ヘキシル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ヘキシルジメチルシリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(7-(トリメチルシリル)ヘプチル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ヘプチルジメチルシリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(2R)-2-アセトアミド-N-(1,1-ジメチルシリナン-3-イル)-3-メルカプトプロパンアミド
((2R)-2-acetamido-N-(1,1-dimethylsilinan-3-yl)-3-mercaptopropanamide)、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(4-(トリメチルシリル)フェニル)プロパンアミド、
(R)-N-(4-(トリメチルシリル)ベンジル)-2-アセトアミド-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(4-((トリメチルシリル)メチル)フェニル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(6-(トリメチルシリル)ピリジン-3-イル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ジメチル(ピリジン-3-イル)シリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-(2-(ジメチル(ピリジン-3-イル)シリル)エチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ジメチル(フェニル)シリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-(((4-フルオロフェニル)ジメチルシリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-(((4-クロロフェニル)ジメチルシリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(((4-メトキシフェニル)ジメチルシリル)メチル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-(2-(ジメチル(フェニル)シリル)エチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-(2-((4-フルオロフェニル)ジメチルシリル)エチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-(2-((4-クロロフェニル)ジメチルシリル)エチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(2-((4-メトキシフェニル)ジメチルシリル)エチル)プロパンアミド
及び
【化4a】

【化4b】

【0085】
治療は、哺乳類、特にヒト、並びに経済的及び社会的に重要な、あるいは絶滅の危機の状態にある哺乳類に行うことが企図されている。例としては家畜あるいは特にヒトの消費のための他の動物、あるいはイヌ、ネコ、もしくはウマのような飼養化された動物が挙げられる。また、鳥類及び七面鳥、ひな鶏、成鶏などのような飼鳥類の治療も企図されている。
【0086】
治療上有効な量の決定は当業者の能力であれば、特にここに提供される詳細な開示に鑑みれば、容易である。
【0087】
ここに説明されている化合物の毒性及び治療上の効力は細胞培養あるいは実験動物における標準的な製薬手順、例えば、ある対象化合物に対してIC50及びLD50(被験動物の50%を死亡させる致死用量)を決定すること、によって決定されることができる。これらの細胞培養分析及び動物研究から得られたデータはヒトでの使用に対する用量の範囲を製剤化する際に使用されることができる。その用量は採用された投薬形態及び使用された投与経路によって異なるかもしれない。厳密な処方、投与経路及び投与量は、個々の医師が患者の状態を観察し、選択することができる。
【0088】
治療しようとしている状態の深刻度及び敏感度によって、数日から数週間継続する治療クールで、あるいは治療が有効になるかまたは疾患状態の縮小が達成されるまでの間、投与は遅延放出組成物の単一投与でもよい。
【0089】
投与されるべき組成物の量は、もちろん、治療されている対象、苦痛の深刻度、投与方法、処方する医師の判断、等に依存するだろう。
【0090】
本発明は酸化ストレスの形成に関連する多数の疾患、疾病あるいは状態のいずれの1つを治療するために使用が可能である。
【0091】
ここで使われているように、「治療」という語は、疾患、疾病あるいは状態の進行を実質的に阻害、減速あるいは後退させること、疾患、疾病あるいは状態の臨床上の症候を実質的に改善すること、あるいは疾患、疾病あるいは状態の臨床上の発生を実質的に防止することを含む。
【0092】
本発明の化合物は、リウマチ関節炎、白内障、ダウン症候群、嚢胞性繊維症、糖尿病、急性呼吸窮迫症候群、喘息、手術後神経機能不全、筋萎縮性側索硬化症、アテローム性動脈硬化心臓血管疾患、高血圧症、手術後再狭窄、病原性血管平滑筋細胞増殖、病原性血管内マクロファージ癒着、病原性血小板活性化、病原性脂質過酸化、心筋炎、発作、多臓器機能不全症候群、炎症過程に起因する合併症、AIDS、癌、老化、細菌性感染症、敗血症、AIDS、C型肝炎、インフルエンザ及び神経性ウイルス性疾患のようなウイルス性疾患、酸化剤の形成及び/または過剰生産に関連づけられる以前に示したすべての疾病のような非中枢神経の疾病の治療に使用されることができる。
【0093】
本発明の化合物は、神経組織変性疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病、クロイツフェルト−ヤコブ病、大脳虚血症、多発性硬化症、脳幹神経節の変成疾患、運動ニューロン疾患、スクレーピー、海綿状脳症、神経ウイルス性疾患、運動ニューロン疾患、手術後神経機能不全及び化学脳を含む記憶喪失あるいは記憶障害、酸化剤の形成及び/または過剰生産に関連づけられる以前に示したすべての疾病のような酸化ストレスに特徴付けられる中枢神経の疾病の治療にも使用されることができる。
【0094】
本発明の付加的な目的、利点、及び新規な特徴は、次の実施例を考察することで当業者には明白になるだろうが、それらの実施例は発明を制限するためのものではない。加えて、上文に詳細に叙述された、および特許範囲の請求部分で請求された本発明の様々な実施態様及び側面は以下の実施例にある実験に基づく証拠となっている。
【実施例】
【0095】
次に、上記の説明と合わせて発明を制限的でない形で例証する以下の例が参照される。
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(3-(トリメチルシリル)プロピル)プロパンアミド
【0096】
化学式:C11H24N2O2SSi:(分子量276.47):C, 47.79; H, 8.75; N, 10.13; O, 11.57; S, 11.60; Si, 10.16. (R)-4-カルボキシ-3-アセチル-2,2-ジメチルチアゾリジン。
N-アセチル-R-システイン(1.0 g, 0.006 mol)とモンモリロナイト K10(0.2 g, 20 重量%)の無水アセトン/2,2-ジメトキシプロパン(1:3)混合物40 ml中への懸濁液を室温で3時間攪拌した。反応混合物はその後濾過され、溶媒を脱水すると(R)-4-カルボキシ-3-アセチル-2,2-ジメチルチアゾリジン(1.03 g, 収率84 %)を白色固体(純度90 % 1H NMR スペクトル検査による)として生じ、その調製物はそれ以上の精製を行わずに次の工程に使用された。
【0097】
(R)-4-(トリメチルシリル)プロピル)アミド-3-アセチル-2,2-ジメチルチアゾリジン
(R)-4-カルボキシ-3-アセチル-2,2-ジメチルチアゾリジン(1.03 g, 0.005 mol)とトリエチルアミン(0.7 ml, 0.005 mol)をジクロロメタン20 mlに入れた溶液を-5℃に冷却し、エチルクロロホルム(0.5 ml, 0.005 mol)をジクロロメタン5 mlに入れた溶液が滴加された。-5℃で15分間攪拌した後、その反応混合物にトリメチルシリルプロピルアミン(1.2 ml, 0.005 mol)がゆっくりと加えられた。攪拌は-5℃で25分間、その後室温で15時間継続された。反応混合物はその後、ジクロロメタン30 mlで希釈され、5%の塩酸30 ml、その後ナトリウム重炭酸塩溶液で、最後に水で入念に洗浄された。そのジクロロメタン溶液をその後マグネシウム硫酸塩を通して乾燥させると、1H NMR スペクトル検査で85%の純度の(R)-4-(トリメチルシリル)プロピル)アミド-3-アセチル-2,2-ジメチルチアゾリジン(1.2 g, 収率59%)が薄黄色の油状で生じ、その調製物はそれ以上の精製を行わずに次の工程に使用された。
【0098】
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(3-(トリメチルシリル)プロピル)プロパンアミド
(R)-4-(トリメチルシリル)プロピル)アミド-3-アセチル-2,2-ジメチルチアゾリジン(0.8 g, 0.002 mol)を2M HClメタノール溶液30 mlに入れた溶液を室温で24時間攪拌した。そのジクロロメタン溶液をその後脱水すると、(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(3-(トリメチルシリル)プロピル)プロパンアミド(0.5 g, 収率67%)が薄黄色の油状(純度85 % 1H NMR スペクトル検査による)で生じた。ジクロロメタン/ヘキサン混合物から-20℃で再結晶させると白色の固体で純粋生成物(0.4%, 収率57%)を生じた。
【0099】
この方法の使用により、(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-((トリメチルシリル)メチル)プロパンアミド(例2)及び(R)-2-アセトアミド-N-((ジメチル(フェニル)シリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド(例3)を合成することに成功した。これらの例示化合物はN-アセチル-L-システインと比較したin vitro抗癌活性について評価された。
【0100】
CellTiter-Blue(登録商標)試薬法:試験化合物を用いて72ないし96時間定温放置後、ヒトのMD-MBA-231乳癌細胞がCellTiter-Blue(登録商標)試薬レサズリンによって暫時に洗浄され、定着され、着色された。レサズリンは細胞の生存力の指標で、細胞の代謝能力を測る。生存力のある細胞はレサズリンを高蛍光性のレゾルフィンに還元する能力を保有している。生存力のない細胞は急速に代謝能力を失い、その指標色素を還元せず、よって蛍光シグナルを生成しない。この試験は試験物質によって生じる細胞傷害性を測るものである。
【0101】
IC50測定:データはバックグラウンド吸光度に対して補正された蛍光から計算された未治療対照(ビヒクル)の生存率として表されている。生存している細胞片は検査薬の蛍光の平均値を未治療対照の蛍光の平均値で割って決定された。検査薬及び対照の抑制濃度の値は、Prism 4 ソフトウェア(GraphPad Software, Inc.)を使用して、非線形の回帰分析を用いて曲線にデータを当てはめることで見積もられた。IC50の値は場合によっては推断の基礎とすることができず、これらについては*で示した。本発明の化合物が単一治療として試験され、結果は表1に示されている。
【表1】

【0102】
本発明の化合物が阻害濃度30%及び10%(IC30/IC10)のアドリアマイシン(ドキソルビシン)との組み合わせで試験され、結果は表2に示されている。
【表2】

【0103】
本発明の化合物が例証の化合物により6時間前処理された後、阻害濃度30%及び10%(IC30/IC10)アドリアマイシン(ドキソルビシン)との組み合わせで試験され、結果は表3に示されている。
【表3】

【0104】
前述の説明は、特許法の必要条件に従って、実例と説明という目的で、本発明の特定の実施態様に向けられたものである。しかしながら、請求項に述べられた組成物、溶液、組成物の適用方法には多くの修正、変更および異体が、特許請求の範囲および精神から逸脱することなく可能であるということが当業者には明らかであるだろう。請求項がそのようなすべての修正及び変更を包含するものであると解釈されることが企図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学構造式Iの化合物、並びにその水和物及び溶媒和物:
【化1】

[式中、nは整数であり、R1、R2、R3は同一であっても異なっていてもよく、それらがメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、-CH2CH(CH2CH3)2、2-メチル-n-ブチル基、6-フルオロ-n-ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、アリル基、イソブト-2-エニル基、3-メチルペンチル基、-CH2-シクロプロピル、-CH2-シクロヘキシル、-CH2CH2-シクロプロピル、-CH2CH2-シクロヘキシル、-CH2-インドール-3-イル、p-(フェニル)フェニル基、o-フルオロフェニル基、m-フルオロフェニル基、p-フルオロフェニル基、m-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、フェネチル基、ベンジル基、m-ヒドロキシベンジル基、p-ヒドロキシベンジル基、p-ニトロベンジル基、m-トリフルオロメチルフェニル基、p-(CH3)2NCH2CH2CH2O-ベンジル基、p-(CH3)3COC(O)CH2O-ベンジル基、p-(HOOCCH2O)-ベンジル基、2-アミノピリド-6-イル、p-(N-モルホリノ-CH2CH2O)-ベンジル基、-CH2CH2C(O)NH2、-CH2-イミダゾール-4-イル、-CH2-(3-テトラヒドロフラニル)、-CH2-チオフェン-2-イル、-CH2(1-メチル)シクロプロピル、-CH2-チオフェン-3-イル、チオフェン-3-イル、チオフェン-2-イル、-CH2-C(O)O-t-ブチル、-CH2--C(CH3)3、-CH2CH(CH2CH3)2、-2-メチルシクロペンチル、-シクロヘキサ-2-エニル、-CH[CH(CH3)2]COOCH3、-CH2CH2N(CH3)2、-CH2C(CH3)=CH2、-CH2CH=CHCH3 (シス形及びトランス形)、-CH2OH、-CH(OH)CH3、-CH(O-t-ブチル)CH3、-CH2OCH3、-(CH2)4NH-Boc、-(CH2)4NH2、-CH2-ピリジル(例えば、2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジル)、ピリジル基(2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジル)、-CH2-ナフチル(例えば、1-ナフチル及び2-ナフチル)、-CH2-(N-モルホリノ)、p-(N-モルホリノ-CH2CH2O)-ベンジル基、ベンゾ[b]チオフェン-2-イル、5-クロロベンゾ[b]チオフェン-2-イル、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-2-イル、ベンゾ[b]チオフェン-3-イル、5-クロロベンゾ[b]チオフェン-3-イル、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル、6-メトキシナフサ-2-イル、-CH2CH2SCH3、チエン-2-イル、チエン-3-イルからなる化学基から選択されることができる]。
【請求項2】
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-((トリメチルシリル)メチル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(3-(トリメチルシリル)プロピル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ジメチル(プロピル)シリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(4-(トリメチルシリル)ブチル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ブチルジメチルシリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(5-(トリメチルシリル)ペンチル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ジメチル(ペンチル)シリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(6-(トリメチルシリル)ヘキシル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ヘキシルジメチルシリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(7-(トリメチルシリル)ヘプチル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ヘプチルジメチルシリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(2R)-2-アセトアミド-N-(1,1-ジメチルシリナン-3-イル)-3-メルカプトプロパンアミド((2R)-2-acetamido-N-(1,1-dimethylsilinan-3-yl)-3-mercaptopropanamide)、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(4-(トリメチルシリル)フェニル)プロパンアミド、
(R)-N-(4-(トリメチルシリル)ベンジル)-2-アセトアミド-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(4-((トリメチルシリル)メチル)フェニル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(6-(トリメチルシリル)ピリジン-3-イル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ジメチル(ピリジン-3-イル)シリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-(2-(ジメチル(ピリジン-3-イル)シリル)エチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-((ジメチル(フェニル)シリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-(((4-フルオロフェニル)ジメチルシリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-(((4-クロロフェニル)ジメチルシリル)メチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(((4-メトキシフェニル)ジメチルシリル)メチル)プロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-(2-(ジメチル(フェニル)シリル)エチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-(2-((4-フルオロフェニル)ジメチルシリル)エチル)-3-メルカプトプロパンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-(2-((4-クロロフェニル)ジメチルシリル)エチル)-3-メルカプトプロパンアミド
及び (R)-2-アセトアミド-3-メルカプト-N-(2-((4-メトキシフェニル)ジメチルシリル)エチル)プロパンアミド
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
治療上有効な量の化学構造式Iの1つ以上の化合物、並びにその水和物及び溶媒和物を活性剤として、及び不活性キャリアを含む製薬組成物:
【化2】

[式中、nは整数であり、R1、R2、R3は同一であっても異なっていてもよく、それらがメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、-CH2CH(CH2CH3)2、2-メチル-n-ブチル基、6-フルオロ-n-ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、アリル基、イソブト-2-エニル基、3-メチルペンチル基、-CH2-シクロプロピル、-CH2-シクロヘキシル、-CH2CH2-シクロプロピル、-CH2CH2-シクロヘキシル、-CH2-インドール-3-イル、p-(フェニル)フェニル基、o-フルオロフェニル基、m-フルオロフェニル基、p-フルオロフェニル基、m-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、フェネチル基、ベンジル基、m-ヒドロキシベンジル基、p-ヒドロキシベンジル基、p-ニトロベンジル基、m-トリフルオロメチルフェニル基、p-(CH3)2NCH2CH2CH2O-ベンジル基、p-(CH3)3COC(O)CH2O-ベンジル基、p-(HOOCCH2O)-ベンジル基、2-アミノピリド-6-イル、p-(N-モルホリノ-CH2CH2O)-ベンジル基、-CH2CH2C(O)NH2、-CH2-イミダゾール-4-イル、-CH2-(3-テトラヒドロフラニル)、-CH2-チオフェン-2-イル、-CH2(1-メチル)シクロプロピル、-CH2-チオフェン-3-イル、チオフェン-3-イル、チオフェン-2-イル、-CH2-C(O)O-t-ブチル、-CH2-C(CH3)3、-CH2CH(CH2CH3)2、-2-メチルシクロペンチル、-シクロヘキサ-2-エニル、-CH[CH(CH3)2]COOCH3、-CH2CH2N(CH3)2、-CH2C(CH3)=CH2、-CH2CH=CHCH3 (シス形及びトランス形)、-CH2OH、-CH(OH)CH3、-CH(O-t-ブチル)CH3、-CH2OCH3、-(CH2)4NH-Boc、-(CH2)4NH2、-CH2-ピリジル(例えば、2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジル)、ピリジル基(2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジル)、-CH2-ナフチル(例えば、1-ナフチル及び2-ナフチル)、-CH2-(N-モルホリノ)、p-(N-モルホリノ-CH2CH2O)-ベンジル基、ベンゾ[b]チオフェン-2-イル、5-クロロベンゾ[b]チオフェン-2-イル、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-2-イル、ベンゾ[b]チオフェン-3-イル、5-クロロベンゾ[b]チオフェン-3-イル、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル、6-メトキシナフサ-2-イル、-CH2CH2SCH3、チエン-2-イル、チエン-3-イル、からなる群から選択された基を含むことができる]。
【請求項4】
性質が異なる別の活性剤を更に含む、請求項3に記載の製薬組成物。
【請求項5】
化合物がジアステレオマー、ラセミ体、単体の鏡像体である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
化合物が水和物形態、溶媒和物形態、多型形態、結晶形態、あるいは無定形態である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
nが1-6である、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
(a) 構造式IIの化合物を反応させて、構造式IIaの化合物を生成する工程
【化3】

(b) 構造式IIaの化合物を塩化酸素(構造式IIb)に転化させる工程
【化4】

(c) 構造式IIbの化合物を構造式IIIの化合物と反応させる工程
【化5】

(d) (c)の生産物を酸と反応させ、シリルアミド誘導体を精製する
からなる、化学構造式Iの化合物の調製方法:
[式中、nは整数であり、R1、R2、R3は同一であっても異なっていてもよく、それらがメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、-CH2CH(CH2CH3)2、2-メチル-n-ブチル基、6-フルオロ-n-ヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、アリル基、イソブト-2-エニル基、3-メチルペンチル基、-CH2-シクロプロピル、-CH2-シクロヘキシル、-CH2CH2-シクロプロピル、-CH2CH2-シクロヘキシル、-CH2-インドール-3-イル、p-(フェニル)フェニル基、o-フルオロフェニル基、m-フルオロフェニル基、p-フルオロフェニル基、m-メトキシフェニル基、p-メトキシフェニル基、フェネチル基、ベンジル基、m-ヒドロキシベンジル基、p-ヒドロキシベンジル基、p-ニトロベンジル基、m-トリフルオロメチルフェニル基、p-(CH3)2NCH2CH2CH2O-ベンジル基、p-(CH3)3COC(O)CH2O-ベンジル基、p-(HOOCCH2O)-ベンジル基、2-アミノピリド-6-イル、p-(N-モルホリノ-CH2CH2O)-ベンジル基、-CH2CH2C(O)NH2、-CH2-イミダゾール-4-イル、-CH2-(3-テトラヒドロフラニル)、-CH2-チオフェン-2-イル、-CH2(1-メチル)シクロプロピル、-CH2-チオフェン-3-イル、チオフェン-3-イル、チオフェン-2-イル、-CH2-C(O)O-t-ブチル、-CH2-C(CH3)3、-CH2CH(CH2CH3)2、-2-メチルシクロペンチル、-シクロヘキサ-2-エニル、-CH[CH(CH3)2]COOCH3、-CH2CH2N(CH3)2、-CH2C(CH3)=CH2、-CH2CH=CHCH3 (シス形及びトランス形)、-CH2OH、-CH(OH)CH3、-CH(O-t-ブチル)CH3、-CH2OCH3、-(CH2)4NH-Boc、-(CH2)4NH2、-CH2-ピリジル(例えば、2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジル)、ピリジル基(2-ピリジル、3-ピリジル及び4-ピリジル)、-CH2-ナフチル(例えば、1-ナフチル及び2-ナフチル)、-CH2-(N-モルホリノ)、p-(N-モルホリノ-CH2CH2O)-ベンジル基、ベンゾ[b]チオフェン-2-イル、5-クロロベンゾ[b]チオフェン-2-イル、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[b]チオフェン-2-イル、ベンゾ[b]チオフェン-3-イル、5-クロロベンゾ[b]チオフェン-3-イル、ベンゾ[b]チオフェン-5-イル、6-メトキシナフサ-2-イル、-CH2CH2SCH3、チエン-2-イル、チエン-3-イルを含む群から選択された基を含むことができる]。
【請求項9】
治療上有効な量の構造式Iの化合物、あるいはそれの製薬上許容可能な塩、溶媒和物あるいは多型体の投与を含む、酸化ストレスの形成に関連した状態あるいは疾病を持つ患者の治療方法。
【請求項10】
状態あるいは疾病が新生血管形成である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
状態あるいは疾病が癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
酸化ストレスの形成に関連する状態あるいは疾病が中枢神経の疾患である、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
上述の中枢神経の疾患が、神経組織変性疾患、パーキンソン病、アルツハイマー病、クロイツフェルト−ヤコブ病、大脳虚血症、多発性硬化症、脳幹神経節の変成疾患、運動ニューロン疾患、スクレーピー、海綿状脳症、神経ウイルス性疾患、運動ニューロン疾患、手術後神経機能不全、記憶喪失、化学脳および記憶障害を含む群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
酸化ストレスの形成に関連する状態が非中枢神経の疾患である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
上記の非中枢神経の疾患が、リウマチ関節炎、白内障、ダウン症候群、嚢胞性繊維症、糖尿病、急性呼吸窮迫症候群、喘息、手術後神経機能不全、筋萎縮性側索硬化症、アテローム性動脈硬化心臓血管疾患、高血圧症、手術後再狭窄、病原性血管平滑筋細胞増殖、病原性血管内マクロファージ癒着、病原性血小板活性化、病原性脂質過酸化、心筋炎、発作、多臓器機能不全症候群、炎症過程に起因する合併症、AIDS、老化、細菌性感染症、敗血症、AIDS、ウイルス性疾患、AIDS、C型肝炎、インフルエンザ及び神経性ウイルス性疾患を含む群から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
患者が哺乳類である、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
患者がヒトである、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
製薬上許容可能なキャリアを持つ製薬組成物内に化合物が取り込まれる、請求項9に記載の方法。
【請求項19】
上述の処理段階が鼻腔内、系皮的、皮内、経口、口内、非経口、局所、直腸あるいは吸入投与による、請求項9に記載の方法。
【請求項20】
組成物が更に、懸濁薬、安定薬及び分散薬を含む群から選択される処方剤を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項21】
治療上有効な量の構造式Iの化合物あるいはそれの製薬上許容可能な塩、溶媒和物あるいは多型体が、抗生物質薬、アルキル化薬、代謝拮抗物質薬、ホルモン薬、免疫薬、インターフェロン薬を含む群から選択された抗腫瘍性薬に先立ってあるいは同時に投与され、結合的な治療量と本発明の化合物の量を合わせた量が新生組織形成治療に有効な量であり、またその新生組織形成がそのような治療に敏感である、請求項9に記載の方法。
【請求項22】
治療上有効な量の構造式Iの化合物あるいはそれの製薬上許容可能な塩、溶媒和物あるいは多型体が化学療法薬治療による毒性の防止あるいは治療のために投与される、請求項9に記載の方法。
【請求項23】
治療上有効な量の構造式Iの化合物あるいはそれの製薬上許容可能な塩、溶媒和物あるいは多型体が、イオン化放射によって投与され、放射量と構造式Iの化合物の量を合わせた量が新生組織形成治療に有効な量でそのためその新生組織形成がその治療に対し敏感であるとき、そのような治療を必要とする患者内の新生組織形成の治療方法。
【請求項24】
治療上有効な量の構造式Iの化合物あるいはそれの製薬上許容可能な塩、溶媒和物あるいは多型体が、放射(放射線療法)、特に全脳放射による毒性の防止あるいは治療のために投与される、請求項23に記載の方法。

【公表番号】特表2009−525948(P2009−525948A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547754(P2008−547754)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/062418
【国際公開番号】WO2007/073560
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(508036123)シラメッド・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】