説明

高電圧用碍子設備および避雷器免震装置

【課題】 碍子が折損してしまうことを防止する高電圧用碍子設備を提供することを目的とする。
【解決手段】 架台5と、架台5上に鉛直方向に向けて立設された長尺状の碍子7とを備えた高電圧用碍子設備1において、架台5と碍子7の下端7bとの間には、免震装置10が設けられている。免震装置10は水平面内の振動を免震化する。これにより、碍子7の下端7bが折損することを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧用碍子設備および避雷器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、変電所には、高電圧用碍子設備や避雷器が設けられている。これら高電圧用碍子設備および避雷器は、架台上に、鉛直方向に向けて立設された長尺状の碍子を備えている。このような高電圧用碍子設備や避雷器は、例えば0.3G共振正弦3波に耐えうるように耐震設計されている。
【0003】
一方、特許文献1には、架台上に、鉛直方向に向けて立設された長尺上のブッシング(碍子)を備えた変圧器が示されている。そして、架台と基礎との間に免震装置を配置し、変圧器全体の免震化を図っている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−184949号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、架台と基礎との間に免震装置を配置して全体の免震化を図ったとしても、設計時以上の大きな地震波(例えば2003年5月26日に発生した三陸南地震程度の規模の地震波)が入力された場合、たとえ装置全体を免震化したとしても、碍子が長尺とされているためにその変位が過大となり、碍子の下端が折損してしまう。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、碍子が折損してしまうことを防止する高電圧用碍子設備および避雷器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の高電圧用碍子設備は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明にかかる高電圧用碍子設備は、架台と、該架台上に鉛直方向に向けて立設された長尺状の碍子と、を備えた高電圧用碍子設備において、前記架台と前記碍子との間には、免震装置が設けられていることを特徴とする。
【0008】
地震波が入力されると、架台を介して碍子に振動が伝達される。碍子は長尺状とされているので、地震波による応答変位が大きくなり、碍子下端に大きな曲げモーメント荷重が加わる。本発明では、架台と碍子の間に免震装置を設けることにより、碍子への振動入力を低減させ、碍子下端の折損を防止する。
【0009】
さらに、本発明の高電圧用碍子設備は、前記碍子の上端には、接続金物を介して高電圧線が接続されており、前記接続金物は、前記碍子の上端と前記高電圧線との相対変位を許容することを特徴とする。
【0010】
碍子の上端と高電圧線との相対変位を許容する接続金物によって、高電圧線と碍子の上端とが接続されているので、免震装置により減衰された碍子の動きを妨げることがない。したがって、免震性能が阻害されることがない。
【0011】
また、本発明の避雷器は、架台と、該架台上に鉛直方向に向けて立設された長尺状の碍子と、を備えた避雷器において、前記架台と前記碍子との間には、免震装置が設けられていることを特徴とする。
【0012】
地震波が入力されると、架台を介して碍子に振動が伝達される。碍子は長尺状とされているので、地震波による応答変位が大きくなり、碍子下端に大きな曲げモーメント荷重が加わる。本発明では、架台と碍子の間に免震装置を設けることにより、碍子への振動入力を低減させ、碍子下端の折損を防止する。
【0013】
さらに、本発明の避雷器は、前記碍子の上端には、接続金物を介して高電圧線が接続されており、前記接続金物は、前記碍子の上端と前記高電圧線との相対変位を許容することを特徴とする。
【0014】
碍子の上端と高電圧線との相対変位を許容する接続金物によって、高電圧線と碍子の上端とが接続されているので、免震装置により減衰された碍子の動きを妨げることがない。したがって、免震性能が阻害されることがない。
【発明の効果】
【0015】
架台と碍子との間に免震装置を設けることにより、碍子への振動入力を低減させ、碍子下端の折損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる高電圧用碍子設備の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1に示されているように、特別高圧以上の高電圧線を支持する高電圧用碍子設備1は、変電所内に複数本(図において2本)設けられており、各高電圧用碍子設備1同士が高電圧線9によって接続されている。
高電圧用碍子設備1は、基礎3上に固定配置された架台5と、架台5上に鉛直方向に向けて立設された碍子7と、架台5と碍子7の下端7bとの間に設けられた免震装置10とを備えている。
【0017】
架台5は鉄骨を組んだ構成とされており、その高さは例えば1〜3m程度とされている。
碍子7は、磁器セラミックス製とされており、その高さは例えば3m程度、直径は例えば200mm程度とされている。碍子7の上端7aには、高電圧線9を接続する接続金物12が設けられている。接続金物12は、例えば高電圧線9を巻き取る巻取りローラ(図示せず)を備えており、碍子7の上端7aと高電圧線9との相対変位を許容する構成とされている。
【0018】
免震装置10は、基礎3側から入力され、架台5から伝達された地震波に対して作用する。
図2〜4には、免震装置10の詳細が示されている。
図2は免震装置10の正面図、図3は免震装置10の平面図、図4は免震装置10の右側面図を示している。
図2及び図4に示すように、免震装置10は、架台5に固定される下板15と、碍子7の下端7bに接続される上板19と、下板15及び上板19の間に設けられた中間板17とを備えている。
図3に示すように、上板19の上面でかつ中心部には接続部21が設けられており、この接続部21を介して碍子7の下端7bが固定される。
【0019】
図2〜4に示すように、上板19と中間板17との間および中間板17と下板15との間には、バネ20、ダンパ22およびLMガイド24が設けられている。
バネ20は、本実施形態において、中央部に2本、両側部に2本設けられている。
上板19と中間板17との間でかつ中央部に設けられた2本のバネ20は、その一端20aがブラケット17aを介して中間板17に固定されており(図2参照)、他端20bがブラケット19aを介して上板19に固定されている(図3参照)。両側部に設けられた2本のバネ20は、中央部に設けられたバネ20とは端部の固定位置が逆になっており、その一端20aがブラケット19aを介して上板19に固定されており(図2参照)、他端20bがブラケット17aを介して中間板17に固定されている(図4参照)。このように、上板19と中間板17との間に接続されたバネ20は、上板19と中間板17との間の振動周期の調整を行う。
中間板17と下板15との間に設けたバネ20は、上板19と中間板17との間に設けたバネ20と平面視した場合に直交するように、同様の固定方式によって4本設けられている。このように、中間板17と下板15との間に接続されたバネ20は、中間板17と下板15の間の振動周期の調整を行う。
【0020】
上板19と中間板17との間に設けられたダンパ22は、中央部に設けた2本のバネ20の間に、これらバネ20と平行に1本設けられている。ダンパ22もバネ20と同様に、一端が中間板17に固定され、他端が上板19に固定されている。このように、上板19と中間板17との間に接続されたダンパ22は、上板19と中間板17との間の振動の減衰を行う。
中間板17と下板15との間に設けたダンパ22は、上板19と中間板17との間に設けたダンパ22と平面視した場合に直交するように、同様の固定方式によって中央部に1本設けられている。このように、中間板17と下板15との間に接続されたダンパ22は、中間板17と下板15との間の振動の減衰を行う。
【0021】
上板19と中間板17との間に設けられたLMガイド24は、中央部に設けたバネ20と両側部に設けたバネ20との間に、これらバネ20と平行に2本設けられている。
LMガイド24は、レール24aとガイドブロック24bとから構成されており、図2から分かるように、レール24aが上板19の下面に固定されており、ガイドブロック24bが中間板17の上面に固定されている。レール24aとガイドブロック24bとは、図2から分かるように、係合されており、上下方向の引き抜き力に対しても離間せずに耐えうるようになっている。このように、上板19と中間板17との間に接続されたLMガイド24は、上板19と中間板17との間の動作を一方向に規定する。
中間板17と下板15との間に設けたLMガイド24は、上板19と中間板17との間に設けたLMガイド24と平面視した場合に直交するように、同様の固定方式によって2本設けられている。このように、中間板17と下板15との間に接続されたLMガイド24は、中間板17と下板15との間の変位を一方向に規定する。
【0022】
上記のように構成された免震装置10により、Y方向(図3参照)の振動が上板19と中間板17との間に設けられたバネ20、ダンパ22及びLMガイド24によって免震され、X方向の振動が中間板17と下板15との間に設けたバネ20、ダンパ22及びLMガイド24によって免震される。つまり、免震装置10により、水平面方向において免震機能が発揮される。
【0023】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
架台5と碍子7の間に免震装置10を設けることとしたので、碍子への振動入力を低減させ、碍子7の下端7bの折損を防止することができる。
碍子7の上端7aと高電圧線9との相対変位を許容する接続金物12によって、高電圧線9と碍子7の上端とを接続することとしたので、免震装置により減衰された碍子7の上端7aの動きを妨げることがない。したがって、免震性能を効果的に発揮することができる。
【0024】
なお、上記実施形態においては、高電圧用碍子設備を具体例として説明したが、架台および碍子を備えた同様の構成を有する避雷器に対しても本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の高電圧用碍子設備を示した正面図である。
【図2】本発明の高電圧用碍子設備に用いる免震装置を示した平面図である。
【図3】図2に示した免震装置の正面図である。
【図4】図2に示した免震装置の右側面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 高電圧用碍子設備
5 架台
7 碍子
9 高電圧線
10 免震装置
12 接続金物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台と、該架台上に鉛直方向に向けて立設された長尺状の碍子と、を備えた高電圧用碍子設備において、
前記架台と前記碍子との間には、免震装置が設けられていることを特徴とする高電圧用碍子設備。
【請求項2】
前記碍子の上端には、接続金物を介して高電圧線が接続されており、
前記接続金物は、前記碍子の上端と前記高電圧線との相対変位を許容することを特徴とする高電圧用碍子設備。
【請求項3】
架台と、該架台上に鉛直方向に向けて立設された長尺状の碍子と、を備えた避雷器において、
前記架台と前記碍子との間には、免震装置が設けられていることを特徴とする避雷器。
【請求項4】
前記碍子の上端には、接続金物を介して高電圧線が接続されており、
前記接続金物は、前記碍子の上端と前記高電圧線との相対変位を許容することを特徴とする高電圧用碍子設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−210074(P2006−210074A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−18849(P2005−18849)
【出願日】平成17年1月26日(2005.1.26)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】