説明

高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物及びポリマー碍子

【課題】屋外使用などにおいても長期に渡って絶縁性能を維持し、特に汚染の酷い地域での耐酸性に優れ、高寿命である高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】(A)有機過酸化物硬化型又は付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物:100質量部、
(B)含フッ素有機化合物:0.02〜20質量部、
(C)平均粒子径が20μm以下の水酸化アルミニウム:30〜400質量部
を含有してなることを特徴とする高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化により優れた高電圧電気絶縁体となるシリコーンゴムを与える高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物及びそれを用いてなるポリマー碍子に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線等に用いる碍子に使用される高電圧電気絶縁体は、一般に磁器又はガラス製である。しかし、これらの絶縁体は、耐衝撃性に欠け、破損し易く、かつ重いため、取り扱いに注意を要し、作業性にも難点がある上、更に、海岸沿いの地域や工業地帯のように汚染を受け易い環境下では、高電圧電気絶縁体の表面を微粒子や塩類、霧等が通ることにより、漏れ電流の発生や、フラッシュオーバーにつながるドライバンド放電等が起こるという問題があった。
【0003】
そこで、これらの磁器製又はガラス製の絶縁体の欠点を改良するために種々の解決法が提案されている。例えば、米国特許第3511698号公報(特許文献1)には、硬化性樹脂からなる部材と白金触媒含有オルガノポリシロキサンエラストマーとからなる耐候性の高電圧電気絶縁体が提案されている。また特開昭59−198604号公報(特許文献2)には、一液性の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を磁器製又はガラス製の電気絶縁体の外側表面に塗布することにより、湿気・大気汚染・紫外線等の野外におけるストレスの存在下においても前記電気絶縁体の有する高性能を維持させる技術が提案されている。
【0004】
更に、特開昭53−35982号公報(特許文献3)には、加熱硬化によりシリコーンゴムとなるオルガノポリシロキサンと水酸化アルミニウムとの混合物を100℃よりも高い温度で30分以上加熱して電気絶縁性が改良されたシリコーン組成物が得られること、また、特開平7−57574号公報(特許文献4)には、シリコーンゴムにメチルアルキルシロキサン油を混合することによって経時での接触角回復特性が向上し、閃絡防止に効果があることが、それぞれ提案されている。
【0005】
しかしながら、これらの従来技術では、いずれも使用されているシリコーンゴム材料の高電圧電気特性能が未だ十分満足できるものではなく、また、電気絶縁性能を向上させるためには、多量の水酸化アルミニウムを使用しなければならないが、水酸化アルムニウムは親水性が高く、高湿度環境下での電気特性を低下させてしまう。これを解決するために、特開平8−259820号公報(特許文献5)において、水酸化アルミニウムを表面処理すること、更に特開平11−152408号公報(特許文献6)において、表面のアルケニル基量を規定したものが開示されている。また、特開平11−12470号公報(特許文献7)において、付加硬化型シリコーンゴム組成物にオルガノポリシロキサンレジンを添加する方法が記載されている。
【0006】
しかしながら、これら組成においても、酸性工業汚染地区での使用、高電圧用途、あるいは汚染の酷い地域における使用においては、コロナが発生し、そのコロナによって酸が生成することにより、シリコーンゴムが劣化に到ることが少なからず発生する事態となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第3511698号公報
【特許文献2】特開昭59−198604号公報
【特許文献3】特開昭53−35982号公報
【特許文献4】特開平7−57574号公報
【特許文献5】特開平8−259820号公報
【特許文献6】特開平11−152408号公報
【特許文献7】特開平11−12470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、屋外用途においても長期に渡り性能を維持し、特に汚染の酷い地域においても耐酸性に優れ、長寿命である高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物及びそれを用いてなるポリマー碍子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、(A)有機過酸化物硬化型又は付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物、(B)含フッ素有機化合物、及び(C)平均粒子径が20μm以下の水酸化アルミニウムの特定量を含有してなるシリコーンゴム組成物を高電圧電気絶縁体として用いた場合に、耐酸性に優れ、長時間の高電圧用途や、汚染の酷い地域においても使用可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物及びポリマー碍子を提供する。
請求項1:
(A)有機過酸化物硬化型又は付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物:
100質量部、
(B)含フッ素有機化合物 0.02〜20質量部、
(C)平均粒子径が20μm以下の水酸化アルミニウム: 30〜400質量部
を含有してなることを特徴とする高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
請求項2:
(B)成分の含フッ素有機化合物が、1種又は2種以上の含フッ素モノマーの(共)重合体を含んでなる含フッ素樹脂である請求項1記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
請求項3:
(B)成分の含フッ素有機化合物が、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレンオキシド、ヘキサフルオロプロペンオキシド、パーフルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドから選ばれる1種又は2種以上の含フッ素モノマーの単独重合体又は共重合体、該含フッ素モノマーの1種又は2種以上とエチレンとの共重合体、該含フッ素モノマーの1種又は2種以上とクロロトリフルオロエチレンとの共重合体から選ばれる少なくとも1種の含フッ素樹脂であることを特徴とする請求項2記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
請求項4:
(A)成分が、
(イ)下記平均組成式(I)
aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基であるが、Rの0.001〜10モル%はアルケニル基であり、かつ90モル%以上はメチル基である。aは1.9〜2.4の正数である。)
で示される1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:
100質量部、
(ロ)有機過酸化物: 触媒量
のみからなる有機過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物である請求項1〜3のいずれか1項記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
請求項5:
(A)成分が、
(ハ)下記平均組成式(I)
aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基であるが、Rの0.001〜10モル%はアルケニル基であり、かつ90モル%以上はメチル基である。aは1.9〜2.4の正数である。)
で示される1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:
100質量部、
(ニ)1分子中に珪素原子に直接結合する水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 0.1〜30質量部、
(ホ)付加反応触媒: 触媒量
のみからなる付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物である請求項1〜3のいずれか1項記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
請求項6:
(C)成分の水酸化アルミニウムが、予め表面疎水化処理されたもの又は(A)成分との配合時に表面疎水化処理されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
請求項7:
(C)成分の水酸化アルミニウムが、オルガノシラザン類及び/又はオルガノシラン類で表面疎水化処理されたものであることを特徴とする請求項6記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
請求項8:
コアの外周部に請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物を硬化してなるシリコーンゴム成形物を形成してなるポリマー碍子。
【発明の効果】
【0011】
本発明の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物及び該組成物を用いてコア(例えば、耐熱性樹脂製の円筒状又は円柱状成形体)の外周部にシリコーンゴム成形物を被覆、形成してなる碍子又は碍管の形状に成形されたポリマー碍子は、屋外用途においても長期間に渡り絶縁性能を維持し、汚染の酷い地域においても耐酸性に優れ、長寿命である高電圧電気絶縁体を与える。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき更に詳細に説明すると、本発明の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物の(A)成分は、有機過酸化物硬化型又は付加反応硬化型のオルガノポリシロキサン組成物である。
【0013】
本発明の有機過酸化物硬化型シリコーンゴム組成物としては、
(イ)下記平均組成式(I)
aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基であるが、Rの0.001〜10モル%はアルケニル基であり、かつ90モル%以上はメチル基である。aは1.9〜2.4の正数である。)
で示される1分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(ロ)有機過酸化物
のみからなるシリコーンゴム組成物が好適に使用される。
【0014】
(イ)成分は、下記平均組成式(I)
aSiO(4-a)/2 (I)
で示される1分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。
【0015】
ここで、式(I)中のRは、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基などの脂肪族飽和炭化水素基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基などの脂肪族不飽和炭化水素基、フェニル基、キシリル基等のアリール基などの芳香族炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換、シアノ基置換炭化水素基から選ばれ、各置換基は異なっていても同一であってもよいが、1分子中に少なくとも平均2個のアルケニル基を含んでいることが必要である。この場合、全Rのうち0.001〜10モル%、特に0.01〜5モル%、更には0.01〜2モル%がアルケニル基であり、90モル%以上、特に95〜99モル%、更にはアルケニル基を除く全てのR基がメチル基であることが好ましい。なお、このアルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖の途中の珪素原子に結合していても、その両方であってもよいが、少なくとも分子鎖末端の珪素原子に結合していることが好ましい。
上記式(I)中のRは、基本的には上記のいずれであってもよいが、アルケニル基としては、好ましくはビニル基、その他の置換基(非置換又は置換の一価炭化水素基)としては、メチル基、フェニル基の導入が望ましい。
【0016】
aは1.9〜2.4、好ましくは1.98〜2.02、更に好ましくは1.99〜2.01の範囲の正数であり、このオルガノポリシロキサンは直鎖状であっても、RSiO3/2単位あるいはSiO4/2単位を含んだ分岐状であってもよいが、通常は、主鎖がジオルガノシロキサン単位(R2SiO2/2)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(R3SiO1/2)で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが望ましい。
【0017】
このオルガノポリシロキサンは、公知の方法によって製造される。この製造方法としては、オルガノシクロポリシロキサンとヘキサオルガノジシロキサンとをアルカリ又は酸触媒の存在下に平衡化反応を行うことによって得ることができる。
【0018】
なお、上記オルガノポリシロキサンの重合度は100〜20,000、好ましくは200〜15,000、特に好ましくは300〜10,000である。なお、この重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析によるポリスチレン換算の重量平均重合度として測定することができる(以下、同じ)。
【0019】
(ロ)成分の有機過酸化物は、(イ)成分の架橋反応を促進するための触媒として使用されるもので、従来公知のものとすればよく、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0020】
なお、(ロ)成分の添加量は、硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常は(イ)成分100質量部に対し0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜2質量部の範囲とすればよい。(ロ)成分の添加量が少なすぎると架橋が不十分で強度、伸びなどのゴム物性に劣る場合があり、多すぎるとスコーチ等の問題を生じる場合がある。
【0021】
一方、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物としては、
(ハ)上記式(I)で示されるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(ニ)1分子中に珪素原子に直接結合する水素原子を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(ホ)付加反応触媒
のみからなるシリコーンゴム組成物が好ましく、これは常温下(25℃±10℃、以下、同じ)で放置するか、加熱すると硬化してゴム状弾性体になるものである。
【0022】
(ハ)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、上述した(イ)成分のオルガノポリシロキサンと同様のものを例示することができる。
【0023】
(ニ)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に珪素原子に結合する水素原子(Si−H基)を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンであり、下記平均組成式(II)
1bcSiO(4-b-c)/2 (II)
(式中、R1は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基である。またbは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0を満足する正数である。)
で示される常温で液状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンであることが好ましい。
【0024】
ここで、式(II)中のR1は、炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、同一であっても異なっていてもよく、脂肪族不飽和結合を含まないものであることが好ましい。R1として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部をハロゲン原子等で置換した基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
また、bは0.7〜2.1、好ましくは0.8〜2.0、cは0.001〜1.0、好ましくは0.01〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0、好ましくは0.9〜2.7を満足する正数である。
【0025】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、Si−H基を1分子中に少なくとも2個(通常2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば3〜200個程度)、より好ましくは4個以上(例えば4〜100個程度)有するが、これは分子鎖末端にあっても、分子鎖の途中にあっても、その両方にあってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、分子中の珪素原子数(又は重合度)が通常2〜300個、好ましくは3〜200個、より好ましくは4〜100個程度のものであればよく、また25℃における粘度が0.5〜1,000mPa・s、好ましくは1〜500mPa・s、特に5〜300mPa・sであることが好ましい。なお、この粘度は回転粘度計により測定することができる(以下、同じ)。
【0026】
(ニ)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体や、これら例示化合物においてメチル基の一部又は全部を他のアルキル基やフェニル基で置換したものなどが挙げられる。
【0027】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサン(ニ)の配合量は、(ハ)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部、特に0.3〜10質量部とすることが好ましい。またこのオルガノハイドロジェンポリシロキサン(ニ)は、(ハ)成分及び(B)成分のアルケニル基の合計に対する(ニ)成分中のSi−H基のモル比が、通常0.5〜5、好ましくは0.8〜3、より好ましくは1〜2.5程度となるように配合することもできる。(ニ)成分の配合量が少なすぎると架橋が不十分で強度、伸びなどのゴム物性に劣る場合があり、多すぎると架橋点が多すぎて(架橋密度が高すぎて)、同様にゴム物性に劣る場合がある。
【0028】
(ホ)成分の付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられる。なおこの付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができ、通常、(ハ)成分と(ニ)成分の合計質量に対し、白金金属量に換算して0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppmの範囲で使用される。
【0029】
(B)成分の含フッ素有機化合物は、絶縁材料を高寿命、高耐久化させるために必須のものである。
この含フッ素有機化合物は、典型的には1種又は2種以上の含フッ素モノマーの(共)重合体(即ち、単独重合体又は共重合体。以下、同じ)を含んでなる含フッ素樹脂を使用することができ、より具体的には、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレンオキシド、ヘキサフルオロプロペンオキシド、パーフルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドから選ばれる1種又は2種以上の含フッ素モノマーの単独重合体又はこれらモノマーの共重合体、該含フッ素モノマーの1種又は2種以上とエチレンとの共重合体、該含フッ素モノマーの1種又は2種以上とクロロトリフルオロエチレンとの共重合体から選ばれる少なくとも1種の含フッ素樹脂等を挙げることができる。
【0030】
なお、上記含フッ素モノマーの1種又は2種以上とエチレンとの共重合体としては、特にテトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体が好適であり、上記含フッ素モノマーの1種又は2種以上とクロロトリフルオロエチレンとの共重合体としては、特にテトラフルオロエチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体などが好適である。
【0031】
(B)成分の含フッ素有機化合物の形状(形態)としては、常温で液体でも固体でもよく、オイル状(液状)、粘土状(スラリー又はペースト状)、ゴム状、ゲル状、ブロック状、パウダー状などいかなる状態でもよい。(B)成分中のフッ素含有量は高いほど好ましく、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上である。フッ素含有量の上限は、通常86質量%以下、好ましくは80質量%以下程度であればよい。このような(B)成分に該当する含フッ素有機化合物のうち、市販されているものとしては、テフロン、テフゼル、フルオン、ヘイラー、ハイラー等の商標名のフッ素樹脂、ヴァイトン、カルレッツ、SIFEL等の商標名のフッ素ゴム、クライトックス、フォンブリン、デムナム等のパーフルオロポリエーテルオイルをはじめとする各種のフッ素オイルやダイフリーFBシリーズ等の商標名のフッ素含有離型剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、フッ素含有量が通常40質量%以上の含フッ素有機化合物であればいかなるものでも好適に使用できる。
【0032】
これら含フッ素有機化合物の配合量は、(A)成分100質量部に対して、0.02〜20質量部、好ましくは0.05〜15質量部、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.1〜5質量部の範囲である。(B)成分の含フッ素有機化合物の配合量が少なすぎると耐酸性が不十分になってしまい、高寿命が達成されず、多すぎるとゴム物性が低下してしまうばかりか不経済である。
【0033】
これら含フッ素有機化合物の配合は、(A)成分やその他の成分と共に、プラネタリーミキサーなどの混合撹拌装置を利用してもよいし、二本ロールを利用してもよい。その際、室温で配合することもできるし、昇温して200℃以下で分散させてもよい。
【0034】
(C)成分の平均粒子径が20μm以下の水酸化アルミニウムは、シリコーンゴムの耐アーク性、耐トラッキング性等の電気絶縁性能を改善するために必須のものである。ここで水酸化アルミニウムとしては、下記式
Al23・3H2
で表わされ、平均粒子径が20μm以下、通常0.1〜20μmのもの、好ましくは0.5〜15μmで、BET比表面積が1.0〜10m2/gのものが好ましく使用される。水酸化アルミニウムの平均粒子径が20μmより大きいとゴム物性が低下してしまうと共に、耐酸性にも劣ったものとなる。なお、平均粒子径は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、累積重量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。なお、(C)成分の水酸化アルミニウムとしては、1種を単独で使用してもよいが、平均粒子径やBET比表面積が異なるものを2種以上併用して使用することもできる。
【0035】
これら水酸化アルミニウムは、そのままでも使用可能であるが、好ましくは表面を疎水化処理したものであるとよい。表面処理剤としては、アルキルシラザン、ビニルシラザン等のオルガノシラザン類、アルキルアルコキシシラン、ビニルアルコキシシランやアルキルクロロシラン、ビニルクロロシラン等のオルガノシラン類が挙げられ、例えば、ヘキサメチルジシラザン、ジフェニルテトラメチルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザンなどのオルガノシラザン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シランなどのオルガノアルコキシシラン類、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシランなどのオルガノクロロシラン類、又はその部分加水分解物、分子鎖末端にSi−OH官能基あるいはSi−OR’(R’は一価炭化水素基)などの官能基を有する重合度が50以下のシロキサンオリゴマーなどの2種又はそれ以上と併用して処理してもよい。
【0036】
表面処理方法としては、予め粉体状態で処理したものを(A)成分及び(B)成分等と配合してもよいし、あるいは(A)成分及び/又は(B)成分の一部又は全量と水酸化アルミニウムと上記表面処理剤とを混合しながら水酸化アルミニウムの表面処理を実施してもよい。なお、これら表面処理された水酸化アルミニウムの表面処理度合いは、水酸化アルミニウムに対するカーボン量で0.01〜2質量%、好ましくは0.02〜1質量%であることが、シロキサンとの相溶性を向上させるという面から好ましい。なお、このカーボン量は、酸化燃焼によるCO2発生量の測定を原理とする炭素分析計等によって求めることができる。
【0037】
また、水酸化アルミニウム(C)の配合量は、(A)成分100質量部に対して30〜400質量部、好ましくは50〜300質量部で、30質量部より少ないと、耐トラッキング性などの十分な電気特性が得られず、400質量部より多いと配合が難しくかつ作業性にも問題があり、更に硬化物も硬くて脆いものとなってしまう。
【0038】
本発明のシリコーンゴム組成物には、上述した(A)〜(C)成分に加えて、流動性の調節や、成形品の機械的強度を向上させるため、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて任意に無機質充填剤を配合してもよい。このような充填剤としては、沈殿シリカ、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、ヒュームド酸化チタンのような補強性充填剤、粉砕石英、ケイ藻土、アスベスト、アミノケイ酸、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウムのような非補強性充填剤が例示され、そのままでもヘキサメチルシラザン、トリメチルクロロシラン、ポリメチルシロキサンのような有機珪素化合物で表面処理したものでもよい。また更に、その他必要に応じて、顔料、耐熱剤、難燃剤、可塑剤などの任意成分を配合してもよい。
【0039】
本発明のシリコーンゴム組成物は、上記各成分を常法に準じて混合することにより調製できる。
このようにして得られたシリコーンゴム組成物は、高電圧電気絶縁体として用いることができ、この場合、成形方法としては、コンプレッション成形(圧縮成形)、押出成形、射出成形、トランスファー成形、注入成形など、材料の粘性や型の大きさ等に応じて、従来公知のいずれの方法を選択してもよい。
【0040】
また、シリコーンゴム組成物の硬化条件は、室温(25℃±10℃)から250℃程度まで広い温度範囲を採用できるが、有機過酸化物硬化型の場合には、使用する有機過酸化物の分解温度以上の温度条件下で、例えば120〜220℃、好ましくは150〜200℃程度であり、付加反応硬化型の場合には、好ましくは60〜200℃、より好ましくは80〜180℃程度である。硬化時間(1次硬化)は温度により異なるが、10秒〜数時間(例えば1〜4時間)の範囲で可能であり、高温ほど短時間で成形できる。なお、このような条件で成形(1次硬化)した硬化物を、更に170〜220℃、特に180〜200℃程度で1〜6時間、特に2〜4時間程度の条件でポストキュア(2次硬化)することは任意である。
【0041】
本発明のポリマー碍子は、碍子のコアの外周部を覆って上記シリコーンゴム成形物の層を形成してなるものである。この場合、コアとしては、通常、円筒状又は円柱状等の形状に成形した、ガラス繊維強化エポキシ樹脂、ガラス繊維強化フェノール樹脂等のガラス繊維強化プラスチック(FRP)などが好適に使用される。また、コアの外周部に被覆、形成するシリコーンゴム成形物層の厚さは、製造するポリマー碍子のサイズや形状(例えばカサ部の有無や、その形状、サイズ、間隔など)等に応じて特に限定されるものではないが、高電圧電気絶縁性等の点から、最も厚さの薄い部分が、通常1mm以上、特に2mm以上であることが好ましい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、水酸化アルミニウムの平均粒子径は、レーザー光回折法による粒度分布測定装置を用いて測定した累積重量平均値D50(又はメジアン径)を意味し、また表面のカーボン量は炭素分析計により測定したものである。
【0043】
[実施例1]
両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された平均重合度が500であるジメチルポリシロキサン(1)70質量部、BET比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)30質量部、ヘキサメチルジシラザン5質量部、ジビニルテトラメチルジシラザン0.5質量部、水2.0質量部を室温で30分混合後、150℃に昇温し、3時間撹拌を続け、冷却した。更に、これに平均粒子径が8μmであるヘキサメチルジシラザンにより表面処理された水酸化アルミニウム(カーボン量0.9質量%)70質量部、平均粒子径が1μmであるメチルトリメトキシシランにより表面処理された水酸化アルミニウム(カーボン量0.2質量%)100質量部、GPCによるポリスチレン換算重量平均分子量が8,000のパーフルオロポリエーテルオイル(フッ素含有量65質量%)4質量部を配合し、混合を15分続けた後、三本ロールに1回通してシリコーンゴムベースを得た。
【0044】
このシリコーンゴムベースに、上記ジメチルポリシロキサン(1)30質量部を入れ、30分撹拌を続けた後、更に架橋剤として両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(2)(重合度25、Si−H量0.0048mol/g)を3.4質量部[Si−H/アルケニル基=1.5(モル比)]、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05質量部を添加し、15分撹拌を続けてシリコーンゴム組成物を得た。このシリコーンゴム組成物に白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1質量部を混合し、120℃/10分のプレスキュアにより厚さ2mmのゴムシートを作製後、オーブン内で200℃×4時間のポストキュアを行った。
【0045】
得られた2mmシートよりJIS K6249に基づき硬さ、引張り強度及び切断時伸びの測定を実施した結果を表1に示した。更に、耐酸性の目安として、以下の耐酸性試験を実施した。2mmシートより、30mm角のサンプルを切り出し、初期質量を測定後、1規定の硝酸水に40℃で300時間浸漬した。これを取り出し、純水に24時間浸漬後、減圧乾燥を行って質量を測定し、酸に因る劣化度合いを質量減少率として算出した。結果を同じく表1に記した。
【0046】
[実施例2]
ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000である両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖の生ゴム状オルガノポリシロキサン(3)100質量部に、分散剤として両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(平均重合度10)5質量部、表面処理剤としてエチルトリメトキシシラン5質量部、BET比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)20質量部、平均粒子径が1μmである水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製、ハイジライトH42M)140質量部を添加し、加圧ニーダーにて配合し、ゴムコンパウンドを調製した。30分混合後、更にポリテトラフルオロエチレン粉末(フッ素含有量75質量%、テフロン60C−J、三井・デュポンフロロケミカル社製)2質量部を加えて、10分混合を継続した。
【0047】
このゴムコンパウンドに、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサンと上記オルガノポリシロキサン(3)とBET比表面積が200m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)の40質量%:40質量%:20質量%の混合ペーストを1.0質量部添加し、二本ロールにて均一に分散させた後、165℃にて10分間プレスキュアさせて厚さ2mmのシリコーンゴムシートを得、更に200℃のオーブンで4時間のポストキュアを実施した。
【0048】
この硬化物について、実施例1と同様に、硬さ、引張り強度、切断時伸び及び耐酸性を測定した結果を表1に記した。
【0049】
[実施例3]
ジメチルシロキサン単位99.225モル%、メチルビニルシロキサン単位0.75モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000である両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のゴム状オルガノポリシロキサン(4)60質量部、平均重合度が約8,000で側鎖にビニル基を有しない両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖のゴム状オルガノポリシロキサン(5)40質量部、及び分散剤として両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン(平均重合度10)5質量部、ヘキサメチルジシラザン0.2質量部、BET比表面積が300m2/gであるヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル300)20質量部、パーフルオロアルキルポリエステル構造を有するフッ素含有離型剤(ダイフリーFB961、ダイキン工業社製)3質量部を配合し、120℃で1時間混合した。これに、メチルトリエトキシシランにより表面処理された平均粒子径が3μmである水酸化アルミニウム(カーボン量0.4質量%)40質量部、エチルトリメトキシシランにより表面処理された平均粒子径12μmの水酸化アルミニウム(カーボン量0.5質量%、ビニル基含有量0.0001mol/g)80質量部、及び両末端及び側鎖にSi−H基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(2)(重合度50、Si−H量0.0066mol/g)を1.9質量部[Si−H/アルケニル基=2.0(モル比)]を加圧ニーダーにて15分混合した。
【0050】
このゴムコンパウンドに、触媒としてC−25A(白金含有量0.1質量%、信越化学工業社製)2.0質量部を添加し、二本ロールにて均一に分散させた後、165℃にて10分間プレスキュアさせて厚さ2mmのシリコーンゴムシートを得、更に200℃のオーブンで4時間のポストキュアを実施した。
【0051】
この硬化物について、実施例1と同様に、硬さ、引張り強度、切断時伸び及び耐酸性を測定した結果を表1に記した。
【0052】
[実施例4]
実施例3で、フッ素含有離型剤(ダイフリーFB961、ダイキン工業社製)3質量部をパーフルオロアルキルポリエステル構造を有するフッ素含有離型剤(ダイフリーFB962、ダイキン工業社製)0.5質量部に変更した以外は、すべて実施例3と同様にしてシリコーンゴムシートを得、実施例1と同様に、硬さ、引張り強度、切断時伸び及び耐酸性を測定した結果を表1に記した。
【0053】
[実施例5]
実施例3で、フッ素含有離型剤(ダイフリーFB961、ダイキン工業社製)3質量部をパーフルオロアルキルポリエステル構造を有するフッ素含有離型剤(ダイフリーFB962、ダイキン工業社製)0.1質量部に変更した以外は、すべて実施例3と同様にしてシリコーンゴムシートを得、実施例1と同様に、硬さ、引張り強度、切断時伸び及び耐酸性を測定した結果を表1に記した。
【0054】
[比較例1]
実施例1で、重量平均分子量が8,000のパーフルオロポリエーテルオイル4質量部を添加しなかった以外は、すべて実施例1と同様にしてシリコーンゴムシートを得、実施例1と同様に、硬さ、引張り強度、切断時伸び及び耐酸性を測定した結果を表1に記した。
【0055】
[比較例2]
実施例2で、ポリテトラフルオロエチレン粉末(テフロン60C−J、三井・デュポンフロロケミカル社製)2質量部を添加しなかった以外は、すべて実施例2と同様にしてシリコーンゴムシートを得、実施例1と同様に、硬さ、引張り強度、切断時伸び及び耐酸性を測定した結果を表1に記した。
【0056】
[比較例3]
実施例3で、パーフルオロアルキルポリエステル構造を有するフッ素含有離型剤(ダイフリーFB961、ダイキン工業社製)3質量部を添加しなかった以外は、すべて実施例3と同様にしてシリコーンゴムシートを得、実施例1と同様に、硬さ、引張り強度、切断時伸び及び耐酸性を測定した結果を表1に記した。
【0057】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有機過酸化物硬化型又は付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物:
100質量部、
(B)含フッ素有機化合物 0.02〜20質量部、
(C)平均粒子径が20μm以下の水酸化アルミニウム: 30〜400質量部
を含有してなることを特徴とする高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(B)成分の含フッ素有機化合物が、1種又は2種以上の含フッ素モノマーの(共)重合体を含んでなる含フッ素樹脂である請求項1記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(B)成分の含フッ素有機化合物が、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、テトラフルオロエチレンオキシド、ヘキサフルオロプロペンオキシド、パーフルオロアルキルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドから選ばれる1種又は2種以上の含フッ素モノマーの単独重合体又は共重合体、該含フッ素モノマーの1種又は2種以上とエチレンとの共重合体、該含フッ素モノマーの1種又は2種以上とクロロトリフルオロエチレンとの共重合体から選ばれる少なくとも1種の含フッ素樹脂であることを特徴とする請求項2記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(A)成分が、
(イ)下記平均組成式(I)
aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基であるが、Rの0.001〜10モル%はアルケニル基であり、かつ90モル%以上はメチル基である。aは1.9〜2.4の正数である。)
で示される1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:
100質量部、
(ロ)有機過酸化物: 触媒量
のみからなる有機過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物である請求項1〜3のいずれか1項記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
(A)成分が、
(ハ)下記平均組成式(I)
aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、Rは非置換又は置換の一価炭化水素基であるが、Rの0.001〜10モル%はアルケニル基であり、かつ90モル%以上はメチル基である。aは1.9〜2.4の正数である。)
で示される1分子中に平均2個以上のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:
100質量部、
(ニ)1分子中に珪素原子に直接結合する水素原子を少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン: 0.1〜30質量部、
(ホ)付加反応触媒: 触媒量
のみからなる付加反応硬化型オルガノポリシロキサン組成物である請求項1〜3のいずれか1項記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項6】
(C)成分の水酸化アルミニウムが、予め表面疎水化処理されたもの又は(A)成分との配合時に表面疎水化処理されたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項7】
(C)成分の水酸化アルミニウムが、オルガノシラザン類及び/又はオルガノシラン類で表面疎水化処理されたものであることを特徴とする請求項6記載の高電圧電気絶縁体用シリコーンゴム組成物。
【請求項8】
コアの外周部に請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物を硬化してなるシリコーンゴム成形物を形成してなるポリマー碍子。

【公開番号】特開2011−231228(P2011−231228A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103150(P2010−103150)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】