説明

魚を用いた加工食品の製造方法、および魚を用いた加工食品

【課題】魚を用いた加工食品を提供すること。
【解決手段】硬めに炊飯した米2を所定の厚みを持つように配置し、配置した米2の上に魚1を乗せ、それらを真空包装用のプラスチック製の袋に入れ、プラスチック製の袋内を真空にして米2と魚1とを成形し、プラスチック製の袋のまま加熱することにより、魚の骨と硬めに炊飯した米とを柔らかくした加工食品Aを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚を用いた加工食品の製造方法、および魚を用いた加工食品に関する。
【背景技術】
【0002】
次のような骨まで食することができる魚の製造方法が知られている。この方法は、クエン酸を混合した調味液とともに魚を加熱することにより魚の骨を柔らかくする(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−318805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法により骨を柔らかくした魚は、非常に柔らかく形が崩れやすいため、魚の型崩れを防ぎながら他の食材と組み合わせて調理することが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による魚を用いた加工食品の製造方法は、あらかじめ水に浸しておいた生米を硬めに炊飯し、硬めに炊飯した米を所定の厚みを持つように配置し、配置した米の上に魚を乗せ、それらを真空包装用のプラスチック製の袋に入れ、プラスチック製の袋内を真空にして米と魚とを成形し、プラスチック製の袋のまま加熱することにより、魚の骨と硬めに炊飯した米とを柔らかくした加工食品を製造するための方法である。
本発明による魚を用いた加工食品の製造方法はまた、炊飯した米を所定の厚みを持つように配置し、配置した米の上に骨を柔らかくする加工が施された魚を乗せ、それらを真空包装用のプラスチック製の袋に入れ、プラスチック製の袋内を真空にして米と魚とを成形することにより加工食品を製造するための方法である。
本発明による加工食品は、硬めに炊飯した米の上に魚を乗せて真空包装用のプラスチック製の袋に入れ、真空包装用のプラスチック製の袋内を真空にすることにより、米と魚を成形し、プラスチック製の袋のまま加熱することにより、魚の骨と硬めに炊飯した米とを柔らかくしたものである。
本発明による加工食品はまた、炊飯した米の上に骨を柔らかくした魚を乗せて真空包装用のプラスチック製の袋に入れ、真空包装用のプラスチック製の袋内を真空にすることにより、米と魚とを成形したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、魚が型崩れすることを防いで米と組み合わせて調理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】押し寿司状の加工食品Aを側面から見た状態を模式的に示した図である。
【図2】押し寿司状の加工食品Aを干物1の上面側から見た状態を示した図である。
【図3】成形前の加工食品の状態を模式的に示した図である。
【図4】成形後の加工食品の状態を模式的に示した図である。
【図5】加工食品の他の形状の具体例を模式的に示した図である。
【図6】プラスチック製の袋3のまま成形型6を用いて成形を行う場合の具体例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、骨まで食べられるように柔らかくした魚を、米などの他の食材と一緒に調理して加工食品を製造するに際し、柔らかい魚の形が崩れないような加工方法を提供することを目的とする。本実施の形態では、一例として、骨まで食べられるように柔らかくした鯵等の干物を米飯の上に乗せて押し寿司のように成形した加工食品の製造方法について説明する。
【0009】
具体的には、本実施の形態では、例えば、図1に示すように、中央部分に行くほど厚みを持たせた米2の上に干物1を乗せた形状となるように成形した押し寿司状の加工食品Aを製造する方法について説明する。図2は、この押し寿司状の加工食品Aを干物1の上面側から見た状態を示した図である。
【0010】
一般的に、押し寿司を製造する場合には、例えば、酢合わせした米飯を専用の押し型を用いて成形し、この成形された米飯成形体の上に具材を乗せて、圧力を加えることにより押し固める。この場合、具材には大きな力が加わるため、具材として骨まで食べられるように柔らかくした魚を用いた場合には、該具材の形が崩れてしまい、きれいに押し寿司を成形できない可能性が高かった。
【0011】
そこで、本実施の形態では、具として用いる干物の骨を柔らかくするとともに、米飯と合わせて押し寿司のように成形しても干物の形が崩れないように、以下のような製造方法を用いる。また、以下に説明する方法によれば、型成形を用いて人が圧を加える必要もないため、従来よりも衛生面で優れるという効果もある。
【0012】
まず、図3に示すように、所定の厚みを持つように略円形に仮成形した米2の上に干物1を乗せる。ここで使用する米2は、あらかじめ水に浸しておいた生米を通常より短い炊飯時間で硬めに炊飯された米である。ここでの炊飯時間の一例としては、水に浸す時間と炊飯時間とを合せて40分程度を想定する。
【0013】
米2の上に干物1を乗せた状態のまま真空包装用のプラスチック製の袋3に入れる。プラスチック製の袋3としては、例えば、レトルト専用の脱気真空包装用袋等を用いればよい。その後、プラスチック製の袋3内を真空状態にすると、プラスチック製の袋3によって米2と干物1に圧力が加わることにより、図4に示すように、米2が押されて横に広がるとともに、干物1が米2を覆うように両者が一体となり、押し寿司のように成形される。このように、プラスチック製の袋3内を真空にすることで成形を行うことにより、成形型を用いなくても成形を行うことができる。
【0014】
その後、プラスチック製の袋3によって押し寿司のように形成された状態で、プラスチック製の袋3のまま加熱することにより、硬めに炊飯しておいた米2を食に適した柔らかさに炊飯するとともに、干物1を骨まで食べられるように柔らかく調理する。硬めに炊飯しておいた米2を食に適した柔らかさに炊飯するとともに、干物1を骨まで食べられるように柔らかく調理するための加熱方法としては、例えば、以下のような方法が考えられる。
【0015】
まず1つは、プラスチック製の袋3のまま圧力をかけながら加熱する方法である。この時の圧力のかけ方としては、例えば3メガパスカル程度の高圧状態、または100メガパスカル程度の超高圧状態になるようにすればよい。また、加熱方法としては、例えば、120度で30分程度加熱すればよい。このように真空状態のプラスチック製の袋3内に押し寿司のように形成した干物1と米2を入れた状態で圧力をかけながら加熱すると、米2と干物1は高圧状態で加熱されるため、硬めに炊飯しておいた米2は食に適した本来の柔らかさ炊飯され、干物1は骨まで食べられるように柔らかく調理される。また、圧力をかけずに加熱した場合には、骨が柔らかくなる前に干物1の身が柔らかくなり過ぎてぼろぼろになってしまう可能性があるが、本実施の形態の方法によれば、干物1の身がぼろぼろになるのを防いで、骨を柔らかくすることができる。なお、圧力をかけながら加熱するための調理器具としては、例えば、圧力鍋、レトルト高圧釜等を用いればよい。
【0016】
あるいは、別の方法としては、圧力をかけなくても、スチームコンベクション等の食材を柔らかくすることができる加熱機器を使用して、プラスチック製の袋3のまま加熱するようにしてもよい。
【0017】
通常、骨まで食べられるほどまで柔らかくなった干物は崩れやすいため、押し寿司のように形成することは困難であるが、本実施の形態の方法によれば、米2と干物1とが一体となった押し寿司のように成形することが可能となる。さらに、プラスチック製の袋3のまま加熱するため、通常のレトルト殺菌と同様に、プラスチック製の袋3内の干物1と米2は殺菌され、冷凍しなくても常温で長時間保存することが可能となる。
【0018】
以上説明した本実施の形態では、あらかじめ水に浸しておいた生米を硬めに炊飯し、硬めに炊飯した米2を所定の厚みを持つように略円形に仮成形し、米2の上に干物1を乗せ、それらを真空包装用のプラスチック製の袋3に入れ、プラスチック製の袋3内を真空にして米2と魚1とを押し寿司状に成形し、プラスチック製の袋3のまま加熱して加工食品を製造するようにした。これにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0019】
(1)プラスチック製の袋3内を真空にすることで押し寿司状に成形を行うようにしたので、成形型を用いなくても成形を行うことができる。また、米2と干物1とを同時に成形することができるため、それぞれを個別に成形する場合と比較して、成形時間を短縮することができる。
【0020】
(2)真空状態のプラスチック製の袋3内で押し寿司のように形成した干物1と米2をプラスチック製の袋3のまま圧力をかけながら加熱するようにしたので、米2と干物1は高圧状態で加熱され、硬めに炊飯しておいた米2を食に適した柔らかさに炊飯するとともに、干物1を骨まで食べられるように柔らかく調理することが可能となる。また、ただ加熱した場合には、骨が柔らかくなる前に干物1の身が柔らかくなり過ぎてぼろぼろになってしまう可能性があるが、本実施の形態の方法によれば、干物1の身がぼろぼろになるのを防いで、骨を柔らかくすることができる。さらに、米2と干物1とを同時に調理することができるため、それぞれを個別に調理する場合と比較して、調理時間を短縮することができる。
【0021】
(3)本実施の形態による製造方法で製造した押し寿司状の加工食品を食すれば、干物1を頭から丸ごと食することになるため、カルシウム等の栄養素を豊富に摂取することができ、特に子供の健康に良い加工食品を提供することが可能となる。また、頭や骨などが残飯として出ないため、食品廃棄物の低減にも寄与することができる。
【0022】
(4)また、日本の食文化として、魚をその姿のまま提供することに拘る傾向があるが、従来は、魚の姿に拘ると食べる際に骨が邪魔になるという問題があった。しかしながら、本実施の形態による製造方法で製造した加工食品は、魚を姿のまま骨まで食することができるため上記の問題を解決することができる。
【0023】
(5)通常、骨まで食べられるほどまで柔らかくなった干物は崩れやすいため、押し寿司のように形成することは困難であるが、本実施の形態の方法を用いれば、米2がクッションの役割を果たすとともに、プラスチック製の袋3を真空にして成形を行うため、干物1が崩れることなく、米2と干物1とが一体となった押し寿司のように成形することが可能となる。
【0024】
(6)米2の上に干物1を乗せて押し寿司のように成形した後に、これらをプラスチック製の袋3内で加熱して調理するようにしたので、干物1から出た栄養素はプラスチック製の袋3の内部に留まり米2に染み込むため、本来の栄養価を損なわずに加工食品を製造することができる。また、干物1から出た旨味成分もプラスチック製の袋3の内部に留まり米2に染み込むため、本来の旨味も損なわずに加工食品を製造することができる。
【0025】
(7)通常のレトルト殺菌と同様に、プラスチック製の袋3内の干物1と米2は滅菌、殺菌され、冷凍しなくても常温で長時間保存することが可能となる。また、プラスチック製の袋3内の干物1と米2は真空状態で形が維持されるため、運搬時や保存時に押し寿司形状の加工食品Aの形状が崩れることを防ぐことができる。
【0026】
―変形例―
なお、上述した実施の形態の加工食品の製造方法は、以下のように変形することもできる。
(1)上述した実施の形態では、硬めに炊飯された米2の上に干物1を乗せた状態で真空包装用のプラスチック製の袋3に入れ、真空包装用のプラスチック製の袋3内を真空にすることで成形するようにした。そして、その後、プラスチック製の袋3のまま加熱することにより、米2と干物1を柔らかく加工する例について説明した。しかしながら、通常食する柔らかさまで炊飯した米2の上に、あらかじめ骨まで軟らかくするように加工された干物1を乗せ、それらを真空包装用のプラスチック製の袋3に入れて真空にすることにより、押し寿司のように成形するようにしてもよい。これにより、骨まで食べられるように柔らかく加工された干物は崩れやすいため、通常の成形型を用いた方法で押し寿司のように成形した場合には干物1が崩れてしまう可能性が高いが、この方法によれば、米2がクッションの役割を果たすとともに、プラスチック製の袋3を真空にして成形を行うため、干物1が崩れることなく押し寿司のように成形することが可能となる。
【0027】
なお、この場合、米2の上に乗せる具材は干物1に限定されない。例えば、鮮魚を開いての煮たもの、蒸したものなどを具材として用いてもよい。また、魚の切り身を煮たもの、蒸したものなどを具材として用いてもよい。あるいは、開いた状態で骨抜き処理を行った魚を具材として用いてもよい。また、これらの具材を複数組み合わせてもよい。このような具材は、いずれも柔らかく、成形型を用いて押し寿司のように加工すると形が崩れてしまう可能性が高いが、真空包装用のプラスチック製の袋3に入れて真空にすることにより押し寿司のように成形すれば、魚が崩れることなく押し寿司のように成形することが可能となる。
【0028】
(2)上述した実施の形態では、米2の上に干物1を乗せ、真空包装用のプラスチック製の袋3を用いて押し寿司状に成形することにより、米2と干物1とを用いた押し寿司状の加工食品を製造する例について説明した。しかしながら、製造する加工食品は押し寿司状の加工食品に限定されない。例えば、第1の具材4と第2の具材5とを図5に示すように組み合わせた形状の加工食品を製造する際にも本発明は適用可能である。また、薄く広げた米の上に魚を乗せて成形したピラフやパエリア等を製造する際にも本発明は適用できる。なお、ピラフやパエリア等を製造する場合には、皿状の容器に米を敷き詰め、その上に具材となる魚を乗せた後に、それらをプラスチック製の袋3内に入れるようにすればよい。
【0029】
また、クッションの役割を果たす具材として米2以外の具材を用いることもできる。例えば、玄米、黒米、餅、スープ、寒天、小麦粉等の粉末状の食材、パン等を用いてもよい。また、クッションの役割を果たす具材は一種類に限定されず、2種類以上の具材を組み合わせてもよい。このようにしても、具材として米2を用いた場合と同様に、これらの具材がクッションの役割を果たして上に載った柔らかい具材が崩れることを防ぐことができる。また、上に乗せた具材から染み出る栄養素や旨味成分をこれらの具材に染み込ませることができる。
【0030】
(3)上述した実施の形態では、プラスチック製の袋3内の干物1と米2は殺菌されるため、冷凍しなくても常温で長時間保存することが可能となることを説明した。しかしながら、プラスチック製の袋3ごと冷凍して保存するようにしても構わない。この場合、消費者は、プラスチック製の袋3ごと電子レンジ等を用いて解凍するだけで本加工食品を食することができる。
【0031】
(4)上述した実施の形態では、プラスチック製の袋3内に干物1と米2とを入れて真空にすることにより成形するようにした。この場合、プラスチック製の袋3内の具材には細菌が付着したり臭いが吸収されることなどがないため、図6に示すように、プラスチック製の袋3のまま成形型6を用いて成形を行うようにしても、成形型の細菌や臭いが具材に付着することを防ぐことができる。
【0032】
なお、本発明の特徴的な機能を損なわない限り、本発明は、上述した実施の形態における構成に何ら限定されない。また、上述の実施の形態と複数の変形例を組み合わせた構成としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
A 押し寿司状の加工食品、1 干物、2 米、3 プラスチック製の袋、4 具材1、5 具材2、6 成形型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
あらかじめ水に浸しておいた生米を硬めに炊飯し、
前記硬めに炊飯した米を所定の厚みを持つように配置し、
配置した米の上に魚を乗せ、
それらを真空包装用のプラスチック製の袋に入れ、
前記プラスチック製の袋内を真空にして米と魚とを成形し、
前記プラスチック製の袋のまま加熱することにより、前記魚の骨と前記硬めに炊飯した米とを柔らかくした加工食品を製造することを特徴とする魚を用いた加工食品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の魚を用いた加工食品の製造方法において、
前記プラスチック製の袋のまま圧力を加えながら加熱することにより、前記魚の骨と前記硬めに炊飯した米とを柔らかくすることを特徴とする魚を用いた加工食品の製造方法。
【請求項3】
炊飯した米を所定の厚みを持つように配置し、
配置した米の上に骨を柔らかくする加工が施された魚を乗せ、
それらを真空包装用のプラスチック製の袋に入れ、
前記プラスチック製の袋内を真空にして前記米と前記魚とを成形することにより加工食品を製造することを特徴とする魚を用いた加工食品の製造方法。
【請求項4】
硬めに炊飯した米の上に魚を乗せて真空包装用のプラスチック製の袋に入れ、
前記真空包装用のプラスチック製の袋内を真空にすることにより、前記米と魚とを成形し、
前記プラスチック製の袋のまま加熱することにより、前記魚の骨と前記硬めに炊飯した米とを柔らかくした魚を用いた加工食品。
【請求項5】
請求項4に記載の魚を用いた加工食品において、
前記プラスチック製の袋のまま圧力を加えながら加熱することにより、前記魚の骨と前記硬めに炊飯した米とを柔らかくすることを特徴とする魚を用いた加工食品。
【請求項6】
炊飯した米の上に骨を柔らかくした魚を乗せて真空包装用のプラスチック製の袋に入れ、
前記真空包装用のプラスチック製の袋内を真空にすることにより、前記米と前記魚とを成形した魚を用いた加工食品。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか一項に記載の魚を用いた加工食品において、
前記魚は干物であり、
前記加工食品は、所定の厚みを持つ米飯の上に骨を柔らかくした干物が乗せられて、押し寿司のように成形されていることを特徴とする魚を用いた加工食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−249565(P2012−249565A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123880(P2011−123880)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(510042482)
【Fターム(参考)】