説明

鼓型堰ないし分割型堰付き浸漬ノズルを用いる極低炭素鋼又は低炭素鋼の連続鋳造方法

【課題】低炭素鋼等を鋳造するに際し、ホール性欠陥とパウダー性欠陥を同時に低減できる技術を提供する。
【解決手段】浸漬ノズル1の内側底面3に延在方向中央が狭窄された整流突部4を設けた浸漬ノズル1を採用する。溶鋼の渦は整流突部4の延在方向中央で拘束されるので、鋳型厚み方向の偏流のみならず鋳型幅方向の偏流をも低減できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素含有量C[wt%]を0.06以下とする極低炭素鋼又は低炭素鋼の連続鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先ず、炭素含有量C[wt%]が0.06以下である極低炭素鋼や低炭素鋼(以下、単に低炭素鋼等と称する。)を、炭素含有量C[wt%]が0.07以上である中高炭素鋼(以下、単に中高炭素鋼と称する。)と比較して種々の観点から紹介する。
【0003】
一般に、低炭素鋼等は、中高炭素鋼と比較して加工性に優れるので、プレス成型などに使われる薄鋼板に用いられることが多い。この低炭素鋼等は、連続鋳造の観点から言えば、凝固が開始する所謂液相線温度が高く、固液共存温度範囲も狭いため、著しい凝固遅れを生じ難く、従って、鋳造速度を高く設定しても安定して連続鋳造できるとされる。
【0004】
しかし、上記の低炭素鋼等については、下記第一及び第二の問題点が周知となっている。
【0005】
<第一の問題点>
低炭素鋼は、液相線温度が高く、固液共存温度範囲が狭いので、凝固が完了する固相線温度が高い。このため、安定した凝固殻厚みを確保し易い特徴があり、この点は、上述したように、生産性を高める上での大きなメリットとなっている。しかしながら、反面、凝固が進行することが望ましくない鋳型内の溶鋼メニスカス(即ち、溶鋼とその上に浮かべている鋳型フラックスとの界面)直下においても、僅かに温度が低下するだけで凝固が進行し易いという問題がある。メニスカスに凝固殻が形成される、所謂「皮張り」と呼ばれる現象や、鋳型銅板と溶融の間に成長する凝固上端がメニスカス側に折れ曲がって成長する、所謂「爪」と呼ばれる現象が発生すると、鋳型内の溶鋼中を浮上してきた気泡が鋳型フラックスを通って空気中に抜けることが遮られ、「皮張り」や「爪」の部分に気泡が捕捉され易くなる。この結果、スラブ表層には、ブローホール(スラブ表面に接続しているホール)やピンホール(スラブ表面に接続していないホール)といった欠陥(以下、ホール性欠陥と称する。)が生じ易い。
【0006】
なお、上記「介在物」は、主としてアルミナを指し、アルミニウム等により脱酸する通常の操業においては不可避的に発生する。また、上記「気泡」は、Ar気泡を指し、上記のアルミナが浸漬ノズル内壁に付着することのないよう浸漬ノズル内にArガスを吹き込む通常の操業においては不可避の存在である。また、ホール性欠陥は主としてAr気泡が固液界面に捕捉されることに起因するものであり、このホール性欠陥は介在物を伴うもの場合と介在物を伴わない場合とがある。
【0007】
<第二の問題点>
また、著しい凝固遅れを生じ難い低炭素鋼等の特長を生かすため、鋳造速度を高いレベルに設定したい。しかし、斯かる場合、溶鋼吐出流の流量が大きいため、メニスカスが波立ってパウダー巻き込みが発生し、スラブ表層には、パウダー性の欠陥(以下、パウダー性欠陥と称する。)が生じ易い。
【0008】
<第一・第二の問題点の総括>
そして、上記のホール性欠陥やパウダー性欠陥は、スラブを圧延し、薄鋼板製品とした段階で通称スリバーと称される表面欠陥(以下、スリバー欠陥と称する。)となり、薄鋼板製品の品質を著しく低下させてしまう。
【0009】
ところで、上記のホール性欠陥を防止するには、鋳型内で溶鋼を攪拌し、固液界面から気泡や介在物を洗い流すこと(以下、気泡等洗浄)が有効とされる。気泡等洗浄を実現する方法として、下記(a)〜(c)の手段が考えられる。
【0010】
(a)即ち、浸漬ノズルの溶鋼吐出孔の孔径を絞ったり、鋳造速度を一層高く設定して、溶鋼吐出流の流速を高め、固液界面近傍の溶鋼流速を上げる。(b)固液界面近傍の溶鋼に水平旋回性の流速を付与する鋳型内電磁攪拌MEMSを実施する。(c)鋳型内の溶鋼の流速が局所的に過大となることがないように、鋳型内に、2000〜5000gauss程度の静磁場を作用させる電磁ブレーキ(LMF)を実施する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記(a)〜(c)の何れの手段を採用しても、そもそも従来の浸漬ノズルを用いる場合は、溶鋼が鋳型厚み方向や鋳型幅方向に偏ったかたちで浸漬ノズルから吐出されるので、溶鋼流速にムラがあり、溶鋼流速が過大な領域と過小な領域が併存する。従って、過大な領域においてはパウダー巻き込みが発生するし、過小な領域においては気泡等洗浄の効果が十分には得られない。
【0012】
そこで、上記の溶鋼流速のムラ(以下、偏流とも称する。)を解消する技術として、例えば、特許文献1(国際公開第2005/070589号パンフレット)には、吐出方向に平行に延びた1本の尾根状突起をノズル底部内面に設けた浸漬ノズルが開示されている(同文献1図10及び図11参照)。この尾根状突起によれば、対向する2つの吐出孔に向かう安定な渦流が、尾根状突起により分けられた2つの領域にそれぞれ形成され、吐出流が安定する、とされる。特許文献2(特開2005−246442号公報)や特許文献3(特開2005−125389号公報)にも、似たような突起部らしきものが開示されている。特許文献4(特開2007−331003号公報)は、本願出願人によるものであって、鋳型厚み方向の偏流に配慮したものである。しかし、何れの技術も、鋳型厚み方向と鋳型幅方向の偏流に同時に配慮したものではないだろう。
【0013】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、低炭素鋼等を鋳造するに際し、ホール性欠陥とパウダー性欠陥を同時に低減できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0014】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0015】
本発明の観点によれば、炭素含有量C[wt%]を0.06以下とする極低炭素鋼又は低炭素鋼の連続鋳造は、以下のような方法で行われる。即ち、鋳型幅W[mm]を800〜2100とし鋳型厚みD[mm]を200〜320とする鋳型と、タンディッシュ内に保持される溶鋼を前記鋳型に注湯するのに供される有底円筒状の浸漬ノズルであって、該浸漬ノズルの内側底面から所定距離上方へ離れた位置において該浸漬ノズルの周壁に一対の対向する溶鋼吐出孔が穿孔されると共に、前記溶鋼吐出孔の流路断面積A[mm2]を直径[mm]を70〜120とする円の面積[mm]とし、前記溶鋼吐出孔の下向き吐出角θ1[deg.]を15〜55とし、前記溶鋼吐出孔の内周側開口縁の下端と前記内側底面との距離H[mm]を10〜50とするものと、を用いて連続鋳造する。鋳造速度Vc[m/min]を1.8〜2.5とし、溶鋼過熱度ΔT[℃]を20〜45とする。(X)前記浸漬ノズルの内側底面には、前記溶鋼吐出孔の穿孔方向に対して平行に延びる整流突部が設けられ、前記整流突部はその延在方向中央において狭窄され、前記浸漬ノズルの内径をDsnとし、前記浸漬ノズルの底面視における前記整流突部の上面の幅であって、該整流突部の延在方向端部における幅をaとし、前記浸漬ノズルの底面視における前記整流突部の上面の幅であって、該整流突部の延在方向中央における幅をbとし、前記整流突部の突出高さをhとすると、下記式(1)及び(2)を満たすように構成される。又は、(Y)前記浸漬ノズルの内側底面には、前記溶鋼吐出孔の穿孔方向に対して平行に延びる整流突部が同列状に一対で設けられ、前記浸漬ノズルの内径をDsnとし、前記一対の整流突部の相互離間距離をcとし、前記整流突部の突出高さをhとすると、下記式(1)及び(3)を満たすように構成される。
【0016】
【数1】

【0017】
【数2】

【0018】
【数3】

【0019】
以上の方法によれば、ホール性欠陥やパウダー性欠陥の少ない高品質なスラブを製造できる。従って、例えばこのスラブを薄鋼板コイルに圧延した場合は、スリバー欠陥の発生も抑えられる。
【0020】
また、鋳型内電磁攪拌強度MEMS[gauss]を500〜1000とするとよい。以上の方法によれば、鋳片に対する手入れ工程を省略できるので、生産性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の第一・第二実施形態を説明する。第一実施形態と第二実施形態は、連続鋳造するに際して使用する浸漬ノズルの形状が若干相違し、第一実施形態の特徴図は図3であり、第二実施形態の特徴図は図9である。先ず、第一実施形態に係る低炭素鋼等の連続鋳造方法を詳細に説明し、次いで、第二実施形態に係る浸漬ノズルを説明する。
【0022】
<第一実施形態>
(連続鋳造機の構成等)
先ず、図1を参照されたい。図1は、本発明の第一実施形態に係る連続鋳造機の正面概略図である。本図に示されるように、連続鋳造機100は、注湯される溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するための鋳型101と、図略のタンディッシュに保持される溶鋼を鋳型101へ所定流量で滑らかに注湯するための浸漬ノズル1と、鋳型101の直下から鋳造経路Qに沿って複数で並設されるロール対102と、を備える。本実施形態において前記の鋳造経路Qは、その上流側から順に、略鉛直方向に延びる垂直経路部と、この垂直経路部に接続され、円弧状に延びる円弧経路部と、更にその下流側に設けられ、水平方向に延びる水平経路部と、前記の円弧経路部及び水平経路部を滑らかに接続するための矯正経路部と、から成る。
【0023】
また、前記のロール対102の夫々は、鋳造対象としての鋳片を、両広面でもって挟持する一対のロール102aから構成される。この一対のロール102aのロール面間の最短距離としてのロールギャップは適宜の手段により調節可能に構成される。
【0024】
また、前記の鋳造経路Qの上流には、鋳型101内で形成され、該鋳型101から引き抜かれる凝固シェルに対して所定の流量で冷却水を噴霧する冷却スプレー103が適宜に設けられる。一般に、前記の鋳型101が1次冷却帯と称されるのに対して、この意味で、冷却スプレー103が配される経路部は2次冷却帯と称される。
【0025】
鋳型101から引き抜かれ、鋳造経路Qに沿って搬送される凝固シェルは、自然放熱や、上記冷却スプレー103などにより更に冷却されて収縮する。従って、上記のロール対102のロールギャップは、一般に、鋳造経路Qの下流側へ進むに連れて緩やかに狭くなるように設定される。
【0026】
以上の構成で、低炭素鋼等の連続鋳造を開始するときは、鋳型101へ溶鋼を注湯する前に予め図略のダミーバーを前記の鋳造経路Q内に挿入しておき、浸漬ノズル1を介して鋳型101へ溶鋼を所定流量で注湯し始めると共に上記ダミーバーを下流側へ所定速度で引き抜く。そして、このダミーバーは、所定のメニスカス距離に到達したときに、適宜の手段により回収する。これで、低炭素鋼等が連続的に鋳造されるようになる。
【0027】
次に、上記の連続鋳造機100の一般的な操業条件を簡単に紹介する。
・鋳型幅W[mm]は、800〜2100とする。
・鋳型厚みD[mm]は、200〜320とする。
・鋳型高さH[mm]は、800〜1000とする。
・鋳造速度Vc[m/min]は、1.0〜2.5とする。
・溶鋼過熱度ΔT[℃]は、10〜45とする。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、1〜3とする。
・鋳型内電磁攪拌強度MEMS[gauss]は、0〜1000とする。
・溶鋼成分は、当事者間の協定に基づく。代表的な成分は、CやSi、Mnである。これに、CrやTi、Ni、Al、Cuなどが適宜に添加される。通常P及びSは極力少なくなるように調整される。被削性その他の要求からあえて150ppm程度のP及びSを添加する場合もある。その他の不可避の不純物を含む。
【0028】
ここで、各用語を簡単に説明する。
・鋳型幅W[mm]及び鋳型厚みD[mm]は、鋳型101の上端で観念される。
・鋳造速度Vc[m/min]は、鋳片の引抜速度であって、前記複数のロール対102のうち最上流に配されるロール対102の周速度で観念される。
・溶鋼過熱度ΔT[℃]は、鋳型101内へ注湯される溶鋼の温度の指標である。詳細は、本明細書の末尾に記載する。
・メニスカス距離M[m]は、鋳型101内の溶鋼の湯面(メニスカス)を起点とし、鋳造経路Qに沿って観念する距離[m]を意味する。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、鋼1kgに対して用いられる冷却水の容積を意味する。この冷却水は、0.8〜37のメニスカス距離[m]で観念される上記の2次冷却帯で鋳片に対して噴射/噴霧される。
・鋳型内電磁攪拌強度MEMS[gauss]は、鋳型101内の溶鋼を攪拌するために作用される磁場の強度の指標である。詳細は、本明細書の末尾に記載する。
【0029】
次に、本実施形態に係る連続鋳造機100の具体的な操業条件を説明する。本実施形態に係る連続鋳造では、以下のような条件で操業する。
【0030】
・対象鋼種:炭素含有量C[wt%]を0.06以下とする極低炭素鋼又は低炭素鋼
・鋳型幅W[mm]:800〜2100
・鋳型厚みD[mm]:200〜320
・鋳造速度Vc[m/min]:1.8〜2.5
・溶鋼過熱度ΔT[℃]:20〜45(経験的に、20未満だとノズル詰まりが発生し、45を超えるとブレークアウトを頻発することが判っているから)
・鋳型内電磁攪拌強度MEMS[gauss]:0、望ましくは500〜1000(本実施形態では、鋳型101の長辺側に電磁コイルを埋設し、この電磁コイルに1〜4Hzの電圧を印加する。本実施形態では3Hzを採用する。これにより、鋳型の平面図である図16において太線矢印で示されるように、鋳型内の溶鋼に対して水平旋回性の流速が付与される。この旋回方向は本実施形態では逆転させないようにしている(所謂一方向旋回攪拌)。)
・浸漬ノズル:以下の形状等の浸漬ノズルを採用することとする。なお、以下に示される浸漬ノズル1は、以前に本願出願人が出願したものである(特願2006−355978号明細書、特願2006−356068号明細書)。この浸漬ノズル1は、各明細書に示されるように、鋳型厚み方向の偏流のみならず鋳型幅方向の偏流をも抑制できる有意な効果を奏するものである。
【0031】
(浸漬ノズルの概要)
以下、本実施形態に係る浸漬ノズル1の構成を説明する。図2は、本発明の第一実施形態に係る浸漬ノズルの斜視図である。本図に示される浸漬ノズル1は、タンディッシュ内に保持される溶鋼を鋳型内へ注湯するのに供されるものであって、有底円筒状に形成される。
【0032】
図3は、本発明の第一実施形態に係る浸漬ノズルの一部切欠き斜視図である。本図に示されるように、浸漬ノズル1の周壁には、一対の対向する溶鋼吐出孔2が、浸漬ノズル1の内側底面3から若干上方へ離れた位置に、穿孔される。そして、浸漬ノズル1の内側底面3には、溶鋼吐出孔2の穿孔方向に対して平行に延びる整流突部4が設けられる。この整流突部4は、その延在方向中央において狭窄される。端的に言えば、整流突部4はその延在方向中央に向かって狭窄される鼓型である。
【0033】
一般に、浸漬ノズル1の溶鋼吐出孔2から吐出される溶鋼の吐出流と、鋳型の幅方向及び厚み方向と、は技術的に密接に関連するので、各図2・3には、鋳型幅方向と鋳型厚み方向を具体的に図示した。図3に示されるように、一般に、浸漬ノズル1は、溶鋼吐出孔2の穿孔方向が鋳型幅方向と一致するように鋳型内に配される。各図2・3には、鋳型幅方向及び鋳型厚み方向の何れにも直交する関係にある浸漬ノズル1の軸心方向も併せて図示した。
【0034】
図4〜6を参照されたい。図4は、本発明の第一実施形態に係る浸漬ノズルの正面部分断面図である。図5は、本発明の第一実施形態に係る浸漬ノズルの側面部分断面図である。図6は、図5のVI−VI線矢視断面図である。図4及び図5に表れる各断面は、浸漬ノズル1の軸心(以下、単に軸心とも称する。)を含む。
【0035】
(浸漬ノズル1)
各図に示されるように浸漬ノズル1は、内径Dsnを有する有底円筒状であって、整流突部4と共に耐火物で一体形成される。
【0036】
(溶鋼吐出孔2)
溶鋼吐出孔2は、図5に示されるように浸漬ノズル1の内周から外周へ向かって若干斜め下向きに傾斜し、図4に示されるように浸漬ノズル1の内周面7においては丸みを帯びた矩形の輪郭を有し、浸漬ノズル1の外周面11においても同様に丸みを帯びた矩形の輪郭を有する(図2を併せて参照)。また、溶鋼吐出孔2は、図6に示されるように浸漬ノズル1の内周面7から外周面11へ向かって緩やかに幅広となるように形成される。ここで、図4において、溶鋼吐出孔2の内周側開口縁12の下端12bと内側底面3との間の距離を符号Hで観念する。一般に、この符号Hで観念される空間は湯溜り部と称され、主として鋳造開始時の溶鋼の飛び散りを防止する機能を有する。この距離H[mm]は10〜50とする。図4において平面的に現れる内周側開口縁12によって観念される、溶鋼吐出孔2の流路断面積A[mm2]は直径[mm]を70〜120とする円の面積[mm]とする。図5に示される溶鋼吐出孔2の下面5の水平に対する傾斜角として観念される下向き吐出角θ1[deg.]は概ね10〜55とする。
【0037】
(整流突部4)
図4及び図5における二点鎖線は、整流突部4と他の部分との境界のみを示すものである。<長さ>図5に示されるように整流突部4は、両端が内周面7に対して接続するように内側底面3上において十分延在しており、即ち、整流突部4の延在長さは浸漬ノズル1の内径Dsnと等しい。<突出高さ>また、本図において符号hで特定される整流突部4の突出高さは、前述した湯溜り部の高さである距離Hと等しい。即ち、本実施形態ではh=Hの関係が成立する。<断面>また、図4に示されるように整流突部4の長手に対して垂直な断面は、略台形状であって、内側底面3から離れる方向へ向かって狭窄される。本図における整流突部4の側面は、内側底面3を基準として概ね60〜85°で傾斜する。<狭窄形状>図6に示されるように、延在方向中央において狭窄されるとした整流突部4は、詳しくは、延在方向中央に向かってV字状に滑らかに狭窄される。符号aは、浸漬ノズル1の底面視における整流突部4の上面4aの幅であって、該整流突部4の延在方向端部における幅を示す。符号bは、浸漬ノズル1の底面視における整流突部4の上面4aの幅であって、該整流突部4の延在方向中央における幅を示す。符号sは、浸漬ノズル1の底面視における整流突部4の上面4aの投影面積を示す。符号Sは、内周面7や内径Dsnによって観念される浸漬ノズル1内の流路の断面積である。そして、本実施形態において、整流突部4は、下記式(1)・(2)を満たす。
【0038】
【数1】

【0039】
【数2】

【0040】
以上に、本実施形態に係る浸漬ノズル1の構成を説明した。なお、種々の観点から、面と面は鈍角で交差するものとし、面と面の交差する部位には適度な丸みを付すのが好ましい。
【0041】
(浸漬ノズル内の溶鋼の流れ)
次に、上記の浸漬ノズル1を採用することで実現される溶鋼の特異な流れを、図7〜8に基づいて説明する。図7は、従来の浸漬ノズルを用いた場合の溶鋼の流れをイメージした図である。図8は、本発明の第一実施形態に係る浸漬ノズルを用いた場合の溶鋼の流れをイメージした図である。各図7・8においては、溶鋼の流れを立体的に観念できるよう、正面断面図と側面断面図、平面断面図を並べて描いた。なお、溶鋼の流れの技術的な差異を強調するため、各図に描いた流れは、定量的側面については実際のものと異なる場合があることを予め理解されたい。
【0042】
<図7:従来(特許文献1等)の浸漬ノズルを用いた場合の溶鋼の流れ>
上述の特許文献1に記載されているような浸漬ノズルを採用すると、本図(a)・(c)に示されるように、内側底面の中央に延在する突部を挟む、一対の渦流が形成される。しかし、本図(b)に示されるように、この一対の渦流は、鋳型幅方向において全く拘束されないため、各渦流の基点は、突部の長手に沿って自由に移動してしまう。
【0043】
<図8:上記実施形態に係る浸漬ノズルを用いた場合の溶鋼の流れ>
これに対して、上記実施形態に係る浸漬ノズルを採用すると、本図(c)に示されるように、上記一対の渦流は整流突部の狭窄された形状と係合することで鋳型幅方向において拘束され、各渦流の基点は整流突部の長手に沿って移動できないようになり、もって、鋳型幅方向における偏流が低減される。
【0044】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態に係る浸漬ノズル1の構成を説明する。図9は、本発明の第二実施形態に係る浸漬ノズルの一部切欠き斜視図である。本図に示されるように、浸漬ノズル1の内側底面3には、溶鋼吐出孔2の穿孔方向に対して平行に延びる整流突部4が、溶鋼吐出孔2の穿孔方向に沿って同列状に一対で、相互に若干の距離を隔てて、設けられる。
【0045】
本図においても、図3と同様、鋳型幅方向や鋳型厚み方向、浸漬ノズル1の軸心方向を具体的に図示した。
【0046】
図10〜12を参照されたい。図10は、本発明の第二実施形態に係る浸漬ノズルの正面部分断面図である。図11は、本発明の第二実施形態に係る浸漬ノズルの側面部分断面図である。図12は、図11のXII−XII線矢視断面図である。図10及び図11に表れる各断面は、浸漬ノズル1の軸心を含む。
【0047】
(整流突部4)
図11における二点鎖線は、整流突部4と他の部分との境界のみを示すものである。<長さ>図11に示されるように各整流突部4は、内周面7を基点とし、浸漬ノズル1の軸心へ向かって延在する。図12における符号cは、一対の整流突部4の相互離間距離を示し、具体的には、内側底面3の面上において観念する一対の整流突部4の相互離間距離を示す。つまり、図11において、相互離間距離cは、整流突部4の下端をもって観念する。<突出高さ>また、本図において符号hで特定される整流突部4の突出高さは、前述した湯溜り部の高さである距離Hと等しい。即ち、本実施形態ではh=Hの関係が成立する。<断面>また、図10に示されるように整流突部4の長手に対して垂直な断面は、略台形状であって、内側底面3から離れる方向へ向かって狭窄される。本図における整流突部4の側面は、内側底面3を基準として概ね60〜85°で傾斜する。<狭窄形状>図12に示されるように、各整流突部4は、軸心へ向かって截頭V字状に狭窄される。符号aは、浸漬ノズル1の底面視における整流突部4の上面4aの幅の最大値を示す。符号dは、浸漬ノズル1の底面視における整流突部4の上面4aの幅の最小値を示す。本実施形態ではa>dの関係が成立する。符号sは、浸漬ノズル1の底面視における各整流突部4の上面4aの投影面積を示す。ただし、上記第一実施形態に係る上面4aの投影面積と、本実施形態に係る上面4aの投影面積と、を容易に比較できるよう、本図における符号sは、一方の整流突部4の上面4aの投影面積と、他方のそれと、を合計したものを示すこととして取り扱うのが合理的である。そして、本実施形態において、各整流突部4は、下記式(1)・(3)を満たす。
【0048】
【数1】

【0049】
【数3】

【0050】
以上に、本実施形態に係る浸漬ノズル1の構成を説明した。なお、種々の観点から、面と面は鈍角で交差するものとし、面と面の交差する部位には適度な丸みを付すのが好ましい。
【0051】
(浸漬ノズル内の溶鋼の流れ)
次に、上記の浸漬ノズル1を採用することで実現される溶鋼の特異な流れを、図7と図13に基づいて説明する。図13は、本発明の第二実施形態に係る浸漬ノズルを用いた場合の溶鋼の流れをイメージした図である。図13においては、溶鋼の流れを立体的に観念できるよう、正面断面図と側面断面図、平面断面図を並べて描いた。なお、溶鋼の流れの技術的な差異を強調するため、各図に描いた流れは、定量的側面については実際のものと異なる場合があることを予め理解されたい。
【0052】
<図7:従来(特許文献1等)の浸漬ノズルを用いた場合の溶鋼の流れ>
上述の特許文献1に記載されているような浸漬ノズルを採用すると、本図(a)・(c)に示されるように、内側底面の中央に延在する突部を挟む、一対の渦流が形成される。しかし、本図(b)に示されるように、この一対の渦流は、鋳型幅方向において全く拘束されないため、各渦流の基点は、突部の長手に沿って自由に移動してしまう。
【0053】
<図13:上記実施形態に係る浸漬ノズルを用いた場合の溶鋼の流れ>
これに対して、上記実施形態に係る浸漬ノズルを採用すると、本図(c)に示されるように、上記一対の渦流は一対の整流突部の間の間隙と係合することで鋳型幅方向において拘束され、各渦流の基点は整流突部の長手に沿って移動できないようになり、もって、鋳型幅方向における偏流が低減される。
【0054】
(技術試験)
以下、上記第一・第二実施形態に係る連続鋳造方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
【0055】
≪第一試験≫
先ず、上記第一実施形態に係る連続鋳造方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。
【0056】
≪第一試験:指標と、その評価方法、評価基準≫
先ず、各確認試験の評価に供される指標と、その評価方法、評価基準に関して説明する。
【0057】
≪第一試験:指標:スラブ品質≫
本指標「スラブ品質」は、主として、スラブ鋳片の表面に発生し得るホール性欠陥又はパウダー性欠陥に着目するものである。その評価方法は、以下の通りとする。即ち、先ず、ボトム側から3本目のスラブ鋳片(概ね12.5[m])の反基準面(反基準面とは、水平経路部において上側の面を意味する。)を検査用に深さ1mm程度スカーフ(チェックスカーフとも称する。)した後、目視で観察し、ホール性又はパウダー性の表面疵の有無を確認する。ボトム側から3本目のスラブ鋳片を検査対象とするのは、過去にスラブ鋳片を全量検査したことがあり、ボトム側から3本目のスラブ鋳片に、表面品質に関して代表性があることが判っているからである。また、検査用に深さ1mm程度スカーフするのは、黒皮(酸化鉄)を剥ぎ取って、ホール性欠陥やパウダー性欠陥の有無を確認可能とするためである。また、「ホール性の表面疵(ホール性欠陥)」とは「鋳型内に吹き込んだArガス気泡の痕跡として直径1mm以上の球形状の凹みが認められる疵」を意味し、ホール性の表面疵の凹みの曲面にはアルミナなどの介在物が付着している場合が多い。「パウダー性の表面疵(パウダー性欠陥)」とは「鋳型パウダーが鋳片に噛み込まれた形となっている外接円直径1mm以上の大きさの疵」を意味する。
【0058】
◆上記目視観察において如何なる欠陥も視認されなかった場合は、何ら手入れをすることなくそのまま圧延しても差し支えないので、この場合の試験はスラブ品質に関して「◎(大変良好)」と評価することとする。◆一方、上記目視観察において表面欠陥が視認されたが、上記反基準面をホットスカーフ又はグラインダーによって約1.5[mm]研削し再び上記目視観察したところ、該目視観察において如何なる表面欠陥も視認されなかった場合は、鋳片表面を手入れすることにより製品採取できるという意味で、この場合の試験はスラブ品質に関して「○(良好)」と評価することとする。◆しかし、上記研削の後の目視観察においても表面欠陥が視認された場合は、製品を採取できず、従って、この場合の試験はスラブ品質に関して「×(不良)」と評価することとする。なお、上記においてホットスカーフ等による切削量を1.5[mm]としたのは、深さ1.5[mm]以下の疵がない場合は圧延後の製品品質が良好であることが経験的に判っているからである。
【0059】
≪第一試験:指標:スリバー≫
本指標「スリバー」は、鋳片を適宜に圧延して得られた厚み1.0〜2.0mm程度の薄鋼板コイルの表面欠陥に着目するものである。その評価方法は、以下の通りとする。即ち、上記のスラブ品質の項目において「◎(大変良好)」と評価されたか、「○(良好)」と評価された鋳片は、その後、「加熱→熱間圧延→酸洗→冷間圧延→連続焼鈍」という工程を経て、厚み1.0〜2.0mm程度の薄鋼板コイルとされる。そして、この薄鋼板コイルの表面を圧延方向に概ね3000m程度、目視観察し、目視観察を通じて発見した表面欠陥を考察する。具体的には、薄鋼板コイルの表面に視認し得る表面欠陥は、上述のスリバー欠陥(ホール性欠陥やパウダー性欠陥によるもの、圧延後に圧延方向に沿って表れる概ね20mm以上のスジ状の疵)と、例えば圧延ローラ表面疵などの他の要因によるものと、に容易に分類できるので、前者たるスリバー欠陥が圧延方向100mあたり何個確認できたかを記録する。この圧延方向100mあたりのスリバー欠陥の個数をスリバー指数と定義する。
【0060】
◆上記スリバー指数が0.10以下である薄鋼板コイルは、通常の等級として問題なく出荷できるので、この場合の試験を「○(良好)」と評価することとする。◆外板向けの表面品質厳格材では、スリバー指数が0.07以下であることが求められるので、この厳しい条件を満たす薄鋼板コイルに係る試験を「◎(大変良好)」と評価することとする。◆一方、上記スリバー指数が0.11以上である薄鋼板コイルは製品として出荷できないので、この場合の試験を「×(不良)」と評価することとする。
【0061】
≪第一試験:共通試験方法≫
次に、各確認試験に共通する試験方法について説明する。後記する表1を併せて参照されたい。以下、表1中、試験No.1で示される確認試験の試験方法について説明する(特記ない限り、上述した連続鋳造の操業に倣う。)。試験No.1で示される確認試験は、あるチャージ分(1チャージ250[ton])の連造鋳造に1対1の関係で対応する。
【0062】
先ず、試験No.1に対応する取鍋に収容されている溶鋼の成分を、タンディッシュへ注湯する前にサンプリングして確認し、その溶鋼の成分を記録する。次に、試験No.1のチャージを鋳造するときに用いられる鋳型101と浸漬ノズル1に関する内容を記録する。そして、鋳造速度Vc[m/min]と鋳型内電磁攪拌強度MEMS[gauss]の設定値ないし測定値を記録すると共に、鋳造中、溶鋼過熱度ΔT[℃]を測定して記録する。更に、鋳造された1次切断スラブにおいてスラブ品質を調査し、上記圧延後、スリバー欠陥を調査し、夫々記録する。
【0063】
≪第一試験:共通試験条件≫
次に、各確認試験に共通する試験条件について説明する。鋳型高さH[mm]は900とし、比水量Wt[L/kgSteel]は、Wt=Vc+0.75とする。
【0064】
≪第一試験:個別試験条件及びその試験結果≫
次に、各確認試験の個別の試験条件とその試験結果を下記表1に示す。下記表1において、列タイトル「(A) mm」は「溶鋼吐出孔の流路断面積A[mm2]を円の面積[mm2]に換算したときのその円の直径[mm]」を意味する。列タイトル「鋳造」は「正常に連続鋳造を実施できたか否か」を意味し、「○」は正常を意味し、「×」は異常を意味する。列タイトル「スラブ品質」には、前述したスラブ品質についての評価に付記するかたちで、具体的な欠陥の別を記載した。なお、下記表1において、試験No.11と試験No.34では、整流突部の上端が欠けてしまうという特別な問題が発生した。
【0065】
【表1】

【0066】
≪第二試験≫
次に、上記第二実施形態に係る連続鋳造方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。
【0067】
≪第二試験:指標と、その評価方法、評価基準≫
各確認試験の評価に供される指標と、その評価方法、評価基準に関しては、上記第一試験と同様である。
【0068】
≪第二試験:共通試験方法≫
共通試験方法については、上記第一試験と同様である。
【0069】
≪第二試験:共通試験条件≫
共通試験条件については、上記第一試験と同様である。
【0070】
≪第二試験:個別試験条件及びその試験結果≫
次に、各確認試験の個別の試験条件とその試験結果を下記表2に示す。下記表2において、各列タイトルは上記第一試験と同様である。なお、下記表2において、試験No.65と試験No.88では、整流突部の上端が欠けてしまうという特別な問題が発生した。
【0071】
【表2】

【0072】
(まとめ1)
以上説明したように、炭素含有量C[wt%]を0.06以下とする極低炭素鋼又は低炭素鋼の連続鋳造は、以下のような方法で行われる。即ち、鋳型幅W[mm]を800〜2100とし鋳型厚みD[mm]を200〜320とする鋳型101と、タンディッシュ内に保持される溶鋼を前記鋳型101に注湯するのに供される有底円筒状の浸漬ノズル1であって、該浸漬ノズル1の内側底面3から所定距離上方へ離れた位置において該浸漬ノズル1の周壁に一対の対向する溶鋼吐出孔2が穿孔されると共に、前記溶鋼吐出孔2の流路断面積A[mm2]を直径[mm]を70〜120とする円の面積[mm]とし、前記溶鋼吐出孔2の下向き吐出角θ1[deg.]を15〜55とし、前記溶鋼吐出孔2の内周側開口縁12の下端12bと前記内側底面3との距離H[mm]を10〜50とするものと、を用いて連続鋳造する。鋳造速度Vc[m/min]を1.8〜2.5とし、溶鋼過熱度ΔT[℃]を20〜45とする。(X)前記浸漬ノズル1の内側底面3には、前記溶鋼吐出孔2の穿孔方向に対して平行に延びる整流突部4が設けられ、前記整流突部4はその延在方向中央において狭窄され、前記浸漬ノズル1の内径をDsnとし、前記浸漬ノズル1の底面視における前記整流突部4の上面4aの幅であって、該整流突部4の延在方向端部における幅をaとし、前記浸漬ノズル1の底面視における前記整流突部4の上面4aの幅であって、該整流突部4の延在方向中央における幅をbとし、前記整流突部4の突出高さをhとすると、下記式(1)及び(2)を満たすように構成される。又は、(Y)前記浸漬ノズル1の内側底面3には、前記溶鋼吐出孔2の穿孔方向に対して平行に延びる整流突部4が同列状に一対で設けられ、前記浸漬ノズル1の内径をDsnとし、前記一対の整流突部4の相互離間距離をcとし、前記整流突部4の突出高さをhとすると、下記式(1)及び(3)を満たすように構成される。
【0073】
【数1】

【0074】
【数2】

【0075】
【数3】

【0076】
以上の方法によれば、ホール性欠陥やパウダー性欠陥の少ない高品質なスラブを製造できる(上記表1及び表2参照)。従って、例えばこのスラブを薄鋼板コイルに圧延した場合は、スリバー欠陥の発生も抑えられる。
【0077】
(まとめ2)
また、鋳型内電磁攪拌強度MEMS[gauss]を500〜1000とするとよい。以上の方法によれば、鋳片に対する手入れ工程を省略できるので(上記表1及び表2)、生産性が向上する。
【0078】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0079】
即ち、鋳型内の溶鋼に対して水平旋回性の流速を付与する鋳型内電磁攪拌は省略してもよいし(各表1、2)、この鋳型内電磁攪拌に代えて電磁ブレーキを実施してもよい。
【0080】
(幅aと幅dとの大小関係について)
以下、上記第二実施形態に係る整流突部4の形状について、図12、14、15に基づいて付言する。図14、15は、本発明の第二実施形態の第一、第二変形例に係る浸漬ノズルの各断面図である。即ち、上記第二実施形態では、図12に示されるように各整流突部4は、内周面7から軸心へ向かってV字状に狭窄されながら延在し、この延在は、軸心に至る前に終了する、いわば台形形状となっている。上記実施形態において、幅a(台形の下底に相当する。)と幅d(台形の上底に相当する。)の比率は、概ね、a:b=1.5:1となっている。
【0081】
・第一変形例
次に、図14に基づいて、上記第二実施形態に係る整流突部4の第一変形例を説明する。本変形例では、本図に示されるように整流突部4は、内周面7から軸心へ向かって狭窄されることなく直線的に延在し、この延在は、軸心へ至る前に終了する、いわば長方形形状とされる。上記実施形態における符号a、符号d(図12)で表現するならば、a:d=1:1の関係が成立している。このように、上記第二実施形態に係る整流突部4の延在態様を直線的に変更した浸漬ノズル1も採用して各種の技術的な調査を行ってみたが、現時点では、上記第二実施形態と本変形例の効果上の特筆すべき差異はないと判断している。
【0082】
・第二変形例
次に、図15に基づいて、上記第二実施形態に係る整流突部4の第二変形例を説明する。本変形例では、本図に示されるように整流突部4は、内周面7から軸心へ向かって狭窄されながら延在し、この延在は、軸心へ至る前に滑らかに終了する、角の丸められたV字状とされる。このように、上記第二実施形態に係る整流突部4の延在態様を「角の丸められたV字状」に変更した浸漬ノズル1も採用して各種の技術的な調査を行ってみたが、上記変形例と同様、現時点では、上記第二実施形態と本変形例の効果上の特筆すべき差異はないと判断している。
【0083】
以下、参考資料である。
<溶鋼過熱度ΔT[℃]>
定義:鋳型内へ注湯される溶鋼の温度の指標である。
(1)『測定時刻』は、「事前に充分に加熱されたタンディッシュを用いて鋳造を開始して、同一鋳型幅で鋳造速度が一定になり、かつ、タンディッシュ内溶鋼の体積が一定になる、即ち、取鍋からタンディッシュへの注湯量速度(ton/min)とタンディッシュから鋳型への注湯量速度(ton/min)が略一致し、定常状態に至った時刻」とする。
(2)『測定地点』は、以下の通りとする。即ち、「水平位置」はタンディッシュの底面に備え付けられる浸漬ノズルの軸心とし、「鉛直位置」はタンディッシュ内に保持されている溶鋼の湯面を基準として深さ100mmとする。
(3)『測定器具』は、消耗型熱電対を用いる構成とする。上記の通り、深さ100mmの地点に消耗型熱電対を浸漬させることから、適宜に用意した棒の先端に消耗型熱電対を取着した構成が適する。
(4)上記の『測定時刻』及び『測定地点』、『測定器具』に準じて測定した溶鋼の温度と、溶鋼の溶鋼成分により唯一に求められる液相線温度と、を比較する。そして上述した溶鋼過熱度ΔT[℃]は、前者から後者を引いた残りとして求めることとする。
【0084】
<鋳型内電磁攪拌強度MEMS[gauss]>
定義:鋳型内の溶鋼を攪拌するために作用される磁場の強度の指標である。
(1)『測定時刻』は、鋳型が空の状態であれば、任意である。
(2)『測定地点』は、以下の通りとする。即ち、「水平位置」は、(i)鋳型幅方向においては中央とし、(ii)鋳型厚み方向においては鋳型内壁面から中心へ向かって15[mm]とし、(iii)鋳型高さ方向においては鋳型に埋設される電磁コイルの鉄芯中心と揃えるものとする。この測定地点を図16において符号Bで図示したので、図16を併せて参照されたい。
(3)『測定器具』は、適宜のガウスメータを用いる。
(4)上記の『測定時刻』及び『測定地点』、『測定器具』に準じて複数回測定する。そして上述した鋳型内電磁攪拌強度MEMS[gauss]は、上記複数の測定値を平均化して求めることとする。
(5)なお、種々の観点から、上記鋳型内電磁攪拌強度MEMS[gauss]は0〜1000が好ましいとされ、鋳型内の溶鋼に作用される磁場の周波数[Hz](「磁場の周波数」とは、上記電磁コイルに導通される電流が1秒間に向きを変える回数を意味する。)は1〜4が好ましいとされ、一般に、この磁場の周波数[Hz]として2〜3が採用される。上記表1及び表2に係る試験では、一律に、3Hzとした。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の第一実施形態に係る連続鋳造機の正面概略図
【図2】本発明の第一実施形態に係る浸漬ノズルの斜視図
【図3】本発明の第一実施形態に係る浸漬ノズルの一部切欠き斜視図
【図4】本発明の第一実施形態に係る浸漬ノズルの正面部分断面図
【図5】本発明の第一実施形態に係る浸漬ノズルの側面部分断面図
【図6】図5のVI−VI線矢視断面図
【図7】従来の浸漬ノズルを用いた場合の溶鋼の流れをイメージした図
【図8】本発明の第一実施形態に係る浸漬ノズルを用いた場合の溶鋼の流れをイメージした図
【図9】本発明の第二実施形態に係る浸漬ノズルの一部切欠き斜視図
【図10】本発明の第二実施形態に係る浸漬ノズルの正面部分断面図
【図11】本発明の第二実施形態に係る浸漬ノズルの側面部分断面図
【図12】図11のXII−XII線矢視断面図
【図13】本発明の第二実施形態に係る浸漬ノズルを用いた場合の溶鋼の流れをイメージした図
【図14】本発明の第二実施形態の第一変形例に係る浸漬ノズルの各断面図
【図15】本発明の第二実施形態の第二変形例に係る浸漬ノズルの各断面図
【図16】鋳型の平面図
【符号の説明】
【0086】
1 浸漬ノズル
4 整流突部
100 連続鋳造機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有量C[wt%]を0.06以下とする極低炭素鋼又は低炭素鋼を、
鋳型幅W[mm]を800〜2100とし鋳型厚みD[mm]を200〜320とする鋳型と、
タンディッシュ内に保持される溶鋼を前記鋳型に注湯するのに供される有底円筒状の浸漬ノズルであって、該浸漬ノズルの内側底面から所定距離上方へ離れた位置において該浸漬ノズルの周壁に一対の対向する溶鋼吐出孔が穿孔されると共に、前記溶鋼吐出孔の流路断面積A[mm2]を直径[mm]を70〜120とする円の面積[mm]とし、前記溶鋼吐出孔の下向き吐出角θ1[deg.]を15〜55とし、前記溶鋼吐出孔の内周側開口縁の下端と前記内側底面との距離H[mm]を10〜50とするものと、
を用いて連続鋳造する、極低炭素鋼又は低炭素鋼の連続鋳造方法において、
鋳造速度Vc[m/min]を1.8〜2.5とし、
溶鋼過熱度ΔT[℃]を20〜45とし、
(X)
前記浸漬ノズルの内側底面には、前記溶鋼吐出孔の穿孔方向に対して平行に延びる整流突部が設けられ、
前記整流突部はその延在方向中央において狭窄され、
前記浸漬ノズルの内径をDsnとし、前記浸漬ノズルの底面視における前記整流突部の上面の幅であって、該整流突部の延在方向端部における幅をaとし、前記浸漬ノズルの底面視における前記整流突部の上面の幅であって、該整流突部の延在方向中央における幅をbとし、前記整流突部の突出高さをhとすると、下記式(1)及び(2)を満たすように構成される、又は、
(Y)
前記浸漬ノズルの内側底面には、前記溶鋼吐出孔の穿孔方向に対して平行に延びる整流突部が同列状に一対で設けられ、
前記浸漬ノズルの内径をDsnとし、前記一対の整流突部の相互離間距離をcとし、前記整流突部の突出高さをhとすると、下記式(1)及び(3)を満たすように構成される、
ことを特徴とする、極低炭素鋼又は低炭素鋼の連続鋳造方法
【数1】


【数2】


【数3】

【請求項2】
請求項1に記載の極低炭素鋼又は低炭素鋼の連続鋳造方法において、
鋳型内電磁攪拌強度MEMS[gauss]を500〜1000とする、
ことを特徴とする極低炭素鋼又は低炭素鋼の連続鋳造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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