説明

(+)−エリトロ−メフロキンの医薬組成物及びその使用

1〜60mgの(+)−エリトロ−メフロキンを含む単位剤形の形態の医薬組成物。この組成物は、毎日の投与が意図されるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(+)−エリトロ−メフロキンの組成物、及び炎症性障害の治療におけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
メフロキンラセミ体(ラリアム)は、公知の抗マラリア薬である。それは、典型的には、週ごとに摂取するための250mgの当該活性成分を含む錠剤として製剤化される。ラリアムは、周知の副作用を有する。
【0003】
Bates et al, Int. Arch. Allergy Appl. Immunol. (1998)86: 446-452 には、ラセミのメフロキンがヒト好中球脱顆粒を刺激することが開示されている。そのデータはメフロキンが炎症誘発性であることを示しているが、メフロキンは抗炎症剤としての有用性を有しうることが記載されている(証拠はない)。そのような有用性は、長期的治療においては、ラリアムの公知の副作用により、そして特に心臓疾患を有する患者において危うくされるであろう。
【0004】
WO02/19994は、単一のエナンチオマー(+)−エリトロ−メフロキンが、慢性状態、特に慢性炎症性状態、例えば、変形性関節症及びリウマチ様関節炎の治療において有用であることを初めて開示している。この出版物は、所定のエナンチオマーが副作用を大いに減少させたことを報告している。
【0005】
炎症性状態は、抗TNF抗体により治療されている。いくらかの(40%もの)患者がこの治療に抗療性であることが知られている。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、(+)−エリトロ−メフロキンを用いる治療、例えば、マラリア及び炎症性状態の治療に利用することが出来る治療濃度域があるという理解に少なくとも部分的に基づく。従って、新規な医薬組成物は、(+)−エリトロ−メフロキンを1〜60mg含み、その逆エナンチオマーを実質的に含まない、単位剤形の形態である。この剤形は、毎日摂取されることが意図される。
【0007】
(+)−エリトロ−メフロキンの使用は、抗TNF抗体との組み合わせで特に価値がある。そのような抗体は(+)−エリトロ−メフロキンの広く、中程度のIL−1アンタゴニスト活性を補完し、この組み合わせは抗TNF治療に応答しない患者(上記した通り)に関連する問題の克服に役立つ。従って、そのような組み合わせ治療は、本発明の更なる側面を構成する。
【0008】
(+)−エリトロ−メフロキンを用いることの別の特徴は、メトトレキサートのような免疫抑制剤の望ましくない効果を減少させる一方で効力を維持することである。従って、そのような薬剤との組み合わせ又は共投与は、本発明の更なる側面である。
【好ましい態様の記載】
【0009】
メフロキンは長い半減期に関連するという事実にも関わらず、本発明により提案される毎日の投与は、当該活性材料の濃度におけるピーク及び谷を減少させる。治療されている患者の系における薬物のこの比較的均一なレベルを考慮すると、良好な治療の見込みが増加する。
【0010】
投与されるべき薬剤の量は、患者のタイプ、治療されている状態の性質、及び投与経路のような通常の因子を考慮に入れて、当業者によって容易に決定され得る。エナンチオマーの量は、ラセミ体についての量より高いか又は同じであってもよいし、或いは他の薬物の共投与に依存して修飾してもよい。
【0011】
活性成分の投与量は、ラリアムの投与に関連したものよりも低くてもよい。本発明の一日投与量は、少なくとも5mgでよく、しばしば15、20、又は40mg以上でよい。女性には比較的低い投与量が好ましい。
【0012】
本発明における使用のために、活性成分は、例えば、担体、賦形剤、または希釈剤と共に製剤化されてよく、ラセミ体について既に提案されているものを包含する当該技術分野において知られている手順により投与されてもよい。適する組成は、意図された投与経路に依存する。その投与形路は、例えば、経口、局所、経鼻、経直腸、舌下、バッカル、又は経皮であり得る。持続性、遅延、持効性又は即時放出組成物を用いることができる。
【0013】
当該製剤は、好ましくは、毎日の投与が意図された単位剤形である。それは、例えば、カプセル剤、アンプル剤であるか、又は好ましくは、充填剤、圧縮助剤(compression aid)、崩壊剤、湿潤剤及び滑沢剤を典型的に含有する錠剤であり得る。
【0014】
治療され得る状態には、軟骨破壊、炎症性状態に関与する状態、並びにIL−2及びIL−6によって媒介される状態、例えば、リウマチ様関節炎、喘息、乾癬、乾癬性関節炎、クローン病、過敏性腸症候群、及び全身性エリテマトーデスが含まれる。他の関連する状態は、潰瘍性大腸炎、COPD及び喘息である。その患者は、CNS副作用の素因があってもよく、及び/又は別の薬物、例えば、TNF抗体又はメトトレキサートのような免疫抑制剤との併用療法を受けていてもよい。
【0015】
(+)−エリトロ−メフロキンの使用は、組織破壊を伴うことなく所望の治療効果を提供し得、比較的高い投与量で安全に投与することができる。メフロキンの所望のエナンチオマーは、他のものに対して少なくとも50%、70%、90%、又は99%過剰であり得る。活性成分は、いずれの活性形態でも、例えば、塩又は非塩の形態で用いられてもよい。
【0016】
次の検討は、本発明がそれに基づいている証拠を提供する。
【実施例】
【0017】
組み合わせ
(+)−エリトロ−メフロキンの200mg錠剤であって、(A)4.5mg、(B)9mg、及び(C)18mgの当該薬剤をそれぞれ含有するものを製造した(4.92mg、9.86mg、及び19.71mgのHCl塩)。各製剤は、さらに76mgの微結晶セルロース、7mgのポビドン、10mgのクロスポビドン、2mgのラウリル硫酸ナトリウム、2mgのステアリン酸マグネシウム、及びラクトース(A、B及びCにおいて、それぞれ、98.07mg、93.14mg、及び87.29mg)を含有した。
【0018】
それら製剤は、メトトレキサート治療のバックグラウンドにおいて用いられた。有害な事象が次の頻度で観測された。
【0019】
プラセボ−36.8%
A − 5.9%
B −22.2%
C −16.7%
従って、(+)−エリトロ−メフロキンとメトトレキサートとの組み合わせは、メトトレキサート単独よりも低い有害事象頻度しか有さない。
【0020】
効果
個々の対象についてのDAS28スコア(http://www/das-score.nl/www.das-score.n./DAS CRP.html)が製剤B(9mg(+)−エリトロ−メフロキン)について記録された。その結果は、個々のDASスコアを訪問(Visit)に対してプロットした図1中に示されている。DASスコアの減少が、全ての患者について観測された;平均減少値は、本検討の過程を通じて0.71ユニットであった(1ヶ月)。
【0021】
CNS利益
ラセミのメフロキンは、旅行者研究において試験する場合、気分状態質問のプロファイル(Profile of Mood States Questionnaire)についての総気分障害(TMD)において7.5単位の増加を示す(van Riemskijk et al, Clin, Pharmacol. Ther. 2002: 72 294-301)。臨床研究においては、メトトレキサートのバックグラウンド治療を行っている患者はプラセボか、又は製剤A、B若しくはCを1ヶ月間毎日受容し、後者はTMDスコアを減少させた(即ち、患者の気分を向上させた)。これは、TMD(平均スコア)を時間(日)に対してプロットした図2に示されている;◆はプラセボを表し、▲はAを表し、■はBを表し、★はCを表す。
【0022】
PKプロファイル
製剤Cを用いる一日投与量は、203ng/mlの最小血漿濃度及び263ng/mlの最大血漿濃度を与え、60ng/mlの差があった。一日あたり36mgの投与量は、通常のラセミのメフロキン投与量と同等であろう。これは、約120ng/mlである最小及び最大血漿濃度の違いを有すると期待でき、この値は、ラセミメフロキンの週ごとの投与で見られる血漿濃度の変動(約500ng/ml)と有意に異なる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】個々のDASスコアをVisitに対してプロットした図である。
【図2】TMD(平均スコア)を時間に対してプロットした図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(+)−エリトロ−メフロキンを1〜60mg含み、その逆のエナンチオマーを実質的に含まない、単位剤形の形態の医薬組成物。
【請求項2】
当該単位剤形が、担体及び/または希釈剤を含む錠剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
当該単位剤形が40mgまでの(+)−エリトロ−メフロキンを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
当該単位剤形が20mgまでの(+)−エリトロ−メフロキンを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
当該単位剤形が15mgまでの(+)−エリトロ−メフロキンを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
当該単位剤形が少なくとも5mgの(+)−エリトロ−メフロキンを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
炎症性状態の治療における使用のための請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物の製造のための(+)−エリトロ−メフロキンの使用。
【請求項8】
当該状態が変形性関節症である、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
当該状態がリウマチ様関節炎である、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
当該状態が抗TNF抗体によっても治療される、請求項7〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
治療の対象が免疫抑制剤をも受容している、請求項7〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
当該免疫抑制剤がメトトレキサートである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
(+)−エリトロ−メフロキンと抗TNF抗体とを含む、炎症性状態の治療における同時、別々、または逐次的な使用のための組み合わせ製剤としての製品。
【請求項14】
(+)−エリトロ−メフロキンと免疫抑制剤とを含む、免疫抑制も必要とされる場合の炎症性状態の治療における同時、別々、または逐次的な使用のための組み合わせ製剤としての製品。
【請求項15】
当該免疫抑制剤がメトトレキサートである、請求項14に記載の製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−529488(P2007−529488A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503408(P2007−503408)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001014
【国際公開番号】WO2005/089762
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506298976)ソセイ・アール・アンド・ディー・リミテッド (10)
【Fターム(参考)】