説明

(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(−)−カテキン、(+)−エピカテキン、及びこれらの5,7,3’,4’−テトラベンジル化誘導体の調製

5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンと5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンのラセミ混合物を調製する方法として、(i)2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-アセトフェノンと3,4-ビス- (ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドを縮合し、得られた化合物を環化し、さらにそれを酸化する、(ii)(E)-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オールをジヒドロキシル化し、1 ,2-ジオールを還元する、あるいは(iii)3,5-ビス(ベンジルオキシ)フェノールを、(E)-3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェノールとカップリング反応させ、得られたカルコン化合物を環化させる、などが挙げられる。カテキン及びエピカテキンのベンジル基で保護したエピマーを調製する方法は、7段階の工程を含む。すなわち、3,4-ビス- (ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドと2-ヒドロキシ-4,6-ベンジルオキシ-アセトフェノンをカップリング反応させ、カルコン化合物を形成する。カルコン化合物を選択的に還元しアルケンにする。アルケンのフェノール基を保護する。保護基を導入したアルケンを不斉ジヒドロキシ化する。得られた化合物を脱保護化してから環化し、最後に加水分解する。これらの工程から得られたエピマーを化学的に分割するか、あるいはキラル分離用高圧液体クロマトグラフィーで分離する。また、ジベンゾイル-L-酒石酸モノメチルエステルを用いて、ラセミ混合物からエナンチオマー的に純粋な5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンを調製する方法も開示する。さらには、ジベンゾイル-L-酒石酸モノメチルエステルを調製するための改良方法についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、「5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンの合成と精製」として2005年6月29日に出願した、米国仮特許出願第60/695,031号の優先権を主張する国際特許出願である。
【技術分野】
【0002】
本発明は、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキン、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-エピカテキン、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)- カテキン、及び5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-エピカテキンを調製、精製する方法、さらに、これらを脱ベンジル化して、(+)-カテキン、(-)- エピカテキン、(-)-カテキン、(+)-エピカテキンを調製、精製する方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
最近の研究では、カテキンやエピカテキン等のポリフェノール、エピカテキンガレートやエピガロカテキンガレートといったこれらの誘導体、及び、プロシアニジンと呼ばれるこれらのオリゴマーの生物活性が報告されている。
【0004】
カテキン、エピカテキン、及びプロシアニジンは、ほとんどの植物種が有する自然界に存在するポリフェノールである。これらは、ココア、お茶、果物、野菜、松樹皮に多く含まれている。実施例にあるように、 (-)-エピカテキン、(+)-カテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、及びエピガロカテキンガレートは、乾燥した茶葉の中に、最高で30質量%ほど含まれている。これらには、抗腫瘍活性、抗変異原活性及び抗酸化活性等の生物活性があることが報告されている。(+)-カテキン、(-)-エピカテキン、(-)-カテキン、及び (+)-エピカテキンは、以下に示された構造を持つフラバン-3-オールである。
【化1】

【0005】
(+)-カテキンと(-)-エピカテキンは、自然界で最も豊富に存在するエピマーである。カテキン及び/又はエピカテキンのオリゴマーは、プロシアニジンと呼ばれる。直鎖状プロシアニジンでは、主に、構成単量体が(4β,8) 又は (4β,6)-結合でつながっている。
【0006】
(4β,8)及び(4β,6)-結合を持つプロシアニジンを合成する方法は、2001年3月27日に発行された L. J. Romanczyk, Jr.らの特許文献1、及び2002年7月16日に発行された関連特許である特許文献2、2003年3月4日に発行された特許文献3、及び2005年2月1日に発行された特許文献4で開示されている。 (4β,8)及び(4β,6)-結合を持つプロシアニジンを調製する別の方法は、2005 年3月8日 L. J. Romanczyk, Jr等に発行された特許文献5、及び2006年3月21日に発行された関連特許である特許文献6で開示されている。
【0007】
オリゴマーである、エピカテキン-(4β,8)-カテキン、又はエピカテキン-(4b,8)-エピカテキンを調製する改良法は、 Allan P. Kozikowski等により2004年6月17日に公開された特許文献7、及び2005年1月27日に公開された特許文献8で開示されている。
(8,8)、(6,6)又は(6,8)-結合を持つ新たなプロシアニジンを調製する方法は、2000年12月5日 Werner Tueckmantel等に発行された特許文献9で開示されている。同様の結合を持つプロシアニジンを調製する別の合成方法は、前述した特許文献5で開示されている。
(4β,8)−結合を持つ新たなプロシアニジンを調製する方法は、2002年11月5日に Allan P. Kozikowski等に発行された特許文献10、及び2004年4月13日に発行された関連特許である特許文献11で開示されている。
【特許文献1】米国特許第6,207,842号明細書
【特許文献2】米国特許第6,420,572号明細書
【特許文献3】米国特許第6,528,664号明細書
【特許文献4】米国特許第6,849,749号明細書
【特許文献5】米国特許第6,864,377号明細書
【特許文献6】米国特許第7,015,338号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/0116718号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0020512号明細書
【特許文献9】米国特許第6,156,912号明細書
【特許文献10】米国特許第6,476,241号明細書
【特許文献11】米国特許第6,720,432号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
プロシアニジン及びその誘導体に関して詳細な生物学的研究を行なうためには、スケールアップした合成に必要な純度の市販の物質から、カテキンとエピカテキンの単量体、及びそれらのベンジル化前駆体を大量生産する効率的な合成方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実質的に5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキン及び5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンから成るベンジル基で保護したエピマーのラセミ混合物を調製する方法は、
(a) 塩基の存在下で、2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-アセトフェノンと3,4-ビス- (ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドを縮合し、(E)-1-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オンを形成し、
(b) 還元条件下で、工程(a)で得られた化合物を環化させ、5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル-2H-クロメンを形成し、
(c) 工程(b)で得られた化合物を酸化して、ラセミ混合物を形成し、
(d) 必要に応じて、分取用高圧液体クロマトグラフィーを用いて、工程(c)で得られたラセミ混合物を化学的に分割するか、あるいは工程(c)で得られたラセミ混合物をキラル分離することにより、ベンジル基で保護したエピマーを回収する、
各工程を有してなる。エピマーは、水素雰囲気下、酢酸エチル中において、過剰の水酸化パラジウムを用いて脱ベンジル化される。その際、バルーンを用いて、約2〜約3時間かけて行なわれるのが好ましい。
【0010】
(E)-1 -(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス-(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オンを調製するための改良方法は、水素化ナトリウムの存在下、N,N-ジメチルホルムアミド中で2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-アセトフェノンと3,4-ビス-(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドを縮合し、続いて、低温下、エタノールとテトラヒドロフランの混合液中で、水素化ホウ素ナトリウム及び塩化セリウム7水和物と反応させる工程を有してなる。収率は約35〜40%である。
【0011】
工程 (b)で得られる5,7-ビス(ベンジルオキシ)フェニル-2H-クロメンは、新規な化合物である。これは、還元条件下で、(E)-1-(2,4- ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オンを環化することにより調製される。
【0012】
主成分のジアステレオマーである5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-で保護された(±)-カテキンと、副成分のジアステレオマーである5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンから実質的に成るラセミ混合物を調製する別の方法は、
(a) 5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-ビス(ベンジルオキシ)フェニル-2H-クロメンをジヒドロキシル化して、ラセミ体5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)クロマン-3,4-ジオールを生成し、
(b)工程(a)で得られたラセミ体3,4-ジオールを還元して、ラセミ混合物を生成し、
(c)必要に応じて、ラセミ混合物中のベンジル化された(±)-エピカテキン及び(±)-カテキンを、化学的に分割、あるいはキラル分離する、
各工程を有してなる。分離されたエピマーは、水素雰囲気下、酢酸エチル中、過剰の水酸化パラジウムを用いて脱ベンジル化される。その際、バルーンを用いて、室温で行なわれるのが好ましい。
5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキンを含むラセミ混合物を調製するもう1つの方法は、
(a) 酸性条件下、3,5-ビス(ベンジルオキシ)フェノールを、(E)-3-(3,4-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)プロパ-2-エン-1-オールとカップリングさせ、実質的に(E)-(3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3,4-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)アリル)-フェノールから成る混合物を形成し、
(b) 工程(a)で得られた化合物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて単離し、
(c) 工程(b)で単離した化合物を、塩化tert-ブチルジメチルシランと反応させ、(E)-(3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)-フェノキシ (tert-ブチル)ジメチルシランを生成し、
(d) 工程(c)で得られた化合物を、四酸化オスミウムとN−メチルモルホリン-N-オキシドを用いて反応させることによってジヒドロキシル化し、ラセミ体3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)フェニル-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル-プロパン-1 ,2-ジオールを生成し、それをn-フッ化テトラブチルアンモニウムと反応させて、3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル)-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン-1 ,2-ジオールを生成し、
(e) 工程(d)で得られた1 ,2-ジオールを、酸触媒条件の下、オルトギ酸トリエチルを用いて、3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(5-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-2-エトキシ-1,3-ジオキソラン-4-イル)フェノールに変換、あるいは、オルトプロピオン酸トリエチルを用いて、3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-((5-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-2-エトキシ-1,3-ジオキソラン-4-イル)プロピル)フェノールに変換し、
(f) メタノールとジクロロメタン、又はメタノールとジクロロエタンの混合液中、工程 (e)で得られた化合物を、最初は室温で、次に約40℃から約60℃で炭酸カリウム処理し、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンと5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンを生成する、
各工程を有してなる。溶媒を真空下で除去し、残渣を、酢酸エチルと水を用いて抽出する。水を除去し、酢酸エチルを硫酸ナトリウムで乾燥させる。溶媒を蒸発させ、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンの粗生成物を生じさせる。ジアステレオマーを分離し、室温、水素雰囲気下で、酢酸エチル中、水酸化パラジウムと反応させて、脱ベンジル化する。その際、バルーンを利用するのが好ましい。
【0013】
まれなエピマーである(-)-カテキンと(+)-エピカテキン、及びこれらのベンジル化された類似体を調製する方法は、
(a) 塩基の存在下、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド中水素化ナトリウムの存在下で、2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-アセトフェノンを、 3,4-ビス(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドと縮合し、(E)-1-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オンを生成し、
(b) テトラヒドロフランとエタノールの混合液中、水素化ホウ素ナトリウムと塩化セリウム7水和物を用いて、工程(a)で得られた化合物を選択的に還元し、(E)-3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)-フェノールを形成し、
(c) 室温で、ジクロロメタンを溶媒として、工程(b)で得られた化合物を、イミダゾールとN,N-ジメチルホルムアミドの存在下で塩化tert-ブチルジメチルシリルと反応させ、あるいはトリエチルアミンと N,N-ジメチルアミノピリジンの存在下で塩化tert-ブチルジメチルシリルと反応させることにより、(E)-(3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)アリル)フェノキシ)(tert-ブチル)ジメチルシランを生成し、
(d) tert−ブタノールと水とテトラヒドロフラン、又はtert −ブタノールと水とジクロロメタンの混合液中、メタンスルホンアミドの存在下、工程(c)で得られた化合物を、AD-mix-αを用いて不斉ジヒドロキシル化反応を行ない、(1S,2S)-3- (2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-tert-(ブチルジメチルシロキシ)フェニル-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)プロパン-1,2-ジオールを生成し、またはAD-mix-αを作用させて不斉ジヒドロキシル化反応を行ない、(1R,2R)-3-(2,4- ビス(ベンジルオキシ)-6-tert-(ブチルジメチルシロキシ)-フェニル-1-(3',4'- ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン-1,2-ジオールを生成し、
(e) 酢酸およびテトラヒドロフラン又はジクロロメタンの混合液中、工程(d)で得られた(1S,2S)-又は(1R,2R)-1,2-ジオールを、n−フッ化テトラブチルアンモニウムと反応させて脱保護化し、(1S,2S)-1,2-ジオールが反応物の場合には(1S,2S)-3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-(ヒドロキシフェニル)-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン-1,2-ジオールが、(1R,2R)-1,2-ジオールが反応物の場合には(1R,2R)-3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6- (ヒドロキシフェニル)-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-プロパン-1,2-ジオールが、それぞれ生成し、
(f)工程(e)で生じた脱保護された(1S,2S)-又は(1R,2R)-1,2-ジオールを、オルトプロピオン酸トリエチル又はオルトギ酸トリエチル及びp-トルエンスルホン酸ピリジニウムと反応させ、 (1S,2S)-1,2-ジオールが反応物の場合には、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキン-3-O-プロピルエステル、又は5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキン-3-O-ホルミルエステルが生成し、(1R,2R)-1,2-ジオールが反応物の場合には、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン-3-O-プロピルエステル、又は5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン-3-O-ホルミルエステルが生成し、
(g) メタノール及びジクロロメタン又はジクロロエタンの混合液中、工程(f)で得られた5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキン-3-O-プロピルエステル、又は5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン-3-O-ホルミルエステルを炭酸カリウムと反応させ、5,7,3',4'-テトラ-O-(+)-カテキン、又は 5,7,3',4'-テトラ-O-(-)-カテキンを生成し、
(h) 必要に応じて、室温、水素雰囲気下でバルーンを用いて、工程(g)で得られた化合物を、酢酸エチル中、過剰の水酸化パラジウムで脱ベンジル化し、(-)-カテキン又は(+)-カテキンを生成する、
各工程を有して成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
パートA: 2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-アセトフェノンと3,4-ビス(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドから、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキン及び-(±)-エピカテキンのラセミ混合物の調製。
この方法の反応工程を以下に示す。
【0015】

使用に適切な塩基には、還流エタノール中のピペリジン、ピリジン、カリウムtert-ブトキシド及び水酸化カリウム、ならびにN, N-ジメチルホルムアミド中の水素化ナトリウム等があり、約0℃で用いられる。環化の工程である(b)は、テトラヒドロフランとエタノールの混合液中で水素化ホウ素ナトリウムを用いて、約65℃で行なうのが好ましい。酸化の工程は、ボラン、テトラヒドロフラン、過酸化水素、及び水酸化ナトリウムを用いて行なうのが好ましい。
【0016】
室温(RT)〜約80℃で、炭酸カリウム(K2CO3)の存在下、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中、臭化ベンジル(BnBr)又は塩化ベンジル(BnCl)のようなハロゲン化ベンジルを用いて2,4,6-トリヒドロキシ-アセトフェノンをベンジル化することにより、最初の工程に用いられる出発物質、2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-2-アセトフェノンを調製する。シリカゲルクロマトグラフィーの後、ジクロロメタンとメタノールの混合液からの再結晶化を経て、目的の化合物が単離される。最初の工程の出発物質3,4-ビス(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドの方は、室温(RT)で、炭酸カリウム(K2CO3)の存在下、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)中、臭化ベンジル(BnBr)又は塩化ベンジル(BnCl)のようなハロゲン化ベンジルを用いて、3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒドをベンジル化することにより調製され、その際、臭化ベンジルと炭酸カリウムをわずかに過剰量で用いるのが好ましい。好ましい量は、各々約2.1当量である。目的の化合物は、酢酸エチルとヘプタンの混合液から再結晶化される。
【0017】
パートB:2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-アセトフェノンと5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル-2H-クロメンからの5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンと-(±)-エピカテキンのラセミ混合物の調製。
【0018】
この方法の反応工程を以下に示す。
【0019】

この方法では、5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)-2H-クロメンを、ジヒドロキシル化して、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-フラバン-3-エンとも呼ばれる、ラセミ体(3S,4S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)クロマン-3,4-ジオールを形成する。ジヒドロキシル化は、室温でtert-ブタノール水(H2O)とテトラヒドロフランの混合液中、四酸化オスミウム(OsO4) とN−メチルモルホリンオキシドを用いて行なうのが好ましい。目的の化合物は、ジクロロメタンとメチルtert-ブチルエーテルから結晶化することにより精製される。この化合物を還元して、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンと5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンのラセミ混合物を生成する。この還元反応は、55℃〜60℃で、酢酸中、水素化シアノホウ素ナトリウム(NaCNBH3) を用いて行なわれるのが好ましい。この混合物を、化学的に分割して5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンを回収するか、あるいはキラル分取用高圧液体クロマトグラフィーによってエピマーを分離する。2番目の方法の反応工程を以下に示す。
【0020】
パートC:3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3,4-ビス(ベンジルオキシ)-フェノールと(E)-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オールからの5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンと-(±)-エピカテキンのラセミ混合物の調製。
【0021】
この方法の反応工程を以下に示す。
【0022】

この方法は、
(a) 酸性条件下、3,5-ビス(ベンジルオキシ)フェノールを (E)-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)プロパ-2-エン-1-オールとカップリングさせ、(E)-3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェノールを生成し、
(b) 工程(a)で得られた化合物を、ジメチルホルムアミド中の塩化tert-ブチルジメチルシラン及びイミダゾールと反応させ、(E)-(3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェノキシ)(tert-ブチル)-ジメチルシラン生成し、
(c) シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって工程(b)で得られた化合物を単離し、
(d) 工程(c)で単離した化合物を、tert-ブタノールと水、テトラヒドロフランの混合液中の四酸化オスミウムとN-メチルモルホリンN-オキシドでジヒドロキシル化し、ラセミ体3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-フェニル-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン-1 ,2-ジオールを生成し、
(e) 工程(d)で得られた化合物から、テトラヒドロフラン中のフッ化テトラブチルアンモニウムを用いて、保護基であるtert-ブチルジメチルシリル基を除去し、ラセミ体3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-(ヒドロキシフェニル)-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)プロパン-1,2-ジオールを生成し、
(f) 工程(e)で得られた化合物を、3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(5-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-2-エトキシ-1 ,3-ジオキソラン-4-イル)フェノールに変換し、
(g) 工程(f)で得られた化合物を、メタノールとジクロロエタンの混合液中の炭酸カリウムで処理し、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンへと変換する、
各工程を有してなる。この反応混合物から溶媒を真空下で除去し、残渣を酢酸エチルと水で抽出し、水を除去してから硫酸ナトリウムを用いて酢酸エチルを乾燥し、さらに酢酸エチルを蒸発させて、5,7,3',4'-テトラ- O-ベンジル-(+)-カテキンの粗生成物を回収する。
【0023】
3番目の工程では、室温でtert-ブチルジメチルクロロシランと反応させて、tert-ブチルジメチルシリル基を導入することにより、(E)-3,4-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェノールのフェノール性水酸基を保護する。室温で48時間、ジクロロメタン中触媒量のN,N-ジメチルアミノピリジンと3当量のトリエチルアミン存在下、保護基を導入された2H-クロメンを、1.5当量のtert-ブチルジメチルクロロシランと3当量のイミダゾールで、処理した場合、保護基を導入された化合物が、シリカゲルクロマトグラフィー後の収率65〜72%で単離される。この化合物を、室温で24時間、15倍量のN,N-ジメチルホルムアミド中の1.5当量のイミダゾールで処理する場合は、保護基を導入された化合物は、わずか51 % の収率でしか単離されない。N,N-ジメチルホルムアミドの量を8.5〜10倍量にまで減らすと、保護基を導入された化合物は、76-99%の収率で回収される。さらに、N,N-ジメチルホルムアミドの量を5 倍量にまで減らすと、シリカゲルプラグでろ過精製後の保護基を導入した化合物(化学的純度>99%)の96%を単離する結果となる。さらに大規模の生産では、純度98%、光学純度81% eeの保護基を導入したジオールが、81%の収率で得られる。
【0024】
5番目の工程では、(1R,2R)-又は(1S,2S)-3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-フェニルプロパン-1 ,2-ジオールが、脱保護化される。保護基であるtert-ブチルジメチルシリル基の除去は、周囲温度でn-フッ化テトラブチルアンモニウムと氷酢酸を用いて行なわれる。抽出操作の後に得られた粗生成物を、室温で酢酸エチル中のメチル-tert-ブチルエーテル(25%)で処理し、目的のトリオールを80〜91%の収率で得る。キラルHPLC で決定した光学純度は88.2% eeであり、未知の不純物は生成されない。
【0025】
6番目の工程では、(1R,2R)-又は(1S,2S)-3-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル-プロパン-1 ,2-ジオールは、オルトギ酸トリエチル、好ましくはオルトプロピオン酸トリエチルと、触媒量のp-トルエンスルホン酸ピリジニウムで処理され、単離不可能な反応中間体3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-((4R,5R)-5- (3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-2-エトキシ-2-エチル-1 ,3-ジオキソラン-4-イル)フェノールを経て、高収率で、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン-3-O-プロピルエステル又は5,7,3',4'-テトラ-O- ベンジル-(+)-カテキン-3-O-プロピルエステルへと環化される。しかし、この反応では多くの副生成物が生じる。反応溶媒を、1 ,2-ジクロロエタンからジクロロメタンに変えれば、抽出操作の後目的の化合物を定量的収率で得ることができる。クロロギ酸−中間体である3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(5-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-2-エトキシ-1 ,3-ジオキソラン-4-イル)フェノールは、通常の保存条件では不安定であり、目的物以外の副生成物を多く生じる。このため、この粗生成物にさらなる精製は行なわずに最後の工程に用いる。この粗生成物のTLC分析では微量の不純物が示される。純度は、HPLC解析で決定したところ98% (AUC)であった。さらに、この中間体から得られた反応生成物は、目的の化合物、すなわちベンジル化されたカテキンを生成したが、その収率と純度は低く、他に多くの副生成物が観察された。しかしながら、プロピオン酸−中間体である3,5- ビス(ベンジルオキシ)-2-((5-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-2-エトキシ-2-エチル-1 ,3-ジオキソラン-4-イル)プロピル)フェノールは安定であり、この中間体から得られた生成物の純度をHPLC解析で決定したところ、高純度であった。
【0026】
最後の工程においては、3-位の水酸基のエステル基を加水分解する。この反応は、室温で24時間かけて、ジクロロメタンとメタノールの混合液中炭酸カリウムの存在下で行なわれるのが好ましい。メタノールとジクロロメタンの混合液を用いることにより、より迅速に反応を行なうことができる。HPLC解析によると、光学純度は〜67% eeであり、化学的純度は95%より高い。
【0027】
パートD:まれなエピマーである5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル- (-)- カテキン及び-(+)-エピカテキンの調製。
【0028】
このまれなエピマーを調製するための反応工程を以下に示す。
【0029】

この7工程から成る方法においては、市販の2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-アセトフェノン、及び3,4-ビス(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドを出発物質として使用する。
【0030】
最初の工程においては、例えば、水酸化ナトリウムや水素化ナトリウム、又は水素化カリウムや水酸化カリウム等の塩基の存在下、2,4-ジ-O-ベンジル-6-ヒドロキシ-アセトフェノンと3,4- ビス(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドを縮合して、(E)-1-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オンを形成する。さらに、得られた化合物を還元条件下で環化し、最初の工程で用いる(E)-3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェノールを調製する。
【0031】
0℃から5℃において、テトラヒドロフランとエタノールの混合液中、水素化ホウ素ナトリウムと塩化セリウムを用いて、 (E)-1- (2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オンの共役ケトンを選択的に還元し、 (E)-3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェノールを76%の収率で得た。これは、この化合物を合成する上での改良方法である。
【0032】
4番目の工程においては、〜0.8℃から〜0.2℃で、共溶媒としてテトラヒドロフランを用いたtert-ブタノール/水中、メタンスルホンアミドの存在下、AD-mix-α又はAD-mix-βを用いて(E)-(3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェノキシ)(tert-ブチル)ジメチルシランを不斉ジヒドロキシル化する。ジクロロメタンの代わりに共溶媒としてテトラヒドロフランを用いると、反応速度が上がる (96時間から24 時間に短縮)。温度設定を低くすると (0℃〜5℃に対して、〜0.8℃から〜0.2℃)、ジオールの光学純度をは上昇する。目的のジオールは高収率で得られ、その光学純度は87〜89% eeである(キラルHPLCにより決定)。抽出操作の後、保護基が導入されているジオールである(1S,2S)-1 ,2-ジオール、又は(1R,2R)-1 ,2-ジオールを定量的収率で単離する。AD-mix-αを使用する場合も、同様の結果が得られる。
【0033】
5番目の工程においては、テトラヒドロフラン (THF)中の2当量のn-フッ化テトラブチルアンモニウムで、保護基を導入したジオールを処理し、(1R,2R)-3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル)-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン-1,2-ジオールを生成し、これを定量的収率で単離する。しかしながら、キラルHPLCで決定されるこの化合物の光学純度eeは67%にすぎず、収率と光学純度eeは相関しなかった。脱シリル化反応を繰り返すことで、収率は75%、光学純度eeは84%まで上がった。この化合物の光学純度eeを上げるために、加熱したメチル-tert-ブチルエーテル、又は様々な混合比の酢酸エチル/メチル-tert-ブチルエーテル (80%/20%、10%/90%、又は75%/25%) 溶液を用いて処理をしても、ee値は低く、未知不純物の形成がみられた。低温(0〜5℃)でテトラヒドロフラン中の等モル量の氷酢酸(AcOH)とn-フッ化テトラブチルアンモニウムの存在下、脱保護化反応が行なわれれば、変換反応の間の立体配置は保持される。なお、これはキラルHPLCで確認された。酢酸をn-フッ化テトラブチルアンモニウムと共に使用すると、溶媒中に(in situ)フッ化水素が形成され、これによって不要な副反応を生じさせる塩基性環境が回避されると考えられている。条件として、0〜5℃下、テトラヒドロフラン中、等モル量の氷酢酸(AcOH)とn-フッ化テトラブチルアンモニウムを使用することが好ましい。テトラヒドロフランの代わりに、ジクロロメタンを使用してもよい。
【0034】
6番目の工程においては、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム(PPTS)の代わりにジクロロメタン中氷酢酸を用いると、反応速度が低下し、目的の環状オルトギ酸エステルの収率は僅か26% に過ぎない。環状オルトギ酸エステルの生成反応は、酸性条件下室温で進むのに対して、環化反応は60℃〜65℃下で進む。
【0035】
最後の工程においては、ジクロロメタン溶媒を、アセトニトリル等の他の溶媒に代えることはできない。3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(5-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-2-エトキシ-1,3-ジオキソラン-4-イル)フェノールの安定性は、オルトギ酸トリエチルをオルトプロピオン酸トリエチルに代えることにより、改良される。60℃で、1 ,2-ジクロロエタン中触媒量のp-トルエンスルホン酸ピリジニウムの存在下、約6時間反応させることにより、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキンの環状3-Oプロピオン酸エステルが形成される。3- O -プロピオン酸エステルは、3-O-ギ酸エステルより安定であり、抽出操作とそれに続くシリカゲルクロマトグラフィーを用いた精製により、単一の生成物(収率79%)として回収される。
【0036】
パートE:5,7(3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンのラセミ混合物の精製。
【0037】
ラセミ混合物からエナンチオマー的に純粋な5,7,3',4'-テトラ- O-ベンジル-(+)-カテキンを調製する方法は、
(a) 実質的に5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンと5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンから成るラセミ混合物の3位を、ジベンゾイル-L-酒石酸モノメチルエステルでエステル化し、(±)-(2R,3R)-1-((2R,3S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)クロマン-3-イル)-4-メチル-2,3-ビス(ベンジルオキシ) コハク酸エステルのラセミ混合物を形成し、
(b) 工程(a)で得られたラセミ混合物を分別結晶化し、エナンチオマー的に純粋なコハク酸エステルを回収し、
(c) 工程(b)で得られたエナンチオマー的に純粋なコハク酸エステルを加水分解し、エナンチオマー的に純粋な5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンを生成する、
各工程を有して成る。
【0038】
上記の方法で用いたジベンゾイル-L-酒石酸モノメチルエステルは、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールと1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩の存在下、ジベンゾイル-L-酒石酸とメタノールをジクロロメタン中で反応させ、反応混合物を処理する、改良された方法によって調製される。
【0039】

精製工程の最初の段階で用いたジベンゾイル-L-酒石酸モノメチルエステルは、 (a) 1-ヒドロキシベンゾトリアゾールと1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩の存在下、ジベンゾイル-L-酒石酸とメタノールをジクロロメタン中で反応させ、(b)反応混合物を処理することによって調製される。
【0040】
エステル化の工程は、ジクロロメタン中のN,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキン、ジベンゾイル-L-酒石酸モノメチルエステル、及びジクロロメタン中の4-ジメチルアミノピリジンの混合物を撹拌した後ろ過することによって行なわれる。この混合液を、ろ過、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて精製する。(+)-(2R,3R)-((2R,2S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル))クロマン-3-イル-4-メチル)-2,3-ビス(ベンジルオキシ) コハク酸エステルを含む画分を溶出し、溶媒を除去する。一まとめにした画分を乾燥する。撹拌とろ過の工程は、窒素雰囲気下、最初は氷浴中で、次に室温下で行なうのが好ましい。(+)-(2R,3R)-((2R,2S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル))クロマン-3-イル)-4-メチル-2,3- ビス(ベンジルオキシ) コハク酸エステル、及びジベンゾイル-L-酒石酸モノメチルエステルの当量比は、約1 :1.3である。
【0041】
精製の工程は、ほぼ同体積のジクロロメタンとヘプタンを混ぜたシリカゲルの固定相を用いて行なうのが好ましい。ジクロロメタン:ヘプタンの移動相は、約1 :1 (v/v) から約9:1 (v/v)まで移行する。
【0042】
分別結晶化の工程は、約80%のジクロロメタンと約20%のヘプタン (v/v)の混合溶液中で行なわれる。
【0043】
(+)-(2R,3R)-((2R,2S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル))クロマン-3-イル)-4-メチル-2,3-ビス(ベンジルオキシ) コハク酸エステルを加水分解する工程では、水酸化カリウムとメタノールに溶解したコハク酸エステルを、40℃〜45℃に加熱し、さらにこれをジクロロメタン、及び水酸化カリウムのメタノール溶液で希釈する。溶液を、約4時間加熱する。溶媒は真空下で除去する。回収した生成物を水に懸濁し、加熱後、真空下で濃縮する。ジクロロメタンで希釈した反応物を洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過する。真空下で溶媒を除去し、粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(ジクロロメタン/ヘプタン)により精製する。5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンを含む画分を合わせ、溶媒を除去する。エナンチオマー的に純粋な5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンが、結晶状の生成物として得られる。
【0044】
水酸化カリウムを用いた上記の加水分解で、目的の生成物、すなわち、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンは高収率で得られるが、テトラヒドロフラン中の水酸化リチウム、又は水酸化ナトリウム、又はより弱い塩基といった他の塩基を使用してもよい。溶媒としてより低級なアルコールを使用した場合は、エステル交換反応が起こる可能性がある。
【0045】
全ての反応工程をたどる実施例においては、特に指示がないかぎり質量で表記し、eqは当量、mはモル、vは体積、RT は室温、hは時間、minは分を表す。なお、HPLCは高圧液体クロマトグラフィーであり、その結果は、検出波長280 nmにおけるAUC % (曲線下面積%)で報告される。
【0046】
以下の逆相キラルHPLCの手順は、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキン、及び5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンの光学純度を求めるために開発されたものである。試薬は全てHPLCグレードのものを使用した。ラセミ体標準物質は社内で得られたものを使用した。PDA検出器とデータシステムを備えた標準的なHPLCシステムを使用した。固定相には、I.D.150x4.6 mm、粒径5μのキラルパックAD-RH解析用カラム(キラル・テクノロジー社(Chiral Technologies, Inc.)(アメリカ合衆国、ペンシルバニア州、ウェストチェスター)製)を使用した。二成分系の移動相は、(A)水相、及び(B)アセトニトリル相から成る。ピークを識別するために用いられる標準物質は、以下のように調製してHPLC解析に使用する。すなわち、約2〜3 mgの標準物質をHPLC用バイアルに入れ、これを1 mLのアセトニトリルに溶かし、ボルテックスにより完全に溶解する。約2〜3 mgの試料をHPLC用バイアルに入れ、これを1 mLのアセトニトリルに溶かし、ボルテックスにより完全に溶解する。HPLCは、カラム温度60℃、流量1.0 mL/min、アイソクラティックなA:Bの移動相組成比が35:65の条件の下で行なわれる。分析時間は40分であり、分析前に1分間平衡化する。試料量(注入量) は5 μLである。検出波長は280 nmで、ピーク幅 (溶出時間幅) は0.1分よりも長い。注入の形式は、、少なくとも1回のブランク溶液の後、1つの試料、次に、ピークの同定に必要な場合は、1つの標準物質、で構成される。4種類の5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル(±)-カテキン、及び (±)-エピカテキンの光学純度を決定するための上記のシステムの適合性については、以下に示すように4つのエピマーの相対保持時間とテーリング係数によって示されている。
【0047】

理論段数とは、試料の帯域を狭く保つためのHPLCカラムの性能を表すものであり、理論段数が大きいカラムほど試料のピーク幅は細くなる。細かい粒子を充填した長いカラムが、最も理論段数が高くなる。テーリング係数は、非対称なピークの形状を表すもので、技術的には1より大きい非対称係数を持つものと定義される。.
試料中の各エピマーの光学純度は、以下のように測定される。
【0048】
Bn4-(+)-Cの光学純度(%)= Bn4-(+)-Cのピーク面積/ Bn4-(+)-CとBn4-(-)-Cの総ピーク面積。
【0049】
Bn4-(-)-Cの光学純度(%)= Bn4-(-)-Cのピーク面積/Bn4-(+)-CとBn4-(-)-Cの総ピーク面積。
【0050】
Bn4-(+)-ECの光学純度(%)= Bn4-(+)-ECのピーク面積/ Bn4- (+)EC とBn4-(-)ECの総ピーク面積。
【0051】
Bn4-(-)-ECの光学純度(%)= Bn4-(-)-ECのピーク面積/ Bn4-(+)- EC とBn4-(-)-ECの総ピーク面積。
【0052】
Bn4-(+)-C、Bn4-(-)-C、Bn4-(-)-EC、及びBn4-(+)-ECの混合物を分離している典型的なキラルHPLCのクロマトグラムを以下に示す。
【0053】

上記の開発されたキラルHPLC法を用いて、4つの異性体、すなわち、Bn4-(+)-C、Bn4-(-)-C、Bn4-(-)-EC、及びBn4-(+)-ECを分離することができた。以下の解析手順を用いた。
【0054】
化学的純度
化学的純度は、PDA 検出器とデータシステムを備えた標準的なHPLCシステムを用いて決定した。カラムには、粒径3.5μm、SB-C8、寸法2.1x50mmのZorbaxカラム(アジレント(Agilent)社、カタログ番号871700-906)を用いた。カラム温度は25℃であった。使用前にカラムを2分間平衡化した。移動相には、A: 0.01%トリフルオロ酢酸/水(1 L の水に100μLのトリフルオロ酢酸を加えよく混ぜたもの)、及びB: 0.01 %トリフルオロ酢酸/アセトニトリル(1 Lのアセトニトリルに100μLのトリフルオロ酢酸を加えよく混ぜたもの)を用いた。流量は0.8 ml/min、検出波長280 nm、注入量は5 μLであった。傾斜プログラムは以下の通りである。
【0055】

光学純度
(1R,2R)-3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-(tert-ブチル-ジメチルシリルオキシ)-フェニル-1 -(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン-1 ,2-ジオール、及び(1R,2R)-3-(2,4-ビス-(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル)-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)プロパン-1 ,2-ジオールの光学純度は、PDA 検出器とデータシステムを備えた標準的なHPLCシステムを用いて決定した。カラムには、粒径5μ、寸法150x4.6mmのキラルセルOJ-RH解析用カラム(カタログ番号17724、キラル・テクノロジー社(Chiral Technologies, Inc.)) を用いた。カラム温度は40℃であった。移動相には、A (水)/B (ACN:アセトニトリル) (35/65 v/v)をアイソクラティック条件で用いた。流量は1ml/min、分析時間は30分、検出波長210 nm、注入量は5 μLであった。
【実施例】
【0056】
実施例1: 2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-アセトフェノンの調製
この実施例では、市販の2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノンから表題の化合物を調製、精製する方法について述べる。2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノン(10 g, 0.054 モル, 1 eq) と炭酸カリウム(16.3 g, 0.118 モル, 2.2 eq)を、N,N- ジメチルホルムアミド (100 mL, 10 vol, 1 g/10 mL)中に懸濁・撹拌した懸濁液を、8O℃に加熱した。この懸濁液に、塩化ベンジル(13.6 mL, 0.118 モル, 2.2 eq) を一度に加えた。懸濁液を、1時間80℃に保った。反応混合物を室温まで冷やしてから、1 Mの塩酸(200 mL)で注意深く酸性化した。酢酸エチル(100 mL)を用いて、水層を2回抽出した。 一まとめにした有機層を、水(100 mL)で2回、食塩水(100 mL)で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過した。真空下で溶媒を除去し、赤色粘性の油状物質を得た。この油状物質をジクロロメタンに溶解し、200 gのシリカゲルプラグに通した。このシリカゲルを、1 Lのジクロロメタンで溶出した。あわせた溶出液を減圧下で蒸発させ、室温で固化する油状物質を得た。収量は18.7 g、HPLC純度は69%であった。生成物は、19.7%のトリベンジル化された不純物を含んでいた。
【0057】
固体状の粗生成物を、加熱したジクロロメタン(15 mL)に溶解した。メタノール (20 mL) をゆっくり加えると、すぐに固体が析出し始めた。懸濁液を撹拌しながら、室温まで冷やした。固体を吸引ろ過した後、メタノール (75 mL)で洗浄した。高真空下で乾燥し、9.1 gの白色に近い固体を得た。収率49%、HPLC純度は96.9%であった。生成物は、2.54%のトリベンジル化された不純物を含んでいた。
【0058】
選択的ベンジル化反応を最適化するために、多くの反応条件下で各種のベンジル化試薬(臭化ベンジル(BnBr)と塩化ベンジル(BnCl))をスクリーニングした。結果を表1に示す。
【表1】

【0059】
実施例2: 3,4-ビス(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドの調製
市販の3,4- ジヒドロキシベンズアルデヒド (68 g, 0.492 モル, 1 eq)と炭酸カリウム(170 g, 1.23 モル, 2.5 eq) をN,N-ジメチルホルムアミド(400 mL, 約5.9倍量, 約5.9 mL/g) 中に懸濁・撹拌した懸濁液に、室温、窒素雰囲気下で、臭化ベンジル(185.14 g, 1.08 モル, 2.2 eq)を撹拌しながらゆっくり加えた。臭化ベンジルを加えている間、発熱が起こり、内部温度は18.8℃から35.4℃まで上昇した。反応の完結はTLC分析でモニタした。反応混合物を、200 mLの水と125 mLの50%塩酸水溶液で希釈した。500 mLの酢酸エチル、次に200 mLの酢酸エチルで反応混合物を抽出した。あわせた有機層を500 mLの水と500 mLの食塩水で洗浄し、200 gの硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過した。真空下で溶媒を除去し、得られたベージュ色半固体状の生成物を150 mLの加熱した酢酸エチルに溶解した。次に、600 mLのヘプタンを撹拌しながらゆっくり加えた。反応混合物を室温まで冷やし、一晩撹拌した。固体を吸引ろ過した後、10% 酢酸エチルと90%ヘプタンの混合液(v/v) 200 mL で2回洗浄し、高真空下で乾燥した。収量は138.2 g (収率88.2%)、HPLC純度は100%であった。
【0060】
実施例3: (E)-1-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル- 3(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オンの調製
窒素雰囲気下、氷冷した水素化ナトリウム(60%油分散液, 1.2g, 0.0286 モル, 1.3 eq) と2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシ-アセトフェノン (7.66 g, 0.022 モル, 1 eq)のN,N-ジメチルホルムアミド (130 mL)懸濁液に、3,4-ビス(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒド (7 g, 0.022 モル, 1 eq)のジメチルホルムアミド (30 mL)溶液を5分間かけてゆっくり加えた。得られた溶液を、氷浴中で5分間、次に室温で約1.5 時間撹拌した。出発物質の消費はTLC分析でモニタした。ジクロロメタン(200 mL)に希釈した反応混合物を、0.3 Nの塩酸(300 mL)、水(250 mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(150 mL)、及び食塩水(150 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過した。真空下で溶媒を除去し、半固体状の生成物を得た。粗生成物を、加熱したメタノール (250 mL)で約0.5時間処理した後、室温まで冷やした。得られた固体を吸引ろ過し、メタノール (15 mL)で2回洗浄し、室温の高真空下で18時間乾燥させた。収量は12.2g (収率85.5%)であった。
【0061】
実施例4: 5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル-2H-クロメンの調製
テトラヒドロフラン(400 mL) とエタノール(200 mL)中、(E)-1 -(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン(20 g, 0.0308 モル, 1 eq)を溶かした溶液を室温で撹拌しながら、これに水素化ホウ素ナトリウム(1.4 g, 0.037 モル) を加えた。得られた反応混合物をゆっくり加熱還流した。4〜5時間還流した後、反応混合物のHPLC解析により、出発物質の消費と新規のピークの出現が示唆された。反応混合物を室温まで冷やし、ジクロロメタン(300 mL)に希釈した。反応混合物を、水(100 mL)、飽和重炭酸水素ナトリウム水溶液 (100 mL)、及び食塩水 (100 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム(50 g)で乾燥させた後、吸引ろ過した。目的の化合物を含むろ液は精製せずに、次の実施例に使用した。
【0062】
(E)-1 -(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'- ビス(ベンジルオキシ)を単離する必要があるときは、約20%〜約40%ジクロロメタンのヘプタン溶液(v/v)を溶離液に用いたシリカゲルクロマトグラフィーによって達成することができる。
【0063】
実施例5: 5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル−(±)-エピカテキンの調製
(E)-1 -(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6- ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1 −オンの3,4位の二重結合を、酸化的ヒドロホウ素化条件の下、以下の手順で酸化した。すなわち、まず化合物を、0℃から約5℃で4時間、室温で2時間、ボラン-テトラヒドロフランで処理した後、加圧下で溶媒を除去し、残渣を1 M水酸化ナトリウムと30%過酸化水素溶液で、室温下2時間処理した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、炭酸カリウム水溶液、水、及び食塩水で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過し、加圧下で溶媒を除去した。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィーで精製し、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンを得た。このラセミ混合物は、白色に近い固体として単離された。1H NMR解析により、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンが主生成物であることが示唆された。生成物にキラルHPLC解析を行なったところ、生成物は5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンと5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンの混合物であることが示された。5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-エピカテキンと5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-エピカテキンは微量であった。
【0064】
実施例6: ラセミ体(3S,4S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2- (3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)クロマン-3,4-ジオールの調製
(E)-1 -(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン溶液から得られた5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル-2H-クロメンのテトラヒドロフラン (15 mL)溶液を、tert-ブタノール(20 mL)、テトラヒドロフラン(25 mL)、3%四酸化オスミウム水溶液 (0.52 mL)、及び50% N-メチルモルホリン N-オキシド水溶液(0.8 mL)の混合液に撹拌しながら加えた。得られた溶液を、室温で1.5 時間撹拌した。反応の完結は、HPLC解析でモニタした。反応混合物をジクロロメタン(80 mL) で希釈し、5%硫酸ナトリウム水溶液(30 mL)、水(30 mL)、飽和重炭酸水素ナトリウム水溶液(30 mL)、及び食塩水(30 mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過した。真空下で溶媒を除去し、白色に近い固体を得た。この固体をジクロロメタン(10 mL)に溶解し、メチルtert-ブチルエーテル(20 mL) を加えた。混合物を50℃で約10分間撹拌した。混合物を室温まで冷やした後、固体を吸引ろ過し、メチルtert-ブチルエーテル(5mL)で3回洗浄し、高圧下50℃で 1 時間乾燥させた。収量は1g (収率48%)であった。
【0065】
実施例7: 5,7,3',4'-テトラ-O- ベンジル-(±)-カテキンと5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンのラセミ混合物の調製
実施例 6で得られた(3S,4S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)クロマン-3,4-ジオールのラセミ混合物を、氷酢酸中の水素化シアノホウ素ナトリウムを用いて還元した。混合物を約50℃〜55℃で1時間加熱した。TLC分析により出発物質であるジオールが消費されたことを確認した。反応混合物を加圧下で濃縮して乾燥度を高め、ジクロロメタンに希釈した後、水酸化ナトリウム水溶液、水、及び食塩水で洗浄した。有機層を濃縮し、トルエンを加え、ジクロロメタンに溶解した後、シリカゲルクロマトグラフィーで精製した。得られた粗生成物を再度シリカゲルクロマトグラフィーで精製した。収率は82%であった。HPLC解析から、生成物には、5,7,3', 4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンと5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンが混合比87.5:11.5 (% AUC)の混合物であることが示された。
【0066】
実施例8:エナンチオマー的に純粋な5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンの調製。
パートA:ジベンゾイル-L-酒石酸モノメチルエステルの調製
全部で1.9 g (10 モル, 1 eq) の1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドを、ジベンゾイル-L-酒石酸 (3.58 g, 10 モル, 1 eq) と1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物 (1.35 g, 10 モル, 1 eq) のジクロロメタン(200 mL) 溶液に、室温下撹拌しながら加えた。得られた懸濁液を室温で10分間撹拌した。約2分以上かけてメタノール (0.4 mL, 10 モル, 1 eq)をゆっくり加え、この懸濁液を室温で2時間撹拌した。出発物質の消費はTLCでモニタした。反応混合物をジクロロメタン(50 mL)で希釈し、水(50 mL)で2回洗った。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後、ろ過した。真空下で溶媒を除去し、白色に近い固体を得た。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、シリカゲルプラグに通してろ過した。このシリカゲルプラグをジクロロメタン(100 mL)で2回洗浄した後、酢酸エチル(50 mL)で3回洗浄した。目的の化合物を含む画分(TLC分析により判断)を一まとめにし溶媒を真空下で除去した後、白色に近い固体の生成物を得た。収率は88%であった。
パートB: ラセミ体5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンのエステル化。
【0067】
窒素雰囲気下、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキン(1.9 g, 0.0029 モル, 1 eq)、パートAで得られたジベンゾイル-L-酒石酸モノメチルエステル(1.45 g, 0.0038 モル, 1.3 eq)、4-ジメチルアミノピリジン (50 mg)をジクロロメタンに溶解した溶液を氷冷し、これに全部で30 mLの1 M N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミドのジクロロメタン溶液をゆっくりと加えた。反応の進行度をTLCとHPLCでモニタしながら、氷浴温度で4分間、次に室温で約20分間混合液を撹拌した。反応混合物を吸引ろ過し、N.N'-ジシクロヘキシル尿素を除去した。真空下ろ液を約5 mLまで濃縮し、ジクロロメタン中のシリカゲルカラム(36 g)に充填した。生成物を、ジクロロメタン : ヘプタン(1 :1から9:1 , v/v)を用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。目的の生成物を含む画分をあわせて、真空下で溶媒を除去した。室温の高真空下で、あわせた画分をさらに乾燥させ、白色に近い固体として目的の生成物を得た。収率は98%であった。混合物には、エステル化されベンジル基で保護されたカテキンとエピカテキンのエピマーが、4種類全て含まれていることが1H NMR解析によって示唆された。
パートC:(+)-(2R,3R)-((2R,3S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)クロマン-3-イル)-4-メチル-2,3-ビス(ベンジルオキシ)コハク酸エステルの分別結晶化。
【0068】
パートBで得られた混合物を、50℃に加熱したジクロロメタン:ヘプタン (8:2, v/v, 約1 g/2 mL)溶液から2回再結晶化した後、ジクロロメタン:ヘプタン(8:2, v/v, 1 g/3 mL)溶液からさらに3回結晶化し、エナンチオマー的に純粋な(+)-(2R,3R)-((2R,3S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2- (3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)クロマン-3-イル)-4-メチル-2,3- ビス(ベンジルオキシ) コハク酸エステルを、白色に近い固体として得た。各結晶化の後、1H NMR 解析で、結晶化の進行をモニタした。収率は62%であった。
【0069】
パートD:エナンチオマー的に純粋な5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンの調製。
【0070】
パートCで得られたエナンチオマー的に純粋な化合物(3.2 g, 1 eq)を溶解した0.05M 水酸化カリウムのメタノール (200 mL)溶液を、40℃〜45℃で加熱した。得られた粘度の高いゲル上の物質をさらにジクロロメタン (30 mL) と0.05M 水酸化カリウムのメタノール (225 mL)溶液で希釈し、40℃〜45℃で約4時間加熱した。溶媒を真空下で除去した。得られた固体を、水(〜200 mL)に懸濁し、70℃〜74℃(湯浴温度)で1時間加熱後、真空下で約10分間濃縮した。濃縮した反応混合物をジクロロメタン (100 mL)で希釈し、水(20 mL)で1回、食塩水(50 mL)で2回順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過した。溶媒は真空下で除去した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(50〜100% ジクロロメタン/ヘプタン)で精製した。目的の生成物を含む画分をあわせて、真空下で溶媒を除去した。生成物をジクロロメタン(10 mL) とメチルtert-ブチルエーテル (75 mL)溶液に溶解し、70℃〜75℃に加熱することにより、生成物の結晶化を行なった。溶液がやや濁り始めるまで、加熱した溶液にヘキサン(75 mL)をゆっくり加えた。ディーン・スターク(Dean-Stark)装置を用いて、約45 mL の蒸留液を回収した。溶液を撹拌しながら室温に戻し、得られた固体を吸引ろ過した。メチルtert-ブチルエーテルで洗浄し、高真空下で乾燥後、白色に近い固体として目的のエピマーを得た。収率73%、HPLC純度は100%であった。キラルHPLC解析は、97.93% の5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキン、及び2.07% の5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキンの存在を示唆した。光学純度は96% eeであった。
【0071】
実施例9:(E)-3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェノールの合成
25%硫酸/シリカゲルを用いた酸性条件下、3,5-ビス(ベンジルオキシ)フェノールと(E)-3- (3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル-プロパ-2-エン-1-オールをカップリング反応させ、 (E)-(3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-アリル)フェノールを調製した(L. Li 等、Org. Letts. 2001, 3(5), 739参照)。目的の生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離した。収率は35〜40%であった。
【0072】
実施例10:(E)-3, 5- ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)アリル)フェノールの調製の改良法
室温下、塩化セリウム7水和物(74 g, 198.0 ミリモル, 2.5 eq) を、エタノール (236 mL) とテトラヒドロフラン(800 mL)溶液に加えた。混合物を、溶液が透明になるまで室温下で撹拌した。これに、(E)-1-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル)-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オン(51.4 g, 79.23 ミリモル, 1 eq)を加え、次にテトラヒドロフラン(500 mL)を加えた。溶液を室温で約10分間撹拌した後、-1.5℃から-0.2℃(内部温度)まで撹拌しながら冷やした。固体状の水素化ホウ素ナトリウム(7.5 g, 197.37 ミリモル, 2.5 eq)を何回かに分けて加え、その間撹拌により内部温度を-0.3℃以下に維持した。この容量では水素化ホウ素ナトリウムの添加に約0.5時間要した。この温度(-0.8℃から-0.3℃)で、約2.5時間混合物を撹拌した。反応の完結をHPLC解析でモニタした。5%クエン酸水溶液(167 mL) 、次に酢酸エチル(1.5 L)を加え反応液を一旦停止(クエンチ処理)した。内部温度を約12℃まで上げながら混合物を撹拌した。有機層を分離し、水 (2x1 L, 1x800 mL) 及び食塩水 (1x500 mL)で順次洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過した。真空下で溶媒を除去し、半固体状の生成物を得た。HPLC解析から、86% の目的の生成物と14%の副生成物(AUC)が示唆された。粗生成物を、シリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン/ジクロロメタン/酢酸エチル(25/25/0.5, v/v/v))により精製し、白色に近い固体として目的の化合物を得た。収量は38g (収率75.5%)、HPLC純度は99.5%(AUC)であった。

【0073】
実施例11: (E)-(3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス-(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェノキシ)(tert-ブチル)ジメチルシランの調製
(E)-3-(3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)アリル)フェノールとtert-ブチルジメチルクロロシランの反応を、室温でイミダゾールの存在下、N, N-ジメチルホルムアミド中で行った (Org. Letts. 2001 3(5), 739)。目的の生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで単離した。
【0074】
実施例12: (E)-(3, 5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)アリル) フェノキシ)(tert-ブチル) ジメチルシランの調製
室温下、(E)-3-(3,5-ビス(ベンジルオキシ-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)アリル)フェノール (95 g, 150ミリモル, 1 eq) のジメチルホルムアミド (450 mL, 4.7 vol)溶液に、イミダゾール (30.63 g, 450モル, 3 eq) を撹拌しながら加えた。これに、tert-ブチルジメチルクロロシラン(45.17 g, 300ミリモル, 2 eq)を何回かに分けて加えた。得られた反応混合物を、室温で16時間撹拌した。TLC 分析で反応の完結を確認した。反応混合物を氷水(500 g)に注ぎ、酢酸エチル(1x500 mL, 1x250 mL)で抽出した。一まとめにした有機層を、硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過した。真空下で溶媒を除去し油状の粗生成物を得た。粗生成物を、15%酢酸エチルのヘプタン溶液 (v/v)を用いてシリカゲルプラグ(充填率 約33%)に通して精製し、油状の目的の化合物を得た。収量は95 g、HPLC純度は 100% (AUC)であった。
【0075】

【0076】
実施例13: (1R,2R)-3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ) フェニル)-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン-1 ,2-ジオールの調製
tert −ブタノールと水(1.2 L)の混合液に溶かしたAD-mix-β (450 g)の冷却溶液(0〜2℃)に、 テトラヒドロフラン(1.2 L)に溶かした(E)-(3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェノキシ)(tert-ブチル)ジメチルシラン(93 g, 124.3ミリモル, 1 eq)の冷却した溶液を加え、続いてメタンスルホンアミド (15.18 g, 159.8ミリモル, 1.26 eq)を加えた。次に、得られた混合物を、内部温度0℃〜2℃に保ちながら、28時間撹拌した。TLC 分析で反応の完結を確認した。二亜硫酸ナトリウム(メタ重亜硫酸ナトリウム)溶液(10%水溶液, w/v, 2 L) を加え、混合物を室温まで温めた。反応混合物を酢酸エチル(1x4L)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過した。真空下で溶媒を除去し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルプラグ(充填率20% )に通して精製し、目的の化合物を得た。収量は77.43 g (収率80%)、HPLC純度は96.3% (AUC)であった。キラルHPLCにより決定された光学純度は86% eeであった。
【0077】

【0078】
実施例14: (1R,2R)-3-(2, 4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル)-1 -(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン-1 , 2-ジオールの調製。
【0079】
(1R,2R)-3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)- 6- tert-ブチルジメチルシリルオキシフェニル)-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン-1 ,2- ジオール (54 g, 68.96 ミリモル, 1 eq) と氷酢酸(7.82 mL, 137.93 ミリモル, 2 eq) のテトラヒドロフラン(600 mL)溶液を0℃〜5℃に冷やし、これに、n-フッ化テトラブチルアンモニウム(1M テトラヒドロフラン溶液, 137.93 mL, 137.93 ミリモル, 2 eq)を1時間以上かけてゆっくり加えた。反応混合物を、氷浴温度で2時間から3時間、TLC分析 (酢酸エチル/ヘプタン, 1/1 , v/v)が反応の完結を示すまで撹拌を続けた。真空下テトラヒドロフランを除去し、冷やした5%重炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチした後、ジクロロメタン(2x400 mL)で抽出した。ジクロロメタン(500 mL)を用いて、一まとめにした有機層をシリカゲルプラグ(260g)に通した。ろ液をあわせて真空下で溶媒を除去し、白色に近い固体として目的の生成物を得た。収量は41.9 g (収率91%)、HPLC純度は98.1% (AUC)であった。
【0080】

【0081】
実施例15:5, 7, 3', 4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキンの調製
パートA: 5,7,3',4'-テトラ-O-(-)-カテキン-3-O-プロピルエステルの調製
実施例12で得られた(1R,2R)-3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル)-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン-1 ,2-ジオール(40.4 g, 60.47 ミリモル, 1 eq) を、1 ,2-ジクロロエタン (750 mL)に懸濁した溶液に、オルトプロピオン酸トリエチル (12.76 g, 108.8 ミリモル, 1.8 eq)を加え、次にp-トルエンスルホン酸ピリジニウム(8.2 g, 32.65 ミリモル, 0.54 eq)を撹拌しながら加えた。次に、混合物を60℃〜62℃ (内部温度)に加熱し、TLC分析が出発物質の消費を示すまで、3時間から4時間、この温度を維持した。次に、反応混合物を室温まで冷やし、シリカゲルプラグ(300 g)に通した。このシリカゲルプラグをさらに、ジクロロメタン (1.5 L)で洗浄した。ろ液を一まとめにして、真空下溶媒を除去し、化合物5,7,3',4'-テトラ-O-(-)-カテキン-3-O-プロピルエステルを得た。収量は41.9 g (収率91 %)、HPLC純度は98.1% (AUC)であった。キラルHPLCにより決定された光学純度は86% eeであった。
【0082】

【0083】
パートB: 5,7,3',4'-テトラ-O-(-)-カテキン-3-O-プロピルエステルの5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキンへの変換
粗製の5,7,3',4'-テトラ-O-(-)-カテキン-3-O-プロピルエステルを、ジクロロメタン (500 mL) とメタノール (250 mL)の混合液に溶解した後、炭酸カリウム(12.5g, 90.7 モル, 1.5 eq)を加えた。反応混合物を、室温で3時間から4時間、TLC分析が反応の完結を示すまで撹拌を続けた。反応混合物をろ過し、溶媒を除去した。得られた粗生成物をメタノール(500 mL)に溶解し、室温で約0.5時間撹拌した。得られた固体を吸引ろ過し、メタノール (1x200 mL)で洗浄後、室温の真空下で乾燥させ、粗製の5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)- カテキンを得た。収量は38.4 g (収率97.5%)であった。
【0084】
粗製の5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン (37.5 g) を、約40℃(湯浴温度)でトルエン(2.7 L)に溶解した。得られた溶液を室温下約40時間放冷した。固体を吸引ろ過し、真空下でろ液を濃縮して、目的の化合物 (31.4 g, 84%) を得た。キラルHPLCにより決定された光学純度は91% eeであった。この固体を再度トルエン(1.4 L)に溶解し、40〜45℃(湯浴温度)まで温めた後、室温下約15時間放冷した。得られた固体を吸引ろ過した。真空下でろ液を濃縮して、白色に近い固体として目的の化合物を得た。収量は21.6 g (収率61%)、HPLC純度は100% (AUC)であった。キラルHPLCにより決定された光学純度は96% eeであった。
【0085】

【0086】
実施例16: 5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-エピカテキンの調製
パートA: (2S)-5, 7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-クロマン-3-オンの調製
実施例 13で得られた5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン(9.36 g, 14.4 ミリモル, 1 eq) のジクロロメタン (200 mL)溶液に、デス・マーチン・ペルヨージナン試薬(7.15 g, 16.87 モル, 1.17 eq)を加えた。5分間の撹拌後得られた透明の溶液に、含水ジクロロメタン (10 mL) を滴下した。得られた反応混合物を、室温で約2.5時間、TLC分析が反応の完結を示すまで撹拌を続けた。10%重炭酸水素ナトリウム水溶液(100 mL)を加え反応液をクエンチ処理した。有機層を分離し、水層をジクロロメタン (1x500 mL, 1x200 mL)で抽出した。有機層を一まとめにし、水(1x300 mL)で洗浄してから、硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過した。溶媒を真空下で除去した。その粗生成物をジクロロメタン(25 mL)に溶解し、シリカゲルプラグ(75 g)に通した。シリカゲルプラグをジクロロメタン(300 mL)で溶出した。一まとめにしたろ液を真空下で濃縮し、白色に近い固体として目的の化合物を得た。収量は7.85 g (収率85%)、HPLC純度は88% (AUC)であった。
【0087】

【0088】
パートB: (2S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)クロマン-3-オンから5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-エピカテキンへの変換
トルエン (90 mL)と2-プロパノール(33 mL)にパートAで得られた化合物(6 g, 9.26 ミリモル, 1 eq)を懸濁した溶液を、撹拌しながら加熱還流した。反応中に生成したアセトンは連結した蒸留装置で回収した。TLC分析が反応の完結を示すまで反応を続けた。混合物を室温まで冷やし、撹拌しながら5%硫酸水溶液(125 mL)を加え、クエンチ処理した。反応混合物を酢酸エチル(2x150 mL)で抽出した。一まとめにした有機層を水(3x100 mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過した。溶媒を真空下で除去した。得られた粗生成物を、ベンゼン/ヘプタン (4/1 , v/v, 250 mL)溶液から再結晶化し、白色に近い固体として目的の生成物を得た。収量は5.38 g (収率89%)、HPLC純度は100% (AUC)であった。キラルHPLCにより決定された光学純度は96% eeであった。
【0089】

【0090】
実施例17: (-)-カテキンの脱ベンジル化

【0091】
5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン(2.13 g, 3.27 ミリモル, 1 eq) と20%水酸化パラジウム-炭素 (50%水溶性ペースト, 0.53 g, 25質量%)の酢酸エチル(125 mL)溶液を、約1.034×105 Pa(15 psi)の下、室温で3時間、水素化分解した。出発物質の消費をHPLC解析で確認した。0.45μmのカートリッジで触媒をろ別し除去した。このカートリッジを酢酸エチル(20 mL)で洗浄した。一まとめにしたろ液を真空下で濃縮した。水 (100 mL)に溶解した残渣を凍結乾燥し、白色固体状の目的の化合物を得た。収量は0.8g (収率84%)、HPLC純度は99% (AUC)であった。
【0092】

【0093】
実施例18: (+)-エピカテキンの脱ベンジル化。
【0094】

【0095】
5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-エピカテキン (0.4 g, 0.615 ミリモル, 1 eq.)と20%水酸化パラジウム-炭素(50%含水, 0.08 g, 25質量%) の酢酸エチル(20 mL)溶液を、約1.034×105 Pa(15 psi)の下、室温で3時間、水素化分解した。出発物質の消費をHPLC解析で確認した。0.45μmのカートリッジを用いて、触媒をろ別し除去した。このカートリッジを酢酸エチル(10 mL)で洗浄した。一まとめにしたろ液を真空下で濃縮した。水 (100 mL)に溶解した残渣を凍結乾燥し、白色固体状の目的の化合物を得た。収量は0.18g (収率84%)、HPLC純度は98.4% (AUC)であった。
【0096】

【0097】
本発明はある特定の実施形態に関する記述であるが、当然のことながら、本発明から逸脱しない範囲で、当業者により多くの修正と変更が加えられ得る。従って、添付の特許請求の範囲は、真の精神と本発明の範囲に入り得るような修正と変更を全て包含することを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分のジアステレオマーである5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンと、副成分のジアステレオマーである5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンから実質的に成るラセミ混合物を調製する方法であって、
(a) 塩基の存在下で、2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-アセトフェノンと3,4-ビス- (ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドを縮合し、(E)-1-(2,4- ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オンを生成し、
(b) 還元条件下で、工程 (a) で得られた前記化合物を環化させ、5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル-2H-クロメンを生成し、
(c)工程 (b)で得られた前記化合物を酸化して、ラセミ混合物を生成する、
各工程から成る方法。
【請求項2】
室温から約80℃の温度で炭酸カリウムの存在下、N,N-ジメチルホルムアミド中の臭化ベンジル又は塩化ベンジルを用いて2,4,6-トリヒドロキシ-アセトフェノンをベンジル化することにより、前記2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-2-アセトフェノンを調製する工程をさらに含み、
炭酸カリウムの存在下、N,N-ジメチルホルムアミド中の臭化ベンジル又は塩化ベンジルを用いて3,4-ベンズアルデヒドをベンジル化することにより、前記3,4-ビス(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドを調製する工程をさらに含み、
化学分割、又は分取用の高圧液体クロマトグラフィーによって、前記ラセミ混合物中のエピマーを分離する工程をさらに含むことを特徴とする、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
室温で、約2時間から約3時間、水素雰囲気下、酢酸エチル中の過剰の水酸化パラジウムで前記エピマーを脱ベンジル化する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
(a) 5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキン、又は5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキンをデス・マーチン・ペルヨージナン試薬で酸化し、(2S)-又は(2R) -5,7-ビス(ベンジルオキシ) -2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ))-クロマン-3-オンを生成し、
(b)還流下、アルミニウムイソプロポキシド及び2-プロパノールのトルエン溶液を用いて、工程(a) で得られた前記(2S)-又は(2R) -5,7-ビス(ベンジルオキシ) -2-3',4'-ビス(ベンジルオキシ))-クロマン-3-オンを立体選択的に還元し、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-エピカテキン、又は5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-エピカテキンを生成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項5】
室温で、前記5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキン、前記5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン、前記5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-エピカテキン、前記5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-エピカテキンを、水素雰囲気下、酢酸エチル中の水酸化パラジウムで脱ベンジル化する工程をさらに含むことを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
(E)-1-(2',4'-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ) フェニル)プロパ-2-エン-1-オンを調製するための改良方法であって、
塩基の存在下で、2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-アセトフェノンと3,4-ビス- (ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドを縮合し、
低温において、エタノールとテトラヒドロフランの混合液中、水素化ホウ素ナトリウムと塩化セリウム七水和物で反応させる工程を有して成ることを特徴とする方法。
【化1】

【請求項7】
5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル-2H-クロメン。
【請求項8】
前記5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル-2H-クロメンを調製する方法であって、還元条件下、還流エタノール中の水素化ホウ素ナトリウムを用いて(E)-1 -(2',4'- ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス-(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オンを環化する工程を有してなることを特徴とする請求項7記載の方法。
【請求項9】
主成分のジアステレオマーである5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンと、副成分のジアステレオマーである5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンとから実質的に成るラセミ混合物を調製する方法であって、
(a) 前記5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-2H-クロメンをジヒドロキシル化して、ラセミ体(3S,4S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)クロマン-3,4-ジオールを生成し、
(b) 工程(a) で得られた3,4-ジオールを還元して、ラセミ混合物を生成する、
各工程から成る方法。
【請求項10】
前記ジヒドロキシル化の工程(a)が、室温下、tert-ブタノールと水とテトラヒドロフランの混合液中、四酸化オスミウムとN−メチルモルホリンN−オキシドを用いて行なわれ、
還元反応の工程(b)が、酢酸中の水素化シアノホウ素ナトリウムを用いて行なわれることを特徴とする請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記ジアステレオマーを分離し、室温、水素雰囲気下、酢酸エチル中の過剰の水酸化パラジウムを用いて、分離したエピマーを約1時間から約3時間反応させることにより脱ベンジル化する工程をさらに含むことを特徴とする請求項10記載の方法。
【請求項12】
5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキン、及び5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンを調製する方法であって、
(a) 酸性条件下、3,5-ビス(ベンジルオキシ)フェノールを、(E)-3-(3,4-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)プロパ-2-エン-1-オールとカップリング反応させ、(E)-(3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェノールを生成し、
(b)工程(a)で得られた化合物を、塩化tert-ブチルジメチルシランと反応させ、(E)-(3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)-フェノキシ(tert-ブチル)ジメチルシランを生成し、
(c)室温下、tert-ブタノールと水とテトラヒドロフランの混合液中、四酸化オスミウムとN−メチルモルホリン-N-オキシドを用いて、工程 (b)で得られた化合物をジヒドロキシル化し、3,5-ビス(ベンジルオキシ) -2-(5- (3',4'-ビス-(ベンジルオキシ)フェニル)-2-エトキシ-1 ,3-ジオキソラン-4-イル)フェノールを生成し、
(d) 工程(c)で得られた化合物から、保護基である(tert-ブチル)ジメチルシリル基を除去し、3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-(ヒドロキシフェニル)-1 -(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)-フェニル)プロパン-1,2-ジオールを生成し、
(e)オルトギ酸トリエチル、又はオルトプロピオン酸トリエチルとの反応により工程(d)で得られた化合物を活性化し、オルトギ酸からは3,5-ビス(ベンジルオキシ) -2-(5- (3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-2-エトキシ-1 ,3-ジオキソラン-4-イル)フェノールを、あるいはオルトプロピオン酸からは3,5-ビス(ベンジルオキシ) -2-(5- (3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-2-エトキシ-2-エチル-1 ,3-ジオキソラン-4-イル)プロピル)フェノールを生成し、
(f) 室温、又は60℃で、メタノールと、ジクロロメタン又はジクロロエタンの混合液中、工程 (e)で得られたジオールを炭酸カリウムと反応させ、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキンを生成する、
各工程を有して成ることを特徴とする方法。
【請求項13】
真空下、工程(g)から得られる混合物から溶媒を除去し、
残渣を酢酸エチルと水で抽出し、
抽出物から水を除去し、
硫酸ナトリウムで酢酸エチルを乾燥させ、
酢酸エチルを蒸発させて、粗製の5,7,3',4'-テトラ- O-ベンジル-(±)-カテキンを回収する、各工程をさらに含むことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記脱ベンジル化の工程が、室温、バルーンを用いた水素雰囲気下、で酢酸エチル中の水酸化パラジウムを用いて行なわれることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
ジアステレオマーを分離し、室温、水素雰囲気下、酢酸エチル中の水酸化パラジウムと反応させることにより分離したエピマーを脱ベンジル化する工程をさらに含むことを特徴とする請求項12記載の方法。
【請求項16】
5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン、又は5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-エピカテキンを調製する方法であって、
(a)塩基の存在下、N,N-ジメチルホルムアミド中で2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-アセトフェノンと3,4-ビス- (ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドを縮合し、(E)-1-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オンを生成し、
(b) テトラヒドロフランとエタノールの混合液中、水素化ホウ素ナトリウムと塩化セリウム7水和物を用いて、工程(a)で得られた化合物を選択的に還元し、(E)-3,5-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)アリル)フェノールを生成し、
(c) 室温で、ジクロロメタン中イミダゾールとN,N-ジメチルホルムアミドの存在下、あるいはトリエチルアミンと N,N-ジメチルアミノピリジンの存在下で、工程 (b)で得られた化合物をtert-ブチルジメチルシリルクロライドと反応させ、 (E)-(3,5-ビス(ベンジルオキシ)-(3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-アリル)-フェノキシ)(tert-ブチル)ジメチルシランを生成し、
(d) メタンスルホンアミドの存在下、tert −ブタノールと水とテトラヒドロフラン又はジクロロメタンの混合液中、工程 (c)で得られた化合物をAD-mix-βと反応させて、 (1R,2R)-3- (2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-tert-(ブチルジメチルシロキシ)フェニル-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン-(1 ,2-ジオール)を形成するか、あるいはAD-mix-αと反応させて、 (1S,2S)-3- (2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-tert-(ブチルジメチルシロキシ)フェニル-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパン-(1 ,2-ジオール)を生成し、
(e)酢酸とテトラヒドロフラン、又は酢酸とジクロロメタンの混合液中、工程 (d)で得られた(1R,2R) -1 ,2-ジオール、又は(1S,2S)-1 ,2-ジオールを、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウムと反応させて、(1R,2R)-3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6- (ヒドロキシフェニル)-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-プロパン-1 ,2-ジオール、又は(1S,2S)-3-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6- (ヒドロキシフェニル)-1-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)-プロパン-1 ,2-ジオールを形成し、
(f) 工程(e)で得られる(1S,2S)-1 ,2-ジオール、又は(1R,2R)-1 ,2-ジオールを、オルトプロピオン酸トリエチルとp-トルエンスルホン酸ピリジニウムと反応させ、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン-3-O-プロピルエステルを生成し、
(g)メタノールとジクロロメタン、又はメタノールとジクロロエタンの混合液中、工程(f)で得られる化合物 5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン-3-O-プロピルエステルを炭酸カリウムと反応させ、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン又は5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンを生成し、
(h) 必要に応じて、5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(-)-カテキン又は5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンを分離し、室温下、分離した化合物を酢酸エチル中水酸化パラジウムと反応させることにより、脱ベンジル化する、
各工程を有して成る方法。
【請求項17】
脱ベンジル化が、室温下水素雰囲気の気密空間内で酢酸エチル中水酸化パラジウムを用いて行なわれ、(-)-カテキン又は(+)-カテキンが形成されることを特徴とする請求項16記載の方法。
【請求項18】
5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-カテキン、及び5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(±)-エピカテキンのラセミ混合物を化学的に分割する方法であって、
(a) ラセミ混合物中の化合物の3位を、ジベンゾイル-L-酒石酸モノメチルエステルでエステル化し、ラセミ体(±)-(2R,3R)-1-((2R,3S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)クロマン-3-イル)-4-メチル-2,3-ビス(ベンジルオキシ) コハク酸エステルを生成し、
(b) 工程(a)で得られた化合物を分別結晶化し、エナンチオマー的に純粋な(+)-(2R,3R)-1-((2R,3S)-5,7-ビス(ベンジルオキシ)-2-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)クロマン-3-イル)-4-メチル-2,3-ビス(ベンジルオキシ)コハク酸エステルを回収し、
(c)約 40℃から約45℃の0.05 M水酸化カリウムのメタノール溶液とジクロロメタンを用いて、約80%のジクロロメタンと約20%のヘプタン (v/v)の混合液中、工程 (b)で得られた化合物を加水分解し、エナンチオマー的に純粋な5,7,3',4'-テトラ-O-ベンジル-(+)-カテキンを生成する、
各工程を有して成る方法。
【請求項19】
室温から約80℃の温度で炭酸カリウムの存在下、N,N-ジメチルホルムアミド中臭化ベンジル又は塩化ベンジルを用いて2,4,6-トリヒドロキシアセトフェノンをベンジル化することにより2-ヒドロキシ-4,6-ビス(ベンジルオキシ)-アセトフェノンを調製し、
炭酸カリウムの存在下、N,N-ジメチルホルムアミド中臭化ベンジル又は塩化ベンジルを用いて3,4-ベンズアルデヒドをベンジル化することにより3,4-ビス(ベンジルオキシ)ベンズアルデヒドを調製する、
各工程をさらに含むことを特徴とする請求項18記載の方法。
【請求項20】
(E)-1-(2,4-ビス(ベンジルオキシ)-6-ヒドロキシフェニル-3-(3',4'-ビス(ベンジルオキシ)フェニル)プロパ-2-エン-1-オンを選択的に還元する方法であって、約0℃から約5℃下、テトラヒドロフランとエタノールの混合液中、水素化ホウ素ナトリウムと塩化セリウムを用いて還元反応を行なう工程を有して成る方法。

【公表番号】特表2009−501706(P2009−501706A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−520295(P2008−520295)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/025482
【国際公開番号】WO2007/002877
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(390037914)マース インコーポレーテッド (80)
【氏名又は名称原語表記】MARS INCORPORATED
【復代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
【復代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
【Fターム(参考)】