説明

(2R)−2−[(4−スルホニル)アミノフェニル]プロパンアミド類と、それらを含有する医薬組成物

本発明は、フェニル基の4−位置に4−スルホニルアミノ置換基を有する、新規な(2R)−2−フェニルプロパンアミド類と、それらを含有し、多形核細胞及び単核細胞の走化性の阻害剤として用いられ、種々なELRCXCケモカイン仲介障害の治療に有用である医薬組成物に関する。特に、本発明の化合物は、例えばBOS、COPD、血管新生及び黒色腫のような、特定のCXCR2依存性の病状(CXCR2 dependent pathologies)の治療及び制御に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の簡単な説明
本発明は、フェニル基の4−位置に4−スルホニルアミノ置換基を有する、新規な(2R)−2−フェニルプロパンアミド類と、それらを含有し、多形核細胞及び単核細胞の走化性の阻害剤として用いられ、種々なELRCXCケモカイン仲介障害の治療に有用である医薬組成物に関する。特に、本発明の化合物は、例えばBOS、COPD、血管新生及び黒色腫のような、特定のCXCR2依存性の病状(CXCR2 dependent pathologies)の治療及び制御に有用である。
【0002】
先行技術
ケモカインは、7TM−GPCRsファミリーに属する受容体との相互作用を介して、それらの作用を発揮する化学走化性サイトカインの大きなファミリーを構成する。ケモカイン系は、恒常性及び炎症性の基底白血球運動の調節及び制御のために極めて重要である。ケモカイン受容体活性化の機能的結果は、白血球の移動運動(leukocyte locomotion)、デグラニュレーション(degranulation)、遺伝子転写、細胞分裂効果及びアポトーシス効果apoptotic effect)を包含する。造血細胞以外の多くの細胞種類が、ケモカイン受容体を発現し;これらの細胞は、内皮細胞、平滑筋細胞、間質細胞、神経細胞及び上皮細胞を包含する。これらの細胞の活性化は、腫瘍発生及び転移の他に、例えば、器官形成中の血管形成及び形態形成運動のような、組織調節及びホメオスタシスの他の態様に、へケモカイン受容体活性化の関与を広げる。
【0003】
血管の新生を特徴とする血管形成は、多くの生理学的及び病態生理学的イベント(例えば、胚発育、創傷治癒、慢性的炎症及び悪性腫瘍増殖)にとって不可欠であり、ケモカインは、血管形成のこれらの全ての態様に、異なる機構によって影響を及ぼす。説明された最初の強力な血管形成性ケモカインは、1992年のCXCL8(IL−8とも呼ばれる)であった[Koch A.E.et al., Science, 258, 1798, 1992]。病態生理学的観点から、血管形成のケモカイン調節は、腫瘍形成と増殖に非常に重要であるように思われる。CXCL8に対する2種類の受容体(CXCR1とCXCL2)が知られており;これらはCXCL8を高いアフィニティで結合する。CXCR1はCXCL8に対して選択的であるが、CXCR2は天然リガンドとして他のケモカインとも相互作用する。例えば、皮膚黒色腫発達における、CXCR2に仲介される、CXCL8の可能な病原的役割は証拠を累積中である。
【0004】
黒色腫標本と、それらに由来する細胞系が、CXCL8とCXCL1(GRO−αとも呼ばれる)を含めた、幾つかのケモカインを発現することが判明している。CXCL8は自己分泌増殖因子であり[Schadendorf D. et al, J. Immunol, 151, 2667, 1993]、血管形成を誘導し[Strieter R. M. et al., Am. J. Pathol., 141, 1279, 1992]、その受容体の結合と活性化を介して黒色腫細胞の遊走(migration)に影響を及ぼす[Wang J.M. et al., Biochem. Biophys. Res. Commun., 169, 165, 1990]ことが判明しているので、CXCL8は腫瘍の進行と転移の経過に影響を及ぼす。両方の受容体は幾つかの細胞種類(内皮細胞と黒色腫細胞)に発現され、血管新生反応にも関与している[Addison CL. et al., J. Immunol, 165, 5269, 2000]、但し異なる形式でである。ヒト正常メラニン細胞ではCXCR2の低い発現を見出すことができるが、該受容体はTNF−αによる処理後にアップレギュレートされ、CXCL8に反応して増殖が強化される、それに反して、CXCR1発現は、同じ実験において、検出不能であることが発表されている[Norgauer J. et al J. Immunol, 156, 1132, 1996]。重要な血管新生因子としてのCXCL8は、既に充分に評価されており、CXCR2受容体が推定の血管新生因子受容体(angiogenic receptor)であることが実証されている。ごく最近になって、黒色腫進行における特定の受容体CXCR1と2の役割が、解明されている[Varney M. L. et al, Am. J. Clin. Pathol, 125, 209, 2006]。CXCR1はあらゆるClarkレベルのヒト悪性黒色腫に遍在的に発現されるが、CXCR2は主として、グレードの高い黒色腫の腫瘍と転移によって発現されること、及び薄い黒色腫と厚い黒色腫とではCXCR2発現レベルに有意な差異が存在することがin vitroで実証されており、このことは、in vivo作用(behaviour)でもCXCR2とCXCR1の役割が異なることを示唆する。CXCR1とCXCR2は血管新生反応に、及び黒色腫細胞のハプトタクティック遊走(haptotactic migration)/走化性に関与する。CXCL8に対する同様なアフィニティと同様な受容体数にも拘わらず、好中球の走化性は主としてCXCR1によって仲介され [Quan J.M. et al, Biochem. Biophys. Res. Commun., 219, 405, 1996]、内皮細胞によるCXCL8発現は、CXCR1受容体を介して黒色腫細胞から走化性反応を導出する。CXCR2受容体は、上記で評価したように、ELRCXC−ケモカイン誘導血管新生を仲介する推定受容体と見なされ、このことは、進行性悪性表現型(aggressive malignant phenotype)の調節におけるCXCR1とCXCR2の役割が異なること及び黒色腫の進行と転移におけるCXCL8の発現とCXCR2(CXCR1ではなく)との関連性を確証する[Varney M. L. et al, Am. J. Clin. Pathol, 125, 209, 2006]。
【0005】
悪性黒色腫の管理のために、CXCR2調節によるCXCL8の産生及び/又は活性の阻害は理想的なターゲットである。
肺疾患(肺損傷、急性呼吸窮迫症候群、喘息、慢性肺炎症及び嚢胞性線維症)における、特に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)の病因におけるCXCR2経路を介してのCXCL8の可能な病原的役割は既に述べられている[Barnes PJ., Cytokine Growth Factor Rev., 14, 511, 2003]。抗CXCL8抗体は、COPD喀痰に対する走化性反応に阻害効果を有する[Hill A.T. et al, Am. J. Respir. Crit. Care med., 160, 893, 1999]。多くの炎症細胞とメディエーターを含む末梢気道上の炎症を特徴とする疾患である。これは、気道及び組織中のマクロファージ数の増加を含めた炎症細胞流入増加(increased inflammatory cell influx)を付随する。肺胞マクロファージは単球から成長し(develop)、COPDに関連した病理学的変化を惹起する能力を有する。循環からの単球の補充(recruitment)の結果として、COPDにおけるマクロファージ数の増加が報告されている。COPD患者からの末梢血単核細胞の走化性アッセイは、GRO−α(MCP−1、CXCL8若しくはNAP(ENA)−78ではなく)に対する制御と比較した場合に、走化性反応の増強を示す[Traves S. L. et al., J. Leuk. Biol, 76, 441, 2004]。この反応は、細胞受容体CXCR1とCXCR2の発現の差によって仲介されるのではなく、COPD患者においては、CXCR2の単球発現が異なる形式で調節される:CXCR1は高濃度のCXCL8に反応して、好中球の活性化及びスーパーオキシド・アニオンと好中球エラスターゼの放出の原因となるが、他方では、CXCR2は低濃度のCXCケモカインに反応して、走化性反応に関与する。例えばSB225002のような、CXCR2の強力なSMW分子阻害剤が現在、CXCL8及びGRO−αに対する好中球の走化性反応の遮断薬として開発されている。この拮抗薬は、GRO−αの濃度が高いCOPD喀痰に対する走化性反応に有意な阻害効果を及ぼす[Traves S.L., et al., Thorax, 57, 590, 2002]。それ故、CXCR2拮抗薬は、COPD患者における単球走化性とマクロファージ蓄積を低下させる可能性もある。この結果は、COPDの治療と肺損傷の抑制における選択的CXCR2対CXCR1 SMW拮抗薬の可能性を強調する。
【0006】
さらに最近では、ELRCXCケモカインが、BOS発症にも関係するという仮説が立てられている。BOSは、細気管支腔の進行性狭窄及び空気流閉塞を生じる線維症性過程(fibrotic process)である。BOSは、典型的に、アデノウイルス又はマイコプラズマ肺炎感染後に発症するが、BOSはさらに、移植された肺の慢性的拒絶、特に慢性的な肺同種移植片拒絶をも付随する。肺移植後5年目のBOSの累積発病率は50%〜80%であり、BOS発症後の移植片の5年間生残率は僅か30%〜50%である[Douglas, LS. et al., J. Clin. Invest. 115, 1133, 2005].。BOSは、粘膜下組織、基底膜及び気道上皮組織に侵入して、破砕する細気管支周囲白血球浸潤を特徴とする。白血球浸潤及び活性化によって仲介される細気管支組織損傷に続いて、線維増殖(fibroproliferation)と肉芽組織形成が生じる[Trulock, E. P. Am. J. Respir. Crit Care Med. 155, 789, 1997]。
【0007】
抗CXCR2 Abの使用によるCXCR2機能性の阻害は、マウスのBOS実験モデルにおけるPMN浸潤を早期に抑制した[Belperio, J.A., et al., J Clin Invest. 115, 1150, 2005]。血管新生は、BOS線維増殖過程に決定的に寄与することも考えられ、ELRケモカインが、BOS血管新生に直接関与すると想定される。BOS患者のBALFにおける血管新生は主として、ELRCXCケモカインの存在による。さらに、BOSのネズミモデルを用いた研究も、気管同種移植片におけるELRCXCケモカイン発現に平行した血管リモデリングの増強を実証した。一括して考えると、これらのデータは、BOS発症にELRCXCケモカインが果たす病態生理学的役割が二峰性である:前期には、ELRCXCケモカインがPMN漸増に影響を与える(即ち、虚血/再潅流障害段階中)、そして慢性的後期には、ELRCXCケモカインが血管リモデリングと血管新生に寄与する(即ち、線維増殖段階中)という仮説を支持し、ELRCXCケモカイン活性の阻害がこの症候群の治療のための有効な治療方法でありうることを強く暗示する。
【0008】
本発明の分子目的は、CXCL8関連の特定疾患の治療と制御において、特にCXCR2の明瞭な、生理病理学的に重要な役割が充分に評価されるような病理(BOS、COPD及び腫瘍進行のような)のための新規な治療剤を表す。白血球遊走、活性化及び分化の制御がケモカイン系に、侵入病原体に対する宿主免疫応答における重要な役割をも与えることは周知である。このことは、異なる形式で免疫系を操作する、ケモカイン、ケモカイン受容体又はケモカイン結合タンパク質を、ウイルスが誘導する又はコードするという事実によって支持される[Murphy, PM., Nature Immunol., 2, 116, 2001]。感染に対する宿主免疫応答の初期にはCXCL8に対する感応性が重要であり[McCoIl SR. et al., J. Immunol, 163, 2829, 1999; Moore TA et al. J. Immunol, 164, 908, 2000]、CXCR1はヒト好中球上に発現される有力なCXCL8サブタイプ受容体であることが現在明らかである。最近の論文[Hess C, et al. Blood, 104, 3463, 2004]は、CXCR1を、先天的免疫応答と後天的免疫応答との間のギャップを埋めて、新しいエフェクター細胞の発生前に、感染部位に高度に細胞傷害性の抗原特異的エフェクター機能を早期に与えるT細胞の“迅速応答”サブセット(CDS+T細胞のような)を画定することができる系として述べている。さらに、好中球とCD8+T細胞の両方でのCXCR1のレベルは厳重に制御されるので、CXCR1作動薬/拮抗薬に対する差別的感応性は免疫応答の微調整において重要な特徴である。結論として、CXCR2の主要な役割が充分に評価されている慢性的疾患[即ち、腫瘍疾患(黒色腫)及び肺疾患(COPD、BOS)]の管理において、CXCR1受容体の同時阻害(大抵の既知CXCL8モジュレーターによって得られる)は不必要であり、さらに、長期間治療の必要性の結果として生じる、免疫応答の無用な変化のために不利であるという仮説を立てることができる。
【0009】
本出願人らは、最近、CXCL8の、CXCR1及びCXCR2との相互作用によるPMN白血球の走化性活性化の阻害に有用な、新規な種類の“2R−アリールプロピオニルアミド”(WO 02/58858)及び“2−アリールプロピオン酸”(WO 03/043625)を述べている。2−アリールプロピオン酸の種類に関する限り、両方のCXCL8受容体に対する生物学的活性は特許請求されており、さらに、CXCR2受容体に対して選択的活性を有する化合物の例は記載されている。該アミドの種類に関しては、CXCR1及びCXCR2サブタイプ受容体に対する明らかな選択性は、この種類の分子内では実証されていない。意外にも、2−アリールプロピオン酸サブセットのアミドへの化学的転換は、化合物におけるCXCR2選択性(さもなくば、二重のCXCR1/2阻害剤)を強調している。顕著な選択性と新規な物理化学的特徴が、アミドのこのサブセットを、腫瘍(黒色腫)領域及び肺(COPD及びBOS)領域におけるCXCR2依存性の特定病理の治療に特に有用な、本発明の特権付き化合物にする。
【0010】
発明の開示
本発明においては、フェニル基の4位置に4−スルホニルアミノ置換基を有する、新規な種類の(2R)−2−フェニルプロパンアミドと、それらを含有する医薬組成物を開示する、該医薬組成物は、多形核細胞及び単核細胞の走化性の阻害剤として用いられ、種々なELRCXCケモカイン仲介障害(COPDとしての急性炎症性疾患のような)の治療に又は悪性黒色腫のような腫瘍形成をもたらしうるELRCXCケモカイン仲介血管新生の治療に有用である可能性を秘めている。これらの化合物は、R’環置換基の化学的特性のための良好な水溶性を特徴とし、R残基の性質から独立している。このような置換基の例は、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基及びヘテロアリールスルホニルアミノ基である。上記アミドの一部は、GRO−α誘導走化性に対して良好な特異性を発揮する、既述した2−アリールプロピオン酸から誘導される。意外にも、アミドへの該酸の化学的修飾は、CXCR1受容体に対しては活性を有さず、CXCR2に対しては強化された活性を有する、新規な化合物を得ることを可能にしている。上記新規なアミドのCXCR2に対する選択性は、CXCL8に応答したCXCR1/L1.2及びCXCR2/L1.2トランスフェクタント遊走の阻害の実験によって評価されている。表1に報告するデータは、該化合物がIC50 約10−8Mを有する、CXCL1誘導hPMN走化性の強力な阻害剤であることを示している。これに対して、同化合物は10−7M濃度ではCXCL8誘導hPMN走化性を顕著には阻害しない。これらの結果は、CXCL8によって誘導される走化性促進にCXCR1が果たす主要な役割と一致する。これと一致して、選択性アッセイにおいて、該化合物は10−6MまでCXCL8に反応したCXCR1/L1.2トランスフェクタント遊走に対する有意な阻害活性を示さない。
【0011】
さらに、この種類の化合物に関してもシクロオキシゲナーゼ経路の活性の全体的欠如が確認されている。
序論で上述したことに基づくと、腫瘍領域(特に、黒色腫)及び肺領域(COPD、BOS)におけるCXCR2依存性病理の治療における、この新規な種類の化合物の可能な役割が明らかである。
【0012】
発明の詳細な説明
本出願人らは、現在、多形核細胞及び単核細胞の走化性の阻害剤としての(2R)−2−フェニルプロパンアミドの新規な種類を見出している。特に、本発明の該化合物は、改良された薬物動態的及び薬理学的活性プロフィルを有する、CXCL1誘導好中球走化性の強力な阻害剤である。
【0013】
したがって、本発明は、式(I):
【0014】
【化1】

【0015】
で示される(2R)−2−フェニルプロパンアミド誘導体と、その製薬的に受容される塩を提供する、上記式において、
Rは、H、OH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルコキシ及びフェニル;ヘテロアリール基(置換及び非置換のピロール、チオフェン、フラン、インドール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン及びピリミジンから選択される);及び式:−CH−CH−O−(CH−CHO)R”[式中、R”はH若しくはC−Cアルキルであり、nは0〜2の整数である]で示される残基から選択されるか、又はRは、それが結合するNH基と共に、例えば(2S)−2−アミノプロパンアミド、(2S)−2−アミノ−3−フェニルプロパンアミド、(2S)−2−アミノ−3−ヒドロキシプロパンアミド、(2S)−2−アミノ−3−カルボキシプロパンアミド、(2S)−2,6−ジアミノエキサンアミドのような天然アミノ酸の第1級アミドのラジカル基である。天然アミノ酸の第1級アミドのラジカル基の一部としての上記NH基は、該天然アミノ酸のアミノ基を表す。
R’は、直鎖若しくは分枝鎖のC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cアルケニル及びトリフルオロメチル;置換若しくは非置換のフェニル;置換若しくは非置換のベンジル;及びヘテロアリール基(置換及び非置換のピリジン、ピリミジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドール、チアゾール及びオキサゾールから選択される)から選択される。
【0016】
本発明はさらに、薬剤として使用するための、式(I)で示される化合物を提供する。特に、このような薬剤は、多形核細胞及び単核細胞のCXCL1誘導走化性の阻害剤である。
【0017】
本発明の化合物は、(2R)−2−(4−スルホニルアミノフェニル)プロパンアミドの化学的種類に属する。式(I)で示される化合物は、一般に、WO 01/58852に既に記載されている化合物の一般式に包含されるが、これらの化合物は、上記発明の好ましい化合物と比較したときに、重要な、有利な特徴を共有する。
【0018】
意外にも、この種類の化合物は、走化性アッセイにおいて、CXCR1受容体に対して示された活性に比較して、CXCR2受容体に対する強化された選択性を共有しており、このことが、この種類の化合物を、異なる慢性若しくは急性の病的状態、CXCR2依存性の、特に腫瘍性障害(黒色腫のような)の治療のための薬物として有用にする。実際に、CXCR2が主として高グレードの黒色腫の腫瘍と転移によって発現されること、及び薄い黒色腫と厚い黒色腫との間にはCXCR2発現レベルに有意な差が存在することが実証されており、このことはin vivo挙動においてもCXCR1とCXCR2の役割が異なることを示唆する[Varney M. L. et al, Am. J. Clin. Pathol, 125, 209, 2006]。さらに、CXCR2拮抗薬は、COPDのような、重要な肺疾患の管理に特に有用な治療的用途を見出している[Hay D.W.P. et al., Current Opinion in Pharmacology, 1, 242, 2001].。
【0019】
好ましいR基は、H、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、L−2−アミノ−1−メチル−2−オキソエチル;ヘテロアリール基(置換及び非置換チアゾール、オキサゾール、ピリジンから選択される)である。
【0020】
好ましいR’基は、直鎖若しくは分枝鎖C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、トリフルオロメチル、ベンジル;非置換フェニル若しくは置換フェニル(ハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、トリフルオロメチル、チオフェンから選択される基による)である。
【0021】
本発明の特に好ましい化合物を下記に挙げる:
1:(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
2:(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド・ナトリウム塩;
3:(2R)−2−(4−{[(2−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
4:(2R)−2−(4−{[(2,6−ジクロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
5:(2R)−2−{4−[(メチルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
6:(2R)−2−{4−[(フェニルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
7:(2R)−2−(4−{[(4−メチルフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
8:(2R)−2−(4−{[(4−メトキシルフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
9:(2R)−2−{4−[(ベンジルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
10:(2R)−2−(4−{[(4−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
11:(2R)−2−(4−{[(4−(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
12:(2R)−2−{4−[(チエン−2−イルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
13:(2R)−2−{4−[(シクロペンチルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
14:(2R)−2−(4−{[(トリフルオロメチル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
15:(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}−N−メチルプロパンアミド;
16:(2R)−N−[(1S)−2−アミノ−1−メチル−2−オキソエチル]−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
17:(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}−N−[4−(トリフルオロメチル)−1,3−チアゾル−2−イル]プロパンアミド;
18:(2R)−2−(4−{[(2−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)−N−[4−(トリフルオロメチル)−1,3−チアゾル−2−イル]プロパンアミド;
19:(2R)−2−(4−{[(2−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)−N−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]プロパンアミド;
20:(2R)−2−(4−{[(2−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)−N−シクロプロピルプロパンアミド。
【0022】
該リストにおける最も好ましい化合物は、化合物1と関連ナトリウム塩である。
本発明の化合物は、CXCL1によって誘導されるヒトPMNs走化性の強力な阻害剤である。
【0023】
式(I)で示される本発明化合物は、一般に、有機及び無機の両方の製薬的に受容される塩基による、それらの付加塩として単離される。
これらの塩基の例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、(D,L)−リシン、L−リシン、トロメタミンである。
【0024】
式(I)で示される本発明化合物を、IL−8及びGRO−αの部分によって誘導される、多形核白血球(以下ではPMNsと呼ぶ)及び単球の走化性を阻害する、それらの能力に関してin vitroで評価した。この目的のために、健康な成人被験者から採取したヘパリン化ヒト血液からPMNsを単離するために、デキストラン上での沈降によって単核細胞を取り出し( WJ. Ming et al., J. Immunol, 138, 1469, 1987によって開示された方法によって)、赤血球細胞は低張溶液によって取り出した。細胞の生存率(cell vitality)をトリパンブルー排除法によって算出し、循環多形核細胞の割合をDiff Quickによる染色後の細胞遠心分離で推定した。
【0025】
CXCL8誘導走化性アッセイでは、ヒト組み換えCXCL8(Pepro Tech)を走化性実験における刺激剤として用いた:走化性アッセイのために10−8M濃度にHBSS中で希釈するために10−5M濃度を有するストック溶液が得られるように、0.2%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するHBSSの量中に、凍結乾燥タンパク質を溶解した。
【0026】
GRO−α誘導走化性の阻害を同様なアッセイで評価した。この走化性実験では、PMNsを式(I)で示される本発明化合物と共に、5%CO含有雰囲気中で37℃において15分間インキュベートした。走化性アッセイ[W. Falket et al., J. Immunol. Methods, 33, 239, 1980]中に、5μmの孔度を有するPVPフリー・フィルターと、複製に適したマイクロチャンバーを用いた。式(I)で示される本発明化合物を10−6M〜10−10Mの範囲の濃度で評価した;このために、該化合物を該マイクロチャンバーの下部孔と上部孔の両方に同じ濃度で加えた。ヒト単球の走化性を阻害する、式(I)で示される本発明化合物の能力の評価を、開示された方法[Van Damme J. et al.,Eur. J. Immunol, 19, 2367, 1989]に従って 行った。
【0027】
CXCR1及びCXCR2トランスフェクトしたL1.2細胞を用いる遊走アッセイによって、式(I)で示される化合物を試験して、それらの選択性を評価した。5μm孔度Transwellフィルターを用いて、記載された方法[Imai T. Et al., J. Biol. Chem, 273, 1764, 1998]に従って、該アッセイを行った。L1.2細胞は、特定タンパク質(CXCR1若しくはCXCR2)をコード化する遺伝子を含有するベクター(pc−DNA−CXCR1若しくはCXCR2)によってトランスフェクトされたネズミprc−Tリンパ球である。Patrignani et al.によって J. Pharmacol. Exper. Ther., 271, 1705, 1994に開示された方法に従って、全体として、生体外の血液中で評価された式(I)化合物は、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素の阻害剤として全体的に効果がないと判明した。
【0028】
大抵の場合に、式(I)化合物は、10−5M〜10−7Mの範囲の濃度において、リポ多糖刺激(LPS、1μg/ml)によってネズミ・マクロファージ中に誘導されるPGEの産生を妨害しない。記録されうるPGE産生の阻害は、大抵は、統計的有意性の限界においてであり、より頻繁には、基底値の15〜20%未満である。プロスタグランジン合成の阻害がマクロファージ細胞にとって好中球活性化の重要なメディエーターであるTNF−α(LPS若しくは過酸化水素によって誘導)の合成を増幅するための刺激と、サイトカイン・インターロイキン−8産生の刺激を構成する限り、COXsの阻害における効果の低下は、本発明化合物の治療的用途のための利益を構成する。
【0029】
CXCR2活性化の阻害剤は、上記で詳述したように、CXCL8及びGRO−α受容体の活性化が疾患の進行に決定的な病態生理学的役割を果たすと考えられる慢性炎症性病状の治療に特に、有用な用途を見出している。特に、CXCR2の活性化は、動物モデルにおける[Keane M. P. et al. J. Immunol, 172, 2853, 2004] 及び異なるレベルの悪性黒色腫を有する患者における[Varney M. L. et al, Am. J. Clin. Pathol, 2006, 125, 209]、ELRCXCケモカインCXCL8に仲介される上皮細胞増殖、血管新生及び黒色腫の血管由来活性の仲介に重要であると考えられる。
【0030】
さらに、CXCR2拮抗薬は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(D. WP Hay and H.M. Sarau., Current Opinion in Pharmacology 2001, 1:242-247) 及び閉塞性細気管支炎症候群(BOS) [Trulock, E. P. Am. J. Respir. Crit Care Med. 155, 789, 1997]のような、重要な肺疾患の管理に特に有用な治療的用途を見出している。
【0031】
それ故、血管新生、黒色腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び閉塞性細気管支炎症候群(BOS)の治療に用いるための化合物を提供し、並びに上記疾患の治療用薬剤の製造における該化合物の使用を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【0032】
本発明の化合物とその適当なキャリヤーを含む医薬組成物も、本発明の範囲内である。
本発明の化合物は、実際には、慣用的に用いられるアジュバンド、キャリヤー、希釈剤又は賦形剤と共に、医薬組成物の形態及びその単位投与形にすることができ、このような形態で、全て経口的使用のための固体(例えば、錠剤若しくは充填カプセル)又は液体(例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン、エリキシル剤若しくはこれらを充填したカプセル)として用いることができる、或いは非経口的(皮下を含む)使用のための無菌注射用溶液の形態で用いることができる。このような医薬組成物とその単位投与形は、付加的な活性化合物若しくは有効成分(active principles)の有無に拘わらず、慣用的な割合で成分を含むことができ、このような単位投与形は、用いるべき予定の1日投与量範囲に相応した、任意の適当な有効量の有効成分を含有することができる。
【0033】
薬剤として用いる場合に、本発明の化合物は、典型的に、医薬組成物の形態で投与する。このような組成物は、製薬業界で周知の方法で製造することができ、少なくとも1種類の活性化合物を含むことができる。一般に、本発明の化合物は、医薬的に有効な量で投与する。化合物の実際の投与量は、典型的に、治療すべき状態、選択した投与経路、投与する実際の化合物、個々の患者の年齢、体重及び反応、患者の症状の重症度などを包含する関連状況に基づいて決定される。
【0034】
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、経皮、皮下、静脈内、筋肉内及び鼻腔内経路を包含する、多様な経路によって投与することができる。予定のデリバリー経路に依存して、該化合物は、好ましくは、注射用組成物又は経口組成物のいずれかとして処方することができる。経口投与用組成物は、バルク液体溶液若しくは懸濁液、又はバルク粉末の形態をとることができる。しかし、より一般的には、該組成物は、正確な投与を容易にするために、単位投与形で与えられる。“単位投与形”なる用語は、ヒト対象及びその他の哺乳動物に対する単位投与量として適した、物理的に個別の単位を意味し、各単位は、所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を、適当な製薬的賦形剤と共に含有する。典型的な単位投与形は、液体組成物の前充填された、前測定済みのアンプル若しくは注射器、又は固体組成物の場合には、ピル、錠剤、カプセル剤などを包含する。このような組成物において、酸化合物は通常マイナー成分(約0.1〜約50重量%、又は好ましくは約1〜約40重量%)であり、残部は、所望の投与形を形成するために有用な、種々なビヒクル若しくはキャリヤー及び加工助剤である。
【0035】
経口投与に適した液体形は、適当な水性若しくは非水性ビヒクルを、緩衝剤、懸濁化剤及び分散剤、着色剤、フレーバー(flavors)などと共に含むことができる。以下で述べる注射用組成物を包含する液体形は、例えば過酸化水素若しくは過酸化物形成のような、光の触媒効果を完全に回避するために、常に光の不在下で貯蔵される。固体形は、例えば、下記成分又は同様な性質の化合物:結合剤(例えば、微結晶セルロース、トラガカントガム若しくはゼラチン);賦形剤(例えば、澱粉若しくはラクトース);崩壊剤(例えば、アルギン酸、Primogel若しくはトウモロコシ澱粉);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム);グライダント(例えば、コロイド状二酸化ケイ素);甘味剤(例えば、スクロース若しくはサッカリン);又はフレーバー剤(flavoring agents)(例えば、ペパーミント、メチル・サリチレート若しくはオレンジフレーバー)のいずれかを含むことができる。
【0036】
注射用組成物は、典型的に、注射可能な無菌生理的食塩水若しくはリン酸塩緩衝化生理的食塩水又は当該技術分野で既知の、他の注射可能なキャリヤーをベースとする。上述したように、このような組成物中の式(I)で示される酸誘導体は、典型的にマイナー成分であって、しばしば0.05〜10重量%の範囲であり、残部は注射可能なキャリヤーなどである。平均1日投与量は、例えば、疾患の重症度及び患者の条件(年齢、性別及び体重)のような、種々な要因に依存するであろう。該投与量は、一般に、1日当たり式(I)化合物1mg若しくは数mgから1500mgまで変化し、任意に複数回投与に分割される。本発明の化合物が長期間にわたって低毒性であるために、より高い投与量を投与することも可能である。
【0037】
経口投与用又は注射用組成物のための上記成分は、代表的であるに過ぎない。この他の物質並びに加工方法などは、"Remington's Pharmaceutical Sciences Handbook", 18th Edition, 1990, Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania(これは、本明細書に援用される)のパート8に記載されている。
【0038】
本発明の化合物は、持続放出形で又は持続放出薬物デリバリー系から投与することもできる。代表的な持続放出物質の説明は、上述したRemington's Handbookに採り上げられた物質に見出すこともできる。
【0039】
本発明を下記実施例によって説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものと見なされるものではない。
【実施例】
【0040】
式(I)化合物の合成に試薬として用いるアルキル及びアリールスルホニルクロリドは、一般的に商業的に入手可能である既知製品であるか、又は該化合物は、文献に記載された方法に従って製造することができる。
【0041】
(2R)−2−(4−アミノフェニル)プロパンアミド
(2R)−2−(4−ニトロフェニル)プロパン酸(6g,30.6mmol)を乾燥CHCl(80ml)中に溶解して、1,1−カルボニルジイミダゾール(5.58g,34.41mmol)を加えて、得られた溶液を室温において2時間撹拌した。次に、IR分析によってチェックして、中間体が完全に消失するまで(8時間)、ガス状アンモニアを該溶液中にバブルさせた。該有機溶液に、NHClの飽和溶液(20ml)を加えて、2相をディベートさせ(debated)、分離させた。有機相を再び水(2x25ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空下で蒸発させて、(2R)−2−(4−ニトロフェニル)プロパンアミドを白色固体(5.1g,26.15mmol)として得た。
【0042】
(2R)−2−(4−ニトロフェニル)プロパンアミド(4.9g,25.2mmol)をTHF(30ml)とCHOH(30ml)との混合物中に溶解して、得られた溶液をT=0〜5℃において冷却した。ギ酸アンモニウム(8g,126mmol)を加えて、次に、10%Pd/C(1.6g)も少量ずつ、注意深く加えた。得られた混合物を室温において一晩、出発物質が完全に消失するまで(TLCによって)、撹拌状態に放置した。真空下においてセライトケーキ上で濾過し、減圧下で溶媒を蒸発させた後に、純粋な(2R)−2−(4−アミノフェニル)プロパンアミドを白色粉末(4g,24.24mmol)として単離した。収率96.2%.m.p.110〜112℃:
【0043】
【化2】

【0044】
(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド(1)
(2R)−2−(4−アミノフェニル)プロパンアミド(0.5g,3.05mmol)をピリジン(2ml)中に溶解し、2−プロパンスルホニルクロリド(0.53ml,3.66mmol)を加えた。得られた溶液を4時間還流させ、室温において一晩放置した。出発アミドが完全に消失した後に、該溶液をEtO(10ml)で希釈して、有機層を1N HCl(2x5ml)及びHO(2x5ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空下で蒸発させて、(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミドを淡黄色固体(667mg,2.47mmol)として得た。収率81%.mp125〜127℃:
【0045】
【化3】

【0046】
上記方法に従い、適当なスルホニルクロリドから出発して、下記アミド類を製造した:
(2R)−2−(4−{[(2−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド(2);ワックス状固体;
【0047】
【化4】

【0048】
(2R)−2−(4−{[(2,6−ジクロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド(3);ワックス状固体;
【0049】
【化5】

【0050】
(2R)−2−{4−[(メチルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド(4);ワックス状固体;
【0051】
【化6】

【0052】
(2R)−2−{4−[(フェニルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド(5);白色粉末;mp.152〜153℃;
【0053】
【化7】

【0054】
(2R)−2−(4−{[(4−メチルフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド(6);白色粉末;mp.138〜140℃;
【0055】
【化8】

【0056】
(2R)−2−(4−{[(4−メトキシフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド(7);白色粉末;mp.118〜120℃;
【0057】
【化9】

【0058】
(2R)−2−{4−[(ベンジルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド(8);白色粉末;mp.68〜70℃;
【0059】
【化10】

【0060】
(2R)−2−(4−{[(4−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド(9);白色粉末;mp.150〜153℃;
【0061】
【化11】

【0062】
(2R)−2−(4−{[(4−(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド(10);白色粉末;mp.178〜180℃;
【0063】
【化12】

【0064】
(2R)−2−{4−[(チエン−2−イルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド(11);白色粉末;mp.58〜60℃;
【0065】
【化13】

【0066】
(2R)−2−{4−[(シクロペンチルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド(12);ワックス状固体;
【0067】
【化14】

【0068】
(2R)−2−(4−{[(トリフルオロメチル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド(13);ワックス状固体;
【0069】
【化15】

【0070】
(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}−N−メチルプロパンアミド(14)
WO 03/042625に記載されたとおりに製造した(2R)−2−{[4−(イソプロピルスルホニルアミノ)フェニル]}プロパン酸(0.65g,2.4mmol)をCHCl(8ml)中に溶解して;N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(WSC)(0.46g,2.4mmol)と1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBT)(0.324g,2.4mmol)を加えて、得られた混合物を室温において30分間撹拌状態に放置した。次に、CHCl(2ml)中の塩酸メチルアミン(0.155g,2.43mmol)とトリエチルアミン(0.33ml,2.4mmol)との混合物を滴加し、得られた混合物を室温において一晩撹拌状態に放置した。該混合物をCHCl(10ml)で希釈し、有機層を1N HCl(2x10ml)とHO(2x10ml)で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空下で蒸発させて、(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}−N−メチルプロパンアミドをワックス状固体(0.63g,2.23mmol)として得た。収率93%.
【0071】
【化16】

【0072】
上記方法に従い、適当な商業的塩酸アミンと式(II):
【0073】
【化17】

【0074】
[式中、R’は上記で定義したとおりである]
で示されるプロパン酸から出発して、下記アミド類を製造した:
(2R)−N−[(1S)−2−アミノ−1−メチル−2−オキソエチル]−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド(15);白色粉末;mp.132〜135℃;
【0075】
【化18】

【0076】
(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}−N−[4−(トリフルオロメチル)−1,3−チアゾル−2−イル]プロパンアミド(16);ガラス状固体;
【0077】
【化19】

【0078】
(2R)−2−(4−{[(2−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)−N−[4−(トリフルオロメチル)−1,3−チアゾル−2−イル]プロパンアミド(17);ワックス状固体;
【0079】
【化20】

【0080】
(2R)−2−(4−{[(2−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)−N−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]プロパンアミド(18);無色油状物;
【0081】
【化21】

【0082】
(2R)−2−(4−{[(2−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)−N−シクロプロピルプロパンアミド(19);無色油状物;
【0083】
【化22】

【0084】
(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド・ナトリウム塩
(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド(1)(500mg,1.85mmol)をCHOH(15ml)中に溶解した。NORMEX IN NaOH(1.85ml,1.85mmol)を滴加し、得られた溶液を室温において2時間撹拌状態に放置した。溶媒を蒸発させた後に、水(3ml)を加えて、透明な溶液を凍結させ、次に、凍結乾燥させて、(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド・ナトリウム塩(541mg,1.85mmol)を淡黄色粉末として得た。定量的収率。
【0085】
【化23】

【0086】
化合物2〜19のナトリウム塩は、上記と同じ方法に従って製造されている。
表1において、本発明の典型的な化合物の生物学的活性を報告する。
表1
【0087】
【化24】

【0088】
【化25】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

で示される(2R)−2−フェニルプロパンアミド誘導体及びその製薬的に受容される塩であって、上記式において、
Rは、H、OH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルコキシ及びフェニル;ヘテロアリール基(置換及び非置換のピロール、チオフェン、フラン、インドール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン及びピリミジンから選択される);及び式:−CH−CH−O−(CH−CHO)R”[式中、R”はH若しくはC−Cアルキルであり、nは0〜2の整数である]で示される残基から選択されるか、又はRは、それが結合するNH基と共に、例えば(2S)−2−アミノプロパンアミド、(2S)−2−アミノ−3−フェニルプロパンアミド、(2S)−2−アミノ−3−ヒドロキシプロパンアミド、(2S)−2−アミノ−3−カルボキシプロパンアミド、(2S)−2,6−ジアミノエキサンアミドのような天然アミノ酸の第1級アミドのラジカル基である;
R’は、直鎖若しくは分枝鎖のC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cアルケニル及びトリフルオロメチル;置換若しくは非置換のフェニル;置換若しくは非置換のベンジル;及びヘテロアリール基(置換及び非置換のピリジン、ピリミジン、ピロール、チオフェン、フラン、インドール、チアゾール及びオキサゾールから選択される)から選択される。
【請求項2】
Rが、H、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、L−2−アミノ−1−メチル−2−オキソエチル;及びヘテロアリール基(置換及び非置換のチアゾール、オキサゾール、ピリジンから選択される)から選択され;R’が、直鎖若しくは分枝鎖のC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、トリフルオロメチル、ベンジル;非置換フェニル又はハロゲン、C−Cアルキル、C−Cアルコキシ、トリフルオロメチル、チオフェンから選択される基によって置換されたフェニルから選択される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド・ナトリウム塩;
(2R)−2−(4−{[(2−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
(2R)−2−(4−{[(2,6−ジクロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
(2R)−2−{4−[(メチルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
(2R)−2−{4−[(フェニルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
(2R)−2−(4−{[(4−メチルフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
(2R)−2−(4−{[(4−メトキシルフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
(2R)−2−{4−[(ベンジルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
(2R)−2−(4−{[(4−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
(2R)−2−(4−{[(4−(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
(2R)−2−{4−[(チエン−2−イルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
(2R)−2−{4−[(シクロペンチルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
(2R)−2−(4−{[(トリフルオロメチル)スルホニル]アミノ}フェニル)プロパンアミド;
(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}−N−メチルプロパンアミド;
(2R)−N−[(1S)−2−アミノ−1−メチル−2−オキソエチル]−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミド;
(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}−N−[4−(トリフルオロメチル)−1,3−チアゾル−2−イル]プロパンアミド;
(2R)−2−(4−{[(2−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)−N−[4−(トリフルオロメチル)−1,3−チアゾル−2−イル]プロパンアミド;
(2R)−2−(4−{[(2−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)−N−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]プロパンアミド;
(2R)−2−(4−{[(2−クロロフェニル)スルホニル]アミノ}フェニル)−N−シクロプロピルプロパンアミド
から選択される請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
(2R)−2−{4−[(イソプロピルスルホニル)アミノ]フェニル}プロパンアミドとそのナトリウム塩である、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
薬剤として用いるための請求項1〜4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】
CXCL1誘導ヒトPMNs走化性を必要とする、疾患の治療の薬剤の製造における、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項7】
黒色腫、血管新生、慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び閉塞性細気管支炎症候群(BOS)の治療のための薬剤の製造における請求項1〜4のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれかに記載の化合物をその適当なキャリヤーとの混合物として含む医薬組成物。
【請求項9】
式(II):
【化2】

[式中、R’は請求項1で定義した意味と同じ意味を有する]
で示される化合物と、式:NHR[式中、Rは請求項1で定義した意味と同じ意味を有する]で示されるアミンとの反応を含む、請求項1記載の式(I)で示される化合物の製造方法。
【請求項10】
(2R)−2−(4−アミノフェニル)プロパンアミドと、式:R’SOCl[式中、R’は請求項1で定義した意味と同じ意味を有する]で示される塩化スルホニルとの反応を含む、請求項1記載の式(I)で示される化合物の製造方法。

【公表番号】特表2010−505742(P2010−505742A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510463(P2009−510463)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際出願番号】PCT/EP2007/054806
【国際公開番号】WO2007/135080
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(506102293)ドムペ・ファ.ル.マ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (11)
【Fターム(参考)】